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図面 (20)

課題・解決手段

本明細書の開示は、劇症肝炎間質性肺炎などの炎症性疾患に有効な炎症性疾患の予防又は治療用組成物を提供する。この目的のため、本開示は、歯髄幹細胞を培養することによって得られる培養上清を、炎症性疾患の予防又は治療用組成物の有効成分として用いる。

概要

背景

炎症反応は、異物病原体の排除、組織防御修復にかかわる一連過程である。過剰な炎症反応は、臓器障害を引き起こしたり、自己免疫疾患アレルギー疾患発症原因の一つになりうる。急性炎症慢性炎症を含む炎症性疾患は、感染やアレルギー疾患や自己免疫疾患などにより引き起こされるとされているが、発症原因はほとんどわかっていない。

例えば、炎症性疾患の1つである劇症肝炎は、肝炎ウイルスの感染(特に、B型感染ウイルス)、薬物アレルギー自己免疫性肝炎危険因子と考えられているが、発症メカニズムは未だわかっていない。劇症肝炎に対して現時点で最も有効とされている治療は、肝移植である。その他、ステロイドパルス療法や、人工補助療法を用いる対症療法も行われている(非特許文献1、2)。近年、劇症肝炎モデルに対して幹細胞移植を行い治療効果を得たという報告がなされている(非特許文献3)。

また、炎症性疾患である間質性肺炎は、間質の炎症・線維化の慢性的な進行を伴うが、明確な原因はわかっていない。進行して炎症組織が線維化するものは特に肺線維症と呼ばれる。根本治療として肺移植が挙げられるが、ステロイドや免疫抑制剤を用いた利用が一般的である(非特許文献4)。近年、肺線維症モデルに対して幹細胞移植を行い治療効果を得たという報告がなされている(非特許文献5)。

損傷部の治療を目的として、歯髄幹細胞などの幹細胞培養上清を含む組成物が有効であることが記載されている(特許文献1)。

概要

本明細書の開示は、劇症肝炎や間質性肺炎などの炎症性疾患に有効な炎症性疾患の予防又は治療用組成物を提供する。この目的のため、本開示は、歯髄幹細胞を培養することによって得られる培養上清を、炎症性疾患の予防又は治療用組成物の有効成分として用いる。

目的

本明細書は、劇症肝炎や間質性肺炎などの炎症性疾患に有効な炎症性疾患の予防又は治療用組成物を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

歯髄幹細胞を培養することによって得られる培養上清を含む、炎症性疾患の予防又は治療用組成物

請求項2

血清を含まない、請求項1に記載の組成物

請求項3

前記歯髄幹細胞を含まない、請求項1又は2に記載の組成物。

請求項4

前記炎症性疾患は、劇症肝炎急性肝炎慢性肝炎肝硬変急性間質性肺炎慢性間質性肺炎及び肺線維症からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。

請求項5

前記炎症性疾患は、慢性肝炎及び肝硬変から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。

請求項6

前記炎症性疾患は、炎症性自己免疫疾患である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。

請求項7

前記炎症性自己免疫疾患は、多発性硬化症全身性エリテマトーデス及び関節リウマチからなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。

請求項8

前記炎症性疾患は、虚血性心疾患である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。

請求項9

前記虚血性心疾患は、心筋梗塞である、請求項8に記載の組成物。

請求項10

請求項1〜9のいずれかに記載の予防又は治療用組成物の製造方法であって、歯髄細胞から接着性細胞選抜し、前記接着性細胞を培養し、培養上清を回収する、製造方法。

請求項11

炎症性疾患の予防又は治療方法であって、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物を、炎症性疾患の個体に、前記炎症性疾患の予防又は治療に有効な量で投与することを含む、方法。

請求項12

前記組成物を、静脈内投与動脈内投与、門脈内投与、皮内投与、皮下投与筋肉内投与腹腔内投与及び鼻腔内投与からなる群より選択された投与方法により投与する、請求項11に記載の方法。

請求項13

前記炎症性疾患は、前記炎症性疾患は、劇症肝炎、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、急性間質性肺炎、慢性間質性肺炎及び肺線維症からなる群から選択される、請求項11又は12に記載の方法。

請求項14

前記炎症性疾患は、慢性肝炎及び肝硬変から選択される、請求項11又は12に記載の方法。

請求項15

前記炎症性疾患は、炎症性自己免疫疾患である、請求項11又は12に記載の方法。

請求項16

前記炎症性自己免疫疾患は、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス及び関節リウマチからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。

請求項17

前記炎症性疾患は、虚血性心疾患である、請求項11又は12に記載の方法。

請求項18

前記虚血性心疾患は、心筋梗塞である、請求項17に記載の方法。

請求項19

炎症性疾患の予防又は治療に有効な因子又はその組合せのスクリーニング方法であって、歯髄幹細胞を培養することによって得られる培養上清に含まれる1又は2以上の成分を炎症性疾患に関する評価系に供給して、炎症性疾患への作用を評価する工程、を備える、方法。

技術分野

0001

本明細書は、炎症性疾患の予防又は治療用組成物に関する。
本願は、

背景技術

0002

炎症反応は、異物病原体の排除、組織防御修復にかかわる一連過程である。過剰な炎症反応は、臓器障害を引き起こしたり、自己免疫疾患アレルギー疾患発症原因の一つになりうる。急性炎症慢性炎症を含む炎症性疾患は、感染やアレルギー疾患や自己免疫疾患などにより引き起こされるとされているが、発症原因はほとんどわかっていない。

0003

例えば、炎症性疾患の1つである劇症肝炎は、肝炎ウイルスの感染(特に、B型感染ウイルス)、薬物アレルギー自己免疫性肝炎危険因子と考えられているが、発症メカニズムは未だわかっていない。劇症肝炎に対して現時点で最も有効とされている治療は、肝移植である。その他、ステロイドパルス療法や、人工補助療法を用いる対症療法も行われている(非特許文献1、2)。近年、劇症肝炎モデルに対して幹細胞移植を行い治療効果を得たという報告がなされている(非特許文献3)。

0004

また、炎症性疾患である間質性肺炎は、間質の炎症・線維化の慢性的な進行を伴うが、明確な原因はわかっていない。進行して炎症組織が線維化するものは特に肺線維症と呼ばれる。根本治療として肺移植が挙げられるが、ステロイドや免疫抑制剤を用いた利用が一般的である(非特許文献4)。近年、肺線維症モデルに対して幹細胞移植を行い治療効果を得たという報告がなされている(非特許文献5)。

