図面 (/)

この項目の情報は公開日時点(2015年3月5日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (7)

課題・解決手段

口腔細菌による揮発性硫黄化合物の産生を抑制することができ、且つう蝕性及び感染性心内膜炎起炎性がなく、口腔内で安全な新規乳酸菌株及びこれを用いた口腔内疾患や不快症状の予防、改善及び/又は治療剤の提供。ラクトバチルスクリスパータス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)及びストレプトコッカスミティス(Streptococcus mitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌を有効成分とする口腔内疾患の予防及び/又は治療剤。 (1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない (2)非水溶性グルカン産生能を有しない (3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する (4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する (5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない (6)う蝕性を有しない

概要

背景

口臭は、見えない審美として快適な個人生活及び社会生活を送る上でその重要性が指摘されている。口臭が口腔のQOL(quality of life:生活の質)に与える影響を定量的に測定した結果、形態的な審美以上に関与していることが報告されている(非特許文献1)。さらに、急激な高齢化社会を迎えた日本において、口臭は高齢者介助を困難にする一因としても懸念されている(非特許文献2)。

口臭の主な原因は、硫化水素メチルメルカプタンジメチルサルファイドの3種類の揮発性硫黄化合物(VSC)である(非特許文献3、4)。VSCは、口腔内剥離上皮細胞白血球残骸食物等に含まれるシステインメチオニン等が口腔細菌により分解されることにより発生すると考えられている。口腔細菌を用いた培養試験で、フソバクテリウム属、ポルフィロモナス属、ベイヨネラ属及びスピロヘータ等の歯周病原性細菌が多量のVSCを産生することが報告されている(非特許文献5)。また、口腔内から分離されたラクトバチルスオリス(Lactobacillus olis)に強いVSC産生能力があることも明らかにされている。VSCはそれ自体が強い不快臭であるとともに、低濃度でも生体組織に対する毒性を持つことから、単に口臭原因物質としてのみならず、歯周病病態を悪化させる因子である可能性が高いことも報告されている(非特許文献6)。そのため、口腔細菌、特に歯周病原性細菌によるVSCの産生を抑制し口臭を予防又は改善することはQOLを高めるだけでなく、口腔の健康維持の上でも重要である。

近年、プロバイオティクスの技術を口腔内でも利用する試みがなされ、例えば、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius) TI 2711株(特許文献1)が、口臭やう蝕症、歯周病、口腔内感染症等に有用であることが報告されている。

概要

口腔細菌による揮発性硫黄化合物の産生を抑制することができ、且つう蝕性及び感染性心内膜炎起炎性がなく、口腔内で安全な新規乳酸菌株及びこれを用いた口腔内疾患や不快症状の予防、改善及び/又は治療剤の提供。ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)及びストレプトコッカスミティス(Streptococcus mitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌を有効成分とする口腔内疾患の予防及び/又は治療剤。 (1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない (2)非水溶性グルカン産生能を有しない (3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する (4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する (5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない (6)う蝕性を有しない

目的

本発明の課題は、口腔細菌による揮発性硫黄化合物の産生を抑制することができ、且つう蝕性及び感染性心内膜炎の起炎性がなく、口腔内で安全な新規乳酸菌株及びこれを用いた口腔内疾患や不快症状の予防、改善及び/又は治療剤を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
1件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

ラクトバチルスクリスパータス(Lactobacilluscrispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillusgasseri)及びストレプトコッカスミティス(Streptococcusmitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌を有効成分とする口腔内疾患の予防及び/又は治療剤。(1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない(2)非水溶性グルカン産生能を有しない(3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する(4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する(5)感染性心内膜炎起炎性を有しない(6)う蝕性を有しない

請求項2

乳酸菌が、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)YIT12319(FERMBP−11500)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)YIT12320(FERMBP−11501)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillusgasseri)YIT12321(FERMBP−11502)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcusmitis)YIT12322(FERMBP−11503)から選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の口腔内疾患の予防及び/又は治療剤。

請求項3

口腔内疾患が、歯周病である請求項1又は2記載の口腔内疾患の予防及び/又は治療剤。

請求項4

ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillusgasseri)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcusmitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌を有効成分とする口臭の予防及び/又は改善剤。(1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない(2)非水溶性グルカン産生能を有しない(3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する(4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する(5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない(6)う蝕性を有しない

請求項5

乳酸菌が、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)YIT12319(FERMBP−11500)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)YIT12320(FERMBP−11501)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillusgasseri)YIT12321(FERMBP−11502)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcusmitis)YIT12322(FERMBP−11503)から選ばれる1種又は2種以上である請求項4記載の口臭の予防又は改善剤。

請求項6

ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)YIT12319と命名され、FERMBP−11500として寄託された乳酸菌、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)YIT12320と命名され、FERMBP−11501として寄託された乳酸菌、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillusgasseri)YIT12321と命名され、FERMBP−11502として寄託された乳酸菌、又はストレプトコッカス・ミティス(Streptococcusmitis)YIT12322と命名され、FERMBP−11503として寄託された乳酸菌。

請求項7

請求項6記載の乳酸菌を含有することを特徴とする飲食品

請求項8

発酵製品である請求項7記載の飲食品。

請求項9

請求項6記載の乳酸菌を含有することを特徴とする口腔用組成物

請求項10

ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillusgasseri)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcusmitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌の、口腔内疾患の予防及び/又は治療剤製造のための使用。(1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない(2)非水溶性グルカン産生能を有しない(3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する(4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する(5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない(6)う蝕性を有しない

請求項11

乳酸菌が、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)YIT12319(FERMBP−11500)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)YIT12320(FERMBP−11501)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillusgasseri)YIT12321(FERMBP−11502)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcusmitis)YIT12322(FERMBP−11503)から選ばれる1種又は2種以上である請求項10記載の使用。

請求項12

口腔内疾患が、歯周病である請求項10又は11記載の使用。

請求項13

ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillusgasseri)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcusmitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌の、口臭の予防及び/又は改善剤製造のための使用。(1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない(2)非水溶性グルカン産生能を有しない(3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する(4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する(5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない(6)う蝕性を有しない

請求項14

乳酸菌が、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)YIT12319(FERMBP−11500)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)YIT12320(FERMBP−11501)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillusgasseri)YIT12321(FERMBP−11502)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcusmitis)YIT12322(FERMBP−11503)から選ばれる1種又は2種以上である請求項13記載の使用。

請求項15

口腔内疾患の予防及び/又は治療のための、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillusgasseri)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcusmitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌。(1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない(2)非水溶性グルカン産生能を有しない(3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する(4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する(5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない(6)う蝕性を有しない

請求項16

乳酸菌が、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)YIT12319(FERMBP−11500)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)YIT12320(FERMBP−11501)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillusgasseri)YIT12321(FERMBP−11502)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcusmitis)YIT12322(FERMBP−11503)から選ばれる1種又は2種以上である請求項15記載の乳酸菌。

請求項17

口腔内疾患が、歯周病である請求項15又は16記載の乳酸菌。

請求項18

口臭の予防及び/又は改善のための、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillusgasseri)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcusmitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌。(1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない(2)非水溶性グルカン産生能を有しない(3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する(4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する(5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない(6)う蝕性を有しない

請求項19

乳酸菌が、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)YIT12319(FERMBP−11500)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)YIT12320(FERMBP−11501)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillusgasseri)YIT12321(FERMBP−11502)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcusmitis)YIT12322(FERMBP−11503)から選ばれる1種又は2種以上である請求項17記載の乳酸菌。

請求項20

ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillusgasseri)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcusmitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌の有効量を投与することを特徴とする口腔内疾患の予防及び/又は治療方法。(1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない(2)非水溶性グルカン産生能を有しない(3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する(4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する(5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない(6)う蝕性を有しない

請求項21

乳酸菌が、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)YIT12319(FERMBP−11500)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)YIT12320(FERMBP−11501)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillusgasseri)YIT12321(FERMBP−11502)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcusmitis)YIT12322(FERMBP−11503)から選ばれる1種又は2種以上である請求項20記載の方法。

