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技術 収差補正デバイス及びレーザー顕微鏡

出願人 シチズン時計株式会社
発明者 松本健志田辺綾乃橋本信幸栗原誠横山正史
出願日 2013年3月15日 (7年8ヶ月経過) 出願番号 2014-515524
公開日 2016年1月12日 (4年10ヶ月経過) 公開番号 WO2013-172085
状態 特許登録済
技術分野 顕微鏡、コンデンサー レンズ系 液晶1(応用、原理)
主要キーワード 抵抗子 変調レンジ 等位相間隔 点対称性 光路長分布 合成位相 位相形状 断面パターン
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題・解決手段

収差補正デバイス3は、コヒーレント光源1から出射される光束の光路中に配置された対物レンズ4を含む光学系により生じる波面収差補正する。そのために、収差補正デバイス3は、光路中に発生する波面収差のうち、光軸に対して対称な波面収差である対称性収差を補正する対称性収差補正素子3aと、対物レンズ4に斜入射する光束について発生する、光軸に対して非対称な波面収差である非対称性収差を補正する非対称性収差補正素子3bとを有する。

概要

背景

共焦点レーザー顕微鏡は、レーザー光対物レンズにより試料上に集光し、試料より発生する反射光散乱光または蛍光光学系で伝送し、試料上の集光点と光学的に共役な位置に配置したピンホールを透過した光束を検出器受光している。ピンホールを配置することにより、試料上の集光点以外から発生する光をフィルタリングできるので、共焦点レーザー顕微鏡は、SN比の良好な画像を取得することができる。

また、共焦点レーザー顕微鏡は、レーザー光を光軸と垂直な面に沿った、互いに直交する二方向(X方向、Y方向)に沿って試料をスキャンすることにより、試料の平面画像を取得する。一方、共焦点レーザー顕微鏡は、対物レンズと試料の光軸方向(Z方向)の間隔を変えることで、Z方向の複数の断層像が得られ(Zスタック)、これにより試料の3D画像を構築している。

生体試料を観察する場合、培養液に浸した状態でカバーガラス越しに観察することが多い。また一般に、対物レンズは、カバーガラス直下で結像性能が最も良くなるように設計されている。生体試料内部を観察する場合、培養液または生体組織を透過した奥行きを持つ観察位置の画像を取得する必要があり、カバーガラス直下から観察位置までの距離に比例して収差が発生し、その結果として解像度が低下する。

この収差について、図1A及び図1Bを参照しつつ詳細に説明する。図1A及び図1Bは、観察する試料の深さにより発生する収差を模式的に示した図である。説明を簡略化するため、対物レンズは、一様な屈折率媒質を観察する場合に最適になるように設計されるとしている。図1Aは、設計で用いた一様な屈折率の媒質を観察する場合の光束100を示している。図1Aでは、光束100が収差無く1点に集光していることが示されている。これに対し図1Bは、試料深さDの面を観察している場合の光束110を示している。対物レンズに接している媒質と試料との境界面111において、光束110は屈折し、発生する収差により光束110は1点に集光していない。

例えば、対物レンズがドライレンズである場合、対物レンズと試料間の空隙は空気で満たされているので、対物レンズと試料間の媒質(空気)の屈折率は1.0であり、生体試料の屈折率(例えば、1.39)と異なっている。そのため、対物レンズと試料間の媒質の屈折率と生体試料の屈折率との間の差と生体の観察深さに比例した収差が発生する。一方、対物レンズが水浸レンズである場合、対物レンズと試料間の空隙は水で満たされているので、対物レンズと試料間の媒質(水)の屈折率は1.333であり、その屈折率は空気よりも生体試料の屈折率に近い。そのため、水浸レンズは生体深部を観察するのに適しているが、生体試料の屈折率と水の屈折率は等しくないので、やはり生体試料の屈折率と水の屈折率との差により収差が発生する。そのため、解像度の低下が問題となっている。

さらに、カバーガラスの厚さも設計値(例えば0.17mm)から公差の範囲でばらつきを持っており、カバーガラス屈折率1.525と生体試料屈折率1.38〜1.39の差により、設計厚さからのカバーガラスの実際の厚さの差に比例して収差が発生する。これらの設計値からのズレにより光軸を中心とする対称的な位相分布を持つ球面収差が発生する。

次に、光軸から外れる光束について発生する収差について説明する。光軸外においても、対物レンズは、光軸上と同様にカバーガラス直下で結像性能が最高となるように設計されており、上述したような試料内部を観察する場合、試料の深さに比例して、コマ収差に代表される非対称性収差が発生する。また、非対称性収差の量は、画角の大きさに比例して大きくなる。そのため、試料を撮影した画像の周辺部を主に観察する場合は、画角が大きい光束により試料の像が得られているため、非対称性収差により、画像周辺部の像は、解像度が劣化したものとなる。

また、収差補正デバイスによる収差補正を行う場合、対物レンズの瞳位置は、一般的に対物レンズ系の内部にある。そのため、対物レンズ内に収差補正デバイスを入れるか、リレー光学系別途用いて、収差補正デバイスと対物レンズの瞳位置が共役関係となるように収差補正デバイスを配置しない限り、お互いに光軸方向で位置ずれを生じる問題が発生する。

図2は、試料を観察する際の光軸方向での位置ずれを説明する図である。この図では、説明を簡略化するために、収差補正デバイス3と対物レンズ4とが光軸に沿って並べて配置された構成が示されている。この例では、対物レンズ4の瞳位置から収差補正デバイス3間の距離はZである。光軸上に集光する光束200は実線で示され、一方、光軸外に収束する光束210は点線で表されている。収差補正デバイス3に入射する光のうち、軸外の光束210は、斜入射するために、収差補正デバイス3の光軸に直交する面において、光軸上の光束200よりも距離dだけ光軸から離れる方向に位置がずれている。そのため、収差補正デバイス3で光束210の収差を補正する際には、その位置ずれを考慮する必要がある。

光軸に直交する方向の位置ずれ(距離d)は、上述の原因の他に、対物レンズと収差補正デバイスのアライメント誤差によっても発生し、その位置ずれによる収差は、球面収差の差分としてコマ収差のような非対称性収差となる。

上述した収差による画質の劣化を解決する手段の一つに補正環がある。補正環は、対物レンズに設けられたリング状の回転部材で、補正環を回すことにより、対物レンズを構成するレンズ群の間隔が変更される。これにより、カバーガラスの厚さの誤差または生体深部を観察する場合に発生する収差がキャンセルされる。補正環には、目盛りが振ってあり、例えば、カバーガラス厚さについて、0,0.17,0.23の様に大まかに数値が示されている。そして、実際に使用するカバーガラスの厚さに合わせて補正環の目盛りを合わせることで、その厚さにおいて最適化されるようにレンズ群の間隔が調整される(例えば、特許文献1を参照)。

また、波面変換素子により、発生する収差を補償することも知られている。この技術は、顕微鏡光路中マトリックス駆動可能な形状可変ミラー素子を配置し、その形状可変ミラー素子により、事前に測定した波面変換データに基づいて波面形状変調し、変調した光波を試料に入射することで、収差の補正された結像性能の高い画像を取得する(例えば、特許文献2を参照)。

波面変換素子としては、電気的に反射面形状が制御可能な形状可変ミラー素子が用いられ、平面波が形状可変ミラー素子に入射した場合、形状可変ミラー素子が凹形状であれば、入射した平面波も凹形状の波面(凹形状の振幅は2倍)に変換される。

また、これらの補正手段を用い、対物レンズと試料間の距離に基づいて収差補正量を制御する顕微鏡の制御方法も知られている(例えば、特許文献3を参照)。

概要

収差補正デバイス3は、コヒーレント光源1から出射される光束の光路中に配置された対物レンズ4を含む光学系により生じる波面収差を補正する。そのために、収差補正デバイス3は、光路中に発生する波面収差のうち、光軸に対して対称な波面収差である対称性収差を補正する対称性収差補正素子3aと、対物レンズ4に斜入射する光束について発生する、光軸に対して非対称な波面収差である非対称性収差を補正する非対称性収差補正素子3bとを有する。

目的

さらに、試料によっては、手を触れることによる振動が観察位置に影響を与えてしまうため、手を触れずに自動で補正環を調整することが望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

この技術が所属する分野

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請求項1

コヒーレント光源から出射されるコヒーレント光の光束の光路中に配置された対物レンズを含む光学系により生じる波面収差補正する収差補正デバイスであって、前記光路中に発生する波面収差のうち、光軸に対して対称な波面収差である対称性収差を補正する対称性収差補正素子と、前記対物レンズに斜入射する光束について発生する、前記光軸に対して非対称な波面収差である非対称性収差を補正する非対称性収差補正素子と、を有することを特徴とする収差補正デバイス。

請求項2

前記コヒーレント光源と前記対物レンズとの間の光路中であって、かつ前記対物レンズの瞳位置と異なる位置に配置されるように、前記瞳のサイズよりも大きい波面収差の補正が可能な有効領域を持つ、請求項1に記載の収差補正デバイス。

