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課題・解決手段

本発明は、標的物質未分化細胞に導入するための方法及びそのためのキャリアを提供することを目的としており、rBC2LCNレクチンと標的物質を融合させたrBC2LCN−標的物質融合体として未分化細胞に接触させることで、未分化細胞特異的に標的物質を未分化細胞内に導入することができる。特に、rBC2LCNレクチンと細胞内で働く毒素又はその細胞殺傷能力のあるドメインとを融合したrBC2LCN−毒素融合体は、未分化幹細胞除去剤として働き、幹細胞を分化誘導した後の培地中に投与することで、未分化状態の幹細胞のみを確実に殺傷することができる。

概要

背景

概要

本発明は、標的物質未分化細胞に導入するための方法及びそのためのキャリアを提供することを目的としており、rBC2LCNレクチンと標的物質を融合させたrBC2LCN−標的物質融合体として未分化細胞に接触させることで、未分化細胞特異的に標的物質を未分化細胞内に導入することができる。特に、rBC2LCNレクチンと細胞内で働く毒素又はその細胞殺傷能力のあるドメインとを融合したrBC2LCN−毒素融合体は、未分化幹細胞除去剤として働き、幹細胞を分化誘導した後の培地中に投与することで、未分化状態の幹細胞のみを確実に殺傷することができる。

目的

とりわけ、培地に添加するだけで未分化細胞のみを殺すことができるような、簡便且つ効率的な未分化細胞除去剤の開発が望まれていた

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
2件

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請求項1

標的物質未分化細胞内に導入するための方法であって、標的物質を、rBC2LCNと化学的もしくは電気的に融合させ、rBC2LCN−標的物質融合体として未分化細胞と接触させることを特徴とする、未分化細胞内導入方法

請求項2

rBC2LCNを有効成分として含むことを特徴とする、標的物質の未分化細胞内導入用キャリア

請求項3

標的物質とrBC2LCNとが化学的もしくは電気的に融合しているrBC2LCN−標的物質融合体を有効成分として含むことを特徴とする、標的物質の未分化細胞導入用組成物

請求項4

標的物質が、細胞内で細胞毒性を発揮できる毒性化合物である、請求項3に記載の毒性化合物の未分化細胞導入用組成物。

請求項5

毒性化合物が、タンパク質毒素もしくはその細胞殺傷能力のあるドメイン、細胞毒性を有する低分子化合物、又は核酸である、請求項4に記載の未分化細胞導入用組成物。

請求項6

細胞内で細胞毒性を発揮できる毒性化合物とrBC2LCNとが化学的もしくは電気的に融合しているrBC2LCN−毒性化合物融合体を有効成分として含むことを特徴とする、未分化幹細胞除去剤

請求項7

幹細胞を分化誘導した後の培地中に、請求項6に記載の未分化幹細胞除去剤を添加することを特徴とする、未分化状態の幹細胞の殺傷方法

請求項8

幹細胞から分化誘導された分化誘導細胞に対して、請求項6に記載の未分化幹細胞除去剤を接触させる工程を含むことを特徴とする、再生治療移植材料の製造方法。

技術分野

0001

本発明は移植する細胞源から腫瘍化の原因になる幹細胞を除去する方法及びそのための未分化細胞除去剤に関する。当該方法により安全性の高い細胞源を効率よく簡便に提供することができるため、幹細胞を用いた再生医療加速化につながる。
また、本発明は、毒性化合物などの標的化合物を未分化細胞特異的に細胞内に導入することができる未分化細胞内輸送用キャリア及び未分化細胞内導入用組成物に関する。

0002

多能性幹細胞は体を構成するあらゆる細胞に分化できる性質やその未分化性を維持できる性質により注目を集め、創薬スクリーニングや疾患メカニズム解明への応用のみならず、再生医療の材料として世界中で研究が進められている。
2010年に世界で初めてのヒトES細胞を用いた第1相臨床試験が米国で急性脊髄損傷に対して始まり、さらに網膜変性疾患に対するヒトES細胞を用いた第1/2相臨床試験の治験許可申請(IND)がFDAにより承認され、ヒト多能性幹細胞を用いた再生医療研究は飛躍的な発展を続けている。
とりわけ、日本発の新たなヒト多能性幹細胞であるiPS細胞は、受精を使用しないなどの理由から倫理的障壁が低く、且つ自家組織からも樹立できるという極めて大きなメリットがあり、再生医療現場からも大きな期待を集めている。我が国では、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターや先端医療センターなどが、加齢黄斑変性症患者を対象に、iPS細胞を使った臨床研究を2013年度から開始する計画であり、慶応大学も2016年に脊髄損傷患者に対しての臨床研究を始める方針である。
このように、ES細胞やiPS細胞といったヒト多能性幹細胞の臨床応用が開始されるなか、品質と安全性を確保して細胞を供給する体制に関しては十分に整備がなされていない。
細胞治療には多能性幹細胞をそのまま用いるのではなく、目的の細胞に分化させてから移植に用いるが、目的の細胞に分化させた細胞源に未分化な幹細胞が混入している場合、その未分化幹細胞が腫瘍形成の原因になることが指摘されている。そこで、細胞治療に用いる細胞源から未分化幹細胞、すなわち腫瘍形成細胞を除去する技術の開発が求められている。
従来は、Nanog,Oct3/4,Stm1などの未分化特異的マーカープロモーターの下流にGFP等の蛍光タンパク質の遺伝子を組み込み、蛍光を発した未分化細胞をフローサイトメトリー等で除去する方法が提案されていた(特許文献1)。しかし、この方法ではゲノム改変する上に、時間と労力がかかり、大量の細胞を処理することは難しかった。また、これまでの報告によると、生体染色が可能な単一の未分化細胞特異的抗体を用いて、フローサイトメトリー等で除去する方法でも完全に未分化細胞を除去することは難しいとも言われている(非特許文献2)。そこで、移植する分化細胞から、分化した細胞を傷つけることなく、腫瘍化の原因となる未分化細胞のみを確実にかつ効率的に除去するための方法が求められていた。とりわけ、培地に添加するだけで未分化細胞のみを殺すことができるような、簡便且つ効率的な未分化細胞除去剤の開発が望まれていた。

0003

特開2005−95027号公報

先行技術

0004

Tateno H,Toyota M,Saito S,Onuma Y,Ito Y,Hiemori K,Fukumura M,Matsushima A,Nakanishi M,Ohnuma K,Akutsu H,Umezawa A,Horimoto K,Hirabayashi J,Asashima M.,J Biol Chem. 2011 Jun 10;286(23):20345-53.
Tang C,Lee AS,Volkmer JP,Sahoo D,Nag D,Mosley AR,Inlay MA,Ardehali R,Chavez SL,PeraRR,Behr B,Wu JC,WeissmanIL,Drukker M.,Nat Biotechnol. 2011 Aug 14;29(9):829-34.
Sulak O,Cioci G,Delia M,Lahmann M,Varrot A,Imberty A,Wimmerova M.,Structure. 2010 Jan 13;18(1):59-72.
International Stem Cell Initiative. Nat Biotechnol. 2007 Jul;25(7):803-16.
Weldon JE,Pastan I. FEBSJ. 2011 Dec;278(23):4683-700. Review.
Mancheno JM,Tateno H,Sher D,Goldstein IJ. Adv Exp Med Biol. 2010;677:67-80. Review.
Onuma,Y.,et al,(2013) Biochem. Biophys. Res. Commun.,431,524-529.
Tateno H.,et.al,(2013) Stem Cells Transl. Med. 2,265-273.
Rumbaut RE,Sial AJ. Microcirculation. 1999 Sep;6(3):205-13.
Tateno H,et.al,Nakamura-Tsuruta S,Hirabayashi J. Nat Protoc. 2007;2(10):2529-37.
Liang YJ,et.al,Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 Dec 28;107(52):22564-9.
Hasehira K,et.al,Stem Cells Transl Med. 2013 Apr;2(4):265-73.

発明が解決しようとする課題

0005

本発明の課題は、移植する分化細胞から未分化細胞を除去するための、簡便且つ効率的な方法を提供することであり、具体的には、未分化状態の幹細胞のみに選択的に反応するレクチンに、毒素タンパク質もしくはその細胞殺傷能力があるドメインRNAi物質、又は低分子毒性化合物などの細胞毒性を有する毒性化合物(毒素)を融合させた融合体を用いて、未分化状態の幹細胞のみを確実に除去する方法及びそのための未分化細胞除去剤を提供することである。
また、同時に、未分化細胞特異的に、標的化合物を細胞内に輸送するための細胞内輸送用キャリア(細胞導入剤)を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0006

本発明者らは以前、レクチンマイクロアレイを用いて、5種類の異なる体細胞(皮膚、胎児子宮内膜胎盤動脈羊膜)から作製したヒトiPS細胞(114検体)と、ヒトES細胞(9検体)の糖鎖プロファイル網羅的に解析した。その結果、元の体細胞が組織毎に異なる糖鎖プロファイルを持っていたにもかかわらず、作製されたiPS細胞は、いずれもほぼ同じ糖鎖プロファイルを示し、初期化遺伝子の導入により一様にES細胞と類似の糖鎖構造収束化することを見出した。ヒトES・iPS細胞とヒト体細胞とのレクチンアレイデータを詳細に解析した結果によると、未分化のヒトES・iPS細胞では、体細胞と比較してα2-6Sia、α1-2Fuc、タイプ1 LacNAcの発現量が顕著に増加していることが推定されたため、その点をさらに、DNAアレイを用いた糖転移酵素遺伝子発現解析を用いた方法によって当該推定を裏付けた(非特許文献1)。
本発明において用いられるrBC2LCNレクチンは、グラム陰性細菌(Burkholderia cenocepacia)由来のBC2L-Cタンパク質N末端ドメインに対応したBC2LCNレクチン(YP_002232818)を形質転換大腸菌で発現させた組換え体であり、複合糖鎖非還元末端の「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc」並びに、「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc」糖を認識するレクチンである(非特許文献1,3)。
本発明者らは、上述のレクチンアレイを用いた実験において、当該rBC2LCNレクチンが、全てのヒトES・iPS細胞と反応するものの、分化した体細胞とは全く反応しないことを見出した。当該レクチンは、ヒトES・iPS細胞で高発現しており分化した体細胞ではほとんど発現のない糖鎖である「α1-2Fuc」、「タイプ1 LacNAc」及び「α2-6Sia」のうちの2つ(α1-2Fuc、タイプ1 LacNAc)を有する「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc(=Hタイプ1構造)」及び「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc(=Hタイプ3構造)」の糖鎖構造と特異的に反応していると解される。
このことは、rBC2LCNレクチンが認識する糖鎖リガンドは未分化幹細胞を特徴付け新規未分化糖鎖マーカーであることを示すものであり、かつ、rBC2LCNレクチンは、当該未分化糖鎖マーカー「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc」及び/又は「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc」(以下、両者をあわせて「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」ということもある。)に特異的なプローブとして用いることができることを示している。

