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技術 分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルス(MD−RVV)及びその使用

出願人 国立大学法人鳥取大学一般財団法人化学及血清療法研究所
発明者 中村貴史
出願日 2014年11月20日 (6年0ヶ月経過) 出願番号 2015-549229
公開日 2017年3月16日 (3年8ヶ月経過) 公開番号 WO2015-076422
状態 特許登録済
技術分野 化合物または医薬の治療活性 動物,微生物物質含有医薬 微生物、その培養処理 抗原、抗体含有医薬:生体内診断剤 突然変異または遺伝子工学
主要キーワード キーポイント 導入領域 次蛍光 明視野観察 MAPKタンパク質 染色画像 癌治療用医薬組成物 腹膜播種
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図面 (18)

課題・解決手段

癌細胞において特異的に増殖し、癌細胞を障害するワクシニアウイルスの提供及び該ウイルス癌治療への利用の提供。 ワクシニアウイルス増殖因子(VGF)及びO1Lの機能が欠損しており、正常細胞内では増殖しないが、癌細胞内で特異的に増殖し、癌細胞を特異的に障害する腫瘍溶解性を有する分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルス。

概要

背景

近年、ウイルス癌治療に用いる癌ウイルス治療に関する種々の技術が開発されている。このような治療に用いるウイルスとして、アデノウイルスレトロウイルスの他、ワクシニアウイルスがある。
近年ワクシニアウイルスは、その広い宿主域と高い発現効率という特性から、外来遺伝子を導入した発現ベクターとして感染症HIVSARS)のための多価ワクチンとしても用いられている。
また、ワクシニアウイルスの癌細胞に対する溶解性を利用して、癌治療に利用する技術についても報告されている(特許文献1を参照)。
一方、ワクシニアウイルスにおいて、感染細胞ERKを活性化させ、ワクシニアウイルスの増殖を正に制御する遺伝子として、ワクシニアウイルス増殖因子(VGF)遺伝子及びO1L遺伝子非特許文献1を参照)が報告されていた。VGF遺伝子に関しては、VGF遺伝子を欠失させることにより、ワクチン病原性が低下することが報告されていた(非特許文献2を参照)。また、VGF遺伝子及びTK(チミジンキナーゼ)遺伝子を欠損させたワクシニアウイルスを癌治療に適用することについても報告されていた(特許文献2及び非特許文献3を参照)。

概要

癌細胞において特異的に増殖し、癌細胞を障害するワクシニアウイルスの提供及び該ウイルスの癌治療への利用の提供。 ワクシニアウイルス増殖因子(VGF)及びO1Lの機能が欠損しており、正常細胞内では増殖しないが、癌細胞内で特異的に増殖し、癌細胞を特異的に障害する腫瘍溶解性を有する分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルス。

目的

本発明は癌細胞において特異的に増殖し、癌細胞を障害するワクシニアウイルスの提供及び該ウイルスの癌治療への利用の提供を目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
2件

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請求項1

ワクシニアウイルス増殖因子(VGF)及びO1Lの機能が欠損しており、正常細胞内では増殖しないが、癌細胞内で特異的に増殖し、癌細胞を特異的に障害する腫瘍溶解性を有する分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルス。

請求項2

ワクシニアウイルスが、LC16株、LC16mO株又はB5R遺伝子が発現するように改変されたLC16m8株である、請求項1に記載の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルス。

請求項3

請求項1又は2に記載のワクシニアウイルスを含む癌治療のための医薬組成物

請求項4

請求項1又は2に記載の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルスに外来DNAを導入した、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルスベクター

請求項5

外来DNAがマーカーDNA、細胞毒性効果若しくは免疫賦活効果を有する治療用遺伝子、又は癌、ウイルス、細菌若しくは原虫抗原をコードするDNAである、請求項4記載の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルスベクター。

請求項6

請求項4又は5に記載の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルスベクターを含む、癌治療のための、又は癌、ウイルス、細菌若しくは原虫に対するワクチンとして使用するための医薬組成物。

技術分野

0001

本発明は新規ワクシニアウイルス及びそれを利用したウイルスベクターに関する。具体的には、ウイルスタンパク質であるVGF(vaccinia virus growth factor)とO1Lの機能を欠損させたワクシニアウイルスであって、癌細胞内で特異的に増殖し、癌細胞を破壊する腫瘍溶解性を有する分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスに関する。

背景技術

0002

近年、ウイルス癌治療に用いる癌ウイルス治療に関する種々の技術が開発されている。このような治療に用いるウイルスとして、アデノウイルスレトロウイルスの他、ワクシニアウイルスがある。
近年ワクシニアウイルスは、その広い宿主域と高い発現効率という特性から、外来遺伝子を導入した発現ベクターとして感染症HIVSARS)のための多価ワクチンとしても用いられている。
また、ワクシニアウイルスの癌細胞に対する溶解性を利用して、癌治療に利用する技術についても報告されている(特許文献1を参照)。
一方、ワクシニアウイルスにおいて、感染細胞ERKを活性化させ、ワクシニアウイルスの増殖を正に制御する遺伝子として、ワクシニアウイルス増殖因子(VGF)遺伝子及びO1L遺伝子非特許文献1を参照)が報告されていた。VGF遺伝子に関しては、VGF遺伝子を欠失させることにより、ワクチン病原性が低下することが報告されていた(非特許文献2を参照)。また、VGF遺伝子及びTK(チミジンキナーゼ)遺伝子を欠損させたワクシニアウイルスを癌治療に適用することについても報告されていた(特許文献2及び非特許文献3を参照)。

0003

国際公開第WO2011/125469号国際公開パンフレット
国際公開第WO2013/038066号国際公開パンフレット

先行技術

0004

Schweneker M.et al.,Journal of Virology,Vol.86,No.4,pp.2323−2336,2012
Buller RM.et al.,Journal of Virology,Vol.62,No.3,pp.866−874,1988
McCart JA.et al.,Cancer Research,Vol.61,No.24,pp.8751−8757,2001

