図面 (/)

この項目の情報は公開日時点(2017年3月2日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (6)

課題・解決手段

miR-203阻害剤を含有する角膜上皮障害治療剤、miR-203阻害剤を含有する角膜上皮細胞増殖促進剤及びmiR-203阻害剤を含有する、角膜上皮シートを製造するための培養液、並びにmiR-203阻害剤を含有する培養液を用いて角膜上皮細胞を培養する工程を含む、角膜上皮シートの製造方法。本発明によれば、角膜上皮障害治療剤、角膜上皮細胞の増殖促進剤、角膜上皮シートを製造するための培養液、かかる培養液を用いて角膜上皮細胞を培養する工程を含む、角膜上皮シートの製造方法、並びに角膜上皮障害の治療方法を提供することができる。本発明者らは、涙液に多く含まれるmiRNAを阻害することによってかかる効果を発揮するだけではなく、眼表面に特異的に作用することも見出したので、本発明は高い安全性を示すことが期待できる。

概要

背景

ドライアイの進行やコンタクトレンズ不適切な使用により引き起こされる眼疾患の症状として、角膜上皮障害が問題となっている。

一方、マイクロRNA(miRNA)は25ヌクレオチド程度の遺伝情報を持たない非コードRNAであり、細胞内でメッセンジャーRNA(mRNA)と結合し、タンパク質への翻訳阻害する働きがある。1種類のmiRNAは複数の標的mRNAの発現を抑制し、また、1種類のmRNAが複数のmiRNAにより制御されていることが明らかとなっている。さらに、ヒトの遺伝子の少なくとも30%、あるいはそれ以上の遺伝子の発現がこれらmiRNAに制御されているものと予測されている。

近年、miRNAがガン自然免疫反応の抑制に関与することが多数報告されていることから、その役割重要性はますます注目されている。また、miRNAは発現した細胞内で機能するだけでなく、エキソソームと呼ばれる膜小体封入されて細胞外へ出て、体液を通して他の細胞へ運ばれ、他の細胞でも同様にmRNAからタンパク質への翻訳を阻害することが分かっている。

miR-203は皮膚で高発現するmiRNAとして発見され、胎表皮分化制御、皮膚のバリア機能形成、乾癬等の皮膚疾患への関与が示唆されている(非特許文献1)。miR-203はがん腫瘍抑制因子としての機能を持つことも報告されている(非特許文献2及び非特許文献3)。また、miR-203は血管平滑筋細胞の増殖を抑制するものの、ヒト臍帯静脈内皮細胞増殖抑制には作用しないとの報告がなされている(非特許文献4)。しかしながら、我々の知る限り、角膜上皮細胞とmiR-203との関連を示唆する報告は一切ない。

概要

miR-203阻害剤を含有する角膜上皮障害治療剤、miR-203阻害剤を含有する角膜上皮細胞増殖促進剤及びmiR-203阻害剤を含有する、角膜上皮シートを製造するための培養液、並びにmiR-203阻害剤を含有する培養液を用いて角膜上皮細胞を培養する工程を含む、角膜上皮シートの製造方法。本発明によれば、角膜上皮障害の治療剤、角膜上皮細胞の増殖促進剤、角膜上皮シートを製造するための培養液、かかる培養液を用いて角膜上皮細胞を培養する工程を含む、角膜上皮シートの製造方法、並びに角膜上皮障害の治療方法を提供することができる。本発明者らは、涙液に多く含まれるmiRNAを阻害することによってかかる効果を発揮するだけではなく、眼表面に特異的に作用することも見出したので、本発明は高い安全性を示すことが期待できる。

目的

本発明の課題は、角膜上皮細胞の増殖を促進する作用を有する、角膜上皮障害の治療剤を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

miR-203阻害剤を含有する角膜上皮障害治療剤

請求項2

miR-203阻害剤がmiR-203に対するアンチセンス核酸である、請求項1に記載の治療剤

請求項3

アンチセンス核酸が、角膜上皮細胞増殖促進作用を有するRNAであって、配列表の配列番号:2〜5のいずれか一つで表される塩基配列を含むRNAである、請求項2に記載の治療剤。

請求項4

アンチセンス核酸が、角膜上皮細胞の増殖促進作用を有するRNAであって、配列表の配列番号:2〜5のいずれか一つで表される塩基配列において、1〜数個塩基置換欠失、付加及び/又は挿入された塩基配列からなるRNAである、請求項2又は3に記載の治療剤。

請求項5

アンチセンス核酸が、角膜上皮細胞の増殖促進作用を有するRNAであって、(1)配列表の配列番号:2〜5のいずれか一つで表される塩基配列において、該塩基配列の5'末端の1個の塩基及び/又は3'末端の1個の塩基が置換及び/又は欠失された塩基配列からなるRNAである、又は(2)配列表の配列番号:2〜5のいずれか一つで表される塩基配列において、該塩基配列の5'末端の塩基及び/又は3'末端の塩基に1個の塩基が付加された塩基配列からなるRNAである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の治療剤。

請求項6

アンチセンス核酸が、配列表の配列番号:2〜5のいずれか一つで表される塩基配列からなるRNAである、請求項2〜5のいずれか1項に記載の治療剤。

請求項7

前記RNAを構成する全てのリボ核酸の2'位の水酸基メトキシ基に置換されたものであるか、又は、前記RNAを構成する少なくとも一つのリボ核酸の2'位酸素原子と4'位炭素原子メチレンを介して架橋されたものである、請求項3〜6のいずれか1項に記載の治療剤。

請求項8

miR-203阻害剤を含有する角膜上皮細胞増殖促進剤

請求項9

miR-203阻害剤がmiR-203に対するアンチセンス核酸である、請求項8に記載の促進剤。

請求項10

アンチセンス核酸が、角膜上皮細胞の増殖促進作用を有するRNAであって、配列表の配列番号:2〜5のいずれか一つで表される塩基配列を含むRNAである、請求項9に記載の促進剤。

請求項11

アンチセンス核酸が、角膜上皮細胞の増殖促進作用を有するRNAであって、配列表の配列番号:2〜5のいずれか一つで表される塩基配列において、1〜数個の塩基が置換、欠失、付加及び/又は挿入された塩基配列からなるRNAである、請求項9又は10に記載の促進剤。

請求項12

アンチセンス核酸が、角膜上皮細胞の増殖促進作用を有するRNAであって、(1)配列表の配列番号:2〜5のいずれか一つで表される塩基配列において、該塩基配列の5'末端の1個の塩基及び/又は3'末端の1個の塩基が置換及び/又は欠失された塩基配列からなるRNAである、又は(2)配列表の配列番号:2〜5のいずれか一つで表される塩基配列において、該塩基配列の5'末端の塩基及び/又は3'末端の塩基に1個の塩基が付加された塩基配列からなるRNAである、請求項9〜11のいずれか1項に記載の促進剤。

