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技術 細胞の蛍光免疫染色方法ならびにそのためのシステムおよびキット

出願人 コニカミノルタ株式会社
発明者 増渕茉奈美荒木淳吾千代田恒子
出願日 2014年9月18日 (7年5ヶ月経過) 出願番号 2015-553404
公開日 2017年3月16日 (4年11ヶ月経過) 公開番号 WO2015-093116
状態 特許登録済
技術分野 生物学的材料の調査,分析
主要キーワード 対眼レンズ 逆円錐台形 天板部材 光学系機構 分析基板 固定化液 作製材料 浸透化剤
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年3月16日)のものです。
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図面 (5)

課題・解決手段

本発明は一般的な構成の装置を用いて、同一の細胞が有する多種類の抗原を対象として、染色性に優れた多重蛍光免疫染色を行うことのできる方法を提供することを課題とする。本発明に係る蛍光免疫染色工程は、細胞が有する少なくとも1種の抗原に、当該抗原に対応した蛍光標識抗体抗原抗体反応により結合させる処理を含む、最初の蛍光免疫染色工程を行った後、下記(1)および(2)を含む工程のセットを少なくとも1回行うことを特徴とする、蛍光免疫染色方法:(1)抗原抗体反応により結合している抗原と蛍光標識抗体とを解離させる処理を含む、抗原抗体解離工程;(2)細胞が有する少なくとも1種の抗原に、当該抗原に対応した少なくとも1種の蛍光標識抗体を、抗原抗体反応により結合させる処理を含む、蛍光免疫染色工程である。

概要

背景

血液循環癌細胞(CTCs:Circulating Tumor Cells)は、乳癌肺癌前立腺癌膵臓癌などの患者の血中に見出される細胞であり、その数は癌の転移性を反映しているなど、臨床上の重要な情報になることで注目されている。しかしながら、血液中のCTCの密度は極めて低く(少ない場合、全血10mLあたり1〜10個程度)、その検出および計数は容易ではない。また、CTCが発現しているバイオマーカープロファイリングは、その原発性がんのバイオマーカーのプロファイリングとの比較を通じて転移メカニズム解明したり、有用な抗がん剤分子標的薬)を判定したり、CTCの亜集団上皮細胞間葉系細胞幹細胞などの特性を有するCTC)を特定したりなど、様々な観点からCTCの研究を進めるためにも重要である。

上記のような目的でCTCの検出、計数やバイオマーカーのプロファイリングをする際には、バイオマーカーとなる複数の種類の抗原分子蛍光標識抗体を結合させる、多重蛍光免疫染色が一般的に行われている。たとえば非特許文献1には、CTCのバイオマーカーであるサイトケラチンおよび白血球のバイオマーカーである(CTCでは陰性になる)CD45それぞれに対応する蛍光標識抗体を用いて免疫染色すると同時に、細胞の位置を特定するために核染色をする(DNAにインターカレートする蛍光色素分子を用いているため免疫染色ではない)ことにより、血液中からCTCを検出する方法が記載されている。この文献に記載されている方法では、蛍光免疫染色に用いるのは2色だけであるが、3〜4色用いる場合もある。

さらに、非特許文献2には、最初に、核染色と共に、3種類の抗原を標的とした3色の蛍光標識抗体を用いて同時に蛍光免疫染色し、そのうち核染色と蛍光免疫染色のうちの1色(CD45を標的とする蛍光標識抗体)を細胞の性質を認識するために維持しつつ、蛍光免疫染色のうちの2色を光褪色させ、その2色と同じ蛍光色素を用いつつ別の2種類の抗原を標的とした蛍光標識抗体を用いて蛍光免疫染色するという操作を3回繰り返すことにより、合計3色(核染色も含めれば4色)で、9種類の分子(核染色も含めれば10種類)を標的とした多重蛍光免疫染色を実現する方法が記載されている。

概要

本発明は一般的な構成の装置を用いて、同一の細胞が有する多種類の抗原を対象として、染色性に優れた多重蛍光免疫染色を行うことのできる方法を提供することを課題とする。本発明に係る蛍光免疫染色工程は、細胞が有する少なくとも1種の抗原に、当該抗原に対応した蛍光標識抗体を抗原抗体反応により結合させる処理を含む、最初の蛍光免疫染色工程を行った後、下記(1)および(2)を含む工程のセットを少なくとも1回行うことを特徴とする、蛍光免疫染色方法:(1)抗原抗体反応により結合している抗原と蛍光標識抗体とを解離させる処理を含む、抗原抗体解離工程;(2)細胞が有する少なくとも1種の抗原に、当該抗原に対応した少なくとも1種の蛍光標識抗体を、抗原抗体反応により結合させる処理を含む、蛍光免疫染色工程である。

目的

本発明は、上述したような課題を解決するために、一般的な構成の装置を用いて、同一の細胞が有する多種類の抗原を対象として、染色性に優れた多重蛍光免疫染色を行うことのできる方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

細胞が有する少なくとも1種の抗原に、当該抗原に対応した蛍光標識抗体抗原抗体反応により結合させる処理を含む、最初の蛍光免疫染色工程を行った後、下記(1)および(2)を含む工程のセットを少なくとも1回行うことを特徴とする、蛍光免疫染色方法:(1)抗原抗体反応により結合している抗原と蛍光標識抗体とを解離させる処理を含む、抗原抗体解離工程;(2)細胞が有する少なくとも1種の抗原に、当該抗原に対応した少なくとも1種の蛍光標識抗体を、抗原抗体反応により結合させる処理を含む、蛍光免疫染色工程。

請求項2

前記抗原抗体解離工程における処理を、pHが1.0〜6.0の酸を用いて行う、請求項1に記載の蛍光免疫染色方法。

請求項3

前記細胞が最初の抗原抗体解離工程の前に固定化処理されている、請求項1または2に記載の蛍光免疫染色方法。

請求項4

前記細胞が、細胞観察基板上に、細胞表面の抗原と細胞観察用基板に固定されている抗体との間の抗原抗体反応による結合以外の手段で固相化されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光免疫染色方法。

請求項5

前記最初の蛍光免疫染色工程および2回目以降の蛍光免疫染色工程において、少なくとも1種の抗原を同一の種類のものとする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光免疫染色方法。

請求項6

前記細胞が検体に含まれる細胞または培養された細胞である、請求項1〜5の何れか一項に記載の蛍光免疫染色方法。

請求項7

請求項1〜6のいずれか一項に記載の蛍光免疫染色方法を利用した細胞観察システムであって、細胞が有する少なくとも1種の抗原に、当該抗原に対応した蛍光標識抗体を抗原抗体反応により結合させる処理のために、当該蛍光標識抗体溶液を送液し、最初の蛍光免疫染色工程を行った後、下記(1)および(2)を含む工程のセットを少なくとも1回行うための手段を備えることを特徴とする、細胞観察システム:(1)抗原抗体反応により結合している抗原と蛍光標識抗体とを解離させる処理のために解離液を送液する、抗原抗体解離工程;(2)細胞が有する少なくとも1種の抗原に、当該抗原に対応した少なくとも1種の蛍光標識抗体を、抗原抗体反応により結合させる処理のために、当該蛍光標識抗体溶液を送液する、蛍光免疫染色工程。

請求項8

さらに、蛍光免疫染色された細胞から発せられる蛍光の強度を測定する手段およびその測定結果統合する手段、蛍光免疫染色された細胞の蛍光画像撮影する手段およびその撮影画像を統合する手段、またはこれらの両方を備えた、請求項7に記載の細胞観察システム。

請求項9

請求項1〜6のいずれか一項に記載の蛍光免疫染色方法に利用するためのキットであって、細胞が有する少なくとも1種の抗原に対応した蛍光標識抗体を調製するための試薬、および抗原抗体反応により結合している抗原と蛍光標識抗体とを解離させる処理のための試薬を含む、蛍光免疫染色キット

請求項10

請求項7または8に記載の細胞観察システムに利用するためのキットであって、請求項9に記載の蛍光免疫染色キットの構成品と、細胞回収デバイスおよび/または試薬収容器を含む、細胞観察キット。

