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技術 血清又は血漿中の低密度リポ蛋白の凍結乾燥による変性抑制剤及び変性抑制方法

出願人 日立化成ダイアグノスティックス・システムズ株式会社
発明者 金城健太住田瑞季杉澤吾郎片山有基
出願日 2014年11月19日 (4年10ヶ月経過) 出願番号 2015-549166
公開日 2017年3月16日 (2年6ヶ月経過) 公開番号 WO2015-076285
状態 特許登録済
技術分野 生物学的材料の調査,分析 酵素、微生物を含む測定、試験 ペプチド又は蛋白質
主要キーワード 成分定量 変性防止剤 コレステロール脱水素酵素 精度管理物質 中間密度 ポリオキシエチレンアルケニルエーテル コレステロール酸化酵素 検査施設
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課題・解決手段

血清又は血漿中の低密度リポ蛋白(LDL)の凍結乾燥による変性抑制剤、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性抑制方法、及び、LDL中の成分の正確な測定を可能とする標準品を提供する。メチオニンを有効成分として含有する、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性抑制剤;血清又は血漿にメチオニンを添加した後に、血清又は血漿を凍結乾燥することを特徴とする、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性抑制方法;凍結乾燥された血清又は血漿中のLDL、及び、メチオニンを含有し、かつ、当該LDL中の成分の含量が値付けされていることを特徴とする、血清又は血漿中のLDL中の成分定量用標準品。

概要

背景

血清及び血漿は、尿と同様に、臨床検査においてしばしば用いられる。血清及び血漿には、高密度リポ蛋白HDL)、低密度リポ蛋白(LDL)、超低密度リポ蛋白VLDL)等のリポ蛋白が含まれており、各リポ蛋白にはコレステロール中性脂肪リン脂質等の成分が含まれている。LDLは、アポBを構成成分に含むリポ蛋白であり、酸化等の変性を受け易いことが知られている(特許文献1参照)。

実際の臨床検査においては、リポ蛋白中の成分であるHDL中のコレステロール(以下、HDL−Cと記す)やLDL中のコレステロール(以下、LDL−Cと記す)等がしばしば測定されている。中でも、LDL−Cは動脈硬化指標として用いられる。リポ蛋白中の成分の測定においては、血清又は血漿からのリポ蛋白の分離を伴わないホモニアス法が専ら用いられている。ホモジニアス法によるリポ蛋白中の成分の測定においては、当該成分の濃度が値付けされている標準品が用いられる。標準品は、当該成分の濃度と、当該成分に対する測定値(例えば、吸光度)との間の関係を示す検量線を作成するために使用される。標準品を用いて作成された検量線に、実際の検体を用いた測定で得られた測定値を照らし合わせて、検体中の成分の濃度が決定される。

標準品には、測定対象となる成分が単独で一定濃度又は一定含量で含有される、純品タイプの標準品の他、測定対象となる検体中の成分が他の成分と共に既知濃度又は既知含量で含有される、血清タイプの標準品が知られている。

標準品の形態としては、液状の標準品と凍結乾燥状態の標準品とがある。いずれの状態の標準品であっても、標準品に含まれる、測定対象となる成分が安定に保持され、保存される必要がある。特に、凍結乾燥状態の標準品の場合、その製造において、標準品の原材料となる血清又は血漿を凍結乾燥する工程を含むことになる。前述の通り、LDLは変性を受け易いリポ蛋白であり、凍結乾燥によって変性が進行するが、凍結乾燥条件が不均一な場合、LDLの変性度合が不均一となり、この変性度合の不均一さに起因して、検量線が製品毎に異なってしまい、正確な測定ができない、という問題があった。これまでにも、冷凍および凍結乾燥時のLDLの変性防止剤としてトレハロースを使用する方法(特許文献2参照)が報告されているが、使用時に水性媒体で溶解した際、粘性が高くなってしまう等の問題があった。また、糖類、高分子物質、又は、親水性有機溶媒を有効成分として含有する、血漿等の生体試料のための凍結保護剤が報告されている(特許文献3参照)。また、抗酸化剤としてメチオニンを含有する脂質測定試薬が報告されている(特許文献4参照)。