請求項13

アンチセンス核酸が、配列表の配列番号:2〜5のいずれか一つで表される塩基配列からなるRNAである、請求項9〜12のいずれか1項に記載の促進剤。

請求項14

前記RNAを構成する全てのリボ核酸の2'位の水酸基がメトキシ基に置換されたものであるか、又は、前記RNAを構成する少なくとも一つのリボ核酸の2'位酸素原子と4'位炭素原子がメチレンを介して架橋されたものである、請求項10〜13のいずれか1項に記載の促進剤。

請求項15

miR-203阻害剤を含有する、角膜上皮シートを製造するための培養液

請求項16

miR-203阻害剤を含有する培養液を用いて角膜上皮細胞を培養する工程を含む、角膜上皮シートの製造方法。

請求項17

miR-203の作用を阻害する物質治療有効量を角膜上皮障害の治療を必要とする個体に投与する工程を含む、角膜上皮障害の治療方法

請求項18

角膜上皮障害の治療に使用するための、miR-203の作用を阻害する物質。

請求項19

miR-203の作用を阻害する物質の有効量を、角膜上皮細胞の増殖の促進を必要とする個体に投与する工程、又は角膜上皮細胞を培養するための培養液に添加する工程、を含む、角膜上皮細胞の増殖の促進方法

請求項20

角膜上皮細胞の増殖の促進に使用するための、miR-203の作用を阻害する物質。

技術分野

0001

本発明は、miR-203阻害剤を含有する角膜上皮障害治療剤に関する。さらに本発明は、miR-203阻害剤を含有する角膜上皮細胞増殖促進剤に関する。さらに本発明は、miR-203阻害剤を含有する、角膜上皮シートを製造するための培養液に関する。さらに本発明は、miR-203阻害剤を含有する培養液を用いて角膜上皮細胞を培養する工程を含む、角膜上皮シートの製造方法に関する。さらに本発明は、miR-203阻害剤を用いる角膜上皮障害治療方法に関する。

背景技術

0002

ドライアイの進行やコンタクトレンズ不適切な使用により引き起こされる眼疾患の症状として、角膜上皮障害が問題となっている。

0003

一方、マイクロRNA(miRNA)は25ヌクレオチド程度の遺伝情報を持たない非コードRNAであり、細胞内でメッセンジャーRNA(mRNA)と結合し、タンパク質への翻訳阻害する働きがある。1種類のmiRNAは複数の標的mRNAの発現を抑制し、また、1種類のmRNAが複数のmiRNAにより制御されていることが明らかとなっている。さらに、ヒトの遺伝子の少なくとも30%、あるいはそれ以上の遺伝子の発現がこれらmiRNAに制御されているものと予測されている。

0004

近年、miRNAがガン自然免疫反応の抑制に関与することが多数報告されていることから、その役割重要性はますます注目されている。また、miRNAは発現した細胞内で機能するだけでなく、エキソソームと呼ばれる膜小体封入されて細胞外へ出て、体液を通して他の細胞へ運ばれ、他の細胞でも同様にmRNAからタンパク質への翻訳を阻害することが分かっている。

0005

miR-203は皮膚で高発現するmiRNAとして発見され、胎表皮分化制御、皮膚のバリア機能形成、乾癬等の皮膚疾患への関与が示唆されている(非特許文献1)。miR-203はがん腫瘍抑制因子としての機能を持つことも報告されている(非特許文献2及び非特許文献3)。また、miR-203は血管平滑筋細胞の増殖を抑制するものの、ヒト臍帯静脈内皮細胞増殖抑制には作用しないとの報告がなされている(非特許文献4)。しかしながら、我々の知る限り、角膜上皮細胞とmiR-203との関連を示唆する報告は一切ない。

先行技術

0006

Sonkoly E et. al., MicroRNAs: Novel regulators involved in the pathogenesis of psoriasis?,PLoS ONE, (2007), 2(7), e610
Jin J et. al., The expression and function of microRNA-203 in lung cancer, Tumour Biol, (2013), 34(1), 349-57
Takeshita N et. al., miR-203 inhibits the migration and invasion of esophageal squamous cell carcinoma by regulating LASP1, Int J Oncol, (2012), 41(5), 1653-61.
Zhao J et. al., Estrogen Receptor-Mediated Regulation of MicroRNA Inhibits Proliferation of Vascular Smooth Muscle Cells, Arterioscler Thromb Vasc Biol, (2013), 33(2), 257-65.

発明が解決しようとする課題

0007

従って、本発明の課題は、角膜上皮細胞の増殖を促進する作用を有する、角膜上皮障害の治療剤を提供することにある。さらに本発明の課題は、角膜上皮細胞の増殖促進剤を提供することにある。さらに本発明の課題は、角膜上皮シートを製造するための培養液を提供することにある。さらに本発明の課題は、角膜上皮シートの製造方法を提供することにある。さらに本発明の課題は、角膜上皮障害の治療方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0008

本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、サル血清中に比べ、涙液中に多く含まれるmiRNAが存在することを見出し、該miRNAを同定したところ、該miRNAのうちの一つが角膜上皮細胞の増殖を特異的に抑制し、さらにこのmiRNAの阻害剤が角膜上皮細胞の増殖を促進する作用を有することを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成させた。

0009

すなわち、本発明の要旨は、
[1] miR-203阻害剤を含有する角膜上皮障害治療剤、
[2] miR-203阻害剤を含有する角膜上皮細胞増殖促進剤、
[3] miR-203阻害剤を含有する、角膜上皮シートを製造するための培養液、
[4] miR-203阻害剤を含有する培養液を用いて角膜上皮細胞を培養する工程を含む、角膜上皮シートの製造方法、
[5] miR-203の作用を阻害する物質、例えばmiR-203阻害剤の治療有効量を角膜上皮障害の治療を必要とする個体に投与する工程を含む、角膜上皮障害の治療方法、
[6] 角膜上皮障害の治療に使用するための、miR-203の作用を阻害する物質、例えばmiR-203阻害剤、
[7] miR-203の作用を阻害する物質、例えばmiR-203阻害剤の有効量を、
角膜上皮細胞の増殖の促進を必要とする個体に投与する工程、又は
角膜上皮細胞を培養するための培養液に添加する工程、
を含む、角膜上皮細胞の増殖の促進方法、並びに
[8] 角膜上皮細胞の増殖の促進に使用するための、miR-203の作用を阻害する物質、例えばmiR-203阻害剤、に関する。

