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技術 フッ素系陽イオン交換膜の製造方法

出願人 AGC株式会社
発明者 草野博光金子隆之
出願日 2014年12月19日 (5年11ヶ月経過) 出願番号 2015-554844
公開日 2017年3月23日 (3年8ヶ月経過) 公開番号 WO2015-098769
状態 特許登録済
技術分野 高分子成形体の製造 非金属・化合物の電解製造;そのための装置 イオン交換
主要キーワード 測定計測 ゴムライニングロール PTFE糸 発泡ウレタンシート 通電面積 親水化層 塩化アルカリ 積層ロール
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重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年3月23日)のものです。
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図面 (3)

課題・解決手段

陰極側表面へのガス付着抑制効果が高く、かつ陰極側に設けたガス解放層無機物粒子脱落耐性に優れるフッ素系陽イオン交換膜が得ることができるフッ素系陽イオン交換膜の製造方法の提供。 少なくとも陰極側に、カルボン酸基またはカルボン酸基の前駆体基を有するペルフルオロカーボン重合体(A)を含む層(α1)12と、層(α1)12の陰極側に設けられたガス解放層(α2)10とを備える電解用フッ素系陽イオン交換膜1の製造方法であって、平均二次粒子径が0.5〜1.5μmの無機物粒子とバインダー分散媒を含み、前記無機物粒子およびバインダーの合計質量に対する前記バインダーの質量比が0.15〜0.3である塗布液を、層(α1)12の表面に塗布し、次いでガス解放層(α2)10を形成する工程を有する、フッ素系陽イオン交換膜の製造方法。

概要

背景

塩化アルカリ塩化ナトリウム塩化カリウム塩化リチウム等)水溶液電解し、水酸化アルカリ塩素とを製造する塩化アルカリ電解では、隔膜としてフッ素系陽イオン交換膜を用いるイオン交換膜法が広く用いられる。該フッ素系陽イオン交換膜としては、陽極側にスルホン酸基(−SO3H)を有するフッ素系重合体からなる層と、陰極側カルボン酸基(−COOH)を有するフッ素系重合体からなる層の少なくとも2層を有するフッ素系陽イオン交換膜が好適に使用される。

フッ素系陽イオン交換膜を用いる塩化アルカリ電解では、特にフッ素系陽イオン交換膜の陰極側の膜表面に、電解により発生したガス水素ガス等)が付着すると、該ガスが遮蔽となって電気抵抗が上がるため、電解電圧が高くなってエネルギーロスが大きくなる。そこで、フッ素系陽イオン交換膜の陰極側の表面に、無機物粒子酸化ジルコニウム等)とバインダー(フッ素系重合体等)とからなるガス解放層親水化層)を設けて、ガスの付着を抑制することが提案されている。無機物粒子によって膜表面に凹凸ができることで表面が親水化されるため、ガスの付着が抑制される。

該フッ素系陽イオン交換膜の製造方法としては、例えば、以下に示す方法が知られている。
(i)イオン交換基(スルホン酸基、カルボン酸基)の前駆体基を有する含フッ素重合体からなる層を有し、補強織布が埋め込まれた膜の陰極側の表面に、平均一次粒子径が0.01〜0.08μmの無機物粒子とフッ素系重合体溶解液混合分散した塗布液エアレススプレー等で塗布してガス解放層を形成し、前記前駆体基を加水分解してイオン交換基とする方法(特許文献1)。
(ii)イオン交換基(スルホン酸基、カルボン酸基)の前駆体基を有する含フッ素重合体からなる層を有する膜の前記前駆体基を加水分解してイオン交換基とした後に、該膜の陰極側の表面に、平均一次粒子径が5〜9μmの酸化ジルコニウムとフッ素系重合体を含む分散液を塗布してガス解放層を形成する方法(特許文献2)。

概要

陰極側表面へのガス付着抑制効果が高く、かつ陰極側に設けたガス解放層の無機物粒子の脱落耐性に優れるフッ素系陽イオン交換膜が得ることができるフッ素系陽イオン交換膜の製造方法の提供。 少なくとも陰極側に、カルボン酸基またはカルボン酸基の前駆体基を有するペルフルオロカーボン重合体(A)を含む層(α1)12と、層(α1)12の陰極側に設けられたガス解放層(α2)10とを備える電解用フッ素系陽イオン交換膜1の製造方法であって、平均二次粒子径が0.5〜1.5μmの無機物粒子とバインダーと分散媒を含み、前記無機物粒子およびバインダーの合計質量に対する前記バインダーの質量比が0.15〜0.3である塗布液を、層(α1)12の表面に塗布し、次いでガス解放層(α2)10を形成する工程を有する、フッ素系陽イオン交換膜の製造方法。

目的

本発明の目的は、陰極側表面へのガス付着抑制効果が高く、かつ陰極側に設けたガス解放層の無機物粒子の脱落耐性に優れるフッ素系陽イオン交換膜を得ることができるフッ素系陽イオン交換膜の製造方法を提供する

効果

実績

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請求項1

少なくとも陰極側に、カルボン酸基またはカルボン酸基の前駆体基を有するペルフルオロカーボン重合体(A)を含む層(α1)と、該層(α1)の陰極側に設けられたガス解放層(α2)とを備える電解用フッ素系陽イオン交換膜の製造方法であって、平均二次粒子径が0.5〜1.5μmの無機物粒子バインダー分散媒を含み、前記無機物粒子およびバインダーの合計質量に対する前記バインダーの質量比が0.15〜0.3である塗布液を、前記層(α1)の表面に塗布し、次いで前記ガス解放層(α2)を形成する工程を有する、フッ素系陽イオン交換膜の製造方法。

請求項2

前記無機物粒子が、第4族元素または第14族元素の、酸化物、窒化物および炭化物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のフッ素系陽イオン交換膜の製造方法。

請求項3

前記無機物粒子が、SiO2、SiC、ZrO2、またはZrCである、請求項1または2に記載のフッ素系陽イオン交換膜の製造方法。

請求項4

前記無機物粒子の平均一次粒子径が0.02〜0.4μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフッ素系陽イオン交換膜の製造方法。