請求項3

前記対称性収差補正素子と前記非対称性収差補正素子とが前記光軸に沿って配置される請求項1または2に記載の収差補正デバイス。

請求項4

前記対称性収差補正素子と前記非対称性収差補正素子は、印加される電圧に応じて前記光束に与える位相変調量が変化する一つの位相変調素子として構成される、請求項1または2に記載の収差補正デバイス。

請求項5

前記位相変調素子は、前記光軸と交差する面内で互いに異なる位置に配置される複数の電極を有し、前記対称性収差を補正するときと、前記非対称性収差を補正するときとで、前記複数の電極のそれぞれに印加する電圧を切り替え制御回路をさらに有する、請求項4に記載の収差補正デバイス。

請求項6

前記対称性収差補正素子は、前記対称性収差に対応する前記波面収差をZernike多項式に分解して得られる1次球面収差位相分布パターン反転させた第1の位相変調プロファイルに従った位相変調量を前記光束に与えることで前記対称性収差を補正し、前記非対称性収差補正素子は、前記非対称性収差に対応する前記波面収差をZernike多項式に分解して得られる1次コマ収差の位相分布パターンを反転させた第2の位相変調プロファイルに従った位相変調量を前記光束に与えることで前記非対称性収差を補正する、請求項1〜5の何れか一項に記載の収差補正デバイス。

請求項7

前記対称性収差補正素子は、前記対称性収差に対応する前記波面収差をZernike多項式に分解して得られる1次球面収差の位相分布パターンと2次球面収差の位相分布パターンとの和からなる位相分布パターンを反転させた第1の位相変調プロファイルに従った位相変調量を前記光束に与えることで前記対称性収差を補正し、前記非対称性収差補正素子は、前記非対称性収差に対応する前記波面収差をZernike多項式に分解して得られる1次コマ収差の位相分布パターンと2次コマ収差の位相分布パターンの和からなる位相分布パターンを反転させた第2の位相変調プロファイルに従った位相変調量を前記光束に与えることで前記非対称性収差を補正する、請求項1〜5の何れか一項に記載の収差補正デバイス。

請求項8

前記非対称性収差補正素子は、前記非対称性収差に対応する前記波面収差をZernike多項式に分解して得られるチルトの位相分布パターンと他の非対称性収差の成分に対応する位相分布パターンとの和からなる位相分布パターンを反転させた位相変調プロファイルに従った位相変調量を前記光束に与えることで前記非対称性収差を補正する、請求項1〜5の何れか一項に記載の収差補正デバイス。

請求項9

前記対称性収差補正素子と、前記非対称性収差補正素子は、それぞれ液晶素子である請求項3に記載の収差補正デバイス。

請求項10

前記位相変調素子は、液晶素子である請求項4に記載の収差補正デバイス。

請求項11

コヒーレント光の光束を照射する光源と、前記光源からの光束で試料走査する第1の光学系と、前記光束を前記試料に集光する対物レンズと、検出器と、前記光束が前記試料に入射することにより、前記試料から発した前記試料の情報を含んだ第2の光束を前記検出器に伝送する第2の光学系と、前記光源と前記対物レンズの間に配置された、請求項1〜10の何れか一項に記載の収差補正デバイスと、を有することを特徴とするレーザー顕微鏡

請求項12

前記収差補正デバイスは、前記対物レンズよりも前記光源側に、かつ前記対物レンズと前記第1の光学系及び前記第2の光学系の間に配置される、請求項11に記載のレーザー顕微鏡。

技術分野

0001

本発明は、対物レンズを備えコヒーレント光源を用いた装置において、試料照射する光束を位相変調し、試料、種々の条件または素子アライメント誤差により発生する収差補正し、より高分解能な画像を取得する技術に関する。

背景技術

0002

共焦点レーザー顕微鏡は、レーザー光を対物レンズにより試料上に集光し、試料より発生する反射光散乱光または蛍光光学系で伝送し、試料上の集光点と光学的に共役な位置に配置したピンホールを透過した光束を検出器受光している。ピンホールを配置することにより、試料上の集光点以外から発生する光をフィルタリングできるので、共焦点レーザー顕微鏡は、SN比の良好な画像を取得することができる。

0003

また、共焦点レーザー顕微鏡は、レーザー光を光軸と垂直な面に沿った、互いに直交する二方向(X方向、Y方向)に沿って試料をスキャンすることにより、試料の平面画像を取得する。一方、共焦点レーザー顕微鏡は、対物レンズと試料の光軸方向(Z方向)の間隔を変えることで、Z方向の複数の断層像が得られ(Zスタック)、これにより試料の3D画像を構築している。

0004

生体試料を観察する場合、培養液に浸した状態でカバーガラス越しに観察することが多い。また一般に、対物レンズは、カバーガラス直下で結像性能が最も良くなるように設計されている。生体試料内部を観察する場合、培養液または生体組織を透過した奥行きを持つ観察位置の画像を取得する必要があり、カバーガラス直下から観察位置までの距離に比例して収差が発生し、その結果として解像度が低下する。

0005

この収差について、図1A及び図1Bを参照しつつ詳細に説明する。図1A及び図1Bは、観察する試料の深さにより発生する収差を模式的に示した図である。説明を簡略化するため、対物レンズは、一様な屈折率媒質を観察する場合に最適になるように設計されるとしている。図1Aは、設計で用いた一様な屈折率の媒質を観察する場合の光束100を示している。図1Aでは、光束100が収差無く1点に集光していることが示されている。これに対し図1Bは、試料深さDの面を観察している場合の光束110を示している。対物レンズに接している媒質と試料との境界面111において、光束110は屈折し、発生する収差により光束110は1点に集光していない。

0006

例えば、対物レンズがドライレンズである場合、対物レンズと試料間の空隙は空気で満たされているので、対物レンズと試料間の媒質(空気)の屈折率は1.0であり、生体試料の屈折率(例えば、1.39)と異なっている。そのため、対物レンズと試料間の媒質の屈折率と生体試料の屈折率との間の差と生体の観察深さに比例した収差が発生する。一方、対物レンズが水浸レンズである場合、対物レンズと試料間の空隙は水で満たされているので、対物レンズと試料間の媒質(水)の屈折率は1.333であり、その屈折率は空気よりも生体試料の屈折率に近い。そのため、水浸レンズは生体深部を観察するのに適しているが、生体試料の屈折率と水の屈折率は等しくないので、やはり生体試料の屈折率と水の屈折率との差により収差が発生する。そのため、解像度の低下が問題となっている。

0007

さらに、カバーガラスの厚さも設計値(例えば0.17mm)から公差の範囲でばらつきを持っており、カバーガラス屈折率1.525と生体試料屈折率1.38〜1.39の差により、設計厚さからのカバーガラスの実際の厚さの差に比例して収差が発生する。これらの設計値からのズレにより光軸を中心とする対称的な位相分布を持つ球面収差が発生する。

0008

次に、光軸から外れる光束について発生する収差について説明する。光軸外においても、対物レンズは、光軸上と同様にカバーガラス直下で結像性能が最高となるように設計されており、上述したような試料内部を観察する場合、試料の深さに比例して、コマ収差に代表される非対称性収差が発生する。また、非対称性収差の量は、画角の大きさに比例して大きくなる。そのため、試料を撮影した画像の周辺部を主に観察する場合は、画角が大きい光束により試料の像が得られているため、非対称性収差により、画像周辺部の像は、解像度が劣化したものとなる。

0009

また、収差補正デバイスによる収差補正を行う場合、対物レンズの瞳位置は、一般的に対物レンズ系の内部にある。そのため、対物レンズ内に収差補正デバイスを入れるか、リレー光学系別途用いて、収差補正デバイスと対物レンズの瞳位置が共役関係となるように収差補正デバイスを配置しない限り、お互いに光軸方向で位置ずれを生じる問題が発生する。

0010

図2は、試料を観察する際の光軸方向での位置ずれを説明する図である。この図では、説明を簡略化するために、収差補正デバイス3と対物レンズ4とが光軸に沿って並べて配置された構成が示されている。この例では、対物レンズ4の瞳位置から収差補正デバイス3間の距離はZである。光軸上に集光する光束200は実線で示され、一方、光軸外に収束する光束210は点線で表されている。収差補正デバイス3に入射する光のうち、軸外の光束210は、斜入射するために、収差補正デバイス3の光軸に直交する面において、光軸上の光束200よりも距離dだけ光軸から離れる方向に位置がずれている。そのため、収差補正デバイス3で光束210の収差を補正する際には、その位置ずれを考慮する必要がある。

0011

光軸に直交する方向の位置ずれ(距離d)は、上述の原因の他に、対物レンズと収差補正デバイスのアライメント誤差によっても発生し、その位置ずれによる収差は、球面収差の差分としてコマ収差のような非対称性収差となる。

0012

上述した収差による画質の劣化を解決する手段の一つに補正環がある。補正環は、対物レンズに設けられたリング状の回転部材で、補正環を回すことにより、対物レンズを構成するレンズ群の間隔が変更される。これにより、カバーガラスの厚さの誤差または生体深部を観察する場合に発生する収差がキャンセルされる。補正環には、目盛りが振ってあり、例えば、カバーガラス厚さについて、0,0.17,0.23の様に大まかに数値が示されている。そして、実際に使用するカバーガラスの厚さに合わせて補正環の目盛りを合わせることで、その厚さにおいて最適化されるようにレンズ群の間隔が調整される(例えば、特許文献1を参照)。

