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技術 負極活物質、この負極活物質の製造方法、及びこの負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池

出願人 日本ケミコン株式会社国立大学法人東京農工大学
発明者 直井勝彦湊啓裕石本修一
出願日 2012年3月30日 (7年10ヶ月経過) 出願番号 2013-507824
公開日 2014年7月28日 (5年6ヶ月経過) 公開番号 WO2012-133844
状態 不明
技術分野
  • -
主要キーワード 外筒内壁 中空シェル アルカリ性分 同心円筒 酸性分散液 内部空孔 一酸化スズ 低導電性
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図面 (20)

課題・解決手段

高い可逆容量を有する上に低減した初期不可逆容量を有するリチウム吸蔵及び放出が可能な負極活物質を提供する。 本発明の負極活物質は、ナノサイズを有する導電性炭素粉末と該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末とが高分散状態で含まれている複合体と、黒鉛及び難黒鉛化炭素からなる群から選択された骨材と、が凝集した造粒物を含むことを特徴とする。上記造粒物における炭素材料電解液との接触面積の減少により、電解液の電気化学的分解が抑制されるため、負極活物質の初期不可逆容量が顕著に低減する。

概要

背景

携帯電話ノート型パソコンなどの情報機器電源として、エネルギー密度が高い非水系電解液を使用したリチウムイオン二次電池が広く使用されているが、これらの情報機器の高性能化や取扱う情報量の増大に伴う消費電力の増加に対応するために、リチウムイオン二次電池の放電容量の高容量化が望まれている。また、石油消費量の低減、大気汚染緩和地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量の低減などの観点から、ガソリン車ティーゼル車に代わる電気自動車ハイブリッド自動車などの低公害車に対する期待が高まっており、これらの低公害車のモーター駆動電源として、エネルギー密度や出力密度の高い、したがって容量密度の高い大型のリチウムイオン二次電池の開発が望まれる。

現在の非水系電解液を使用したリチウムイオン二次電池は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)などのリチウム層状化合物正極活物質とし、リチウム吸蔵、放出する黒鉛負極活物質とし、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)などのリチウム塩エチレンカーボネートプロピレンカーボネートなどの非水系溶媒に溶解させた液を電解液としたものが主流である。そして、このようなリチウムイオン二次電池の高容量化のためには、負極活物質に吸蔵、放出されるリチウムの量を増大させることが必要である。しかしながら、最大量のリチウムを吸蔵したLiC6から算出される黒鉛の理論容量は372mAhg−1であり、現行二次電池でも既に理論容量に近い容量が得られているため、さらなる二次電池の高容量化のためには、黒鉛に代わる負極活物質の使用が不可欠である。また、代替物充放電サイクルの経験に対して安定な特性を示すものでなければならない。

黒鉛に代わる高容量を有する代替物として、アルミニウム亜鉛、スズなどのリチウムと合金を形成する金属が挙げられる。特に、スズは、Li4.4Snから算出される理論容量が994mAhg−1と高いために好適である。しかし、スズのリチウム吸蔵に伴う体積膨張が極めて大きいという問題がある。Snの体積を100%とすると、Li4.4Snの体積は358%にも及ぶ。そのため、スズを負極活物質とした電池において充放電サイクルを繰り返すと、リチウムの吸蔵及び放出に伴う大きすぎる体積変化のため、負極にクラックが発生し、充放電反応に不可欠な電子伝導パス破壊され、わずか数回の充放電サイクルの繰り返しでも急速に放電容量が減少してしまう。

この問題を解決するために、スズを炭素材料酸化物マトリックス中に分散させ、スズの体積変化による応力を緩和する方法が提案されている。スズを酸化物のマトリックスに分散させる方法のひとつとして、二酸化スズ活物質とする方法がある(非特許文献1(Journal of Power Sources 159(2006)345−348)、非特許文献2(CARBON 46(2008)35−40)参照)。

二酸化スズは、以下の式(I)及び式(II)の反応によりリチウムを吸蔵する。式(I)の二酸化スズの還元酸化リチウムの生成が起こる反応を「コンバージョン反応」といい、式(II)のスズとリチウムとの合金が生成する反応を「合金化反応」という。コンバージョン反応により生じる酸化リチウムがスズのマトリックスとして作用し、合金化反応領域におけるスズの体積変化による応力を緩和するとともに、合金化反応領域におけるスズの凝集を抑制すると考えられている。

しかしながら、従来は、酸化リチウムが熱力学的に安定であるため、上記式(I)で表したコンバージョン反応が不可逆反応であるといわれていた。そのため、二酸化スズを負極活物質としたリチウムイオン二次電池では、もっぱら可逆反応領域である合金化反応領域(Li/Li+電極に対して0V〜約1Vの範囲)のみが利用されており、コンバージョン反応領域を含む電位まで電位範囲を広げて充放電を行うと、コンバージョン反応の不可逆性に起因する大きな初期不可逆容量が認められていた。

この問題に対し、出願人は、本願の優先権主張の基礎とされた出願の出願日後に公開されたWO2011/040022において、従来は不可逆反応であるとされていたコンバージョン反応が可逆的に進行する負極活物質を提案した。WO2011/040022に示した負極活物質は、酸化スズ粉末ナノサイズを有する導電性炭素粉末とが高分散状態で含まれている負極活物質である。ナノサイズを有する導電性炭素粉末を使用すると、従来は不可逆反応であるとされ、大きな初期不可逆容量の原因であったコンバション反応が可逆的に進行するようになり、したがってリチウムの吸蔵及び放出のために合金化反応領域のみでなくコンバージョン反応領域をも利用することができるようになる。

コンバージョン反応が可逆的に進行するようになった理由は、現時点では明確ではないが、以下のように考えられる。ナノサイズを有する導電性炭素粉末には、酸素原子カルボニル基ヒドロキシル基などの表面官能基酸素吸着酸素)が豊富に含まれており、したがってこの豊富な酸素が介在したSn−O−C結合が生じやすくなると考えられる。そして、コンバージョン反応で生成する酸化リチウムは、以下の式(III)に示すような準安定状態で存在していると考えられる。この準安定状態の酸化リチウムからリチウムが脱離しやすい状態が形成されるため、リチウムの脱離と共に酸化スズの形成が生じやすくなり、コンバージョン反応が可逆的に生じるものと考えられる。そして、ナノサイズの導電性炭素粉末と酸化スズ粉末とが高分散で存在していると、炭素粉末と酸化スズ粉末との接触点が増加するためSn−O−C結合が多くのサイトで形成されるようになり、したがってコンバージョン反応後に式(III)の準安定状態が多くのサイトで形成されるようになり、その結果、Li/Li+電極に対して0V〜約2Vの範囲での充放電サイクルを実現することができ、放電容量を大幅に増加させることができる。

この酸化スズ粉末とナノサイズを有する導電性炭素粉末とが高分散状態で含まれている負極活物質により、リチウムの吸蔵及び放出のために合金化反応領域のみでなくコンバージョン反応領域をも利用することができるようになったが、さらに検討した結果、炭素粉末表面での電解液の電気化学的分解に起因すると思われる初期不可逆容量が認められることがわかった。この初期不可逆容量は、この負極活物質を正極活物質と組み合わせてリチウムイオン二次電池を構成する際に、より多くの正極活物質を必要とすることにつながり一定体積セルにおいては、その分負極活物質の量が少なくなって、セルあたりの容量が低くなるため好ましくない。

出願人はこの問題点を解決すべく検討を重ね、本出願時には未公開であるPCT/JP2012/054458において、ナノサイズを有する導電性炭素粉末と該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末とが高分散状態で含まれている上に、導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ以外の金属酸化物、及び/又は、導電性炭素粉末の表面を被覆している低導電性無定形炭素層、がさらに含まれている負極活物質を提案した。

PCT/JP2012/054458で開示した負極活物質において、コンバージョン反応の可逆的な進行は維持される。また、電解液の電気化学的分解を触媒する導電性炭素粉末の表面の活性点が、酸化スズ以外の金属酸化物及び/又は低導電性の無定形炭素層により被覆され、電解液の電気化学的分解が阻害されるためであると思われるが、初期不可逆容量が低減する。導電性炭素粉末の表面を被覆している無定形炭素層の表面の状態は導電性炭素粉末の表面の状態と同様であるが、無定形炭素層が低導電性であるため、電解液の電気化学的分解のために必要な電子が無定形炭素層の表面に供給されにくくなり、したがって無定形炭素層の表面での電解液の電気化学的分解が抑制される。その結果、負極活物質の高い可逆容量を維持しつつ、初期不可逆容量を低減させることが可能になる。

概要

高い可逆容量を有する上に低減した初期不可逆容量を有するリチウムの吸蔵及び放出が可能な負極活物質を提供する。 本発明の負極活物質は、ナノサイズを有する導電性炭素粉末と該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末とが高分散状態で含まれている複合体と、黒鉛及び難黒鉛化炭素からなる群から選択された骨材と、が凝集した造粒物を含むことを特徴とする。上記造粒物における炭素材料と電解液との接触面積の減少により、電解液の電気化学的分解が抑制されるため、負極活物質の初期不可逆容量が顕著に低減する。

目的

携帯電話やノート型パソコンなどの情報機器の電源として、エネルギー密度が高い非水系電解液を使用したリチウムイオン二次電池が広く使用されているが、これらの情報機器の高性能化や取扱う情報量の増大に伴う消費電力の増加に対応するために、リチウムイオン二次電池の放電容量の高容量化が望まれている

効果

実績

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請求項1

ナノサイズを有する導電性炭素粉末と、該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末と、が高分散状態で含まれている複合体と、黒鉛及び難黒鉛化炭素からなる群から選択された骨材と、が凝集した造粒物を含む、リチウム吸蔵及び放出が可能な負極活物質

請求項2

前記複合体における前記酸化スズ粉末がナノサイズを有する球状粒子である、請求項1に記載の負極活物質。

請求項3

前記複合体に、前記ナノサイズを有する酸化スズの球状粒子の表面のうちの前記導電性炭素粉末の表面と接触していない部分を被覆している低導電性無定形炭素膜がさらに含まれている、請求項2に記載の負極活物質。

請求項4

前記複合体に、前記導電性炭素粉末の表面を被覆している低導電性の無定形炭素層がさらに含まれている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の負極活物質。

請求項5

前記複合体に、前記導電性炭素粉末の表面を被覆している酸化スズ以外の金属酸化物がさらに含まれている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の負極活物質。

請求項6

前記複合体における前記導電性炭素粉末がケッチェンブラックである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の負極活物質。

請求項7

前記骨材が黒鉛である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の負極活物質。

請求項8

請求項1〜7のいずれか1項に記載の負極活物質の製造方法であって、ナノサイズを有する導電性炭素粉末と、該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末と、が高分散状態で含まれている複合体と、黒鉛及び難黒鉛化炭素からなる群から選択された骨材と、の混合物を得る混合工程、及び、前記混合物を粉砕することにより、前記複合体と前記骨材とを凝集させて造粒物を得る造粒工程、を含むことを特徴とする負極活物質の製造方法。

請求項9

前記造粒工程において、粉砕をジェットミルにより行う、請求項8に記載の負極活物質の製造方法。

請求項10

ナノサイズを有する導電性炭素粉末と、該導電性炭素粉末の表面に接触しているナノサイズを有する酸化スズの球状粒子と、が高分散状態で含まれており、前記酸化スズの球状粒子の表面のうちの前記導電性炭素粉末の表面と接触していない部分を被覆している低導電性の無定形炭素膜がさらに含まれている、リチウムの吸蔵及び放出が可能な負極活物質。

請求項11

請求項10に記載の負極活物質の製造方法であって、旋回可能な反応器内に、酸化スズ前駆体とポリビニルアルコールとを溶解させた溶液にナノサイズを有する導電性炭素粉末を添加した反応液を導入する導入工程、前記反応器を旋回させて、前記反応液にずり応力遠心力とを加えながら前記酸化スズ前駆体の加水分解反応重縮合反応とを行ってナノサイズを有する球状の反応生成物を得ると同時に、前記反応生成物を前記導電性炭素粉末に担持させ且つ前記反応生成物の表面にポリビニルアルコールを付着させる反応工程、及び、前記反応工程で得られた生成物を乾燥後、ポリビニルアルコールを熱分解して、ナノサイズを有する酸化スズの球状粒子の表面に低導電性の無定形炭素膜を形成する熱処理工程を含むことを特徴とする負極活物質の製造方法。

請求項12

前記導電性炭素粉末がケッチェンブラックであり、前記反応液における前記酸化スズ前駆体の質量が二酸化スズ換算でケッチェンブラックの質量の1.5〜4倍の範囲である、請求項11に記載の複合体の製造方法。

請求項13

ナノサイズを有する導電性炭素粉末と、該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末と、が高分散状態で含まれており、前記導電性炭素粉末の表面を被覆している低導電性の無定形炭素層がさらに含まれている、リチウムの吸蔵及び放出が可能な負極活物質の製造方法であって、ナノサイズを有する導電性炭素粉末と、該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末と、が高分散状態で含まれている複合体と、式(A)(式中、nは1〜4の整数を表し、Xはヒドロキシ基アミノ基又はカルボキシル基を表わす)で表されるアミノ酸との混錬物を得る混錬工程、及び、前記混錬物を熱処理することにより前記式(A)で表されるアミノ酸を熱分解して低導電性の無定形炭素層を形成する熱処理工程を含むことを特徴とする負極活物質の製造方法。

請求項14

前記熱処理工程を、非酸化雰囲気下で450〜500℃の範囲の温度で行う、請求項13に記載の負極活物質の製造方法。

請求項15

請求項1〜7及び10のいずれか1項に記載の負極活物質を含む負極と、リチウムの吸蔵及び放出が可能な正極活物質を含む正極と、前記負極と前記正極との間に配置された非水系電解液を保持したセパレータと、を備えたリチウムイオン二次電池

技術分野

0001

本発明は、高い可逆容量を有する上に低減した初期不可逆容量を有するリチウム吸蔵及び放出が可能な負極活物質及びその製造方法に関する。本発明はまた、上記負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池に関する。