概要

血清又は血漿中の低密度リポ蛋白(LDL)の凍結乾燥による変性抑制剤、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性抑制方法、及び、LDL中の成分の正確な測定を可能とする標準品を提供する。メチオニンを有効成分として含有する、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性抑制剤;血清又は血漿にメチオニンを添加した後に、血清又は血漿を凍結乾燥することを特徴とする、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性抑制方法;凍結乾燥された血清又は血漿中のLDL、及び、メチオニンを含有し、かつ、当該LDL中の成分の含量が値付けされていることを特徴とする、血清又は血漿中のLDL中の成分定量用標準品。

目的

本発明の目的は、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性抑制剤、及び、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性抑制方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

メチオニンを有効成分として含有する、血清又は血漿中の低密度リポ蛋白凍結乾燥による変性抑制剤

請求項2

血清又は血漿にメチオニンを添加した後、血清又は血漿を凍結乾燥することを特徴とする、血清又は血漿中の低密度リポ蛋白の凍結乾燥による変性抑制方法

請求項3

凍結乾燥された、血清又は血漿中の低密度リポ蛋白、及び、メチオニンを含有し、かつ、当該低密度リポ蛋白中の成分の含量が値付けされていることを特徴とする、血清又は血漿中の低密度リポ蛋白中の成分定量用標準品。

請求項4

以下の工程を含む方法により製造される、請求項3記載の標準品。(1)血清又は血漿にメチオニンを添加する工程;(2)工程(1)で得られた混合物を凍結乾燥する工程;及び、(3)工程(2)で得られた凍結乾燥物中に含まれる、低密度リポ蛋白中の成分の含量を、既知量の当該成分を用いて値付けする工程。

請求項5

低密度リポ蛋白中の成分が、コレステロールである、請求項3又は4記載の標準品。

請求項6

以下の工程を含むことを特徴とする、血清又は血漿中の低密度リポ蛋白中の成分定量用の標準品の製造方法。(1)血清又は血漿にメチオニンを添加する工程;(2)工程(1)で得られた混合物を凍結乾燥する工程;及び、(3)工程(2)で得られた凍結乾燥物中に含まれる、低密度リポ蛋白中の成分の含量を、既知量の当該成分を用いて値付けする工程。

請求項7

低密度リポ蛋白中の成分が、コレステロールである、請求項6記載の製造方法。

請求項8

以下の工程を含むことを特徴とする、血清又は血漿中の低密度リポ蛋白中の成分の定量方法。(1)血清又は血漿中の低密度リポ蛋白中の成分の測定試薬を用いて、当該成分を測定する工程;(2)請求項3又は4記載の標準品と、工程(1)の測定試薬とを用いて、当該成分の濃度と当該成分に対する測定値との間の関係を表す検量線を作成する工程;及び、(3)工程(1)で得られた測定値と、工程(2)で作成した検量線とから、血清又は血漿中の当該成分の濃度を決定する工程。

請求項9

低密度リポ蛋白中の成分が、コレステロールである、請求項8記載の定量方法。

請求項10

血清又は血漿中の低密度リポ蛋白中の成分の測定試薬、及び、請求項3又は4記載の標準品を含有することを特徴とする、血清又は血漿中の低密度リポ蛋白中の成分の定量用キット

請求項11

低密度リポ蛋白中の成分が、コレステロールである、請求項10記載のキット

技術分野

0001

本発明は、血清又は血漿中の低密度リポ蛋白凍結乾燥による変性抑制剤、血清又は血漿中の低密度リポ蛋白の凍結乾燥による変性抑制方法、血清又は血漿中の低密度リポ蛋白中の成分定量用の標準品、血清又は血漿中の低密度リポ蛋白中の成分定量用の標準品の製造方法、血清又は血漿中の低密度リポ蛋白中の成分の定量方法、及び、血清又は血漿中の低密度リポ蛋白中の成分の定量用キットに関する。

背景技術

0002

血清及び血漿は、尿と同様に、臨床検査においてしばしば用いられる。血清及び血漿には、高密度リポ蛋白HDL)、低密度リポ蛋白(LDL)、超低密度リポ蛋白VLDL)等のリポ蛋白が含まれており、各リポ蛋白にはコレステロール中性脂肪リン脂質等の成分が含まれている。LDLは、アポBを構成成分に含むリポ蛋白であり、酸化等の変性を受け易いことが知られている(特許文献1参照)。

