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技術 改質天然黒鉛粒子

出願人 中央電気工業株式会社
発明者 西原克浩山本浩司永田辰夫禰宜教之藤原徹
出願日 2012年4月3日 (8年10ヶ月経過) 出願番号 2013-508877
公開日 2014年7月28日 (6年6ヶ月経過) 公開番号 WO2012-137770
状態 特許登録済
技術分野 炭素・炭素化合物 電池の電極及び活物質
主要キーワード 炭素蒸着膜 脱落現象 非占有状態 内殻準位 固め見掛け比重 反結合 的規則性 XAFSスペクトル
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (8)

課題・解決手段

負極合剤集電体との間の密着性に優れた負極板をもたらす改質天然黒鉛材料は、円形度が0.92以上1.0以下であって、放射光励起光源として測定された粉体のC−K端X線吸収スペクトルから求められるピーク強度比入射角依存性S60/0が0.5以上0.7以下である。真比重が2.25g/cm3以上、タップ密度が1.0g/cm3以上1.4g/cm3以下、ならびに亜麻仁油吸収量が20cm3/100g以上50cm3/100g以下の少なくとも一つを満たすことが好ましい。その表面の少なくとも一部に炭素質材料が付着していてもよい。

概要

背景

リチウムイオン二次電池で代表される非水電解質二次電池の負極板は、少なくとも負極活物質バインダとを混合してなる負極合剤集電体に塗布した後、圧密化することを含む方法で製造される。集電体は、銅または銅合金からなる箔であることが多い。

負極活物質には、充電時にリチウムイオン等の陽イオン吸蔵できる材料が用いられ、典型的な材料として、層状結晶構造を有し、層間に陽イオンを吸蔵できる黒鉛材料が挙げられる。黒鉛材料は天然黒鉛人造黒鉛とに大別される。一般に、天然黒鉛は人造黒鉛に比べて安価である。天然黒鉛のうちでも、その形状が扁平であるためにアスペクト比の高い天然黒鉛は、結晶性を表す黒鉛化度が高いため、負極活物質として高い充放電容量(以下、単に「容量」という)が得られることが期待される。しかし、そのようなアスペクト比が高い天然黒鉛は、その形状が異方性を有するがゆえに、集電体に塗布するときに配向する、初回不可逆容量が大きい、充填密度が低い、といった問題点を有している。このため、アスペクト比が高い天然黒鉛は、そのままでは活物質として使用されず形状調整処理を施した後で使用されるのが普通である。

特許文献1および非特許文献1には、黒鉛粒子の形状調整法として、メカノフュージョン登録商標)を用いて粒子形状を円盤状にする方法が開示されている。特許文献2には、ジェットミルを用いて、粒子形状を球形化する方法が開示されている。特許文献3および4には、ピンミルを用いて粒子形状を球形化する方法が開示されている。

一方、負極合剤のもう一つの必須成分であるバインダは、負極活物質同士、または負極活物質と集電体、とを接着させる役割を果たす。接着性が確保できる範囲においてバインダの利用効率は高いことが望ましい。特に、近年、電極高密度化(負極合剤の単位体積あたりの容量の増加)が求められていることから、負極活物質同士または負極活物質と集電体との接着に関与することなく黒鉛粒子間に存在して、電極の高密度化の阻害因子となるバインダ量を最小限とするために、バインダ全体の使用量を少なくする傾向がある。

概要

負極合剤と集電体との間の密着性に優れた負極板をもたらす改質天然黒鉛材料は、円形度が0.92以上1.0以下であって、放射光励起光源として測定された粉体のC−K端X線吸収スペクトルから求められるピーク強度比入射角依存性S60/0が0.5以上0.7以下である。真比重が2.25g/cm3以上、タップ密度が1.0g/cm3以上1.4g/cm3以下、ならびに亜麻仁油吸収量が20cm3/100g以上50cm3/100g以下の少なくとも一つを満たすことが好ましい。その表面の少なくとも一部に炭素質材料が付着していてもよい。

目的

非水電解質二次電池が、民生用途のみでなく、自動車用途蓄電用途などへの展開も進められている中、生産性向上による低コスト化は重要な課題である

効果

実績

技術文献被引用数
4件
牽制数
2件

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請求項1

円形度が0.92以上であって、放射光励起光源としたC−K端X線吸収スペクトルの測定により求められる、下記式により定義されるピーク強度比入射角依存性S60/0が0.5以上0.7以下である、ことを特徴とする改質天然黒鉛粒子:S60/0=I60/I0ここで、I60=B60/A60I0=B0/A0A60:放射光の入射角を60°として測定した、粒子のC−K端X線吸収スペクトルにおける、C−1s準位からπ*準位への遷移帰属される吸収ピーク強度。B60:放射光の入射角を60°として測定した、粒子のC−K端X線吸収スペクトルにおける、C−1s準位からσ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク強度。A0:放射光の入射角を0°として測定した、粒子のC−K端X線吸収スペクトルにおける、C−1s準位からπ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク強度。B0:放射光の入射角を0°として測定した、粒子のC−K端X線吸収スペクトルにおける、C−1s準位からσ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク強度。

請求項2

真比重が2.25g/cm3以上である請求項1記載の改質天然黒鉛粒子。

請求項3

タップ密度が1.0g/cm3以上1.4g/cm3以下である請求項1または2記載の改質天然黒鉛粒子。

請求項4

亜麻仁油吸収量が20cm3/100g以上50cm3/100g以下である、請求項1から3のいずれかに記載の改質天然黒鉛粒子。

請求項5

請求項1から4のいずれかに記載される改質天然黒鉛粒子の表面の少なくとも一部に炭素質材料が付着してなる、炭素付着黒鉛粒子

技術分野

0001

本発明は、非水電解質二次電池、特にリチウムイオン二次電池の負極板における負極活物質として有用な、改質天然黒鉛粒子に関する。

背景技術

0002

リチウムイオン二次電池で代表される非水電解質二次電池の負極板は、少なくとも負極活物質とバインダとを混合してなる負極合剤集電体に塗布した後、圧密化することを含む方法で製造される。集電体は、銅または銅合金からなる箔であることが多い。

