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技術 永久磁石、モータ、発電機、および自動車

出願人 株式会社東芝
発明者 堀内陽介桜田新哉岡本佳子萩原将也小林剛史遠藤将起小林忠彦
出願日 2013年9月13日 (7年3ヶ月経過) 出願番号 2015-505363
公開日 2017年3月2日 (3年9ヶ月経過) 公開番号 WO2015-037041
状態 特許登録済
技術分野 硬質磁性材料 金属質粉又はその懸濁液の製造 粉末冶金
主要キーワード 板状領域 液体化処理 外磁場 磁化回路 磁化巻線 理論最大値 生成形態 各元素濃度
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年3月2日)のものです。
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図面 (6)

課題・解決手段

高性能永久磁石を提供する。組成式:RpFeqMrCutCo100−p−q−r−t(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはZr、TiおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素、pは10.5≦p≦12.5原子%を満足する数、qは23≦q≦40原子%を満足する数、rは0.88≦r≦4.5原子%を満足する数、tは4.5≦t≦10.7原子%を満足する数である)で表される組成と、Th2Zn17型結晶相とTh2Zn17型結晶相よりもCu濃度が高いCuリッチ相とを含む金属組織とを具備する永久磁石である。Th2Zn17型結晶相におけるc軸を含む断面において、1μm四方面積内に存在するCuリッチ相同士の交点数は10点以上である。

概要

背景

高性能希土類磁石の例としてSm−Co系磁石、Nd−Fe−B系磁石などが知られている。これらの磁石では、FeやCoが飽和磁化の増大に寄与している。また、これらの磁石にはNdやSm等の希土類元素が含まれており、結晶場中における希土類元素の4f電子挙動由来して大きな磁気異方性をもたらす。これにより大きな保磁力が得られ、高性能磁石が実現されている。

このような高性能磁石は、主としてモータスピーカ計測器等の電気機器に使用されている。近年、各種電気機器の小型軽量化低消費電力化の要求が高まり、これに対応するために永久磁石最大磁気エネルギー積(BHmax)を向上させた、より高性能の永久磁石が求められている。また、近年、可変磁束型モータが提案され、モータの高効率化に寄与している。

Sm−Co系磁石は、キュリー温度が高いため、高温で良好なモータ特性を実現することが可能であるが、さらなる高保磁力化と高磁化、さらに角型比の改善が望まれている。Sm−Co系磁石の高磁化にはFeの高濃度化が有効であると考えられるが、従来の製法ではFeを高濃度化することにより角型比が低下する傾向にあった。このようなことから、高性能なモータ用の磁石を実現するためには高いFe濃度組成において磁化を改善しながらも良好な角型比の発現を可能とする技術が必要となる。

概要

高性能な永久磁石を提供する。組成式:RpFeqMrCutCo100−p−q−r−t(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはZr、TiおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素、pは10.5≦p≦12.5原子%を満足する数、qは23≦q≦40原子%を満足する数、rは0.88≦r≦4.5原子%を満足する数、tは4.5≦t≦10.7原子%を満足する数である)で表される組成と、Th2Zn17型結晶相とTh2Zn17型結晶相よりもCu濃度が高いCuリッチ相とを含む金属組織とを具備する永久磁石である。Th2Zn17型結晶相におけるc軸を含む断面において、1μm四方面積内に存在するCuリッチ相同士の交点数は10点以上である。

目的

Sm−Co系磁石は、キュリー温度が高いため、高温で良好なモータ特性を実現することが可能であるが、さらなる高保磁力化と高磁化、さらに角型比の改善が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

組成式:RpFeqMrCutCo100−p−q−r−t(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはZr、Ti、およびHfから選ばれる少なくとも1種の元素、pは10.5≦p≦12.5原子%を満足する数、qは23≦q≦40原子%を満足する数、rは0.88≦r≦4.5原子%を満足する数、tは4.5≦t≦10.7原子%を満足する数である)で表される組成と、Th2Zn17型結晶相と前記Th2Zn17型結晶相よりもCu濃度が高いCuリッチ相とを含む金属組織とを具備する永久磁石であって、前記Th2Zn17型結晶相におけるc軸を含む断面において、1μm四方面積内に存在する前記Cuリッチ相同士の交点数が10点以上である永久磁石。

請求項2

前記交点数が120点以下である、請求項1に記載の永久磁石。

請求項3

前記Cuリッチ相中のCu濃度が30原子%以上である、請求項1に記載の永久磁石。

請求項4

前記組成式における元素Rの総量の50原子%以上がSmである、請求項1に記載の永久磁石。

請求項5

前記組成式における元素Mの50原子%以上がZrである、請求項1に記載の永久磁石。

請求項6

前記組成式におけるCoの20原子%以下がNi、V、Cr、Mn、Al、Ga、Nb、Ta、およびWから選ばれる少なくとも1種の元素で置換されている、請求項1に記載の永久磁石。

請求項7

請求項1に記載の永久磁石を具備するモータ

請求項8

請求項1に記載の永久磁石を具備する発電機。

技術分野

0001

実施形態の発明は、永久磁石モータ、および発電機に関する。

背景技術

0002

高性能希土類磁石の例としてSm−Co系磁石、Nd−Fe−B系磁石などが知られている。これらの磁石では、FeやCoが飽和磁化の増大に寄与している。また、これらの磁石にはNdやSm等の希土類元素が含まれており、結晶場中における希土類元素の4f電子挙動由来して大きな磁気異方性をもたらす。これにより大きな保磁力が得られ、高性能磁石が実現されている。

0003

このような高性能磁石は、主としてモータ、スピーカ計測器等の電気機器に使用されている。近年、各種電気機器の小型軽量化低消費電力化の要求が高まり、これに対応するために永久磁石の最大磁気エネルギー積(BHmax)を向上させた、より高性能の永久磁石が求められている。また、近年、可変磁束型モータが提案され、モータの高効率化に寄与している。

0004

Sm−Co系磁石は、キュリー温度が高いため、高温で良好なモータ特性を実現することが可能であるが、さらなる高保磁力化と高磁化、さらに角型比の改善が望まれている。Sm−Co系磁石の高磁化にはFeの高濃度化が有効であると考えられるが、従来の製法ではFeを高濃度化することにより角型比が低下する傾向にあった。このようなことから、高性能なモータ用の磁石を実現するためには高いFe濃度組成において磁化を改善しながらも良好な角型比の発現を可能とする技術が必要となる。