背景技術

0002

携帯電話ノート型パソコンなどの情報機器電源として、エネルギー密度が高い非水系電解液を使用したリチウムイオン二次電池が広く使用されているが、これらの情報機器の高性能化や取扱う情報量の増大に伴う消費電力の増加に対応するために、リチウムイオン二次電池の放電容量の高容量化が望まれている。また、石油消費量の低減、大気汚染緩和地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量の低減などの観点から、ガソリン車ティーゼル車に代わる電気自動車ハイブリッド自動車などの低公害車に対する期待が高まっており、これらの低公害車のモーター駆動電源として、エネルギー密度や出力密度の高い、したがって容量密度の高い大型のリチウムイオン二次電池の開発が望まれる。

0003

現在の非水系電解液を使用したリチウムイオン二次電池は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)などのリチウム層状化合物正極活物質とし、リチウムを吸蔵、放出する黒鉛を負極活物質とし、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)などのリチウム塩エチレンカーボネートプロピレンカーボネートなどの非水系溶媒に溶解させた液を電解液としたものが主流である。そして、このようなリチウムイオン二次電池の高容量化のためには、負極活物質に吸蔵、放出されるリチウムの量を増大させることが必要である。しかしながら、最大量のリチウムを吸蔵したLiC6から算出される黒鉛の理論容量は372mAhg−1であり、現行二次電池でも既に理論容量に近い容量が得られているため、さらなる二次電池の高容量化のためには、黒鉛に代わる負極活物質の使用が不可欠である。また、代替物充放電サイクルの経験に対して安定な特性を示すものでなければならない。

0004

黒鉛に代わる高容量を有する代替物として、アルミニウム亜鉛、スズなどのリチウムと合金を形成する金属が挙げられる。特に、スズは、Li4.4Snから算出される理論容量が994mAhg−1と高いために好適である。しかし、スズのリチウム吸蔵に伴う体積膨張が極めて大きいという問題がある。Snの体積を100%とすると、Li4.4Snの体積は358%にも及ぶ。そのため、スズを負極活物質とした電池において充放電サイクルを繰り返すと、リチウムの吸蔵及び放出に伴う大きすぎる体積変化のため、負極にクラックが発生し、充放電反応に不可欠な電子伝導パス破壊され、わずか数回の充放電サイクルの繰り返しでも急速に放電容量が減少してしまう。

0005

この問題を解決するために、スズを炭素材料酸化物マトリックス中に分散させ、スズの体積変化による応力を緩和する方法が提案されている。スズを酸化物のマトリックスに分散させる方法のひとつとして、二酸化スズ活物質とする方法がある(非特許文献1(Journal of Power Sources 159(2006)345−348)、非特許文献2(CARBON 46(2008)35−40)参照)。

0006

二酸化スズは、以下の式(I)及び式(II)の反応によりリチウムを吸蔵する。式(I)の二酸化スズの還元酸化リチウムの生成が起こる反応を「コンバージョン反応」といい、式(II)のスズとリチウムとの合金が生成する反応を「合金化反応」という。コンバージョン反応により生じる酸化リチウムがスズのマトリックスとして作用し、合金化反応領域におけるスズの体積変化による応力を緩和するとともに、合金化反応領域におけるスズの凝集を抑制すると考えられている。

0007

しかしながら、従来は、酸化リチウムが熱力学的に安定であるため、上記式(I)で表したコンバージョン反応が不可逆反応であるといわれていた。そのため、二酸化スズを負極活物質としたリチウムイオン二次電池では、もっぱら可逆反応領域である合金化反応領域(Li/Li+電極に対して0V〜約1Vの範囲)のみが利用されており、コンバージョン反応領域を含む電位まで電位範囲を広げて充放電を行うと、コンバージョン反応の不可逆性に起因する大きな初期不可逆容量が認められていた。

0008

この問題に対し、出願人は、本願の優先権主張の基礎とされた出願の出願日後に公開されたWO2011/040022において、従来は不可逆反応であるとされていたコンバージョン反応が可逆的に進行する負極活物質を提案した。WO2011/040022に示した負極活物質は、酸化スズ粉末ナノサイズを有する導電性炭素粉末とが高分散状態で含まれている負極活物質である。ナノサイズを有する導電性炭素粉末を使用すると、従来は不可逆反応であるとされ、大きな初期不可逆容量の原因であったコンバション反応が可逆的に進行するようになり、したがってリチウムの吸蔵及び放出のために合金化反応領域のみでなくコンバージョン反応領域をも利用することができるようになる。

0009

コンバージョン反応が可逆的に進行するようになった理由は、現時点では明確ではないが、以下のように考えられる。ナノサイズを有する導電性炭素粉末には、酸素原子カルボニル基ヒドロキシル基などの表面官能基酸素吸着酸素)が豊富に含まれており、したがってこの豊富な酸素が介在したSn−O−C結合が生じやすくなると考えられる。そして、コンバージョン反応で生成する酸化リチウムは、以下の式(III)に示すような準安定状態で存在していると考えられる。この準安定状態の酸化リチウムからリチウムが脱離しやすい状態が形成されるため、リチウムの脱離と共に酸化スズの形成が生じやすくなり、コンバージョン反応が可逆的に生じるものと考えられる。そして、ナノサイズの導電性炭素粉末と酸化スズ粉末とが高分散で存在していると、炭素粉末と酸化スズ粉末との接触点が増加するためSn−O−C結合が多くのサイトで形成されるようになり、したがってコンバージョン反応後に式(III)の準安定状態が多くのサイトで形成されるようになり、その結果、Li/Li+電極に対して0V〜約2Vの範囲での充放電サイクルを実現することができ、放電容量を大幅に増加させることができる。

0010

0011

この酸化スズ粉末とナノサイズを有する導電性炭素粉末とが高分散状態で含まれている負極活物質により、リチウムの吸蔵及び放出のために合金化反応領域のみでなくコンバージョン反応領域をも利用することができるようになったが、さらに検討した結果、炭素粉末表面での電解液の電気化学的分解に起因すると思われる初期不可逆容量が認められることがわかった。この初期不可逆容量は、この負極活物質を正極活物質と組み合わせてリチウムイオン二次電池を構成する際に、より多くの正極活物質を必要とすることにつながり一定体積セルにおいては、その分負極活物質の量が少なくなって、セルあたりの容量が低くなるため好ましくない。

0012

出願人はこの問題点を解決すべく検討を重ね、本出願時には未公開であるPCT/JP2012/054458において、ナノサイズを有する導電性炭素粉末と該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末とが高分散状態で含まれている上に、導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ以外の金属酸化物、及び/又は、導電性炭素粉末の表面を被覆している低導電性無定形炭素層、がさらに含まれている負極活物質を提案した。

0013

PCT/JP2012/054458で開示した負極活物質において、コンバージョン反応の可逆的な進行は維持される。また、電解液の電気化学的分解を触媒する導電性炭素粉末の表面の活性点が、酸化スズ以外の金属酸化物及び/又は低導電性の無定形炭素層により被覆され、電解液の電気化学的分解が阻害されるためであると思われるが、初期不可逆容量が低減する。導電性炭素粉末の表面を被覆している無定形炭素層の表面の状態は導電性炭素粉末の表面の状態と同様であるが、無定形炭素層が低導電性であるため、電解液の電気化学的分解のために必要な電子が無定形炭素層の表面に供給されにくくなり、したがって無定形炭素層の表面での電解液の電気化学的分解が抑制される。その結果、負極活物質の高い可逆容量を維持しつつ、初期不可逆容量を低減させることが可能になる。

先行技術

0014

Journal of Power Sources 159(2006)345−348
CARBON 46(2008)35−40

発明が解決しようとする課題

0015

しかし、負極活物質の初期不可逆容量が小さければ小さいほど、負極活物質を正極活物質と組み合わせてリチウムイオン二次電池を構成する際に、正極活物質の必要量を効率良く減少させることができ、一定体積のセルにおいては、その分負極活物質の量を増加させてセルあたりの容量を効率良く増加させることができる。また、負極活物質の放電容量は大きければ大きいほど望ましい。

0016

したがって、本発明の目的は、上述の酸化スズ粉末とナノサイズを有する導電性炭素粉末とが高分散状態で含まれている負極活物質を基礎として、酸化スズのコンバージョン反応の可逆的な進行を維持することにより高い可逆容量を維持しつつ、炭素粉末表面での電解液の電気化学的分解に起因すると思われる初期不可逆容量を低減させた負極活物質及びその製造方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0017

発明者らは、酸化スズ粉末とナノサイズを有する導電性炭素粉末との複合体(WO2011/040022における負極活物質)を基礎として鋭意検討した結果、黒鉛及び/又は難黒鉛化炭素骨材として使用し、この骨材と上記複合体が緻密に凝集した造粒物を形成すると、コンバージョン反応の可逆的な進行が維持されており、且つ、顕著に低下した初期不可逆容量を有する負極活物質が得られることを発見した。

0018

したがって、本発明はまず、ナノサイズを有する導電性炭素粉末と該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末とが高分散状態で含まれている複合体と、黒鉛及び難黒鉛化炭素からなる群から選択された骨材と、が凝集した造粒物を含む、リチウムの吸蔵及び放出が可能な第1の負極活物質に関する。

0019

本明細書において、「粉末」は限定の無い形状を有する粒状物質から構成されており、球状粒子に限定されず、針状、管状或いは紐状の粒状物質から構成されたものも「粉末」の範囲に含まれる。そして、「ナノサイズを有する」とは、粉末が球状粒子である場合には、平均粒径が1〜500nm、好ましくは1〜50nmであることを意味し、粉末が針状、管状或いは紐状である場合には、平均直径が1〜500nm、好ましくは1〜50nmであることを意味する。また、「高分散状態」とは、導電性炭素粉末及び酸化スズ粉末の一次粒子の、一般的には30質量%以上、好ましくは85質量%以上、より好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上が凝集していないことを意味する。ここで、粉末の非凝集率は、透過型電子顕微鏡TEM写真により粉末の状態を観察した結果から算出した値である。また、骨材として使用される黒鉛及び難黒鉛化炭素は、上記複合体の粒より大きいサイズの粒を有し、一般的には1〜300μm、好ましくは2〜50μm、特に好ましくは5〜30μmの平均粒経を有する。骨材の平均粒径はレーザー回折散乱法により測定された値である。

0020

第1の負極活物質を用いてリチウムイオン二次電池を構成すると、造粒物の外表面で電解液の電気化学的分解が起こり、造粒物の外表面にSEIが形成されると考えられる。そして、電解液の溶媒はこの造粒物の外表面のSEIを通過することができないが、電解液のリチウムはSEIを通過することができる。一方、造粒物中の複合体では、高分散状態で存在するナノサイズの導電性炭素粉末と酸化スズ粉末とによりSn−O−C結合が生じやすくなっており、したがってコンバージョン反応後に上記式(III)に示す準安定状態が多くのサイトで形成されるようになっている。したがって、SEIを通過可能なリチウムと複合体との反応により、コンバージョン反応の可逆的な進行が維持されて、Li/Li+電極に対して0V〜約2Vの範囲での充放電サイクルを実現することができる。さらに、造粒物の外表面に形成されたSEIにより電解液と炭素材料との接触面積を低下させることができるため、炭素材料表面での電解液の電気化学的分解に起因すると思われる初期不可逆容量を顕著に低減することができる。また、骨材として使用される黒鉛及び難黒鉛化炭素の可逆容量は、複合体の可逆容量よりも小さいが、粉砕により得られる造粒物の嵩密度が複合体単独の嵩密度よりも著しく増大するため、造粒物を負極活物質とした場合の単位体積当たりの可逆容量の低下が抑制されるか或いはむしろ増加する。

0021

第1の負極活物質において、造粒物中の複合体に含まれる酸化スズ粉末も、ナノサイズを有しているのが好ましい。酸化スズ粉末は、ナノサイズを有する球状粒子であるのがより好ましく、1〜10nmの平均粒径を有する球状粒子であるのが特に好ましい。このような微細な酸化スズの球状粒子が導電性炭素粉末の表面と接触していると、酸化スズの表面積が増加するため、Sn−O−C結合がさらに生じやすくなり、上記準安定状態がさらに形成されやすくなるからである。

0022

酸化スズと炭素との複合体を負極活物質とした場合の体積膨張や凝集といった構造変化については、従来は合金化反応領域のみで考察がなされ、コンバージョン反応領域での考察がなされてこなかった。コンバージョン反応が不可逆反応であるとされ、もっぱら可逆反応領域である合金化反応領域のみが利用されてきたからである。しかしながら、ナノサイズを有する導電性炭素粉末と酸化スズ粉末とが高分散状態で含まれている複合体を負極活物質とすることにより、コンバージョン反応領域を含む電位範囲での充放電サイクル試験が可能になり、コンバージョン反応領域における考察が可能となった。その結果、酸化スズと炭素との複合体を負極活物質とした場合には、コンバージョン反応領域を含む電位範囲で良好なサイクル特性を有する負極活物質を得るためには、合金化反応領域における体積変化による応力の抑制ばかりでなく、コンバージョン反応領域で生ずる複合体の凝集を抑制することが重要であることが分かった(本願の優先権主張の基礎とされた出願の出願日後に公開されたWO2011/040022参照)。

0023

この複合体の凝集を抑制するために、表面積の大きいナノサイズの導電性炭素粉末の使用が有効であり、この炭素粉末と酸化スズ粉末とが高分散で存在していることが重要であるが、第1の負極活物質において造粒物中の複合体に含まれる導電性炭素粉末が空隙を有しており、酸化スズ粉末が実質的に上記空隙内に存在しているのが好ましい。複合体の凝集が、特に炭素粉末の外面上に担持された酸化スズ粉末により誘発されることが分かっているからである。なお、「空隙」には、多孔質炭素粉末孔隙のほか、ケッチェンブラック内部空孔カーボンナノファイバカーボンナノチューブチューブ内空隙及びチューブ間空隙も含まれる。また、「酸化スズが実質的に空隙内に存在している」の語は、酸化スズ全体の95質量%以上、好ましくは98質量%以上、特に好ましくは99質量%以上が空隙内に存在していることを意味する。