0013

また、波面変換素子により、発生する収差を補償することも知られている。この技術は、顕微鏡光路中マトリックス駆動可能な形状可変ミラー素子を配置し、その形状可変ミラー素子により、事前に測定した波面変換データに基づいて波面形状変調し、変調した光波を試料に入射することで、収差の補正された結像性能の高い画像を取得する(例えば、特許文献2を参照)。

0014

波面変換素子としては、電気的に反射面形状が制御可能な形状可変ミラー素子が用いられ、平面波が形状可変ミラー素子に入射した場合、形状可変ミラー素子が凹形状であれば、入射した平面波も凹形状の波面(凹形状の振幅は2倍)に変換される。

0015

また、これらの補正手段を用い、対物レンズと試料間の距離に基づいて収差補正量を制御する顕微鏡の制御方法も知られている(例えば、特許文献3を参照)。

先行技術

0016

特許第3299808号(第4−6頁、図1)
特許第4149309号(第3−5頁、図1)
特許第4554174号(図1)

発明が解決しようとする課題

0017

しかし、補正環の操作は、対物レンズについているリング状の調整機構を手で回転することで行われる。そのため、その調整機構を調整することによるフォーカスのズレまたは視野のズレが生じる。また、対物レンズの最適位置を決定するためには、補正環の調整とフォーカシングを繰り返す必要があり、最適化のためのプロセスが煩雑であるという問題がある。プロセスが煩雑であるため、最適位置への調整に手間取り、蛍光色素が褪色してしまうという問題もある。蛍光色素の褪色は、励起光を当て続けることにより、発生する蛍光強度が弱くなってしまうという問題である。

0018

また、補正環の調整はデリケートであり、その調整結果の判断は画像を目視した人が判断しているのが現状で、最適位置かどうかの判断が非常に難しい。特に、Zスタックの撮影においては、この作業を奥行き方向の取得画像数分繰り返す必要があり、非常に煩雑である。そのため、補正環を十分に生かしているユーザーは少ないという現状がある。さらに、試料によっては、手を触れることによる振動が観察位置に影響を与えてしまうため、手を触れずに自動で補正環を調整することが望まれている。

0019

さらに、補正環で調節できるのはレンズ間の光軸方向(Z方向)の間隔だけなので、補正環を備えた対物レンズは、光軸対称性の収差しか補正できず、光軸に対して非対称な収差を補正することができない。

0020

また、波面変換素子による収差の補償技術においては、波面変換素子が反射型であることから、顕微鏡光学系が複雑化、及び大型化する。さらに、最適な補償波面を得るために、事前に収差を測定することが必要であり、最適な波面を形成するように補正量を収束させるプロセスが必須なため、この技術は、なかなか実用に到っていない。

0021

さらに、波面変換素子と対物レンズの瞳位置の光軸のずれ、光軸に直交する方向での位置ずれまたは試料深さ等により、非対称性収差が発生し、対称性収差と合わさって複雑な収差が発生する。そのため、最適な波面を得るための波面変換素子が与える収差補正量への収束に時間がかかるといった課題がある。

0022

さらに、対物レンズと試料間の距離だけに基づいて収差補正量を制御する場合、波面変換素子は、基本的に対称性の収差しか補正できず、非対称性収差を補正するためには、画角及び位置ずれ量等の情報が必要となる。

0023

そこで、本発明は、上記課題を解決し、既存の光学系に大掛かりな変更を加えずに、対物レンズに手を触れることなく、試料、観察条件または素子間のアライメントの誤差により発生する収差を補正する収差補正デバイスを提供することを目的とする。また本発明の他の目的として、結像性能の高い画像を取得できる、収差補正デバイスを用いたレーザー顕微鏡を提供する。

課題を解決するための手段

0024

上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の収差補正デバイスは下記記載の構成を採用するものである。

0025

すなわち、収差補正デバイスは、コヒーレント光源から出射されるコヒーレント光の光束の光路中に配置された対物レンズを含む光学系により生じる波面収差を補正する。そのために、収差補正デバイスは、光路中に発生する波面収差のうち、光軸に対して対称な波面収差である対称性収差を補正する対称性収差補正素子と、対物レンズに斜入射する光束について発生する、光軸に対して非対称な波面収差である非対称性収差を補正する非対称性収差補正素子とを有する。

0026

この収差補正デバイスは、コヒーレント光源と対物レンズとの間の光路中であって、かつ対物レンズの瞳位置と異なる位置に配置されるように、瞳のサイズよりも大きい波面収差の補正が可能な有効領域を持つことが好ましい。

0027

またこの収差補正デバイスにおいて、対称性収差補正素子と非対称性収差補正素子とが光軸に沿って配置されることが好ましい。

0028

あるいは、この収差補正デバイスにおいて、対称性収差補正素子と非対称性収差補正素子は、印加される電圧に応じて光束に与える位相変調量が変化する一つの位相変調素子として構成されることが好ましい。

0029

この場合において、位相変調素子は、光軸と交差する面内で互いに異なる位置に配置される複数の電極を有することが好ましい。そして収差補正デバイスは、対称性収差を補正するときと、非対称性収差を補正するときとで、複数の電極のそれぞれに印加する電圧を切り替え制御回路をさらに有することが好ましい。

0030

さらに、対称性収差補正素子は、対称性収差に対応する波面収差をZernike多項式に分解して得られる1次球面収差の位相分布パターン反転させた第1の位相変調プロファイルに従った位相変調量を前記光束に与えることで対称性収差を補正することが好ましく、非対称性収差補正素子は、非対称性収差に対応する波面収差をZernike多項式に分解して得られる1次コマ収差の位相分布パターンを反転させた第2の位相変調プロファイルに従った位相変調量を光束に与えることで非対称性収差を補正することが好ましい。

0031

あるいは、対称性収差補正素子は、対称性収差に対応する波面収差をZernike多項式に分解して得られる1次球面収差の位相分布パターンと2次球面収差の位相分布パターンとの和からなる位相分布パターンを反転させた第1の位相変調プロファイルに従った位相変調量を光束に与えることで対称性収差を補正することが好ましく、非対称性収差補正素子は、非対称性収差に対応する波面収差をZernike多項式に分解して得られる1次コマ収差の位相分布パターンと2次コマ収差の位相分布パターンの和からなる位相分布パターンを反転させた第2の位相変調プロファイルに従った位相変調量を光束に与えることで非対称性収差を補正することが好ましい。

0032

あるいはまた、非対称性収差補正素子は、非対称性収差に対応する波面収差をZernike多項式に分解して得られるチルトの位相分布パターンと他の非対称性収差の成分に対応する位相分布パターンとの和からなる位相分布パターンを反転させた位相変調プロファイルに従った位相変調量を光束に与えることで非対称性収差を補正することが好ましい。

0033

また、この収差補正デバイスにおいて、対称性収差補正素子と、非対称性収差補正素子は、それぞれ液晶素子であることが好ましい。

0034

また、この収差補正デバイスにおいて、対称性収差補正素子と非対称性収差補正素子が一つの位相変調素子として構成される場合、その位相変調素子は、液晶素子であることが好ましい。

0035

本発明の他の側面によれば、レーザー顕微鏡が提供される。このレーザー顕微鏡は、コヒーレント光の光束を照射する光源と、光源からの光束で試料を走査する第1の光学系と、その光束を試料に集光する対物レンズと、検出器と、光束が試料に入射することによりその試料から発した試料の情報を含んだ第2の光束を検出器に伝送する第2の光学系と、光源と対物レンズの間に配置された、上記の何れかの収差補正デバイスとを有する。

0036

このレーザー顕微鏡において、収差補正デバイスは、対物レンズよりも光源側に、かつ対物レンズと第1の光学系及び第2の光学系の間に配置されることが好ましい。

発明の効果

0037

本発明によれば、収差補正デバイス及びその収差補正デバイスを用いたレーザー顕微鏡は、生体試料の深部を観察するとき、またはカバーガラス越しに試料を観察するときに媒体の厚さの想定値からのズレ、媒体の厚さ変化または傾き等のムラに起因して発生する収差を補正し、試料をより高分解能で観察または測定できるようにする。特に、この収差補正デバイス及びレーザー顕微鏡は、観察領域の周辺部である、画角により光軸からずれた位置を観察する場合に発生する非対称性の収差を補正し、より良好な画像を取得することができる。また、この収差補正デバイス及びレーザー顕微鏡は、対物レンズと収差補正デバイス間のアライメントずれの影響も含めて収差を補正することができる。特に、対物レンズの瞳位置に収差補正デバイスを配置できない場合、例えば、光軸方向で対物レンズの瞳位置と収差補正デバイスの位置が一致しておらず、かつ軸外を観察する場合、または対物レンズと収差補正デバイス間のアライメントにずれがある場合には、収差補正デバイスで球面収差補正を実施することで、収差補正デバイスが光軸からずれているために、必然的に非対称性収差が発生する。よって、収差補正デバイスで対称性収差と非対称性収差の両方を補正できることは、より正確に位相を補正するために効果的である。さらに、この収差補正デバイス及びレーザー顕微鏡は、対物レンズに手を触れることなく、電気的に収差を補正することができるため、補正環の調整のような煩わしさが無く、自動で最適化を行う、Zスタック時の観察深さに同期した調整ができる等のメリットがある。

