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技術 乳汁中の大腸菌群を検出する方法

出願人 旭化成株式会社
発明者 前花浩志松山健二
出願日 2014年12月17日 (6年0ヶ月経過) 出願番号 2015-553591
公開日 2017年3月23日 (3年9ヶ月経過) 公開番号 WO2015-093545
状態 特許登録済
技術分野 酵素、微生物を含む測定、試験 微生物、その培養処理 微生物・酵素関連装置 生物学的材料の調査,分析
主要キーワード 除去用部材 労働負担 拡大防止 含浸部材 非蛍光物質 非金属粒子 クロマト展開 平均ポアサイズ
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年3月23日)のものです。
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図面 (4)

課題・解決手段

家畜乳汁を用いて乳房炎原因菌大腸菌群であるか否かを検出するための溶菌方法溶菌処理液およびイムノクロマト装置からなる検出方法および検出キットを提供することを課題とする。大腸菌群の溶菌方法であって、家畜から得た乳汁に、溶菌酵素および少なくとも一の陰イオン界面活性剤、好ましくはさらに少なくとも一の非イオン界面活性剤を含有する溶菌剤を混合して乳汁中に存在する大腸菌群を溶菌する工程を含む方法を提供する。溶菌酵素は、好ましくはリゾチームである。

概要

背景

ヤギに代表される家畜乳汁無菌的なものではなく、疾患や環境が原因で何らかの微生物混入している場合がある。特に乳房への微生物の感染による疾患ではしばしば乳汁中に多くの微生物を排菌することが知られている。微生物の感染が原因で引き起こされる代表的な家畜の疾患に乳房炎がある。

乳房炎とは、乳管系乳腺組織の炎症であり、主に微生物が乳房内侵入定着し、増殖することによって引き起こされる。乳房炎は多くの動物罹患するが、特に乳牛における牛乳房炎は乳牛全体の15〜40%が罹患すると言われ、酪農家にとって極めて重要な疾患の一つである。乳牛が乳房炎に罹患すると、乳汁の合成機能阻害され、泌乳量の減少や場合によっては泌乳の停止が起こるだけでなく、治療費や、乳質低下による乳価のペナルティーなど多大な経済的損失を酪農家に与える。さらには、伝染防止のために乳房炎罹患分房を個別に搾乳するなど、酪農家にかかる労働負担も増加する。

乳房炎は様々な微生物の感染によって引き起こされる。原因菌のなかでも大腸菌クレブシエラに代表される大腸菌群は、発熱などの全身症状、乳房の熱感腫脹および硬結などの局所症状を引き起こす。乳汁からの大腸菌群の検出方法としては培養法が広く用いられている。培養法は結果が得られるのに数日間を要し迅速な原因菌特定には適さない。一方、原因菌に特異的な成分に対する抗体を用いる抗原抗体反応による同定法、特にイムノクロマトグラフ法は数10分で結果を判定できるため、迅速・簡便な検査方法として家庭診察室等で広く用いられている(例えば特許文献1)。本発明者らは、イムノクロマトグラフ法を、家畜の乳汁中の物質を検出するための方法としても検討してきた(特許文献2)。

細菌の抗原抗体反応による検出に際しては、菌体内成分検出対象となる場合は菌体溶菌し、その成分を検出することによる方法も検討されてきた。例えば、微生物を非蛍光物質に対し、微生物の持つ酵素を作用させて、蛍光物質を生成せしめ、この蛍光物質を測定することにより、微生物菌数を測定する方法において、該微生物の細胞膜溶解剤単独またはリゾチームと細胞膜溶解剤を添加することを特徴とする、微生物菌数測定方法が開示されている(特許文献3)。また、微生物の多重検出方法として、溶菌酵素および/または溶菌活性を持つバクテリオシン界面活性剤タンパク質変性剤とで処理する方法(特許文献4)が知られている。特許文献3では、均質化した食品サンプル遠心分離した上澄み液を使用している。特許文献4では、培養した菌液を用いており、乳汁のような高タンパク、高脂肪溶液中で溶菌効果が得られることは記載されていない。

概要

家畜の乳汁を用いて乳房炎の原因菌が大腸菌群であるか否かを検出するための溶菌方法溶菌処理液およびイムノクロマト装置からなる検出方法および検出キットを提供することを課題とする。大腸菌群の溶菌方法であって、家畜から得た乳汁に、溶菌酵素および少なくとも一の陰イオン界面活性剤、好ましくはさらに少なくとも一の非イオン界面活性剤を含有する溶菌剤を混合して乳汁中に存在する大腸菌群を溶菌する工程を含む方法を提供する。溶菌酵素は、好ましくはリゾチームである。

目的

したがって、乳房炎原因菌の高感度な検出のために乳汁中で高効率に大腸菌群を溶菌する方法が望まれていた

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

乳汁中大腸菌群溶菌方法であって乳汁に、リゾチームイオン界面活性剤、および非イオン界面活性剤を含有する溶菌剤を混合して乳汁中に存在する大腸菌群を溶菌する工程を含む、溶菌方法。

請求項2

該イオン界面活性剤が陰イオン界面活性剤である請求項1に記載の溶菌方法。

請求項3

該陰イオン界面活性剤がアルキル硫酸塩を含有し;および/または該非イオン界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを含有する、請求項2に記載の溶菌方法。

請求項4

乳汁に溶菌剤を混合して乳汁中に存在する該菌を溶菌する工程において、該陰イオン性界面活性剤終濃度が、0.01%以上0.15%以下である、請求項2または3に記載の溶菌方法。

請求項5

乳汁に溶菌剤を混合して乳汁中に存在する該菌を溶菌する工程において、該リゾチームの終濃度が、0.1mg/ml以上200mg/ml以下であり;および/または乳汁に溶菌剤を混合して乳汁中に存在する該菌を溶菌する工程において、該非イオン界面活性剤の終濃度が、0.03%以上10%以下である、請求項4に記載の溶菌方法。

請求項6

請求項1〜5のいずれか1項に定義した、乳汁に溶菌剤を混合して乳汁中に存在する大腸菌群を溶菌する工程を含み、溶菌により放出された菌体内由来特定物質を検出する工程をさらに含む、乳汁中の大腸菌群の検出方法

請求項7

検出方法が、イムノクロマトグラフ方法により実施される請求項6に記載の方法。

請求項8

該イムノクロマトグラフ方法が、(1)特定物質を含む乳汁を、該特定物質に対する標識された第一の抗体または標識された該特定物質が保持された第1部分と、該第1部分の下流に連結され、かつ該特定物質に対する第二の抗体が固定化された第2部分と、該第1部分または該第2部分の上流に連結され、かつ該乳汁中の乳脂肪球を除去できる空隙を有する第3部分とを有する試験片に対して、該乳汁を該第3部分またはそれより上流部に接触させる工程;および(2)該乳汁を該第2部分またはそれより下流部まで流し、該第2部分またはそれより下流部で該標識による検出可能な信号を得る工程:を含む、請求項7に記載の方法。