技術分野

0001

本発明は、細胞が有する複数の抗原を対象として蛍光免疫染色する多重蛍光免疫染色方法、ならびに当該方法を実施するためのシステムおよびキットに関する。

背景技術

0002

血液循環癌細胞(CTCs:Circulating Tumor Cells)は、乳癌肺癌前立腺癌膵臓癌などの患者の血中に見出される細胞であり、その数は癌の転移性を反映しているなど、臨床上の重要な情報になることで注目されている。しかしながら、血液中のCTCの密度は極めて低く(少ない場合、全血10mLあたり1〜10個程度)、その検出および計数は容易ではない。また、CTCが発現しているバイオマーカープロファイリングは、その原発性がんのバイオマーカーのプロファイリングとの比較を通じて転移メカニズム解明したり、有用な抗がん剤分子標的薬)を判定したり、CTCの亜集団上皮細胞間葉系細胞幹細胞などの特性を有するCTC)を特定したりなど、様々な観点からCTCの研究を進めるためにも重要である。

0003

上記のような目的でCTCの検出、計数やバイオマーカーのプロファイリングをする際には、バイオマーカーとなる複数の種類の抗原分子蛍光標識抗体を結合させる、多重蛍光免疫染色が一般的に行われている。たとえば非特許文献1には、CTCのバイオマーカーであるサイトケラチンおよび白血球のバイオマーカーである(CTCでは陰性になる)CD45それぞれに対応する蛍光標識抗体を用いて免疫染色すると同時に、細胞の位置を特定するために核染色をする(DNAにインターカレートする蛍光色素分子を用いているため免疫染色ではない)ことにより、血液中からCTCを検出する方法が記載されている。この文献に記載されている方法では、蛍光免疫染色に用いるのは2色だけであるが、3〜4色用いる場合もある。

0004

さらに、非特許文献2には、最初に、核染色と共に、3種類の抗原を標的とした3色の蛍光標識抗体を用いて同時に蛍光免疫染色し、そのうち核染色と蛍光免疫染色のうちの1色(CD45を標的とする蛍光標識抗体)を細胞の性質を認識するために維持しつつ、蛍光免疫染色のうちの2色を光褪色させ、その2色と同じ蛍光色素を用いつつ別の2種類の抗原を標的とした蛍光標識抗体を用いて蛍光免疫染色するという操作を3回繰り返すことにより、合計3色(核染色も含めれば4色)で、9種類の分子(核染色も含めれば10種類)を標的とした多重蛍光免疫染色を実現する方法が記載されている。

先行技術

0005

D.Marrinucci et al., Arch Pathol Lab Med, 133 (2009) 1468-1471
M.Zhao et al. Methods(2013), http://dx.doi.org/10.1016/j.ymeth.2013.08.006

発明が解決しようとする課題

0006

検体由来のがん細胞は均質ではなく(ヘテロ性が高く)、各々の細胞で分子発現のパターンが異なっている。そのため、回収した細胞をいくつかのグループに分割して、それぞれのグループで異なる分子発現を解析し、その結果を統合するというやり方は適切ではなく、同一の細胞上で複数の分子発現を解析し、その性質を確認することが重要である。特にCTCのような稀少細胞は、分子発現を解析するために多くの細胞を確保することができない場合もあるため、細胞が少なくても確実に分子発現を解析できる手法が求められる。

0007

従来のように、同一の細胞に複数の種類の蛍光標識抗体を結合させる蛍光多重免疫染色をしようとすると、複数の蛍光のそれぞれの波長に適した励起光光源フィルターが必要になるため、蛍光を観察するための装置の構成が複雑化し、大型で高価な装置を作製しなければならなくなる。同時に利用できるフィルターは8種類程度という限界もある。

0008

一方で、非特許文献2に記載された方法では、光褪色により蛍光をリセットしているものの、蛍光標識抗体は抗原に結合したままであり、免疫染色自体がリセットされているわけではない。そのため、別分子の免疫染色判定(+/−)の信頼性を得るためのコントロールとして同一分子を免疫染色したい場合であっても、すでに抗体が反応しているため行うことができない(一度光褪色させると、再び蛍光を発するようにはできない)。しかも、先に免疫染色した抗体により立体障害が起こり、その抗原分子の近傍に発現した別の抗原分子の免疫染色が阻害される可能性もある。また、光褪色させるために照射する励起波長領域がリセットしたくない蛍光(たとえば核染色)の励起波長領域と重なり、徐々に褪色させてしまう可能性がある。

0009

本発明は、上述したような課題を解決するために、一般的な構成の装置を用いて、同一の細胞が有する多種類の抗原を対象として、染色性に優れた多重蛍光免疫染色を行うことのできる方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは、蛍光標識抗体が抗原に結合している蛍光免疫染色された細胞を酸などで処理することにより、蛍光標識抗体を解離させることができ、続いて別の抗原を対象とする蛍光標識抗体の溶液で処理することにより、その蛍光標識抗体で細胞を蛍光免疫染色できること、そしてこれらの解離および結合を複数回繰り返すことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。

0011

酸等が抗原抗体反応の結合を解離させる作用を有すること自体は知られており、例えば、抗原抗体反応をはじめとする分子間相互作用を測定するための分析システム(Biacore、QCMなど)において、分析基板の表面に固定化された抗体で捕捉した抗原を解離させる再生液として用いられている。しかしながら、そのような酸等を、分析の目的もシステムも異なる、CTCのような稀少細胞の免疫染色における蛍光標識抗体の解離剤として用いることができること、特に、この解離剤で繰り返し処理しても、細胞に大きなダメージを与えず、新たに別の抗原を対象とした免疫染色処理を繰り返し行え、新たな形態の多重蛍光免疫染色が可能になることは、これまで知られておらず、当業者にとって意外なことである。というのも、細胞のような外部刺激に対して弱い物質に対しては測定を正確に行うためにも極力ダメージを生じないように実験を行うのが通常だからである。そのため本発明のようにダメージを受けやすい物質である細胞に、解離剤を用いることは当業者であれば通常考えないことである。

0012

すなわち、本発明は一つの側面において、前述した課題を解決した蛍光免疫染色方法を提供し、さらなる側面において、その蛍光免疫染色方法を利用した細胞観察システムを提供する。また、本発明は異なる側面において、それらの蛍光免疫染色方法および細胞観察システムのそれぞれに利用するためのキットを提供する。このような本発明は、以下の各発明を包含する。

0013

[1]細胞が有する少なくとも1種の抗原に、当該抗原に対応した蛍光標識抗体を抗原抗体反応により結合させる処理を含む、最初の蛍光免疫染色工程を行った後、下記(1)および(2)を含む工程のセットを少なくとも1回行うことを特徴とする、蛍光免疫染色方法:
(1)抗原抗体反応により結合している抗原と蛍光標識抗体とを解離させる処理を含む、抗原抗体解離工程;
(2)細胞が有する少なくとも1種の抗原に、当該抗原に対応した少なくとも1種の蛍光標識抗体を、抗原抗体反応により結合させる処理を含む、蛍光免疫染色工程。

0014

[2] 前記抗原抗体解離工程における処理を、pHが1.0〜6.0の酸を用いて行う、[1]に記載の蛍光免疫染色方法。
[3] 前記細胞が最初の抗原抗体解離工程の前に固定化処理されている、[1]または[2]に記載の蛍光免疫染色方法。

0015

[4] 前記細胞が、細胞観察基板上に、細胞表面の抗原と細胞観察用基板に固定されている抗体との間の抗原抗体反応による結合以外の手段で固相化されている、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の蛍光免疫染色方法。

0016

[5] 前記最初の蛍光免疫染色工程および2回目以降の蛍光免疫染色工程において、少なくとも1種の抗原を同一の種類のものとする、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の蛍光免疫染色方法。

0017

[6] 前記細胞が検体に含まれる細胞または培養された細胞である、[1]〜[5]の何れか一項に記載の蛍光免疫染色方法。
[7] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の蛍光免疫染色方法を利用した細胞観察システムであって、
細胞が有する少なくとも1種の抗原に、当該抗原に対応した蛍光標識抗体を抗原抗体反応により結合させる処理のために、当該蛍光標識抗体溶液を送液し、最初の蛍光免疫染色工程を行った後、下記(1)および(2)を含む工程のセットを少なくとも1回行うための手段を備えることを特徴とする、細胞観察システム:
(1)抗原抗体反応により結合している抗原と蛍光標識抗体とを解離させる処理のために解離液を送液する、抗原抗体解離工程;
(2)細胞が有する少なくとも1種の抗原に、当該抗原に対応した少なくとも1種の蛍光標識抗体を、抗原抗体反応により結合させる処理のために、当該蛍光標識抗体溶液を送液する、蛍光免疫染色工程。