請求項5

前記バインダーが、カルボン酸基またはスルホン酸基を有するフッ素系重合体(C)である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフッ素系陽イオン交換膜の製造方法。

請求項6

前記ペルフルオロカーボン重合体(A)が、下記の単量体(1)に基づく構成単位と、下記の単量体(2)に基づく構成単位を有する共重合体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフッ素系陽イオン交換膜の製造方法。CF2=CX1X2・・・(1)CF2=CF(OCF2CFX3)nO(CF2)mY・・・(2)(ただし、式(1)中、X1およびX2は、それぞれ独立にフッ素原子塩素原子、またはトリフルオロメチル基である。また、式(2)中、X3はフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、mは1〜5の整数であり、nは0または1であり、Yは加水分解によりカルボン酸基に変換できる前駆体基である。)

請求項7

前記ペルフルオロカーボン重合体(A)を含む層(α1)のイオン交換容量が、0.7〜1.1ミリ当量/g乾燥樹脂である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフッ素系陽イオン交換膜の製造方法。

請求項8

陽極側に、スルホン酸基またはスルホン酸基の前駆体基を有するペルフルオロカーボン重合体(B)を含む層(β1)を設ける、請求項1〜7のいずれか一項に記載のフッ素系陽イオン交換膜の製造方法。

請求項9

前記層(β1)の外側にガス解放層(β2)を設ける、請求項8に記載のフッ素系陽イオン交換膜の製造方法。

請求項10

前記ペルフルオロカーボン重合体(B)が、下記の単量体(1)に基づく構成単位と、下記の単量体(3)に基づく構成単位を有する共重合体である、請求項8または9に記載のフッ素系陽イオン交換膜の製造方法。CF2=CX1X2・・・(1)CF2=CF(OCF2CFX4)sO(CF2)tW・・・(3)(ただし、式(1)中、X1およびX2は、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、またはトリフルオロメチル基である。また、式(3)中、ただし、式(3)中、X4はフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、sは1〜3の整数であり、tは0、1または2であり、Wは加水分解によりスルホン酸基に変換できる前駆体基である。)

請求項11

前記ペルフルオロカーボン重合体(A)を含む層(β1)のイオン交換容量が、0.9〜1.15ミリ当量/g乾燥樹脂である、請求項6〜10のいずれか一項に記載のフッ素系陽イオン交換膜の製造方法。

請求項12

以下の工程(a)〜(c)を有することを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一項に記載のッ素系陽イオン交換膜の製造方法[工程(a)]:ガス解放層(β2)、層(β1)および層(α1)をこの順に積層して複合膜を得る。[工程(b)]複合膜がカルボン酸基の前駆体基および/またはスルホン酸基の前駆体基を有する場合、かかるカルボン酸基の前駆体基および/またはスルホン酸基の前駆体基を加水分解し、それぞれカルボン酸基とスルホン酸基に変換する。[工程(c)]無機物粒子(P)とバインダーと分散媒とを含み、バインダー比が0.15〜0.3である塗布液を複合膜における層(α1)の表面に塗布し、加熱により分散媒を除去してガス解放層(α2)を形成する。

技術分野

0001

本発明は、フッ素系陽イオン交換膜の製造方法に関する。

背景技術

0002

塩化アルカリ塩化ナトリウム塩化カリウム塩化リチウム等)水溶液電解し、水酸化アルカリ塩素とを製造する塩化アルカリ電解では、隔膜としてフッ素系陽イオン交換膜を用いるイオン交換膜法が広く用いられる。該フッ素系陽イオン交換膜としては、陽極側にスルホン酸基(−SO3H)を有するフッ素系重合体からなる層と、陰極側カルボン酸基(−COOH)を有するフッ素系重合体からなる層の少なくとも2層を有するフッ素系陽イオン交換膜が好適に使用される。

0003

フッ素系陽イオン交換膜を用いる塩化アルカリ電解では、特にフッ素系陽イオン交換膜の陰極側の膜表面に、電解により発生したガス水素ガス等)が付着すると、該ガスが遮蔽となって電気抵抗が上がるため、電解電圧が高くなってエネルギーロスが大きくなる。そこで、フッ素系陽イオン交換膜の陰極側の表面に、無機物粒子酸化ジルコニウム等)とバインダー(フッ素系重合体等)とからなるガス解放層親水化層)を設けて、ガスの付着を抑制することが提案されている。無機物粒子によって膜表面に凹凸ができることで表面が親水化されるため、ガスの付着が抑制される。

0004

該フッ素系陽イオン交換膜の製造方法としては、例えば、以下に示す方法が知られている。
(i)イオン交換基(スルホン酸基、カルボン酸基)の前駆体基を有する含フッ素重合体からなる層を有し、補強織布が埋め込まれた膜の陰極側の表面に、平均一次粒子径が0.01〜0.08μmの無機物粒子とフッ素系重合体溶解液混合分散した塗布液エアレススプレー等で塗布してガス解放層を形成し、前記前駆体基を加水分解してイオン交換基とする方法(特許文献1)。
(ii)イオン交換基(スルホン酸基、カルボン酸基)の前駆体基を有する含フッ素重合体からなる層を有する膜の前記前駆体基を加水分解してイオン交換基とした後に、該膜の陰極側の表面に、平均一次粒子径が5〜9μmの酸化ジルコニウムとフッ素系重合体を含む分散液を塗布してガス解放層を形成する方法(特許文献2)。

先行技術

0005

特開平3−137136号公報
特開昭59−219487号公報

発明が解決しようとする課題

0006

しかし、方法(i)、(ii)では、フッ素系陽イオン交換膜の表面が他の部材等と接触して擦れたとき等に、陰極側に形成したガス解放層から無機物粒子が脱落することがある。また、無機物粒子の脱落を防止するためにバインダーの比率を高めると、ガス解放層の表面の凹凸が少なくなってガスの付着を抑制する効果が低下する。そのため、フッ素系陽イオン交換膜の陰極側の表面にガスが付着することを抑制する効果と、ガス解放層の無機物粒子の脱落耐性両立することは困難である。