0003

負極活物質には、充電時にリチウムイオン等の陽イオン吸蔵できる材料が用いられ、典型的な材料として、層状結晶構造を有し、層間に陽イオンを吸蔵できる黒鉛材料が挙げられる。黒鉛材料は天然黒鉛人造黒鉛とに大別される。一般に、天然黒鉛は人造黒鉛に比べて安価である。天然黒鉛のうちでも、その形状が扁平であるためにアスペクト比の高い天然黒鉛は、結晶性を表す黒鉛化度が高いため、負極活物質として高い充放電容量(以下、単に「容量」という)が得られることが期待される。しかし、そのようなアスペクト比が高い天然黒鉛は、その形状が異方性を有するがゆえに、集電体に塗布するときに配向する、初回不可逆容量が大きい、充填密度が低い、といった問題点を有している。このため、アスペクト比が高い天然黒鉛は、そのままでは活物質として使用されず形状調整処理を施した後で使用されるのが普通である。

0004

特許文献1および非特許文献1には、黒鉛粒子の形状調整法として、メカノフュージョン登録商標)を用いて粒子形状を円盤状にする方法が開示されている。特許文献2には、ジェットミルを用いて、粒子形状を球形化する方法が開示されている。特許文献3および4には、ピンミルを用いて粒子形状を球形化する方法が開示されている。

0005

一方、負極合剤のもう一つの必須成分であるバインダは、負極活物質同士、または負極活物質と集電体、とを接着させる役割を果たす。接着性が確保できる範囲においてバインダの利用効率は高いことが望ましい。特に、近年、電極高密度化(負極合剤の単位体積あたりの容量の増加)が求められていることから、負極活物質同士または負極活物質と集電体との接着に関与することなく黒鉛粒子間に存在して、電極の高密度化の阻害因子となるバインダ量を最小限とするために、バインダ全体の使用量を少なくする傾向がある。

0006

特開2007−169160号公報
特開平11−263612号公報
特開2003−238135号公報
特開2008−24588号公報

先行技術

0007

大関克知ほか「炭素」, 2005, No. 217, pp. 99-103

0008

非水電解質二次電池の負極板の製造に用いる負極合剤において、単にバインダの使用量を少なくすると、負極活物質同士、または負極活物質と集電体との接着強度が低下し、負極板の製造過程電池としての組立作業過程において集電体または負極板から負極合剤が脱落することが問題となる。特に、製造または組立速度を高めようとすると、集電体上に形成された負極合剤層または負極板に加えられる折曲力や引張力は高まる傾向があるため、上記の負極合剤の脱落現象は起こりやすくなる。負極合剤の脱落は、製品品質低下をもたらすだけでなく、歩留まり低下やライン停止などの生産性の著しい低下をもたらす。非水電解質二次電池が、民生用途のみでなく、自動車用途蓄電用途などへの展開も進められている中、生産性向上による低コスト化は重要な課題である。

0009

本発明は、上記の問題を解決し、接着強度に優れた負極板をもたらすことができる天然黒鉛材料を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を行った結果、次の新たな知見を得た。

0010

(A)これまで行われているアスペクト比が高い天然黒鉛粒子の形状調整処理法のうち、メカノフュージョン(登録商標)などの磨砕式の粉砕手段では、球形化が不十分である。その他の形状調整処理法の適用ではいずれも、黒鉛粒子の全体形状の調整に主眼が置かれていた。このため、形状の異方性の低下は達成できていたものの、その表面は粗なままであった。

0011

(B)黒鉛粒子の表面が粗な場合、バインダの使用量が少ないと、粗な表面のうち突出部のみが、隣接する黒鉛粒子または集電体との接着部となる。このため、黒鉛粒子同士、または黒鉛粒子と集電体との接着強度は低下し、負極合剤が集電体または負極板から脱落しやすくなる。

0012

(C)この負極合剤の脱落を抑制するには、天然黒鉛の形状調整処理において黒鉛粒子の表面の粗さ改善(平滑化)を行うことが効率的である。
(D)黒鉛粒子表面の粗さを定量的に評価するための手段として、C−K端X線吸収スペクトルによる黒鉛粒子の配向の程度の計測および黒鉛粒子による亜麻仁油の吸収量を計測することが好ましい。

0013

上記の知見に基づき完成された本発明は、円形度が0.92以上であって、放射光励起光源としたC−K端X線吸収スペクトルの測定により求められる、下記式により定義されるピーク強度比入射角依存性S60/0が0.5以上0.7以下であることを特徴とする改質天然黒鉛粒子である:
S60/0=I60/I0
ここで、
I60=B60/A60
I0=B0/A0
A60:放射光の入射角を60°として測定した、粒子のC−K端X線吸収スペクトルにおける、C−1s準位からπ*準位への遷移帰属される吸収ピーク強度
B60:放射光の入射角を60°として測定した、粒子のC−K端X線吸収スペクトルにおける、C−1s準位からσ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク強度;
A0:放射光の入射角を0°として測定した、粒子のC−K端X線吸収スペクトルにおける、C−1s準位からπ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク強度;
B0:放射光の入射角を0°として測定した、粒子のC−K端X線吸収スペクトルにおける、C−1s準位からσ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク強度。

0014

なお、円形度は次の式で表され、上限は1である。
(円形度)=(投影形状と同一の面積を有する円の周囲長)/(投影形状の周囲長)
「投影形状」とは測定に係る粒子を二次元平面に投影して得られる形状であり、投影形状と同一の面積を有する円の周囲長および投影形状の周囲長は、投影形状の画像を画像処理することにより求められる。