0018

[8] さらに、蛍光免疫染色された細胞から発せられる蛍光の強度を測定する手段およびその測定結果を統合する手段、蛍光免疫染色された細胞の蛍光画像撮影する手段およびその撮影画像を統合する手段、またはこれらの両方を備えた、[7]に記載の細胞観察システム。

0019

[9] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の蛍光免疫染色方法に利用するためのキットであって、
細胞が有する少なくとも1種の抗原に対応した蛍光標識抗体を調製するための試薬、および抗原抗体反応により結合している抗原と蛍光標識抗体とを解離させる処理のための試薬を含む、蛍光免疫染色キット

0020

[10] [7]または[8]に記載の細胞観察システムに利用するためのキットであって、
[9]に記載の蛍光免疫染色キットの構成品と、細胞回収デバイスおよび/または試薬収容器を含む、細胞観察キット。

発明の効果

0021

本発明の蛍光免疫染色方法を用いれば、多数の光源等を有する必要性がなくなるため大型で高価な装置を用いることなく、かつ同一の細胞に発現している多種類の分子を蛍光免疫染色により検出し、それらの分析を行うことができる。また、本発明の蛍光免疫染色方法は、細胞観察システムにおいて自動化された操作により利用することも可能である。さらに本発明の蛍光免疫染色方法は、稀少細胞の検出やその発現プロファイリングなどを目的とした分析のみならず、多重蛍光免疫染色が必要とされている様々な用途に適用することが可能である。

図面の簡単な説明

0022

図1は、本発明の蛍光免疫染色方法の実施形態の一例を表す、フローチャートおよびそのときの免疫染色の状態の模式図である。
図2[A]は、本発明の細胞観察システムの実施形態の一例を表す模式図(側面図)である。図2[B]は、当該システムに用いられる細胞回収デバイスの実施形態の一例を示す模式図(上面図)である。
図3は、本発明の細胞観察システムを用いた細胞観察方法の実施形態の一例を表す、工程のフローチャートである。
図4は、実施例において染色された細胞を蛍光顕微鏡で観察した際の撮影画像である。

0023

−蛍光免疫染色方法−
図1に、本発明の蛍光免疫染色方法の実施形態の一例を表す、工程のフローチャートおよび各工程における免疫染色の状態の模式図を示す。

0024

本発明の蛍光免疫染色方法は、細胞が有する少なくとも1種の抗原に、当該抗原に対応した蛍光標識抗体を抗原抗体反応により結合させる処理を含む、最初の染色工程を行った後、下記(1)および(2)を含む工程のセットを少なくとも1回行う:
(1)抗原抗体反応により結合している抗原と蛍光標識抗体とを解離させる処理を含む、解離工程;
(2)細胞が有する少なくとも1種の抗原に、当該抗原に対応した蛍光標識抗体を抗原抗体反応により結合させる処理を含む、染色工程。

0025

解離工程(1)および染色工程(2)を含む工程のセットを行う回数は特に限定されるものではなく、解離剤の効果を考慮しながら調節することできる。このセットの回数は、1回だけであってもよいし(染色工程の回数としては最初のものも含めて合計2回)、2回(同じく3回)〜5回(同じく6回)、またはそれより多い回数であってもよい。
なお、(1)の解離工程および(2)の染色工程を含む工程のセットには、さらに、洗浄工程、観察工程など他の工程が含まれていてもよい。

0026

(染色工程)
染色工程では、細胞と蛍光標識抗体溶液とを接触させることにより、細胞が有する抗原にその蛍光標識抗体を結合させるようにする。細胞が有する抗原は、細胞表面に存在するものであってもよいし、細胞内部(原形質)に存在するものであってもよい。ただし、細胞内部の抗原を免疫染色の対象とする場合は、必要に応じて、細胞に対してあらかじめ浸透化処理をしておくようにする。

0027

また、染色工程では、細胞が有する抗原以外の物質(例えば核)に、抗原抗体反応以外の様式で蛍光物質(例えば核染色剤)を結合させる処理をあわせて行ってもよい。
細胞表面上の複数の種類の抗原に結合させるための蛍光標識抗体(さらに任意で核染色剤等)は、任意の順序で、1種類ずつ順番に細胞と接触させるようにしてもよいし、2種類以上またはすべてを同時に細胞と接触させるようにしてもよい。

0028

複数回の染色工程で用いられる複数の蛍光標識抗体(換言すれば対象とする抗原)は、全てが相違していてもよいし、一部が同一であってもよい。例えば、複数回の染色工程のそれぞれで2種類の蛍光標識抗体を用いる(2種類の抗原を対象とする)場合、そのうちの1種類は複数回の染色工程のすべてで同一にするようにし、もう1種類を複数回の染色工程のそれぞれで相違させるようにしてもよい。このように複数回の染色を同一の抗体で同一の分子について実施できると、複数回の染色工程で相違させた抗体の免疫染色判定(+/−)の信頼性を得るためのコントロールをとることができる。

0029

染色工程の時間、すなわち細胞と蛍光標識抗体溶液とを接触させる時間は、一般的な蛍光免疫染色を行う場合に準じて、免疫染色が十分に行われるよう適宜調整することができるが、通常は5分〜半日程度とすればよい。

0030

染色工程の温度、すなわち反応温度は、一般的な蛍光免疫染色を行う場合に準じて、免疫染色が十分に行われるよう適宜調整することができるが、通常は4〜37℃程度とすればよい。

0031

染色工程を行った後、必要に応じて洗浄液を添加し、未反応の蛍光標識抗体を除去してから(洗浄工程)、染色された細胞を観察し、観察像を撮影するようにする(観察工程)。蛍光免疫染色された細胞の観察方法は、従来の一般的な観察と同様でよく、蛍光標識抗体に用いられている蛍光物質(蛍光色素)に対応した適切な波長の励起光を照射し、適切なフィルターを用いて不要な波長成分をカットして、目的の抗原を標識する蛍光物質から発せられる蛍光を観測する。

0032

(解離工程)
抗原抗体解離工程では、細胞と解離液とを接触させることより、蛍光免疫染色工程で抗原に結合した蛍光標識抗体を解離させるようにする。この際、任意で用いてもよい、核染色剤のように抗原抗体反応以外の様式で結合している蛍光物質は、解離剤の影響を実質的に受けずに結合を維持したままである。抗原抗体解離工程の時間、すなわち細胞と解離液とを接触させる時間は、用いる解離剤の種類および濃度に応じて十分に解離する効果が得られるよう、適宜調整することができるが、例えば、pH1〜6の酸を解離剤として用いる場合は、通常は10秒〜30分間程度とすればよい。ただし、抗原性を失う程度の過剰な反応にならないように適宜調整するのが良い。

0033

(細胞)
蛍光免疫染色の対象とする細胞(集団)は特に限定されるものではないが、代表例としては、血液、尿、リンパ液組織液体腔液など、ヒトまたはその他の動物から採取された検体に含まれる細胞、あるいは培養された細胞(細胞株)が挙げられる。

0034

たとえば、血液中には通常、赤血球、白血球(好中球好酸球好塩基球リンパ球単球)などの血液細胞が含まれているが、さらに循環腫瘍細胞(CTC)、循環血管内皮細胞CEC)、循環血管内皮前駆細胞(CEP)、その他の前駆細胞などの稀少細胞が含まれている場合がある。また、培養されている細胞集団には、幹細胞、特定の分化細胞、その他の特徴的な細胞が含まれている場合がある。本発明の蛍光免疫染色方法は、そのような稀少細胞や特徴的な細胞を検出するために利用することができる。

0035

(抗原・抗体)
免疫染色の対象とする抗原は特に限定されるものではないが、CTC等の稀少細胞やその他の特徴的な細胞を検出する場合には、そのような細胞と他の細胞と区別するために利用されているマーカー分子を免疫染色の対象に含めることが好適である。マーカー分子には、細胞表面に発現するタンパク質と、細胞内部(細胞質)に発現するタンパク質があるが、本発明ではどちらを対象としてもよい。細胞表面に発現するタンパク質としては、例えば、白血球で陽性となりMCF−7(乳癌細胞)等のCTCで陰性となるCD45、白血球で陽性となりMCF−7等の上皮細胞としての性質を有するCTCで陽性となるEpCAM(Epithelial cell adhesion molecule:上皮細胞接着分子)などが挙げられる。細胞内部に発現するタンパク質としては、例えば、MCF−7等のCTCで陽性となり白血球では陰性となるサイトケラチンが挙げられる。これらの例示した抗原を対象として免疫染色を行った場合に、CD45が陰性で、サイトケラチンが陽性の細胞が検出されれば、その細胞はMCF−7であると判定することができる。