0038

また、前述したように、補正環による補正の場合は、補正環の調整とフォーカシングを繰り返す必要があり、最適化のプロセスが長く複雑になっていたが、本発明の収差補正デバイス及びレーザー顕微鏡は、フォーカシングにより残留する位相分布(デフォーカス成分)を位相変調プロファイルとして補正することができ、最適化のための繰り返しプロセスを無くすことができるので、効率良く収差補正を行うことができる。

図面の簡単な説明

0039

図1Aは試料表面を観察する場合と深さDの試料内部を観察する場合に発生する収差を説明するための図である。
図1Bは試料表面を観察する場合と深さDの試料内部を観察する場合に発生する収差を説明するための図である。
図2は、軸外で発生する収差の原因を説明する対物レンズと収差補正デバイスの関係を示す模式図である。
図3は、本発明の一つの実施形態に係るレーザー顕微鏡の概略構成図である。
図4Aは、開口数NAが1.15の対物レンズにより、生体試料内部を観察するときに発生する光軸上の光路長分布を示す位相分布断面パターンを示す図である。
図4Bは、開口数NAが1.15の対物レンズにより、生体試料内部を観察するときに発生する光軸外の入射平面内の光路長分布を示す位相分布断面パターンを示す図である。
図5Aは、1次球面収差における位相分布の立体斜視図とその部分断面形状を曲線で示した図である。
図5Bは、1次コマ収差における位相分布の立体斜視図とその部分断面形状を曲線で示した図である。
図6Aは、2次球面収差における位相分布の立体斜視図とその部分断面形状を曲線で示した図である。
図6Bは、2次コマ収差における位相分布の立体斜視図とその部分断面形状を曲線で示した図である。
図7は、PV値を最小とする位相変調プロファイルを示す図である。
図8は、収差補正デバイスが有する対称性収差補正素子の平面及び側面を示す図である。
図9は、図8に示された対称性収差補正素子のアクティブ領域の一部における断面模式図である。
図10は、対称性収差補正素子における対称性収差をキャンセルする位相変調プロファイルの位相分布に応じて決定される電極パターンの一例を示す図である。
図11は、対称性収差補正素子がn個の輪帯電極を有する場合の、各輪帯電極と印加される電圧との関係を示す図である。
図12は、非対称性収差補正素子における非対称性収差をキャンセルする位相変調プロファイルの位相分布に応じて決定される電極パターンの一例を示す図である。
図13は、本発明の他の実施形態に係るレーザー顕微鏡の概略構成図である。
図14Aは、第2の実施形態による位相変調素子にて表示される位相変調プロファイルの一例を示す図である。
図14Bは、第2の実施形態に係る位相変調素子の電極パターンの一例を示す図である。
図15は、第2の実施形態に係る収差補正デバイスにおいて、制御回路によって電圧が印加される電極の一例を示す図である。
図16Aは第3の実施形態に係る収差補正デバイスが有する位相変調素子に表示される位相変調プロファイルの一例を示す図である。
図16Bは、第3の実施形態に係る位相変調素子の電極パターンの一例を示す図である。
図17は、第3の実施形態に係る収差補正デバイスにおいて、制御回路によって電圧が印加される電極の一例を示す図である。

実施例

0040

以下に添付図面を参照して、この発明にかかる収差補正デバイス、また、収差補正デバイスを用いたレーザー顕微鏡の好適な実施の形態を詳細に説明する。

0041

図3は、本発明の一つの実施形態に係るレーザー顕微鏡100の概略構成図を示している。コヒーレント光源であるレーザー光源1から出射したレーザー光束は、コリメート光学系2により平行光に調整され、その平行光は収差補正デバイス3を透過した後、対物レンズ4によって試料5上に集光される。試料5により反射または散乱した光束もしくは試料により発生した蛍光等、試料の情報を含んだ光束は、光路を逆にたどり、ビームスプリッター6で反射され、第2の光学系であるコンフォーカル光学系7で再び共焦点ピンホール8上に集光される。そして、共焦点ピンホール8が、試料の焦点位置以外からの光束をカットするので、検出器9でSN比の良好な信号が得られる。なお、レーザー光源1は、放射するレーザー波長が異なる複数のレーザー光源を有していてもよい。

0042

また、詳細な説明は省略するが、レーザー顕微鏡100は、スキャン光学系10により、試料5を光軸に直交する面に沿って光源1からのレーザー光によってスキャンすることで、試料5の2次元像を得ている。さらに、レーザー顕微鏡100は、対物レンズ4と試料5間の距離を変えることで、試料5を光軸方向にもスキャンし、その距離ごとに試料5の2次元像を得ることで、試料5の3次元像を得ている。

0043

ここで、対物レンズ4は、レンズ系内部だけでなく、レンズ先端から観察面までの光路の媒質の屈折率と間隔、例えばカバーガラスの厚さまたはカバーガラスの有無を想定し、それらの想定値で結像性能が最適化されるように設計されている。そのため、観察対象となる生体試料の深さ、またはカバーガラスの製造誤差による厚さのずれ等により収差が発生し、その収差が結像性能の低下をもたらしている。そこで、光路長の設計値からのずれに応じて、対物レンズ4を含む、レーザー光源1から光束の集光位置までの光学系により発生する波面収差を見積もり、その波面収差をキャンセルするような位相分布を位相変調プロファイルとして収差補正デバイス3に表示することで、このレーザー顕微鏡100は、結像性能を向上させる。

0044

一般的に、スペースの関係から収差補正デバイスを対物レンズの入射瞳位置に配置することができないため、リレーレンズを用いて入射瞳と共役な位置に収差補正デバイス3は配置される。一方で、顕微鏡の対物レンズは、一般的に、無限系で設計されており、対物レンズに入射する光束は平行光となっている。したがって、本実施形態では、光学系の大型化を避けるため、リレー光学系を無くすとともに、収差補正デバイス3は、対物レンズ4の光源側、なるべく対物レンズ4の近傍に配置されることが好ましい。このように収差補正デバイス3を配置することで、レーザー顕微鏡100は補正の効果をより効果的に得ることができる。また、レーザー光源1から出射した光束は、収差補正デバイス3を往路と復路との2回通過するので、収差補正デバイス3は、往路、復路ともに光束の位相を補正する。

0045

次に、試料の深さにより発生する収差とその補正方法について詳しく説明する。試料の深さにより発生する収差は、先の図1Bで説明した通りである。ここで、水浸レンズを用いて試料内部を観察する場合を仮定して、光路長を計算した例を図4A及び図4Bに示す。図4A図4Bは、それぞれ、試料の表面からの深さ及び試料の屈折率をそれぞれ250μm、1.39としたときの、NA1.15の水浸レンズを用いた場合における光路計算による位相分布を示している図である。ただし、用いるカバーガラスの厚さまたは試料表面からの深さによっては、この図に示された位相分布とは逆位相の位相分布となることがある。縦軸位相差量正規化して示しており、横軸は収差補正デバイスの有効径半径を「±1」で正規化している。すなわち、横軸における「0」の位置は、光軸上であることを表す。

0046

図4Aにおいて、曲線400は、光軸における収差を示しており、球面収差パターンとなっている。さらに、2次元像を取得することを考えると、光軸外の特性も合わせて考慮する必要が生じる。図4Bにおいて曲線410は、図4Aに示された例と同様の条件下で試料に斜入射する光束の入射平面内の位相分布を示している。この例では、試料への入射角度は7.4°である。曲線410に示されるように、球面収差にチルト、コマ収差等の非対称性成分が重畳されていることが分かる。

0047

このように試料表面でなく試料内部を観察するときに収差が発生し、対物レンズのスペックまたは画角に応じて対物レンズを透過する光束の位相分布が異なる。レーザー顕微鏡100は、発生する収差を波面収差として表し、その波面収差をキャンセルするような位相変調プロファイルを、対物レンズ4の入射瞳位置に配置した収差補正デバイス3の位相変調素子に設けられた電極に電圧を印加することで発生させる。これにより、レーザー顕微鏡100は、収差を補正することができ、その結果として、レーザー光源1からの光束を試料5の表面または試料5の内部に設定される観察位置において1点に集光させることができる。同様に、試料より発生した光束も光路を逆にたどるので、レーザー顕微鏡100は、その光束を平面波に変換することができる。

0048

このような波面収差の位相分布は、収差を各成分に分解した各成分の和として表現できる。このとき、収差の各成分を独立に制御するため、波面収差をZernike多項式のような直交関数に分解し、各関数の和として波面収差を表現することが一般的に行われている。したがって、収差の補正量についても、Zernike多項式の各関数の位相分布として表現し、各関数の相対的な位相変調量を変化させることで位相変調プロファイルを求める方法が考えられる。