0024

中でも、上記造粒物中の複合体に含まれる導電性炭素粉末として、中空シェル構造を有し且つシェル内面と外面とをつなぐ連続気泡を有するケッチェンブラックを使用するのが好ましい。ケッチェンブラックは、表面積が大きく、内外面及びエッジ面に多くの酸素(表面官能基の酸素、吸着酸素)を有しているため、Sn−O−C結合及び上記準安定状態が豊富に形成される。また、ケッチェンブラックの内部空孔内にナノサイズの酸化スズ粉末、好ましくは1〜10nmの平均粒径を有する球状粒子、特に好ましくは1〜2nmの平均粒径を有する球状粒子を優先的に担持することができるため、コンバージョン反応領域で生ずる複合体の凝集が抑制され、さらにシェルにより合金化反応領域のスズの体積膨張が効果的に抑制される。その結果、コンバージョン反応領域を含む電位範囲で優れたサイクル特性を有する負極活物質が得られる。

0025

一方、負極活物質の放電容量を増加させるには、大きな理論容量を有する酸化スズの量を増加させることが望ましい。しかしながら、導電性炭素粉末の空隙内に収容可能な酸化スズの量には限界があるため、限界を超えて増量された酸化スズが導電性炭素粉末の外表面に担持されると、この酸化スズが複合体の凝集を引き起こすことが懸念される。そのことを防止するため、上記造粒物中の複合体が、ナノサイズを有する酸化スズの球状粒子の表面のうちの導電性炭素粉末の表面と接触していない部分を被覆している低導電性の無定形炭素膜をさらに含んでいるのが好ましい。ここで、「低導電性の無定形炭素膜」とは、複合体に含まれている導電性炭素粉末の電気伝導率の1/100以下、好ましくは1/1000以下、特に好ましくは1/10000以下の電気伝導率を有する無定形炭素膜を意味する。この形態では、複合体における酸化スズの含有量を増加させることができ、酸化スズの球状粒子と低導電性の無定形炭素膜との間にもSn−O−C結合を生じさせることができるため、増加した放電容量を有する負極活物質が得られる。また、導電性炭素粉末の外面上に酸化スズ粒子が担持されても、酸化スズ粒子を被覆している低導電性の無定形炭素膜により複合体の凝集が阻害されため、コンバージョン反応領域を含む電位範囲で優れたサイクル特性を有する負極活物質が得られる。さらに、酸化スズの球状粒子の表面を被覆している無定形炭素膜は、造粒物を形成する際に、骨材に対するバインダ層として作用するため、緻密な造粒物が得られ、電解液の造粒物内部への侵入が効果的に抑制される。また、無定形炭素膜が低導電性であるため、電解液の電気化学的分解のために必要な電子が無定形炭素膜の表面に供給されにくくなり、無定形炭素膜の表面での電解液の電気化学的分解が抑制される。その結果、低下した初期不可逆容量を有する負極活物質が得られる。

0026

上記造粒物における複合体は、上記導電性炭素粉末の表面を被覆している低導電性の無定形炭素層をさらに含んでいるのが好ましい。ここで、「低導電性の無定形炭素層」とは、複合体に含まれている導電性炭素粉末の電気伝導率の1/100以下、好ましくは1/1000以下、特に好ましくは1/10000以下の電気伝導率を有する無定形炭素層を意味する。この無定形炭素層は、造粒物を形成する際に、骨材に対するバインダ層として作用するため、緻密な造粒物が得られ、電解液の造粒物内部への侵入が効果的に抑制される。また、無定形炭素層が低導電性であるため、電解液の電気化学的分解のために必要な電子が無定形炭素層の表面に供給されにくくなり、無定形炭素層の表面での電解液の電気化学的分解が抑制される。その結果、顕著に低下した初期不可逆容量を有する負極活物質が得られる。

0027

上記造粒物における複合体は、上記導電性炭素粉末の表面を被覆している酸化スズ以外の金属酸化物をさらに含んでいるのが好ましい。ここで、「金属酸化物」の範囲には、典型金属遷移金属及び半金属の酸化物が含まれるが、酸化スズは除外される。電解液の電気化学的分解を触媒する導電性炭素粉末の表面の活性点が、上記金属酸化物により被覆され、電解液の電気化学的分解が阻害されるため、上記造粒物の外表面に露出している複合体に起因する初期不可逆容量が低下する。

0028

第1の負極活物質における造粒物には、骨材として、黒鉛及び難黒鉛化炭素の少なくとも一方が含まれるが、黒鉛は、難黒鉛化炭素に比較して、可逆容量が大きく且つ嵩密度が大きいため、骨材としてより優れている。

0029

第1の負極活物質は、ナノサイズを有する導電性炭素粉末と該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末とが高分散状態で含まれている複合体と、黒鉛及び難黒鉛化炭素からなる群から選択された骨材と、の混合物を得る混合工程、及び、上記混合物を粉砕することにより、上記複合体と上記骨材とを凝集させて造粒物を得る造粒工程、を含む方法により製造することができる。したがって、本発明はまた、上記混合工程と上記造粒工程とを含む第1の負極活物質の製造方法に関する。

0030

ナノサイズを有する導電性炭素粉末と該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末とが高分散状態で含まれている複合体と、黒鉛及び難黒鉛化炭素からなる群から選択された骨材とを混合し、粉砕することによって、粉砕の過程で、骨材の粗大な粒が粉砕により生じた微細な粒と複合体とを補足しつつ凝集し、その結果、骨材と複合体とが緻密に凝集した造粒物が形成される。

0031

上記造粒工程における粉砕をジェットミルにより行うと、粉砕効率が高いため、微細な骨材を含む緻密で安定な構造の造粒物が効率的に得られ、その結果、第1の負極活物質の初期不可逆容量が顕著に低減し、充放電サイクル特性も良好になる。

0032

第1の負極活物質における造粒物に含まれる、ナノサイズを有する導電性炭素粉末と該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末とが高分散状態で含まれている複合体のうち、酸化スズ粉末がナノサイズを有する酸化スズの球状粒子であり、酸化スズの球状粒子の表面のうちの導電性炭素粉末の表面と接触していない部分を被覆している低導電性の無定形炭素膜をさらに含む複合体は、この複合体自体が負極活物質として好適である。したがって、本発明はまた、ナノサイズを有する導電性炭素粉末と、該導電性炭素粉末の表面に接触しているナノサイズを有する酸化スズの球状粒子と、が高分散状態で含まれており、上記酸化スズの球状粒子の表面のうちの上記導電性炭素粉末の表面と接触していない部分を被覆している低導電性の無定形炭素膜がさらに含まれている、リチウムの吸蔵及び放出が可能な第2の負極活物質に関する。

0033

第2の負極活物質では、高分散状態で存在するナノサイズの導電性炭素粉末とナノサイズの酸化スズの球状粒子とによりSn−O−C結合が生じやすくなっており、また、酸化スズ粒子と低導電性の無定形炭素膜との間にもSn−O−C結合が生じやすくなっており、したがってコンバージョン反応後に上記式(III)に示す準安定状態が多くのサイトで形成されるようになっている。その結果、コンバージョン反応の可逆的な進行が維持されて、Li/Li+電極に対して0V〜約2Vの範囲での充放電サイクルを実現することができる。また、コンバージョン反応領域を含む電位範囲での充放電の繰り返しにおいて、酸化スズ粒子が炭素粉末の外面上に存在していても、その酸化スズ粒子により誘発される負極活物質の凝集が無定形炭素膜により抑制されるため、酸化スズ粒子の量を増加させることができる。その結果、負極活物質の単位体積あたりの放電容量を増加させることができる上に、良好な充放電サイクル特性を得ることができる。さらに、酸化スズ粒子の量を増加させることにより、電解液の電気化学的分解を触媒する導電性炭素粉末の表面の活性点をより多くの酸化スズ粒子で覆うことができ、導電性炭素粉末表面での電解液の電気化学的分解に起因する初期不可逆容量を低下させることができる。また、無定形炭素膜が低導電性であるため、電解液の電気化学的分解のために必要な電子が無定形炭素膜の表面に供給されにくくなり、したがって無定形炭素膜の表面での電解液の電気化学的分解が抑制される。その結果、低下した初期不可逆容量を有する負極活物質が得られる。

0034

この好適な第2の負極活物質は、超遠心力場においてゾルゲル法と分散とを同時に行う方法、すなわち、旋回可能な反応器内に酸化スズ前駆体とナノサイズの導電性炭素粉末とを含む反応液を導入し、上記反応器を旋回させて酸化スズ前駆体のゾルゲル反応を行うと同時にゾルゲル反応の反応生成物を上記導電性炭素粉末に高分散状態で担持させる方法において、上記反応液にポリビニルアルコール共存させることにより好適に製造することができる。なお、「酸化スズ前駆体」とは、負極活物質の製造工程を介して酸化スズに変化する化合物を意味する。また、「ポリビニルアルコール」の語は、ポリ酢酸ビニルけん化度が100%のものを限定的に意味する語ではなく、けん化度が80%以上のものを意味する。

0035

したがって、本発明はまた、旋回可能な反応器内に、酸化スズ前駆体とポリビニルアルコールとを溶解させた溶液にナノサイズを有する導電性炭素粉末を添加した反応液を導入する導入工程、上記反応器を旋回させて、上記反応液にずり応力遠心力とを加えながら上記酸化スズ前駆体の加水分解反応重縮合反応とを行ってナノサイズを有する球状の反応生成物を得ると同時に、上記反応生成物を上記導電性炭素粉末に担持させ且つ上記反応生成物の表面にポリビニルアルコールを付着させる反応工程、及び、上記反応工程で得られた生成物を乾燥後、ポリビニルアルコールを熱分解して、ナノサイズを有する酸化スズの球状粒子の表面に低導電性の無定形炭素膜を形成する熱処理工程、を含むことを特徴とする第2の負極活物質の製造方法に関する。

0036

上記反応工程において、上記反応液にずり応力と遠心力の双方の機械的エネルギーが同時に加えられることによって、この機械的エネルギーが化学エネルギー転化することによるものと思われるが、従来にない速度で酸化スズ前駆体の加水分解反応と重縮合反応とを行うことができ、ナノサイズを有する球状の反応生成物を得ることができ、同時に、上記反応生成物を導電性炭素粉末に高分散状態で担持させることができる。また、同時に、酸化スズ前駆体及び/又は上記反応生成物とポリビニルアルコールの水酸基及び/又は水酸基が解離した酸素イオンとの間の強い相互作用により、ポリビニルアルコールを上記反応生成物の表面に付着させることができる。しかも、反応生成物の粒径が、ポリビニルアルコールを使用しない反応液から得られた反応生成物のものと比較して微細化する。次いで、上記熱処理工程において、上記反応工程で得られた生成物を乾燥し、ポリビニルアルコールを非酸化雰囲気下で熱分解(不完全燃焼)すると、ナノサイズを有する酸化スズの球状粒子、好ましくは1〜10nmの平均粒径を有する球状粒子、特に好ましくは1〜2nmの平均粒径を有する球状粒子の表面にポリビニルアルコールに由来する低導電性の無定形炭素膜が形成される。

0037

上記反応工程において使用される導電性炭素粉末は、ケッチェンブラックであるのが好ましい。導電性炭素粉末としてケッチェンブラックを使用すると、上記反応液における酸化スズ前駆体の質量を二酸化スズ換算でケッチェンブラックの質量の1.5〜4倍の範囲にすることができ、高い単位体積当たりの放電容量を有する負極活物質を得ることができる。特に、1〜10nmの平均粒径、好ましくは1〜2nmの平均粒径を有する酸化スズの球状粒子がケッチェンブラックの外面及び内面に接触している負極活物質は、極めて高い単位体積当たりの放電容量と良好なサイクル特性とを有する。なお、「二酸化スズ換算」とは、酸化スズ前駆体に含まれるスズの全てが二酸化スズに変化したと仮定して質量を算出することを意味する。

0038

第1の負極活物質における造粒物に含まれる、ナノサイズを有する導電性炭素粉末と該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末とが高分散状態で含まれている複合体のうち、導電性炭素粉末の表面を被覆している低導電性の無定形炭素層をさらに含む複合体は、この複合体自体が負極活物質として好適である。この第3の負極活物質では、高分散状態で存在するナノサイズの導電性炭素粉末と酸化スズの球状粒子とによりSn−O−C結合が生じやすくなっており、したがってコンバージョン反応後に上記式(III)に示す準安定状態が多くのサイトで形成されるようになっている。その結果、コンバージョン反応の可逆的な進行が維持されて、Li/Li+電極に対して0V〜約2Vの範囲での充放電サイクルを実現することができる。また、無定形炭素層が低導電性であるため、電解液の電気化学的分解のために必要な電子が無定形炭素層の表面に供給されにくくなり、したがって無定形炭素層の表面での電解液の電気化学的分解が抑制される。その結果、低下した初期不可逆容量を有する負極活物質が得られる。

0039

ナノサイズを有する導電性炭素粉末と、該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末と、が高分散状態で含まれており、上記導電性炭素粉末の表面を被覆している低導電性の無定形炭素層がさらに含まれている、リチウムの吸蔵及び放出が可能な第3の負極活物質は、ナノサイズを有する導電性炭素粉末と、該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末と、が高分散状態で含まれている複合体と、式(A)



(式中、nは1〜4の整数を表し、Xはヒドロキシ基アミノ基又はカルボキシル基を表わす)で表されるアミノ酸との混錬物を得る混錬工程、及び、上記混錬物を熱処理することにより上記式(A)で表されるアミノ酸を熱分解して低導電性の無定形炭素層を形成する熱処理工程、を含む方法により好適に製造することができる。上記式(A)で表されるアミノ酸を使用することにより、導電性炭素粉末に起因する初期不可逆容量が効率的に低下する。

0040

上記複合体と式(A)で表されるアミノ酸とを混錬することによって、少なくとも導電性炭素粉末の表面のうちの酸化スズ粉末と接触していない部分に上記アミノ酸の層が形成される。さらに混錬物を熱処理し、上記アミノ酸を熱分解して無定形炭素に変化させると、少なくとも導電性炭素粉末の表面のうちの酸化スズ粉末と接触していない部分に低導電性の無定形炭素層が形成される。上記熱処理工程は、非酸化雰囲気下で450〜500℃の範囲の温度で行うのが好ましい。