0003

実際の臨床検査においては、リポ蛋白中の成分であるHDL中のコレステロール(以下、HDL−Cと記す)やLDL中のコレステロール(以下、LDL−Cと記す)等がしばしば測定されている。中でも、LDL−Cは動脈硬化指標として用いられる。リポ蛋白中の成分の測定においては、血清又は血漿からのリポ蛋白の分離を伴わないホモニアス法が専ら用いられている。ホモジニアス法によるリポ蛋白中の成分の測定においては、当該成分の濃度が値付けされている標準品が用いられる。標準品は、当該成分の濃度と、当該成分に対する測定値(例えば、吸光度)との間の関係を示す検量線を作成するために使用される。標準品を用いて作成された検量線に、実際の検体を用いた測定で得られた測定値を照らし合わせて、検体中の成分の濃度が決定される。

0004

標準品には、測定対象となる成分が単独で一定濃度又は一定含量で含有される、純品タイプの標準品の他、測定対象となる検体中の成分が他の成分と共に既知濃度又は既知含量で含有される、血清タイプの標準品が知られている。

0005

標準品の形態としては、液状の標準品と凍結乾燥状態の標準品とがある。いずれの状態の標準品であっても、標準品に含まれる、測定対象となる成分が安定に保持され、保存される必要がある。特に、凍結乾燥状態の標準品の場合、その製造において、標準品の原材料となる血清又は血漿を凍結乾燥する工程を含むことになる。前述の通り、LDLは変性を受け易いリポ蛋白であり、凍結乾燥によって変性が進行するが、凍結乾燥条件が不均一な場合、LDLの変性度合が不均一となり、この変性度合の不均一さに起因して、検量線が製品毎に異なってしまい、正確な測定ができない、という問題があった。これまでにも、冷凍および凍結乾燥時のLDLの変性防止剤としてトレハロースを使用する方法(特許文献2参照)が報告されているが、使用時に水性媒体で溶解した際、粘性が高くなってしまう等の問題があった。また、糖類、高分子物質、又は、親水性有機溶媒を有効成分として含有する、血漿等の生体試料のための凍結保護剤が報告されている(特許文献3参照)。また、抗酸化剤としてメチオニンを含有する脂質測定試薬が報告されている(特許文献4参照)。

先行技術

0006

WO2003/006989パンフレット
特開平11−124394号公報
特開2008−203269号公報
特開2004−089191号公報

発明が解決しようとする課題

0007

本発明の目的は、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性抑制剤、及び、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性抑制方法を提供することにある。また、本発明の目的は、LDL中の成分の正確な測定を可能とする標準品を提供することにある。

課題を解決するための手段

0008

本発明者らは本課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、血清又は血漿にメチオニンを添加した後、血清又は血漿を凍結乾燥することにより、凍結乾燥によるLDLの変性が抑制される、という知見を見出して本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[11]に関する。

0009

[1]メチオニンを有効成分として含有する、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性抑制剤。
[2]血清又は血漿にメチオニンを添加した後、血清又は血漿を凍結乾燥することを特徴とする、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性抑制方法。

0010

[3]凍結乾燥された、血清又は血漿中のLDL、及び、メチオニンを含有し、かつ、当該LDL中の成分の含量が値付けされていることを特徴とする、血清又は血漿中のLDL中の成分定量用標準品。
[4]以下の工程を含む方法により製造される、[3]記載の標準品。
(1)血清又は血漿にメチオニンを添加する工程;
(2)工程(1)で得られた混合物を凍結乾燥する工程;及び、
(3)工程(2)で得られた凍結乾燥物中に含まれる、LDL中の成分の含量を、既知量の当該成分を用いて値付けする工程。
[5]LDL中の成分が、コレステロールである、[3]又は[4]記載の標準品。

0011

[6]以下の工程を含むことを特徴とする、血清又は血漿中のLDL中の成分定量用の標準品の製造方法。
(1)血清又は血漿にメチオニンを添加する工程;
(2)工程(1)で得られた混合物を凍結乾燥する工程;及び、
(3)工程(2)で得られた凍結乾燥物中に含まれる、LDL中の成分の含量を、既知量の当該成分を用いて値付けする工程。
[7]LDL中の成分が、コレステロールである、[6]記載の製造方法。