0007

その後、Drukkerらのチームにより、「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc」を認識する抗体が、未分化状態のES細胞及びiPS細胞を認識することが見出され(非特許文献2)、本発明者らの上記知見が裏付けられた。しかし、Drukkerらの上記抗体は「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc(=Hタイプ1構造)」には特異的に反応するものの、「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc」とは反応しない。このことは、rBC2LCNレクチンと比較すると、未分化幹細胞のうち「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc」もしくは「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc含有糖鎖」を検出することができないことであるから、未分化幹細胞マーカーを検出するために用いた場合には、識別性の観点では、rBC2LCNレクチンには及ばないことが予測される。

0008

本発明者らは最近、rBC2LCNレクチンが未分化状態を維持したヒトES細胞やiPS細胞を大変強く染色するのに対し、フィーダー細胞や、分化させた細胞には全く反応しないことを明らかにした。未分化幹細胞に対する染色性は均一で安定的、且つ再現性高く、バックグラウンドはほとんど観察されず、感度特異性細胞表面マーカーであること、未分化幹細胞を培地で培養した状態で生きたまま染色でき、その際に未分化性を失わせず毒性も示さないこと、など実用的に使用する場合に想定されるあらゆる性能において、従来用いられてきた未分化マーカー(SSEA4、Tra-1-60、Tra-1-81、Nanog、Oct3/4)に対する抗体を遥かに凌ぐものであったことが確認でき、特許出願している(特願2012−267679号,非特許文献7)。本発明者らはその後、rBC2LCNが認識する未分化幹細胞表面の標的糖タンパク質としてポドカリキシンを同定した(非特許文献12)。特にrBC2LCNはポドカリキシン上のO型糖鎖、特に「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc(Hタイプ3糖鎖)」を認識していると考えられた。ポドカリキシンはムチン様ドメインを有するため、rBC2LCNが認識するO型糖鎖はポドカリキシン上で無数クラスターを形成していると予測される(非特許文献8)。未分化細胞におけるポドカリキシン自体の発現量も多いことから、rBC2LCNが認識する標的分子は未分化細胞上で高密度に存在していることになる。この結果は、rBC2LCNがレクチンとしては珍しく、未分化幹細胞に対しての顕著な特異的染色能を有している理由の1つとなっている。

0009

このような未分化細胞への特異性及び親和性に優れたrBC2LCNレクチンを用いれば、毒素又はその細胞殺傷能力のあるドメインを融合させて融合タンパク質として未分化細胞を含む試料を処理することで、腫瘍化の原因となる未分化幹細胞のみを特異的にかつ効率的に除去できると考えられる。
しかしながら、以前に報告されたrBC2LCNレクチンと糖鎖との結合状態X線解析結果で、rBC2LCNレクチンが3量体を形成し、2つのサブユニット間で糖鎖を挟みこむような状態で認識することが知られている(非特許文献3)。このことは、rBC2LCNレクチンを融合タンパク質として用いる場合に、rBC2LCNレクチン本来の未分化幹細胞に対する「選択性」、「特異性」、「親和性」を保持するために、その「3量体」という高次構造を保持することが必須であることを意味する。そのため、rBC2LCNに細胞殺傷能力のあるドメインを融合させた融合タンパク質が、rBC2LCNレクチンの「3量体」構造を保持し、かつ未分化幹細胞に対する「選択性」、「特異性」、「親和性」を保ったまま、細胞殺傷能力のあるドメイン本来の細胞殺傷機能を発揮させることは至難の業であることが予想された。まして、培地に添加しただけで未分化細胞のみを完全に殺傷することができるほどの高い選択性、親和性及び殺傷能力を兼ね備えたrBC2LCN融合タンパク質を開発できる可能性はほとんどないことが想定された。しかも、rBC2LCN融合タンパク質の製造に際しても、大腸菌可溶性画分から調製しようとした場合に、rBC2LCN自体の分子の大きさや高次構造を案すると、rBC2LCNの糖鎖結合活性を維持した状態での効率的な調製法構築には大きな困難が予想された。

0010

このような困難が多数予測される中、本発明者らは、まずrBC2LCNに予想される高次構造への影響をできるだけ少なくし、かつ大きな細胞殺傷効果が期待できる細胞殺傷能力のあるドメインの候補として、細胞表面で働き、細胞に孔を形成する機能を有するタイプの細胞殺傷能力のあるドメインに着目した。細胞に孔を形成する機能を有するタイプの細胞殺傷能力のあるドメインとしては例えばaerolysinが知られているが(非特許文献6)、その中でもLSLaレクチンのC末端ドメインとの融合タンパク質(rBC2LCN-LSLC)を作製した(非特許文献6)。LSLaレクチンは、キノコの1種のマスタケ(Laetiporus sulphureus)由来のレクチンであり、細胞表面のN-アセチルラクトサミン糖鎖を認識して細胞表面で多量体化して細胞膜に孔をあけ、細胞を殺傷することが知られている(非特許文献6)。融合タンパク質(rBC2LCN-LSLC)を形質転換大腸菌で製造し、大腸菌可溶性画分から1リッター培養あたり数百マイクログラム程度を精製することができた。しかしながら、高純度精製物は得ることができず、多量体形成能も、未分化細胞殺傷能もなかったことから、両ドメインの立体構造が壊れてしまったことが考えられた。そこで、rBC2LCNとLSLCそれぞれの立体構造を損なわないように、両者間に充分な距離を設けるべくGly-Gly-Gly-Serを1〜3回繰り返したリンカーを導入したrBC2LCN-(GGGS)1-3-LSLCの調製を行った。rBC2LCN-(GGGS)1-3-LSLCを精製後、各種濃度で未分化幹細胞に反応させたが、何れの融合タンパク質も、残念ながら未分化細胞殺傷能を示さなかった。

0011

この結果を踏まえ、細胞表面で働く細胞殺傷能力のあるドメイン又は毒素では未分化細胞で充分にその殺傷能力を働かせることができない可能性が高いと結論し、次に、細胞内で働くタイプの細胞殺傷性毒素で、細胞のタンパク質合成阻害活性を有する毒素を試すこととした。結合方式ペプチド結合を選択し、かつ両ドメイン間には充分な距離を設けることとした。毒素タンパク質としては、タンパク質合成阻害活性を有する代表的な細胞殺傷性毒素である、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が分泌する外毒素exotoxin A(ETA)由来の細胞殺傷能力のあるドメイン領域(以下、当該領域を「ETA」ということもある。)を用い、ペプチド結合によってrBC2LCNと結合させた融合タンパク質を調製した。その際、Gly-Ser-Gly-Gly-Glyの2回繰り返し配列をリンカーとして使用して「rBC2LCN-(GSGGG)2-ETA」を合成し、rBC2LCNとETAとの距離を充分にとったrBC2LCN-ETA融合タンパク質とした。形質転換大腸菌で発現させた後にその可溶性画分にアフィニティークロマトグラフィーを適用したところ、1回の操作のみで、均一な状態の「rBC2LCN-ETA」融合タンパク質を精製することができた。

0012

一方、rBC2LCNの多量体形成についてゲル濾過クロマトグラフィーで調べたところ、以前論文で報告されていた3量体ではなく、2量体を形成していることがわかった。次にrBC2LCN-ETAについても調べたところ、野生型のrBC2LCNと同様に2量体を形成していた。融合タンパク質化した際には多量体形成能が破壊されることが懸念されたため、この結果は驚くべきものであった。rBC2LCNの糖鎖リガンドであるHタイプ1/3に対する解離定数を調べたところ、融合タンパク質化したrBC2LCN-ETA(Hタイプ1:9.9μM,Hタイプ3:32.3μM)は、野生型のrBC2LCN(Hタイプ1:8.3μM,Hタイプ3:25.4μM)と同程度であることがわかった。更に、ヒトiPS細胞に対する結合性も、野生型rBC2LCNと同程度であった。以上の結果から、融合タンパク質化したrBC2LCN-ETAは、野生型のrBC2LCNとほぼ同じ結合特性を保持していることが分かった。このrBC2LCN-ETAを、未分化状態を維持したヒトES細胞やiPS細胞を培養している培地中に添加したところ、培地中のヒトES細胞やiPS細胞を非常に効率よく殺傷する効果を確認できた。しかもその作用が、同じ培地中に存在するフィーダー細胞や、分化させた細胞には全く影響を与えず、未分化細胞に対する顕著な特異性を保持した作用であることもわかった。そして、そのまま長期間培養し続けても分化細胞特性には変化が見られないことも確認できた。これらの結果は、rBC2LCN-ETAは、未分化細胞表面の「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」糖鎖特異的に結合後、速やかに未分化細胞内に侵入し、未分化細胞内では「ETA」ドメインが働き、タンパク合成に必須のEF2ペプチド伸長因子ADP-リボシル化して未分化細胞でのタンパク質合成を全て阻害し、最終的に細胞死誘導したことを意味する。このような「rBC2LCN-ETA」の未分化細胞殺傷作用は極めて強力であることは驚くべきことであり、発明者らにとっても嬉しい誤算であった。