請求項9

該第1部分に、該特定物質に対する標識された第一の抗体が保持されている、請求項8に記載の方法。

請求項10

第3部分がそれぞれ異なる粒子サイズの乳脂肪球を除去できる空隙を有する2種以上の部材より構成されている請求項8または9に記載の方法。

請求項11

第3部分が下流に配置された第一の部材、および上流に配置された第二の部材により構成され、第二の部材の保持粒子サイズが第一の部材の保持粒子サイズより大きい、請求項10に記載の方法。

請求項12

請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶菌剤。

請求項13

家畜乳房炎診断する方法において用いるための、請求項12に記載の溶菌剤。

請求項14

請求項12または13に記載の溶菌剤と、該特定物質に対する標識された第一の抗体または標識された該特定物質が保持された第1部分と、該第1部分の下流に連結され、かつ該特定物質に対する第二の抗体が固定化された第2部分と、該第1部分または該第2部分の上流に連結され、かつ該乳汁中の乳脂肪球を除去できる空隙を有する第3部分とを有する試験片を含む、乳汁中の特定物質を検出するためのイムノクロマトグラフ装置とを含む、乳汁中の大腸菌群の検出用キット

技術分野

0001

本発明は、家畜乳汁中から乳房炎原因菌である大腸菌群を検出するための溶菌方法および検出方法に関するものである。

背景技術

0002

ヤギに代表される家畜の乳汁無菌的なものではなく、疾患や環境が原因で何らかの微生物混入している場合がある。特に乳房への微生物の感染による疾患ではしばしば乳汁中に多くの微生物を排菌することが知られている。微生物の感染が原因で引き起こされる代表的な家畜の疾患に乳房炎がある。

0003

乳房炎とは、乳管系乳腺組織の炎症であり、主に微生物が乳房内侵入定着し、増殖することによって引き起こされる。乳房炎は多くの動物罹患するが、特に乳牛における牛乳房炎は乳牛全体の15〜40%が罹患すると言われ、酪農家にとって極めて重要な疾患の一つである。乳牛が乳房炎に罹患すると、乳汁の合成機能阻害され、泌乳量の減少や場合によっては泌乳の停止が起こるだけでなく、治療費や、乳質低下による乳価のペナルティーなど多大な経済的損失を酪農家に与える。さらには、伝染防止のために乳房炎罹患分房を個別に搾乳するなど、酪農家にかかる労働負担も増加する。

0004

乳房炎は様々な微生物の感染によって引き起こされる。原因菌のなかでも大腸菌クレブシエラに代表される大腸菌群は、発熱などの全身症状、乳房の熱感腫脹および硬結などの局所症状を引き起こす。乳汁からの大腸菌群の検出方法としては培養法が広く用いられている。培養法は結果が得られるのに数日間を要し迅速な原因菌特定には適さない。一方、原因菌に特異的な成分に対する抗体を用いる抗原抗体反応による同定法、特にイムノクロマトグラフ法は数10分で結果を判定できるため、迅速・簡便な検査方法として家庭診察室等で広く用いられている(例えば特許文献1)。本発明者らは、イムノクロマトグラフ法を、家畜の乳汁中の物質を検出するための方法としても検討してきた(特許文献2)。

0005

細菌の抗原抗体反応による検出に際しては、菌体内成分検出対象となる場合は菌体溶菌し、その成分を検出することによる方法も検討されてきた。例えば、微生物を非蛍光物質に対し、微生物の持つ酵素を作用させて、蛍光物質を生成せしめ、この蛍光物質を測定することにより、微生物菌数を測定する方法において、該微生物の細胞膜溶解剤単独またはリゾチームと細胞膜溶解剤を添加することを特徴とする、微生物菌数測定方法が開示されている(特許文献3)。また、微生物の多重検出方法として、溶菌酵素および/または溶菌活性を持つバクテリオシン界面活性剤タンパク質変性剤とで処理する方法(特許文献4)が知られている。特許文献3では、均質化した食品サンプル遠心分離した上澄み液を使用している。特許文献4では、培養した菌液を用いており、乳汁のような高タンパク、高脂肪溶液中で溶菌効果が得られることは記載されていない。

0006

特開平1-244370号公報
特開2012-122921号公報
特開昭63-167799号公報
国際公開WO2005/064016(特許第4621919号公報)
特開平7-196463号公報

先行技術

0007

Comp. lmmun. Microbiol. infect. Dis., Vol. 6, No. 3, pp. 235-245, 1983

発明が解決しようとする課題

0008

乳房炎は細菌など様々な微生物の感染によって引き起こされるが、原因菌によって効果を示す抗生物質が異なる。したがって乳房炎の早期診断、治療は大変重要となる。また、特定の細菌が乳房炎を起こした場合では個体の他の分房や個体間に伝染することもあり乳汁中に存在する原因菌を迅速・簡便・高感度に同定することが極めて重要となる。特に、グラム陽性菌と比べて増殖スピードが速く重篤化しやすく、甚急性の乳房炎を引き起こし、死に至ることも多い大腸菌群に関しては、乳房炎の被害を防ぐには、感染早期に発見し、治療することが非常に重要となる。

0009

菌の検出方法として広く用いられている培養法は、結果が得られるのに数日間を要するという問題がある。一方、イムノクロマトグラフ法などの抗原抗体反応に基づく免疫学的測定方法は、培養法と比べると迅速・簡便に原因菌を検出することが可能となる利点がある。

0010

免疫学的測定方法にて原因菌の菌体内特定物質を高感度に検出するには、特に菌体内成分が抗原の場合、菌体を高効率に溶菌し、菌体内の抗原を菌体外に放出させる必要がある。しかしながら、乳汁を検体として用いた場合、乳汁中に多量に含まれるカゼインなどのタンパク質乳脂肪球などの影響により従来技術では溶菌が十分に行われないことが判明している。したがって、乳房炎原因菌の高感度な検出のために乳汁中で高効率に大腸菌群を溶菌する方法が望まれていた。しかしながら、乳汁中の大腸菌群を検出のための有効な溶菌方法は知られていない。

0011

本発明は、家畜の乳汁を用いて乳房炎の原因菌が大腸菌群であるか否かを検出するための溶菌方法、溶菌処理液およびイムノクロマト装置からなる検出方法および検出キットを提供することを解決すべき課題とした。