0015

好適態様において、本発明に係る改質天然黒鉛粒子は下記(a)〜(c)の少なくとも1つの条件を満たす:
(a)真比重が2.25g/cm3以上である;
(b)タップ密度が1.0g/cm3以上1.4g/cm3以下である;
(c)亜麻仁油吸収量が20cm3/100g以上50cm3/100g以下である。

0016

本発明はまた、上記改質天然黒鉛粒子およびその表面の少なくとも一部に付着した炭素質材料を備える、炭素付着黒鉛粒子も提供する。
本発明に係る改質天然黒鉛粒子は、その表面が十分に平滑化されているため、バインダ使用量を抑制しても、負極合剤と集電体との間に十分な接着強度を有する負極板が得られる。そのような負極板は品質が高い上に生産性が高い。したがって、本発明に係る改質天然黒鉛粒子を用いた負極板を備える非水電解質二次電池も品質が高くかつ生産性が高い。

図面の簡単な説明

0017

本発明において用いたX線吸収分光測定原理X線光電子分光(XPS)との対比で示す図である。
本発明において用いた放射光によるX線吸収分光の測定方法基本構成を示す図である。
炭素に対してそれぞれ異なる入射角(0°、30°及び60°)で放射光を入射させた場合のC−K端NEXAFSスペクトルを示す図であり、図3(A)は炭素が単結晶であるHOPG(Highly Oriented Pyrolytic Graphite、高配向性熱分解黒鉛)である場合、図3(B)は炭素が非晶質の炭素蒸着膜膜厚:10nm)である場合を示す。
本発明に係る表面黒鉛結晶配向性定量評価方法を、HOPGを試料とした場合を例として説明する図である。
図5(A)は、本発明に係る改質天然黒鉛粒子の製造において、天然黒鉛が球形化処理により造粒される過程を概念的に示す説明図であり、図5(B)は球形化処理途中段階での球形化黒鉛のSEM観察画像を示し、図5(C)は球形化処理途中段階での球形化黒鉛の断面の光学顕微鏡観察画像を示している。
球形化処理後の天然黒鉛粒子のSEM観察画像を示す。
球形化処理後に平滑化処理を行うことにより得られた、本発明に係る改質天然黒鉛粒子のSEM観察画像を示す。

0018

以下、本発明に係る改質天然黒鉛粒子とその製造方法について説明する。
1.天然黒鉛粒子
本発明に係る改質天然黒鉛粒子の原料となる天然黒鉛粒子(以下「原料黒鉛」という)は、鱗片形状黒鉛(具体的には次に述べる鱗片状黒鉛または鱗状黒鉛)であって、改質処理熱処理を受けていないものである。この天然黒鉛粒子に、例えば、後述する形状調整処理を施すことにより、本発明に係る改質天然黒鉛粒子を製造することができる。

0019

天然黒鉛はその外観性状により、鱗片状黒鉛(flake graphite)、鱗状黒鉛(別名:塊状黒鉛、vein graphite)、および土状黒鉛(amorphous graphite)に分類される。鱗片状黒鉛および鱗状黒鉛は完全に近い結晶を示し、土状黒鉛はそれらより結晶性が低い。天然黒鉛の品質は、主な産地鉱脈により定まる。鱗片状黒鉛は、マダガスカル、中国、ブラジル、ウクライナ、カナダベトナム、オーストラリア等に産する。鱗状黒鉛は、主にスリランカに産する。土状黒鉛は、半島、中国、メキシコ等に産する。

0020

本発明に係る改質天然黒鉛粒子には高容量であることが求められることから、原料黒鉛として適当なのは、結晶性の高い鱗片状黒鉛および鱗状黒鉛である。黒鉛粒子の結晶性の高さを評価する尺度として真比重が挙げられ、原料黒鉛は2.25g/cm3以上の真比重を有していることか好ましい。真比重は、機械的な改質処理ではほとんど変化しないので、得られた改質天然黒鉛粒子も2.25g/cm3以上の真比重を有することが好ましい。

0021

原料黒鉛の形状および大きさは特に制限されない。また、産地や種類の異なる2種以上の黒鉛を混合して原料黒鉛を構成してもよい。
本発明では、球形度指標として円形度を用いることにより粒子形状を評価する。円形度は投影形状に関する次の式により求められる。

0022

円形度=(投影形状と同一の面積を有する円の周囲長)/(投影形状の周囲長)
投影形状が真円をなす場合には円形度は1となる。従って、円形度の最大値は1である。円形度が1である場合、その粒子を3次元的に評価した場合における球形の程度も特に高いと考えられることから、円形度が高いほど(1に近づくほど)、粒子の球形度も高いといえる。投影形状は、光学顕微鏡走査型電子顕微鏡などを用いて得られた観察像から求めることができる。

0023

例えば、原料黒鉛として鱗片状黒鉛を用いた場合、原料黒鉛の円形度は通常は0.85近傍であり、0.90を超えることは希である。原料黒鉛はこのような円形度が低いものでよく、原料黒鉛の円形度は特に規定されない。本発明では改質処理後に円形度が0.92以上の改質天然黒鉛粒子とする。

0024

本発明では、黒鉛粒子の大きさを評価する場合には、光散乱回折法により求めた体積基準粒度分布におけるメジアン径としての「平均粒径」を用いる。この粒度分布は、例えば、(株)堀場製作所製レーザー回折散乱式粒度分布計(LA−910)により測定することができる。

0025

原料黒鉛の粒径過度に大きいと、改質天然黒鉛粒子を得るために行う球形化処理の効率が低下する。したがって、原料黒鉛は平均粒径が5mm以下であることが好ましく、200μm以下であれば特に好ましい。一方、原料黒鉛が過度に小さいと、形状調整処理の具体的手段によっては形状制御が困難になったり、粉塵公害原因物質となったりすることが懸念される。したがって、原料黒鉛の平均粒径は3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることが特に好ましい。

0026

2.改質天然黒鉛粒子
本発明に係る改質天然黒鉛粒子は、円形度が0.92以上であり、C−K端X線吸収スペクトルにおけるピーク強度比の入射角依存性S60/0(詳細は後述)が0.5以上0.7以下である。

