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技術 HMGB1断片を利用した新規心筋梗塞の治療法

出願人 株式会社ステムリム国立大学法人大阪大学
発明者 玉井克人鎌田創吉金田安史宮川繁澤芳樹山崎尊彦
出願日 2013年10月24日 (7年0ヶ月経過) 出願番号 2014-543334
公開日 2016年9月8日 (4年2ヶ月経過) 公開番号 WO2014-065347
状態 特許登録済
技術分野 蛋白脂質酵素含有:その他の医薬 化合物または医薬の治療活性
主要キーワード 添加部位 基礎実験 身体的負担 精製純度 上皮系組織 心筋梗塞部位 左室リモデリング 左室拡張末期径
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2016年9月8日)のものです。
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図面 (5)

課題・解決手段

HMGB1タンパク質の一部からなる適切な長さを持つ断片ペプチドを合成し、当該ペプチド心筋梗塞治療効果を示すことを確認した。

概要

背景

冠状動脈閉塞により心筋壊死をきたす急性心筋梗塞は、予後不良な疾患であり、我が国の第2位の死亡原因である心臓病の主要な基礎疾患となっている。現行治療法である急性期カテーテル治療冠動脈バイパス術は、心筋障害を軽減し死亡率低下に寄与するものの、途絶した冠血流再開した際に生じる心筋障害(虚血再還流障害)等の問題があり、さらなる治療法の開発が望まれる。

近年、骨髄間葉系幹細胞移植が、移植細胞心筋構成細胞への直接分化による心筋再生、産生サイトカインパラクライン効果による左室リモデリング抑制を介して心筋梗塞進展を抑制することが動物モデルを用いた基礎実験において報告され、現在さまざまな投与経路での自家細胞移植臨床試験が行われている。しかし自家細胞移植の問題として、細胞採取の際の身体的負担細胞培養での費用人手の問題、細胞移植までに時間を要する点など、今後克服されるべき課題も多い。一方、近年損傷組織骨髄多能性幹細胞動員因子を血中に放出し、損傷部組織再生誘導されるメカニズムが確認されている。骨髄幹細胞誘導因子投与による生体内損傷組織再生誘導メカニズムを利用した組織再生は、従来にない再生医療の新しいコンセプトであり、幹細胞を用いた細胞治療に比べ、人手が不要で安定供給が可能、さらには損傷初期への投与が可能といった利点を有していると考えられる。

本発明者らは、以前の研究において、新たな骨髄多能性幹細胞動員因子としてHMGB1タンパク質を同定した。HMGB1は、非ヒストン核蛋白の主要成分であると同時に、損傷部位集積する樹状細胞マクロファージ、あるいは壊死細胞から細胞外に放出され、さまざまな疾患との関連が確認されている。

概要

HMGB1タンパク質の一部からなる適切な長さを持つ断片ペプチドを合成し、当該ペプチドが心筋梗塞治療効果を示すことを確認した。

目的

本発明者らは、新たな骨髄多能性幹細胞動員因子として同定されたHMGB1タンパク質由来の断片ペプチドを用いた心筋梗塞の新規治療剤の開発を本発明の課題とした

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

HMGB1断片ペプチドを含有する、心筋梗塞治療するために用いられる医薬組成物

請求項2

前記HMGB1断片ペプチドが、配列番号:3に示されるアミノ酸配列を含むペプチドである、請求項1に記載の医薬組成物。

請求項3

前記HMGB1断片ペプチドが、配列番号:3に示されるアミノ酸配列からなるペプチドである、請求項1に記載の医薬組成物。

技術分野

0001

本発明は、HMGB1の断片ペプチドを含む、心筋梗塞新規治療用医薬組成物およびその使用に関する。

背景技術

0002

冠状動脈閉塞により心筋壊死をきたす急性心筋梗塞は、予後不良な疾患であり、我が国の第2位の死亡原因である心臓病の主要な基礎疾患となっている。現行治療法である急性期カテーテル治療冠動脈バイパス術は、心筋障害を軽減し死亡率低下に寄与するものの、途絶した冠血流再開した際に生じる心筋障害(虚血再還流障害)等の問題があり、さらなる治療法の開発が望まれる。

