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課題・解決手段
概要
背景
近年の電子デバイスでは、製造プロセス微細化により、電子デバイス動作速度の高速化が図られてきた。その結果、瞬時動作電流増大が要求されるため、電子デバイスの近傍にスイッチング電源を配置して瞬時電流供給を可能とする方式が採用されている。
超音波診断装置でも、CPU、GPU、FPGAなどの演算デバイスの性能向上に伴い、超音波診断装置の小型化が進んでいる。このように、超音波診断装置の小型化が進むと、超音波診断装置内部デバイスの動作周波数高速化が進み、EMIノイズ(電磁放射電波障害ノイズ)の増大や高周波数化が問題となっている。
手術室や病室などの患者周辺には、超音波診断装置の他、患者に取り付けられたペースメーカーや脳波計が存在する場合が多く、超音波診断装置が放出したEMIノイズが他機器へ混入し、他機器の誤動作を起こすという問題がある。
そこで、超音波診断装置のパルス繰り返し周波数に応じて、電源回路のスイッチング周波数を変化させる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
概要
本発明の超音波診断装置は、参照波周波数Fref、スイッチング周波数Fsw、及びサンプリング周波数Fadcの少なくとも1つを制御することにより、下記の数式を満たす制御を行う制御部を備え参照波周波数Frefの近傍に現れる除去成分(例えば、クラッタ成分)とともに、ノイズを除去する。 Fref=n*Fsw (n−1)*Fsw≦Fref−(1/2)Fadc Fre+(1/2)Fadc≦(n+1)*Fsw N :正の整数Fref :参照波周波数 Fsw :スイッチング周波数 Fadc :サンプリング周波数
目的
効果
実績
- 技術文献被引用数
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この技術が所属する分野
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請求項1
スイッチング周波数を用いて、スイッチング電源部のFETをオン/オフすることにより、電圧を調整する電源部と、参照波周波数を用いて、超音波の受信信号の検波を行う検波部と、サンプリング周波数を用いて、前記受信信号のアナログ信号をサンプリングし、前記受信信号を前記アナログ信号からデジタル信号へ変換するA/D変換部と、前記参照波周波数、前記スイッチング周波数、及び前記サンプリング周波数の少なくとも1つを制御することにより、下記の数式を満たす制御を行う制御部とを備えることを特徴とする超音波診断装置。Fref = n * Fsw(n−1)*Fsw ≦ Fref − (1/2)FadcFref + (1/2)Fadc ≦ (n+1)*Fswn:正の整数Fref:参照波周波数Fsw:スイッチング周波数Fadc:サンプリング周波数
請求項2
スイッチング周波数を用いて、スイッチング電源部のFETをオン/オフすることにより、電圧を調整する電源部と、サンプリング周波数を用いて、超音波の受信信号のアナログ信号をサンプリングし、前記受信信号を前記アナログ信号からデジタル信号へ変換するA/D変換部と、前記スイッチング周波数及び前記サンプリング周波数の少なくとも1つを制御することにより、下記の数式を満たす制御を行う制御部とを備えることを特徴とする超音波診断装置。Fsw = n*(1/2)Fadcn:正の整数Fsw:スイッチング周波数Fadc:サンプリング周波数
請求項3
スイッチング周波数を用いて、スイッチング電源部のFETをオン/オフすることにより、電圧を調整する電源部と、参照波周波数を用いて、超音波の受信信号の検波を行う検波部と、サンプリング周波数を用いて、前記受信信号のアナログ信号をサンプリングし、前記受信信号を前記アナログ信号からデジタル信号へ変換するA/D変換部と、前記参照波周波数、前記スイッチング周波数、及び前記サンプリング周波数の少なくとも1つを制御することにより、下記の数式を満たす制御を行う制御部とを備えることを特徴とする超音波診断装置。n*Fsw ≦ Fref − (1/2)FadcFref + (1/2)Fadc ≦ (n+1)*Fswn:正の整数Fref:参照波周波数Fsw:スイッチング周波数Fadc:サンプリング周波数
請求項4
スイッチング周波数を用いて、スイッチング電源部のFETをオン/オフすることにより、電圧を調整する電源部と、分析周波数を用いて、超音波の受信信号を周波数分析する周波数分析部と、前記スイッチング周波数及び前記分析周波数の少なくとも1つを制御することにより、下記の数式を満たす制御を行う制御部とを備えることを特徴とする超音波診断装置。Fsw = n*(1/2)Fanalyzen:正の整数Fsw:スイッチング周波数Fanalyze:分析周波数
請求項5
請求項6
前記フィルタ部は、前記受信信号のクラッタ成分を除去するフィルタ部と共通であることを特徴とする請求項5に記載の超音波診断装置。
請求項7
前記スイッチング周波数の高調波成分を除去するフィルタ部を備え、前記フィルタ部は、前記A/D変換部の前段に設けられることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の超音波診断装置。
請求項8
前記スイッチング周波数の高調波成分を除去するフィルタ部を備え、前記フィルタ部は、前記分析周波数の1/2以上の周波数成分を除去することを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
請求項9
請求項10
スイッチング周波数を用いて、スイッチング電源部のFETをオン/オフすることにより、電圧を調整する電源部と、参照波周波数を用いて、超音波の受信信号の検波を行う検波部と、サンプリング周波数を用いて、前記受信信号のアナログ信号をサンプリングし、前記受信信号を前記アナログ信号からデジタル信号へ変換するA/D変換部と、前記スイッチング周波数の第1の高調波成分を前記参照波周波数に一致させるとともに、ドプラ信号の信号処理領域の範囲で、前記スイッチング周波数の前記第1の高調波成分と異なる高調波成分が存在しないように、前記参照波周波数と前記スイッチング周波数と前記サンプリング周波数の少なくとも1つを制御する制御部とを備えることを特徴とする超音波診断装置。
