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技術 肺炎球菌性肺炎の重症度判定方法

出願人 大塚製薬株式会社
発明者 福島喜代康田中裕美
出願日 2013年3月29日 (7年7ヶ月経過) 出願番号 2014-508101
公開日 2015年12月14日 (4年11ヶ月経過) 公開番号 WO2013-147173
状態 特許登録済
技術分野 生物学的材料の調査,分析 酵素、微生物を含む測定、試験
主要キーワード ライン強度 テストライン 判定項目 検体抽出液 薬剤感受性検査 呼吸器学 一般検査 生化学測定
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2015年12月14日)のものです。
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図面 (11)

課題・解決手段

被験者の血液を用いて、より客観的に且つ迅速に、肺炎球菌性肺炎重症度を判定することが可能な方法の提供。 被験者から採取した血液中肺炎球菌抗原の有無と、血中C反応性タンパク質濃度(CRP)、白血球数(WBC)及び血中尿素窒素濃度(BUN)から選ばれる1種以上の生化学検査値指標とする肺炎球菌性肺炎の重症度の判定方法

概要

背景

肺炎球菌(S.pneumoniae)は、市中肺炎下気道感染症原因菌として最も検出頻度の高い菌であり、日本だけではなく全世界においても罹患率死亡率の高い原因菌の一つである。肺炎球菌感染症は、頻度が高いだけではなく、重症化しやすいため、できる限り原因菌を早期に確定し、的確な治療薬を選択することが予後の改善、医療コストの削減、耐性菌発現防止の点からも重要である。

肺炎の診断は、一般に、臨床症状、身体所見一般検査所見胸部X線写真等から総合的に行われ、肺炎と診断された患者は引き続き、「成人市中肺炎診療ガイドライン」(非特許文献1)に示されているA−DROPシステムに従って重症度の判定が行われ、その結果に基づき外来治療入院治療、ICU治療が選択される。ここで、A−DROPシステムとは、1)男性70以上、女性75歳以上、2)BUNが21mg/dL以上又は脱水あり、3)SpO2が90%以下(PaO2が60Torr以下)、4)意識障害あり、5)血圧収縮期)90mmHg以下、の5つの指標のうち該当する数で重症度の決定するものである(図1参照)。
そしてその後、起炎菌検査が行われ、検出された起炎菌に応じて治療指針が立てられる。しかしながら、培養検査による起炎菌の同定と薬剤感受性検査の結果が判明するのには数日要することから、最近では、喀痰上咽頭ぬぐい或いは尿等から肺炎球菌抗原に対する特異的抗体を用いた診断薬(「ラピラン登録商標)肺炎球菌」(大塚製薬株式会社)、「ラピラン(登録商標)肺炎球菌HS(中耳副鼻腔炎)」(大塚製薬株式会社)、「BinaxNOW(登録商標)肺炎球菌」(アリーアメディカル株式会社))を用いた迅速検査を初期に行い、早期に治療方針を立てることも行われている。

また、肺炎では10%の頻度で菌血症合併がみられ、特に肺炎球菌では60%以上に達することが報告されていることから、血液中の菌を検出することが重要である。血液中の菌の検出法としては、血液培養RTPCR法、抗原検査が挙げられる。血液培養は肺炎において可能な限り実施されているが、検査結果を得るのに時間がかかること、RT−PCRと比較して検出率が20%前後と低いことから、緊急性を要する際には有効な方法とは言えない。RT−PCRは検出率が高いが、専用の器械が必要なこと、高価であることから、臨床では普及するには至っていない。抗原検査に関しては、原理的には血清中のC−多糖抗原(C−ps)等をELISA等で検出する報告はあるが(非特許文献2、3)、前処理法の必要性やELISAという迅速性に欠ける検出法であることから実用化には至っていないのが現状である。

したがって、現行では臨床症状や生化学マーカーの情報のみで判断されている肺炎の重症度の判断を、起炎菌の推定を含めてより客観的に且つ迅速に行うことが可能な手段が望まれている。