0027

本発明に係る改質天然黒鉛粒子の特性について以下に詳しく説明する。
(1)円形度
本発明に係る改質天然黒鉛粒子の円形度は0.92以上である。円形度が0.92未満であると、黒鉛粒子はアスペクト比が大きな扁平形状をなしているため、塗布時の配向、電池としての容量低下などの問題が生じやすくなる。円形度の上限は粒子形状が真球となる場合の円形度、つまり1.0である。円形度は好ましくは0.93以上である。

0028

(2)C−K端X線吸収スペクトルにおける強度比
本発明に係る改質天然黒鉛粒子は、放射光を励起光源とする粉体のC−K端X線吸収スペクトルを測定したときに下記式により定義されるピーク強度比の入射角依存性S60/0が0.5以上0.7以下である。

0029

S60/0=I60/I0
ここで、
I60=B60/A60
I0=B0/A0
A60:放射光の入射角を60°として測定した、粒子のC−K端X線吸収スペクトルにおける、C−1s準位からπ*準位(即ち、sp2結合の反結合性軌道:−C=C−)への遷移に帰属される吸収ピーク強度。

0030

B60:放射光の入射角を60°として測定した、粒子のC−K端X線吸収スペクトルにおける、C−1s準位からσ*準位(即ち、sp3結合の反結合性軌道:−C−C−)への遷移に帰属される吸収ピーク強度。

0031

A0:放射光の入射角を0°として測定した、粒子のC−K端X線吸収スペクトルにおける、C−1s準位からπ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク強度。
B0:放射光の入射角を0°として測定した、粒子のC−K端X線吸収スペクトルにおける、C−1s準位からσ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク強度。

0032

以下、S60/0を特定の範囲とすることについて詳しく説明する。
i)測定方法
本発明において用いるC−K端X線吸収スペクトルは、C−K端NEXAFS(Near Edge X-ray Absorbance Fine Structure)スペクトルとも称され、占有状態である炭素原子内殻準位(1s軌道)に存在する電子K殻内殻電子)が、照射されたX線エネルギーを吸収して、非占有状態である種々の空準位に励起されることにより観測される吸収スペクトルである。

0033

このX線吸収分光の測定原理を、X線光電子分光(XPS)との対比で図1に示す。
結合エネルギーが283.8eVである炭素の内殻準位から種々の空準位への電子遷移を観測するためには、軟X線領域(280eV〜320eV)におけるエネルギー可変光源が必要であること、およびS60/0の定量性は励起光源の直線偏光性が高いことを前提としていることから、本発明に係るC−K端NEXAFSスペクトルでは励起光源として放射光を用いる。

0034

内殻準位にある電子が励起される空準位としては、天然黒鉛における結晶性(ベーサル面や配向性など)を反映するsp2結合の反結合性軌道に帰属されるπ*準位、結晶性の乱れエッジ面無配向性など)を反映するsp3結合の反結合性軌道に帰属されるσ*準位、あるいはC−H結合やC−O結合などの反結合性軌道に帰属される空準位などがある。sp2結合による六角網構造が積層した結晶構造をもつ黒鉛において、表面が六角網面の平面(後述のAB面)になっているのがベーサル面であり、六角網の端部が現れている面がエッジ面である。エッジ面では炭素はsp3結合をとることが多い。

0035

また、C−K端NEXAFSスペクトルは、励起された内殻電子を含む炭素原子近傍の局所構造を反映することに加えて、照射された光によって固体中から真空中に放出される電子の脱出深さが10nm程度であることから、測定された黒鉛粒子の表面構造のみを反映する。したがって、C−K端NEXAFSスペクトルを用いることにより、改質天然黒鉛粒子の表面に存在する黒鉛の結晶状態(配向性)を測定することができ、それにより黒鉛表面の粗さを評価することができる。

0036

測定される改質天然黒鉛粒子の試料台への固定方法は特に限定されない。黒鉛粒子に過度の荷重が加わってその表面性状が変化しないように、In(インジウム)箔で銅基板上に担持する、あるいはカーボンテープで銅基板上に担持するなどの方法を採用することが好ましい。

0037

本発明に係るC−K端NEXAFSスペクトルの測定は、試料に対して入射角が固定された放射光を試料に照射する。そして、照射する放射光のエネルギーを280eV〜320eVまで走査しながら、試料から放出された光電子補完するために試料に流れこむ試料電流を計測する全電子収量法により行う。この測定方法の基本構成を図2に示す。

0038

ii)S60/0による表面黒鉛結晶の配向性の定量評価
次に説明するように、S60/0を測定することにより、測定された改質天然黒鉛粒子の表面近傍の黒鉛結晶(以下、「表面黒鉛結晶」という)の配向性を定量的に評価することができる。

0039

放射光は直線偏光性が高いため、放射光の入射方向が表面黒鉛結晶のsp2結合(−C=C−)の結合軸方向に平行である場合にC−1s準位からπ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク強度が大きくなり、逆に両者が直交する場合にはこの吸収ピーク強度が小さくなる。

0040

そのため、高配向性熱分解黒鉛(HOPG,単結晶黒鉛)のように表面近傍においてsp2結合を形成する黒鉛結晶が高度に配向している試料の場合には、試料に対する放射光の入射角を変えるとスペクトル形状が大きく変化するが、炭素蒸着膜(非晶質)のように表面近傍においてsp2結合を形成する炭素材料の配向性が低い試料の場合には、試料に対する放射光の入射角を変えてもスペクトル形状はほとんど変化しない。