請求項11
スイッチング周波数を用いて、スイッチング電源部のFETをオン/オフすることにより、電圧を調整する電源部と、分析周波数を用いて、超音波の受信信号を周波数分析する周波数分析部と、前記周波数分析部のリサンプリング結果にスイッチングノイズが重畳しないように、前記スイッチング周波数と前記分析周波数の少なくとも1つを制御する制御部とを備えることを特徴とする超音波診断装置。
請求項12
スイッチング周波数を用いて、スイッチング電源部のFETをオン/オフすることにより、電圧を調整し、参照波周波数を用いて、超音波の受信信号の検波を行い、サンプリング周波数を用いて、前記受信信号のアナログ信号をサンプリングし、前記受信信号を前記アナログ信号からデジタル信号へ変換し、前記参照波周波数、前記スイッチング周波数、及び前記サンプリング周波数の少なくとも1つを制御することにより、下記の数式を満たす制御を行うことを特徴とするノイズ低減方法。Fref = n * Fsw(n−1)*Fsw ≦ Fref − (1/2)FadcFref + (1/2)Fadc ≦ (n+1)*Fswn:正の整数Fref:参照波周波数Fsw:スイッチング周波数Fadc:サンプリング周波数
技術分野
背景技術
0002
近年の電子デバイスでは、製造プロセス微細化により、電子デバイス動作速度の高速化が図られてきた。その結果、瞬時動作電流増大が要求されるため、電子デバイスの近傍にスイッチング電源を配置して瞬時電流供給を可能とする方式が採用されている。
0003
超音波診断装置でも、CPU、GPU、FPGAなどの演算デバイスの性能向上に伴い、超音波診断装置の小型化が進んでいる。このように、超音波診断装置の小型化が進むと、超音波診断装置内部デバイスの動作周波数高速化が進み、EMIノイズ(電磁放射電波障害ノイズ)の増大や高周波数化が問題となっている。
0004
手術室や病室などの患者周辺には、超音波診断装置の他、患者に取り付けられたペースメーカーや脳波計が存在する場合が多く、超音波診断装置が放出したEMIノイズが他機器へ混入し、他機器の誤動作を起こすという問題がある。
0005
そこで、超音波診断装置のパルス繰り返し周波数に応じて、電源回路のスイッチング周波数を変化させる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
先行技術
0006
特開平5−130992号公報
発明が解決しようとする課題
0007
しかしながら、特許文献1の発明では、電源回路が発生する低周波ノイズやEMIノイズに関しては十分考慮されていない。また、電源スイッチング周波数がPRF(PulseRepetitionFrequency)に依存する場合、その高調波周波数成分により、EMIノイズの原因となる特定周波数へのエネルギー集中が生じてしまう。
0008
そこで、本発明は、電源回路に起因するノイズを低減し、パルスドプラ法(PWD)又は連続波ドプラ法(CWD)によるドプラ周波数分析の結果に電源ノイズが重畳しないような超音波診断装置を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0009
本発明の超音波診断装置は、スイッチング周波数を用いて、スイッチング電源部をオン/オフすることにより、電圧を調整する電源部と、参照波周波数を用いて、超音波の受信信号の検波を行う検波部と、サンプリング周波数を用いて、前記受信信号のアナログ信号をサンプリングし、前記受信信号を前記アナログ信号からデジタル信号へ変換するA/D変換部と、前記参照波周波数、前記スイッチング周波数、及び前記サンプリング周波数の少なくとも1つを制御することにより、下記の数式を満たす制御を行う制御部とを備える。
0010
Fref=n*Fsw
(n−1)*Fsw≦Fref−(1/2)Fadc
Fref+(1/2)Fadc≦(n+1)*Fsw
N :正の整数
Fref:参照波周波数
Fsw :スイッチング周波数
Fadc:サンプリング周波数
この構成によれば、高調波成分と参照波周波数Frefとを一致させ、信号処理領域の範囲内で、その他の高調波成分が存在しないようにすることができ、参照波周波数Frefの近傍に現れる除去成分(例えば、クラッタ成分)とともに、ノイズを除去することができる。
0011
本発明の超音波診断装置は、スイッチング周波数を用いて、スイッチング電源部をオン/オフすることにより、電圧を調整する電源部と、サンプリング周波数を用いて、超音波の受信信号のアナログ信号をサンプリングし、前記受信信号を前記アナログ信号からデジタル信号へ変換するA/D変換部と、前記スイッチング周波数及び前記サンプリング周波数の少なくとも1つを制御することにより、下記の数式を満たす制御を行う制御部とを備える。
0012
Fsw=n*(1/2)Fadc
N :正の整数
Fsw :スイッチング周波数
Fadc:サンプリング周波数
この構成によれば、高調波成分とサンプリング周波数Fadcとを一致させて、高調波成分を除去成分(例えば、クラッタ成分)に重畳させることができ、除去成分とともに、ノイズを除去することができる。
0013
本発明の超音波診断装置は、スイッチング周波数を用いて、スイッチング電源部をオン/オフすることにより、電圧を調整する電源部と、参照波周波数を用いて、超音波の受信信号の検波を行う検波部と、サンプリング周波数を用いて、前記受信信号のアナログ信号をサンプリングし、前記受信信号を前記アナログ信号からデジタル信号へ変換するA/D変換部と、前記参照波周波数、前記スイッチング周波数、及び前記サンプリング周波数の少なくとも1つを制御することにより、下記の数式を満たす制御を行う制御部とを備える。
0014
n*Fsw≦Fref−(1/2)Fadc
Fref+(1/2)Fadc≦(n+1)*Fsw
N :正の整数
Fref:参照波周波数
Fsw :スイッチング周波数
Fadc:サンプリング周波数
この構成によれば、ドプラ信号処理領域の範囲内で、高調波成分が存在しないようにすることができ、参照波周波数Frefの近傍に現れる除去成分(例えば、クラッタ成分)とともに、ノイズを除去することができる。
0015