0003

近年、骨髄間葉系幹細胞移植が、移植細胞心筋構成細胞への直接分化による心筋再生、産生サイトカインパラクライン効果による左室リモデリング抑制を介して心筋梗塞の進展を抑制することが動物モデルを用いた基礎実験において報告され、現在さまざまな投与経路での自家細胞移植臨床試験が行われている。しかし自家細胞移植の問題として、細胞採取の際の身体的負担細胞培養での費用人手の問題、細胞移植までに時間を要する点など、今後克服されるべき課題も多い。一方、近年損傷組織骨髄多能性幹細胞動員因子を血中に放出し、損傷部組織再生誘導されるメカニズムが確認されている。骨髄幹細胞誘導因子投与による生体内損傷組織再生誘導メカニズムを利用した組織再生は、従来にない再生医療の新しいコンセプトであり、幹細胞を用いた細胞治療に比べ、人手が不要で安定供給が可能、さらには損傷初期への投与が可能といった利点を有していると考えられる。

0004

本発明者らは、以前の研究において、新たな骨髄多能性幹細胞動員因子としてHMGB1タンパク質を同定した。HMGB1は、非ヒストン核蛋白の主要成分であると同時に、損傷部位集積する樹状細胞マクロファージ、あるいは壊死細胞から細胞外に放出され、さまざまな疾患との関連が確認されている。

0005

WO2008/053892
WO2007/015546
WO2009/133939
WO2009/133940
WO2009/133940
WO2004/004763
WO2002/074337

先行技術

0006

Bustinら、 Mol Cell Biol、19:5237-5246、1999年
Horiら、J. Biol. Chem.、270、25752-25761、1995年
Wangら、Science、 285:248-251、1999年
Mullerら、EMBO J、20:4337-4340、2001年
Wangら、Science、 285:248-251、1999年
Germaniら、J Leukoc Biol.、81(1):41-5、2007年
Palumboら、J. Cell Biol.、164:441-449、2004年
Merenmiesら、J. Biol. Chem.、266:16722-16729、1991年
Wu Yら、Stem cells、25:2648-2659、2007年
Tamaiら、Proc Natl Acad Sci U S A.、108(16):6609-6614、2011年
Yangら、J Leukoc Biol.、81(1):59-66、2007年

発明が解決しようとする課題

0007

近年、脳梗塞等の疾患において、損傷した組織が骨髄多能性幹細胞動員因子を血中に放出することによって、当該損傷部の組織再生を誘導するというメカニズムが存在し、当該メカニズムが損傷のさらなる拡大の防止に寄与していることが確認された。そこで、本発明者らは、新たな骨髄多能性幹細胞動員因子として同定されたHMGB1タンパク質由来の断片ペプチドを用いた心筋梗塞の新規治療剤の開発を本発明の課題とした。

課題を解決するための手段

0008

本発明者らは、細胞遊活性を有するHMGB1タンパク質の断片ペプチド(1-44)を作成し、当該断片ペプチドを全身投与することにより、心筋梗塞モデルにおいて、梗塞部位及びその近傍にPDGFRα陽性細胞の集積が促進されることを初めて明らかにした。さらに、当該断片ペプチド(1-44)投与群心筋梗塞モデル動物において、長期にわたる心臓機能改善効果があることを明らかにした。これらのことは、当該断片ペプチド(1-44)により、生体内の損傷組織再生誘導メカニズムを利用した組織再生が誘導され、急性心筋梗塞の進展を抑制できることを示唆している。したがって、本発明の断片ペプチドが、予後不良なヒト急性心筋梗塞に対する有用な治療剤となりうる可能性が示された。

0009

本発明では、HMGB1の断片ペプチドを含む、心筋梗塞の新規治療用医薬組成物およびその使用を開示する。

0010

具体的には、本発明者らは、HMGB1タンパク質の1から44番目までのアミノ酸からなるペプチド(配列番号:3)を、ペプチド合成により作成した。作成した各HMGB1断片を、心筋梗塞の治療効果を評価できるモデルマウスに投与し、心筋梗塞に対する当該断片の治療効果を確認した。