0041

グリシンバリングルタミン酸−5−メチルを式(A)で表されるアミノ酸の代わりに使用しても、初期不可逆容量が効率的に低下しない。式(A)で表されるアミノ酸を使用することにより、導電性炭素粉末に起因する初期不可逆容量が効率的に低下する理由は、現時点では明らかではないが、以下のように考えられる。熱処理工程において、これらの化合物を非酸化雰囲気下で熱処理すると、昇温の過程で、不斉炭素原子に結合しているアミノ基及びカルボキシ基の一方と基Xとが反応して環状化合物が生成するが、この環状化合物は、熱分解されにくく、導電性炭素粉末上でゆっくりと熱分解される。そのため、熱処理の後には、緻密な低導電性の無定形炭素層が導電性炭素粉末の表面上に形成されることになる。この緻密な低導電性の無定形炭素層により電解液の導電性炭素粉末表面への到達が効率的に抑制されるため、初期不可逆容量が効率的に低下すると考えられる。

0042

本発明の負極活物質は、高い可逆容量を有する上に低減した初期不可逆容量を有するため、リチウムイオン二次電池のために適している。したがって、本発明はさらに、本発明の負極活物質を含む負極と、リチウムの吸蔵及び放出が可能な正極活物質を含む正極と、上記負極と上記正極との間に配置された非水系電解液を保持したセパレータとを備えたリチウムイオン二次電池を提供する。この他、本発明の負極活物質は、活性炭などの正極活物質と組み合わせてハイブリッドキャパシタを構成するためにも好適に使用することができる。

発明の効果

0043

ナノサイズを有する導電性炭素粉末と該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末とが高分散状態で含まれている複合体と、黒鉛及び難黒鉛化炭素からなる群から選択された骨材と、が凝集した造粒物を含む本発明の第1の負極活物質は、コンバージョン反応の可逆的な進行が維持され、負極活物質の嵩密度を向上させることができるため、向上した単位体積あたりの放電容量を有する。また、第1の負極活物質は、造粒物における炭素材料と電解液との接触面積の減少により電解液の電気化学的分解が抑制されるため、顕著に低下した初期不可逆容量を有する。

0044

第1の負極活物質の製造において好適に使用される、ナノサイズを有する導電性炭素粉末と、該導電性炭素粉末の表面に接触しているナノサイズを有する酸化スズの球状粒子とが高分散状態で含まれており、酸化スズの球状粒子の表面のうちの導電性炭素粉末の表面と接触していない部分を被覆している低導電性の無定形炭素膜がさらに含まれている複合体は、それ自体で負極活物質として好適である。この第2の負極活物質は、コンバージョン反応の可逆的な進行が維持され、酸化スズ粒子の量を増加させることができるため、向上した単位体積あたりの放電容量を有する。また、増量された酸化スズ粒子により導電性炭素粉末の表面が覆われ、電解液の電気化学的分解が抑制されるため、第2の負極活物質は低下した初期不可逆容量を有する。さらに、第2の負極活物質は、低導電性の無定形炭素膜により負極活物質の凝集が抑制されるため、良好な充放電サイクル特性を示す。酸化スズの球状粒子の表面のうちの導電性炭素粉末の表面と接触していない部分を被覆している低導電性の無定形炭素膜は、ポリビニルアルコールの熱分解により形成することができる。

0045

第1の負極活物質の製造において好適に使用される、ナノサイズを有する導電性炭素粉末と、該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末と、が高分散状態で含まれており、上記導電性炭素粉末の表面を被覆している低導電性の無定形炭素層がさらに含まれている複合体は、それ自体で負極活物質として好適である。この第3の負極活物質は、コンバージョン反応の可逆的な進行が維持されるため高い放電容量を有する上に、導電性炭素粉末表面での電解液の電気化学的分解が抑制されるため、低下した初期不可逆容量を有する。導電性炭素粉末の表面を被覆している低導電性の無定形炭素層は、式(A)で表わされるアミノ酸の熱分解により、緻密に形成することができる。

0046

したがって、本発明の負極活物質は、リチウムイオン二次電池及びハイブリッドキャパシタにおける黒鉛に代わる負極活物質として極めて有望である。

図面の簡単な説明

0047

酸化スズ粒子の表面を被覆している無定形炭素膜を有する負極活物質のTEM写真であり、(A)は実施例の負極活物質についての写真であり、(B)(C)は比較例の負極活物質についての写真である。
酸化スズ粒子の表面を被覆している無定形炭素膜を有する負極活物質のX線粉末回折図である。
ポリマー二塩化スズとの相互作用調査するためのTG分析の結果を示す図であり、(A)はポリビニルアルコールを含む粉体についての分析結果であり、(B)はポリアクリル酸ナトリウムを含む粉体についての分析結果である。
酸化スズ粒子の表面を被覆している無定形炭素膜を有する負極活物質の充放電サイクル試験の結果を示す図である。
複合体と黒鉛との造粒物を負極活物質とした電極の密度と黒鉛の含有量との関係を示した図である。
複合体と難黒鉛化炭素との造粒物を負極活物質とした電極の密度と難黒鉛化炭素の含有量との関係を示した図である。
図5に示された負極活物質における単位重量あたりの容量と黒鉛の含有量との関係を示した図である。
図5に示された負極活物質における単位体積あたりの容量と黒鉛の含有量との関係を示した図である。
図6に示された負極活物質における単位重量あたりの容量と難黒鉛化炭素の含有量との関係を示した図である。
図6に示された負極活物質における単位体積あたりの容量と難黒鉛化炭素の含有量との関係を示した図である。
別の複合体と黒鉛との造粒物を負極活物質とした電極の密度と黒鉛の含有量との関係を示した図である。
図11に示された負極活物質における単位重量あたりの容量と黒鉛の含有量との関係を示した図である。
図11に示された負極活物質における単位体積あたりの容量と黒鉛の含有量との関係を示した図である。
さらに別の複合体と黒鉛との造粒物を負極活物質とした電極の密度と黒鉛の含有量との関係を示した図である。
図14に示された負極活物質における単位重量あたりの容量と黒鉛の含有量との関係を示した図である。
図14に示された負極活物質における単位体積あたりの容量と黒鉛の含有量との関係を示した図である。
さらに別の複合体と黒鉛との造粒物を負極活物質とした電極の密度と黒鉛の含有量との関係を示した図である。
図17に示された負極活物質における単位重量あたりの容量と黒鉛の含有量との関係を示した図である。
図17に示された負極活物質における単位体積あたりの容量と黒鉛の含有量との関係を示した図である。
複合体と黒鉛との造粒物についてのSEM写真であり、(A)はライカイ器を用いて得た造粒物の写真であり、(B)はジェットミルを用いて得た造粒物の写真である。
充放電サイクル試験の結果を示す図である。

0048

まず、ナノサイズを有する導電性炭素粉末と、該導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ粉末と、が高分散状態で含まれている複合体について説明し、次いで複合体を含む造粒物(第1の負極活物質)について説明する。

0049

(1)複合体
複合体に含まれる酸化スズ粉末は、二酸化スズ或いは二酸化スズと一酸化スズとの混合物であることができる。酸化スズ粉末は、ナノサイズを有している必要はないが、酸化スズ粉末がナノサイズを有していると、酸化スズの表面積が増加し、ナノサイズを有する炭素粉末との接触点が増加するため、Sn−O−C結合がより多くのサイトで形成されるようになり、したがってコンバージョン反応後に上記式(III)に示す準安定状態が形成されやすくなるため好ましい。また、酸化スズ粉末が微細であると、コンバージョン反応後に、酸化リチウムマトリックス中に微細なスズが分散することになり、可逆的に生じる合金化反応におけるリチウム吸蔵放出に伴うスズの大きな体積変化がこのマトリックスにより効果的に抑制される。また、酸化スズ粉末が微細であると、酸化スズ粉末の反応サイトが増大し、酸化スズ粉末内のリチウムの拡散距離が短縮する。

0050

ナノサイズの酸化スズ粉末としては、ナノサイズの球状粒子のほか、ナノワイヤナノチューブも使用することができるが、ナノサイズの球状粒子、好ましくは1〜10nmの平均粒径を有する球状粒子、特に好ましくは1〜2nmの平均粒径を有する球状粒子を使用するのが好ましい。ナノサイズを有する導電性炭素粉末、好ましくは球状粒子と、その表面と接触しているナノサイズを有する酸化スズ粉末、好ましくは1〜10nmの平均粒径を有する球状粒子、特に好ましくは1〜2nmの平均粒径を有する球状粒子により、高い可逆容量を有し、低減した初期不可逆容量を有し、その上、Li/Li+電極に対して0V〜約2Vの範囲での充放電サイクル試験において放電容量の減少が少なく、サイクル特性が極めて良好な複合体が得られる。

0051

複合体に含まれるナノサイズを有する導電性炭素粉末としては、ナノサイズを有するケッチェンブラック、アセチレンブラックチャネルブラックなどのカーボンブラックフラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、無定形炭素、炭素繊維天然黒鉛人造黒鉛黒鉛化ケッチェンブラック、活性炭、メソポーラス炭素などを挙げることができる。また、気相法炭素繊維を使用することもできる。これらの炭素粉末は、単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。

0052

コンバーション反応が可逆的に進行するのは、導電性炭素粉末の酸素を介してSn−O−C結合が形成されることに起因すると考えられるため、使用するナノサイズを有する導電性炭素粉末に酸素原子が豊富に含まれているのが好ましい。したがって、表面積が大きい炭素粉末が好ましく、炭素粉末の1gあたりの表面積が1000m2以上であるのが特に好ましく、微細な炭素粉末であるのが好ましく、10〜50nmの平均粒径を有する球状粒子を使用するのが特に好ましい。また、上記炭素粉末の酸素量で表わすと、炭素粉末1gあたりの酸素量が5.0ミリモル以上であるのが好ましい。ここで、「炭素粉末1gあたりの酸素量」は、負極活物質のために使用する炭素粉末について、窒素雰囲気中、30〜1000℃の範囲について1℃/分の昇温速度でTG測定を行い、150〜1000℃の範囲の重量減少量を、全てCO2として脱離したと仮定して算出した酸素量を意味する。例えば、炭素粉末1gの150〜1000℃の範囲の重量減少量が22mgであれば、炭素粉末1gあたりの酸素量は1ミリモルと算出される。このような炭素粉末としては、ナノサイズを有するカーボンブラック、好ましくはケッチェンブラックが挙げられる。

0053

コンバージョン反応領域を含む電位範囲で良好なサイクル特性を有する負極活物質を得るためには、合金化反応領域における体積変化による応力の抑制ばかりでなく、コンバージョン反応領域で生ずる負極活物質の凝集を抑制することが重要であることが分かっている。そして、この凝集を抑制するために、酸化スズ粉末と導電性炭素粉末との複合体において、表面積の大きいナノサイズの炭素粉末の使用が有効であり、この炭素粉末と酸化スズ粉末とが高分散で存在していることが重要であるが、特に、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、及び多孔質カーボンのように導電性炭素粉末が空隙を有しており、酸化スズ粉末が実質的に上記空隙内に存在しているのが好ましい。負極活物質の凝集は、特に炭素粉末の外面上に担持された酸化スズ粉末により誘発されることが分かっているからである。

0054

したがって、導電性炭素粉末として、中空シェル構造を有するケッチェンブラックを使用するのが好ましい。ケッチェンブラックは、表面積が大きく、内外面及びエッジ面に多くの酸素(表面官能基の酸素、吸着酸素)を有しているため、Sn−O−C結合が豊富に形成され、したがってまた式(III)に示す準安定状態が豊富に形成される。また、ケッチェンブラックの内部空孔内にナノサイズの酸化スズ粉末、好ましくは1〜10nmの平均粒径を有する球状粒子、特に好ましくは1〜2nmの平均粒経を有する球状粒子を優先的に担持することができるため、コンバージョン反応領域で生ずる負極活物質の凝集が抑制され、さらにシェルが合金化反応領域のスズの体積膨張を抑制するため好ましい。

0055

この複合体はさらに、導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ以外の金属酸化物を含むことができる。この金属酸化物は無定形又はナノサイズの微結晶であり、電解液の電気化学的分解を触媒する導電性炭素粉末の表面の活性点が、上記金属酸化物により被覆され、電解液の電気化学的分解が阻害される。金属酸化物を構成する金属には特に制限が無く、Fe、Co、Ni、Cu,Zn、Al、Si、Ti、Zr、La、V、Cr、Mo、W、Mn、Re、Ru、Rh、Pd、Pt、Ag、Sb、Pb、Biなどを例示することができる。上記金属酸化物は、三酸化二鉄四酸化三鉄一酸化鉄のように同じ種類の金属ではあるが価数の異なる金属を含む複数の酸化物が存在する場合にはいずれの酸化物であっても良く、2種以上の金属を含む複合酸化物であっても良い。上記金属酸化物は、単独の化合物であっても良く、2種以上の化合物の混合物で有っても良い。特に、酸化鉄微粒子化しやすいため好ましい。

0056

この複合体はさらに、酸化スズ粉末の表面のうちの導電性炭素粉末の表面と接触していない部分を被覆している低導電性の無定形炭素膜を含むことができる。低導電性の無定形炭素膜により、コンバージョン反応領域を含む電位範囲での充放電の繰り返しにおいて、複合体の凝集が抑制される。低導電性の無定形炭素膜に被覆されている酸化スズ粉末がナノサイズを有する酸化スズの球状粒子であると、酸化スズの表面積が増加するため、Sn−O−C結合がさらに生じやすくなる。酸化スズの球状粒子を被覆している低導電性の無定形炭素膜を含む複合体は、第2の負極活物質とも表わされる。

0057

この複合体はさらに、導電性炭素粉末の表面を被覆している低導電性の無定形炭素層を含むことができる。この低導電性の無定形炭素層を含む複合体は、第3の負極活物質とも表わされる。低導電性の無定形炭素層により、電解液の電気化学的分解を触媒する導電性炭素粉末の表面の活性点が被覆され、電解液の電気化学的分解が阻害される。

