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技術 抵抗スポット溶接方法

出願人 新日鐵住金株式会社
発明者 富士本博紀及川初彦山中晋太郎
出願日 2014年6月26日 (6年4ヶ月経過) 出願番号 2015-526251
公開日 2017年3月2日 (3年8ヶ月経過) 公開番号 WO2015-005134
状態 特許登録済
技術分野 スポット溶接
主要キーワード 外乱因子 ガス炉内 予備通電 鉄スケール 通電パス 最大通電 薄板側 O皮膜
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図面 (20)

課題・解決手段

本発明は、高張力鋼板を含む鋼材を重ね合わせた板組みに対して、インバータ直流式でも広い適正電流範囲を確保できる抵抗スポット溶接方法を提供することを目的とし、インバータ直流式のスポット溶接電源に接続された一対の溶接電極で、少なくとも1枚の高張力鋼板を含む2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組みを挟持し、溶接電極で鋼板を加圧しながら通電と通電休止を複数回繰り返すパルセーション工程と、パルセーション工程後に、パルセーション工程の最大通電時間(t0)よりも長時間(t3)連続的に溶接電極で鋼板に加圧しながら通電する連続通電工程と、を備える抵抗スポット溶接方法とした。

概要

背景

自動車車体プレス成形された鋼板を、主にスポット溶接にて接合することで組み立てられる。車体の組立てで使用されるスポット溶接では、板厚に応じたナゲット径の確保とチリの発生抑制の両立が求められる。

チリには中チリ(溶接により溶融した母材金属が鋼板の重ね面より飛散する現象)と表チリ(溶接により溶融した母材金属が鋼板と電極の接触面から飛散する現象)とがある。いずれも、チリが飛散し自動車の車体に付着することで車体の表面品質を低下させる。また、溶接用ロボット可動部に付着することで、設備稼働不良の要因となる。さらに、スポット溶接表面に針状に残存する表チリは自動車のワイヤハーネスなどの損傷の原因となるため、グラインダー研削する必要がある。このため、抵抗スポット溶接においては、中チリおよび表チリは避け、かつ必要な溶接継手の強度を確保するために所定の基準ナゲット径を確保することが求められている。

車体の組立てでは、電極の損耗、既溶接点への分流プレス部品間の隙間等の様々な外乱因子によりナゲット径が基準ナゲット径を下回ることがあるため、量産ラインにてチリを生じさせずに溶接する場合、試験片ベルの評価において、適正電流範囲が1.0kA以上、または、1.5kA以上必要とされることが多い。

近年、自動車の組立てでは、単相交流式に代わりインバータ直流方式抵抗スポット溶接機が用いられることが多くなっている。インバータ直流方式はトランスを小さくでき、可搬重量の小さいロボットに搭載できるメリットがあるため、特に自動化ラインで多く用いられる。

インバータ直流方式は、従来用いられてきた単相交流方式のような電流オンオフがなく、連続的に電流を付与するため、発熱効率が高い。このため、ナゲットが形成しにくい薄板軟鋼亜鉛めっき材の場合であっても、低電流から基準ナゲット径以上のナゲットが形成され適正電流範囲が単相交流より広くなることが報告されている。

スポット溶接において、図1に示すように、通電を1回だけ行う1段通電方式は、自動車の抵抗スポット溶接で多く用いられている。なお、図1において、縦軸のIは溶接電流を、横軸のtは時間を表す(以下、図2〜図7で同様である)。しかしながら、インバータ直流方式で高張力鋼板を1段通電方式で溶接すると中チリが発生する電流値が低く、適正電流範囲が著しく狭くなる。

特開2010−188408号公報(以下、「文献1」という場合がある)には、図2に示すように、予備通電により鋼板の接触面同士のなじみを向上させた後に本通電を行う2段通電方式を採用することによって、高張力鋼板のスポット溶接におけるチリの発生を抑制する方法が開示されている。

特開2003−236674号公報(以下、「文献2」という場合がある)には、図3に示すように、予備通電により鋼板の接触面同士のなじみを向上させた後に通電を休止し、その後、本通電を行う通電方式を採用することによって、高張力鋼板のスポット溶接におけるチリの発生を抑制する方法が開示されている。

特開2010−207909号公報(以下、「文献3」という場合がある)には、図4及び図5に示すように、予備通電により鋼板の接触面同士のなじみを向上させた後に電流値を下げ、その後、再び電流値を上げて一定電流の本通電またはパルス状の本通電を行う通電方式を採用することが開示されている。これによって、高張力鋼板のスポット溶接におけるチリの発生が抑制されることが開示されている。

特開2006−181621号公報(以下、「文献4」という場合がある)には、図6に示すように電流のアップダウンを繰り返しながら、電流値を上げていくスポット溶接により、高張力鋼板のスポット溶接におけるチリの発生を抑制する方法が開示されている。

文献(ISO 18278-2 Resistance welding-Weldability- Part 2 Alternative procedure for the assessment of sheet steels for spot welding)(以下、「文献5」という場合がある)には、図7に示すように、板厚1.5mm以上の鋼板において、6サイクル(120ミリ秒)以上の通電と2サイクル(40ミリ秒)の休止とを3回以上繰り返すスポット溶接方法が開示されている。

概要

本発明は、高張力鋼板を含む鋼材を重ね合わせた板組みに対して、インバータ直流式でも広い適正電流範囲を確保できる抵抗スポット溶接方法を提供することを目的とし、インバータ直流式のスポット溶接電源に接続された一対の溶接電極で、少なくとも1枚の高張力鋼板を含む2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組みを挟持し、溶接電極で鋼板を加圧しながら通電と通電休止を複数回繰り返すパルセーション工程と、パルセーション工程後に、パルセーション工程の最大通電時間(t0)よりも長時間(t3)連続的に溶接電極で鋼板に加圧しながら通電する連続通電工程と、を備える抵抗スポット溶接方法とした。

