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図面 (17)

課題・解決手段

本発明の課題は、市場ニーズに十分に応えることのできるワクチンを提供することである。樹状細胞表面タンパク質に対する抗体を有し、且つウイルス表面抗原タンパク質を含むウイルス様粒子を有するバイオナノカプセルを用いる事によって、このような課題を解決することができる。

概要

背景

主にB型肝炎ウイルス表面抗原タンパク質又はその改変体を、酵母細胞等の真核生物において発現させることによって得られるウイルス様粒子が、特定の組織薬剤、遺伝子等を送達するためのDDナノキャリアとして有用であることが既に報告されている。

この様なウイルス様粒子自体は、癌組織及び肝臓組織へのDDSナノキャリアとして特に有用であるが、送達を所望する組織にて発現するタンパク質や糖鎖等といった生体分子へ特異的に結合する分子担持するウイルス様粒子とすれば、薬剤、遺伝子等を、斯かる組織に特異的に送達するためのDDSナノキャリアとしての効果を発揮することも知られている(特許文献1〜13)。

有効なワクチンの開発は、感染症への対策において非常に有用である。また、ガン治療においては、細胞性免疫活性化させてガン細胞攻撃するといった機序に基づいた新たな治療法も開発されている。この様な背景を基に、質の良いワクチンを得ることが、近年、益々求められている。

この様な市場ニーズに反応し、免疫システムにおいて重要な役割を担う抗原認識細胞、中でも樹状細胞抗原物質核酸等を効率的に送達するDDS技術、樹状細胞が積極的に抗原物質を提示できる様な技術等が開発されている(非特許文献1及び2)。

概要

本発明の課題は、市場ニーズに十分に応えることのできるワクチンを提供することである。樹状細胞の表面タンパク質に対する抗体を有し、且つウイルス表面抗原タンパク質を含むウイルス様粒子を有するバイオナノカプセルを用いる事によって、このような課題を解決することができる。

目的

本発明の課題は、上述の様な市場ニーズに十分に応えることのできるワクチンを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

請求項2

ウイルス様粒子が、抗体結合ドメインを含む、請求項1に記載のバイオナノカプセル。

請求項3

抗体結合ドメインが、ウイルス表面抗原タンパク質に含まれる、請求項2に記載のバイオナノカプセル。

請求項4

ウイルス表面抗原タンパク質が、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)Lタンパク質である、請求項1〜3の何れか1項に記載のバイオナノカプセル。

請求項5

抗体が、CD11cタンパク質又はそのオルソログを認識する抗体である、請求項1〜4の何れか1項に記載のバイオナノカプセル。

請求項6

更にリポソームを含む、請求項1〜5の何れか1項に記載のバイオナノカプセル。

請求項7

リポソームがカチオン性である、請求項1〜6の何れか1項に記載のバイオナノカプセル。

請求項8

リポソームがアニオン性である、請求項1〜6の何れか1項に記載のバイオナノカプセル。

請求項9

更に、抗原物質及び/又は核酸を含む請求項1〜8の何れか1項に記載のバイオナノカプセル。

請求項10

請求項1〜8の何れか1項に記載のバイオナノカプセルを含む、樹状細胞への抗原物質及び/又は核酸の導入剤

請求項11

請求項1〜8の何れか1項に記載のバイオナノカプセルと、抗原物質及び/又は核酸を含むワクチン

請求項12

動物の樹状細胞への抗原物質及び/又は核酸導入方法であって、請求項9に記載のバイオナノカプセルを動物に投与する工程を含む方法。

請求項13

投与が経静脈投与、経皮下投与、又は経筋肉投与である請求項12に記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、樹状細胞表面タンパク質に対する抗体を有するバイオナノカプセルに関するものである。

背景技術

0002

主にB型肝炎ウイルス表面抗原タンパク質又はその改変体を、酵母細胞等の真核生物において発現させることによって得られるウイルス様粒子が、特定の組織薬剤、遺伝子等を送達するためのDDナノキャリアとして有用であることが既に報告されている。

0003

この様なウイルス様粒子自体は、癌組織及び肝臓組織へのDDSナノキャリアとして特に有用であるが、送達を所望する組織にて発現するタンパク質や糖鎖等といった生体分子へ特異的に結合する分子担持するウイルス様粒子とすれば、薬剤、遺伝子等を、斯かる組織に特異的に送達するためのDDSナノキャリアとしての効果を発揮することも知られている(特許文献1〜13)。

0004

有効なワクチンの開発は、感染症への対策において非常に有用である。また、ガン治療においては、細胞性免疫活性化させてガン細胞攻撃するといった機序に基づいた新たな治療法も開発されている。この様な背景を基に、質の良いワクチンを得ることが、近年、益々求められている。

0005

この様な市場ニーズに反応し、免疫システムにおいて重要な役割を担う抗原認識細胞、中でも樹状細胞へ抗原物質核酸等を効率的に送達するDDS技術、樹状細胞が積極的に抗原物質を提示できる様な技術等が開発されている(非特許文献1及び2)。

0006

特開2001−316298号公報
特開2003−286189号公報
特開2003−286198号公報
特開2003−286199号公報
特開2004−002313号公報
特開2004−081210号公報
特開2004−277355号公報
特開2007−106752号公報
特開2007−209307号公報
特開2008−029249号公報
特開2008−162981号公報
特開2009−120532号公報
特開2009−120533号公報
特願2011−162596号公報

先行技術

0007

S.Tafuku,T.Miyata,M.Tadano,R.Mitsumata,H.Kawakami,T.Harakuni,T.Sewaki,T.Arakawa,Japanese encephalitis virus structural and nonstructural proteins expressed in Escherichia coli induce protective immunity in mice,Microbes Infect.(2011)4−11.
H.Wei,S.Wang,D.Zhang,S.Hou,W.Qian,B.Li,H.Guo,G.Kou,J.He,H.Wang,Y. Guo,Targeted delivery of tumor antigens to activated dendritic cells via CD11c molecules induces potent antitumor immunity in mice,Clinical Cancer Res.15(2009)4612−4621.
Matsuo H,Yoshimoto N,Iijima M,Niimi T,Jung J,Jeong SY,Choi EK,Sewaki T,Arakawa T,Kuroda S.Int J Nanomedicine.2012;7:3341−50.

発明が解決しようとする課題

0008

上述のように、抗原物質、核酸等を樹状細胞へある程度は効率的に送達するDDS技術、樹状細胞が積極的に抗原物質を提示できる様な技術等が、研究レベルでは開発されてはいるものの、質の良いワクチンとして使用できるレベルには到達しておらず、更なる改良が必要とされている。

0009

例えば、上述の様な技術を基に作製されるワクチンは、多量の投与が必要であったり、生体に対して悪影響を及ぼしかねない様な免疫賦活化剤(いわゆる、アジュバンド)の同時投与が必要であったりする場合がある。この様なワクチンでは、市場のニーズには十分に応えられるものとは言えず、より質の良いワクチンの開発が求められている。本発明の課題は、上述の様な市場ニーズに十分に応えることのできるワクチンを提供することである。

課題を解決するための手段

0010

本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、樹状細胞の表面タンパク質に対する抗体を有するバイオナノカプセル、又は必要に応じて更にリポソームを含むバイオナノカプセルを個体へ投与したところ、脾臓組織に存在する樹状細胞内に、当該バイオナノカプセルが取り込まれることを見出した。

0011

また、抗原物質を含有する前記バイオナノカプセルを動物個体へ投与したところ、斯かる抗原物質に対する抗体が個体内で著量産生されることも見出した。

0012

さらに、マウスを用いた動物実験において、前記バイオナノカプセルを投与したところ、任意の疾患に対して顕著に優れた予防効果を発揮することも見出した。

0013

本発明は斯かる知見に基づいて完成されたものであり、下記に示す態様の発明を広く包含するものである。

0014

項1樹状細胞の表面タンパク質に対する抗体及びウイルス表面抗原タンパク質を含むウイルス様粒子を有するバイオナノカプセル。

0015

項2ウイルス様粒子が、抗体結合ドメインを含む上記項1に記載のバイオナノカプセル。

0016

項3抗体結合ドメインが、ウイルス表面抗原タンパク質に含まれる上記項2に記載のバイオナノカプセル。

0017

項4ウイルス表面抗原タンパク質が、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)Lタンパク質である、上記項1〜3の何れか1項に記載のバイオナノカプセル。

0018

項5 抗体が、CD11cタンパク質又はそのオルソログを認識する抗体である上記項1〜4の何れか1項に記載のバイオナノカプセル。

0019

項6 更にリポソームを含む上記項1〜5の何れか1項に記載のバイオナノカプセル。

0020

項7リポソームがカチオン性である、上記項1〜6の何れか1項に記載のバイオナノカプセル。

0021

項8リポソームがアニオン性である、上記項1〜6の何れか1項に記載のバイオナノカプセル。

0022

項9 更に、抗原物質及び/又は核酸を含む上記項1〜8の何れか1項に記載のバイオナノカプセル。

0023

項10 上記項1〜8の何れか1項に記載のバイオナノカプセルを含む、樹状細胞への抗原物質及び/又は核酸導入剤

0024

項11 上記項1〜8の何れか1項に記載のバイオナノカプセルと、抗原物質及び/又は核酸を含むワクチン。

0025

項12動物の樹状細胞への抗原物質及び/又は核酸導入方法であって、上記項9に記載のバイオナノカプセルを動物に投与する工程を含む方法。

0026

項13投与が経静脈投与、経皮下投与、又は経筋肉投与である上記項12に記載の方法。

発明の効果

0027

本発明のバイオナノカプセルは、動物個体内へ投与することによって、樹状細胞に効率的に到達できるものである。さらに、本発明のバイオナノカプセルは、樹状細胞に到達した後に、樹状細胞内に侵入する作用も発揮する。樹状細胞とは生体における免疫システムにおいて、抗原を提示する細胞として非常に重要な役割を担う細胞であるために、本発明のバイオナノカプセルが抗原物質を含んでいる場合、樹状細胞が斯かる抗原物質を極めて効率的に提示することになり、抗原物質に対して細胞性免疫及び/又は液性免疫に関する免疫システムが惹起される。