0058

この複合体の製造方法には、酸化スズ粉末と導電性炭素粉末との高分散状態が実現される方法であれば特に限定がない。例えば、導電性炭素粉末を分散媒中で酸化スズ前駆体と混合し、酸化スズ前駆体を導電性炭素粉末の表面官能基と反応させた後、熱処理することにより、酸化スズ前駆体を酸化スズに変化させることができる。酸化スズ前駆体としては、二塩化スズ、四塩化スズ硝酸スズ、炭酸スズなどの無機金属化合物酢酸スズ、乳酸スズ、テトラメトキシスズ、テトラエトキシスズ、テトライソプロポキシスズなどの有機金属化合物、或いはこれらの混合物を使用することができる。分散媒として酸化スズ前駆体を溶解可能であり且つ反応に悪影響を及ぼさない媒体を使用すると、得られる負極活物質における酸化スズが微粒子化するため好ましい。

0059

この複合体の製造は、以下に示す超遠心力場においてゾルゲル法と分散とを同時に行う方法により行うのが極めて好ましい。この反応により、ナノサイズを有する炭素粉末、好ましくは10〜50nmの粒径を有する球状粒子、特に好ましくはケッチェンブラック、にナノサイズを有する酸化スズ粉末、好ましくは1〜10nmの平均粒径を有する球状粒子、特に好ましくは1〜2nmの平均粒径を有する球状粒子を高分散状態で担持することができ、Sn−O−C結合をより多くのサイトで形成することができる。特に、炭素粉末としてケッチェンブラックを使用すると、以下の超遠心力場においてゾルゲル法と分散とを同時に行う方法により、ケッチェンブラックの内部空孔内にナノサイズの酸化スズ粉末、好ましくは1〜10nmの平均粒径を有する球状粒子、特に好ましくは1〜2nmの平均粒径を有する球状粒子を効果的に担持することができる。

0060

超遠心力場においてゾルゲル法と分散とを同時に行う方法は、旋回可能な反応器内に、酸化スズ前駆体を溶解させた溶液にナノサイズを有する導電性炭素粉末を添加した反応液を導入する工程、及び、上記反応器を旋回させて、上記反応液にずり応力と遠心力とを加えながら酸化スズ前駆体の加水分解反応と重縮合反応とを行うと同時に、得られた反応生成物を上記導電性炭素粉末に高分散状態で担持させる工程、を含む。この方法により、反応液にずり応力と遠心力の双方の機械的エネルギーを同時に加えることができ、この機械的エネルギーが化学エネルギーに転化することによるものと思われるが、従来にない速度で酸化スズ前駆体の加水分解反応と重縮合反応とを行うことができ、同時に得られた反応生成物を導電性炭素粉末の表面に高分散状態で担持させることができる。この超遠心力場においてゾルゲル法と分散とを同時に行う方法は、出願人による特開2007−160151号公報において、酸化チタン酸化ルテニウムを炭素粉末上に高分散で担持した例により開示されているが、この公報における旋回可能な反応器に関する記載及びこの反応器を使用したゾルゲル反応に関する記述は、そのまま本明細書に参考として組み入れられる。酸化スズ前駆体と導電性炭素粉末とを含む反応液には、加水分解反応及び重縮合反応のための反応抑制剤を添加しないのが極めて好ましい。

0061

超遠心力場においてゾルゲル法と分散とを同時に行う方法は、特開2007−160151号公報の図1に示されている、外筒内筒同心円筒からなり、内筒の側面に貫通孔が設けられ、外筒の開口部にせき板が配置されている反応器を用いて行うことができる。

0062

この方法において、酸化スズ前駆体として上述した化合物を使用することができる。これらの前駆体を溶解するための溶媒としては、これらの前駆体を溶解可能であり且つ反応に悪影響を及ぼさない溶媒を特に限定なく使用することができ、水、メタノールエタノールイソプロピルアルコールなどを好適に使用することができる。また、加水分解のために、NaOH、KOH、Na2CO3、NaHCO3、NH4OHなどを上述の溶媒に溶解させた液を使用することができる。水を酸化スズ前駆体の加水分解のために使用することもできる。

0063

そして、上記反応器の内筒に、酸化スズ前駆体を溶解した溶液と、上述した導電性炭素粉末を導入し、内筒を旋回させて酸化スズ前駆体と炭素粉末とを混合して分散させる。さらに、酸化スズ前駆体の加水分解のためのアルカリ溶液等を添加し、再度内筒を旋回させる。内筒の旋回による遠心力によって、内筒内の反応液が内筒の貫通孔を通じて外筒の内壁面に移動し、外筒の内壁面に酸化スズ前駆体を含む薄膜が生成し、この薄膜が外筒内壁上部にずり上がる。その結果、この薄膜にずり応力と遠心力が加わり、この機械的なエネルギーが反応に必要な化学エネルギー、いわゆる活性化エネルギーに転化するものと思われるが、酸化スズ前駆体の加水分解と重縮合反応とが短時間で進行する。

0064

上記反応において、薄膜の厚さが薄いほど加えられる機械的エネルギーが大きなものとなる。薄膜の厚みは、一般には5mm以下であり、2.5mm以下であるのが好ましく、1.0mm以下であるのが特に好ましい。薄膜の厚みは、反応器のせき板の幅及び反応器に導入される反応液の量によって設定することができる。

0065

また、上記反応は反応液に加えられるずり応力と遠心力の機械的エネルギーによって実現されると考えられるが、このずり応力と遠心力は内筒の旋回により反応液に加えられる遠心力によって生じる。内筒の反応液に加えられる遠心力は、一般には1500kgms−2以上、好ましくは70000kgms−2以上、特に好ましくは270000kgms−2以上である。

0066

反応終了後に、内筒の旋回を停止し、導電性炭素粉末を回収し、乾燥することにより、ナノサイズを有する酸化スズ粉末、好ましくは1〜10nmの平均粒径を有する球状粒子、特に好ましくは1〜2nmの平均粒径を有する球状粒子が炭素粉末の表面に高分散状態で担持されている複合体を得ることができる。

0067

この反応器を用いた超遠心力場におけるゾルゲル法では、使用する導電性炭素粉末の種類によって、炭素粉末に担持される二酸化スズと一酸化スズとの割合が変化する。表面積が大きく且つ酸素原子(表面官能基の酸素、吸着酸素)が豊富に含まれる炭素粉末を使用すると、二酸化スズの割合が増加する。炭素粉末として好適なケッチェンブラックを使用した場合には、スズの価数が2価の酸化スズ前駆体を原料として使用しても、X線粉末回折パターンから判断する限りにおいては二酸化スズのみが生成する。また、TEM写真によると、二酸化スズの微細な球状粒子が優先的にケッチェンブラックの内部空孔内に担持されている。

0068

導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ以外の金属酸化物をさらに含む複合体は、例えば、導電性炭素粉末を分散媒中で酸化スズ前駆体及び金属酸化物前駆体と混合し、酸化スズ前駆体及び金属酸化物前駆体を導電性炭素粉末の表面官能基と反応させた後、熱処理することにより、酸化スズ前駆体及び金属酸化物前駆体を酸化スズ及び金属酸化物に変化させる方法により製造することができる。導電性炭素粉末を分散媒中で酸化スズ前駆体と混合し、酸化スズ前駆体と導電性炭素粉末の表面官能基とを反応させて熱処理することにより、酸化スズ前駆体を酸化スズに変化させた後、得られた生成物と金属酸化物前駆体とを分散媒中で混合し、上記生成物の表面官能基と金属酸化物前駆体とを反応させて熱処理することにより、金属酸化物前駆体を金属酸化物に変化させることもできる。また、導電性炭素粉末を分散媒中で金属酸化物前駆体と混合し、金属酸化物前駆体と導電性炭素粉末の表面官能基とを反応させて熱処理することにより、金属酸化物前駆体を金属酸化物に変化させた後、得られた生成物と酸化スズ前駆体とを分散媒中で混合し、上記生成物の表面官能基と酸化スズ前駆体とを反応させて熱処理することにより、酸化スズ前駆体を酸化スズに変化させることもできる。ここで、「金属酸化物前駆体」とは、負極活物質の製造工程を介して金属酸化物に変化する化合物を意味し、酸化スズ前駆体は除外される。

0069

この方法において、酸化スズ前駆体として上述した化合物を使用することができる。金属酸化物前駆体としては、各種金属塩化物硝酸塩炭酸塩などの無機金属化合物、酢酸塩乳酸塩、テトラエトキシド、テトライソプロポキシド、テトラブトキシドなどの有機金属化合物、或いはこれらの混合物を使用することができる。分散媒として酸化スズ前駆体及び金属酸化物前駆体を溶解可能であり且つ反応に悪影響を及ぼさない媒体を使用すると、得られる負極活物質における酸化スズ及び金属酸化物が微粒子化するため好ましい。

0070

また、導電性炭素粉末の表面に接触している酸化スズ以外の金属酸化物をさらに含む複合体は、上述したゾルゲル法と分散とを同時に行う方法において、酸化スズ前駆体と共に金属酸化物前駆体を併用することにより得ることができる。この方法により、従来にない速度で酸化スズ前駆体及び金属酸化物前駆体の加水分解反応と重縮合反応とを行うことができ、同時に得られた反応生成物を導電性炭素粉末に高分散状態で担持させることができる。この方法において、酸化スズ前駆体として上述した化合物を使用することができ、金属酸化物前駆体として上述した化合物を使用することができる。

0071

酸化スズ粉末の表面のうちの導電性炭素粉末の表面と接触していない部分を被覆している低導電性の無定形炭素膜をさらに含む複合体(第2の負極活物質)は、上述したゾルゲル法と分散とを同時に行う方法において、酸化スズ前駆体及び必要に応じて金属酸化物前駆体と共に、ポリビニルアルコールを併用することにより得ることができる。この形態では、酸化スズ前駆体及び必要に応じて使用された金属酸化物前駆体の加水分解反応と重縮合反応とを行うことができ、ナノサイズを有する球状の酸化スズ前駆体及び必要に応じて使用された金属酸化物前駆体の反応生成物を得ることができ、同時に、酸化スズ前駆体及び必要に応じて使用された金属酸化物前駆体の反応生成物を導電性炭素粉末に高分散状態で担持させることができる。また、同時に、酸化スズ前駆体及び/又は酸化スズ前駆体の反応生成物とポリビニルアルコールの水酸基及び/又は水酸基が解離した酸素イオンとの間の強い相互作用により、ポリビニルアルコールを酸化スズ前駆体の反応生成物の表面に付着させることができる。しかも、酸化スズ前駆体の反応生成物の粒径が、ポリビニルアルコールを使用しない反応液から得られた反応生成物のものと比較して微細化する。次いで、得られた生成物を乾燥し、ポリビニルアルコールを非酸化雰囲気下、好適には窒素アルゴン等の不活性雰囲気中における約500℃以下、好ましくは450〜500℃の条件下で熱分解(不完全燃焼)すると、ナノサイズを有する酸化スズの球状粒子、好ましくは1〜10nmの平均粒径を有する球状粒子、特に好ましくは1〜2nmの平均粒径を有する球状粒子の表面のうちの上記導電性炭素粉末の表面と接触していない部分がポリビニルアルコールに由来する無定形炭素の薄膜で被覆される。非酸化雰囲気下での熱分解(不完全燃焼)は、以下に示す導電性炭素粉末の表面を被覆している低導電性の無定形炭素層の形成と同時に行うこともできる。このポリビニルアルコールに由来する無定形炭素膜により、充放電サイクル経験における負極活物質の凝集が抑制されるため、この形態では、酸化スズ粒子が導電性炭素粉末の外面上に存在しても、良好なサイクル特性が得られる。好適なケッチェンブラックを導電性炭素粉末として使用した場合には、ケッチェンブラックの内部空孔内に収容可能な量を超える量の酸化スズ粒子を複合体に含めることができ、旋回可能な反応器に導入する反応液における酸化スズ前駆体の質量を二酸化スズ換算でケッチェンブラックの質量の1.5〜4倍の範囲に高めても、良好なサイクル特性が得られる。

0072

上記導電性炭素粉末の表面を被覆している低導電性の無定形炭素層がさらに含まれている複合体(第3の負極活物質)は、上述した複合体、好適には上述の超遠心力場においてゾルゲル法と分散とを同時に行う方法により得られた酸化スズ粒子を担持させた導電性炭素粉末、酸化スズ以外の金属酸化物をさらに担持させた導電性炭素粉末或いはポリビニルアルコール或いはポリビニルアルコールに由来する無定形炭素膜で被覆された酸化スズ粒子を担持させた導電性炭素粉末、と無定形炭素前駆体とを混錬して混錬物を得る混錬工程、及び、上記混錬物を熱処理することにより上記無定形炭素前駆体を熱分解して低導電性の無定形炭素層を形成する熱処理工程、を含む方法により得ることができる。

0073

ここで、「無定形炭素前駆体」の語は、熱処理により熱分解(不完全燃焼)して無定形炭素に変化する化合物を意味し、熱分解の前に揮発する化合物は含まれない。無定形炭素前駆体としては、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸、グルコースマンノース等の単糖ラクトースマルトトリオース等のオリゴ糖、でん粉、セルロースデキストリン等の多糖りんご酸、酒石酸シトラマル酸等のヒドロキシ酸パルチミン酸ステアリン酸オレイン酸リノール酸等の脂肪酸エチレングリコールグリセリンエリトリトールアラビニトールポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等のポリオール、及びこれらの誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースヒドロキシプロピルセルロース、オレオステアリン,オレオジパルミチンなどを例示することができる。

0074

混錬工程では、複合体と無定形炭素前駆体と適量の分散媒とを組み合わせ、必要に応じて分散媒を蒸発させながら混錬することにより混錬物を得る。混錬のための分散媒としては、複合体に悪影響を及ぼさない媒体を特に限定なく使用することができ、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを好適に使用することができる。無定形炭素前駆体を溶解可能な分散媒を使用すると均一な無定形炭素層が形成されやすいため好ましく、必要に応じて酸性分散液又はアルカリ性分散液を使用することができる。複合体と無定形炭素前駆体との割合は、質量比で、一般には3:1〜1:3の範囲であり、好適には1.5:1〜1:1.5の範囲である。この混錬工程により、少なくとも導電性炭素粉末の表面のうちの酸化スズ及び必要に応じて担持された金属酸化物と接触していない部分に無定形炭素前駆体の層が形成される。また、一般的には複合体の隣り合う粒の間に形成された間隙部分にも無定形炭素前駆体が侵入する。次いで、熱処理工程では、得られた混錬物を必要に応じて乾燥した後に熱処理を行い、無定形炭素前駆体を熱分解(不完全燃焼)して低導電性の無定形炭素に変化させる。熱処理は、非酸化雰囲気下、好適には窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中約500℃以下、好ましくは450〜500℃の温度で行われる。この熱処理工程により、少なくとも導電性炭素粉末の表面のうちの酸化スズ及び必要に応じて担持された金属酸化物と接触していない部分に低導電性の無定形炭素層が形成される。また、一般的には複合体の隣り合う粒の間に形成された間隙部分にも低導電性の無定形炭素層が形成される。したがって、最終的に得られた負極活物質の比表面積は、一般に複合体の比表面積より低下する。このことも初期不可逆容量の低下に寄与していると考えられる。