本発明の超音波診断装置は、スイッチング周波数を用いて、スイッチング電源部をオン/オフすることにより、電圧を調整する電源部と、分析周波数を用いて、超音波の受信信号を周波数分析する周波数分析部と、前記スイッチング周波数及び前記分析周波数の少なくとも1つを制御することにより、下記の数式を満たす制御を行う制御部とを備える。
0016
Fsw=n*(1/2)Fanalyze
N :正の整数
Fsw :スイッチング周波数
Fanalyze:分析周波数
この構成によれば、高調波成分と分析周波数Fanalyzeとを一致させて、高調波成分を除去成分(例えば、クラッタ成分)に重畳させることができ、除去成分とともに、ノイズを除去することができる。
0017
本発明の超音波診断装置は、前記スイッチング周波数の高調波成分を除去するフィルタ部を備える。
0018
この構成によれば、除去成分とともに、ノイズを除去することができ、その他の高調波成分も除去することができる。
0019
本発明の超音波診断装置では、前記フィルタ部は、前記受信信号のクラッタ成分を除去するフィルタ部と共通である。
0021
本発明の超音波診断装置は、前記スイッチング周波数の高調波成分を除去するフィルタ部を備え、前記フィルタ部は、前記A/D変換部の前段に設けられる。
0022
この構成によれば、アナログCWD処理又はアナログPWD処理に対応することができる。
0023
本発明の超音波診断装置は、前記スイッチング周波数の高調波成分を除去するフィルタ部を備え、前記フィルタ部は、前記A/D変換部の後段に設けられ、前記分析周波数の1/2以上の周波数成分を除去する。
0024
この構成によれば、HPRF(High Pulse Repetition Frequency)モードに対応することができる。
0026
この構成によれば、ドプラ信号に重畳するノイズを低減することができる。
0027
本発明のノイズ低減方法は、スイッチング周波数を用いて、スイッチング電源部のFETをオン/オフすることにより、電圧を調整し、参照波周波数を用いて、超音波の受信信号の検波を行い、サンプリング周波数を用いて、前記受信信号のアナログ信号をサンプリングし、前記受信信号を前記アナログ信号からデジタル信号へ変換し、前記参照波周波数、前記スイッチング周波数、及び前記サンプリング周波数の少なくとも1つを制御することにより、下記の数式を満たす制御を行う。
0028
Fref=n*Fsw
(n−1)*Fsw≦Fref−(1/2)Fadc
Fref+(1/2)Fadc≦(n+1)*Fsw
N :正の整数
Fref:参照波周波数
Fsw :スイッチング周波数
Fadc:サンプリング周波数
この構成によれば、高調波成分と参照波周波数Frefとを一致させ、信号処理領域の範囲内で、その他の高調波成分が存在しないようにすることができ、参照波周波数Frefの近傍に現れる除去成分(例えば、クラッタ成分)とともに、ノイズを除去することができる。
発明の効果
0029
本発明は、電源回路に起因するノイズを低減し、ドプラ周波数分析の結果に電源ノイズが重畳しないという効果を有する超音波診断装置を提供することができるものである。
図面の簡単な説明
0030
本発明の実施の形態に係る超音波診断装置の一例を示したブロック図
スイッチング電源回路の一例を示した図
アナログCWD処理又はアナログPWD処理を行う回路の一例を示したブロック図
(a)受信信号の周波数成分を示した図、(b)スイッチング周波数Fswが100KHzである場合の高調波成分分布を示した図、(c)スイッチング周波数Fswが150KHzである場合の高調波成分分布を示した図
スイッチング周波数Fswによって、直交検波後のドプラ成分とスイッチングノイズが重畳するか否かを示した図
フィルタ部の通過帯域と周波数分析部の周波数分析範囲を示した図
スイッチング周波数Fswの高調波成分とそれに付随する低周波成分が除去された後の高調波成分分布を示した図
(a)スイッチング周波数Fswの高調波成分が信号処理領域の範囲内に存在しないことを示した図、(b)スイッチング周波数Fswの高調波成分とそれに付随する低周波成分が除去されることを示した図
HPRFモードにおけるアナログCWD処理又はアナログPWD処理を行う回路のブロック図
(a)受信信号の周波数成分を示した図、(b)分析周波数Fanalyze毎にリサンプルされた結果を示した図
(a)リサンプリング結果にスイッチングノイズが重畳することを示した図、(b)リサンプリング結果にスイッチングノイズが重畳しないことを示した図
スイッチング時刻に相当する位置に、同心円ノイズが出現することを示した図
実施例
0031
以下、本発明の実施の形態の超音波診断装置について、図面を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る超音波診断装置の一例を示すブロック図である。
0032
図1に示すように、超音波診断装置1は、超音波探触子3を介して被検体2内に超音波を送受信し、受信によって得られたエコー信号を用いて、被検体2の診断部位の2次元超音波画像、3次元超音波画像、及び各種ドプラ画像などを構成して、表示部6にこれらの画像を表示させる。
0033
超音波診断装置1は、超音波探触子3と、超音波送受信部4と、超音波画像形成部5と、表示部6と、制御部7と、コントロールパネル8と、電源部9と、クロック回路部10とを備える。超音波探触子3は、被検体2に超音波を送信し、目的物で反射したエコーを受信する。
0034
超音波探触子3は、複数の振動子素子をアレイ化して超音波探触子3の長軸方向に1〜mチャネル配列された超音波振動部を含み、超音波探触子3は、超音波振動部から被検体2へ超音波を照射する。超音波探触子3は、短冊型振動子を備えるリニアアレイ探触子であってもよく、2次元アレイ探触子であってもよい。
0035
超音波送信回路4aは、制御部7の制御に従って、超音波送信信号を生成する。超音波受信回路4bは、超音波探触子3の超音波振動部からの受信信号(例えば、繰り返して送信された超音波パルスが目的物で反射したドプラ信号)を受信し、制御部7の整相遅延制御により、受信信号の整相処理を行う。
0036
超音波画像形成部5は、受信信号から、2次元超音波画像、3次元超音波画像、及び各種ドプラ画像を形成する。表示部6は、超音波画像形成部5で形成された超音波画像を表示する。制御部7は、超音波診断装置1の各要素を制御する。