0013

ここで、「rBC2LCN-ETA」が未分化細胞内で強い細胞殺傷作用を示したということは、「rBC2LCN」と「ETA」との融合体が速やかに未分化細胞内に侵入したために、「ETA」による細胞内でのタンパク合成阻害作用が十分に発揮できたと解されるから、「rBC2LCN-ETA」融合体には未分化細胞内に侵入する能力があることを意味している。一般的にレクチン類は、細胞表面の特定の糖鎖を認識する場合には、細胞表面の糖鎖に特異的に結合した状態で観察されているものの、認識した糖鎖を介して細胞内へ侵入する現象はほとんど知られていないことを考えると、ETAと融合した「rBC2LCN」が未分化細胞内に侵入する現象は予想外であり、「rBC2LCN」の特性として、未分化細胞表面の「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」糖鎖に特異的に結合する作用と共に、結合後に糖鎖を介して未分化細胞内に侵入させる作用も有している可能性が考えられた。

0014

そこで、「rBC2LCN」と結合させて未分化細胞殺傷効果を発揮させる毒素としては、細胞内で働くことが明らかな毒素が適していると考え、ETAと同様にタンパク質合成阻害活性を有する毒素から選択した。
タンパク質合成阻害活性を有する細胞殺傷性毒素としては、植物種子に由来する猛毒のリシンサポリン細菌由来の外毒素等が知られるが、そのうちでもストレプトアビジンとの融合タンパク質として購入が可能なサポリンを検討した。サポリンは、Saponaria officinalisの種子に含まれるタンパク質性毒素で、直接リボソーム不活性化し,極めて低濃度で細胞死を引き起こすことができるタンパク質であり、ストレプトアビジンを融合させたStreptavidin-ZAP(Advanced Targeting Systems)として市販されている。rBC2LCNをビオチン化させた後、Streptavidin-ZAPに対してビオチンアビジン結合させてrBC2LCN-ZAPを調製し、未分化幹細胞に対して反応させた。当初の実験では、未分化幹細胞に対するrBC2LCN-ZAP融合体(ストレプトアビジン融合サポリン+ビオチン化rBC2LCN)を、Streptavidin-ZAP濃度として1ng,10ng,100ng/2mlの3段階で作用させたにもかかわらず、全く未分化細胞殺傷活性が確認できなかった。当初はその結果を、ビオチンアビジン系でrBC2LCNに毒素を融合させると、多数の毒素がランダムに結合してしまうために、rBC2LCNの糖結合活性を大きく損なったからである、と解釈したが、その後、当初のアッセイで用いたrBC2LCN及び毒素の量では、未分化細胞殺傷活性を引き起こすための量として不十分であった可能性があることに気付いた。そこで、再度未分化幹細胞に対するrBC2LCN-ZAP融合体を当初の100倍以上もの濃度で作用させたところ、未分化幹細胞のみを殺傷することができた。つまり、rBC2LCN−毒素融合体において、毒素の種類はETAに限られることはなく、rBC2LCNとの結合様式共有結合のみならず、ストレプトアビジン−ビオチン結合様式であっても、実質的に殺傷に充分な量の毒素を含むrBC2LCN−毒素融合体を作用させれば、未分化幹細胞を効率的に殺傷できることが確認できた。

0015

さらに、rBC2LCNに低分子毒素を連結した場合の未分化幹細胞の殺傷効果についても検討した。低分子毒素としては、光細胞毒性の効果が知られているFITC(非特許文献9)を用いた。未分化状態を維持したヒトiPS細胞を培養している培地中にFITC標識rBC2LCNを添加し、1時間後に励起光を通常の照射時間よりも長く照射したところ、ヒトiPS細胞を非常に効率よく殺傷する効果を確認できたことから、タンパク質毒素のみならず、低分子化合物毒素も適用可能であることがわかった。また、FITCは細胞表面抗原を標識するために用いられることはあるが、細胞内に侵入する性質についての報告はなく、FITCが光細胞毒性を引き起こすメカニズムも不明である。そして、本発明では、FITCのrBC2LCN融合体がrBC2LCNの認識糖鎖を細胞表面に有さない分化細胞に対しては、FITCが何ら細胞毒性を示さない実験結果が得られていることから、FITCが融合したことで「rBC2LCN」が細胞内への侵入能を獲得したとは考えにくい。このことからみて、FITC-rBC2LCN融合体の細胞内侵入能は、「rBC2LCN」本来の特性であることが強く示唆された。そこで、FITC及び毒性の低いCy3で標識した「rBC2LCN」を未分化細胞に対して作用させ、時間を追って観察したところ、いずれの場合も最初は未分化細胞表面の糖鎖に結合しているが、時間を追うごとに細胞内に集まることが確認できた。

0016

以上の結果から、本発明で用いた野生型の「rBC2LCN」自身に未分化細胞表面の「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」糖鎖を認識して結合するだけでなく、当該糖鎖もしくは糖鎖が結合している複合糖質)を介して細胞内に侵入する効果があることが実証できた。このことは、未分化細胞を特異的に殺傷しようとするときには、細胞殺傷能力のある毒素成分であればいかなる毒素であっても、rBC2LCNに結合させ「rBC2LCN−毒素」融合体として未分化細胞に作用させることで、速やかに未分化細胞内に侵入できるため、細胞内で毒素本来の細胞毒性を発揮できることである。特に、毒素として細胞内で細胞毒性を発揮できるタイプの毒素、たとえば、タンパク合成阻害作用を有するタンパク質毒素、又は低分子化合物の毒素を選択すれば、未分化細胞内で効率良く細胞殺傷能が発揮できる。
さらに、本発明において、分化細胞に対しては培地中にrBC2LCN−毒素融合タンパク質を添加した状態で長期間培養し続けても、分化細胞の特性には全く変化が見られず、分化細胞に対しては全く毒性がないことが確認できたため、そのまま再生医療用の細胞移植材料として用いることができる。つまり、本発明のrBC2LCN−毒素融合タンパク質は、培地中に添加するだけで、ヒトES細胞・iPS細胞を分化させた細胞源から、残存している未分化細胞を効率的に殺傷除去することができ、移植細胞材料の腫瘍化のリスクを減少できる。

0017

また、本発明者らの最近の研究(非特許文献7)により、未分化細胞をrBC2LCN存在下で長期に亘って培養し続けてもその増殖性に影響を与えないこと、すなわちrBC2LCN自身には未分化細胞に対する毒性がないことが確認されている。今回、毒性の少ない標識用色素化合物であるCy3をrBC2LCNに結合させた「Cy3-rBC2LCN」の存在下で未分化細胞を長時間培養すると、未分化細胞表面から時間を追うごとに細胞内部に移行することが蛍光観察された。すなわち、「Cy3」がrBC2LCNによって未分化細胞の細胞内部にまで運ばれ、細胞内で「Cy3」本来の機能を発揮できることが確認できた。また、数十秒照射すると毒性を発揮してしまう標識用色素化合物であるFITCの場合でも、通常の蛍光観察用の数秒以内の短時間照射であれば、未分化細胞を殺傷させることなく、細胞の内在化のみが観察できることが確認できた。
そうしてみると、毒素や標識用色素化合物以外の、例えば核酸生理活性タンパク質などであっても、rBC2LCNと融合させて未分化細胞に作用させることで、未分化細胞の生存脅かすことなく未分化細胞内に効率良く輸送することができ、それぞれの本来の機能を発揮できることが明らかとなった。
このことは、rBC2LCNが、種々の化合物を未分化細胞特異的に細胞内に輸送するためのキャリア(細胞内導入剤)として働いたことであるから、rBC2LCNをキャリアとして用いる未分化細胞特異的な細胞内輸送システムを提供できたということもできる。
以上の知見を得たことで本発明を完成するに至った。