0005

本発明は癌細胞において特異的に増殖し、癌細胞を障害するワクシニアウイルスの提供及び該ウイルスの癌治療への利用の提供を目的とする。
現在世界中において、生きたウイルスを利用して癌を治療する癌ウイルス療法に関する前臨床研究、及び臨床治験が積極的に行われている。
ワクシニアウイルスの場合、感染の初期にEGF(上皮増殖因子)と高い相同性を持つワクシニアウイルス増殖因子(VGF)を産生する。分泌されたVGFは感染細胞や周囲の細胞上のEGFR上皮増殖因子受容体)に結合し、Ras/Raf/MEK/ERK代謝経路を活性化することにより細胞分裂を促進する。最近、ワクシニアウイルスO1L遺伝子にコードされたO1Lタンパク質も、感染細胞内のERKを活性化することが報告されている。VGFとO1Lは同じ経路を活性化していると考えられることから、上流に作用するVGFの機能を欠損することの影響は大きく、下流に作用するO1Lの機能を欠損することの影響は大きくないことが想定された。
本発明者らは、ERKを活性化する機能を有する遺伝子がコードするタンパク質の機能を欠損させることで、正常細胞に感染した場合はERKを活性化できないため、細胞分裂は促進されず、その結果、ウイルス増殖著明に低下するが、一方、Ras/Raf/MEK/ERK代謝経路が異常に活性化している癌細胞では、異常活性化がウイルスによるERKの活性化機能を補い、ウイルスが増殖し、癌細胞を溶解させ、かつ病原性が低下すると考え、鋭意検討を行った。この際、VGFタンパク質とO1Lタンパク質の両方の機能を欠損させることにより、正常細胞において予想外に安全性が向上する一方で、癌細胞に対する溶解性が予想外に高まることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] ワクシニアウイルス増殖因子(VGF)及びO1Lの機能が欠損しており、正常細胞内では増殖しないが、癌細胞内で特異的に増殖し、癌細胞を特異的に障害する腫瘍溶解性を有する分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルス。
[2] ワクシニアウイルスが、LC16株、LC16mO株又はB5R遺伝子が発現するように改変されたLC16m8株である、[1]の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルス。
[3] [1]又は[2]のワクシニアウイルスを含む癌治療のための医薬組成物
[4] [1]又は[2]の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルスに外来DNAを導入した、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルスベクター
[5] 外来DNAがマーカーDNA、細胞毒性効果若しくは免疫賦活効果を有する治療用遺伝子、又は癌、ウイルス、細菌若しくは原虫抗原をコードするDNAである、[4]の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルスベクター。
[6] [4]又は[5]の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルスベクターを含む、癌治療のための、又は癌、ウイルス、細菌若しくは原虫に対するワクチンとして使用するための医薬組成物。
本明細書は本願の優先権基礎である日本国特許出願2013−241299号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。

図面の簡単な説明

0006

図1は、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(Mitogen−activated proteinkinase(MAPK))依存性組換えワクシニアウイルスにより正常細胞が障害を受けず、癌細胞が障害を受ける原理を示す図である。
図2は、組換えワクシニアウイルスLC16mO(mO)、LC16mO/VGF−(VGF−)、LC16mO/O1L−(O1L−)及びLC16mO/VGF−O1L−(VGF−/O1L−)の構造を示す図である。
図3は、血清存在下での正常細胞・腫瘍細胞におけるMD−RVVの細胞障害性を示す図である。
図4は、血清非存在下での正常細胞・腫瘍細胞におけるMD−RVVの細胞障害性を示す図である。
図5−1は、血清非存在下での正常細胞・腫瘍細胞におけるウイルス感染とERK活性を示す図である。
図5−2は、血清存在下及び非存在下での正常細胞及び腫瘍細胞におけるウイルスの感染とERKの活性化を示す図である。
図6Aは、免疫不全CIマウスにおけるウイルス投与後のウイルスの体内分布を示す図である。
図6Bは、免疫不全SCIDマウスにおけるウイルス投与後の増殖ウイルスの数値化の結果を示す図である。
図7は、免疫不全SCIDマウスにおけるウイルス投与後の体重変化を示す図である。
図8は、免疫不全SCIDマウスにおけるウイルス投与33週後のウイルスの体内分布を示す図である。
図9は、ヒト膵臓癌BxPC3腹膜播種マウスモデルにおける分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスの抗癌効果を示す図である。
図10Aは、BxPC3腹膜播種マウスモデルにおけるウイルス投与後の腫瘍体内分布を示す図である。
図10Bは、BxPC3腹膜播種マウスモデルにおけるウイルス投与後の腫瘍増殖の数値化の結果を示す図である。
図11は、BxPC3腹膜播種マウスモデルにおけるウイルス投与後のウイルス体内分布を示す図である。
図12は、BxPC3腹膜播種マウスモデルにおける腫瘍特異的ウイルス増殖とERK活性を示す図である。図12Aは腹膜播種した腫瘍の状態を示し、図12Bは腫瘍特異的ウイルスの増殖を示す。また、図12CはRenilla Luciferase (Rluc)の検出結果を示し、図12Dはリン酸化されたp44/42MAPKタンパク質(Erk1/2)(pERK)の検出結果を示し、図12Eはワクシニアウイルスの検出結果を示す。
図13Aは、BxPC−3腹膜播種マウスモデルにおけるウイルス用量と抗癌効果の関係を示す図である。
図13Bは、BxPC−3腹膜播種マウスモデルにおけるウイルス用量と抗癌効果の関係の数値化の結果を示す図である。
図14は、BxPC−3腹膜播種マウスモデルにおけるウイルス用量と安全性の関係を示す図である。