課題を解決するための手段

0012

本発明者は、高タンパク、高脂肪かつ個体差のある乳汁から高感度に大腸菌群を検出するためには、菌体内の対象抗原を高効率に抽出する必要があると考え、乳汁中の大腸菌群を高効率に溶菌するために溶菌酵素および複数の界面活性剤を同時に用いることで溶菌の効率が向上し、乳汁中の大腸菌群を高感度に検出できることを見出した。特に、溶菌酵素としてリゾチームを用いた場合に、陰イオン界面活性剤、特にラウリル硫酸ナトリウムドデシル硫酸ナトリウム)を組み合わせて用いるとリゾチームが持っている酵素活性が失われることが知られているが(前掲特許文献5)、発明者らが検討した結果、陰イオン界面活性剤を適当な濃度範囲で用いることにより、溶菌率が逆に大幅に向上し、乳汁中の大腸菌群を高感度に検出できることを見出し、本発明を完成するに至った。

0013

すなわち、本発明は、以下を提供する。
[1]大腸菌群の溶菌方法であって、大家畜から得た乳汁と、溶菌酵素および少なくとも一の陰イオン界面活性剤を含有する溶菌剤とを混合して乳汁中に存在する大腸菌群を溶菌する工程を含む、方法。
[2] 溶菌酵素がリゾチームであることを特徴とする[1]に記載の溶菌方法。
[3] 陰イオン界面活性剤が、終濃度が0.01〜0.15%となるように乳汁と溶菌剤とが混合される、[1]または[2]に記載の溶菌方法。
[4] 溶菌剤が、さらに少なくとも一の非イオン界面活性剤を含む、[1]〜[3]のいずれか一に記載の方法。
[5] 陰イオン界面活性剤がアルキル硫酸塩を含有する、[4]に記載の方法。
[6] 非イオン界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを含有する、[1]〜[5]のいずれか一に記載の方法。
[7]家畜乳汁中の大腸菌群の溶菌のために用いる、溶菌酵素および少なくとも一の陰イオン界面活性剤を含有する溶菌剤。
[8] 家畜の乳房炎を診断する方法において用いるための、[7]に記載の溶菌剤。
[9] 陰イオン界面活性剤が、乳汁と溶菌剤とが混合されたときに終濃度が0.01〜0.15%となる濃度である、[7]または[8]に記載の溶菌剤。
[10] [1]〜[6]のいずれか一に記載の方法を含み、溶菌により放出された大腸菌群の菌体内由来の特定物質を検出する工程をさらに含む、家畜乳汁中の大腸菌群の検出方法。
[11] 特定物質の検出工程が、イムノクロマトグラフ方法により実施される、[10]に記載の方法。
[12] イムノクロマトグラフ方法が、(1)特定物質を含む乳汁を、該特定物質に対する標識された第一の抗体または標識された該特定物質が保持された第1部分と、該第1部分の下流に連結され、かつ該特定物質に対する第二の抗体が固定化された第2部分と、該第1部分または該第2部分の上流に連結され、かつ該乳汁中の乳脂肪球を除去できる空隙を有する第3部分とを有する試験片に対して、該乳汁を該第3部分またはそれより上流部に接触させる工程;および(2)該乳汁を該第2部分またはそれより下流部まで流し、該第2部分またはそれより下流部で該標識による検出可能な信号を得る工程:を含む、[11]に記載の方法。
[13] 該第1部分に、該特定物質に対する標識された第一の抗体が保持されている、[12]に記載の方法。
[14] 第3部分がそれぞれ異なる粒子サイズの乳脂肪球を除去できる空隙を有する2種以上の部材により構成される、[12]または[13]に記載の方法。
[15] 第3部分が下流に配置された第一の部材、および上流に配置された第二の部材により構成され、第二の部材の保持粒子サイズが第一の部材の保持粒子サイズより大きい、[14]に記載の方法。
[16] [7]〜[9]のいずれか一に記載の溶菌剤と、 該特定物質に対する標識された第一の抗体または標識された該特定物質が保持された第1部分と、該第1部分の下流に連結され、かつ該特定物質に対する第二の抗体が固定化された第2部分と、該第1部分または該第2部分の上流に連結され、かつ該乳汁中の乳脂肪球を除去できる空隙を有する第3部分とを有する試験片を含む、乳汁中の特定物質を検出するためのイムノクロマトグラフ装置とからなる、家畜乳汁中の大腸菌群検出用キット

0014

本発明は、以下も提供する。
[1]乳汁中の大腸菌群の溶菌方法であって乳汁に、リゾチーム、イオン界面活性剤、および非イオン界面活性剤を含有する溶菌剤を混合して乳汁中に存在する大腸菌群を溶菌する工程を含む、溶菌方法。
[2] 該イオン界面活性剤が陰イオン界面活性剤である[1]に記載の溶菌方法。
[3] 該陰イオン界面活性剤がアルキル硫酸塩を含有し;および/または該非イオン界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルを含有する、[2]に記載の溶菌方法。
[4] 乳汁に溶菌剤を混合して乳汁中に存在する該菌を溶菌する工程において、該陰イオン性界面活性剤の終濃度が、0.01%以上0.15%以下である、[2]または[3]に記載の溶菌方法。
[5] 乳汁に溶菌剤を混合して乳汁中に存在する該菌を溶菌する工程において、該リゾチームの終濃度が、0.1mg/ml以上200mg/ml以下であり;および/または
乳汁に溶菌剤を混合して乳汁中に存在する該菌を溶菌する工程において、該非イオン界面活性剤の終濃度が、0.03%以上10%以下である、[4]に記載の溶菌方法。
[6] [1]〜[5]のいずれか一に定義した、乳汁に溶菌剤を混合して乳汁中に存在する大腸菌群を溶菌する工程
を含み、
溶菌により放出された菌体内由来の特定物質を検出する工程
をさらに含む、乳汁中の大腸菌群の検出方法。
[7] 検出方法が、イムノクロマトグラフ方法により実施される[6]に記載の方法。
[8] 該イムノクロマトグラフ方法が、(1)特定物質を含む乳汁を、該特定物質に対する標識された第一の抗体または標識された該特定物質が保持された第1部分と、該第1部分の下流に連結され、かつ該特定物質に対する第二の抗体が固定化された第2部分と、該第1部分または該第2部分の上流に連結され、かつ該乳汁中の乳脂肪球を除去できる空隙を有する第3部分とを有する試験片に対して、該乳汁を該第3部分またはそれより上流部に接触させる工程;および(2)該乳汁を該第2部分またはそれより下流部まで流し、該第2部分またはそれより下流部で該標識による検出可能な信号を得る工程:を含む、[7]に記載の方法。
[9] 該第1部分に、該特定物質に対する標識された第一の抗体が保持されている、[8]に記載の方法。
[10] 第3部分がそれぞれ異なる粒子サイズの乳脂肪球を除去できる空隙を有する2種以上の部材より構成されている[8]または[9]に記載の方法。
[11] 第3部分が下流に配置された第一の部材、および上流に配置された第二の部材により構成され、第二の部材の保持粒子サイズが第一の部材の保持粒子サイズより大きい、[10]に記載の方法。
[12] [1]〜[5]のいずれか一に記載の溶菌剤。
[13]家畜の乳房炎を診断する方法において用いるための、[11]に記載の溶菌剤。
[14] [12]または[13]に記載の溶菌剤と、 該特定物質に対する標識された第一の抗体または標識された該特定物質が保持された第1部分と、該第1部分の下流に連結され、かつ該特定物質に対する第二の抗体が固定化された第2部分と、該第1部分または該第2部分の上流に連結され、かつ該乳汁中の乳脂肪球を除去できる空隙を有する第3部分とを有する試験片を含む、乳汁中の特定物質を検出するためのイムノクロマトグラフ装置とを含む、乳汁中の大腸菌群の検出用キット。

