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課題・解決手段
本発明の目的は、保管時はスクワランを含む油分含有層と水層が分離して存在する二層分離型点眼液において、点眼前に振盪することにより、泡立ちを抑制しつつ、該油分含有層が該水層に均一に分散でき、少なくとも点眼時まではその均一な分散状態を安定に維持させる製剤技術を提供することである。 スクワランと水を含む二層分離型点眼液において、ヒアルロン酸及び/又はその塩とポリビニルアルコールを含有させ、且つポリビニルアルコールの含有量を0.025〜0.1w/v%に設定することにより、点眼前に振盪することにより、泡立ちを抑制しつつ、該油分含有層が該水層に均一に分散でき、少なくとも点眼時まではその均一な分散状態を安定に維持できる。
概要
背景
現代社会では、コンタクトレンズの装用、テクノストレス、アレルギーとの接触、大気汚染等によって角膜や結膜が受けるストレスが増大しており、これに伴ってドライアイを罹患する人が増加傾向にある。ドライアイに罹患すると、角膜や結膜の正常な機能が低下し、角膜上皮障害、角膜上皮糜爛、角膜潰瘍、結膜炎、角膜炎、眼感染症等を引き起こし易くなる。
従来、ドライアイ、又は角膜や結膜の機能低下を伴う眼疾患の予防又は治療には、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等の粘弾性物質を含む点眼剤の点眼によって角膜や結膜を保護して保水性を付与する方法が知られている。しかしながら、粘弾性物質を含む点眼剤では、角膜や結膜に対する保護作用が不十分で、十分な治療効果が得られないことがあり、新たな点眼剤の開発が望まれていた。
一方、近年、スクワランを含む点眼液が、ドライアイ等の眼疾患に有効であることが報告されている。例えば、スクワランを含む点眼剤は、水分蒸発抑制作用があり、ドライアイの治療に有効であること(特許文献1参照)、スクワラン等の油分とムコ多糖とを含有する点眼剤は、涙液の蒸発亢進に伴うドライアイの予防又は改善に有効であること(特許文献2参照)、スクワランとビタミンEを含有する点眼剤が炎症性眼疾患の治療に有効であること(特許文献3参照)等が報告されている。
このように、スクワランには、角膜や結膜を保護する作用があり、スクワランを含む点眼剤は、ドライアイの他、角膜や結膜の機能低下を伴う眼疾患の予防又は治療に有効であると考えられており、その実用化が望まれている。一方、スクワランは油分であり、水との相溶しないため、スクワランを含む点眼剤は、通常、非水性製剤、眼軟膏、又は乳化製剤として処方設計される。しかしながら、非水性製剤や眼軟膏では、適用時に痛み、視界の曇り、べとつき等が生じやすく、継続的な使用が困難になるという欠点がある。また、スクワランを含む乳化製剤では、スクワランを乳化するために相当量の界面活性剤の添加が必要となり、これが点眼時に刺激を生じさせたり、副作用を誘発したりするという欠点がある。更に、スクワランを含む乳化製剤では、工業的製造において、スクワランを含む油層を水層中で均質化するために、大掛かりな乳化装置が必要になるという欠点もある。
一方、特許文献1には、スクワランを含む油層と、水層とが二層に分離した状態で存在し、点眼前に振盪して該油層を水層中に分散させる二層分離型点眼液についても報告されている。このような二層分離型点眼液は、使用時には、スクワランを含む油層が水層中に分散されるため、非水性製剤や眼軟膏のような使用感の低下が無く、しかも乳化製剤のように、多量の界面活性剤を配合したり、製造において大掛かりな乳化装置が必要とされることもないという利点がある。しかしながら、スクワランを含む二層分離型点眼液では、点眼前に振盪した際に、泡立ちが生じたり、振盪だけでは油層が水層中に均一に分散し難いことがある。更に、スクワランを含む二層分離型点眼液では、点眼前の振盪によって油層が水層中に一旦分散しても、直ぐに油層と水層が分離し、点眼時にはスクワラン等の有効成分が点眼液中で不均一な濃度分布になってしまうことがある。このように泡立ちが生じた状態や、分散が不均一な状態では、スクワラン等の有効成分が点眼液全体で均一な濃度にならず、ひいては、有効成分の投与量のバラツキを招き、所期の予防又は治療効果を達成できなくなることが懸念される。このような問題点は、従来技術では克服できておらず、スクワランを含む二層分離型の点眼剤の実用化の障壁となっている。
概要
