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図面 (20)

課題・解決手段

本発明は、細胞増殖を必要とする角膜内皮障害治療または予防を提供する。より詳細には本発明は、p38MAPキナーゼ阻害薬を含む、細胞増殖を必要とする角膜内皮障害の治療または予防薬を提供する。好ましい実施形態では、角膜内皮障害は、創傷である。好ましい実施形態では、p38MAPキナーゼ阻害薬は水溶性である。p38MAPキナーゼ阻害薬は4−[4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−1H−イミダゾール−5−イルピリジン)(SB203580)またはその塩を含みうる。

概要

背景

視覚情報は、眼球最前面の透明な組織である角膜から取り入れられた光が、網膜に達して網膜の神経細胞興奮させ、発生した電気信号視神経を経由して大脳視覚野に伝達することで認識される。良好な視力を得るためには、角膜が透明であることが必要である。角膜の透明性は、角膜内皮細胞ポンプ機能バリア機能により、含水率が一定に保たれることにより保持される。

ヒトの角膜内皮細胞は、出生時には1平方ミリメートル当たり約3000個の密度で存在しているが、一度障害を受けると再生する能力を持たない。角膜内皮変性症や種々の原因による角膜内皮の機能不全によって生じる水疱性角膜症では、角膜が浮腫混濁を生じ、著しい視力低下をきたす。現在、水疱性角膜症に対しては、角膜の上皮、実質および内皮の3層構造のすべてを移植する全層角膜移植術が行われている。しかし、日本での角膜提供は不足しており、角膜移植待機患者約2600人に対し、年間に国内で行われている角膜移植件数は1700件程度である。

角膜は眼球の前方に位置し、主に角膜上皮細胞層、角膜実質層角膜内皮細胞層の3層構造を持った透明な組織である。角膜内皮細胞層は角膜深層部に存在する単層細胞層であり、バリア機能とポンプ機能を持ち、角膜の水分量を一定に保つことで角膜の透明性を維持する役割を果たしている。また、障害を受けても生体内で増殖しないことが知られており、角膜内皮細胞が外傷や疾患等によって障害されて細胞数が減少することで、重篤視覚障害が生じることが知られている。

特許文献1は、眼表面の疾患の局所療法概説である。非特許文献1は、p38の角膜内皮における凍結処置に対する阻害剤の影響を記載する。非特許文献2は、p38MAPキナーゼの、TNFα誘導性の角膜内皮におけるバリア機能(integrety)の損失に対する影響を記載する。非特許文献3および4はp38キナーゼを利用した角膜上皮細胞に関する処置方法を記載する。非特許文献5は、線維性創傷修復過程に関するp38MAPキナーゼシグナル関与を記載する。非特許文献6は、角膜内皮細胞の遊走とMAPキナーゼとの関係について記載する。非特許文献7は、角膜内皮障害とTGFβとの関連を記載する。非特許文献8は、角膜創傷に関する再生治癒に関するTGFβとの関連を記載する。非特許文献9は、角膜内皮細胞とTGFβとの関連を記載する。

概要

本発明は、細胞増殖を必要とする角膜内皮障害の治療または予防を提供する。より詳細には本発明は、p38MAPキナーゼ阻害薬を含む、細胞増殖を必要とする角膜内皮障害の治療または予防薬を提供する。好ましい実施形態では、角膜内皮障害は、創傷である。好ましい実施形態では、p38MAPキナーゼ阻害薬は水溶性である。p38MAPキナーゼ阻害薬は4−[4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−1H−イミダゾール−5−イルピリジン)(SB203580)またはその塩を含みうる。

目的

本発明は、従来では達成が困難であった角膜内皮障害を予防または治癒させることができる技術を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
3件

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請求項1

p38MAPキナーゼ阻害薬を含む、細胞増殖細胞障害抑制または細胞老化抑制を必要とする角膜内皮疾患、障害または状態の治療または予防薬

請求項2

前記角膜内皮障害は、フックス角膜内皮ジストロフィ角膜移植後の持続する角膜内皮密度減少、外傷眼科手術加齢、および角膜内皮炎に関連する障害からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の治療または予防薬。

請求項3

前記p38MAPキナーゼ阻害薬は水溶性である、請求項1に記載の治療または予防薬。

請求項4

前記p38MAPキナーゼ阻害薬は、4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール(SB−202190)、trans−4−[4−(4−フルオロフェニル)−5−(2−メトキシ−4−ピリミジニル)−1H−イミダゾール−1−イルシクロヘキサノール(SB−239063)、4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール(SB−203580)、4−(4−フルオロフェニル)−5−(2−メトキシピリミジン−4−イル)−1−(ピペリジン−4−イル)イミダゾール(SB−242235)、4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−ヒドロキシ−1−ブチニル)−1−(3−フェニルプロピル)−5−(4−ピリジル)イミダゾール(RWJ−67657)、4−(4−フルオロフェニル)−1−(ピペリジン−4−イル)−5−(4−ピリジル)イミダゾール(HEP−689)、(S)−2−(2−アミノ−3−フェニルプロピルアミノ)−1−メチル−5−(2−ナフチル)−4−(4−ピリジル)ピリミジン−6−オン(AMG−548)、2−クロロ−4−(4−フルオロ−2−メチルアニリノ)−2’−メチルベンゾフェノン(EO−1606)、3−(4−クロロフェニル)−5−(1−ヒドロキシアセチルピペリジン−4−イル)−4−(ピリミジン−4−イル)ピラゾール(SD−06)、5−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(2,4−ジフルオロフェニルチオピリミド[3,4−b]ピリダジン−6−オン(VX−745)、4−アセチルアミノ−N−tert−ブチルベンズアミド(CPI−1189)、N−[3−tert−ブチル−1−(4−メチルフェニル)ピラゾール−5−イル]−N’−[4−(2−モルホリノエトキシ)−1−ナフチル]ウレアドラマピモド(Doramapimod(BIRB796)))、2−ベンズアミド−4−[2−エチル−4−(3−メチルフェニル)チアゾール−5−イル]ピリジン(TAK−715)、タルマピモド(Talmapimod;SCIO−469)、1−(カルバモイル−6−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジン−2−イル)−1−(2,6−ジフルオロフェニル)尿素(VX−702;2−(2,4−ジフルオロフェニル)−6−(1−(2,6−ジフルオロフェニル)ウレイドニコチンアミド)、ジルマピモド(dilmapimod;GSK−681323)、4−(5−(シクロプロピルカルバモイル)−2−メチルフェニルアミノ)−5−メチル−N−プロピルピロロ(1,2−f)(1,2,4)トリアジン−6−カルボキサミド(PS−540446)、抗FGF−7抗体(SC−80036)、AVE−9940、[5−アミノ−1−(4−フルオロフェニル)−1H−ピラゾル−4−イル][3−(3−アミノ−2−ヒドロキシプロポキシフェニルメタノン(RO−320−1195)、1−(1,3−ジヒドロキシプロプ−2−イル)−4−(4−フルオロフェニル)−5−[2−フェノキシピリミジン−4−イル]イミダゾール(SB−281832)、2−[5−({4−[(4−フルオロフェニル)メチル]ピペリジン−1−イル}カルボニル)−6−メトキシ−1−メチル−1H−インドル−3−イル]−N,N’−ジメチル−2−オキソアセトアミド(SCIO−323)、2−(5−tert−ブチル−2−m−トリル−2H−ピラゾル−3−イル)−2−ヒドロキシイミド−N−[4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−ナフタレン−1−イル]−アセトアミド(KC−706)、N,N’−ビス[3,5−ビス[1−(2−アミジノヒドラゾノ)エチル]フェニル]デカンジアミド、N,N’−ビス[3,5−ビス[1−[2−(アミノイミノメチル)ヒドラゾノ]エチル]フェニル]デカンジアミド(セマピモド(Semapimod))、および3−(3−ブロモ−4−((2,4−ジフルオロベンジルオキシ)−6−メチル−2−オキソピリジン−1(2H)−イル)−N,4−ジメチルベンズアミド(PH−797804)、および5−(2−(tert−ブチル)−5−(4−フルオロフェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)−3−ネオペンチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−アミン(LY2228820)からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の治療または予防薬。

請求項5

前記p38MAPキナーゼ阻害薬は4−[4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−1H−イミダゾール−5−イル]ピリジン)(SB203580)またはその塩を含む、請求項1に記載の治療または予防薬。

請求項6

前記p38MAPキナーゼ阻害薬は4−[4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−1H−イミダゾール−5−イル]ピリジン)(SB203580)塩酸塩を含む、請求項1に記載の治療または予防薬。

請求項7

細胞増殖を必要とする角膜内皮障害の治療または予防のためのp38MAPキナーゼ阻害物質

請求項8

p38MAPキナーゼ阻害薬の有効量をそれを必要な被験体投与する工程を含む、細胞増殖を必要とする角膜内皮障害の治療または予防のための方法。

技術分野

0001

本発明は、角膜内皮細胞を正常な状態で培養するための技術、方法、ならびにそのための薬剤および培地に関する。

背景技術

0002

視覚情報は、眼球最前面の透明な組織である角膜から取り入れられた光が、網膜に達して網膜の神経細胞興奮させ、発生した電気信号視神経を経由して大脳視覚野に伝達することで認識される。良好な視力を得るためには、角膜が透明であることが必要である。角膜の透明性は、角膜内皮細胞のポンプ機能バリア機能により、含水率が一定に保たれることにより保持される。

0003

ヒトの角膜内皮細胞は、出生時には1平方ミリメートル当たり約3000個の密度で存在しているが、一度障害を受けると再生する能力を持たない。角膜内皮変性症や種々の原因による角膜内皮の機能不全によって生じる水疱性角膜症では、角膜が浮腫混濁を生じ、著しい視力低下をきたす。現在、水疱性角膜症に対しては、角膜の上皮、実質および内皮の3層構造のすべてを移植する全層角膜移植術が行われている。しかし、日本での角膜提供は不足しており、角膜移植待機患者約2600人に対し、年間に国内で行われている角膜移植件数は1700件程度である。

0004

角膜は眼球の前方に位置し、主に角膜上皮細胞層、角膜実質層角膜内皮細胞層の3層構造を持った透明な組織である。角膜内皮細胞層は角膜深層部に存在する単層細胞層であり、バリア機能とポンプ機能を持ち、角膜の水分量を一定に保つことで角膜の透明性を維持する役割を果たしている。また、障害を受けても生体内で増殖しないことが知られており、角膜内皮細胞が外傷や疾患等によって障害されて細胞数が減少することで、重篤視覚障害が生じることが知られている。

0005

特許文献1は、眼表面の疾患の局所療法概説である。非特許文献1は、p38の角膜内皮における凍結処置に対する阻害剤の影響を記載する。非特許文献2は、p38MAPキナーゼの、TNFα誘導性の角膜内皮におけるバリア機能(integrety)の損失に対する影響を記載する。非特許文献3および4はp38キナーゼを利用した角膜上皮細胞に関する処置方法を記載する。非特許文献5は、線維性創傷修復過程に関するp38MAPキナーゼシグナル関与を記載する。非特許文献6は、角膜内皮細胞の遊走とMAPキナーゼとの関係について記載する。非特許文献7は、角膜内皮障害とTGFβとの関連を記載する。非特許文献8は、角膜創傷に関する再生治癒に関するTGFβとの関連を記載する。非特許文献9は、角膜内皮細胞とTGFβとの関連を記載する。

0006

特表2009−539977号公報

先行技術

0007

Song JS et al.,Invest.Ophthlamol.Vis.Sci.51(2),822−829 2010
Shivanna M et al.,Invest,Ophthlamol.Vis.Sci.51(3),1575−1582 2010
Li C.et al.,J Cell Physiol Vol.226,No.9,Page.2429−2437 (2011)
Kang MG et al.,J Biol Chem Vol.278,No.24,Page.21989−21997 (2003)
SharmaGDet al.,J Cell Biochem Vol.108,No.2,Page.476−488 (2009)
ら、角膜カンファランス・日本角膜移植学会プログラム抄録集 Vol.32nd−44th,Page.55(2008)
http://kaken.nii.ac.jp/d/p/21791705/2009/3/ja.ja.html、2013年11月6日ダウンロード
Mi H.et al.,Histol Histopathol.2009 Nov;24(11):1405−16.
Joko T.et al.,Exp Eye Res.2013 Mar;108:23−32

課題を解決するための手段

0008

本発明者らは、p38MAPキナーゼ阻害薬が、細胞増殖を必要とする角膜内皮障害の治療または予防に使用することができることを見出し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明は代表的に以下を提供する。
(1)p38MAPキナーゼ阻害薬を含む、細胞増殖、細胞障害抑制または細胞老化抑制を必要とする角膜内皮疾患、障害または状態の治療または予防薬
(2)前記角膜内皮障害は、フックス角膜内皮ジストロフィ、角膜移植後の持続する角膜内皮密度減少、外傷、眼科手術加齢、および角膜内皮炎に関連する障害からなる群より選択される少なくとも1つである、項目(1)に記載の治療または予防薬。
(3)前記p38MAPキナーゼ阻害薬は水溶性である、項目(1)または(2)に記載の治療または予防薬。
(4)前記p38MAPキナーゼ阻害薬は、4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール(SB−202190)、trans−4−[4−(4−フルオロフェニル)−5−(2−メトキシ−4−ピリミジニル)−1H−イミダゾール−1−イルシクロヘキサノール(SB−239063)、4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール(SB−203580)、4−(4−フルオロフェニル)−5−(2−メトキシピリミジン−4−イル)−1−(ピペリジン−4−イル)イミダゾール(SB−242235)、4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−ヒドロキシ−1−ブチニル)−1−(3−フェニルプロピル)−5−(4−ピリジル)イミダゾール(RWJ−67657)、4−(4−フルオロフェニル)−1−(ピペリジン−4−イル)−5−(4−ピリジル)イミダゾール(HEP−689)、(S)−2−(2−アミノ−3−フェニルプロピルアミノ)−1−メチル−5−(2−ナフチル)−4−(4−ピリジル)ピリミジン−6−オン(AMG−548)、2−クロロ−4−(4−フルオロ−2−メチルアニリノ)−2’−メチルベンゾフェノン(EO−1606)、3−(4−クロロフェニル)−5−(1−ヒドロキシアセチルピペリジン−4−イル)−4−(ピリミジン−4−イル)ピラゾール(SD−06)、5−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(2,4−ジフルオロフェニルチオピリミド[3,4−b]ピリダジン−6−オン(VX−745)、4−アセチルアミノ−N−tert−ブチルベンズアミド(CPI−1189)、N−[3−tert−ブチル−1−(4−メチルフェニル)ピラゾール−5−イル]−N’−[4−(2−モルホリノエトキシ)−1−ナフチル]ウレアドラマピモド(Doramapimod))、2−ベンズアミド−4−[2−エチル−4−(3−メチルフェニル)チアゾール−5−イル]ピリジン(TAK−715)、タルマピモド(Talmapimod;SCIO−469)、1−(カルバモイル−6−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジン−2−イル)−1−(2,6−ジフルオロフェニル)尿素(VX−702;2−(2,4−ジフルオロフェニル)−6−(1−(2,6−ジフルオロフェニル)ウレイドニコチンアミド)、ジルマピモド(dilmapimod;GSK−681323)、4−(5−(シクロプロピルカルバモイル)−2−メチルフェニルアミノ)−5−メチル−N−プロピルピロロ(1,2−f)(1,2,4)トリアジン−6−カルボキサミド(PS−540446)、抗FGF−7抗体(SC−80036)、AVE−9940、[5−アミノ−1−(4−フルオロフェニル)−1H−ピラゾル−4−イル][3−(3−アミノ−2−ヒドロキシプロポキシフェニルメタノン(RO−320−1195)、1−(1,3−ジヒドロキシプロプ−2−イル)−4−(4−フルオロフェニル)−5−[2−フェノキシピリミジン−4−イル]イミダゾール(SB−281832)、2−[5−({4−[(4−フルオロフェニル)メチル]ピペリジン−1−イル}カルボニル)−6−メトキシ−1−メチル−1H−インドル−3−イル]−N,N’−ジメチル−2−オキソアセトアミド(SCIO−323)、2−(5−tert−ブチル−2−m−トリル−2H−ピラゾル−3−イル)−2−ヒドロキシイミド−N−[4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−ナフタレン−1−イル]−アセトアミド(KC−706)、N,N’−ビス[3,5−ビス[1−(2−アミジノヒドラゾノ)エチル]フェニル]デカンジアミド、N,N’−ビス[3,5−ビス[1−[2−(アミノイミノメチル)ヒドラゾノ]エチル]フェニル]デカンジアミド(セマピモド(Semapimod))、3−(3−ブロモ−4−((2,4−ジフルオロベンジルオキシ)−6−メチル−2−オキソピリジン−1(2H)−イル)−N,4−ジメチルベンズアミド(PH−797804)、および5−(2−(tert−ブチル)−5−(4−フルオロフェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)−3−ネオペンチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−アミン(LY2228820)からなる群より選択される少なくとも1つを含む、項目(1)〜(3)のいずれか1項に記載の治療または予防薬。
(5)前記p38MAPキナーゼ阻害薬は4−[4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−1H−イミダゾール−5−イル]ピリジン)(SB203580)またはその塩を含む、項目(1)〜(4)のいずれか1項に記載の治療または予防薬。
(6)前記p38MAPキナーゼ阻害薬は4−[4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−1H−イミダゾール−5−イル]ピリジン)(SB203580)塩酸塩を含む、項目(1)〜(5)のいずれか1項に記載の治療または予防薬。
(7)細胞増殖を必要とする角膜内皮障害の治療または予防のためのp38MAPキナーゼ阻害物質
(8)p38MAPキナーゼ阻害薬の有効量をそれを必要な被験体投与する工程を含む、細胞増殖を必要とする角膜内皮障害の治療または予防のための方法。