0012

[8]以下の工程を含むことを特徴とする、血清又は血漿中のLDL中の成分の定量方法。
(1)血清又は血漿中のLDL中の成分の測定試薬を用いて、当該成分を測定する工程;
(2)[3]又は[4]記載の標準品と、工程(1)の測定試薬とを用いて、当該成分の濃度と当該成分に対する測定値との間の関係を表す検量線を作成する工程;及び、
(3)工程(1)で得られた測定値と、工程(2)で作成した検量線とから、血清又は血漿中の当該成分の濃度を決定する工程。
[9]LDL中の成分が、コレステロールである、[8]記載の定量方法。

0013

[10]血清又は血漿中のLDL中の成分の測定試薬、及び、[3]又は[4]記載の標準品を含有することを特徴とする、血清又は血漿中のLDL中の成分の定量用キット。
[11]LDL中の成分が、コレステロールである、[10]記載のキット

発明の効果

0014

本発明により、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性抑制剤、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性抑制方法、及び、LDL中の成分の正確な測定を可能とする標準品が提供される。

0015

(LDLの変性抑制剤とメチオニン)
本発明のLDLの変性抑制剤は、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性を抑制するものであり、メチオニンを有効成分として含有する。本発明におけるメチオニンとしては、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性を抑制し得る限り、特に制限はなく、L−メチオニン、D−メチオニン、DL−メチオニンのいずれでもよい。

0016

本発明のLDLの変性抑制剤に含まれるメチオニンの含量としては、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性を抑制し得る含量であれば特に制限はなく、通常、血清又は血漿100 mLに本発明のLDLの変性抑制剤が添加されたときに0.025〜5 gとなる含量であり、0.5〜1 gとなる含量が好ましい。

0017

(血清と血漿)
本発明における血清と血漿とは、ヒト又は動物より採取して得られた全血から調製される血清及び血漿であればいずれでもよく、ヒトより採取して得られた全血から調製される血清及び血漿が好ましい。血清は、抗凝固剤を含まない採血管を用いて採取された全血を遠心分離する方法、自然沈降させる方法等により調製することができる。血漿は、抗凝固剤入り採血管によって採取された全血を遠心分離する方法、自然沈降させる方法等により調製することができる。抗凝固剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)2カリウム塩ヘパリンフッ化ナトリウムクエン酸ナトリウム等が挙げられる。動物としては、例えばサルゴリラオランウータンチンパンジーヒヒ等の霊長類等が挙げられる。

0018

[低密度リポ蛋白(LDL)]
本発明におけるLDLとしては、比重が1.006〜1.063に分類される広義のLDL、比重が1.019〜1.063に分類される狭義のLDLのいずれであっても良い。広義のLDLには、比重が1.006〜1.019に分類される中間密度リポ蛋白(IDL)も含まれる。

0019

(LDL中の成分)
本発明におけるLDL中の成分としては、例えばコレステロール、中性脂肪等が挙げられ、コレステロールが好ましい。

0020

(凍結乾燥)
本発明において、凍結乾燥とは、当該分野において使用される通常の意味で使用され、試料凍結させ、凍結状態のままで減圧して、試料から水分を除き乾燥することを意味する。凍結乾燥の条件は特に制限はないが、通常-80〜35℃、好ましくは-80〜30℃の温度で、0.667〜1333Pa、好ましくは13.1〜133.3Paの圧力で6〜120時間、より好ましくは12〜120時間行う。凍結乾燥品の水分含量は通常、10重量%以下、好ましくは1重量%以下である。

0021

(LDLの凍結乾燥による変性抑制方法)
本発明の、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性抑制方法は、血清又は血漿にメチオニンを添加した後に、血清又は血漿を凍結乾燥することを特徴とする。具体的には、本発明の、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性抑制方法は、以下の工程を含む方法である。
(1)血清又は血漿にメチオニンを添加する工程;及び、
(2)工程(1)で得られた混合物を凍結乾燥する工程。

0022

本発明の変性抑制方法において、血清又は血漿に添加されるメチオニンの量は、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性が抑制され得る量であれば特に制限はなく、通常、血清又は血漿100 mL当たり、0.025〜5 gであり、0.5〜1 gが好ましい。

0023

血清又は血漿にメチオニンを添加する際、メチオニンはメチオニン水溶液の状態で添加してもよい。メチオニン水溶液の調製には、脱イオン水蒸留水緩衝液等の水性媒体を使用することができる。緩衝液を調製するための緩衝剤としては、例えば後述の緩衝剤等が挙げられる。メチオニン水溶液のpHは、メチオニン水溶液を血清又は血漿に添加した後に血清又は血漿中のリポ蛋白が沈澱しないpHであればいずれのpHでもよく、pH6〜9が好ましい。