0075

無定形炭素前駆体としては、式(A)



(式中、nは1〜4の整数を表し、Xはヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシル基を表わす)で表されるアミノ酸が好ましい。式(A)で表されるアミノ酸としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、アミノピメリン酸ホモセリンリシンセリンを例示することができる。上記アミノ酸を使用することにより、導電性炭素粉末に起因する初期不可逆容量が効率的に低下する。この理由は現時点では明らかではないが、熱処理工程においてこれらのアミノ酸を非酸化雰囲気下で熱処理すると、昇温過程で、不斉炭素原子に結合しているアミノ基及びカルボキシ基の一方と基Xとが反応して環状化合物が生成し、この環状化合物が導電性炭素粉末上でゆっくりと熱分解され、熱処理の後に、電解液の導電性炭素粉末表面への到達を効率的に抑制する緻密な低導電性の無定形炭素層が導電性炭素粉末の表面上に形成されるためであると考えられる。

0076

(2)第1の負極活物質の製造
第1の負極活物質は、上述の複合体と、黒鉛及び難黒鉛化炭素からなる群から選択された骨材と、が凝集した造粒物を含む。この負極活物質は、上述の複合体と、黒鉛及び難黒鉛化炭素からなる群から選択された骨材との混合物を得る混合工程、及び、上記混合物を粉砕することにより、上記複合体と上記骨材とを凝集させて造粒物を得る造粒工程、を含む方法を実施することにより得ることができる。

0077

本発明の製造方法では、市販の黒鉛及び難黒鉛化炭素を使用することができる。ただし、これらは骨材として使用されるため、複合体の粒より大きい平均粒径を有するものが使用される。黒鉛及び難黒鉛化炭素の平均粒径は、一般的には1〜300μm、好ましくは2〜50μm、特に好ましくは5〜30μmの範囲である。異なる粒経を有する2種以上の黒鉛及び/又は難黒鉛化炭素を混合して使用しても良い。黒鉛及び難黒鉛化炭素の粒の形状には厳密な制限が無い。

0078

黒鉛は、難黒鉛化炭素に比較して可逆容量が大きく且つ嵩密度が大きいため、骨材としてより適している。そして、麟片状の黒鉛を使用すると、球状の黒鉛を使用する場合に比較して、造粒工程での粉砕により微細化されやすく、緻密な造粒物が得られやすいため好ましい。

0079

複合体と骨材とは、一般に粉砕機内で混合される。複合体と骨材との質量比は、黒鉛を骨材とする場合には、4:1〜1:4の範囲が好ましく、難黒鉛化炭素を骨材とする場合には、4:1〜1:1の範囲が好ましい。複合体の量が上述の範囲より多いと、負極活物質の容量のばらつきが大きくなり、複合体の量が上述の範囲より小さいと、負極活物質の可逆容量の値が小さくなる。

0080

造粒工程において使用される粉砕機としては、微粉砕用又は超微粉砕用の粉砕機が好適に使用される。例としては、ライカイ器、ボールミルビーズミルロッドミルローラミル攪拌ミル遊星ミルハイブリダイザーメカノケミカル複合化装置及びジェットミルを挙げることができる。特に、ジェットミルを使用すると、粉砕効率が高いため、微細な骨材を含む緻密で安定な構造の造粒物が効率的に得られる。

0081

粉砕時間は、粉砕機の種類、粉砕機への複合体及び骨材の投入量などによって変化するが、一般的には5分〜10時間、好ましくは10分〜2時間の範囲である。湿式粉砕でも乾式粉砕でも良いが、緻密な造粒物を簡易に得る観点から乾式粉砕が好ましい。

0082

粉砕の過程で、骨材の粗大な粒が粉砕により生じた微細な粒と複合体とを補足しつつ凝集し、その結果、骨材と複合体とが緻密に凝集した造粒物が形成される。そして、この造粒物を負極活物質としてリチウムイオン二次電池を構成すると、造粒物の外表面で電解液の電気化学的分解が起こり、造粒物の外表面にSEIが形成されるため、電解液の溶媒がこの造粒物の外表面のSEIを通過することができず、したがって電解液と炭素材料との接触面積を低下させることができるため、炭素材料表面での電解液の電気化学的分解に起因すると思われる初期不可逆容量を顕著に低減することができる。また、骨材として使用される黒鉛及び難黒鉛化炭素の可逆容量は、複合体の可逆容量よりも小さいが、粉砕により得られる造粒物の嵩密度が複合体単独の嵩密度よりも著しく増大するため、造粒物を負極活物質とした場合の単位体積当たりの可逆容量の低下が抑制されるか或いはむしろ増加する。

0083

(3)負極活物質の用途
本発明の第1、第2及び第3の負極活物質は、リチウムイオン二次電池のために好適である。したがって、本発明はまた、本発明の負極活物質を含む負極と、正極と、負極と正極との間に配置された非水系電解液を保持したセパレータとを備えたリチウムイオン二次電池を提供する。

0084

本発明のリチウムイオン二次電池における負極は、本発明の負極活物質を含有する活物質層集電体上に設けることにより形成することができる。

0085

集電体としては、白金、金、ニッケル、アルミニウム、チタン、鋼、カーボンなどの導電材料を使用することができる。集電体の形状は、膜状、箔状、板状、網状、エキスパンドメタル状円筒状などの任意の形状を採用することができる。

0086

活物質層は、本発明の負極活物質に、必要に応じてバインダ導電材などを添加した混合材料を用いて形成する。

0087

バインダとしては、ポリテトラフルオロエチレンポリフッ化ビニリデンテトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマーポリフッ化ビニル、カルボキシメチルセルロースなどの公知のバインダが使用される。バインダの含有量は、混合材料の総量に対して1〜30質量%であるのが好ましい。1質量%以下であると活物質層の強度が十分でなく、30質量%以上であると、負極の放電容量が低下する、内部抵抗が過大になるなどの不都合が生じる。導電材としては、カーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛などの炭素粉末を使用することができる。

0088

上記混合材料を用いた負極は、バインダを溶解した溶媒に本発明の負極活物質及び必要に応じて他の添加物を分散させ、得られた分散液をドクターブレード法などによって集電体上に塗工し、乾燥することにより作成することができる。また、得られた混合材料に必要に応じて溶媒を添加して所定形状に成形し、集電体上に圧着しても良い。

0089

セパレータとしては、例えばポリオレフィン繊維不織布、ガラス繊維不織布などが好適に使用される。セパレータに保持される電解液は、非水系溶媒に電解質を溶解させた電解液が使用され、公知の非水系電解液を特に制限なく使用することができる。

0090

非水系電解液の溶媒としては、電気化学的に安定なエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートジメチルカーボネートエチルメチルカーボネートジエチルカーボネートスルホラン、3−メチルスルホランγ−ブチロラクトンアセトニトリル及びジメトキシエタンN−メチル−2−ピロリドンジメチルホルムアミド又はこれらの混合物を好適に使用することができる。

0091

非水系電解液の溶質としては、有機電解液に溶解したときにリチウムイオンを生成する塩を、特に限定なく使用することができる。例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(CF3SO2)2、LiCF3SO3、LiC(SO2CF3)3、LiN(SO2C2F5)2、LiAsF6、LiSbF6、又はこれらの混合物を好適に使用することができる。非水系電解液の溶質としてさらに、第4級アンモニウムカチオン又は第4級ホスホニウムカチオンを有する第4級アンモニウム塩又は第4級ホスホニウム塩を使用することができる。例えば、R1R2R3R4N+又はR1R2R3R4P+で表されるカチオン(ただし、R1、R2、R3、R4は炭素数1〜6のアルキル基を表す)と、PF6−、BF4−、ClO4−、N(CF3SO3)2−、CF3SO3−、C(SO2CF3)3−、N(SO2C2F5)2−、AsF6−又はSbF6−からなるアニオンとからなる塩、又はこれらの混合物を好適に使用することができる。

0092

正極を構成するための正極活物質として、公知のリチウムの吸蔵及び放出が可能な正極活物質を特に限定なく使用することができる。例えば、LiMn2O4、LiMnO2、LiV3O5、LiNiO2、LiCoO2などのリチウムと遷移金属との複合酸化物、TiS2、MoS2などの硫化物、NbSe3などのセレン化物、Cr3O8、V2O5、V5O13、VO2、Cr2O5、MnO2、TiO2、MoV2O8などの遷移金属の酸化物、ポリフルオレンポリチオフェンポリアニリンポリパラフェニレンなどの導電性高分子を使用することができる。

0093

正極のための活物質層は、上記正極活物質に必要に応じて負極に関して例示したバインダ、導電材などを加えた混合材料を用いて形成することができる。この混合材料を用いた正極は、バインダを溶解した溶媒に正極活物質及び必要に応じて他の添加物を分散させ、得られた分散液をドクターブレード法などによって負極に関して例示した集電体上に塗工し、乾燥することにより作成することができる。また、得られた混合材料に必要に応じて溶媒を添加して所定形状に成形し、集電体上に圧着しても良い。

0094

本発明の負極活物質は、リチウムイオン二次電池のほか、ハイブリッドキャパシタのための負極活物質としても好適である。ハイブリッドキャパシタにおいては、正極活物質として、活性炭、カーボンナノチューブ、メソポーラス炭素などが使用され、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの非水系溶媒にLiPF6、LiBF4、LiClO4などのリチウム塩を溶解した電解液が使用される。

0095

本発明を以下の実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。

0096

(1)酸化スズの球状粒子の表面を被覆している低導電性の無定形炭素膜を含む複合体(第2の負極活物質)
(a)負極活物質の製造
実施例1:
特開2007−160151号公報の図1に示されている、外筒と内筒の同心円筒からなり、内筒の側面に貫通孔が設けられ、外筒の開口部にせき板が配置されている反応器の内筒に、5.64gのSnCl2・2H2Oを水120mLに溶解させた液を導入し、さらに、0.56gのポリビニルアルコールと濃度2Mの塩酸3.2mLと1.61gのケッチェンブラック(商品名ケッチェンブラックEC600J、ケッチェンブラック・インターナシナル社製、一次粒子径34nm、細孔径4nm、比表面積1520m2/g、酸素量6.1ミリモル/g)とを導入し、70000kgms−2の遠心力が反応液に印加されるように内筒を300秒間旋回させ、SnCl2・2H2O、ポリビニルアルコール及びケッチェンブラックを分散させた。反応時におけるSnCl2・2H2Oとケッチェンブラックとの仕込み量は、質量比で、SnO2:ケッチェンブラック=70:30である。一旦内筒の旋回を停止し、内筒内に濃度1MのNaOH水溶液56.4mLを添加し、再び70000kgms−2の遠心力が反応液に印加されるように内筒を300秒間旋回させた。この間に、外筒の内壁に薄膜が形成され、この薄膜にずり応力と遠心力が印加され、SnCl2の加水分解と重縮合反応が進行した。

0097

内筒の旋回停止後に、ケッチェンブラックをろ過して回収し、真空中180℃で12時間乾燥した。次いで、乾燥後のケッチェンブラックを、窒素中500℃で1時間熱処理することによりポリビニルアルコールを熱分解し、酸化スズ粒子の表面がポリビニルアルコールの熱分解物で被覆された負極活物質を得た。得られた負極活物質をX線粉末回折により確認したところ、二酸化スズが生成していた(図2参照)。ポリビニルアルコールの熱分解物の回折ピークは確認されず、無定形炭素が生成していた。

0098

比較例1:
実施例1において用いた反応器の内筒に、5.64gのSnCl2・2H2Oを水120mLに溶解させた液を導入し、さらに、濃度2Mの塩酸3.2mLと2.50gのケッチェンブラック(商品名ケッチェンブラックEC600J、ケッチェンブラック・インターナショナル社製、一次粒子径34nm、細孔径4nm、比表面積1520m2/g、酸素量6.1ミリモル/g)とを導入し、70000kgms−2の遠心力が反応液に印加されるように内筒を300秒間旋回させ、SnCl2・2H2O及びケッチェンブラックを分散させた。反応時におけるSnCl2・2H2Oとケッチェンブラックとの仕込み量は、質量比で、SnO2:ケッチェンブラック=60:40である。一旦内筒の旋回を停止し、内筒内に濃度1MのNaOH水溶液56.4mLを添加し、再び70000kgms−2の遠心力が反応液に印加されるように内筒を300秒間旋回させた。この間に、外筒の内壁に薄膜が形成され、この薄膜にずり応力と遠心力が印加され、SnCl2の加水分解と重縮合反応が進行した。内筒の旋回停止後に、ケッチェンブラックをろ過して回収し、真空中180℃で12時間乾燥し、負極活物質を得た。得られた負極活物質をX線粉末回折により確認したところ、二酸化スズが生成していた(図2参照)。

0099

比較例2:
実施例1において用いた反応器の内筒に、5.64gのSnCl2・2H2Oを水120mLに溶解させた液を導入し、さらに、濃度2Mの塩酸3.2mLと1.61gのケッチェンブラック(商品名ケッチェンブラックEC600J、ケッチェンブラック・インターナショナル社製、一次粒子径34nm、細孔径4nm、比表面積1520m2/g、酸素量6.1ミリモル/g)とを導入し、70000kgms−2の遠心力が反応液に印加されるように内筒を300秒間旋回させ、SnCl2・2H2O及びケッチェンブラックを分散させた。反応時におけるSnCl2・2H2Oとケッチェンブラックとの仕込み量は、質量比で、SnO2:ケッチェンブラック=70:30である。一旦内筒の旋回を停止し、内筒内に濃度1MのNaOH水溶液56.4mLを添加し、再び70000kgms−2の遠心力が反応液に印加されるように内筒を300秒間旋回させた。この間に、外筒の内壁に薄膜が形成され、この薄膜にずり応力と遠心力が印加され、SnCl2の加水分解と重縮合反応が進行した。内筒の旋回停止後に、ケッチェンブラックをろ過して回収し、真空中180℃で12時間乾燥し、負極活物質を得た。得られた負極活物質をX線粉末回折により確認したところ、二酸化スズが生成していた(図2参照)。