0036

一方、そのような抗原に対する抗体および蛍光標識抗体は公知の手法により作製することができる。例えば、市販されている各種のマーカー分子に対するモノクローナル抗体および蛍光標識キットを用いて、添付されているプロトコールに従い、モノクローナル抗体と蛍光色素のそれぞれが有する所定の官能基同士を所定の試薬の存在下に反応させて結合させることにより、あるいはビオチンアビジン結合を利用することにより、所望の蛍光標識抗体を作製することができる。

0037

(蛍光物質)
免疫染色のための蛍光物質は特に限定されるものではないが、例えば公知の様々な蛍光色素(分子)を用いることが好適である。免疫染色のための蛍光物質同士の励起光波長および蛍光波長ならびに次に述べる核染色の蛍光波長の関係性を考慮し、適切な複数枚カットフィルターを用いることでそれぞれの蛍光をうまく測定できるよう、適切な励起光波長および蛍光波長を有する蛍光物質を選択して用いればよい。

0038

一方、免疫染色ではなく核染色のためには、二本鎖DNAにインターカレートすることにより蛍光を発する蛍光色素(分子)を用いることが好適である。そのような蛍光色素は「核染色剤」として公知であり、例えば、細胞膜透過性があり生細胞の核染色が行えるHoechst系色素(Hoechst 33342, Hoechst 33258等)を用いることができる。また、細胞膜透過性がないため生細胞の核染色は行えないが、細胞膜変質しているため透過可能になっている死細胞の核染色が行えるDAPI(4',6-diamidino-2-phenylindole)を用いることもできる。

0039

1回の免疫染色に用いる蛍光物質の種類の数は特に限定されるものではないが、2種類または3種類程度が好ましい。本発明では、1回の免疫染色にm種類の蛍光物質を用いた場合、抗原抗体反応による結合とその解離を繰り返して合計n回の免疫染色を行うことで、延べm×n種類の抗原を対象とした免疫染色を行うことができる。細胞検出装置光学系機構過度に複雑化することを避けるためにも、蛍光物質の種類数mはさほど大きくする必要はない。

0040

(解離剤)
抗原抗体解離工程では、抗原抗体反応により結合している抗原と蛍光標識抗体とを解離させる処理のための試薬である解離剤(その水溶液である解離液)を用いる。解離液として用いる水溶液は、蛍光免疫染色方法を実施する前にあらかじめ調製しておけばよい。

0041

解離剤としては、抗原抗体反応の結合に寄与しているアフィニティ親和力)を弱める作用を有する物質を用いることができ、例えば、酸、アルカリ、塩、界面活性剤などが挙げられる。このうち酸は、細胞膜や抗原に対するダメージが比較的小さいため、繰り返し用いられる解離剤として好ましい。酸のpHは、1.0〜6.0が好ましい。酸は、塩酸硫酸硝酸リン酸等の無機酸であっても、カルボン酸ギ酸酢酸クエン酸シュウ酸等)、スルホン酸等の有機酸であってもよく、例えば、グリシン塩酸塩(pH1.5〜3程度)のように緩衝作用を有する塩を形成していてもよい。

0042

なお、界面活性剤は細胞膜を破壊する性質を持つ(浸透化剤として利用される)ため細胞に対するダメージが酸よりも強く、アルカリおよび塩は抗原に対するダメージが酸よりも強いが、限られた回数であれば解離剤として用いることも可能である。アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウムグリシン−水酸化ナトリウム塩(pH11程度の緩衝液)を用いることができる。塩としては、例えば塩化ナトリウム硫酸アンモニウムを用いることができる。界面活性剤としては、例えばSDS、塩酸グアニジンチオ硫酸カリウムを用いることができる。

0043

(検体の前処理方法
ヒトまたはその他の動物から採取された検体は、そこに含まれる細胞に対する免疫染色を行う上で必要な前処理を、あらかじめを行っておくことが適切である。検体としては、例えば血液(末梢血)、尿、リンパ液、組織液、体腔液など、細胞を含有している可能性のあるものを用いることができる。これらの検体に応じた前処理方法は公知であるが、以下、代表的な検体である血液についての前処理方法について説明する。

0044

抗凝固処理
採取されて体外に取り出された血液(全血)は、そのまま空気に触れさせると時間の経過と共に凝固し、そこに含まれる細胞を回収して観察することができなくなる。そのため、採取された血液は直ちに抗凝固処理することが好ましい。

0045

全血用の抗凝固剤としては様々なものが公知であり、一般的な濃度、処理時間等の条件に従って用いることができる。例えば、エチレンジアミン四酢酸EDTA)やクエン酸(ナトリウム塩等の塩を含む)に代表される、キレート作用によりカルシウムイオンと結合し、反応系から除去することによって凝固を阻止するタイプの抗凝固剤や、ヘパリンに代表される、血漿中のアンチトロンビンIII複合体を形成してトロンビンの産生を抑制することにより凝固を阻止するタイプの抗凝固剤が挙げられる。このような抗凝固剤があらかじめ収容された採血管を利用してもよい。

0046

密度勾配遠心処理
密度勾配遠心処理は、細胞を含む血液中の成分を比重に従って分画することができ、特に血液中に多量に含まれている赤血球を除去して、CTC等の目的細胞を含む白血球のみを細胞観察の対象とするために用いることができる。

0047

密度勾配遠心法に用いられる分離液は、血液中の細胞の分画に適した比重を有し、また細胞を破壊することのない浸透圧およびpHを有するよう溶接できるものであればよいが、例えば、市販されているフィコール登録商標)、パーコール(登録商標)などのショ糖溶液を用いることができる。この分離液の比重を、赤血球の比重よりも小さく、白血球の比重よりも大きくなるよう調節した上で密度勾配遠心処理を行うと、血液検体を「赤血球が多く含まれる画分」と「赤血球以外の細胞が多く含まれる画分」の少なくとも二層に分離することができる。例えば、分離液の比重を好ましくは1.113以下、より好ましくは1.085以下にすると、「赤血球以外の細胞が多く含まれる画分」への赤血球の混入率を2〜6%またはそれ以下に抑えることができる。「赤血球以外の細胞が多く含まれる画分」を用いて細胞観察を行うと、CTC等の目的細胞が赤血球に紛れて検出し損ねる危険性が低下し、診断の精度を高めることができるため好ましい。

0048

(細胞の前処理方法)
蛍光免疫染色処理に先立って、あるいはそれと同時に、細胞に対して必要に応じて、固定化処理、浸透化処理、ブロッキング処理、その他の前処理を行ってもよい。これらの前処理は、所期の効果が発揮される限り、任意の時点で、任意の順序で行うことができる。例えば、密度勾配遠心処理で細胞画分を得た後、観察用基板に固相化する前に、細胞の固定化処理をし、観察用基板に固相化した後、浸透化処理およびブロッキング処理を同時に行う(つまり浸透化剤およびブロッキング剤の両方を含む溶液で細胞を処理する)ようにしてもよい。なお、観察用基板に固相化する前に細胞を固定化する場合、固定化によっても細胞は観察用基板に吸着する能力を失っていないので、固相化の際には細胞の吸着(細胞と基板との物理的(分子間)相互作用)を利用することができる。また、観察用基板に固相化した後に細胞を固定化する場合、すでに細胞が観察用基板に吸着していれば、その後に固定化しても吸着による固相化を保持することができる。また、場合によっては、細胞に対する前処理を、血液等の検体から細胞画分を分離する前に行う(例えば血液検体を採取した直後に血液の抗凝固処理とともに細胞の固定化処理等を行い、その後密度勾配遠心処理を行って細胞画分を得る)ようにすることも可能である。

0049

・固定化処理
固定化処理は、細胞の自己分解腐敗遅延させ、その形態や抗原性を保持するために行われる処理であり、本発明では、CTC等の目的細胞の検出性を高めるとともに、抗原抗体解離工程で用いる酸等の解離剤が細胞または抗原に与えるダメージを抑えることが可能となる。特に結合と解離を複数回繰り返して実験を行うような場合、解離剤のダメージが細胞に与える影響は格段に大きくなるため、通常であれば細胞劣化が大きくなり実験が継続出来ないこともあり得る。しかし本工程のように固定化処理を行うことで細胞が形態や抗原性の保持力が高まり、複数回繰り返して実験を行うような場合であっても免疫染色性が劣化しにくくなるという効果をもたらす。