0049

波面収差は、球面収差に代表される対称性収差と、コマ収差に代表される非対称性収差に大別される。例えば、波面収差を標準Zernike多項式で分解したとき、13番目係数(Z13)は、3次球面収差を表し、25番目の係数(Z25)は、5次球面収差を表している。すなわち、これらの係数は対称性を持つ収差を表している。

0050

また、同様に、波面収差を標準Zernike多項式に分解したときの、8番目と9番目の係数(Z8、Z9)は、1次のコマ収差を表し、18番目と19番目の係数(Z18、Z19)は、2次のコマ収差を表している。すなわち、これらの係数は非対称性収差を表している。

0051

それぞれの波面の形状を図に示す。図5A及び図5Bは、それぞれ1次の球面収差とコマ収差を示し、図6A及び図6Bは、それぞれ2次の球面収差とコマ収差を示している。図5A図5B図6A及び図6Bに示された収差は、点対称性の位相分布を持っている。それぞれの図において、上の立体図501、502、601、602は、波面の形状を示しており、下のグラフにおける曲線511、512、611、612は、立体図に対応した、光軸を通る平面における、位相分布の断面図を示している。グラフの縦軸は位相差量をその最大値で正規化した値を示しており、横軸は収差補正デバイス3の有効径の半径を「±1」として有効系を正規化した値を表す。すなわち、横軸における「0」の位置は、光軸上であることを表す。

0052

次に、収差補正デバイス3が実際に収差補正を行うために用いる位相変調プロファイルについて、例を挙げてより詳細に説明する。まず、光軸に対して対称な収差である対称性収差について説明する。フォーカシングにより残留する位相分布は、その波面の2乗平均平方根(RMS)値が最小になる形状と一致すると考えることができる。よって、例えば、RMS収差が最小となるように、1次の球面収差にデフォーカス項を加えた位相分布を求め、その位相分布から位相変調プロファイルを設定することができる。

0053

また、デフォーカス成分の加え方として、位相分布の位相変調量(以下、PV値とする)が最小となるようにし、最小となる位相変調量に対応する位相分布を位相変調プロファイルとすることもできる。PV値が最小となるようにした場合は、位相変調レンジ(位相変調量の幅)が小さくてすむ。そのため、収差補正デバイス3のスペックの緩和に効果がある。例えば、収差補正デバイス3が有する位相変調素子として液晶素子が用いられる場合には、液晶素子の液晶層が薄くてすむ。また、一般的に、液晶素子の応答時間は、液晶層の厚さの2乗に比例するので、位相変調レンジが小さければ応答速度が向上するというメリットがある。また、液晶層の厚さが薄いほど、面精度が向上するというメリットもある。

0054

さらに、フォーカシングにより残留する位相分布は、用いる顕微鏡または画像処理ソフト仕様により異なることが考えられ、それぞれの固有残存収差パターンと収差補正デバイスの位相変調プロファイルを合わせ込んで行くことで最適な収差補正が可能となる。

0055

次に、光軸に対して非対称な収差である非対称性収差について述べる。光束が光軸外であるという特性を考慮すると、発生する収差成分は、デフォーカスと球面収差に限定されず、コマ収差に代表される非対称性収差を含む。この場合も、光路計算によると対物レンズ4のチルトと1次のコマ収差が支配的で、収差補正デバイス3は、これらの線形和で収差をキャンセルする最適な位相分布を与えることができる。コマ収差のみを補正したい場合は、対称性収差のデフォーカスと同様に、非対称性収差においては、適切なチルト成分を加えることで、図5Bに示すコマ収差に対して、図7に示すようなPV値を最小とする位相変調プロファイル700が得られる。なお、図7においても、縦軸は位相差量をその最大値で正規化した値を示しており、横軸は配置する収差補正デバイス3の有効径の半径を「±1」として有効系を正規化した値を表す。このように、PV値が最小となるように位相変調プロファイルを決定することで、収差補正デバイスのスペックについて上述したような緩和の効果がある。

0056

対物レンズ4のチルトによる波面の傾き及びコマ収差は、非対称性収差なので光束の入射方向に対する依存性がある。例えば、図5Bに示したコマ収差の場合、入射平面は図示したような紙面に平行な平面となる。任意の入射方向に対応するためコマ収差は、Zernike係数のZ8項、Z9項の線形和で表すことができる。

0057

(第1実施形態)
次に第1の実施形態について詳細に説明する。本実施形態では、収差補正デバイス3は、複数の位相変調素子を有し、それら位相変調素子が光軸に沿って並べて配置される。

0058

先に記述したように、開口数NAが高い対物レンズを用いて試料の内部を観察する場合などに発生する対称性収差は、デフォーカス及び低次高次の球面収差が複合的に発生する。また、光軸外の収差を補正する場合、非対称性の収差の補正も必要である。したがって、厳密に収差を補正するためには、収差補正デバイス3は、対称性収差の高次収差及び非対称性の収差の項も補正する必要がある。したがって、それぞれの項に対応した位相変調プロファイルが、別個に表示される必要がある。そこで、多様な位相変調プロファイルを表示できるように、収差補正デバイス3は、それぞれの収差の項に対応した位相変調素子を有することで、様々な収差を補正することができる。

0059

しかし、Zernike多項式の全ての項に対応する位相変調素子を用意し、それら位相変調素子を光軸に沿って配置すると、複数の位相変調素子のそれぞれの境界面での反射による透過率の低下などのデメリットが生じてしまう。

0060

したがって、収差補正デバイスが有する位相変調素子の数は、必要最小限の項に対応するように設定されるこが好ましい。例えば、軸上収差について、デフォーカスは、顕微鏡のフォーカシングで可変でき、高次の収差は無視できるほど小さいとすると、1次球面収差に対応するZ13項を補正することで、結像性能の向上が図れる。また、軸外収差については、収差補正デバイスは、対物レンズのチルトに対応するZ2項及びZ3項と、コマ収差に対応するZ8項及びZ9項を補正することで結像性能の向上が図れる。つまり、収差補正デバイス3は、1次球面収差のZernike多項式のZ13項に対応する対称性収差を補正するための位相変調素子と、チルトのZ2項及びZ3項とコマ収差のZ8項及びZ9項の複合収差に対応する非対称性収差を補正するための位相変調素子の少なくとも2枚の位相変調素子を有すればよい。

0061

本実施形態では、収差補正デバイス3は、図3で図示されるように、対称性収差を補正する位相変調素子3aと、非対称性収差を補正する位相変調素子3bとを有する。そしてこれら二つの位相変調素子は、光軸に沿って積層される。なお、位相変調素子3aと位相変調素子3bの配置の順序には制限はなく、何れの素子が対物レンズ4側に配置されてもよい。以下では、説明の便宜上、対称性収差補正用の位相変調素子3aを対称性収差補正素子と呼び、非対称性収差補正用の位相変調素子3bを非対称性収差補正素子と呼ぶ。

0062

対称性収差補正素子3aに表示する位相変調プロファイルは、1次球面収差の成分の位相分布に、適当な、例えば上述した位相変調量のPV値が最小となるデフォーカス成分を加えて得られた合成位相分布をキャンセルするように、その合成位相分布を逆極性としたもの、すなわち、合成位相分布の正負を反転させたものとされる。

0063

また、開口数NAが高いレンズにより試料内部を観察する場合などでは高次の収差の成分が無視できなくなる。そのため、実際に発生する収差の位相分布は、1次の収差と高次の収差の線形和となり、収差補正デバイス3が1次の収差を補正するのみでは、レーザー顕微鏡100の結像性能を十分に向上できない場合がある。そこで、1次球面収差の成分と2次球面収差の成分の重み付き和、すなわち、Zernike多項式におけるZ13項とZ25項を所定の比率加算したものにPV値を加算して得られた分布を反転することで、位相変調プロファイルが作成される。これにより、収差補正デバイス3は、より高精度に収差を補正できる。1次球面収差の成分に対する2次球面収差の成分の最適な比率は、対物レンズ4のNA及びドライ・水浸・液浸といった対物レンズのタイプに応じて異なるので、対物レンズ4の仕様に合わせてその比率が決定されればよい。

0064

非対称性収差補正素子3bに表示する位相変調プロファイルは、非対称性収差のチルトと1次のコマ収差と2次のコマ収差を所定の比率で加算することにより得られた合成位相分布をキャンセルするように、その合成位相分布を逆極性としたものとされる。
図5B及び図6Bに示した1次のコマ収差の係数に対する2次のコマ収差の係数の比率は、対称性収差と同様に対物レンズ4の仕様で決定される。また、レーザー顕微鏡100の共焦点ピンホール8の位置が可変である場合は、対称性収差のデフォーカスと同様に、合成位相分布に任意のチルト成分を加えて、位相分布のPV値が最小になるように、位相変調プロファイルを設定してもよい。