目的

本発明は、高張力鋼板を含む鋼材を重ね合わせた板組みに対して、インバータ直流方式でも広い適正電流範囲を確保できる抵抗スポット溶接方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

インバータ直流式スポット溶接電源に接続された一対の溶接電極で、少なくとも1枚の高張力鋼板を含む2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組みを挟持し、前記溶接電極で前記鋼板を加圧しながら通電と通電休止を複数回繰り返すパルセーション工程と、前記パルセーション工程後に、前記パルセーション工程の最大通電時間よりも長時間連続的に前記溶接電極で前記鋼板を加圧しながら通電する連続通電工程と、を備える抵抗スポット溶接方法

請求項2

前記パルセーション工程では、前記各通電の通電時間がそれぞれ10〜60ミリ秒である請求項1記載の抵抗スポット溶接方法。

請求項3

前記パルセーション工程では、隣接する通電間の通電休止の時間がそれぞれ10〜60ミリ秒である請求項1又は2記載の抵抗スポット溶接方法。

請求項4

前記パルセーション工程では、最後の前記通電と前記連続通電工程との間の最後の通電休止の時間が10〜120ミリ秒である請求項1〜3のいずれか1項記載の抵抗スポット溶接方法。

請求項5

前記パルセーション工程における前記通電の電流値が7.0〜14.0kAである請求項2〜4のいずれか1項に記載の抵抗スポット溶接方法。

請求項6

前記連続通電工程では、通電時間が100〜500ミリ秒である請求項2〜5のいずれか1項に記載の抵抗スポット溶接方法。

請求項7

前記連続通電工程における通電の電流値が5.0〜12.0kAである請求項6に記載の抵抗スポット溶接方法。

請求項8

前記連続通電工程における最大電流値が、前記パルセーション工程における最大電流値以下である請求項7に記載の抵抗スポット溶接方法。

請求項9

前記高張力鋼板が、表面が亜鉛系皮膜またはアルミ系皮膜で覆われているホットスタンプ鋼板である請求項1〜8のいずれか1項に記載の抵抗スポット溶接方法。

技術分野

0001

本発明は、抵抗スポット溶接方法に関する。

背景技術

0002

自動車車体プレス成形された鋼板を、主にスポット溶接にて接合することで組み立てられる。車体の組立てで使用されるスポット溶接では、板厚に応じたナゲット径の確保とチリの発生抑制の両立が求められる。

0003

チリには中チリ(溶接により溶融した母材金属が鋼板の重ね面より飛散する現象)と表チリ(溶接により溶融した母材金属が鋼板と電極の接触面から飛散する現象)とがある。いずれも、チリが飛散し自動車の車体に付着することで車体の表面品質を低下させる。また、溶接用ロボット可動部に付着することで、設備稼働不良の要因となる。さらに、スポット溶接表面に針状に残存する表チリは自動車のワイヤハーネスなどの損傷の原因となるため、グラインダー研削する必要がある。このため、抵抗スポット溶接においては、中チリおよび表チリは避け、かつ必要な溶接継手の強度を確保するために所定の基準ナゲット径を確保することが求められている。

0004

車体の組立てでは、電極の損耗、既溶接点への分流プレス部品間の隙間等の様々な外乱因子によりナゲット径が基準ナゲット径を下回ることがあるため、量産ラインにてチリを生じさせずに溶接する場合、試験片ベルの評価において、適正電流範囲が1.0kA以上、または、1.5kA以上必要とされることが多い。

0005

近年、自動車の組立てでは、単相交流式に代わりインバータ直流方式抵抗スポット溶接機が用いられることが多くなっている。インバータ直流方式はトランスを小さくでき、可搬重量の小さいロボットに搭載できるメリットがあるため、特に自動化ラインで多く用いられる。

0006

インバータ直流方式は、従来用いられてきた単相交流方式のような電流オンオフがなく、連続的に電流を付与するため、発熱効率が高い。このため、ナゲットが形成しにくい薄板軟鋼亜鉛めっき材の場合であっても、低電流から基準ナゲット径以上のナゲットが形成され適正電流範囲が単相交流より広くなることが報告されている。

0007

スポット溶接において、図1に示すように、通電を1回だけ行う1段通電方式は、自動車の抵抗スポット溶接で多く用いられている。なお、図1において、縦軸のIは溶接電流を、横軸のtは時間を表す(以下、図2図7で同様である)。しかしながら、インバータ直流方式で高張力鋼板を1段通電方式で溶接すると中チリが発生する電流値が低く、適正電流範囲が著しく狭くなる。

0008

特開2010−188408号公報(以下、「文献1」という場合がある)には、図2に示すように、予備通電により鋼板の接触面同士のなじみを向上させた後に本通電を行う2段通電方式を採用することによって、高張力鋼板のスポット溶接におけるチリの発生を抑制する方法が開示されている。

0009

特開2003−236674号公報(以下、「文献2」という場合がある)には、図3に示すように、予備通電により鋼板の接触面同士のなじみを向上させた後に通電を休止し、その後、本通電を行う通電方式を採用することによって、高張力鋼板のスポット溶接におけるチリの発生を抑制する方法が開示されている。

0010

特開2010−207909号公報(以下、「文献3」という場合がある)には、図4及び図5に示すように、予備通電により鋼板の接触面同士のなじみを向上させた後に電流値を下げ、その後、再び電流値を上げて一定電流の本通電またはパルス状の本通電を行う通電方式を採用することが開示されている。これによって、高張力鋼板のスポット溶接におけるチリの発生が抑制されることが開示されている。