0005

損傷部の治療を目的として、歯髄幹細胞などの幹細胞培養上清を含む組成物が有効であることが記載されている(特許文献1)。

0006

国際公開第WO2011/118795号

先行技術

0007

Kazuhiro K et al; World J Gastroenterol; 2006
Mas A et al; THELANCET;1997
Jun L et al; HEPATOLOGY;2012
Kevin R. Flaherty et al; Am J Med; 2001
RojasM et al; AMJ Respir Cell MolBiol; 2005

0008

しかしながら、肝や肺移植は、ドナー不足の問題がある。劇症肝炎に対するステロイドパルス療法や人工肝補助療法の病態改善ケースは多くはない。また、間質性肺炎においてもステロイド等は種々の副作用を伴うことが多い。さらに、幹細胞移植は、移植した幹細胞のがん化リスクがありうる。

0009

歯髄幹細胞などの幹細胞の培養上清を含む組成物は組織損傷に有効であるとして、歯周病脊髄損傷等に有効であるが、劇症肝炎や間質性肺炎などの炎症性疾患に有効であることは一般に想定できない。

0010

本明細書は、劇症肝炎や間質性肺炎などの炎症性疾患に有効な炎症性疾患の予防又は治療用組成物を提供する。

課題を解決するための手段

0011

本発明者らは、難治性の炎症性疾患である劇症肝炎や肺線維症の治療について検討していたところ、意外にも歯髄幹細胞の培養上清が有効であるという知見を得た。本明細書は、本知見に基づき以下の手段を提供する。

0012

(1)歯髄幹細胞を培養することによって得られる培養上清を含む、炎症性疾患の予防又は治療用組成物。
(2)血清を含まない、(1)に記載の組成物。
(3)前記歯髄幹細胞を含まない、(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)前記炎症性疾患は、劇症肝炎、急性肝炎慢性肝炎肝硬変急性間質性肺炎慢性間質性肺炎及び肺線維症からなる群から選択される、(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)前記炎症性疾患は、慢性肝炎及び肝硬変から選択される、(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(6)前記炎症性疾患は、炎症性自己免疫疾患である、(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(7)前記炎症性自己免疫疾患は、多発性硬化症全身性エリテマトーデス及び関節リウマチからなる群から選択される、(6)に記載の組成物。
(8)前記炎症性疾患は、虚血性心疾患である、(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(9)前記虚血性心疾患は、心筋梗塞である、(8)に記載の組成物。
(10)(1)〜(9)のいずれかに記載の予防又は治療用組成物の製造方法であって、
歯髄細胞から接着性細胞選抜し、
前記接着性細胞を培養し、
培養上清を回収する、製造方法。
(11)炎症性疾患の予防又は治療方法であって、
(1)〜(9)のいずれかに記載の組成物を、炎症性疾患の個体に、前記炎症性疾患の予防又は治療に有効な量で投与することを含む、方法。
(12)前記組成物を、静脈内投与動脈内投与、門脈内投与、皮内投与、皮下投与筋肉内投与腹腔内投与及び鼻腔内投与からなる群より選択された投与方法により投与する、(11)に記載の方法。
(13)前記炎症性疾患は、前記炎症性疾患は、劇症肝炎、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、急性間質性肺炎、慢性間質性肺炎及び肺線維症からなる群から選択される、(11)又は(12)に記載の方法。
(14)前記炎症性疾患は、慢性肝炎及び肝硬変から選択される、(11)又は(12)に記載の方法。
(15)前記炎症性疾患は、炎症性自己免疫疾患である、(11)又は(12)に記載の方法。
(16)前記炎症性自己免疫疾患は、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス及び関節リウマチからなる群から選択される、(15)に記載の方法。
(17)前記炎症性疾患は、虚血性心疾患である、(11)又は(12)に記載の方法。
(18)前記虚血性心疾患は、心筋梗塞である、(17)に記載の方法。

図面の簡単な説明

0013

劇症肝炎モデルラットにおける生存率を示す図である。
劇症肝炎モデルラットにおける血液検査による肝障害の評価結果を示す図である。
劇症肝炎モデルラットにおける病理学解析結果を示す図(HE染色)である。
劇症肝炎モデルラットにおける炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−1β、IL−6)、死細胞センサーであるマンノースレセプターCD206、抗炎症性サイトカイン(IL−10、TGF−b)の遺伝子発現の解析結果を示す図である。
劇症肝炎モデルラットにおけるCD206染色結果を示す図である。
肺線維症モデルマウス体重測定結果を示す図である。
肺線維症モデルマウスの生存率を示す図である。
肺線維症モデルマウスにおける病理学的解析結果を示す図(HE染色、MT染色)である。
肺線維症モデルマウスにおける免疫組織学的解析を示す図である。
肝硬変モデルマウスへのSHED−CM投与後の肝蔵の組織解析結果(HE染色)を示す図である。
肝硬変モデルマウスへのSHED−CM投与後の肝蔵の組織解析結果(シリウスレッド染色)を示す図である。
肝硬変モデルマウスへのSHED−CM投与後の肝蔵組織における遺伝子解析結果を示す図である。
肝硬変モデルマウスへのSHED−CM投与後の肝蔵組織における遺伝子解析結果を示す図である。
肝硬変モデルマウスへのSHED−CM投与後の肝臓組織のおける活性肝星状細胞マーカーであるα−SMAの染色結果を示す図である。
心筋虚血再灌流モデルマウスへのSHED−CM投与後の梗塞域の評価結果を示す図である。
心筋虚血再灌流モデルマウスへのSHED−CM投与後の血漿中の心筋トロポニン量の評価結果を示す図である。
心筋虚血再灌流モデルマウスへのSHED−CM投与後の虚血部における遺伝子発現解析結果を示す図である。
多発性硬化症モデルマウスへのSHED−CM投与後のEAE臨床スコアの経過を示す図である。
多発性硬化症モデルマウスへのSHED−CM投与後の組織解析結果(HE染色、KB染色、Sudan Black染色)を示す図である。
多発性硬化症モデルマウスへのSHED−CM投与後の組織解析結果(CD3染色)を示す図である。
ヒトSLEモデルマウスへのSHED−CM投与後の脾臓を示す図である。
ヒトSLEモデルマウスへのSHED−CM投与後の脾臓重量の比較結果を示す図である。
ヒトSLEモデルマウスへのSHED−CM投与後の脾臓組織切片のHE染色結果を示す図である。
ヒトSLEモデルマウスへのSHED−CM投与後の血中抗ds−DNAIgG抗体量を示す図である。
関節炎モデルマウスへのSHED−CM投与後の関節炎スコアの経過を示す図である。
関節炎モデルマウスへのSHED−CM投与後の後肢の厚さの経過を示す図である。
関節炎モデルマウスへのSHED−CM投与後の足首組織切片の染色結果(HE染色)を示す図である。
関節炎モデルマウスへのSHED−CM投与後の足首の組織切片の染色結果(トルイジンブルー染色)を示す図である。
関節炎モデルマウスへのSHED−CM投与後の足首の組織解析結果を示す図である。
関節炎モデルマウスへのSHED−CM投与後の四肢における遺伝子発現解析結果を示す図である。