先行技術

0005

特開2010−121167号公報

0006

本発明で解決しようとするべき課題は、Sm−Co系磁石においてその金属組織を制御することにより、高性能な永久磁石を提供することである。

0007

実施形態の永久磁石は、組成式:RpFeqMrCutCo100−p−q−r−t(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはZr、TiおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素、pは10.5≦p≦12.5原子%を満足する数、qは23≦q≦40原子%を満足する数、rは0.88≦r≦4.5原子%を満足する数、tは4.5≦t≦10.7原子%を満足する数である)で表される組成と、Th2Zn17型結晶相とTh2Zn17型結晶相よりもCu濃度が高いCuリッチ相とを含む金属組織とを具備する永久磁石であって、Th2Zn17型結晶相におけるc軸を含む断面において、1μm四方面積内に存在するCuリッチ相同士の交点数が10点以上である。

図面の簡単な説明

0008

TEMによる明視野像の一例を示す図である。
TEM−EDXによるマッピング結果の一例を示す図である。
永久磁石モータを示す図である。
可変磁束モータを示す図である。
発電機を示す図である。

0009

(第1の実施形態)
本実施形態の永久磁石について以下に説明する。

0010

<永久磁石の構成例>
本実施形態の永久磁石は、
組成式:RpFeqMrCutCo100−p−q−r−t(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、MはZr、TiおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素、pは10.5≦p≦12.5原子%を満足する数、qは23≦q≦40原子%を満足する数、rは0.88≦r≦4.5原子%を満足する数、tは4.5≦t≦10.7原子%を満足する数である)で表される組成を具備する。

0011

上記組成式におけるRは、磁石材料に大きな磁気異方性をもたらすことができる元素である。R元素としては、例えばイットリウム(Y)を含む希土類元素から選ばれる1種または複数の元素などを用いることができ、例えばサマリウム(Sm)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)等を用いることができ、特に、Smを用いることが好ましい。例えば、R元素としてSmを含む複数の元素を用いる場合、Smの濃度をR元素として適用可能な元素全体の50原子%以上とすることにより、磁石材料の性能、例えば保磁力を高めることができる。

0012

なお、R元素として適用可能な元素の70原子%以上をSmとするとさらに好ましい。R元素として適用可能な元素はいずれも磁石材料に大きな磁気異方性をもたらし、例えばR元素として適用可能な元素の濃度を10.5原子%以上12.5原子%以下とすることにより保磁力を大きくすることができる。R元素として適用可能な元素の濃度が10.5原子%未満の場合、多量のα−Feが析出して保磁力が小さくなり、R元素として適用可能な元素の濃度が12.5原子%を超える場合、飽和磁化が低下する。よって、R元素として適用可能な元素の濃度は、10.7原子%以上12.3原子%以下であることが好ましく、さらに10.9原子%以上12.1原子%以下であることが好ましい。

0013

上記組成式におけるMは、高いFe濃度の組成で大きな保磁力を発現させることができる元素である。M元素としては、例えばチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、およびハフニウム(Hf)から選ばれる1種または複数の元素が用いられる。M元素の含有量rが4.5原子%以上であると、M元素を過剰に含有する異相が生成しやすくなり、保磁力、磁化ともに低下しやすい。また、M元素の含有量rが0.88原子%未満であるとFe濃度を高める効果が小さくなりやすい。つまり、M元素の含有量rは、R元素以外の元素(Fe、Co、Cu、M)の総量の0.88原子%以上4.5原子%以下であることが好ましい。さらに元素Mの含有量rは、1.14原子%以上3.58原子%以下であることが好ましく、さらに1.49原子%よりも大きく2.24原子%以下であることが好ましい。

0014

M元素は、Ti、Zr、Hfのいずれであってもよいが、少なくともZrを含むことが好ましい。特に、M元素の50原子%以上をZrとすることにより、永久磁石の保磁力を高めることができる。一方、M元素の中でHfはとりわけ高価であるため、Hfを使用する場合においても、その使用量は少ないことが好ましい。例えば、Hfの含有量は、M元素の20原子%未満であることが好ましい。

0015

Cuは、磁石材料において高い保磁力を発現させることができる元素である。Cuの含有量は、Fe、Co、Cu、およびM元素の総量の3.5原子%以上10.7原子%以下であることが好ましい。これよりも多量に配合すると磁化の低下が著しく、またこれよりも少量であると高い保磁力と良好な角型比を得ることが困難となる。Cuの含有量tは、Fe、Co、Cu、およびM元素の総量の3.9原子%以上9.0原子%以下であることが好ましく、さらにFe、Co、Cu、およびM元素の総量の4.3原子%以上5.8原子%以下であることが好ましい。

0016

Feは、主として磁石材料の磁化を担う元素である。Feを多量に配合することにより磁石材料の飽和磁化を高めることができるが、過剰に配合するとα−Feの析出や相分離により所望の結晶相が得られにくくなり、保磁力を低下させるおそれがある。よって、Feの含有量qは、Fe、Co、CuおよびM元素の総量の23原子%以上40原子%以下であることが好ましい。さらに、Feの含有量qは、26原子%以上36原子%以下であることが好ましく、さらに29原子%以上34原子%以下であることが好ましい。

0017

Coは、磁石材料の磁化を担うとともに高い保磁力を発現させることができる元素である。また、Coを多く配合すると高いキュリー温度が得られ、磁石特性熱安定性を高める働きも有している。Coの配合量が少ないとこれらの効果が小さくなりやすい。しかしながら、Coを過剰に添加すると、相対的にFeの割合が減り、磁化の低下を招くおそれがある。例えば、Coの20原子%以下をNi、V、Cr、Mn、Al、Si、Ga、Nb、Ta、Wで置換することにより磁石特性、例えば保磁力を高めることができる。しかしながら、過剰の置換により磁化の低下を招くおそれがあるため、置換量はCoの20原子%以下であることが好ましい。

0018

さらに、本実施形態の永久磁石は、複数の六方晶系のTh2Zn17型結晶相(2−17型結晶相)と前記Th2Zn17型結晶相よりもCu濃度が高い複数のCuリッチ相とを有する金属組織を具備する。

0019

一般的にSm−Co系磁石は、その断面組織において、Th2Zn17型結晶相(2−17型結晶相)のセル相と六方晶系のCaCu5型結晶相(1−5型結晶相)のセル壁相とを含む2次元の金属組織を具備する。例えば、セル壁相は、上記Cuリッチ相の一つでありセル相の粒界に存在する粒界相であり、セル壁相により複数のセル相は区切られている。上記構造をセル構造ともいう。

0020

Cuリッチ相は、Th2Zn17型結晶相よりもCu濃度が高い相である。Cuリッチ相のCu濃度は、Th2Zn17型結晶相のCu濃度よりも高く、例えば30原子%以上であることが好ましい。Cuリッチ相は、例えばTh2Zn17型結晶相におけるc軸を含む断面において、線状または板状に存在する。Cuリッチ相の構造としては、特に限定されないが、例えば六方晶系のCaCu5型結晶相(1−5型結晶相)などが挙げられる。また、本実施形態の永久磁石は、相の異なる複数のCuリッチ相を有していてもよい。