0009

本発明において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。

発明の効果

0010

本発明は、従来では達成が困難であった角膜内皮障害を予防または治癒させることができる技術を提供する。特に、非特許文献1および2では、凍結処置やTNFα誘導性のバリア機能(integrety)の損失等の特殊な系でのp38MAPキナーゼの角膜内皮における役割が解析され、その阻害剤の効果も説明されているが、創傷(外傷)等の細胞増殖を必要とする角膜内皮障害における効果は予測できなかった。特に、実施例等に示されるように、創傷等の回復は極めて顕著であり、その治癒効果は従来の医薬品に比べても顕著であり、点眼薬として有用であることが理解される。また、理論に束縛されることを望まないが、実施例に示される細胞障害抑制効果についても従来技術から予測できないものであり、フックス角膜内皮ジストロフィ、角膜移植後、角膜内皮炎など細胞障害が継続的に進行する疾患において有用であると理解される。

図面の簡単な説明

0011

図1は、p38MAPキナーゼシグナル阻害サイクリン依存性キナーゼ阻害因子を抑制し角膜内皮細胞の細胞周期移行させることを示す。シアトルアイバンクから輸入した研究用角膜より培養した角膜内皮細胞を培養して以下の検討に用いた。細胞培養用培地にp38MAPキナーゼ阻害薬であるSB203580を添加して20日後にサイクリン依存性キナーゼ阻害因子であるp27、p21、p16の発現ウエスタンブロッティング法にて検討した。p27、p21、p16は全てSB203580を添加により抑制された(A;上から順にp27、p21、p16、GAPDHを示す。左レーンコントロール、中央はSB203580 10μM、右レーンはSB203580 30μMを示す。)。p27、p21、p16は角膜内皮細胞の細胞増殖を負に制御するサイクリン依存性キナーゼ阻害因子であることが報告されている。また、細胞周期のG1/S期の移行に関わる分子としてRbタンパクリン酸化サイクリンD1およびD3の発現をウエスタンブロッティング法にて検討したところSB203580を添加により12時間後、24時間後それぞれでこれらの分子の発現が促進された(B;上から2段ずつ、リン酸化Rbタンパク、サイクリンD1、サイクリンD3、GAPDHを示す。各2段において上側はコントロール、下側SB203580(10μM)による刺激を示す。左レーンは12時間、右レーンは24時間を示す。)。また、SB203580によりp38MAPキナーゼシグナルの下流分子であるATF2のリン酸化が抑制されていることを刺激後20日後の時点のウエスタンブロッティング法にて確認した(C;上からリン酸化p38、リン酸化ATF2、GAPDHを示す。左レーンからコントロール、中央はSB203580 10μM、右レーンはSB203580 30μMを示す。)。これらのことよりp38MAPキナーゼシグナル阻害はサイクリン依存性キナーゼ阻害因子を抑制し角膜内皮細胞の細胞周期を移行させることが示された。また、p27、p21、p16の発現は老化により促進されることが知られているが、SB203580により抑制され細胞老化を抑制することが示された。
図2は、p38MAPキナーゼシグナル阻害は角膜内皮細胞の細胞増殖を促進することを示す。培養したヒト角膜内皮細胞をp38MAPキナーゼ阻害薬であるSB203580により刺激して3日後に細胞増殖のマーカーであるKi67にて免疫染色を行った。SB203580による刺激により有意に多くの細胞にKi67の発現を認めた(A,B;Aの左側写真はコントロールを示し、右側はSB203580刺激を示す(10μM)。BはKi67陽性の細胞の割合を示す。縦軸はKi67陽性細胞比率であり(%)、左バーはコントロール、右バーはSB203580刺激(10μM)を示す。)。また、同様に3日後に細胞増殖のマーカーとしてBrdUの取り込み量指標ELISA法により検討したところ、SB203580による刺激により有意にBrdUの取り込みが促進された(C;縦軸はBrdU取り込み量(コントロールに対する相対値)を示し、横軸はSB203580を種々の量(0、1μM、3μM、10μM、30μM)で刺激した結果を示す。)。これらのことからp38MAPキナーゼシグナル阻害は角膜内皮細胞の細胞増殖を促進することが示された。
図3は、p38MAPキナーゼ阻害薬点眼ウサギ部分的角膜内皮障害モデルにおいての創傷治癒を促進することを示す。ウサギの部分的角膜内皮障害モデルを用いてp38MAPキナーゼシグナル阻害が生体において角膜内皮の細胞増殖を促進するかどうかについて検討を行った。直径7mmのステンレス製チップ液体窒素に浸漬して冷却した後に、全身麻酔下の白色ウサギの角膜中央部に15秒間接触させ、中央部分の角膜内皮細胞を部分的に脱落させた。その後に、10mMに調整したSB203580を1回50μlを1日4回、2日間点眼投与した(左パネル写真、右側。右上写真は全体像を示し、右下写真は創傷部分を示す。)。コントロールとして同様に部分的角膜内皮障害を作製した眼に基剤を点眼した(左パネル写真、左側。左上写真は全体像を示し、左下写真は創傷部分を示す。)。2日目に前眼部写真よりSB203580点眼群で角膜の透明性の回復が早いことを確認した。また、安楽死させて角膜を摘出してアリザリン染色により角膜内皮の創傷範囲を染色したところ、SB203580点眼群はコントロールより縮小していた(左パネル写真、各下側)。また、合計6眼ずつで検討を行ったところ、有意に創傷面積はSB203580点眼群において縮小しており(右グラフ、縦軸は創傷面積(mm2)を示し、右がDMSO(コントロール)、左がSB203580による刺激の結果を示す。*はp<0.01での統計学的有意を示す。)、p38MAPキナーゼシグナル阻害は角膜内皮の創傷治癒を促進することが示された。
図4は、p38MAPキナーゼ阻害薬点眼はウサギ部分的角膜内皮障害モデルにおいて角膜内皮細胞の細胞増殖を促進することを示す。図3に加え、さらに、細胞増殖のマーカーであるKi67にて角膜組織の免疫染色を行った(左写真;写真中左側はコントロールを示し、右側はSB203580(10mM)点眼群を示す。右側グラフは、Ki67陽性細胞の比率をコントロール(左)およびSB203580点眼(10mM)に関して示す。)。SB203580による点眼により有意に多くの細胞にKi67の発現を認めた。これらのことからp38MAPキナーゼシグナル阻害は生体においても角膜内皮細胞の細胞増殖を促進することが示された。
図5は、p38MAPキナーゼシグナル阻害は培養環境で生じる細胞の肥大化による細胞密度低下を抑制することを示す。角膜内皮細胞は生体において、加齢とともに年率0.5%程度細胞密度の低下が生じる。また、種々の角膜内皮疾患によっても細胞密度の低下が生じる。細胞培養によっても生体内同様に細胞の肥大化および密度低下という生体同様の細胞老化様減少が生じる。そこでp38MAPキナーゼシグナル阻害により角膜内皮細胞密度低下という細胞老化様減少への影響を検討した。培養したヒト角膜内皮細胞をp38MAPキナーゼ阻害薬であるSB203580を用いて各種濃度で刺激して20日後の位相差顕微鏡写真を示す(上パネル;左からコントロール、SB203580 1μM、3μM、10μMを示す。)。SB203580の濃度依存的に培養による細胞密度低下は阻害され、細胞密度が上昇した。(下パネル:縦軸は細胞密度(mm2)を示し、横軸は、左からコントロール、SB203580 1μM、3μM、10μMを示す。**はコントロールに対する統計学的有意(p<0.05)を意味する。)。
図6は、p38MAPキナーゼシグナル阻害はポンプ機能およびバリア機能を維持して培養による細胞密度低下を阻害することを示す。培養したヒト角膜内皮細胞をp38MAPキナーゼ阻害薬であるSB203580を用いて各種濃度で刺激して20日後に、角膜内皮細胞の機能であるポンプ機能、バリア機能についてそれぞれのマーカーとしてNa+/K+−ATPaseおよびZO−1による免疫染色を行った(左:Na+/K+−ATPase、右:ZO−1。各パネル中、左上はコントロール、右上は、SB203580 1μM、左下はSB203580 3μM、右下はSB203580 10μMを示す。)。p38MAPキナーゼシグナル阻害により角膜内皮細胞は、全ての細胞においてNa+/K+−ATPaseおよびZO−1を発現しており正常な機能を維持していることが示された。
図7は、p38MAPキナーゼシグナル阻害は角膜内皮細胞が産生するサイトカインを抑制することを示す結果である。Reference Spotは参照スポットを示す。GROa、sICAM−1、IL−6、IL−8、IL−23、MCP−1、MIF、SerpinE1は、それぞれのマーカーのスポットを示す。コントロール(上段)ではGROa、sICAM−1、IL−6、IL−8、IL−23、MCP−1、MIF、SerpinE1が検出された。他方、SB203580(下段)を添加した培養上清においてserpinE1以外のサイトカインはコントロールと比較して減少していた。
図8は、p38MAPキナーゼシグナル阻害は角膜内皮細胞が産生するIL−6を抑制することを示す。コントロールと比べてSB203580を添加して培養することで、IL−6の産生が低下することをPCR法(左)、ELISA(右)により示された。左欄では、左レーンがコントロールを示し、右レーンがSB203580を示し、上段はIL−6、下段はコントロールであるGAPDHを示す。右欄のグラフは左からコントロールであるDMSOを示し、右がSB203580を示す。y軸はIL−6産生量(pg/mL)を示す。
図9は、p38MAPキナーゼシグナル阻害は角膜内皮の細胞死を抑制することを示す。左側の写真は左上がコントロール右上がSB203580を示し、左下がUV照射のみ、右下がUV照射にSB203580を組み合わせた結果を示す。左側のグラフは、それぞれ示されるUVの照射、およびSB203580での処置を行った結果を示す。y軸は細胞数(コントロールに対する%)を示す。**はp<0.05での統計学的有意を示す。p38MAPキナーゼシグナル阻害の細胞死への影響を検討するために、培養したヒト角膜内皮細胞を100J/m2の紫外線(UV)にて刺激して細胞死を誘導しSB203580の効果を検討した。位相差顕微鏡写真(左)はUV照射後9時間である。右は生細胞数のコントロールに対する割合で表記した、UV照射後12時間後のグラフである。UV照射により生細胞数は低下するがSB203580により有意に増加する。このことよりp38MAPキナーゼシグナル阻害により角膜内皮細胞の細胞障害が抑制され細胞死が抑制されるものと理解される。
図10は、p38MAPキナーゼシグナル阻害が角膜内皮のUV刺激時のアポトーシスを抑制することを示す。左右ともウェスタンブロットの結果である。各レーンはUV照射およびSB203580の有無での相違を示し、上パネルからカスパーゼ3、PARP、GAPDHを示す。右もUV照射およびSB203580の有無での相違を示し、上パネルからH2AX、GAPDHを示す。左はSB203580によりUV照射によるアポトーシスの実行分子であるカスパーゼ3およびPARPの切断による活性化が抑制されることを示す。右はSB203580によりUV照射によるDNAの二本鎖切断により誘導されるリン酸化ヒストンH2AX の発現が抑制されることを示す。
図11は、p38MAPK阻害薬であるSB203580が培養角膜内皮細胞の増殖を促進することを示す。BrdU取り込みをコントロールに対する割合で示す(y軸)。x軸は、左から、コントロール(SB203580添加なし)、最終濃度0.3μM、1μM、3μM、10μM、30μM、100μMを示す。*はp<0.01を示す。
図12は、p38MAPK阻害薬であるSemapimodが培養角膜内皮細胞の増殖を促進することを示す。BrdU取り込みをコントロールに対する割合で示す(y軸)。x軸は、左から、コントロール(Semapomod添加なし)、最終濃度0.1μM、0.3μM、1μM、3μM、10μMを示す。*はp<0.01を示す。
図13は、p38MAPK阻害薬であるBIRB796が培養角膜内皮細胞の増殖を促進することを示す。BrdU取り込みをコントロールに対する割合で示す(y軸)。x軸は、左から、コントロール(BIRB796添加なし)、最終濃度0.1μM、0.3μM、1μM、3μM、10μM、30μM、100μMを示す。*はp<0.01を示す。
図14は、p38MAPK阻害薬であるPH−797804が培養角膜内皮細胞の増殖を促進することを示す。BrdU取り込みをコントロールに対する割合で示す(y軸)。x軸は、左から、コントロール(BIRB796添加なし)、最終濃度0.1μM、0.3μM、1μM、3μM、10μM、30μMを示す。*はp<0.01を示す。
図15は、p38MAPK阻害薬であるVX−702が培養角膜内皮細胞の増殖を促進することを示す。BrdU取り込みをコントロールに対する割合で示す(y軸)。x軸は、左から、コントロール(BIRB796添加なし)、最終濃度0.1μM、0.3μM、1μM、3μM、10μM、30μM、100μMを示す。*はp<0.01を示す。
図16は、p38MAPK阻害薬であるLY2228820が培養角膜内皮細胞の増殖を促進することを示す。BrdU取り込みをコントロールに対する割合で示す(y軸)。x軸は、左から、コントロール(BIRB796添加なし)、最終濃度0.1μM、0.3μM、1μM、3μM、10μM、30μMを示す。*はp<0.01を示す。
図17は、p38MAPK阻害薬であるTAK−715が培養角膜内皮細胞の増殖を促進することを示す。BrdU取り込みをコントロールに対する割合で示す(y軸)。x軸は、左から、コントロール(BIRB796添加なし)、最終濃度0.1μM、0.3μM、1μM、3μM、10μM、30μM、100μMを示す。*はp<0.01を示す。
図18は、p38MAPK阻害薬は培養サル角膜内皮細胞の増殖を促進することを示す。BrdU取り込みをコントロールに対する割合で示す(y軸)。x軸は、左から、コントロール(DMSO1/1000、薬剤添加なし)、SB203580 10μM、Semapimod 1μM、BIRB796 3μM、PH−797804 1μM、VX−702 3μM、LY2228820 3μM、TAK−715 3μMを示す。*はp<0.01を示す。
図19は、p38MAPK阻害剤は培養ヒト角膜内皮細胞の増殖を促進することを示す。BrdU取り込みをコントロールに対する割合で示す(y軸)。x軸は、左から、コントロール(DMSO1/1000、薬剤添加なし)、SB203580 10μM、Semapimod 1μM、BIRB796 3μM、PH−797804 1μM、VX−702 3μM、LY2228820 3μM、TAK−715 3μMを示す。*はp<0.01を示す。
図20は、p38MAPKの活性化はアポトーシスを誘導することを示す。左パネルは、位相差顕微鏡下で細胞形態を観察した(9時間後)写真である。上からコントロールアニソマイシン群、アニソマイシンおよびZ−VAD−FMK群を示す。9時間後、細胞からタンパク質回収し、タンパク質の発現量の比較をwestern Blot法により行った結果を右パネルに示す。上からp38MAPK、リン酸化p38MAPK、Caspase3およびGADPH(コントロール)の発現を示す。左列よりアニソマイシンもZ−VAD−FMKも加えていないもの(コントロール)、アニソマイシンのみを加えたもの、アニソマイシンもZ−VAD−FMKも両方加えたものを示す。
図21は、SB203580点眼は霊長類の角膜内皮の増殖を促進することを示す。免疫染色により増殖促進を確認した。上段はコントロールを示し、下段はSB203580(3mM)を示す。左からDAPI染色、抗Ki67抗体での免疫染色およびマージの写真を示す。
図22は、SB203580点眼は霊長類の角膜内皮の増殖を促進することを示す。コントロール(左)およびSB203580(右)でのKi67陽性細胞の割合を示す(y軸)。右眼左眼それぞれ5視野ずつ写真撮影を行い、Ki67の陽性細胞率について解析したところ、SB203580を点眼した眼ではKi67の陽性細胞を有意に多く認めた。**はp<0.01を示す。
図23は、p38MAPK阻害薬は培養角膜内皮細胞の細胞死を抑制することを示す。上段左からコントロール(DMSOのみ添加)、UV(100J/m2)、Z−VADでの染色を示し、中段は、左からSB203580、BIRB796、PH−797804を示す。下段は、左から、VX−702、LY2228820、およびTAK−715を示す。使用した濃度はそれぞれ、SB203580が10μM、Semapimodが1μM、BIRB796が3μM、PH−797804が1μM、VX−702が3μM、LY2228820が3μM、TAK−715が3μMであるUVにより生じる細胞障害が用いた全てのp38MAPK阻害剤により抑制された。スケールバーは100μmを示す。
図24は、p38MAPK阻害薬は培養角膜内皮細胞のアポトーシスを抑制することを示す。上段左からコントロール(DMSOのみ添加)、UV(100J/m2)、Z−VADでの染色を示し、中段は、左からSB203580、BIRB796、PH−797804を示す。下段は、左から、VX−702、LY2228820、およびTAK−715を示す。緑色染色はアネキシンVを示し、青色染色はDAPI染色を示す。UVにより生じるアポトーシスが用いた全てのp38MAPK阻害剤により抑制された。スケールバーは100μmを示す。
図25は、p38MAPK阻害薬は角膜内皮のアポトーシスを抑制することを示す。Annexin VおよびDAPIの染色をした結果である。緑色染色はアネキシンVを示し、青色染色はDAPI染色を示す。上段は、左から、UV(100J/m2)照射(コントロールとしてDMSO)、VX−702、PH−797804を示す。中段は、SB203580、LY2228820を示す。下段は、BIRB796、TAK−715を示す。使用した濃度はそれぞれ、SB203580が10μM、Semapimodが1μM、BIRB796が3μM、PH−797804が1μM、VX−702が3μM、LY2228820が3μM、TAK−715が3μMである。UVにより生じるアポトーシスが用いた全てのp38MAPK阻害剤により抑制された。スケールバーは100μmを示す。
図26はp38MAPK阻害薬は角膜内皮のアポトーシスを抑制することを示す。アネキシンV陽性細胞の割合を示す。左から、UV照射、SB203580、BIRB796、PH−707804、VX−702、LY2228820、およびTAK715を示す。検定はDunnett検定を行い、*はp<0.05を示す。