0014

(炎症性疾患の予防又は治療用組成物)
本明細書は、炎症性疾患の予防又は治療用組成物に関する。本組成物は、歯髄幹細胞を培養することによって得られる培養上清を含むことができる。本培養上清は、種々のサイトカインが含まれている。特許文献1では、本培養上清が、こうしたサイトカインを含有していることから、損傷部における細胞を増殖させ、その結果、損傷部を有する組織を修復することができるとしている。本発明者らは、こうした本培養上清の未だ知られていない作用として、劇症肝炎や肺線維症などの難治性の炎症性疾患に対して本培養上清を投与することでこれらを治療できるという知見にいたった。本培養上清に種々のサイトカインが含まれているといっても、発症原因が不明である炎症性疾患に有効であることは、当業者である本発明者らも予想しえなかった。

0015

本組成物によれば、ドナー不足などの移植の問題点、副作用や低い有効性など従来のホルモン治療の問題点及び幹細胞移植の問題点などを解消しつつ、炎症性疾患を効果的に予防又は治療できる。

0016

本明細書の開示を拘束するものではないが、本組成物は、免疫担当細胞であるマクロファージ組織修復型へ分化ないし変換することを誘導することができる。このため、炎症反応部位に本組成物を送達することにより、組織修復型マクロファージを積極的に作用させて、炎症反応部位の組織の修復を活性化できる。

0017

本明細書において、「炎症」とは、異物の存在又は何らかの原因による組織損傷によって誘発される、身体を保護しようと働く哺乳動物における機構をいう。「炎症反応」とは、炎症において生じる一連のプロセスをいう。「炎症反応」には、炎症により誘発される組織破壊を含むことができる。「炎症性疾患」とは、身体組織の炎症により、又は炎症要素を有することにより特徴付けられる疾病、疾患又は症状を意味する。これらには局所的な炎症反応及び全身性の炎症反応が含まれる。

0018

本組成物は、歯髄由来する体性幹細胞、すなわち、歯髄幹細胞を培養して得られる培養上清を含むことができる。

0019

(歯髄幹細胞)
歯髄幹細胞は、歯髄から得られる歯髄に由来した幹細胞であれば特に限定されない。永久歯歯髄幹細胞であってもよいし、乳歯歯髄幹細胞であってもよいが、好ましくは、細胞増殖能の観点から、脱落した乳歯に由来する歯髄幹細胞を用いる。本組成物を適用する個体との関係においては、拒絶反応を抑制又は回避するため、同一生物種(ヒトであればヒト由来)の歯髄幹細胞であることが好ましく、より好ましくは自家歯髄幹細胞を用いる。

0020

歯髄幹細胞は、歯髄細胞の中の接着性細胞として選別可能である。脱落した乳歯や永久歯から採取した歯髄細胞の中の接着性細胞又はその継代細胞を培養して得られる培養上清を、「歯髄幹細胞の培養上清」として用いることができる。例えば、以下に示す、特開2011−219432号公報に記載の方法等により適宜取得できる。

0021

なお、歯髄幹細胞の不死化細胞も提供されうる。通常、歯髄幹細胞の不死化にあたり、1又は2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上の遺伝子が導入されている。このため不死化細胞においては、もとの細胞である歯髄幹細胞と均等な性質をもはや有していない。元の細胞とその不死化細胞とは、その産生物分泌物や量が異なるのは当業者においてよく知られたことである。したがって、もとの細胞である歯髄幹細胞と歯髄幹細胞由来の不死化細胞とでは、その産生物が異なるとともに、分泌物状況や分泌物の組成相違している。したがって、歯髄幹細胞の培養上清と歯髄幹細胞由来の不死化細胞の培養上清とは、その組成、すなわち、成分の種類やその割合においても大きく相違している。したがって、炎症性疾患に対する培養上清の作用や治療効果も、歯髄幹細胞と当該細胞に由来する不死化細胞とでは異なっている。

0022

(1)歯髄の採取
自然に脱落した乳歯(又は抜歯した乳歯、或いは永久歯)をクロヘキシジンまたはイソジン溶液消毒した後、歯冠部を分割し歯科用リーマーにて歯髄組織を回収する。
(2)酵素処理
採取した歯髄組織を基本培地(10%ウシ血清抗生物質含有ダルベッコ変法イーグル培地)に懸濁し、2mg/mlのコラゲナーゼ及びディスパーゼで37℃、1時間処理する。5分間の遠心操作(5000回転/分)により酵素処理後の歯髄細胞を回収する。セルストレーナーによる細胞選別はSHEDやDPSCの神経幹細胞分画回収効率を低下させるので原則、使用しない。
(3)細胞培養(接着性細胞の選択)
細胞を4cc基本培地で再懸濁し、直径6cmの付着性細胞培養用ディッシュ播種する。5%CO2、37℃に調整したインキュベータにて3日間培養した後、コロニーを形成した接着性細胞を0.05%トリプシンEDTAにて5分間、37℃で処理する。ディッシュから剥離した歯髄細胞を直径10cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種し拡大培養を行う。例えば、肉眼で観察してサブコンフルエント(培養容器の表面の約70%を細胞が占める状態)又はコンフルエントに達したときに細胞を培養容器から剥離して回収し、再度、培養液を満たした培養容器に播種する。継代培養を繰り返し行ってもよい。例えば継代培養を1〜8回行い、必要な細胞数(例えば約1×107個/ml)まで増殖させる。尚、培養容器からの細胞の剥離は、トリプシン処理など常法で実施することができる。以上の培養の後、細胞を回収して保存することにしてもよい(保存条件は例えば−198℃)。
別法
細胞を4cc基本培地で再懸濁し、直径6cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種する。培養液(例えば、10%FCS含有DMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Medium))を添加した後、5%CO2、37℃に調整したインキュベータにて2週間程度培養する。培養液を除去した後、PBS等で細胞を1回又は数回洗浄する。この操作(培養液の除去及び細胞の洗浄)に代えて、コロニーを形成した接着性細胞(歯髄幹細胞)を回収することにしてもよい。この場合には例えば、0.05%トリプシン・EDTAにて5分間、37℃で処理し、ディッシュから剥離した細胞を回収する。
(4)細胞の回収
次に、細胞を回収する。トリプシン処理等で培養容器から細胞を剥離した後、遠心処理を施すことによって細胞を回収することができる。このようにして回収した歯髄幹細胞を用いて本発明の組成物を調製する。