0011

特開2006−181621号公報(以下、「文献4」という場合がある)には、図6に示すように電流のアップダウンを繰り返しながら、電流値を上げていくスポット溶接により、高張力鋼板のスポット溶接におけるチリの発生を抑制する方法が開示されている。

0012

文献(ISO 18278-2 Resistance welding-Weldability- Part 2 Alternative procedure for the assessment of sheet steels for spot welding)(以下、「文献5」という場合がある)には、図7に示すように、板厚1.5mm以上の鋼板において、6サイクル(120ミリ秒)以上の通電と2サイクル(40ミリ秒)の休止とを3回以上繰り返すスポット溶接方法が開示されている。

発明が解決しようとする課題

0013

本発明は、高張力鋼板を含む鋼材を重ね合わせた板組みに対して、インバータ直流方式でも広い適正電流範囲を確保できる抵抗スポット溶接方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0014

発明者達はその具体的な方法として、様々な板組みで、表面処理された1500MPa級ホットスタンプ鋼板を用いて検討を行った。その結果、短時間のパルセーション通電(通電および通電休止を複数回繰り返す)工程と、その後の連続通電工程とを組み合わせることで、中チリおよび表チリの発生を抑制し適正電流範囲が広く安定したスポット溶接を実施できることを見出した。

0015

本発明の一態様によれば、インバータ直流式スポット溶接電源に接続された一対の溶接電極で、少なくとも1枚の高張力鋼板を含む2枚以上の鋼板を重ね合わせた板組みを挟持し、前記溶接電極で前記鋼板を加圧しながら通電と通電休止を複数回繰り返すパルセーション工程と、前記パルセーション工程後に、前記パルセーション工程の最大通電時間よりも長時間連続的に前記溶接電極で前記鋼板を加圧しながら通電する連続通電工程と、を備える抵抗スポット溶接方法が提供される。

発明の効果

0016

本発明の抵抗スポット溶接方法は、高張力鋼板を含む鋼板を重ね合わせた板組みに対してインバータ直流電源を用いてスポット溶接を行った場合でも、広い適正電流範囲を確保することができる。

図面の簡単な説明

0017

通電を1回だけ行う1段通電方式の時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
文献1に記載の通電方式の時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
文献2に記載の通電方式の時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
文献3に記載の通電方式の時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
文献3に記載の通電方式の時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
文献4に記載の通電方式の時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
文献5に記載の通電方式の時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接装置を模式的に示す概略図である。
本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法における通電方式の時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法におけるパルセーション工程の通電方式のバリエーションの時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法におけるパルセーション工程の通電方式のバリエーションの時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法におけるパルセーション工程の通電方式のバリエーションの時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法におけるパルセーション工程の通電方式のバリエーションの時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法におけるパルセーション工程の通電方式のバリエーションの時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法におけるパルセーション工程の通電方式のバリエーションの時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法におけるパルセーション工程の通電方式のバリエーションの時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法におけるパルセーション工程の通電方式のバリエーションの時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法における連続通電工程の通電方式のバリエーションの時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法における連続通電工程の通電方式のバリエーションの時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法における連続通電工程の通電方式のバリエーションの時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法における連続通電工程の通電方式のバリエーションの時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法における連続通電工程の通電方式のバリエーションの時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法における連続通電工程の通電方式のバリエーションの時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。
本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法における連続通電工程の通電方式のバリエーションの時間と溶接電流の関係を模式的に示す説明図である。

0018

本発明の一実施形態に係る抵抗スポット溶接方法について説明する。なお、図9図10A図10H図11A図11Gにおいて、縦軸のIは溶接電流を、横軸のtは時間を表す。

0019

近年、自動車用材料面では、車体の軽量化および衝突安全性の向上を図るため、各種高張力鋼板の使用が拡大しつつある。また、ホットスタンプ(鋼板を焼き入れ可能な温度まで加熱しオーステナイト化した後、金型でプレス成形と同時に冷却し焼き入れする方法。)の適用が広がり引張強度が1200〜2000MPaとなる超高強度の多くのプレス成形部品が、ホットスタンプにより製造されている。

0020

ホットスタンプに用いる鋼板の表面は、非めっきの他に、高温に加熱した時に鉄スケールの発生を防止するため、亜鉛系めっきアルミニウム系めっきなどの表面処理が施されるものがある。なお、ホットスタンプされた鋼板は、多くの場合、平板ではなく成形加工された成形体であるが、本発明では、成形体である場合も含めて「ホットスタンプ鋼板」という。また、亜鉛系めっき鋼板アルミニウム系めっき鋼板をホットスタンプして得られるホットスタンプ鋼板を、以下の説明では「表面処理ホットスタンプ鋼板」という場合がある。

0021

ホットスタンプ鋼板をインバータ直流電源のスポット溶接機でスポット溶接すると、軟鋼板とは逆に、単相交流電源を用いた場合よりも低い電流値でチリが発生し、適正電流範囲が狭くなる現象が起きる。この現象は、例えばアルミめっきホットスタンプ鋼板のスポット溶接にて起きることが、文献(LAURENZ, et al:Schweissen Schneiden, 64-10(2012), 654-661.)(以下、「文献6」という場合がある)で報告されているが、抜本的な解決法については報告されていない。

0022

特に、表面処理ホットスタンプ鋼板は、インバータ直流電源のスポット溶接機でスポット溶接すると、中チリと共に表チリも出やすくなり、適正電流範囲が著しく狭くなる。このためチリを発生せずに得られる、ナゲット径も小さくなる。