0021

本実施形態において、Th2Zn17型結晶相やCuリッチ相などの金属組織の観察は、例えば以下のように認定される。まず、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)によるサンプルの観察を行う。上記観察に用いるサンプルは、本時効処理後のサンプルである。この際、サンプルは未着磁品であることが好ましい。

0022

Th2Zn17型結晶相やCuリッチ相の各元素の濃度は、例えばエネルギー分散型X線分光法(TEM−Energy Dispersive X−ray Spectroscopy:TEM−EDX)を用いて測定することができる。TEM観察は、例えば200k倍の倍率で行う。本実施形態においては、Th2Zn17型結晶相におけるc軸を含む断面を観察する。

0023

各相、特にセル相間のセル壁などの相の各元素の濃度測定には、三次元アトムプローブ(3−Dimension Atom Probe:3DAP)を用いることが好ましい。TEM−EDXによる分析の場合、セル相間の相を観察しても透過電子線がセル壁相およびセル相の両相を透過することで、セル相間の相内の各元素濃度を正確に測定できない可能性がある。例えば、Sm濃度等が若干高めになる場合がある(3DAPでの測定値に対し1.2倍〜1.5倍程度)。

0024

3DAPによる各相内の元素濃度の測定は、以下に示す手順にしたがって実施する。まず、試料ダイシングにより薄片化し、そこから収束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)にてピックアップアトムプローブ(AP)用針状試料を作製する。Th2Zn17型結晶相におけるc軸に対して垂直に生成するZr等の元素Mがリッチな板状の相(Mリッチ相)に平行なTh2Zn17型結晶相の原子面(0003)の面間隔(およそ0.4nm)を基準にして、原子マップを作成する。そのように作成したアトムプローブデータについて、Cuのみのプロファイルを作成し、Cuが濃化された箇所を特定する。このCuがリッチな部位がCuリッチ相にあたる。

0025

Cuリッチ相に対して垂直方向にCu濃度プロファイルを解析する。濃度プロファイル解析範囲は、10nm×10nm×10nmあるいは5nm×5nm×10nmとすることが好ましい。このような解析により得られるCuの濃度プロファイルからCu濃度が最も高い値(PCu)を求める。Cuの濃度プロファイルからこのような測定を同一試料内で20点について実施し、その平均値をCuリッチ相内のCu濃度と定義する。

0026

TEM−EDXや3DAPによる測定は、焼結体の内部に対して行う。焼結体内部の測定とは、以下の通りである。まず、最大の面積を有する面における最長の辺の中央部において、辺に垂直(曲線の場合は中央部の接線と垂直)に切断した断面の表面部と内部とで組成を測定する。測定箇所は、上記断面において各辺の1/2の位置を始点として、辺に対し垂直に内側に向けて端部まで引いた第1の基準線と、各角部の中央を始点として角部の内角の角度の1/2の位置で内側に向けて端部まで引いた第2の基準線とを設け、これら第1の基準線および第2の基準線の始点から基準線の長さの1%の位置を表面部、40%の位置を内部と定義する。なお、角部が面取り等で曲率を有する場合、隣り合う辺を延長した交点を辺の端部(角部の中央)とする。この場合、測定箇所は交点からではなく、基準線と接した部分からの位置とする。

0027

測定箇所を以上のようにすることによって、例えば断面が四角形の場合、基準線は第1の基準線および第2の基準線でそれぞれ4本の合計8本となり、測定箇所は表面部および内部でそれぞれ8箇所となる。本実施形態において、表面部および内部でそれぞれ8箇所全てが上記した組成範囲内であることが好ましいが、少なくとも表面部および内部でそれぞれ4箇所以上が上記した組成範囲内となればよい。この場合、1本の基準線での表面部および内部の関係を規定するものではない。このように規定される焼結体内部の観察面研磨して平滑にした後に観察を行う。例えば、TEM−EDXの観察箇所は、セル相内およびCuリッチ相内の任意の20点とし、これら各点での測定値から最大値最小値を除いた測定値の平均値を求め、この平均値を各元素の濃度とする。3DAPの測定もこれに準ずる。

0028

上述した3DAPを用いたCuリッチ相内の濃度の測定結果において、Cuリッチ相におけるCuの濃度プロファイルは、よりシャープであることが好ましい。具体的には、Cuの濃度プロファイルの半値幅FWHM:Full Width at Half Maximum)が5nm以下であることが好ましく、このような場合により高い保磁力を得ることができる。これはCuリッチ相内のCuの分布がシャープな場合、セル相とCuリッチ相との間の磁壁エネルギー差が急激に生じ、磁壁がよりピニングされやすくなるためである。

0029

Cuリッチ相におけるCuの濃度プロファイルの半値幅(FWHM)は、以下のようにして求められる。上述した方法に基づいて3DAPのCuプロファイルからCu濃度が最も高い値(PCu)を求め、この値の半分の値(PCu/2)となるところのピークの幅、すなわち半値幅(FWHM)を求める。このような測定を10個のピークに対して行い、それらの値の平均値をCuプロファイルの半値幅(FWHM)と定義する。Cuプロファイルの半値幅(FWHM)が3nm以下である場合に、さらに保磁力を高める効果が向上し、2nm以下の場合により一層優れた保磁力の向上効果を得ることができる。

0030

TEMによる、Th2Zn17型結晶相のc軸を含む断面の観察により得られる明視野像の一例を図1に示す。図1に示す矢印の部分がCuリッチ相である。

0031

また、TEM−EDXによるマッピング結果の一例を図2に示す。図2において、白色の板状領域のうち、長手方向が一方向に延在している部分を1つのCuリッチ相とみなす

0032

Cuリッチ相の磁壁エネルギーは、Th2Zn17型結晶相の磁壁エネルギーよりも高く、この磁壁エネルギーの差が磁壁移動障壁となる。つまり、Cuリッチ相がピニングサイトとして機能することにより、複数のセル相間での磁壁移動を抑制することができる。これを磁壁ピニング効果ともいう。

0033

なお、23原子%以上のFeを含むSm−Co系磁石において、Cuリッチ相のCu濃度は、30原子%以上であることが好ましい。Fe濃度が高い領域においてはCuリッチ相のCu濃度にばらつきが発生しやすくなり、例えば磁壁ピニング効果の大きいCuリッチ相と磁壁ピニング効果の小さいCuリッチ相とが生じ、保磁力および角型比が低下しやすくなる。より好ましいCu濃度は35原子%以上、さらに好ましくは40原子%以上である。