発明の効果

0015

本発明によれば、乳汁中の大腸菌群を迅速・簡便・高感度に、かつその場で検出することができる。特に、牛乳房炎を診断する場合において、標識が視認できるものである場合には装置等を用いずに酪農場で実施することができ、病状の更なる悪化の前に迅速に原因菌を特定し、適切な抗生物質の選択などの的確な治療方針や、感染拡大防止のための措置を早期に決定することができる。

図面の簡単な説明

0016

実施例2で用いたイムノクロマトグラフ装置の試験片の断面模式図を示す。1:標識抗体含浸部材(第1部分)、2:クロマト展開用膜担体(第2部分)、3:捕捉部位、4:試料添加用部材かつ脂肪球除去用部材(第3部分)、5:吸収用部材、6:基材、および7:脂肪球除去用部材(第3部分)
イムノクロマトグラフ法による大腸菌の検出におけるリゾチームおよび非イオン界面活性剤存在下でのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の効果
イムノクロマトグラフ法による大腸菌の検出における溶菌酵素および非イオン界面活性剤存在下でのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の効果

0017

以下、本発明について更に詳細に説明する。なお、本発明において、数値範囲を「X〜Y」で表すときは、両端の値を含む。「%」は、特に記載した場合を除き、質量に基づく割合を示す。「Aおよび(ならびに)/またはB」は、AとBの少なくとも一方の意であり、Aのみである場合、Bのみである場合、並びにAおよびBである場合がある。

0018

本発明は、乳汁中の大腸菌群を溶菌するための溶菌剤を提供する。本発明の溶菌剤は、溶菌酵素および特定の界面活性剤を含む。

0019

[溶菌酵素]
本発明における溶菌酵素の種類は特に限定されず、任意の2種以上の溶菌酵素を適宜組み合わせて用いてもよい。乳房炎の起炎菌として大腸菌(Escherichia coli)、クレブシエラ(Klebsiella)属に属する細菌、または黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による感染が多発することから、これらの微生物に対して溶菌作用を発揮できる溶菌酵素を1種または2種以上組み合わせて用いることも好ましい。例えばリゾチーム、リゾスタフィンペプシングルコシダーゼガラクトシダーゼアクロモペプチダーゼ、β-N-アセチルグルコサミニダーゼなどから選ばれる1種または2種以上の溶菌酵素を用いることができる。

0020

乳房炎の起炎菌として大腸菌群の存在が特に疑われる場合には、大腸菌群に対して特異的に溶菌作用を発揮する酵素を単独で、または他の溶菌酵素と組み合わせて用いることが好ましい場合がある。例えば、溶菌酵素としてリゾチームと細胞膜溶解剤とを用いる方法が提案されている(特開昭63-167799号公報)。

0021

リゾチームは、14.6kDaの単一ペプチドのタンパク質であり、ペプチドグリカン層でN-アセチルムラミン酸N-アセチルグルコサミンとの間のβ(1-4)グリコシド結合を切断することによりバクテリア細胞を溶解することができる。リゾチームは市販品の購入により入手することが可能である。

0022

溶菌剤中での溶菌酵素の含量(複数の溶菌酵素を用いる場合は、溶菌酵素総量としての含量を指す。)は、検出のために有効な溶菌率が確保される限り、特に限定されないが、乳汁と混合した場合の終濃度がリゾチームとして、0.1 mg/ml以上となるようにすることができ、好ましくは0.2 mg/ml以上であり、より好ましくは0.5 mg/ml以上であり、さらに好ましくは1.0 mg/ml以上であり、特に好ましくは 2.0 mg/ml以上である。また溶菌酵素の含量の上限は、経済的な観点等から適宜定けることができ、下限がいずれの場合であっても、200 mg/ml以下とすることができ、好ましくは100 mg/ml以下であり、より好ましくは75 mg/ml以下であり、さらに好ましくは50 mg/ml以下であり、特に好ましくは25 mg/ml以下である。

0023

[界面活性剤]
水に溶かしたときに、電離してイオンとなる界面活性剤をイオン界面活性剤またはイオン性界面活性剤といい、イオンにならない界面活性剤を非イオンノニオン)界面活性剤という。イオン界面活性剤はさらに、陰イオンアニオン)界面活性剤、陽イオンカチオン)界面活性剤および両性界面活性剤分類される。

0024

本発明においては、溶菌酵素と同時に、少なくとも一の両性界面活性剤、少なくとも一の陰イオン界面活性剤、もしくは少なくとも一の陽イオン界面活性剤、またはこれらのいずれかの組み合わせを用いる。好ましくは、溶菌酵素と同時に、少なくとも一の非イオン界面活性剤もしくは少なくとも一の陰イオン性界面活性剤、またはこれらの組み合わせを用いる。さらに好ましくは、溶菌酵素と同時に、少なくとも一の非イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤を組み合わせて用いる。

0025

用いる界面活性剤の種類は特に限定されないが、非イオン界面活性剤としてはエステルエーテル型エステル型、エーテル型のいずれも好適に用いることができ、より具体的にはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステルアルキルポリグルコシド脂肪酸ジエタノールアミドアルキルモノグリセリルエーテルなどがあげられる。特に好ましい例の一つは、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、より特定するとポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル等である。イムノクロマトグラフ法においても、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルのようなポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが有効に使用できることが確認されている。

0026

溶菌剤中での非イオン界面活性剤の含量(複数の非イオン界面活性剤を用いる場合は、非イオン界面活性剤総量としての含量を指す。)は、例えばイムノクロマトグラフ法を用いる場合は展開液の流れが確保される限り、特に限定されないが、いずれの場合であっても、下限は、乳汁と混合した場合の終濃度が0.03%以上となるようにすることができ、好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.075%以上であり、さらに好ましくは0.1%以上であり、特に好ましくは0.3%以上である。また非イオン界面活性剤の含量の上限値は、溶菌酵素による反応や抗原抗体反応を著しく阻害しない程度であればよく、いずれの場合であっても、10%以下とすることができ、好ましくは7.5%以下であり、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは2%以下である。