0007

本発明の目的は、陰極側表面へのガス付着抑制効果が高く、かつ陰極側に設けたガス解放層の無機物粒子の脱落耐性に優れるフッ素系陽イオン交換膜を得ることができるフッ素系陽イオン交換膜の製造方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0008

本発明は、以下の[1]〜[5]の構成を有するフッ素系陽イオン交換膜の製造方法を提供する。
[1]少なくとも陰極側に、カルボン酸基またはカルボン酸基の前駆体基を有するペルフルオロカーボン重合体(A)を含む層(α1)と、該層(α1)の陰極側に設けられたガス解放層(α2)とを備える電解用フッ素系陽イオン交換膜の製造方法であって、平均二次粒子径が0.5〜1.5μmの無機物粒子とバインダーと分散媒とを含み、前記無機物粒子およびバインダーの合計質量に対する前記バインダーの質量比が0.15〜0.3である塗布液を、前記層(α1)の表面に塗布し、次いで前記ガス解放層(α2)を形成する工程を有する、フッ素系陽イオン交換膜の製造方法。
[2]前記無機物粒子が、第4族元素または第14族元素の、酸化物、窒化物および炭化物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記[1]に記載の製造方法。
[3]前記無機物粒子が、SiO2、SiC、ZrO2、またはZrCである、前記[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記無機物粒子の平均一次粒子径が0.02〜0.4μmである、前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の製造方法。
[5]前記バインダーが、カルボン酸基またはスルホン酸基を有するフッ素系重合体(C)である、前記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の製造方法。
[6]前記ペルフルオロカーボン重合体(A)が、下記の単量体(1)に基づく構成単位と、下記の単量体(2)に基づく構成単位を有する共重合体である、前記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
CF2=CX1X2 ・・・(1)
CF2=CF(OCF2CFX3)nO(CF2)mY ・・・(2)
(ただし、式(1)中、X1およびX2は、それぞれ独立にフッ素原子塩素原子、またはトリフルオロメチル基である。また、式(2)中、X3はフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、mは1〜5の整数であり、nは0または1であり、Yは加水分解によりカルボン酸基に変換できる前駆体基である。)
[7]前記ペルフルオロカーボン重合体(A)を含む層(α1)のイオン交換容量が、0.7〜1.1ミリ当量/g乾燥樹脂である、前記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の製造方法。
[8]陽極側に、スルホン酸基またはスルホン酸基の前駆体基を有するペルフルオロカーボン重合体(B)を含む層(β1)を設ける、前記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の製造方法。
[9]前記層(β1)の外側にガス解放層(β2)を設ける、前記[8]の一項に記載の製造方法。
[10]前記ペルフルオロカーボン重合体(B)が、下記の単量体(1)に基づく構成単位と、下記の単量体(3)に基づく構成単位を有する共重合体である、前記[8]または[9]に記載の製造方法。
CF2=CX1X2 ・・・(1)
CF2=CF(OCF2CFX4)sO(CF2)tW ・・・(3)
(ただし、式(1)中、X1およびX2は、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、またはトリフルオロメチル基である。また、式(3)中、ただし、式(3)中、X4はフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、sは1〜3の整数であり、tは0、1または2であり、Wは加水分解によりスルホン酸基に変換できる前駆体基である。)
[11]前記ペルフルオロカーボン重合体(A)を含む層(β1)のイオン交換容量が、0.9〜1.15ミリ当量/g乾燥樹脂である、前記[6]〜[10]のいずれか一項に記載の製造方法。
[12]以下の工程(a)〜(c)を有することを特徴とする、前記[9]〜[11]のいずれか一項に記載の製造方法
[工程(a)]:ガス解放層(β2)、層(β1)および層(α1)をこの順に積層して複合膜を得る。
[工程(b)]複合膜がカルボン酸基の前駆体基および/またはスルホン酸基の前駆体基を有する場合、かかるカルボン酸基の前駆体基および/またはスルホン酸基の前駆体基を加水分解し、それぞれカルボン酸基とスルホン酸基に変換する。
[工程(c)]無機物粒子(P)とバインダーと分散媒とを含み、バインダー比が0.15〜0.3である塗布液を複合膜における層(α1)の表面に塗布し、加熱により分散媒を除去してガス解放層(α2)を形成する。

発明の効果

0009

本発明のフッ素系陽イオン交換膜の製造方法によれば、陰極側表面へのガス付着抑制効果が高く、かつ陰極側に設けたガス解放層の無機物粒子の脱落耐性に優れるフッ素系陽イオン交換膜を得ることができる。

図面の簡単な説明

0010

本発明の製造方法で製造されるフッ素系陽イオン交換膜の一例の模式断面図である。
本発明のフッ素系陽イオン交換膜の製造方法の一例において、その過程で製造される複合膜の模式断面図である。

0011

以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
一次粒子」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察される最小の粒子を意味する。また、「二次粒子」とは、一次粒子が凝集している粒子を意味する。
ボールミル」とは、用いられるメディアビーズ)の粒径が10〜50mmである粉砕機一種を意味する。
ビーズミル」とは、用いられるメディア(ビーズ)の粒径が0.03〜2mmである粉砕機の一種を意味する。
「フッ素系重合体」とは、分子中にフッ素原子を有する高分子化合物を意味する。
「ペルフルオロカーボン重合体」とは、重合体中の炭素原子に結合している水素原子の全部がフッ素原子に置換された重合体を意味する。ペルフルオロカーボン重合体中のフッ素原子の一部は、塩素原子、または臭素原子に置換されていてもよい。
「単量体」とは、重合性二重結合を有する化合物を表す。
「構成単位」とは、単量体が重合することで直接形成される該単量体由来の単位と、単量体の重合によって形成される該単量体由来の単位の一部を化学変換することで得られる単位の総称である。
「前駆体基」とは、加水分解処理酸型化処理等の公知の処理によってイオン交換基(カルボン酸基、スルホン酸基)に変換できる基を意味する。
本明細書においては、式(1)で表される単量体を単量体(1)と称し、他の式で表される単量体も同様に称する。