請求項22

口腔内疾患が、歯周病である請求項20又は21記載の方法。

請求項23

ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillusgasseri)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcusmitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌の有効量を投与することを特徴とする口臭の予防及び/又は改善方法。(1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない(2)非水溶性グルカン産生能を有しない(3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する(4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する(5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない(6)う蝕性を有しない

請求項24

乳酸菌が、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)YIT12319(FERMBP−11500)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillusfermentum)YIT12320(FERMBP−11501)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillusgasseri)YIT12321(FERMBP−11502)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcusmitis)YIT12322(FERMBP−11503)から選ばれる1種又は2種以上である請求項23記載の方法。

請求項25

列番号4〜8から選ばれる塩基配列又は該塩基配列に相補的な配列からなるラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)YIT12319(FERMBP−11500)に特異的なプライマー又はプローブ

請求項26

配列番号4及び8、配列番号5及び8、配列番号6及び8、配列番号7及び8から選ばれる塩基配列又は該塩基配列に相補的な配列からなるラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)YIT12319(FERMBP−11500)に特異的なプライマーペア

請求項27

請求項25又は26記載のプライマー、プライマーペア又はプローブを使用することを特徴とするラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacilluscrispatus)YIT12319(FERMBP−11500)の検出方法

技術分野

0001

本発明は、う蝕症、歯周病口臭等の口腔内疾患や不快症状の予防、改善及び/又は治療剤に関する。

背景技術

0002

口臭は、見えない審美として快適な個人生活及び社会生活を送る上でその重要性が指摘されている。口臭が口腔のQOL(quality of life:生活の質)に与える影響を定量的に測定した結果、形態的な審美以上に関与していることが報告されている(非特許文献1)。さらに、急激な高齢化社会を迎えた日本において、口臭は高齢者介助を困難にする一因としても懸念されている(非特許文献2)。

0003

口臭の主な原因は、硫化水素メチルメルカプタンジメチルサルファイドの3種類の揮発性硫黄化合物(VSC)である(非特許文献3、4)。VSCは、口腔内剥離上皮細胞白血球残骸食物等に含まれるシステインメチオニン等が口腔細菌により分解されることにより発生すると考えられている。口腔細菌を用いた培養試験で、フソバクテリウム属、ポルフィロモナス属、ベイヨネラ属及びスピロヘータ等の歯周病原性細菌が多量のVSCを産生することが報告されている(非特許文献5)。また、口腔内から分離されたラクトバチルスオリス(Lactobacillus olis)に強いVSC産生能力があることも明らかにされている。VSCはそれ自体が強い不快臭であるとともに、低濃度でも生体組織に対する毒性を持つことから、単に口臭原因物質としてのみならず、歯周病の病態を悪化させる因子である可能性が高いことも報告されている(非特許文献6)。そのため、口腔細菌、特に歯周病原性細菌によるVSCの産生を抑制し口臭を予防又は改善することはQOLを高めるだけでなく、口腔の健康維持の上でも重要である。

0004

近年、プロバイオティクスの技術を口腔内でも利用する試みがなされ、例えば、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius) TI 2711株(特許文献1)が、口臭やう蝕症、歯周病、口腔内感染症等に有用であることが報告されている。

0005

特許第4203855号公報

先行技術

0006

日公衛誌49、2002、p298
(財)医療経済研究機構平成7年度調査研究報告
Arch Oral Biol 16、1971:587−597
Int.Dent.J 28、1978:309−319
口腔衛生会誌51、2001、p778−792
歯学会誌32、2002、p309−310
J Med Microbiol 39、1991:179−182
Eur J Clin Microbiol Infect Dis 24、2005:31−40
Journal of Infection 53、2006:e5−e10

発明が解決しようとする課題

0007

しかし一方で、口腔内のラクトバチルス属ストレプトコッカス属の細菌は、う蝕や感染性心内膜炎の原因の一つである可能性が指摘されている。ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)はう蝕原性菌として知られており、その有害性に関してはストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)よりも強く、う蝕の原因として臨床の分野で問題視されている細菌である。また、最も高頻度に検出される感染性心内膜炎の起因微生物は、ストレプトコッカス・サングィニス(Streptococcus sanguinis)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)等の口腔内のストレプトコッカス属の細菌であり(非特許文献7)、ラクトバチルス属の細菌の中にも、心内膜炎惹起する株があることが報告されている(非特許文献8、9)。

0008

そのため、口腔内菌叢の健常化のために使用する細菌は、VSCの産生を抑制できることに加え、う蝕性及び感染性心内膜炎の起炎性がないことが望ましいが、これら性質を有する安全な菌はこれまでに報告されていない。

0009

したがって、本発明の課題は、口腔細菌による揮発性硫黄化合物の産生を抑制することができ、且つう蝕性及び感染性心内膜炎の起炎性がなく、口腔内で安全な新規乳酸菌株及びこれを用いた口腔内疾患や不快症状の予防、改善及び/又は治療剤を提供することにある。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは、口腔内微生物について鋭意検討したところ、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)に属する特定の乳酸菌が、歯面及び口腔内細胞への接着性が高く、口臭原因菌でもある歯周病原性細菌の増殖阻害作用を有し、VSC産生を抑制できること、また、乳酸菌自体もVSC及び非水溶性グルカンを産生しないことを見出した。さらに当該乳酸菌は、う蝕性及び感染性心内膜炎の起炎性を持たないことから口腔内菌叢の健常化のために使用する細菌として有用であることを見出し、本発明を完成した。

0011

すなわち、本発明は、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌を有効成分とする口腔内疾患の予防及び/又は治療剤を提供するものである。
(1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない
(2)非水溶性グルカン産生能を有しない
(3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する
(4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する
(5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない
(6)う蝕性を有しない
また、本発明は、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌を有効成分とする口臭の予防及び/又は改善剤を提供するものである。
(1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない
(2)非水溶性グルカン産生能を有しない
(3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する
(4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する
(5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない
(6)う蝕性を有しない
また、本発明は、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319と命名され、FERM BP−11500として寄託された乳酸菌、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)YIT 12320と命名され、FERM BP−11501として寄託された乳酸菌、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)YIT 12321と命名され、FERM BP−11502として寄託された乳酸菌、又はストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)YIT 12322と命名され、FERM BP−11503として寄託された乳酸菌を提供するものである。
また、本発明は、上記乳酸菌を含有する飲食品を提供するものである。
更に、本発明は、上記乳酸菌を含有する口腔用組成物を提供するものである。

0012

また、本発明は、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌の、口腔内疾患の予防及び/又は治療剤製造のための使用を提供するものである。
(1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない
(2)非水溶性グルカン産生能を有しない
(3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する
(4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する
(5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない
(6)う蝕性を有しない
また本発明は、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌の、口臭の予防及び/又は改善剤製造のための使用を提供するものである。
(1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない
(2)非水溶性グルカン産生能を有しない
(3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する
(4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する
(5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない
(6)う蝕性を有しない
また、本発明は、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌の有効量を投与することを特徴とする口腔内疾患の予防及び/又は治療方法を提供するものである。
(1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない
(2)非水溶性グルカン産生能を有しない
(3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する
(4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する
(5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない
(6)う蝕性を有しない
また、本発明は、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌の有効量を投与することを特徴とする口臭の予防及び/又は改善方法を提供するものである。
(1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない
(2)非水溶性グルカン産生能を有しない
(3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する
(4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する
(5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない
(6)う蝕性を有しない
また、本発明は、口腔内疾患の予防及び/又は治療のための、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌を提供するものである。
(1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない
(2)非水溶性グルカン産生能を有しない
(3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する
(4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する
(5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない
(6)う蝕性を有しない
さらに本発明は、口臭の予防及び/又は改善のための、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)から選ばれ、且つ下記(1)〜(6)の全ての性質を有する1種又は2種以上の乳酸菌を提供するものである。
(1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない
(2)非水溶性グルカン産生能を有しない
(3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する
(4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する
(5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない
(6)う蝕性を有しない
また、本発明は、配列番号4〜8から選ばれる塩基配列又は該塩基配列に相補的な配列からなるラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319(FERM BP−11500)に特異的なプライマー又はプローブを提供するものである。
また、本発明は、配列番号4及び8、配列番号5及び8、配列番号6及び8、配列番号7及び8から選ばれる塩基配列又は該塩基配列に相補的な配列からなるラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319(FERM BP−11500)に特異的なプライマーペアを提供するものである。
さらに、本発明は、前記プライマー、プライマーペア又はプローブを使用することを特徴とするラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319(FERM BP−11500)の検出方法を提供するものである。