0037
コントロールパネル8は、操作者の操作により制御部7に指示を与える。クロック回路部10は、クロック分周回路10aを備える。クロック分周回路10aは、制御部7の制御に従って、A/D変換回路(A/D変換部)4cのサンプルクロックやスイッチング電源回路(スイッチング電源部)9aのスイッチング信号を生成する。電源部9は、超音波診断装置1に対し、動作するための電力を供給する。電源部9は、電圧を中間電位からデバイスに適した電位電圧へ効率よく昇降圧させるスイッチング電源回路(スイッチング電源部)9aを含む。つまり、電源部9は、スイッチング周波数を用いて、スイッチング電源回路9aのFETをOn/Off(オン/オフ)することにより、電圧を調整する。
0038
図2は、スイッチング電源回路9aの一例として、降圧型スイッチング電源回路を示したブロック図である。スイッチング電源回路9aは、スイッチング電源コントローラ2-1により、FET1(ハイサイドFET)及びFET2(ローサイドFET)をOn/Off(オン/オフ)させることで、電圧を中間電位からデバイスに適した電位電圧へ効率よく降圧させる。
0039
超音波送受信部4は、超音波送信回路4a、超音波受信回路4b、A/D変換回路4c、及び整相回路4dを備える。超音波送信回路4aは、パルス状の電気信号を発生し、被検体2に送信する超音波信号を発生する。超音波受信回路4bは、超音波探触子3で受信したエコー信号を受信する。A/D変換回路4cは、超音波受信回路4bで受信した受信信号をデジタル信号に変換する。A/D変換回路4cは、サンプリング周波数Fadcを用いて、超音波の受信信号のアナログ信号をサンプリングし、受信信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換する。整相回路4dは、受信信号の整相処理を行う。また、超音波送受信部4は、超音波受信回路4bで受信したエコー信号を直交検波して複素信号に変換する複素信号変換部を含む(図示せず)。
0040
超音波画像形成部5は、超音波送受信部4の複素信号変換部により変換された複素信号を用いて、超音波断層像を形成する。超音波画像形成部5は、超音波画像情報生成部5a、デジタルスキャンコンバータ部(DSC部)5b、グラフィックデータ生成部5c、合成記憶部5d、及びインターフェイス5eを備える。超音波画像情報生成部5aは、複素信号を用いて検査対象(目的物を含む)の超音波画像情報を生成する。DSC部5bは、生成された超音波画像情報をテレビ表示画像パターンに走査変換して、超音波画像データを生成する。DSC部5bは、超音波受信回路4bの整相処理信号を用いて、超音波画像を表示部6に表示させる。例えば、DSC部5bは、超音波画像であるBモード画像、Mモード画像、ドプラ画像、及び血流画像などを構成し、表示部6に表示させる。
0041
グラフィックデータ生成部5cは、DSC部5bにより走査変換されて得られた超音波画像データに基づいて、超音波画像に付帯するためのスケールやマークや文字などのグラフィックデータを生成する。合成記憶部5dは、DSC部5bにより生成された超音波画像データとグラフィックデータ生成部5cにより生成されたグラフィックデータとを合成して記憶する。合成記憶部5dはハードディスクや一時記憶メモリRAMなどを含む。インターフェイス5eは、制御部7の制御命令に基づいて、超音波画像情報生成部5a、DSC部5b、グラフィックデータ生成部5c、及び合成記憶部5dの各種処理に必要な初期値や制御パラメータなどを読み出して、超音波画像情報生成部5a、DSC部5b、グラフィックデータ生成部5c、及び合成記憶部5dに設定する。
0042
表示部6は、超音波画像形成部5で形成された画像を、超音波画像として表示する。表示部6は、例えばCRTモニタや液晶モニタなどを含む。制御部7は、コントロールパネル8からの指示に従って、超音波診断装置1の各構成要素の動作を制御し、ユーザインターフェイス回路(図示せず)とのインターフェイスを有する制御用コンピュータシステムを含む。制御部7は、ユーザインターフェイス回路を制御したり、ユーザインターフェイス回路からの情報に基づいて、超音波送受信部4や超音波画像形成部5などを制御したりする。また、制御部7は、超音波画像形成部5で画像化した情報を表示部6の表示制御部(図示せず)に伝送するための制御を行う。
0043
本実施の形態の超音波診断装置1は、電源部9により生じるEMIノイズやスイッチング電源回路9aにより生じる超音波画像ノイズを低減する。
0044
近年、IC製造技術の進歩に伴い、CPU、GPU、FPGA、及びASICなどのデジタルデバイスの高性能化が図られてきた。具体的には、ICのプロセスが微細化し、その結果、IC内の動作速度が上昇し、IC電源電圧が低下し、デバイス供給電源の瞬時電流が増加した。このような状況下、デバイスの高速動作や瞬時電流変化に対応するために、電源部9がデバイスの近傍に設けられ、中間電位からデバイスに適した電位電圧へ効率よく昇降圧させるスイッチング電源回路9aを用いたPointofLoad(POL)電源供給方式が用いられるようになってきた。
0045
この方式は、電力変換効率が高いものの、スイッチング周波数Fswに応じた高調波がEMIノイズとして放射し、周辺機器への障害となったり、アナログ信号への廻り込みにより、超音波画像ノイズとなったりする弊害があることが知られている。本実施の形態の超音波診断装置1は、これらのノイズを低減して、超音波診断装置1に適した電源回路方式である。
0046
図3は、アナログCWD処理又はアナログPWD処理を行う回路のブロック図である。超音波受信部4の受信信号増幅回路4-1は、受信信号100を増幅する。ミキシング回路(検波部)4-2は、ドプラ変調信号を抽出するために、復調信号生成器4-8から直交検波用の参照波信号(参照波周波数Fref)が入力され、送信周波数に応じた参照波信号を用いて、ドプラデータサンプル位置に応じた位相により受信信号101を直交検波する。
0047