0007

以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のワクシニアウイルスは、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(Mitogen−activated protein kinase(MAPK))依存性組換えワクシニアウイルス(MD−RVV)であり、ワクシニアウイルスのワクシニアウイルス増殖因子(VGF:vaccinia virus growth factor)及びO1Lの機能を欠失したワクシニアウイルスである。
ワクシニアウイルスのVGF及びO1Lの遺伝子配列を、それぞれ、配列番号1及び2に示す。
分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)はセリンスレオニンキナーゼの1つであり、代表的なものとしてERKがある。上皮増殖因子(EGF)が上皮増殖因子受容体(EGFR)に結合すると、Ras、Raf、MEK、ERKと続くシグナルカスケードの活性化を引き起こし、細胞分裂を促進する。
ワクシニアウイルス増殖因子(VGF)は、EGFと高いアミノ酸配列相同性を有するタンパク質であり、EGFと同様にEGFRに結合し、上記のシグナルカスケードの活性化を引き起こし、細胞分裂を促進する。
ワクシニアウイルスが細胞に感染した場合、感染の初期にワクシニアウイルス増殖因子(VGF)を産生する。分泌されたVGFは感染細胞や周囲の細胞上のEGFR(上皮増殖因子受容体)に結合し、Ras/Raf/MEK/ERK代謝経路を活性化することにより細胞分裂を促進する。また、ワクシニアウイルスO1L遺伝子にコードされたO1Lも、感染細胞内のERKを活性化する。すなわち、VGFとO1Lは両者共にERKを活性化し、ワクシニアウイルス増殖を正に制御することになる。
ウイルスタンパク質VGFとO1Lの両者がERKを活性化し、ワクシニアウイルス増殖を制御しているので、この2つのワクシニアウイルスタンパク質の機能を欠損させることにより、感染した細胞において、VGFとO1LによるERKの活性化は生じない。正常細胞と癌細胞におけるRas/Raf/MEK/ERK代謝経路を比較すると、癌細胞においてRas/Raf/MEK/ERK代謝経路は異常に活性化されているので、VGF及びO1Lによる活性化が生じなくともERKは活性化され、細胞分裂が促進される。従って、VGF及びO1Lの機能が欠損したワクシニアウイルスが正常細胞に感染した場合、正常細胞ではERKが活性化されないため、細胞分裂は促進されず、その結果、ワクシニアウイルス増殖は著明に低下する(図1左)。一方、癌細胞ではRas/Raf/MEK/ERK代謝経路が異常に活性化しているため、それがワクシニアウイルスのVGF及びO1LによるERKの活性化機能を補うので、ワクシニアウイルスは増殖できる(図1右)。この結果、ワクシニアウイルスは癌細胞特異的に増殖し、癌細胞を破壊し障害をもたらす。すなわち、本発明の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスは癌細胞特異的な腫瘍溶解性を有する。
本発明の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(Mitogen−activated protein kinase(MAPK))依存性組換えワクシニアウイルスを製造するためのワクシニアウイルスの株は限定されないが、リスター(Lister)株、リスター株から確立されたLC16株、LC16mO株、LC16m8株(橋爪 壮、臨床とウイルスvol.3,No.3,269,1975等)、NYBH株等の株、Wyeth株、コペンハーゲン株、WR株、MVA株等が挙げられる。LC16mO株は、Lister株からLC16株を経て作出された株であり、LC16m8株は、さらにLC16mO株から作出された、ウイルス膜タンパク質をコードする遺伝子であるB5R遺伝子にフレームシフト変異が認められ、このタンパク質が発現、機能しなくなったことで弱毒化された株である(蛋白質核酸酵素Vol.48No.12(2003),p.1693−1700)。
現在世界中において、生きたウイルスを利用して癌を治療する癌ウイルス療法に関する前臨床研究、及び臨床治験が積極的に行われている。このウイルス療法における最大のキーポイントは、ウイルスが元来持っている正常組織に対する病原性をいかに排除するかという点にある。
ヒトに投与する場合の安全性が確立されているという点で、本発明において用いるワクシニアウイルスは弱毒化され、病原性を有していないものが好ましい。このような弱毒化された株として、B5R遺伝子を部分的に又は完全に欠失した株が挙げられる。B5R遺伝子は、ワクシニアウイルスのエンベロープに存在するタンパク質をコードしており、B5R遺伝子産物は、ウイルスの感染・増殖に関与している。B5R遺伝子産物は感染細胞表面及びウイルスのエンベロープに存在し、隣接の細胞、あるいは宿主体内の他の部位にウイルスが感染・伝播するときに、感染効率を高める働きをし、ウイルスのプラークサイズ及び宿主域にも関与している。B5R遺伝子を欠失させると、動物細胞に感染させた場合のプラークサイズが小さくなり、ポックサイズも小さくなる。また、皮膚増殖能が低下し、皮膚病原性が低下する。B5R遺伝子が部分的に又は完全に欠失したワクシニアウイルスは、B5R遺伝子の遺伝子産物がその正常機能を有さず、皮膚増殖性も小さく、ヒトに投与した場合でも副作用を起こさない。B5R遺伝子を欠失している弱毒化株として、例えば上記のLC16m8株からB5R遺伝子を完全に欠失させて確立されたm8Δ株(LC16m8Δ株とも呼ぶ)、が挙げられる。また、LC16mO株からB5R遺伝子を完全に欠失して確立されたmOΔ株(LCmOΔ株とも呼ぶ)を用いることもできる。これらのB5R遺伝子を部分的に又は完全に欠失した弱毒されたワクシニアウイルス株は国際公開第WO2005/054451号国際公開パンフレットに記載されており、その記載に基づいて入手することができる。ワクシニアウイルスがB5R遺伝子を部分的に又は完全に欠失し、B5Rタンパク質の機能が欠失しているかどうかは、例えば、RK13細胞に感染させたときに形成されるプラークサイズ、ポックサイズ、Vero細胞でのウイルス増殖性、ウサギにおける皮膚病原性等を指標に判断することができる。また、ワクシニアウイルスの遺伝子配列を調べてもよい。
本発明において用いるワクシニアウイルスは、B5R遺伝子を癌細胞中で発現させ、B5Rタンパク質の作用により、癌細胞の傷害をもたらす。従って、本発明において用いるワクシニアウイルスは完全なB5R遺伝子を発現することが望ましい。上記のようにB5R遺伝子を有しておらず、弱毒化され安全性が確立されているワクシニアウイルスを用いる場合、該B5R遺伝子を欠失したワクシニアウイルスにあらためて完全なB5R遺伝子を導入する。B5R遺伝子を部分的に又は完全に欠失したワクシニアウイルスを用いる場合、該ワクシニアウイルスゲノムに、B5R遺伝子を挿入して、本発明のワクシニアウイルス製造の材料として用いればよい。B5R遺伝子のワクシニアウイルスへの挿入は如何なる方法で行ってもよいが、例えば公知の相同組換え法により行うことができる。また、この場合のB5R遺伝子を挿入する位置は、もともとB5R遺伝子が存在していたB4R遺伝子とB6R遺伝子の間でもよいし、ワクシニアウイルスのゲノムの任意の部位であってもよい。さらに、あらかじめ、B5R遺伝子をDNAコンストラクトとして構築し、それをワクシニアウイルスに導入してもよい。
相同組換えとは、細胞内で2つのDNA分子が同じ塩基配列を介して相互に組換えを起こす現象で、ワクシニアウイルスのような巨大なゲノムDNAを持つウイルスの組換えにしばしば用いられる方法である。まず、標的とするワクシニアウイルス遺伝子部位の配列を中央で分断する形で、B5R遺伝子を連結したプラスミド(これをトランスファーベクターという)を構築し、これを、ワクシニアウイルスを感染させた細胞に導入してやると、ウイルス複製の過程になったウイルスDNAとトランスファーベクター上の同じ配列部分との間で入れ換えが起こり、挟み込まれたB5R遺伝子がウイルスゲノム中に組み込まれる。このとき用いる細胞としては、BSC−1細胞、HTK−143細胞、Hep2細胞、MDCK細胞、Vero細胞、HeLa細胞CV1細胞、COS細胞、RK13細胞、BHK−21細胞、初代ウサギ腎臓細胞等ワクシニアウイルスが感染し得る細胞を用い得る。また、ベクターの細胞への導入は、リン酸カルシウム法、カチオニックリボゾーム法、エレクトロポレーション法等の公知の方法で行えばよい。
