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技術 熱間鍛造用鋼材およびその製造方法ならびにその鋼材を用いた熱間鍛造素形材の製造方法

出願人 新日鐵住金株式会社
発明者 田中康介大橋徹也今高秀樹
出願日 2014年12月10日 (6年2ヶ月経過) 出願番号 2015-524529
公開日 2017年3月23日 (3年11ヶ月経過) 公開番号 WO2015-098528
状態 特許登録済
技術分野 鋼の加工熱処理
主要キーワード 含有状況 鍛造部材 冷間鍛造部品 部品特性 材料損失 品質および信頼性 模擬試験 析出物中
関連する未来課題
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課題・解決手段

質量%で、C:0.1〜0.3%、Si:0.16〜0.50%、Mn:0.3〜1.0%、S:0.030%以下、Cr:0.8〜1.8%、Al:0.02〜0.06%、N:0.010〜0.025%、Cu:0〜0.50%およびNi:0〜0.50%と、残部がFeおよび不純物とからなり、不純物中のP、TiおよびOがそれぞれ、P:0.020%以下、Ti:0.005%以下およびO:0.0020%以下であり、さらに、E:0.012〜0.022の化学組成を有する熱間鍛造用鋼材であって、圧延方向と垂直な断面におけるミクロ組織において、マトリックスが、面積率で0〜10%のベイナイトと、フェライトおよびパーライトとで構成され、さらに、面積1μm2中において、円相当直径が10nm以上のAlNのうちで、円相当直径が10〜100nmのものが85%以上である熱間鍛造用鋼材。但し、Al/N≧1.93の場合:E=0.965×N、Al/N<1.93の場合:E=0.5×Al。この鋼材は、様々な温度域熱間鍛造しても、浸炭加熱の際にオーステナイト粒の粗大化を安定して防止することができる。

概要

背景

自動車産業機械歯車プーリシャフトなどの部品は、熱間鍛造または冷間鍛造により粗成形した後、切削加工を施し、その後、浸炭焼入れによって表面硬化して製造する場合が多い。しかし、浸炭工程時の加熱(以下、簡単のために「浸炭加熱」という。)で、焼入れ前オーステナイト粒が粗大化すると、疲労強度が低下したり、焼入れ時の熱処理歪が大きくなるなどの問題が生じやすい。

このように、オーステナイト粒が粗大化すると、歯車などの浸炭部品において、部品としての疲労強度が確保出来なかったり、熱処理歪増加に伴う騒音および振動の原因になったりして、部品特性劣化を引き起こす。このため、浸炭部品内に粗大粒を生じない鋼材が強く求められている。

一般に、熱間鍛造では、精密に成形するために、材料(鍛造素材)を約1250℃以上の高温に加熱して、軟化させてから加工が施されることが多い。しかしながら、こうした高温加熱は、スケール発生による材料損失型寿命の低下をきたしたり、ときには、品質の劣化などの問題を生じることがある。さらに、エネルギーコストが高くなることも避け難い。

したがって、近年、上述したような高温加熱による問題点を軽減して、浸炭部品の品質および信頼性の向上を図るとともに、エネルギーおよび材料の節約によるコスト低減環境改善などを目的に、鍛造素材の加熱温度を900〜1100℃として、従来よりも低い温度域で熱間鍛造することも試みられている。

一方、冷間鍛造部品に較べて熱間鍛造部品は、浸炭加熱時にオーステナイト粒が粗大化し難いと考えられてきたものの、上述のとおり様々な温度域で熱間鍛造されることが多くなったため、浸炭加熱時にオーステナイト粒が粗大化する熱間鍛造部品が増加している。

そのため、様々な温度域で熱間鍛造しても、浸炭加熱の際にオーステナイト粒の粗大化を安定して防止できる熱間鍛造用鋼材が強く求められ、例えば、次に示すような技術が開示されている。

特開2004−59969号公報に、質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.20〜2.0%、Al:0.015〜0.050%、N:0.010〜0.025%、Al/N:1.0〜3.0を含有し、さらに必要に応じて、Ni、CrおよびMoから選択される1種以上を含み、残部Feおよび不可避不純物からなり、浸炭前の状態においてベイナイト指数≦0.2またはベイナイト指数≧0.8を満足することを特徴とする結晶粒粗大化を抑制した浸炭用鋼素材が開示されている。

特開2006−257482号公報に、質量%で、Al:0.010〜0.060%、Nb:0.030〜0.070%、N:0.010〜0.030%、を含有し、さらに必要に応じて、C、Si、MnおよびCrを含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼を鋳造後、加熱温度を900〜1100℃、仕上げ温度を800〜950℃で製品圧延した鋼材を用いて、部品鍛造を行うことを特徴とする浸炭時の結晶粒粗大化防止特性に優れた鍛造部材が開示されている。

特開2007−162128号公報に、質量%で、C:0.05〜0.30%、Si:2.0%以下(0%を含まない)、Mn:1.0%以下(0%を含まない)、P:0.03%以下(0%を含む)、S:0.03%以下(0%を含む)、Cr:2.0%以下(0%を含まない)、Al:0.1%以下(0%を含まない)、Nb:0.05〜0.30%、Ti:0.05〜0.10%、N:0.0080%以下(0%を含まない)、O:0.0020%以下(0%を含む)を満たし、さらに必要に応じて、Cu、Ni、Mo、B、Ca、Pb、Bi、V、ZrおよびWから選択される1種以上を含み、残部は鉄および不可避不純物からなり、且つ鋼材中のNbおよびTiを含む複合窒化物最大粒径が20μm以下であると共に、粒径が1μm以上、20μm以下である当該窒化物が1mm2中に平均50個以下存在するものであることを特徴とする鍛造性と結晶粒粗大化防止特性に優れた肌焼鋼が開示されている。

特開2007−321211号公報に、鋼中成分は、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.2%以下、Al:0.01〜0.10%、N:0.003〜0.030%、Nbおよび/またはTi:0.010〜0.20%、さらに必要に応じて、Cr、Mo、Ni、Cu、B、Pb、Bi、Mg、Ca、Te、Zr、HfおよびVから選択される1種以上を含み、残部:Feおよび不可避不純物であり、フェライト中に、(1)析出物平均粒径(nm)/析出物の面積率<5.0×104(nm)、(2)析出物の平均粒径:6nm以上、(3)析出物の密度:20個/μm2以上および(4)(析出物中のNb量及び/又はTi量)/(鋼中のNb量及び/又はTi量)の比率:95%以上、の要件を満足する、Nb及び/又はTi含有析出物を含有し、上記Nb及び/又はTi含有析出物は、Nb炭化物Nb炭窒化物、Ti炭化物、Nb−Ti複合炭化物、及びNb−Ti複合炭窒化物よりなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする高温浸炭時の結晶粒粗大化防止特性に優れた熱間圧延材が開示されている。

特開2013−234354号公報に、C:0.1〜0.25%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.5〜1.5%、S:0.003〜0.05%、Cr:0.7〜2.0%、Mo:0.4%以下(0%を含む)、Al:0.02〜0.10%およびN:0.004〜0.025%、を含むとともに、さらに必要に応じて、Cu、Ni、B、TiおよびNbから選択される1種以上を含み、残部がFeと不純物からなり、不純物中のPおよびOがそれぞれ、P:0.025%以下およびO:0.002%以下である化学組成を有し、組織が、フェライトパーライトまたはフェライト・パーライト・ベイナイトからなり、フェライト分率が55〜80%、パーライト分率が20〜35%、ベイナイト分率が10%以下、かつ、0.50≦[100/(100−フェライト分率)]×C≦0.80で、更に、セメンタイト中のMn、CrおよびMoの合計濃度が2.8〜4.5%であることを特徴とする冷間鍛造用熱間圧延棒鋼または線材が開示されている。