0012

以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。

0013

(定義)
本明細書において「細胞分裂因子マイトージェン)活性化タンパク質(MAP)キナーゼ」とは、マイトージェン活性化タンパク質(MAP)をリン酸化する酵素であり、セリントレオニンキナーゼのファミリーである。MAPキナーゼは、様々な細胞外刺激に応答して活性化され、細胞表面から核へのシグナル伝達仲介するタンパク質セリン/スレオニンキナーゼ群である。MAPキナーゼはまた、細胞外シグナル調節性プロテインキナーゼ(extracellular signal−regulated protein kinases)またはERKとも呼ばれ、3キナーゼカスケード末端酵素である。関係するが区切られたシグナル伝達経路に対する3キナーゼカスケードの反復が、一経路内で逐次的に作用するモジュール多機能シグナル伝達要素としてのMAPキナーゼ経路の概念を生み、この経路ではそれぞれの酵素がリン酸化してそれによりシーケンスの次のメンバーを活性化することが特徴である。このようにして、標準的MAPキナーゼモジュールは3つのプロテインキナーゼからなる。すなわち、あるMAPキナーゼキナーゼ(またはMEKK)があるMAPキナーゼキナーゼ(またはMEK)を活性化し、これが、順に、あるMAPK/ERK酵素を活性化する。MAPK/ERK、JNK(c−junアミノ末端プロテインキナーゼ(またはSAPK)))、およびp38カスケードは、それぞれMEKK、MEKおよびERK、またはMAPキナーゼスーパーファミリーメンバーを含む3つの酵素モジュールからなる。様々な細胞外シグナルはそれらのそれぞれの細胞表面レセプター連合すると初期事象トリガーし、次いでこのシグナルが細胞内部に伝達され、そこで適切なカスケードを活性化する。

0014

MAPキナーゼはマイトージェン活性化プロテインキナーゼ(またはERK)スーパーファミリーであって、TXYコンセンサス配列触媒コアに有する。ERK1/2、p38HOG、およびJNK/SAPKは、平行経路における関係するが別個の末端酵素である。

0015

Sebolt−Leopold et al.,Nat.Med.,5(7):810−6 (Jul,1999)は、MAPキナーゼ(MAPK)経路の小分子阻害剤を同定するためのin vitroカスケードアッセイシステムを記載している。グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)−MEK1およびGST−MAPK融合タンパク質細菌細胞から調製して、これらをこのアッセイシステムにおいてMEK1のMAPKへ、MBP(myelinbasicprotein(ミエリン塩基性タンパク質))への逐次リン酸化に使用した。MEK1を直接阻害するPD184352[2−(2−クロロ−4−ヨードフェニルアミノ)−N−シクロプロピルメトキシ−3,4−ジフルオロ−ベンズアミド]も見出されている。

0016

本明細書において「p38MAPキナーゼ阻害薬(「p38MAPK阻害薬」ともいう。)」とは、p38に関連するMAPキナーゼのシグナル伝達を阻害する任意の薬剤をいう。したがって、p38 MAPキナーゼ阻害薬は、MAPキナーゼファミリーメンバーであるp38−MAPキナーゼを標的とし、低下させる、または阻害する化合物に関する。p38 MAPキナーゼ阻害薬は水溶性のものが好ましい。水溶性でなければ、溶媒として身体に適合しにくいものを使用することが必要となりうるからである。水溶性かどうかについては薬局方の溶解度の定義に基づき分類されうる。すなわち、溶質1g又は1mLを溶かすに要する溶媒量として、極めて溶けやすい:1mL未満;溶けやすい:1mL以上10mL未満;やや溶けやすい:10mL以上30mL未満;やや溶けにくい:30mL以上100mL未満;溶けにくい:100mL以上1000mL未満;極めて溶けにくい:1000mL以上10000mL未満;ほとんど溶けない:10000mL以上と定義されており、本明細書においても同様に評価する。水溶性とは、水を溶媒としたときに、これらのうち有効量を溶解させるものであれば、任意の溶解性のものを利用することができることが理解される。たとえば、4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール(SB−203580)であれば、メタノールに可溶であるが水には溶けにくいとされ、4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール(SB−203580)の塩酸塩であれば、水に可溶とされ、水溶性に分類される。

0017

p38は哺乳類動物MAPキナーゼスーパーファミリーメンバーであって、ストレス紫外光、および炎症性サイトカインにより活性化される。触媒コアにTGYコンセンサス配列を有する。

0018

異常調節されたキナーゼは多くの疾患、特に増殖性および炎症性障害における主な病因であるということが次第に認識されている。癌領域において最初に同定される発癌遺伝子の1つは、上皮増殖因子レセプターキナーゼ(EGFR)に対するものであったが、その過剰発現、乳、脳、前立腺GIおよび卵巣癌と関連している。例えば、MAPキナーゼの構成的活性化は多数の癌細胞系統膵臓大腸、肺、卵巣、および腎臓)および様々なヒト器官(腎臓、大腸、および肺)由来原発腫瘍と関連している(Hoshino et al.,Oncogene,18(3):813−22(Jan.1999))。さらに、p38 MAPキナーゼは、炎症の発症および進行と関連する2つのサイトカイン、TNFαおよびIL−1の産生を調節する。

0019

本発明において使用されうるp38MAPキナーゼ阻害薬は、VX−745(Vertex Pharmaceuticals Inc.)の他、p38 MAPキナーゼ阻害活性を有する化合物であれば特に制限されず、例えば特開2002−97189号公報、特表2000−503304号公報、特表2001−522357号公報、特表2003−535023号、特表2001−506266号公報、特表平9−508123号公報、国際公開第01/56553号公報、国際公開第93/14081号公報、国際公開第01/35959号公報、国際公開第03/68229号公報、国際公開第03/85859号公報、特表2002−534468号公報、特表2001−526222号公報、特表2001−526223号公報、米国特許第6344476号明細書、国際公開第03/99811号公報、国際公開第03/99796号公報、特表2004−506042号公報、国際公開第04/60286号公報、特表2002−363179号公報、特表2004−107358号公報、米国特許第5670527号明細書、米国特許第6096753号明細書、国際公開第01/42189号公報、国際公開第00/31063号公報などの特許公報に記載された化合物が挙げられ、好ましくは4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール(SB−202190)、trans−4−[4−(4−フルオロフェニル)−5−(2−メトキシ−4−ピリミジニル)−1H−イミダゾール−1−イル]シクロヘキサノール(SB−239063)、4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール(SB−203580)、4−(4−フルオロフェニル)−5−(2−メトキシピリミジン−4−イル)−1−(ピペリジン−4−イル)イミダゾール(SB−242235)、4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−ヒドロキシ−1−ブチニル)−1−(3−フェニルプロピル)−5−(4−ピリジル)イミダゾール(RWJ−67657)、4−(4−フルオロフェニル)−1−(ピペリジン−4−イル)−5−(4−ピリジル)イミダゾール(HEP−689)、(S)−2−(2−アミノ−3−フェニルプロピルアミノ)−1−メチル−5−(2−ナフチル)−4−(4−ピリジル)ピリミジン−6−オン(AMG−548)、2−クロロ−4−(4−フルオロ−2−メチルアニリノ)−2’−メチルベンゾフェノン(EO−1606)、3−(4−クロロフェニル)−5−(1−ヒドロキシアセチルピペリジン−4−イル)−4−(ピリミジン−4−イル)ピラゾール(SD−06)、5−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(2,4−ジフルオロフェニルチオ)ピリミド[3,4−b]ピリダジン−6−オン(VX−745)、4−アセチルアミノ−N−tert−ブチルベンズアミド(CPI−1189)、N−[3−tert−ブチル−1−(4−メチルフェニル)ピラゾール−5−イル)−N’−[4−(2−モルホリノエトキシ)−1−ナフチル]ウレア(ドラマピモド(Doramapimod))、2−ベンズアミド−4−[2−エチル−4−(3−メチルフェニル)チアゾール−5−イル]ピリジン(TAK−715)、SCIO−469、1−(カルバモイル−6−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジン−2−イル)−1−(2,6−ジフルオロフェニル)尿素(VX−702;2−(2,4−ジフルオロフェニル)−6−(1−(2,6−ジフルオロフェニル)ウレイド)ニコチンアミド)、GSK−681323、PS−540446、SC−80036、AVE−9940、RO−320−1195、1−(1,3−ジヒドロキシプロプ−2−イル)−4−(4−フルオロフェニル)−5−[2−フェノキシピリミジン−4−イル]イミダゾール(SB−281832)、2−[5−({4−[(4−フルオロフェニル)メチル]ピペリジン−1−イル}カルボニル)−6−メトキシ−1−メチル−1H−インドル−3−イル]−N,N’−ジメチル−2−オキソアセトアミド(SCIO−323)、2−(5−tert−ブチル−2−m−トリル−2H−ピラゾル−3−イル)−2−ヒドロキシイミド−N−[4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−ナフタレン−1−イル]−アセトアミド(KC−706)、:N,N’−ビス[3,5−ビス[1−(2−アミジノヒドラゾノ)エチル]フェニル]デカンジアミド、N,N’−ビス[3,5−ビス[1−[2−(アミノイミノメチル)ヒドラゾノ]エチル]フェニル]デカンジアミド(セマピモド(Semapimod))、3−(3−ブロモ−4−((2,4−ジフルオロベンジル)オキシ)−6−メチル−2−オキソピリジン−1(2H)−イル)−N,4−ジメチルベンズアミド(PH−797804)および5−(2−(tert−ブチル)−5−(4−フルオロフェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)−3−ネオペンチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−アミン(LY2228820)である。

0020

さらに、Tocris Cookson社(St Louis、USA)はhttp://www.tocris.com/に例示される様々なMAPキナーゼ阻害薬を提供する。例えば、SB202190(4−[4−(4−フルオロフェニル)−5−(4−ピリジニル)−lH−イミダゾル−2−イル]フェノール)は、高度に選択的、強力、かつ細胞浸透性のp38 MAPキナーゼ阻害薬である(SmithKline Beecham,plc)(Jianget al.,J.Biol.Chem,271:17920 (1996);Frantzet al.,Biochemistry,37:138−46(1998);Nemotoet al.,J.Biol.Chem.,273:16415 (1998);およびDavieset al.,Biochem.J.,351:95 (2000))。また、アニソマイシン((2R,3S,4S)−2−[(4−メトキシフェニル)メチル]−3,4−ピロリジンジオール−3−アセテート)は、タンパク質合成インヒビター翻訳ブロックする)である。これは、ストレス活性化プロテインキナーゼ(JNK/SAPK)およびp38 MAPキナーゼの強力なアクチベーターであり、前初期遺伝子(c−fos、fosB、c−jun、junB、およびjunD)誘導の相同脱感作を選択的に誘発する強力なシグナル伝達アゴニストとして作用する。PD98059(2−(2−アミノ−3−メトキシフェニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン)は、マイトージェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ(MAPKK)の特異的阻害薬である(Pfizer=Warner−Lambert Company)。SB203580(4−[5−(4−フルオロフェニル)−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−lH−イミダゾル−4−イル]ピリジン)は、p38マイトージェン活性化プロテインキナーゼの高度に選択的な阻害薬(SmithKlineBeecham,plc)である。インターロイキン−2−誘導によるT細胞増殖、シクロオキシゲナーゼ−1および−2、ならびにトロンボキサンシンターゼを阻害することが示されている。SB203580塩酸塩(4−[5−(4−フルオロフェニル)−2−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−lH−イミダゾル−4−イル]ピリジン)化合物は、高度に選択的なp38マイトージェン活性化プロテインキナーゼの阻害薬の水溶性塩である。インターロイキン−2−誘導によるT細胞増殖、シクロオキシゲナーゼ−1および−2、ならびにトロンボキサンシンターゼを阻害することが示されている。U0126(1,4−ジアミノ−2,3−ジシアノ−1,4−ビス[2−アミノフェニルチオブタジエン)は、MAPキナーゼキナーゼの強力かつ選択的な非競合性の阻害薬である。

0021

好ましいp38MAPキナーゼ阻害薬としては、SB203580(4−[4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−1H−イミダゾール−5−イル]ピリジン)が例示されるがそれに限定されない。

0022

このほかの、本発明で用いることができるp38MAPキナーゼ阻害薬としては、例えば、p38 MAPキナーゼに対する中和抗体、p38 MAPキナーゼの活性を阻害する化合物、p38 MAPキナーゼをコードする遺伝子の転写を阻害する化合物(例えば、アンチセンス核酸、RNAi、リボザイム)、ペプチド、および植物成分(例えば、ポリフェノールフラボノイド配糖体)等の化合物が挙げられる。使用される濃度として、約50nmol/l〜100μmol/lが例示され、通常、約0.001〜100μmol/l、好ましくは、約0.01〜75μmol/l、約0.05〜50μmol/l、約1〜10μmol/l、約0.01〜10μmol/l、約0.05〜10μmol/l、約0.075〜10μmol/l、約0.1〜10μmol/l、約0.5〜10μmol/l、約0.75〜10μmol/l、約1.0〜10μmol/l、約1.25〜10μmol/l、約1.5〜10μmol/l、約1.75〜10μmol/l、約2.0〜10μmol/l、約2.5〜10μmol/l、約3.0〜10μmol/l、約4.0〜10μmol/l、約5.0〜10μmol/l、約6.0〜10μmol/l、約7.0〜10μmol/l、約8.0〜10μmol/l、約9.0〜10μmol/l、約0.01〜50μmol/l、約0.05〜5.0μmol/l、約0.075〜5.0μmol/l、約0.1〜5.0μmol/l、約0.5〜5.0μmol/l、約0.75〜5.0μmol/l、約1.0〜5.0μmol/l、約1.25〜5.0μmol/l、約1.5〜5.0μmol/l、約1.75〜5.0μmol/l、約2.0〜5.0μmol/l、約2.5〜5.0μmol/l、約3.0〜5.0μmol/l、約4.0〜5.0μmol/l、約0.01〜3.0μmol/l、約0.05〜3.0μmol/l、約0.075〜3.0μmol/l、約0.1〜3.0μmol/l、約0.5〜3.0μmol/l、約0.75〜3.0μmol/l、約1.0〜3.0μmol/l、約1.25〜3.0μmol/l、約1.5〜3.0μmol/l、約1.75〜3.0μmol/l、約2.0〜3.0μmol/l、約0.01〜1.0μmol/l、約0.05〜1.0μmol/l、約0.075〜1.0μmol/l、約0.1〜1.0μmol/l、約0.5〜1.0μmol/l、約0.75〜1.0μmol/l、約0.09〜35μmol/l、約0.09〜3.2μmol/lであり、より好ましくは、約0.05〜1.0μmol/l、約0.075〜1.0μmol/l、約0.1〜1.0μmol/l、約0.5〜1.0μmol/l、約0.75〜1.0μmol/lであるがこれらに限定されない。