0050

固定化剤としては様々なものが公知であるが、例えば、ホルムアルデヒドグルタルアルデヒドグリオキサール等のアルデヒド類アセトンメチルエチルケトン等のケトン類エタノールメタノール等のアルコール類が挙げられる。このうち、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類およびアセトン等のケトン類は、アルデヒド基およびケトン基が特定のアミノ酸残基と反応して共有結合を形成し、架橋剤として作用する固定化剤であり、タンパク質構造を安定化すると共に細胞の原形質をゲル化して酵素活性を抑えることができるため、本発明における好ましい固定化剤である。また、それ自体が固定化剤として直接作用するものではないが、加水分解等を受けることによって固定化剤を遊離する供与体、たとえばホルムアルデヒド供与体も固定化剤の一形態として用いることができる。これらの固定化剤をPBS等の適切な溶媒に溶解した(あるいはホルマリンのようにもとから水溶液で市販されているものを希釈した)水溶液を固定化処理液として用いることができる。

0051

固定化処理は、適切な濃度の固定化処理液を適切な時間、細胞に接触させることで行うことができる。固定化処理液中の固定化剤の濃度は適宜調節することができるが、たとえばアルデヒド類の場合は0.1〜10w/w%程度、アルコール類の場合は70〜100v/v%程度である。固定化処理液と細胞との接触時間(固定化処理時間)も適宜調節することができるが、例えば、室温で、10分間〜1時間程度である。

0052

固定化処理は、染色工程前または工程中に実施することができ、1回目の染色工程前または工程中の1回だけであってもよいし、第N回の解離工程後かつ第(N+1)回の染色工程前または工程中に繰り返し実施してもよい。

0053

・浸透化処理
浸透化処理は、細胞膜の透過性を向上させて細胞の外部から細胞の内部に物質が浸透しやすくするための処理であり、本発明では、細胞内(原形質)にある抗原に対して蛍光標識抗体を結合させやすくして免疫染色性を向上させるという効果をもたらす。

0054

浸透化剤としては様々なものが公知であるが、例えば、Triton X−100(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)、Tween20(ポリオキシエチレンソルビタンモノウラート)、サポニンジギトニン、Leucoperm、NP−40などの界面活性剤(商品)が挙げられる。これらの浸透化剤をPBS等の適切な溶媒に溶解させた水溶液を浸透化処理液として用いることができる。

0055

浸透化処理は、適切な濃度の浸透化処理液を適切な時間、細胞に接触させることで行うことができる。浸透化処理液中の浸透化剤の濃度は適宜調節することができるが、例えば上記のような界面活性剤であれば、0.01〜1.0v/v%程度である。浸透化処理液と細胞との接触時間(浸透化処理時間)も適宜調節することができるが、例えば、室温で、10分間〜1時間程度である。

0056

・ブロッキング処理
ブロッキング剤は、細胞の目的抗原以外の部位が非特異的に染色されるのを防ぐために用いられる。細胞のブロッキング処理は、染色工程前あるいは染色工程中に実施すればよく、いずれか一方で実施しても、両方で実施してもよい。ブロッキング剤を入れた細胞を固相化する場合は、上述したように観察用基板にマイクロチャンバー等を形成しておく(後述する細胞の固相化方法に関する構造的手法を用いる)必要がある。また、細胞表面の観察用基板との吸着(相互作用)を起こしやすい部位を被覆することにより、マイクロチャンバー等の細胞の固相化に関与する部位以外に細胞が吸着してしまうことを防止し、所定の部位に細胞を収容されるようにするためにも用いられる。

0057

ブロッキング剤としては様々なものが公知であるが、例えば、カゼインスキムミルクウシ血清アルブミンBSA)、ポリエチレングリコール等の親水性高分子リン脂質エチレンジアミンアセトニトリル等の低分子化合物が挙げられる。これらのブロッキング剤をPBS等の適切な溶媒で希釈した水溶液をブロッキング処理液として用いることができる。

0058

ブロッキング処理は、適切な濃度のブロッキング処理液を適切な時間、細胞あるいは観察用の基板に接触させることで行うことができる。ブロッキング処理液中のブロッキング剤の濃度は適宜調節することができるが、例えば、0.01〜20w/v%程度である。ブロッキング処理液と細胞との接触時間(ブロッキング処理時間)も適宜調節することができるが、例えば、室温で、5〜120分間程度である。

0059

(細胞の固相化方法)
免疫染色した細胞を観察する際には、細胞を固相化する、つまり細胞観察用基板上の細胞の位置が動かないようにするが好ましい。細胞を固相化することにより、観察の対象とする細胞の位置を特定しやすくなり、蛍光免疫染色されている細胞の観察画像を複数枚重ねあわせて、稀少細胞等の目的細胞を検出することができ、さらに必要に応じて、検出された目的細胞を回収することも可能となる。

0060

細胞観察用基板は、典型的には、後述する細胞観察システムに用いられる細胞回収デバイスの流路基板が該当するが、これに限定されるものではない。すなわち、本発明の蛍光免疫染色方法を後述するような実施形態の細胞観察システムとは異なるシステムにおいて実施する場合には、細胞観察用基板は例えば、後述する細胞回収デバイスとは異なるデバイスの基板であってもよいし、スライドグラス細胞培養用シャーレの底面であってもよい。

0061

細胞の固相化のための手法は、細胞観察用基板の表面の構造によって細胞の移動できる範囲を制限するようにする手法(構造的手法)と、細胞観察用基板の表面の性状によって細胞を吸着させて(物理的相互作用により)動かないようにする手法(相互作用手法)とに大別することができる。これらの手法は、いずれか一方を用いてもよいし、両方を併用してもよい。

0062

なお、細胞の固相化方法としては、細胞観察用の基板の表面に、細胞表面の抗原(蛍光標識抗体を結合させる対象とするもの以外の抗原)を認識する抗体を固定しておき、それらの抗原抗体反応による結合によって細胞を捕捉する手法も知られている。しかしながら本発明では、蛍光免疫染色をした後、蛍光標識抗体を細胞表面にある抗原から解離させるための処理が行われるため、その処理の際に上記のような抗原抗体反応を利用した固相化も影響を受け、捕捉されていた細胞が基板表面から解離してしまう。したがって本発明では、上記のような抗原抗体反応を利用した固相化方法は不適切であり、それ以外の固相化方法を用いることが適切である。

0063

・構造的手法
固相化の構造的手法を用いるためには、例えば、細胞観察用基板の表面に微細チャンバーまたは溝を複数形成することが挙げられる。そのような微細な構造が形成された細胞観察用基板の表面を、細胞懸濁液(液滴)を移動させると、流れと自重によって細胞をチャンバーまたは溝の中に落とし、その中に収容することができる。収容された細胞はチャンバーまたは溝の中だけに移動が制限される。

0064

相互作用的手法
固相化の相互作用的手法を用いるためには、例えば、ポリスチレンポリメチルメタクリレートポリカーボネート等のプラスチックや、ガラスから成る、細胞と基板とが物理的な(分子間の)相互作用によって吸着しやすい材料で細胞観察用基板を作製することが挙げられる。疎水性のプラスチックの基板表面には、大気雰囲気化でUVを照射するUVオゾン処理酸素プラズマ処理によって適度に親水化してもよく、ガラスの基板表面には、ポリリジンなどの細胞の接着性を向上する分子を塗布してもよい。

0065

ただし、固相化の構造的手法としてマイクロチャンバーを備えた細胞観察用基板(細胞回収デバイス)に対して、固相化の相互作用的手法を併用する場合には、送液の途中で細胞が吸着してしまいマイクロチャンバーに回収されることの妨げとならないよう、(i)細胞自体をブロッキング処理して吸着能力を失わせるか、(ii)固相化の相互作用的手法の適用範囲を、細胞観察用基板の表面のうちマイクロチャンバーの底面等の部分だけに留め、それ以外の部分は、適用しないか、適用を無効化することが好ましい。(ii)の場合は、例えば、マイクロチャンバーを備えた細胞観察用基板(細胞回収デバイスについては流路基板および流路形成部材)を細胞が吸着しやすい材料で作製した場合、それらの材料の表面を、マイクロチャンバーの底面には接触しないようなやり方で、ブロッキング剤で処理することが好ましい。細胞観察用基板等のブロッキング処理のためのブロッキング剤(ブロッキング処理液)や、処理時間などの条件は、細胞自体をブロッキング処理に準じたものとすることができる。マイクロチャンバーの底面にはブロッキング処理をせず、細胞が吸着しやすい材料が露出した状態を保つことにより、ブロッキング処理していない細胞を回収した場合にその細胞が吸着でき、細胞懸濁液の流れによって再びマイクロチャンバーの外に出て行かないようにすることができる。