発明の効果

0010

本発明によれば、角膜上皮障害の治療剤、角膜上皮細胞の増殖促進剤、角膜上皮シートを製造するための培養液、かかる培養液を用いて角膜上皮細胞を培養する工程を含む、角膜上皮シートの製造方法、並びに角膜上皮障害の治療方法を提供することができる。本発明者らは、涙液に多く含まれるmiRNAを阻害することによってかかる効果を発揮するだけではなく、眼表面に特異的に作用することも見出したので、本発明は高い安全性を示すことが期待できる。

図面の簡単な説明

0011

図1は、抗CD63抗体を用いたWestern Blot法による涙液中のエキソソームの検出を示す電気泳動の画像である。Western Blot法により、エキソソームのマーカータンパク質であるCD63(分子量53kDa)を検出した。Whole:サル涙液、Sup:上清画分、Exo:エキソソーム画分を示す。
図2は、定量リアルタイムPCRによるサル涙液及び血清中のmiR-203の発現量の解析結果を示すグラフである。各データは6例の平均値±標準偏差で示した。また、有意差検定t検定、片側、有意水準5%)の結果も表示した(n=6)。
図3の(a)及び(b)は、それぞれmiR-203阻害剤及びmiR-203類似体ヒト角膜上皮細胞への作用を確認した結果を示したグラフである(生細胞数測定)。また、有意差検定(t検定、片側、有意水準5%)の結果も表示した((a)N=9, (b)N=6)。
図4は、miR-203阻害剤のヒト網膜毛細血管内皮細胞への作用を確認した結果を示したグラフである(生細胞数測定)(n=3)。
図5は、miR-203阻害剤のヒト線維柱帯細胞への作用を確認した結果を示したグラフである(生細胞数測定)(n=5)。
図6は、塩基欠失するmiR-203阻害剤のヒト角膜上皮細胞への作用を確認した結果を示したグラフである(生細胞数測定)。また、有意差検定(t検定、片側、有意水準5%)の結果も表示した(n=6又はn=11)。

0012

1.miR-203及びmiR-203阻害剤
本明細書におけるmiR-203とは、miRNAの一種であり、配列表の配列番号:1で示される22個の塩基からなる塩基配列を有する一本鎖RNAである。本発明者らは、後述の試験例に示すように、miR-203の作用を阻害することができるmiR-203阻害剤を使用した実験を行い、miR-203阻害剤がヒトの角膜上皮細胞の増殖を促進する作用を有することを見出した。

0013

本明細書におけるmiR-203阻害剤としては、かかるmiR-203の作用を阻害する機能を有するものであれば特に限定されない。miR-203阻害剤の好ましい例としては、miR-203に対するアンチセンス核酸が挙げられ、miR-203の塩基配列に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを使用することができる。本発明における「miR-203に対するアンチセンス核酸」とは、標的核酸であるmiR-203の塩基配列に対して相補的あるいは実質的に相補的な塩基配列又はその一部を含有する核酸であって、miR-203の塩基配列の少なくとも一部にハイブリダイズし、miR-203の作用を抑制する機能を有する核酸である。ここで「実質的に相補的」とは、標的部位にハイブリダイズし、miR-203の作用を抑制できる限りにおいて、部分的ミスマッチ許容することを意味する。具体的には、「実質的に相補的」な配列とは、標的部位の配列に対して70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相補性を有する配列を言う。かかるアンチセンス核酸はDNAでもRNAでも良く、一本鎖でも二本鎖でも良い。その塩基数としては、アンチセンスとしての作用と特性の観点から、5〜50個が好ましく、6〜24個がより好ましく、7〜23個がさらに好ましく、8〜22個が特に好ましい。

0014

miR-203に対するアンチセンス核酸の好ましい態様の一例としては、配列表の配列番号:1に100%相補的な塩基配列を有する配列表の配列番号:2で示される塩基配列を含むRNAが挙げられる。miR-203に対するアンチセンス核酸の好ましい態様のその他の好ましい態様としては、配列表の配列番号:2で示される塩基配列の一部を含むRNA、例えば、配列表の配列番号:2の配列の第2位〜第21位の配列(配列表の配列番号:3)を含むRNA、配列表の配列番号:2の配列の第7位〜第22位の配列(配列表の配列番号:4)を含むRNA、及び配列表の配列番号:2の配列の第14位〜第21位の配列(配列表の配列番号:5)を含むRNA、が挙げられる。miR-203に対するアンチセンス核酸の別の好ましい態様としては、配列表の配列番号:5で表される塩基配列を必ず含むRNAであって、該RNAの5'側に1〜13個の塩基が追加され及び/又は3'側に1個の塩基が追加されたRNAが挙げられる。ここで、5'側に追加される塩基の種類としては、配列表の配列番号:2で表される塩基配列の第1位〜第13位を構成する塩基の種類と同じであることがより好ましい。ただし、最初に追加される塩基は第13位の塩基、即ちアデニンであり、次に追加される塩基は第12位の塩基、即ちアデニンであり、以下、第11位から第1位の順序で塩基が追加され得る。また、3'側に追加される塩基の種類としては、配列表の配列番号:2で表される塩基配列の第22位、即ちシトシンであることがより好ましい。

0015

このようなアンチセンス核酸のより好ましい態様として、配列表の配列番号:2〜5のいずれか一つで表される塩基配列において、1〜数個、例えば1〜3個、好ましくは1〜2個の塩基が置換、欠失、付加及び/又は挿入された塩基配列からなるRNAが挙げられる。さらに好ましい態様として、配列表の配列番号:2〜5のいずれか一つで表される塩基配列において、該塩基配列の5'末端の1個の塩基及び/又は3'末端の1個の塩基が置換及び/又は欠失された塩基配列からなるRNAや該塩基配列の5'末端の塩基及び/又は3'末端の塩基に1個の塩基が付加された塩基配列からなるRNAが挙げられる。このような配列に変異を有するRNAにおいては、角膜上皮細胞の増殖促進作用を有することがより好ましい。

0016

このようなアンチセンス核酸のさらに好ましい態様として、配列表の配列番号:2で示される塩基配列からなるRNA、配列表の配列番号:3で示される塩基配列からなるRNA、配列表の配列番号:4で示される塩基配列からなるRNA及び配列表の配列番号:5で示される塩基配列からなるRNA、が挙げられる。なお、本明細書において、「角膜上皮細胞の増殖促進作用を有するRNA」とは、後述の試験例5及び6に示される方法において、ネガティブコントロールを作用させた場合の角膜上皮細胞の細胞数よりも有意に細胞数を増加させる作用を有するRNAのことをいう。