本発明の目的は、保管時はスクワランを含む油分含有層と水層が分離して存在する二層分離型点眼液において、点眼前に振盪することにより、泡立ちを抑制しつつ、該油分含有層が該水層に均一に分散でき、少なくとも点眼時まではその均一な分散状態を安定に維持させる製剤技術を提供することである。 スクワランと水を含む二層分離型点眼液において、ヒアルロン酸及び/又はその塩とポリビニルアルコールを含有させ、且つポリビニルアルコールの含有量を0.025〜0.1w/v%に設定することにより、点眼前に振盪することにより、泡立ちを抑制しつつ、該油分含有層が該水層に均一に分散でき、少なくとも点眼時まではその均一な分散状態を安定に維持できる。
目的
しかしながら、粘弾性物質を含む点眼剤では、角膜や結膜に対する保護作用が不十分で、十分な治療効果が得られないことがあり、新たな点眼剤の開発が望まれていた
効果
実績
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請求項1
油分含有層と、水層とを含む二層分離型点眼液であって、油分含有層が、スクワランを含み、水層が、ヒアルロン酸及び/又はその塩、並びにポリビニルアルコールを含み、且つ点眼液中のポリビニルアルコールの含有量が0.025〜0.1w/v%である、二層分離型点眼液。
請求項2
ヒアルロン酸及び/又はその塩の含有量が0.1〜0.5w/v%である、請求項1に記載の二層分離型点眼液。
請求項3
スクワランの含有量が1〜10w/v%である、請求項1又は2に記載の二層分離型点眼液。
請求項4
非ヒト哺乳動物用である、請求項1〜3のいずれかに記載の二層分離型点眼液。
請求項5
請求項6
請求項7
角膜を保護するために使用される、請求項1〜5のいずれかに記載の二層分離型点眼液。
請求項8
請求項1〜5に記載の二層分離型点眼液の、ドライアイ治療剤の製造のための使用。
請求項9
請求項1〜5に記載の二層分離型点眼液の、角膜保護剤の製造のための使用。
請求項10
請求項11
請求項1〜5に記載の二層分離型点眼液を、角膜保護が必要とされている哺乳動物の眼に点眼する工程を含む、角膜の保護方法。
技術分野
0001
本発明は、スクワランを含む二層分離型点眼液に関する。より詳細には、本発明は、保管時はスクワランを含む油分含有層と水層が分離して存在しており、点眼前に振盪することにより、泡立ちを抑制しつつ、該油分含有層が該水層に均一に分散でき、少なくとも点眼時まではその均一な分散状態を安定に維持できる二層分離型点眼液に関する。
背景技術
0002
現代社会では、コンタクトレンズの装用、テクノストレス、アレルギーとの接触、大気汚染等によって角膜や結膜が受けるストレスが増大しており、これに伴ってドライアイを罹患する人が増加傾向にある。ドライアイに罹患すると、角膜や結膜の正常な機能が低下し、角膜上皮障害、角膜上皮糜爛、角膜潰瘍、結膜炎、角膜炎、眼感染症等を引き起こし易くなる。
0003
従来、ドライアイ、又は角膜や結膜の機能低下を伴う眼疾患の予防又は治療には、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等の粘弾性物質を含む点眼剤の点眼によって角膜や結膜を保護して保水性を付与する方法が知られている。しかしながら、粘弾性物質を含む点眼剤では、角膜や結膜に対する保護作用が不十分で、十分な治療効果が得られないことがあり、新たな点眼剤の開発が望まれていた。
0004
一方、近年、スクワランを含む点眼液が、ドライアイ等の眼疾患に有効であることが報告されている。例えば、スクワランを含む点眼剤は、水分蒸発抑制作用があり、ドライアイの治療に有効であること(特許文献1参照)、スクワラン等の油分とムコ多糖とを含有する点眼剤は、涙液の蒸発亢進に伴うドライアイの予防又は改善に有効であること(特許文献2参照)、スクワランとビタミンEを含有する点眼剤が炎症性眼疾患の治療に有効であること(特許文献3参照)等が報告されている。
0005
このように、スクワランには、角膜や結膜を保護する作用があり、スクワランを含む点眼剤は、ドライアイの他、角膜や結膜の機能低下を伴う眼疾患の予防又は治療に有効であると考えられており、その実用化が望まれている。一方、スクワランは油分であり、水との相溶しないため、スクワランを含む点眼剤は、通常、非水性製剤、眼軟膏、又は乳化製剤として処方設計される。しかしながら、非水性製剤や眼軟膏では、適用時に痛み、視界の曇り、べとつき等が生じやすく、継続的な使用が困難になるという欠点がある。また、スクワランを含む乳化製剤では、スクワランを乳化するために相当量の界面活性剤の添加が必要となり、これが点眼時に刺激を生じさせたり、副作用を誘発したりするという欠点がある。更に、スクワランを含む乳化製剤では、工業的製造において、スクワランを含む油層を水層中で均質化するために、大掛かりな乳化装置が必要になるという欠点もある。
0006