発明の効果

0013

本発明の乳酸菌は、歯面及び口腔内に定着し、う蝕原性細菌や口臭原因菌でもある歯周病原性細菌の増殖阻害作用を有し、一方でVSC産生能、非水溶性グルカン産生能、う蝕性及び感染性心内膜炎の起炎性を持たないので、口腔内菌叢の健常化を図り、う蝕症、歯周病、口臭等の様々な口腔内疾患又は不快症状の予防、改善又は治療効果を発揮する医薬品、飲食品、ペットフード口腔内組成物等に有用である。

図面の簡単な説明

0014

YIT 12319〜12321を接触させたウシエナメル質硬度変化を示す図である。
YIT 12319〜12321を接触させたウシエナメル質から回収されたバイオフィルム中の非水溶性グルカン量を示す図である。
YIT 12322を接触させたウシエナメル質の硬度変化を示す図である。
YIT 12322を接触させたウシエナメル質から回収されたバイオフィルム中の非水溶性グルカン量を示す図である。
YIT 12321を接触させたウシエナメル質の硬度変化を示す図である。
YIT 12321のスクロース資化性を示す図である。
YIT 12319に特異的なプライマーペアで増幅させたDNAバンドを示す図である(矢印は特異的なDNAバンドを、また使用したプライマーペアを隣に記す)。

0015

本発明に用いられる乳酸菌としては、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)に属する乳酸菌株が挙げられ、これら菌株の1種又は2種以上であってもよい。
具体的には、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319と命名され、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センター住所県つくば市東1−1−1 中央第6)に2011年4月28日付で(以下、同じ)FERM BP−11500として寄託された乳酸菌、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)YIT 12320と命名され、FERM BP−11501として寄託された乳酸菌、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)YIT 12321と命名され、FERM BP−11502として寄託された乳酸菌、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)YIT 12322と命名され、FERM BP−11503として寄託された乳酸菌が挙げられる。当該乳酸菌には、これらを親株とする子孫株(自然変異株、変異処理による変異株遺伝子操作による変異株等)も含まれる。

0016

上記ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319(FERM BP−11500)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)YIT 12320(FERM BP−11501)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)YIT 12321(FERM BP−11502)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)YIT 12322(FERM BP−11503)は、後記実施例に示すように、ヒト口腔内から本発明者らによって初めて分離されたものであり、16S−rDNA遺伝子配列により相同性検索を行った結果、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ガッセリ又はストレプトコッカス・ミティスに属する菌株と判定された。これら乳酸菌株は、次の特徴的な性質(1)〜(6)を有することから新規な菌株であることが判明した。
(1)揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない
(2)非水溶性グルカン産生能を有しない
(3)歯面及び/又は口腔内細胞への接着性を有する
(4)口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する
(5)感染性心内膜炎の起炎性を有しない
(6)う蝕性を有しない
また、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)YIT 12321(FERM BP−11502)は次の性質(7)を有することが確認された。
(7)スクロースを資化しない

0017

なお、本明細書において、(1)「揮発性硫黄化合物(VSC)産生能を有しない」とは、後記実施例に示す試験(試験例2)で、VSCの産生能が+/−(H2S<0.70μg/10ml/O.D.、CH3SH<1.17μg/10ml/O.D.)のものをいい、より好ましくは−(検出下限値以下)のものをいう。当該性質(1)を有する乳酸菌は、口臭原因物質であり、さらには歯周病の病態を悪化させる因子であるVSCを産生しない点で好ましい。
また、本明細書において、(2)「非水溶性グルカン産生能を有しない」とは、後記実施例に示す試験(試験例3)で、非水溶性グルカン産生能が+/−(菌体が付着する)のものをいい、より好ましくは−(産生しない)のものをいう。当該性質(2)を有する乳酸菌は、う蝕の原因となる非水溶性グルカンを産生しない点で好ましい。
また、本明細書において、(3)「歯面への接着性を有する」とは、後記実施例に示す試験(試験例5)で、S-HAへの接着率が1.0%以上のものをいい、より好ましくは10%以上のものをいう。また、本明細書において、(3)「口腔内細胞への接着性を有する」とは、後記実施例に示す試験(試験例6)で、口腔内細胞への接着性がTotal 30cells/0.16mm2以上のものをいう。当該性質(3)において、歯面又は口腔内細胞への接着性を有する乳酸菌は、経口的に投与された場合等、短い滞留時間であっても口内により定着しやすい点で好ましく、同様の点から、歯面及び口腔内細胞への接着性を有する乳酸菌がより好ましい。
また、本明細書において、(4)「口臭原因菌及び/又は歯周病原性細菌に対する増殖阻害作用を有する」とは、後記実施例に示す試験(試験例7)で阻止円径(直径)の合計が9mm以上のものをいう。当該性質(4)を有する乳酸菌は、口臭及び/又は歯周病等に対する優れた予防・治療効果を奏する点で好ましい。
また、本明細書において、(5)「感染性心内膜炎の起炎性を有しない」とは、後記実施例に示す試験(試験例8)で、ラット心内膜炎起炎性が陰性のものをいう。当該性質(5)を有する乳酸菌は、安全性が極めて高く、飲食品、口腔用組成物等として好適に利用できる。
また、本明細書において、(6)「う蝕性を有しない」とは、後記実施例に示す試験(試験例9)で、人工口腔装置による試験後のウシエナメル質の硬度低下割合が5%未満であるものをいう。当該性質(6)を有する乳酸菌は、う蝕の原因となる非水溶性グルカンを産生せず、エナメル質を脱灰しない点で好ましい。
さらにまた、本明細書において、(7)「スクロースを資化しない」とは、後記実施例に示す試験(試験例9)で、スクロースを菌の増殖基質として利用できないものをいう。当該性質(7)を有する乳酸菌は、乳酸を発生しにくく、う蝕リスクを低減できる点で好ましい。

0018

本発明においては、上記乳酸菌の菌体を、乳酸菌培養の常法に従って培養し、得られた培養物から遠心分離等の集菌手段によって分離されたものをそのまま用いることのみならず、培養終了後の乳酸菌培養物をそのまま、あるいは培地濃縮した濃縮物として使用することもできる。また、生菌体のみならず菌体の処理物であってもよい。該処理物は、常法の処理によって得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、加熱処理抗生物質等の薬物による処理、ホルマリン等の化学物質による処理、紫外線による処理、γ線等の放射線処理等による死菌体、その凍結乾燥物、これらを含有する培養物;細菌の超音波等による破砕液、細菌の酵素処理液、これらを濾過や遠心分離等の固液分離手段によって分離した固体残渣等;細胞壁酵素若しくは機械的手段により除去した処理液、当該処理液の濃縮物、それらの希釈物、それらの乾燥物等;細菌を界面活性剤等によって溶解した後、エタノール等によって沈殿させて得られる核酸含有画分;前記細菌の超音波等による破砕液や細胞の酵素処理液等に対し、各種クロマトグラフィー等による分離等の分離・精製処理を行ったもの等が挙げられる。

0019

乳酸菌を培養する培地は、特に限定されず、様々な培地を用いることができる。
例えば、グルコースフラクトースガラクトース、スクロース等の炭素源リン酸一カリウムリン酸二カリウム硫酸マグネシウム亜硫酸ソーダチオ硫酸ソーダリン酸アンモニウム等の無機塩類ポリペプトン酵母エキスコーンスティープリカー等の有機栄養源の他、必要に応じて各種アミノ酸ビタミン類が添加されてなる乳酸菌の増殖用として通常用いられる栄養培地の他、乳を含む乳培地を用いることができる。