0011

本願は、この知見に基づき、以下の発明を提供するものである。
[1]
HMGB1断片ペプチドを含有する、心筋梗塞を治療するために用いられる医薬組成物
[2]
前記HMGB1断片ペプチドが、配列番号:3のアミノ酸配列を含むペプチドである、[1]の医薬組成物。
[3]
前記HMGB1断片ペプチドが、配列番号:3のアミノ酸配列からなるペプチドである、[1]の医薬組成物。
[4]
HMGB1断片ペプチドを投与する工程を含む、心筋梗塞の治療方法
[5]
前記HMGB1断片ペプチドが、配列番号:3のアミノ酸配列を含むペプチドである、[4]の方法。
[6]
前記HMGB1断片ペプチドが、配列番号:3のアミノ酸配列からなるペプチドである、[4]の方法。
[7]
心筋梗塞を治療するために使用するHMGB1断片ペプチド。
[8]
前記HMGB1断片ペプチドが、配列番号:3のアミノ酸配列を含むペプチドである、[7]のHMGB1断片ペプチド。
[9]
前記HMGB1断片ペプチドが、配列番号:3のアミノ酸配列からなるペプチドである、[7]のHMGB1断片ペプチド。
[10]
HMGB1断片ペプチドを含有する、心筋梗塞を治療するために用いられる医薬の製造のための使用。
[11]
前記HMGB1断片ペプチドが、配列番号:3のアミノ酸配列を含むペプチドである、[10]の使用。
[12]
前記HMGB1断片ペプチドが、配列番号:3のアミノ酸配列からなるペプチドである、[10]の使用。

図面の簡単な説明

0012

心筋梗塞作成7日後の梗塞部(INFARCT)、境界部(BORDER)、非梗塞部(REMOTE)における、PDGFRα陽性骨髄間葉系幹細胞数を示すグラフである。断片ペプチド(1-44)投与群(1-44 ; N=4)では、陰性コントロール群(CONT; N=4)に比較して、PDGFRα陽性骨髄間葉系幹細胞が、梗塞・境界・非梗塞部すべての領域において有意に動員された(1-WAYANOVA、*P<0.05 VS. 1-44)。
断片ペプチド(1-44)投与マウスにおける、境界部における蛍光免疫染色像である。緑色蛍光陽性細胞はGFP陽性の骨髄由来細胞であり、かつ赤色蛍光陽性細胞は、PDGFRα発現細胞を標識している。GFP陽性かつPDGFRα陽性細胞を矢印で示した。
心筋梗塞作成7、56日後の梗塞部(INFARCT)、境界部(BORDER)、非梗塞部(REMOTE)における炎症性サイトカインTNFαのmRNAベルを示すグラフである。断片ペプチド(1-44)投与群(1-44 ; N=4)では、陰性コントロール群(CONT ; N=4)に比較して、非梗塞部の炎症性サイトカイン(TNFα,IL-1β)は有意に低値であった(1-WAY ANOVA, #P<0.05 1-44 VS. CONT)。
心筋梗塞作成7、56日後の梗塞部(INFARCT)、境界部(BORDER)、非梗塞部(REMOTE)における炎症性サイトカインIL-1βのmRNAレベルを示すグラフである。断片ペプチド(1-44)投与群(1-44 ; N=4)では、陰性コントロール群(CONT ; N=4)に比較して、非梗塞部の炎症性サイトカイン(TNFα, IL-1β)は有意に低値であった(1-WAY ANOVA, #P<0.05 1-44 VS. CONT)。
心筋梗塞作成56日後の陰性コントロール群と断片ペプチド(1-44)投与群の左室駆出率(EF)、左室拡張末期径(DD)、左室収縮末期径(DS)を示すグラフである。

0013

本発明は、細胞遊走刺激活性を有するHMGB1断片ペプチドを含有する、心筋梗塞を治療するために用いられる医薬組成物を提供する。本発明の心筋梗塞を治療するために用いられる医薬組成物は、本明細書において、医薬、薬剤または薬学的組成物とも表現される。

0014

本発明において、細胞遊走刺激活性とは、細胞遊走を刺激する活性を意味する。本明細書において、細胞遊走刺激活性は、細胞遊走誘導活性または細胞誘導活性とも表現される。

0015

本発明の医薬組成物は、投与・添加部位を限定しない。すなわち、該組成物は、再生が必要な心筋梗塞部位、当該梗塞部位とは異なる部位、血中など、いずれの部位に投与されても、その効果を発揮することができる。例えば、該組成物を投与・添加することにより、投与・添加部位またはその近傍の部位に細胞が動員され、損傷の再生が誘導または促進される。また例えば、該組成物を梗塞部位またはその近傍に投与・添加することにより、該梗塞部位に細胞が動員され、梗塞部位の再生が誘導または促進される。また例えば、該組成物を再生が必要な組織とは異なる組織に投与・添加することにより、骨髄から再生が必要な部位に末梢循環を介して骨髄細胞が動員され、再生が誘導または促進される。ここで、「末梢循環」とは、「血液循環」、「末梢循環血流」とも称される。