概要

質量%で、C:0.1〜0.3%、Si:0.16〜0.50%、Mn:0.3〜1.0%、S:0.030%以下、Cr:0.8〜1.8%、Al:0.02〜0.06%、N:0.010〜0.025%、Cu:0〜0.50%およびNi:0〜0.50%と、残部がFeおよび不純物とからなり、不純物中のP、TiおよびOがそれぞれ、P:0.020%以下、Ti:0.005%以下およびO:0.0020%以下であり、さらに、E:0.012〜0.022の化学組成を有する熱間鍛造用鋼材であって、圧延方向と垂直な断面におけるミクロ組織において、マトリックスが、面積率で0〜10%のベイナイトと、フェライトおよびパーライトとで構成され、さらに、面積1μm2中において、円相当直径が10nm以上のAlNのうちで、円相当直径が10〜100nmのものが85%以上である熱間鍛造用鋼材。但し、Al/N≧1.93の場合:E=0.965×N、Al/N<1.93の場合:E=0.5×Al。この鋼材は、様々な温度域で熱間鍛造しても、浸炭加熱の際にオーステナイト粒の粗大化を安定して防止することができる。

目的

本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、その目的は、様々な温度域で熱間鍛造しても、浸炭加熱の際にオーステナイト粒の粗大化を安定して防止することが可能な熱間鍛造用鋼材およびその製造方法ならびにその鋼材を用いた熱間鍛造素形材を提供する

効果

実績

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牽制数
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請求項1

質量%で、C:0.1〜0.3%、Si:0.16〜0.50%、Mn:0.3〜1.0%、S:0.030%以下、Cr:0.8〜1.8%、Al:0.02〜0.06%、N:0.010〜0.025%、Cu:0〜0.50%およびNi:0〜0.50%と、残部がFeおよび不純物とからなり、不純物中のP、TiおよびOがそれぞれ、P:0.020%以下、Ti:0.005%以下およびO:0.0020%以下であり、さらに、下記の(i)式または(ii)式で表わされるEの値が0.012〜0.022の範囲にある化学組成を有する熱間鍛造用鋼材であって、圧延方向と垂直な断面におけるミクロ組織において、マトリックスが、面積率で0〜10%のベイナイトと、フェライトおよびパーライトとで構成され、さらに、面積1μm2中において、円相当直径が10nm以上のAlNのうちで、円相当直径が10〜100nmのものが85%以上である、熱間鍛造用鋼材。Al/N≧1.93の場合:E=0.965×N・・・・・(i)、Al/N<1.93の場合:E=0.5×Al・・・・・(ii)。上記の(i)式および(ii)式における元素記号は、その元素の質量%での含有量を意味する。

請求項2

前記化学組成が、質量%で、Cu:0.05〜0.50%およびNi:0.05〜0.50%から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載の熱間鍛造用鋼材。

請求項3

請求項1または2に記載の化学組成を有する鋼を鋳造して得た鋳片または鋼塊を、1250℃以上の温度で50分以上加熱してから分塊圧延して鋼片とし、次いで、その鋼片を下記の(iii)式で表わされるT℃以下かつ900℃以上の温度で60分以上加熱した後、仕上げ温度を800℃以上として熱間圧延し、熱間圧延終了後2.0℃/秒以下の冷却速度で600℃まで冷却する、熱間鍛造用鋼材の製造方法。T=−7397/[log{(E12−E22)/1.93}−1.71]−273・・・・・(iii)。ただし、(iii)式において、E1=(0.5×Al+0.965×N−E)・・・・・(iv)、E2=(0.5×Al−0.965×N)・・・・・(v)であり、また、(iv)式におけるEは、Al/N≧1.93の場合:E=0.965×N・・・(i)、Al/N<1.93の場合:E=0.5×Al・・・(ii)である。なお、各式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。

請求項4

請求項1または2に記載の熱間鍛造用鋼材を、900〜1250℃で加熱した後、900〜1100℃の温度域にて鍛造して得られる、熱間鍛造素形材

技術分野

0001

本発明は、熱間鍛造用鋼材およびその製造方法ならびにその鋼材を用いた熱間鍛造素形材に関する。

背景技術

0002

自動車産業機械歯車プーリシャフトなどの部品は、熱間鍛造または冷間鍛造により粗成形した後、切削加工を施し、その後、浸炭焼入れによって表面硬化して製造する場合が多い。しかし、浸炭工程時の加熱(以下、簡単のために「浸炭加熱」という。)で、焼入れ前オーステナイト粒が粗大化すると、疲労強度が低下したり、焼入れ時の熱処理歪が大きくなるなどの問題が生じやすい。

0003

このように、オーステナイト粒が粗大化すると、歯車などの浸炭部品において、部品としての疲労強度が確保出来なかったり、熱処理歪増加に伴う騒音および振動の原因になったりして、部品特性劣化を引き起こす。このため、浸炭部品内に粗大粒を生じない鋼材が強く求められている。

0004

一般に、熱間鍛造では、精密に成形するために、材料(鍛造素材)を約1250℃以上の高温に加熱して、軟化させてから加工が施されることが多い。しかしながら、こうした高温加熱は、スケール発生による材料損失型寿命の低下をきたしたり、ときには、品質の劣化などの問題を生じることがある。さらに、エネルギーコストが高くなることも避け難い。

0005

したがって、近年、上述したような高温加熱による問題点を軽減して、浸炭部品の品質および信頼性の向上を図るとともに、エネルギーおよび材料の節約によるコスト低減環境改善などを目的に、鍛造素材の加熱温度を900〜1100℃として、従来よりも低い温度域で熱間鍛造することも試みられている。

0006

一方、冷間鍛造部品に較べて熱間鍛造部品は、浸炭加熱時にオーステナイト粒が粗大化し難いと考えられてきたものの、上述のとおり様々な温度域で熱間鍛造されることが多くなったため、浸炭加熱時にオーステナイト粒が粗大化する熱間鍛造部品が増加している。

0007

そのため、様々な温度域で熱間鍛造しても、浸炭加熱の際にオーステナイト粒の粗大化を安定して防止できる熱間鍛造用鋼材が強く求められ、例えば、次に示すような技術が開示されている。

0008

特開2004−59969号公報に、質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.20〜2.0%、Al:0.015〜0.050%、N:0.010〜0.025%、Al/N:1.0〜3.0を含有し、さらに必要に応じて、Ni、CrおよびMoから選択される1種以上を含み、残部Feおよび不可避不純物からなり、浸炭前の状態においてベイナイト指数≦0.2またはベイナイト指数≧0.8を満足することを特徴とする結晶粒粗大化を抑制した浸炭用鋼素材が開示されている。

0009

特開2006−257482号公報に、質量%で、Al:0.010〜0.060%、Nb:0.030〜0.070%、N:0.010〜0.030%、を含有し、さらに必要に応じて、C、Si、MnおよびCrを含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼を鋳造後、加熱温度を900〜1100℃、仕上げ温度を800〜950℃で製品圧延した鋼材を用いて、部品鍛造を行うことを特徴とする浸炭時の結晶粒粗大化防止特性に優れた鍛造部材が開示されている。