0028

溶菌剤中での陰イオン界面活性剤の含量(複数の陰イオン界面活性剤を用いる場合は、陰イオン界面活性剤総量としての含量を指す。)は、検出のために有効な溶菌率が確保される限り、特に限定されないが、下限値に関しては、溶菌酵素の含量がいずれの場合であっても、乳汁と混合した場合の終濃度が0.0001%以上となるようにすることができ、好ましくは0.0002以上であり、より好ましくは0.0005%以上であり、さらに好ましくは0.001%以上であり、さらに好ましくは0.005%以上であり、特に好ましくは0.01%以上である。また陰イオン界面活性剤の含量の上限値は、溶菌酵素による反応や抗原抗体反応を著しく阻害しない程度であればよく、いずれの場合であっても、1%以下とすることができ、好ましくは0.75%以下であり、より好ましくは0.5%以下であり、さらに好ましくは0.3%以下であり、さらに好ましくは0.2%以下であり、特に好ましくは0.15%以下である。

0029

両性界面活性剤としては、アミノ酸系アルキルアミノ脂肪酸塩)、ベタイン系 (アルキルベタイン)、アミンオキシド系(アルキルアミンオキシド)等があげられるが、特に限定されない。より特定された例としては、ジメチルアンモニオプロパンスルホイトドデシルジメチルアンモニオブチレイトラウリル酸ベタイン、およびアミドプロピルベタインがあげられる。より具体的な例としては、n-Tetradecyl-N,N-dimethyl-3-ammonio-1-propanesulfonate、n-Decyl-N,N-dimethyl-3-ammonio-1-propanesulfonate、n-Dodecyl-N,N-dimethyl-3-ammonio-1-propanesulfonate、n-Tetradecyl-N,N-dimethyl-3-ammonio-1-propanesulfonate、n-Hexadecyl-N,N-dimethyl-3-ammonio-1-propanesulfonate、N-Dodecyl-N,N-(dimethylammonio)butyrateがあげられる。

0030

陽イオン界面活性剤としては、アミン塩型、第4級アンモニウム塩型のいずれも好適に用いることができ、より具体的な例として、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム塩化ベンザルコニウムヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムブロミド等をあげることができる。

0031

[配合例]
特に好ましい態様においては、溶菌剤は、リゾチーム、陰イオン性界面活性剤、および非イオン界面活性剤を含有する。リゾチーム、陰イオン性界面活性剤、および非イオン界面活性剤を含有する溶菌剤において、非イオン界面活性剤の特に好ましい例は、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルである。このような溶菌剤における各成分の濃度は、乳汁に溶菌剤を混合して乳汁中に存在する該菌を溶菌する工程において、リゾチームの終濃度が、0.1mg/ml以上200mg/ml以下であり、陰イオン性界面活性剤の終濃度が、0.01%以上0.15%以下であり、かつ非イオン界面活性剤の終濃度が、0.03%以上10%以下であるようにするとよい。

0032

[その他の成分]
本発明の溶菌剤は、溶菌酵素および界面活性剤以外に、意図した効果を著しく損なわない限り、一種またはそれ以上の他の成分を含むことができる。溶菌酵素および界面活性剤以外の成分の好ましい例は、溶菌を促進する効果を有する物質である。具体的には、グルタルアルデヒドハロゲン化合物クロルヘキシジンアルコール類(例えば、メタノールエタノール1−プロパノール2−プロパノール、1−ブタノール2−ブタノール2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール)、フェノール過酸化水素アクリノールグアニジンおよびその塩、キレート剤有機酸およびその塩、多価アルコール類(例えば、エチレングリコールプロピレングリコールジエチレングリコールグリセリン)、ならびに2−メルカプトエタノールジチオスレイトールシスチンおよびチオフェノールなどの還元剤をあげることができるが、これらに限定されない。

0033

[溶菌条件、溶菌率]
本発明においては、溶菌剤は、乳汁に混合して用いることができる。乳汁と溶菌剤との混合比は、溶菌酵素等の終濃度が適切に維持され、十分な溶菌率が確保できる限り、特に限定されない。乳汁に対して比較的少量の溶菌剤を用いる場合は、乳汁が希釈されない。したがって、より高い感度で菌体を検出できると期待できる。また乳汁に対して比較的大量の溶菌剤を用いる場合は、乳汁中の脂肪球やタンパク質による影響が減じられ、より短時間で菌体を検出できると期待できる。乳汁と溶菌剤との混合物における乳汁の割合(乳汁/(乳汁+溶菌剤)×100)は、高いほど検出感度を上げることができるとの観点からは、他の条件がいずれの場合であっても、例えば5%以上とすることができ、10%以上とすることが好ましく、20%以上とすることがより好ましく、30%以上とすることがさらに好ましい。上限値は、他の条件がいずれの場合であっても、乾燥等の手段によって固形化した溶菌剤を用いることにより、乳汁の割合を100%とすることができる。また、他の条件がいずれの場合であっても、乳汁の割合は90%以下とすることができ、80%以下、70%以下、60%以下、または50%以下とすることができる。上限値は、混合の容易さ、溶菌剤の溶液としての安定性等を考慮して決定してもよい。

0034

本発明においては、乳汁は溶菌剤と単に混合すればよい。混合する際の温度、およびそれに続く酵素が作用するための処理時間は、用いる溶菌酵素が活性を発揮できる温度であれば特に限定されず、通常、室温でよい。混合後の処理時間のために必要な時間は、当業者であれば、溶菌率を考慮して、適宜設計することができる。本発明においては、大腸菌群に対して適切な組み合わせおよび濃度の溶菌酵素および界面活性剤を用いているので、処理時間を、溶菌酵素のみを用いる場合よりも大幅に短くすることができる。本発明における処理時間は、概ね数十分間〜数時間以内であり、より具体的には120分間以内とすることができ、60分以内とすることが好ましく、45分以内とすることがさらに好ましく、25分間以内とすることがさらに好ましく、20分以内とすることがさらに好ましく、15分以内とすることがさらに好ましい。処理時間を、実質0とする(乳汁と溶菌剤を混合して、直ちに測定に供する)こともできる。このような短時間であっても、本発明に依れば90%以上の溶菌率が確保され、高感度の大腸菌群の検出が実施できる。

0035

本発明者らの検討によると、本明細書の実施例に記載した条件では、大腸菌を約1×105 cells/mlで含む牛乳を本発明の溶菌剤により約10分間処理することにより100%の溶菌率を達成できることが確認できている。なお溶菌率は、対象となる菌を含む液を、あらかじめ適切な濃度の非イオン界面活性剤で処理した後、さらに超音波処理し、必要に応じ十分な酵素処理を行ったものの溶菌率を100%とすることができる。

0036

[検出手段]
本発明により溶菌された大腸菌群は、菌体由来の成分を抗原として、各種の免疫学的方法により検出することができる。免疫学的測定方法としては、例えば、イムノクロマトグラフグラフ法凝集反応法、酵素免疫測定法ELISA法)、放射能免疫測定法RIA法)、または蛍光免疫測定法(FIA法)などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。