0034

ピニングサイトを外れた磁壁が移動すると、移動した分だけ磁化が反転してしまうため、磁化が低下する。外磁場印加した際に、ある一定の磁場で一斉に磁壁がピニングサイトを外れれば、磁場の印加に対し、途中の磁場の印加により磁化が低下せず、良好な角型比が得られる。換言すると、磁場を印加した際に保磁力よりも低い磁場でピニングサイトを外れ、磁壁が移動してしまうと、移動した分だけ磁化が減少し、角型比の悪化につながると考えられる。角型比の悪化を抑制するためには、磁壁ピニング効果を大きくし、あるピニングサイトを仮に外れても別のピニングサイトで改めて磁壁のピニングを行い、磁化反転する領域を最小限に留めることが重要であると考えられる。

0035

あるピニングサイトを外れた磁壁に対して別のピニングサイトによるピニングを行うことを目的として、ピニングサイトであるCuリッチ相を密に生成したにも関わらず、角型比が改善されない場合がある。さらに、Cuリッチ相を密に生成したにも関わらず、磁化が低下してしまうといった現象がある。上記磁化の低下の原因は、Cuリッチ相が密に生成することによりセル相であるTh2Zn17型結晶相の割合が小さくなったことが関係していると思われる。Th2Zn17型結晶相は、Sm−Co系永久磁石において磁化を担う相であり、このTh2Zn17型結晶相の体積分率の低下が磁化の低下を引き起こすと考えられる。

0036

Cuリッチ相を密に生成したにもかかわらず角型比が改善される場合とされない場合がある原因について詳細に調べたところ、Cuリッチ相の生成形態に特徴があることを見出した。すなわち、Cuリッチ相同士が交差または接触することにより角型比が良好になることを見出した。一方、Cuリッチ相を密に生成しても角型比が良好でないサンプルは、Cuリッチ相同士が交差または接触する箇所が少ない。

0037

上記Cuリッチ相の形成形態の違いによる角型比の違いは、組織の違いによる磁壁の移動の違いを意味している。例えば、Cuリッチ相同士が交差または接触し、Th2Zn17型結晶相をCuリッチ相が取り囲むことにより磁壁移動の抑制効果を高めることができる。一方、Cuリッチ相同士が交差または接触しない場合、たとえ密に生成しても複数のCuリッチ相間を磁壁がすりぬけて移動してしまい、結果として角型比が低下してしまう。また、Cuリッチ相同士の交点におけるCu濃度は、Cuリッチ相の他の領域のCu濃度よりも高い場合があり、交点そのものが強固なピニングサイトとなると考えられる。

0038

本実施形態の永久磁石は、Cuリッチ相同士の交点を有する。具体的には、Th2Zn17相におけるc軸を含む断面において、1μm四方の面積内に存在するCuリッチ相同士の交点数を10点以上、好ましくは500nm四方の面積内に存在するCuリッチ相同士の交点数を15点以上とする。なお、Cuリッチ相同士の交点数の上限は、特に限定されないが、例えば120点以下としてもよい。

0039

実際のサンプルにおいて、Cuリッチ相同士の交点は、例えば以下のように認定される。

0040

まず、図2のマッピング結果において、Cuリッチ相同士の交点と思われる個所を中心に直径100nmの円を描く。次に、目視により直径100nmの円内のCuリッチ相を見出す。このとき、直径100nmの円内に長手方向がそれぞれ異なる方向に延在する2以上のCuリッチ相があり、かつ2以上のCuリッチ相同士が接触または交差している場合には、接点または交点をCuリッチ相同士の交点と認定する。

0041

また、これに限定されず2以上のCuリッチ相が接触または交差していない場合であっても、例えば2以上のCuリッチ相のそれぞれにおける長手方向が非平行であり、仮に2以上のCuリッチ相の少なくとも一つを長手方向に延在させた場合に2以上のCuリッチ相同士が円内で接触または交差するのであれば、延在させた場合に発生する接点または交点をCuリッチ相同士の交点とみなす。

0042

さらに、上記Cuリッチ相同士の交点数は、以下のように計数される。

0043

まず、サンプル中の任意の観察位置において1μm四方の面積内においてCuリッチ相同士の交点数を計数する。上記動作を同一サンプルにおいて観察位置を変えて7視野行い、最多の交点数の結果と最少の交点数の結果を除く5つの結果の平均を1μm四方の面積内に存在するCuリッチ相同士の交点数とみなす。

0044

なお、角型比は、以下のように定義される。まず、直流B−Hトレーサーにより室温における直流磁化特性を測定する。次に、測定結果から得られたB−H曲線より磁石の基本特性である残留磁化Mrと保磁力iHCおよび最大エネルギー積(BH)maxを求める。このとき、Mrを用いて理論最大値(BH)maxが下記式(1)により求められる。
(BH)max(理論値)=Mr2/4μ0・・・(1)
角型比は、測定で得られる(BH)maxと(BH)max(理論値)の比により評価され、下記式(2)により求められる。
(BH)max(実測値)/(BH)max(理論値)×100・・・(2)

0045

なお、本実施形態の永久磁石は、例えばボンド磁石としても用いられる。例えば、特開2008−29148号公報または特開2008−43172号公報に開示されているような可変磁束ドライブシステムにおける可変磁石に本実施形態の磁石材料を用いることにより、システムの高効率化、小型化、低コスト化が可能となる。本実施形態の永久磁石を可変磁石として用いるためには時効処理条件を変更し、保磁力を100kA/M以上350kA/M以下に収める必要がある。

0046

<永久磁石の製造方法>
次に、永久磁石の製造方法例について説明する。

0047

まず、永久磁石の合成に必要な所定の元素を含む合金粉末を調製する。例えば、ストリップキャスト法などでフレーク状の合金薄帯を作製し、その後合金薄帯を粉砕することにより合金粉末を調製することができる。ストリップキャスト法を用いた合金薄帯の作製では、周速0.1m/秒以上20m/秒以下で回転する冷却ロール合金溶湯傾注することにより、厚さ1mm以下に連続的に凝固させた薄帯を作製することができる。周速が0.1m/秒未満の場合、薄帯において組成のばらつきが生じやすい。また、周速が20m/秒を超える場合、結晶粒単磁区サイズ以下に微細化してしまう等、磁気特性が低下するおそれがある。冷却ロールの周速は0.3m/秒以上15m/秒以下、さらに好ましくは0.5m/秒以上12m/秒以下である。また、アーク溶解高周波溶解後に鋳造する等により得られた合金インゴットを粉砕することにより合金粉末を調製することもできる。また、メカニカルアロイング法メカニカルグラインディング法、ガスアトマイズ法還元拡散法などを用いて合金粉末を調製してもよい。

0048

さらに、上記合金粉末または粉砕前の合金の材料に対して熱処理を施すことにより該材料を均質化することが可能である。例えば、ジェットミルボールミルなどを用いて材料を粉砕することができる。なお、不活性ガス雰囲気もしくは有機溶媒中で材料を粉砕することにより粉末酸化を防止することができる。