0028

また、樹状細胞等に特定の配列を有する核酸を送達すれば、哺乳動物における免疫システムが感作し易くなることが知られており、更に樹状細胞内に抗原物質となるペプチド等をコードする核酸を導入すれば、斯かる樹状細胞内で抗原物質となるペプチドが発現することによって、斯かる樹状細胞外に抗原物質としてのペプチドを提示しやすくなることになる。

0029

以上のことから、抗原物質及び/又は核酸を含む本発明のバイオナノカプセルを生体内に投与すれば、斯かる抗原物質に対する抗体を生体内にて著量産生させることができる。そして、この様な抗体の中には、上記抗原物質を中和する機能を持った抗体が含まれることは当然であるために、抗原物質及び/又は核酸を含む本発明のバイオナノカプセルは、ワクチンとして優れた機能を発揮する。

0030

また、本発明の抗原物質及び/又は核酸を含むバイオナノカプセルは、樹状細胞に侵入した後、上述のような抗原物質に対する抗体を産生する液性免疫システムを惹起するのみならず、細胞性免疫システムも惹起する効果を発揮する。従って、抗原物質及び/又は核酸を含む本発明のバイオナノカプセルは優れたワクチンとしての機能を有する。

0031

そして、抗原物質及び/又は核酸を含む本発明のバイオナノカプセルを動物に投与することによって、任意の疾患に対する予防効果を発揮する。このことからも、抗原物質及び/又は核酸を含む本発明のバイオナノカプセルは、優れたワクチンとしての機能を発揮する。

図面の簡単な説明

0032

本発明のバイオナノカプセル(A)及びリポソームが結合したバイオナノカプセルの一態様を説明する模式図。図中の(A)及び(B)において、aはバイオナノカプセル、bは脂質膜、cはウイルス表面抗原タンパク質、dは樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体、eはリポソームを示している。
本発明のバイオナノカプセルとマウスの脾臓から単離したCD11c陽性樹状細胞との親和性を示す結果。なお、図中のZZ−BNCは、抗体が結合していない単なるZZ−BNCと、CD11c陽性樹状細胞との親和性を示している。
本発明の実施例3に示す、バイオナノカプセルをマウス個体へ投与した後の、マウス個体における局在を示す図。図中のBright Fieldは明視野像を示し、Ht心臓、Lgは、Kdは腎臓、Lvは肝臓、そしてSpは脾臓を示す。IntensityはBNCを標識化する際に用いたCF−750色素が発する780nmの蛍光強度を示す。
本発明のバイオナノカプセルをマウス個体に投与した後に、感作された樹状細胞の頻度を示す図。
本発明のバイオナノカプセルをマウス個体に投与した後の、脾臓組織に存在するCD11c陽性樹状細胞の蛍光顕微鏡写真像。図中のDIC微分干渉像を示し、Fluorescenceは蛍光像を示す。XZは及びYZは三次元再構成画像処理を行った後の像であり、0.25μmずつ15つのスライス画像再構成処理に供した。
バイオナノカプセルと共にD3抗原をマウス個体に投与した後のマウス個体中のD3抗原に対する抗体の力価を測定した結果を示す図。
実験例6に示す樹状細胞標的化BNCの投与経路検討実験における、バイオナノカプセル、BNC投与12時間後の樹状細胞標的化BNCの動態解析結果を示す図。
実験例6に示す樹状細胞標的化BNCの投与経路検討実験における、リンパ節内の樹状細胞への移行能を検討した実験結果を示す図。図中(A)はリンパ節内の樹状細胞への各種BNCの移行を確認した結果であり、(B)は各種BNCのリンパ節内の樹状細への移行を継時的解析した結果である。なお、図中のDC−BNCとはαーCD11c−ZZ−BNC(CF750Labeled)を示し、ZZ−BNCとはそれの抗CD11c抗体を有さないBNCである。
本発明のBNCのリンパ節の樹状細胞への取り込まれる様子を観察した顕微鏡像。図中のαーDC−BNCはαーCD11c−ZZ−BNCを示す。
実験例7の樹状細胞標的化BNCのアジュバント効果の実験結果を示す図。図中のDC標的化BNCは、αーCD11c−ZZ−BNCを示す。
実験例8の樹状細胞標的化BNCへの抗原搭載法の検討1における、マウスへの投与実験結果を示す。図中のグラフにおいて、縦軸生存率を示し、横軸日数を示す。また、(X/Y)なる表記に関し、Xが16日目まで生存した個体数を示し、Yが各投与群の個体数を示す。
実験例10の樹状細胞標的化BNCへの抗原搭載法の検討2における、マウスへの投与実験結果を示す。図中のグラフにおいて、縦軸は抗JEVIgG抗体の力価(Log10)を示す。また、AはZZ−BNC−D3を経静脈投与(IV)したもの、BはαーCD11c−ZZ−BNC−D3を経静脈投与したもの、CはαーCD11c−ZZ−BNC−D3を皮下投与(SC)したもの、DはαーCD11c−ZZ−BNC−D3を筋肉内投与IM)したものを示す。
実験例11の抗原を有する樹状細胞標的化BNCを用いた感染防御実験結果を示す。図中のグラフにおいて、縦軸は生存率を示し、横軸は日数を示す。また、(X/Y)なる表記に関し、Xが16日目まで生存した個体数を示し、Yが各投与群の個体数を示す。
実験例12の核酸を抗原として有する樹状細胞標的化BNCの製造を確認した実験結果を示す。図中のIgG−zzBNCはα−CD11cーZZ−BNCを示し、IgG−zzBNC−LPXはα−CD11cーZZ−BNCを示し−カチオン性リポソーム−DNAを示す。
実験例12の核酸を抗原として有する有する樹状細胞標的化BNCにおける、インビボイメージング装置を用いた実験結果を示す。図中の(A)は写真像を示し、(B)は、各臓器の蛍光強度をグラフ化したものである。また、図中のDC標的化BNC−LPX及びαーCD11c−ZZ−BNC−LPXは、αーCD11c−ZZ−BNC−カチオン性リポソーム−DNAを示す。(B)のグラフの縦軸は、領域あたりの蛍光強度を示す。
実験例12の核酸を抗原として有する樹状細胞標的化BNCにおける、脾臓の樹状細胞への送達実験の結果を示す。図中の(A)はFACSによる解析結果を示し、(B)はその結果を定量してグラフ化したものである。
実験例12の核酸を抗原として有する樹状細胞標的化BNC、をマウス個体に投与した後の、脾臓組織に存在するCD11c陽性樹状細胞の蛍光顕微鏡写真像。図中のDICは微分干渉像を示し、Fluorescenceは蛍光像を示す。XZは及びYZは三次元再構成画像処理を行った後の像であり、0.25μmずつ15つのスライス画像を再構成処理に供したものである。

0033

以下に本発明について説明する。なお、本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。例えば、遺伝子工学及び分子生物学的技術であれば、Sambrook and Russell,「Molecular Cloning A LABORATORYMANUAL」, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 2001; Ausubel, F. M. et al. 「Current Protocols in Molecular Biology」, John Wiley & Sons, New York, N.Y等の文献を参照すればよい。

0034

(本発明のバイオナノカプセル)
本発明のバイオナノカプセルは、ウイルス表面抗原タンパク質を含むウイルス様粒子を有する。この様なタンパク質は、自己組織化能を有し、カプシドエンベロープ等を構成する膜タンパク質である。

0035

図1の(A)の模式図にて示す、本発明に係るバイオナノカプセルの1つの態様を基に、これの構造について適宜説明する。但し、本発明のバイオナノカプセルは、当該図面のみから導き出せされるものに限定はされない。

0036

本発明のバイオナノカプセルは、ウイルス様粒子(a)に樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体(c)が担持されており、ウイルス表面抗原タンパク質(c)は、当該ウイルス様粒子を構成する脂質膜(b)に突き刺さった状態にて存在している。

0037

ウイルス様粒子は、球状、楕円球状ラグビーボール状、略球状、フィラメント状等が挙げられる。また、これらの形状において、その内部は液体で満たされていてもよい。

0038

上記ウイルス表面抗原タンパク質としては、B型肝炎ウイルス、コロナウイルス(Coronavirus)、アデノウイルス(Adenovirus)、C型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus)、I型単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus−1)II型単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus−2)ヒト免疫不全ウイルス(Human immunodeficiency virus−1:HIV)、ノロウイルス(Norovirus)、パピロマウイルス(Papillomavirus)、センダイウイルス(Sendai virus)、麻疹ウイルス(measles virus)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(lymphocytic choriomeningitis virus)、シンドビスウイルス(Sindbis virus)等のウイルス表面抗原タンパク質が挙げられる。

0039

中でも、B型肝炎ウイルス、I型単純ヘルペスウイルス、II型単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス等の表面抗原タンパク質は、それ自身の細胞への侵入を担う膜透過ドメインを有しているので好ましい。

0040

なお、B型肝炎ウイルス表面抗原タンパク質としては、Lタンパク質、Mタンパク質Sタンパク質等が挙げられ、特に限定されるものではないが、Lタンパク質とすることが好ましい。

0041

B型肝炎表面抗原タンパク質としては、例えばLタンパク質のN末端のPreS領域及びそれに続く77アミノ酸残基程度が欠失し、且つC末端側の50アミノ酸程度が欠失したものであってもよい(特許文献14)。この様なB型肝炎ウイルス表面抗原タンパク質は、大腸菌を用いて簡便に製造できる点で好ましい。