0066

−細胞観察システム−
図2に、本発明の細胞観察システムの実施形態の一例を表す模式図を示す。
図3に、本発明の細胞観察システムを用いた細胞観察方法の実施形態の一例(染色工程を3回行う場合)を表す、工程のフローチャートを示す。

0067

本発明の細胞観察システムは、上述したような本発明の蛍光免疫染色方法を利用したものであって、細胞が有する少なくとも1種の抗原に、当該抗原に対応した蛍光標識抗体を抗原抗体反応により結合させる処理のために、当該蛍光標識抗体溶液を送液し、最初の蛍光免疫染色工程を行った後、下記(1)および(2)を含む工程のセットを少なくとも1回行うための手段を備える:
(1)抗原抗体反応により結合している抗原と蛍光標識抗体とを解離させる処理のために解離液を送液する、抗原抗体解離工程;
(2)細胞が有する少なくとも1種の抗原に、当該抗原に対応した少なくとも1種の蛍光標識抗体を、抗原抗体反応により結合させる処理のために、当該蛍光標識抗体溶液を送液する、蛍光免疫染色工程。

0068

本発明の細胞観察システムはさらに、蛍光免疫染色された細胞から発せられる蛍光の強度を測定する手段およびその測定結果を統合する手段、蛍光免疫染色された細胞の蛍光画像を撮影する手段およびその撮影画像を統合する手段、またはこれらの両方を備えることが好ましい。

0069

すなわち、本発明の細胞観察システムは、蛍光免疫染色のための各工程における処理を遂行するのに必要な送液を行う手段や、蛍光免疫染色に基づいて目的細胞の検出やその発現プロファイリングなどを行うのに必要な情報を取得して分析するための手段を備えるものであり、そのような手段は、例えば以下に記載するような、送液系機構、光学系機構およびそれらの制御手段によって構築することができる。

0070

本発明の細胞観察システム200は、例えば図2に示すように、細胞検出装置100、細胞回収デバイス10および試薬収容器20によって構成される。細胞回収デバイス10および試薬収容器20は、システムの運用時に細胞検出装置100(その内部の細胞回収デバイスホルダー160および試薬収容器ホルダー170)にセットして用いられる。

0071

<細胞検出装置>
細胞検出装置100は、細胞回収デバイス10の流路1に各種の液体を送液するための送液系機構110、細胞回収デバイス10で回収され、蛍光標識された細胞を観察するための光学系機構120、細胞回収デバイス10を保持する細胞回収デバイスホルダー160、試薬収容器を保持する試薬収容器ホルダー170、ならびに細胞検出装置100が備える各種の機器類を制御するための制御手段190を備える。送液系機構110および光学系機構120は、任意の位置で液の吸引吐出および細胞観察を可能にするための、空間的な移動手段を備えることが望ましい。

0072

(送液系機構)
送液系機構110は、制御手段190の制御により、試薬収容器20の細胞懸濁液、染色液、解離液、洗浄液、その他の試薬類それぞれの収納部と細胞回収デバイスの流入口2との間を移動し、それらの液の吸引および吐出を行う機構である。具体的には、送液系機構110によって、試薬収容器に収容されている細胞懸濁液等の液体を所定の量吸引し、細胞回収デバイス10の流入口2で所定の流量で吐出して、流路1に導入する。また、送液により所定の処理が終わった後は、流路1を満たしていた液体を流入口2から吸引して排出し、試薬収容器20の廃液収納部で吐出する。送液系機構110は、例えば、シリンジポンプ交換可能なチップ、X軸方向(図2の左右方向)およびZ軸方向(図2の上下方向)に移動可能なアクチュエーターなどを用いて構築することができる。シリンジポンプは、細胞観察に関する各工程において、所望の流量で吸引および吐出ができる能力を有する。

0073

(光学系機構)
光学系機構120は、例えば、光源としてのレーザーダイオード(LD)、集光レンズピンホール部材ダイクロックミラー蛍光フィルター光電子増倍管(PMT)などによって構築することができる。LDは、蛍光標識抗体に用いられている蛍光物質の励起波長に対応したものとし、必要であれば複数用意してダイクロックミラーで適切なものが照射されるようにしてもよい。蛍光フィルターは、蛍光標識抗体に用いられている蛍光物質の蛍光波長に対応したものとし、必要であれば複数枚用意してフィルター切り替え器で交換しながら用いるようにしてもよい。

0074

光学系機構120はさらに、対物レンズ対眼レンズCCDカメラなどを含む蛍光顕微鏡に準じた形態とし、蛍光染色された細胞を目視で観察するとともに、観察画像を撮影することができるようにすることも可能である。光学系機構120がそのような実施形態でない場合は、細胞検出装置100によって目的細胞を検出した後、当該装置からは独立した蛍光顕微鏡等の観察装置(これも本発明の細胞観察システムの構成要素の一つになり得る)に細胞回収デバイス10を移動させて、染色された細胞の観察や観察画像の撮影などを行えばよい。

0075

また、細胞回収デバイスとしてマイクロチャンバーを備えた流路基板1を用いる場合、細胞検出装置100はさらに、観察の対象としているマイクロチャンバーの位置を特定するための手段を備えていてもよい。例えば、光源からの流路基板1に光を照射しながら走査したときに、その透過光または反射光、あるいは流路基板1の作製材料が発する自家蛍光の強度が、マイクロチャンバー(凹部)とそれ以外の部位とで相違することを利用して、マイクロチャンバーの位置を特定することができる。したがって光学系機構120は、そのような透過光、反射光または自家蛍光を測定するためのフォトダイオード(PD)のような受光器をさらに含んでいてもよい。マイクロチャンバーの位置に関する情報と、細胞の染色に関する情報とを統合すると、どのマイクロチャンバーに所定のパターンで免疫染色をされた細胞、つまり目的細胞が存在するかを正確に特定することができる。さらに、細胞回収デバイス10に基準点レクチルマーク)を設けておき、目的細胞が存在するマイクロチャンバーの位置の情報をその基準点からの座標として取得しておくようにすれば、細胞回収デバイス10を細胞検出装置100から別の観察装置に移動させたときにも、その情報に基づき目的細胞が存在するマイクロチャンバーを直ちに観察できるようになる。

0076

(制御手段)
制御手段190としては、細胞検出装置100の各種の機器類に接続され、それらの機器類の制御プログラムを実行可能なパーソナルコンピュータを用いることができる。制御プログラムは、パーソナルコンピュータが内蔵する記憶媒体に記憶されていてもよいし、ネットワークまたは取り外し可能な記憶媒体を介してパーソナルコンピュータが利用できる状態に置かれていてもよい。

0077

制御プログラムは、細胞観察に関する操作を自動化することのできるものであり、例えば、細胞観察のための所定の工程(図3のフローチャート参照)に従って、所定のタイムスケジュールで、細胞懸濁液、蛍光免疫染色液、解離液、洗浄液などを送液するよう送液系機構を操作したり、蛍光免疫染色された細胞に所定の励起光を照射し、そこから発せられた蛍光を測定し、必要に応じて画像を撮影するよう光学系機構を操作したりできるものである。

0078

さらに、制御手段190は、細胞観察に関して取得されたデータ、例えば測定工程で取得された光の強度の測定値(目的細胞の検出に関する蛍光、および任意で行ってもよいマイクロチャンバーの位置特定に関する透過光、反射光または自家蛍光)や、観察工程で撮影された画像を記憶したり、それらのデータを解析して必要な情報を導き出したりする機能、そのためのプログラムをさらに有することが好ましい。

0079

<細胞回収デバイス>
細胞回収デバイス10は、流路基板11および流路形成部材12によって構築されており、これらによって閉鎖されている空間が、細胞懸濁液等の液体を送液して満たすことのできる流路1となっている。流路基板11と流路形成部材12とは、観察やメンテナンスのしやすさの観点から、係合、ねじ固定、粘着等の手段で取り付け・取り外しが可能なようになっていてもよい。

0080

本実施形態における流路基板11は、前述したような細胞の固相化の構造的手法が用いられている細胞観察用基板に相当する。すなわち、流路1の底面をなす流路基板11の内表面は、細胞懸濁液CL中の細胞を細胞観察に適した状態で回収することができるよう、マイクロチャンバー5が形成されている。流路1の上流側および下流側の末端付近天井側、すなわち流路形成部材12(蓋部材12b)には、上記の各種の液体を流入および排出させるための流入口11および排出口12が形成されている。