0017

miR-203に対するアンチセンス核酸は、角膜上皮細胞の増殖促進作用を有するものであれば通常用いられる保護基等で修飾されていてもよい。即ち、本明細書における「アンチセンス核酸」には、保護基等で修飾されたもの及び保護基等の修飾を受けていないものの両者が包含される。修飾された核酸としては、核酸の糖部分の2'位の水酸基メトキシ基に置換された核酸、または2'位の酸素原子と4'位の炭素原子メチレンを介して架橋された核酸等が挙げられる。より具体的には、アンチセンス核酸がRNAの場合、RNAとしての安定性及び細胞内への導入効率の観点から、該RNAを構成するリボ核酸の2'位の水酸基の少なくとも一つがメトキシ基に置換されたRNAが好ましく、該水酸基の全てがメトキシ基に置換されたRNAがより好ましい。別の具体例としては、該RNAを構成する少なくとも一つのリボ核酸の2’位酸素原子と4’位炭素原子が、下記の式のようにメチレンを介して架橋されたRNAがより好ましい。

0018

0019

このような修飾を伴うポリヌクレオチドは、miR-203に対する修飾を伴わないアンチセンスポリヌクレオチドと同等の、角膜上皮細胞増殖促進効果を有する。

0020

miR-203の塩基配列に相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドは、公知の方法で合成することができ、あるいは市販品を利用することができる。市販品の具体例としては、QIAGEN社のmiScript miRNA Inhibitor Anti-hsa-miR-203(商品名)、EXIQON社のmiRCURY LNA microRNA Inhibitors(商品名)が挙げられる。このmiScript miRNA Inhibitor Anti-hsa-miR-203は、配列表の配列番号:2で示される塩基配列を有するRNAであって、該RNAを構成する全てのリボ核酸の2'位の水酸基がメトキシ基に置換されたものである。

0021

2.角膜上皮細胞増殖促進剤
上記のmiR-203阻害剤は角膜上皮細胞の増殖促進作用を有するため、角膜上皮細胞増殖促進剤として利用することができる。該促進剤は、医薬または試薬などとして、インビボまたはインビトロにおいて用いられる。医薬として用いる場合、該促進剤は、角膜上皮細胞の損傷(すなわち、創傷または欠損)を伴う疾患の治療剤として適用できる。試薬として用いる場合、角膜上皮シートを製造するための培養液に配合させることができる。

0022

3.角膜上皮障害治療剤
上記のmiR-203阻害剤は角膜上皮細胞の増殖促進作用を有するため、miR-203阻害剤は角膜上皮障害治療剤として適用することができ、このようなmiR-203阻害剤を含有する角膜上皮障害治療剤は本発明に包含される。

0023

角膜上皮は角膜基底細胞の増殖と角膜輪上皮からの永続的な上皮細胞の供給により補給される一方、表層細胞の脱落により短期間に角膜上皮のターンオーバーが繰り返されている。なんらかの病態により上皮増殖能が抑制されたり、また上皮脱落亢進すると、上皮恒常性バランス崩れ角膜上皮障害が発症することが知られている(木下茂編(2005). 「角膜疾患外来でこう診てこう治せ」 株式会社メジカルビュー発行82〜85ページ)。

0024

角膜上皮障害の創傷治癒は、次に示す3つのステップによって起こると考えられている。即ち、欠損した領域を被うための細胞の遊走、続いて、不足した細胞を補うための細胞増殖、そして、細胞の重層による細胞層の形成である。細胞増殖に関しては、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)が角膜上皮細胞の増殖を促すこと、また、これらの増殖因子が角膜上皮細胞で産生されていることも既に報告があり、創傷治癒における細胞増殖の重要性が示されている(Agrawal VB, Tsai RJ Corneal epithelial wound healing. Indian J Ophthalmol 2003; 51: 5-15 and Exp Biol Med Vol 226(7): 653-664, 2001)。さらに、最近では、色素上皮由来因子(PEDF)も、創傷治癒過程における角膜細胞の増殖に重要な役割を担っていることが報告されている(Stem Cells. 2013 Apr 3. doi: 10.1002/stem.1393)。したがって、角膜上皮細胞の増殖促進は、角膜上皮障害の治療法として有用であり、当業者であれば、インビトロの実験系において、ある特定の成分に角膜上皮細胞の増殖促進作用が認められれば、その成分を角膜上皮障害の治療剤として使用することを期待することができ、あるいはその成分を利用した角膜上皮障害の治療方法を期待することができる。

0025

本発明の治療剤は、角膜上皮細胞の増殖を促進する作用を有するため、角膜上皮障害治療剤として有用である。角膜上皮障害とは、角膜上皮細胞の損傷(すなわち、創傷または欠損)を伴う疾患を言う。本発明の治療剤は、具体的には、シェーグレン症候群スティーブンスジョンソン症候群眼球乾燥症候群(ドライアイ)、糖尿病性角膜症、術後、薬剤性外傷角膜潰瘍マイボーム腺炎コンタクトレンズ装用春季カタルアトピー性角結膜炎点状表層角膜症、角膜上皮糜爛等に伴う角膜上皮障害の治療剤として有用である。さらに、本発明の治療剤は、角膜創傷治癒促進剤としても有用である。

0026

本発明の治療剤は哺乳動物に対して適用することができる。本明細書における哺乳動物には、霊長類(例えばヒト、サル)、ウシヒツジヤギウマイヌネコウサギモルモットラット及びマウス等が包含される。

0027

本発明の治療剤において、miR-203阻害剤の投与量は症状、年令剤型等によって適宜選択できる。後述のように、miRNA阻害剤は50nM又は100nMという低濃度でもヒト角膜上皮細胞の増殖促進効果を示すので、かかる濃度に基づいてmiR-203阻害剤の投与量を臨床医が適宜設定することができる。一例として、点眼剤の治療有効量としては、miR-203阻害剤の濃度として好ましくは0.00001〜1%(w/v)、より好ましくは0.001〜0.1%(w/v)のものを1日1〜4回点眼すればよい。

0028

本発明の治療剤は、経口でも、非経口(点眼、経皮等)でも投与することができる。投与剤型としては、点眼剤、眼軟膏、皮膚軟膏注射剤錠剤カプセル剤顆粒剤細粒剤散剤等が挙げられる。これらは汎用されている技術を用いて調製することができる。例えば、点眼剤は、塩化ナトリウム濃グリセリン等の等張化剤リン酸ナトリウム酢酸ナトリウム等の緩衝化剤ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートステアリン酸ポリオキシル40ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤クエン酸ナトリウムエデト酸ナトリウム等の安定化剤塩化ベンザルコニウムパラベン等の防腐剤等を必要に応じて用い、調製することができる。点眼剤に用いる好ましい溶媒精製水である。点眼剤として使用する場合のpHは点眼剤に許容される範囲内にあればよいが、4〜8の範囲が好ましい。