つまり、ミキシング回路(検波部)4-2は、参照波周波数Frefを用いて、超音波の受信信号の検波を行う。チャネル加算回路4-3は、直交検波された受信信号102を加算処理する。ウォールフィルタ(フィルタ部)4-4は、アナログハイパスフィルタ(AHPF)であり、生体の体動に起因する低周波数成分を除去して血流成分信号などを抽出するために、加算処理された受信信号103にフィルタリング処理を行う。アナログアンチエリアシングフィルタ(フィルタ部)4-5は、後段のCW/PW-ADC(A/D変換部)4-6にてエリアシングが起こらないよう、受信信号104のナイキスト周波数以下の信号を通過させる。
0048
CW/PW-ADC(A/D変換部)4-6は、アナログ信号帯域処理を行ったドプラ信号(受信信号105)をCW/PW-ADC変換信号(AD変換クロック)によるサンプリング周波数Fadcでサンプリング処理し、ホールド時間にデジタル信号へ変換する。フィルタリング処理されたアナログドプラ信号には精度よくデジタル信号に変換することが要求され、約16ビット以上のADCが要求されている。このような高精度のADCにおいては、約100KHzから1MHz程度でデジタル信号に変換する方式が、超音波診断装置で用いられている。
0049
デジタル信号に変換されたドプラ信号は、超音波画像情報生成部5aに送信される。超音波画像情報生成部5aのドプラ周波数分析回路(周波数分析部)4-7は、FFTなどの周波数分析方法により周波数分析される。周波数分析されたドプラ信号は、DSC部5bを介して、表示部6に表示される。
0050
次に、図4〜7を用いて、ノイズが低減される過程について説明する。図4は、連続波ドプラ法(CWD)モード又はパルスドプラ法(PWD)モードにおけるドプラ信号の周波数分析の結果を示す図である。縦軸は信号強度であり、横軸はドプラ信号処理に関する周波数である。ここで、CW/PW-ADC4-6のサンプリング周波数Fadcを、CWDモードでは連続300KHzとし、PWDモードでは超音波送信繰り返しに同期して300KHzとする。
0051
図4(a)は、受信信号の周波数成分を示した図である。図4(a)に示すように、受信信号の周波数成分として、クラッタ成分とドプラ成分(例えば、血流ドプラ成分)が、送受信信号中心周波数(参照波周波数Fref)を中心とするドプラ信号処理領域A“Fref−(1/2)Fadc≦A≦Fref+(1/2)Fadc”に現れる。クラッタ成分は、呼吸時などにおける臓器の動きに起因する生体組織運動成分であり、信号強度が比較的弱い血流ドプラ信号の検出を妨げるため、ウォールフィルタ(フィルタ部)4-4により除去される。
0052
図4(b)は、スイッチング電源回路9aのスイッチング周波数Fswが100KHzである場合の高調波成分分布を示した図である。
0053
図4(c)は、スイッチング電源回路9aのスイッチング周波数Fswが150KHzである場合の高調波成分分布を示した図である。図4(b)に示すように、スイッチング電源回路9aのスイッチング周波数Fswが100KHzである場合、スイッチングノイズが、スイッチング周波数Fsw(100KHz)の正の整数倍(100KHz、200KHz、300KHz・・・・・)に高調波ノイズとして出現する。
0054
一方、図4(c)に示すように、スイッチング電源回路9aのスイッチング周波数Fswが150KHzである場合、スイッチングノイズが、スイッチング周波数Fsw(150KHz)の正の整数倍(150KHz、300KHz、450KHz・・・・・)に高調波ノイズとして出現する。また、スイッチング周波数Fswの正の整数倍の近傍に、スペクトラムの拡がりが生じる。これは、超音波診断装置1の電源負荷状態が、超音波送信位置、演算処理内容、演算処理状態、表示状態、及び装置操作状態に応じて、時々刻々と変化するため、スイッチング電源回路9aのFET1及びFET2のOn/Offデューティー比が時々刻々と変化し、その影響が周波数領域で低周波数成分として現れるためである。
0055
図5(a)は、スイッチング電源回路9aのスイッチング周波数Fswが100kHzである場合に、直交検波後のドプラ成分とスイッチングノイズが重畳することを示した図である。図5(b)は、スイッチング電源回路9aのスイッチング周波数Fswが150kHzである場合に、直交検波後のドプラ成分とスイッチングノイズが重畳しないことを示した図である。図5(a)(b)に示すように、直交検波後、クラッタ成分とドプラ成分(血流ドプラ成分)が、周波数0の近傍に現れる。
0056
図6(a)は、ウォールフィルタ4-4(アナログハイパスフィルタAHPF)の通過帯域を示した図である。図6(b)は、アナログアンチエリアシングフィルタ(AAF)4-5の通過帯域を示した図である。図6(c)は、CW/PW-ADC4-6のサンプリング周波数Fadcに応じた周波数分析範囲を示した図である。
0057
図6(a)に示すように、ウォールフィルタ4-4は、アナログハイパスフィルタ(AHPF)であり、クラッタ成分を除去する。また、CW/PW-ADC4-6のサンプリング周波数Fadcは300KHzであるので、ウォールフィルタ4-4のフィルタリング処理により、サンプリング周波数Fadc(300KHz)の正の整数倍におけるスイッチング周波数Fswの高調波成分(300KHz、600KHz、900KHz・・・・・)とそれに付随する低周波成分は除去される。一方、サンプリング周波数Fadc(300KHz)の正の整数倍以外におけるスイッチング周波数Fswの高調波成分とそれに付随する低周波成分は除去されない。
0058
したがって、図5(a)に示すように、スイッチング電源回路9aのスイッチング周波数Fswが100KHzである場合、スイッチング周波数Fswの高調波成分(100KHz、200KHz、400KHz、500KHz、700KHz・・・・・)とそれに付随する低周波成分は除去されない。この結果、図6(b)に示すように、CW/PW-ADC4-6のサンプリング周波数Fadc(300KHz)の1/2のカットオフ周波数(150KHz)を通過帯域とするAAF4-5のフィルタリング処理により、カットオフ周波数以上のスイッチング周波数Fswの高調波成分(絶対値が200KHz、400KHz、500KHz、700KHz・・・・・の高調波成分)とそれに付随する低周波成分は除去されるが、絶対値がカットオフ周波数未満のスイッチング周波数Fswの高調波成分(絶対値が100KHzの高調波成分)とそれに付随する低周波成分は除去されない。