0010

特開2007−162128号公報に、質量%で、C:0.05〜0.30%、Si:2.0%以下(0%を含まない)、Mn:1.0%以下(0%を含まない)、P:0.03%以下(0%を含む)、S:0.03%以下(0%を含む)、Cr:2.0%以下(0%を含まない)、Al:0.1%以下(0%を含まない)、Nb:0.05〜0.30%、Ti:0.05〜0.10%、N:0.0080%以下(0%を含まない)、O:0.0020%以下(0%を含む)を満たし、さらに必要に応じて、Cu、Ni、Mo、B、Ca、Pb、Bi、V、ZrおよびWから選択される1種以上を含み、残部は鉄および不可避不純物からなり、且つ鋼材中のNbおよびTiを含む複合窒化物最大粒径が20μm以下であると共に、粒径が1μm以上、20μm以下である当該窒化物が1mm2中に平均50個以下存在するものであることを特徴とする鍛造性と結晶粒粗大化防止特性に優れた肌焼鋼が開示されている。

0011

特開2007−321211号公報に、鋼中成分は、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.2%以下、Al:0.01〜0.10%、N:0.003〜0.030%、Nbおよび/またはTi:0.010〜0.20%、さらに必要に応じて、Cr、Mo、Ni、Cu、B、Pb、Bi、Mg、Ca、Te、Zr、HfおよびVから選択される1種以上を含み、残部:Feおよび不可避不純物であり、フェライト中に、(1)析出物平均粒径(nm)/析出物の面積率<5.0×104(nm)、(2)析出物の平均粒径:6nm以上、(3)析出物の密度:20個/μm2以上および(4)(析出物中のNb量及び/又はTi量)/(鋼中のNb量及び/又はTi量)の比率:95%以上、の要件を満足する、Nb及び/又はTi含有析出物を含有し、上記Nb及び/又はTi含有析出物は、Nb炭化物Nb炭窒化物、Ti炭化物、Nb−Ti複合炭化物、及びNb−Ti複合炭窒化物よりなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする高温浸炭時の結晶粒粗大化防止特性に優れた熱間圧延材が開示されている。

0012

特開2013−234354号公報に、C:0.1〜0.25%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.5〜1.5%、S:0.003〜0.05%、Cr:0.7〜2.0%、Mo:0.4%以下(0%を含む)、Al:0.02〜0.10%およびN:0.004〜0.025%、を含むとともに、さらに必要に応じて、Cu、Ni、B、TiおよびNbから選択される1種以上を含み、残部がFeと不純物からなり、不純物中のPおよびOがそれぞれ、P:0.025%以下およびO:0.002%以下である化学組成を有し、組織が、フェライトパーライトまたはフェライト・パーライト・ベイナイトからなり、フェライト分率が55〜80%、パーライト分率が20〜35%、ベイナイト分率が10%以下、かつ、0.50≦[100/(100−フェライト分率)]×C≦0.80で、更に、セメンタイト中のMn、CrおよびMoの合計濃度が2.8〜4.5%であることを特徴とする冷間鍛造用熱間圧延棒鋼または線材が開示されている。

先行技術

0013

特開2004−59969号公報
特開2006−257482号公報
特開2007−162128号公報
特開2007−321211号公報
特開2013−234354号公報

発明が解決しようとする課題

0014

特開2004−59969号公報で開示された技術は、様々な温度域で熱間鍛造された場合に、浸炭加熱時のオーステナイト粒粗大化を必ずしも安定して防止できるというものではない。すなわち、特開2004−59969号公報で開示された浸炭用鋼素材で規定されているのは、浸炭加熱前の状態における、換言すれば、熱間加工後の状態におけるAl/Nバランスおよびベイナイト指数であって、熱間加工の加熱前の鋼材の状態ではない。そして、この特開2004−59969号公報には、実施例で浸炭模擬試験を行う前の熱間据え込み(熱間鍛造)に供したφ8×12mmの試験片素材となるφ30の丸棒を熱間加工した具体的な方法として、加熱温度が1200℃であることが記載されているだけである。つまり、熱間据え込みに際して、加熱前のミクロ組織については全く記載がなく、加熱温度を900〜1100℃として従来よりも低い温度域で熱間鍛造する場合については検討されていない。このため、特開2004−59969号公報の表2に示されているように、例えば、鋼材A〜Dを1200℃に加熱した後、1000℃という同じ温度で熱間据え込み(熱間鍛造)しても、浸炭模擬試験で安定した結晶粒(オーステナイト粒)の粗大化防止が達成できていないし、同じ鋼材Aの場合であっても、900〜1250℃の幅広い温度域に加熱して熱間据え込みした場合、必ずしも浸炭時のオーステナイト粒粗大化を安定して防止できない。

0015

特開2006−257482号公報で開示された技術も、様々な温度域で熱間鍛造された場合に、浸炭加熱時のオーステナイト粒粗大化を必ずしも安定して防止できるというものではない。すなわち、特開2006−257482号公報で開示された技術の基本思想は、鋼材の圧延加熱温度を900〜1100℃にして結晶粒(オーステナイト粒)の粗大化防止に有効な、微細なAlNおよびNb(C、N)析出物を、マトリックスに固溶させないことにあるが、圧延後のミクロ組織については具体的な記載がない。一般的に、圧延加熱前の段階で粗大な析出物がマトリックス中に固溶せずに残っておれば、熱間圧延時の加熱によって析出物の凝集や更なる粗大化が生じやすい。このため、特開2006−257482号公報に規定されているように、圧延加熱温度を900〜1100℃として熱間圧延して得られた鋼材のマトリックス中には、必ずしも微細なAlNおよびNb(C、N)析出物が析出しているとは限らない。したがって、その後の鍛造時の加熱温度が900〜1100℃の場合には、鋼材中に粗大なAlNは固溶せず残存したままとなっている可能性が極めて高く、必ずしも浸炭時のオーステナイト粒粗大化を安定して防止できない。

0016

特開2007−162128号公報で開示された技術も、様々な温度域で熱間鍛造された場合に、浸炭加熱時のオーステナイト粒粗大化を必ずしも安定して防止できるというものではない。すなわち、特開2007−162128号公報で開示された技術の基本思想は、鋼材中のNbおよびTiを含む複合窒化物の形態およびその個数を特定することであり、加えてTiとNbの最適化により従来よりも多量の析出物を生成させることを検討している。しかしながら、Nの含有量は0.0080%以下としている。鋼材中に析出する窒化物の最大析出量は、Nの含有量によって制限される。したがって、特開2007−162128号公報で規定しているように、N:0.0080%以下とし、かつ鋼材中のNbおよびTiを含む複合窒化物の粒径が1μm以上、20μm以下である当該窒化物が1mm2中に平均50個以下と制限した場合、様々な温度域で熱間鍛造された後、必ずしも浸炭時のオーステナイト粒粗大化を防止できない。

0017

特開2007−321211号公報で開示された技術も、様々な温度域で熱間鍛造された場合に、浸炭加熱時のオーステナイト粒粗大化を必ずしも安定して防止できるというものではない。すなわち、特開2007−321211号公報で開示された熱間圧延材では、Nb及び/又はTi含有析出物のサイズ、面積率、密度、および析出量を規定しているが、ミクロ組織について検討されていない。熱間加工して製造された鍛造素材のミクロ組織の不均一性は、熱間鍛造を行った後も傾向としては引き継がれる。したがって、ミクロ組織中に例えばベイナイトが混入すると、必ずしも浸炭時のオーステナイト粒粗大化を防止できない。加えて、硬さ増加に伴って熱間鍛造前シャー切断等の加工性が劣化する。