0049

粉砕後の粉末において、平均粒径が2μm以上5μm以下であり、かつ粒径が2μm以上10μm以下の粉末の割合が粉末全体の80%以上であると配向度が高くなり、また、保磁力が大きくなる。これを実現するためにはジェットミルによる粉砕が好ましい。

0050

例えば、ボールミルで粉砕する場合、粉末の平均粒径が2μm以上5μm以下であったとしても、粒径がサブミクロンレベル微粉末が多量に含まれる。この微粉末が凝集するとプレス時の磁場配向中に磁化容易軸方向にTbCu7相における結晶のc軸が揃いにくくなり、配向度が悪くなりやすい。また、このような微粉末は、焼結体中の酸化物の量を増大させ、保磁力を低下させるおそれがある。特に、Fe濃度が23原子%以上の場合、粉砕後の粉末において、10μm以上の粒径の粉末の割合が粉末全体の10%以下であることが望ましい。Fe濃度が23原子%以上の場合、原材料となるインゴット中における異相の量が増大する。この異相では、粉末の量が増大するだけでなく、粒径も大きくなる傾向にあり、粒径が20μm以上になることがある。

0051

このようなインゴットを粉砕した際に例えば15μm以上の粒径の粉末がそのまま異相の粉末となることがある。このような異相粗粉末を含んだ粉砕粉を磁場中でプレスし、焼結体とすると、異相が残存し、保磁力の低下、磁化の低下、角型性の低下等を引き起こす。角型性が低下すると着磁が難しくなる。特に、ロータなどへのアセンブリ後の着磁が困難となる。このように、10μm以上の粒径の粉末を全体の10%以下とすることにより23原子%以上のFeを含む高いFe濃度組成において角型比の低下を抑制しつつ保磁力を大きくすることができる。

0052

次に、電磁石の中に設置した金型内に合金粉末を充填し、磁場を印加しながら加圧成形することにより結晶軸配向させた圧粉体を製造する。さらにこの圧粉体を、1100℃以上1210℃以下、1時間以上15時間以下で焼結することにより緻密な焼結体が得られる。

0053

例えば、焼結温度が1100℃未満の場合、生成される焼結体の密度が低くなりやすい。また、1210℃よりも高い場合、粉末中のSmが過剰に蒸発する等で磁気特性が低下するおそれがある。より好ましい焼結温度は1150℃以上1205℃以下であり、さらに好ましくは1165℃以上1195℃以下である。

0054

一方、焼結時間が1時間未満の場合、密度が不均一になりやすいため磁化が低下しやすく、さらに、焼結体の結晶粒径が小さくなり、かつ結晶粒界比率が高くなることにより、磁化が低下しやすい。また、焼結時間が15時間を越えると粉末中のR元素の蒸発が過剰となり、磁気特性が低下するおそれがある。より好ましい焼結時間は2時間以上13時間以下であり、さらに好ましくは4時間以上10時間以下である。なお、真空中またはアルゴンガス(Ar)中で熱処理を行うことにより酸化を抑制することができる。また、焼結温度近くになるまで真空を維持し、その後Ar雰囲気切り替え等温維持することにより焼結体密度を向上させることができる。

0055

次に、得られた焼結体に対して、溶体化処理を施して結晶組織を制御する。例えば、1100℃以上1190℃以下、3時間以上28時間以下で溶体化処理を行うことにより、相分離組織の前駆体であるTbCu7型結晶相が得られやすい。

0056

熱処理温度が1100℃未満の場合および1190℃を超える場合、溶体化処理後の試料中に存在するTbCu7型結晶相の割合が小さく、良好な磁気特性が得られにくい。熱処理温度は、好ましくは1110℃以上1180℃以下、さらに好ましくは1120℃以上1170℃以下である。

0057

また、熱処理時間が3時間未満の場合、構成相が不均一になりやすく、保磁力が低下しやすくなり、焼結体の結晶粒径が小さくなりやすく、結晶粒界比率が高くなり磁化が低下しやすい。また、熱処理温度が28時間を超える場合、焼結体中のR元素が蒸発する等で磁気特性が低下するおそれがある。熱処理時間は、好ましくは4時間以上24時間以下であり、さらに好ましくは10時間以上18時間以下である。

0058

なお、真空中やアルゴンガス等の不活性雰囲気中で溶体化処理を行うことにより粉末の酸化を抑制することができる。また、焼結と連続して溶体化処理を行ってもよい。

0059

さらに、等温保持後に急冷を行う。急冷を行うことにより、室温であってもTbCu7型結晶相を維持させることができる。急冷速度を170℃/分以上とすることによりTbCu7型結晶相が安定化させることができ保磁力が発現しやすくなる。例えば、冷却速度が170℃/分未満の場合、冷却中にCe2Ni7型結晶相(2−7相)が生成されやすくなる。2−7相の存在により磁化が低下する場合があり、また、保磁力も低下する場合がある。2−7相はCuが濃化されていることが多く、これにより主相中のCu濃度が低下し、時効処理による相分離が起きにくくなるためである。特にFe濃度が23原子%以上含む組成では冷却速度が重要となりやすい。

0060

次に、急冷後の焼結体に時効処理を行う。時効処理とは、金属組織を制御して磁石の保磁力を高める処理であり、磁石の金属組織を、Th2Zn17型結晶相やCuリッチ相等の複数の相に相分離させることを目的としている。ここでの時効処理は、予備時効処理と本時効処理に分けられる。例えば、予備時効処理では、550℃以上850℃以下で0.5時間以上10時間以下保持した後、0.2℃/分以上5℃/分以下の冷却速度で200℃以上450℃以下まで徐冷する。

0061

本時効処理温度よりも予備時効処理温度を一定温度以上低くすることにより、Cuリッチ相の核生成頻度上がり、Cuリッチ相同士の交点の数を増やすことができるため、角型比を改善することができる。なお、予備時効処理温度が550℃よりも低いと、Cuリッチ相の密度が高くなり、Cuリッチ相の体積分率が大きくなり、さらに、Cuリッチ相毎のCu濃度が低くなる。これにより、かえって磁壁ピニング効果が低くなり、その後本時効処理を行っても保磁力が上がりにくくなってしまい、また、角型比の悪化や、磁化の低下等が起こる場合がある。これは元素の拡散挙動関与していると考えられる。例えば、Cuリッチ相の体積分率が高くなると磁化を担う相であるTh2Zn17型結晶相の体積分率が減るため、磁化が低下する。また、予備時効温度が850℃よりも高くなると、角型比改善効果が小さくするおそれがある。より好ましい予備時効温度は550℃以上750℃以下であり、さらに好ましくは600℃以上710℃以下である。