0023

これらの原因は解明されていないが、中チリの発生については次のように考えられる。表面処理ホットスタンプ鋼板は、亜鉛系またはアルミニウム系のめっき皮膜基材の鋼との合金化反応によって、金属間化合物および鉄基固溶体がその表面に形成されており、さらにその外面にめっきに由来する金属(例えば、亜鉛系めっきであれば亜鉛を指す。)を主成分とする酸化皮膜を有している。そのため、表面処理ホットスタンプ鋼板はの鋼板と比べて、鋼板同士の接触部での抵抗が高く発熱量が大きい。

0024

一方、ホットスタンプ工程でめっきと鋼との合金化が進行し、表面近傍融点も鉄に近い高い値となっているので、加熱前のめっき皮膜を備える鋼板と比較して、鋼板同士の接触部が軟化しにくく通電パスの拡大が抑制される。特に、インバータ直流方式は連続的な電流の投入により単相交流に比べ発熱効率が高いため、通電初期のナゲットの形成が非常に急激となる。このためナゲットの周囲の圧接部の成長が追い付かず溶融金属閉じ込めることができなくなり中チリが発生するものと推定される。

0025

また、表チリの発生原因についても、上記の中チリの発生原因と同様であると考えられる。さらに、インバータ直流方式は連続的な電流の投入により単相交流のような電流休止時間がないため、電極による冷却効果が得られにくい。このため、ナゲットが板厚方向に成長しやすく、鋼板の最表層まで溶融部が達して、表チリが発生するものと推定される。

0026

表面処理ホットスタンプ鋼板は、上述のような表面状態にあることから、中チリおよび表チリが発生しやすいと考えられ、加圧力が低い場合、適正電流範囲が1kA未満となることも多い。しかしながら、表面処理ホットスタンプ鋼板を含む板組みの抵抗スポット溶接方法について、これまでほとんど検討されてこなかったのが現状である。

0027

この表面処理ホットスタンプ鋼板について、文献1〜5の方法を適用すると、以下の不都合があった。

0028

高張力鋼板の抵抗スポット溶接方法である文献1の方法は、表面処理ホットスタンプ鋼板に対して予備通電でチリを生じさせずに付与できる電流値が低いため、鋼板同士の界面における通電パスを広げ電流密度を下げることでチリの発生を抑制するという効果は十分ではない。このため、本通電で電流値を上げると中チリおよび表チリが発生するケースが認められ、十分な適正電流範囲を確保することは難しかった。

0029

文献2、3の方法は、文献1の方法と同様に、表面処理ホットスタンプ鋼板に対して予備通電にてチリ発生させずに付与できる電流値が低い。文献1に比べ、予備通電の上限値は上昇するが、本通電で電流値を上げると中チリが発生するケースが認められ、十分な適正電流範囲を確保することはまだ難しかった。

0030

文献4に記載の方法は、引張強度が980MPa級の鋼材までは適正電流範囲を広げる効果があるが、より高強度の表面処理ホットスタンプ鋼板では2、3回目の電流アップの時に中チリや表チリが発生しやすく、この通電パターンは表面処理ホットスタンプ鋼板の溶接には好適ではない。

0031

文献5に開示されている通電方式では、通電が最も短い場合でも6サイクル(120ミリ秒)である。表面処理ホットスタンプ鋼板では、6サイクルより短い通電時間で中チリが発生するため、この通電方式では上限電流を上昇させることができない。そこで、各パルスでの通電時間を短くすると、上限電流値が上昇するが、発熱効率低下により下限電流値も上昇し、結果として、適正電流範囲を広げることはできない。このため、この方法も適切ではない。

0032

これに対して、本実施形態の抵抗スポット溶接方法では、表面処理ホットスタンプ鋼板を含めた高張力鋼板に対して、インバータ直流電源を用いた場合にも広い適正電流範囲を確保したものである。

0033

先ず、本実施形態の抵抗スポット溶接方法で用いられる溶接機について説明する。

0034

図8に示すように、溶接機10は重ね合わされた鋼板12、14を加圧して溶接電流を流す電極16、18と、電極16、18に所定の加圧力を与える加圧機構20と、加圧機構20の加圧力を制御する加圧制御部22と、電極16、18に電流を付与する溶接電源24と、溶接電源24を制御して電極16、18に付与する電流値を制御する電流制御部26とを備える。

0035

本実施形態の抵抗スポット溶接方法が対象とする板組みは、少なくとも1枚が590MPa級以上の高張力鋼板を含む、2枚以上の鋼鈑を重ね合わせたものである。図8には、2枚の鋼板12、14が重ねられた板組みが示されているが、3枚以上でも良い。通常の自動車車体の組立てでは、2枚または3枚の鋼板を重ね合わせた板組みに対して抵抗スポット溶接が行われる。

0036

高張力鋼板の種類については、特に制限はなく、例えば、析出強化鋼、DP鋼、TRIP(加工誘起変態)鋼、ホットスタンプ鋼板等の、引張強度が590MPa以上の高張力鋼板に適用可能である。本実施形態の抵抗スポット溶接方法は、引張強度が980MPa以上の高張力鋼板を含む板組みに対して適用することが可能である。特に、引張強度が1200MPa以上の高張力鋼板を含む板組みに適用するのが好ましく、引張強度が1500MPa以上の高張力鋼板を含む板組みに適用するのがより好ましい。

0037

板組みに含まれる鋼板は、冷延鋼板でも良く、または熱延鋼板でも良い。また、鋼板は裸鋼板でもめっき鋼板でも良く、めっきの種類にも特に制限はない。本実施形態の抵抗スポット溶接方法は様々な高張力鋼板に適用可能であるが、表面処理ホットスタンプ鋼板に特に好適である。

0038

高張力鋼板の板厚について、特に制限はない。例えば、自動車用部品または車体で使用される鋼板の板厚は0.6〜3.2mmであり、本実施形態に係る抵抗スポット溶接は、この範囲において十分に適用可能である。