0018

本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、その目的は、様々な温度域で熱間鍛造しても、浸炭加熱の際にオーステナイト粒の粗大化を安定して防止することが可能な熱間鍛造用鋼材およびその製造方法ならびにその鋼材を用いた熱間鍛造素形材を提供することである。より詳しくは、本発明の目的は、様々な温度域で、特に、900〜1250℃で加熱後に、熱間鍛造しても、浸炭加熱の際に、特に、950℃以下の温度で3時間加熱した際に、オーステナイト粒の粗大化を安定して防止でき、熱間鍛造によって粗成形される歯車、CVT用プーリを始めとする自動車のトランスミッションなどの部品の素材として好適な、熱間鍛造用鋼材およびその製造方法ならびにその鋼材を用いた熱間鍛造素形材を提供することである。

0019

なお、本発明では、JIS G 0551(2013)に規定の、粒度番号が5番以下のオーステナイト結晶粒面積10mm2内に2個以上あった場合に、オーステナイト粒が粗大化したものとする。

課題を解決するための手段

0020

上記した課題を解決するために、本発明者らは、種々の検討を行った。その結果、下記(a)〜(f)の知見を得た。

0021

(a)熱間鍛造で粗成形する場合、材料(鍛造素材)を一般的な熱間鍛造加熱温度である約1250℃以上の高温に加熱すれば、熱間鍛造の加熱前の状態に関係なく、マトリックスに固溶しないで残るAlN(未固溶のAlN)がない、換言すれば、AlNはマトリックスに固溶しているので、浸炭加熱の際にAlNが微細分散析出してピン止め効果が発揮される。このため、通常の920〜950℃程度の浸炭温度域では、オーステナイト粒は粗大化し難い。なお、以下の説明においては、鍛造素材を棒鋼圧延によって製造する場合を想定して、上記の「熱間鍛造の加熱前」を「棒鋼圧延後」と称し、例えば、「熱間鍛造の加熱前の段階」を「棒鋼圧延後の段階」などということがある。

0022

(b)しかしながら、熱間鍛造で粗成形するに際して、鍛造素材の加熱温度を900〜1100℃として、従来よりも低い温度域で熱間鍛造する場合には、棒鋼圧延後の段階で粗大なAlNがマトリックス中に固溶せず残る場合がある。このような状態で熱間鍛造を行うと、熱間鍛造前の加熱時に、残っているAlNが凝集し、そのAlNが更なる粗大化を生じやすくなる。その結果、浸炭加熱の際にAlNのピン止め効果が極めて不十分となるので、上記920〜950℃程度の浸炭温度域でも、オーステイト粒の粗大化が生じることを避け難い。

0023

(c)したがって、様々な温度域で熱間鍛造しても、浸炭加熱の際にオーステナイト粒の粗大化を抑制するためには、熱間鍛造の加熱前の段階、つまり、棒鋼圧延後の段階から、浸炭用途に適した鋼材として造り込んでおくことが必要である。なお、棒鋼圧延後の段階で、ピン止め粒子であるAlNを多量、かつ微細に分散させることが浸炭加熱時のオーステナイト粒の粗大化防止に必要であるものの、鋼中に含有されるAlおよびNの量によって、AlNの最大析出量が異なってくる。このため、AlおよびNの含有量を特定の範囲に制限して、AlNの適正量を鋼中に析出させるとともに鋼中のAlNの析出・分散状態を制御する必要がある。具体的には、式中の元素記号を、その元素の質量%での含有量として、下記の(i)式または(ii)式で表わされるEの値が0.012〜0.022の範囲を満たすようにし、さらに、AlNのサイズおよび分散状態を制御することによってオーステナイト粒の粗大化を安定して防止することができる。
Al/N≧1.93の場合:E=0.965×N・・・・・(i)、
Al/N<1.93の場合:E=0.5×Al・・・・・(ii)。

0024

(d)量産工程として一般的な、大断面での連続鋳造後の鋳片には、粗大なAlNが生成しており、これが棒鋼圧延後の段階で残存していると、浸炭加熱時にオーステナイト粒が粗大化しやすい。したがって、浸炭加熱時に安定してオーステナイト粒の粗大化を抑制するためには、鋳片の加熱、つまり分塊圧延時の加熱を1250℃以上とし、一旦鋼中にAlNを固溶させることが好ましい。

0025

(e)棒鋼圧延後の段階で、AlNを微細分散させて、浸炭加熱時にオーステナイト粒の粗大化を安定して防止するためには、棒鋼圧延前の鋼片加熱温度を、下記の(iii)式で表わされるT℃以下にすることが好ましい。
T=−7397/[log{(E12−E22)/1.93}−1.71]−273・・・・・(iii)。
ただし、(iii)式において、
E1=(0.5×Al+0.965×N−E)・・・・・(iv)、
E2=(0.5×Al−0.965×N)・・・・・(v)であり、
また、(iv)式におけるEは、
Al/N≧1.93の場合:E=0.965×N・・・・・(i)、
Al/N<1.93の場合:E=0.5×Al・・・・・(ii)である。
なお、各式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。

0026

(f)棒鋼圧延前の鋼片加熱温度を、(e)項で述べたT℃以下にすれば、AlNが微細分散するだけでなく、棒鋼圧延後の組織が、容易にベイナイトの混入の少ないフェライトとパーライトの混合組織になる。なお、この組織は、比較的軟質であり、後のシャー切断等の加工性の確保に有益である。

0027

本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記に示す熱間鍛造用鋼材およびその製造方法ならびにその鋼材を用いた熱間鍛造素形材にある。

0028

(1)質量%で、C:0.1〜0.3%、Si:0.16〜0.50%、Mn:0.3〜1.0%、S:0.030%以下、Cr:0.8〜1.8%、Al:0.02〜0.06%、N:0.010〜0.025%、Cu:0〜0.50%およびNi:0〜0.50%と、
残部がFeおよび不純物とからなり、
不純物中のP、TiおよびOがそれぞれ、P:0.020%以下、Ti:0.005%以下およびO:0.0020%以下であり、
さらに、下記の(i)式または(ii)式で表わされるEの値が0.012〜0.022の範囲にある化学組成を有する熱間鍛造用鋼材であって、
圧延方向と垂直な断面におけるミクロ組織において、マトリックスが、面積率で0〜10%のベイナイトと、フェライトおよびパーライトとで構成され、さらに、面積1μm2中において、円相当直径が10nm以上のAlNのうちで、円相当直径が10〜100nmのものが85%以上である、熱間鍛造用鋼材。
Al/N≧1.93の場合:E=0.965×N・・・・・(i)、
Al/N<1.93の場合:E=0.5×Al・・・・・(ii)。
上記の(i)式および(ii)式における元素記号は、その元素の質量%での含有量を意味する。

0029

(2)上記化学組成が、質量%で、Cu:0.05〜0.50%およびNi:0.05〜0.50%から選択される1種以上を含有する、上記(1)に記載の熱間鍛造用鋼材。

0030

(3)上記(1)または(2)に記載の化学組成を有する鋼を鋳造して得た鋳片または鋼塊を、1250℃以上の温度で50分以上加熱してから分塊圧延して鋼片とし、次いで、その鋼片を下記の(iii)式で表わされるT℃以下かつ900℃以上の温度で60分以上加熱した後、仕上げ温度を800℃以上として熱間圧延し、熱間圧延終了後2.0℃/秒以下の冷却速度で600℃まで冷却する、熱間鍛造用鋼材の製造方法。
T=−7397/[log{(E12−E22)/1.93}−1.71]−273・・・・・(iii)。
ただし、(iii)式において、
E1=(0.5×Al+0.965×N−E)・・・・・(iv)、
E2=(0.5×Al−0.965×N)・・・・・(v)であり、
また、(iv)式におけるEは、
Al/N≧1.93の場合:E=0.965×N・・・(i)、
Al/N<1.93の場合:E=0.5×Al・・・(ii)である。
なお、各式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。