概要

被験者の血液を用いて、より客観的に且つ迅速に、肺炎球菌性肺炎の重症度を判定することが可能な方法の提供。 被験者から採取した血液中の肺炎球菌抗原の有無と、血中C反応性タンパク質濃度(CRP)、白血球数(WBC)及び血中尿素窒素濃度(BUN)から選ばれる1種以上の生化学検査値を指標とする肺炎球菌性肺炎の重症度の判定方法

目的

本発明は、被験者の血液を用いて、より客観的に且つ迅速に、肺炎球菌性肺炎の重症度を判定することが可能な方法を提供するものである。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

被験者から採取した血液中肺炎球菌抗原の有無と、血中C反応性タンパク質濃度(CRP)、白血球数(WBC)及び血中尿素窒素濃度(BUN)から選ばれる1種以上の生化学検査値指標とする肺炎球菌性肺炎重症度判定方法

請求項2

肺炎球菌抗原が陽性で、生化学的検査値が以下の場合に、重症又は超重症と評価する、請求項1記載の判定方法。CRP:10mg/dL以上WBC:10,000個/mm3以下BUN:20mg/dL以上

請求項3

肺炎球菌抗原がC−多糖抗原莢膜抗原及び細胞膜多糖抗原から選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の方法。

請求項4

肺炎球菌性菌血症を併せて評価する請求項1〜3の何れか1項記載の方法。

技術分野

0001

本発明は被験者の血液より肺炎球菌性肺炎重症度を判定する方法に関する。

背景技術

0002

肺炎球菌(S.pneumoniae)は、市中肺炎下気道感染症原因菌として最も検出頻度の高い菌であり、日本だけではなく全世界においても罹患率死亡率の高い原因菌の一つである。肺炎球菌感染症は、頻度が高いだけではなく、重症化しやすいため、できる限り原因菌を早期に確定し、的確な治療薬を選択することが予後の改善、医療コストの削減、耐性菌発現防止の点からも重要である。

0003

肺炎の診断は、一般に、臨床症状、身体所見一般検査所見胸部X線写真等から総合的に行われ、肺炎と診断された患者は引き続き、「成人市中肺炎診療ガイドライン」(非特許文献1)に示されているA−DROPシステムに従って重症度の判定が行われ、その結果に基づき外来治療入院治療、ICU治療が選択される。ここで、A−DROPシステムとは、1)男性70以上、女性75歳以上、2)BUNが21mg/dL以上又は脱水あり、3)SpO2が90%以下(PaO2が60Torr以下)、4)意識障害あり、5)血圧収縮期)90mmHg以下、の5つの指標のうち該当する数で重症度の決定するものである(図1参照)。
そしてその後、起炎菌検査が行われ、検出された起炎菌に応じて治療指針が立てられる。しかしながら、培養検査による起炎菌の同定と薬剤感受性検査の結果が判明するのには数日要することから、最近では、喀痰上咽頭ぬぐい或いは尿等から肺炎球菌抗原に対する特異的抗体を用いた診断薬(「ラピラン登録商標)肺炎球菌」(大塚製薬株式会社)、「ラピラン(登録商標)肺炎球菌HS(中耳副鼻腔炎)」(大塚製薬株式会社)、「BinaxNOW(登録商標)肺炎球菌」(アリーアメディカル株式会社))を用いた迅速検査を初期に行い、早期に治療方針を立てることも行われている。

0004

また、肺炎では10%の頻度で菌血症合併がみられ、特に肺炎球菌では60%以上に達することが報告されていることから、血液中の菌を検出することが重要である。血液中の菌の検出法としては、血液培養RTPCR法、抗原検査が挙げられる。血液培養は肺炎において可能な限り実施されているが、検査結果を得るのに時間がかかること、RT−PCRと比較して検出率が20%前後と低いことから、緊急性を要する際には有効な方法とは言えない。RT−PCRは検出率が高いが、専用の器械が必要なこと、高価であることから、臨床では普及するには至っていない。抗原検査に関しては、原理的には血清中のC−多糖抗原(C−ps)等をELISA等で検出する報告はあるが(非特許文献2、3)、前処理法の必要性やELISAという迅速性に欠ける検出法であることから実用化には至っていないのが現状である。