0024

(標準品)
本発明の、血清又は血漿中のLDL中の成分定量用標準品は、凍結乾燥された血清又は血漿中のLDL、及び、メチオニンを含有し、かつ、当該成分の含量が値付けされている標準品である。なお、本発明の標準品は、血清又は血漿中のLDL中の成分定量用の標準品としてのみならず、血清又は血漿中のLDL中の成分定量における精度管理物質として用いることもできる。

0025

なお、本発明の標準品は凍結乾燥状態であるため、検量線作成等においては、既知量の水性媒体に溶解して用いる。凍結乾燥状態の標準品を溶解するための水性媒体としては、本発明のLDL中の成分の定量方法を可能とする水性媒体であれば特に制限はなく、例えば脱イオン水、蒸留水、緩衝液等が挙げられる。緩衝液を調製するための緩衝剤としては、例えば後述の緩衝剤等が挙げられる。

0026

(標準品の製造方法)
本発明の標準品の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)血清又は血漿にメチオニンを添加する工程;
(2)工程(1)で得られた混合物を凍結乾燥する工程;及び、
(3)工程(2)で得られた凍結乾燥物中に含まれる、LDLの成分の含量を、既知量の当該成分を用いて値付けする工程。

0027

本発明の標準品の製造方法において、血清又は血漿に添加されるメチオニンの量は、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性が抑制され得る量であれば特に制限はなく、通常、血清又は血漿100 mL当たり、0.025〜5 gであり、0.5〜1 gが好ましい。

0028

標準品の製造方法の一態様を以下に記す。
血清又は血漿を2〜8℃に冷却し、これにメチオニン水溶液を添加する。この血清又は血漿含有水溶液のpHを約1 mol/Lの水酸化ナトリウム又は約1 mol/Lの塩酸溶液にてpH6〜9に調整した後、このpH調整した水溶液を0.2〜0.4ミクロン程度の濾過膜を使用して濾過する。得られた溶液を凍結乾燥用のバイアル分注し、半打栓する。バイアルに分注した溶液を、-30℃以下の低温で凍結させた後、133.3Paの真空条件下で凍結乾燥させ、徐々に加温しながら最終的に0〜20℃にて乾燥し、凍結乾燥状態の標準品を作製する。

0029

(標準品の値付け)
本発明において、標準品の値付けとは、製造された標準品中に含まれる、測定すべきLDL中の成分の含量を、既知量の当該成分を含有する標準血清を用いて決定することをいう。ここで、既知量の当該成分を含有する標準血清とは、例えば米国厚生省疾病管理・予防センター(CDC)の基準分析法等のホモジニアス法によらない方法により、当該成分の含量が決定されている血清をいう。この標準血清及び製造された標準品を検体として用いて、実際の自動分析装置を用いるホモジニアス法により測定を行い、既知量の当該成分を含有する標準血清の測定値(例えば、吸光度)と製造された標準品の測定値(例えば、吸光度)とを比較し、製造された標準品中の当該成分の含量を決定する。製造された標準品は検査施設において標準血清として検体の測定値の決定に使用される。

0030

(標準品におけるメチオニンの含量)
本発明の標準品に含まれるメチオニンの含量は、標準品中のLDLが安定に保持され、標準品中のLDL中の成分が正確に測定できる含量であれば特に制限はなく、通常、血清又は血漿100 mLに対し、0.025〜5 gであり、0.5〜1 gが好ましい。