一方、特許文献1には、スクワランを含む油層と、水層とが二層に分離した状態で存在し、点眼前に振盪して該油層を水層中に分散させる二層分離型点眼液についても報告されている。このような二層分離型点眼液は、使用時には、スクワランを含む油層が水層中に分散されるため、非水性製剤や眼軟膏のような使用感の低下が無く、しかも乳化製剤のように、多量の界面活性剤を配合したり、製造において大掛かりな乳化装置が必要とされることもないという利点がある。しかしながら、スクワランを含む二層分離型点眼液では、点眼前に振盪した際に、泡立ちが生じたり、振盪だけでは油層が水層中に均一に分散し難いことがある。更に、スクワランを含む二層分離型点眼液では、点眼前の振盪によって油層が水層中に一旦分散しても、直ぐに油層と水層が分離し、点眼時にはスクワラン等の有効成分が点眼液中で不均一な濃度分布になってしまうことがある。このように泡立ちが生じた状態や、分散が不均一な状態では、スクワラン等の有効成分が点眼液全体で均一な濃度にならず、ひいては、有効成分の投与量のバラツキを招き、所期の予防又は治療効果を達成できなくなることが懸念される。このような問題点は、従来技術では克服できておらず、スクワランを含む二層分離型の点眼剤の実用化の障壁となっている。
先行技術
発明が解決しようとする課題
0008
本発明は、保管時はスクワランを含む油分含有層と水層が分離して存在する二層分離型点眼液において、点眼前に振盪することにより、泡立ちを抑制しつつ、該油分含有層が該水層に均一に分散でき、少なくとも点眼時まではその均一な分散状態を安定に維持させる製剤技術を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0009
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、スクワランと水を含む二層分離型点眼液において、ヒアルロン酸及び/又はその塩とポリビニルアルコールを含有させ、且つポリビニルアルコールの含有量を0.025〜0.1w/v%に設定することにより、点眼前に振盪することにより、泡立ちを抑制しつつ、該油分含有層が該水層に均一に分散でき、少なくとも点眼時まではその均一な分散状態を安定に維持できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
0010
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の二層分離型点眼液を提供する。
項1.油分含有層と、水層とを含む二層分離型点眼液であって、
油分含有層が、スクワランを含み、
水層が、ヒアルロン酸及び/又はその塩、並びにポリビニルアルコールを含み、且つ点眼液中のポリビニルアルコールの含有量が0.025〜0.1w/v%である、二層分離型点眼液。
項2. ヒアルロン酸及び/又はその塩の含有量が0.1〜0.5w/v%である、項1に記載の二層分離型点眼液。
項3. スクワランの含有量が1〜10w/v%である、項1又は2に記載の二層分離型点眼液。
項4.非ヒト哺乳動物用である、項1〜3のいずれかに記載の二層分離型点眼液。
項5. スクワラン100重量部当たり、ポリビニルアルコールが0.2〜10重量部の比率で含まれる、項1〜4のいずれかに記載の二層分離型点眼液。
項6.ドライアイの治療に使用される、項1〜5のいずれかに記載の二層分離型点眼液。
項7.角膜を保護するために使用される、項1〜5のいずれかに記載の二層分離型点眼液。
項8. 項1〜5に記載の二層分離型点眼液の、ドライアイ治療剤の製造のための使用。
項9. 項1〜5に記載の二層分離型点眼液の、角膜保護剤の製造のための使用。
項10. 項1〜5に記載の二層分離型点眼液を、ドライアイに罹患している哺乳動物の眼に点眼する工程を含む、ドライアイの治療方法。
項11. 項1〜5に記載の二層分離型点眼液を、角膜保護が必要とされている哺乳動物の眼に点眼する工程を含む、角膜の保護方法。
発明の効果
0011
本発明の二層分離型点眼液によれば、保管時はスクワランを含む油分含有層と水層が分離して存在させ、点眼前に振り混ぜて振盪することにより、泡立ちを抑制しつつ、該油分含有層を該水層に均一に分散させることができる。更に、本発明の二層分離型点眼液によれば、点眼前に一旦振盪すれば、前記油分含有層が前記水層に均一に分散した状態を安定に維持できるので、少なくとも点眼時までは、スクワランの均一な分散状態を維持できる。しかも、本発明の二層分離型点眼液は、製造時には均質化工程も必要とせず、製造が簡便になるため、非水性製剤、眼軟膏、及び乳化製剤の欠点を克服することが可能である。
0012
また、本発明の二層分離型点眼液は、優れた水分蒸発抑制効果を有し、角膜や結膜を保護する作用に優れているので、ドライアイの他、角膜や結膜の機能低下を伴う眼疾患の予防又は治療に有効である。
0013