0100

比較例3
実施例1において用いた反応器の内筒に、5.64gのSnCl2・2H2Oを水120mLに溶解させた液を導入し、さらに、0.56gのポリエチレンオキサイドと濃度2Mの塩酸3.2mLと1.61gのケッチェンブラック(商品名ケッチェンブラックEC600J、ケッチェンブラック・インターナショナル社製、一次粒子径34nm、細孔径4nm、比表面積1520m2/g、酸素量6.1ミリモル/g)とを導入し、70000kgms−2の遠心力が反応液に印加されるように内筒を300秒間旋回させ、SnCl2・2H2O、ポリエチレンオキサイド及びケッチェンブラックを分散させた。反応時におけるSnCl2・2H2Oとケッチェンブラックとの仕込み量は、質量比で、SnO2:ケッチェンブラック=70:30である。一旦内筒の旋回を停止し、内筒内に濃度1MのNaOH水溶液56.4mLを添加し、再び70000kgms−2の遠心力が反応液に印加されるように内筒を300秒間旋回させた。この間に、外筒の内壁に薄膜が形成され、この薄膜にずり応力と遠心力が印加され、SnCl2の加水分解と重縮合反応が進行した。

0101

内筒の旋回停止後に、ケッチェンブラックをろ過して回収し、真空中180℃で12時間乾燥した。次いで、乾燥後のケッチェンブラックを窒素中500℃で1時間熱処理してポリエチレンオキサイドを熱分解し、負極活物質を得た。

0102

比較例4
実施例1において用いた反応器の内筒に、5.64gのSnCl2・2H2Oを水120mLに溶解させた液を導入し、さらに、0.56gのポリアクリル酸ナトリウムと濃度2Mの塩酸3.2mLと1.61gのケッチェンブラック(商品名ケッチェンブラックEC600J、ケッチェンブラック・インターナショナル社製、一次粒子径34nm、細孔径4nm、比表面積1520m2/g、酸素量6.1ミリモル/g)とを導入し、70000kgms−2の遠心力が反応液に印加されるように内筒を300秒間旋回させ、SnCl2・2H2O、ポリアクリル酸及びケッチェンブラックを分散させた。反応時におけるSnCl2・2H2Oとケッチェンブラックとの仕込み量は、質量比で、SnO2:ケッチェンブラック=70:30である。一旦内筒の旋回を停止し、内筒内に濃度1MのNaOH水溶液56.4mLを添加し、再び70000kgms−2の遠心力が反応液に印加されるように内筒を300秒間旋回させた。この間に、外筒の内壁に薄膜が形成され、この薄膜にずり応力と遠心力が印加され、SnCl2の加水分解と重縮合反応が進行した。

0103

内筒の旋回停止後に、ケッチェンブラックをろ過して回収し、真空中180℃で12時間乾燥した。次いで、乾燥後のケッチェンブラックを窒素中500℃で1時間熱処理してポリアクリル酸を熱分解し、負極活物質を得た。

0104

実施例1の負極活物質と比較例2の負極活物質について、室温から900℃の温度範囲でのTG測定を空気雰囲気中で昇温速度1℃/分の条件で行い、200℃以上の重量減少量を炭素分として二酸化スズと炭素との組成比を計算した。また、900℃における実施例1の負極活物質の重量減少量と比較例2の負極活物質の重量減少量との差を、ポリビニルアルコールに由来する炭素分とした。その結果、比較例2の負極活物質における二酸化スズと炭素分は、質量比で、SnO2:ケッチェンブラック由来炭素=68.6:31.4であり、反応時における仕込み量(質量比でSnO2:ケッチェンブラック=70:30)と略一致した値が得られた。また、実施例1の負極活物質における二酸化スズと炭素分は、質量比で、SnO2:ケッチェンブラック由来炭素:ポリビニルアルコール由来炭素=65.4:29.9:4.8であり、反応時における仕込み量(質量比でSnO2:ケッチェンブラック=70:30)と略一致した値が得られた。

0105

図1は、実施例1及び比較例1,2の負極活物質についてのTEM写真である。(B)の比較例1の負極活物質のTEM写真では、ケッチェンブラックの外面に酸化スズの球状粒子が認められず、ケッチェンブラックの内部空孔内に酸化スズの球状粒子が存在していたが、(C)の比較例2の負極活物質においては、矢印で示したようにケッチェンブラックの外面に酸化スズの粗大粒子が生成していた。これに対し、実施例1の負極活物質においては、酸化スズの粗大粒子が認められず、ケッチェンブラックの外面に炭素膜で被覆された1〜2nmの粒径を有する酸化スズの球状粒子が生成していた。

0106

図2は、実施例1及び比較例1,2の負極活物質についてのX線粉末回折図である。いずれの負極活物質においても、酸化スズの球状粒子の結晶性は低かったが、比較例2の負極活物質における酸化スズ粒子の結晶子が相対的に大きく、実施例1の負極活物質における酸化スズ粒子の結晶子が相対的に小さかった。したがって、本発明の負極活物質の製造方法では、ポリビニルアルコールの使用により、酸化スズ粒子の微細化が達成されていることがわかる。

0107

実施例1において使用したポリビニルアルコール、比較例3において使用したポリエチレンオキサイド、及び比較例4において使用したポリアクリル酸ナトリウムのポリマーとSnCl2・2H2Oとの相互作用をTG分析により調査した。上記ポリマーのうちのいずれかとSnCl2・2H2Oと塩酸とを水に添加し、80℃で1時間加熱した後、乾燥することにより得られた粉体について、室温から600℃の温度範囲でのTG測定を窒素雰囲気中で昇温速度10℃/分の条件で行った。比較として、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、及びポリアクリル酸ナトリウムのいずれかのポリマーと塩酸とを水に添加し、80℃で1時間加熱した後、乾燥することにより得られた粉体についても同様の測定を行った。図3(A)は、ポリビニルアルコール(PVA)を含む粉体についての測定結果を示しており、図3(B)は、ポリアクリル酸(PAA)を含む粉体についての測定結果を示している。ポリエチレンオキサイドを含む粉体についての測定結果は、図3(B)と同様であった。

0108

ポリビニルアルコールを含む粉体の熱分解挙動図3(A)参照)は、SnCl2の共存の影響を大きく受け、SnCl2の共存下ではポリビニルアルコールの熱分解開始温度が100℃以上高温側にシフトした。これは、ポリビニルアルコールの水酸基及び/又は水酸基が解離した酸素イオンとSnCl2の間の強い相互作用によるものだと思われる。これに対し、ポリアクリル酸を含む粉体の熱分解挙動(図3(B)参照)は、SnCl2の共存の影響を大きく受けていない。これは、ポリアクリル酸のカルボン酸イオンとSnCl2の間の相互作用が無いか或いは極めて小さいことを示していると考えられる。このことから、本発明の製造方法では、スズ塩及び/又はスズ塩のゾルゲル反応の反応生成物とポリビニルアルコールの水酸基及び/又は水酸基が解離した酸素イオンとの間の強い相互作用により、ポリビニルアルコールが上記反応生成物の表面に付着し、このことが酸化スズの球状粒子の微細化を達成したと考えられた。

0109

(b)半電池の作成
実施例1及び比較例1〜4の各負極活物質0.7mgにポリフッ化ビニリデンを全体の30質量%加えて成形したものを負極とし、1MのLiPF6のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート1:1溶液を電解液とし、対極をリチウムとした半電池を作成した。

0110

(c)充放電特性
実施例1及び比較例1〜4の各負極活物質を使用した半電池について、レート0.5Cの定電流条件で0〜2Vの電位範囲(コンバージョン反応領域を含む範囲)で充放電特性を評価した。この評価は半電池としての評価であるが、正極を用いた全電池においても同様の効果が期待できる。

0111

表1には初期の単位体積当たりの放電容量の値をまとめた。いずれの負極活物質も、従来の黒鉛の放電容量595mAh/ccよりも大幅に増加した容量を示していた。また、実施例1と比較例1の負極活物質を用いた半電池の対比により、負極活物質中の酸化スズ含有量の増加により単位体積当たりの放電容量の増加が達成されていることがわかる。

0112

図4は、容量維持率を示した図である。実施例1の負極活物質を用いた半電池は、ケッチェンブラックの内部空孔内に酸化スズの球状粒子が存在している比較例1の負極活物質を用いた半電池と同様に、放電容量が安定してからはほとんど放電容量の減少を示さず、優れたサイクル性を示した。これに対し、比較例2,3,4の負極活物質を用いた半電池では、充放電を繰り返すにつれて放電容量が低下した。この現象は、ケッチェンブラックの外面と接触している酸化スズ粒子により誘発された負極活物質の凝集が原因である。比較例3,4の負極活物質では、ポリマーとスズ塩及び/又はスズ塩のゾルゲル反応の反応生成物との間の相互作用が無いか或いは極めて小さいため、比較例2の負極活物質と同様に粗大な酸化スズ粒子がケッチェンブラックの外面上に形成され、この粗大な酸化スズ粒子により負極活物質の凝集が誘発されたと考えられる。

0113

したがって、本発明の第2の負極活物質は、高い単位体積当たりの放電容量を有する上に優れたサイクル特性を有する負極活物質であった。

0114

(2)導電性炭素粉末の表面を被覆している低導電性の無定形炭素層を含む複合体(第3の負極活物質)
(a)負極活物質の製造
実施例2:
実施例1において用いた反応器の内筒に、5.64gのSnCl2・2H2O及び0.56gのポリビニルアルコールを水120mLに溶解させた液を導入し、さらに濃度2Mの塩酸3.2mLと1.62gのケッチェンブラック(商品名ケッチェンブラックEC600J、ケッチェンブラック・インターナショナル社製、一次粒子径34nm、細孔径4nm、比表面積1520m2/g、酸素量6.1ミリモル/g)とを導入し、70000kgms−2の遠心力が反応液に印加されるように内筒を300秒間旋回させ、SnCl2・2H2O、ポリビニルアルコール及びケッチェンブラックを分散させた。一旦内筒の旋回を停止し、内筒内に濃度1MのNaOH水溶液56.4mLを添加し、再び70000kgms−2の遠心力が反応液に印加されるように内筒を300秒間旋回させた。この間に、外筒の内壁に薄膜が形成され、この薄膜にずり応力と遠心力が印加され、SnCl2の加水分解と重縮合反応が進行した。内筒の旋回停止後に、ケッチェンブラックをろ過して回収し、真空中180℃で12時間乾燥した。次いで、乾燥後のケッチェンブラックと、水と、グルタミン酸とを1:0.5:1の質量比で混合し、混錬して混錬物を得た。混錬物から水を蒸発させた後、窒素中500℃で1時間熱処理することによりポリビニルアルコール及びグルタミン酸を熱分解し、酸化スズ粒子の表面及びケッチェンブラックの表面がそれぞれポリビニルアルコールの熱分解物及びグルタミン酸の熱分解物(低導電性の無定形炭素膜及び低導電性の無定形炭素層)で被覆された負極活物質を得た。

0115

得られた負極活物質をX線粉末回折により確認したところ、二酸化スズに加えて微量のスズが生成していた。ポリビニルアルコール及びグルタミン酸の熱分解物の回折ピークは確認されず、無定形炭素の層が生成していた。また、TG−DTA測定を空気雰囲気中で昇温速度1℃/分の条件で行い、200℃以上の重量減少量を炭素分として二酸化スズと炭素との組成比を計算したところ、反応時における仕込み量(質量比でSnO2:ケッチェンブラック=70:30)と略一致した値が得られた。さらに、TEM写真により、粒径が1〜2nmの二酸化スズの球状粒子がケッチェンブラックの内面と外面とに担持されており、一次粒子の96質量%が非凝集状態で存在していることが確認された。

0116

実施例3:
グルタミン酸の代わりにアスパラギン酸をグルタミン酸と同量で使用した点を除いて、実施例2の手順を繰り返した。

0117

実施例4:
グルタミン酸の代わりにアミノピメリン酸をグルタミン酸と同量で使用した点を除いて、実施例2の手順を繰り返した。

0118

実施例5:
グルタミン酸の代わりにホモセリンをグルタミン酸と同量で使用した点を除いて、実施例2の手順を繰り返した。

0119

(b)半電池の作成
実施例1〜5の各負極活物質0.7mgにポリフッ化ビニリデンを全体の30質量%加えて成形したものを負極とし、1MのLiPF6のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート1:1溶液を電解液とし、対極をリチウムとした半電池を作成した。

0120

(c)充放電特性
実施例1〜5の各負極活物質を使用した半電池について、レート0.2C(298mA/g)の定電流条件で0〜2Vの電位範囲(コンバージョン反応領域を含む範囲)で充放電特性を評価した。この評価は半電池としての評価であるが、正極を用いた全電池においても同様の効果が期待できる。表2に、1回目の充放電における不可逆容量と可逆容量とをまとめた。

0121

表2より、いずれの負極活物質も従来の黒鉛の理論容量372mAh/gよりも大幅に増加した可逆容量を有していることがわかる。表2から把握されるように、実施例2〜5の負極活物質、すなわち、ケッチェンブラックの表面を被覆している低導電性の無定形炭素層を有する負極活物質は、実施例1の負極活物質、すなわち、ケッチェンブラックの表面を被覆している低導電性の無定形炭素層を有しておらず且つ同量のスズ含有量を有する負極活物質と比較して、わずかに低下した可逆容量と大幅に低下した不可逆容量を有していた。したがって、実施例2〜5の負極活物質が可逆容量の低減の抑制と不可逆容量の大幅な低減を達成していることがわかる。