0042

さらに、B型肝炎ウイルス表面抗原タンパク質としては、斯かるタンパク質を主成分とするウイルス様粒子とした際に、粒子表面に露出する292番目グルタミン残基、及び308番目のグリシン残基が、アルギニン置換された変異体としてもよい。この様なB型肝炎ウイルス表面抗原タンパク質は、生体に投与した場合に、それ自身が抗原として認識されにくいという効果を発揮する。

0043

本発明のバイオナノカプセルに含まれるウイルス表面抗原タンパク質の割合は、バイオナノカプセル当たり、通常は70重量%〜95重量%程度である。好ましくは、80重量%〜90重量%程度である。従って、バイオナノカプセルは、ウイルス表面抗原タンパク質を主成分として含むものである。バイオナノカプセルは、ウイルス表面抗原タンパク質の他に、脂質も含有する。その割合は、バイオナノカプセル当たり、通常は5重量%〜10重量%程度である。その他に、バイオナノカプセルには、糖鎖等の成分が含まれる。

0044

樹状細胞としては、特に限定はされないが、例えば脾臓組織に存在する樹状細胞に限定はされず、皮膚のランゲルハンス細胞であってもよい。具体的には、全身分布する骨髄系樹状細胞、形質細胞様樹状細胞等;表皮に分布するランゲルハンス細胞;リンパ節、脾臓、胸腺等に分布する指状嵌入細胞;リンパ管内に分布するヴェール細胞;真皮に分布する真皮内樹状細胞;リンパ組織内のリンパ濾胞胚中心)に分布する胚中心樹状細胞、濾胞樹状細胞等;リンパ管若しくはリンパ洞に分布する抗原担送細胞等が挙げられる。

0045

樹状細胞の表面タンパク質としては、CD11c、MHCclass II、CD80、CD86、Fc receptor、CD205、CD209等が挙げられ、樹状細胞の中でも、抗原提示能力に長けた樹状細胞の表面にて著量発現しているという観点から、CD11c、MHC class II、CD205等が挙げられる。また、本発明の表面タンパク質は、これらのオルソログであってもよい。

0046

上記抗体の構造は、上述のような樹状細胞の表面タンパク質と結合する部位を含む可変領域さえ有していればよく、それぞれ2つずつの重鎖及び軽鎖からなる免疫グロブリンに限定されるものではない。具体的な抗体の構造としては、Fc領域を含まないF(ab′)2、イムノグロブリンパパイン消化することによって得られるCH1領域及びCL領域と重鎖可変領域、並びに軽鎖可変領域からなるFab等;イムノグロブリンの定常領域を含まないFv等;そしてFvの単鎖型の抗体であるscFv等の分子構造が挙げられる。

0047

また、これらの分子構造を組み合わせた多価化構造であってもよい。例えば、Fc領域と上記のscFv構造の2つとを組み合わせたscFv−Fc構造や定常領域のCH3ドメインと上記のscFv構造の2つとを組み合わせたminibodyと称される構造等のように、scFv構造を積み重ねる手法を採用することによって多価化が達成される。多価化とは、樹状細胞の表面タンパク質との結合部位を複数配置することである。

0048

上述の抗体には、アフィボディ登録商標)も含まれる。アフィボディとはプロテインAの特定のドメインを足場にして、3つのへリックスドメインが結束した構造を有するタンパク質分子であり、抗原に対して結合する機能を有する。すなわち、上記抗体がアフィボディであるときには、当該アフィボディが樹状細胞の表面タンパク質を認識する分子であることとなる。

0049

例えば、上記抗体がイムノグロブリンである場合、サブタイプは特に限定されることは無く、IgG、IgAIgY、IgMIgE等のいずれのサブタイプであってもよい。また、サブクラスも特に限定はされない。

0050

用語、「認識する」とは、樹状細胞の表面タンパク質と抗体が「結合している」ことを意味する。より好ましくは、特異的又は選択的な結合である。この様な「結合している」ことは、樹状細胞の表面タンパク質と抗体との親和性、若しくは表面タンパク質を発現している樹状細胞と抗体との親和性によって判断できる。

0051

親和性を有していれば、「結合している」と判断でき、親和性がより優れていれば、特異的又は選択的に「結合している」と判断できる。具体的な判断方法は、特に限定されないが、結合定数の測定、フローサイトメトリー解析等の蛍光免疫染色法ウエスタンブロッティング等といった公知の方法によって判断できる。判断基準は単に親和性の有無に止まっていてもよく、親和性を相対的に比較して判断してもよい。

0052

上記抗体(d)は、その抗原認識部位が、バイオナノカプセルの外側に露出さえしていればよい。具体的には、例えば、図1に示すように、バイオナノカプセルに含まれるウイルス表面抗原タンパク質(c)に担持されていてもよく、バイオナノカプセルに含まれる脂質膜(b)に担持されていてもよい。

0053

上記抗体(d)がウイルス表面抗原タンパク質(c)に担持されている場合は、共有結合等といった化学的な結合を介して担持されてもよく、抗体結合ドメインを介して結合することによって担持されていてもよい。これらの中でも、抗体結合ドメインに上記抗体が結合していることが好ましい。特に、本発明のバイオナノカプセルに含まれるウイルス表面抗原タンパク質(c)が抗体結合ドメインを有しており、斯かるドメインを介して上記抗体(d)が結合していることが好ましい。

0054

また、ウイルス表面抗原タンパク質と上記抗体が担持された状態に対して、さらに架橋剤等を用いた架橋処理が施されていてもよい。具体的な架橋剤は、特に限定はされないが、例えば、ビススルホスクシンイミジルスベレートBS3)ピメルイミド酸ジメチル二塩酸塩DMP)、スベリイミド酸ジメチル二塩酸塩(DMS)スベリン酸サクシンイミジル(DSS)等が挙げられる。

0055

抗体結合ドメインとしては、特に限定はされないが、例えば黄色ブドウ球菌由来のプロテインAが有するE、D、A、B、及びCドメインを含むZドメイン、連鎖球菌等由来のプロテインGが有するC1、D1、C2、D2、及びC3ドメインを含む抗体結合ドメイン、Peptostreptococcus magnus等由来のプロテインLが有するB1、B2、B3、B4、及びB5ドメインを含む抗体結合ドメイン等が挙げられる。

0056

なお、プロテインGが有する抗体結合ドメインのうち、少なくともC2ドメインを含むドメインを上述の抗体結合ドメインとすることが好ましく、プロテインLが有する抗体結合ドメインのうち、少なくともB1ドメインを含むドメインを上述の抗体結合ドメインとすることが好ましい。

0057

これらの種抗体結合ドメインのアミノ酸配列として、例えば、プロテインAが有するZドメインであれば配列番号1に示すアミノ酸配列が挙げられる。プロテインGが有する抗体結合ドメインであれば配列番号2に示すアミノ酸配列が挙げられる。プロテインLが有する抗体結合ドメインであれば配列番号3に示すアミノ酸配列が挙げられる。

0058

これらのアミノ酸配列は、抗体結合能減衰させない範囲に限って、変異導入されたアミノ酸配列であってもよい。具体的な変異導入数は、共に特に限定はされないが、通常は変異前のアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する変異体となるような変異導入数とすればよい。

0059

なお、ここでいう変異導入とは、置換、欠失、挿入等である。具体的な変異導入については、公知の方法を採用することができ、特に限定はされないが、例えば置換であれば保存的な置換技術を採用すればよい。用語「保存的な置換技術」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されることを意味する。

0060

例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンといった塩基性側鎖を有するアミノ酸残基同士で置換されることが、保存的な置換技術にあたる。その他、アスパラギン酸グルタミン酸といった酸性側鎖を有するアミノ酸残基;グリシンアスパラギングルタミンセリンスレオニンチロシンシステインといった非帯電性極性側鎖を有するアミノ酸残基;アラニンバリンロイシンイソロイシンプロリンフェニルアラニンメチオニントリプトファンといった非極性側鎖を有するアミノ酸残基;スレオニン、バリン、イソロイシンといったβ−分枝側鎖を有するアミノ酸残基、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンといった芳香族側鎖を有するアミノ酸残基同士での置換も同様に、保存的な置換にあたる。

0061

なお、用語「同一性」とは、2以上の対比可能なアミノ酸配列の、互いに対する同一のアミノ酸配列の程度をいう。従って、ある2つのアミノ酸配列の同一性が高いほど、それらの配列の類似性が高いとも表現できる。アミノ酸配列の同一性又は類似性の程度は、例えば、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて決定される。これらの解析方法の具体的な手法は公知であり、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のウエブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照すればよい。

0062

上述の抗体結合ドメインがウイルス表面抗原タンパク質(c)に含まれる場合、本発明のバイオナノカプセルの表面か、あるいはその外側に露出する部位に含まれていることが好ましい。例えば、ウイルス表面抗原タンパク質である場合、そのN末端に存在するPreS領域に含まれていることが好ましい。

0063

なお、上述のように、バイオナノカプセルに含まれるウイルス表面抗原タンパク質がB型肝炎ウイルス表面抗原タンパク質であって、そのN末端及びC末端が欠失したものである場合には、斯かるタンパク質のC末端側に上述の抗体結合ドメインが含まれていることが好ましい(特許文献14)。

0064

上述した抗体結合ドメインは、バイオナノカプセル中に複数含まれていてもよい。また、上述した各種抗体結合ドメインは、1種類であってもよく、2種類以上含まれていてもよい。

0065

上記抗体(d)が脂質膜(b)に担持されている場合も、上述の脂質に担持されている場合と同様に化学的な結合を介して担持されていてもよく、上述の抗体結合ドメインを介して抗体が結合することによって担持されていてもよい。すなわち、本発明のバイオナノカプセルを構成するウイルス様粒子(a)には、抗体結合ドメインがウイルス表面抗原タンパク質(c)に含まれず、脂質膜(b)に結合又は突き刺さった状態となっていてもよい。