0037

免疫学的方法の実施に際し、非特異吸着を防ぐためのブロッキングのための物質や、対象菌以外の菌との交差反応を防ぐための物質を用いてもよい。特に、用いる抗体と黄色ブドウ球菌が保有するプロテインAとの反応を防ぐために、抗原との反応に関与しないグロブリンを添加することができる。グロブリンを用いる場合、偽陽性を抑制するという観点からは、反応時の終濃度として、0.01ug/ml以上、好ましくは0.1ug/ml以上、より好ましくは1ug/ml以上とすることができ、またいずれの場合も、対象の抗原抗体反応を阻害しないという観点から、10mg/ml以下、好ましくは5mg/ml以下、より好ましくは1mg/ml以下とすることができる。このような終濃度の条件は、イムノクロマトグラフ法に特に適する。

0038

イムノクロマトグラフ法を用いる場合、典型的には、次のように実施することができる。

0039

[イムノクロマトグラフ法、イムノクロマトグラフ装置]
抗原抗体反応は、第1部分に保持されている「特定物質に対する標識された第一の抗体」と、第2部分に固定化された「特定物質に対する第二の抗体」を用いて、サンドイッチアッセイ法により検出することができる。あるいは抗原抗体反応は、第1部分に保持されている標識された特定物質と、第2部分に固定化された特定物質に対する抗体を用いて競合法にて検出してもよい。但し、本発明においては、検出感度が高く、陽性で抗体検出ライン出現するサンドイッチアッセイ法が好ましい。

0040

イムノクロマトグラフ装置は、イムノクロマトグラフ法によって乳汁中の特定物質を検出するための装置であって、該特定物質に対する標識された第一の抗体または標識された該特定物質が保持された第1部分と、該第1部分の下流に連結され、かつ該特定物質に対する第二の抗体が固定化された第2部分と、該第1部分または該第2部分の上流に連結され、かつ該乳汁中の乳脂肪球を除去できる空隙を有する第3部分とを有する試験片を含む装置である。具体的な試験片の構成としては、図2に断面模式図を示した試験片が挙げられる。図2においては、脂肪球除去用部材(第3部分)7は、試料添加用部材4の下流、かつ標識抗体含浸部材(第1部分)1の上流に設置されている。

0041

イムノクロマトグラフ装置は公知の方法にて市販の材料を用いて作製することができる。

0042

第1部分に使用する材料は、イムノクロマトグラフを行えるものであれば特に限定されないが、好ましくは、セルロース誘導体等の繊維マトリックス濾紙ガラス繊維、布、綿等である。

0043

第2部分に使用する材料は、イムノクロマトグラフを行えるものであれば特に限定されないが、好ましくは、ニトロセルロース、混合ニトロセルロースエステル、ポリビニリデンフロライドナイロン等である。

0044

第3部分に使用する材料は、乳汁中に含まれる直径1〜10数μmの乳脂肪球を除去できる空隙を有していることが好ましい。第3部分は、試料溶液孔径数10〜数100nmの多孔性メンブレンからなる上記第2部分の上流側に配置されている必要があり、試料溶液が最初に接触・通過できる位置である、上記第1部分の上流側に配置されていることが好ましい。

0045

第3部分が有する空隙は乳脂肪球を分離できる大きさであればよく、保持粒子サイズは好ましくは0.1から10μmであり、より好ましくは1から3.5μmである。材料は上記の範囲の空隙を有するものであれば特に限定されないが、好ましくはセルロース誘導体等繊維マトリックス、濾紙、ガラス繊維、布、綿等である。保持粒子サイズとは、そのサイズ以上の粒子サイズを有する乳脂肪球が空隙を通過できずに第3部分に保持される乳脂肪球の粒子サイズのことであり、第3部分の空隙の平均ポアサイズに実質的に対応しているが、そのサイズ以上の粒子サイズを有する乳脂肪球の50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは98%以上が空隙を通過できずに第3部分に保持される。保持される乳脂肪球の割合は当業者に周知の方法で測定することができる。例えば、GEヘルスケアバイオサイエンス社から提供されているGF/Bは保持粒子サイズ(保持効率98%の粒子直径のこと。本明細書で保持粒子サイズというときは、特に記載した場合を除き、この意味である。)が1.0μmであることが同製品カタログにおいて明らかにされているが、当業者に周知の方法で上記の粒子サイズを確認することが可能である。

0046

上記第3部分は、特定の保持粒子サイズを有する材料のみを用いてもよく、乳脂肪球の分離効率を高めるために保持粒子サイズが大きいものから小さいものを段階的に張り合わせて用いてもよい。上記第3部分がそれぞれ異なる粒子サイズの乳脂肪球を除去できる空隙を有する2種以上の部材により構成される場合は本発明の好ましい態様であり、第3部分が下流に配置された第一の部材、および上流に配置された第二の部材により構成され、第二の部材の保持粒子サイズが第一の部材の保持粒子サイズより大きい場合は本発明のさらに好ましい態様である。第3部分を2種の部材により構成する場合には、下流に配置された第一の部材の保持粒子サイズが1.0〜2.0μmであり、上流に配置された第二の部材の保持粒子サイズが3.0〜3.5μmであることが好ましい。高濃度で広い粒径分布を有する乳脂肪球を含む乳汁、好ましくは搾乳後の未希釈の乳汁から特定物質を高感度に検出するためは、第3部分を保持粒子サイズの小さな部材と保持粒子サイズの大きな部材との組み合わせにより構成することが好ましい。

0047

上記第1部分には、特定物質に対する標識された第一の抗体、または標識された特定物質が保持されている。第1部分に、特定物質に対する標識された第一の抗体が保持されている場合には、サンドイッチアッセイ法により特定物質を検出することができる。また、第1部分に標識された特定物質が保持されている場合には、競合法により特定物質を検出することができる。本発明においては、検出感度が高く、陽性で抗体検出ラインが出現するサンドイッチアッセイ法の方が好ましいことから、第1部分には、特定物質に対する標識された第一の抗体が保持されていることが好ましい。

0048

第1部分に特定物質に対する標識された第一の抗体を保持させる場合には、特定物質に対する第一の抗体と、特定物質に対する第二の抗体の、2種類の抗体を用いる。サンドイッチアッセイ法により特定物質を検出することができるように、上記第一の抗体と上記第二の抗体は、当該特定物質に同時に結合できることができる抗体であり、上記第一の抗体が認識する当該特定物質のエピトープは、上記第二の抗体が認識する当該特定物質のエピトープとは異なることが好ましい。