0031

添加物
本発明の標準品には、必要に応じて、緩衝剤、金属イオン塩類界面活性剤防腐剤糖化合物等の添加物が含まれていてもよい。緩衝剤としては、例えば乳酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、フタル酸緩衝剤、リン酸緩衝剤トリエタノールアミン緩衝剤、ジエタノールアミン緩衝剤、リジン緩衝剤、バルビツール緩衝剤、イミダゾール緩衝剤、リンゴ酸緩衝剤、シュウ酸緩衝剤、グリシン緩衝剤、ホウ酸緩衝剤炭酸緩衝剤、グリシン緩衝剤、グッド緩衝剤等が挙げられる。グッド緩衝剤としては、例えば2-モルホリノエタンスルホン酸(MES)、ビス(2-ヒドロキシエチルイミノトリスヒドロキシメチルメタン(Bis-Tris)、N-(2-アセトアミドイミノ二酢酸(ADA)、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、N-〔トリス(ヒドロキシメチル)メチル〕-2-アミノエタンスルホン酸(TES)、2-〔4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル〕エタンスルホン酸(HEPES)、3-〔N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ〕-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N-〔トリス(ヒドロキシメチル)メチル〕-2-ヒドロキシ-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPSO)、ピペラジン-N,N’-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(POPSO)、3-〔4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル〕-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(HEPPSO)、3-〔4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル〕プロパンスルホン酸[(H)EPPS]、N-〔トリス(ヒドロキシメチル)メチル〕グリシン(Tricine)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)、N-シクロヘキシル-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(CAPSO)、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)等が挙げられる。

0032

金属イオンとしては、例えばマグネシウムイオンカルシウムイオンマンガンイオン亜鉛イオン等が挙げられる。塩類としては、例えば塩化ナトリウム塩化カリウム等が挙げられる。界面活性剤としては、例えば非イオン性界面活性剤陽イオン性界面活性剤陰イオン性界面活性剤両性界面活性剤等が挙げられる。防腐剤としては、例えばアジ化ナトリウムストレプトマイシンゲンタマイシン等の抗生物質バイオエース、プロクリン300(商標)、プロキセル(Proxel)GXL(商標)等が挙げられる。

0033

上記糖化合物としては、例えば単糖類二糖類等が挙げられるが、二糖類が好ましい。単糖類としては、例えばグルコースフルクトースフコース等が挙げられる。二糖類としては、例えばサッカロース、トレハロース、マルトース等が挙げられる。単糖類、二糖類等は2種以上を併用することもできる。また、糖化合物を血清又は血漿と混合する際の糖化合物の添加量は、血清又は血漿100 mLに対し、通常0.5〜20 gであり、1〜15 gが好ましく、1.25〜12.5 gがより好ましい。

0034

(LDL中の成分の定量方法)
本発明の血清又は血漿中のLDL中の成分の定量方法は、以下の工程を含む。
(1)血清又は血漿中のLDL中の成分の測定試薬を用いて、当該成分を測定する工程;
(2)本発明の標準品と、工程(1)の測定試薬とを用いて、当該成分の濃度と当該成分に対する測定値との間の関係を表す検量線を作成する工程;及び、
(3)工程(1)で得られた測定値と、工程(2)で作成した検量線とから、血清又は血漿中の当該成分の濃度を決定する工程。

0035

上記工程(1)の測定すべきLDL中の成分の測定においては、公知の、LDL中の成分の測定方法を用いることができる。LDL中の成分の測定方法としては、例えばLDL−C測定方法、LDL中の中性脂肪(以下、LDL−TGと記す)の測定方法等が挙げられる。また、LDL中の成分の測定方法としては、LDLを遠心分離等の手段により分画することなく、LDL以外にHDLやVLDL等の複数種のリポ蛋白が同一の反応液共存した状態でLDL中の成分を測定する方法、所謂ホモジニアス法による測定方法が好ましい。

0036

ホモジニアス法によるLDL−C測定方法としては、例えばWO2010/055916パンフレットに記載された、検体とコレステロール測定用酵素とを、[a]ポリオキシエチレンポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル;[b]ポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレン縮合物ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレン分岐アルキルエーテル及びポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレン分岐アルキルエーテルからなる群より選ばれる1つ以上の界面活性剤;[c]第一級アミン第二級アミン第三級アミン及び第四級アンモニウムからなる群より選ばれる1つ以上の界面活性剤;及び、[d]ポリアニオンの存在下に反応させ、該反応で生成する過酸化水素または還元性物質を測定することにより、検体中のLDL−Cを測定する方法等が挙げられる。ここで、コレステロール測定用酵素とは、(i)コレステロールエステル加水分解酵素、及び、コレステロール酸化酵素の組み合わせ、又は、(ii)コレステロールエステル加水分解酵素、酸化型補酵素、及び、コレステロール脱水素酵素の組み合わせである。