0005

したがって、現行では臨床症状や生化学マーカーの情報のみで判断されている肺炎の重症度の判断を、起炎菌の推定を含めてより客観的に且つ迅速に行うことが可能な手段が望まれている。

先行技術

0006

日本呼吸器学会「呼吸器感染症に関するガイドライン」成人市中肺炎診療ガイドライン.日本呼吸器学会、2007.p9-12
Gillespie SH, et al. 1995, J Clin Pathol ;48 :803-806
Coonrod JD, et al. 1973, J. Lab. Clin. Med. 81: 778-786

発明が解決しようとする課題

0007

本発明は、被験者の血液を用いて、より客観的に且つ迅速に、肺炎球菌性肺炎の重症度を判定することが可能な方法を提供するものである。

課題を解決するための手段

0008

本発明者らは、初期診断時に、肺炎球菌性肺炎の重症度を簡易に且つ客観的に判定できる方法について検討したところ、患者の血液中の肺炎球菌抗原を測定し、当該情報と特定の生化学マーカ測定値生化学検査値)を組み合わせた場合に、A−DROPシステムによって重症及び超重症と判定される患者と軽症及び中等症と判定される患者を良好に区別でき、肺炎球菌性重症肺炎の判定が可能であることを見出した。また、この方法によれば、血液中の肺炎球菌抗原を測定することから、肺炎球菌性菌血症の判定も同時に可能となる。

0009

本発明は、下記1)〜4)に係るものである。
1)被験者から採取した血液中の肺炎球菌抗原の有無と、血中C反応性タンパク質濃度(CRP)、白血球数(WBC)及び血中尿素窒素濃度(BUN)から選ばれる1種以上の生化学検査値を指標とする肺炎球菌性肺炎の重症度の判定方法
2)肺炎球菌抗原が陽性で、生化学的検査値が以下の場合に、重症又は超重症と評価する、上記1)の方法。
CRP:10mg/dL以上
WBC:10,000個/mm3以下
BUN:20mg/dL以上
3)肺炎球菌抗原がC−多糖抗原、莢膜抗原及び細胞膜多糖抗原から選ばれる1種以上である上記1)又は2)の方法。
4)肺炎球菌性菌血症を併せて評価する上記1)〜3)の方法。

発明の効果

0010

本発明の方法によれば、現行では臨床症状や生化学マーカーの情報のみで判断されている肺炎の重症度、それに基づき決定される治療の場の目安(外来治療、入院治療、ICU治療)の判断を、起炎菌の推定を含めてより客観的に且つ迅速に行うことが可能となる。
これにより、早期に、適切な抗菌剤の選択が可能となり、予後の改善、医療コストの削減、耐性菌発現防止を図ることができる。
また、本発明の方法によれば、RT−PCR法と同程度の感度で血液中の肺炎球菌抗原を検出できることから、肺炎球菌性菌血症の判定も同時に可能となる。

図面の簡単な説明

0011

A−DROPシステムによる重症度分類と治療の場の関係を示す図。
血清希釈倍率ごとのライン強度(肺炎球菌抗原検出感度)を示した図及び表。
採血法ごとのライン強度(肺炎球菌抗原検出感度)を示した図。
血中肺炎球菌抗原の検出とCRPとの組み合わせによる重症度との相関を示した図。
血中肺炎球菌抗原の検出とWBCとの組み合わせによる重症度との相関を示した図。
血中肺炎球菌抗原の検出とBUNとの組み合わせによる重症度との相関を示した図。
血中肺炎球菌抗原の検出と好中球との組み合わせによる重症度との相関を示した図。
血中肺炎球菌抗原の検出とNaとの組み合わせによる重症度との相関を示した図。
血中肺炎球菌抗原の検出とCrとの組み合わせによる重症度との相関を示した図。
血中肺炎球菌抗原の検出とBNPとの組み合わせによる重症度との相関を示した図。