0066

本発明のバイオナノカプセルの平均粒子径は、Z−平均粒子径として、樹状細胞に効率的に送達される観点、樹状細胞内に効率的に侵入する観点等から、通常は20nm〜150nm程度である。好ましくは、通常は45nm〜55nm程度である。

0067

本発明のバイオナノカプセルの電荷は、ζ電位として、通常は−30mV〜−10mV程度である。脾臓組織に効率的に送達される観点、樹状細胞に効率的に送達される観点、樹状細胞内に効率的に侵入する観点、タンパク質や核酸等を送達する観点、生体内での毒性の観点等から、−10mV〜−5mV程度が好ましい。なお、ζ電位は、下記の実施例にて詳述する方法にて測定すればよい。

0068

本発明のバイオナノカプセルは、樹状細胞に作用させて取り込まれた後に、エンドソームにより長い期間止まることによって液性免疫システムを惹起し易い傾向となる。逆に、サイトゾルに移行して比較的長く止まることによって、細胞性免疫システムを惹起し易い傾向となる。

0069

これらのバイオナノカプセルの局在は、その電荷を調整することによって適宜選択することが可能となる。従って、本発明のバイオナノカプセルが、リポソームを更に含む場合は、それを含めた全体の電荷を調整することで、惹起させたい免疫システムを適宜選択することも可能である。

0070

また、これらのバイオナノカプセルの局在は、その電荷および脂質の種類(エンドソーム膜を不安定化する逆ヘキサゴナル相ヘキサゴナII相ともいう。))を形成させやすい脂質、および、プロトンスポンジ効果誘導しエンドソームを破壊する脂質を調整することによって適宜選択することが可能となる。従って、本発明のバイオナノカプセルの電荷と脂質の種類を調整すれば、惹起させたい免疫システムを適宜選択することも可能である。

0071

上述のように、本発明のバイオナノカプセルは一般的に負電荷を有する傾向であるために、後述するような本発明のバイオナノカプセルにリポソームが結合した態様とし、当該リポソームの電荷を調節することで、容易に本発明のバイオナノカプセル全体としての電荷を適宜設定することができる。そして、後述する様に、リポソームの電荷は、一般的に、その脂質組成配合割合を調節することによって容易に設定することができる。なお、本発明のバイオナノカプセルの表面電荷の設定は、斯かるリポソームの電荷を設定することに限定されるものではない。

0072

[製造方法]
本発明のバイオナノカプセルの製造方法は、特許文献9に記載されるような、公知の方法を採用すればよい。具体的には、上記ウイルス様粒子を構成するウイルス表面抗原タンパク質をコードする核酸を宿主細胞に導入し、斯かる細胞を培養してウイルス表面抗原タンパク質を発現させ、培養後の細胞からウイルス様粒子を回収する方法が挙げられる。

0073

宿主細胞とは、原核細胞であっても真核細胞であってもよいが、核酸の導入、培養、遺伝子の発現量等といった観点から、酵母細胞が好ましい。なお、上述のように、ウイルス様粒子を構成するウイルス表面抗原タンパク質がB型肝炎ウイルス表面抗原タンパク質であって、そのN末端及びC末端が欠失したものである場合には、大腸菌を宿主細胞として用いることが好ましい。

0074

回収したウイルス様粒子は、超遠心分離法、アフィニティゲル、サイズ排除ゲル等を用いたカラムクロマトグラフィー法等に供して精製すればよい。

0075

このようにして得られたウイルス様粒子と、上述の抗体とを混合して、本発明のバイオナノカプセルとすればよい。混合の条件等は特に限定はされず、公知の方法を適宜選択すればよい。

0076

なお、後述する様に、本発明のバイオナノカプセルが、更に抗原物質及び/又は核酸を含む場合の製造方法として、予めバイオナノカプセルと抗原物質及び/又は核酸を結合させる態様が存在する。このようなバイオナノカプセルを作製する場合は、上述のようにして製造したバイオナノカプセルに対して、エレクトロポーレーション法等といった公知の方法を採用すればよい。

0077

本発明のバイオナノカプセルは、上述のバイオナノカプセルに対してさらにリポソームが結合していてもよい。この様な態様のバイオナノカプセル(以後、リポソーム結合バイオナノカプセルと呼ぶことがある。)の構造について、図1(B)の模式図にて示すリポソーム結合バイオナノカプセルの一つの態様を基に適宜説明する。但し、このようなリポソーム結合バイオナノカプセルは、当該図面のみから導き出されるものに限定はされない。

0078

上述のリポソーム結合バイオナノカプセルは、バイオナノカプセル(a)とリポソーム(e)とが結合しており、一体不可分の構造である。より具体的には、例えば特許文献8に示されているように、バイオナノカプセルは脂質膜(b)を有しており、リポソーム(e)とバイオナノカプセル(a)は、それぞれの脂質膜を介して膜融合している。また、リポソーム(e)とバイオナノカプセル(a)は、どちらか一方に内包される必要は無く、単に一方がもう片方に突き刺さった状態となっていてもよい。

0079

上述のリポソーム結合バイオナノカプセルは、通常バイオナノカプセル1質量部に対してリポソームが通常2〜12質量部程度であり、より好ましくは6〜10質量部程度である。

0080

上述のリポソーム結合バイオナノカプセルの平均粒子径は、Z−平均粒子径として、樹状細胞に効率的に送達される観点、樹状細胞内に効率的に侵入する観点等から、通常は100nm〜600nm程度である。

0081

上述のリポソーム結合バイオナノカプセルの電荷は、ζ電位として、通常は−30mV〜20mV程度である。脾臓組織に効率的に送達される観点、樹状細胞に効率的に送達される観点、樹状細胞内に効率的に侵入する観点、タンパク質や核酸等を送達する観点、生体内での毒性の観点等から、−20mV〜0mV程度が好ましい。なお、ζ電位は、下記の実施例にて詳述する方法にて測定すればよい。

0082

上述のリポソーム結合バイオナノカプセルも、上述のバイオナノカプセルと同様に、樹状細胞に作用させて取り込まれた後に、エンドソームにより長い期間止まることによって液性免疫システムを惹起し易い傾向となる。逆に、サイトゾルに移行して比較的長く止まることによって、細胞性免疫システムを惹起し易い傾向となる。

0083

これらのリポソーム結合バイオナノカプセルの局在もまた、上述のバイオナノカプセルと同様に、その電荷を調整することによって適宜選択することが可能となる。従って、本発明のリポソーム結合バイオナノカプセルの電荷を調整すれば、惹起させたい免疫システムを適宜選択することも可能である。

0084

これらのリポソーム結合バイオナノカプセルの局在は、その電荷および脂質の種類(エンドソーム膜を不安定化する逆ヘキサゴナル相(ヘキサゴナルII相)を形成させやすい脂質、および、プロトンスポンジ効果を誘導しエンドソームを破壊する脂質)を調整することによって適宜選択することが可能となる。従って、上述のリポソーム結合バイオナノカプセルの電荷と、リポソームを構成する脂質の種類を調整すれば、惹起させたい免疫システムを適宜選択することも可能である。

0085

(リポソーム)
上述のリポソーム結合バイオナノカプセルにおけるリポソームは、シングルラメラ構造(一枚膜)であってもマルチラメラ構造(多重膜)であってもよい。アニオン性リポソームであっても、カチオン性リポソームであってもよい。具体的なリポソームの電荷は、ζ電位として、通常−60mV〜60mV程度である。

0086

この様なリポソームの平均粒子径は、Z−平均粒子径として、通常は100nm〜400nm程度である。バイオナノカプセルと複合化し、その後、生体に投与することを考慮するとの観点から、100nm〜300nm程度が好ましく、更に好ましくは100nm〜200nm程度である。

0087

なお、上記リポソームのζ電位及びZ−平均粒子径の測定は、下記の実施例にて示す方法を採用すればよい。

0088

[製造方法]
上記リポソームの製造方法は、特に限定されることは無く、上述の様に組成として例示した脂質を、適当な組成比で混合した後、公知の方法によって作製すればよい。例えば、例えば、バンガム法、超音波法逆相蒸発法、多価アルコール法、加温法、噴霧乾燥法メカノケミカル法凍結融解法フィルムローディング法、超臨界二酸化炭素法等が挙げられる。

0089

なお、後述する様に、本発明のバイオナノカプセルが更にリポソーム及び抗原物質及び/又は核酸を含む場合の製造方法として、予め上記リポソームと抗原物質及び/又は核酸を結合させる態様が存在する。このようなリポソームを作成する場合は、リポソームを構成する脂質を混合する際と同時に、抗原物質及び/又は核酸を混合しておけばよい。抗原物質及び/又は核酸の混合量は、特に限定されることは無く、所望の量を適宜設定して混合すればよい。

0090

作製したリポソームは、例えば適当なサイズの孔径を有するフィルターと共にエクストルーダーを用いて、平均粒子径に調整することができる。

0091

[リポソーム結合バイオナノカプセルの製造方法]
上述のリポソーム結合バイオナノカプセルは、上述のバイオナノカプセルと上述のリポソームを混合することによって作製すればよい。

0092

また、上述のバイオナノカプセルの製造方法において作成するウイルス様粒子と上述のリポソームとを結合させ、これによって得られたリポソーム結合バイオナノカプセルと上述の樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体を結合させてもよい。

0093

バイオナノカプセルとリポソームの結合条件等は、後述の抗原物質及び/又は核酸を含むバイオナノカプセルとリポソームの結合の条件等を適宜採用すればよく、上記リポソーム結合バイオナノカプセルと上述の樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体の結合の条件等は、上述のバイオナノカプセルの製造方法にて説明したウイルス様粒子と上述の樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体との結合の条件等を適宜採用すればよい。

0094

上述のバイオナノカプセルと上述のリポソームの混合条件は、特に限定されることは無く、通常は20℃〜60℃程度の環境下で、30分間〜120分間インキュベートすればよい。