ワクシニアウイルスのVGF及びO1Lの機能の欠損とは、VGFをコードする遺伝子及びO1Lをコードする遺伝子が発現しないか、又は発現してもその発現タンパク質がVGF、O1Lの正常な機能を保持していないことをいう。ワクシニアウイルスのVGF及びO1Lの機能を欠損させるためには、VGFをコードする遺伝子及びO1Lをコードする遺伝子の総て又は一部を欠失させればよい。また、塩基置換、欠失又は付加により遺伝子を変異させ、正常なVGF又はO1Lが発現できないようにしてもよい。また、VGFをコードする遺伝子又はO1Lをコードする遺伝子中に外来遺伝子を挿入してもよい。外来遺伝子の挿入や遺伝子の欠失、変異は例えば公知の相同組換えや部位特異的突然変異導入法により行うことができる。本発明において、遺伝子の欠失や変異により正常な遺伝子産物が発現されない場合、遺伝子が欠損しているという。
VGF及びO1Lが機能を欠損しているか否かは、本発明のVGF及びO1Lの機能を欠損した分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスを製造し、該ウイルスがこれらのタンパク質を発現しているかを決定すればよい。例えば、VGFに対する抗体又はO1Lに対する抗体を用いた免疫学的アッセイによりVGF又はO1Lの存在を確認することができる。また、PCRによりVGFをコードする遺伝子やO1Lをコードする遺伝子の存在を決定することができる。
本発明の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルスは癌治療のために用いることができる。すなわち、本発明は分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルスを含む癌治療用の医薬組成物を包含する。
対象とする癌は限定されず、例えば発生臓器別分類した場合、肺癌膵癌卵巣癌皮膚癌胃癌肝臓癌結腸癌肛門直腸癌食道癌子宮癌乳癌膀胱癌前立腺癌、食道癌、脳・神経腫瘍、リンパ腫白血病、骨・骨肉腫平滑筋腫横紋筋腫等あらゆる癌種が対象となる。特に、肺癌、膵癌、卵巣癌の治療に好適に用いることができる。
本発明の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルスを含む癌治療用医薬組成物は、医薬的に有効量の本発明の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルスを有効成分として含んでおり、無菌水性又は非水性の溶液、懸濁液、又はエマルションの形態であってもよい。さらに、塩、緩衝剤アジュバント等の医薬的に許容できる希釈剤助剤担体等を含んでいてもよい。投与は種々の非経口経路、例えば、皮下経路、静脈内経路、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、内経路、経皮経路によればよい。また、癌部に局所投与してもよい。有効投与量は被験体年齢性別、健康、及び体重等により適宜決定することができる。例えば、限定されないが、ヒト成人に対して、投与当たり約102〜1010プラーク形成単位PFU)、好ましくは105〜106プラーク形成単位(PFU)である。
さらに、本発明の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルスは、外来遺伝子(外来DNA又は外来ポリヌクレオチド)を含んでいてもよい。外来遺伝子(外来DNA又は外来ポリヌクレオチド)としては、マーカー遺伝子細胞毒性や免疫賦活効果を有する産物をコードする治療用遺伝子が挙げられ、さらに、癌、ウイルス、細菌、原虫等のタンパク質抗原をコードするDNAが挙げられる。マーカー遺伝子はレポーター遺伝子ともいい、ルシフェラーゼ(LUC)遺伝子、緑色蛍光タンパク質(Green fluorescent protein;GFP)等の蛍光タンパク質遺伝子赤色蛍光タンパク質(DsRed)等の蛍光タンパク質遺伝子、βグルクロニダーゼ(GUS)遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼCAT)遺伝子、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)遺伝子等が挙げられる。これらの外来遺伝子を含む分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルスを分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルスベクターと呼ぶことができる。
治療用遺伝子は、癌や感染症等の特定の疾患の治療に用い得る遺伝子であり、p53、Rb等の腫瘍抑制遺伝子インターロイキン1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、α−インターフェロン、β−インターフェロン、γ−インターフェロン、アンジオスタチントロンボスポンジンエンドスタチン、METH−1、METH−2、GMCSF、G−CSF、M−CSF、腫瘍壊死因子等の生理活性物質をコードする遺伝子等が挙げられる。ルシフェラーゼやGFPを発現する分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスは、その感染細胞である癌細胞を簡便、迅速に検出することが可能となる。本発明の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性ワクシニアウイルスを癌治療に用いる場合、ワクシニアウイルスの有する腫瘍溶解性と共に癌に対する治療用遺伝子が癌治療効果を発揮することができる。
外来遺伝子(外来DNA)としてウイルス、細菌、原虫及び癌等の抗原をコードするDNAを導入することにより、外来遺伝子を導入したワクシニアウイルスベクターを種々のウイルス、細菌、原虫及び癌に対するワクチンとして用いることができる。例えば、ヒト免疫不全ウイルス肝炎ウイルスヘルペスウイルスミコバクテリアマラリア原虫重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)ウイルス等の感染防御抗原中和抗原)、あるいは癌抗原をコードする遺伝子を導入すればよい。
これらの外来遺伝子は、例えば、相同組換えの手法を用いることにより導入することができる。相同組換えは上述の方法で行えばよい。例えば、導入したい部位のDNA配列中に導入すべき外来遺伝子を連結したプラスミド(トランスファーベクター)を作製し、これを、ワクシニアウイルスを感染させた細胞の中に導入すればよい。外来遺伝子の導入領域は、ワクシニアウイルスの生活環に必須でない遺伝子中が好ましい。
また、外来遺伝子を導入する際、外来遺伝子の上流に適当なプロモーターを機能し得る形で連結させるのが望ましい。プロモーターは、限定はないが、上述のPSFJ1−10や、PSFJ2−16、p7.5Kプロモーター、p11Kプロモーター、T7.10プロモーター、CPXプロモーター、HFプロモーター、H6プロモーター、T7ハイブリッドプロモーター等を用いることができる。本発明のワクシニアウイルスベクターに外来遺伝子を導入する方法は、組換えワクシニアウイルスベクターを構築する公知の方法により行うことができ、例えば別冊実験医学ザ・プロトコールシリーズ遺伝子導入発現解析実験法編集土社(1997年9月1日発行)、あるいは、D.M.Glover他編、加藤郁之進 監訳DNAクローニング4−哺乳類のシステム−(第2版)TaKaRa、EMBO Journal(1987年 6巻 p.3379−3384等の記載に従えばよい。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。