0031

(4)上記(1)または(2)に記載の熱間鍛造用鋼材を、900〜1250℃で加熱した後、900〜1100℃の温度域にて鍛造して得られる、熱間鍛造素形材。

0032

残部としての「Feおよび不純物」における「不純物」とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石スクラップ、または製造環境などから混入するものを指す。

発明の効果

0033

本発明の熱間鍛造用鋼材は、様々な温度域、特に、900〜1250℃の幅広い温度域で加熱後に熱間鍛造しても、浸炭加熱の際に、特に、950℃以下の温度で3時間加熱した際に、オーステナイト粒の粗大化を安定して防止できるので、熱間鍛造によって粗成形される歯車、CVT用プーリを始めとする自動車のトランスミッションなどの部品の素材として好適に用いることができる。

0034

また、本発明に係る熱間鍛造用鋼材は、本発明の製造方法によって容易に得ることができる。

0035

以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、以下の説明における各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。

0036

(A)化学組成:
C:0.1〜0.3%
Cは、浸炭焼入れしたときの部品の芯部強度を確保するために必須の元素であり、その含有量が0.1%未満では上記の効果が不十分である。一方、Cの含有量が多くなると、熱間鍛造後被削性の低下が顕著になる。したがって、Cの含有量を0.1〜0.3%とした。なお、Cの含有量は、0.18%以上、0.25%以下であることが好ましい。

0037

Si:0.16〜0.50%
Siは、焼入れ性を向上させる作用および脱酸作用を有する。また、Siは、焼戻し軟化抵抗を高める効果が大きく、さらに、疲労強度の向上にも効果を有する元素である。Siの含有量が0.16%未満では上記の効果が不十分である。しかしながら、Siは酸化性の元素であるため、その含有量が多くなると、浸炭ガス中に含まれる微量のH2OまたはCO2によってSiが選択酸化され、鋼表面Si酸化物が生成されるので、浸炭異常層の深さが大きくなる。そして、浸炭異常層の深さが大きくなると、疲労強度の低下を招く。さらに、Siの含有量が多くなると、熱間鍛造後の被削性の低下が顕著になる。したがって、Siの含有量を0.16〜0.50%とした。なお、Siの含有量は、0.17%以上、0.35%以下であることが好ましい。

0038

Mn:0.3〜1.0%
Mnは、焼入れ性、焼戻し軟化抵抗を高める効果が大きく、また、疲労強度の向上にも効果を有する元素である。しかしながら、Mnの含有量が0.3%未満では上記の効果が不十分である。一方、Mnの含有量が多くなると、疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、熱間鍛造後の被削性の低下が顕著になる。したがって、Mnの含有量を0.3〜1.0%とした。なお、Mnの含有量は、0.5%以上、0.95%以下であることが好ましい。

0039

S:0.030%以下
Sは、不純物として含有される。また、Sは積極的に含有させると、Mnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させる元素である。しかし、Sの含有量が多くなると、粗大なMnSを生成しやすくなり、熱間鍛造性および疲労強度を低下させる。したがって、Sの含有量を0.030%以下とした。Sの含有量は、0.025%以下であることが好ましい。

0040

一方、上記したSの効果を安定して得るためには、含有させる場合のSの量は、0.005%以上とすることが好ましい。

0041

Cr:0.8〜1.8%
Crは、焼入れ性、焼戻し軟化抵抗を高める効果が大きく、また、疲労強度の向上にも効果を有する元素である。その含有量が0.8%未満では上記の効果が不十分である。一方、Crの含有量が多くなると、疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、熱間鍛造後の被削性の低下が顕著になる。また、Siと同様にCrは酸化性の元素であるため、その含有量が多くなると浸炭異常層の深さが深くなり、曲げ疲労強度の低下を招く。したがって、Crの含有量を0.8〜1.8%とした。なお、Crの含有量は、0.9%以上、1.7%以下であることが好ましい。

0042

Al:0.02〜0.06%
Alは、脱酸作用を有すると同時に、鋼中のNと結合してAlNとして析出しやすく、浸炭加熱時のオーステナイト粒粗大化防止に有効な元素である。しかしながら、Al含有量が0.02%未満ではその効果が十分ではない。一方で、Alの含有量が過剰になると、AlNが凝集しやすくなるので、オーステナイト粒粗大化防止に有効な微細な析出物が減少してしまい、後述の「950℃以下の温度で3時間加熱した場合に、オーステナイト粒が粗大化しないこと」という、本発明で目標とするオーステナイト粒粗大化防止効果が得られない。加えて、Al含有量が多いと、硬質で粗大なAl2O3形成による被削性の低下をきたし、疲労強度も低下する。したがって、Alの含有量を0.02〜0.06%とした。なお、Alの含有量は、0.025%以上、0.05%以下であることが好ましい。

0043

N:0.010〜0.025%
Nは、Alと結合して、AlNを析出するために必要な元素であり、浸炭加熱時のオーステナイト粒粗大化防止効果を有する。しかしながら、Nの含有量が0.010%未満では、その効果が十分ではない。一方、Nの含有量が過剰になると、AlNが凝集しやすくなるので、オーステナイト粒粗大化防止に有効な微細な析出物が減少してしまい、上記した本発明で目標とするオーステナイト粒粗大化防止効果が得られない。したがって、Nの含有量を0.010〜0.025%とした。なお、Nの含有量は0.012%以上、0.023%以下であることが好ましい。

0044

Cu:0〜0.50%
Cuは、焼入れ性を高める効果があり、より疲労強度を高めるために有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Cuの含有量が多くなると、焼入れ性の向上による疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、熱間鍛造後の被削性の低下が顕著になる。したがって、含有させる場合のCuの量を0.50%以下とした。なお、含有させる場合のCuの量は0.30%以下であることが好ましい。

0045

一方、上記したCuの効果を安定して得るためには、含有させる場合のCuの量は、0.05%以上とすることが好ましい。

0046

Ni:0〜0.50%
Niは、焼入れ性を高める効果があり、より疲労強度を高めるために有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Niの含有量が多くなると、焼入れ性の向上による疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、熱間鍛造後の被削性の低下が顕著になる。したがって、含有させる場合のNiの量を0.50%以下とした。なお、含有させる場合のNiの量は0.30%以下であることが好ましい。

0047

一方、上記したNiの効果を安定して得るためには、含有させる場合のNiの量は、0.05%以上とすることが好ましい。

0048

上記のCuおよびNiは、いずれか1種のみ、または、2種の複合で含有させることができる。なお、2種を複合含有させる場合のこれらの元素の合計量は、0.8%以下とすることが好ましい。

0049

本発明の熱間鍛造用鋼材は、上記したCからNiまでの元素と、残部がFeおよび不純物とからなり、不純物中のP、TiおよびOがそれぞれ、P:0.020%以下、Ti:0.005%以下およびO:0.0020%以下であり、さらに、上記の(i)式または(ii)式で表わされるEの値が0.012〜0.022の範囲にある化学組成を有するものである。なお、既に述べたように、「Feおよび不純物」における「不純物」とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップまたは製造環境などから混入するものを指す。