0012

<フッ素系陽イオン交換膜>
本発明の製造方法で製造するフッ素系陽イオン交換膜は、塩化アルカリ電解用の陽イオン交換膜であって、少なくとも陰極側に、カルボン酸基またはカルボン酸基の前駆体基を有するペルフルオロカーボン重合体(A)(以下、重合体(A)とも記す。)を含む層(α1)と、該層(α1)の外側に設けられたガス解放層(α2)とを備えるフッ素系陽イオン交換膜である。以下、本発明の製造方法で製造するフッ素系陽イオン交換膜の一例を示して説明する。

0013

本実施形態のフッ素系陽イオン交換膜1は、図1に示すように、ガス解放層(α2)10と、重合体(A)を含む層(α1)12と、スルホン酸基またはスルホン酸基の前駆体基を有するペルフルオロカーボン重合体(B)(以下、重合体(B)とも記す。)を含む層(β1)14と、ガス解放層(β2)16とがこの順に積層されている。
フッ素系陽イオン交換膜1は、電解槽において、ガス解放層(α2)が陰極に面し、ガス解放層(β2)が陽極に面するように配置される。
フッ素系陽イオン交換膜1の形および大きさは、フッ素系陽イオン交換膜1を適用する電解槽に応じて適宜決定すればよい。

0014

[層(α1)]
層(α1)12は、重合体(A)を含む層である。層(α1)12は、重合体(A)を含む層であれば補強材が埋め込まれた層であってもよいし、単層であっても多層であってもよいが、電解性能の点から、補強材等の重合体(A)以外の物質を含まない重合体(A)からなる層であることが好ましい。

0015

重合体(A)としては、下記の単量体(1)に基づく構成単位と、下記の単量体(2)に基づく構成単位を有する共重合体、または該共重合体を加水分解してYを−COOHに転換した重合体が好ましい。
CF2=CX1X2 ・・・(1)
CF2=CF(OCF2CFX3)nO(CF2)mY ・・・(2)
(ただし、式(1)中、X1およびX2は、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、またはトリフルオロメチル基である。また、式(2)中、X3はフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、mは1〜5の整数であり、nは0または1であり、Yは加水分解によりカルボン酸基に変換できる前駆体基である。)

0016

単量体(1)のX1およびX2としては、フッ素原子が好ましい。
単量体(1)の具体例としては、例えば、CF2=CF2、CF2=CFCl、CF2=CFCF3等が挙げられ、CF2=CF2が好ましい。

0017

単量体(2)のYとしては、−COOR1(ただし、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)、−CN、−COZ(ただし、Zはハロゲン原子である。)が好ましく、−COOR1がより好ましく、−COOCH3が特に好ましい。
mは、2または3が好ましい。

0018

単量体(2)としては、以下の化合物が好ましい。
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOCH3、
CF2=CFOCF2CF2COOCH3、
CF2=CFOCF2CF2CF2COOCH3、
CF2=CFOCF2CF2CF2OCF2CF2COOCH3、
CF2=CFOCF2CF2CF2CF2CF2COOCH3、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2COOCH3。

0019

補強材としては、例えば、織布、不織布、フィブリル多孔体等が挙げられ、強度の点から、織布が好ましい。補強材の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEとも記す。)等のフッ素系重合体が挙げられる。

0020

層(α1)12のイオン交換容量は、0.7〜1.1ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、0.8〜1.1ミリ当量/g乾燥樹脂がより好ましい。
層(α1)12の厚さは、5〜50μmが好ましく、10〜35μmがより好ましい。

0021

[ガス解放層(α2)]
ガス解放層(α2)10は、平均二次粒子径が0.5〜1.5μmの無機物粒子(以下、無機物粒子(P)とも記す。)と、バインダーとを含有する層である。ガス解放層(α2)10を設けることで、フッ素系陽イオン交換膜1の陰極側の表面にガスが付着することが抑制され、その結果、塩化アルカリ電解の際に電解電圧が高くなることが抑制される。また、本発明におけるガス解放層(α2)10は、無機物粒子(P)の脱落耐性に優れており、他の部材等との摩擦が生じた場合等でも無機物粒子が脱落しにくく、ガス付着抑制効果が安定して得られる。

0022

無機物粒子(P)としては、電解に用いる塩化アルカリ溶液等に対する耐食性に優れ、親水性を有するものが好ましい。具体的には、第4族元素または第14族元素の、酸化物、窒化物および炭化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、SiO2、SiC、ZrO2、またはZrCがより好ましく、ZrO2が特に好ましい。

0023

無機物粒子(P)の平均一次粒子径は、0.01〜1μmが好ましく、0.02〜0.4μmがより好ましい。無機物粒子(P)の平均一次粒子径が前記下限値以上であれば、凝集による不均一が少ない。無機物粒子(P)の平均一次粒子径が前記上限値以下であれば、分散不良による不均一が少ない。

0024

無機物粒子(P)の平均二次粒子径は、0.5〜1.5μmであり、0.7〜1.3μmが好ましい。無機物粒子(P)の平均二次粒子径が前記下限値以上であれば、高いガス付着抑制効果が得られる。無機物粒子(P)の平均二次粒子径が前記上限値以下であれば、無機物粒子(P)の脱落耐性に優れる。

0025

バインダーとしては、電解に使用する塩化アルカリ等に対する耐食性に優れ、親水性を有するものが好ましく、カルボン酸基またはスルホン酸基を有するフッ素系重合体(C)が好ましく、スルホン酸基を有するフッ素系重合体(C)がより好ましい。前記フッ素系重合体(C)は、カルボン酸基またはスルホン酸基を有する単量体の単独重合体であってもよく、カルボン酸基またはスルホン酸基を有する単量体と、該単量体と共重合可能な単量体の共重合体であってもよい。

0026

カルボン酸基を有するフッ素系重合体(C)としては、例えば、層(α1)で挙げた共重合体におけるYを加水分解して−COOHに変換した共重合体が挙げられる。
スルホン酸基を有するフッ素系重合体(C)としては、例えば、後述する層(β1)で挙げる重合体(B)のうち、スルホン酸基を有する重合体が挙げられる。

0027

ガス解放層(α2)10における無機物粒子(P)およびバインダーの合計質量に対するバインダーの質量比(以下、バインダー比と記す。)は、0.15〜0.3であり、0.15〜0.25が好ましく、0.16〜0.20がより好ましい。ガス解放層(α2)10におけるバインダー比が前記下限値以上であれば、無機物粒子(P)の脱落耐性に優れる。ガス解放層(α2)10におけるバインダー比が前記上限値以下であれば、高いガス付着抑制効果が得られる。