0008

分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスMD−RVV(MAPK−dependent Recombinant Vaccinia Virus)の構築
ウイルス蛋白VGFとO1Lの機能を無くした組換えワクシニアウイルスを作出するため、ワクチン株(LC16mO)のVGF遺伝子にルシフェラーゼ−GFP融合遺伝子発現カセットを挿入した組換えウイルス(LC16mO/VGF−(VGF−))、又はO1L遺伝子にルシフェラーゼーGFP融合遺伝子発現カセットを挿入した組換えウイルス(LC16mO/O1L−(O1L−))、又はVGF遺伝子にルシフェラーゼ−GFP融合遺伝子発現カセットとO1L遺伝子にDsRed発現カセットを挿入した組換えウイルス(LC16mO/VGF−O1L−(VGF−/O1L−))(MD)を作製した。尚、LC16mOのウイルス増殖能に影響を及ぼさないHA遺伝子にルシフェラーゼーGFP融合遺伝子発現カセットを挿入した組換えウイルス(mO)を、コントロールとして使用した。図2に作出した組換えワクシニアウイルスの構造を示す。図2中、A、B、C及びDは、それぞれLC16mO(mO)、LC16mO/VGF−(VGF−)、LC16mO/O1L−(O1L−)及びLC16mO/VGF−O1L−(VGF−/O1L−)の構造を示す。
最初に、LC16mO株のゲノムDNAを鋳型として、2つのプライマー5’−cgcggatcctattctcattcatattctct−3’(配列番号3)と5’−cgcaagcttagatctggaaaatgtctgttagt−3’(配列番号4)によってVGF遺伝子領域を、又は2つのプライマー5’−gcgctagcttaacgagttccatttatat−3’(配列番号5)と5’−gcgctagcatgttcatgtatccggaattt−3’(配列番号6)によってO1L遺伝子領域を増幅した。その各PCR産物制限酵素BamHIとHindIII、又はNheIで切断し、それをpUC19ベクターの同じ制限酵素部位クローニングし、pUC19−VGF、又はpUC19−O1Lを構築した。
一方LC16mO株のゲノムDNAを鋳型として、2つのプライマー5’−cgcagctgagcttttgcgatcaataaatg−3’(配列番号7)と5’−ttcagctgaatatgaaggagcaa−3’(配列番号8)によって、TK遺伝子領域を増幅した。そのPCR産物を制限酵素PvuIIで切断し、それをpUC19ベクターの同じ制限酵素部位にクローニングし、pTKを構築した。さらに、2つの合成DNA(5’−aattgcatgcgtcgacattaatggccggaccggccttcgaag−3’(配列番号9)と5’−aattcttcgaaggccggtccggccattaatgtcgacgcatgc−3’(配列番号10))をアニールし、それを制限酵素EcoRIで切断したpTKにクローニングし、pTK−MSCを構築した。合成ワクシニアウイルスプロモーター(Hammond JM.et al.,Journal of Virological Methods.1997;66(1):135−138)を挿入するため、2つの合成DNA(5’−tcgaaattggatcagcttttttttttttttttttggcatataaataaggtcgaggtaccaaaaattgaaaaactattctaatttattgcacggccggac−3’(配列番号11)と5’−cggccgtgcaataaattagaatagtttttcaatttttggtacctcgaccttatttatatgccaaaaaaaaaaaaaaaaaagctgatccaatt−3’(配列番号12))をアニールし、それを制限酵素SfiIとSalIで切断したpTK−MSCにクローニングし、pTK−SP−MSCを構築した。pVNC110−Luc/IRES/EGFPプラスミドから制限酵素SfiIとEcoRIの切断によって獲得したLuc/IRES/EGFP遺伝子断片を、pTK−SP−MSCの同じ制限酵素部位にクローニングし、pTK−SP−LGを構築した。
pGL4.20(プロメガ株式会社)のプラスミドDNAを鋳型として、2つのプライマー5’−caacccgggccatggaagatgccaaaaaca−3’(配列番号13)と5’−ctgcggccgccacggcgatcttgccgccct−3’(配列番号14)によって、ホタルルシフェラーゼ遺伝子領域を増幅した。そのPCR産物を制限酵素SmaIとNotIで切断し、それをpIRESベクター(クロンテック株式会社)の同じ制限酵素部位にクローニングし、pIRES−Lucを構築した。pEGFP−N1(クロンテック株式会社)のプラスミドDNAを鋳型として、2つのプライマー5’−gcgcggccgcagccaccatggtgagcaagggcgagga−3’(配列番号15)と5’−gctgcggccgcttcgaattcttacttgtacagctcgtcca−3’(配列番号16)によって、EGFP遺伝子領域を増幅した。そのPCR産物を制限酵素NotIで切断し、それをpIRES−Lucの同じ制限酵素部位にクローニングし、pIRES−LucGFPを構築した。pIRES−LucGFPを制限酵素SmaIとEcoRIで切断して得たLucGFP断片を、pTK−SP−LGをSfiIで切断し、Blunt処理後、EcoRIで切断して得たベクター断片へクローニングし、pTK−SP−LucGFPを構築した。
pTK−SP−LucGFPを制限酵素SphIとEcoRIで切断し、Blunt処理後、そのSP−LucGFP断片を、pUC19−VGFを制限酵素AccIで切断しBlunt処理した部位へ、又はpUC19−O1Lを制限酵素XbaIで切断しBlunt処理した部位へクローニングしpUC19−VGF−SP−LucGFP、又はpUC19−O1L−SP−LucGFPを構築した。同様に、pTK−SP−LucGFPを制限酵素SphIとEcoRIで切断し、Blunt処理後、そのSP−LucGFP断片を、pVNC110(Suzuki H.et al.,Vaccine.2009;27(7):966−971)を制限酵素SpeIで切断しBlunt処理した部位へクローニングし、pVNC110−SP−LucGFPを構築した。
一方、合成ワクシニアウイルスプロモーターではなく、p7.5KプロモーターをpTK−MSCの制限酵素SphIとSalI部位にクローニングし、pTK−P−MSCを構築した。pDsRed−Express−N1(クロンテック株式会社)のDsRed−Express遺伝子領域をpCR4(Invitrogen社)にクローニングし、pCR4−DsRedを構築した。pCR4−DsRedを制限酵素PmeIとNotIで切断し、Blunt処理したDsRed断片を、pTK−P−MSCをSalIで切断しBlunt処理した部位へクローニングし、pTK−P−DsRedを構築した。pTK−P−DsRedを制限酵素SphIで切断し、Blunt処理後、そのP−DsRed断片を、pUC19−O1Lを制限酵素XbaIで切断しBlunt処理した部位へクローニングしpUC19−O1L−P−DsRedを構築した。
図2に示すウイルスゲノムを持つ各分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスの回収のため、6wellディッシュに80%コンフルエントに培養されたRK13細胞にワクシニアウイルス(LC16mO)をMOI=0.02〜0.1で感染させ、室温で1時間吸着後、FuGENE HD(Roche)と混合したトランスファーベクタープラスミドDNA(pUC19−VGF−SP−LucGFP、pUC19−O1L−SP−LucGFP、又はpVNC110−SP−LucGFP)をマニュアルに従って細胞に添加して取り込ませ、37℃にて2〜5日間培養した。細胞を凍結融解後、ソニケーション処理し、ほぼコンフルエントになったRK13細胞に適当に希釈して接種し、0.8%メチルセルロースを含むEagleMEM,5%FBS培地を加え、37℃で2〜5日間培養した。培地を除き、ラージプラークチップの先で掻き取り、Opti−MEM培地(Invitrogen)に浮遊させた。RK13細胞にてさらに3回以上この操作を繰り返し、プラーク純化した。プラーク純化後に採取したプラークの浮遊液をソニケーション後、その200μLを15,000rpm、30分間遠心し、沈査に50μLの滅菌蒸留水または10mM Tris−HCl(pH7.5)を添加した。30秒間ソニケーション後、95℃で10分間加熱してゲノムDNAを抽出し、PCRによるスクリーニングに供した。VGFに関しては2つのプライマー5’−atgttgataaattatctga−3’(配列番号17)と5’−ttatggcacaaccatatct−3’(配列番号18)によって、O1Lに関しては2つのプライマー5’−acagggattaagacggaaag−3’(配列番号19)と5’−gtcaacaagcatcttccaac−3’(配列番号20)によって、HAに関しては2つのプライマー5’−cgactatagacataatacta−3’(配列番号21)と5’−cagatgatgcacttactgta−3’(配列番号22)によってPCRを行い、所定の大きさのPCRプロダクトが検出されたクローンについて、PCRプロダクトの塩基配列をダイレクトシーケンスにより確認した。塩基配列に問題が無いウイルスクローンを選択し、RK13細胞にて大量培養し精製した後、RK13細胞にてウイルス力価を測定し、実験に供した。尚、VGF−/O1L−分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスの回収のため、同様に培養されたRK13細胞にVGF−ウイルスをMOI=0.02〜0.1で感染させ、室温で1時間吸着後、FuGENE HD(Roche)と混合したトランスファーベクタープラスミドDNA(pUC19−O1L−P−DsRed)をマニュアルに従って細胞に添加して取り込ませ、37℃にて2〜5日間培養した。以下、上記と同様の方法にて回収し、VGF−/O1L−ウイルスとして実験に供した。