0020

培養は、菌体が良好に生育する条件であればよい。培養方法は、特に限定されず、通気培養嫌気培養攪拌培養振盪培養静置培養等が挙げられ、生産性を考慮して、好気的条件下で静置培養するのが好ましい。
また、培養温度は、通常、10〜50℃、好ましくは25〜37℃であり、培養期間は、通常6時間〜3日間、好ましくは8時間〜3日間である。

0021

また、培地のpH(25℃)は、3〜10、好ましくは5〜8である。培地のpHを調整する緩衝剤としては、例えば、炭酸酢酸クエン酸フマル酸リンゴ酸、乳酸、グルコン酸酒石酸等の有機酸塩リン酸塩酸硫酸等の無機塩水酸化ナトリウム等の水酸化物アンモニア又はアンモニア水等が挙げられ、これらを単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。

0022

本発明の口腔内疾患の予防及び/又は治療剤における「口腔内疾患」としては、う蝕原性細菌、歯周病原性細菌、カンジダ菌等の口腔内の病原性細菌によって引き起こされる口腔内疾患をいい、例えば、う蝕症、歯肉炎歯周炎等の歯周病、口腔カンジダ症が挙げられる。口腔内疾患は好ましくは、歯肉炎、歯周炎等の歯周病である。
う蝕原性細菌としては、例えば、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)、歯周病原性細菌としては、例えば、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラインターメディア(Prevotella intermedia)、トレポネーマ・デンティコーラ(Treponema denticola)、タンネレラ・フォーサシア(Tannerella forsythia)、アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)等が挙げられ、口腔カンジダ症原因菌としては、例えば、カンジダアルビカンス(Candida albicans)等が挙げられる。

0023

本発明の口臭の予防及び/又は改善剤における「口臭原因菌」としては、例えば、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、トレポネーマ・デンティコーラ(Treponema denticola)、ベイヨネラ・ディスパー(Veillonella dispar)等が挙げられる。

0024

後記実施例に示すように、本発明の乳酸菌は、歯面及び口腔内に接着し、口臭原因菌・歯周病原性細菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)及びアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)に対して増殖阻害作用を有する。また、本発明の乳酸菌は、口臭の原因となるVSCや、う蝕の原因となる非水溶性グルカンを産生せず、また、エナメル質を脱灰せず、さらに感染性心内膜炎を惹起しないことが確認された。
従って、本発明の乳酸菌は、口腔内細菌の健常化を図り、口腔内の病原性細菌によって引き起こされるう蝕症、歯肉炎、歯周炎等の歯周病、口腔カンジダ症、口臭等の様々な口腔内疾患又は不快症状の予防、改善又は治療のための医薬品、飲食品、ペットフード、口腔用組成物等として使用することができる。

0025

医薬品として使用する場合における経口投与製剤剤型としては、例えば、錠剤カプセル剤顆粒剤糖衣錠丸剤細粒剤散剤粉剤徐放性製剤、懸濁液、エマルジョン剤シロップ剤凍結乾燥剤液剤エリキシル剤等が挙げられる。

0026

上記製剤は、常法によって製造でき、また、本発明の乳酸菌を単独で使用してもよく、薬学的に許容される担体と組み合わせて使用してもよい。該担体としては、例えば、乳糖白糖塩化ナトリウムブドウ糖尿素デンプン炭酸カルシウムカオリン結晶セルロースケイ酸等の賦形剤;デンプン、デキストリンアラビアゴム末ゼラチンメチルセルロースヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロースポリビニルピロリドンマクロゴール等の結合剤ヒドロキシプロピルスターチカルボキシメチルセルロースナトリウムカルボキシメチルセルロースカルシウムカルボキシメチルセルロース低置換ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤ラウリル硫酸ナトリウム大豆レシチンショ糖脂肪酸エステルポリソルベート80等の界面活性剤;タルクロウ類水素添加植物油ステアリン酸マグネシウムステアリン酸カルシウムステアリン酸アルミニウムポリエチレングリコール等の滑沢剤軽質無水ケイ酸乾燥水酸化アルミニウムゲル合成ケイ酸アルミニウムケイ酸マグネシウム等の流動性促進剤;注射用蒸留水生理食塩水ブドウ糖水溶液オリーブ油ゴマ油ラッカセイ油ダイズ油トウモロコシ油プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の希釈剤等が挙げられる。また、必要に応じて、矯味剤着色剤香料殺菌剤浸透圧調整剤pH調整剤乳化剤、吸収助剤酸化防止剤増粘剤等張化剤等の慣用添加剤を適宜添加することもできる。

0027

また、飲食品、ペットフード等として使用する場合には、本発明の乳酸菌に必要に応じて種々の栄養成分を加えて、上記飲食品等に含有せしめればよい。この飲食品等は、例えば、う蝕症、歯周病、口臭の予防又は改善に有用な保健食品又は食品素材として利用でき、これらの飲食品等又はその容器には、前記の効果を有する旨の表示を付してもよい。

0028

飲食品等の形態としては、飲食品等として使用可能な添加剤を適宜使用し、慣用の手段を用いて食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセルペースト等に成形してもよく、また種々の食品、例えば、ハムソーセージ等の食肉加工品、かまぼこ、ちくわ等の水産加工品パン菓子バター粉乳発酵飲食品に添加して使用し、又は水、果汁牛乳清涼飲料茶飲料等の飲料に添加して使用してもよい。これらの中でも、有効成分である乳酸菌を含有する発酵乳発酵飲料乳酸菌飲料)、発酵豆乳発酵果汁発酵植物液等の発酵製品、錠剤、カプセルなどのサプリメント製品が好ましい。
発酵製品の製造は常法にしたがって製造することができる。例えば発酵乳は、殺菌した乳培地に乳酸菌を接種培養し、これを均質化処理して発酵乳ベースを得る。次いで別途調製したシロップ溶液添加混合し、ホモゲナイザー等で均質化し、さらにフレーバーを添加して最終製品とすることができる。このようにして得られる発酵乳は、プレーンタイプ、ソフトタイプフルーツフレーバータイプ、固形状、液状等のいずれの形態の製品とすることもできる。

0029

口腔用組成物として使用する場合の具体的な形態としては、洗口剤マウスウォッシュ練歯磨、粉歯磨、水歯磨、口腔用軟膏剤ゲル剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、グミゼリートローチタブレット、カプセル、キャンディーチューインガム等が挙げられ、好ましくは、練歯磨、洗口剤、グミゼリー、トローチ、錠剤、タブレットが挙げられる。

0030

上記医薬品、飲食品、ペットフード、口腔用組成物等における本発明の乳酸菌の含有量は、特に限定されず、一日投与量又は摂取量に合わせて適宜調節すれば良いが、例えば剤型が液体の場合には、乳酸菌体濃度を1×106CFU/mL〜1×108CFU/mLとすることが好ましく、固体の場合には、1×107CFU/g〜1×1010CFU/gとすることが好ましい。

0031

本発明の乳酸菌を使用する際の投与量又は摂取量に厳格な制限はない。対象者や適用疾患等の様々な使用態様によって得られる効果が異なるため、適宜設定することが望ましいが乳酸菌の菌数を、1×103CFU以上を1日量として含有する量が好ましく、1×103〜1×1013CFUを1日量として含有する量がより好ましく、1×106〜1×1010CFUを1日量として含有する量が特に好ましい。

0032

ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus) YIT12319及び他のラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)のゲノムDNAを解析したところ、配列番号4〜8から選ばれる塩基配列が、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319に特異的であること、及びこれらの塩基配列を有するプローブ又はプライマーを用いればラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319の遺伝子が特異的に検出又は増幅できることを見出した。

0033

本発明のプローブ又はプライマーは、配列番号4〜8から選ばれる塩基配列又は該塩基配列に相補的な配列からなり、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319(FERM BP−11500)に菌株特異的なプローブ又はプライマーである。