0059
図7(a)は、スイッチング電源回路9aのスイッチング周波数Fswが100KHzである場合における、ウォールフィルタ(フィルタ部)4-4及びAAF(フィルタ部)4-5のフィルタリング処理により、スイッチング周波数Fswの高調波成分とそれに付随する低周波成分が除去された後の高調波成分分布を示した図である。図7(a)に示すように、CW/PW-ADC4-6のサンプリング周波数(300KHz)の±1/2(±150KHz)の範囲内では、スイッチング周波数Fswの高調波成分(±100KHz)が除去されず、ドプラ成分とスイッチングノイズが重畳する。ドプラ成分とスイッチングノイズが重畳した状態で、超音波画像形成部5により画像化されると、スイッチング周波数Fswの高調波成分とそれに付随する低周波成分に起因するノイズが、表示部6に表示される。
0060
一方、図5(b)に示すように、スイッチング電源回路9aのスイッチング周波数Fswが150KHzである場合、図6(b)に示すようなCW/PW-ADC4-6のサンプリング周波数(300KHz)の1/2のカットオフ周波数(150KHz)を通過帯域とするAAF4-5のフィルタリング処理により、絶対値がカットオフ周波数以上のスイッチング周波数Fswの高調波成分(絶対値が150KHz、450KHz、750KHz・・・・・の高調波成分)とそれに付随する低周波成分は除去される。
0061
図7(b)は、スイッチング電源回路9aのスイッチング周波数が150KHzである場合における、ウォールフィルタ4-4及びAAF4-5のフィルタリング処理により、スイッチング周波数Fswの高調波成分とそれに付随する低周波成分が除去された後の高調波成分分布を示した図である。図7(b)に示すように、CW/PW-ADC4-6のサンプリング周波数Fadc(300KHz)の±1/2(±150KHz)の範囲内では、スイッチング周波数Fswの高調波成分が存在しないので、ドプラ成分とスイッチングノイズが重畳しない。この結果、スイッチング周波数Fswの高調波成分とそれに付随する低周波成分に起因するノイズが低減される。
0062
つまり、制御部7が、スイッチング周波数Fswの第1の高調波成分を参照波周波数Frefに一致させるとともに、ドプラ信号の信号処理領域Aの範囲で、スイッチング周波数Fswの第1の高調波成分と異なる高調波成分が存在しないように、参照波周波数Frefとスイッチング周波数Fswとサンプリング周波数Fadcのいずれか1つを制御することにより、スイッチング周波数Fswの高調波成分とそれに付随する低周波成分に起因するノイズが低減される。
0063
本実施の形態では、図4(c)に示すように、スイッチング周波数Fswの高調波成分F1(第1の高調波成分)と参照波周波数Frefとを一致させるため、参照波周波数Frefがスイッチング周波数Fswの正の整数倍(n倍)となるように、制御部7が、参照波周波数Fref及びスイッチング周波数Fswの少なくとも1つを制御する。
0064
さらに、本実施の形態では、図7(b)に示すように、CW/PW-ADC4-6のサンプリング周波数Fadcの±1/2の範囲内で、スイッチング周波数Fswの高調波成分が存在しないようにするため、図4(c)に示すように、第1の高調波成分F1よりも低周波側に存在する高調波成分F2(第2の高調波成分)の周波数“(n−1)*Fsw”が、低周波側のドプラ信号処理領域A“Fref−(1/2)Fadc”以下になるように、制御部7が、参照波周波数Fref、スイッチング周波数Fsw、及びサンプリング周波数Fadcの少なくとも1つを制御する。
0065
さらに、本実施の形態では、図7(b)に示すように、CW/PW-ADC4-6のサンプリング周波数Fadcの±1/2の範囲内で、スイッチング周波数Fswの高調波成分が存在しないようにするため、図4(c)に示すように、第1の高調波成分F1よりも高周波側に存在する高調波成分F3(第3の高調波成分)の周波数“(n+1)*Fsw”が、高周波側のドプラ信号処理領域A“Fref+(1/2)Fadc”以上になるように、制御部7が、参照波周波数Fref、スイッチング周波数Fsw、及びサンプリング周波数Fadcの少なくとも1つを制御する。これらの制御は以下のように数式に表わされる。
0066
Fref=n*Fsw ・・・・・(1)
(n−1)*Fsw≦Fref−(1/2)Fadc ・・・・・(2)
Fref+(1/2)Fadc≦(n+1)*Fsw ・・・・・(3)
N :正の整数
Fref:参照波周波数
Fsw :スイッチング電源回路9aのスイッチング周波数
Fadc:CW/PW-ADC4-6のサンプリング周波数
以上のように、制御部7が、参照波周波数Fref、スイッチング周波数Fsw、及びサンプリング周波数Fadcの少なくとも1つを制御することで、第1の高調波成分と参照波周波数Frefとを一致させ、ドプラ信号処理領域Aの範囲内で、第2及び第3の高調波成分が存在しないようにすることができる。
0067
この場合、第1の高調波成分がドプラ信号処理領域Aの範囲内(ドプラ信号処理領域Aの中心)に存在することが許容される。この点が、本実施の形態の特徴の1つである。第1の高調波成分は、クラッタ成分とともに、ウォールフィルタ(フィルタ部)4-4により除去される。つまり、スイッチング電源回路9aのFETデューティ比変化により生じた低周波成分を除去するフィルタ部が、超音波の受信信号のクラッタ成分を除去するフィルタ部(ウォールフィルタ4-4)と共通である。また、その他の高調波成分も、AAF(フィルタ部)4-5により除去される。
0068
また、後述するように、スイッチング電源回路9aのスイッチング周波数Fswを大きくして、第1の高調波成分がドプラ信号処理領域Aの範囲内に存在しないようにすることも可能であるが、高速なスイッチング電源回路9aやCW/PW-ADC4-6が要求されるため、消費電力やコストが高くなる。したがって、本実施の形態では、低消費電力で低コストのスイッチング電源回路9aやCW/PW-ADC4-6を使用できる点で有利である。
0069