0009

分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスの特性
図2に示すウイルスゲノムを持つ各分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスを24wellで血清存在下、又は血清非存在下で培養した各ヒト正常線維NHLF細胞、及びヒト癌細胞株(肺癌A549細胞、膵癌AsPC−1細胞、膵癌BxPC−3細胞、膵癌PancI細胞、卵巣癌SKOV3細胞)にMOI=1で感染させ、37℃で30時間培養後、蛍光顕微鏡オリンパス)で生細胞のまま明視野観察蛍光観察し、それら両方の画像を重ね合わせた。その結果、血清存在下では、正常細胞、及び癌細胞における各ウイルスの細胞障害性はほぼ同等であり、そのGFP蛋白の発現もほぼ同等であった(図3スケールバーは500μMを示す)。図3において、ヒト正常肺線維芽NHLF細胞、及びヒト癌細胞株(肺癌A549細胞、膵癌AsPC−1細胞、膵癌BxPC−3細胞、膵癌PancI細胞、卵巣癌SKOV3細胞)にMock(コントロール)、mO株、VGF欠損mO株(VGF−)、O1L欠損mO株(O1L−)及びVGFとO1L欠損mO株(VGF−/O1L−)を感染させた結果を示してある。各パネルの左に細胞を、上に感染させたワクシニアウイルスを示してある。図中の緑色の部分が蛍光染色された部位を示す(モノクロでは白に見える)。それに対し、血清非存在下では、癌細胞における各ウイルスのGFP発現・細胞障害性はほぼ同等であったが、正常細胞におけるGFP発現・細胞障害性はmOが最も高く、次いでVGF−とO1L−であった。そしてVGF−/O1L−におけるGFP発現・細胞障害性は他のウイルスと比べて極めて低く、模擬対照細胞(Mock)とほぼ同等であった(図4、スケールバーは500μMを示す)。図4の各パネルの意味は図3と同じである。
次に、図2に示すウイルスゲノムを持つ各分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスmO、又はVGF−/O1L−を、8wellチャンバースライドガラス上で血清非存在下で培養した各ヒト正常乳腺上皮MCF10A細胞、及び肺癌A549細胞にMOI=1で感染させ、37℃で12時間培養後、4%ホルムアルデヒド固定、メタノール透過化処理した(これらの処理後ではGFP蛋白を確認することはできたが、DsRed蛋白は確認することができなかった)。そして、リン酸化されたp44/42MAPKタンパク質(Erk1/2)を検出する1次抗体(#4370、CSTジャパン)で反応した。PBS洗浄後、2次蛍光(Alexa Fluor568)抗体(#A21069、Invitrogen)で染色し、DAPIを含む核染色封入剤を加え蛍光顕微鏡(オリンパス)で観察し、得られた各染色画像を合成した。尚、陽性コントロールとして、固定15分前に、上皮成長因子EGF蛋白を200ng/mlの濃度で加えた。図5−1において、ヒト正常乳腺上皮MCF10A細胞、又は肺癌A549細胞(各パネルの左に示す)にMock(コントロール)、EGF刺激(陽性コントロール)、mO株又はVGFとO1L欠損mO株(VGF−/O1L−)を感染させた場合の結果を示す(スケールバーは500μMを示す)。MockのMCF10A細胞では核のみが染色(青)されるのに対し、MockのA549細胞では核と細胞質においてリン酸化されたp44/42MAPKタンパク質が染色(赤)されている。一方、EGF刺激細胞ではMCF10A細胞、A549細胞共に細胞の核(青)と細胞質においてリン酸化されたp44/42MAPKタンパク質が強く染色(赤)されている。mOを感染させたMCF10A細胞、及びA549細胞では、mOウイルス由来の発現GFP蛋白が見られ、その感染細胞と周囲の感染していない細胞で核(青)と細胞質においてリン酸化されたp44/42MAPKタンパク質が強く染色(赤)されている。VGF−/O1L−を感染させた細胞では、MCF10A細胞においては核が染色(青)されているがリン酸化されたp44/42MAPKタンパク質の染色は認められず、mOと比べてVGF−/O1L−ウイルス由来のGFP蛋白を発現する細胞が減少していた。それに対しA549細胞においてはMockと同様にリン酸化されたp44/42MAPKタンパク質が染色(赤)されており、VGF−/O1L−ウイルス由来のGFP蛋白を発現する細胞もmOと同等であった。
一方、図2に示すウイルスゲノムを持つ各分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスmO、VGF−、O1L−又はVGF−/O1L−を、96wellで血清存在下、又は血清非存在下で培養した各ヒト正常肺線維芽NHLF細胞、及びヒト膵臓癌AsPC−1細胞にMOI=1で感染させ、37℃で30時間培養後、PierceERK1/2Colorimetric In−CellELISAKit(62206、Thermo scientific)を用いて、内在性ベルのリン酸化されたp44/42MAPKタンパク質(Erk1/2)を検出した。結果を図5−2に示す。図5−2において、血清存在下(Serum−stimulated cells)、又は血清非存在下(Serum−starved cells)で培養した正常NHLF細胞、又は膵臓癌AsPC−1細胞にMock(コントロール)、mO株(VGF+/O1L+)、O1L欠損mO株(VGF+/O1L−)、VGF欠損mO株(VGF−/O1L+)又はVGFとO1L欠損mO株(VGF−/O1L−)を感染させた場合の結果を示す(縦軸吸光度450nmは、リン酸化されたErk1/2レベルを示す)。血清存在下の正常NHLF細胞、及び膵臓癌AsPC−1細胞では、ウイルスの種類やその感染にかかわらず、高いERKの活性化が認められる。それに比べ、血清非存在下の膵臓癌AsPC−1細胞では、そのリン酸化されたErk1/2レベルはほぼ半減するものの、ウイルスの種類やその感染にかかわらず、同等のERKの活性化が認められる。それに対して、血清非存在下の正常NHLF細胞では、VGF−/O1L−の感染細胞におけるリン酸化されたErk1/2レベルは激減し、ウイルスが感染していないコントロール細胞におけるそのレベルと有意差が認められなかった。一方、VGF+/O1L+、VGF+/O1L−、又はVGF−/O1L+の感染細胞におけるリン酸化されたErk1/2レベルは、依然コントロール細胞におけるそのレベルに比べ有意に上昇していた。以上より、VGF−/O1L−分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスは、Ras/Raf/MEK/ERK代謝経路が活性化されていない正常細胞ではその増殖性が著しく低下するが、Ras/Raf/MEK/ERK代謝経路が活性化している癌細胞では、それがVGF−/O1L−ウイルスのERK活性化機能を補ってウイルスは増殖できることが証明された。