0023

(歯髄幹細胞の培養上清)
歯髄幹細胞の培養上清は、歯髄幹細胞を培養して得られる培養液の上清である。すなわち、実質的に細胞成分(歯髄幹細胞又は歯髄細胞)を含んでいない。本組成物は、典型的には、歯髄幹細胞及び歯髄細胞を含まず、歯髄幹細胞の培養上清のみで構成された組成物である。培養した歯髄幹細胞は、培養後に細胞成分を分離除去することによって、除去される。培養液からの細胞成分の分離は、当業者に周知の方法で可能である。さらに、培養液に対して各種処理(例えば、遠心処理、濃縮溶媒置換透析凍結、乾燥、凍結乾燥希釈脱塩、保存等)を適宜施した培養上清を用いることにしてもよい。

0024

歯髄幹細胞の培養には、基本培地、或いは基本培地に血清等を添加したもの等を使用可能である。基本培地としてはDMEMの他、イスコフ改変ダルベッコ培地IMDM)(GIBCO社等)、ハムF12培地(HamF12)(SIGMA社、GIBCO社等)、RPMI1640培地等を用いることができる。二種以上の基本培地を併用することにしてもよい。混合培地の一例として、IMDMとHamF12を等量混合した培地(例えば商品名:IMDM/HamF12(GIBCO社)として市販される)を挙げることができる。また、培地に添加可能な成分の例として、血清(ウシ胎仔血清、ヒト血清血清等)、血清代替物(Knockout serum replacement(KSR)など)、ウシ血清アルブミンBSA)、抗生物質、各種ビタミン、各種ミネラルを挙げることができる。

0025

本組成物は、血清を含まないことが好ましい。血清を含まないことでその安全性が高められる。例えば、血清を含まない培地(無血清培地)で歯髄幹細胞を培養することによって、血清を含まない培養上清を調製することができる。1回又は複数回の継代培養を行うことにし、最後又は最後から数回の継代培養を無血清培地で培養することによっても、血清を含まない培養上清を得ることができる。一方、回収した培養上清から、透析やカラムによる溶媒置換などを利用して血清を除去することによっても、血清を含まない培養上清を得ることができる。

0026

(培養上清の取得)
歯髄幹細胞の培養には、通常幹細胞に用いられる条件をそのまま適用あるいは適宜変更して適用できる。歯髄幹細胞培養上清の製造は、当業者であれば適宜行うことができる。例えば、以下のような操作で培養上清を取得してもよい。

0027

まず、既に説明したように、歯髄から選抜した接着性細胞(歯髄幹細胞)を、上記した培地で培養する。例えば、細胞を付着性細胞培養用ディッシュに播種し、5%CO2、37℃に調整したインキュベータにて培養する。必要に応じて継代培養を行う。例えば、肉眼で観察してサブコンフルエント(培養容器の表面の約70%を細胞が占める状態)又はコンフルエントに達したときに細胞を培養容器から剥離して回収し、再度、培養液を満たした培養容器に播種する。継代培養を繰り返し行ってもよい。例えば継代培養を1〜8回行い、必要な細胞数(例えば約1×107個/ml)まで増殖させる。尚、培養容器からの細胞の剥離は、トリプシン処理など常法で実施することができる。以上の培養の後、細胞を回収して保存することにしてもよい(保存条件は例えば−198℃)。

0028

次いで、選抜・培養した歯髄幹細胞の培養上清を回収する。例えば、スポイトピペットなどで培養液を吸引して回収することができる。回収した培養上清はそのまま或いは一以上の処理を経た後に本発明の組成物の有効成分として使用される。ここでの処理として、遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、脱塩、保存(例えば、4℃、−80℃)を例示することができる。

0029

本培養上清に対して適宜濃縮処理を施すこともできる。すなわち、本培養上清は濃縮物として含まれていてもよい。濃縮方法としては公知の手法から当業者であれば適宜選択して用いることができる。例えば、スピンカラム濃縮法エタノール沈殿濃縮法により、培養上清の濃縮物を得ることができる。本培養上清は、凍結乾燥処理が施されていてもよい。すなわち、本培養上清は、凍結乾燥物であってもよい。

0030

(本組成物の成分や形態)
本組成物は、歯髄幹細胞の培養上清であり、歯髄幹細胞が培養中において分泌したタンパク質などの高分子化合物のほか、低分子有機化合物を含みうる。さらに、本組成物は、培養上清であるため、培地由来の成分も含みうる。

0031

本組成物は、液体状(液状、ゲル状など)及び固体状(粉状、細粒顆粒状など)の形態を採りうる。また、本組成物は、疾患の種類、疾患を有する個体の特徴、投与方法及び投与量に応じて、公知の各種製剤形態を採りうる。例えば、錠剤粉剤粒剤顆粒剤細粒剤カプセル剤、用時溶解する固形注射剤坐剤などの固形性剤、液状の注射剤(静注筋注)、注入剤点滴用剤などの液状性剤、点眼剤スプレー剤ローション剤クリーム剤貼付剤などの局所外用剤等が挙げられる。また、体内留置型の医療器具等に担持される形態を採ることもできる。そのほか、本組成物は、公知の薬学上許容される塩を含むことができる。当業者であれば、適切な製剤化が可能である。

0032

本組成物は、疾患の種類や製剤形態に応じて、製剤上許容される他の成分を含むことができる。製剤上許容される他の成分(例えば、担体賦形剤崩壊剤緩衝剤乳化剤懸濁剤無痛化剤、安定剤、保存剤防腐剤生理食塩水など)を含有させることもできる。賦形剤としては乳糖デンプンソルビトール、D−マンニトール白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩クエン酸塩酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴムアルギン酸ナトリウムトラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリンモノステアリン酸アルミニウムメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコールクロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコールアスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。抗生物質、pH調整剤成長因子(例えば、上皮細胞成長因子(EGF)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF))等を含有させることにしてもよい。