また、上記はアナログCWDモードに関する説明であるが、アナログPWDモードでも同様の動作及び制御を行うことにより、ノイズが低減された超音波画像を実現することができる。特に、アナログPWDモードでは、超音波送信タイミングに同期して、CW/PW-ADC4-6のサンプルクロック及びスイッチング電源回路9aのスイッチング信号が、クロック分周回路10aにより生成される。
0070
以上、本発明にかかる実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において変更・変形することが可能である。
0071
ドプラ信号処理領域Aの範囲内で、第2及び第3の高調波成分が存在しないようにするために、上記の数式に代えて、以下の数式を満たすように、制御部7が、スイッチング周波数Fsw及びサンプリング周波数Fadcの少なくとも1つを制御してもよい。
0072
Fsw=n*(1/2)Fadc ・・・・・(4)
N :正の整数
Fsw :スイッチング電源回路9aのスイッチング周波数
Fadc:CW/PW-ADC4-6のサンプリング周波数
例えば、CW/PW-ADC4-6のサンプリング周波数Fadcは300KHzである場合、スイッチング周波数Fswを150KHzの正の整数倍(n倍)となるように、制御部7が、サンプリング周波数Fadc及びスイッチング周波数Fswの少なくとも1つを制御する。
0073
n=1(Fsw=150KHz)である場合は、図4(c)と同様のスイッチング周波数Fswの高調波成分が現れる。この場合、図5(b)に示すように、直交検波後のドプラ成分とスイッチングノイズが重畳せず、図7(b)に示すように、ウォールフィルタ(フィルタ部)4-4及びAAF(フィルタ部)4-5のフィルタリング処理により、スイッチング周波数Fswの高調波成分とそれに付随する低周波成分が除去される。
0074
上記と同様、この場合も、高調波成分(スイッチングノイズ)は、クラッタ成分とともに、クラッタ成分とともに、ウォールフィルタ(フィルタ部)4-4とAAF(フィルタ部)4-5により除去される。つまり、スイッチング周波数の高調波成分を除去するフィルタ部が、超音波の受信信号のクラッタ成分を除去するフィルタ部(ウォールフィルタ4-4)と共通である。また、その他の高調波成分も、AAF(フィルタ部)4-5により除去される。
0075
以上のように、制御部7が、スイッチング周波数Fsw及びサンプリング周波数Fadcの少なくとも1つを制御することで、第1の高調波成分と参照波周波数Frefとを一致させ、ドプラ信号処理領域Aの範囲内で、第2及び第3の高調波成分が存在しないようにすることができる。
0076
また、ドプラ信号処理領域Aの範囲内で、スイッチング周波数Fswの高調波成分が存在しないようにするために、上記の数式に代えて、以下の数式を満たすように、制御部7が、参照波周波数Fref、スイッチング周波数Fsw、及びサンプリング周波数Fadcの少なくとも1つを制御してもよい。
0077
n*Fsw≦Fref−(1/2)Fadc ・・・・・(5)
Fref+(1/2)Fadc≦(n+1)*Fsw ・・・・・(6)
N :正の整数
Fref:参照波周波数
Fsw :スイッチング電源回路9aのスイッチング周波数
Fadc:CW/PW-ADC4-6のサンプリング周波数
図8(a)は、スイッチング周波数Fswの高調波成分がドプラ信号処理領域Aの範囲内に存在しないことを示した図である。図8(a)に示すように、送受信信号中心周波数(参照波周波数)Frefよりも低周波側に存在する高調波成分F4(第4の高調波成分)の周波数“n*Fsw”が、低周波側のドプラ信号処理領域A“Fref−(1/2)Fadc”以下になるように、制御部7が、参照波周波数Fref、スイッチング周波数Fsw、及びサンプリング周波数Fadcの少なくとも1つを制御する。また、送受信信号中心周波数(参照波周波数)Frefよりも高周波側に存在する高調波成分F5(第5の高調波成分)の周波数“(n+1)*Fsw”が、高周波側のドプラ信号処理領域A“Fref+(1/2)Fadc”以上になるように、制御部7が、参照波周波数Fref、スイッチング周波数Fsw、及びサンプリング周波数Fadcの少なくとも1つを制御する。
0078
例えば、CW/PW-ADC4-6のサンプリング周波数Fadcが300KHzで、参照波周波数Frefが3MHz(3000KHz)である場合、スイッチング周波数Fswを400KHzとすれば、“2800(n=8)KHz≦2850(=3000−300/2)MHz”及び“3150(=3000+300/2)≦3200(n=9)KHz”となり、ドプラ信号処理領域Aの範囲内で、スイッチング周波数Fswの高調波成分が存在しないようにすることができる。この場合、図8(b)に示すように、ウォールフィルタ4-4及びAAF4-5のフィルタリング処理により、スイッチング周波数Fswの高調波成分とそれに付随する低周波成分が除去される。
0079
以上のように、制御部7が、参照波周波数Fref、スイッチング周波数Fsw、及びサンプリング周波数Fadcの少なくとも1つを制御することで、ドプラ信号処理領域Aの範囲内で、スイッチング周波数Fswの高調波成分が存在しないようにすることができる。ただし、ドプラ信号処理領域Aの範囲内で、スイッチング周波数Fswの高調波成分が存在しないようにするためには、図8(a)に示すように、ドプラ信号処理領域Aの周波数よりも大きいスイッチング周波数Fswが要求されるので、高速なスイッチング電源回路9aやCW/PW-ADC4-6が要求される。
0080
本発明は、超音波診断装置1のHPRF(High Pulse Repetition Frequency)モードにも適用できる。HPRFモードによるHPRFドップラー法は、目的物深度の反射波が戻ってくる前に強制的に次のパルスが送信されるので、PRF(Pulse Repetition Frequency)を高くでき、高速血流などに対応できる。この場合、デジタル信号に変換されたドプラ信号(ドプラ受信信号)がフィルタリング処理される。
0081
図9は、HPRFモードにおけるデジタルCWD処理又はデジタルPWD処理を行う回路のブロック図である。図3と異なる点は、増幅されたアナログ信号(受信信号101)が、ADC(A/D変換部)4-16により、チャネル毎にデジタル信号に変換され(受信信号1002)、デジタル信号として、デジタルミキシング回路4-12により直交検波され(受信信号1102)、チャネル加算器4-13により整相加算される点である。