0016

再生が必要な組織とは異なる組織への投与とは、再生が必要な部位以外の部位(再生が必要な部位とは異なる部位)に投与することを意味する。したがって、「再生が必要な組織とは異なる組織」は、再生が必要な組織とは異なる部位、再生が必要な部位とは異なる部位、再生が必要な組織から離れた部位、再生が必要な部位から離れた部位、再生が必要な部位から遠位にある部位、再生が必要な組織から遠位にある組織、遠位部、遠位組織と表現することもできる。すなわち、本発明の組成物は、体外から直接薬剤を投与することが困難な組織を再生するために、有効に利用される。また、再生が必要な組織とは異なる組織としては、血液組織筋肉組織皮下組織、皮内組織、腹腔等が例示できる。

0017

また、本発明において、遊走が刺激される細胞または骨髄から末梢血に動員される細胞としては、未分化な細胞、種々の分化段階にある細胞が挙げられるが、これらに制限されない。また、本発明において、遊走が刺激される細胞または骨髄から末梢血に動員される細胞としては、幹細胞、非幹細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。幹細胞には、循環性の幹細胞、または非循環性の幹細胞が含まれる。非循環性の幹細胞としては、組織に常在している組織幹細胞が例示できる。循環性の幹細胞としては、血中循環性の幹細胞が例示できる。

0018

また、遊走が刺激される細胞または骨髄から末梢血に動員される細胞としては、骨髄由来細胞または造血系幹細胞が挙げられるが、これに制限されない。本明細書において「造血系幹細胞」とは好中球好酸球好塩基球リンパ球単球、マクロファージなどの白血球の他、赤血球血小板肥満細胞、樹状細胞などの血球系の細胞に分化可能な幹細胞であり、マーカーとしてヒトではCD34陽性、CD133陽性、マウスではCD34陰性、c-Kit陽性、Sca-1陽性、Lineage marker 陰性であることが知られている。また、造血系幹細胞は、培養皿で培養する場合、単独で培養することが困難であり、ストローマ細胞との共培養が必要であることが特徴である。

0019

本明細書において、「骨髄細胞」とは、骨髄内に存在する細胞を意味し、一方、「骨髄由来細胞」とは、骨髄から骨髄外に動員された「骨髄細胞」を意味する。「骨髄細胞」は骨髄中に存在する組織前駆細胞集団を含む細胞を含む。また「骨髄由来細胞」はmesoangioblastを含む細胞であってもよく、mesoangioblastを除く細胞であってもよい。

0020

組織前駆細胞は、血液系以外の特定組織細胞への一方向性分化能を持つ未分化細胞と定義され、上述した間葉系組織上皮系組織神経組織実質臓器血管内皮への分化能を有する未分化細胞を含む。

0021

「骨髄細胞」、「骨髄由来細胞」は、造血系幹細胞及びこれに由来する白血球、赤血球、血小板、骨芽細胞ファイブロイトなどの分化細胞、または、これまで骨髄間葉系幹細胞あるいは骨髄間質多能性幹細胞あるいは骨髄多能性幹細胞と呼ばれている細胞に代表される幹細胞である。本明細書において、「骨髄幹細胞」とは、骨髄内に存在する幹細胞を意味し、一方、「骨髄由来幹細胞」とは、骨髄から骨髄外に動員された「骨髄幹細胞」を意味する。本発明において、遊走が刺激される細胞または骨髄から末梢血に動員される細胞としては、「骨髄由来幹細胞」が挙げられるが、これに制限されない。「骨髄細胞」、「骨髄由来細胞」は、骨髄採取(骨髄細胞採取)、あるいは末梢血採血により単離することができる。造血系幹細胞は非付着細胞であるが、「骨髄細胞」、「骨髄由来細胞」の一部は、骨髄採取(骨髄細胞採取)、末梢血採血により得られた血液中単核球分画細胞培養により、付着細胞として得られる。