0095

また、インキュベート後は、場合に応じて作製したリポソーム結合バイオナノカプセルを精製すればよい。具体的な精製方法は公知の方法を採用すればよく、特に限定はされないが、例えば、超遠心分離法、アフィニティゲル、サイズ排除ゲル等を用いたカラムクロマトグラフィー法等が挙げられる。

0096

上述のリポソーム結合バイオナノカプセルと上述の樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体を結合させる方法は、特に限定されることは無く、樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体と、上述のバイオナノカプセル又は本発明のリポソーム結合バイオナノカプセルとを混合した後に、通常は20℃〜室温程度の環境下で、30分間〜120分間インキュベートすればよい。

0097

また、インキュベート後は、場合に応じて作製した樹状細胞を認識する抗体を担持するバイオナノカプセルを精製すればよい。具体的な精製方法は、上述した本発明のバイオナノカプセルの精製と同様に公知の方法を採用すればよい。なお、リポソームが結合しないバイオナノカプセルに対する抗体の結合方法も、これと同様にすればよい。

0098

本発明の抗原物質及び/又は核酸を含むバイオナノカプセル
本発明の抗原物質及び/又は核酸を含むバイオナノカプセルは、上述の本発明のバイオナノカプセルに、更に、抗原物質及び/又は核酸を含むものである。具体的には、上述の本発明のバイオナノカプセルにおけるウイルス様粒子(a)に含まれていればよい。

0099

また、バイオナノカプセルが上述のようなリポソーム結合バイオナノカプセルである場合は、上記ウイルス様粒子(a)に含まれていてもよく、上記リポソーム(e)に含まれていてもよい。

0100

なお、「ウイルス様粒子(a)に含まれる」とは、抗原物質及び/又は核酸が、内包されていてもよく、脂質膜(b)に突き刺さった状態であってもよい。同様に、「リポソーム(e)に含まれる」も、抗原物質及び/又は核酸が内包されていてもよく、リポソームに突き刺さった状態であってもよい。

0101

抗原物質は、特に限定はされないが、本発明のバイオナノカプセルは、生体内に投与することによって、樹状細胞へ積極的に送達され、樹状細胞内に取り込まれることから、ワクチンとして優れた機能を発揮する。従って、抗原物質とは、感染症等の原因となる細菌、ウイルス等の表面タンパク質、糖鎖、脂質等、若しくはそれらの一部であればよい。

0102

核酸とは、特に限定はされず、DNA、RNA、ペプチド核酸等が挙げられる。このような核酸の塩基配列とは、上述した抗原物質をコードする塩基配列が好ましい。また、CpGモチーフ、PATRE配列、C3d配列等を有する塩基配列であってもよい。CpGモチーフ等は免疫システムを惹起するアジュバンドとしての機能を発揮するので、上述した抗原物質、抗原物質をコードする塩基配列を有する核酸とともに用いることが有効である。

0103

抗原物質及び/又は核酸を含む本発明のバイオナノカプセルは、個体内へ投与することによって、樹状細胞に効率的に到達できるものである。さらに、樹状細胞に到達した後に、樹状細胞内に侵入する作用も発揮する。樹状細胞とは生体における免疫システムにおいて、抗原を提示する細胞として非常に重要な役割を担う細胞であるために、本発明のバイオナノカプセルが抗原物質を含んでいる場合、樹状細胞が斯かる抗原物質を極めて効率的に提示することになり、抗原物質に対して細胞性免疫及び/又は液性免疫に関する免疫システムが惹起される。

0104

また、樹状細胞等に核酸を送達すれば、哺乳動物における免疫システムが感作し易くなることが知られており、更に樹状細胞内に抗原物質となるペプチド等をコードする核酸を導入すれば、斯かる樹状細胞内で抗原物質となるペプチドが発現することによって、斯かる樹状細胞外に抗原物質としてのペプチドを提示し易くなることになる。

0105

抗原物質及び/又は核酸を含む本発明のバイオナノカプセルを生体内に投与すれば、斯かる抗原物質に対する抗体を生体内にて著量産生させることができる。そして、この様な抗体の中には、上記抗原物質を中和する機能を持った抗体が含まれることは当然であるために、本発明の抗原物質及び/又は核酸を含むバイオナノカプセルは、ワクチンとして優れた機能を発揮する。

0106

また、本発明の抗原物質及び/又は核酸を含むバイオナノカプセルは、樹状細胞に侵入した後、上述のような抗原物質に対する抗体を産生する液性免疫システムを惹起するのみならず、細胞性免疫システムも惹起する効果を発揮する。従って、優れたワクチンとしての機能を有する。

0107

本発明の抗原物質及び/又は核酸を含むバイオナノカプセルの投与対象は、特に限定はされず、ワクチンとしての機能を所望する動物であれば、特に限定されることはないが、例えば、ウシブタニワトリウマヒツジ、ヒト、ヤギチンパンジーゴリラ等が挙げられる。

0108

具体的な投与量も特に限定はされないが、例えば抗原物質を含むバイオナノカプセルを投与する場合は、抗原物質の量に換算して、通常は2mg〜50mg/kg程度を投与すればよい。核酸を含むバイオナノカプセルを投与する場合は、核酸の量に換算して、通常1mg〜20mg/kg程度を投与すればよい。抗原物質及び核酸を含むバイオナノカプセルを投与する場合は、抗原物質と核酸の総量に換算して、通常3mg〜70mg/kg程度を投与すればよい。

0109

本発明の抗原物質及び/又は核酸を含むバイオナノカプセルの製造方法
本発明の抗原物質及び/又は核酸を含むバイオナノカプセルの製造方法は、特に限定されることは無く、上述の抗原物質及び/または核酸と、上述のバイオナノカプセル、又はリポソーム結合バイオナノカプセルとを混合した後に、通常は20℃〜室温程度の環境下で、30分間〜120分間インキュベートすればよい。

0110

抗原物質及び/又は核酸が、直接上述のバイオナノカプセルに含まれる場合、これらを例えば公知の架橋剤などを用いて化学的に結合してもよい。また、リポソーム融合法を用いてバイオナノカプセル内に導入又は結合してもよい。そして、エレクトロポ—レーション法等の公知の物理的手段を用いてバイオナノカプセル内に導入又は結合してもよい。

0111

なお、本発明のバイオナノカプセルがリポソームを有している場合、リポソームに抗原物質及び/又は核酸が結合していてもよい。具体的には、上述の本発明のバイオナノカプセルの製造時において、予め上記バイオナノカプセルと上記リポソームの結合前に、抗原物質及び/又は核酸と該バイオナノカプセル又は該リポソームと混合して結合させてもよく、バイオナノカプセルとリポソームを結合させた後にさらに混合して結合させてもよい。具体的な方法は、上記(バイオナノカプセル)及び(リポソーム)の[製造方法]にて詳述したとおりである。

0112

また、インキュベート後は、場合に応じて得られたものを精製すればよい。具体的な精製方法は、上述した本発明のバイオナノカプセル又はリポソーム結合バイオナノカプセルの精製と同様に公知の方法を採用すればよい。

0113

本発明の抗原物質及び/又は核酸導入方法
上述のように本発明のバイオナノカプセルが、更に抗原物質及び/又は核酸を含む場合、これを動物に投与することによって斯かる抗原物質及び/又は核酸を動物の樹状細胞に導入することができる。

0114

すなわち、本発明の抗原物質及び/又は核酸を動物の樹状細胞へ導入方法は、、ウイルス抗原タンパク質を含むウイルス用粒子であるバイオナノカプセルを動物に投与する工程を含み、当該バイオナノカプセルが樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体を担持し、且つ抗原物質及び/又は核酸を含むことを特徴とする導入方法である。

0115

投与対象の動物、投与量、投与方法等については、上記本発明の抗原物質及び/又は核酸を含むバイオナノカプセルにて詳述した通りとすればよい。

0116

抗原物質及び/又は核酸導入剤
上述の様に、本発明のバイオナノカプセルは、抗原物質及び/又は核酸と共に樹状細胞内に侵入する作用を発揮することから、樹状細胞への抗原及び/又は核酸導入剤として有用である。

0117

本発明の抗原物質及び/又は核酸導入剤は、上述した本発明のバイオナノカプセルを含むものである。抗原物質及び/又は核酸導入剤中の本発明のバイオナノカプセルの配合量は、特に限定はされないが、斯かる導入剤当たり、通常は、0.001%〜99.9%程度とすればよい。また、上述した本発明のバイオナノカプセルそのものを本発明の抗原物質及び/又は核酸導入剤としてもよい。

0118

以下に本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明が以下に示す実施例に限定されないのは言うまでも無い。

0119

<実験例1:バイオナノカプセルの作製>
本実施例にて使用するバイオナノカプセル(以後BNCと称することがある。)を以下に示す方法にて作製した。具体的には、非特許文献5に記載の方法を用い、ZZドメインを有するB型肝炎ウイルス表面抗原Lタンパク質(以下、HBsAg Lタンパク質と称することがある。)を発現させるベクターを用いて酵母細胞を形質転換した後に、斯かる酵母細胞を培養し、ZZドメインを有するHBsAg Lタンパク質を主成分とするバイオナノカプセル(以下、ZZ—BNCとする。)を酵母細胞内から単離及び精製を行った。なお、比較実験用に、ZZドメインを有さない、HBsAg Lタンパク質を主成分とするバイオナノカプセル(以下、ST−BNCとする。)を、同様の方法にて単離及び精製を行った。得られたZZ−BNC及びST−BNCの濃度は、各種BNCの主成分となるタンパク質量に換算して測定した。

0120

具体的な測定方法は、市販のタンパク質量測定キットである、BCA protein assay kit(Pierce社(IL,USA))を用いて測定した(以下の実験でも同様。)。

0121

また、得られたZZ−BNC及びST−BNCには、場合に応じて、それ自身の検出のために、Fluorolink Cy5色素(GE Healthcare社 CA,USA)又はCF750色素(Biotium社 CA,USA)を用いて標識化処理を行った。斯かる処理はそれぞれの製品に添付されたプロトコルに従って行った。