0041

図3(A)および(B)は、炭素に対してそれぞれ異なる入射角(0°、30°および60°)で放射光を入射させた場合のC−K端NEXAFSスペクトルを示す図であり、図3(A)は炭素が単結晶であるHOPG(高配向性熱分解黒鉛)である場合、図3(B)は炭素が非晶質の炭素蒸着膜(膜厚:10nm)である場合を示す。図3(A)に示すように、単結晶であるHOPGでは、入射角を0°から60°へと増加させるとC−1s準位からπ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク強度Aは増加し、C−1s準位からσ*準位への遷移に帰属される吸収ピーク強度Bは減少する。このため、HOPGのC−K端NEXAFSスペクトルは入射角度によってそのプロファイルが大きく変化する。これに対して、図3(B)に示す非晶質である炭素蒸着膜のC−K端NEXAFSスペクトルのプロファイルは、入射角にほとんど依存しておらず、入射角が変化してもプロファイルはほとんど変化しない。

0042

したがって、ある黒鉛系材料に対して異なる入射角でC−K端NEXAFSスペクトルを測定した結果、吸収ピーク強度Aの吸収ピーク強度Bに対する比I(=A/B)が入射角に応じて変化する場合には、その材料の表面近傍に存在する黒鉛結晶は規則正しく並んで配置されており、つまり、配向性が高く、逆にその比Iに入射角依存性が見られない場合には、その材料の表面近傍に存在する黒鉛結晶は不規則に並んでいて配向性が低いということになる。そうすると、吸収強度AとBとの比Iの入射角依存性を定量化することにより、黒鉛系材料の表面近傍に存在する黒鉛結晶の配向性を定量的に評価することができることになる。

0043

そこで、本発明では、二つの入射角60°および0°の場合における吸収ピーク強度Aの吸収ピーク強度Bに対する比I60およびI0を用いて導かれるピーク強度比の入射角依存性S60/0(=I60/I0)を用いて、表面黒鉛結晶の配向性を定量評価する。図4は、本発明に係る表面黒鉛結晶の配向性の定量評価方法を、HOPGを試料とした場合を例として説明する図である。

0044

S60/0が1近傍である場合には、表面黒鉛結晶の配向性が低く、S60/0が1から0に近づくほど(図4)表面黒鉛結晶の配向性が高い。
なお、S60/0を求めるにあたり、In箔やカーボンテープを用いて試料粒子を担持する場合には、これらの担体のC−K端NEXAFSスペクトルをブランクスクトルとして測定しておき、試料粒子を測定して得られたC−K端NEXAFSスペクトルの強度をこのブランクスペクトルを用いて補正して各遷移の吸収ピーク強度を算出する。

0045

iii)S60/0と負極合剤の接着強度との関係について
本発明に係る改質天然黒鉛粒子は鱗片形状の原料黒鉛から得られるものであって、その円形度が0.92以上である。原料黒鉛全体の形状を球形に近づけ、前記円形度を得るための処理(以下、「球形化処理」という)が施されている。この球形化処理として、具体的には特許文献2から4に開示されるような処理が例示される。

0046

原料となる鱗片形状の黒鉛は、炭素原子が規則正しく網目構造を形成して平面状に広がる六角網面平面(AB面)が多数積層し、AB面に垂直方向であるC軸方向に厚みを有する結晶である。積層したAB面相互間の結合力ファンデルワールス力)は、AB面の面内方向の結合力に比べてはるかに小さいため、AB面間の剥離が起きやすい。よってAB面の広がりに対して積層の厚みが薄いため、全体として鱗片形状を呈している。

0047

この鱗片形状を有する原料黒鉛が球形化処理を受けると、図5(A)〜図5(C)に示すように、本来ほぼ平面状であった原料黒鉛は折り畳まれたり、別の粒子が折り畳まれる時に取り込まれたり、また別の粒子の表面に付着したりする。

0048

そのため、マクロ視点で見れば、平面状であった原料黒鉛の表面(AB面)がそのまま、原料黒鉛を球形化処理することにより得られた黒鉛粒子(以下、「球状化黒鉛粒子」という)の表面の大部分を覆っている。したがって、球状化黒鉛粒子の表面はAB面が支配的になると考えられる。しかし、図6に示すように、球状化黒鉛粒子を拡大して観察すれば、その表面には折り畳まれた粒子の端面や付着した粒子の端面、すなわち、エッジ面が露出しているので、多数の凹凸が存在する。さらにミクロな視点で見れば、球形化処理時の衝撃力により、AB面のところどころで剥離が生じて折れ曲がり、エッジ面が表面に現れる部分が生成する。

0049

このような表面の凹凸により、球状化黒鉛粒子の表面は粗面を呈する。このため、球状化黒鉛粒子の表面近傍に存在する黒鉛結晶におけるsp2結合の結合軸は全体としてランダムな方向を向くことになる。それゆえ、球状化黒鉛粒子は、その円形度は0.92以上であるが、S60/0は1近傍となる。

0050

球形化処理によって粗面化された表面性状を有する球状化黒鉛粒子、換言すれば円形度が0.92以上であるとともにS60/0が1近傍である球状化黒鉛粒子、を負極活物質とすると、その球状化黒鉛粒子の粗な面の突出した部分のみが負極活物質同士の接触部および負極活物質と集電体との接触部となる。負極活物質とともに含有されて負極合剤を構成するバインダは、本来、このような接触部に供給されることによって負極活物質同士または負極活物質と集電体とを接着するものであるから、球状化黒鉛粒子を負極活物質とすると、得られた負極合剤は接着性が低く、集電体から脱落しやすいものとなってしまう。

0051

これに対し、本発明に係る改質天然黒鉛粒子は、円形度が0.92以上であるとともに、S60/0が0.7以下であることから、その粒子は球形化処理を受けていながら、表面黒鉛結晶はある程度配向している。この表面黒鉛結晶における配向した部分では、折れ曲がりなどの欠陥が少なく平面性の高いAB面になっているため、この粒子からなる負極活物質は隣接する負極活物質や集電体と相対的に広い接触部を形成することができる。