0023

本発明で用いられるアンチセンス核酸は、上記のいずれの作用により、上述のP38MAPキナーゼのシグナル伝達経路のメンバー等をコードする遺伝子(核酸)の発現および/または機能を阻害してもよい。一つの実施形態としては、上述のP38 MAPキナーゼ等をコードする遺伝子のmRNAの5’端近傍の非翻訳領域に相補的アンチセンス配列を設計すれば、遺伝子の翻訳阻害に効果的と考えられる。また、コード領域もしくは3’の非翻訳領域に相補的な配列も使用することができる。このように、上述のP38 MAPキナーゼ等をコードする遺伝子の翻訳領域だけでなく、非翻訳領域の配列のアンチセンス配列を含む核酸も、本発明で利用されるアンチセンス核酸に含まれる。使用されるアンチセンス核酸は、適当なプロモーターの下流に連結され、好ましくは3’側に転写終結シグナルを含む配列が連結される。このようにして調製された核酸は、公知の方法を用いることで所望の動物(細胞)に形質転換することができる。アンチセンス核酸の配列は、形質転換される動物(細胞)が有するP38 MAPキナーゼ等をコードする遺伝子またはその一部と相補的な配列であることが好ましいが、遺伝子の発現を有効に抑制できる限りにおいて、完全に相補的でなくてもよい。転写されたRNAは標的遺伝子転写産物に対して好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相補性を有する。アンチセンス核酸を用いて標的遺伝子の発現を効果的に阻害するには、アンチセンス核酸の長さは少なくとも12塩基以上25塩基未満であることが好ましいが、本発明のアンチセンス核酸は必ずしもこの長さに限定されず、例えば、11塩基以下、100塩基以上、または500塩基以上であってもよい。アンチセンス核酸は、DNAのみから構成されていてもよいが、DNA以外の核酸、例えば、ロックド核酸(LNA)を含んでいてもよい。1つの実施形態としては、本発明で用いられるアンチセンス核酸は、5’末端にLNA、3’末端にLNAを含むLNA含有アンチセンス核酸であってもよい。また、本発明において、アンチセンス核酸を用いる実施形態では、例えば平島および井上,新生化学実験講座2 核酸IV遺伝子の複製と発現,日本生化学会編,東京化学同人,1993,319−347.に記載される方法を用いて、P38 MAPキナーゼ等の核酸配列に基づき、アンチセンス配列を設計することができる。

0024

P38MAPキナーゼ等の発現の阻害は、リボザイム、またはリボザイムをコードするDNAを利用して行うことも可能である。リボザイムとは触媒活性を有するRNA分子を指す。リボザイムには種々の活性を有するものが存在するが、中でもRNAを切断する酵素としてのリボザイムに焦点を当てた研究により、RNAを部位特異的に切断するリボザイムの設計が可能となった。リボザイムには、グループIイントロン型やRNasePに含まれるM1 RNAのように400ヌクレオチド以上の大きさのものもあるが、ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる40ヌクレオチド程度の活性ドメインを有するものもある(小誠および大塚栄子,タンパク質核酸酵素,1990,35,2191.)。

0025

例えば、ハンマーヘッド型リボザイムの自己切断ドメインは、G13U14C15という配列のC15の3’側を切断するが、その活性にはU14とA9との塩基対形成が重要とされ、C15の代わりにA15またはU15でも切断され得ることが示されている(Koizumi,M.et al.,FEBSLett,1988,228,228.)。基質結合部位標的部位近傍のRNA配列と相補的なリボザイムを設計すれば、標的RNA中のUC、UUまたはUAという配列を認識する制限酵素的なRNA切断リボザイムを作出することができる(Koizumi,M.et al.,FEBS Lett,1988,239,285.、小泉誠および大塚栄子,タンパク質核酸酵素,1990,35,2191.、Koizumi,M.et al.,Nucl.AcidsRes.,1989,17,7059.)。

0026

また、ヘアピン型リボザイムも本発明の目的に有用である。このリボザイムは、例えば、タバコリングスポットウイルスサテライトRNAマイナス鎖に見出される(Buzayan,JM.,Nature,1986,323,349.)。ヘアピン型リボザイムからも、標的特異的なRNA切断リボザイムを作出できることが示されている(Kikuchi,Y.& Sasaki,N.,Nucl.AcidsRes,1991,19,6751.、池洋,化学と生物,1992,30,112.)。このように、リボザイムを用いてP38MAPキナーゼ等をコードする遺伝子の転写産物を特異的に切断することで、該遺伝子の発現を阻害することができる。

0027

P38MAPキナーゼ等の内在性遺伝子の発現の抑制は、さらに、標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有する二本鎖RNAを用いたRNA干渉(RNAinterference、以下「RNAi」と略称する)によっても行うことができる。RNAiは、2本鎖RNA(dsRNA)が直接細胞内に取り込まれると、このdsRNAと相同な配列を持つ遺伝子の発現が抑えられ現在注目を浴びている手法である。哺乳類細胞においては、短鎖dsRNA(siRNA)を用いることにより、RNAiを誘導する事が可能で、RNAiは、ノックアウトマウスと比較して、効果が安定、実験が容易、費用が安価であるなど、多くの利点を有している。siRNAについては、本明細書において他の箇所において詳述される。

0028

本明細書において、「siRNA」とは、15〜40塩基からなる二本鎖RNA部分を有するRNA分子であり、前記siRNAのアンチセンス鎖と相補的な配列をもつ標的遺伝子のmRNAを切断し、標的遺伝子の発現を抑制する機能を有する。詳細には、本発明におけるsiRNAは、P38MAPキナーゼ等のmRNA中の連続したRNA配列と相同な配列からなるセンスRNA鎖と、該センスRNA配列に相補的な配列からなるアンチセンスRNA鎖とからなる二本鎖RNA部分を含むRNAである。かかるsiRNAおよび後述の変異体siRNAの設計および製造は当業者の技量の範囲内である。P38 MAPキナーゼ等の配列の転写産物であるmRNAの任意の連続するRNA領域を選択し、この領域に対応する二本鎖RNAを作製することは、当業者においては、通常の試行の範囲内において適宜行い得ることである。また、該配列の転写産物であるmRNA配列から、より強いRNAi効果を有するsiRNA配列を選択することも、当業者においては、公知の方法によって適宜実施することが可能である。また、一方の鎖が判明していれば、当業者においては容易に他方の鎖(相補鎖)の塩基配列を知ることができる。siRNAは、当業者においては市販の核酸合成機を用いて適宜作製することが可能である。また、所望のRNAの合成については、一般の合成受託サービスを利用することができる。

0029

二本鎖RNA部分の長さは、塩基として、15〜40塩基、好ましくは15〜30塩基、より好ましくは15〜25塩基、更に好ましくは18〜23塩基、最も好ましくは19〜21塩基である。これらの上限および下限は、これら特定のものに限定されず、これら列挙されているものの任意の組み合わせであってもよいことが理解される。siRNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖の末端構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平滑末端を有するものであってもよいし、突出末端オーバーハング)を有するものであってもよく、3’端が突き出したタイプが好ましい。センスRNA鎖およびアンチセンスRNA鎖の3’末端に数個の塩基、好ましくは1〜3個の塩基、さらに好ましくは2個の塩基からなるオーバーハングを有するsiRNAは、標的遺伝子の発現を抑制する効果が大きい場合が多く、好ましいものである。オーバーハングの塩基の種類は特に制限はなく、RNAを構成する塩基あるいはDNAを構成する塩基のいずれであってもよい。好ましいオーバーハング配列としては、3’末端にdTdT(デオキシTを2bp)等を挙げることができる。例えば、好ましいsiRNAとしては、全てのsiRNAのセンス・アンチセンス鎖の、3’末端にdTdT(デオキシTを2bp)をつけているものが挙げられるがそれに限定されない。

0030

さらに、上記siRNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖の一方または両方において1〜数個までのヌクレオチドが欠失置換、挿入および/または付加されているsiRNAも用いることができる。ここで、1〜数塩基とは、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜4塩基、さらに好ましくは1〜3塩基、最も好ましくは1〜2塩基である。かかる変異の具体例としては、3’オーバーハング部分塩基数を0〜3個としたもの、3’−オーバーハング部分の塩基配列を他の塩基配列に変更したもの、あるいは塩基の挿入、付加または欠失により上記センスRNA鎖とアンチセンスRNA鎖の長さが1〜3塩基異なるもの、センス鎖および/またはアンチセンス鎖において塩基が別の塩基にて置換されているもの等が挙げられるが、これらに限定されない。ただし、これらの変異体siRNAにおいてセンス鎖とアンチセンス鎖とがハイブリダイゼーションしうること、ならびにこれらの変異体siRNAが変異を有しないsiRNAと同等の遺伝子発現抑制能を有することが必要である。

0031

さらに、siRNAは、一方の端が閉じた構造の分子、例えば、ヘアピン構造を有するsiRNA(Short Hairpin RNA;shRNA)であってもよい。shRNAは、標的遺伝子の特定配列のセンス鎖RNA、該センス鎖配列に相補的な配列からなるアンチセンス鎖RNA、およびその両鎖を繋ぐリンカー配列を含むRNAであり、センス鎖部分とアンチセンス鎖部分がハイブリダイズし、二本鎖RNA部分を形成する。

0032

siRNAは、臨床使用の際には、いわゆるoff−target効果を示さないことが望ましい。off−target効果とは、標的遺伝子以外に、使用したsiRNAに部分的にホモロジーのある別の遺伝子の発現を抑制する作用をいう。off−target効果を避けるために、候補siRNAについて、予めDNAマイクロアレイなどを利用して交差反応がないことを確認することが可能である。また、NCBI(National Center for Biotechnology Information)などが提供する公知のデータベースを用いて、標的となる遺伝子以外に候補siRNAの配列と相同性が高い部分を含む遺伝子が存在しないかを確認する事によって、off−target効果を避けることが可能である。

0033

本発明のsiRNAを作製するには、化学合成による方法および遺伝子組換え技術を用いる方法等、公知の方法を適宜用いることができる。合成による方法では、配列情報に基づき、常法により二本鎖RNAを合成することができる。また、遺伝子組換え技術を用いる方法では、センス鎖配列やアンチセンス鎖配列をコードする発現ベクター構築し、該ベクター宿主細胞に導入後、転写により生成されたセンス鎖RNAやアンチセンス鎖RNAをそれぞれ取得することによって作製することもできる。また、標的遺伝子の特定配列のセンス鎖、該センス鎖配列に相補的な配列からなるアンチセンス鎖、およびその両鎖を繋ぐリンカー配列を含み、ヘアピン構造を形成するshRNAを発現させることにより、所望の二本鎖RNAを作製することもできる。

0034

siRNAは、標的遺伝子の発現抑制活性を有する限りにおいては、siRNAを構成する核酸の全体またはその一部は、天然の核酸であってもよいし、修飾された核酸であってもよい。

0035

本発明におけるsiRNAは、必ずしも標的配列に対する一組の2本鎖RNAである必要はなく、標的配列を含んだ領域に対する複数組(この「複数」とは特に制限されないが、好ましくは2〜5個程度の少数を指す。)の2本鎖RNAの混合物であってもよい。ここで標的配列に対応した核酸混合物としてのsiRNAは、当業者においては市販の核酸合成機およびDICER酵素を用いて適宜作製することが可能であり、また、所望のRNAの合成については、一般の合成受託サービスを利用することができる。なお、本発明のsiRNAには、所謂「カクテルsiRNA」が含まれる。また、本発明におけるsiRNAは、必ずしも全てのヌクレオチドがリボヌクレオチド(RNA)でなくともよい。即ち、本発明において、siRNAを構成する1もしくは複数のリボヌクレオチドは、対応するデオキシリボヌクレオチドであってもよい。この「対応する」とは、糖部分の構造は異なるものの、同一の塩基種アデニングアニンシトシンチミンウラシル))であることを指す。例えば、アデニンを有するリボヌクレオチドに対応するデオキシリボヌクレオチドとは、アデニンを有するデオキシリボヌクレオチドのことをいう。

0036

さらに、本発明の上記RNAを発現し得るDNA(ベクター)もまた、P38MAPキナーゼ等の発現を抑制し得る核酸の好ましい実施形態に含まれる。例えば、本発明の上記二本鎖RNAを発現し得るDNA(ベクター)は、該二本鎖RNAの一方の鎖をコードするDNA、および該二本鎖RNAの他方の鎖をコードするDNAが、それぞれ発現し得るようにプロモーターと連結した構造を有するDNAである。本発明の上記DNAは、当業者においては、一般的な遺伝子工学技術により、適宜作製することができる。より具体的には、目的のRNAをコードするDNAを公知の種々の発現ベクターへ適宜挿入することによって、本発明の発現ベクターを作製することが可能である。

0037

本発明において標的遺伝子の発現を抑制する核酸には、修飾された核酸を用いてもよい。修飾された核酸とは、ヌクレオシド塩基部位糖部位)および/またはヌクレオシド間結合部位に修飾が施されていて、天然の核酸と異なった構造を有するものを意味する。修飾された核酸を構成する「修飾されたヌクレオシド」としては、例えば、無塩基(abasic)ヌクレオシド;アラビノヌクレオシド、2’−デオキシウリジン、α−デオキシリボヌクレオシド、β−L−デオキシリボヌクレオシド、その他の糖修飾を有するヌクレオシド;ペプチド核酸(PNA)、ホスフェート基が結合したペプチド核酸(PHONA)、ロックド核酸(LNA)、モルホリノ核酸等が挙げられる。上記糖修飾を有するヌクレオシドには、2’−O−メチルリボース、2’−デオキシ−2’−フルオロリボース、3’−O−メチルリボース等の置換五単糖;1’,2’−デオキシリボースアラビノース;置換アラビノース糖;六単糖およびアルファアノマーの糖修飾を有するヌクレオシドが含まれる。これらのヌクレオシドは塩基部位が修飾された修飾塩基であってもよい。このような修飾塩基には、例えば、5−ヒドロキシシトシン、5−フルオロウラシル4−チオウラシル等のピリミジン;6−メテルアデニン、6−チオグアノシン等のプリン;および他の複素環塩基等が挙げられる。

0038

修飾された核酸を構成する「修飾されたヌクレオシド間結合」としては、例えば、アルキルリンカーグリセリルリンカー、アミノリンカーポリエチレングリコール)結合、メチルホスホネートヌクレオシド間結合;メチルホスホノチオエートホスホトリエステル、ホスホチオトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、トリエステルプロドラッグスルホンスルホンアミドサルファメート、ホルムアセタール、N−メチルヒドロキシルアミンカルボネートカルバメート、モルホリノ、ボラノホスホネート、ホスホルアミデートなどの非天然ヌクレオシド間結合が挙げられる。

0039

本発明の二本鎖siRNAに含まれる核酸配列としては、P38MAPキナーゼまたは他のP38 MAPキナーゼシグナルのメンバーに対するsiRNAなどを挙げることができる。

0040

また、本発明の核酸または薬剤をリポソームなどのリン脂質小胞体に導入し、その小胞体を投与することも可能である。siRNAまたはshRNAを保持させた小胞体をリポフェクション法により所定の細胞に導入することができる。そして、得られる細胞を例えば、静脈内、動脈内等に全身投与する。眼の必要な部位等に局所的に投与することもできる。siRNAはin vitroにおいては非常に優れた特異的転写後抑制効果を示すが、in vivoにおいては血清中ヌクレアーゼ活性により速やかに分解されてしまうため持続時間が限られるためより最適で効果的なデリバリーシステム開発が求められてきた。一つの例としては、Ochiya,T et al.,Nature Med.,5:707−710,1999、Curr.Gene Ther.,1 :31−52,2001より生体親和性材料であるアテロコラーゲンが核酸と混合し複合体を形成させると、生体中の分解酵素から核酸を保護する作用がありsiRNAのキャリアーとして非常に適しているキャリアーであると報告されており、このような形態を利用することができるが、本発明の核酸、治療または予防薬の導入の方法はこれには限られない。このようにして、生体内においては血清中の核酸分解酵素の働きにより、速やかに分解されてしまうため長時間の効果の継続を達成することができる。例えば、Takeshita F.PNAS.(2003) 102(34) 12177−82、Minakuchi Y Nucleic AcidsReserch(2004) 32(13) e109では、牛皮膚由来のアテロコラーゲンが核酸と複合体を形成し、生体内の分解酵素から核酸を保護する作用があり、siRNAのキャリアーとして非常に適していると報告されており、このような技術を用いることができる。

0041

本明細書において「細胞増殖、細胞障害抑制または細胞老化抑制を必要とする角膜内皮疾患、障害または状態」は、角膜内皮の疾患、障害または状態であって、細胞増殖が必要とされる角膜内皮の障害、細胞障害または細胞老化の少なくとも1つに関連する任意の疾患、障害または状態であって、細胞増殖、細胞障害抑制または細胞老化抑制を行うことによって改善または治癒が達成されうる任意の疾患、障害または状態をいう。細胞増殖、細胞障害抑制または細胞老化抑制を必要とする角膜内皮疾患、障害または状態としては、たとえば、フックス角膜内皮ジストロフィ、角膜移植後の持続する角膜内皮密度減少、外傷、眼科手術、加齢、角膜内皮炎等に関連する障害等を挙げることができるがそれらに限定されない。本明細書において「細胞増殖が必要とされる角膜内皮の障害」とは、外傷、手術などにより角膜内皮が欠損している状態をいい、「細胞障害」とは、フックス角膜内皮ジストロフィ、角膜内皮炎などによりアポトーシス、細胞死などが生じている状態をいい、「細胞老化」とは細胞質の拡大、細胞密度の低下、細胞の大小不同の増加、六角形細胞率の低下、細胞増殖能の低下などが生じている状態をいう。