本発明の二層分離型点眼液は、油分含有層と水層とを含む二層分離型点眼液であって、油分含有層がスクワランを含み、水層がヒアルロン酸及び/又はその塩、並びにポリビニルアルコールを含み、且つ点眼液中のポリビニルアルコールの含有量が0.025〜0.1w/v%であることを特徴とする。ここで、二層分離型点眼液とは保管時は油分含有層と水層が分離して存在し、点眼前に振り混ぜて振盪することにより、該油分含有層を該水層に分散させて使用される点眼液を指す。以下、本発明の二層分離型点眼液について詳述する。
0014
含有成分
本発明の二層分離型点眼液はスクワランを含有する。スクワランとは、2,6,10,15,19,23−ヘキサメチルテトラコサンとも称される油脂である。本発明に使用されるスクワランは、天然由来のスクワレンを還元して得られた半合成品であってもよく、また化学合成によって得られた合成品であってもよい。半合成品のスクワランは、サメ類等の深海産の魚類や、オリーブ油、コメヌカ油、小麦麦芽油、ゴマ油、綿実油等に含まれるスクワレンを還元することによって得ることができ、また、合成品のスクワランは、ゲラニルアセトン及びアセチレン化合物を原料として合成することにより得ることができる。
0015
本発明の二層分離型点眼液中のスクワランの含有量については、特に制限されず、スクワランに基づく薬理作用を考慮した上で適宜設定されるが、振盪時の泡立ち抑制効果及び分散性、並びに振盪後の分散状態の維持効果をより一層向上させるという観点から、例えば1〜10w/v%、好ましくは2〜8w/v%、更に好ましくは3〜7w/v%が挙げられる。
0016
また、本発明の二層分離型点眼液はヒアルロン酸及び/又はその塩を含有する。ヒアルロン酸の塩としては、薬学的に許容できることを限度として、特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。本発明において、ヒアルロン酸及びその塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ヒアルロン酸及びその塩の中でも、好ましくはヒアルロン酸の塩、更に好ましくはヒアルロン酸ナトリウムが挙げられる。
0017
本発明で使用されるヒアルロン酸及び/又はその塩は、天然物、合成品のいずれを使用してもよい。例えば、ヒアルロン酸及び/又はその塩は、ニワトリの鶏冠等の動物組織から抽出して得られたもの、ストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Strteptococcus zooepidemicus)等のヒアルロン酸の生産性を有する微生物の培養によって醗酵工学的に生産されたもの等を使用することができる。ヒアルロン酸及び/又はその塩の重量平均分子量については、特に制限されず、眼科分野で一般的に採用されている範囲内のものを使用できるが、通常50万〜120万、好ましくは60万〜120万が挙げられる。
0018
本発明の二層分離型点眼液中のヒアルロン酸及び/又はその塩の含有量については、特に制限されず、ヒアルロン酸及び/又はその塩に基づく薬理作用を考慮した上で適宜設定すればよいが、振盪時の泡立ち抑制効果及び分散性、並びに振盪後の分散状態の維持効果をより一層向上させるという観点から、例えば0.1〜0.5w/v%、好ましくは0.2〜0.5w/v%、更に好ましくは0.3〜0.4w/v%が挙げられる。
0019
更に、本発明の二層分離型点眼液はポリビニルアルコールを含有する。本発明で使用されるポリビニルアルコールの粘度(4w/w%溶液)については、特に制限されず、眼科分野で一般的に採用されている範囲内のものを使用できるが、通常2〜100mm2/sが挙げられる。ここで、ポリビニルアルコールの粘度(4w/w%溶液)とは、ポリビニルアルコールを4w/w%となるように精製水に60〜80℃で溶解させた溶液を冷却し、20±0.1℃で毛細管粘度計(第16改正日本薬局方粘度測定法第1法)によって測定される値である。また、本発明で使用されるポリビニルアルコールは、完全けん化物であってもよく、また部分けん化物であってもよい。
0020
本発明の二層分離型点眼液において、ポリビニルアルコールの含有量は、0.025〜0.1w/v%の範囲内に設定される。このように、スクワランと水を含む二層分離型点眼液に対して、ヒアルロン酸及び/又はその塩と共に、ポリビニルアルコールを所定量含有させることにより、点眼前の振盪による泡立ちを抑制しつつ、スクワランを含む油分含有層が水層に均一に分散でき、しかも、少なくとも点眼時まではその均一な分散状態を安定に維持させることが可能になる。振盪時の泡立ち抑制効果及び分散性、並びに振盪後の分散状態の維持効果をより一層向上させるという観点から、本発明の二層分離型点眼液中のポリビニルアルコールの含有量として、好ましくは0.025〜0.05w/v%が挙げられる。