0028

[層(β1)]
層(β1)14は、重合体(B)を含む層である。層(β1)14には、補強材が埋め込まれていることが好ましい。これにより、フッ素系陽イオン交換膜1の強度が高まる。補強材を埋め込む場合に、層(α1)12でなく層(β1)14に埋め込むことで、電解性能に影響を与えることなく、補強効果を得ることが出来る。
層(β1)14は、単層でもよく、多層でもよい。層(β1)14に補強材を埋め込む場合は、層(β1)14を多層とし、製造時にそのいずれかの層間に補強材を挿入することで該補強材が埋め込まれるようにすることが好ましい。

0029

重合体(B)としては、前記単量体(1)に基づく構成単位と、下記の単量体(3)に基づく構成単位との共重合体、または該共重合体を加水分解してWを−SO3Hに変換したものが好ましい。
CF2=CF(OCF2CFX4)sO(CF2)tW ・・・(3)
(ただし、式(3)中、X4はフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、sは1〜3の整数であり、tは0、1または2であり、Wは加水分解によりスルホン酸基に変換できる前駆体基である。)

0030

単量体(3)におけるWとしては、−SO2X5(X5はフッ素原子、塩素原子または臭素原子)、−SO3R2(ただし、R2は炭素数1〜4のアルキル基である。)が好ましく、−SO2X5がより好ましく、−SO2Fが特に好ましい。

0031

単量体(3)としては、以下の化合物が好ましい。
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF2SO2F。

0032

層(β1)を多層とする場合、各層を形成する重合体(B)は、同じであってもよく、異なっていてもよい。

0033

層(β1)14に埋め込む補強材としては、例えば、層(α1)12で挙げたものと同じものが挙げられ、強度の点から、織布が好ましい。

0034

層(β1)14の総厚みは、充分な強度をもたせる点から、55〜200μmが好ましく、70〜160μmがより好ましい。
層(β1)14に補強材を埋め込む場合、層(β1)14における補強材よりも陽極側の部分の厚さは、10〜60μmが好ましい。前記厚さが前記下限値以上であれば、補強材を層(β1)内に埋め込みやすく、また層間剥離が起きることを抑制しやすい。前記厚さが前記上限値以下であれば、膜抵抗が増加することを抑制しやすい。
層(β1)14に補強材を埋め込む場合、層(β1)14における補強材よりも陰極側の厚さは、45〜140μmが好ましく、60〜100μmがより好ましい。

0035

層(β1)14のイオン交換容量は、0.9〜1.15ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、1.0〜1.15ミリ当量/g乾燥樹脂がより好ましい。層(α1)12と層(β1)14間の剥離を防止する点から、層(α1)12と層(β1)14のイオン交換容量の差はできるだけ小さい方が好ましく、例えば1.0ミリ当量/g乾燥樹脂以下が好ましい。
層(β1)14に補強材を埋め込む場合、電解電圧を低減させやすい点から、層(β1)14における補強材よりも陽極側のイオン交換容量は、補強材よりも陰極側のイオン交換容量と同等か、それよりも高く、例えば0.1ミリ当量/g乾燥樹脂以上高いことが好ましい。

0036

[ガス解放層(β2)]
ガス解放層(β2)16は、塩化アルカリ電解に使用されるフッ素系陽イオン交換膜の陽極側に設けられる公知のガス解放層を採用できる。
ガス解放層(β2)16としては、例えば、無機物粒子とバインダーを含有する層等が挙げられる。前記無機物粒子としては、例えば、ガス解放層(α2)で挙げた無機物粒子(P)と同じものが挙げられる。前記バインダーとしては、陽極側のガス解放層に用いられる公知のバインダーを採用でき、例えば、メチルセルロース等が挙げられる。

0037

<フッ素系陽イオン交換膜の製造方法>
以下、本発明のフッ素系陽イオン交換膜の製造方法の一例として、フッ素系陽イオン交換膜1の製造方法について説明する。
フッ素系陽イオン交換膜1の製造方法としては、例えば、以下の工程(a)〜(c)を有する方法が挙げられる。
(a)図2に示すように、ガス解放層(β2)16、層(β1)14および層(α1)12をこの順に積層して複合膜2を得る工程[工程(a)]。
(b)必要に応じて、複合膜2中のカルボン酸基の前駆体基とスルホン酸基の前駆体基を加水分解し、それぞれカルボン酸基とスルホン酸基に変換する工程[工程(b)]。
(c)無機物粒子(P)とバインダーと分散媒とを含み、バインダー比が0.15〜0.3である塗布液(以下、塗布液(D)とも記す。)を複合膜2における層(α1)12の表面に塗布し、加熱により分散媒を除去してガス解放層(α2)10を形成し、フッ素系陽イオン交換膜1を得る工程[工程(c)]。

0038

[工程(a)]
複合膜2を得る方法は、特に限定されず、公知の方法を採用できる。
層(α1)12および層(β1)14がともに単層の場合は、例えば、以下の方法が挙げられる。重合体(A)と重合体(B)を用いた共押出法により、層(α1)12/層(β1)14の積層構成積層フィルムを得る。分散媒(メチルセルロース水溶液等)に無機物粒子を分散させたペーストを、副資材ポリエチレンフィルムポリエチレンテレフタレートフィルム等)の表面に塗布、乾燥し、ガス解放層(β2)16を備えたガス解放層付き副資材を得る。前記積層フィルムと前記ガス解放層付き副資材とを、ガス解放層(β2)16が層(β1)14に面するように重ね合わせて加熱圧着し、複合膜2を得る。
副資材は、最終的に得られたフッ素系陽イオン交換膜1を加水分解する前に剥離されていればよい。ガス解放層(β2)16は、その形成が容易な点から、前記のように副資材を用いて形成することが好ましい。なお、後述の工程(c)と同様の方法でガス解放層(β2)を形成してもよい。