0037

(LDL中の成分の定量用キット)
本発明の血清又は血漿中のLDL中の成分の定量用キットは、本発明の標準品とLDL中の成分の測定試薬とを含有する。本発明のキットを用いることにより、LDL中の成分の定量を簡便に行うことができる。LDL中の成分の測定試薬としては、公知の、LDL中の成分の測定試薬を用いることができる。LDL中の成分の測定試薬としては、例えばLDL−C測定試薬、LDL−TG測定試薬等が挙げられる。また、LDL中の成分の測定試薬としては、LDLを遠心分離等の手段により分画することなく、LDL以外にHDLやVLDL等の複数種のリポ蛋白が同一の反応液に共存した状態でLDL中の成分を測定する試薬、所謂ホモジニアス法による測定方法に用いられる試薬が好ましい。

0038

ホモジニアス法によるLDL−C測定方法に用いられるLDL−C測定試薬としては、本発明の標準品を用いる、LDL−Cの定量方法を可能とする試薬であれば特に制限はなく、例えばWO2010/055916パンフレットに記載された、コレステロール測定用酵素;[a]ポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル;[b]ポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレン縮合物、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレン分岐アルキルエーテル及びポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレン分岐アルキルエーテルからなる群より選ばれる1つ以上の界面活性剤;[c]第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン及び第四級アンモニウムからなる群より選ばれる1つ以上の界面活性剤;及び、[d]ポリアニオンを含有するLDL−C測定試薬等が挙げられる。ここで、コレステロール測定用酵素とは、(i)コレステロールエステル加水分解酵素、及び、コレステロール酸化酵素の組み合わせ、又は、(ii)コレステロールエステル加水分解酵素、酸化型補酵素、及び、コレステロール脱水素酵素の組み合わせである。また、ホモジニアス法に用いられるLDL−C測定試薬としては、市販の測定試薬も使用することができる。市販の測定試薬としては、例えばLDL−C測定試薬であるデタミナーL LDL−C(協和デックス社製)、メタリードLDL−C(協和メデックス社製)、コレステストN LDL(積水メディカル社製)、Lタイプワコー LDL−C(和光純薬工業社製)等が挙げられる。

0039

本発明の標準品や本発明のキットは、血清又は血漿中のLDL中の成分が自動で連続測定される自動分析機を用いた測定方法に好適に用いられる。

0040

(LDLの変性抑制剤の効果の検証)
本発明のLDLの変性抑制剤の効果は、例えば次の方法により検証することができる。複数の健常人より採取した血清又は血漿を混合してプール血清又はプール血漿を調製する。調製したプール血清又はプール血漿を2つに分け、片方のプール血清又はプール血漿には本発明のLDLの変性抑制剤を添加し、本発明のLDLの変性抑制剤が添加されたプール血清又はプール血漿(グループAの血清又は血漿)と、本発明のLDLの変性抑制剤が添加されないプール血清又はプール血漿(グループBの血清又は血漿)とを準備する。グループAの血清又は血漿を同じ形状と材質からなる複数の容器に一定量、分注し、前述の方法により凍結乾燥を行い、さらに前述の方法により値付けを行い、凍結乾燥状態の標準品(標準品A)を調製する。同様に、グループBの血清又は血漿を用いて、凍結乾燥状態の標準品(標準品B)を調製する。調製した標準品AをN本抽出し(標準品A1〜標準品AN)、各標準品A(標準品A1〜標準品AN)を検体とし、LDL−C測定試薬を用いて、各標準品A(標準品A1〜標準品AN)に対する吸光度(吸光度A1〜吸光度AN)を測定する。標準品Bに対しても同様の操作を行い、各標準品B(標準品B1〜標準品BN)に対する吸光度(吸光度B1〜吸光度BN)を測定する。次に、測定した吸光度A1〜吸光度ANに対する変動係数(coefficient of variation:C.V.)C.V.Aを算出する。同様に、測定した吸光度B1〜吸光度BNに対する変動係数C.V.Bを算出する。算出したC.V.A及びC.V.Bは、各標準品に対する吸光度のばらつきの大きさを示すため、C.V.が小さいことは、吸光度がより均一であることを意味し、C.V.が大きいことは、吸光度がより不均一であることを意味する。本来であれば、同一の血清又は血漿から標準品A及び標準品Bは調製されるため、標準品Aに対する吸光度(吸光度A1〜吸光度AN)も標準品Bに対する吸光度(吸光度B1〜吸光度BN)も、均一になるはずであるが、凍結乾燥時のLDLの変性の度合いが各容器において微妙に異なるために、吸光度にばらつきが出る。従って、C.V.AがC.V.Bに比較して小さいことが示されれば、本発明のLDLの変性抑制剤により、LDLの凍結乾燥による変性自体が抑制された、と判断できる。