0022

また、「骨髄細胞」、「骨髄由来細胞」は、間葉系幹細胞を含み、骨芽細胞(分化を誘導するとカルシウム沈着を認めることで特定可能)、軟骨細胞アルシアンブルー染色陽性、サフラニン-O染色陽性などで特定可能)、脂肪細胞ズダンIII染色陽性で特定可能)、さらには線維芽細胞平滑筋細胞、ストローマ細胞、腱細胞、などの間葉系細胞、さらには神経細胞上皮細胞(たとえば表皮角化細胞腸管上皮細胞サイトケラチンファミリー発現する)、血管内皮細胞への分化能力を有することが好ましい。分化後の細胞は上記細胞に限定されるものではなく、肝臓腎臓膵臓などの実質臓器細胞への分化能も含む。

0023

本明細書において、「骨髄間葉系幹細胞」、「骨髄間質多能性細胞」、あるいは「骨髄多能性幹細胞」とは、骨髄内に存在する細胞であって、骨髄から直接あるいはその他の組織(血液や皮膚、脂肪、その他の組織)から間接的に採取され、培養皿(プラスチックあるいはガラス製)への付着細胞として培養・増殖可能であり、骨、軟骨、脂肪などの間葉系組織(間葉系幹細胞)、あるいは骨格筋、心筋、さらには神経組織、上皮組織(多能性幹細胞)への分化能を有するという特徴を持つ細胞であり、骨髄細胞採取によって取得することができる細胞である。

0024

また、骨髄から骨髄外に動員された「骨髄由来骨髄間葉系幹細胞」、「骨髄由来骨髄間質多能性細胞」、あるいは「骨髄由来骨髄多能性幹細胞」は、末梢血採血、さらには脂肪など間葉組織、皮膚などの上皮組織、脳などの神経組織からの採取によって取得することができる細胞である。

0025

また、これら細胞は、採取後直接、あるいは一度培養皿へ付着させた細胞を生体の損傷部に投与することにより、例えば皮膚を構成するケラチノサイトなどの上皮系組織、脳を構成する神経系の組織への分化能も有するという特徴も持つ。

0026

骨髄間葉系幹細胞、骨髄間質多能性幹細胞、骨髄多能性幹細胞、あるいは骨髄から骨髄外へ動員されたこれら細胞は、骨芽細胞(分化を誘導するとカルシウムの沈着を認めること等で特定可能)、軟骨細胞(アルシアンブルー染色陽性、サフラニン-O染色陽性等で特定可能)、脂肪細胞(ズダンIII染色陽性等で特定可能)の他に、例えば線維芽細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、ストローマ細胞、腱細胞などの間葉系細胞、神経細胞、色素細胞表皮細胞毛包細胞(サイトケラチンファミリー、ヘアケラチンファミリー等を発現する)、上皮系細胞(たとえば表皮角化細胞、腸管上皮細胞はサイトケラチンファミリー等を発現する)、内皮細胞、さらに肝臓、腎臓、膵臓等の実質臓器細胞に分化する能力を有することが好ましいが、分化後の細胞は上記細胞に限定されるものではない。

0027

ヒト骨髄細胞ヒト骨髄由来細胞としては、骨髄採取(骨髄細胞採取)、末梢血採血、脂肪採取によって取得し、直接あるいは単核球分画を分離後に培養して付着細胞として取得できる細胞が例示できるが、これに制限されるものではない。ヒト骨髄細胞、ヒト骨髄由来細胞のマーカーとしては、PDGFRα陽性、Lin陰性、CD45陰性、CD44陽性、CD90陽性、CD29陽性、Flk-1陰性、CD105陽性、CD73陽性、CD90陽性、CD71陽性、Stro-1陽性、CD106陽性、CD166陽性、CD31陰性の全部または一部が例示できるが、これらに制限されるものではない。

0028

また、マウス骨髄細胞、マウス骨髄由来細胞としては、骨髄採取(骨髄細胞採取)、末梢血採血、脂肪採取によって取得し、直接あるいは単核球分画を分離後に培養して付着細胞として取得できる細胞が例示できるが、これに制限されるものではない。マウス骨髄細胞、マウス骨髄由来細胞のマーカーとしては、CD44陽性、PDGFRα陽性、PDGFRβ陽性、CD45陰性、Lin陰性、Sca-1陽性、c-kit陰性、CD90陽性、CD29陽性、Flk-1陰性の全部または一部が例示できるが、これらに制限されるものではない。