0039

前記ペーストの塗工方法は、特に限定されず、例えば、グラビアロール法等が挙げられる。
フィルム同士を加熱圧着する方法は、特に限定されず、例えば、一対の金属ロールおよびゴムライニングロールを有する積層ロールを用いる方法等が挙げられる。

0040

層(α1)12が多層の場合は、例えば、以下の方法が挙げられる。重合体(A)と重合体(B)を用いた共押出法により得た積層フィルムの重合体(A)の層側に、重合体(A)を用いた押出法により得た単層フィルムを重ね合わせ、重合体(B)の層側に、前記と同様にして得たガス解放層(β2)16の単層フィルムを重ね合わせ、それらを加熱圧着して複合膜2を得る。

0041

重合体(A)の単層フィルムの積層枚数は、層(α1)12の層構成に合わせて適宜設定すればよい。また、層(α1)12に補強材を埋め込む場合は、各フィルムを重ね合わせる際に層(α1)12を形成するいずれかのフィルム間に補強材を挿入し、加熱圧着を行うことで該補強材を埋め込むことができる。
なお、各フィルム同士の加熱圧着は、複数回に分けて多段階で行ってもよい。

0042

層(β1)14が多層の場合は、例えば、以下の方法が挙げられる。重合体(A)と重合体(B)を用いた共押出法により得た積層フィルムの重合体(B)の層側に、重合体(B)を用いた押出法により得た単層フィルムと、前記と同様にして得たガス解放層(β2)16の単層フィルムとをこの順に重ね合わせ、それらを加熱圧着して複合膜2を得る。

0043

重合体(B)の単層フィルムの積層枚数は、層(β1)14の層構成に合わせて適宜設定すればよい。また、層(β1)14に補強材を埋め込む場合は、各フィルムを重ね合わせる際に層(β1)14を形成するいずれかのフィルム間に補強材を挿入し、加熱圧着を行うことで該補強材を埋め込むことができる。
なお、各フィルム同士の加熱圧着は、複数回に分けて多段階で行ってもよい。

0044

[工程(b)]
複合膜2がカルボン酸基の前駆体基およびスルホン酸基の前駆体基の少なくとも一方を有する場合は、該前駆体基を加水分解してカルボン酸基またはスルホン酸基に変換する。
前駆体基を加水分解する方法は、公知の方法を採用でき、例えば、特開平1−140987号公報に記載の方法等が挙げられる。なかでも、水溶性有機化合物ジメチルスルホキシド等)とアルカリ金属水酸化物水酸化カリウム等)との混合物を用いる方法が好ましい。

0045

工程(c)において塗布液(D)の付着性がより良好になり、層(α1)との密着性に優れ、無機物粒子(P)の脱落耐性に優れたガス解放層(α2)を形成しやすい点では、工程(c)の前に工程(b)を行うことが好ましい。また、カルボン酸基よりもカルボン酸基の前駆体基の方が塗布液(D)の分散媒による悪影響が小さく、層(α1)の特性を発現させやすい点、工程が容易な点では、工程(c)の後に工程(b)を行うことが好ましい。

0046

[工程(c)]
複合膜2における層(α1)12の表面に、無機物粒子(P)とバインダーと分散媒を含み、バインダー比が0.15〜0.3である塗布液(D)を塗布する。その後、加熱等により分散媒を除去して乾燥することでガス解放層(α2)が形成される。

0047

塗布液(D)の調製方法としては、無機物粒子(P)とバインダーと分散媒を混合し、ボールミル等を用いて撹拌して均一にした後に、ビーズミルによって分散処理を行う方法が好ましい。該方法を用いることで、無機物粒子(P)の平均二次粒子径を0.5〜1.5μmの範囲に制御しやすい。
塗布液(D)中の無機物粒子(P)の平均二次粒子径は、無機物粒子(P)の平均一次粒子径、分散処理の処理時間等を調節することで制御できる。

0048

分散媒としては、バインダーがスルホン酸基を有するフッ素系重合体(C)である場合は、アルコール系溶媒エタノールイソプロピルアルコール等)が好ましい。かかるアルコール系溶媒は、後工程で加熱より除去するために、沸点が60〜100℃であるものが好ましく、70〜90℃であるのがより好ましい。
また、分散媒としては、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと記す。)、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン系極性溶媒を用いてもよい。非プロトン系極性溶媒は、沸点が140℃以上、かつ融点が25℃以下であるものが好ましく、さらにはその沸点が、重合体(A)の融点以下であるものが好ましい。具体的には、沸点が100〜220℃であるものが好ましく、150〜210であるのがより好ましい。
非プロトン系極性溶媒を使用する場合、非プロトン系極性溶媒を配合した塗布液(D)を調製して塗布してもよく、非プロトン系極性溶媒以外の分散媒(アルコール系溶媒等)を用いた塗布液(D)を調製して塗布した後に、非プロトン系極性溶媒を塗布してもよい。

0049

塗布液(D)(100質量%)中の分散媒の含有量は、30〜95質量%が好ましく、70〜90質量%がより好ましい。分散媒の含有量が前記範囲内であれば、バインダーの分散性が良好であり、また粘度も適当であることから、塗布液(D)をスプレー法で塗布する場合に適している。
非プロトン系極性溶媒を用いる場合、塗布液(D)(100質量%)中の非プロトン系極性溶媒の含有量は、1〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。

0050

塗布液(D)の塗布方法としては、公知の塗布方法を採用でき、例えば、スプレー法、ロールコーター法等が挙げられ、スプレー法が好ましい。複合膜2がカルボン酸基の前駆体基を有する場合に、工程(b)の前に工程(c)を行う場合は、塗布液(D)の付着性がより良好になる点から、スプレー法が好ましく、特にスプレー法においてエアの量を少なくすることが好ましい。

0051

加熱方法としては、特に限定されず、加熱ロールを用いる方法、オーブンを用いる方法等が挙げられる。なかでも、工業的には加熱ロールを備えたロールプレス機により連続的に加熱処理する方法が好ましい。
ロールプレス機を用いる場合、加える圧力は、動力の削減の点では、0.2MPa以下の線圧とすることが好ましい。