0062

また、上記時効処理では、予備時効処理温度と本時効処理温度の関係に注意しなければならない。予備時効処理温度を低くすることにより角型比がさらに改善されるが、保磁力を大きくすることが困難となる。保磁力低下の原因の一つとしては、本時効処理によりセル壁相が十分に形成されないことが考えられる。そこで、本実施形態では、本時効処理温度を上げて元素拡散促成させる。具体的には予備時効処理温度と本時効処理温度の差を130℃以上に設定する。これにより、23原子%以上のFeを含む組成においても、Cuリッチ相同士の交点を多く有しながらCuリッチ相のCu濃度を高くすることができる。例えば、1μm四方の面積内におけるCuリッチ相同士の交点数を10点以上、より好ましくは15点以上、さらに好ましくは20点以上とすることができる。よって、良好な角型比、高保磁力、および高磁化を同時に実現することができる。好ましい予備時効処理温度と本時効処理温度との差は、130℃以上250℃以下であり、さらに好ましくは135℃以上180℃以下である。

0063

さらに、本時効処理では、750℃以上880℃以下で2時間以上80時間以下保持した後、0.2℃/分以上2℃/分以下の冷却速度で300℃以上650℃以下まで徐冷する。このとき、300℃以上650℃以下で一定時間保持することにより保磁力を改善することもできる。このときの保持時間は1時間以上6時間以下が好ましい。

0064

なお、真空中またはアルゴン等の不活性ガス中で予備時効処理および本時効処理を行うことにより、焼結体の酸化を抑制することができる。

0065

以上により永久磁石を製造することができる。

0066

(第2の実施形態)
第1の実施形態の永久磁石は、各種モータや発電機に使用することができる。また、可変磁束モータや可変磁束発電機固定磁石や可変磁石として使用することも可能である。第1の実施形態の永久磁石を用いることによって、各種のモータや発電機が構成される。第1の実施形態の永久磁石を可変磁束モータに適用する場合、可変磁束モータの構成やドライブシステムには、特開2008−29148号公報や特開2008−43172号公報に開示されている技術を適用することができる。

0067

次に、本実施形態の永久磁石を具備するモータと発電機について、図面を参照して説明する。図3は本実施形態における永久磁石モータを示す図である。図3に示す永久磁石モータ1では、ステータ固定子)2内にロータ(回転子)3が配置されている。ロータ3の鉄心4中には、第1の実施形態の永久磁石である永久磁石5が配置されている。第1の実施形態の永久磁石を用いることにより、各永久磁石の特性等に基づいて、永久磁石モータ1の高効率化、小型化、低コスト化等を図ることができる。

0068

図4は本実施形態による可変磁束モータを示す図である。図4に示す可変磁束モータ11において、ステータ(固定子)12内にはロータ(回転子)13が配置されている。ロータ13の鉄心14中には、第1の実施形態の永久磁石が固定磁石15および可変磁石16として配置されている。可変磁石16の磁束密度磁束量)は可変することが可能とされている。可変磁石16はその磁化方向がQ軸方向と直交するため、Q軸電流の影響を受けず、D軸電流により磁化することができる。ロータ13には磁化巻線(図示せず)が設けられている。この磁化巻線に磁化回路から電流を流すことによって、その磁界が直接に可変磁石16に作用する構造となっている。

0069

第1の実施形態の永久磁石によれば、固定磁石15に好適な保磁力を得ることができる。第1の実施形態の永久磁石を可変磁石16に適用する場合には、前述した製造方法の各種条件(時効処理条件等)を変更することによって、例えば保磁力を100kA/m以上500kA/m以下の範囲に制御すればよい。なお、図4に示す可変磁束モータ11においては、固定磁石15および可変磁石16のいずれにも第1の実施形態の永久磁石を用いることができるが、いずれか一方の磁石に第1の実施形態の永久磁石を用いてもよい。可変磁束モータ11は、大きなトルクを小さい装置サイズ出力可能であるため、モータの高出力・小型化が求められるハイブリッド車電気自動車等のモータに好適である。

0070

図5は本実施形態による発電機を示している。図5に示す発電機21は、本実施形態の永久磁石を用いたステータ(固定子)22を備えている。ステータ(固定子)22の内側に配置されたロータ(回転子)23は、発電機21の一端に設けられたタービン24とシャフト25を介して接続されている。タービン24は、例えば外部から供給される流体により回転する。なお、流体により回転するタービン24に代えて、自動車回生エネルギー等の動的な回転を伝達することによって、シャフト25を回転させることも可能である。ステータ22とロータ23には、各種公知の構成を採用することができる。

0071

シャフト25はロータ23に対してタービン24とは反対側に配置された整流子(図示せず)と接触しており、ロータ23の回転により発生した起電力が発電機21の出力として相分離母線および主変圧器(図示せず)を介して、系統電圧に昇圧されて送電される。発電機21は、通常の発電機および可変磁束発電機のいずれであってもよい。なお、ロータ23にはタービン2からの静電気や発電に伴う軸電流による帯電が発生する。このため、発電機21はロータ23の帯電を放電させるためのブラシ26を備えている。

0072

以上のように、第1の実施形態の永久磁石を発電機に適用することにより、高効率化、小型化、低コスト化等の効果が得られる。

0073

なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

0074

本実施例では、永久磁石の具体例について説明する。

0075

(実施例1、実施例2)
永久磁石に用いられる各原料を所定の比率で量して混合した後、Arガス雰囲気でアーク溶解して合金インゴットを作製した。上記合金インゴットを1175℃で10時間保持して熱処理を行った後、合金インゴットに対して粗粉砕とジェットミルによる粉砕とを実施し、磁石の原料粉末としての合金粉末を調製した。合金粉末を磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。次に、合金粉末の圧縮成形体を焼結炉チャンバ内に配置し、チャンバ内を真空状態にした後に1180℃まで昇温させそのまま1分間保持し、その後にArガスを導入し、Ar雰囲気中で1195℃まで昇温させ、その温度で4時間保持して本焼結を行った。

0076

本焼結工程に引き続いて、焼結体を1160℃で10時間保持して溶体化処理を行った。なお、溶体化処理後の冷却速度を−220℃/分とした。次に溶体化処理後の焼結体を、予備時効処理として670℃で2時間保持した後に室温まで徐冷し、さらに本時効処理として815℃で40時間保持した。このような条件下で時効処理を行った焼結体を420℃まで徐冷し、その温度で1時間保持した。その後、室温まで炉冷することにより、磁石を得た。得られた磁石の組成は表1に示す通りである。