0018

即ち,本発明は以下の発明を包含する。
〔1〕標的物質を未分化細胞内に導入するための方法であって、
標的物質を、rBC2LCNと化学的もしくは電気的に融合させ、rBC2LCN−標的物質融合体として未分化細胞と接触させることを特徴とする、未分化細胞内導入方法
〔2〕 標的物質とrBC2LCNとがリンカーもしくはスペーサーを介して、又は介さずに共有結合されていることを特徴とする、前記〔1〕に記載の未分化細胞内導入方法。
〔3〕 標的物質とrBC2LCNとがリンカーもしくはスペーサーを介して、又は介さずにビオチン−ストレプトアビジン結合により融合されていることを特徴とする、前記〔1〕に記載の未分化細胞内導入方法。
〔4〕 rBC2LCN−標的物質融合体は、蛍光物質又は発光酵素によって標識されており、蛍光又は発光を発する位置を観察することで、標的物質が未分化細胞内に取り込まれたことを判定する工程を含むことを特徴とする、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の未分化細胞内導入方法。
〔5〕 rBC2LCNを有効成分として含むことを特徴とする、標的物質の未分化細胞内導入用キャリア。
〔6〕 前記未分化細胞内導入用キャリアは、有効成分として含まれるrBC2LCNを標的物質に対して化学的もしくは電気的な融合体を形成させ、rBC2LCN−標的物質融合体として未分化細胞内に侵入させるものである、前記〔5〕に記載の未分化細胞内導入用キャリア。
〔7〕 標的物質とrBC2LCNとが化学的もしくは電気的に融合しているrBC2LCN−標的物質融合体を有効成分として含むことを特徴とする、標的物質の未分化細胞導入用組成物。
〔8〕 rBC2LCN−標的物質融合体が蛍光物質又は発光酵素によって標識されていることを特徴とする、前記〔7〕に記載の未分化細胞導入用組成物。
〔9〕 標的物質とrBC2LCNとが、リンカーもしくはスペーサーを介して、又は介さずに共有結合されていることを特徴とする、前記〔7〕又は〔8〕に記載の未分化細胞導入用組成物。
〔10〕 標的物質がタンパク質であって、rBC2LCNとリンカーもしくはスペーサーを介して、又は介さずに共有結合されたrBC2LCN−標的物質融合体が、それぞれの遺伝子を結合させた融合遺伝子を用いて得られた発現産物であることを特徴とする、前記〔9〕に記載の未分化細胞導入用組成物。
〔11〕 標的物質とrBC2LCNとがリンカーもしくはスペーサーを介して、又は介さずにビオチン−ストレプトアビジン結合により融合されていることを特徴とする、前記〔7〕又は〔8〕に記載の未分化細胞導入用組成物。
〔12〕 標的物質が、細胞内で細胞毒性を発揮できる毒性化合物である、前記〔7〕〜〔11〕のいずれかに記載の毒性化合物の未分化細胞導入用組成物。
〔13〕 毒性化合物が、タンパク質毒素もしくはその細胞殺傷能力のあるドメイン、細胞毒性を有する低分子化合物、又は核酸である、前記〔12〕に記載の未分化細胞導入用組成物。
〔14〕 毒性化合物とrBC2LCNとが、リンカーもしくはスペーサーを介して、又は介さずに共有結合又はビオチン−ストレプトアビジン結合により融合されていることを特徴とする、前記〔12〕又は〔13〕に記載の未分化細胞導入用組成物。
〔15〕 毒性化合物がタンパク質毒素であって、rBC2LCNとリンカーもしくはスペーサーを介して、又は介さずに共有結合されたrBC2LCN−タンパク質毒素融合体であることを特徴とする、前記〔14〕に記載の未分化細胞導入用組成物。
〔16〕 前記rBC2LCN−タンパク質毒素融合体が、rBC2LCN遺伝子及びタンパク質毒素遺伝子とがスペーサー配列を介して又は介さずに結合された融合遺伝子を用いて得られた発現産物であることを特徴とする、前記〔15〕に記載の未分化細胞導入用組成物。
〔17〕 タンパク質毒素が、緑膿菌の外毒素A由来殺傷性ドメイン(ETA)であることを特徴とする、前記〔15〕又は〔16〕に記載の未分化細胞導入用組成物。
〔18〕 毒性化合物とrBC2LCNとがリンカーもしくはスペーサーを介して、又は介さずにビオチン−ストレプトアビジン結合により融合されたrBC2LCN−タンパク質毒素融合体であることを特徴とする、前記〔14〕に記載の未分化細胞導入用組成物。
〔19〕 毒性化合物が低分子毒性化合物であって、rBC2LCNと低分子毒性化合物がリンカーもしくはスペーサーを介して、又は介さずに融合されたrBC2LCN−低分子毒性化合物融合体であることを特徴とする、前記〔14〕に記載の未分化細胞導入用組成物。
〔20〕 細胞内で細胞毒性を発揮できる毒性化合物とrBC2LCNとが化学的もしくは電気的に融合しているrBC2LCN−毒性化合物融合体を有効成分として含むことを特徴とする、未分化幹細胞除去剤。
〔21〕 毒性化合物が、タンパク質毒素もしくはその細胞殺傷能力のあるドメイン、細胞毒性を有する低分子化合物、又は核酸である、前記〔20〕に記載の未分化幹細胞除去剤。
〔21〕 毒性化合物とrBC2LCNとが、リンカーもしくはスペーサーを介して、又は介さずに共有結合又はビオチン−ストレプトアビジン結合により融合されていることを特徴とする、前記〔20〕又は〔21〕に記載の未分化幹細胞除去剤。
〔22〕 毒性化合物がタンパク質毒素であって、rBC2LCNとリンカーもしくはスペーサーを介して、又は介さずに共有結合されたrBC2LCN−タンパク質毒素融合体であることを特徴とする、前記〔21〕に記載の未分化幹細胞除去剤。
〔23〕 前記rBC2LCN−タンパク質毒素融合体が、rBC2LCN遺伝子及びタンパク質毒素遺伝子とがスペーサー配列を介して又は介さずに結合された融合遺伝子を用いて得られた発現産物であることを特徴とする、前記〔22〕に記載の未分化幹細胞除去剤。
〔24〕 タンパク質毒素が、緑膿菌の外毒素A由来殺傷性ドメイン(ETA)であることを特徴とする、前記〔22〕又は〔23〕に記載の未分化幹細胞除去剤。
〔25〕 毒性化合物とrBC2LCNとがリンカーもしくはスペーサーを介して、又は介さずにビオチン−ストレプトアビジン結合により融合されたrBC2LCN−タンパク質毒素融合体であることを特徴とする、前記〔21〕に記載の未分化幹細胞除去剤。
〔26〕 毒性化合物が低分子毒性化合物であって、rBC2LCNと低分子毒性化合物がリンカーもしくはスペーサーを介して、又は介さずに融合されたrBC2LCN−低分子毒性化合物融合体であることを特徴とする、前記〔21〕に記載の未分化幹細胞除去剤。
〔27〕 幹細胞を分化誘導した後の培地中に、rBC2LCNと細胞毒性を発揮できる前記〔20〕〜〔26〕のいずれかに記載の未分化幹細胞除去剤を添加することを特徴とする、未分化状態の幹細胞の殺傷方法
〔28〕 幹細胞から分化誘導された分化誘導後の細胞に対して、前記〔20〕〜〔26〕のいずれかに記載の未分化幹細胞除去剤を接触させる工程を含むことを特徴とする、再生治療移植材料の製造方法。
〔29〕 幹細胞をビーズ状、中空糸状もしくは平板状の基材上で培養し、次いで分化誘導処理を施した後に、基材が存在する培地中に前記未分化幹細胞除去剤を添加することを特徴とする、前記〔28〕に記載の製造方法。
〔30〕 幹細胞を培養液中で浮遊培養し、次いで分化誘導処理を施した後に、基材が存在する培養液中に前記未分化幹細胞除去剤を添加することを特徴とする、前記〔28〕に記載の製造方法。

発明の効果

0019

本発明によって、はじめてrBC2LCNが未分化細胞特異的に種々の物質を細胞内に輸送するキャリア(細胞内導入剤)として機能することが見出され、未分化細胞特異的な細胞内輸送システムが提供できた。
本発明により提供されたrBC2LCNと種々の標的物質との融合体を含有する組成物は、未分化細胞が存在している細胞群に作用させると、未分化細胞特異的に細胞内部に侵入し、標的物質を未分化細胞内に効率良く輸送して当該標的物質本来の機能を未分化細胞内で発揮させることができるので、標的物質に対する「未分化細胞導入用組成物」ということができる。
たとえば、rBC2LCN−毒素融合体の場合は、培地中に添加するだけで未分化幹細胞を特異的に殺傷可能な、優れた「未分化細胞除去剤」となる。本発明の「未分化細胞除去剤」を被検細胞の培地に直接添加することで、未分化状態の幹細胞は殺傷することができるのに対して、当該「未分化細胞除去剤」存在下で長期間培養しても分化細胞には毒性がない。
したがって、本発明の「未分化細胞除去剤」は、移植に用いる細胞源から腫瘍形成細胞であるヒトiPS・ES細胞を簡便かつ効率的に除去でき、安全性の高い移植細胞を調製することができるため、ヒトES・iPS細胞を用いた再生医療への応用が期待される。

図面の簡単な説明

0020

rBC2LCN-ETAサブユニットの構造
rBC2LCN-ETA精製過程電気泳動像
精製BC2LCN-ETAの電気泳動像
rBC2LCNとrBC2LCN-ETAのゲル濾過クロマトグラフィー解析
rBC2LCNとrBC2LCN-ETAのヒトiPS細胞への結合
ヒトES細胞に対するrBC2LCN-ETAの殺傷効果
ヒトiPS細胞に対するrBC2LCN-ETAの殺傷効果
分化細胞に対するrBC2LCN-ETAの殺傷効果
rBC2LCN-ETAの殺傷効果
ヒトiPS細胞に対するrBC2LCN-Saporinの殺傷効果
ヒトiPS細胞に対するFITC標識rBC2LCNの殺傷効果
ヒトiPS細胞へのFITC標識rBC2LCN及びrBC2LCN-ETAの内在化
ヒトiPS細胞へのCy3標識rBC2LCN及びrBC2LCN-ETAの内在化

0021

1.rBC2LCNレクチンについて
(1−1)「rBC2LCNレクチン」の糖鎖認識能について
本発明で用いる「rBC2LCNレクチン」又はその改変体は、細胞表面の未分化糖鎖マーカーである「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc(式1)」及び「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc(式2)」の未分化糖鎖マーカーと特異的に結合する。
「BC2LCNレクチン」は、グラム陰性細菌(Burkholderia cenocepacia)から見つかったレクチンであり、BC2L-Cと呼ばれるタンパク質のN末端ドメイン(GenBankNCBI-GI登録番号:YP_002232818)に相当する(非特許文献3)。BC2LCNはTNF様タンパク質に構造類似性を示し、溶液中では3量体を形成し、2つのサブユニット間で糖鎖を挟みこむような状態で認識することが知られている。糖鎖アレイを用いた解析から、このレクチンは「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc(Hタイプ1糖鎖)」、「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc(Hタイプ3糖鎖)」と共に、Hタイプ1又はHタイプ3糖鎖を含有する糖鎖構造である、「Lewis b糖鎖(Fucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc)」、「Globo H糖鎖(Fucα1-2Galβ1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc)」に対しても結合特異性を示すことが明らかになっている。
「BC2LCNレクチン」は、糖鎖を含まないので、形質転換細菌によっても大量生産可能である。具体的には、GenBank/NCBI-GI登録番号:YP_002232818(Genome ID:206562055)のアミノ酸配列(配列番号1)をコードするBC2LCN遺伝子を用い、適宜宿主に対して最適化した後、形質転換した大腸菌などから発現させ、通常のタンパク質精製手段により精製することができる。本発明の実施態様でも組換え型BC2LCN(rBC2LCN)を用いているので、以下、「rBC2LCN」ともいう。
その際、rBC2LCNレクチンとしては、配列番号1に対応する全長は必要とせず、また配列番号1において部分的に1部のアミノ酸欠失置換、挿入、付加されている場合であっても、「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc」及び「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc」、すなわち「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」で表される糖鎖構造を特異的に認識する特性を維持していればよい。
本発明の「未分化細胞除去剤」を含め、標的物質の未分化細胞内輸送用キャリアとして用いることのできるrBC2LCNレクチン又はその改変体は、以下のように表現することができる。
「配列番号1に示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc」及び「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc」の糖鎖構造を特異的に認識するタンパク質。」と表現できる。
なお、ここで、数個とは20個以下、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下の自然数を表す。また、本発明では、以下、これらrBC2LCNレクチン又はその改変体をあわせて、単に「rBC2LCN」という。