0049

本発明において、検出可能な信号を得るために、第1部分に保持される第一の抗体または特定物質は標識されている。本発明で用いる標識としては、着色粒子、酵素、ラジオアイソトープなどが挙げられるが、特殊な設備不要で目視によって検出可能な着色粒子を使用することが好ましい。着色粒子としては、金や白金などの金属微粒子非金属粒子ラテックス粒子などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。着色粒子は、試験片の空隙内を通って下流に輸送されることができるサイズであればいかなるサイズでもよいが、直径が1nmから10μmが好ましい。より好ましくは、5nmから1μmであり、さらに好ましくは10nmから100nmである。

0050

[検出対象]
本発明により、乳汁中の大腸菌群を検出できる。本発明で「大腸菌群」というときは、特に記載した場合を除き、大腸菌(Escherichia coli)、クレブシエラ(Klebsiella)属細菌サイトロバクターCitrobacter)属細菌、エンテロバクター(Enterobacter)属細菌およびプロテウス(Proteus)属細菌が含まれる。クレブシエラ属細菌には、Klebsiella pneumoniaeおよびKlebsiella oxytocaが含まれる。本発明においては、溶菌酵素と界面活性剤が適切に配合された溶菌剤を用いることにより、牛等の家畜から得られた、乳脂肪球と高濃度のタンパク質を含有する乳汁そのものに含まれ大腸菌群を検出することができる。

0051

本発明で測定される特定物質は、イムノクロマトグラフ法で測定できる物質であれば何れでも可能であるが、細菌の成分または細菌が分泌する物質であることが好ましい。さらに好ましくは、細菌のL7/L12リボゾームタンパク質である。L7/L12リボソームタンパク質は、細胞内に多コピー存在するために検出感度が高い。また、後の実施例で示すように、以下に記載の公知の方法により、乳房炎の原因となる特定の細菌を他の細菌と種または属で識別可能な抗体を実際に取得可能である。細菌の種類は特に限定されず、グラム陽性菌またはグラム陰性菌のいずれであってもよい。例えば、ブドウ球菌スタフィロコッカス属に属する細菌)、好ましくは黄色ブドウ球菌などのグラム陽性菌、または大腸菌やクレブシエラ属に属する細菌などを例示することができるが、これらに限定されることはない。

0052

[抗体]
上記の抗体は、国際公開第00/06603号パンフレットに記載の方法で作製することができる。細菌リボゾームタンパク質L7/L12を抗原とする場合は、細菌リボゾームタンパク質L7/L12の全長タンパク質あるいはその部分ペプチドを抗原として用いて作製することができるが、全長タンパク質を抗原として作製することが好ましい。この部分ペプチドあるいは全長タンパク質をそのまま、またはキャリアタンパク質架橋した後必要に応じてアジュバントとともに動物へ接種せしめ、その血清回収することでL7/L12リボソームタンパク質を認識する抗体(ポリクローナル抗体)を含む抗血清を得ることができる。また抗血清より抗体を精製して使用することもできる。接種する動物としてはヒツジウマ、ヤギ、ウサギマウスラット等であり、特にポリクローナル抗体作製にはヒツジ、ウサギなどが好ましい。また、抗体としてはハイブリドーマ細胞を作製する公知の方法により取得したモノクローナル抗体を適用することがより好ましいが、この場合はマウスが好ましい。当該モノクローナル抗体として、乳房炎の原因となる特定の細菌のリボゾームタンパク質L7/L12と反応し、前記特定の細菌以外の乳房炎の原因となる細菌のリボゾームタンパク質L7/L12とは反応しないモノクローナル抗体をスクリーニングすることにより、当該細菌による感染症にかかっているかどうかの診断に役立てることが可能となる。

0053

抗体が乳房炎の原因となる特定の細菌の成分または該細菌が分泌する物質と反応し、前記特定の細菌以外の乳房炎の原因となる細菌の成分または該細菌が分泌する物質とは反応しないモノクローナル抗体であれば、リボゾームタンパク質L7/L12以外を抗原として認識する抗体であっても使用することができる。

0054

また、モノクローナル抗体としては、乳汁中に含まれる特定物質以外の夾雑物により抗原抗体反応が阻害されないモノクローナル抗体を用いることが好ましい。例えば、乳汁中にはカゼインなどのタンパク質が大量に含まれており、特定物質とモノクローナル抗体との反応を阻害する場合がある。特定物質に対するモノクローナル抗体を常法により製造するにあたり、例えばカゼインなどにより抗原抗体反応が阻害を受けないモノクローナル抗体や、抗原抗体反応への影響が少ないモノクローナル抗体を適宜選択して用いることが好ましい場合がある。このようなモノクローナル抗体は、通常の方法に従って抗原に対して特異的に反応するモノクローナル抗体を製造した後に、カゼインなどの夾雑物の存在下で抗原抗体反応が阻害されるか否かを調べて、実質的に反応の阻害を受けないモノクローナル抗体を選択することにより容易に取得することができる。

0055

[その他]
本発明においては、上述した試験片をそのまま使用してイムノクロマトグラフ装置としてもよいし、ケース収納して、イムノクロマトグラフ装置としてもよい。前者の場合は、試料となる乳汁の量が多い場合に、容器に入った試料に直接試験片の一端を浸して使用することが好ましい。また、後者の場合は、試料となる乳汁の量が少ない場合に、ピペット等で所定量を計量して試験片に滴下して使用することが好ましい。後者の場合のケースの形状は、試験片を収納できればいかなる形状でもよい。ケースの材料はいかなる材料でもよく、ポリプロピレンポリカーボネートなどが好ましいものとしてあげられる。

0056

本発明のイムノクロマトグラフ装置は、容器、たとえばマイクロチューブ、および添加液、例えば細菌を溶菌させてリボゾームタンパク質L7/L12を溶液内に溶出させるための、溶菌酵素または界面活性剤を含む添加液を組合せたキットとして提供することもできる。

0057

実施例1:イムノクロマトグラフ法による大腸菌の検出におけるリゾチームおよび非イオン界面活性剤存在下でのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の効果
(1)リボゾームタンパク質L7/L12に対するモノクローナル抗体の作製金コロイド標識する抗体には、Escherichia coli(大腸菌)リボソームタンパク質L7/L12モノクローナル抗体を使用した。国際公開WO00/06603号パンフレットの実施例5に記載の方法に準じて、大腸菌Escherichia coliのL7/L12リボゾームタンパク質を取得し、同タンパク質を用いてモノクローナル抗体を作製した。当該モノクローナル抗体は、上記およびその他の大腸菌群の菌種のL7/L12リボゾームタンパク質の別のサイトに同時に結合しうる2種(EC-1およびEC-2)の組合せを選択した。