0122

次いで、得られたZZ−BNC、及びST−BNCに対して、樹状細胞の表面タンパク質を認識する各種抗体を結合させた。ここで使用した抗体は、以下の表1に示す抗原、種、クローン、及び製造業者のものである。また、対照実験用に下記の表1に示す抗体以外に、マウスIgGs(Mouse IgG purified immunogloblin regent grade:シグマアルドリッチ)も、上記ZZ−BNC及び、ZZドメインを有さないST−BNCに結合させた。

0123

0124

上記それぞれの抗体1μgとZZ−BNC(これが含有するタンパク質量に換算して5μg)を、50μMの架橋剤であるBS3(Pierce社)の存在下にて混合して、両者を結合させ、さらに架橋を行った。なお、余剰のBS3は、グリシンを用いて不活化処理マスキング処理)を施した。

0125

得られた各種抗体が結合したZZ−BNCの物理的性質について、以下の表2に示す。なお、表中のZ−Average(nm)はZ−平均粒子径を示し、ζ−Potentials(mV)はζ電位を示す。Z−平均粒子径及びζ電位の測定は、共に動的光散乱光度計であるZetasizer(MalvernInstruments社,Worcestershire,UK)を用い、25℃の水系溶媒中にて、常法に従って行った(以下の実験でも同様。)。PDIは、Z−平均粒子径の多分散指数を示す。

0126

そして、Binding Affinity(mol)は、ZZ−BNCへの各種抗体の結合量を示し、ZZ−BNCの主成分であるZZドメインを含むHBsAg Lタンパク質1モル当たりの量にて算出した。具体的な各種抗体のZZ−BNCへの結合量の測定は、水晶発振子マイクロバランス法に基づいた、アズワン社(Osaka,JAPAN)のTwin−Q装置を用い、25℃の条件下にて、常法に従って行った。

0127

0128

表2に示すように、各種抗体が結合したZZ−BNCは、ZZドメインを有さない、従来のST−BNCと同様のZ−平均粒子径(100nm以下)及びζ電位(陰性荷電)であることが明らかとなった。また、ZZ−BNCに対しては、アルニアハムスター由来のIgGをアイソタイプとする抗CD11c抗体が、ZZドメインに対して高い親和性を示すことが知られている、マウス由来のIgGsと同じ程度の効率で結合することが明らかとなった。

0129

<実験例2:BNCの樹状細胞への親和性>
上述の各種抗体が結合したZZ−BNCの樹状細胞への親和性を、フローサイトメトリーシステム(BDFACSCan Canto II;BD Bioscience社:CA,USA)を用いて解析した。

0130

樹状細胞は、Balb/cマウス(雌:6〜8週齢;日本SLC社:JAPAN)の脾臓より、常法に従って単離した。樹状細胞の中でも、CD11c陽性樹状細胞を、MACS(登録商標)テクノロジーミルニーバイオテク株式会社)に基いて更に精製した。

0131

得られたCD11c陽性樹状細胞と、上記の抗体が結合したZZ−BNC(ZZ−BNCは、cy5色素によって標識化されている。)を4℃で30分間インキュベートを行った後、Cy5の放出する波長を基に、CD11c陽性樹状細胞に親和性を有する、各種抗体が結合したZZ−BNCの量を、Cy5色素の放出波長である670nmを基に測定した。その結果を図2にて示す。

0132

抗CD11c抗体及び抗MHCclass IIが結合したZZ−BNCが、マウス脾臓由来のCD11c陽性樹状細胞に対して特に高い親和性を示すことが明らかとなった。

0133

また、抗体が結合していないZZ−BNCや、MouseIgGsが結合したZZ−BNCといった、樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体を有さないZZ−BNCであっても、上述の抗CD11c抗体や、抗MHCclass II抗体が結合したZZ−BNCには劣るものの、脾臓由来のCD11c陽性樹状細胞への親和性が認められた。

0134

これは、本実施例にて用いたZZ−BNCの主成分であるZZドメインを有するHBsAg Lタンパク質が高マンノース糖鎖を有していることと、樹状細胞がマンノースレセプターを有しており、この二者が樹状細胞への結合に関与するからであると考えられる。
従って、本実施例におけるBNC及びそれを含むZZ−BNC並びに樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体が結合したZZ−BNCは、樹状細胞への結合に特に有効に用いられる。

0135

<実験例3:BNCの生体への投与>
上述の方法にて作製した樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体が結合したZZ−BNCのうち、抗CD11c抗体及び抗MHCclass II抗体が結合したZZ−BNCをマウス個体(雌:6〜8週齢;日本SLC社:JAPAN)に投与し、その後のZZ−BNCのマウス個体内での局在を観察する実験を、生体観察システム(OV−100;オリンパス:日本)を用いて行った。比較実験として、MouseIgGsが結合したZZ−BNCと、抗体が結合していない単なるZZ−BNC、及びZZドメインを有さないST−BNCも投与した。なお、それぞれのBNCは予めCF−750色素にて標識化されているものを使用した。

0136

各種BNCを、それぞれの主成分となるタンパク質量に換算して10μgずつマウス個体に尾静脈注射によって投与し、投与後40分でマウス個体に安楽死処置を行った後、斯かるマウス個体から心臓、肺、腎臓、肝臓及び脾臓を摘出した。摘出したそれぞれの臓器を、CF−750色素の放出波長である780nmを基に、上述の生体観察システムにて検出し、マウス個体への投与後の各種BNCの、斯かるマウス個体内での局在を観察した結果を図3に示す。

0137

マウス個体に投与した全てのBNCは、肝臓に局在することが明らかとなった。そして、各種BNCの中でも、脾臓から摘出したCD11陽性樹状細胞に対して高い親和性を示した、抗CD11c抗体が結合したZZ−BNC及び抗MHCclass II抗体が結合したZZ−BNCは、肝臓のみならず脾臓においても局在していることが明らかとなった。以上のことから、樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体が結合したZZ−BNCをマウス個体に投与すれば、脾臓組織にも送達されることが明らかとなった。このことは、本実施例における樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体が結合したZZ−BNCが脾臓細胞へのDDSとして優れた効果を発揮することを示している。

0138

次いで、Cy5色素で標識された各種BNCを、上述の実験と同様の方法でマウス個体に投与し、投与後40分でマウス個体に安楽死の処置を行った後、斯かるマウスの脾臓から、常法に従って脾臓細胞を単離した。斯かる細胞とFITC標識化抗CD11c抗体を混合し、インキュベートした後、フローサイトメトリーシステムを用いてCD11陽性樹状細胞に結合する各種BNCの量をFITC(520nm)とCy5色素の放出波長を基に解析した。結果を図4に示す。

0139

マウス個体に投与した各種BNCのうち、抗CD11c抗体が結合したZZ−BNC及び抗MHCclass II抗体が結合したZZ−BNCが脾臓組織中のCD11c陽性樹状細胞に対して高い親和性を示すことが明らかとなった。中でも、抗CD11c抗体が結合したZZ−BNCが、CD11陽性樹状細胞の62%に集積するといった、より高い親和性を示すことも明らかとなった。

0140

非特許文献2に示すように、抗CD11cのF(ab´)2が結合した抗原を皮下に投与したところ、4時間後では1.5%の樹状細胞にしか斯かる抗原が到達せず、12時間後に81.4%の樹状細胞に到達することが開示されている。

0141

一方で、本実施例における樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体を担持するZZ−BNCは、投与後4時間で62%もの樹状細胞に斯かるZZ−BNCが集積することが明らかである。これは、ZZ−BNCに結合する樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体が、ZZ−BNC表面に整列化されて担持されることによって、抗原抗体反応がより起こり易くなるために、樹状細胞の表面タンパク質を認識する効果が増大するためであると考えられる。

0142

更に、インキュベートした後の細胞から、抗CD11c抗体を用いてCD11陽性樹状細胞を精製し、精製後の細胞集団共焦点レーザー顕微鏡(FV−1000;オリンパス社:Janan)にて観察した。結果を図5に示す。

0143

図中、CD11cを緑色、抗CD11c抗体が結合したBNCを赤色にて表示する。抗CD11c抗体が結合したZZ−BNCは、CD11c陽性樹状細胞の内部に存在していることが明らかである。このことから、本実施例における樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体が結合したZZ−BNCをマウス個体に投与すれば、脾臓組織におけるCD11c陽性樹状細胞に到達し、更に斯かる樹状細胞内にZZ−BNCが取り込まれることが明らかとなった。

0144

これは、本実施例における樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体が結合したZZ−BNCが、膜融合ドメインに止まらず、膜透過ドメインを有しており、樹状細胞内に侵入する機能を有しているからであると考えられる。また、上記ZZ−BNCが樹状細胞表面に存在するCD11cに結合し、その後、斯かるCD11cによる貧食作用に基づいて、当該ZZ−BNCが樹状細胞内に取り込まれたものと考えられる。

0145

従って、本実施例における樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体が結合したZZ−BNCは、CD11c陽性樹状細胞内への物質の導入に好適に用いることができる。また、斯かる樹状細胞は、ヒトをはじめとした種々の哺乳動物における免疫システムにおいて、抗原提示機能を発揮する重要な細胞であることから、本実施例における樹状細胞の表面タンパク質を認識する抗体が結合したZZ−BNCを抗原物質や核酸と共に用いることによって、斯かる抗原に対するワクチンとしての機能が発揮されることも期待される。

0146

<リポソームの作製>
リポソームの作製は、常法に従って行った。具体的には、コレステロール(Chol)、ジエチルホスファチジルエタノールアミンDOPE)、O,O’−ジテトラデカノル−N−(α−トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノール塩酸(DC−6−14)をそれぞれモル比で3:3:4となる組成で混合して作製した。得られたリポソームは、カチオン性リポソームであることが確認された。得られたリポソームのζ電位は56.5mVであり、Z−平均粒子径は121nmであった。