0039

溶接機10は、インバータ直流方式の溶接電源24を有するスポット溶接機である。ホットスタンプ鋼板等の高張力鋼板を含む板組みの溶接を行う場合、インバータ直流方式の溶接電源24では、単相交流方式の溶接電源と比較して低い電流値で中チリおよび表チリが発生しやすくなる。本実施形態の抵抗スポット溶接方法は、このようなインバータ直流式のスポット溶接電源を用いる溶接機10に適用するものである。

0040

溶接機10の電極16、18に対する加圧機構20は、サーボモータによる加圧でもエアーによる加圧でもどちらでも良い。また、ガンの形状は定置式C型、X型のいずれを用いても良い。溶接時の加圧力について、特に制限はないが、加圧制御部22の制御により200〜600kgfとするのが望ましい。スポット溶接中、一定の加圧力であっても良いし、後述する各工程で加圧力を変化させても良い。

0041

電極16、18についても、特に制限はないが、例えば、先端径6〜8mmのDR(ドームラジアス型電極が挙げられる。最も代表的な例として、先端径6mm 先端R40mmのDR型電極がある。電極材質としては、クロム銅またはアルミナ分散銅のどちらでも良いが、溶着および表チリを防止する観点ではアルミナ分散銅の方が望ましい。

0042

次に、このような溶接機10を用いて行う抵抗スポット溶接方法について説明する。

0043

加圧制御部22によって制御された電極16、18が鋼板12と鋼板14を重ねた板組みを所定の加圧力で挟持すると共に、電流制御部26で制御された通電方式により溶接電源24から電極16、18を介して鋼板12、14に溶接通電を行う。

0044

通電方式は、図9に示すように、先ず、電流値I0で通電時間がt0のパルス波形の通電を三回行う(図9、パルスP1〜P3参照)。この際、各パルス間の通電しない休止時間はt1で一定である。また、パルセーション工程の最後のパルスP3の後の通電しない休止時間(以下、「最後の休止時間」という場合がある)t2経過後、後述する連続通電工程が行われる。

0045

なお、最初のパルスP1の立ち上がりから、最後の休止時間t2の終了時までをパルセーション工程とする。

0046

また、本実施形態の「パルス」には、後述するバリエーションの例(図10D図10E参照)で示すスロープを有するものや鋸波形状のものを含む。

0047

パルセーション工程の最後のパルスP3の通電が終了した後、最後の休止時間t2が経過すると、パルスP1〜P3の電流値I0よりも低い電流値I1で、各パルスP1〜P3の(最大)通電時間t0よりも長い通電時間t3にわたって、電極16、18から鋼板12、14間に連続的に通電され、鋼板12、14の界面に所定のナゲット28が形成される。

0048

なお、本実施形態のパルセーション工程におけるパルスP1〜P3は、本発明の「パルセーション工程の通電」に相当する。また、本実施形態のパルセーション工程における休止時間t1の範囲及び最後の休止時間t2の範囲は、いずれも本発明の「パルセーション工程の通電休止」に相当する。さらに、本実施形態のパルスP1、P2間及びP2、P3間の休止時間t1の範囲が本発明の隣接する通電間の「通電休止」に相当し、本実施形態の最後の休止時間t2の範囲が本発明の「最後の通電休止」に相当する。

0049

また、本実施形態のように、本発明のパルセーション工程の後には連続通電工程が行われるが、連続通電工程の前には必ずパルセーション工程の最後の通電休止が位置することになる。

0050

このような通電方式で抵抗スポット溶接を行うことにより、以下のような効果が得られる。

0051

パルセーション工程においては、材料の種類、板厚、板組みによって、通電時間、休止時間およびパルス数を調整する。本実施形態の抵抗スポット溶接方法では、まずパルセーション工程を設けることによって、短時間で鋼板の接触面同士のなじみを向上させることができる。

0052

特に、酸化亜鉛等の電気抵抗が高い皮膜で覆われた表面処理ホットスタンプ鋼板の場合、通電と通電休止とが繰り返されることにより、熱膨張収縮による振動を接触面に与えることができるため、高融点の酸化物層を効果的に溶接部の外側に排除することができる。また、パルセーション通電では通電および休止が繰り返されることにより、電極の冷却効果を十分に働かすことができ、ナゲット28の急激な温度上昇を抑制できるため、中チリ、表チリの発生を抑制しつつ、短時間で鋼板12、14の接触面同士のなじみを向上させる効果を得ることができる。

0053

パルセーション工程における各パルスP1〜P3の通電時間t0は、10〜60ミリ秒であることが望ましい。通電時間t0が10ミリ秒未満では、加熱時間が短く鋼板12、14の接触面の発熱が十分ではなく、60ミリ秒を越えると、加熱時間が長過ぎて表チリおよび中チリの発生率が高まるおそれがある。通電時間t0は15ミリ秒以上であるのがより望ましい。また、通電時間t0は45ミリ秒以下であるのがより望ましく、25ミリ秒以下であるのがさらに望ましい。

0054

パルセーション工程における溶接電流の電流値I0は、7.0〜14.0kAであることが望ましい。通常、パルセーションでの通電時間が増加すると、低い電流値でチリが発生するようになるため、パルセーション通電では、通電時間との兼ね合いから、7.0〜14.0kAの範囲でチリがでないように電流値を適宜調整するのが望ましい。

0055

パルセーション工程における休止時間t1は、最後の休止時間t2を除いて、それぞれ10〜60ミリ秒であることが望ましい。休止時間t1が10ミリ秒未満では、休止が短く鋼板12、14の冷却が不十分であり中チリおよび表チリが発生するおそれがある。一方、休止時間t1が60ミリ秒を越えると、電極16、18による冷却効果が大きくなり過ぎ、後述の連続通電工程でのナゲット28の形成量が低下するおそれがある。休止時間t1は15ミリ秒以上であるのがより望ましい。また、休止時間t1は45ミリ秒以下であるのがより望ましく、25ミリ秒以下であるのがさらに望ましい。