0122

(3)造粒物を含む負極活物質(第3の負極活物質)
(a)複合体の製造
複合体A:
実施例1で使用した反応器の内筒に、5.64gのSnCl2・2H2O、0.435gのFe(CH3COO)2及び0.56gのポリビニルアルコールを水120mLに溶解させた液を導入し、さらに濃度2Mの塩酸3.2mLと1.62gのケッチェンブラック(商品名ケッチェンブラックEC600J、ケッチェンブラック・インターナショナル社製、一次粒子径34nm、細孔径4nm、比表面積1520m2/g、酸素量6.1ミリモル/g)とを導入し、70000kgms−2の遠心力が反応液に印加されるように内筒を300秒間旋回させ、SnCl2・2H2O、Fe(CH3COO)2、ポリビニルアルコール及びケッチェンブラックを分散させた。一旦内筒の旋回を停止し、内筒内に濃度1MのNaOH水溶液56.4mLを添加し、再び70000kgms−2の遠心力が反応液に印加されるように内筒を300秒間旋回させた。この間に、外筒の内壁に薄膜が形成され、この薄膜にずり応力と遠心力が印加され、SnCl2及びFe(CH3COO)2の加水分解と重縮合反応が進行した。内筒の旋回停止後に、ケッチェンブラックをろ過して回収し、真空中180℃で12時間乾燥した。次いで、乾燥後のケッチェンブラックと、水と、グルコースとを1:0.5:1の質量比で混合し、混錬して混錬物を得た。混錬物から水を蒸発させた後、窒素中500℃で1時間熱処理することによりポリビニルアルコール及びグルコースを熱分解し、酸化スズ粒子及びケッチェンブラックの表面がポリビニルアルコール及びグルコースの熱分解物で被覆された複合体Aを得た。

0123

複合体B:
実施例1で使用した反応器の内筒に、5.64gのSnCl2・2H2O、及び0.435gのFe(CH3COO)2を水120mLに溶解させた液を導入し、さらに濃度2Mの塩酸3.2mLと1.62gのケッチェンブラック(商品名ケッチェンブラックEC600J、ケッチェンブラック・インターナショナル社製、一次粒子径34nm、細孔径4nm、比表面積1520m2/g、酸素量6.1ミリモル/g)とを導入し、70000kgms−2の遠心力が反応液に印加されるように内筒を300秒間旋回させ、SnCl2・2H2O、Fe(CH3COO)2及びケッチェンブラックを分散させた。一旦内筒の旋回を停止し、内筒内に濃度1MのNaOH水溶液56.4mLを添加し、再び70000kgms−2の遠心力が反応液に印加されるように内筒を300秒間旋回させた。この間に、外筒の内壁に薄膜が形成され、この薄膜にずり応力と遠心力が印加され、SnCl2及びFe(CH3COO)2の加水分解と重縮合反応が進行した。内筒の旋回停止後に、ケッチェンブラックをろ過して回収し、真空中180℃で12時間乾燥した。次いで、乾燥後のケッチェンブラックと、水と、グルコースとを1:0.5:1の質量比で混合し、混錬して混錬物を得た。混錬物から水を蒸発させた後、窒素中500℃で1時間熱処理することによりグルコースを熱分解し、少なくともケッチェンブラックの表面がグルコースの熱分解物で被覆された複合体Bを得た。

0124

複合体C:
グルコースの代わりにグルタミン酸をグルコースと同量で使用した点を除いて、複合体Aの製造手順を繰り返し、酸化スズ粒子及びケッチェンブラックの表面がポリビニルアルコール及びグルタミン酸の熱分解物で被覆された複合体Cを得た。

0125

複合体D:
グルコースの代わりにグルタミン酸をグルコースと同量で使用した点を除いて、複合体Bの製造手順を繰り返し、少なくともケッチェンブラックの表面がグルタミン酸の熱分解物で被覆された複合体Dを得た。

0126

(b)負極活物質の製造
実験1:複合体と黒鉛との造粒物−ジェットミルによる粉砕
ジェットミル(装置名JOM−mini、株式会社セイシン企業製)を用いて、複合体A、黒鉛(商品名J−CPB、日本黒鉛工業株式会社製、平均粒径5μm)、又はこれらを混合した混合物を粉砕し、粉砕物採集した。

0127

実験2:複合体と黒鉛との造粒物−ジェットミルによる粉砕
ジェットミル(装置名JOM−mini、株式会社セイシン企業製)を用いて、複合体B、黒鉛(商品名J−CPB、日本黒鉛工業株式会社製、平均粒径5μm)、又はこれらを混合した混合物を粉砕し、粉砕物を採集した。

0128

実験3:複合体と黒鉛との造粒物−ライカイ器による粉砕
ライカイ器を用いて、複合体Aと黒鉛(商品名J−CPB、日本黒鉛工業株式会社製、平均粒径5μm)とを4:1又は1:1の質量比で混合した混合物を粉砕し、粉砕物を採集した。

0129

実験4:複合体と難黒鉛化炭素との造粒物−ジェットミルによる粉砕
ジェットミル(装置名JOM−mini、株式会社セイシン企業製)を用いて、複合体A、難黒鉛化炭素(ピッチ系ハードカーボン、平均粒径10μm)、又はこれらの混合物を粉砕し、粉砕物を採集した。

0130

実験5:複合体と黒鉛との造粒物−ジェットミルによる粉砕
ジェットミル(装置名JOM−mini、株式会社セイシン企業製)を用いて、複合体C、黒鉛(商品名J−CPB、日本黒鉛工業株式会社製、平均粒径5μm)、又はこれらを混合した混合物を粉砕し、粉砕物を採集した。

0131

実験6:複合体と黒鉛との造粒物−ジェットミルによる粉砕
ジェットミル(装置名JOM−mini、株式会社セイシン企業製)を用いて、複合体D、黒鉛(商品名J−CPB、日本黒鉛工業株式会社製、平均粒径5μm)、又はこれらを混合した混合物を粉砕し、粉砕物を採集した。

0132

(c)半電池の作成及び評価
実験1〜6で得られた粉砕物(負極活物質)0.7mgにポリフッ化ビニリデンを全体の30質量%加えて成形したものを負極とし、1MのLiPF6のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート1:1溶液を電解液とし、対極をリチウムとした半電池を作成した。

0133

半電池を構成した負極について、負極活物質の重さと体積とから密度を算出し、電極密度として評価した。図5は、実験1の粉砕処理により得られた負極活物質についての評価であり、図6は、実験4の粉砕処理により得られた負極活物質についての評価である。図5図6における点線は、複合体の密度a(g/cc)とその割合(100−x)(質量%)と、黒鉛又は難黒鉛化炭素の密度b(g/cc)とその割合x(質量%)とから、以下の式により算出した密度X(g/cc)
X(g/cc)={a×(100−x)+b×x}/100
を示している。

0134

図5及び図6から把握されるように、本発明の負極活物質は計算値より高い密度を示し、粉砕の過程で嵩密度の大きい緻密な造粒物が形成されたことがわかる。

0135

実験1及び実験4で得られた粉砕物(負極活物質)を使用した半電池について、レート0.2C(298mA/g)の定電流条件で0〜2Vの電位範囲(コンバージョン反応領域を含む範囲)で充放電特性を評価した。この評価は半電池としての評価であるが、正極を用いた全電池においても同様の効果が期待できる。

0136

図7には、実験1で得られた複合体Aと黒鉛との造粒物を含む負極活物質についての1回目の充放電における単位重量あたりの不可逆容量と可逆容量とを示す。図9には、実験4で得られた複合体Aと難黒鉛化炭素との造粒物を含む負極活物質についての1回目の充放電における重量あたりの不可逆容量と可逆容量とを示す。図7図9における点線は、複合体の重量あたりの容量c(mAh/g)とその割合(100−x)(質量%)と、黒鉛又は難黒鉛化炭素の容量d(mAh/g)とその割合x(質量%)とから算出された計算値Y(mAh/g)
Y(mAh/g)={c×(100−x)+d×x}/100
を示している。

0137

図7及び図9から把握されるように、複合体Aと骨材との造粒物を含む本発明の負極活物質の可逆容量はほぼ計算値と一致しているが、不可逆容量は計算値より著しく小さいことがわかる。本発明の負極活物質を用いた半電池においては、負極活物質を構成する造粒物の外表面で電解液の電気化学的分解が起こり、造粒物の外表面にSEIが形成されると考えられる。そして、電解液の溶媒は、この造粒物の外表面のSEIを通過することができないため、造粒により電解液と炭素材料との接触面積を低下させることができ、その結果、炭素材料表面での電解液の電気化学的分解に起因すると思われる初期不可逆容量が顕著に低下したものと考えられる。また、本発明の負極活物質の可逆容量がほぼ計算値と一致することから、複合体Aの構造が粉砕の影響を受けず安定に維持されており、コンバージョン反応の可逆性も維持されていると判断された。

0138

図8には、図7の測定結果と図5の電極密度の測定結果を用いて算出した、実験1で得られた複合体Aと黒鉛との造粒物を含む負極活物質の単位体積あたりの不可逆容量と可逆容量とが示されており、図10には、図9の測定結果と図6の電極密度の測定結果を用いて算出した、実験4で得られた複合体Aと難黒鉛化炭素との造粒物を含む負極活物質の単位体積あたりの不可逆容量と可逆容量とが示されている。図8より、黒鉛のみから成る負極活物質の単位体積あたりの可逆容量が複合体Aのみからなる負極活物質の単位体積あたりの可逆容量よりも小さいにもかかわらず、造粒物における黒鉛の割合が全体の約80質量%以下の領域では、複合体Aと黒鉛との造粒物を含む負極活物質の単位体積あたりの可逆容量の値が複合体Aのみから成る負極活物質の可逆容量の値よりも増大していることがわかる。これは、粉砕により緻密で嵩密度の高い造粒物が得られたことを反映した結果である。難黒鉛化炭素を骨材として用いた負極活物質に関する結果を示す図10では、複合体Aと難黒鉛化炭素との造粒物を含む負極活物質の単位体積あたりの可逆容量の値が複合体Aのみから成る負極活物質の可逆容量の値よりも小さくなっている。図8図10との結果の相違は、黒鉛が難黒鉛化炭素に比較して可逆容量が大きく且つ嵩密度が大きいことを反映しているが、難黒鉛化炭素を骨材とした負極活物質においても、難黒鉛化炭素の割合が全体の約50質量%以下の領域では可逆容量の低下率が小さいことがわかる。

0139

図11,12,13は、複合体Aの代わりに複合体Bを用いた実験2の粉砕物(負極活物質)についての、図5,7,8に対応する図である。複合体Bを用いても、複合体Aを用いたのとほぼ同等の結果が得られた。

0140

図14,15,16は、複合体Cを用いた実験5の粉砕物(負極活物質)についての、図5,7,8に対応する図であり、図17,18,19は、複合体Dを用いた実験6の粉砕物(負極活物質)についての、図5,7,8に対応する図である。図15,18より、複合体C又は複合体Dと黒鉛とが凝集した造粒物を含む負極活物質の単位重量あたりの可逆容量は、ほぼ計算値と一致しているが、不可逆容量は計算値より著しく小さいことがわかる。複合体A及び複合体Bにおける少なくとも導電性炭素粉末の表面を被覆している無定形炭素層は、グルコースに由来しているが、複合体C及び複合体Dにおける少なくとも導電性炭素粉末の表面を被覆している無定形炭素層は、グルタミン酸に由来している。グルタミン酸由来の無定形炭素層は、グルコース由来の無定形炭素層に比較して緻密であり、導電性炭素皮膜の活性点を効率的に被覆するためであると考えられるが、図7図12図15及び図18の比較から把握されるように、複合体C又は複合体D単独(黒鉛0質量%)の不可逆容量が複合体A又は複合体B単独の不可逆容量より大幅に低下する。したがって、複合体と黒鉛とが凝集した造粒物を含む本発明の負極活物質において、不可逆容量を低下させるためには、グルタミン酸由来の無定形炭素層を含む複合体C又は複合体Dの方が、グルコース由来の無定形炭素層を含む複合体A又は複合体Bよりも好ましい。また、図16及び図19から把握されるように、黒鉛のみから成る負極活物質の単位体積あたりの可逆容量が複合体C又は複合体Dのみからなる負極活物質の単位体積あたりの可逆容量よりも小さいにもかかわらず、造粒物における黒鉛の割合が全体の約50質量%以下の領域では、複合体C又は複合体Dと黒鉛との造粒物を含む負極活物質の単位体積あたりの可逆容量の値が複合体C又は複合体Dのみから成る負極活物質の可逆容量の値と同等であることがわかる。これは、粉砕により緻密で嵩密度の高い造粒物が得られたことを反映した結果である。

0141

図20(A)は、複合体A:黒鉛=1:1の混合物をライカイ器により粉砕して得た造粒物のSEM写真であり、図20(B)は、複合体A:黒鉛=1:1の混合物をジェットミルにより粉砕して得た造粒物のSEM写真である。ジェットミルを用いて得た造粒物は、ライカイ器を用いて得た造粒物に比較して、骨材の粒径が小さく、また、粗大な粒の表面に付着した微細な粒の存在量も少ない。ジェットミルの粉砕効率が高いため、骨材が微細化されやすく、比較的小さく粉砕された骨材の粒が粉砕により生じた微細な粒と複合体Aとを効果的に補足しつつ凝集したため、球状化が進行し、より緻密で嵩密度の高い造粒物が形成されたものと考えられる。

実施例

0142

図21は、複合体A:黒鉛=4:1の混合物をライカイ器により粉砕して得た造粒物を負極活物質とした半電池と、複合体A:黒鉛=4:1の混合物をジェットミルにより粉砕して得た造粒物を負極活物質とした半電池について、レート0.5Cの定電流条件で、0〜2Vの電位範囲(コンバージョン反応領域を含む範囲)での充放電サイクル試験を行った結果を示している。ジェットミルにより粉砕した造粒物を負極活物質とした半電池は、安定したサイクル特性を示した。このことは、ジェットミルの粉砕効率が高いため、安定した構造の造粒物が得られたことを反映していると考えられる。

0143

本発明の負極活物質は、低減した初期不可逆容量を有する上に高い可逆容量を有するため、黒鉛に代わる負極活物質として有望であり、次世代のリチウムイオン二次電池のために好適に使用することができ、ハイブリッドキャパシタのための負極活物質としても好適である。

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