0033

本組成物は、炎症性疾患の予防又は治療用として用いることができる。炎症性疾患としては、特に限定されないで、広く適用される。炎症性疾患としては、例えば、シェーグレン病、ドライアイ皮膚創傷治癒、心筋梗塞、骨髄移植に伴う免疫拒絶関節炎、関節リウマチ、変形性関節症及び骨吸収増加に関連した骨疾患などの慢性炎症性関節疾患、回腸炎潰瘍性大腸炎バレット症候群及びクローン病などの炎症性腸疾患喘息急性および慢性間質性肺炎、肺線維症、成人呼吸窮迫症候群及び慢性閉塞性気道疾患などの炎症性肺疾患トラコーマオンコセルカ症ブドウ膜炎交感性眼炎及び眼内炎などの炎症性眼疾患歯肉炎及び歯周炎などの慢性炎症性歯周疾患結核ハンセン病尿毒症合併症糸球体腎炎及びネフローゼなどの炎症性腎疾患硬化性皮膚炎乾癬及び湿疹などの炎症性皮膚疾患免疫複合体血管炎、全身性狼瘡及び紅斑症、多発性硬化症、全身性エリトマトーデス(SLE)などの炎症性自己免疫疾患、心筋症、心筋梗塞などの虚血性心疾患、高コレステロール血症アテローム性動脈硬化症などの炎症性心疾患、並びに子癇前症、慢性肝不全、慢性肝炎、肝硬変、急性肝炎、劇症肝炎、脳、癌などの重大な炎症要素を有する他の様々な疾患が挙げられる。あるいはグラム陽性又はグラム陰性細菌ショック出血性若しくはアナフィラキシーショック、又は前炎症性サイトカイン応答する癌化学療法によって誘発されたショック(例えば前炎症性サイトカイン関連ショック)などの全身性の炎症も挙げられる。かかるショックは、例えば癌化学療法に用いられる化学療法剤によって誘発されうる。さらに、皮膚移植拒絶反応などの移植片拒絶反応も挙げられる。なかでも、本組成物は、急性及び亜急性の疾患や病態に好ましく適用される。例えば、急性肝炎や劇症肝炎が挙げられる。また、慢性間質性肺炎、急性間質性肺炎及び肺線維症に好ましく適用される。さらに、慢性肝炎、肝硬変などの慢性肝疾患にも好ましく適用される。さらに、心筋梗塞などの虚血性心疾患にも好ましく適用される。また、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデスなどの炎症性自己免疫疾患にも好ましく適用される。

0034

本組成物の投与経路は特に限定されない。適用部位や対象とする疾患に応じて公知の各種投与形態を採用できる。たとえば、非経口投与は、全身投与であってもよいし局所投与であってもよい。より具体的には、炎症部位への注入、塗布又は噴霧が挙げられる。また、静脈内投与、動脈内投与、門脈内投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、口腔内投与等が挙げられる。

0035

本組成物の用法用量は特に限定されない。被験対象年齢、体重、病態等を案して設定することができる。投与スケジュールとしては例えば一日一回〜数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、対象(レシピエント)の性別、年齢、体重、病態などを考慮することができる。

0036

本組成物が適用される対象個体としては、ヒトを含む哺乳動物(ペット家畜実験動物等)が挙げられる。例えば、ヒトのほか、イヌネコウサギマウスウシブタヤギヒツジウマサルモルモットラット及びマウス等が挙げられる。

0037

(炎症性疾患の予防又は治療方法)
本明細書に開示される予防又は治療方法は、本組成物を、炎症性疾患の個体に、その炎症性疾患の予防又は治療に有効な量で投与することを含むことができる。本治療方法によれば、従来の不都合を一挙に解決して炎症性疾患を予防又は治療できる。本組成物、投与方法等については、既に説明した態様を本方法に適用することができる。

0038

(炎症性疾患の予防又は治療に有効な因子又はその組合せのスクリーニング方法
本明細書の開示によれば、歯髄幹細胞を培養することによって得られる培養上清に含まれる1又は2以上の成分を炎症性疾患に対する評価系に供給して、炎症性疾患への作用を評価する工程、を備える、炎症性疾患の予防又は治療に有効な因子又はその組合せのスクリーニング方法が提供される。

0039

本スクリーニング方法によれば、歯髄幹細胞の培養上清に含まれる成分のうち、どの成分が各種の炎症性疾患に対して有効であるかをスクリーニングでき、特定された歯髄幹細胞の培養上清成分を有効成分として含有する、すなわち、主として特定された培養上清成分のみを有効成分として含有する予防又は治療用組成物を取得できる。また、こうした組成物は、歯髄幹細胞の培養上清に由来しないで、市販され及び/又は精製等された特定成分を組み合わせることで有効な予防又は治療用組成物を得ることができる。

0040

なお、本スクリーニング方法で用いる炎症性疾患に関する評価系は、各種炎症性疾患について公知である。例えば、劇症肝炎、肺線維症、肝硬変、虚血性心疾患、多発性硬化症、SLE及び関節炎等の各種炎症性疾患のモデルマウスを利用できるほか、関連する細胞を用いた評価系適宜選択して利用できる。こうした各種の評価系については、当業者であれば適宜選択できるほか、本明細書の実施例等を参照することによっても適宜選択することができる。

0041

歯髄幹細胞の培養上清には、以下に示す成分(各成分は、タンパク質、遺伝子あるいは物質名、通称名等でそれぞれ記載されている)が含まれている。こうした成分から選択される1又は2以上、あるいは3以上を適宜組み合わせて炎症性疾患に有効な因子のスクリーニングに適用することができる。

0042

0043

以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、以下の実施例は本発明を限定するものではない。なお、以下の実施例において、%は、いずれも質量%を意味する。

0044

(ヒト脱落乳歯歯髄幹細胞培養上清(SHED−CM)の調製)
10cmdishを用いてDMEM(SIGMA ALORICH Co.USA)+10%FBS(SIGMA ALORICH Co USA)+1%Penicillin Streptomycin(Life Technologies Japan Ltd)でヒト脱落乳歯歯髄幹細胞を培養し、80〜90%confulになるまで培養を行う。PBSで2回洗浄した後に、無血清培養液(DMEM)に変更し、48時間培養を行った。上清を回収し、1500rpmで4〜5分、3000rpmで5分遠心分離し、その上清を、歯髄幹細胞培養上清として以下の実施例に使用した。

0045

(劇症肝炎モデルを用いた歯髄幹細胞の治療有用性の解析)
(1)劇症肝炎モデルラットの作製
著しい肝障害を誘発する、D−ガラクトサミン(D-galactosamine)溶液をPBS/NaOH溶液に溶解し作製した。この溶液をSprague−Dawleyラット(200〜250g)に、D−ガラクトサミン1.2g/kg(ラット体重)となるように腹腔内投与した。投与から24時間後に採血を行ってAST及びALTを測定し、著しい肝障害が誘発(劇症肝炎)されていることを確認した。その後、実施例1で調製した歯髄幹細胞培養上清(無血清)(SHED-CM)1mlを頸静脈から投与し、病態改善を検証した。また、脂肪幹細胞及び骨髄幹細胞無血清培養上清1mlも比較例として頸静脈から静注した。さらに、対照としてDMEM1mlを劇症肝炎の発症後24時間のラット(ガラクトサミンの投与から24時間後)に頸静脈から静注した。