0034

前記プライマーとしては、配列番号4及び配列番号5、配列番号4及び6、配列番号4及び7、配列番号4及び8から選ばれる塩基配列又は該塩基配列に相補的な配列からなるプライマーが、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319(FERM BP−11500)に対する特異性が高い点でより好ましい。

0035

前記プローブ又はプライマーを用いることで、生理生化学的性状の確認など煩雑な操作を行うことなく検体から抽出したラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319(FERM BP−11500)由来のDNAを使ったPCR反応により、迅速かつ簡便に当該菌株の同定・解析・検出等を行うことが可能となる。

0036

以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。

0037

試験例1口腔細菌の分離
1)被験者試料採取
被験者56名(男性34名、女性22名、25〜66平均年齢40.6歳)より歯垢唾液を含む)と舌苔別個に採取した。この口腔試料は採取後、使用するまで上に静置した。菌の分離に際しては、これらの試料を等量混合後、その300μLを2.7mLの滅菌嫌気輸送培地に添加し、10-1希釈液を作製した(好気・嫌気培養用3.0mL×各1本)。

0038

2)口腔細菌の培養と分離
ブルセラウサギ溶血平板培地(BRU平板培地、トリプトペン10.0g、ペプタミン 10.0g、酵母エキス2.0g、グルコース1.0g、塩化ナトリウム5.0g、酸性亜硫酸ナトリウム0.1g、ヘミン5.0mg、ビタミンK1 1.0mg、発育補助液 10.0mL、兎溶血液 60.0mL、寒天15.0g、pH7.0)への口腔試料の塗布操作は、嫌気グローブボックス内で行った。ディスポーザブル試験管FALCON2058)に滅菌嫌気希釈液を1.8mL分注し、10-1希釈液を200μL添加して10-2希釈液を作製した。以下同様にして10-10希釈液まで作製し、各希釈液100μLを平板培地に塗布した後、表1に示す条件で培養した。
一方、5.0%液加TSA平板培地(TSA平板培地、カゼインペプトン15.0g、ダイズペプトン5.0g、塩化ナトリウム 5.0g、羊脱繊維血液 50.0mL、寒天 15.0g、DW1000mL、pH7.3)、MRS平板培地(Proteose Peptone No.3 10.0g、Beef Extract 10.0g、Yeast Extract 5.0g、Dextrose 20.0g、Polysorbate 80 1.0g、AmmoniumCitrate 2.0g、Sodium Acetate 5.0g、Magnesium Sulfate 0.1g、Manganese Sulfate 0.05g、Dipotassium Phosphate 2.0g、Agar 15g、DW 1000mL)、LBS平板培地(Pancreatic Digest of Casein 10.0g、Yeast Extract 5.0g、Monopotassium Phosphate 6.0g、Ammonium Citrate 2.0g、Dextrose 20.0g、Polysorbate 80 1.0g、Sodium Acetate Hydrate 25.0g、Magnesium Sulfate 0.575g、Manganese Sulfate 0.12g、Ferrous Sulfate 0.034g、Agar 15.0g、Lab−lemco powder(Oxoid) 8g,Sodium acetate,trihydorate 15g、DW 1000mL Acetate 3.7mL)、及びMitis−Salivarius平板培地(MS平板培地、Bacto Tryptose 10g、Bacto Proteose Peptone No.3 5g、Bacto Proteose Peptone 5g、Bacto Dextrose 1g、Bacto Saccharose 50g、Dipotassium Phosphate 4g、Trypan Blue 0.075g、Bacto Crystal Violet 0.0008g、Bacto Agar 15g DW 1000mL、pH7.0±0.2)については、スパイラルステム(自動平板塗布装置)を用いて試料を塗布した後、表1に示す条件で培養した。

0039

0040

各種平板培地に生育した口腔内細菌数を表2に示す。
MRS、MS及びLBS平板培地について、希釈率の高い希釈液を塗布した平板培地から順に、形態の異なるコロニーから釣菌し、MRSあるいはBHI液体培地子ウシ浸出物12.5g、ウシ心筋浸出物 5.0g、プロテオースペプトン10.0g、ブドウ糖2.0g、塩化ナトリウム5.0g、リン酸水素二ナトリウム2.5g、DW1000mL、pH7.4±0.2)で増殖させた後、2×BHI:グリセロール=1:1溶液に懸濁し、−80℃で保存し、以下の試験に供した。

0041

0042

試験例2 VSC産生能の評価
試験例1で分離した凍結保存菌株を用いた。また、陽性対照株としてフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum) YIT 6069を用いた。
上記分離菌株をMRS液体培地に接種し、37℃で24時間嫌気培養した。この菌体の培養液0.04mLを1% D−(+)−グルコース、66mM DL−メチオニン(終濃度500−1,500μM)を含む変法GAM液体培地(ペプトン5.0g、ダイズペプトン3.0g、プロテオーゼペプトン 5.0g、消化血清末 10.0g、酵母エキス末 2.5g、肉エキス末 2.2g、肝臓エキス末1.2g、ブドウ糖0.5g、溶性デンプン5.0g、L−トリプトファン0.2g、L−システイン塩酸塩0.3g、チオグリコール酸ナトリウム0.3g、L−アルギニン1.0g、ビタミンK1 5mg、ヘミン10mg、リン酸二水素カリウム2.5g、塩化ナトリウム3.0g、DW1000mL、pH7.3)4mLに植え継ぎ、37℃で嫌気的に培養した。培養開始24時間後、培養液に6.0Nの塩酸溶液0.16mLを添加してpHを1以下に低下させ、菌体の物質代謝を停止させた。
その後、ヘッドスペース揮発した揮発性硫黄化合物(VSC)をガスクロマトグラフ或いはオーラルクロマにより分析した。なお、37℃で24時間嫌気的にインキュベートした培地を陰性対照とした。

0043

試験例3非水溶性グルカン産生能の評価
試験例1で分離した凍結保存菌株をBHI又はMRS液体培地に2白金耳接種し、37℃で24時間嫌気培養した。この菌体の培養液0.04mLを1%スクロースを含むHI(ウシ心筋浸出物5.0g、プロテオースペプトン10.0g、ブドウ糖2.0g、塩化ナトリウム5.0g、リン酸水素二ナトリウム2.5g、DW1000mL、pH7.4±0.2)、又はMRS+HIの混合(7:3)液体培地4mLに植え継ぎ、試験管を45度に傾けて37℃で嫌気的に培養した。
非水溶性グルカンの産生能は、試験管壁へ付着するグルカンの量及びその付着強度で評価した。培養24時間後に、試験管から培養液を除去し、PBS4mLを加えておだやかに3回転させ、管壁洗浄した。PBSを除いた後、試験管の壁面に付着している非水溶性グルカン量を表3の基準に従って、視覚的に判定した。

0044

試験例2及び3の結果を表3に示す。試験例1で分離した凍結保存菌株のうち、表3の点線で囲った計241株を選抜した。このうち、MRS及びMS培地から単離したストレプトコッカス様細菌が176株、LBS培地から単離したラクトバチルス様の細菌が65株であった。
なお、陽性対照株であるフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum) YIT 6069は、メチオニンの添加量に依存してVSCを産生した。