0012

本発明の方法が適用される被験者としては、肺炎球菌性肺炎の患者、肺炎球菌性肺炎の罹患が疑われる患者、肺炎球菌性気道感染症が疑われる患者、肺炎球菌性全身感染症が疑われる患者、肺炎球菌性の炎症が疑われる患者、さらに上記を代表とする肺炎球菌性疾患への罹患が疑われる健常者等を挙げることができる。また、ここでいう患者は、ヒトに限定されるものではなく、ヒト以外の哺乳動物も本発明の対象となる。

0013

被験者から採取した「血液」には、血液(全血)、血漿血清包含される。
肺炎球菌抗原の測定には、血清又は血漿を用いるのが好ましく、1〜10倍、好ましくは2倍希釈して用いるのが検出感度を高める点で好ましい。

0014

本発明の方法に用いられる肺炎球菌抗原としては、細胞壁抗原(C−多糖抗原(C−polysaccharide;C−ps))、莢膜抗原(Capsular polysaccharide)、細胞膜多糖抗原(F−antigen;LipoTeichoic acid/Teichoic acid)、等が挙げられ、このうちC−ps、莢膜抗原、細胞膜多糖抗原が好ましく、C−ps、莢膜抗原及び細胞膜多糖抗原を共に測定・検出するのがより好ましい。

0015

本発明の方法においては、血液中の当該肺炎球菌抗原の有無が測定されるが、測定には、定量的または非定量的な測定が包含される。非定量的な測定としては、例えば、単に肺炎球菌抗原が存在するか否かの測定、肺炎球菌抗原が一定の量以上存在するか否かの測定、肺炎球菌抗原の量を他の試料(例えば、コントロール試料等)と比較する測定等を挙げることができる。定量的な測定としては、肺炎球菌抗原の濃度の測定、肺炎球菌抗原の量の測定等が挙げられる。
本発明において、肺炎球菌抗原が陽性とは、少なくとも血中に肺炎球菌抗原が存在することを意味する。

0016

肺炎球菌抗原の測定法としては、上記の肺炎球菌抗原に対する抗体を用いる免疫学的測定法が好適に挙げられる。肺炎球菌抗原に対する抗体としては、肺炎球菌抗原に特異的に結合すればよく、抗体の由来、種類(モノクローナルポリクローナル)および形状を問わない。具体的には、マウス抗体ラット抗体ヒト抗体キメラ抗体ヒト型化抗体等の公知の抗体を用いることができる。
哺乳動物由来モノクローナル抗体は、ハイブリドーマにより産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクター形質転換した宿主に産生されるものを含む。モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、肺炎球菌抗原を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞スクリーニングすることによって作製できる。
また、当該抗体は、肺炎球菌抗原を認識する特性を失わない限り、抗体断片フラグメント)等の低分子化抗体や抗体の修飾物等であってもよい。抗体断片の具体例としては、例えば、Fab、Fab'、F(ab’)2、Fv、Diabody等を挙げることができる。