0010

分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスの安全性
この分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスのマウス体内におけるウイルス病原性を検討した。VGF−/O1L−分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスが感染した正常細胞ではERKを活性化できないため、細胞分裂は促進されず、その結果、ウイルス増殖は著明に低下すると予想される。106pfuの図2に示すウイルスゲノムを持つ各分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスをSCIDマウスに腹腔内投与した(各群2匹)。投与後、3日(D3)、9日(D9)、16日(D16)、22日(D22)後にルシフェリンを投与し、ウイルスが感染、増殖した細胞におけるルシフェラーゼ発現(=増殖ウイルス数)をin vivoイメージングシステム(Berthold,NightDHADE LB985)により非侵襲的モニターし(図6A)、数値化した(図6B)。その結果、ウイルス投与3日後では、mO投与マウスにおいて高いルシフェラーゼ発現が見られ、次いでO1L−投与マウス、VGF−投与マウス、そしてVGF−/O1L−投与マウスとなっており、ウイルス投与9日後のVGF−/O1L−投与マウスではその発現が見られなかった。その後、mOとO1L−投与マウスにおいては、ウイルスが感染、増殖し、時間経過に伴って投与部位の腹腔内だけではなく全身広がり、主に尾、手足口腔で見られる発と一致していた。一方、VGF−とVGF−/O1L−投与マウスにおいては、ウイルスが喪失していった。図6A図6Bにおいて、各パネルの上と下記載は、mO株、VGF欠損mO株(VGF−)、O1L欠損mO株(O1L−)及びVGFとO1L欠損mO株(VGF−/O1L−)を示し、各パネル左と上の記載は投与後の日数を示す。図6Aの右の棒はルシフェラーゼによる光源の光度つまり光の強さのスケールを示し、上から赤、オレンジ、黄色黄緑、青、紫の順で光の強さを表す。そして、図6Bではその光の強さの単位であるphotons/secの総数を縦軸に示している。
次に、これらのウイルス投与マウスの体重変化を長期的に観察した(図7)。VGF−/O1L−投与マウスにおいては、体重減少が見られず、ウイルスが体内から喪失したことと一致した。それに対してmO投与マウスは、急激な体重減少を伴うウイルス毒性によって、投与35日後と49日後に死亡した。又、O1L−投与マウスは、同様に投与49日後と77日後に死亡した。一方、VGF−投与マウス群の中には、投与217日後ごろから尾に発痘が見られ、それに伴ってその部位が壊死し、急激な体重減少を示すマウスがいた。又、投与231日後のルシフェラーゼ発現の非侵襲的イメージングでは、その発痘部位(→)に増殖ウイルスが確認された(図8)。尚、測定条件図6Aと同様であり、光の強さを示すスケールも同レンジで上から赤、オレンジ、黄色黄緑、青、紫の順で光の強さを表す。最終的にVGF−投与マウスは、投与252日後と287日後に死亡した(図7)。以上より、VGF−/O1L−分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスは、Ras/Raf/MEK/ERK代謝経路を活性化するためのウイルス蛋白VGFとO1Lをコードする遺伝子が欠失しているため、正常細胞ではその増殖性が著しく低下することがマウス体内において証明された。