0147

<実験例4:リポソームが結合したBNCの作製>
ZZドメインを有するHBsAg Lタンパク質量を100μg含むZZ−BNCと、600μgの上述のカチオン性リポソームをpH4のブリトン−ロビンソン緩衝液中で混合し、37℃で30分間インキュベートしてリポソームが結合したバイオナノカプセルを作製した。ここで得られたリポソーム結合BNCを、0〜40%塩化セシウム密度勾配遠心法に供して精製を行った。精製後のリポソームが結合したバイオナノカプセル(以後、ZZ−BNC−LPとする。)はPBSにて透析を行った。

0148

得られたZZ−BNC−LPは、ZZ−BNCの主成分であるZZドメインを有するHBsAg Lタンパク質を19.5μg、カチオン性リポソームを65.6μg含み、Z−平均粒子径が455nm(PDI;0.331)、ζ電位が−5.76mVであった。

0149

なお、リポソームの含有量の測定は、市販の脂質測定キットであるコレステロールE−テスト和光純薬:Japan)を用いて行った。

0150

更に、上述のZZ−BNC−LPに対し、抗原物質として日本脳炎ウイルスのD3抗原を結合させた。D3抗原は、日本脳炎ウイルスのエンベロープタンパク質のドメインの1つであり、非特許文献1に記載のように、大腸菌による発現系を用いて作製した。

0151

120μgのZZ−HBsAg Lタンパク質及び404μgのカチオン性リポソームを含む上記のZZ−BNC−LPと、60μgの上記D3抗原を混合し、室温にて1時間インキュベートした(この工程にて得られたものを、以後ZZ−BNC−LP−D3とする。)。その後、24μgの上記抗CD11c抗体を加え、ZZ−BNC−LP中のZZ−BNCに結合させた。最終的に得られたものを以後、α−CD11c−ZZ−BNC−LP−D3とする。

0152

<実験例5:マウス個体への抗原を含むリポソームが結合したBNCの投与>
D3抗原の量に換算して20μgのα−CD11c−ZZ−BNC−LP−D3及びZZ−BNC−LP−D3を、マウス個体(雌:6〜8週齢;日本SLC社:JAPAN)、尾静脈投与法によって投与した。また、同量のD3抗原を含むカチオン性リポソームとD3抗原の複合体(以下、LP−D3とする。)、及び同量のD3抗原のみも比較実験として投与した。投与したサンプルの各種物性について、表3に示す。

0153

0154

上記各種サンプルの投与から4週間後に、それぞれ同量の追加免疫を行った。初回の投与から4週後及び6週後に血液を回収し、D3抗原に対する抗体の力価の測定を行った。

0155

抗体の力価の測定は、一般的に知られる間接ELISA法を用いて行った。具体的には、上記方法によって得られたD3抗原をマイクロプレート固相化し、検出にはHRP標識化抗マウスIgG抗体を用いた。結果を図6に示す。

0156

D3抗原のみを用いてマウス個体に免疫付与した場合であっても、LP−D3を用いてマウス個体に免疫付与した場合であっても、マウス個体中において、初回免疫付与から4週間経っても、6週間経っても、抗D3抗体が殆ど産生されなかった。

0157

一方で、D3抗原量に換算して同量のα−CD11c−ZZ−BNC−LP−D3を用いてマウス個体を免疫付与した場合、初回免疫から4週間後にD3に対する抗体がマウス個体中にて産生されることが明らかとなり、6週間後にはマウス個体中にて産生される、D3抗原に対する抗体量が、劇的に増加していることが明らかとなった。

0158

なお、抗CD11c抗体を有さないZZ−BNC−LP−D3を上述の通りD3抗原量に換算した等量を用いてマウス個体を免疫付与した場合、初回免疫から6週後にD3に対する抗体が、マウス固体中にて産生されていたものの、その産生量は、抗CD11cに対する抗体を有するα−CD11c−ZZ−BNC−LP−D3による免疫付与から4週後における産生量と同程度であり、D3抗原に対する抗体産生量としては、α−CD11c−ZZ−BNC−LP−D3と比べて大いに劣るものであった。

0159

<実験例6:樹状細胞標的化BNCの投与経路検討実験>
非特許文献3に記載の方法で、蛍光色素CF750標識抗CD11c抗体提示ZZ−BNC(以後、αーCD11c−ZZ−BNC(CF750Labeled)とする。)を用意し、これのタンパク質量10μg相当を、マウスBalb/cの尾根部(皮下注射:SC)または大腿部筋肉内注射:IM)に投与し、12時間後に屠殺し、腋窩リンパ節鼠径リンパ節膝窩リンパ節直視できるように開腹した後、オリンパス社製In Vivoイメージング装置蛍光観察を行った。

0160

結果を図7に示す。SC投与分は鼠径リンパ節に、IM投与分は鼠径リンパ節及び膝窩リンパ節に蛍光が観察された。このことは、αーCD11c−ZZ−BNC(CF750Labeled)が、従来のIVではなく、SC及びIMというワクチンとして通常の投与経路でも所属リンパ節に感染できる可能性を示している。

0161

ついで、上記のαーCD11c−ZZ−BNC(CF750Labeled)をSC投与したマウスから鼠径リンパ節、上記αーCD11c−ZZ−BNC(CF750Labeled)をIM投与したマウスから膝窩リンパ節を摘出し、非特許文献3に記載の方法でCD11c陽性細胞を単離し、FACSを用いて、リンパ節内の樹状細胞へのZZ−BNCの移行度合いを検討した。

0162

結果を図8に示す、所属リンパ節内樹状細胞の12.5%〜15.6%にZZ−BNCが移行することが判明した。なお、陰性対照の蛍光色素CF750標識ZZ−BNC(αーCD11c−ZZ−BNC(CF750Labeled)の抗CD11c抗体を含まないもの。以後、ZZ−BNC(CF750Labeled))の3倍の集積度合いであった。この結果は、ZZ−BNC表層に提示されている酵母由来高マンノース型糖鎖が樹状細胞の表層のマンノース受容体相互作用して集積していることも示唆している。つまり、「αーCD11cーZZ−BNC」は抗CD11c抗体と酵母由来高マンノース型糖鎖が共役的に樹状細胞を標的化していることが示唆された(図8(A))。

0163

更に、上記マウスにおいて、投与後8、12、及び24時間における所属リンパ節内の樹状細胞の全てに対する、αーCD11c−ZZ−BNC(CF750Labeled)及びZZ−BNC(CF750Labeled)の集積度合いを検討したところ、前者が後者よりも集積度合いは上昇していたが、両者とも全時点において有意にZZ−BNCは集積していた(図8(B))。なお、SC投与後12時間における鼠径リンパ節内の樹状細胞を単離し、共焦点レーザー顕微鏡観察したところ、樹状細胞内にZZ−BNCが取り込まれていることも確認された(図9)。

0164

<実験例7:樹状細胞標的化BNCのアジュバント効果の実験>
上述のαーCD11cーZZ−BNC、ZZ−BNC、及び陽性対照としてLPSの10μgを、SC又はIMでマウスに投与し、2日後に鼠径リンパ節又は膝窩リンパ節を摘出し、常法に従い樹状細胞を単離し、樹状細胞表面の活性化マーカー(樹状細胞がT細胞に抗原提示する際に発現する細胞表面分子)であるCD86及びMHCclass IIの発現量を、FACSを用いて定量した。

0165

結果を図10に示す。α—CD11cーZZ−BNC、ZZ−BNC、及びLPSは同等の樹状細胞活性化能を有していた。以上から、α—CD11cーZZ−BNC及びZZ−BNCは、アジュバントとして樹状細胞への抗原認識を促進する活性があることが示された。

0166

<実験例8:樹状細胞標的化BNCへの抗原搭載法の検討1>
非特許文献3に記載の方法では、カチオン性リポソームにJEV由来のD3抗原を包含して、その後、抗CD11c抗体提示ZZ−BNCを重合させたものが、有意に抗D3抗原に対する抗体を誘導できることを示したが、今回は、アニオン性リポソーム(DPPC:DPPE:DPPG−Na:コレステロール=3:3:6:8(モル比)の脂質組成にて調製したものである。)にD3抗原タンパク質を包含させ、口径200nm及び100nmのエクストリューダーで処理、及び限外濾過したところ、得られたリポソームにおける対脂質D3抗原の含量が23.7%と高効率であることを確認した(以後、このリポソームをaLP−D3とする。)。また、上述の方法に従って測定したZ平均粒子径は110nm程度であり、ζ電位はー53.1mV程度であった。

0167

次に、常法にしたがって、ZZ−BNCをpH4、37℃、1時間で重合させ、抗CD11c抗体をBS3クロスリンカーで固定し、過剰クロスリンカーをグリシンでマスキングした。これを、抗CD11c−ZZ−BNC−aLP−D3とする。また、この様なBNCのZ平均粒子径は100〜600nm程度であり、ζ電位はー20〜0mV程度である。

0168

上述のaLP−D3、ST−BNC−aLP−D3(ST−BNCは上述のようなZZドメインを有さないBNCであり酵母由来高マンノース糖鎖を提示する。)、ZZ−BNC−aLP−D3、及びαーCD11cーZZ−BNC−aLP−D3を、マウス(1群6匹)にD3量として20μgずつ、2週おきに3回IM、で投与した(0、2、及び4週目)。その際、0、4、及び6週目に採血を行い、6週目に半数マウス致死量の50倍のJEVを接種した。なお、陽性対象実験として化血研のJEVワクチン接種群(投与抗原は多価、かつ20μg以上である。)を同様に投与した。