0017

肺炎球菌抗原に対する抗体の具体例としては、C−psに対する抗体として、例えば、1)Nielsenら,Antibodies against pneumococcal C-polysaccharide are not protective, Microbial Pathogenesis 14:299-305(1993);2)Gillespieら,Detection of C-polysaccharide in serum of patients with Streptococcus pneumoniae bacteremia,J Clin Pathol 48:803-806(1995);3)United States Patent: 6824997(1997);4)Eharaら,A novel method for rapid detection of Streptoeoccus pneumoniae antigen in sputum and its application in adult respiratory tract infection,Journal of Medical Microbiolog 57:820-82(2008);に記載の抗体、莢膜抗原に対する抗体として、例えば、1)Coonrodら,Detection of type-specific pneumococcal antigens by counterimmunoelectrophoresis.11.Etiologic diagnosis of pneumococcal pneumonia, J.Lab.Clin.Med.81.778-786(1973);2)Feiginら,Countercurrent immunoelectrophoresis of urine as well as ofCSFand blood for diagnosis of bacterial meningitis,The Journal of Pediatrics 89.773-775 (1976);3)Ajelloら,Commercial Latex Agglutination Tests for Detection of Haemophilus influenza Type b and Streptococcus pneumoniae Antigens in Patients with Bacteremic Pneumonia,JOURNALOF CLINICALMICROBIOLOGY, 25(8);1388-1391(1987);4)Ballaedら,Comparison of three latex agglutination kits and counterimmunoelectrophoresis for the detection of bacterial antigens in a pediatric populatio,Pediatr.Infect.Dis.J.6(7);630-634(1987);5)小林ら,肺炎球菌尿中抗原迅速検出キットの市中肺炎における有用性の検討,感染症学雑誌第76巻第12号;995-1002(2002);に記載の抗体、細胞膜多糖抗原に対する抗体として、例えばHotomiら,Evaluation of a Rapid ImmunochromatographicODK-0901 Test for Detection of Pneumococcal Antigen in Middle Ear Fluidsand Nasopharyngeal Secretions.PLoS one, 7(3); e33620(2012) に記載の抗体が挙げられる。

0018

肺炎球菌抗原に対する抗体を用いる免疫学的測定法としては、当該分野で公知の任意の免疫測定方法を使用することができる。例示的には、ラジオイムノアツセイRIA)、ELISA等のエンザイムイムノアツセイ(EIA)、ラテックス凝集法(LTIA)及びイムノクロマトグラフィーが挙げられる。検出感度の向上の点で、サンドイッチ法の使用が好ましい。また、簡便さ及び迅速さの観点では、イムノクロマトグラフィーが好ましい。イムノクロマトグラフィー法を用いる場合、ベッドサイドや患者来院中の短時間での診断が可能となる。

0019

上記免疫学的測定において使用される標識としては、当該分野で使用される任意の標識が挙げられる。例示的には、西ワサビペルオキシダーゼ(HRP)やアルカリオスファターゼ、βガラクトシダーゼ等の酵素、125I、32P、14C、35S又は3H等のラジオアイソトープRI)、FITCテトラメチルローダミンイソシアネート等の蛍光物質ケミルミネッセンス等の発光物質、及び金コロイド着色ラテックス粒子等の可視化物質が挙げられる。さらに、ビオチン一次標識後、上記標識により標識されたアビジンを用いる増感系や、ジゴキシゲニン等の低分子物質で一次標識後、上記標識により標識された抗体等の当該低分子物質に親和性を有する物質を用いる検出法も挙げられる。

0020

本発明における肺炎球菌抗原の測定には、市販の肺炎球菌検出キットである、「ラピラン肺炎球菌HS(中耳・副鼻腔炎)」(大塚製薬株式会社)、「BinaxNOW肺炎球菌」(アリーアメディカル株式会社)等を使用することもできる。

0021

本発明で使用される生化学検査値は、血中C反応性タンパク質濃度(CRP)、白血球数(WBC)及び血中尿素窒素濃度(BUN)から選ばれる1種以上である。
(1)C反応性タンパク質(C-reactive protein:CRP)
CRPは、体内炎症反応組織破壊が起きている場合に血中に現れるタンパク質で、肺炎球菌のC多糖体と結合する性質を有する。一般に、炎症マーカーとして利用されている。
CRPは、2000年に制定された旧ガイドラインにあたる「成人市中肺炎診療の基本的考え方」には肺炎の重症度判定のパラメーターとされていたが、2007年に制定された「呼吸器感染症に関するガイドライン」の検証において重症度を正確に反映しないとの報告があり、新ガイドラインでは、重症度の判定項目から削除されている(前記非特許文献1参照)。
然るに、CRPは、肺炎球菌抗原の検出(陽性)と組み合わせることにより、肺炎球菌性肺炎の重症及び超重症の判定が可能である(実施例3参照)。この場合のCRPのカットオフ値は10〜20mg/dLである。
すなわち、本発明において、肺炎球菌性肺炎の重症及び超重症の指標としてのCRPは10mg/dL以上、好ましくは20mg/dLである。