0046

(2)1週間生存率の判定、血液検査による肝障害の評価
1週間生存率の判定、血液検査による肝障害の評価をそれぞれ図1及び図2に示す。Sprague−Dawley rat(200〜250g)腹腔内に、著しい肝障害を誘発するD−galactosamine溶液を1.2g/kgの割合で投与した。図1に示すように、DMEM投与群では一週間生存率が30%以下に低下した(n=10)。これに対して、歯髄幹細胞無血清培養上清の投与群は劇的に病態が改善され、1週間生存率は90%であった。脂肪幹細胞無血清培養上清の投与群及び/又は骨髄幹細胞無血清培養上清投与群ではそれほど病態改善効果が得られなかった(それぞれ50%及び44%)。

0047

また、図2に示すように、DMEM投与群では、血中AST及びALTがそれぞれ約8000U/L及び約8000U/Lであったのに対し、歯髄幹細胞無血清培養上清投与群では、いずれも約1000U/Lとなった。また、脂肪幹細胞無血清培養上清投与群及び脂肪幹細胞無血清培養上清投与群では、いずれも約4000U/L及び/又は約5000U/Lであった。これらの結果は、図1に示す生存率の結果を支持するものであった。なお、細胞傷害示標値はAST=6000U/L、ALT=4000U/Lであった。

0048

(3)劇症肝炎モデルにおける病理学的解析
劇症肝炎患者肝臓では、広範な肝細胞死肝細胞再生不全が認められる。本モデルラットにおいても、これらの発現を解析することにより、病態を評価した。すなわち、肝細胞死を、HE染色、及び TUNEL 染色、肝細胞再生は、Ki-67 染色を用いて評価した。TUNEL染色結果を図3に示す。

0049

図3に示すように、DMEM投与群では激しい空砲変性や、多くのTunel陽性細胞(全肝臓細胞中20%)を検出した。歯髄幹細胞の無血清培養上清(CM)投与後12時間の組織像は正常肝組織様であった。Tunel陽性細胞数も著しく低下していた。これらの結果は、図1及び図2に示す結果を支持していた。

0050

(4)劇症肝炎モデルにおける遺伝子解析
劇症性炎症反応では、炎症性組織破壊型 M1マクロファージと抗炎症組織再生型M2マクロファージが肝組織損傷に重要な役割を果たす。M1マクロファージは、炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−1β、IL−6)の遺伝子発現や、活性化酸素の産生(iNOS)を亢進する。M2マクロファージは、死細胞のセンサー:マンノースレセプターCD206、フリーラジカル合成阻害因子Arginase、抗炎症性サイトカイン(IL−10、TGF−b)を大量に発現する。本モデルラットにおいても、これらの因子の産生量を定量的RTPCRで解析することにより、病態を評価した。これらの結果を図4に示す。定量的RT−PCRに用いたプライマーは、表1に示す。

0051

0052

図4に示すように、DMEM投与群では、M1マクロファージ由来の各種の炎症性サイトカインの発現が上昇することがわかった。これに対して、歯髄幹細胞無血清培養上清投与群では、M1マクロファージ由来の炎症性サイトカインの発現が抑制され、M2マクロファージ由来の各種の抗炎症性サイトカイン(TGF−β、CD206、ArginaseI及びIL−10)の発現が上昇することがわかった。

0053

(5)劇症肝炎モデルにおけるCD206免疫染色結果
図5には、歯髄幹細胞無血清培養上清投与群の及び対照群の劇症肝炎モデルの組織におけるCD206染色結果を示す。図5に示すように、歯髄幹細胞無血清培養上清投与群では、CD206の発現が顕著であり、M2マクロファージの発現が明らかであった。

0054

本実施例では、肺線維症モデル動物を用いた歯髄幹細胞の治療有用性について解析した。
(1)肺線維症モデルマウスの作製
著しい肺障害を誘発する塩酸ブレオマシン溶液を6U/kgの割合で生理食塩水に溶解し作製した。その溶液をメスのC57BL/6J mouse(6〜8週齡、17〜20g)に、気管内投与した。それから24時間後に、ベロクロラ音聴取から肺障害が誘発されていることを確認した後、ヒト歯髄幹細胞由来無血清培養上清、骨髄幹細胞無血清培養上清及びDMEM500μlの各薬剤頚静脈から静脈内投与し、病態改善を検証した。体重測定結果を図6に示し、生存率を図7に示す。

0055

(2)肺線維症モデルマウスの生存率、体重による肺障害の評価
図6及び図7に示すように、塩酸ブレオマシン溶液をメスのC57BL/6J mouse(17〜20g)に、気管内投与すると著しい肺障害が引き起こされ、14日間の生存率が33%に低下し、9日間の体重率が66%まで低下することを確認した。

0056

(3)生存率、体重による歯髄幹細胞無血清培養上清の治療効果の解析
図6及び図7に示すように、歯髄幹細胞由来無血清培養上清の静注群においてのみ劇的に病態が改善された。14日間生存率は79.4%となり、体重率の減少は78.5%に抑えられた。一方で、骨髄幹細胞由来無血清培養上清や無血清培地(DMEM)投与群では病態改善効果が得られなかった。骨髄幹細胞由来無血清培養上清投与群の生存率は50%、体重率の減少は71.7%。DMEM投与群の生存率は33.3%、体重率の減少は66%であった。

0057

(4)肺線維症モデルマウスにおける病理学的解析
急性肺疾患患者の肺では、肺の支持組織(間質)の、炎症による広範な肥厚が認められる。本モデルマウスにおいても、これらを観察することにより、病態を評価した。肺組織の線維化は、HE染色および結合組織の特異的染色法であるマッソントリクローム(MT)染色により評価を行った。結果を図8に示す。

0058

図8に示すように、DMEM投与群ではHE染色およびMT染色で間質の広範な肥厚を認め、MT染色では線維化面積の著しい増加を認めた。歯髄幹細胞由来無血清培養上清投与後24時間の組織像は正常肺組織様であった。

0059

(5)肺線維症モデルマウスにおける免疫組織学的解析
劇症性炎症反応では、抗炎症・組織再生型M2マクロファージが肺組織の修復に重要な役割を果たす。そこで、急性肺障害の誘発後48時間において、歯髄幹細胞由来無血清培養上清投与群とDMEM群とについて、免疫染色によりM2マクロファージのマーカーであるマンノースレセプターCD206を測定した。結果を図9に示す。