0041

以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を何ら限定するものではない。尚、本実施例においては、下記メーカーの試薬、及び、機器類を使用した。

0042

血清(Trina BioreactivesAG社製;Human TC/TG/HDL/LDL Cholesterol calibrator, LIQUID製品コード:CL1130)、トレハロース(林原社製)、バイオエース(ケイアイ化成社製)、L−メチオニン(ナカライテスク社製)、ホウ珪酸ガラスバイアル[大和特殊硝子社製(容量:2 mL;直径:16 mm;茶褐色)]、凍結乾燥機(東京理化器械社製;EYELA DRC-1100型、FDU-2100型)。

0043

以下の方法により、メチオニンの凍結乾燥によるLDLの変性抑制効果を検討した。
(1)凍結乾燥用血清の調製
以下の組成からなる血清A〜Eを調製した。
<血清A〜E>
血清 1 L
トレハロース40 g
バイオエース 0.05 g
L−メチオニン(第1表参照

0044

0045

(2)凍結乾燥
上記で調製した血清Aをガラスバイアルに0.5 mLずつ分注し、一次凍結乾燥を-34℃で32時間、二次凍結乾燥を20℃で4時間に設定して凍結乾燥を行い、最後に、真空状態のままゴム栓にて閉栓し、凍結乾燥血清Aを製造した。
血清Aの代わりに、血清B〜Eを用いて同様の操作を行い、凍結乾燥血清B〜Eを調製した。

0046

調製した凍結乾燥血清Aを開栓し、25℃で2時間加温したのち、再度ゴム栓にて閉栓し、冷蔵(4℃)で1週間保存することにより、凍結乾燥血清A+を調製した。凍結乾燥血清Aの代わりに凍結乾燥血清B〜Eを用いて同様の操作を行い、凍結乾燥血清B+〜E+を調製した。

0047

(3)バイアル間差の検討
上記(2)で調製した凍結乾燥血清Aのバイアルを20本準備し、各バイアルに精製水0.5 mLの精製水を加えて再構成した血清を検体(20検体)として用いて、LDL−C測定試薬として「デタミナーL LDL−C」を用いて、「デタミナーL LDL−C」に付随添付文書に記載の操作手順に従い、各検体について全3回測定を行い、各検体に対する吸光度を測定した。測定した吸光度から吸光度のC.V.を算出した。その結果を第2表に示す。

0048

実施例

0049

第2表から明らかな様に、L−メチオニンを添加して調製した凍結乾燥血清においては、開栓後の処理の有無にかかわらず、L−メチオニンを添加しないで調製した凍結乾燥血清に比較してC.V.が低く、特に5〜10 g/LのL−メチオニンを添加した凍結乾燥血清において、C.V.は顕著に低かった。C.V.が高い程、吸光度が不均一であることを意味し、この吸光度の不均一は、凍結乾燥によるLDLの変性に起因することから、L−メチオニンを血清又は血漿に添加した場合にC.V.が低くなることは、L−メチオニンが、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性を抑制することを示している。従って、本発明のLDLの変性抑制剤により、血清又は血漿中のLDLの凍結乾燥による変性が抑制され、血清又は血漿中のLDL中の成分を正確に測定することができることが分かった。

0050

本発明により、凍結乾燥による血清又は血漿中のLDLの変性抑制剤、凍結乾燥による血清又は血漿中のLDLの変性抑制方法、血清又は血漿中のLDL中の成分の正確な測定を可能とする標準品とその製造方法、血清又は血漿中のLDL中の成分の定量方法、及び、血清又は血漿中のLDL中の成分の定量キットが提供される。

0051

本発明の血清又は血漿中のLDLの変性抑制剤、血清又は血漿中のLDLの変性抑制方法、血清又は血漿中のLDL中の成分定量用標準品とその製造方法、血清又は血漿中のLDL中の成分の定量方法、及び、血清又は血漿中のLDL中の成分の定量キットは、メタボリックシンドローム等の診断に有用である。

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