0022

本発明において、CRPの測定は特に限定されないが、例えば、ラテックス免疫比濁法が挙げられる。

0023

(2)白血球数(WBC)
血液中の白血球数(WBC)は、一般に細菌性感染時には上昇するが、重症性肺炎では局在化することで血中濃度が下がることが知られている。WBCはCRPと同様、過去には肺炎の重症度判定のパラメーターとされていたが、2007年に制定された新ガイドラインでは、重症度の判定項目から削除されている(前記非特許文献1参照)。
然るに、WBCについても、肺炎球菌抗原の検出(陽性)と組み合わせることにより、肺炎球菌性肺炎の重症及び超重症の判定が可能である(実施例3参照)。この場合のWBCのカットオフ値は10,000個/mm3〜6,000個/mm3である。
すなわち、本発明において、肺炎球菌性肺炎の重症及び超重症の指標としてのWBCは健常者の分布範囲内もしくは、それ以下の場合、例えば10,000個/mm3以下、好ましくは6000個/mm3以下である。

0024

本発明において、WBCの測定は特に限定されないが、例えば、血球計算が可能な自動測定器が挙げられる。

0025

(3)血中尿素窒素濃度(BUN)
BUNは、血中の尿素由来の窒素量を表すものであり、腎機能マーカーとして利用されている。
BUNは、脱水と異化亢進が大きい重症肺炎の患者で高値になることが知られている。肺炎球菌抗原の検出(陽性)と組み合わせることにより、より精度よく、肺炎球菌性肺炎の重症及び超重症の判定が可能である(実施例3参照)。この場合のBUNのカットオフ値は凡そ20mg/dLが挙げられる。
すなわち、本発明において、肺炎球菌性肺炎の重症及び超重症の指標としてのBUNは例えば20mg/dL以上が挙げられる。

0026

本発明において、BUNの測定は特に限定されないが、例えば、ウレアーゼGLDH法、ウレアーゼICDH法が挙げられる。この中でもウレアーゼGLDH法が好適に用いられる。

0027

また、本発明の方法によれば、血液中の肺炎球菌抗原を測定することから、肺炎球菌性菌血症の判定も同時に可能となる。ここで、「肺炎球菌性菌血症」とは、血液中に肺炎球菌が存在することである。すなわち、本発明の方法において、血液中肺炎球菌抗原が陽性であれば、肺炎球菌性菌血症であると推測することができる。従来肺炎球菌性菌血症の判定は、血液培養での肺炎球菌の検出で行われていたが、血液培養は肺炎球菌に限らず微生物の検出率が低いと認識されており、近年はRT−PCRでの検出が用いられるようになってきている(Restiら,Community-Acquired Bacteremic Pneumococcal Pneumonia in Children: Diagnosis and Serotypingby Real-Time Polymerase Chain Reaction Using Blood Samples,Clinical Infectious Diseases.51(9):1042-1049(2010))。本発明の方法を用いれば、RT−PCRを使用せずに簡易に肺炎球菌性菌血症の推測が可能となる。