0052

それゆえ、本発明に係る改質天然黒鉛粒子を負極活物質とすることによって、接着性が高く集電体から脱落しにくい負極合剤を得ることが実現される。
本発明に係る改質天然黒鉛粒子のS60/0の下限は、円形度が0.92以上である限り特に限定されないが、0.5が実質的な下限となる。S60/0が0.5未満である場合には円形度を0.92以上とすることは現実的にきわめて困難である。

0053

(3)タップ密度
本発明に係る改質天然黒鉛粒子は、容積100cm3の容器を用いてタッピング回数180回として測定されるタップ密度が、1.0g/cm3以上1.4g/cm3以下であることが好ましい。

0054

タップ密度が1.0g/cm3以上であることで、負極板中の負極活物質の充填密度が高くなる。タップ密度は好ましくは1.05g/cm3以上である。原料黒鉛に球形化処理を施したのみの黒鉛粒子は、表面が粗なため、タップ密度は高まりにくい。タップ密度は、より高いほうが好ましいが、現実的には1.4g/cm3が上限である。

0055

(4)亜麻仁油吸収量
本発明に係る改質天然黒鉛粒子は、概ねJIS K6217−4:2008に規定されるオイル吸収量測定方法準拠して、アブソープドメータを用いて測定される亜麻仁油吸収量が20cm3/100g以上50cm3/100g以下であることが好ましい。

0056

原料黒鉛に球形化処理を施したのみの黒鉛粒子は、その表面が過度に粗であるため、亜麻仁油吸収量が高くなる傾向がある。亜麻仁油吸収量が過度に高いと、バインダの利用効率が低下し、容量を高めることが困難となる。したがって、亜麻仁油吸収量は50cm3/100g以下であることが好ましい。吸油量はより小さいほうが好ましいが、現実的には20cm3/100gが下限である。

0057

(5)被覆層
上記の特性を備える本発明に係る改質天然黒鉛粒子は、その表面に炭素質材料を付着させた炭素付着黒鉛粒子としてもよい。こうすると電池特性が向上する。

0058

ここで、「炭素質材料」とは炭素を主成分とする材料を意味し、その構造は特に限定されない。炭素質材料は改質天然黒鉛粒子の表面の一部に付着していてもよいし、実質的に全面を覆うように付着していてもよい。

0059

炭素質材料は、核材となる改質天然黒鉛粒子よりも結晶性が低いか、および/または全炭素−炭素結合におけるsp3結合の構成比率が高いものが好ましい。そのような炭素質材料は、黒鉛粒子よりバルク的な硬度が高いので、この炭素質材料が改質天然黒鉛粒子の表面に付着して存在することにより、粒子全体の硬度が高まる。その結果、負極板の製造過程、特に圧縮工程において、負極活物質である電極内部に閉気孔が形成されて充電受け入れ性が低下する可能性が少なくなる。さらに、後述する実施例からもわかるように、炭素付着により黒鉛粒子の比表面積が低減するため、電解液との反応性が抑制される。そのため、この炭素付着黒鉛粒子を活物質とする負極板は、充放電効率が向上し、電池容量が向上する。

0060

核材となる改質天然黒鉛粒子より結晶性が低い炭素質材料として、乱層構造炭素が例示される。ここで、「乱層構造炭素」とは、六角網平面方向に平行な積層構造は有するが、三次元方向には結晶学的規則性が測定できない炭素原子からなる炭素物質をいう。

0061

核材となる改質天然黒鉛粒子よりも結晶性が低く、かつsp3結合の構成比率が高い炭素質材料として、非晶質炭素が例示される。ここで、「非晶質炭素」とは、短距離秩序(数原子〜十数個原子オーダー)を有するものの、長距離秩序(数百〜数千個の原子オーダー)を有していない炭素物質をいう。

0062

炭素質材料を核材となる改質天然黒鉛粒子の表面に付着させる方法および被覆する方法は特に限定されない。典型的には、表面処理法および真空成膜技術を用いた堆積法が例示される。ここで、表面処理法は、ピッチなどの有機化合物をあらかじめ黒鉛粉末の表面の少なくとも一部に付着させるか、あるいは被覆した後、加熱処理して有機化合物を炭素化させる方法であり、この方法によって乱層構造炭素からなる炭素質材料が得られる。真空成膜技術では、非晶質炭素からなる炭素質材料を核材の表面に付着させることができる。

0063

3.改質天然黒鉛粒子の製造方法
本発明に係る改質天然黒鉛粒子は上記の特性を有する限り、いかなる製造方法により製造されていてもよい。上記の特性を満たす改質天然黒鉛粒子を安定的かつ効率的に生産することができる方法を次に説明する。各処理工程における条件は、本発明に係る改質天然黒鉛粒子が得られるように、適宜調整される。

0064

(1)球形化処理
ジェットミル、ピンミルなどで例示される衝撃式の粉砕手段を用いることにより、原料の天然黒鉛粒子を球形化することができる。この手段において、原料黒鉛粒子高速でピンなどと衝突することによって、図5(A)〜図5(C)に示されるように、積層されたAB面は折れ曲がったり、他の黒鉛粒子が付着したりして、黒鉛粒子のアスペクト比は低下する。

0065

しかし、衝撃力によって積層されたAB面の一部がめくれたり、端面が粉末表面に露出したりするため、図6に示されるように、球形化処理を施された黒鉛粒子(球状化黒鉛粒子)はその表面には微細な凹凸が多数存在し、結果的に粗な面を有する粒子となる。球形化処理は、円形度が0.92以上の黒鉛粒子が生成するように実施する。

0066

(2)平滑化処理
上記の球状化黒鉛粒子に対して、機械的摩砕処理を適用することにより、黒鉛粒子の表面を平滑化し、本発明の改質天然黒鉛粒子を得ることができる。

0067

機械的摩砕処理は、粒子の角張りに丸みを帯びさせるとともに、粒子表面の微細な凹凸を平滑化するために行う処理である。例えば、粒子の相互作用を含めた圧縮、摩擦およびせん断などの機械的作用を繰り返し粒子に与える装置を用いることができる。機械的摩砕を行う装置としては、ホソカワミクロン(株)製の粉体処理装置循環型メカノフュージョンシステムAMS−Lab)や徳寿工作所製のシータコンポーザ等を用いることができる。