0050

以下、不純物中のP、TiおよびOについて説明する。

0051

P:0.020%以下
Pは、鋼に含有される不純物であり、結晶粒界偏析して鋼を脆化させ、疲労強度を低下させる。したがって、不純物中のPの含有量を0.020%以下とした。なお、不純物中のPの含有量は0.015%以下とすることが好ましい。

0052

Ti:0.005%以下
Tiは、Nと結合して硬質で粗大な非金属介在物であるTiNを形成しやすく、疲労強度を低下させてしまう。さらに、熱間鍛造性および被削性も低下させる。したがって、不純物中のTiの含有量を0.005%以下とした。なお、不純物元素としてのTiの含有量は、0.003%以下とすることが望ましい。

0053

O:0.0020%以下
O(酸素)は、鋼中のAlと結合して硬質な酸化物系介在物であるAl2O3を形成しやすく、被削性を低下させ、疲労強度の低下も招く。したがって、不純物中のOの含有量を0.0020%以下とした。なお、不純物元素としてのOの含有量は、0.0015%以下とすることが望ましい。

0054

0.012≦E≦0.022
本発明に係る熱間鍛造用鋼材は、
Al/N≧1.93の場合:E=0.965×N・・・・・(i)
または、
Al/N<1.93の場合:E=0.5×Al・・・・・(ii)
の式で表わされるEの値が、
0.012≦E≦0.022
を満たす化学組成でなければならない。以下、このことについて説明する。なお、既に述べたとおり、上記の(i)式および(ii)式における元素記号は、その元素の質量%での含有量を意味する。

0055

上記のEは、オーステナイト粒の粗大化防止に有効なAlNとして析出するAlの適正量を求めたものである。AlとNは、1:1の原子比で結合してAlNを形成する。Alの原子量は26.98、Nの原子量は14である。ここで、AlNとして析出可能なAlの最大析出量(以下、Alm)は、化学量論比より、以下の式によって求めることができる。
Nに比べてAlが過剰な場合、すなわちAl/N≧26.98/14=1.93の場合:Alm=(Al原子量÷N原子量)×N
すなわち、析出可能なAlNは、鋼中に含まれるNの量によって制限される。
一方、Alに比べてNが過剰な場合、すなわちAl/N<1.93の場合:Alm=Al
すなわち、析出可能なAlNは、鋼中に含まれるAlの量によって制限される。

0056

一方で、熱間鍛造用鋼材は、前述したとおり、圧延、鍛造、更には浸炭という幾度の加熱工程を経るため、AlNはその加熱温度に応じた量だけ鋼中に固溶する。したがって、オーステナイト粒の粗大化防止に必要なAlNを鋼中に確実に析出させるためには、AlとNの含有量を、浸炭加熱時に固溶してもなお十分な量のAlNが析出するだけの適正な値に制御する必要がある。

0057

そこで、本発明者らは、熱間鍛造用鋼材における浸炭時のオーステナイト粒の粗大化防止に有効なAlNとして析出するAl量について、調査・研究を重ねた。その結果、鋼中のAlおよびNの含有量を制御し、AlNとして析出可能なAl最大析出量の半分の量(E)を、適正な値とすることで、オーステナイト粒の粗大化防止に有効であることを見出した。その思想のもと、Eは以下の式によって求めた。
Al/N≧1.93の場合:E=0.5×Alm=0.965×N・・・・・(i)
または、
Al/N<1.93の場合:E=0.5×Alm=0.5×Al・・・・・(ii)
ここで、オーステナイト粒の粗大化を安定して抑制するためにはAlNを多量、かつ微細に分散させる必要があり、また、その量は多いほど結晶粒界のピン止めのために好ましい。

0058

Eの値が小さく0.012未満の場合には、鋼中に析出してピン止めに有効なAlN量が少なくなるためオーステナイト粒の粗大化防止が不十分となる。一方で、Eの値が大き過ぎて0.022を超える場合には、鋼中に析出し得るAlN量が多くなり過ぎることにより、AlNが凝集・粗大化しやすくなり、ピン止め効果が小さくなるためオーステナイト粒の粗大化防止が不十分となる。したがって、Eの値を0.012〜0.022の範囲とすることで、オーステナイト粒の粗大化を安定して防止することができる。

0059

(B)ミクロ組織:
前項で述べた化学組成を有する本発明の熱間鍛造用鋼材は、圧延方向と垂直な断面(以下、「横断面」ということがある。)におけるミクロ組織において、マトリックスが、面積率で0〜10%のベイナイトと、フェライトおよびパーライトとで構成され、さらに、面積1μm2中において、円相当直径が10nm以上のAlNのうちで、円相当直径が10〜100nmのものが85%以上でなければならない。

0060

熱間加工して製造された鍛造素材のミクロ組織の不均一性は、歯車などの部品に粗成形するために熱間鍛造を行った後も傾向としては引き継がれる。

0061

このため、横断面におけるミクロ組織を適正なものにする必要がある。そして、横断面におけるミクロ組織において、マトリックスが、上記した面積率で0〜10%のベイナイトと、フェライトおよびパーライトとで構成され、さらに、面積1μm2中において、円相当直径が10nm以上のAlNのうちで、円相当直径が10〜100nmのものが85%以上である場合に、浸炭加熱時のオーステナイト粒の粗大化を防止することができる。

0062

マトリックスにマルテンサイトを含む場合には、マルテンサイトが硬質で延性が低いことに起因して、例えば、熱間鍛造用鋼材の運搬時に割れが発生しやすくなるとともに、熱間鍛造前のシャー切断等の加工性が劣化する。

0063

また、マトリックスにベイナイトが混入すると、浸炭加熱時の粗大オーステナイト粒発生の原因になるとともに、硬さの上昇に伴って熱間鍛造前のシャー切断等の加工性が劣化し、特に、ベイナイトが面積率で10%を超えるとその傾向が著しくなる。

0064

なお、円相当直径で10nm未満のAlNは、浸炭加熱時に容易に固溶・消失するため、ピン止め粒子としての効果が極めて小さい。一方、粗大なAlNは、結晶粒界のピン止め粒子としての効果が小さいうえに、浸炭加熱時に成長・粗大化する傾向があり、特に、円相当直径で100nmを超えるAlNは、浸炭加熱時に成長・粗大化するため、ピン止め粒子としての効果が小さい。そして、横断面の面積1μm2中において、円相当直径が10nm以上のAlNのうちで、円相当直径が10〜100nmのものが85%以上の場合に、浸炭加熱時に安定してオーステナイト粒の粗大化を防止することができる。横断面の面積1μm2中において、円相当直径が10nm以上のAlNのうちで、円相当直径が10〜100nmのものは90%以上であることが好ましく、100%であれば極めて好ましい。

0065

上記ミクロ組織におけるマトリックスの「相」は、例えば、熱間鍛造用鋼材の圧延方向(長手方向)に垂直、かつ、中心部を含む断面を切り出した後、鏡面研磨してナイタールで腐食した試験片について、倍率400倍で、視野の大きさを250μm×250μmとして、表面を除いてランダムに各5視野観察することによって同定することができる。また、ベイナイトの面積率は、例えば、得られたミクロ組織写真から画像解析ソフトを用いて、各視野におけるベイナイトの面積率を算出し、5視野の算術平均値として求めることができる。