0169

結果を図11に示す。陽性対象である化血研のJEVワクチン接種群(投与抗原は多価かつ20マイクログラム以上である)は完全にJEVによる感染を防御した中で、αCD11cーZZ−BNC−aLP−D3も同様に完全にJEVによる感染も防御した。なお、ZZ−BNC−aLP−D3は半数のマウスが感染防御され、ST−BNC−aLP−D3は1匹しか防御されなかったことから、酵母由来の高マンノース由来糖鎖のみの樹状細胞への標的化は感染防御において不十分と判断された。また、ZZドメイン自身もB細胞等に提示されるIgGドメインを認識していると考えられ、その為、ZZ−BNCはST−BNCよりも樹状細胞標的化能が高まったと推測された。

0170

さらに、抗CD11c抗体に直接D3抗原を結合させたもの(αーCD11c−D3)は、全くJEVによる感染を防御することが出来なかった。このことは、「1)アニオン性リポソームを介したD3抗原の樹状細胞への送達が、樹状細胞内での抗原プロセッシングに対して有効であり、直接樹状細胞内に送り込まれたD3は樹状細胞内で適切に抗原プロセッシングされないか或いは単純に分解していることを示唆している」又は「2)ZZ−BNCの表層に提示された抗CD11c抗体がBNCの表層で整列化されており、斯かる抗体のアビディティが著しく抗体1分子と比較して高まったため、樹状細胞への標的化が効率よく行われたこと」の何れかを示唆している。

0171

<実験例9:樹状細胞標的化BNCへの抗原搭載法の検討2>
上述の実験例8において示唆された『2)』の可能性を検討するために、ZZ−BNC表層に抗CD11c抗体を整列化して提示するとともに、リポソームを介さずにD3抗原を同時に提示する組成物を作製しこれについての検討を行った。具体的には、ZZ−BNC表層のFreeアミノ基にSulfo−LC−SPDP(ピアス社)を用いてピリジルジチオール化ZZ−BNCを作製した。、一方で、D3のFreeアミノ基にSPDP(ピアス社)を用いてピリジルジチオール化し、その後DTTで還元してチオール基に変換し、チオール化D3抗原とした。その後、ピリジルジチオール化ZZ−BNCとチオール化D3抗原をそれぞれ1:0.5〜1:4の重量比で混合し、4℃、18時間反応させ、還元状態及び非還元状態でSDS−PAGEを行い、銀染色を行ったところ、ZZ−BNC:D3抗原=1:4でも十分にD3抗原がZZ−BNCに結合していることが判明した。得られたBNCをZZ−BNC−D3とする。また、下記表4は各条件で得られたZZ−BNCーD3のZ−average(PDI)及びゼータ電位であり、上述の方法と同様にして測定したものである。

0172

<実験例10:抗原を有する樹状細胞標的化BNCへの抗体誘導実験>
ZZ−BNC:D3=1:4で得られたZZ−BNC−D3に対し、ZZ−BNCーD3に対して5分の1の重量となる抗CD11c抗体を加え、室温で15分間静置し、クロスリンカーBS3で室温1時間処理し、過剰クロスリンカーをグリシンで室温15分処理してマスキングした。得られたものをα—CD11c−ZZーBNCーD3とする。D3抗原量に換算して40μgののαーCD11c−ZZ−BNC−D3、及び及びZZ−BNCーD3を、マウス(1群5匹)に対しそれぞれ、IV(静脈内)、IM(筋肉内)、及びSC(皮下)の経路で0、2週に接種し、4週目で血清中の抗D3−IgG抗体価をELISAで評価した。

0173

結果を、図12に示す。αーCD11c−ZZ−BNC−D3は抗CD11c抗体提示していないZZ−BNCーD3と比較して高い効率で抗体が誘導されていた。以上から、今までのリポソーム(カチオン性またはアニオン性)を介して抗原を包含させなくても、化学的にZZ−BNC表層に抗原提示させれば、同時に提示している抗CD11c抗体により樹状細胞への標的化が達成され、高い抗原性を発揮できるものと考えられた。また、αーCD11c−ZZ−BNC−D3はIV、SC、及びIMのいずれの投与経路であっても、マウス個体において優れた抗体産生を誘導することが明らかとなった。

0174

<実験例11:抗原を有する樹状細胞標的化BNCを用いた感染防御実験>
上述のαーCD11cーZZ−BNCーD3、ZZ−BNCーD3、ST−BNCーD3、を、マウス(1群6匹)にD3抗原量に換算して40μgずつ、2週おきに2回IMで投与した(0,2週目)。その際、0,4週目に採血を行い、4週目に半数マウス致死量の50倍のJEVを接種した。これは、上述の図11に示される実験よりも投与間隔が短く過激チャレンジ実験である。

0175

結果を図13に示す。化血研のJEVワクチン接種群(投与抗原は多価かつ40マイクログラム以上である)は完全にJEV感染を防御した中で、α−CD11cーZZ−BNCーD3もほぼ同様(最終週で1匹死亡)にJEV感染を防御した。なお、ZZ−BNCーD3は半数のマウスが感染防御され、ST−BNCーD3は1匹しか防御されなかったことから、酵母由来の高マンノース由来糖鎖のみの樹状細胞への標的化は感染防御において不十分と判断された。また、ZZドメイン自身もB細胞等に提示されるIgGドメインを認識していると考えられ、その為、ST−BNCよりも樹状細胞への標的化能が高まったと推測された。なお、抗CD11c抗体に直接D3抗原を結合させたもの(αーCD11c−D3)は、全くJEV感染を防御することが出来なかった。このことは、ZZ−BNCの表層に提示された抗CD11c抗体はBNC表層で整列化されており、同抗体のアビディティ(avidity)が著しく抗体1分子と比較して高まったため、樹状細胞への標的化が効率よく行われたことを示唆している。なお、実験例8にて示唆される1)については、本実験から可能性はその低いと考えられた。

0176

<実験例12:核酸として抗原を有する樹状細胞標的化BNCの実験>
非特許文献3に記載の方法に従ってα−CD11cーZZ−BNC(抗CD11c抗体が1μgでZZ−BNCが5μg)を作製し、カチオン性リポソーム(組成は非特許文献3に記載されたものであり、30μg)に3μgの蛍光色素Cy5標識プラスミドDNAを複合体化したリポプレックス(LPX)を混合し、37℃、1時間(pH3)でインキュベートしてα−CD11cーZZ−BNC−カチオン性リポソーム−DNAを作製し、塩化セシウム密度勾配超遠心法(SW41ローター、23600回転、25℃、16時間)で分離した。各フラクション採取し、そのタンパク質量、及びCy5蛍光強度を測定した。

0177

この結果を図14に示す。LPX単独の場合は低密度画分に集積し、α−CD11cーZZ−BNC単独の場合は高密度画分に集積する条件で、上述のαーCD11cーZZ−BNC−カチオン性リポソーム−DNAは両画分の中間に集積していた。特に、上述の混合比で作製したα−CD11cーZZ−BNC−カチオン性リポソーム−DNAは、遊離のLPX及び遊離のα−CD11cーZZ−BNCは存在しなかった。これらの作製は煩雑な塩化セシウム密度勾配超遠心法を介さずに行うことができるので、各成分を上記量比で混合することにした。

0178

上述の方法に従って、「αーCD11c抗体提示CF750蛍光標識ZZ−BNC−カチオン性リポソーム−DNA」及び「CF750蛍光標識ZZ−BNC−カチオン性リポソーム−DNA」を作製し、マウスに尾静脈からZZ−BNCに換算して10μgに相当する量を投与し、1時間後にインビボイメージング装置を用いて、各主要臓器におけるZZ−BNCの濃度を蛍光強度で定量した。

0179

結果を図15に示す。上述の両BNCは、通常のナノディシンと同様に肝臓、脾臓を中心に局在することが判明した。

0180

次いで、、上述の方法に従って、「抗CD11c抗体提示ZZ−BNC−カチオン性リポソーム−Cy5蛍光標識DNA」、「ZZ−BNC−カチオン性リポソーム−Cy5蛍光標識DNA」、「カチオン性リポソーム−Cy5蛍光標識DNA」、及び「Cy5蛍光標識DNA」を作製し、DNA6マイクログラム相当をマウス尾静脈(1群3匹)に投与し、1時間後に脾臓を摘出し、CD11c陽性細胞(樹状細胞)に含まれるCy5陽性細胞の割合をFACSで測定した。なお、これらのZ平均粒子径とゼータ電位は、それぞれ上述の順に、410nm/18.9mV、356nm/18.7mV、268nm/40.0mV及び>1000nm/−25.1mVであった。

0181

結果を図16に示す。「抗CD11c抗体提示ZZ−BNC−カチオン性リポソーム−Cy5蛍光標識DNA」、「ZZ−BNC−カチオン性リポソーム−Cy5蛍光標識DNA」、「カチオン性リポソーム−Cy5蛍光標識DNA」及び「Cy5蛍光標識DNA」は、CD11c陽性細胞(樹状細胞)のそれぞれ11.2%、14.4%、6.5%、及び0%にDNAが集積していた。これは、BNCをIV投与する場合、脾臓内の樹状細胞の標的化には抗CD11c抗体によりも、ZZ−BNCのZZドメインによるIgGFc領域標的化および酵母由来の高マンノース糖鎖による樹状細胞への標的化が有効であることが判明した。しかし、この各分子の樹状細胞への標的化能は、IV以外の投与経路、異なるリポソーム組成、異なる各成分の組成比においては変動する可能性はある。

0182

図5(実験例3:BNCの生体への投与)と同様に、「αーCD11cーZZ−BNC−カチオン性リポソーム−Cy5蛍光標識DNA」を接種されたマウスから単離した脾臓内の樹状細胞を、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。

実施例

0183

図17に示すように、DNA由来のCy5蛍光が樹状細胞内に存在することが確認された。以上から、DNAワクチンを「αーCD11cーZZ−BNC−カチオン性リポソーム」に搭載した場合、効率よくDNAワクチンが樹状細胞に送達され、従来のDNAワクチン単剤とくらべて高い免疫原性を示すことが期待された。

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