0021
また、本発明の二層分離型点眼液において、スクワランとポリビニルアルコールの比率については、前述するスクワランとポリビニルアルコールの含有量を充足する範囲であればよいが、振盪時の泡立ち抑制効果及び分散性、並びに振盪後の分散状態の維持効果をより一層向上させるという観点から、スクワラン100重量部当たり、ポリビニルアルコールが通常0.2〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部、更に好ましくは0.3〜4重量部となる範囲が挙げられる。
0022
本発明の二層分離型点眼液は、前述する成分の他に、基剤として水を含有する。本発明の二層分離型点眼液において、水は、前述する成分、及び必要に応じて配合される薬理成分や添加剤以外の残部を構成し、その含有量については、配合する他の成分の含有量に応じて適宜設定される。具体的には、本発明の二層分離型点眼液中の水の含有量として、例えば、80〜98w/v%、好ましくは90〜97w/v%、更に好ましくは93〜96w/v%が挙げられる。
0023
本発明の二層分離型点眼液には、前述する成分の他に、必要に応じて、他の薬理成分を含有することができる。配合可能な薬理成分としては、例えば、グリチルリチン酸二カリウム、プラノプロフェン、アラントイン、イプシロンアミノカプロン酸、ブロムフェナク、ケトロラクトロメタミン、ネパフェナク、ベルベリン塩化物、硫酸ベルベリン、アズレンスルホン酸ナトリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、リゾチーム塩酸塩等の消炎剤;クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩等の抗ヒスタミン剤;クロモグリク酸ナトリウム、ケトチフェンフマル酸塩、アシタザノラスト、アンレキサノクス、ペミロラストカリウム、トラニラスト等の抗アレルギー剤;ノルフロキサシン、オフロキサシン、ロメフロキサシン、レボフロキサシン、ゲンタマイシン、等の抗菌剤;アスコルビン酸、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、ピリドキシン塩酸塩、トコフェロール酢酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノールパルミチン酸エステル、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム等のビタミン類;アスパラギン酸、タウリン、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のアミノ酸類、ネオスチグミンメチル硫酸塩等の抗コリンエステラーゼ剤;ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、エピネフリン、エフェドリン、フェニレフリン、dl−メチルエフェドリン等の血管収縮剤;ジクアホソルナトリウム等の角結膜上皮障害治療薬;スルファジアジン、スルフイソキサゾール、スルフイソミジン、スルファジメトキシン、スルファメトキシピリダジン、スルファメトキサゾール、スルファエチドール、スルファメトミジン、スルファフェナゾール、スルファグアニジン、フタリルスルファチアゾール、スクシニルスルファチアゾール等のサルファ剤等が挙げられる。ここで例示する化合物は、薬学的に許容されることを限度として、塩の形態であってもよく、また他の塩の形態であってもよい。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
0024
更に、本発明の二層分離型点眼液は、必要に応じて、点眼液に通常使用されている添加剤を含有することもできる。このような添加剤としては、具体的には、緩衝剤、等張化剤、溶解補助剤、粘性基剤、キレート剤、清涼化剤、pH調整剤、防腐剤、安定化剤、界面活性剤等が挙げられる。
0028
粘性基剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子;ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース類等が挙げられる。
0029
キレート剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、クエン酸等が挙げられる。
0032