0066

また、圧延方向と垂直な断面(横断面)の面積1μm2中において、円相当直径が10nm以上のAlNのうちで、円相当直径が10〜100nmのものの割合は、例えば、横断面から、一般的な方法で抽出レプリカ試料を作製して、エネルギー分散X線検出器(以下、「EDS」という。)を装備した透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」という。)を使用して、EDSによる元素分析から析出物のAlの含有状況、形状を確認し、倍率を30000倍、1視野あたりの面積を6.4μm2とし、表面を除いてランダムに各5視野観察して、円相当直径が、10〜100nmのAlNと100nm以上であるAlNの個数をそれぞれ数え、これを基に、面積1μm2当たりの割合に換算して求めることができる。この際、個々のAlNの寸法は、画像解析によって円相当直径に換算すればよい。ただし、パーライトおよびベイナイトの領域は、セメンタイトが多量に抽出されて、AlNの寸法および個数の測定が難しいため、観察は、フェライトが面積率で2/3以上を占める視野で行うことが好ましい。

0067

(C)製造方法:
本発明の熱間鍛造用鋼材は、例えば、上記(A)項で述べた化学組成を有する鋼を鋳造して得た鋳片または鋼塊を、1250℃以上の温度で50分以上加熱してから分塊圧延して鋼片とし、次いで、その鋼片を下記の(iii)式で表わされるT℃以下かつ900℃以上の温度で60分以上加熱した後、仕上げ温度を800℃以上として熱間圧延し、熱間圧延終了後2.0℃/秒以下の冷却速度で600℃まで冷却することによって製造することができる。
T=−7397/[log{(E12−E22)/1.93}−1.71]−273・・・・・(iii)。
ただし、(iii)式において、
E1=(0.5×Al+0.965×N−E)・・・・・(iv)、
E2=(0.5×Al−0.965×N)・・・・・(v)であり、
また、(iv)式におけるEは、
Al/N≧1.93の場合:E=0.965×N・・・(i)、
Al/N<1.93の場合:E=0.5×Al・・・(ii)である。なお、各式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。

0068

得られた鋳片または鋼塊を、1250℃以上の温度で50分以上加熱することにより、鋳片内または鋼塊内に生成した粗大なAlNを鋼中に固溶させることができるので、分塊圧延後の鋼片には、その後の棒鋼圧延など熱間圧延の際の加熱過程にてAlNが微細に析出しやすくなる。なお、鋳片または鋼塊の加熱は、1250〜1300℃の温度で240分以上加熱することがより一層好ましいが、極端長時間加熱すると製造コストの上昇を招くため、その上限は600分以下であることが好ましい。また、分塊圧延後の冷却は徐冷大気中での放冷(以下、単に「放冷」という。)など適宜の方法で構わない。

0069

なお、棒鋼圧延など熱間圧延の際の加熱にて、上記条件で分塊圧延して得た鋼片の加熱温度を、上記の(iii)式で表わされるT℃以下に制御することで、鋼中にAlNを多量かつ微細に分散させることが可能になって、浸炭加熱時にオーステナイト粒の粗大化を安定して防止することができるし、熱間圧延の組織を安定して、シャー切断等の加工性の確保に有益な、ベイナイトの混入の少ないフェライトとパーライトの混合組織に制御することができる。加熱温度がT℃を超えると、AlNは固溶し始めるが、固溶されずに残存するAlNは、その加熱温度で保持されることにより、凝集し、粗大化が起こる。円相当直径が10〜100nmの比較的小さなAlNは固溶して減少し、または凝集し、粗大化して100nmの大きなAlNとなる。しかし、加熱温度が低すぎると、圧延時の変形抵抗が大きくなることで製造に支障をきたすので、加熱温度の下限は900℃であればよく、1000℃を超えれば一層好ましい。上記鋼片の加熱時間が60分以上であれば、鋼片の表面から中心まで温度分布が生じないものの、加熱時間が長すぎると微細分散させたAlNが凝集し、粗大化し、ピン止め粒子としての効果が小さくなる。このため、上記鋼片の加熱時間は240分以下にすることが好ましい。

0070

また、鋼片の加熱温度に加えて、熱間圧延時の仕上げ温度が800℃以下になると圧延時の変形抵抗が大きくなることで製造に支障をきたす場合があるため、仕上げ温度の下限は800℃を超えるようにするのがよい。

0071

そして、上記の仕上げ温度で熱間圧延を終了後、2.0℃/秒以下の冷却速度で600℃まで冷却することによって、圧延方向と垂直な断面(横断面)におけるミクロ組織において、マトリックスが、面積率で0〜10%のベイナイトと、フェライトおよびパーライトとで構成され、さらに、面積1μm2中において、円相当直径が10nm以上のAlNのうちで、円相当直径が10〜100nmのものが85%以上である鋼材を得ることができる。

0072

なお、熱間圧延終了後の冷却速度は、1.5℃/秒以下であることが好ましいが、極端な徐冷は製造コストの上昇に繋がるのでその下限は、0.1℃/秒程度であることが好ましい。なお、熱間圧延終了後は、上述の冷却速度で室温まで冷却する必要はなく、600℃に至った時点で、放冷、ミスト冷却水冷など、適宜の手段で冷却してもよい。

0073

本明細書における加熱温度とは加熱炉炉内温度平均値、加熱時間とは在炉時間を意味する。

0074

また、熱間圧延の仕上げ温度とは、仕上げ圧延直後の鋼材の表面温度を指す。さらに、熱間圧延終了後の冷却速度も、鋼材表面の冷却速度を指す。

0075

以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。

0076

表1に示す化学組成を有する鋼A〜Lを転炉によって溶解し、鋳片を作製した。

0077

具体的には、70トン転炉で成分調整した後、連続鋳造を行って、400mm×300mm角の鋳片(ブルーム)を作製した。

0078

なお、表1中の鋼A〜Fはいずれも、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。一方、鋼GおよびHは、個々の元素の含有量と(i)式または(ii)式で表わされるEの値とが本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼であり、鋼I〜Lは、個々の元素の含有量は本発明で規定する範囲内であるものの、(i)式または(ii)式で表わされるEの値が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。

0079

0080

上述のようにして作製した鋳片を、1250℃に加熱した後、分塊圧延して180mm×180mm角の鋼片を作製し、室温まで冷却した。さらに、上記180mm×180mm角の鋼片を加熱した後、熱間圧延を行って半径Rが20mmの棒鋼を得た。

0081

表2に、製造条件I〜Vとして、400mm×300mmの鋳片から半径Rが20mmの棒鋼に仕上げるに際しての、鋳片の加熱条件、分塊圧延後の冷却条件、鋼片の加熱条件、棒鋼圧延の仕上げ温度の詳細を示す。圧延終了後は、放冷した。その際、鋼材の表面温度を放射温度計によって測定し、棒鋼圧延終了後から600℃までの冷却速度を求めた。その値を表2に併せて示す。

0082

0083

上記のようにして得た半径Rが20mmの各棒鋼について、次に示す試験を行った。

0084

調査1:ミクロ組織におけるマトリックス相の観察
各棒鋼から、圧延方向(長手方向)に垂直な断面、すなわち横断面が被検面となるように樹脂埋めし、鏡面研磨してナイタールで腐食した。試験片について、倍率400倍で、表面を除いてランダムに5視野を観察して、「組織」を同定した。なお、各視野の大きさは250μm×250μmとした。また、得られたミクロ組織写真から画像解析ソフトを用いて、各視野におけるベイナイトの面積率を算出し、5視野の算術平均値をベイナイトの面積率とした。