0058

(2)イムノクロマトグラフ装置の作製 イムノクロマトグラフ装置は以下のように作製した。(a)金コロイド標識含浸部材BBInternational社製金コロイド溶液(粒径60nm)0.9mLに0.1Mリン酸カリウムpH7.0を混合し、金コロイド標識するモノクローナル抗体EC-2を100μg/mL加え室温で10分間静置し、この抗体を金コロイド粒子表面に結合させた後、金コロイド溶液における最終濃度が1%となるようにウシ血清アルブミンBSA)10%水溶液を加え、この金コロイド粒子の残余の表面をBSAでブロッキングして、金コロイド標識したモノクローナル抗体EC-2(以下、「金コロイド標識抗体」と記す)溶液を調製した。この溶液を遠心分離(15000×rpm、5分間)して金コロイド標識抗体を沈殿せしめ、上清液を除いて金コロイド標識抗体を得た。この金コロイド標識抗体を0.25%BSA、2.5%スクロース、35mm NaClを含有する20mmトリス塩酸緩衝液(pH8.2)に懸濁して金コロイド標識抗体溶液を得た。10mm×300mmの帯状グラスファイバーパットに、金コロイド標識抗体溶液2mLを含浸せしめ、これを室温で減圧乾燥させて金コロイド標識抗体含浸部材1(第1部分)とした。

0059

(b)抗原および金コロイド標識抗体との複合体の捕捉部位幅25mm、長さ300mmのニトロセルロース膜クロマトグラフ媒体のクロマト展開用膜担体2(第2部分)として用意した。モノクローナル抗体EC-1 1.5mg/mLが含有されてなる溶液を、このクロマト展開用膜担体2におけるクロマト展開開始点側の末端から10mmの位置に1μL/cmでライン状に塗布して、これを50℃で30分間乾燥し、その後、0.5%スクロース溶液に30分浸し、一晩室温で乾燥させた。Escherichia coliリボソームタンパク質L7/L12抗原と金コロイド標識抗体との複合体の捕捉部位3とした。

0060

(c)イムノクロマトグラフ装置の作製 イムノクロマトグラフ装置断面図を図1に示す。上記標識抗体含浸部材1、上記クロマト展開用膜担体2の他に、試料添加用部材と脂肪球除去用部材(第3部分)とを兼ねる部材として25mmのGF/DVA(GEヘルスケアバイオサイエンス製:ガラス繊維からなる、厚み776μm、保持粒子サイズ3.5μmのフィルター部材4)および20mmのGF/AVA(GEヘルスケアバイオサイエンス製:ガラス繊維からなる、厚み299μm、保持粒子サイズ1.7μmのフィルター部材7)を貼り合わせ、さらに、吸収用部材5として濾紙を用意した。そして、これらの部材を基材6(厚さ254μm、ポリスチレン製で部材を貼り合わせるための粘着材がついたもの)に貼り合せた後、5mm幅に切断し、イムノクロマトグラフ装置を作製した。

0061

(3)試験イムノクロマトグラフ装置による牛乳の測定は以下のように行った。マイクロチューブに終濃度1×105(cfu/ml)の大腸菌(ATCC25922株)または大腸菌群の一菌種であるKlebsiella pneumoniae(ATCC 13883株)を添加した乳汁を100μl分取し、溶菌処理液(終濃度1% TritonX-100、2.2 mg/mlリゾチーム(和光純薬製、力価0.8mgリゾチーム/mg乾燥物換算)、0.1M MOPSO pH7.5、)150μlを加えて室温で混合し、10分間静置した。

0062

牛乳汁は市販の飲用品を用いた。同混合溶液に上記イムノクロマトグラフ装置を試料添加用部材4から浸漬して、室温で30分静置して展開後、上記補足部位3で補足されたリボソームタンパク質L7/L12抗原と金コロイド標識抗体との複合体の捕捉の有無を捕捉量に比例して増減する赤紫色のラインを装置C10066(浜松ホトクス製)にて測定した。あらかじめ終濃度1.0%TritonX-100にて終夜撹拌後、超音波処理(出力10、1min×10回)した菌液を、2.2 mg/mlリゾチーム、0.1M MOPSO pH7.5にて37℃、60分間溶菌処理した菌液の溶菌率を100%として各条件における溶菌率を算出した。上記溶菌処理液に終濃度0.01%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を添加した場合(条件2)としていない場合(条件1)について比較を行った。

0063

結果を図2に示す。SDSを添加した場合、溶菌率が大きく向上していることが明らかとなった。

0064

実施例2:イムノクロマトグラフ法による大腸菌の検出における溶菌酵素および非イオン界面活性剤存在下でのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の効果
イムノクロマトグラフ装置による牛乳汁の測定は以下のように行った。

0065

マイクロチューブに終濃度1×105(cfu/ml)の大腸菌を添加した乳汁を100μl分取し、溶菌処理液(終濃度1% TritonX-100、2.2 mg/mlリゾチーム、0.1M MOPSO pH7.5)150μlを加えて室温で混合し、10分間静置した。牛乳汁は市販の飲用品を用いた。同混合溶液に上記イムノクロマトグラフ装置を試料添加用部材4から浸漬して、室温で30分静置して展開後、上記補足部位3で補足されたリボソームタンパク質L7/L12抗原と金コロイド標識抗体との複合体の捕捉の有無を捕捉量に比例して増減する赤紫色のラインを装置C10066(浜松ホトニクス製)にて測定した。上記溶菌処理液にSDSを濃度を変えて添加し、実施例1と同様の方法にてあらかじめ溶菌処理した菌液を用いた場合の溶菌率を100%としてSDSの各濃度(終濃度0.01〜0.15%)における溶菌率を算出した。

0066

結果を図3に示す。特定の濃度範囲においては、SDSの濃度の増加に伴い、溶菌率が大きく向上することが明らかとなった。

0067

実施例3:イムノクロマトグラフ法による乳汁サンプルの測定
乳房炎の牛からの乳汁サンプルを対象としてイムノクロマトグラフ法を実施した。測定は実施例2に準じて行い、出現した赤紫色のラインを目視により判定した(陽性+、陰性-)。溶菌処理液は、終濃度1% TritonX-100、0.1M MOPSO pH7.5に、2.2 mg/mlリゾチームおよび0.01% SDS(いずれも終濃度としての値)を添加した場合としていない場合について比較した。一方、乳汁中の大腸菌の数を確認するために、定量PCR法により定量を行った。乳汁100μlからDNA mini kit(Qiagen社製)を用いてゲノムDNAを抽出後、Quantification of Escherichia coli (all strains) (PrimerDesign社製)を用いてPCRを実施し、乳汁中の大腸菌量を定量した。

0068

PCRによって算出した大腸菌の数およびイムノクロマト法による判定結果を表1に示す。リゾチームおよびSDSを含む溶菌処理液を用いることで、これまで測定できなかった乳汁中の大腸菌を検出できるようになった。乳汁中の大腸菌の菌量は106(cells/ml)以上が大部分であるため、本溶菌処理液を用いることで診断感度が大きく向上することが明らかとなった。

実施例

0069

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