防腐剤としては、例えば、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール、クロロヘキシジングルコン酸塩、ホウ酸、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化亜鉛、パラクロルメタキシレノール、クロルクレゾール、フェネチルアルコール、塩化ポリドロニウム、チメロサール等が挙げられる。
0033
安定化剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、グリセリン、プロピレングリコール、シクロデキストリン、デキストラン、アスコルビン酸、エデト酸ナトリウム、タウリン、トコフェロール等が挙げられる。
0034
界面活性剤としては、例えば、チロキサポール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オクトキシノール等の非イオン性界面活性剤;アルキルジアミノエチルグリシン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤;アルキル硫酸塩、N−アシルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等の陰イオン界面活性剤;アルキルピリジニウム塩、アルキルアミン塩等の陽イオン界面活性剤等が挙げられる。
0035
pH・浸透圧
本発明の二層分離型点眼液のpH及び浸透圧については、点眼液として許容できる範囲であることを限度として特に制限されない。具体的には、本発明の二層分離型点眼液のpHとして、3〜9程度、好ましくは6.5〜7.5程度が挙げられる。また、本発明の二層分離型点眼液の浸透圧については、日本薬局方生理食塩液に対する浸透圧比として、0.5〜3程度、好ましくは0.9〜1.1程度が挙げられる。ここで、pH及び浸透圧比は、スクワランを含む油分含有層が水層に均一に分散した状態で測定される値である。
0037
前記油分含有層は、スクワラン、並びに必要に応じて配合される薬理成分及び添加剤の中でスクワランと相溶性を示す成分が含まれる。また、該油分含有層は、本発明の二層分離型点眼液に配合される薬理成分や添加剤の種類や含有量によって、スクワランを含む油分からなる油層、又はスクワランを含む油分が乳化されている乳化層のいずれかの形状になる。
0038
また、前記水層は、ヒアルロン酸及び/又はその塩、ポリビニルアルコール、水、並びに必要に応じて配合される薬理成分及び添加剤の中で水と相溶性を示す成分が含まれる。
0039
本発明の二層分離型点眼液は、点眼前に振盪することにより、前記油分含有層が微細な油滴となって前記水層中に均一に分散して乳化状になる。また、一旦振盪によって前記油分含有層が前記水層中に分散すると、その均一な分散状態が、通常30秒以上、好ましくは1分間、安定に維持される。このように、本発明の二層分離型点眼液は、一旦、油分含有層が水層に均一に分散すると、少なくとも通常の点眼動作に要する時間は、その均一な分散状態を維持できるので、点眼時点で、油分含有層と水層が分離したり、その分散状態が不均一になったりするのを抑制して、スクワラン等の投与量にバラツキが生じるのを抑制できる。
0040
本発明の二層分離型点眼液において、前記油分含有層を前記水層中に均一に分散させるには、本発明の二層分離型点眼液を収容した点眼容器を手で振盪させればよい。より具体的には、本発明の二層分離型点眼液を収容した点眼容器を、上下に5〜20往復程度、振盪すればよい。
0041
また、本発明の二層分離型点眼液は、振盪によって、一旦、前記油分含有層を前記水層中に均一に分散させた状態にした後、静置して保管すると、再び、油分含有層と水層が分離した状態に戻る。
0042
製造方法
本発明の二層分離型点眼液は、自体公知の調製法に従って製造すればよく、例えば、第16改正日本薬局方製剤総則に記載された方法を用いて製造することができる。より具体的には、本発明の二層分離型点眼液は、水に、スクワラン、ヒアルロン酸及び/又はその塩、ポリビニルアルコール、並びに必要に応じて配合される薬理成分や添加剤を添加することにより製造できる。
0043
用途
本発明の二層分離型点眼液は、優れた水分蒸発抑制作用があるため、涙液中の脂質異常(分泌量減少、成分変化)を伴う疾患に有用であり、ドライアイ治療剤、特に涙液蒸発亢進型ドライアイ治療剤として使用できる。更に、本発明の二層分離型点眼液は、涙液の蒸発を抑制することにより角膜を保護するため、ドライアイ治療剤の他に、角膜保護剤として、例えば、角結膜上皮障害、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、眼瞼炎、結膜炎、強膜炎、術後炎症、眼類天疱胞、眼瞼縁炎、閉眼不全、知覚神経麻痺等の眼疾患の予防又は治療の目的でも使用できる。
0045