0030

4.角膜上皮シート
上記のmiR-203阻害剤は角膜上皮細胞の増殖を促進するため、培養液に配合することよって角膜上皮細胞を効率的に培養することができる。よって、このようなmiR-203阻害剤を含有する、角膜上皮シートを製造するための培養液や、該培養液を用いて角膜上皮細胞を培養する工程を含む、角膜上皮シートの製造方法、並びに該製造方法によって製造された角膜上皮シートも、本発明に包含される。

0031

本発明の培養液におけるmiR-203阻害剤の濃度は特に限定されるものではないが、例えば、0.01〜1000 nMの範囲が好ましく、1〜200 nMの範囲がより好ましい。本発明の培養液の好ましい態様として、細胞培養分野で使用される公知の培地に上記のmiR-203阻害剤が添加されたものが挙げられる。かかる公知の培地としては、DMEM/F12(インビトロジェン)、OcuLife(登録商標)BM (Kurabo)などが挙げられる。本発明の培養液には、細胞培養分野で使用される公知の成分、例えば、無機塩(塩化ナトリウム、塩化カリウム塩化カルシウムなど)、有機塩アミノ酸緩衝剤ビタミン血清抗生物質が含まれていてもよい。

0032

角膜上皮シートの製造方法としては、例えば再表2006-003818記載の製造方法に記載された角膜上皮シートの製造時に、miR-203阻害剤を含有した培養液を用いて培養することによって、角膜上皮細胞の増殖を促進し、角膜上皮シートを短時間で製造できる。

0033

5.本発明の角膜上皮障害の治療方法
本発明は、角膜上皮障害の治療を必要とする個体に、miR-203の作用を阻害する物質、例えばmiR-203阻害剤の治療有効量を投与する工程を含む、角膜上皮障害の治療方法を提供する。

0034

本明細書において角膜上皮障害の治療を必要とする個体とは、好ましくはヒトであるが、ヒト以外の霊長類(例えばサル)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット及びマウス等であってもよい。

0035

本明細書において治療有効量とは、miR-203の作用を阻害する物質を上記個体に投与した場合に、投与していない個体と比較して角膜上皮障害を治療又は緩和する量のことである。具体的な有効量としては、投与形態投与方法、使用目的及び個体の年齢、体重、症状等によって適宜設定され、一定ではない。一例として、点眼剤の治療有効量としては、miR-203の作用を阻害する物質の濃度として好ましくは0.00001〜1%(w/v)、より好ましくは0.001〜0.1%(w/v)のものを1日1〜4回点眼することにより達成される量である。

0036

本発明の治療方法においては、前記治療有効量となるように、miR-203の作用を阻害する物質をそのまま上記個体に投与してもよく、あるいは、上記のような角膜上皮障害治療剤等の医薬、例えば点眼剤又は眼軟膏として投与してもよい。投与方法にも限定はなく、例えば経口投与又は非経口投与(点眼、経皮等)により投与することができる。

0037

本発明の角膜上皮障害の治療方法によれば、miR-203の作用を阻害する物質により発揮される上記の効果によって、角膜上皮障害を治療又は緩和することができる。miR-203の作用を阻害する物質の好ましい例としては、例えば上記のmiR-203阻害剤が挙げられる。

0038

さらに本発明は、角膜上皮障害の治療に使用するための、miR-203の作用を阻害する物質、例えばmiR-203阻害剤を包含する。

0039

6.本発明の角膜上皮細胞の増殖の促進方法
本発明は、miR-203の作用を阻害する物質、例えばmiR-203阻害剤の有効量を、(1)角膜上皮細胞の増殖の促進を必要とする個体に投与する工程、又は(2)角膜上皮細胞を培養するための培養液に添加する工程、を含む、角膜上皮細胞の増殖の促進方法を提供する。

0040

本明細書において角膜上皮細胞の増殖の促進を必要とする個体とは、好ましくはヒトであるが、ヒト以外の霊長類(例えばサル)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット及びマウス等であってもよい。

0041

本明細書において有効量とは、miR-203の作用を阻害する物質を上記個体に投与した場合に、投与していない個体と比較して角膜上皮細胞の増殖を促進できる量のことであるか、又は、角膜上皮細胞を培養するための培養液にmiR-203の作用を阻害する物質を添加して該細胞を培養した場合において、これを添加すること無く該細胞を培養したときと比較して角膜上皮細胞の増殖を促進できる量のことである。具体的な有効量としては、投与形態、投与方法、使用目的及び個体の年齢、体重、症状等によって適宜設定され、一定ではない。一例として、点眼剤として使用する場合の有効量としては、miR-203の作用を阻害する物質の濃度として好ましくは0.00001〜1%(w/v)、より好ましくは0.001〜0.1%(w/v)のものを1日1〜4回点眼することにより達成される量である。あるいは、miR-203の作用を阻害する物質を培養液に添加した際の該物質の濃度として0.01〜1000 nMの範囲が好ましく、1〜200 nMの範囲がより好ましい。

0042

本発明の促進方法においては、前記有効量となるように、miR-203の作用を阻害する物質をそのまま上記個体に投与してもよく、または、培養液に添加してもよい。あるいは、上記のような角膜上皮障害治療剤等の医薬、例えば点眼剤又は眼軟膏として投与してもよい。投与方法にも限定はなく、例えば経口投与又は非経口投与(点眼、経皮等)により投与することができる。

0043

本発明の角膜上皮細胞の増殖の促進方法によれば、miR-203の作用を阻害する物質により発揮される上記の効果によって、角膜上皮細胞の増殖を効率的に促進することができる。miR-203の作用を阻害する物質の好ましい例としては、例えば上記のmiR-203阻害剤が挙げられる。

0044

さらに本発明は、角膜上皮細胞の増殖の促進に使用するための、miR-203の作用を阻害する物質、例えばmiR-203阻害剤を包含する。

0045

以下、本発明を試験例及び製剤例に基づいて説明するが、本発明はこれらの試験例等により何ら制限されるものではない。

0046

試験例1
サルの涙液中及び血清中のエキソソームの単離
サル(学名:Macaca fascicularis)の涙液及び血清を採取し、それぞれを3000×gで15分間遠心して、細胞成分を除去した。上清分取し、等量のExoQuick Exosome Precipitation Solution (System Biosciences)をそれに添加してよく混合した。混合溶液を12時間以上、4℃で静置させた後、1500×gで30分間遠心した。上清を上清画分(Sup)とし、上清を完全に除去してエキソソームを含む沈殿を元の試料液量の1/10量の滅菌水再溶解してエキソソーム画分(Exo)とした。