0081

流路形成部材12は、流路に所定の高さを持たせるための空隙を生み出すとともに流路の平面的な範囲を形作る、流路の側壁を形成する枠部材12aと、枠部材12aの上に載せられ流路の天井を形成する天板部材12bによって構築されていてもよい。天板部材12bは、流出口2と連通している、細胞懸濁液等の液体を一時的に貯留する空間(リザーバー)を備えていてもよい。

0082

流路基板11および流路形成部材12は、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボート、シクロオレフィンコポリマー等のプラスチック、あるいは石英ガラス等のガラスなど、透明な材料で作製されたものが好ましい。図2に示すような細胞観察システム200において蛍光染色された細胞を観察する場合には、細胞検出装置100の光学検出系120によって特定の細胞を標識した蛍光を測定できるよう、少なくとも流路形成部材12のうち天板部材12bに相当する部分は透明な素材で作製する必要がある。また、枠部材12aは、適度な弾性粘着性を有するシリコーン樹脂ポリジメチルシロキサン:PDMS等)のような材料で作製されていてもよく、この枠部材12aを流路基板11および天板部材12bで挟み込むことによって細胞回収デバイス10を構築するようにしてもよい。

0083

流路基板11は、前述したように、細胞が接着しやすい材料で作製してもよい。この場合、流路基板11の内表面のマイクロチャンバー5以外の部分以外および流路形成部材12の内表面は、前述したように、ブロッキング剤等による表面処理を施すことが望ましい。

0084

流路1の高さ(流路基板9aと天板部材9cの間隔、すなわち枠部材9bの厚さ)は、50μm〜500μmであることが好ましい。流路1の高さがそのような範囲内であると、流路1内の細胞懸濁液(そこに含まれる細胞)を送液の力で容易に移動させることができるとともに、流路1の細胞による目詰まりが発生しにくいため、細胞を円滑に展開することができる。

0085

マイクロチャンバー5の形状は特に限定されるものではないが、例えば、底面が平坦で側面がテーパー形状である逆円錐台形が好ましい。マイクロチャンバー5の底面の直径および深さは、観察に適した数の細胞を回収して収容することができるよう、適宜調節することができる。例えば、1つのマイクロチャンバー5あたり1〜100個の細胞を収容できるよう、底面の直径を20〜500μm、深さを20〜500μmの範囲とすることが好ましい。なお、血液中の種々の細胞(赤血球を除く)の直径は一般的に5〜100μmであり、CTC等の稀少細胞の直径は10〜100μm程度と言われている。また、励起光の抗原としてレーザーダイオードを用いる場合、その照射領域(スポット)のサイズは、例えば長径100μm×短径10μm程度の楕円形である。マイクロチャンバー5の底面のサイズは、このレーザーダイオードの照射領域のサイズよりも大きくし、1つのマイクロチャンバー5に光を照射しているときに、隣接するマイクロチャンバー5にもまたがって光が照射されて、複数のマイクロチャンバー5から同時に蛍光が発せられることがないようにすることが適切である。

0086

流路基板11の表面上における、複数のマイクロチャンバー5の配置は特に限定されるものではないが、細胞の回収率(懸濁液中の全ての細胞のうちマイクロチャンバー内に回収できた細胞の割合)がなるべく高くなるよう、配列の向きやマイクロチャンバー5同士の間隔を調節されていることが好ましい。例えば、流路1に細胞懸濁液を送液したときに流入口2から流出口3に至るまでのどこか少なくとも1箇所で細胞がマイクロチャンバー5に沈降するよう、マイクロチャンバーを配列させることが好ましい。

0087

<試薬収容器>
試薬収容器20には、細胞懸濁液、染色液(蛍光標識抗体溶液、必要に応じて核染色剤溶液等)、解離液、洗浄液など、細胞観察を行う上で流路1に送液する必要のある各種の液体が収容されている。例えば、解離液、洗浄液など比較的保存性の高い液体は、密封された状態であらかじめ試薬収容器20の所定の部位に収容しておくことが可能であり、細胞懸濁液、染色液など細胞観察の直前に調製する必要のある液体は、調製後に試薬収容器20の所定の部位に添加して収容させることができるようにする。染色液、解離液、洗浄液など、細胞観察の際に複数回使用される溶液は、各工程に対応した容量の溶液を別個の部位に収容しておいてもよいし、各工程で同一の組成の溶液を繰り返し使用する場合はそれらの合計の用量の液体を1つの部位に収容しておいてもよい。また、試薬収容器20には必要に応じて、送液後に吸引して流路1から排出させた廃液を貯留する部位を設けておくようにする。

0088

・細胞懸濁液
細胞懸濁液は、例えば、稀少細胞またはその他の目的細胞を含んでいる可能性がある、血液、尿、リンパ液、組織液、体腔液等の検体、あるいはそれらの検体から得られた細胞画分や精製物などの前処理物を、PBS等の適切な溶媒で希釈することにより調製することができる。また、細胞懸濁液は、試験、研究等のために培養した、稀少細胞またはその他の目的細胞の細胞株、あるいは目的細胞を含む細胞集団を、PBS等に分散させて調製したものであってもよい。患者の血中細胞モデルとして、健常者から採取された血中細胞の懸濁液にCTC等の稀少細胞の細胞株を添加したものを、細胞懸濁液として用いてもよい。

0089

<細胞観察方法>
細胞観察システム200を用いた細胞観察方法では、図3のフローチャートに示すように、染色工程、解離工程、洗浄工程、測定工程、さらに任意で固定化工程などが複数回行われ、それぞれについて以下のような操作が行われる。

0090

(細胞回収工程)
細胞回収工程では、流路1に細胞懸濁液を送液し、所定の時間静置してマイクロチャンバー5内に細胞を沈降させるようにして、細胞をマイクロチャンバー5内に回収する。細胞の回収効率を高めるために、送液の流量(流速)や向きに変化を付けてもよい。例えば、短時間送液した後、短時間静置するといったパターン(間欠送液)にしたり、流入口2から流出口3への順方向に送液した後、その逆方向送液するといったパターンにすることにより、流路基板1のマイクロチャンバー5以外の表面に残存したり、最後までマイクロチャンバー5内に回収されずに廃棄されたりする稀少細胞等の目的細胞を極力減らすことが可能になる。

0091

(染色工程)
染色工程では、染色液、すなわち蛍光標識抗体や核染色剤が溶解した水溶液を送液し、所定の時間流路1を満たして細胞と反応させ、蛍光標識抗体と抗原との抗原抗体反応による結合や核染色剤とDNAとのインターカレートによる結合が十分になされるようにする。この細胞観察システムにおける染色工程に関する事項は、前述した蛍光免疫染色方法における染色工程に関する事項に準じたものとすることができる。

0092

なお、1回目の染色工程では必要に応じて、細胞の固定化処理、浸透化処理、ブロッキング処理を同時に行ってもよい。すなわち、蛍光標識抗体や核染色剤とともに、固定化剤、浸透化剤、ブロッキング剤のうち必要なものが溶解した水溶液を送液し、所定の時間流路1を満たして細胞と反応させるようにしてもよい。固定化処理、浸透化処理、ブロッキング処理を1回目の染色工程と同時に行わない場合は、それらの処理は例えば試薬収容器20に収納する細胞懸濁液を調製する際に行うようにしてもよい。

0093

(解離工程)
解離工程では、解離液を送液し、所定の時間流路1を満たして細胞と反応させ、抗原抗体反応により結合した蛍光標識抗体を抗原から十分に解離させるようにする。この細胞観察システムにおける解離工程に関する事項は、前述した蛍光免疫染色方法における解離工程に関する事項に準じたものとすることができる。

0094

(洗浄工程)
解離工程は、染色工程後、観察工程の前に、または解離工程の後、次の染色工程の前に設けられる工程であり、洗浄液を送液して流路1内に残存する染色液や解離液を洗い流すことにより、測定工程・観察工程や次の染色工程に対する悪影響を排除する。洗浄液は、細胞懸濁液等の溶媒として用いられているものと同じPBS等だけであってもよいし、そのPBS等の溶媒に必要に応じて界面活性剤を添加したものであってもよい。洗浄液は、必要に応じて複数回、送液および回収を繰り返してもよい。