0029

本発明において、遊走が刺激される細胞としては、PDGFRα陽性細胞が挙げられるが、これに制限されない。また、遊走が刺激されるPDGFRα陽性細胞は、特に制限されないが、好ましくは骨髄由来のPDGFRα陽性細胞である。また、PDGFRα以外のマーカーとしてはCD29陽性、CD44陽性、CD90陽性、CD271陽性、CD11b陰性、Flk-1陰性の全部または一部が例示できるが、これらに制限されるものではない。PDGFRα陽性細胞としては、PDGFRα陽性の骨髄由来細胞、PDGFRα陽性の骨髄由来間葉系幹細胞、PDGFRα陽性の組織に常在している組織細胞(例えば、線維芽細胞などが例示できる)、PDGFRα陽性の骨髄由来細胞であって、骨髄採取(骨髄細胞採取)、末梢血採血により得られた血液中の単核球分画細胞培養により、付着細胞として得られる細胞などが例示できるが、これらに制限されるものではない。

0030

本発明におけるHMGB1タンパク質としては、ヒト由来のHMGB1タンパク質として配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質、当該タンパク質をコードするDNAとして、配列番号:2に記載の塩基配列を含むDNAが例示できるが、これらに限定されるものではない。

0031

本発明における、「細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1断片ペプチド」とは、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1タンパク質の一部からなるペプチドを意味する。本発明のHMGB1タンパク質の一部からなる断片ペプチドは、細胞遊走刺激活性を有する限り特に制限されないが、好ましくは、細胞遊走刺激活性を有する断片ペプチドである、HMGB1タンパク質の1番目から44番目までのアミノ酸配列(配列番号:3)を少なくとも含む、HMGB1断片ペプチドである。

0032

本発明において、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1断片ペプチドとしては、以下の断片を例示することが出来るが、それらに限定されない。

0033

本発明において、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1断片ペプチドとしては、配列番号:3のアミノ酸配列を含むペプチドである、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1断片ペプチドが挙げられる。これらの断片ペプチドとしては、例えば、HMGB1断片ペプチド(1-44)を少なくとも含み、HMGB1タンパク質の全長は含まない任意のHMGB1由来の断片ペプチドをその上限とするペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。

0034

本発明において、細胞遊走刺激活性を有する、HMGB1断片ペプチドとしては、HMGB1断片ペプチド(1-44)が挙げられる。

0035

本発明の組成物の投与方法は、経口投与または非経口投与が挙げられ、非経口投与方法としては具体的には、注射投与経鼻投与経肺投与経皮投与などが挙げられるが、これらに限定されない。注射投与の例としては、例えば、静脈内注射筋肉内注射腹腔内注射皮下注射などによって本発明の組成物を全身または局部的(例えば、皮下、皮内、皮膚表面、眼球あるいは眼瞼結膜鼻腔粘膜口腔内および消化管粘膜子宮内粘膜、または損傷部位など)に投与できる。

0036

また、本発明の組成物の投与方法としては、例えば、血管内投与(動脈内投与、静脈内投与等)、血液内投与、筋肉内投与皮下投与、皮内投与、腹腔内投与が例示されるが、これらに限定されない。

0037

また投与部位に制限はなく、再生が必要な組織部位もしくはその近傍、再生が必要な組織とは異なる部位、または、再生が必要な組織に対して遠位かつ異所である部位が例示できる。例えば、血中(動脈内、静脈内等)、筋肉、皮下、皮内、腹腔内が挙げられるが、これらに限定されない。

0038

また、患者年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。本発明のペプチドを投与する場合、例えば、一回の投与につき、体重1 kgあたり0.0000001mgから1000mgの範囲で投与量が選択できる。あるいは、例えば、患者あたり0.00001から100000mg/bodyの範囲で投与量が選択できる。本発明のペプチドを分泌する細胞や該ペプチドをコードするDNAが挿入された遺伝子治療用ベクターを投与する場合も、該ペプチドの量が上記範囲内となるように投与することができる。しかしながら、本発明の医薬組成物はこれらの投与量に制限されるものではない。