0060

図9に示すように、歯髄幹細胞無血清培養上清投与群では、DMEM投与群に比較し、CD206陽性細胞が顕著に増加していることを確認した。

0061

本実施例では、肝硬変に対する歯髄幹細胞培養上清投与の治療有用性について解析した。

0062

(1)肝硬変モデルマウスの作製
四塩化炭素(CCl4)を1.0ml/kgの割合でオリーブオイルに溶解し肝障害を誘発する薬剤を作製したその溶液をC57BL6マウス(20〜25g)に、1週間に2回、4週連続腹腔内投与し、肝硬変モデルマウスを作製した。その後、実施例1で調製した歯髄幹細胞培養上清(無血清)(SHED−CM)を最終の四塩化炭素溶液を投与(四塩化炭素投与開始から1ヶ月)してから24時間後に、1回、500μl静脈内投与し、病態改善を検証した。対照としてDMEMを同様に投与した。

0063

(2)肝硬変モデルにおける病理学的解析
肝硬変、慢性肝炎患者の肝臓では、肝細胞死、炎症性細胞浸潤、及び広範に不可逆性線維性組織の増殖が認められる。そこで、SHED−CM投与後3日後の組織解析を行った。結果を図10及び図11に示す。

0064

図10に示すように、HE染色によれば、Shamでは正常肝臓組織が観察されたが、Pre−treatment(SHED−CM投与直前)では、多くの肝臓細胞死が観察されるとともに、ディッセ腔における線維化の亢進が観察された。また、DMEM投与群では、激しい細胞浸潤と著しい線維化が観察された。これに対し、SHED−CM投与群は正常肝像に近いことがわかった。

0065

また、図11に示すように、シリウスレッド染色(赤染色:繊維素の染色)によれば、Pre−treatmentとDMEM投与群で激しい線維化を確認した。一方、SHED−CM投与群ではほとんど線維化が確認できなかった。

0066

(3)肝硬変、慢性肝炎モデルにおける遺伝子解析
DMEM,SHED−CM投与後3日の肝臓組織からRNAを採取し、炎症性サイトカインなどの遺伝子発現を定量的PCR法にて解析した。結果を図12及び図13に示す。

0067

図12に示すように、DMEM投与群では炎症促進型M1マクロファージが産生するTNF-αの発現が上昇していたのに対して、SHED−CM投与群では抗炎症性M2マクロファージマーカー、CD206、Arginase−1の発現が上昇していた。

0068

また、図13に示すように、DMEM投与群では活性化した肝星状細胞が産生するα−Smooth muscle actin(α−SMA)、Collagen α1の発現が上昇していた、一方、SHED−CM投与群では線維化溶解に関わるマトリックスメタロプロテアーゼ?9(MMP−9)やIGF−1、HGFなどの肝再生に関わる因子の発現レベルの上昇が観察できた。

0069

また、図14に示すように、活性化肝星状細胞のマーカーであるα−SMAの染色結果によれば、SHED−CM投与群ではα−SMA陽性細胞数が激減していた。活性化肝星状細胞の数が、SHED−CM投与群で著しく低下することが明らかとなった。

0070

本実施例は、虚血性心疾患に対する歯髄幹細胞培養上清投与の有用性について解析した。

0071

(1)心筋虚血再灌流モデルマウスの作製
8〜12週齢雄性のC57BL6/Jマウスをペントバルビタール(50mg/kg体重)の腹腔内投与で全身麻酔し、仰臥位で四肢を固定の上、22Gテフロンチューブ気管内挿管し、小動物用人工呼吸器に接続した(呼吸回数150回/分、換気量0.2mL/回)。左第3肋間開胸を行い、実体顕微鏡下に左冠動脈前下行枝(LAD)をナイロン糸結紮した。30分後にナイロン糸を解き血流を再灌流させた。

0072

(2)SHED−CM投与
再灌流時に頸静脈より、実施例1で調製したSHED−CM500μLを単回投与した。対照群にはDMEM500μLを投与した。

0073

(3)梗塞域の評価
再灌流24時間後、再度LADを結紮し、エバンスブルー液1mLを灌流した。心臓摘出し、横断切片を作製し2,3,5-triphanyl tetrazolium chloride(TTC)液と20分間反応させた。これにより左室(LV)、危険域(AAR)、梗塞域(IA)を区別し、画像解析ソフトを用いて各面積を定量した。結果を図15に示す。

0074

図15に示すように、SHED−CM投与群および対照群で、左室に占める危険域の割合(AAR/LV)は同等であることを確認した。SHED−CM群では対照群と比較し、危険域に占める梗塞域(IA/AAR)、一方、左室に占める梗塞域(IA/LV)の割合はいずれも有意に低下していることが明らかになった。

0075

(4)血中心筋トロポニン値の評価
再灌流24時間後マウスより全血を採取し、心組織破壊のマーカーとして用いられる血漿中の心筋トロポニンI値をELISA法で測定した。結果を図16に示す。図16に示すように、モデルマウス血漿中の心筋トロポニンの値はSHED−CM群で対照群と比較し低下する傾向が明らかとなった。

0076

(5)組織中炎症性サイトカインの評価
再灌流24時間後に摘出した心臓の虚血部よりRNAを抽出した。組織中の炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−1β、IL−6)の遺伝子発現をリアルタイム定量PCR法で評価した。結果を図17に示す。図17に示すように、心組織中の炎症性サイトカインの遺伝子発現は、TNF−α、IL−1β、IL−6のいずれにおいてもSHED−CM投与群で抑制される傾向が明らかとなった。

0077

以上の結果から、SHED−CMは急性心筋梗塞発症後投与されると、速やかに発症した炎症を抑制することにより梗塞域を縮小させる効果を持つことがわかった。

0078

本実施例では、多発性硬化症に対する歯髄幹細胞培養上清投与の有用性について解析した。

0079

(1)多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウスの作製
C57BL/6Jマウス8週齢メスに対して、200μgのMOG35?55蛋白完全フロイントアジュバントとともにマウス背部皮下注射し免疫した。400ngの百日咳毒素を0、2日目に腹腔内注射して、EAEマウスを作製した。

0080

(2)SHED−CM投与
マウスの麻痺の状態はEAE臨床スコアを用いて毎日観察した。症状がピークである免疫後14日目に、マウス尾静脈より実施例1で調製したSHED−CMを500μl、コントロール群にはDMEMを500μl投与し、以後28日目までEAE臨床スコアを用いて麻痺の状態を確認した。また、28日目にマウスを屠殺し、組織解析を行った。