0085

調査2:ビッカース硬さ試験
上記の樹脂埋めした試験片を再度鏡面研磨し、被検面の中心部1点とR/2部4点の計5点のビッカース硬さ(HV)を、JIS Z 2244(2009)に記載の「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、試験力を9.8Nとしてビッカース硬さ試験機で測定した。なお、上記5点の算術平均値をHVとした。

0086

調査3:ミクロ組織におけるAlNの寸法と分散状態の調査
各棒鋼の横断面の表面を除いた部位から、一般的な方法で抽出レプリカ試料を作製して、TEMによる観察を行なった。TEMはEDSを装備したものを使用し、EDSによる元素分析から析出物のAlの含有状況、形状を確認した。なお、倍率を30000倍、1視野あたりの面積を6.4μm2として、ランダムに各5視野観察して、円相当直径が、10〜100nmのAlNと100nm以上であるAlNの個数をそれぞれ数え、これを基に、円相当直径が10nm以上のAlNのうちで、円相当直径が10〜100nmのAlNの面積1μm2当たりの割合を求めた。この際、個々のAlNの寸法は、画像解析によって円相当直径に換算した。ただし、パーライトおよびベイナイトの領域は、セメンタイトが多量に抽出されて、AlNの寸法および個数の測定が難しいため、観察は、フェライトが面積率で2/3以上を占める視野で行った。

0087

調査4:オーステナイト粒の粗大化発生調査
各棒鋼から、長さ60mmの試験片を切り出し、熱間鍛造を模擬するために、1250℃、1080℃および900℃の各温度で30分加熱した後、炉から取り出して10秒後に、円柱形状の高さ方向で60%の圧縮加工を行い、その後、放冷にて室温まで冷却した。

0088

次いで、上記のようにして得た各試験片を、中心軸を含む面で4等分になるように切断した後、その内の3つを使用し、浸炭での加熱を模擬するために、920℃、950℃および980℃の各温度で3時間保持した後、水冷によって室温まで冷却した。なお、以下の説明では、上記の浸炭での加熱を模擬するための温度を「擬似浸炭温度」という。

0089

このようにして得た各試験片の切断面を厚さ1mm除去した後、その面を鏡面研磨し、界面活性剤を添加したピクリン酸飽和水溶液で腐食した後、光学顕微鏡を用いて倍率100倍で表面を除いてランダムに10視野を観察して、オーステナイト粒の粗大化発生状況を調査した。

0090

上記調査における1視野の大きさは1.0mm×1.0mmであり、この観察によって、JIS G 0551(2013)に規定の、粒度番号が5番以下のオーステナイト結晶粒が面積10mm2内に2個以上あった場合に、オーステナイト粒が粗大化したと判定した。

0091

オーステナイト粒粗大化防止効果の目標は、950℃以下の温度で3時間加熱した場合に、オーステナイト粒が粗大化しないこととした。

0092

表3および表4に、上記の各調査結果を、鋼片の加熱温度、(iii)式で表わされるT℃、棒鋼圧延終了後600℃までの冷却速度および熱間鍛造を模擬するために加熱した温度とともにまとめて示す。なお、表3および表4における製造条件番号は、上記表2に記載した製造条件番号に対応するものである。

0093

0094

0095

表3および表4から、化学組成が本発明で規定する範囲内にあり、しかも、横断面におけるミクロ組織(相および円相当直径が10nm以上のAlNのうちで、円相当直径が10〜100nmのものの割合)が本発明で規定する条件を満たす「本発明例」の試験番号1〜6の場合には、900〜1250℃という様々な温度に加熱して熱間鍛造しても、浸炭加熱模擬温度950℃にて粗粒が発生しておらず、オーステナイト粒粗大化防止効果が得られていることが明らかである。

0096

これに対して、本発明で規定する化学組成およびミクロ組織の条件の全てを同時に満たしていない「比較例」の場合には、目標とするオーステナイト粒粗大化防止特性が得られていない。

0097

試験番号7の場合、鋼GのN含有量と(i)式で表わされるEの値とが本発明で規定する条件から外れているため、900〜1250℃という様々な温度に加熱して熱間鍛造すると、いずれの加熱温度の場合にも擬似浸炭温度920℃にて粗粒が発生し、目標とするオーステナイト粒粗大化防止特性が得られていない。

0098

試験番号8の場合、鋼Hの化学組成、つまり、Al、NおよびOの含有量ならびに(i)式で表わされるEの値が本発明で規定する条件から外れており、また、横断面におけるミクロ組織、つまり、面積1μm2中において、円相当直径が10nm以上のAlNのうちで、円相当直径が10〜100nmのものの割合も本発明で規定する条件から外れているため、900および1080℃に加熱して熱間鍛造すると、擬似浸炭温度950℃にて粗粒が発生し、目標とするオーステナイト粒粗大化防止特性が得られていない。

0099

試験番号9および試験番号10の場合、それぞれの試験番号における鋼Iおよび鋼Jの(i)式で表わされるEの値が本発明で規定する条件から外れており、また、面積1μm2中において、円相当直径が10nm以上のAlNのうちで、円相当直径が10〜100nmのものの割合も本発明で規定する条件から外れている。このため、900および1080℃に加熱して熱間鍛造すると、試験番号9については擬似浸炭温度950℃にて、また試験番号10については疑似浸炭温度920℃にて、それぞれ粗粒が発生し、目標とするオーステナイト粒粗大化防止特性が得られていない。

0100

試験番号11の場合、鋼Kの(ii)式で表わされるEの値が本発明で規定する条件から外れているため、900および1080℃に加熱して熱間鍛造すると、擬似浸炭温度950℃にて粗粒が発生し、目標とするオーステナイト粒粗大化防止特性が得られていない。

0101

試験番号12の場合、鋼Lの(i)式で表わされるEの値が本発明で規定する条件から外れており、また、面積1μm2中において、円相当直径が10nm以上のAlNのうちで、円相当直径が10〜100nmのものの割合も本発明で規定する条件から外れているため、900℃に加熱して熱間鍛造すると、擬似浸炭温度950℃にて粗粒が発生し、目標とするオーステナイト粒粗大化防止特性が得られていない。

0102

試験番号13および試験番号14の場合、鋼Aの化学組成は本発明で規定する範囲内にあるものの、面積1μm2中において、円相当直径が10nm以上のAlNのうちで、円相当直径が10〜100nmのものの割合が本発明で規定する条件から外れているため、900および1080℃に加熱して熱間鍛造すると、擬似浸炭温度920℃にて粗粒が発生し、目標とするオーステナイト粒粗大化防止特性が得られていない。

実施例

0103

なお、半径20mmの各棒鋼をシャー切断することも行った。その結果、マトリックスに25%のベイナイトを含み、本発明で規定する条件から外れる試験番号14の棒鋼を除いて、何ら問題なくシャー切断できた。

0104

本発明の熱間鍛造用鋼材は、様々な温度域、特に、900〜1250℃の幅広い温度域に加熱後に熱間鍛造しても、浸炭加熱の際に、特に、950℃以下の温度で3時間加熱した際に、オーステナイト粒の粗大化を安定して防止できるので、熱間鍛造によって粗成形される歯車、CVT用プーリを始めとする自動車のトランスミッションなどの部品の素材として好適に用いることができる。

0105

また、本発明に係る熱間鍛造用鋼材は、本発明の製造方法によって容易に得ることができる。

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