特に、非ヒト哺乳動物に点眼する場合には、非ヒト哺乳動物が動かないように固定した状態で、ヒトが非ヒト哺乳動物の眼下に点眼液を滴下するため、ヒトの場合に比べて点眼動作に時間を要するという特有の課題がある。これに対して、本発明の二層分離型点眼液では、一旦振盪すると、油分含有層を水層中に均一に分散させた状態を安定に維持することができるので、振盪後に点眼動作に時間を要しても、均一な分散状態のまま点眼することができ、非ヒト哺乳動物に対する点眼時の課題を克服できる。このような本発明の効果に鑑みれば、本発明の二層分離型点眼液の好適な適用対象として、非ヒト哺乳動物が挙げられる。
0046
以下に、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
0047
試験例1:気泡状体及び分散性の評価
常法にて表1に示す実施例1〜6及び比較例1〜6の点眼液を得た。静置状態では、実施例1〜6及び比較例1〜5では、外観上二層に分離しており、上層は油滴を含む乳化状態であり、下層は無色透明な水溶液であった。比較例6では、無色透明な水溶液であった。
0048
上記で得られた各点眼液3mLをガラスバイアル(4mL容、AS ONE社製)に充填し、激しく20回振盪した。振盪終了から1分間各点眼剤の外観を観察し、起泡状態及び分散性を評価した。起泡状態及び分散性の評価は、下記の判定基準に従って評点化することにより行った。
0049
<判定基準>
起泡状態
0:泡が多量に発生した。
1:泡が多量に発生したが、すぐに支障の無い程度以下に減った。
2:泡が発生しなかった。もしくは点眼に支障のない程度の微量の泡しか立っていない。
分散性
0:乳化せず、油分が浮上して分離した。
1:乳化したが、液全体の濁った分散状態が30秒以上維持しなかった。
2:乳化し、液全体の濁った分散状態が30秒以上維持した。
0050
得られた結果を表1に示す。この結果から、スクワラン、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、及び水を含む点眼液は、静置した状態では、スクワランが乳化された油分含有層と水層に分離した状態になることが確認された。また、スクワラン、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、及び水を含む点眼液において、ポリビニルアルコールの含有量が0.025〜0.1w/v%である場合には、振盪によって泡立ちを抑制しつつ、スクワランの微細な油滴が均一に分散した状態にでき、しかもこの均一な分散状態を30秒以上維持することができていた(実施例1〜6)。これに対して、スクワラン、ヒアルロン酸ナトリウム及び水を含み、且つポリビニルアルコールが含まれない場合には、振盪しても、スクワランを含む油分を分散させることができなかった(比較例1)。また、スクワラン、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール及び水を含み、且つポリビニルアルコールが0.1w/v%を超える場合には、振盪によってスクワランを含む油分を比較的良好に分散させることはできたが、著しい泡立ちが生じた(比較例2〜4)。更に、スクワラン、ポリビニルアルコール及び水を含み、且つヒアルロン酸ナトリウムが含まれない場合には、振盪によって泡立ちを抑制でき、均一な分散状態を一旦形成できたが、当該分散状態を安定に維持することができず、30秒後には、スクワランを含む油分が浮上して、スクワランが乳化された油分含有層と水層に分離した状態になった。
0051
0052
試験例2:水分蒸発抑制効果の評価
試験例1で調製した実施例1〜3及び比較例1〜6の点眼液について、水分蒸散抑制効果を評価した。具体的には、ガラスバイアル(4mL容量、AS ONE社製)内で激しく20回振盪した各点眼液3mLをシャーレ(直径45mm、高さ17mm)に入れて、蓋をしない状態で、25℃、相対湿度40%の条件で5時間保管した。0.5時間後に、各点眼液の残存重量を測定し、水分蒸発速度(mg/min)を算出した。
0053
得られた結果を表2に示す。この結果から、スクワラン、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、及び水を含み、且つポリビニルアルコールの含有量が0.025〜0.1w/v%である点眼液は、水分蒸発速度が格段に低い値を示しており、眼粘膜の乾燥を抑制でき、優れた角膜保護作用を備えていることが明らかとなった。
0054
0055
製剤例
以下に、本発明の二層分離型点眼液の製剤例を示す。
実施例
0056
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