0047

試験例2
Western Blot法によるエキソソームの発現確認
試験例1で得た、サルの涙液又は血清から単離したエキソソーム画分(2μg)をNuPAGE LDS Sample Buffer (Invitrogen)及びNuPAGE Sample Reducing Agent (Invitrogen)に溶解し、70℃で10分間熱処理した。試料をNuPAGE(登録商標) 12% Bis-Tris Gel (Invitrogen)を用いて200 Vで35分間電気泳動し、分子量ごとに分離した。エキソソームのマーカーであるCD63の検出は、ペルオキシダーゼ標識ヤギポリクローナル抗CD63抗体(Santa Cruz Biotechnology, Peroxidase Labeling Kit-NH2 (Dojindo))を用いてWestern Blot法により行った。ペルオキシダーゼをECLPlus Western Blotting Detection Reagents (GE healthcare life sciences)を用いて反応させ、ImageQuant LAS 4000 (GE healthcare life sciences)にてCD63を検出した。上清画分においても同様の処理を行って、CD63の有無を確認した。

0048

サルの涙液(Whole)、サルの涙液から上記のように単離したエキソソーム画分(Exo)及び上清画分(Sup)におけるCD63の検出結果を図1に示す。エキソソーム画分にCD63(分子量53kDa)の発現を確認した。このことから、涙液中に存在するエキソソームを単離したことを確認した。サルの血清についても同様の結果を得た。

0049

試験例3
マイクロアレイ解析による涙液及び血清中のmicroRNA (miRNA)の網羅的解析
サルの涙液及び血清から上記のように単離したエキソソーム中のmiRNA発現量を、マイクロアレイ法により網羅的に解析した。即ち、サルの涙液及び血清(各2検体)から、上記と同様にしてエキソソーム画分を単離した。得られたエキソソーム画分に含まれるmiRNAについて、マイクロアレイ解析を実施した。

0050

エキソソーム画分から全RNAを抽出し、Agilent 2100 Bioanalyzer及び分光光度計を用いてmiRNAの純度及び濃度を測定した。miRNAをHy5で蛍光標識した(miRCURY LNATMmicroRNA Hy5 Power labeling kit, Exiqon)。Hy5標識miRNAを3D-Gene(登録商標) Human miRNA Oligo chip (Toray)にハイブリダイズさせ、3D-Gen(登録商標)スキャナーで検出した。その結果、約760種類のmiRNAの存在が確認できた。涙液中におけるmiR-203の発現量は、他のmiRNAに比べ相対的に高く、加えて、涙液と血清とを比較すると涙液中にmiR-203が多く存在することがわかった。なお、miR-203の塩基配列は配列表の配列番号:1に示す通りであり、既知のmiRNAの塩基配列はmiRBaseデータベース(http://microrna.sanger.ac.uk/)に登録されており、既知のmiRNAの塩基配列を容易に知ることができる。

0051

試験例4
定量リアルタイムPCRによる涙液及び血清中のmiRNAの発現量の解析
サルの涙液及び血清中(各6検体)のmiR-203の発現量を定量リアルタイムPCRにより解析した。miRNeasy Mini Kit (QIAGEN)を用いてサルの涙液及び血清からmiRNAを含む全RNAを抽出し、RNase阻害剤(SUPERase-In, Ambion)で処理した後、Nanovue (GE healthcare)で濃度を定量した。

0052

その後、全RNA (0.5 ng)をmiScript IIRTKit (QIAGEN)を用いて逆転写し、さらに、miScript SYBR GreenPCRKit (QIAGEN)を用いた定量リアルタイムPCR法により、miR-203についての発現量を7500 Real Time PCR system (Applied Biosystems)で検出した。プライマーはQIAGEN社のものを使用した。得られたデータを基に、涙液及び血清中の発現量を比較した。

0053

その結果、miR-203の相対的な涙液中の発現量は、血清中に比べ78.7倍高く、統計学有意差が認められた(図2)。

0054

試験例5
ヒト角膜上皮細胞へのmiR-203類似体及びmiR-203阻害剤の導入
ヒト角膜上皮細胞(HCE-T(Araki-Sasaki K, Ohashi Y, Sasabe T, Hayashi K, Watanabe H, Tano Y, Handa H Invest Ophthalmol Vis Sci 1995; 36:614-21.)、理研セルバンク細胞番号RCB2280)を96ウェルプレートに3.0×103細胞/ウェルとなるよう播種し(30〜50%コンフルエント)、一晩前培養した。なお、培地は5μg insulin (Wako)、10 ng/ml human recombinant EGF (Invitrogen)、5% fetal bovine serum (Invitrogen)、40 μg/mL Gentamycin (Invitrogen)、100U/mL penicillin/streptomycin (Invitrogen)を添加したDMEM/F12 (Invitrogen) 培地を用いた。

0055

前培養後、miR-203類似体、miR-203阻害剤、及びそれらのネガティブコントロールを培地で希釈し、HiPerFect Transfection Reagent (QIAGEN)と混合して37℃で10分間インキュベートし、細胞に添加した。その後、37℃で48時間培養した。miR-203阻害剤及びそのネガティブコントロールは50 nM又は100 nM 、miR-203類似体及びそのネガティブコントロールは20 nMとなるように細胞に添加した。

0056

なお、miR-203類似体、miR-203阻害剤、及びそれらのネガティブコントロールとしては、以下のものを使用した。
類似体ネガティブコントロール:QIAGEN社の商品名「AllStars Negative Control siRNA」
miR-203類似体:QIAGEN社の商品名「miScript miRNA Mimic Syn-hsa-miR-203」;これはmiR-203の配列とその相補鎖からなる合成二本鎖RNAである。

0057

阻害剤ネガティブコントロール:QIAGEN社の商品名「miScript Inhibitor Negative Control」
miR-203阻害剤:QIAGEN社の商品名「miScript miRNA Inhibitor Anti-hsa-miR-203」;これはmiR-203配列の相補鎖からなる合成一本鎖RNAであり、全ての核酸の2'位の水酸基がメトキシ基に置換されている。

0058

試験例6
ヒト角膜上皮細胞の生細胞数測定
ヒト角膜上皮細胞の生細胞数をCell counting kit-8 (CCK-8, Dojindo)を用いて測定した。試験例5において培養した細胞に終濃度10% (v/v)になるようにCCK-8を添加して1時間インキュベートし、450 nmの吸光度を測定した。吸光度を基に相対的な生細胞数を解析した結果を図3に示す。図3においては、ネガティブコントロールを作用させたときの生細胞数を1として、個々の試験後の生細胞数を相対値とした。miR-203阻害剤を作用させることでヒト角膜上皮細胞の増殖が有意に促進され(図3の(a))、miR-203類似体を作用させることで細胞の増殖が有意に抑制されることが分かった(図3の(b))。