0028

<材料及び方法>
インフォームドコンセントを得て、患者から採取した全血を、一般的な遠心分離法または沈降法により血清または血漿に分離した後、−80℃で保存した。
(1)検体の調製
血清は、血清分離入り採血管に血液を採取し、遠心後に血清画分を得た。血漿は、EDTA・2Naまたはヘパリン採血管に血液を採取し、遠心もしくは静置後に上清を採取することで得た。いずれの検体も−80℃で保存した。
(2)肺炎球菌抗原測定のための血清/血漿の至適希釈率の評価
血清/血漿の至適希釈率の評価には「ラピラン肺炎球菌HS(中耳・副鼻腔炎)」(大塚製薬株式会社)を用いた。キット付属検体抽出試薬を用い血清/血漿を段階希釈し、最も強いテストラインの強度を得られる希釈率を求めた。なお、測定後のラインは市販デジタルカメラ撮影後、デンシトメーター(ATTO社)を用いてその強度を評価した。
(3)肺炎球菌抗原測定
以下に示す市販のキットを使用して、血中の肺炎球菌抗原の有無を測定した。
1)ラピラン肺炎球菌HS(中耳・副鼻腔炎)(大塚製薬株式会社)
(2)で至適希釈率と判断された2倍希釈血清/血漿をキットに添付のサンプルカップに150μL分注し、そこにテストスティック試薬本体)のサンプルアプライ部を浸し、その後は添付文書に従い測定した。
2)「BinaxNOWR肺炎球菌」(アリーアメディカル株式会社)
1)にて調製した2倍希釈血清/血漿にキット付属綿棒を浸し、その後は添付文書に従い評価した。
(4)その他の測定項目
1)生化学マーカー
血清を検体として、CRP、WBC、好中球、BUN、Na、Cr、BNPを日立自動分析装置LABOSPECT008で測定した。
2)培養
起炎菌の推定のために、血液培養および喀痰培養を実施した。各検体の培養はClinical and Laboratory StandardsInstitute(CLSI、臨床・検査標準協会)の規格準拠し、行われた。
3)PCR
既報(Ehara N, et al. 2008, Journal of Medical Microbiology 57: 820-826)の方法に準じて、肺炎球菌のPspA遺伝子を対象に血清中の肺炎球菌PspA DNAの定量を行なった。なお、当該施設における検出感度は200copies/μgDNAである。

0029

実施例1
(1)重症度判定
成人市中肺炎診療ガイドライン(前記非特許文献1)記載のA−DROPシステムを用いて重症度判定を行った下記の症例に対して、生化学マーカーおよび血液中肺炎球菌抗原の評価を実施した。重症度判定ごとの症例数を表1に示した。

0030

0031

(2)至適検体濃度調整
「ラピラン肺炎球菌HS(中耳・副鼻腔炎)」を指標として、キットに添付されている検体抽出試薬で、異なる5種の血清サンプルを、血清原液希釈倍率1倍),2倍,6倍,18倍に希釈後同キットで測定し、ライン強度を比較検討した。希釈倍率ごとのライン強度を図2に示す。

0032

図2より、何れの血清検体においても、2倍希釈でライン強度が最高値を示した。なお、血清原液では粘性が高く、流速が遅い傾向が見られており、迅速性、ライン強度共に2倍希釈(原液:検体抽出液=1:1)が至適検体濃度と考えられた。

0033

(3)採血法間差(検体種)
1人の患者から採取した血液から、血清1種類、図3に示す血漿4種類を調製し、「ラピラン肺炎球菌HS(中耳・副鼻腔炎)」を用いてラインの強度を評価した。結果を図3に併せて示す。
何れの採血法(血清、EDTA−2Na血漿、ヘパリン血漿)、何れの分離法遠心法静置分離法)においてもラインの強度は同等であり、採血法、分離法の影響は受けないと考えられた。よって以後の評価には遠心分離にて調整した血清を用いた。

0034

(4)各患者における血中肺炎球菌抗原の検出感度及び特異度
各患者における血中肺炎球菌抗原の検出感度及び特異度を、喀痰培養検査の結果を基準として算出した。感度とは喀痰培養陽性例において、各測定法でも陽性と判定できた例数の割合を示す。また、特異度とは喀痰培養陰性例において、各測定法でも陰性と判定できた例数の割合を示す(表2)