0095

(固定化工程)
固定化処理を細胞懸濁液調製(細胞前処理工程)の際、あるいは1回目の染色工程と同時に実施するだけでなく、繰り返し実施してもよい。その場合、染色工程と同時に固定化処理を行うこともできるが、解離工程の後、次の染色工程の前に単独で固定化工程を設けることもできる。その場合は、解離工程の後に、洗浄工程を実施し、その後、固定化液、すなわち固定化剤が溶解した水溶液を送液し、所定の時間流路1を満たして細胞と反応させる。これによって、細胞の形態や抗原性を保持することができ、解離液によるダメージを抑えることができる。固定化工程後は、必要に応じて洗浄工程を実施してもよい。

0096

(測定工程)
測定工程では、PBS等を送液して流路を満たした後、所定の励起光を照射し、光学系機構(PMT、PD等)をマイクロチャンバーの配置に沿って走査させながら位置(移動距離)ごとに、フィルターを通過した蛍光の強度を測定する。測定対象とする蛍光に応じて、励起光の光源または励起フィルターと蛍光フィルターとを切り替えればよい。所定の蛍光標識抗体が結合した細胞が収容されているマイクロチャンバーの位置では、測定される蛍光強度が高くなる。すべての蛍光標識抗体についての蛍光強度の測定結果が、目的細胞が示すはずのパターンと一致しているマイクロチャンバーに、目的細胞が収容されていると推定することができる。さらに、目的細胞の精細な蛍光画像を各回の免疫染色後に取得することによって、細胞内の抗原の局在を特定することができ、その細胞の性質を知ることができる。

0097

また、測定工程では必要に応じて、マイクロチャンバーの位置を取得するための反射光、透過光、自家蛍光等を測定してもよい。さらに、細胞検出装置が蛍光顕微鏡に準じた光学系機構を備えている場合は、測定工程の後に、蛍光顕微鏡で染色された細胞を観察したり、その染色画像を撮影したりする観察工程を行ってもよい。

0098

−キット−
(蛍光免疫染色キット)
本発明の蛍光免疫染色方法を実施するために利用することのできる蛍光免疫染色キットは、例えば、細胞が有する少なくとも1種の抗原に対応した蛍光標識抗体を調製するための試薬と、抗原抗体反応により結合している抗原と蛍光標識抗体とを解離させる処理のための試薬とを含む。蛍光標識抗体を調製するための試薬は、例えば、標的とする抗原に対応したモノクローナル抗体、蛍光色素、およびそれらを結合して複合体を形成するための試薬を含む。抗原抗体反応により結合している抗原と蛍光標識抗体とを解離させる処理のための試薬は、前述したような解離液そのものであってもよいし、そのような解離液を調製するための解離剤と希釈液であってもよい。

0099

このような蛍光免疫染色キットは、必要に応じて、その他の試薬、試薬を調製するための器具使用説明書などを含んでいてもよい。その他の試薬としては、例えば、前述したような固定化処理液、浸透化処理液、ブロッキング処理液、あるいはこれらの処理液を調製するための固定化剤、浸透化剤、ブロッキング剤とそれらの希釈液(PBS等の溶媒)が挙げられる。

0100

(細胞観察キット)
本発明の細胞観察システムを実施するために利用することのできる細胞観察キットは、例えば、上述したような蛍光免疫染色キットの構成品に加えて、細胞回収デバイスまたは試薬収容器、あるいはこれらの両方を含む。このような細胞観察キットは、必要に応じて、その他の試薬、試薬を調製するための器具、使用説明書などを含んでいてもよい。その他の試薬としては、例えば、前述したような核染色液、洗浄液、あるいはこれらを調製するための核染色剤、洗浄剤、とそれらの希釈液(PBS等の溶媒)が挙げられる。

0101

[比較例]
密度勾配遠心を利用して赤血球を除去した血液検体にMCF−7細胞(乳癌細胞)を添加したものをサンプルとした。このサンプルを遠心して上清を除いた後、20v/v%ホルマリン液和光純薬)(ホルムアルデヒドの濃度としては、8w/w%)をホルムアルデヒドが4w/w%になるようにPBSで希釈した溶液と、20分間室温で反応させて、細胞の固定化処理を行った。固定化された細胞サンプルは、使用する直前にPBSで2回遠心洗浄を行った後、1.5mLのプロテオセーブ(登録商標、住友ベークライト)2本に分け(それぞれA、Bと称する)、遠心して上清を除いた。

0102

浸透化処理のためのTween20を0.1%、およびブロッキング処理のためのBSAを3w/v%の含むPBS溶液に、白血球の特定のためのFITCフルオレセインイソチオシアネート標識抗CD45抗体(ベックマンコールター)、MCF−7細胞(乳癌細胞)の特定のためのPE(フィコエリスリン)標識抗サイトケラチン抗体(ベクトンディッキンソン)、および細胞核に結合するHoechst33342(インビトロジェン)を加えた溶液を調製した。一方のプロテオセーブ(A)の細胞をこの溶液と30分間反応させた。

0103

また、浸透化処理のためのTween20を0.1%、およびブロッキング処理のためのBSAを3w/v%の含むPBS溶液に、FITC標識抗CD45抗体(ベックマンコールター)、EpCAM分子の発現を調べるためのPE標識抗EpCAM抗体(ベクトンディッキンソン)、およびHoechst33342(インビトロジェン)を加えた溶液を調製した。もう一方のプロテオセーブ(B)の細胞をこの溶液と30分間反応させた。

0104

その後、プロテオセーブ(A)、(B)それぞれの細胞をPBSで3回洗浄し、蛍光顕微鏡下で観察し、FITC、PE、Hoechst、それぞれに対応した画像を撮影し、その撮影画像を統合した。その結果、プロテオセーブ(A)については、CD45陽性である白血球以外に、CD45陰性、サイトケラチン陽性の細胞が観察され、MCF−7細胞を検出することができた。一方、プロテオセーブ(B)については、CD45陰性、EpCAM陽性の細胞が観察され、EpCAMを発現している白血球でない細胞の存在を検出することができた。しかしながら、このプロテオセーブ(B)の細胞が、プロテオセーブ(A)で検出されたMCF−7細胞であるかどうか、つまりMCF−7細胞がEpCAM陽性であるかどうかは、このようにサンプルを分割してそれぞれ異なる蛍光標識抗体で染色した場合の結果から特定することはできない。

0105

[実施例]
密度勾配遠心を利用して赤血球を除去した血液検体にMCF−7細胞(乳癌細胞)を添加したものをサンプルとした。このサンプルを遠心して上清を除いた後、20v/v%ホルマリン液(和光純薬)(ホルムアルデヒドの濃度としては、8w/w%)をホルムアルデヒドが4w/w%になるようにPBSで希釈した溶液と、20分間室温で反応させて、細胞の固定化処理を行った。固定化された細胞サンプルは、使用する直前にPBSで2回遠心洗浄を行った後、細胞の吸着(相互作用的手法)を利用してポリスチレンの基板上に固相化した。

0106

浸透化処理のためのTween20を0.1%、およびブロッキング処理のためのBSAを3w/v%の含むPBS溶液に、白血球の特定のためのFITC標識抗CD45抗体(ベックマンコールター)、MCF−7細胞(乳癌細胞)の特定のためのPE標識抗サイトケラチン抗体(ベクトンディッキンソン)、および細胞核に結合するHoechstを加えた溶液を調製した。固相化された細胞をこの溶液と30分間反応させ、その後PBSで3回洗浄した。染色された細胞を蛍光顕微鏡下で観察し、FITC、PE、Hoechst、それぞれに対応した画像を撮影し、その撮影画像を統合した。その結果、CD45陰性、サイトケラチン陽性の細胞が観察され、MCF−7細胞を検出することができた。

実施例

0107

次に、染色された細胞をpH1.5のグリシン−塩酸塩と5分間反応させ、PBSで洗浄して蛍光標識抗体を抗原から解離させた。続いて、PE標識抗EpCAM抗体(ベクトンディッキンソン)を反応させ、PBSで3回洗浄した。染色された細胞を蛍光顕微鏡下で観察し、画像を撮影した結果、先に検出されたMCF−7細胞におけるEpCAM分子の発現を検出することができた。
上記の1回目の染色後、抗体解離後、および2回目の染色後の顕微鏡画像図4に示す。

0108

1流路
2 流入口
3 流出口
4リザーバー
5マイクロチャンバー
10細胞回収デバイス
11流路基板
12流路形成部材
12a枠部材
12b天板部材
20試薬収容器
CL細胞懸濁液
100細胞検出装置
110 送液系機構
111チップ
120光学系機構
160 細胞回収デバイスホルダー
170 試薬収容器ホルダー
190 制御手段
200 細胞観察システム

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