0045

0046

試験例4菌種の同定
DNAをベンジルクロライド法により抽出した。培養後の菌体を830×g、10分間遠心分離し、菌体を得た。この菌体に200μL DNA Extractionバッファー、400μL塩化ベンジル、300mgのガラスビーズ(直径0.1mm)を加えた。FastPrepにより振盪した後(スピード6.5、30秒間)、遠心分離(20,000×g、5分間、4℃)して得られた上清当量イソプロパノールを添加し良く攪拌した。遠心分離(20,000×g、10分間、4℃)して上清を除去した後、150μLの70%エタノールを添加し、再度遠心分離し得られた沈殿を風乾し、適量のTE(Tris−EDTA)に溶解した。PCR反応液は全量25μL中に3.2μLの10×PCRbuffer(1×PCR buffer=10mM Tris−HCl(pH8.3)、50mM KCl、1.5mM MgCl2)、2.5μLの2.5mM dNTP(deoxynucleotide triphosphate)、0.5μLの25pmol/μL primers(Forward primer 63F;配列番号1、Reverse primer 15R;配列番号2)、0.5unitsの DNA Taq polymerase(Takara Ex Taq hotstart)、1μLの10ng/mL template DNAとした。PCR反応は、94℃、20秒、(94℃、20秒、55℃、20秒、72℃、90秒)×30cycles、72℃3分とした。ダイターミネーター法により分離株の16S−rDNA塩基配列を決定した。シーケンス反応用のプライマーは520R(配列番号3)とし、DNA Data Bank of Japanに登録してある菌種の配列とのホモロジーを比較して、98%以上の類似性を有するものを同一種とした。使用したプライマーを表4に示す。真正細菌および古細菌の16S−rDNAには、その両端あるいは内部に10か所程度高度に保存された領域があり、63F、15R及び520Rなどのこれらの配列に基づいてデザインされたプライマーを用いることで、細菌の種類に関わらず遺伝子を増幅したり、配列を解析したりできる。

0047

0048

試験例2及び3で選抜した241株について、16S−rDNA塩基配列を用いて菌種を同定した結果、ストレプトコッカス様細菌は主にストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)、ストレプトコッカス・サングィニス(Streptococcus sanguinis)等に同定された。また、ラクトバチルス様細菌の中で最も分離数が多かったのはラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)であった。

0049

試験例5 歯面への接着性の評価
試験例2及び3の結果より選抜した241株のなかから、同定試験の結果、安全性に問題があると判断された菌株を除外し、以下の試験に使用した。

0050

試料の調製方法及びハイドロキシアパタイト(HA)への接着性評価はGibbonsらの方法(Gibbons,R.J.,E.C.Moreno,and D.M.Spinell“Model delineating the effect of a salivarypellicle on the adsorption of Streptococcus mitior onto hydroxyapatite.”Infect. Immun.1976:14:1109−1112)に従った。
各分離菌株をMRS液体培地4mLに接種し、24時間培養した。培養後、遠心分離(1,912×g、10分間、4.0℃)し、PBSで2回洗浄した。550nmでの吸光度が1.0となるようにPBSで希釈した菌液をHAへの接着性試験に用いた。
本試験で使用する唾液は、下記のように採取した。蒸留水でうがい後、パラフィンガムを噛み、その刺激により分泌される唾液を遠心管に集めた。タンパク分解酵素失活させるために、60°Cで30分間加熱した後、遠心分離(10,000×g、10分間、4.0℃)を行い、上清を得た。5名分の唾液を等量ずつ混合した後、フィルター滅菌(0.22μm)し、使用するまで4℃で保存した。
ハイドロキシアパタイトビーズ(Bio−Rad 40μm)5mgをPBSで洗浄した後、加熱調製した唾液を4mL添加し、37℃で30分間振盪した。振盪後、PBSで2回洗浄したビーズ唾液処理HA(S−HA)として使用した。また、唾液の代わりにPBSを添加して同条件で調製したビーズをPBS処理HA(P−HA)として使用した。
菌液2mLをS−HAおよびP−HAに添加し、37℃で1時間振盪させた。また、対照として菌液のみを同条件で振盪した。反応後10分間室温で静置し、上清1mLを新しいチューブに採取した。微細なHAを溶解させるために上清に0.1MEDTAを100μL添加し、攪拌後1時間室温で静置した。その後、550nmでの吸光度を測定し、下式(1)によりHAビーズに接着した菌の割合を接着率(%)として算出した。

0051

0052

結果を表5及び6に示す。試験例2及び3で選抜した241株の内、ストレプトコッカス属に分類された菌株の76%がS−HAに接着した。また、一般的に乳酸桿菌の歯面への接着性は低いとされている(H.J.Busscher.“In vitro Adhesion to Enamel and in vivo Colonization of Tooth Surfaces by Lactobacilli from a Bio−Yoghurt”Caries Res 1999:33:403−404.)が、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)の順に高いS−HAへの接着性を示した。

0053

0054

0055

試験例6口腔内細胞への接着性の評価
試験例2及び3の結果より選抜した241株のなかから、同定試験の結果、安全性に問題があると判断された菌株を除外し、以下の試験に使用した。

0056

1)細胞株の培養
HO−1−N−1細胞(JCRB0831:ヒト頬粘膜扁平上皮ガン由来細胞、以下「HO」と略す)及びHSC−3細胞(JCRB0623:ヒト扁平上皮ガン由来細胞、以下「HSC」と略す)を5.0%CO22、37℃で培養した。HO細胞には、10%牛胎児血清を含むDMEM培地GIBCO社 11885)を、HSC培地には10%牛胎児血清を含むDMEM/F12培地(GIBCO社 11320)を用いた。

0057

2)細胞への接着性の評価
10%牛胎児血清を含む培地を用いて、細胞を1.0×105個/mLになるように懸濁した。この懸濁液を、Lab−Tek IIチャンバースライド(Nalge Nunc)に、1ウェルあたり200μL加え、48〜96時間培養した。その後、スライドガラス表面に付着しなかった細胞をRPMI1640で洗浄・除去した。MRS液体培地で一晩培養後、生菌数OD660=0.25に調整した分離株を、1ウェルあたり200μL添加した後、37℃で10分間インキュベートした。その後、細胞をRPMI1640で3回洗浄し、細胞に接着していない菌を除去した。スライド上の付着物グラム染色した後、0.16mm2あたりに含まれる細胞上に接着した菌数を光学顕微鏡を用いて測定した。なお、測定は、任意に選んだ6視野について行った。

0058

結果を表7及び8に示す。ラクトバチルス属では7株、ストレプトコッカス属では17株に、0.16mm2に含まれる細胞に対して、HO細胞とHSC細胞の合計で10個以上の菌の接着が認められた。
ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)YIT 12320、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)YIT 12321及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)YIT 12322には、いずれも単位面積あたり30個以上の強い接着性が認められた。

0059

0060

0061

試験例7口臭原因菌(歯周病原性細菌)に対する増殖阻害評価
上記の試験例の結果より、表10及び11に示す菌株を選抜した。対象菌株として、口臭原因菌且つ歯周病原性細菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)ATCC33277、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia) ATCC 25611、アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans) Y4、う蝕原性細菌であるストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)ATCC 25175、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)ATCC 33478を用いた。

0062

分離菌株を4.0mLのMRS液体培地に一白金耳を植菌した。24時間培養後、遠心分離(1,912×g、10分間、4℃)して上清を得た。さらにこの上清を0.22μmのフィルターでろ過したろ液試験試料とした。各試料の抗菌活性はRadial diffusion assayによって測定した。TS培地(Tryptic soy broth(Difco)6.0mg、Tween20 2.0μL、agarose 100mg、H2O 10mL)10mLに各対象菌株のBHI培養液100μLを添加し十分に攪拌した後、シャーレ内で固めた。培地が固まったら、直径2.5mmの穴を作り、そこへ試験試料5.0μLを加えた。37℃で1時間培養後にTS培地(Tryptic soy broth (Difco)0.6mg、agarose100mg、H2O 10mL)を重層させ、37°Cで培養した。培養条件は表9に記載した。培養後、穴の外側にできた菌の増殖していないクリアゾーン領域(阻止円径)の直径を次式(2)より計測した。
阻止円径(mm)=試験試料のクリアゾーンの直径(mm)−穴の直径(mm) (2)

0063

0064

結果を表10及び11に示す。分離菌株のうちラクトバチルス属の培養上清に、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する強い増殖阻害効果が認められた。また、プレボテラ・インターメディアやアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンスに対しても増殖阻害効果が認められた。今回の試験では、培養上清のpHを7.0に調整してもポルフィロモナス・ジンジバリスに対する阻害効果を示す株が認められたことから、これらの株は有機酸以外にも、過酸化水素バクテリオシン等の抗菌物質を産生している可能性が高いと考えられた。また、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319には、う蝕原性細菌であるミュータンス連鎖球菌(ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)及びストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus))に対する増殖阻害効果が認められた。培養上清のpHを7.0に調整して試験した結果、増殖阻害効果は認められなかったが、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)及びストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)は酸を産生し、菌自身は耐酸性であるため、pHの低下により増殖が抑制される可能性は低いと考えられる。したがって、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319は、過酸化水素やバクテリオシンなどの抗菌物質を産生している可能性があると考えられた。