0081

(3)EAE臨床スコアによる麻痺の状態評価
EAE臨床スコアは、0:正常、1:尾の下垂、2:後肢の衰弱、3:後肢の不完全麻痺、4:前肢の衰弱、後肢の完全麻痺、5:四肢麻痺として評価した。結果を図18に示す。図18に示すように、SHED−CM投与群では免疫後19日目以降に、有意な麻痺の改善を認めた。

0082

(4)組織評価
組織評価は、HE染色、KB染色、Sudan Black染色、また免疫染色(CD3:T細胞)を行なった。結果を図19及び図20に示す。図19に示すように、KB染色、Sudan black染色ではSHED−CM投与群にコントロール群と比較して脱髄範囲の減少、また浸潤細胞の減少が認められた。HE染色でもまた浸潤細胞の減少が認められた。さらに、図20に示すように、免疫染色では、SHED−CM投与群で浸潤するT細胞の数に減少を認めた。

0083

以上の結果から、SHED−CMは、炎症性自己免疫疾患においてその状況を改善できることがわかった。

0084

本実施例では、ヒト全身性エリテマトーデス(SLE)に対する歯髄幹細胞培養上清投与の有用性について解析した。

0085

(1)ヒトSLE多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(SLE)マウスの作製
ヒトSLEモデルマウスであるMRL−lpr/lprマウスを用い、15週齢の時点において、ヒトSLEの臨床マーカーである末梢血血清での抗ds−DNAIgG抗体量をELISAにて測定し、SLE症状が十分に発症していることを確認した。

0086

(2)SHED−CM投与
16週齢において、外頸静脈より実施例1で調製したSHED−CMを1匹あたり500μl注入した。そして、20週齢に到達した時点でトサツし、腎臓、脾臓、腋下リンパ節、尿、末梢血血清を採取した。

0087

(3)免疫抑制作用の評価
歯髄幹細胞培養上清による免役抑制作用の評価を、末梢血血清における抗ds-DNAIgG抗体量、腎臓をホモジナイズして得られたライセートにおける免疫複合体量をELISAにて定量して行った。また、脾臓は重量を計測し、(Ito T, Seo N, Yagi H, et al: Unique therapeutic effects of the Japanese-Chinese herbal medicine, Sairei-to, on Th1/Th2 cytokines balance of the autoimmunity ofMRL/lpr mice. J Dermatol Sci. 28: 198-210. 2002)と同様にSIを作成し脾腫の程度を観察した。また、腎臓HE染色を行うとともに、採取した尿中に含まれるタンパク量を計測し腎機能の変化を観察した。

0088

脾臓における脾腫及び脾臓重量について図21及び図22に示す。これらの図に示すように、脾臓では症状の悪化に伴い脾腫を認めるが、DMEM群と比較してSHED−CM投与群では脾臓重量、脾臓の大きさともに正常脾臓に近く、脾腫の抑制傾向を認めた。

0089

得られた組織切片にHE染色結果を図23に示す。図23に示すように、腎炎にともなって細胞の増殖を認めるが、DMEM投与群と比較して、SHED−CM投与群では糸球体の形状が正常糸球体に類似しており、腎炎の改善傾向を認めた。

0090

さらに、末梢血血清を用いて血中抗ds−DNAIgG抗体をELISAで計測した結果を図24に示す。図24に示すように、DMEM投与群と比較してSHED−CM投与群では血中抗ds−DNAIgG抗体の減少傾向を認めた。

0091

以上のことから、SLEに対してSHED−CM投与が有用であることがわかった。

0092

本実施例では、関節リウマチに対する歯髄幹細胞培養上清投与の有用性について解析した。

0093

(1)コラーゲン抗体誘導性関節炎モデルマウスの作製
8週齢の雄性DBA/1Jマウスに関節炎惹起用抗体を腹腔内投与することで関節炎を惹起した。3日後にLPSを腹腔内投与することで、関節炎が増悪された。抗体投与後、7〜10日で炎症はピークに達した。

0094

(2)SHED−CMの投与
抗体投与後、5日目に尾静脈より実施例1で調製したSHED−CM500μlを単回投与した。対照群にはDMEM500μlを単回投与した。

0095

(3)関節炎スコア評価
抗体投与日より14日目まで、四肢の関節炎スコアを測定した。指、、足首の3つの部位を観察し、それぞれで腫脹が認められた関節数をスコアとした(スコア1〜3)。さらに、3つの部位全てで非常に重篤な腫脹を認めた場合をスコア4とした。四肢についてこれらを観察し、マウス1個体あたりスコア16を最高点とした。結果を図25に示す。

0096

図25に示すように、SHED−CM投与群では、対照群に比較して、有意に関節炎スコアが低下していることが明らかとなった。

0097

(4)後肢の厚さ(hind paw thickness)の評価
抗体投与日より14日目まで、hind paw thicknessを測定した。マウスの両後肢の甲部分の厚さをデジタルノギスにより測定し、それらの平均値をマウス1個体のhind paw thicknessとした。抗体投与日のhind paw thicknessとの差をとり、その増加量を評価した。結果を図26に示す。図26に示すように、SHED−CM投与群では、対照群に比較して、有意にhind paw thicknessの増加が抑えられており、関節炎による後肢の腫脹を抑制していることが明らかとなった。

0098

(5)組織学的評価
抗体投与日より14日目に屠殺したマウスの足首より組織切片を作製し、HE染色、トルイジンブルー染色を行い、組織学的な変化を評価した。関節部への炎症細胞浸潤滑膜組織過形成関節面骨破壊の程度を評価し、スコアリングを行った。最高スコア6点とした。結果を図27図29に示す。図27図29に示すように、SHED−CM投与群では、対照群に比較して、有意に組織学的スコアが低下しており、関節部の炎症細胞浸潤および組織破壊を抑制していることが明らかとなった。

0099

(6)組織中の炎症性サイトカイン、組織破壊因子の遺伝子発現評価
抗体投与日より7日目に屠殺したマウスの四肢よりRNAを抽出し、リアルタイム定量PCR法で、炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−1β、IL−6)、組織破壊因子(MMP3)の遺伝子発現を評価した。結果を図30に示す。

0100

図30に示すように、組織中の炎症性サイトカイン、組織破壊因子の遺伝子発現は、IL−1β、IL−6、MMP3において、SHED−CM投与群で、対照群に比較して、有意に抑制されていた。TNF−αに関しては、抑制される傾向が明らかになった。

0101

以上の結果より、SHED−CMは関節炎に対して治療効果を有することが示唆された。

実施例

0102

以上の結果から、本組成物は、炎症性疾患の治療に共通して有用であることがわかった。

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