0065

さらに軸外収差については、図2で示したように、光束が斜入射することにより、光軸上に集光する光束に対して、収差補正デバイス3では光軸に直交する面において距離dだけ位置がずれる。発生する収差の位相分布とその位相分布を補正するための位相変調プロファイル間の位置ずれ量が微小な場合、その差分は、収差の位相分布の微分で表すことができる。したがって、球面収差を補正する場合、補正しきれない残留収差は、球面収差パターンの微分パターンとなるので、その残留収差はコマ収差パターンで近似できる。例えば、1次球面収差の位相分布と収差補正デバイス3上に表示される位相変調プロファイル間の位置ずれによる残留収差は、1次コマ収差で近似でき、2次球面収差の位相分布と収差補正デバイス3上に表示される位相変調プロファイル間の位置ずれによる残留収差は、2次コマ収差で近似できる。

0066

したがって、収差の位相分布と位相変調プロファイル間の位置ずれによる非対称性収差の各次数の比率は、対称性収差の各次数の比率から算出される。そこで、その比率を用いて算出された位置ずれ量に相当する非対称性収差と画角により発生する非対称性収差とを加えることで、軸外収差補正用の位相変調プロファイルを算出する際の基準となる非対称性収差パターンを決めてやればよい。

0067

ここで、1次コマ収差と2次コマ収差の両方とも、発生する収差量は、画角に比例する。また、視野の周辺ほど画角が大きくなるので、発生するコマ収差も大きくなる。したがって、画角に基づいて発生する収差を算出し、発生する収差の位相分布をキャンセルするように収差補正デバイス3に表示する位相変調プロファイルを決めることもできる。試料5に設定される観察面を極座標で表すと、方位角θに応じてZernike係数のZ8の項に対するZ9の項の比が決定され、その比に応じてそれらの項の重み付き和が求められる。また、動径rに比例して位相変調量を変えることにより、画角に応じた適切な位相変調プロファイルが作成できる。このように、レーザーのスキャンに同期して収差補正デバイス3が表示する位相変調プロファイルの変調量を変えることが好ましい。しかし、レーザー顕微鏡100は、オペレーターが観察したい領域を拡大して観察できるようにスキャン範囲を変えることができるので、観察領域の中心に基づいて位相の変調量を決定すれば、スキャン範囲内での非対称性収差の変化を無視できる。そのため、収差補正デバイス3の応答速度が、レーザーのスキャン速度に対して不十分な場合には、動径rに比例して位相変調量を変えなくとも、収差補正デバイス3は、十分に補正の効果を得ることができる。

0068

このように、対称性収差補正素子3aと、非対称性収差補正素子3bとの、二つの位相変調素子を積層して収差補正デバイス3として構成したので、収差補正デバイス3は、発生した様々な収差、例えばさらに高次の収差、またはコマ収差等の球面対称ではない収差を補正できる。その際、n種の収差の和からなる複合収差に基づいて位相変調プロファイルを求めることで、各収差が部分的に互いに打ち消しあうことにより、トータルの位相変調量は、各収差補正量のn倍よりも十分に小さい変調量に抑制される。そのため、位相変調素子に要求される最大位相変調量も抑制される。

0069

なお、収差補正デバイスが有する位相変調素子は、例えば、液晶素子とすることができる。そこで以下では、波面収差をキャンセルするような位相分布を位相変調プロファイルとして液晶素子に表示させる場合に、液晶素子の電極に電圧印加する方法について、図8図11を用いてより詳細に説明する。

0070

図8は、収差補正デバイス3が有する対称性収差補正素子3aの平面及び側面を示す図である。液晶層は、透明基板21、22で挟まれており、シール部材23で、液晶漏れないように周辺部が封止されている。透明基板21、22の互いに対向する側の面における、液晶を駆動するアクティブ領域24のサイズ、すなわち、透過する光束の位相を変調できる領域のサイズは、対物レンズ4の瞳径に応じて決定されている。また、対称性収差を補正するために、アクティブ領域24には、光軸を中心とする同心円状の透明な輪帯電極が複数形成されている。なお、透明基板21、22の一方については、アクティブ領域24全体を覆うように透明電極が形成されていてもよい。そして収差補正デバイス3が有する制御回路31が、透明な輪帯状の輪帯電極に印加する電圧を制御することで、対称性収差補正素子3aを透過する光束に所望の位相分布を与えることができる。なお、制御回路31は、例えば、プロセッサと、プロセッサからの駆動信号に応じて出力する電圧を変更可能な駆動回路とを有する。

0071

図9は、図8の対称性収差補正素子3aのアクティブ領域24の一部における断面模式図を示している。対称性収差補正素子3aでは、透明基板21,22の間に液晶分子34が挟まれている。透明基板21、22の互いに対向する側の表面には透明電極33,33a,33bが形成されている。図9では、右側半分の電極33aと電極33の間に電圧が印加され、一方、左側半分の電極33bと電極33の間には電圧が印加されていない状態が示されている。液晶分子34は、細長分子構造を持ち、ホモジニアス配向されている。すなわち、2枚の基板21、22に挟まれた液晶分子34は、その長軸方向がお互いに平行となり、かつ、基板21、22と液晶層の界面と平行に並んでいる。液晶分子34は、その長軸方向における屈折率と長軸方向に直交する方向における屈折率とが異なり、一般に、液晶分子34の長軸方向に平行な偏光成分(異常光線)に対する屈折率neは、液晶分子の短軸方向に平行な偏光成分(常光線)に対する屈折率noよりも高い。そのため、液晶分子34をホモジニアス配向させた対称性収差補正素子3aは、1軸性複屈折素子として振舞う。

0072

液晶分子は、誘電率異方性を持ち、一般に液晶分子長軸電界方向に倣う方向に力が働く。つまり、図9で示したように、液晶分子を挟む2枚の基板に設けられた電極間に電圧が印加されると、液晶分子の長軸方向は、基板に平行な状態から、電圧に応じて基板の表面に直交する方向に傾いてくる。このとき、液晶分子長軸に平行な偏光成分の光束を考えると、液晶分子の屈折率nψは、no≦nψ≦ne(noは常光の屈折率、neは異常光の屈折率)となる。そのため、液晶層の厚さがdであると、液晶層のうち、電圧が印加された領域と印加されていない領域を通る光束の間に、光路長差Δnd(=nψd−nod)が生じる。位相差は、2πΔnd/λとなる。なお、λは、液晶層に入射する光束の波長である。

0073

ここで、レーザー顕微鏡100は、上記のように、波長が互いに異なるレーザー光を照射する複数のレーザー光源を有してもよい。この場合、波長によって、必要な位相変調量が異なる。そこで、収差補正デバイス3の制御回路31は、波長の違いによる位相変調量のずれを、対称性収差補正素子3aの液晶層に印加する電圧を変化させることで補正することができる。さらに、制御回路31は、温度変化等による位相変調量のずれも、対称性収差補正素子3aの液晶層に印加する電圧を調整することでキャンセルすることができる。

0074

次に、液晶素子として構成された対称性収差補正素子3a及び非対称性収差補正素子3bを透過する光束に所望の位相分布を与える方法について詳細に述べる。まずは、対称性収差補正素子3aに表示したい位相変調プロファイルを決めて、それを等位相間隔で分割し、各輪帯電極のパターンを決定する。同様に、非対称性収差補正素子3bに表示したい位相変調プロファイルを決めて、それを等位相間隔で分割し、各輪帯電極のパターンを決定する。

0075

図10は、例えば対称性収差補正素子3aにおける対称性収差をキャンセルする位相変調プロファイルの位相分布に応じて決定される電極パターンの一例を示す図である。上側に示された曲線1000は、光軸を通る面に対応する位相変調プロファイルの断面図を表し、下側には、位相変調プロファイルに合わせて印加電圧が決定された輪帯電極1010が示される。図中の太線が輪帯電極間のスペースを示しており、引き出し電極等は、簡略化して図示していない。対称性収差補正素子3aが透過する光束に与える位相変調量と印加電圧の特性がほぼリニア電圧範囲内で、隣接する輪帯電極間の電圧差が同一ステップとなるように、制御回路31が各輪帯電極に電圧を印加することで、収差補正デバイス3は、所望の位相分布の量子化した位相変調プロファイルを対称性収差補正素子3aに表示させることができる。

0076

隣接する輪帯電極間の電圧の差が同一ステップとなるように、各輪帯電極に電圧を印加するために、位相変調プロファイルから、位相変調量が最大となる位置及び最小となる位置に対応する輪帯電極が決定される。そして制御回路31が、最大位相変調量となる印加電圧と最低相変調量となる印加電圧を、それぞれに対応する輪帯電極に加える。また、複数の輪帯電極は、それぞれ隣接する輪帯電極間を同一の電気抵抗を持つ電極(抵抗子)によって接続されているため、抵抗分割により隣接する輪帯電極間の電圧差は同一ステップとなる。また、このように印加電圧を制御することで、各輪帯電極に印加する電圧を独立に制御する際の駆動回路よりも、制御回路31を単純な構成とすることができるというメリットがある。