0042

(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001); Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methodsfrom Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience; Innis,M.A.(1990).PCRProtocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press; Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates; Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates; Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press; Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates; Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Press、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress; Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press; Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,IRL Press; Adams,R.L.etal.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall; Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim; Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press; Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Press、別冊実験医学遺伝子導入発現解析実験法土社、1997などに記載されている。角膜内皮細胞については、Nancy Joyceらの報告{Joyce,2004 #161}{Joyce,2003 #7}がよく知られているが、前述のごとく長期培養継代培養より線維芽細胞様の形質転換を生じ、効率的な培養法の研究が現在も行われている。これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。

0043

(好ましい実施形態の説明)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者はまた、以下のような好ましい実施例を参考にして、本発明の範囲内にある改変、変更などを容易に行うことができることが理解されるべきである。これらの実施形態について、当業者は適宜、任意の実施形態を組み合わせ得る。

0044

1つの局面において、本発明は、p38MAPキナーゼ阻害薬を含む、細胞増殖を必要とする角膜内皮障害の治療または予防薬を提供する。p38MAPキナーゼは、種々のシグナル伝達に関与するとされており、炎症に関与するともされているが、角膜内皮では、そのメカニズムのすべては明らかにされておらず、特に細胞増殖を必要とする角膜内皮障害、たとえば、その阻害によって創傷の治癒または予防に有効であることは予想できなかった。したがって、p38MAPキナーゼ阻害薬を細胞増殖を必要とする角膜内皮障害の治療または予防に応用することは本発明者らが予想外に見出した発見であるといえる。特に、点眼薬として利用可能な実施形態のものは、従来見出されておらず、そのような形態についても実際の離床現場において評価が高いというべきである。

0045

1つの実施形態では、前記p38MAPキナーゼ阻害薬は水溶性である。水溶性であれば、溶媒として生体適合性に問題ではない水を利用することができるからである。水溶性でなくても、医薬として許容される溶媒(例えば、エタノール等)に溶解するものであれば、利用することができる。溶解性については薬局方の溶解度の定義に基づき分類されうる。すなわち、溶質1g又は1mLを溶かすに要する溶媒量として、極めて溶けやすい:1mL未満;溶けやすい:1mL以上10mL未満;やや溶けやすい:10mL以上30mL未満;やや溶けにくい:30mL以上100mL未満;溶けにくい:100mL以上1000mL未満;極めて溶けにくい:1000mL以上10000mL未満;ほとんど溶けない:10000mL以上とされており、本発明の成分の評価においても同様に判断する。水溶性とは、水を溶媒としたときに、これらのうち有効量を溶解させるものであれば、任意の溶解性のものを利用することができることが理解される。標準的には、本発明についていえば、対象となる溶解性((水であれば、水溶性))は、「溶けやすい」の範疇以上のものをいうが、「やや溶けやすい」ものも場合によって使用することができ、低濃度で効果があるものであれば、「やや溶けにくい」ものや「溶けにくい」の分類にあたるものも使用することができる。たとえば、4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール(SB−203580)であれば、メタノールに可溶であるが水には溶けにくいとされ、4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール(SB−203580)の塩酸塩であれば、水に可溶とされ、水溶性に分類される。

0046

1つの実施形態において、本発明の利用法としては、点眼薬以外に前房内への注射、徐放剤への含浸結膜下注射、全身投与(内服静脈注射)などの投与方法を挙げることができる。

0047

1つの実施形態では、本発明において用いられるp38MAPキナーゼ阻害薬は、4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール(SB−202190)、trans−4−[4−(4−フルオロフェニル)−5−(2−メトキシ−4−ピリミジニル)−1H−イミダゾール−1−イル]シクロヘキサノール(SB−239063)、4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール(SB−203580)、4−(4−フルオロフェニル)−5−(2−メトキシピリミジン−4−イル)−1−(ピペリジン−4−イル)イミダゾール(SB−242235)、4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−ヒドロキシ−1−ブチニル)−1−(3−フェニルプロピル)−5−(4−ピリジル)イミダゾール(RWJ−67657)、4−(4−フルオロフェニル)−1−(ピペリジン−4−イル)−5−(4−ピリジル)イミダゾール(HEP−689)、(S)−2−(2−アミノ−3−フェニルプロピルアミノ)−1−メチル−5−(2−ナフチル)−4−(4−ピリジル)ピリミジン−6−オン(AMG−548)、2−クロロ−4−(4−フルオロ−2−メチルアニリノ)−2’−メチルベンゾフェノン(EO−1606)、3−(4−クロロフェニル)−5−(1−ヒドロキシアセチルピペリジン−4−イル)−4−(ピリミジン−4−イル)ピラゾール(SD−06)、5−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(2,4−ジフルオロフェニルチオ)ピリミド[3,4−b]ピリダジン−6−オン(VX−745)、4−アセチルアミノ−N−tert−ブチルベンズアミド(CPI−1189)、N−[3−tert−ブチル−1−(4−メチルフェニル)ピラゾール−5−イル)−N’−[4−(2−モルホリノエトキシ)−1−ナフチル]ウレア(ドラマピモド(Doramapimod))、2−ベンズアミド−4−[2−エチル−4−(3−メチルフェニル)チアゾール−5−イル]ピリジン(TAK−715)、タルマピモド(Talmapimod;SCIO−469)、1−(カルバモイル−6−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジン−2−イル)−1−(2,6−ジフルオロフェニル)尿素(VX−702;2−(2,4−ジフルオロフェニル)−6−(1−(2,6−ジフルオロフェニル)ウレイド)ニコチンアミド)、ジルマピモド(dilmapimod;GSK−681323)、4−(5−(シクロプロピルカルバモイル)−2−メチルフェニルアミノ)−5−メチル−N−プロピルピロロ(1,2−f)(1,2,4)トリアジン−6−カルボキサミド(PS−540446)、抗FGF−7抗体(SC−80036)、AVE−9940(Sanofi−Aventis)、[5−アミノ−1−(4−フルオロフェニル)−1H−ピラゾル−4−イル][3−(3−アミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]メタノン(RO−320−1195)、1−(1,3−ジヒドロキシプロプ−2−イル)−4−(4−フルオロフェニル)−5−[2−フェノキシピリミジン−4−イル]イミダゾール(SB−281832)、2−[5−({4−[(4−フルオロフェニル)メチル]ピペリジン−1−イル}カルボニル)−6−メトキシ−1−メチル−1H−インドル−3−イル]−N,N’−ジメチル−2−オキソアセトアミド(SCIO−323)、2−(5−tert−ブチル−2−m−トリル−2H−ピラゾル−3−イル)−2−ヒドロキシイミド−N−[4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−ナフタレン−1−イル]−アセトアミド(KC−706)、N,N’−ビス[3,5−ビス[1−(2−アミジノヒドラゾノ)エチル]フェニル]デカンジアミド、N,N’−ビス[3,5−ビス[1−[2−(アミノイミノメチル)ヒドラゾノ]エチル]フェニル]デカンジアミド(セマピモド(Semapimod))、3−(3−ブロモ−4−((2,4−ジフルオロベンジル)オキシ)−6−メチル−2−オキソピリジン−1(2H)−イル)−N,4−ジメチルベンズアミド(PH−797804)、および5−(2−(tert−ブチル)−5−(4−フルオロフェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)−3−ネオペンチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−アミン(LY2228820)からなる群より選択される少なくとも1つを含む。

0048

好ましい実施形態では、p38MAPキナーゼ阻害薬は、4−[4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−1H−イミダゾール−5−イル]ピリジン)(SB203580)、N−[3−tert−ブチル−1−(4−メチルフェニル)ピラゾール−5−イル)−N’−[4−(2−モルホリノエトキシ)−1−ナフチル]ウレア(ドラマピモド(Doramapimod);BIRB796)、2−ベンズアミド−4−[2−エチル−4−(3−メチルフェニル)チアゾール−5−イル]ピリジン(TAK−715)、1−(カルバモイル−6−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジン−2−イル)−1−(2,6−ジフルオロフェニル)尿素(VX−702;2−(2,4−ジフルオロフェニル)−6−(1−(2,6−ジフルオロフェニル)ウレイド)ニコチンアミド)N,N’−ビス[3,5−ビス[1−[2−(アミノイミノメチル)ヒドラゾノ]エチル]フェニル]デカンジアミド(セマピモド(Semapimod))、3−(3−ブロモ−4−((2,4−ジフルオロベンジル)オキシ)−6−メチル−2−オキソピリジン−1(2H)−イル)−N,4−ジメチルベンズアミド(PH−797804)、および5−(2−(tert−ブチル)−5−(4−フルオロフェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)−3−ネオペンチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−アミン(LY2228820)、ならびにそれらの塩からなる群より選択される。より好ましくは、p38MAPキナーゼ阻害薬は4−[4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−1H−イミダゾール−5−イル]ピリジン)(SB203580)またはその塩を含む。好ましくは、塩は、医薬として許容される塩である。

0049

別の実施形態では、p38MAPキナーゼ阻害薬は4−[4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−1H−イミダゾール−5−イル]ピリジン)(SB203580)塩酸塩を含む。4−[4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−1H−イミダゾール−5−イル]ピリジン)(SB203580)塩酸塩は水溶性であり、点眼薬として直接利用可能であり、副作用の危険性も少なく、創傷治癒として好ましいからである。

0050

本発明で使用されるp38MAPキナーゼ剤の濃度は、通常約0.1〜100μmol/l、好ましくは約0.1〜30μmol/l、より好ましくは約1μmol/lであり、数種類使用する場合は適宜変更することができ、他の濃度範囲としては、例えば、通常、約0.001〜100μmol/l、好ましくは、約0.01〜75μmol/l、約0.05〜50μmol/l、約1〜10μmol/l、約0.01〜10μmol/l、約0.05〜10μmol/l、約0.075〜10μmol/l、約0.1〜10μmol/l、約0.5〜10μmol/l、約0.75〜10μmol/l、約1.0〜10μmol/l、約1.25〜10μmol/l、約1.5〜10μmol/l、約1.75〜10μmol/l、約2.0〜10μmol/l、約2.5〜10μmol/l、約3.0〜10μmol/l、約4.0〜10μmol/l、約5.0〜10μmol/l、約6.0〜10μmol/l、約7.0〜10μmol/l、約8.0〜10μmol/l、約9.0〜10μmol/l、約0.01〜50μmol/l、約0.05〜5.0μmol/l、約0.075〜5.0μmol/l、約0.1〜5.0μmol/l、約0.5〜5.0μmol/l、約0.75〜5.0μmol/l、約1.0〜5.0μmol/l、約1.25〜5.0μmol/l、約1.5〜5.0μmol/l、約1.75〜5.0μmol/l、約2.0〜5.0μmol/l、約2.5〜5.0μmol/l、約3.0〜5.0μmol/l、約4.0〜5.0μmol/l、約0.01〜3.0μmol/l、約0.05〜3.0μmol/l、約0.075〜3.0μmol/l、約0.1〜3.0μmol/l、約0.5〜3.0μmol/l、約0.75〜3.0μmol/l、約1.0〜3.0μmol/l、約1.25〜3.0μmol/l、約1.5〜3.0μmol/l、約1.75〜3.0μmol/l、約2.0〜3.0μmol/l、約0.01〜1.0μmol/l、約0.05〜1.0μmol/l、約0.075〜1.0μmol/l、約0.1〜1.0μmol/l、約0.5〜1.0μmol/l、約0.75〜1.0μmol/l、約0.09〜35μmol/l、約0.09〜3.2μmol/lであり、より好ましくは、約0.05〜1.0μmol/l、約0.075〜1.0μmol/l、約0.1〜1.0μmol/l、約0.5〜1.0μmol/l、約0.75〜1.0μmol/lを挙げることができるがこれらに限定されない。

0051

1つの実施形態では、本発明の治療または予防薬は、角膜内皮を有する任意の動物、例えば哺乳動物を対象とすることができ、好ましくは霊長類の角膜内皮の治療または予防を目的とする。好ましくは、この治療または予防の対象は、ヒトの角膜内皮である。

0052

1つの実施形態では、本発明の治療および予防薬が対象とする角膜内皮疾患、障害または状態は、細胞増殖、細胞障害抑制または細胞老化抑制を必要とする角膜内皮疾患、障害または状態であり、例えば、フックス角膜内皮ジストロフィ、角膜移植後の持続する角膜内皮密度減少、外傷、眼科手術、加齢、角膜内皮炎等に関連する障害等を挙げることができるがそれらに限定されない。

0053

別の局面では、本発明は、p38MAPキナーゼ阻害薬の有効量をそれを必要な被験体に投与する工程を含む、細胞増殖を必要とする角膜内皮障害の治療または予防のための方法を提供する。

0054

本発明の治療および予防薬または方法の投与(移植)対象は、哺乳動物(例えば、ヒト、マウスラットハムスター、ウサギ、ネコイヌウシウマヒツジ、サル等)があげられるが、霊長類が好ましく、特にヒトが好ましい。霊長類での角膜内皮治療はこれまで十分な成績が達成されておらず、その意味で本発明は画期的な治療法および医薬を提供する。特に、角膜内皮の創傷モデルを用いた症例でp38MAPキナーゼ阻害薬を用いて良好な治療成績を上げたのは本発明が初めてである。投与量、投与回数は、症状、年齢、体重、投与形態により異なるが、通常成人に対し、例えば点眼剤として使用する場合には、有効成分を約0.0001〜0.5w/v%、好ましくは約0.003〜0.03w/v%含有する製剤を、1日あたり1〜10回、好ましくは1〜6回、より好ましくは1〜3回、1回当たり約0.01〜0.1mL投与することができる。本発明の医薬を前房内に注入する場合には、上記濃度の10分の1〜1000分の1の濃度のものが使用され得る。当業者は疾患の状態によって、p38MAPキナーゼ阻害薬の種類および濃度を適宜選択することができる。

0055

本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。

0056

以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。

0057

以下に、本発明の角膜内皮細胞の細胞を正常に培養する例を記載する。実験動物の使用にあたっては、動物を用いる生物医学研究に関する原則(International Guiding Principles for Biomedical Research involving Animals)ならびに、動物の護および管理に関する法律、実験動物の飼養および保管等に関する基準に従った。また、本実験はGuidelines of the Association for Research in Vision and Ophthalmology on the Use of Animals in Ophthalmic and Vision Researchに従って行った。組織の単離は、それぞれ、日精バイリス株式会社滋賀研究所(Shiga Laboratory,Nissei Bilis Co.,Ltd.)(滋賀県大津市)(Ohtsu,Japan)の動物実験倫理委員会および株式会社イブバイオサイエンス(Eve Bioscience,Co.,Ltd.)(和山県橋本市)(Hashimoto,Japan)の動物実験委員会による承認を受けた。また、該当する場合生試料等の取り扱いは、厚生労働省文部科学省等において規定される基準を遵守し、該当する場合はヘルシンキ宣言またはその宣言に基づき作成された倫理規定に基づいて行った。研究のための眼の寄贈については、全ての故人ドナー近親者から同意書を得た。

0058

(実験手法:研究グレードヒト角膜組織)
12個のヒトドナー角膜は、SightLifeTMアイバンクから入手し、全ての角膜を、初代培養前に14日未満の期間にわたり、保存培地(Optisol;Chiron Vision Corporation,Irvine,CA)中、4℃で保存した。

0059

統計解析
サンプルの比較の平均値における統計的有意差P値)は、スチューデントのt検定を用いて決定した。複数のサンプルセットの比較における統計的有意差は、ダネット多重比較検定を用いて解析した。グラフに示す値は平均±SEを表す。