0011

分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスの抗癌効果
ウミシイタケルシフェラーゼを安定して発現するヒト膵癌BxPC−3細胞(5x106個)をSCIDマウスの腹腔内に投与し、その7日後に106pfuの各分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスを腹腔内に投与した(各群5匹)。その結果、VGF−、又はVGF−/O1L−は、BxPC−3腹膜播種モデルマウスにおいて強力な抗癌作用を示し、ウイルス投与無の模擬対照群と比べて、生存率における非常に有意な差がLog−rank検定によって確認され(P=0.0047)、ウイルス毒性による副作用も見られなかった(図9)。さらに、VGF−/O1L−は、VGF−と比べても、生存率における有意な差がLog−rank検定によって確認された(P=0.031)。
次に、ウイルス投与2日前、及びウイルス投与11日後に、ウミシイタケルシフェラーゼの基質であるセレンテラジンを腹腔内投与することによって、マウス体内での腫瘍細胞(=増殖細胞数)をin vivoイメージングシステム(Berthold,NightDHADE LB985)により非侵襲的にモニターし(図10A)、数値化した(図10B)。その結果、ウイルス投与2日前にはBxPC−3細胞の腹膜播種が確認され、全てのウイルス投与群において治療11日後の腹腔内の腫瘍がほぼ喪失していたが、コントロール群では治療効果がなく腫瘍が増大していた。最も生存率の向上が見られたVGF−/O1L−投与マウスでは、治療前に対して治療11日後に97.4〜99.3%の腫瘍細胞が消失していた。図10A図10Bにおいて、各パネルの上と右の記載は、mO株、VGF欠損mO株(VGF−)、O1L欠損mO株(O1L−)及びVGFとO1L欠損mO株(VGF−/O1L−)を示す。図10Aの右の棒はルシフェラーゼによる光源の光度つまり光の強さのスケールを示し、赤、オレンジ、黄色黄緑、青、紫の順で光の強さを表す。そして、図10Bではその光の強さの単位であるphotons/secの総数を縦軸に示している。
次に、ウイルス投与3日後、及び10日後に、ホタルルシフェラーゼの基質であるルシフェリンを腹腔内投与することによって、マウス体内でのウイルス分布を非侵襲的にモニターした。その結果、投与3日後には腹腔内腫瘍における各ウイルス(mO、VGF−、O1L−、及びVGF−/O1L−)の同等の増殖が確認された。投与10日後にはmO、及びO1L−の投与マウスにおいて、腫瘍組織だけではなく正常組織におけるウイルス増殖が見られたが、VGF−、及びVGF−/O1L−では、体内からウイルスが喪失するか、もしくはウイルス増殖が腹腔内の腫瘍のみに限局し、正常組織におけるウイルス増殖は見られなかった(図11)。図11において、各パネルの上の記載は、mO株、VGF欠損mO株(VGF−)、O1L欠損mO株(O1L−)及びVGFとO1L欠損mO株(VGF−/O1L−)を示す。
さらに、同様のBxPC−3腹膜播種マウスモデルにおいて、VGF−/O1L−投与3日後にホタルルシフェラーゼの基質であるルシフェリンを腹腔内投与し安楽死させ、直接腹腔内を観察した(図12)。腹膜播種した腫瘍組織(図12Aの黄色点線部分)が確認され(図12A)、かつウイルスの増殖を示す発光も確認された(図12B)。次に、正常組織を含む腫瘍組織を回収し、10%ホルマリンで固定後、パラフィン切片を作製した。脱パラフィン処理、10mMクエン酸ナトリウムバッファー(pH6.0)を用いたマイクロウェーブ法による抗原賦活化処理後、ブロッキング液(TBST/5%正常ヤギ血清)で連続切片を室温で1時間ブロッキングした。RenillaLuciferaseを検出する1次抗体(PM047、MBL)、リン酸化されたp44/42MAPKタンパク質(Erk1/2)を検出する1次抗体(#4370、CSTジャパン)、又はワクシニアウイルスを検出する1次抗体(ab35219、abcam)を各切片に添加し、4℃で一晩インキュベートし洗浄した後、SignalStain(登録商標)Boost IHC DetectionReagent(#8114、CSTジャパン)とSignalStain(登録商標)DAB Substrate Kit(#8059、CSTジャパン)を用いて発色させ、ヘマトキシリンで切片を対比染色した。図12CがRenilla Luciferase (Rluc)の検出結果を示し、図12Dがリン酸化されたp44/42MAPKタンパク質(Erk1/2)(pERK)の検出結果を示し、図12Eがワクシニアウイルスの検出結果を示す。図12Cに示すように図の上部の組織が正常組織であり、図の下部の組織が腫瘍組織である。Renilla Luciferaseとワクシニアウイルスは、腫瘍細胞でのみ検出された。その腫瘍細胞では、Ras/Raf/MEK/ERK代謝経路の活性化が確認されたが、周囲の正常細胞ではその経路が活性化されていなかった。

実施例

0012

BxPC−3腹膜播種マウスモデルにおけるウイルス用量と抗癌効果、安全性の関係の検討
一方、同様のBxPC−3腹膜播種マウスモデルにおいて、ウイルス用量と抗癌効果・安全性を評価した。ウミシイタケルシフェラーゼを安定して発現するヒト膵癌BxPC−3細胞(5x106個)をSCIDマウスの腹腔内に投与し、その7日後に105、106、又は107pfuの各分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスを腹腔内に投与した(各群5匹)。ウイルス投与2日前、及びウイルス投与11日後に、ウミシイタケルシフェラーゼの基質であるセレンテラジンを腹腔内投与することによって、マウス体内での腫瘍細胞(=増殖細胞数)をin vivoイメージングシステム(Berthold,NightDHADE LB985)により非侵襲的にモニターし(図13A)、数値化した(図13B)。その結果、全てのウイルス投与2日前にはBxPC−3細胞の腹膜播種が有意差なく同等に確認され、治療11日後の腹腔内では、105pfuウイルス投与群で治療前の87.7〜98.3%、106ウイルス投与群で治療前の92.4〜99.3%、107ウイルス投与群で治療前の88.3〜98.9%の腫瘍が有意差なく同等に消失していた。コントロール群では治療効果がなく腫瘍が増大していた。図13A図13Bにおいて、各パネルの上と右の記載は、mO株、VGF欠損mO株(VGF−)、O1L欠損mO株(O1L−)及びVGFとO1L欠損mO株(VGF−/O1L−)を示す。図13Aの右の棒はルシフェラーゼによる光源の光度つまり光の強さのスケールを示し、赤、オレンジ、黄色黄緑、青、紫の順で光の強さを表す。そして、図13Bではその光の強さの単位であるphotons/secの総数を縦軸に示している。
次に、ウイルス投与3日後、及び10日後に、ホタルルシフェラーゼの基質であるルシフェリンを腹腔内投与することによって、マウス体内でのウイルス分布を非侵襲的にモニターした。その結果、投与3日後には腹腔内腫瘍における各ウイルス投与群(105、106、又は107pfuのVGF−/O1L−)では、同等のウイルス増殖が確認された。そして投与10日後には、体内からウイルスが喪失するか、もしくはウイルス増殖が腹腔内の腫瘍のみに限局し、正常組織におけるウイルス増殖は見られなかった(図14)。図14において、各パネルの上の記載は、mO株、VGF欠損mO株(VGF−)、O1L欠損mO株(O1L−)及びVGFとO1L欠損mO株(VGF−/O1L−)を示す。
以上より、VGF−/O1L−分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスは、Ras/Raf/MEK/ERK代謝経路が活性化されていない正常細胞ではその増殖性が著しく低下するが、Ras/Raf/MEK/ERK代謝経路が活性化している腫瘍細胞では、それがVGF−/O1L−ウイルスのERK活性化機能を補ってウイルスは増殖できることがマウス体内において証明された。又、VGF−/O1L−治療群の抗癌効果が、10倍、100倍のVGF−/O1L−治療群のそれと同等であることは、より低い投与量でも、感染した腫瘍細胞内で増殖しながら死滅させるというウイルス療法の利点が実証された。

0013

本発明の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスは、Ras/Raf/MEK/ERK代謝経路を活性化する、VGF及びO1Lの機能が欠損している。従って、正常細胞においては、細胞のRas/Raf/MEK/ERK代謝経路を活性化することができないので、細胞は増殖せず、その結果ワクシニアウイルスも増殖することができないので、正常細胞を障害することはない。一方、癌細胞においては、元々Ras/Raf/MEK/ERK代謝経路が異常に活性化されているので、VGF及びO1Lによる活性化がなくても、癌細胞は増殖し得る。従って、本発明の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスは癌の治療に用い得る。
さらに、ワクシニアウイルスは、広い宿主域と高い発現効率を有しているため、他の外来遺伝子を導入するベクターとしても機能する。ルシフェラーゼやGFPを発現する分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ依存性組換えワクシニアウイルスは、その感染細胞を簡便、迅速に同定することが可能となる。また、細胞毒性効果や免疫賦活効果を有する治療遺伝子を発現させることによって、他の治療法との併用も可能となる。

0014

配列番号3−8、13−22プライマー
配列番号9−12 合成
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
配列表

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