0059

試験例7
正常ヒト網膜毛細血管内皮細胞へのmiR-203阻害剤の導入並びに生細胞数測定
正常ヒト網膜毛細血管内皮細胞(CELLSYSTEMS CORPORATION, Cat No. ACBRI181)を96ウェルプレートに2.0×103細胞/ウェルとなるよう播種し、一晩前培養した。なお、培地は2% Culture Boost-R (50x)(Cell systems)、0.2% Gentamycin/Amphotericin B (500x)(Gibco)を添加したCSC Complete Defined Medium(Cell systems)培地を用いた。前培養後、試験例5で記載したものと同じmiR-203阻害剤あるいはそのネガティブコントロール(QIAGEN)を培地で希釈し、HiPerFect Transfection Reagent (QIAGEN)と混合して37℃で10分間インキュベートし、細胞に添加した。その後、37℃で48時間培養した。miR-203阻害剤およびそのネガティブコントロールは50nMとなるよう添加した。そして、試験例6と同様の操作で生細胞数を測定した。結果をまとめたグラフを図4として示す。図4において、ネガティブコントロールを作用させたときの細胞数を1として相対値を表した。

0060

正常ヒト網膜毛細血管内皮細胞に対しては、miR-203阻害剤による細胞増殖促進効果は認められなかった。

0061

試験例8
ヒト線維柱帯細胞へのmiR-203阻害剤の導入並びに生細胞数測定
ヒト線維柱帯細胞(ScienCell, Cat No.6590)を96穴プレートに2.0×103細胞/ウェルとなるよう播種し(30〜50%コンフルエント)、一晩前培養した。なお培地は、2% Fetal bovine serum (ScienCell)、1% Trabecular meshwork cell growth supplement (ScienCell)、1% Penicillin/Streptomycin (ScienCell)を添加したTrabecular meshwork cell mediumを用いた。前培養後、試験例5で記載したものと同じmiR-203阻害剤あるいはそのネガティブコントロール(QIAGEN)を培地で希釈し、HiPerFect Transfection Reagent (QIAGEN)と混合して室温で10分間インキュベートし、細胞に添加した。その後、37℃で48時間培養した。miR-203阻害剤およびそのネガティブコントロールは50nM又は100nMとなるよう添加した。そして実験例6と同様の操作で生細胞数を測定した。結果をまとめたグラフを図5として示す。図5おいて、ネガティブコントロールを作用させたときの細胞数を1として相対値を表した。

0062

図5から、ヒト線維柱帯細胞に対しては、miR-203阻害剤による細胞増殖促進効果が認められないことが分かった。

0063

上記の結果から次のような考察が導かれる。
涙液と血清中のmiRNAを比較検討した結果、サルの血清中に比べ、涙液中に相対的に多く含まれるmiRNAの一つにmiR-203を見出した。miR-203類似体はヒト角膜上皮細胞の増殖を抑制し、miR-203阻害剤はヒト角膜上皮細胞の増殖を促進した。その一方、miR-203阻害剤はヒト網膜毛細血管内皮細胞及びヒト線維柱帯細胞の増殖を促進しなかった。この結果は、miR-203阻害剤による細胞増殖促進効果が細胞特異的であることを示唆した。
また、miR-203阻害剤は50nM又は100nMという低濃度でヒト角膜上皮細胞の増殖促進効果を示すことが分かった。

0064

以上のことから、miR-203阻害剤を角膜上皮障害の治療剤、例えば点眼剤の有効成分として適用することや、miR-203阻害剤を利用する角膜上皮障害の治療方法が有効であると考えられる。さらには、miR-203阻害剤を角膜上皮細胞増殖促進剤や、角膜上皮シートを製造するための培養液、あるいは角膜上皮シートの製造方法に適用することもできる。

0065

試験例9
ヒト角膜上皮細胞への、塩基を欠失した配列を有するmiR-203阻害剤の導入並びに生細胞数測定
試験例5と同様の操作で、ヒト角膜上皮細胞にそれぞれmiR-203阻害剤(2塩基欠失配列)、miR-203阻害剤(6塩基欠失配列)、miR-203阻害剤(14塩基欠失配列)又はそのネガティブコントロールを導入した。これらとは別に、試験例5で用いたものと同じmiR-203阻害剤又はそのネガティブコントロールを、同様にヒト角膜上皮細胞に導入した。miR-203阻害剤及びそれらのネガティブコントロールはいずれも50nMとなるように細胞に添加した。その後、37℃で48時間培養した。

0066

なお、塩基を欠失した配列を有するmiR-203阻害剤及びそのネガティブコントロールとして以下のものを使用した。
阻害剤ネガティブコントロール:EXIQON社の商品名「miRCURY LNA microRNA Inhibitor negative control A」を使用した。

0067

miR-203阻害剤(2塩基欠失配列):EXIQON社の商品名「miRCURY LNA microRNA Inhibitor(hsa-miR-203)」を使用した。これはmiR-203配列の相補鎖の2〜21塩基(2塩基欠失)からなる合成一本鎖RNAであり、リボ核酸の2’位酸素原子と4’位炭素原子がメチレンを介して架橋されている。この阻害剤の配列は、配列表の配列番号:3に記載されている。

0068

miR-203阻害剤(6塩基欠失配列):ジーンデザイン社で合成された「hsa-mir-203a ASL-004」を使用した。これはmiR-203配列の相補鎖の7〜22塩基(6塩基欠失)からなる合成一本鎖RNAであり、下記の構造式で示されるように、リボ核酸の2’位酸素原子と4’位炭素原子がメチレンを介して架橋されている。この阻害剤の配列は、配列表の配列番号:4に記載されており、下記に示す(L)の左隣の塩基が架橋されている。
5'-G(L)UCC(L)UAA(L)ACA(L)UUUCA(L)C-3'

0069

miR-203阻害剤(14塩基欠失配列):ジーンデザイン社で合成された「hsa-mir-203a ASL-005」を使用した。これはmiR-203配列の相補鎖の14〜21塩基(14塩基欠失)からなる合成一本鎖RNAであり、下記の構造式で示されるように、リボ核酸の2’位酸素原子と4’位炭素原子がメチレンを介して架橋されている。この阻害剤の配列は、配列表の配列番号:5に記載されている。下記に示す(L)の左隣の塩基が架橋されている。
5'-A(L)C(L)A(L)U(L)U(L)U(L)C(L)A(L)-3'