0077

また、誘導結合発光プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)法により磁石の組成分析を実施した。なお、ICP法による組成分析を以下の手順により行った。まず、記述の測定箇所から採取した試料を乳鉢で粉砕し、粉砕した試料を一定量はかり取り、石英ビーカに入れた。さらに、ビーカに混酸硝酸塩酸を含む酸)を入れ、ホットプレート上で140℃程度に加熱し、ビーカ中の試料を完全に溶解させた。さらに放冷した後、ポリエチルアクリレート(PEA)製メスフラスコに移して定容し、試料溶液とした。さらに、ICP発光分光分析装置を用いて検量線法により上記試料溶液の含有成分の定量を行った。ICP発光分光分析装置としては、エスアイアイナノテクノロジー製、SPS4000を用いた。また、上記磁石の1μm四方の面積内に存在するCuリッチ相同士の交点数(Cuリッチ相交点数)、Cuリッチ相のCu濃度(Cuリッチ相Cu濃度)、角型比、保磁力、および残留磁化を表3に示す。

0078

(実施例3、実施例4、実施例5)
各原料を所定の比率で秤量して混合した後、Arガス雰囲気中で高周波溶解して合金インゴットを作製した。合金インゴットに対し粗粉砕を実施した後に1160℃、4時間の熱処理を施し、急冷することにより室温まで冷却した。さらに粗粉砕とジェットミルによる粉砕とを実施し、磁石の原料粉末としての合金粉末を調製した。さらに上記合金粉末を磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。

0079

次に、合金粉末の圧縮成形体を焼結炉のチャンバ内に配置し、チャンバ内を真空度9.0×10−3Paの真空状態にした後に1170℃まで昇温させ、そのまま5分間保持した後、チャンバ内にArガスを導入した。Ar雰囲気中としたチャンバ内の温度を1185℃まで昇温し、そのまま6時間保持して本焼結を行った。次に、焼結体を1120℃で12時間保持して溶体化処理を行った。なお、溶体化処理後の冷却速度を−200℃/分とした。

0080

次に、溶体化処理後の焼結体を、表2に示すように予備時効処理として705℃で1時間保持した後に室温まで徐冷した。その後、本時効処理として840℃で25時間保持し、370℃まで徐冷し、2時間保持し、その後、室温まで炉冷することにより磁石を得た。上記磁石の組成は表1に示す通りである。なお、他の実施例と同様に上記磁石の組成をICP法により確認した。また、上記磁石のCuリッチ相交点数、Cuリッチ相Cu濃度、角型比、保磁力、および残留磁化を表3に示す。

0081

(実施例6)
各原料を所定の比率で秤量して混合した後、Arガス雰囲気中で高周波溶解して合金インゴットを作製した。合金インゴットに対し粗粉砕を実施した後に1180℃、3時間の熱処理を施し、急冷することにより室温まで冷却した。さらに粗粉砕とジェットミルによる粉砕とを実施し、磁石の原料粉末としての合金粉末を調製した。さらに上記合金粉末を磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。

0082

次に、合金粉末の圧縮成形体を焼結炉のチャンバ内に配置し、チャンバ内を真空度9.0×10−3Paの真空状態にした後に1155℃まで昇温させ、そのまま30分間保持した後、チャンバ内にArガスを導入した。Ar雰囲気中としたチャンバ内の温度を1190℃まで昇温させ、そのまま3時間保持して本焼結を行った。次に、焼結体を1130℃で16時間保持して溶体化処理を行った。なお、溶体化処理後の冷却速度を−180℃/分とした。

0083

次に、溶体化処理後の焼結体を、表2に示すように予備時効処理として700℃で1.5時間保持した後に室温まで徐冷した。その後、本時効処理として850℃で35時間保持し、360℃まで徐冷し、そのまま1.5時間保持し、その後、室温まで炉冷することにより磁石を得た。得られた磁石の組成は表1の通りである。なお、他の実施例と同様に上記磁石の組成をICP法により確認した。また、上記磁石のCuリッチ相交点数、Cuリッチ相Cu濃度、角型比、保磁力、および残留磁化を表3に示す。

0084

(実施例7)
各原料を所定の比率で秤量して混合した後、Arガス雰囲気で高周波溶解して合金インゴットを作製した。合金インゴットに対し粗粉砕を実施した後に1170℃、12時間の熱処理を施し、急冷することにより室温まで冷却した。さらに粗粉砕とジェットミルによる粉砕とを実施し、磁石の原料粉末としての合金粉末を調製した。さらに上記合金粉末を磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。

0085

次に、合金粉末の圧縮成形体を焼結炉のチャンバ内に配置し、チャンバ内を真空度9.0×10−3Paの真空状態にした後に1155℃まで昇温させ、そのまま30分間保持した後に、チャンバ内にArガスを導入し、Ar雰囲気中としたチャンバ内の温度を1180℃まで昇温させ、そのまま10時間保持して本焼結を行った。次に、焼結体を1120℃で16時間保持して溶体化処理を行った。なお、溶体化処理後の冷却速度を−240℃/分とした。

0086

次に、溶体化処理後の焼結体を、表2に示すように予備時効処理として680℃で3時間保持した後に室温まで徐冷した。その後、本時効処理として820℃で50時間保持し、400℃まで徐冷し、そのまま2時間保持し、その後、室温まで炉冷することにより磁石を得た。得られた磁石の組成は表1の通りである。なお、他の実施例と同様に上記磁石の組成をICP法により確認した。また、上記磁石のCuリッチ相交点数、Cuリッチ相Cu濃度、角型比、保磁力、および残留磁化を表3に示す。

0087

(実施例8)
各原料を所定の比率で秤量して混合した後、Arガス雰囲気中で高周波溶解して合金インゴットを作製した。上記合金インゴットに対し粗粉砕を実施した後に1170℃、6時間の熱処理を施し、急冷することにより室温まで冷却した。さらに、粗粉砕とジェットミルによる粉砕とを磁石の原料粉末としての合金粉末を調製した。さらに上記合金粉末を磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。

0088

次に、合金粉末の圧縮成形体を焼結炉のチャンバ内に配置し、チャンバ内を真空度9.0×10−3Paの真空状態にした後に1165℃まで昇温させ、そのまま15分間保持した後、チャンバ内にArガスを導入した。Ar雰囲気中としたチャンバ内の温度を1195℃まで昇温させ、そのまま4時間保持して本焼結を行った。次に、焼結体を1125℃で12時間保持して溶体化処理を行った。なお、溶体化処理後の冷却速度を−180℃/分とした。

0089

次に、液体化処理後の焼結体を、表2に示すように予備時効処理として675℃で4時間保持した後に室温まで徐冷した。その後、本時効処理として830℃で35時間保持し、350℃まで徐冷し、そのまま2時間保持し、その後、室温まで炉冷することにより磁石を得た。得られた磁石の組成は表1に示す通りである。なお、他の実施例と同様に上記磁石の組成をICP法により確認した。また、上記磁石のCuリッチ相交点数、Cuリッチ相Cu濃度、角型比、保磁力、および残留磁化を表3に示す。