0077

図11は、対称性収差補正素子3aがn個の輪帯電極を有する場合の、各輪帯電極と印加される電圧との関係を示す図である。図11では、中心電極を輪帯電極1、最外周の輪帯電極を輪帯電極n、最大電圧を印加する輪帯電極を輪帯電極mとする。
図11は、2レベル駆動の場合に制御回路31が電圧を印加する輪帯電極を示す。中心電極の輪帯電極1番目と最外周の輪帯電極n番目に同一の電圧V1が、輪帯電極m番目に電圧V2が印加される。発生した波面収差の位相分布における中心及び端部の位相変調量が等しくなるように、デフォーカス値を選ぶことで、中心電極での位相変調量と最外周電極での位相変調量が一致する。その結果として、中心電極に印加される電圧が最外周の輪帯電極nに印加される電圧と同一となる。また、制御回路31が対称性収差補正素子3aに対してこのように電圧を印加すれば、PV値を最小にすることができる。このように、2レベル駆動の例では、印加される電圧V1とV2の差で、位相変調プロファイルの相対比を変えずに位相変調量の振幅が可変される。また、この駆動方法では、制御回路31が輪帯電極に直接印加する電圧値のレベルが2種類と少なくてすむが、位相変調プロファイルが単一の形状に固定されてしまうという特徴がある。

0078

次に、非対称性収差補正素子3bについて説明する。なお、対称性収差補正素子3aの構造と非対称性収差補正素子3bの構造は、形成される透明電極のパターンを除いて同一とすることができる。そこで、非対称性収差補正素子3bの透明電極のパターン以外の構造に関しては、上述した対称性収差補正素子3aの説明を参照されたい。なお、非対称性収差補正素子3bのアクティブ領域、すなわち、透過する光束の位相を変調できる領域のサイズは、対物レンズ4の瞳のサイズよりも大きいことが好ましい。この理由は、レーザー顕微鏡100では、非対称性収差補正素子3bは、対物レンズ4の瞳と異なる位置に配置されるので、最大画角に応じた光束は、その最大画角と対物レンズ4の瞳から非対称性収差補正素子3bまでの距離に応じて、光軸が離れた位置で非対称性収差補正素子3bを透過するためである。

0079

図12は、例えば非対称性収差補正素子3bにおける非対称性収差のコマ収差をキャンセルする位相変調プロファイルの位相分布に応じて決定される電極パターンの一例を示す図である。上側に示された曲線1200は、光軸を通る面に対応する位相変調プロファイルの断面図を表し、下側には、位相変調プロファイルに合わせて印加電圧が決定されたコマ収差用電極1210が示される。図12では、図10と同様に図中の太線が輪帯電極間のスペースを示しており、引き出し電極等は、簡略化して図示していない。

0080

図12で図示したように、非対称性収差に対する位相変調プロファイルの場合も、対称性収差に対する位相変調プロファイルに対して決定される電極構造と同様に、隣接する電極間の電圧差同一ステップとなるように、すなわち、隣接する二つの電極が与える位相変調量の差が同一ステップとなるように電極パターンが決定される。そして制御回路31は、最大位相変調量となる印加電圧と最小相変調量となる印加電圧を、それぞれに対応する電極に加える。そして複数の電極は、それぞれ隣接する電極間を同一の電気抵抗を持つ電極(抵抗子)によって接続されているため、抵抗分割によりその他の電極に印加される電圧が決定され、その電圧に応じた位相変調量が光束に与えられる。これにより、非対称性収差補正素子3bは、非対称性収差に対する位相変調プロファイルを表示できる。
なお、非対称性収差については、対称性収差の場合のデフォーカス量の替わりに、チルト成分を加えることで、面内の位相分布のPV値を最小にすることができ、非対称性収差補正素子3bに要求される変調レンジを最小にすることができる。

0081

ここで、非対称性収差の位相分布は、対物レンズにより異なるので、レーザー顕微鏡100の対物レンズ4として使用されるレンズに応じて光路計算することで非対称性収差の位相分布が求められる。非対称性収差の位相分布は、チルト成分とコマ収差成分の線形和として表され、対物レンズ4の開口数NAまたは試料の観察条件により、コマ収差成分のうち、補正対象となるコマ収差の次数が決定される。また、非対称性収差は、方向性があるため、非対称性収差補正素子3bが任意の非対称性収差に対応する位相変調プロファイルを表すためには、互いに直交する方向に沿った二つの位相分布を表示できることが好ましい。そのために、非対称性収差補正素子3bは、同一の電極パターンを持つ二つの液相素子を有し、その電極パターンが互いに直交するように二つの液晶素子が積層されてもよく、あるいは、非対称性収差補正素子3bの液晶層を挟んで設けられる二つの電極パターンが、互いに直交するように配置されてもよい。

0082

(第2実施形態)
次に第2の実施形態について詳述する。本実施形態に係る収差補正デバイスの構成について図13から図15を参照して説明する。なお、第1の実施形態の何れかの構成要素と同様の構成要素には、対応する構成要素の参照符号と同一の参照符号を付した。以下では、第1の実施形態と異なる点について説明する。それ以外の構成要素については、第1の実施形態の対応する構成要素の説明を参照されたい。
第1の実施形態では、収差補正デバイスは、対称性収差を補正する対称性収差補正素子と、非対称性収差を補正する非対称性収差補正素子とを有していたが、本実施形態では、対称性収差の補正と非対称性収差の補正とが一つの位相変調素子にて実現される。

0083

図13は、第2の実施形態によるレーザー顕微鏡200の概略構成図を示している。第1の実施形態と異なるのは、収差補正デバイス3が、位相変調素子を一つだけ有している点である。そして収差補正デバイス3が有する制御回路31が、この一つの位相変調素子に設けられた電極に印加する電圧を調節することで、位相変調素子に対称性収差に応じた位相変調プロファイルまたは非対称性収差に応じた位相変調プロファイルを表示させる。なお、収差補正デバイス3以外のレーザー顕微鏡200の構成は、図3に示されたレーザー顕微鏡100の構成と同じであるので、ここではレーザー顕微鏡200そのものの説明は省略する。

0084

本実施形態による位相変調素子は、第1の実施形態による位相変調素子と同様、図8及び図9で図示したような構成の液晶素子とすることができる。ただし、液晶層を挟んで対向するように配置される透明電極のパターンが、第1の実施形態による位相変調素子と異なる。そこで以下では、位相変調素子が有する透明電極のパターン及び透明電極に印加される電圧について説明する。

0085

図14A及び図14Bを参照しつつ、第2の実施形態による位相変調素子における、波面収差をキャンセルする位相変調プロファイルの位相分布に応じて決定される電極パターンを説明する。

0086

図14Aにおいて、実践で示された曲線1400は、画角に応じて光束が対物レンズ4に対して斜入射する場合に生じる非対称性収差を補正する位相変調プロファイルを表す。この位相変調プロファイルは、収差補正デバイスの位置における、斜入射した光束について発生した収差の位相分布に対応しており、非対称性収差に対応するパターンとなっている。また、点線で示された曲線1401は、位相変調素子の位置での光軸に沿った光束に対する位相変調プロファイルのパターンを示している。対物レンズの入射瞳位置と位相変調素子の位置との違いにより、光軸に沿った光束に対して発生した収差についての位相変調プロファイル(曲線1401)の中心と斜入射した光束に対して発生した収差についての位相変調プロファイル(曲線1400)の中心はX軸方向にずれている。結果として、斜入射した光束について発生した収差は、X軸方向に沿って非対称性収差となっている。

0087

図14Bは本実施形態に係る透明電極の配置を示す平面図である。図14Bでは、図10と同様に図中の太線が輪帯電極間のスペースを示しており、引き出し電極等は、簡略化して図示していない。図14Bに示されるように、位相変調素子には、光軸を中心とする同心円状の輪帯電極101〜104と、輪帯電極101〜104の外側に形成された、半円弧状の電極200a、電極200bが設けられている。電極200aと電極200bとは、光軸を通る線(図ではY軸)に対して線対称となっており、それぞれ、半円弧状の3個の半輪帯電極205a〜207a及び半輪帯電極205b〜207bを有している。

0088

光軸上に集光する光束についての対称性収差を補正する場合には、制御回路31は、図14Bに示された輪帯電極101〜104に任意の電圧を印加し、半輪帯電極205a〜207aと、それぞれY軸について線対称な位置にある半輪帯電極205b〜207bとのそれぞれに等しい電圧を印加することで、光軸対称位相形状を形成する。また、対物レンズ4に斜入射する光束についての非対称性収差を補正する場合には、制御回路31は、半輪帯電極205a〜207aと、それぞれY軸について線対称な位置にある半輪帯電極205b〜207bとにそれぞれ異なる電圧を印加することで、位相変調素子に、Y軸を対称軸とした非対称な位相変調プロファイルを表示させる。図14A中の線1402は、図14Bに示された電極に印加する電圧を調節することで得られる、斜入射する光束についての非対称性収差を補正する位相変調プロファイルの一例である。