0056

パルセーション工程における最後の休止時間t2は、10〜120ミリ秒であることが望ましい。最後の休止時間t2が10ミリ秒未満では、ナゲット28の冷却が不十分であり、連続通電工程時に低い電流値でもチリが発生するようになる。一方、最後の休止時間t2が120ミリ秒を越えると、ナゲット28が過度に冷却され、連続通電工程において、所定の継手強度を有する基準ナゲット径を得るための電流値が上昇し、適正電流範囲が狭くなる。最後の休止時間t2は15ミリ秒以上であるのがより望ましい。また、最後の休止時間t2は100ミリ秒以下であるのがより望ましく、60ミリ秒間以下であるのがさらに望ましい。

0057

このように、予備通電としてパルセーション工程を設けることによって、電極16、18の冷却効果を挟みつつ通電を繰り返すことができる。したがって、鋼板12、14の接触面における急激なナゲット28の成長によるチリの発生を抑制しつつ、高張力鋼板と他の鋼板のなじみを増進させ、鋼板同士の界面における電流パスの増大を図ることができる。

0058

したがって、パルセーション工程の後に連続通電工程を入れることによって、パルセーション工程の各パルスP1〜P3の(最大)通電時間t1よりも長い時間連続通電しても、鋼板12、14間の電流パスの増大によって電流密度が下がり、鋼板同士の接触部の温度の上昇が抑制されることによりチリの発生が抑制される。すなわち、チリが発生する電流値が高くなる。

0059

また、パルセーション工程でナゲット28の成長が開始された後、連続通電工程においてパルセーション工程の各パルスの通電時間t1よりも長い通電時間t3通電することにより、一回通電(図1参照)よりも低い電流値でナゲット28が所定の基準ナゲット径まで成長する。

0060

この結果、本実施形態の抵抗スポット溶接方法では、連続通電工程における適正電流範囲が増加することになる。

0061

ここで、適正電流範囲とは、所定の溶接強度が得られる基準とされるナゲット径が4t1/2(tは板厚(mm)を示す。以下、「4√t」と記載する場合がある。)となる電流値を下限とし、チリ(スパッタ)が発生しない最大電流値を上限として規定される範囲である。また、板厚tとは、ナゲットが形成される2枚の鋼板のうちの1枚の鋼板の厚さ(mm)である。2枚の鋼板の厚さが異なる場合には、薄い方の鋼板の厚さである。さらに、3枚以上の鋼板が重ね合わせられた場合には、ナゲット径が計測される2枚の鋼板のうち、薄い方の鋼板の厚さである。

0062

したがって、本実施形態に係る抵抗スポット溶接方法を用いれば、チリが発生しやすい表面処理ホットスタンプ鋼板等を含む鋼板であっても、安定した抵抗スポット溶接を行うことが可能になる。

0063

また本実施形態に係る抵抗スポット溶接方法によれば、チリ発生を抑制することで製品外観品質を向上させることができる。また、溶接ロボットの可動部へのチリの付着を防止できるためロボットの稼働率を向上させることができる。また、チリ発生に伴うバリ取りなどの後工程を省略できるため、作業能率の向上を図ることもできる。

0064

パルセーション工程におけるパルス(通電)の回数は少なくとも2回以上である。表面処理ホットスタンプ鋼板の場合、2回以上のパルスがないとチリの発生を抑制する効果が得られないためである。パルス回数は3回以上とすることがより好ましい。一般には板組みの総板厚が大きいほど、パルス回数を増やせば良いが、9回を越えてパルスを行っても効果が飽和する傾向があるため、パルス回数は9回以下とするのが好ましい。

0065

チリが発生しやすい表面処理ホットスタンプ鋼板に適用する場合、パルセーション工程としては、例えば、16.6(60Hzで1サイクル)〜20ミリ秒(50Hzで1サイクル)で7.5〜12kAの通電と休止とを3回〜7回繰り返すのが望ましい。

0066

本実施形態の抵抗スポット溶接方法は、パルセーション工程後に連続通電工程を備える。パルセーション工程だけでは、通電パスを拡大できてもナゲット径を拡大する効果は小さいが、パルセーション工程後に連続通電工程を設けることにより鋼板12、14の界面の発熱を促進し、中チリ、表チリを発生させることなく、十分な大きさのナゲット28を形成することができる。

0067

連続通電工程では、通電時間t3が100〜500ミリ秒の連続的な通電を行うのが望ましい。連続通電工程における通電時間t3が100ミリ秒未満では、ナゲット28を拡大するための時間が不十分で効果が得られず、500ミリ秒を越えるとナゲット28を拡大する効果が飽和するとともに、タクトタイムの上昇を招くためである。連続通電工程における通電時間t3は、120ミリ秒以上であるのがより望ましく、400ミリ秒以下であるのがより望ましい。

0068

連続通電工程における電流値I1は、5.0〜12.0kAであることが望ましい。また、連続通電工程の電流値I1は、パルセーション工程での最大電流値I0以下とするのが望ましい。連続通電工程の電流値I1を、パルセーション工程の最大電流値I0より下げることで、チリの発生を抑制するためである。連続溶接工程では、電流値は必ずしも一定でなくても良く、途中で電流値を変化させても良いし、16ミリ秒〜60ミリ秒のアップスロープまたはダウンスロープを入れても良い。

0069

ホットスタンプ鋼板等の高張力鋼板を対象とする場合、冷却過程を制御してナゲット28の靭性を向上させることを目的として、連続通電工程後に、さらに1回の通電またはパルス通電を行っても良い(図11F図11G参照)。連続通電工程後にさらなる通電を行うことによって、ナゲット28内のリン凝固偏析緩和したり、ナゲット28を焼き戻しマルテンサイト組織にしたりすることでナゲット28の靭性を向上させ、スポット溶接継手強度を向上できるメリットが得られる。