0070

0071

miR-203阻害剤及びそれらのネガティブコントロールを導入したヒト角膜上皮細胞について、試験例6と同様の操作で生細胞数を測定した。結果を図6に示す。図6において、ネガティブコントロールを作用させたときの細胞数を1として相対値を表した。miR-203阻害剤(2塩基欠失配列)、miR-203阻害剤(6塩基欠失配列)及びmiR-203阻害剤(14塩基欠失配列)のいずれについても、図6の左から2番目レーンに示した、塩基の欠失を伴わないmiR-203阻害剤と同等以上のヒト角膜上皮細胞の有意な増殖促進効果が認められた。

0072

上記の結果から以下のことが導かれる。
miR-203阻害剤は、miR-203の配列に対し完全な相補的配列に限らず、2塩基、6塩基又は14塩基が欠失した配列であってもヒト角膜上皮細胞の増殖を促進した。この結果は、miR-203の阻害剤は、miR-203の部分相補配列でも、miR-203の作用を阻害可能であることを示している。さらには、14塩基が欠失した配列であっても上記効果が発揮されたことから、配列表の配列番号:5に示される塩基配列を少なくとも含む塩基配列であれば、所望の効果が発揮されることも示唆される。

0073

試験例5において上記効果を発揮することが示された配列表の配列番号:2の配列を有するmiR-203阻害剤は、RNAとしての安定性の観点からリボ核酸の2'位の水酸基の少なくとも一つがメトキシ基に置換されている。一方、試験例9において上記効果を発揮することが示された配列表の配列番号:3〜5のいずれかの配列を有するmiR-203阻害剤も、RNAとしての安定性の観点からリボ核酸の2’位酸素原子と4’位炭素原子がメチレンを介して架橋されており、架橋の位置は同じではない。

0074

このように、RNAにおける修飾のタイプの違いにも関わらず、所定の効果が発揮されたことは、RNAの修飾の有無や位置に関わらず、所定の塩基配列を有するRNAであれば本願発明の効果が発揮されることを示唆する。

0075

製剤例1:点眼液
常法により下に示す点眼液を調製する。
上記のmiR-203阻害剤(配列表の配列番号:2):0.001 g
リン酸二水素ナトリウム二水和物:0.2 g
水酸化ナトリウム:適量
塩化ナトリウム:0.8 g
塩化ベンザルコニウム:0.005 g
滅菌精製水:適量
全量100 mL(pH 7.0)

0076

試験例10:角膜上皮創傷治癒促進作用の検討
1.使用動物
雄性日本白色種家兎山ラベス)を用いる。実験動物の使用にあたっては、動物を用いる生物医学研究に関する原則(International Guiding Principles for Biomedical Research involving Animals)に従う。miR-203阻害剤投与群は、上記製剤例1に示されたmiR-203阻害剤含有点眼液が使用される。対照である基材投与群は、miR-203阻害剤を含まないこと以外は製剤例1の点眼液と同一である点眼液基剤が使用される。

0077

2.実験方法
1)角膜上皮掻爬
5%ケタミンケタラール(登録商標)筋注用500 mg、第一三共プロファーマ)及び2%キシラジンセラクタール(登録商標)2%注射液バイエル薬品)3:1混合液筋肉内注射(1mL/kg)により動物に全身麻酔を施した後、0.4%塩酸オキシブプロカイン点眼液(ベノキシール(登録商標)点眼液0.4%;参天製薬)を点眼し、眼球脱臼させる。直径10mmのトレパンを用いて角膜中央部の角膜上皮上に直径10mmの刻印を施し、実体顕微鏡下、ハンディルーターを用いて刻印した円周内の角膜上皮全層を掻爬する。掻爬後、生理食塩液(大塚製薬工場)を用いて角膜表面洗浄し、眼球を眼窩内に復位させて角膜上皮掻爬処置を完了する。

0078

2)投与
角膜上皮掻爬当日は1日2回、翌日以降、試験終了までは1日4回、処置眼に対し、miR-203阻害剤含有点眼液または点眼液基剤をそれぞれ1回50 μLずつ、マイクロピペットを用いて点眼する。

0079

3)評価
全個体の角膜上皮掻爬が完了した時点を試験開始時間(0時間目)とし、その40、48、56、64時間後の角膜上皮欠損面積を定量することにより、角膜上皮の修復を評価する。すなわち、各時点で処置眼に0.1%フルオレセインナトリウム和光純薬)溶液を10μL点眼し、ただちにブルーフィルターを取り付けたスリットランプを用いて動物の前眼部写真撮影することにより、フルオレセイン染色された角膜上皮欠損領域を記録する。現像された写真をコンピュータデジタル画像として保存し、画像解析ソフト(Image-Pro Plus)を用いてフルオレセイン染色された角膜上皮欠損部の面積を測定する。各時点での残存角膜上皮欠損の割合について、基剤投与群とmiR-203阻害剤投与群との比較を行う。検定の結果、危険率5%未満を有意であると判定する。

0080

製剤例2:培養液
DMEM/ハムF12混合培地混合体積比1:1)に、10%FBSインシュリン(5 μg/mL)、コレラトキシン(0.1 nM)、ペニシリンストレプトマイシン(50 IU/mL)、ヒトリコンビナン上皮細胞増殖因子(EGF)(10 ng/mL)、50nMの上記のmiR-203阻害剤(配列表の配列番号:2)を加え、培養液を調製する。
再表2006-003818の段落0041に記載の培地に代えてかかる培養液を用いて、角膜上皮シートを製造する。

実施例

0081

本明細書に引用される全ての特許、公開された特許出願及び参考文献に開示された教示は、それら全体が参照によって本明細書に援用される。

0082

本発明は、哺乳動物の角膜上皮障害の治療薬や角膜上皮障害の治療方法、あるいは、角膜上皮障害の治療のためのmiR-203阻害剤という分野に利用可能である。

0083

配列表の配列番号:1は、miR-203の塩基配列である。
配列表の配列番号:2は、miR-203に対するアンチセンス核酸の塩基配列である。
配列表の配列番号:3は、miR-203に対するアンチセンス核酸の塩基配列であり、配列表の配列番号:2の配列の第2位〜第21位の配列である。
配列表の配列番号:4は、miR-203に対するアンチセンス核酸の塩基配列であり、配列表の配列番号:2の配列の第7位〜第22位の配列である。
配列表の配列番号:5は、miR-203に対するアンチセンス核酸の塩基配列であり、配列表の配列番号:2の配列の第14位〜第21位の配列である。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