0090

(実施例9、実施例10、実施例11)
実施例8と同組成の合金粉末を原料に用い、磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。この圧縮成形体を焼成炉のチャンバ内に配置し、チャンバ内を真空度9.0×10−3Paの真空状態にした後に1165℃まで昇温させ、そのまま15分間保持した後、チャンバ内にArガスを導入した。Ar雰囲気中としたチャンバ内の温度を1195℃まで昇温させ、そのまま4時間保持して本焼結を行った。

0091

次に、実施例8と同じ条件で溶体化処理を行った。さらに表2に示すように、実施例9では、予備時効処理として700℃で4時間保持した後に室温まで徐冷し、実施例10では、予備時効処理として670℃で4時間保持した後に室温まで徐冷し、実施例11では、予備時効処理として675℃で4時間保持した後に室温まで徐冷した。その後、本時効処理として830℃で35時間保持し、350℃まで徐冷し、そのまま2時間保持し、その後、室温まで炉冷することにより磁石を得た。得られた各磁石の組成は表1に示す通りである。なお、他の実施例と同様に上記各磁石の組成をICP法により確認した。また、上記各磁石のCuリッチ相交点数、Cuリッチ相Cu濃度、角型比、保磁力、および残留磁化を表3に示す。

0092

(比較例1、比較例2)
表1に示す組成を有する磁石を、実施例1および実施例2のそれぞれと同一の方法で作製した。上記各磁石のCuリッチ相交点数、Cuリッチ相Cu濃度、角型比、保磁力、および残留磁化を表3に示す。

0093

(比較例3、比較例4、比較例5、比較例6)
実施例8と同組成の合金粉末を原料に用い、磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。この圧縮成形体を焼成炉のチャンバ内に配置し、チャンバ内を真空度9.0×10−3Paの真空状態にした後に1165℃まで昇温させ、そのまま15分間保持した後、チャンバ内にArガスを導入した。Ar雰囲気中としたチャンバ内の温度を1195℃まで昇温させ、そのまま4時間保持して本焼結を行った。次に、実施例8と同じ条件で溶体化処理を行った。

0094

さらに表2に示すように、比較例3では、予備時効処理として780℃で4時間保持した後に室温まで徐冷し、その後、本時効処理として830℃で35時間保持し、350℃まで徐冷し、そのまま2時間保持し、その後、室温まで炉冷することにより磁石を得た。

0095

また、表2に示すように、比較例4では、予備時効処理として675℃で4時間保持した後に室温まで徐冷し、その後、本時効処理として900℃で35時間保持し、350℃まで徐冷し、そのまま2時間保持し、その後、室温まで炉冷することにより磁石を得た。

0096

また、表2に示すように、比較例5では、予備時効処理として675℃で4時間保持した後に室温まで徐冷し、その後、本時効処理として780℃で35時間保持し、350℃まで徐冷し、そのまま2時間保持し、その後、室温まで炉冷することにより磁石を得た。

0097

また、表2に示すように、比較例6では、予備時効処理として450℃で4時間保持した後に室温まで徐冷し、その後、本時効処理として830℃で35時間保持し、350℃まで徐冷し、そのまま2時間保持し、その後、室温まで炉冷することにより磁石を得た。

0098

上記各磁石の組成は表1に示す通りである。なお、他の実施例と同様に上記磁石の組成をICP法により確認した。また、上記各磁石のCuリッチ相交点数、Cuリッチ相Cu濃度、角型比、保磁力、および残留磁化を表3に示す。

0099

表1ないし表3から明らかなように、実施例1ないし実施例7の永久磁石では、例えばSm濃度が12.73%である比較例1の永久磁石やZr濃度が4.84%である比較例2の永久磁石よりもCuリッチ相のCu濃度が高く、Cuリッチ相同士の交点数が多く、いずれも良好な角型比、高保磁力、および高磁化を発現している。このことから、永久磁石を構成する各元素の量を調整することにより、磁石特性を高めることができることがわかる。

0100

また、実施例8ないし実施例11の永久磁石では、予備時効処理温度が780℃であり、かつ予備時効処理温度と本時効処理温度との温度差が50℃である比較例3の永久磁石よりもCuリッチ相同士の交点数が多く、いずれも良好な角型比、高保磁力、および高磁化を発現している。このことから、予備時効処理温度、および予備時効処理温度と本時効処理温度との温度差を制御することにより、磁石特性を高めることができることがわかる。

0101

また、実施例8ないし実施例11の永久磁石では、例えば本時効処理温度が900℃であり、予備時効処理温度と本時効処理温度との温度差が225℃である比較例4の永久磁石よりも、Cuリッチ相同士の交点数が多く、いずれも良好な角型比、高保磁力、および高磁化を発現している。このことから、本時効処理温度、および予備時効処理温度と本時効処理温度との温度差を制御することにより、磁石特性を高めることができることがわかる。

0102

また、実施例8ないし実施例11の永久磁石では、例えば本時効処理温度が780℃であり、予備時効処理温度と本時効処理温度との温度差が105℃である比較例5の永久磁石よりも、Cuリッチ相のCu濃度が高く、Cuリッチ相同士の交点数が多く、いずれも良好な角型比、高保磁力、および高磁化を発現している。このことから、本時効処理温度、および予備時効処理温度と本時効処理温度との温度差を制御することにより、磁石特性を高めることができることがわかる。

0103

また、実施例8ないし実施例11の永久磁石では、例えば予備時効処理温度が450℃であり、予備時効処理温度と本時効処理温度との温度差が380℃である比較例6の永久磁石と比較してCuリッチ相のCu濃度が高く、いずれも良好な角型比、高保磁力、および高磁化を発現している。このことから、予備時効処理温度、および予備時効処理温度と本時効処理温度との温度差を制御することにより、磁石特性を高めることができることがわかる。

0104

以上のように、実施例1ないし実施例11の永久磁石では、Cuリッチ相のCu濃度が30%以上と高く、Cuリッチ相同士の交点数が10以上と多く、Fe濃度が23%以上の場合であっても、いずれも良好な角型比、高保磁力、および高磁化を発現している。このことから、実施例1ないし実施例11の永久磁石は、磁石特性に優れていることが分かる。

0105

0106

実施例

0107

0108

1…永久磁石モータ、2…ステータ、3…ロータ、4…鉄心、5…永久磁石、11…可変磁束モータ、12…ステータ、13…ロータ、14…鉄心、15…固定磁石、16…可変磁石、21…可変磁束発電機、22…ステータ、23…ロータ、24…タービン、25…シャフト、26…ブラシ

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