0065

ストレプトコッカス属でも、15株の培養上清に口臭原因菌(歯周病原性細菌)に対する増殖阻害効果が認められたが、効果の強さは、ラクトバチルス属の分離株と比較すると弱かった。これらは、pHを7.0に調整してもポルフィロモナス・ジンジバリスの増殖を阻害することが可能であったことから、ラクトバチルス属の分離菌株と同様に、過酸化水素やバクテリオシンなどの抗菌物質を産生している可能性が考えられた。
ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)YIT 12320、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)YIT 12321及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)YIT 12322には、いずれも阻止円径(直径)の合計が9mm以上の強い増殖阻害効果が認められた。

0066

0067

0068

試験例8ラット実験的心内膜炎モデルを用いた感染性心内膜炎の起炎性の評価
上記試験例の結果より、表12及び13に示す菌株を選抜した。陽性対照として心内膜炎起炎菌であるラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus) YIT 0227を使用した。

0069

試験動物として、生後週齢のCrl:CD(SD)系雄性ラット102匹(日本チャールス・リバー株式会社)を用いた。
実験的心内膜炎(非細菌性心内膜炎)モデル動物作出は以下のように行った。麻酔剤としてケタラール(塩酸ケタミン50mg/mL含有)とセラクタール(塩酸キシラジン20mg/mL含有)を18:5の割合で混合した後、2mL/kgの投与量で腹腔内に投与した。その後、麻酔下で頚部皮膚を切開して右頚動脈露出させ、外径0.61mmのポリエチレンチューブ夏目製作所、SP10)を用いた約20cmのカテーテルを右頚動脈から左心室に挿入・留置した。非細菌性血栓性心内膜炎動物を作出した翌日に、1mLディスポーザブルシリンジ注射針27Gを用いて菌液を0.5mL/ラットとなるように尾静脈内投与した。
投与菌液は、次のように調製した。先ず、MRS培地4mLに分離株10μLを植菌し、37℃で20時間培養した。この培養液100μLを新鮮なMRS培地10mLに植菌し、さらに37℃で20時間培養した。培養終了後、培養液を遠心分離(1,670×g、 10分間、4.0℃)して上清を除去した。培地と等量の生理食塩水を加え、ボルテックスにより十分に攪拌・洗浄した後、再度遠心分離(1,670×g、10分間、4.0℃)して上清を除去した。この洗浄操作を三度繰り返した後、規格菌数(4.0〜9.0×106CFU/mL)となるように生理食塩水を加えて希釈し、投与用の菌液とした。
被験菌投与日から4日後に採血した末梢静脈血を生理食塩水で段階希釈し、原液0.5mLおよび10-2希釈液1.0mLを混釈法によりMRS平板培地にプレーティングした。37℃で3日間培養後、平板上に生育したコロニーを計数して、血液1mL中の生菌数を算出した。同様に疣贅を含む心臓ホモジネート液を生理食塩水で段階希釈し、原液、10-2、10-4、10-6希釈液1.0mLを混釈法によりMRS平板培地にプレーティングした。37℃で3日間培養後、平板上に生育したコロニーを計数して、生菌数を算出した。なお、2枚のプレートのどちらにもコロニーを検出しない場合に、どちらか1枚のプレートから1個のコロニーが認められたと仮定して、1を疣贅重量で除した数値検出限界値とした。

0070

結果を表12及び13に示す。陽性対照であるYIT 0227を投与したラットでは、血液から6例中5例(1〜28CFU/mL)で、疣贅からは全検体(1.4×103〜1.7×106CFU/heart)で投与菌が検出された。一方、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)LBS17−11、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)YIT 12320、及びラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)YIT 12321を投与したラットでは、血液及び疣贅からは投与菌が検出されなかった。よって、これらの菌株はラットでの心内膜炎起炎性は陰性であると判定された。
また、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)YIT 12322を投与したラットでは、血液からは投与菌が検出されず、疣贅からも1検体のみ菌が検出されるにとどまったことから陰性であると判定された。それ以外の菌株を投与したラットでは、全個体の疣贅から投与菌が検出され、検出菌数も高かった(6.2×104〜9.4×106CFU/heart)ことから、いずれの株も陽性と判定された。

0071

0072

0073

試験例9人工口腔装置を用いたう蝕性の評価
ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)YIT 12320、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)YIT 12321、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)YIT 12322、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)LBS17−11及びラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)LBS 46−52を使用した。また、陽性対照としてストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)6715、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)ATCC33478を使用した。

0074

分離菌株をストックした試験管から新鮮なTS培地又はMRS培地4mLの入った試験管に3白金耳植菌して37℃にて16時間嫌気培養した。この培養液4mLを、1Lの新鮮なTS又はMRS培地に植菌し、37℃で16時間嫌気培養した。この培養液を遠心分離(4,830×g、20分間、4℃)して集菌した。これをPBSで洗浄した後、さらに遠心分離した菌体を200mLのPBSに懸濁した。一部をサンプリングしてPBSで1/10希釈した後、その濁度を540nmにて測定し、全体をOD540=0.5あるいは1.0となるようにPBSを用いて調整した。
この菌液によるウシエナメル質の硬度変化を人工口腔装置により測定した。具体的には、pHの経時変化人工バイオフィルム下に設置したpHメーターにより測定した。また、ウシエナメル質の硬度変化を実験前と実験後における歯片のVickers硬度の変化から求めた。さらに、各ウシエナメル質切片を0.5N NaOH(2mL)に0℃で10分間浸漬し、人工バイオフィルムを遊離させた後に遠心分離し(4,830×g、20分間)、菌体と上清(非水溶性グルカン分画)に分画した。菌体をPBSに懸濁してOD540 nmの濁度を測定した値から歯片mm2当たりの菌体量を求めた。また、上清中の非水溶性グルカン量をPhenol硫酸法により測定した。
なお、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)YIT 12321については、菌体濃度と反応時間をそれぞれ2倍にした条件で人工口腔装置によるう蝕性を評価した。

0075

結果を図1〜4に示す。う蝕原性細菌であるストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus) 6715の場合、スクロース存在下で20時間、本菌と接触させたウシエナメル質の硬度は試験開始前と比較して約60〜80%低下していた(図1、3)。また、エナメル質からは、非水溶性グルカンと菌体が回収されたことから(図2)、本菌がエナメル質表面に非水溶性グルカンを主体とするバイオフィルムを形成し、その中で酸を産生することにより脱灰を進めた結果、硬度が低下したと考えられた。
一方、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)YIT 12320、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)YIT 12321及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)YIT 12322の硬度の低下割合は、いずれの株も5%未満であった(図1、3)。また、いずれの菌株を作用させたエナメル質からも非水溶性グルカンは回収されなかった(図2、4)。

0076

ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)YIT 12321について、菌体濃度と反応時間をそれぞれ2倍にした条件で人工口腔装置によるう蝕性を調べた結果を図5に示す。エナメル質硬度の低下割合は元の条件とほぼ同程度(4.4%低下)であったことから、本菌を過剰摂取してもう蝕を誘発する可能性は低いと考えられた。

0077

ウシエナメル質の硬度が低下しない原因を調べるため、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)YIT 12321のスクロース資化性を調べた。スクロース資化性は、ILS液体培地(BBLTrypticase Peptone(BD) 10g、Yeast Extract(BD) 5g、Bacto Tryptose(BD) 3g、KH2PO4 3g、K2HPO4 3g、(NH4)3C6H5O7 2g、Lactose 20g、L−cysteine・HCl 0.2g、CH3COONa 1g、Tweeen80 1g、Salt solution(MgSO4・7H2O 11.5g/100mL、FeSO4・7H2O 0.68g/100mL、MnSO4・5H2O 2.4g/100mL) 5mL、DW1000mL)のラクトースをスクロースに置き換えた培地を用いて、37℃、24時間培養した。菌の増殖はOD660nmで測定した培養液の吸光度で表した。
その結果、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)YIT 12321はスクロースを増殖基質として利用できないことが明らかとなった(図6)。ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)の標準菌株(YIT 0192T)はスクロースを資化できることから、この性質は株特異的であると考えられた。