0022

(1−2)「rBC2LCNレクチン」の未分化細胞内侵入能について
本発明で用いる「rBC2LCN」には認識糖鎖である「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」を介して、又は当該糖鎖に結合したタンパク質もしくは脂質を介して未分化細胞内に侵入する特性がある。また、「rBC2LCN」自身に細胞毒性はないため、その侵入特性を利用し、「rBC2LCN」に種々のタンパク質や低分子化合物に代表される各種化合物を融合させて未分化細胞に作用させることにより、未分化細胞内に効率良く各種化合物(輸送対象の化合物を「標的化合物」ということもある。)を輸送することができ、細胞内で輸送した化合物本来の機能を発揮させることができる。輸送した化合物が細胞内で毒性を発揮できる化合物であれば、その細胞毒性を発揮させることができる。

0023

「rBC2LCN」と各種化合物との融合体が、「rBC2LCN」の認識糖鎖である「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」に結合後の未分化細胞内に侵入する経路など詳細な侵入メカニズムまでは不明である。未分化細胞、特に全能性を有するES細胞もしくはiPS細胞表面では、「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc(Hタイプ3糖鎖)」を含む複合糖鎖で修飾されたポドカリキシンが、無数のクラスターを形成していること(非特許文献8)からみて、未分化細胞表面に存在するポドカリキシンを介して侵入している可能性があり、「rBC2LCN」が未分化細胞内に侵入する能力が発揮できるためには、当該ポドカリキシンが形成するクラスター構造が必要である可能性もある。しかし、当該糖鎖を構成糖に含むGloboH含有糖脂質も未分化細胞表面特異的に存在していることが確認されており(非特許文献11)、GloboH含有糖脂質が細胞表面全体を覆うように存在している可能性があることから、糖脂質を介して未分化細胞内に侵入している可能性も否定できない。
いずれにしても、未分化細胞、とりわけ多能性幹細胞であるiPS/ES細胞の細胞表面は、分化細胞表面には存在しない多数の「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」糖鎖含有複合糖質に覆われており、各種化合物との融合体を形成した「rBC2LCN」が、未分化細胞表面の当該「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」糖鎖に結合した後に、当該糖鎖を介して、又は当該糖鎖含有複合糖質を介して未分化細胞内に侵入する能力を有していることは確実である。
つまり、「rBC2LCN」には、「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」含有複合糖質を細胞表面に有している未分化細胞に対してのみ、融合させた種々の化合物(標的化合物)を細胞内へ輸送するという、未分化細胞特異的な「細胞内輸送作用」を有している「細胞内輸送用キャリア(細胞内導入剤)」であるといえる。
本発明においては、本発明の未分化細胞用の「細胞内輸送用キャリア」となるrBC2LCNに対し、輸送対象となる標的物質を、化学的もしくは電気的に融合させた状態の融合体であって、かつ未分化細胞内へ導入するための融合体を、単に「rBC2LCN融合体」と表現することがある。

0024

そして、融合させる化合物として細胞内で細胞毒性を発揮できる毒素タンパク質や毒性低分子化合物を選択すれば、未分化細胞内でのみ細胞毒性を発揮し、分化した正常細胞には影響を与えることなく、未分化細胞のみを特異的に殺傷することができる。
なお、本発明において「毒性化合物」もしくは「毒素」というとき、毒素タンパク質や毒性低分子化合物及びRNAi物質、アンチセンス核酸リボザイムなどの細胞障害性の核酸など、細胞に対して毒性を発揮する物質の総称として用いている。毒素タンパク質は、細胞毒性を有するタンパク質、糖タンパク質、ペプチドなどを示し、「毒性低分子化合物」というとき、抗生物質色素など、毒素タンパク質及び核酸以外の毒性化合物の全てを含む。この「毒性化合物」のうち、本発明では、細胞の内部で細胞毒性を発揮できる毒性化合物を用いることが好ましい。

0025

ここで、未分化細胞のうちでも、間葉系幹細胞など体性幹細胞の場合は、iPS/ES細胞と比較すると細胞表面に存在する「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」糖鎖の総量が少ないため、生理活性物質栄養物質など未分化細胞に対してプラスの効果をもたらす物質であって、微量でも確実に送達できればよい場合には細胞内導入剤としてiPS/ES細胞の場合と同様に有効性がある。しかし、完全に殺傷することが要求される毒素との融合体の場合は、細胞表面に、rBC2LCNの認識及び細胞内への輸送のために必須の「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」糖鎖総量が少ないことによって、細胞内に輸送できる毒素量も少なく、結果として細胞へのダメージが少ないため、確実な殺傷効果は望めない。したがって、本発明の「rBC2LCN−毒素」融合体を未分化細胞除去剤として用いる場合の対象細胞は、iPS/ES細胞など全能性の高い幹細胞が好ましい。

0026

2.rBC2LCNと融合させる対象となる化合物(標的化合物)について
「rBC2LCN」には、未分化細胞内に輸送したい化合物であれば、どのような種類の化合物であっても、未分化細胞特異的な「細胞内輸送作用」により、融合させた化合物を細胞内へ輸送することができる。具体的には、毒素タンパク質、標識タンパク質、生理活性タンパク質などのタンパク質もしくは糖タンパク質、脂質もしくは糖脂質、DNA、RNAなどの核酸、フルオレッセイン誘導体などの標識用色素、その他の低分子化合物が挙げられる。なお、その際の融合方法は、後述の通り、遺伝子工学的な結合であっても、化学的な結合方法であってもよい。

0027

本発明の「rBC2LCN」に毒素を融合させた「rBC2LCN−毒素融合体」によって、未分化細胞内で細胞毒性を発揮させようとする場合、どのような毒素であっても融合させることで未分化細胞内へ輸送することはできる。しかし、毒素の種類として、細胞壁を破壊するタイプの毒素など、細胞外で細胞毒性を発揮する毒素の場合は、むしろ細胞内に輸送されてしまうことで本来の細胞毒性が発揮できず不適切である。したがって、本発明においてrBC2LCNと融合させる毒素としては、細胞内で細胞障害・殺傷機能を発揮できる毒素、特に細胞内でのタンパク質合成阻害作用を有するタンパク質毒素、RNAi物質などの核酸類、もしくは低分子化合物毒素が好ましい。また一般に、タンパク質合成阻害作用を有する毒素は、細胞表面に特異的レセプターを有しているため、野生型の全長毒素タンパク質を用いると、rBC2LCNとの融合体としても無差別的に細胞毒性を発揮する可能性があり、分化細胞に対する細胞毒性が無視できない。すなわち、「rBC2LCN−毒素」融合体を、未分化細胞除去剤として生体内で使用する場合には、特に大きな副作用が予測されるため、あらかじめ毒素タンパク質からレセプター結合ドメインを削除するか、又はタンパク質への変異導入など、毒素タンパク質細胞表面の特異的レセプターへの結合性を失わせる工夫をすることが好ましい。このような改変方法は、当業者にとって周知である。例えば、Pseudomonas aeruginosaが産生する外毒素である緑膿菌毒素(PE)の場合、PE受容体への結合部位を有し、正常細胞と結合活性のあるドメインI領域を遺伝子レベルで除去したPE改変体が知られている(Kondo,T.,et al,J.Biol.Chem.,263,9470-9475(1988))。本発明の実施例で用いた緑膿菌の外毒素A由来毒素(ETA)の場合は、緑膿菌外毒素Aのうちの細胞殺傷ドメイン領域(配列番号2)のみを用いている。

0028

本発明で用いる「rBC2LCN」と融合させる各種化合物、例えば各種毒素タンパク質の塩基配列、アミノ酸配列は商用データベースから取得できる。具体的には、緑膿菌の外毒素の外毒素A(PDB登録番号:1XK9)の他、ジフテリアトキシン(PDB登録番号:1MDT)、リシン(PDB登録番号:2AAI)、サポリン(PDB登録番号:3HIS)、コレラトキシン(PDB登録番号:1XTC)、エンテロトキシン(PDB登録番号:1LTH)、百日咳毒素(PDB登録番号:1PRT)などがある。これら毒素タンパク質全長でなくても、その細胞殺傷能力のあるドメイン領域を含んでいればよい。なお、タンパク質毒素ではない場合でも、リンカーまたはスペーサーを結合することができる毒素化合物であれば、同様に用いることができる。
例えば、緑膿菌の外毒素A(PDB登録番号:1XK9)のうち殺傷能力のあるドメイン領域(「ETA」)に対応するアミノ酸配列(配列番号2)をコードする遺伝子を適宜大腸菌などの宿主に対して最適化して用い、形質転換した宿主から大量生産することができる。
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)はグラム陰性好気性桿菌に属する真正細菌一種である。緑膿菌が分泌する外毒素の代表がエキソトキシンA(外毒素A)であり、ペプチド伸張因子であるEF2をADP-リボシル化することで動物細胞のすべてのタンパク質合成を不可逆的に阻害するため、最終的に細胞は死に至る。