0035

0036

「ラピラン肺炎球菌HS」及び「BinaxNOW肺炎球菌」は、共に肺炎の重症度が上がるに連れて、感度が上昇する傾向が見られ、その検出率は高感度な肺炎球菌検出法として知られる「RT−PCR」と同等であった。

0037

実施例2重症、超重症例での解析結果
さらに、重症、超重症と判定された肺炎症例を対象に、血液中肺炎球菌抗原を「ラピラン肺炎球菌HS」、「BinaxNOW肺炎球菌」を用いて測定し、血液PCRの結果と比較検討した。その結果、喀痰培養で肺炎球菌が検出された重症、超重症例の5例は全例が両キットで陽性を示した。また、PCRでは1例を除く4例が陽性であった。

0038

0039

実施例3臨床経過
一人の患者の臨床経過を評価した。検体採取初日時点ではPCR、「ラピラン肺炎球菌HS」、「BinaxNOW肺炎球菌」の何れも陰性であったが、2日後には何れも陽性に転じており、PCR、「ラピラン肺炎球菌HS」、「BinaxNOW肺炎球菌」の検出効率はほぼ同等であると判断された(表4)。

0040

0041

実施例3生化学測定値との組み合わせによる重症度との相関
(1)肺炎症例を重症・超重症群と、その他+中等症以下(軽症含む)群に分類し、さらに各群を「ラピラン肺炎球菌HS」(図中HSと表示)の陽性、陰性例に細分化した。そのときの生化学マーカー(CRP、WBC、BUN)の測定値を縦軸プロットした。

0042

1)CRP(図4
CRPと「ラピラン肺炎球菌HS」との組み合わせでは、肺炎球菌PCR陽性群を抽出可能であった。この時のCRPのカットオフ値としては20mg/dLが最適と考えられた。

0043

2)WBC(図5
WBCと「ラピラン肺炎球菌HS」との組み合わせでは、PCR陽性例を効率的に検出可能であった。この時のWBCのカットオフ値としては、成人の健常分布幅の上限である10000個/mm3を採用できると考えられる。

0044

3)BUN(図6
BUNと「ラピラン肺炎球菌HS」との組み合わせでは、PCR陽性例を効率的に検出可能であった。この時のBUNのカットオフ値としては、20mg/dLを採用できると考えられる。

実施例

0045

比較例
肺炎症例を重症・超重症群と、その他+中等症以下(軽症含む)群に分類し、さらに各群を「ラピラン肺炎球菌HS」(図中HSと表示)の陽性、陰性例に細分化した。そのときの生化学マーカー(好中球、Na、Cr、BNP)の測定値を縦軸にプロットした。
結果を図7〜10に示す。好中球、Naを用いた場合、各群間では有意な差が得られなかった。また、CrやBNPでは重症例のラピラン肺炎球菌HS陽性例において高値例が観察されるものの一部症例に限定されており臨床的意義は見られなかった。

0046

生化学マーカー単独での診断では、肺炎を疑われる症例における重症度の予想はある程度は可能となるが、肺炎球菌に限らず他の感染症との鑑別は不可能である。成人市中肺炎の原因微生物の約50−80%が細菌性であり、そのうち12−27%が肺炎球菌性肺炎であると報告されているが、肺炎球菌性では特に重症化しやすく他の起炎微生物との鑑別が臨床上重要となる。さらに、各種起炎細菌の耐性化を防御する上で、起炎細菌を迅速に断定し至適な抗菌剤を選択することは治療期間の短期化にとっても重要と考えられる。肺炎球菌ではペニシリン系抗菌剤を第一選択とすることがガイドライン上求められる。したがって生化学マーカーと血液中肺炎球菌抗原検出系との組み合わせでは、生化学マーカー単独では判断できない重症性の肺炎球菌性肺炎を迅速に決定可能であり、また肺炎球菌抗原検出系単独では判定できない肺炎重症度を合わせて判断可能となるため最適な抗菌剤の選択及び入院治療の判断に意義を有する。

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