0078

以上の結果から、今回試験した分離菌株のラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)YIT 12320、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)YIT 12321及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)YIT 12322は、う蝕の原因にならないと考えられた。特にYIT 12321は、スクロースを資化しないため、より有用であると考えられた。
これら、YIT 12319、YIT 12320、YIT 12321及びYIT 12322は、新規な菌株であり、それぞれ独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センター(住所:茨城県つくば市東1−1−1 中央第6)に、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319(FERM BP−11500)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)YIT 12320(FERM BP−11501)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)YIT 12321(FERM BP−11502)及びストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)YIT 12322(FERM BP−11503)として寄託された。

0079

前記した試験例2、3及び5において良好な結果が得られた菌株(VSC産生能及び非水溶性グルカン産生能を有さず、歯面への接着性を有する菌株)について、試験例6乃至9の結果(一覧)を表14に示す。本発明者らが口腔内から分離した約1600株の微生物について鋭意検討した結果、本発明に係る(1)〜(6)の全ての性質を有する乳酸菌はわずかに4菌株が見出されたのみであり、そのような特異的な性質を有する乳酸菌は様々な口腔内疾患又は不快症状の予防又は改善のための飲食品、口腔用組成物等として極めて有用であることが確認された。

0080

0081

試験例10 ヒトでの口腔内環境改善効果の検証
口腔内環境に対する本発明に係る乳酸菌ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319摂取の効果を調べるため、口臭のある被験者17名を対象に1粒当たり3.3×108cfu以上の生菌を含む試験食品を1日1回3粒、4週間連続摂取させた。

0082

試験食品摂取期の開始日(0週)および摂取4週目に被験者から刺激唾液(パラフィンガムを5分間噛みながら分泌される唾液)を採取し、下記の口腔内細菌数を測定した。
歯周病原性細菌量(PCRインベーダー法)、う蝕原性細菌量培養法)、乳酸菌量(培養法)

0083

また、臨床パラメーターとして、摂取開始日、摂取4週に以下の各項目を測定した。歯肉炎指数およびプロービング時の出血歯科医師が測定した。
評価項目
1)歯肉炎指数(GI:Lee & Sillness、1963変法)
評価基準
0:臨床的に正常な歯肉
1:軽度の炎症、歯肉のわずかな色調変化があるもので、プローブによる歯肉辺縁内縁部の擦過により出血が認められない。
2:中等度の炎症、歯肉に発赤を伴う浮腫と光沢があり、歯肉辺縁内縁部の擦過により出血が認められる。
3:高度の炎症、著しい発赤、浮腫があり、自然出血、潰瘍形成がある。
診査部位
下記6歯の舌側唇側頬側、近心側、遠心側の合計24歯面とした。

0084

0085

評価方法
下式を用い、診査部位の総点数より被験者ごとの平均歯肉炎スコアを算出した。

0086

0087

2)プロービング時の出血(BOP
評価基準
0:出血が認められない
1:出血が認められる
診査部位
下記6歯の舌側、唇側・頬側、近心側、遠心側の合計24歯面とした。

0088

0089

評価方法
下式を用い、診査部位の総点数より被験者ごとの平均プロービング時の出血スコアを算出した。

0090

0091

ヒト試験に関するすべての統計解析については、統計解析ソフト(SAS前臨床パッケージVer. 5.0、SAS Institute Inc.)を用いた。各統計処理とも有意水準は5%とした。0週目の値に対して、摂取4週目あるいは8週目との値について、有意差検定を実施し、試験期間中の変動を解析した。

0092

被験者17名の唾液中菌数測定結果を表17に示した。口臭原因物質を産生する歯周病原性細菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)及び、タンネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)の菌数が当該乳酸菌摂取4週目に減少し(P=0.019、0.006、0.005)、乳酸桿菌数が当該乳酸菌摂取4週目で増加した(P=0.001)。ミュータンス連鎖球菌は試験期間中に変化が認められなかった。

0093

0094

すなわち、本発明に係る乳酸菌の摂取により、口臭原因物質を産生する歯周病原性細菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)及び、タンネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)等)の菌数が減少することが確認され、当該乳酸菌が口腔内疾患・口臭の予防及び/又は治療剤として極めて有用であることが確認された。また、試験期間を通してう蝕の原因菌であるミュータンス連鎖球菌の菌数に変化は認められなかった。そのため、本発明に係る乳酸菌を摂取することによりう蝕のリスクが高まる可能性は低いと考えられた。

0095

さらに、プロービング時の出血および歯肉炎指数は、当該乳酸菌摂取4週目で摂取開始時にくらべ有意に低い値を示した。評価項目の解析結果を表18に示した。

0096

0097

すなわち、本発明に係る乳酸菌の摂取により、歯肉炎等の歯周病の臨床パラメーターを改善する効果が確認され、当該乳酸菌が口腔内疾患・口臭の予防及び/又は治療剤として極めて有用であることが確認された。

0098

試験例11ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)陽性被験者での口臭抑制効果の検証
口臭に対する本発明に係る乳酸菌ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319摂取の効果を調べるため、歯周病原性細菌の一つで口臭原因物質を産生するポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)陽性被験者7名を対象に1粒当たり3.3×108cfu以上の生菌を含む試験食品を1日1回3粒、8週間連続摂取させたときの揮発性硫黄化合物(VSC)濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。

0099

ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)陽性被験者群のVSC濃度の解析結果を表19に示した。VSC濃度を測定した結果、H2Sでは、当該乳酸菌摂取4、8週目で摂取開始時にくらべ有意に低い値を示した。また、Total VSCでは当該乳酸菌摂取8週目で摂取開始時にくらべ有意に低い値を示した。

0100

0101

すなわち、本発明に係る乳酸菌の摂取により、実際に口臭原因物質が低減される効果が確認され、当該乳酸菌が口腔内疾患・口臭の予防及び/又は治療剤として極めて有用であることが確認された。

0102

試験例12プライマーの設計及び合成
ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319と他のラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)17株のゲノムDNAをRAPD法により比較し、目的とする菌株(ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319)に特異的なDNA配列を三部位見出した。そして、これらの塩基配列を解読して、表20に示すプライマーの候補群を選抜し、これらを適宜組み合わることにより、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319に特異的なプライマーペアを35種設計した。

0103

0104

試験例13 同種(ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)に対して特異的なプライマーペアの選抜
ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319および他のラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)20株のゲノムDNAに対し、設計した35種のプライマーペアを用いたPCR反応を行った。その結果、表21に示す4種のプライマーペアでは、PCRによるDNAの増幅産物がラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319のみ確認された(表21、図7)。
ここで、Lc(X)2aは配列番号4、Lc(X)2bは配列番号5、Lc(X)2cは配列番号6、Lc(X)2dは配列番号7、Lc(X)7aは配列番号8を示す。

0105

0106

試験例14ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)以外の27属143菌株に対して特異的なプライマーペアの選抜
表22に示すラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319およびラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)以外のLactobacillus属65菌株、Lactobacillus属に近縁な7菌株、口腔の優先菌22属71菌株(合計27属143菌株)のゲノムDNAに対し、表21に示す4種のプライマーペアを用いたPCR反応を行った。その結果、すべてのプライマーペアでラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319のみのDNA増幅産物が確認された。
試験例13の結果と合わせて、27属163菌株に対して反応せず、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)YIT 12319のみ反応する4種のプライマーペアが得られた。

0107

0108

試験例15タブレットの製造
表23に示す成分(1粒あたり)を混和して、その混合物打錠した。

0109

0110

得られたタブレットは、安定なものであり、服用し易いものであった。

0111

実施例

0112

得られたタブレットは、安定なものであり、服用し易いものであった。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