0029

3.rBC2LCNと輸送対象の標的物質との結合方法
以下、未分化細胞内に輸送する物質として典型的な、毒素タンパク質をrBC2LCNに結合させる場合について主として詳細に述べるが、当該物質が毒素タンパク質のみに限定されるわけではない。

0030

(3−1)融合方法
rBC2LCNと未分化細胞内に輸送しようとする標的物質とを融合させる方法としては、化学的な方法と遺伝子レベルで連結する方法とがあり、化学的な方法の場合には共有結合の他にビオチン−ストレプトアビジン結合などがある。また、FITCなどの低分子化合物の場合は、rBC2LCNとの通常の化学反応により、rBC2LCNの表面の官能基(水酸基アミノ基など)に対してランダムに共有結合、水素結合などの結合様式により結合し、rBC2LCN融合体を形成できる。

0031

たとえば、「rBC2LCN」と「毒素」との融合法は、共有結合による融合体化が好ましく、低分子化合物も含めて一般的な手法として二価性架橋剤などの化学的な結合方法を用いることができ、siRNAなどRNAi物質を結合させる場合は、ビオチン−ストレプトアビジン結合、もしくはrBC2LCNと正電荷を帯びたDNA結合性ペプチド(例えば、プロタミン由来のArgリッチなクラスター配列;Winkler J,et al,Mol Cancer Ther. 2009 Sep;8(9):2674-83)との融合タンパク質などを用いる。
一方、RNAiなどの核酸は、通常マイナス電荷を帯びているため、同様にマイナスに荷電している未分化細胞表面に直接接しないように、rBC2LCNと正電荷を帯びたDNA結合ペプチドとからなる融合タンパク質と核酸との間で予めコンプレックスを形成させるなどの工夫を行うことが好ましい。
毒素がタンパク質毒素の場合は、遺伝子レベルで結合することが好ましく、その際には両遺伝子を、直接、又は一般的なDNAリンカーを用い、周知の方法により繋ぐことができる。

0032

また、本発明において、rBC2LCNを毒素とスペーサー配列を介して融合タンパク質化した際にも、rBC2LCNの多量体形成能や結合特性が変化しないことを初めて明らかにした。遺伝子レベルで結合させた毒素融合タンパク質は、ロット間差のない、均一なタンパク質として調製することが可能なため、安定供給可能な未分化幹細胞除去剤として特に期待される。コンジュゲート法として、ビオチン−ストレプトアビジン系などを用いて後からrBC2LCNに毒素を連結させることもできるが、手間もかかる上に、rBC2LCNにランダムに毒素が導入されることになるために、ロット間差も発生し、均一なタンパク質としての調製が困難であるという課題もある。したがって、化学的結合の場合も、遺伝子レベルで結合させた毒素融合タンパク質のように、rBC2LCNと毒素との共有結合による融合体形成が望ましい。
以下には、主として典型的なタンパク質毒素をrBC2LCNに共有結合させる場合について詳細に述べるが、当該方法には限られるわけではない。

0033

(3−2)リンカーまたはスペーサー
本発明では、rBC2LCNに対して細胞内に輸送して働かせたい化合物を融合する際に、リンカー(クロスリンカー)またはスペーサー(スペーサー配列)を用いることができる。「rBC2LCN」本来の未分化細胞特異的な結合機能及び侵入機能と、輸送対象化合物本来の機能とのそれぞれを最大限発揮するために、両者の間には一定の距離を保つことが好ましいため、適当な長さのリンカー/スペーサーを介して結合させることが好ましい。適当な長さのリンカー/スペーサーは当業者には周知であって、適宜合成でき、各種市販もされている。
本発明で用いられるペプチド結合のためのスペーサー配列としては、ペプチド結合可能なアミノ酸残基数4〜10のアミノ酸配列からなる周知のスペーサー配列が用いられ、1〜3回の繰り返し配列として用いる。典型的には、「GSGGG(配列番号3)」、「GGGS(配列番号4)」などの高次構造を形成しないグリシン及び/又はセリンから構成されるアミノ酸配列が好ましく用いられる。例えば、未分化細胞内に毒素タンパク質を輸送する際に、rBC2LCN及びそれと融合する毒素又はその細胞殺傷能力のあるドメインを、これらのスペーサー配列を介してペプチド結合させることで、両者間に充分な距離を保つことができ、それぞれの糖鎖結合能力及び細胞殺傷能力を最大限発揮させることができる。

0034

また、本発明で化学結合によりコンジュゲートする際にも上記ペプチドリンカーを用いても良いが、好ましいリンカーとしては、ポリエチレングリコール、特に好ましくは還元剤で切断が可能なチオール基を導入したチオールリンカーなどがある。
低分子化合物を結合させるためには二価性架橋剤などの化学的な結合剤が用いられる場合が多いので、これら結合剤由来のリンカーによりrBC2LCNと標的物質が繋がれることになる。
本発明のrBC2LCNを、siRNA、miRNAなどのRNAi物質または各種mRNAもしくはDNAなど核酸を細胞内に導入するために用いる場合には、rBC2LCNと直接的に結合されるのは、核酸ではなく正電荷を帯びたDNA結合ペプチドなどの核酸キャリアであることが一般的であるが、rBC2LCNと核酸キャリアとの間の適切な距離を保つためにも適宜リンカー/スペーサーを用いることがある。

0035

また、融合体を形成する際に、輸送対象化合物(標的物質)の側に細胞内での輸送したい小器官への輸送シグナルを結合させておくことで、さらに効率的に望みの小器官へ導くことができる(例えば、図1のC末端側の小胞体保留シグナルに相当する「KDEL(配列番号6)」配列など)。RNAi物質など輸送対象物質を核内までに輸送する必要がある場合には、「PPKKKRKV(配列番号7)」などの核移行シグナルを用いることが有効である。
さらに、rBC2LCNとの融合体の状態でも十分にその機能が発揮できる場合は不要であるが、輸送対象化合物を輸送先で切り離したい場合には、細胞内プロテアーゼによる切断部位を入れておくことで、融合体として輸送していた化合物を細胞内で適宜切り離すことができる。切断部位の導入法は当業者には周知である。例えば、塩基性アミノ酸標的配列(標準的には、Arg-X-(Arg/Lys)-Arg)を入れておけば、furinというCa2+依存的膜貫通セリンエンドプロテアーゼによって切断される(Weldon JE,et al.,FEBSJ. 2011 Dec;278(23):4683-700.)。DNAまたはRNAi物質などの核酸を未分化細胞内に導入する場合は、rBC2LCNに結合されたArgクラスターなどの正電荷物質との電荷電荷相互作用で形成された複合体の状態で、未分化細胞の細胞内に到達後には速やかに分離する。

0036

(3−3)毒素融合rBC2LCNタンパク質の製造方法
BC2LCN含有発現ベクターのBC2LCN遺伝子の5’もしくは3’末端側にETAなどの毒素遺伝子を、必要に応じてスペーサーを介して導入することにより毒素融合rBC2LCNタンパク質発現ベクターを構築する。次に、発現ベクターをコンピーテントセルに形質転換する。そして、形質転換した大腸菌などの宿主を常法により液体培養して、毒素融合rBC2LCNタンパク質を発現誘導する。

0037

(3−4)毒素融合rBC2LCNタンパク質の精製方法及び確認方法
大腸菌内で発現誘導した毒素融合rBC2LCNタンパク質は、通常のタンパク質精製方法を適用して精製することができるが、フコース固定化カラムに供して、アフィニティークロマトグラフィーで精製することが好ましい。得られた毒素融合rBC2LCNタンパク質の精製度は電気泳動ゲル濾過等で確認することができる。

0038

4.本発明の未分化細胞用の「細胞内輸送用キャリア(細胞内導入剤)」
(4−1)本発明で標的物質を輸送する対象となる未分化幹細胞
本明細書において、細胞内への輸送対象となる未分化幹細胞は、分化細胞表面にはほとんど存在していない「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」含有複合糖質を多数細胞表面に有している未分化状態にある多能性幹細胞を意味する。具体的には、胚性幹細胞(ES細胞)、体細胞に幹細胞特異的発現遺伝子などを導入して脱分化させた幹細胞(iPS細胞等)の他、造血幹細胞神経幹細胞皮膚組織幹細胞等の様々な体性幹細胞も含まれる。特に、全能性を有するES細胞またはiPS細胞の場合は、細胞表面をrBC2LCNが認識する「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」含有複合糖質がびっしりと覆っている状態であるため、本発明の細胞内輸送用キャリアであるrBC2LCNによる当該糖鎖含有複合脂質を介しての細胞内輸送効果が存分に発揮できる。
また、ES細胞をはじめとする幹細胞はヒトに限らず哺乳動物ではかなりの部分で共通したしくみで制御されていると考えられるので、本発明の対象幹細胞としてはヒト以外の哺乳動物、例えばサルブタウシヤギヒツジマウスラット由来の幹細胞を用いる場合にも適用できる。