0039

本発明のHMGB1断片ペプチドは、該ペプチドをコードするDNAを適当な発現系に組み込んで遺伝子組換え体(recombinant)として得ることができるし、または、人工的に合成することもできる。また、本発明の医薬組成物は、常法に従って製剤化することができ(例えば、Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton, U.S.A)、医薬的に許容される担体添加物を共に含むものであってもよい。例えば界面活性剤賦形剤着色料着香料保存料、安定剤、緩衝剤懸濁剤等張化剤結合剤崩壊剤滑沢剤流動性促進剤、矯味剤等が挙げられるが、これらに制限されず、その他常用の担体が適宜使用できる。具体的には、軽質無水ケイ酸乳糖結晶セルロースマンニトールデンプンカルメロースカルシウムカルメロースナトリウムヒドロキシプロピルセルロースヒドロキシプロピルメチルセルロースポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートポリビニルピロリドンゼラチン中鎖脂肪酸トリグリセライドポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖カルボキシメチルセルロースコーンスターチ無機塩類等を挙げることができる。

0040

なお、本明細書において引用されたすべての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。

0041

本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、下記の実施例に限定されるものではない。

0042

(目的)
マウス急性期心筋梗塞モデルを用いてHMGB1タンパク質の断片ペプチド(1-44)の全身投与による治療効果を、心臓生理学的・病理組織学的分子生物学的手法を用いて包括的に評価する。

0043

(材料および方法)
骨髄キメラマウスは3週齢のマウス(C57BL6-CAG-GFPトランスジェニックマウス)の大腿/下腿骨より骨髄細胞を採取し、骨髄細胞懸濁液を放射線照射後(10GY)の6週齢マウス(C57BL6)に尾静脈投与(300ΜL/MOUSE)することで作成した。骨髄移植後60日に全身麻酔仰臥位で左第4肋間開胸を行い、冠動脈左前下行枝近位部を結紮し、広範囲心筋梗塞モデル(左冠動脈前下行枝/回旋枝閉塞モデル)を作成した。HMGB1タンパク質の低分子化の際、骨髄間葉系幹細胞動員活性の保持を考慮した上で、HMGB1タンパク質の断片ペプチド(1-44)を開発した。梗塞作成6、24、48、72、96h後に尾静脈よりHMGB1タンパク質の断片ペプチド(1-44)5μg/300μl、及びPBS300μl(陰性コントロール群)の5回投与を行った。過剰量のケタミンおよびキシラジンを投与して安楽死させた後に心臓を採取した。OTCコンパウンドに組織を包埋し厚さ5 μmの凍結切片を作成した。抗マウスPDGFRα抗体を用い次のように免疫組織を行った。1次抗体はPDGFRα Rabbit anti-PDGF receptor alpha antibody (Abcam社製 AB 61219)を使用した。2次抗体はAlexa 555 goat anti-rabbit antibody(Molecular Probes)、核染色は4,6-diamino-2-phenylinodole(DAPI, Molecular Probes)を使用した。撮影には共焦点レーザー顕微鏡(FV300,オリンパス社製)を使用した。組織に集積した骨髄由来間葉系幹細胞の数については、ランダムに選択した5つの切片の全領域に存在するGFPとPDGFRα両方が陽性細胞の数を計測平均値算定した。また、RNeasy Kit (Qiagen社製)を用いて心筋組織からRNAを抽出し、Omniscript Reverse Transcriptase (Qiagen 社製)を用いて逆転写反応を行い、cDNAを得た。Gene Amp(R)PCRSystem 9700 (Life Technologies Japan 社製)を使用して前述のcDNAを鋳型としたリアルタイムPCRを行い、TNFα及びIL-1βのmRNA量をGAPDHのmRNA量との比として定量した。心機能の改善評価は、Vivid 7 echocardiography system と12-MHZ transducer (General Electric 社製)を使用してLVDd(Dd:左室拡張末期径)、LVDs(Ds:左室収縮末期径)、LVEF(EF:左室駆出率)を計測することによって行った。