0070

本実施形態に係る抵抗スポット溶接方法は、上記のパルセーション工程および連続通電工程が終わった後、電流を流さずに電極16、18で押圧する保持工程をさらに備えても良い。保持工程を設けることでナゲット28内の凝固割れを抑制することができる。保持工程を設ける場合の保持時間については特に制限はないが、保持時間が長すぎるとタクトタイムの増加につながるため、300ミリ秒以下とすることが望ましい。

0071

なお、パルセーション工程における各パルスP1〜P3の電流値I0、通電時間t0および休止時間t1は一定であっても良いし、各パルスで変化させても良い。

0072

すなわち、2枚組みの鋼板に対して抵抗スポット溶接を行う場合には、本実施形態のようにパルセーション工程における各パルスの通電時間や各パルス間の通電休止時間を一定とし、各パルスの電流値も一定するものに限定されるわけではない。

0073

例えば、図10Aに示すように、最初のパルスP1から後のパルスP2、P3に向かって電流値を上げていく制御を行っても良い。また、図10Dに示すように、最初のパルスP1の立ち上げ部分にスロープを有するものとしても良い。さらに、図10Eに示すように、各パルスP1〜P3の立ち上げ側がスロープとされた鋸波状でも良い。さらにまた、図10Gに示すように、最初のパルスP1と二回目のパルスP2との間の最初の休止時間t11のみ他の休止時間t12よりも長く取るようにして最初のパルスP1に対する電極の冷却効果を他のパルスP2と比較して大きくしても良い。

0074

パルセーション工程においてこのような通電方式を採用することにより、パルセーション工程におけるナゲット28の急成長(当該部分の温度急上昇)を抑制し、中チリ、表チリの発生を抑制することができる。

0075

また、例えば、図10Hに示すように、最後の休止時間(最後のパルスP3と連続通電工程との間の通電休止時間)t2を他の例(図10A図10G参照)と比較して短くすることも考えられる。このように最後の休止時間t2を短くすることによって、電極16、18による鋼板12、14の過度の冷却を抑制して連続通電時に鋼板に付与する電気エネルギ(例えば、通電時間、電流値)を抑制することができる。

0076

さらに、2枚の厚板の外側に薄板が重ねられた3枚組みの鋼板に対して抵抗スポット溶接を行う場合には、次のようなパルセーション工程の通電方式のバリエーションが考えられる。

0077

例えば、図10Bに示すように、最初のパルスP1から最後のパルスP3に向かって電流値を下げていく制御を行っても良い。また、図10Cのように、最初のパルスP1のみ、他のパルスP2、P3よりも高い電流値の通電をしても良い。さらに、図10Fに示すように、最初のパルスP1のみ、他のパルスP2、P3よりも通電時間を長くして良い。

0078

このように、3枚組み鋼板に対して最初のパルスP1によって付与される電気エネルギが他のパルスP2、P3によって付与される電気エネルギよりも高いため、薄板と厚板の接触抵抗が高い時点で高い電気エネルギを付与することにより、薄板と厚板を高温として両者の間にナゲットを成長させることができる。

0079

同様に、本実施形態の抵抗スポット溶接方法の連続通電工程の通電方式のバリエーションについて図11A図11Gを参照して説明する。

0080

例えば、図11Aに示すように、連続通電工程の電流波形の立ち上がりをスロープとすること、あるいは図11Eに示すように、連続通電工程の前半の電流値を後半の電流値よりも低い電流値とすることで、連続通電開始時のナゲット28の急激な温度上昇を抑制して中チリ、表チリの発生を抑制することができる。

0081

また、図11Bに示すように、連続通電工程の電流波形の立ち下がりをスロープとするものや、図11Cに示すように、連続通電工程の後半の電流値を前半の電流値よりも低くするものがある。このようにすることで、溶接後の冷却を緩やかにして溶接部の金属組織の特性を変えることで、溶接継手の強度を向上させることができる。

0082

さらに、例えば、図11F図11Gに示すように、連続通電工程の後に、一回の通電あるいはパルス通電を行うものである。これにより、溶接部の金属組織を改善し、溶接継手の強度を向上させるものである。

0083

さらにまた、図11Dに示すように、薄板、厚板、厚板の3枚重ねの板組みに対して連続通電工程の最初に高い電流値の通電を行うことで、薄板と厚板間のナゲット成長を促進するものである。

0084

以下、実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

0085

[実施例1]

0086

本実施例で用いられた溶接機は、サーボ加圧式のインバータ直流スポット溶接機であり、先端径6mm、先端R40mmのDR型電極(アルミナ分散銅)を備える。被溶接材は、板厚1.2mm、サイズ30mm×100mmの1500MPa級アルミめっきホットスタンプ鋼板(ホットスタンプ前のめっき付着量は、片側あたり40g/m2。加熱条件は、900℃のガス炉内で4分間加熱。)を2枚重ね合わせたものである。

0087

溶接方法について、表1に示す。なお、試験番号6、7は連続通電工程の前に予備通電があるが、予備通電と連続通電工程との間に休止時間のない2段通電を行ったものである。また、試験番号8は、予備通電と連続通電工程の間に通電の休止時間(34msec)があったものである。なお、本発明例及び比較例とも、加圧力は、パルセーション工程又は予備通電、および連続通電工程で一定値(300kgf)とした。