0039

(4−2)本発明の「未分化細胞除去剤」による殺傷の対象となる未分化幹細胞
本発明の「未分化細胞除去剤」によって、未分化幹細胞を殺傷しようとする典型的な場合とは、幹細胞を分化誘導して種々の組織特異的に分化させた際に混入している未分化状態にある幹細胞を完全に除去しようとする場合である。したがって、その際の未分化細胞殺傷効果は、単に細胞内に輸送できればよいというに留まらず、確実に殺傷できる程度の充分な量の細胞毒性成分を、細胞内に輸送できる必要がある。
そうしてみると、未分化幹細胞のうちでも、細胞表面がrBC2LCNが認識する「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」含有複合糖質によってびっしりと覆われている状態であることがすでに確認されている、全能性幹細胞のES/iPS細胞が最も有効性が高いため、少ないrBC2LCN−毒素融合体投与量でも十分な殺傷効果が期待できる。
しかし、本発明者らが以前に行ったレクチンアレイ解析(非特許文献1)によると、繊維芽細胞などの分化細胞では「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」糖鎖がほぼ完全に細胞表面に存在していないのに対して、造血幹細胞、神経幹細胞等の体性幹細胞では当該糖鎖が確かに一定量存在することが確認されている。分化細胞に対しては、rBC2LCN−毒素融合体が全く毒性を及ぼさないことから、当該rBC2LCN−毒素融合体を体性幹細胞が殺傷できる程度に大量に投与することができるから、これら体性幹細胞に対しても「未分化細胞除去剤」として働くことが期待できる。

0040

5.本発明の「rBC2LCN融合体」の利用方法
本発明の「rBC2LCN融合体」、もしくは周知の薬理学的に許容される担体緩衝液などをさらに含む「未分化細胞導入用組成物」は、未分化細胞を含有する系(培養細胞系もしくは生体内組織)に適用することで、未分化細胞特異的に標的物質を輸送することができる。最も典型的な例が、未分化細胞内に特異的に毒素化合物を輸送する場合、すなわち「rBC2LCN融合体」を含む「未分化細胞導入用組成物」を「未分化細胞除去剤」として用いる場合なので、以下、「未分化細胞除去剤」について説明するが、それに限られるものではない。他の標的物質を輸送する場合の「未分化細胞導入用組成物」に対しても、以下の方法を適宜変更して適用することができる。

0041

<本発明の「未分化細胞除去剤」による未分化細胞含有分化細胞処理方法
(5−1)基材に接着された分化細胞に適用する場合
本発明の「未分化細胞除去剤」は、ビーズ状、中空糸状もしくは平板状の基材の上で培養した分化誘導後の細胞から混入した未分化細胞を除去する場合に適用できる。
その場合は、各種目的細胞が分化を終えたタイミングで、基材が存在する溶液中に未分化細胞除去剤を終濃度10〜100μg/ml程度で添加し24〜48時間程度追加培養する。(なお、具体的な投与濃度は、あくまで典型的な未分化細胞であるES/iPS細胞に適用する場合の例を示すものであり、対象の幹細胞表面の「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」糖鎖の総量に応じて適宜増量することができる。)
その上で、本発明者らが出願した未分化細胞検出法(特願2011−239919、PCT/JP2012/006983、特願2012−267679)に基づいた方法により、まだ未分化細胞が残っている可能性があれば、新たに未分化細胞除去剤を添加することも可能である。ここでいう「溶液」とは、培養液または、培地成分を除去した後の緩衝液や生理食塩水等であってよい。未分化細胞表面で特異的に発現する糖鎖と結合し、細胞内に取り込まれ、細胞を殺傷する。
このような除去処理を得た細胞サンプルは、もはや未分化細胞が混入していない分化細胞のみからなる細胞群であると評価できるから、同様の分化誘導処理を行うことによって未分化細胞の混入のおそれのない分化細胞を大量かつ迅速に取得できる。
ここで、幹細胞を神経細胞消化器系細胞などに「分化誘導」する方法としては、どのような手法であってもよく、例えば幹細胞をレチノイン酸存在下で培養して神経系細胞に分化する方法、noggin等の液成因子を用いて、幹細胞から心筋細胞を形成させる方法など種々の公知の手法が適用できる。本発明の細胞表面未分化糖鎖マーカーの分化した細胞表面での発現量は無視できる程度であるから、分化誘導条件下でもノイズが極めて少ないことが予想される。

0042

(5−2)溶液中に懸濁された分化細胞に適用する場合
本発明の「未分化細胞除去剤」は、溶液中の分化した細胞に混入した未分化細胞を除去する場合に適用できる。
その場合は、各種目的細胞が分化を終えたタイミングで、溶液中に未分化細胞除去剤を終濃度10〜100μg/ml程度で添加し24〜48時間程度追加培養する。その上で、本発明者らが出願した未分化細胞検出法(WO2013/065302、特願2012−267679)に基づいた方法により、まだ未分化細胞が残っている可能性があれば、新たに本発明の未分化細胞除去剤を添加することも可能である。ここでいう「溶液」とは、培養液または、培地成分を除去した後の緩衝液や生理食塩水等であってよい。
本発明の「未分化細胞除去剤」は未分化状態の幹細胞のみを直接認識し、細胞内に取り込まれ、細胞を殺傷する。さらに、培養液中に未分化細胞がわずかに残っている可能性があれば、必要に応じて、標識したrBC2LCNを処理後の培養液に添加し、フローサイトメトリー等で完全に除去することができる。

0043

(5−3)再生治療用の移植細胞材料の調製
本発明によれば、未分化状態の幹細胞の混入のない所望の分化誘導細胞がダメージなく取得することができる。死んだ幹細胞やフィーダー細胞などを完全に除くために、処理後の細胞を数回植え継ぐか、PBS等の緩衝液で数回洗浄するだけで、そのまま再生治療用の移植細胞として用いることができる。浮遊細胞に作用させる場合には、死んだ幹細胞は密度勾配媒体中を沈降させる方法などで除去することができる。

0044

以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明におけるその他の用語や概念は、当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものであり、本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。また、各種の分析などは、使用した分析機器又は試薬キット取り扱い説明書カタログなどに記載の方法を準用して行った。
なお、本明細書中引用した技術文献、特許公報及び特許出願明細書中の記載内容は、本発明の記載内容として参照されるものとする。

0045

(実施例1)rBC2LCN-ETAの大腸菌組換え体の発現
図1に記載のタンパク質を設計して、pET27b(Stratagene社)に組み込み、Escherichia coliBL21 CodonPlus(DE3)-RIL株(Stratagene社、#230245)に導入した。形質転換体を10μg/mLのカナマイシンを加えた5mLのLB培地に縣濁して一晩培養した。前培養した培養液5mLを1LのLB培地に添加して培養を行い、2-3時間後に(OD600)が0.4前後になったときに1MIPTG(Fermentus社、#R-0392)1mLを最終濃度1mMになるように添加した。20℃で24時間、振盪培養した後、遠心分離菌体回収し、バッファーに縣濁して超音波処理を行い、タンパク質可溶性画分を抽出した。大腸菌のタンパク質可溶性画分に対して、Matsumoto(Matsumoto I,Mizuno Y,Seno N. (1979) J Biochem. Apr;85(4):1091-8.)らの方法により市販セファロース(GE Healthcare社製)にフコースを共有結合させることにより作製したフコースセファロースカラムによるアフィニティー精製を行い、0.2Mフコースで溶出した。
精製度を確認するため、素通り(T)、洗浄1回目(W1)、洗浄2回目(W2)、洗浄3回目(W3)、フコース溶出1回目(E1)、フコース溶出2回目(E2)、フコース溶出3回目(E3)の各画分をSDSPAGE電気泳動法にて確認した(図2)。溶出1回目の画分において、約42kDa付近に単一バンドを確認することができたが、この分子量は、「rBC2LCN-(GSGGG)2-ETA」の構造を有する精製rBC2LCN-ETA単量体に相当する。精製したrBC2LCN-ETAを2-メルカプトエタノール(2-ME)存在/非存在下で95℃5分処理有り/なしでサンプル調製して、SDS-PAGEを行い、クマシーブリリアンブルー染色を行った(図3)。その結果、いずれの条件でも約42kDaの単一バンドとして精製rBC2LCN-ETAを確認することができた。非変性条件における分子量をゲル濾過クロマトグラフィーで解析した(図4)。その結果、rBC2LCN-ETAは、野生型のrBC2LCNと同様、2量体を形成していることがわかった。

0046

(実施例2)rBC2LCN-ETAのヒトiPS細胞に対する結合
本実施例で用いたヒトiPS細胞(201B7株)は理化学研究所バイオリソースセンターから分譲を受けた。
rBC2LCN-ETA及び野生型のrBC2LCNについて、rBC2LCNの糖鎖リガンドである「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc(Hタイプ1)」及び「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc(Hタイプ3)」それぞれに対する結合親和性フロンタルアフィニティークロマトグラフィー(非特許文献8)で調べた。その結果を下記(表1)に示す。融合タンパク質化したrBC2LCN-ETAの解離定数(Kd値)はHタイプ1:9.9μM,Hタイプ3:32.3μMであり、野生型のrBC2LCNの解離定数(Hタイプ1:8.3μM,Hタイプ3:25.4μM)と同程度であることがわかった。

0047

0048

次にヒトiPS細胞(201B7株)に対する結合を蛍光染色で観察した。24ウエルプレートで培養したヒトiPS細胞(201B7株)を4%パラホルムアルデヒドで室温20分固定した後、10μg/mLのCy3標識rBC2LCN、もしくはCy3標識rBC2LCN-ETAを室温1時間反応させて、蛍光顕微鏡で観察した(図5左)。その結果、rBC2LCN-ETAは、rBC2LCNと同程度にヒトiPS細胞(201B7株)を染色できることがわかった。また、ヒトiPS細胞(201B7株)に対する結合をフローサイトメトリーで調べた。105個のヒトiPS細胞に5μg/mLの濃度でCy3標識rBC2LCN、もしくはCy3標識rBC2LCN-ETAを4度1時間反応後、フローサイトメトリーで解析した(図5右)。rBC2LCN-ETAは、rBC2LCNと同程度にヒトiPS細胞(201B7株)を染色できることがわかった。以上の結果から、rBC2LCN-ETAは、融合タンパク質化しているにも関わらず、結合特異性や結合親和性の面で、rBC2LCNとほぼ同じ性質を有していることがわかった。