0052

加熱温度は、30℃以上が好ましく、使用する分散媒の沸点以上がより好ましい。一般に、加熱温度が分散媒の沸点より低い場合は、膜表面に分散媒が残留しやすいが、分散媒の種類によっては蒸気圧の関係から沸点以下で加熱しても分散媒を充分に揮発させることができる。
また、加熱温度は、重合体(A)および重合体(B)の融点未満が好ましく、具体的には、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。これにより、膜厚が不均一となることを抑制しやすくなる。

0053

以上説明した本発明のフッ素系陽イオン交換膜の製造方法にあっては、塗布液(D)によって陰極側の層(α1)の表面にガス解放層(α2)を形成するため、陰極側の膜表面における高いガス付着抑制効果と、ガス解放層(α2)からの無機物粒子(P)の優れた脱落耐性を両立できる。

0054

なお、本発明のフッ素系陽イオン交換膜の製造方法は、前記した方法には限定されない。例えば、工程(c)を行った後に工程(b)を行う方法であってもよい。また、カルボン酸基を有し、カルボン酸基の前駆体基を有さない重合体(A)と、スルホン酸基を有し、スルホン酸基の前駆体基を有さない重合体(B)とを用いる場合は、工程(b)を行わない方法であってもよい。
また、層(α1)と層(β1)の積層フィルムの層(α1)の表面に、塗布液(D)によってガス解放層(α2)を形成した後に、ガス解放層(β2)を積層する方法であってもよい。
また、ガス解放層(β2)を、ガス解放層(α2)と同様に塗布液(D)を塗布して形成する方法であってもよい。
また、本発明のフッ素系陽イオン交換膜の製造方法は、ガス解放層(β2)を有さないフッ素系陽イオン交換膜を製造する方法であってもよい。

0055

以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[平均一次粒子径]
無機物粒子(酸化ジルコニウムなど)を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、そのSEM観察像における最小粒子30個について画像寸法測定計測ソフト(イノテック社製 Pixs2000 PRO)を用いて粒子径を測定し、それらの平均値を平均一次粒子径とした。

0056

[平均二次粒子径]
無機物粒子(酸化ジルコニウムなど)を濃度が0.01質量%以下となるようにエタノールに分散し、マイクロトラック(日機装社製UPA−150)を用いて測定を行い、得られた粒度分布の全体積を100%とした累積体積分布曲線における累積体積が50%となる点の粒子径(D50)を平均二次粒子径とした。

0057

[製造例1]
(ペルフルオロカーボン重合体(A1)の製造)
CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF2CF2COOCH3とを共重合させ、加水分解したときのイオン交換容量が1.00ミリ当量/g乾燥樹脂となるペルフルオロカーボン重合体(A1)(以下、重合体(A1)という。)を得た。

0058

[製造例2]
(ペルフルオロカーボン重合体(B1)の製造)
CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fとを共重合させ、加水分解したときのイオン交換容量が1.0ミリ当量/g乾燥樹脂となるペルフルオロカーボン重合体(B1)(以下、重合体(B1)という。)を得た。

0059

[製造例3]
(ペルフルオロカーボン重合体(B2)の製造)
CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fとを共重合させ、加水分解したときのイオン交換容量が1.1ミリ当量/g乾燥樹脂となるペルフルオロカーボン重合体(B2)(以下、重合体(B2)という。)を得た。

0060

[製造例4]
(ペルフルオロカーボン重合体(C1)の製造)
DMSO/水酸化カリウム/水=15/23/62(質量比)の溶液に、重合体B2を95℃で30分間浸漬し、重合体B2のスルホン酸基の前駆体基(−SO2F基)を加水分解して−SO3K基に変換した。次いで、得られた重合体を、2モル/L(リットル)の塩酸水溶液に60℃で1時間浸漬した。塩酸水溶液を交換して同様の処理をさらに10回繰り返し、−SO3K基がスルホン酸基(−SO3H基)に変換されたペルフルオロカーボン重合体(C1)(以下、重合体(C1)という。)を得た。該重合体(C1)は超純水で充分に水洗した。

0061

[製造例5]
(塗布液(D1)の製造)
重合体(C1)をエタノールに溶解させ、9.5質量%のエタノール溶液を調製した。該エタノール溶液に、無機物粒子として平均一次粒子径が0.4μmである酸化ジルコニウムを10.8質量%加え、バインダー比を0.25とし、ボールミルを用いて均一に撹拌させた後、によりボールミルを除去した。その後、さらにビーズミル(寿工業社製UAM−015)を用いて分散処理を行い、遠心分離によりビーズミルを除去し、酸化ジルコニウムの平均二次粒子径が1.3μmの塗布液(D1)(懸濁液)を得た。

0062

[製造例6〜12、14、15]
(塗布液(D2)〜(D8)、(D10)、(D11)の製造)
酸化ジルコニウムの平均一次粒子径、バインダー比を表1に示すように変更し、酸化ジルコニウムの平均二次粒子径が表1に示すとおりとなるように分散処理を行った以外は、製造例5と同様にして塗布液(D2)〜(D8)、(D10)、(D11)(懸濁液)を得た。バインダー比は、エタノール溶液中の重合体(C1)の濃度を調節することにより制御した。

0063

[製造例13]
平均一次粒子径が0.02μmの酸化ジルコニウムを用い、バインダー比を0.4に変更し、ボールミルで均一に撹拌した後に分散処理を行わない以外は、製造例5と同様にして酸化ジルコニウムの平均二次粒子径が3μmの塗布液(D9)(懸濁液)を得た。
塗布液(D1)〜(D11)における酸化ジルコニウムの平均一次粒子径、平均二次粒子径およびバインダー比を表1に示す。

0064

0065

[例1]
2台の押出機、共押出用のフィルムダイ、および引き取り機を備えた装置を用いて、重合体(A1)からなる厚さ13μmの層(α1−1)と、重合体(B1)からなる厚さ25μmの層(β1−1)とを積層したフィルム−1を得た。また、単層押出用のフィルムダイを用いて重合体(B2)からなる厚さ30μmのフィルム−2(層(β1−2))と、重合体(B2)からなる厚さ45μmのフィルム−3(層(β1−3))を得た。また、1質量%のメチルセルロース水溶液に酸化ジルコニウムを分散させたペーストを、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETとも記す。)からなる副資材上にグラビアロール法にて20g/m2の乾燥質量となるように塗工し、乾燥して、酸化ジルコニウムを含有する塗膜(ガス解放層(β2−1))付きのフィルム−4を得た。
また、補強材としては、PTFEからなる100デニールの糸と、PETからなる30デニール6フィラメントの糸を用い、PTFE糸密度が27本/1インチ、PETの密度が53本/1インチとなるように平織りして織布−5を得た。