0068

この手段では、例えば、近接して相対運動する二つの固体(例えばロータインナーピース)が作る間隙に黒鉛粒子を通過させることにより、黒鉛粒子の表面に面内方向への強い摺動力を付与する。このため、間隙を通過する黒鉛はその摺動部位において摺動方向に結晶が配向する。すなわち露出した折り畳まれた粒子の端面や付着した粒子の端面も、AB面層間ですべりが起こりAB面で覆われる。またAB面のところどころに存在する剥離、折れ曲がりによりエッジ部が表面方向を向いていた部分も圧縮され、配向する。

0069

こうして、図7に示されるように、機械的摩砕処理などの平滑化処理によって球状化黒鉛粒子の表面は平滑化され、得られた改質天然黒鉛粒子における表面黒鉛結晶の配向性は高まる。それにより、円形度が0.92以上であるともにS60/0が0.7以下である本発明に係る改質天然黒鉛粒子を得ることができる。

0070

本発明に係る改質天然黒鉛粒子およびこれを核材とする炭素付着黒鉛粒子を活物質として使用し、非水電解質二次電池の負極板を製造することができる。負極の製造に用いるバインダおよび集電体は特に制限されず、従来より使用されてきたものでよい。本発明によれば、活物質である黒鉛粒子の表面が平滑であって、黒鉛粒子同士または黒鉛粒子と集電体との接触面積が増大するため、バインダの量を従来より低減させることができ、それにより、より高密度で高容量の電極の製造が可能になる。

0071

(実施例1〜4および比較例1〜4)
(1)改質天然黒鉛粒子黒鉛粒子の製造
原料天然黒鉛粒子(中国産鱗片状黒鉛、真比重は2.26g/cm3)に対して、ホソカワミクロン(株)製粉砕装置ACMパルペライザ、ACM−10A)を用いて球形化処理を行った。処理は15回繰り返した。さらに風力分級により微粉を除去した。適宜異なった粉砕回転数分級回転数で球形化処理を行うことにより、粒度の異なる4種類の表1に比較例1から4として示す球状化黒鉛粒子を得た。

0072

これらの黒鉛粒子のそれぞれの一部について、さらに、ホソカワミクロン(株)製メカノフュージョンシステム(AMS−Lab)を用いて平滑化処理を行った。処理条件は次のとおりであった。

0073

投入量:600g
ロータとインナーピースとの隙間:5mm
回転数:2600rpm
処理時間:15分間
この平滑化処理により、表1に実施例1から4として示す改質天然黒鉛粒子を得た。

0074

得られた比較例1〜4の球状化黒鉛粒子および実施例1〜4の改質天然黒鉛粒子の特性(S60/0、平均粒径、円形度、比表面積、タップ密度、および亜麻仁油吸収量を、後述する方法で求めた結果を表1に示す。これらの黒鉛粒子の真比重は表1に示されていないが、原料黒鉛の真比重と同じ2.26g/cm3である。

0075

(2)負極板の製造
上記方法により得られた球状化黒鉛粒子または改質天然黒鉛粒子からなる負極活物質とバインダとを混合して2種類の負極合剤(負極合剤1および2)を調製した。

0076

[負極合剤1]
スチレン−ブダジエンゴムSBR)およびカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC)からなるバインダと黒鉛粒子とを混合して負極合剤を調製した。負極合剤の配合比質量比)は次のとおりであった:
負極活物質:SBR:CMC=98:1:1。

0077

[負極合剤2]
ポリフッ化ビニリデンPVdF)からなるバインダと黒鉛粒子とを混合して負極合剤を調製した。負極合剤の配合比(質量比)は次のとおりであった:
負極活物質:PVdF=9:1。

0078

各負極合剤を集電体となる電解銅箔(厚み:17μm)上に塗布し、乾燥し(負極合剤1では75℃×20分間、負極合剤2では100℃×20分間)、一軸プレスにより圧密化して負極板を得た。得られた負極板における負極合剤層はいずれも9mg/cm2であり、密度は1.6g/cm3であった。各負極板剥離強度を後述する方法で測定し、結果を表1に示す。

0079

(3)測定方法
i)S60/0
C−K端NEXAFSスペクトルの測定は、庫県が大型放射光施設Spring-8の敷地内に設置し、兵庫県立大学高度産業科学技術研究所が運営している、放射光施設ニュースバルのビームラインBL7BおよびBL9において行った。加速電圧1.0GeV〜1.5GeV、蓄積電流80〜350mAで蓄積リングに蓄積された電子が、アンジュレーターと呼ばれる挿入光源蛇行して通過する際に放出される放射光を励起光源とした。BL7BおよびBL9に設置されているC−K端NEXAFSスペクトル測定装置を用いて、各実施例および比較例に係る黒鉛粒子についてC−K端NEXAFSスペクトルを測定し、得られた入射角0°および60°におけるスペクトルプロファイルからS60/0を算出した。測定原理および測定方法の詳細については前述のとおりである。試料粒子を担持するための担体としてはIn箔を用いた。

0080

ii)平均粒径(表1ではd50と表記
(株)堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布計(LA−910)を用いて光散乱回折法により各黒鉛粒子の体積基準の粒度分布を求めた。得られた粒度分布におけるメジアン径を各黒鉛粒子の平均粒径とした。

0081

iii)円形度
シスメックス(株)製フロー粒子画像分析装置FPIA−2100を用いて、各黒鉛粒子の円形度を測定した。具体的には、各黒鉛粒子を構成する5000個以上の粒子を測定対象試料とし、界面活性剤としてポリオキシレンソルビタンモノウラレートを添加したイオン交換水分散媒とする扁平な試料流撮影し、得られた各粒子像を画像処理することにより求めた。