0049

(実施例3)rBC2LCN-ETAのヒトES細胞に対する殺傷効果
本実施例で用いたヒトES細胞(H7株(WA07株))はWisconsin International Stem Cell(WISC)Bankから分譲を受けた。培養方法は、WiCell Research Instituteのプロトコールに従った。
実施例1で得たrBC2LCN-ETAの希釈系列溶液(5,50μg/ml)を作製し、培養中のヒトES細胞(H7株(WA07株))と反応させた。rBC2LCN-ETA添加の24時間後に、LIVE/DEAD Cell Imaging Kit(488/570)(Life Technologies社)を用いて、ES細胞の生死判定を行った(図6)。rBC2LCN-ETAを5,50μg/mlの濃度で添加し、24時間後に位相差像を観察したところ、ES細胞のコロニー縮退が見られた(図6A,D,G)。また、濃度依存的に生細胞が減り(図6C,F,I。なお、図中、赤蛍光とあるのは死細胞特異的な標識であり、緑蛍光とあるのは生細胞特異的な標識である。以下同様。)、50μg/mlのrBC2LCN-ETAで処理をした群では、ほぼ全てのES細胞が死滅していた(図6G,H,I)。これより、rBC2LCN-ETAはヒトES細胞を殺傷する能力を有することが確認された。

0050

(実施例4)rBC2LCN-ETAのヒトiPS細胞に対する殺傷効果
本実施例で用いたヒトiPS細胞(201B7株)は理化学研究所バイオリソースセンターから分譲を受けた。Tatenoらの手法(Tateno H,et al.,(2011) J Biol Chem. 286,20345-20353)により培養した。rBC2LCN-ETAの希釈系列溶液(5,50μg/ml)を作製し、培養中のヒトiPS細胞(201B7株)と反応させた。rBC2LCN-ETA添加の24時間後に、LIVE/DEAD Cell Imaging Kit(488/570)(Life Technologies社)を用いて、iPS細胞の生死判定を行った(図7)。rBC2LCN-ETAを5,50μg/mlの濃度で添加し、24時間後に位相差像を観察したところ、iPS細胞のコロニーに縮退が見られた(図7A,D,G)。また、濃度依存的に生細胞が減り(図7C,F,I)、50μg/mlのrBC2LCN-ETAで処理をした群では、ほぼ全てのES細胞が死滅していた(図7G,H,I)。一方、周囲にあるマウス繊維芽細胞由来のフィーダー細胞は、全く殺傷されていなかった。これより、rBC2LCN-ETAはヒトiPS細胞を殺傷する能力を有することが確認された。

0051

(実施例5)rBC2LCN-ETAの分化細胞に対する作用
Draperらの方法(Draper JS,et al.,(2000) J Anat. 200:249-58.)に従って、終濃度10-5Mになるようにレチノイン酸を添加して培養することによりヒトiPS細胞(201B7株)の分化誘導を行った。8日間培養し細胞の形態から分化が開始していることを確認して、rBC2LCN-ETAの希釈系列溶液(5,50μg/ml)を作製し、培養中の分化させた細胞と反応させた。rBC2LCN-ETA添加の24時間後に、LIVE/DEAD Cell Imaging Kit(488/570)(Life Technologies社)を用いて、分化細胞の生死判定を行った(図8)。rBC2LCN-ETAを0.005,0.05mg/mlの濃度で添加し、24時間後に位相差像を観察したところ、rBC2LCN-ETA添加による影響は見られなかった(図8A,D,G)。また、LIVE/DEAD Cell Imaging Kit(488/570)を用いても、コントロールと比べて死細胞は増加していなかった(図8B,C,E,F,H,I)。これより、rBC2LCN-ETAはヒト分化細胞に対しては、全く殺傷能力は無いことが確認された。

0052

(実施例6)rBC2LCN-ETAのヒトiPS細胞に対する殺傷効果
本実施例で用いたヒトiPS細胞(201B7株)は理化学研究所バイオリソースセンターから分譲を受けた。rBC2LCN-ETAの希釈系列溶液(0〜100μg/mL)を調製し、ヒトiPS細胞(201B7株)の培養液に添加した。rBC2LCN-ETA添加24時間後に、Cell Counting Kit-8(Dojindo)を用いて、iPS細胞の生死判定を行った(図9)。その結果、濃度依存的に生細胞数が減り、10μg/mL以上で反応させた場合には、24時間後にはほぼ全てのiPS細胞が死滅していた。一方、細胞表面にrBC2LCNが認識する糖鎖(「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/Fucα1-2Galβ1-3GalNAc」を全く持たない、分化細胞であるヒト皮膚繊維芽細胞の場合は、100μg/mLという高濃度においても、細胞殺傷能力を全く示さないことがわかった。また、幹細胞のうちでもrBC2LCNの認識糖鎖量がわずかであるヒト脂肪由来間葉系幹細胞においては、100μg/mLという高濃度投与によってはじめて細胞殺傷能力が10%程度発揮できていることがわかった。

0053

(実施例7)rBC2LCN-SaporinのヒトiPS細胞に対する作用
本実施例で用いたヒトiPS細胞(201B7株)は理化学研究所バイオリソースセンターから分譲を受けた。PBSのみ、ストレプトアビジン−Saporin(SA-Saporin、最終濃度0.6μM)、ビオチン化rBC2LCN(最終濃度、0.6μM)、ストレプトアビジン−Saporin(SA-Saporin、最終濃度0.6μM)とビオチン化rBC2LCN(最終濃度、0.6μM)の複合体をヒトiPS細胞(201B7株)を培養している培養液中に添加し、0,1,2日後に顕微鏡位相差観察した(図10)。その結果、PBSのみ、ストレプトアビジン−Saporinのみ、ビオチン化rBC2LCNのみではヒトiPS細胞に対してほとんど影響が見られなかったのに対し、ストレプトアビジン−Saporinとビオチン化rBC2LCNの複合体は24時間後にはヒトiPS細胞のコロニーに縮退が見られた。48時間後には、ほぼ全ての細胞が死滅していた。これより、rBC2LCNとSaporinとのストレプトアビジン−ビオチン結合による融合体の場合でも、ヒトiPS細胞を殺傷する能力を有することが確認された。

0054

(実施例8)FITC標識rBC2LCNのヒトiPS細胞に対する作用
本実施例で用いたヒトiPS細胞(201B7株)は理化学研究所バイオリソースセンターから分譲を受けた。10μg/mLのFITC標識rBC2LCNを、ヒトiPS細胞を培養している培養液中に添加して、1時間結合反応後に、60秒間励起光を照射した(図11)。1,3,5時間後に顕微鏡で位相差観察した。6時間後にはヒトiPS細胞のコロニーに縮退が見られ多くの細胞が死滅していた。コントロールとして用いたFITC標識体ウシ血清アルブミン(FITC-BSA)では細胞殺傷効果が認められなかったことから、rBC2LCNがヒトiPS細胞に結合する活性が、ヒトiPS細胞殺傷において重要であることがわかった。これよりFITC標識rBC2LCNはヒトiPS細胞を殺傷する能力を有することが確認された。

0055

(実施例9)FITC標識rBC2LCN及びrBC2LCN-ETAのヒトiPS細胞への内在化
本実施例で用いたヒトiPS細胞(201B7株)は理化学研究所バイオリソースセンターから分譲を受けた。ヒトiPS細胞(201B7株)の培養液中に、FITC標識rBC2LCNもしくはFITC標識rBC2LCN-ETAを1μg/mLの濃度で添加し、37℃で2時間反応させ、反応直後(2時間)及び24時間後に、励起光を照射して、顕微鏡で共焦点顕微鏡観察した(図12)。なお、本実施例は細胞の内在化観察のための実験であるので、励起光を長時間照射することによるFITCの未分化細胞殺傷能を避けるため、照射条件撮影可能な最低限のレベル(スキャンスピード12.5μs/pixel、レーザー出力1%)に止めている。
FITC標識rBC2LCNを含まない新しい培地に交換した直後では細胞表面が鮮明に染色されている(左上)。さらに2時間後には細胞表面の染色が薄くなり、24時間後には、細胞内にドット状の染色が観察され、FITC標識rBC2LCNが細胞内に取り込まれていることがわかった(左下)。一方、コントロールとして用いたFITC標識BSAでは、ヒトiPS細胞への結合は確認できなかった(右)。あわせて、ETAを融合したrBC2LCN-ETAをFITC標識した場合を(中央)に示す。FITC標識rBC2LCN-ETAも速やかに細胞内に取り込まれる様子と共に、内在化したETAによる細胞殺傷効果により24時間後にはiPS細胞の死滅が進んでいることが見て取れる。

実施例

0056

(実施例10)Cy3標識rBC2LCN及びrBC2LCN-ETAのヒトiPS細胞への内在化
本実施例で用いたヒトiPS細胞(201B7株)は理化学研究所バイオリソースセンターから分譲を受けた。ヒトiPS細胞(201B7株)の培養液中に、Cy3標識rBC2LCNを1μg/mLの濃度で添加し、37℃で2時間反応させ、反応直後(2時間)、4時間後及び24時間後に、励起光を照射して、顕微鏡で位相差観察した(図13)。Cy3標識rBC2LCNを含まない新しい培地に交換した直後では細胞表面が鮮明に染色されている(左)。さらに2時間後には細胞内にドット状の染色が確認できる(中央)。24時間後には、細胞内に明確にドット状の染色が観察され、CCy3標識rBC2LCNが細胞内に取り込まれていることがわかった。また、同様にCy3標識rBC2LCN-ETAも細胞内に内在化することがわかった。FITCとCy3という異なる蛍光標識体でもrBC2LCNの細胞内への内在化が確認されたことから、ヒトiPS細胞への内在化はrBC2LCNと融合する化合物の種類によるものではなく、rBC2LCNの効果であることが明らかとなった。

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