0060

(材料および方法)
・ヒト角膜内皮細胞(HCEC入手先および培養方法):HCECは、以下のように培養した。簡単に述べると、シアトルアイバンクから購入した研究用角膜より、角膜内皮細胞を含むデスメ膜剥離し、角膜内皮細胞を基底膜とともに機械的に剥離して、コラゲナーゼ(ROCHEカタログ番号:10 103 586 001)を用いて基底膜よりはがして(代表的には、1mg/mLコラゲナーゼA(Roche Applied Science)を用いて37℃にて2時間処理した。)回収後、初代培養を行った。培地はヒトはOpti−MEMI Reduced−Serum Medium,Liquid(INVITROGEN カタログ番号:31985−070)に、8%ウシ胎仔血清(FBS)(BIOWEST、カタログ番号:S1820−500)、200mg/ml CaCl2・2H2O(SIGMA カタログ番号:C7902−500G)、0.08%コンドロイチン硫酸(SIGMA カタログ番号:C9819−5G)、20μg/mlアスコルビン酸(SIGMA カタログ番号:A4544−25G)、50μg/mlゲンタマイシン(INVITROGEN カタログ番号:15710−064)および5ng/ml EGF(INVITROGEN カタログ番号:PHG0311)を加えた3T3フィーダー細胞用に馴化させたものを用いた。具体的には、37℃での消化後、個々の角膜から得られたHCECを培養培地中に再懸濁させ、FNC Coating Mix(登録商標)でコーティングした12ウェルプレートの1ウェルプレーティングした。培養培地は、一部の改変を加えた公開されたプロトコルに従って調製した。簡単に述べると、OptiMEM−I(Life Technologies)、8% FBS、5ng/mL上皮増殖因子(EGF)(Sigma−Aldrich Co.,St.Louis,MO)、20μg/mL アスコルビン酸(Sigma−Aldrich)、200mg/L塩化カルシウム(Sigma−Aldrich)、0.08% コンドロイチン硫酸(和光純薬工業株式会社、大阪市)および50μg/mLのゲンタマイシンを含有する基本培養培地を準備し、次いで、不活性化3T3線維芽細胞の培養後に馴化培地を回収した。3T3線維芽細胞の不活性化は、以前に記載されたとおりに実施した。簡単に述べると、コンフルエントな3T3線維芽細胞を4μg/mLマイトマイシンCMMC)(協和発酵キリン株式会社、東京都)とともに、5%CO2下で37℃にて2時間インキュベートし、次いでトリプシン処理し、そして、2×104細胞/cm2の密度でプラスチック皿にプレーティングした。HCECは、5%CO2中37℃にて加湿雰囲気下で培養し、2日おきに培養培地を交換した。HCECが14〜28日でコンフルエントに達すると、これらを、Ca2+およびMg2+非含有PBS中でリンスし、37℃にて5分間0.05%トリプシンEDTAでトリプシン処理し、そして、1:2の比で継代した。
・染色等の細胞観察方法組織学的試験):細胞観察は位相差顕微鏡にて行った。また、細胞を固定した後に機能関連マーカーとしてZO−1、Na+/K+−ATPaseを用いて免疫染色を行い蛍光顕微鏡にて観察を行った。組織染色検査のために、培養したHCECをLab−TekTM Chamber SlidesTM(NUNCA/S,Roskilde,Denmark)に入れ、4%ホルムアルデヒドで10分間室温RT)で固定し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)とともに30分間インキュベートした。具体的には、Lab−TekTMChamber SlidesTM(NUNC A/S,Roskilde,Denmark)上の培養HCECを室温で10分間4%ホルムアルデヒド中で固定し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)とともに30分間インキュベートした。CECの表現型を調べるために、密着結合関連タンパク質であるZO−1(Zymed Laboratories,Inc.,South San Francisco,CA)、ポンプ機能に関連するタンパク質であるNa+/K+−ATPase(Upstate Biotec,Inc.,Lake Placid,NY)、フィブロネクチン(BD,Franklin Lakes,NJ)およびアクチン免疫組織化学分析を行った。CECの機能に関連するマーカーとしてZO−1およびNa+/K+−ATPaseを使用し、線維芽細胞様の変化を評価するためにフィブロネクチンおよび1型コラーゲンを使用し、そして、細胞の形態を評価するためにアクチンの染色を使用した。ZO−1、Na+/K+−ATPase、1型コラーゲンおよびフィブロネクチンの染色は、それぞれ、ZO−1ポリクローナル抗体、Na+/K+−ATPaseモノクローナル抗体、およびフィブロネクチンモノクローナル抗体の1:200希釈を用いて実施した。二次抗体には、Alexa Fluor(登録商標)488標識、または、Alexa Fluor(登録商標)594標識ヤギ抗マウスIgG(Life Technologies)の1:2000希釈を使用した。アクチンの染色は、Alexa Fluor(登録商標)488標識ファロイジン(Life Technologies)の1:400希釈を用いて実施した。次いで、細胞の核をDAPI(Vector Laboratories,Inc.,Burlingame,CA)またはPI(Sigma−Aldrich)で染色した。次いで、スライドを蛍光顕微鏡(TCSSP2 AOBS;Leica Microsystems,Welzlar,Germany)で観察した。
ウェスタンブロット法RIPAバッファーで抽出し得られたタンパク質を7.5%ポリアクリルアミド電気泳動した。分離されたタンパク質はPVDF膜(PALLLIFE SCIENCE社製、カタログ番号:EH−2222)に転写した。0.1%(vol/vol)ポリエチレンソルビタンモノラウレートナカライテスク、カタログ番号:28353−85)(TBS−T)と5%無脂肪乾燥乳(CELL SIGNALING社、カタログ番号:9999)を補ったTris緩衝化食塩水(10mMTris−HCl、pH7.4;100mMNaCl)と、ブロットした膜を1時間インキュベートすることによりブロッキング操作を行った。この後、p27(SC−527、Santa Cruz)、p21(2946、Cell Signaling)、p16(4824、Cell Signaling)、p−pRb(9308、Cell Signaling)、サイクリンD1(2926、Cell Signaling)、サイクリンD3(2936、Cell Signaling)、pp38(4631、Cell Signaling)、p−ATF2(SC−8398、Santa Cruz)、GAPDH(2118、Cell Signaling)に対する抗体を補ったTBS−Tにて1000倍に希釈したものをメンブレンに浸し、室温で1時間反応させた。T−TBSで3回洗浄後、マウス−IgG抗体HRP複合体(CELL SIGNALING社、カタログ番号:7074P2)とウサギ−IgG抗体HRP複合体(GE Healthcare、カタログ番号:NA934)インキュベートし、洗浄後、ECL−ADVAVCE(GEヘルスケアジャパン社、カタログ番号:RPN2135V)で発光させたバンドを検出した。・免疫染色:コンフルエントに達した細胞をPBS(ニッスイ、カタログ番号:5913)洗浄後、氷冷したエタノール(ナカライテスク、カタログ番号:14713−95)と酢酸(WAKO カタログ番号:017−00256)(95:5)にて10分間固定した。

0061

0.1%(vol/vol)ポリエチレンソルビタンモノラウレート(ナカライテスク、カタログ番号:28353−85)(TBS−T)と10%ウシ胎仔血清を補ったTris緩衝化食塩水(10mMTris−HCl、pH7.4;100mMNaCl)で1時間インキュベートすることによりブロッキング操作を行った。ウサギ抗ヒトZO−1抗体(1:200)、マウス抗ヒトNa+/K+−ATPase抗体(1:200)を一次抗体として使用し、室温にて1時間反応させた。希釈率は、1:200または1:1000を適宜使用した。

0062

次いでTBS−Tにて1000倍に希釈したALEXAFLUOR 594(INVITROGEN社製(カタログ番号:A21203))とALEXA FLUOR 488(INVITROGEN社製(カタログ番号:A21206))で室温で1時間反応させた。PBSで洗浄後、VECTASHIELD WITH DAPI (VECTOR LABORATORIES社(カタログ番号:94010))とともにスライドに封入し、共焦点顕微鏡ライカ社製)で観察した。
・Na+/K+−ATPaseに対する抗体:MILLIPORE社製(MILLIPORE カタログ番号:05−369)のものを用いた。
・ZO−1に対する抗体:マウスINVITROGEN社製(INVITROGEN カタログ番号:339100)、ウサギZYMEDLABORATORIES社製(ZYMED LABORATORIES カタログ番号:61−7300)のものを用いた。
・GAPDHに対する抗体:ABCAM社製(カタログ番号:ab36840)のものを用いた。
・二次抗体(HPR結合抗ウサギIgG二次抗体)Cell Signaling Technology社製(カタログ番号:7074)
・二次抗体(抗ウサギIgG二次抗体)Cell Signaling Technology社製(カタログ番号:7076)
サイトカイン抗体
角膜内皮細胞を10μM SB203580存在下で培養して培養上清を回収し試料液とした。Proteome Profiler(#ARY005,R&D)で培養上清中のサイトカインを網羅的に半定量した。サイトカイン抗体をブロットしたメンブレンをトレイに置き、ブロッキング液を2ml添加し、室温で1時間インキュベートした。試料液にビオチン抗体を加え、室温で1時間インキュベートした。ブロッキング液を捨て抗体溶液をメンブレンに浸して4℃で一晩インキュベートした。メンブレンを洗浄後、ブロッキング液で希釈したHRP標識ストレプトアビジン溶液を2ml加え、30分間室温でインキュベートした。メンブレンを洗浄後、基質液を加え、LAS400(フジフィルム)で検出した。
・PCR法:RT−PCR(半定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)により、各ラミニン鎖およびインテグリン鎖に対するPCR法を行った。プライマーは、オリゴヌクレオチド合成会社であるINVITROGENから購入し、脱塩処理したものを用いた。細胞からの総RNAの抽出にはRNEasy Mini Kit(QIAGEN社、カタログ番号:74106)を用いた。シアトルアイバンクから購入した研究用角膜より、角膜内皮細胞を含むデスメ膜を剥離し、角膜内皮細胞を基底膜とともに機械的に剥離して、角膜内皮細胞からのRNA抽出に用いた。RNAはReverTra Ace(TOYOBO社(カタログ番号:TRT−101))により逆転写反応(42℃、60分間)を行い、TAKARA TaqHotStart Version(タカラバイオ社、カタログ番号:RR001A)によりGAPDHを内部標準としてCD166、CD73を増幅した。同量cDNAを、PCR機(GeneAmp9700;Applied Biosystems)と、下記のプライマーペアによって増幅した。PCR反応には下記に示すプライマーを用いた。これらのプライマーはライフテクノロジーズジャパン株式会社(カタログ番号:10336022)から入手した。
・IL6−F:CACAAGCGCCTTCGTCCAGTT(配列番号1)
・IL6−R:TCTGCCAGTGCCTCTTTGCTGC(配列番号2)
・GAPDH−F:GAGTCAACGGATTTGGTCGT(配列番号3)
・GAPDH−R:TTGATTTTGGAGGGATCTCG(配列番号4)
増幅されたDNA断片は1.5%アガロースゲル(ナカライテスク、カタログ番号:01149−76)で電気泳動し、エチジウムブロマイド(ナカライテスク、カタログ番号:14603−51)での染色により検出した。
・RT−PCRによるヒト角膜内皮細胞のIL−6発現量の定量は以下の方法で行った。
ヒト角膜内皮細胞(n=3,passage5)を10μM SB203580存在下で20日間培養後、RneasyMini(QIAGEN)でRNA抽出を行った。total RNA277ngをRevertraAce(Toyobo)で逆転写し、cDNA合成したものをテンプレートとし、PCRを行った。一本鎖cDNA合成の反応混合物1μlを含有するPCR溶液10μlを94℃
初期温度にて1分間そして次に94℃にて1分間、54℃にて30秒間及び72℃にて30秒間、加熱した。この温度サイクルを30回反復した。
IL−6 sense primer:cacaagcgccttcggtccagtt(配列番号1)
IL−6 antisense primer:tctgccagtgcctctttgctgc(配列番号2)
・ELTSA法(BrdU):96ウェル培養プレートに、5,000個/ウェルの播種密度播種し一晩培養した。その後、培地に5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)を添加し、一晩培養した。培地を除去し、固定溶液(Amersham cell proliferation biotrakELISAsystem,version2)を加えて30分間室温でインキュベートした。次いで、固定溶液を除去し、ブロッキング溶液(Amersham cell proliferation biotrak ELISA system,version2)を加えて30分間、室温で静置した。次いで、ブロッキング溶液を除去し、ペルオキシダーゼ結合抗BrdU抗体を添加し、室温で90分静置した。洗浄バッファーで3回プレート
洗浄し、TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン基質(Amersham cell proliferation biotrak ELISA system,version2)を加えて5〜30分間静置した。1M硫酸で反応を停止し、プレートリーダーで450nmにおける吸光度を測定した。結果は5回の測定の平均値±標準誤差として示した。
・ELISA法(IL−6):ヒト角膜内皮細胞(n=3,passage5)を10μM SB203580存在下で20日間培養後、新鮮培地に交換し、7日間後回収した培養上清中のIL−6タンパク質量をDuoSetELISA human IL−6(R &D Cat#DY206)のキット説明書に従い、定量した。IL−6抗体(2.0μg/mL)を平底プレート(nunc)上に100μL/ウェルでリン酸緩衝食塩水(PBS)中で室温で一晩被覆した。プレートをPBS、0.05%(v/v)Tween20(PBS/Tween)で洗浄し、そして1%の血清アルブミン(ナカライテスク)を補足したPBS/Tween(PTG)で2時間ブロッキングした。培養上清0.1mlを加え、室温で2時間インキュベーションした。洗浄後、ビオチン処理された抗IL−6抗体を加え、2時間、室温でインキュベートした。洗浄後、西ワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンを加え、20分インキュベーションした。プレートを洗浄し、そして結合したペルオキシダーゼをsubstrate solution(R &D Systems Cat#DY999)で検出した。呈色反応を2M H2SO4で止め、そしてプレートをMultimax(Promega)で450nMで読み取った。

0063

(実施例1:p38MAPキナーゼシグナル阻害によるサイクリン依存性キナーゼ阻害因子を抑制し角膜内皮細胞の細胞周期の移行)
本実施例では、p38MAPキナーゼシグナル阻害はサイクリン依存性キナーゼ阻害因子を抑制し角膜内皮細胞の細胞周期を移行させることを示す。

0064

上述の調製例に倣い、シアトルアイバンクから輸入した研究用角膜より培養した角膜内皮細胞を培養して以下の検討に用いた。細胞培養用培地にp38MAPキナーゼ阻害薬であるSB203580(13067,Cayman)を添加して20日後にサイクリン依存性キナーゼ阻害因子であるp27、p21、p16の発現をウエスタンブロッティング法にて検討した。p27、p21、p16は全てSB203580を添加により抑制された(図1、A;上から順にp27、p21、p16、GAPDHを示す。左レーンはコントロール、中央はSB203580 10μM、右レーンはSB203580 30μMを示す。)。p27、p21、p16は角膜内皮細胞の細胞増殖を負に制御するサイクリン依存性キナーゼ阻害因子であることが報告されている。

0065

また、細胞周期のG1/S期の移行に関わる分子としてRbタンパク質のリン酸化、サイクリンD1およびD3の発現をウエスタンブロッティング法にて検討した。結果を図1に示す。SB203580を添加により12時間後、24時間後それぞれでこれらの分子の発現が促進された(B;上から2段ずつ、p−pRb、サイクリンD1、サイクリンD3、GAPDHを示す。各2段において上側はコントロール、下側SB203580(10μM)による刺激を示す。左レーンは12時間、右レーンは24時間を示す。)。また、SB203580によりp38MAPキナーゼシグナルの下流分子であるATF2のリン酸化が抑制されていることを刺激後20日後の時点のウエスタンブロッティング法にて確認した(C;上からpp38、p−ATF2、GAPDHを示す。左レーンからコントロール、中央はSB203580 10μM、右レーンはSB203580 30μMを示す。)。これらのことよりp38MAPキナーゼシグナル阻害はサイクリン依存性キナーゼ阻害因子を抑制し角膜内皮細胞の細胞周期を移行させることが示された。このことは発明者らの知る限り角膜内皮細胞では初めてであるといえる。

0066

(実施例2:p38MAPキナーゼ阻害薬による角膜内皮細胞の細胞増殖の促進)
本実施例では、p38MAPキナーゼ阻害薬による角膜内皮細胞の細胞増殖の促進を実証
した。

0067

培養したヒト角膜内皮細胞細胞をp38MAPキナーゼ阻害薬であるSB203580により刺激して3日後に細胞増殖のマーカーであるKi67(Dako、M7240)にて本明細書にて上述の実験手法に基づき免疫染色を行った。手法は、上述のとおりである。

0068

結果を図2に示す。SB203580による刺激により有意に多くの細胞にKi67の発現を認めた(A,B)。また、同様に3日後に細胞増殖のマーカーとしてBrdUの取り込み量を指標にELISA法により検討したところ、SB203580による刺激により有意にBrdUの取り込みが促進された(C)。これらのことからp38MAPキナーゼシグナル阻害は角膜内皮細胞の細胞増殖を促進することが示された。

0069

(実施例3:ウサギの部分的角膜内皮障害モデルにおける、p38MAPキナーゼ阻害薬での角膜内皮の細胞増殖の促進)
本実施例では、ウサギの部分的角膜内皮障害モデルを用いてp38MAPキナーゼシグナル阻害が生体において角膜内皮の細胞増殖を促進するかどうかについて検討を行った。

0070

直径7mmのステンレス製チップを液体窒素に浸漬して冷却した後に、全身麻酔下の日本白色ウサギ(オリエンタルバイオサービスより入手)の角膜中央部に15秒間接触させ、中央部分の角膜内皮細胞を部分的に脱落させた。その後に、10mMに調整したSB203580を1回50μlを1日4回、2日間点眼投与した。コントロールとして同様に部分的角膜内皮障害を作製した眼に基剤を点眼し、写真を撮影した。また、安楽死させて角膜を摘出してアリザリンレッドS(ナカライテスク、CI−58005)により角膜内皮の創傷範囲を染色し観察した。さらに、細胞増殖のマーカーであるKi67にて角膜組織の免疫染色を行った。免疫染色は上述の実施例等と同様の手法を用いた。