0088

試験について、パルセーション工程又は予備通電の条件を一定にしたまま、連続通電工程の電流値を変化させてスポット溶接を行うことにより、溶接継手の強度の基準とされるナゲット径が4√t(t:板厚mm)=4.3mm以上となる最小電流(4√t電流)値と、チリ(中チリと表チリ)が発生しない最大電流(チリレス最大電流)値を求めた。この4√t電流値以上でチリレス最大電流値以下の範囲、すなわち、溶接継手に所定の強度を与えるナゲットを形成しつつ、チリを発生させない連続通電工程の電流値の範囲を適正電流範囲とした。試験結果を表1に示す。

0089

なお、ナゲット径は、スポット溶接後、タガネ破壊試験を行い、破面ノギスで測定して求めた。またチリの発生の有無は、スポット溶接時に目視で確認した。

0090

0091

表1に示すように、予備通電のないもの、あるいは予備通電はあるが予備通電と連続通電の間に通電の休止時間がない比較例の試験番号5〜7と比較して、パルセーション工程を有する本発明例の試験番号1〜4の適正電流範囲が3倍以上広くなっている。また、予備通電と連続通電工程の間に休止時間がある比較例の試験番号8と比較しても、パルセーション工程を有する(通電と休止を複数回繰り返す)本発明例の試験番号1〜4は適正電流範囲が2倍以上広いことが確認された。

0092

[実施例2]

0093

本実施例で用いられた溶接機は、実施例1と同一である。被溶接材は、板厚0.7mm、サイズ30mm×100mmの270MPa級GAめっき鋼板と、板厚1.2mmの1500MPa級のGAめっきホットスタンプ鋼板(ホットスタンプ前のめっき付着量は、片側あたり55g/m2。加熱条件は実施例1と同様。)と、板厚1.4mmの440MPa級非めっき鋼板との3枚を重ね合わせたものである。溶接方法について、表2に示す。なお、比較例の通電方式は、実施例1と同様である。また、本発明例及び比較例とも、加圧力は、パルセーション工程又は予備通電、および連続通電工程で一定値(300kgf)とした。

0094

試験及び試験結果の評価については、実施例1と同様に行った。

0095

なお、4√t電流値については、3枚の板の板厚が異なるため、以下のように判定している。すなわち、鋼板同士それぞれの界面のナゲット径が、それぞれ4√t(t:重ね面の薄板側の板厚mm)を満たしている最小の電流値を4√t電流値とする。具体的には、板厚0.7mmの鋼板と板厚1.2mmの鋼板の間の界面のナゲットについては、ナゲット径が4×(0.7)1/2=3.4mmであれば4√tとし、板厚1.2mmの鋼板と板厚1.4mmの鋼板の間の界面のナゲットについては、ナゲット径が4×(1.2)1/2=4.4mm )以上であれば、4√tとする。したがって、双方の界面のナゲット径がそれぞれ4√t以上となる最小の電流値を4√t電流値とする。

0096

試験結果を表2に示す。

0097

0098

表2に示すように、被溶接材がホットスタンプ材を含む3枚重ねでも、実施例1と同様に、予備通電のないもの、予備通電はあるが予備通電と連続通電の間に休止時間のないもの、予備通電と連続通電の間に休止時間のある比較例の試験番号4〜6と比較して、パルセーション工程を有する本発明の試験番号1〜3の適正電流範囲が3倍近く広く(2.0kA以上に)なっていることが確認された。

0099

[実施例3]

0100

本実施例で用いられた溶接機は、エアー加圧式のインバータ直流スポット溶接機であり、先端径6mm、先端R40mmのDR型電極(アルミナ分散銅)を備える。被溶接材は、板厚1.6mm、サイズ30mm×100mmの1500MPa級の炉加熱したZnO皮膜処理Alめっきホットスタンプ鋼板2枚を重ね合わせたものである。溶接方法について、表3に示す。なお、比較例の通電方式は、実施例1と同様である。また、本発明例及び比較例とも加圧力は、パルセーション工程又は予備通電、および連続通電工程で一定値(350kgf)とした。

0101

試験及び試験結果の評価については、実施例1と同様に行った。

0102

試験結果について表3に示す。

0103

0104

なお、本実施例で使用した、ZnO皮膜処理Alめっきホットスタンプ鋼板は下記の方法で作成した。

0105

板厚1.6mmの冷延鋼板を使用して、ゼンジマー法でAlめっきした。このときの焼鈍温度は約800℃であり、Alめっき浴はSi:9%を含有し、他に鋼帯から溶出するFeを含有していた。その後、めっき付着量をガスワイピング法で片面あたり40g/m2に調整した。Alめっき層表面粗度を調整するために、めっき後の冷却時に水をスプレー状噴霧した。Alめっき鋼板を冷却後、処理液ロールコーターで塗布し、約80℃で焼き付けた。処理液は、シーアイ化成株式会社製NanoTek(登録商標) SlurryのZnO Slurryをベースとし、バインダーとして水溶性ウレタン樹脂固形分中最大30%、着色のためにカーボンブラックを固形分中最大10%添加した。付着量はZn含有量として測定し、0.8g/m2とした。このようにして製造した鋼板を、大気雰囲気下において900℃で5分炉加熱した後、水冷金型で焼き入れし、供試材とした。

0106

表3に示すように、被溶接材がZnO皮膜処理Alめっきホットスタンプ鋼板の2枚重ねでも、実施例1と同様に、予備通電のないもの、予備通電はあるが予備通電と連続通電の間に休止時間のないもの、予備通電と連続通電の間に休止時間のある比較例の試験番号5〜8と比較して、パルセーション工程を有する本発明の試験番号1〜4では連続通電工程における電流値上限(チリレス最大電流値)を上昇させることができ、適正電流範囲が広く(1.5kA以上に)なっていることが確認された。

0107

2013年7月11日に出願された日本国特許出願2013−145380号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。

実施例

0108

本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

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