0082
ADC(A/D変換部)4-16は、サンプリング周波数Fadcを用いて、超音波の受信信号のアナログ信号をサンプリングし、受信信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換する。ADC4-16は、受信信号中心周波数の2倍以上のサンプリングレートを用いて(例えば、約2MHz以上のサンプリング周波数Fadc)、受信信号101をデジタル変換する。チャネル加算器4-13は、直交検波用の参照波信号(参照波周波数Fref)と整相加算された受信信号とをデジタル的に乗算して、ドプラ復調信号を取り出す(受信信号1103)。ここで、チャネル加算器4-13は、ヘテロダイン方式のように、デジタル変換された受信信号1002に対して、チャネル毎に参照波信号をデジタル的に乗算し、不要な高周波成分を除去した後、ベースライン情報として、整相加算してもよい。
0083
デジタル的に復調処理されたドプラ復調信号は、チャンネル加算処理の後、必要なドプラ信号を抽出するため、デジタルフィルタ4-14に入力され、信号処理される。デジタルフィルタ4-14としては、FIRやIIRやIFFTなどの適切なフィルタが用いられればよい。デジタルフィルタ4-14は、心臓壁運動などの低速生体運動に起因する低周波成分(クラッタ成分)を除去する。さらに、デジタルフィルタ4-14は、ドプラ周波数分析回路4-7(周波数分析部)がドプラ信号を周波数分析するための分析周波数(Fanalyze)の1/2以上の周波数成分を除去する。分析周波数Fanalyzeは、超音波診断装置1のPRFと異なってもよい。特に、HPRFモードでは、分析周波数Fanalyzeは、超音波診断装置1のPRFと異なってもよい。
0084
ドプラ周波数分析回路4-7は、FFTなどの周波数分析方法により、分析周波数Fanalyzeに基づいて、ドプラ信号を周波数分析する。周波数分析されたドプラ信号は、DSC部5bを介して、表示部6に表示される。
0085
次に、図10及び図11を用いて、ノイズが低減される過程について説明する。図10(a)は、図4(a)と同様、受信信号の周波数成分を示した図である。図10(a)に示すように、受信信号の周波数成分として、クラッタ成分とドプラ成分(例えば、血流ドプラ成分)が、送受信信号中心周波数(参照波周波数Fref)を中心として現れる。
0086
図10(b)は、ADC4-16により、分析周波数Fanalyze毎にリサンプルされた結果を示した図である。図10(b)に示すように、ドプラ周波数分析回路4-7が、分析周波数Fanalyze毎(1*Fanalyze、2*Fanalyze、3*Fanalyze、4*Fanalyze、5*Fanalyze・・・・・)にリサンプルを行う。図11(a)は、リサンプリング結果にスイッチングノイズが重畳することを示した図である。
0087
図11(b)は、リサンプリング結果にスイッチングノイズが重畳しないことを示した図である。図11(a)と比較して、図11(b)に示すように、スイッチング周波数Fswが、ドプラ周波数分析回路4-7の分析周波数Fanalyzeの1/2の正の整数倍(n倍)である場合は、クラッタ成分にスイッチングノイズが重畳する。クラッタ成分に重畳したスイッチングノイズは、クラッタ成分とともに、デジタルフィルタ4-14により除去されるので、ドプラ周波数分析回路4-7のリサンプリング結果にスイッチングノイズが重畳しない。
0088
このように、リサンプリング結果にスイッチングノイズが重畳しないようにするために、以下の数式を満たすように、制御部7が、スイッチング周波数Fsw及び分析周波数Fanalyzeの少なくとも1つを制御してもよい。つまり、制御部7が、ドプラ周波数分析回路(周波数分析部)4-7のリサンプリング結果にスイッチングノイズが重畳しないように、スイッチング周波数Fswと分析周波数Fanalyzeのいずれか1つを制御する。
0089
Fsw=n*(1/2)Fanalyze ・・・・・(7)
N :正の整数
Fsw :スイッチング電源回路9aのスイッチング周波数
Fanalyze:ドプラ周波数分析回路4-7の分析周波数
以上のように、制御部7が、スイッチング周波数Fsw及び分析周波数Fanalyzeの少なくとも1つを制御することで、ドプラ周波数分析回路4-7のリサンプリング結果にスイッチングノイズが重畳しないようにすることができる。
0090
上記と同様、この場合も、高調波成分(スイッチングノイズ)は、クラッタ成分とともに、デジタルフィルタ(フィルタ部)4-14により除去される。つまり、スイッチング周波数の高調波成分を除去するフィルタ部が、超音波の受信信号のクラッタ成分を除去するフィルタ部(デジタルフィルタ4-14)と共通である。共通のフィルタ部が、除去成分(例えば、クラッタ成分)とともに、スイッチングノイズを除去することができる。また、共通のフィルタ部により、省スペース化及び低コスト化を図った超音波診断装置を実現することができる。
0091
以上、本発明の実施の形態によれば、ドプラ信号へ混入するスイッチングノイズを低減することができる。アナログCWDモード又はアナログPWDモードの場合、スイッチング電源回路9aのスイッチングノイズが、フィルタリング処理により除去される。また、ドプラ信号処理領域Aにスイッチング電源回路9aのスイッチングノイズが生じないように制御される。この結果、本発明の実施の形態によれば、ドプラ信号にスイッチングノイズが重畳しないので、周波数分析された血流データからスイッチングノイズを除去することができ、図12に示すような超音波診断装置の電源負荷変動に起因する縞状ノイズが除去された超音波画像を提供することで診断性能向上に貢献することができる。
0092
本発明にかかる超音波診断装置は、電源回路に起因するノイズを低減し、ドプラ周波数分析の結果に電源ノイズが重畳しないという効果を有し、ノイズを低減する超音波診断装置として有用である。
0093
1超音波診断装置、3 超音波探触子、4超音波送受信部、5超音波画像形成部、6 表示部、7 制御部、8コントロールパネル、9電源部、10クロック回路部