0044

HMGB1タンパク質の断片ペプチド(1-44)の全身投与により、PDGFRα陽性骨髄由来間葉系細胞は梗塞作成7日目の非梗塞部および境界・梗塞部のすべての領域に有意に動員された(非梗塞部: HMGBI蛋白部分断片(1-44ペプチド)、52±11#*;陰性コントロール、32±9 CELLS/MM2, N=4 EACH, #P<0.05 VS. 陰性コントロール)(図1A)。またHMGB1タンパク質の断片ペプチド(1-44)では非梗塞部の炎症性サイトカイン(TNFα,IL-1β)が有意に低値であった (TNFα: HMGB1タンパク質の断片ペプチド(1-44)、4±2#*; 陰性コントロール、11±3 GAPDH; N=4 EACH、#P<0.05 VS. 陰性コントロール)、(IL-1β: HMGBI蛋白の部分断片(1-44ペプチド)、2±1#*; 陰性コントロール、6±1 GAPDH; N=4 EACH、#P<0.05 VS. 陰性コントロール) (図1C,D)。56日目の心臓超音波検査上、HMGB1タンパク質の断片ペプチド(1-44)群では心筋梗塞後の左室収縮機能障害が有意に抑制された (EF: HMGB1タンパク質の断片ペプチド(1-44) (N=8)、26±4#*; 陰性コントロール(N=16)、20±4 %、 #P<0.05 VS. 陰性コントロール)。また、HMGB1タンパク質の断片ペプチド(1-44)群では左室拡大が有意に抑制された (DD: HMGB1タンパク質の断片ペプチド(1-44) (N=8)、5.8±0.2#*、陰性コントロール (N=16)、6.3±0.2 MM、#P<0.05 VS. 陰性コントロール)(図1E)。

実施例

0045

本検討ではHMGB1タンパク質の断片ペプチド(1-44)の5日間投与によって、PDGFRα陽性骨髄間葉系幹細胞が、梗塞作成後急性期(7日目)の梗塞部位及びその近傍領域に動員されることを証明した(図1A、B)。特に、断片ペプチド(1-44)の投与により、PDGFRα陽性間葉系幹細胞の非梗塞部心筋組織への動員を促進することが示された。骨髄間葉系幹細胞には炎症抑制作用や組織再生作用が知られており、本実施例においても、炎症反応を抑制する(図1C、D)ことが認められた。またHMGB1断片ペプチド(1-44)の投与は、左室収縮機能の悪化、左室拡大及び左室リモデリングを有意に抑制し、心筋機能においても有意な長期改善効果が認められた(図1E)。

0046

本発明により、心筋梗塞を治療するための、PDGFRα陽性細胞の動員活性を維持したHMGB1断片ペプチドの新規用途が提供される。本発明のHMGB1断片ペプチドは、全長が215アミノ酸からなるHMGB1タンパク質に対し、分子量が約20パーセントの断片ペプチドを含む。このような断片ペプチドは、ペプチド合成機を使用した化学的合成による生産が可能であるため、ペプチドを医薬品として製造する場面において、精製純度の向上、安定生産、コスト削減が期待される。

0047

また、完全長のHMGB1は、エンドトキシン一種であるLPS(Lipopolysaccharide)との結合活性を有することが知られているが、医薬品にLPSが少量でも混入すると、発熱などをおこし、しばしば重篤副作用につながるため、医薬品へのLPSの混入は厳しく規制されている。HMGB1がLPSと親和性を有することから、医薬品に混入したLPSを完全に除去することは困難である。しかしペプチド化によってLPSとの親和性が低下することから、医薬品へのLPSの混入も軽減できると予想される。それゆえ、本発明において特定されたPDGFRα陽性細胞動員部分を含むHMGB1断片を用いることで、いっそう安全な心筋梗塞治療用医薬組成物の開発が可能になる。

0048

再生が必要な心筋梗塞部位、または、その近傍部位に本発明のHMGB1断片ペプチドを直接投与することにより、該梗塞またはその梗塞によりもたらされる組織損傷の再生を誘導または促進できる。さらに、静脈内投与などの方法で、再生が必要な部位とは異なる部位に、本発明のHMGB1断片ペプチドを投与することにより、心筋梗塞の再生を誘導または促進することもできる。このように、本発明では、一般診療において広く施行されている静脈投与による心筋梗塞の治療を可能にするため、治療剤を任意の回数、任意の濃度で、安全かつ簡便に投与することが可能となった。この事実は、従来の治療方法と比較して、本願発明が極めて優れている側面の一つである。

0049

また、現在の再生医療や細胞治療の現場では、患者由来希少な骨髄多能性幹細胞を生体外で培養し、増殖させた後に治療に利用するが、当該培養過程は、細胞の劣化癌化や細菌、ウイルスなどのコンタミネーション)の危険を伴うため、十分な安全管理が必要である。これに対して、本発明に基づく治療剤は、細胞を体外に取り出す工程や、人工的操作を加える工程を含まないため、比較的安全性が高いと考えられる。この事実も、従来の治療方法と比較して本願発明が優れている側面の一つであるといえる。

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