0082

iv)比表面積
アサアイオニクス(株)製カンタソープを用いて、各黒鉛粒子の比表面積をBET1点法により求めた。

0083

v)タップ密度
ホソカワミクロン(株)製パウダテスタ(登録商標)PT−N型を用い、容積100cm3の容器を用いてタッピング回数180回として固め見掛け比重を各黒鉛粒子について測定し、これを各黒鉛粒子のタップ密度とした。

0084

vi)亜麻仁油吸収量(表1には吸油量と表記)
(株)あさひ総研製アブソープドメータ(S−410)を用い、概ねJIS K6217−4:2008に規定されるオイル吸収量測定法に準拠して、各黒鉛粒子の亜麻仁油吸収量を測定した。具体的には、2枚羽根によってかき混ぜられている黒鉛粒子に4cm3/minの速度で亜麻仁油を添加した。このときの粘度特性の変化をトルク検出器によってトルクの変化として検出した。発生した最大トルクの100%時点のトルクに対応する亜麻仁油添加量を、黒鉛粒子100gあたりに換算して亜麻仁油吸収量を求めた。

0085

vii)剥離強度
剥離強度は、概ねJIS C6481に準拠して求めた。具体的には、幅15mmの短冊状に切り取った負極板を、負極合剤が下面になるようにテーブル上に配置して、両面テープ(ニチバン(株)製NW−K15)でテーブルに固定した。固定された負極板の上面をなす負極集電体を、テーブル上面に対して垂直方向に50mm/minの速さで50mm引っ張ることにより負極集電体と負極合剤とを剥離させた。このときの剥離荷重を連続的に測定し、得られた測定荷重のうちの最低値を剥離強度(単位:N/m)とした。

0086

0087

表1中の強度比は、平滑化処理後の剥離強度の平滑化処理前の剥離強度に対する比であり、具体的には(実施例1の剥離強度)/(比較例1の剥離強度)のようにして求めたものである。

0088

表1から、球状化処理で得られた比較例1〜4の黒鉛粒子は、円形度は0.92以上であるが、S60/0は0.75〜0.88と大きく、亜麻仁油吸収量も50cm3/100gを超えていた。これに対し、平滑化処理を受けた実施例1〜4の黒鉛粒子は、S60/0が0.51〜0.68と小さくなり、亜麻仁油吸収量も50cm3/100gより小さくなった。また、タップ密度も、対応する比較例と実施例(例、実施例1と比較例1)とを比べると、実施例の方が高くなっていた。

0089

本発明に係る実施例1〜4の改質天然黒鉛粒子は、平滑化処理前の比較例1〜4の球状化黒鉛粒子に比べて、剥離強度が合剤1では1.72〜1.88倍、合剤2では2.11倍〜7.50倍高くなり、剥離強度が著しく改善されていることがわかる。

0090

(実施例5および比較例5)
実施例2および比較例2で得られた黒鉛粒子のそれぞれに、平均粒径15μmの石炭系ピッチ粉末を黒鉛粒子に対して20質量%の量で混合し、混合物窒素気流中、1000℃で1時間熱処理することにより、表面に乱層構造炭素が付着した炭素付着黒鉛粒子を得た。得られた炭素付着黒鉛粒子の平均粒径、比表面積、タップ密度、および亜麻仁油吸収量を実施例1〜4と同様の方法で求めた。結果を表2に示す。

0091

こうして得られた炭素付着黒鉛粒子からなる負極活物質とPVdFとを質量比95:5で混合して負極合剤を調製した。これらの負極合剤を用いて実施例1〜4と同じ方法で負極板を製造した。得られた負極板の剥離強度を実施例1〜4と同様に測定した結果、強度比とともに、表2に併記する。

0092

0093

表2からわかるように、核材が本発明に係る改質天然黒鉛粒子である実施例5では、核材が球状化黒鉛粒子である比較例5より2.28倍高い剥離強度が得られた。表1と表2とを比較するとわかるように、炭素付着処理を行うことによって、黒鉛粒子の比表面積が著しく減少し、タップ密度が増大するが、平均粒径はほとんど増加していない。本例では、炭素質材料の形成に用いた石炭系ピッチ粉末の量が比較的多いため、黒鉛粒子の大部分の表面は炭素質材料(乱層構造炭素)で被覆されていると考えられる。それにより、ミクロな凹凸が埋められたので比表面積が著しく減少した。

0094

(実施例6および比較例6)
実施例3および比較例3で得られた黒鉛粒子のそれぞれに、平均粒径15μmの石炭系ピッチ粉末を黒鉛粒子に対して2質量%の量で混合し、窒素気流中、1000℃で1時間熱処理することにより、表面に乱層構造炭素が付着した炭素付着黒鉛粒子を得た。得られた炭素付着黒鉛粒子の平均粒径、比表面積、タップ密度、および亜麻仁油吸収量を実施例1〜4と同様の方法で求めた。結果を表3に示す。

0095

こうして得られた炭素付着黒鉛粒子からなる負極活物質とSBRとCMCとを質量比98:1:1で混合して負極合剤を調製した。これらの負極合剤を用いて実施例1〜4と同じ方法で負極板を製造した。得られた負極板の剥離強度を実施例1〜4と同様に測定した結果、強度比とともに、表3に併記する。

0096

実施例

0097

表3からわかるように、核材が本発明に係る改質天然黒鉛粒子である実施例6では、核材が球状化黒鉛粒子である比較例6より1.89倍高い剥離強度が得られた。本例では、炭素質材料の形成に用いた石炭系ピッチ粉末の量が黒鉛粒子の2質量%と少ないため、黒鉛粒子の表面の一部だけに炭素質材料の乱層構造炭素が付着していると考えられる。この場合でも、黒鉛粒子の比表面積はいくらか低減した。これは溶融したピッチが、ベーサル面より表面積の大きいエッジ面に優先的に付着したためであると考えられる。

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