0071

結果を図3に示す。図3では左パネル写真右側に10mMに調整したSB203580を1回50μlを1日4回、2日間点眼投与した後の前眼部写真を示し、右上写真は全体像を示し、右下写真はアリザリン染色による角膜内皮創傷の範囲を示す。左側に、右上写真は全体像を示し、右下写真はアリザリン染色による角膜内皮創傷の範囲を示す。2日目に前眼部写真よりSB203580点眼群で角膜の透明性の回復が早いことを確認した。また、安楽死させて角膜を摘出してアリザリン染色により角膜内皮の創傷範囲を染色したところ、SB203580点眼群はコントロールより縮小していた。また、合計6眼ずつで検討を行ったところ、有意に創傷面積はSB203580点眼群において縮小しており、p38MAPキナーゼシグナル阻害は角膜内皮の創傷治癒を促進することが示された。ウサギモデルは、霊長類、特にヒトについて外挿しうる良好なモデルであることが知られており、本実施例の結果からヒトを含む霊長類においてもp38MAPキナーゼシグナル阻害は角膜内皮の創傷治癒を促進するものであると期待される。

0072

さらに、細胞増殖のマーカーであるKi67にて角膜組織の免疫染色を行った結果を図4に示す。左写真では写真中左側はコントロールを示し、右側はSB203580点眼を行った個体の代表例(10mM)を示す。右グラフでは、Ki67陽性細胞の比率をコントロール(左)およびSB203580刺激(10mM)について示す。SB203580による刺激により有意に多くの細胞にKi67の発現を認めた。これらのことからp38MAPキナーゼシグナル阻害は生体においても角膜内皮細胞の細胞増殖を促進することが示された。

0073

(実施例4:p38MAPキナーゼ阻害薬による角膜内皮細胞密度低下の抑制)
本実施例では、p38MAPキナーゼシグナル阻害は培養環境で生じる細胞の肥大化による細胞密度低下を抑制することを示す。

0074

細胞培養によって細胞の肥大化および密度低下という生体同様の細胞老化様減少が生じる。そこでp38MAPキナーゼシグナル阻害により角膜内皮細胞密度低下という細胞老化様減少への影響を検討した。

0075

図5にその結果を示す。培養したヒト角膜内皮細胞細胞をp38MAPキナーゼ阻害薬であるSB203580を用いて各種濃度で刺激して20日後の位相差顕微鏡写真を示す(上パネル)。SB203580の濃度依存的に培養による細胞密度低下は阻害され、細胞密度が上昇した(下パネル)。

0076

以上から、p38MAPキナーゼ阻害薬による角膜内皮細胞密度低下の抑制が示された。

0077

(実施例5:p38MAPキナーゼ阻害薬による角膜内皮細胞の機能であるポンプ機能、バリア機能を維持し密度低下を抑制する)
本実施例では、p38MAPキナーゼシグナル阻害はポンプ機能およびバリア機能を維持して培養による細胞密度低下を阻害するかどうかを確認した。培養したヒト角膜内皮細胞細胞をp38MAPキナーゼ阻害薬であるSB203580を用いて各種濃度で刺激して20日後に、角膜内皮細胞の機能であるポンプ機能、バリア機能についてそれぞれのマーカーとしてNa+/K+−ATPaseおよびZO−1による免疫染色を行った。

0078

その結果を図6に示す。p38MAPキナーゼシグナル阻害により角膜内皮細胞は、全ての細胞においてNa+/K+−ATPaseおよびZO−1を発現しており正常な機能を維持し、角膜内皮細胞の肥大および細胞密度の低下を抑制していることが示された。このことはp38MAPキナーゼシグナル阻害が細胞機能喪失したり、重層化したりせず、正常な細胞機能を維持しつつ細胞老化を抑制しているものと理解される。

0079

以上から、p38MAPキナーゼ阻害薬による角膜内皮細胞の機能であるポンプ機能、バリア機能を維持し密度低下を抑制することが示された。

0080

(実施例6:p38MAPキナーゼ阻害薬は角膜内皮細胞によるサイトカイン産生を抑制する)
本実施例では、p38MAPキナーゼシグナル阻害は角膜内皮細胞が産生するサイトカインを抑制するかどうかを確認した。

0081

上述の実験手法に基づいて、36種類の抗体がブロットされたサイトカイン抗体アレイ(Proteome Profiler、#ARY005、R&D Systems)を用いてヒト角膜内皮培養液中のサイトカインの発現パターンを調べた。

0082

その結果を図7に示す。図7に示されるように、SB203580の有無に関わらず、GROa,sICAM−1,IL−6,IL−8,IL−23,MCP−1,MIF,SerpinE1のシグナルが検出された。SB203580を添加した培養上清においてserpinE1以外のサイトカインはvehicleと比較して減少していた。このことは角膜内皮細胞の培養環境により生じるサイトカイン産生を抑制することを示す。また、特に近年細胞老化によりIL−6などのサイトカイン産生が増加し、老化に関与することが注目されているためIL−6の産生を抑制するかどうかについてPCR法およびELISAにより検討した。結果を図8に示す。コントロールと比べてSB203580を添加して培養することで、IL−6の産生が低下することをPCR法(左)、ELISA(右)により示された。ELISA法(IL−6)およびRT−PCRによるヒト角膜内皮細胞のIL−6発現量の定量は、上述した実験方法に記載のように行った。

0083

以上から、p38MAPキナーゼ阻害薬は角膜内皮細胞によるサイトカイン産生を抑制することが示された。

0084

(実施例6:p38MAPキナーゼ阻害薬による細胞死への影響の検討)
本実施例では、p38MAPキナーゼ阻害薬は角膜内皮の細胞死を抑制するかどうかを検討した。
p38MAPキナーゼシグナル阻害の細胞死への影響を検討するために、培養したヒト角膜内皮細胞を100J/m2の紫外線(UV)にて刺激して細胞死を誘導しSB203580(10μMで用いた。)の効果を検討した。検討は細胞数を計数することで行った。

0085

結果を図9に示す。位相差顕微鏡写真(左)はUV照射後12時間である。右は生細胞数のコントロールに対する割合で表記したUV照射後12時間後のグラフである。UV照射により生細胞数は低下するがSB203580により有意に増加する。このことよりp38MAPキナーゼシグナル阻害により角膜内皮細胞の細胞障害が抑制され細胞死が抑制されるものと理解される。

0086

(実施例7:p38MAPキナーゼ阻害薬によるアポトーシスへの影響の検討)
本実施例では、p38MAPキナーゼシグナル阻害が角膜内皮のUV刺激時のアポトーシスを抑制するかについて検討した。UV照射によるアポトーシスの実行分子であるカスパーゼ3およびPARPの切断による活性化が抑制されるかどうか、およびUV照射によるDNAの二本鎖切断により誘導されるリン酸化ヒストンH2AXの発現が抑制されるかどうかを、本明細書に上述した実験手法に従ってウェスタンブロットで確認した。ウェスタンブロットには、以下の抗体を用いた:抗カスパーゼ3抗体(9662、Cell Signaling)、抗PARP抗体(9542、Cell Signaling)、抗H2AX抗体(05−636、Millipore)、抗GAPDH抗体(2118、Cell Signaling)の条件は以下を用いた:100J/m2。p38MAPキナーゼシグナル阻害薬としては、SB203580を用い、その濃度は、10μMであった。

0087

結果を図10に示す。左はSB203580によりUV照射によるアポトーシスの実行分子であるカスパーゼ3およびPARPの切断による活性化が抑制されることを示す。右はSB203580によりUV照射によるDNAの二本鎖切断により誘導されるリン酸化ヒストンH2AXの発現が抑制されることを示す。これらのことよりp38MAPキナーゼシグナル阻害は角膜内皮細胞のアポトーシスを抑制することが示された。

0088

上述の実施例より、p38MAPキナーゼシグナル阻害は角膜内皮細胞の細胞増殖を促進し、細胞老化を抑制し、細胞死を抑制することから、角膜内皮障害の治療および進行予防のターゲットとなることが示された。例えば、本検討で用いたp38MAPキナーゼ阻害薬などの点眼投与、前房内投与、結膜下注射、全身投与などは治療薬としての開発の可能性を有するものである。

0089

(実施例8:種々のp38MAPK阻害剤での増殖の促進)
本実施例では、種々のp38MAPK阻害剤での増殖の促進を実証し、本発明の効果が特定のp38MAPK阻害剤に限局されるのではなく、p38MAPK阻害剤全般にみられる効果であることを実証した。本実施例では、いずれも、p38MAPKに特異的に阻害作用を有するとされている試薬を用いて、本発明の効果が、他のキナーゼの阻害に起因するのではなく、p38MAPKの阻害に起因することを実証した。

0090

(試薬)
使用した薬剤は以下のとおりである。
(1)SB203580(4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール)(Cayman、カタログ番号:13067):SB203580は、MAPKの特異的(選択的)阻害剤であることが知られている(Biochem Biophys Res Commun.1999 Oct 5;263(3):825−31.)。したがって、SB203580での実験結果は、MAPKの阻害によるものと特定することができる。
(2)Semapimod(N,N’−ビス[3,5−ビス[1−[2−(アミノイミノメチル)ヒドラゾノ]エチル]フェニル]デカンジアミド)(CNI−1493;MedKoo Biosciences、カタログ番号:202590):Semapimodは、MAPKの良好な阻害剤であることが知られている(Gastroenterology.2002 Jan;122(1):7−14.;Transplant Proc.1998 Mar;30(2):409−10.;Auton Neurosci.2000 Dec 20;85(1−3):141−7.;Gastroenterology.2009 Feb;136(2):619−29.doi:10.1053/j.gastro.2008.10.017.Epub 2008 Oct 9.)。
(3)BIRB796(Doramapimod;N−[3−tert−ブチル−1−(4−メチルフェニル)ピラゾール−5−イル]−N’−[4−(2−モルホリノエトキシ)−1−ナフチル]ウレア)(Selleck Chemicals、カタログ番号:S1574):BIRB796は、MAPKの特異的(選択的)阻害剤であることが知られている(Nat Struct Biol.2002 Apr;9(4):268−72.)。したがって、BIRB796での実験結果は、MAPKの阻害によるものと特定することができる。
(4)PH−797804(3−(3−ブロモ−4−((2,4−ジフルオロベンジル)オキシ)−6−メチル−2−オキソピリジン−1(2H)−イル)−N,4−ジメチルベンズアミド)(Selleck Chemicals、カタログ番号:S2726):PH−797804はMAPKの特異的(選択的)阻害剤であることが知られている(Bioorg Med Chem Lett.2011 Jul 1;21(13):4066−71.doi:10.1016/j.bmcl.2011.04.121.Epub 2011 May 11.)。したがって、PH−797804での実験結果は、MAPKの阻害によるものと特定することができる。
(5)VX−702(1−(カルバモイル−6−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジン−2−イル)−1−(2,6−ジフルオロフェニル)尿素)(Selleck Chemicals、カタログ番号:S6005):VX−702は、MAPKの特異的(選択的)阻害剤であることが知られている(Curr Opin Investig Drugs.2006 Nov;7(11):1020−5.)。したがって、VX−702での実験結果は、MAPKの阻害によるものと特定することができる。
(6)LY2228820(ラリメチニブ(ralimetinib);5−(2−(tert−ブチル)−5−(4−フルオロフェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)−3−ネオペンチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−アミン)(Selleck Chemicals、カタログ番号:S1494):LY2228820は、MAPKの強力な特異的(選択的)阻害剤であることが知られている(Br J Haematol.2008 May;141(5):598−606.doi:10.1111/j.1365−2141.2008.07044.x.Epub 2008 Apr 7.;Mol Cancer Ther.2014 Feb;13(2):364−74.doi:10.1158/1535−7163.MCT−13−0513.Epub 2013 Dec 19.;Biol Chem.2013 Mar 1;288(9):6743−53.doi:10.1074/jbc.M112.425553.Epub 2013 Jan 18.)。したがって、LY2228820での実験結果は、MAPKの阻害によるものと特定することができる。
(7)TAK−715(2−ベンズアミド−4−[2−エチル−4−(3−メチルフェニル)チアゾール−5−イル]ピリジン)(Selleck Chemicals、カタログ番号:S2928):TAK−715は、MAPKの強力な特異的(選択的)阻害剤であることが知られている(J Med Chem.2005 Sep 22;48(19):5966−79.)。したがって、TAK−715での実験結果は、MAPKの阻害によるものと特定することができる。

0091

(1)SB203580(4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール)
カニクイザルの角膜内皮細胞(日精バイリス)を培養中の培養皿から培地を除去し、事前に37℃に温めておいたリン酸緩衝液(ナカライテスク、14249−95)を添加し、洗浄を行った。この作業を2回繰り返した。リン酸緩衝液除去後、0.05%Trypsin−EDTA(ナカライテスク、35554−64)を添加し、37℃(5% CO2)で10分インキュベートした。その後、DMEM(ナカライテスク、08456−94)+10%FBS(Biowest、S1820−500)+1%ペニシリンストレプトマイシン(P/S、ナカライテスク、26252−94)で懸濁し、1200rpmで3分間遠心することで細胞を回収した。
96ウェルプレートはFNC coating mix(50ml(AES−0407)、ATHENA、カタログ番号:0407)で処理した。コーティングした96ウェルプレートにサル角膜内皮細胞(ロット:20120404−3L−P8)を1ウェル当たり5000個の割合で播種し、37℃(5% CO2)で30時間培養した。30時間後、培地を除去し、無血清培地:DMEM+1%P/Sに変更し、18時間培養した。18時間後、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地にDMSOで溶解した最終濃度0.3、1、3、10、30、100μmol/lとなるようにSB203580(Cayman、カタログ番号:13067)を添加して24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。さらに24時間後、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地にBrdU labeling reagent(Amersham Cell Proliferation BiotrakELISASystem,Version2、GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)を1:1000の割合で添加し、最終濃度0.3、1、3、10、30、100μmol/lとなるようにSB203580を添加して24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。24時間後、Amersham Cell Proliferation Biotrak ELISA System,Version2(GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)にてBrdU ELISAを実施し、450nmの吸光度を測定した。*P<0.01,Dunnet検定n=5。

0092

(2)Semapimod(N,N’−ビス[3,5−ビス[1−[2−(アミノイミノメチル)ヒドラゾノ]エチル]フェニル]デカンジアミド)
(1)と同様に、カニクイザルの角膜内皮細胞を培養中の培養皿から培地を除去し、事前に37℃に温めておいたリン酸緩衝液を添加し、洗浄を行った。この作業を2回繰り返した。リン酸緩衝液除去後、0.05% Trypsin−EDTA(ナカライテスク、35554−64)を添加し、37℃(5% CO2)で10分インキュベートした。その後、DMEM(ナカライテスク、08456−94)+10%FBS(Biowest、S1820−500)+1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ナカライテスク、カタログ番号:26252−94)で懸濁し、1200rpmで3分間遠心することで細胞を回収した。
96ウェルプレートはFNC coating mix(50ml(AES−0407)、ATHENA、カタログ番号:0407)で処理した。コーティングした96ウェルプレートにサル角膜内皮細胞(ロット:20120404−3L−P8)を1ウェル当たり5000個の割合で播種し、37℃(5% CO2)で30時間培養した。30時間後、培地を除去し、無血清培地:DMEM+1%P/Sに変更し、18時間培養した。18時間後、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地にDMSOで溶解した最終濃度0.1、0.3、1、3、10μmol/lとなるようにSemapimod HCl(MedKoo Biosciences、カタログ番号:202590、ロット番号:SMC20120918)を添加して24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。さらに24時間後、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地にBrdU labeling reagent(Amersham Cell Proliferation BiotrakELISASystem,Version2、GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)を1:1000の割合で添加し、最終濃度0.1、0.3、1、3、10μmol/lとなるようにSemapimod HClを添加して24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。24時間後、Amersham Cell Proliferation Biotrak ELISA System,Version2(GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)にてBrdU ELISAを実施し、450nmの吸光度を測定した。

0093

(3)BIRB796(Doramapimod;N−[3−tert−ブチル−1−(4−メチルフェニル)ピラゾール−5−イル]−N’−[4−(2−モルホリノエトキシ)−1−ナフチル]ウレア)
(1)と同様に、カニクイザルの角膜内皮細胞を培養中の培養皿から培地を除去し、事前に37℃に温めておいたPBS(−)を添加し、洗浄を行った。この作業を2回繰り返した。PBS(−)除去後、0.05% Trypsin−EDTA(ナカライテスク、35554−64)を添加し、37℃(5% CO2)で10分インキュベートした。その後、DMEM(ナカライテスク、08456−94)+10%FBS(Biowest、S1820−500)+1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ナカライテスク、カタログ番号:26252−94)で懸濁し、1200rpmで3分間遠心することで細胞を回収した。
96ウェルプレートはFNC coating mix(50ml(AES−0407)、ATHENA、カタログ番号:0407)で処理した。コーティングした96ウェルプレートにサル角膜内皮細胞(ロット:20120404−3L−P9)を1ウェル当たり5000個の割合で播種し、37℃(5% CO2)で30時間培養した。30時間後、培地を除去し、無血清培地:DMEM+1%P/Sに変更し、18時間培養した。18時間後、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地にDMSOで溶解した最終濃度0.1、0.3、1、3、10、30、100μmol/lとなるようにBIRB796(Doramapimod)(Selleck Chemicals、カタログ番号:S1574、ロット番号:S157402)を添加して24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。さらに24時間後、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地にBrdU labeling reagent(Amersham Cell Proliferation BiotrakELISASystem,Version2、GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)を1:1000の割合で添加し、最終濃度0.1、0.3、1、3、10、30、100μmol/lとなるようにBIRB796(Doramapimod)を添加して24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。24時間後、Amersham Cell Proliferation Biotrak ELISA System,Version2(GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)にてBrdU ELISAを実施し、450nmの吸光度を測定した。