0089

このように、制御回路31が、半輪帯電極205a〜207aのそれぞれに印加する電圧と、半輪帯電極205a〜207aのそれぞれとY軸に対して線対称な位置にある半輪帯電極205b〜207bのそれぞれに印加する電圧とを等しくすることによって、収差補正デバイス3は対称性収差を補正することができる。一方、制御回路31が、半輪帯電極205a〜207aのそれぞれに印加する電圧と、半輪帯電極205a〜207aのそれぞれとY軸に対して線対称な位置にある半輪帯電極205b〜207bのそれぞれに印加する電圧とを異ならせることで、収差補正デバイス3は、X軸方向に沿って非対称性となる収差を補正することができる。つまり、収差補正デバイス3は、位相変調素子の透明電極に対する電圧印加方法を変更することにより、対称性収差と非対称性収差の何れを補正対象にするかを容易に切り替えることができる。例えば、レーザー顕微鏡200では、レーザーを走査する際、光束が対物レンズ4に斜入射するときと、光軸に平行に入射するときとで、収差補正デバイス3は、位相変調素子の透明電極に対する電圧の印加方法を上記のように変更することで、どのような光束に対しても最適な収差補正を実施することができる。

0090

図15は、4レベル駆動の場合で、図14Bに示した各輪帯電極及び各半輪帯電極のうち、制御回路31が電圧を印加する電極の一例を示す。図15では、中心電極101を輪帯電極1とし、最大電圧を印加する輪帯電極を輪帯電極mとする。さらに、最外周の二つの半輪帯電極207a、207bを、それぞれ、半輪帯電極na、nbとし、それよりも内側の半輪帯電極を、外側から順に、それぞれ、半輪帯電極(n-1)aと(n-1)b、及び半輪帯電極(n-2)aと(n-2)bとする。複数の輪帯電極及び半輪帯電極について、第1の実施形態と同様に、それぞれ互いに隣接する二つの輪帯電極が同一の電気抵抗を持つ電極(抵抗子)によって接続されており、抵抗分割により隣接する輪帯電極または半輪帯電極間の電圧差は同一ステップとなる。

0091

制御回路31は、中心の輪帯電極1に電圧V1を、輪帯電極mに電圧V2を、最外周の半輪帯電極207aにあたる半輪帯電極naに電圧V3a、最外周の半輪帯電極207bにあたる半輪帯電極nbに電圧V3bを印加する。制御回路31は、このように、独立に制御される4個の電圧レベルを用いることで、最適な位相変調プロファイルを位相変調素子に表示させることができる。上述したように、制御回路31は、軸対称な位相変調プロファイルを位相変調素子に表示させる場合には電圧V3aとV3bを等しくし、一方、光軸に対して非対象な位相変調プロファイルを位相変調素子に表示させる場合には電圧V3aと電圧V3bとを異ならせればよい。

0092

(第3実施形態)
次に第3の実施形態について詳述する。本実施形態に係る収差補正デバイスの構成及び動作処理図16A図16B及び図17を参照して説明する。なお、第2の実施形態の何れかの構成要素と同様の構成要素には、対応する構成要素の参照符号と同一の参照符号を付した。以下では、第1の実施形態及び第2の実施形態と異なる点について説明する。それ以外の構成要素については、第1または第2の実施形態の対応する構成要素の説明を参照されたい。
第3の実施形態による収差補正デバイスは、第2の実施形態と同様に、対称性収差補正と非対称性収差補正とを一つの位相変調素子で実現する。そして第3の実施形態による収差補正デバイスは、第2の実施形態による位相変調素子と比較して、位相変調素子に設けられる各輪帯電極が、それぞれ、二つの半輪帯電極に分割される点で相違する。

0093

図16Aは、位相変調素子に表示される位相変調プロファイルを示す。このうち、実線で示された曲線1600及び点線で示された曲線1601は、それぞれ、図14Aに示された位相変調プロファイル1400及び1401と同じ位相変調プロファイルを表す。図16Bは本実施例に係る透明電極の配置を示す平面図である。図16Bでは、図10図14Bと同様に図中の太線が輪帯電極間のスペースを示しており、引き出し電極等は、簡略化して図示していない。

0094

図16Bに示すように、本実施形態では、位相変調素子に設けられる全ての輪帯電極300は、光軸を通る線(図のY軸)によってそれぞれ分割され、半輪帯電極301a〜307aと、半輪帯電極301b〜307bとなっている。制御回路31は、これらの半輪帯電極へ印加する電圧を調節することによって、対称性収差及びY軸と直交するX軸方向に沿って対物レンズ4に斜入射する光束について発生する非対称性収差を補正する。図16A中の線1602は、図16Bに示された電極に印加する電圧を調節することで得られる、斜入射する光束についての非対称性収差を補正する位相変調プロファイルの一例である。

0095

例えば、制御回路31は、半輪帯電極301a〜307aのそれぞれに印加する電圧と、半輪帯電極301a〜307aのそれぞれとY軸について線対称な位置にある半輪帯電極301b〜307bに印加する電圧とを等しくすることによって、対称性収差を補正する位相変調プロファイルを位相変調素子に表示させることができる。また、斜入射する光束について発生する非対称性収差を補正する場合には、制御回路31は、半輪帯電極301a〜307aのそれぞれに印加する電圧と、半輪帯電極301a〜307aのそれぞれとY軸について線対称な位置にある半輪帯電極301b〜307bに印加する電圧を異ならせることで、収差補正デバイス3は、X軸方向に沿って非対称性となる収差を補正することができる。本実施形態では、第2の実施形態と比べて、透明電極と制御回路31とを接続するための引き出し電極の数が多くなってしまうが、電圧が印加される領域がより細かく分かれているので、非対称性収差を補正する場合には、収差補正デバイス3は、より発生収差に近い位相分布の形状に対応する位相変調プロファイルを位相変調素子に表示させることができるため、非対称性収差に対する補正効果をより高めることができる。

0096

図17は、5レベル駆動の場合で、図16Bに示した各半輪帯電極のうち、制御回路31が電圧を印加する電極の一例を示す。図17では、中心電極301aを半輪帯電極1aとし、中心電極301aとY軸について線対称な中心電極301bを半輪帯電極1bとしている。さらに、最大の電圧が印加される、中心からm番目の二つの半輪帯電極を半輪帯電極mとする。そして、最外周の半輪帯電極307aを半輪帯電極naとし、半輪帯電極307aとY軸について線対称な半輪帯電極307bを半輪帯電極nbとしている。各半輪帯電極は、第1及び第2の実施形態と同様に、それぞれ互いに隣接する二つの半輪帯電極が同一の電気抵抗を持つ電極(抵抗子)によって接続されており、抵抗分割により隣接する半輪帯電極間の電圧差は同一ステップとなる。この例では、制御回路31は、半輪帯電極1aに電圧V1aを印加し、半輪帯電極1bに電圧V1bを印加する。また制御回路31は、半輪帯電極m番目に最大電圧V2を印加し、最外周の半輪帯電極na及びnbに、それぞれ、電圧V3a、V3bを印加する。このように、制御回路31は、独立に制御される5個の電圧レベルを用いることで、最適な位相変調プロファイルを位相変調素子に表示させることができる。

0097

また、第2の実施形態と同様に、制御回路31は、図16Aで示した斜入射する光束について生じる非対称性収差(曲線1601)と光軸に沿った光束について生じる対称性収差(曲線1602)との両方を合成した位相分布を補正する位相変調プロファイルを位相変調素子に表示させるように、各半輪帯電極に電圧を印加してもよい。その場合には、光束の対物レンズ4への入射角によらず同じ電圧印加方法が適用され、収差補正デバイス3は、対称性収差と非対称性収差との両方を平均的に補正することができる。

0098

また、上記の実施形態では、収差補正デバイスの位相変調素子として液晶素子を用いたが、位相変調素子は、液晶素子に限られない。例えば、ポッケルス効果に代表される電気光学効果を持つ光学結晶素子を、位相変調素子として用いることもできる。この場合にも、上記の対称性収差補正素子または非対称性収差補正素子の電極パターンと同様なパターンを持つ電極が、光学結晶素子を挟んで対向するように設けられる。
また他の変形例では、反射型になるというデメリットはあるが、デフォーマブルミラーを、位相変調素子として用いてもよい。この場合には、デフォーマブルミラーに、対称性収差補正素子または非対称性収差補正素子の電極パターンと同様なパターンを持つ電極が取り付けられる。そして制御回路31は、各電極に印加する電圧を調節することで、対物レンズを含む光学系の収差を補正する位相変調プロファイルをデフォーマブルミラーで表し、デフォーマブルミラーにより反射される光束に、その位相変調プロファイルに応じた位相分布を与えることができる。

0099

また、以上説明してきた各実施形態では、本発明の収差補正デバイスをレーザー顕微鏡に用いる例を示したが、本発明は、これらの実施例に限られるものではない。本発明の収差補正デバイスはコヒーレント光源と対物レンズを用い、レーザーをスキャンするなど、光束が対物レンズに斜入射することがある如何なる機器にも採用することができ、高分解能を実現できる。

0100

100、200レーザー顕微鏡
1レーザー光源
2コリメート光学系
3収差補正デバイス
3a対称性収差補正素子(位相変調素子)
3b非対称性収差補正素子(位相変調素子)
31制御回路
4対物レンズ
5試料
6ビームスプリッター
7コンフォーカル光学系
8共焦点ピンホール
9検出器
10スキャン光学系
21、22 透明基板
23シール
33透明電極
34 液晶分子

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