0066

次いで、一対の金属ロールとゴムライニングロールの積層ロールを用い、温度200℃にて、線圧40kg/cm、速度0.4m/分の条件で、フィルム−4、フィルム−2、織布−5、フィルム−3、フィルム−1をこの順に積層、一体化して複合膜を得た。積層の際には、フィルム−4は塗膜側をフィルム−2側に向け、フィルム−1は層(β1−1)をフィルム−3側に向けて、前記複合膜の積層構成を副資材/ガス解放層(β2−1)/層(β1−2)/織布/層(β1−3)/層(β1−1)/層(α1−1)とした。
DMSO/水酸化カリウム/水=15/23/62(質量比)の溶液に、得られた複合膜を95℃で30分間浸漬し、カルボン酸の前駆体基とスルホン酸の前駆体基をそれぞれ加水分解してカルボン酸カリウム塩、スルホン酸カリウム塩に変換した。さらに該複合膜を10質量%の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、水洗することによりナトリウム塩型に交換し、乾燥させた。
乾燥した複合膜の層(α1−1)の表面にスプレー法により塗布液(D1)を塗布し、該層(α1−1)の表面にガス解放層(α2−1)を形成した。次に、一対の金属ロールとゴムライニングロールの積層ロールを用い、温度135℃、線圧1.5kg/cm、速度0.04m/分の条件で、塗布液(D1)を塗布した複合膜を加熱し、さらに温度40℃のイオン交換水に浸漬して寸法安定化処理を行って、陰極側に層(α1−1)およびガス解放層(α2−1)を備えるフッ素系陽イオン交換膜を得た。

0067

[例2〜6]
使用する塗布液を表2に示す通りに変更した以外は、例1と同様にしてガス解放層(α2−1)の代わりにガス解放層(α2−2)〜(α2−6)を有するフッ素系陽イオン交換膜を得た。

0068

[例7〜11]
使用する塗布液を表2に示す通りに変更した以外は、例1と同様にしてガス解放層(α2−1)の代わりにガス解放層(γ−1)〜(γ−5)を有するフッ素系陽イオン交換膜を得た。

0069

評価方法
摩擦試験
摩擦試験機として、井元製作所社製の簡易型磨耗試験機IMC−1558−1型を用い、摩擦体としてはイノアクコポレーション社製の発泡ウレタンシート(密度:22kg/m3)を用いた。各例で得られたフッ素系陽イオン交換膜の陰極側のガス解放層の表面に摩擦体を接触させ、摩擦体に20gの荷重をかけて20往復させる摩擦試験を行った。摩擦試験の前後で、蛍光X線測定器を用いてフッ素系陽イオン交換膜の陰極側のガス解放層表面の無機物粒子(酸化ジルコニウム)の量を測定し、摩擦試験前の無機物粒子(酸化ジルコニウム)量に対する摩擦試験後の無機物粒子(酸化ジルコニウム)量の残存率を算出した。

0070

電解試験(ガス付着試験))
フッ素系陽イオン交換膜を、層(α1−1)側のガス解放層が陰極に面し、ガス解放層(β2−1)側が陽極に面するように電解槽内に配置して、塩化ナトリウム水溶液の電解を行った。電解槽としては有効通電面積が1.5dm2の電解槽を用い、陽極としてはペルレック電極社製のDSEを用い、陰極としてはクロリンエンジニアズ社製のラネーニッケルめっき陰極を用いた。また、塩化ナトリウム水溶液は200g/Lに調整しながら陽極室に供給し、陰極室から排出される水酸化ナトリウム濃度を32質量%に保ちながら、電流密度6kA/m2、温度を90℃にて電解した。電解開始から1日後の電圧CV−1)を測定し、その後、水/エタノール=95/5(質量比)の混合液に重合体(C1)を0.05質量%となるように溶解させた重合体溶液を、陰極供給水中に1時間で100mL添加した後に電圧(CV−2)を再度測定し、CV−1とCV−2の差(△CV)を算出した。ガス解放層に付着するガスが多いほど、△CVが大きくなる。

0071

フッ素系陽イオン交換膜の陰極側のガス解放層の形成に使用した塗布液の組成、電解試験の結果、および摩擦試験の結果を表2に示す。

0072

実施例

0073

表2に示すように、本発明の製造方法で得た例1〜6のフッ素系陽イオン交換膜では、電解試験での△CVが0mVであり、ガス解放層へのガス付着抑制効果が高く、また摩擦試験での酸化ジルコニウム残存率が高く、酸化ジルコニウムの脱落耐性にも優れていた。
一方、陰極側のガス解放層の形成にバインダー比が0.3超の塗布液(D7)、(D11)を用いた例7、11、および酸化ジルコニウムの平均二次粒子径が0.5μm未満の塗布液(D10)を用いた例10のフッ素系陽イオン交換膜では、電解試験での△CVが大きく、ガス解放層へのガス付着が充分に抑制されなかった。
陰極側のガス解放層の形成にバインダー比が0.15未満の塗布液(D8)を用いた例8、および酸化ジルコニウムの平均二次粒子径が1.5μm超の塗布液(D9)を用いた例9のフッ素系陽イオン交換膜では、摩擦試験における酸化ジルコニウム残存率が低く、酸化ジルコニウムの脱落耐性が劣っていた。

0074

本発明の製造方法で製造するフッ素系陽イオン交換膜は、塩化アルカリなどの電解用の陽イオン交換膜として広範な分野に使用される。

0075

なお、2013年12月25日に出願された日本特許出願2013−267208号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

0076

1フッ素系陽イオン交換膜
2複合膜
10ガス解放層(α2)
12 層(α1)
14 層(β1)
16 ガス解放層(β2)

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