0094

(4)PH−797804(3−(3−ブロモ−4−((2,4−ジフルオロベンジル)オキシ)−6−メチル−2−オキソピリジン−1(2H)−イル)−N,4−ジメチルベンズアミド)
(1)と同様に、カニクイザルの角膜内皮細胞を培養中の培養皿から培地を除去し、事前に37℃に温めておいたPBS(−)を添加し、洗浄を行った。この作業を2回繰り返した。PBS(−)除去後、0.05% Trypsin−EDTA(ナカライテスク、35554−64)を添加し、37℃(5% CO2)で10分インキュベートした。その後、DMEM(ナカライテスク、08456−94)+10%FBS(Biowest、S1820−500)+1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ナカライテスク、カタログ番号:26252−94)で懸濁し、1200rpmで3分間遠心することで細胞を回収した。
96ウェルプレートはFNC coating mix(50ml(AES−0407)、ATHENA、カタログ番号:0407)で処理した。コーティングした96ウェルプレートにサル角膜内皮細胞(ロット:20120404−3L−P9)を1ウェル当たり5000個の割合で播種し、37℃(5% CO2)で30時間培養した。30時間後、培地を除去し、無血清培地:DMEM+1%P/Sに変更し、18時間培養した。18時間後、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地にDMSOで溶解した最終濃度0.1、0.3、1、3、10、30μmol/lとなるようにPH−797804(Selleck Chemicals、カタログ番号:S2726、ロット番号:01)を添加して24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。さらに24時間後、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地にBrdU labeling reagent(Amersham Cell Proliferation BiotrakELISASystem,Version2、GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)を1:1000の割合で添加し、最終濃度0.1、0.3、1、3、10、30μmol/lとなるようにPH−797804を24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。24時間後、Amersham Cell Proliferation Biotrak ELISA System,Version2(GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)にてBrdU ELISAを実施し、450nmの吸光度を測定した。

0095

(5)VX−702(1−(カルバモイル−6−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジン−2−イル)−1−(2,6−ジフルオロフェニル)尿素(2−(2,4−ジフルオロフェニル)−6−(1−(2,6−ジフルオロフェニル)ウレイド)ニコチンアミド))
(1)と同様に、カニクイザルの角膜内皮細胞を培養中の培養皿から培地を除去し、事前に37℃に温めておいたPBS(−)を添加し、洗浄を行った。この作業を2回繰り返した。PBS(−)除去後、0.05% Trypsin−EDTA(ナカライテスク、35554−64)を添加し、37℃(5% CO2)で10分インキュベートした。その後、DMEM(ナカライテスク、08456−94)+10%FBS(Biowest、S1820−500)+1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ナカライテスク、カタログ番号:26252−94)で懸濁し、1200rpmで3分間遠心することで細胞を回収した。
96ウェルプレートはFNC coating mix(50ml(AES−0407)、ATHENA、カタログ番号:0407)で処理した。コーティングした96ウェルプレートにサル角膜内皮細胞(ロット:20120404−3L−P9)を1ウェル当たり5000個の割合で播種し、37℃(5% CO2)で30時間培養した。30時間後、培地を除去し、無血清培地:DMEM+1%P/Sに変更し、18時間培養した。18時間後、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地にDMSOで溶解した最終濃度0.1、0.3、1、3、10、30、100μmol/lとなるようにVX−702(Selleck Chemicals、カタログ番号:S6005、ロット番号:02)を添加して24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。さらに24時間後、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地にBrdU labeling reagent(Amersham Cell Proliferation BiotrakELISASystem,Version2、GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)を1:1000の割合で添加し、最終濃度0.1、0.3、1、3、10、30、100μmol/lとなるようにVX−702を添加して24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。24時間後、Amersham Cell Proliferation Biotrak ELISA System,Version2(GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)にてBrdU ELISAを実施し、450nmの吸光度を測定した。

0096

(6)LY2228820(ラリメチニブ(ralimetinib);5−(2−(tert−ブチル)−5−(4−フルオロフェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)−3−ネオペンチル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−アミン)
(1)と同様に、カニクイザルの角膜内皮細胞を培養中の培養皿から培地を除去し、事前に37℃に温めておいたPBS(−)を添加し、洗浄を行った。この作業を2回繰り返した。PBS(−)除去後、0.05% Trypsin−EDTA(ナカライテスク、35554−64)を添加し、37℃(5% CO2)で10分インキュベートした。その後、DMEM(ナカライテスク、08456−94)+10%FBS(Biowest、S1820−500)+1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ナカライテスク、カタログ番号:26252−94)で懸濁し、1200rpmで3分間遠心することで細胞を回収した。
96ウェルプレートはFNC coating mix(50ml(AES−0407)、ATHENA、カタログ番号:0407)で処理した。コーティングした96ウェルプレートにサル角膜内皮細胞(ロット:20120404−3L−P9)を1ウェル当たり5000個の割合で播種し、37℃(5% CO2)で30時間培養した。30時間後、培地を除去し、無血清培地:DMEM+1%P/Sに変更し、18時間培養した。18時間後、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地にDMSOで溶解した最終濃度0.1、0.3、1、3、10、30μmol/lとなるようにLY2228820(Selleck Chemicals、カタログ番号:S1494、ロット番号:01)を添加して24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。さらに24時間後、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地にBrdU labeling reagent(Amersham Cell Proliferation BiotrakELISASystem,Version2、GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)を1:1000の割合で添加し、最終濃度0.1、0.3、1、3、10、30μmol/lとなるようにLY2228820を添加して24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。24時間後、Amersham Cell Proliferation Biotrak ELISA System,Version2(GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)にてBrdU ELISAを実施し、450nmの吸光度を測定した。

0097

(7)TAK−715(2−ベンズアミド−4−[2−エチル−4−(3−メチルフェニル)チアゾール−5−イル]ピリジン)
(1)と同様に、カニクイザルの角膜内皮細胞を培養中の培養皿から培地を除去し、事前に37℃に温めておいたPBS(−)を添加し、洗浄を行った。この作業を2回繰り返した。PBS(−)除去後、0.05% Trypsin−EDTA(ナカライテスク、35554−64)を添加し、37℃(5% CO2)で10分インキュベートした。その後、DMEM(ナカライテスク、08456−94)+10%FBS(Biowest、S1820−500)+1%ペニシン/ストレプトマイシン(ナカライテスク、カタログ番号:26252−94)で懸濁し、1200rpmで3分間遠心することで細胞を回収した。
96ウェルプレートはFNC coating mix(50ml(AES−0407)、ATHENA、カタログ番号:0407)で処理した。コーティングした96ウェルプレートにサル角膜内皮細胞(ロット:20120404−3L−P9)を1ウェル当たり5000個の割合で播種し、37℃(5% CO2)で30時間培養した。30時間後、培地を除去し、無血清培地:DMEM+1%P/Sに変更し、18時間培養した。18時間後、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地にDMSOで溶解した最終濃度0.1、0.3、1、3、10、100μmol/lとなるようにTAK−715(Selleck Chemicals、カタログ番号:S2928、ロット番号:01)を添加して24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。さらに24時間後、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地にBrdU labeling reagent(Amersham Cell Proliferation BiotrakELISASystem,Version2、GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)を1:1000の割合で添加し、最終濃度0.1、0.3、1、3、10、100μmol/lとなるようにTAK−715を添加して24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。24時間後、Amersham Cell Proliferation Biotrak ELISA System,Version2(GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)にてBrdU ELISAを実施し、450nmの吸光度を測定した。

0098

(実施例9:種々の動物種における効果)
本実施例では、サルのみならずヒトでも、種々のp38MAPK阻害剤での増殖の促進がみられることを実証し、本発明の効果が特定の動物種に限局されるのではなく、ヒトを含む広い動物種にみられる効果であることを実証した。本実施例では、いずれも、実施例8で用いた試薬を用いた。

0099

(1)サル
カニクイザルの角膜内皮細胞を培養中の培養皿から培地を除去し、事前に37℃に温めておいたPBS(−)を添加し、洗浄を行った。この作業を2回繰り返した。PBS(−)除去後、0.05% Trypsin−EDTA(ナカライテスク、35554−64)を添加し、37℃(5% CO2)で10分インキュベートした。その後、DMEM(ナカライテスク、08456−94)+10%FBS(Biowest、S1820−500)+1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ナカライテスク、カタログ番号:26252−94)で懸濁し、1200rpmで3分間遠心することで細胞を回収した。

0100

96ウェルプレートはFNC coating mix(50ml(AES−0407)、ATHENA、カタログ番号:0407)で処理した。コーティングした96ウェルプレートにサル角膜内皮細胞(ロット:20120404−3L−P9)を1ウェル当たり3000個の割合で播種し、37℃(5% CO2)で30時間培養した。30時間後、培地を除去し、無血清培地:DMEM+1%P/Sに変更し、18時間培養した。18時間後、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地にDMSOで溶解した、最終濃度10μmol/lとなるようにSB203580(Cayman、カタログ番号:13067)、最終濃度1μmol/lとなるようにSemapimod HCl(MedKoo Biosciences、カタログ番号:202590、ロット番号:SMC20120918)、最終濃度3μmol/lとなるようにBIRB796(Doramapimod)(Selleck Chemicals、カタログ番号:S1574、ロット番号:S157402)、最終濃度1μmol/lとなるようにPH−797804(Selleck Chemicals、カタログ番号:S2726、ロット番号:01)、最終濃度3μmol/lとなるようにVX−702(Selleck Chemicals、カタログ番号:S6005、ロット番号:02)、最終濃度3μmol/lとなるようにLY2228820(Selleck Chemicals、カタログ番号:S1494、ロット番号:01)、最終濃度3μmol/lとなるようにTAK−715(Selleck Chemicals、カタログ番号:S2928、ロット番号:01)を添加して24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。さらに24時間後、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地にBrdU labeling reagent(Amersham Cell Proliferation BiotrakELISASystem,Version2、GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)を1:1000の割合で添加し、最終濃度10μmol/l SB203580、最終濃度1μmol/l Semapimod HCl、最終濃度3μmol/l BIRB796 3μM、最終濃度1μmol/l PH−797804、最終濃度3μmol/l VX−702、最終濃度3μmol/l LY2228820、最終濃度3μmol/l TAK−715を添加して24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。24時間後、Amersham Cell Proliferation Biotrak ELISA System,Version2(GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)にてBrdU ELISAを実施し、450nmの吸光度を測定した。

0101

(2)ヒト
ヒト角膜内皮細胞を培養中の培養皿から培地を除去し、事前に37℃に温めておいたPBS(−)を添加し、洗浄を行った。この作業を2回繰り返した。PBS(−)除去後、TrypLESelect(×10)(GIBCO、A12177−01)を添加し、37℃(5% CO2)で10分インキュベートした。その後、Opti−MEM(GIBCO、31985−070)で懸濁し、1200rpmで3分間遠心することで細胞を回収した。

0102

96ウェルプレートはFNC coating mix(50ml(AES−0407)、ATHENA、カタログ番号:0407)で処理した。コーティングした96ウェルプレートにヒト角膜内皮細胞(ロット:C1642−P8)を1ウェル当たり3000個の割合でヒト用Condition Medium培地にて播種し、37℃(5% CO2)で30時間培養した。30時間後、培地を除去し、無血清培地:Opti−MEM+1%P/Sに変更し、18時間培養した。18時間後、ヒト用Condition Medium培地にDMSOで溶解した、最終濃度10μmol/lとなるようにSB203580(Cayman、カタログ番号:13067)、最終濃度1μmol/lとなるようにSemapimodHCl(MedKoo Biosciences、カタログ番号:202590、ロット番号:SMC20120918)、最終濃度3μmol/lとなるようにBIRB796(Doramapimod)(Selleck Chemicals、カタログ番号:S1574、ロット番号:S157402)、最終濃度1μmol/lとなるようにPH−797804(Selleck Chemicals、カタログ番号:S2726、ロット番号:01)、最終濃度3μmol/lとなるようにVX−702(Selleck Chemicals、カタログ番号:S6005、ロット番号:02)、最終濃度3μmol/lとなるようにLY2228820(Selleck Chemicals、カタログ番号:S1494、ロット番号:01)、最終濃度3μmol/lとなるようにTAK−715(Selleck Chemicals、カタログ番号:S2928、ロット番号:01)を添加して24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。さらに24時間後、DMEM+10%FBS+1%P/Sの培地にBrdU labeling reagent(Amersham Cell Proliferation BiotrakELISASystem,Version2、GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)を1:1000の割合で添加し、最終濃度10μmol/l SB203580、最終濃度1μmol/l Semapimod HCl、最終濃度3μmol/l BIRB796 3μM、最終濃度1μmol/l PH−797804、最終濃度3μmol/l VX−702、最終濃度3μmol/l LY2228820、最終濃度3μmol/l TAK−715を添加して24時間培養した。コントロールはDMSOを添加した。24時間後、Amersham Cell Proliferation Biotrak ELISA System,Version2(GE Healthbare、カタログ番号:RPN250)にてBrdU ELISAを実施し、450nmの吸光度を測定した。

0103

_(実施例10:p38MAPKの活性化はアポトーシスを誘導する)
本実施例では、p38MAPKの活性化がアポトーシスを誘導することを実証した。
(材料および方法)
培養サル角膜内皮細胞をFNC Coating Mixをコートした12well plateに1×105個播種し、37℃で5%CO2の条件下にてコンフルエントに到達するまで約5日間培養した。使用した培地はDulbecco’s Modified Eagle Medium(Gibco,12320−032)、10% FBS,1% Penicillin−Streptomycin(nacalai tesque,26252−94)であった。
次に、馴化処理としてZ−VAD(OMe)−FMK (和光純薬工業(株),269−02071)を10μMの濃度で添加し37℃で5%CO2の条件下にて16時間インキュベートした。なお、Control群、anisomysin群には試薬の溶媒であるジメチルスルホキシド(DMSO)(Dimethyl Sulfoxide,Sterile−filtered;nacalai tesque,13408−64)を添加した。使用した培地はGibco DMEM,1% P/Sであった。その後、細胞上澄を除去し、anisomysin群、anisomysin+Z−VAD−FMK群にアニソマイシン(anisomysin;和光純薬工業(株),017−16861)を10μMの濃度で添加した。anisomysin+Z−VAD−FMK群には、アニソマイシンと共に10μMのZ−VADを添加した。Z−VAD−FMKを添加しない群に関してはDMSOを添加した。その後、9時間まで培養を行った。位相差顕微鏡下で細胞形態を観察した。9時間後の写真を撮影した。
9時間後、細胞のタンパクを回収し、タンパクの発現量の比較をwestern Blot法により行った。抗体は抗Caspase3抗体(cell signaling,9662S)、抗p38MAPK抗体(cell signaling,#9212)、抗pp38MAPK抗体(cell signaling,#4631S)を使用した。また内部標準として抗GAPDH抗体(MBL,3H12)を使用した。

0104

(結果)
結果を図20に示す。p38の活性化作用を有するアニソマイシンによりp38のリン酸化を認め、さらにカスパーゼ3の切断による活性化を認める。カスパーゼ3の活性化はカスパーゼ阻害剤であるZ−VAD−FMKにより抑制された。以上よりp38の活性化はアポトーシスを引き起こすことが示された。p38MAPKの活性化が角膜内皮のアポトーシスを誘導することを実証されたため、この事実からも、本発明のp38MAPK阻害剤が、角膜内皮の細胞増殖促進または細胞障害抑制を生じさせ、角膜内皮治療薬として用いられることが実証された。

0105

(実施例11:サル角膜内皮部分的障害モデルにおけるp38MAPK阻害薬点眼投与試験
2頭カニクイザル(滋賀医科大学より購入)の両眼に直径7mmのステンレス製の棒を液体窒素で冷却した後に、角膜に接触させて、角膜内皮を約直径7mm脱落させて、部分的障害モデルを作製した。
その後、右眼にはSB203580 (3mM)を50μl、1日4回点眼した。同様に左眼にはコントロールとして基剤であるリン酸緩衝液を点眼した。
このようにしてサルモデルを作製し、以下の実験に用いた。

0106

(実施例12:SB203580点眼は霊長類の角膜内皮の増殖を促進する)
本実施例では、SB203580点眼が霊長類の角膜内皮の増殖を促進することを実証した。

0107

(材料および方法)
(免疫染色による発現観察)
免疫染色によりSB203580点眼後に細胞増殖に関連するKi−67の発現が亢進されていることを確認した。免疫染色の手法は、上記調製例2に準じ、抗体については、Ki−67に対する抗体に変更して実験を行った。

0108

・Ki−67に対する抗体:(M7240、Dako)

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