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技術 パノラマエックス線写真を利用した診断支援システム、及びパノラマエックス線写真を利用した診断支援プログラム

出願人 国立大学法人岐阜大学メディア株式会社タック株式会社
発明者 藤田廣志原武史勝又明敏林達郎
出願日 2012年3月13日 (8年11ヶ月経過) 出願番号 2013-505911
公開日 2014年7月24日 (6年6ヶ月経過) 公開番号 WO2012-128121
状態 特許登録済
技術分野 画像処理 放射線診断機器 診断用測定記録装置 イメージ分析
主要キーワード 初期判断 エックス線写真 類似モデル 下顎角 フランクフルト平面 モデル化処理 部分形状 候補エッジ
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2014年7月24日)のものです。
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図面 (20)

課題・解決手段

診断支援システム1は、複数の下顎骨モデルデータ9を取得するモデルデータ取得手段14と、下顎骨モデルデータから輪郭モデルデータ15を生成する輪郭モデル生成手段16と、輪郭モデルデータ15等から輪郭モデルデータベース19を構築する輪郭データベース記憶手段20と、被験者診断画像データ6の入力を受付ける診断画像データ受付手段21と、診断画像データ6からエッジデータ22を抽出するエッジ抽出手段23と、エッジデータ22に基づいて類似する輪郭モデルデータ15を検索する類似モデル検索手段24と、撮影情報17に基づいて撮影位置等及び画像品質を判定する位置判定手段25及び画像品質判定手段26と、提供者情報18に基づいて診断支援情報7を提供する診断支援情報提供手段27とを有する診断支援コンピュータ3を具備する。

概要

背景

歯科治療の際に患者上下顎顎関節、及び上顎洞を含む額面の領域を一枚のパノラマエックス線写真(以下、単に「パノラマ画像」と称す)として撮影することがあり、歯科領域における主な疾病の有無の判断やその他の治療方針等を決定するための有益な参考情報として用いられている。特に、近年におけるエックス線撮影機器デジタル情報機器高性能化、コンパクト化、及び低コスト化等によって、デジタルパノラマ画像を撮影する撮影機器を導入する歯科医院も増加している。

撮影されたパノラマ画像は画像データとして、患者の氏名、生年月日性別等の基本情報、及び当該患者のこれまでの治療歴やその他の疾病履歴等の医療情報と併せて電子カルテ等に保存されている。そのため、事後の患者の治療内容を確認したり、治癒状態を把握することが容易に行える。また、パノラマ画像からは、上記歯科領域に対する疾病以外にも全身疾患についての診断を行うための有益な情報を含んでる場合もあり、下顎骨領域を含むパノラマ画像から当該情報を提供する技術の開発も進められている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照)。

さらに具体的に説明すると、パノラマ画像はの左右に位置する副鼻腔の一つである一対の上顎洞の領域を含んで撮影されている。上顎洞はその底部が歯根部と近接しているため、上顎側奥歯虫歯歯周病等の歯科系疾患を引き起こす細菌が、上顎洞の領域まで侵攻し、“歯性上顎洞炎”を発症させることがある。この歯性上顎洞炎は、原因歯となる虫歯等の治療を併せて行う必要があり、一般に歯科医院において治療されている。

歯性上顎洞炎に罹患した患者のパノラマ画像は、鼻を中心として左右に存在する一対の上顎洞のうち、罹患した側の一方の上顎洞の領域はエックス線不透過性のため主に白色または明るい色で描出され、正常な側の他方の上顎洞の領域はエックス線透過性のため黒色または濃色で描出される特徴を有している。すなわち、上顎洞領域を含むパノラマ画像において、左右の上顎洞の描出濃度に著しい違いが認められる場合には、歯性上顎洞炎に罹患している可能性が高いとの知見が示される。なお、“歯性”以外の“鼻性”或いは“血行性”の上顎洞炎の場合には左右の上顎洞領域の描出濃度が相違するような特徴的な所見が示されることは少ない。

一方、本願発明者等は、撮影したパノラマ画像に含まれる左右の上顎洞の領域の濃度差強調表示する画像処理システムを開発し、左右差分像を作成するシステムの開発を行っている(非特許文献1参照)。これにより、左右差分像に基づいて、歯科医師等が濃度差を容易に認識することができ、患者の上顎洞炎の可能性の有無を判断し、その後の精密な検査等を行うことで、歯性上顎洞炎の早期診断及び早期治療が可能となる。

ここで、得られた医療用画像から事前情報に基づいて特定の対象部位が存在する位置を推定する技術(アトラス)が多く開発されている。例えば、脳領域に対するアトラスの生成に関する手法(非特許文献2及び非特許文献3参照)、脳領域よりも形態の個体差が大きい腹部臓器に対するアトラスを生成する手法(非特許文献4及び非特許文献5参照)、さらに、相互情報量を用いて画像間の類似度を評価し類似の高い画像のみを用いてアトラスを生成する技術(非特許文献6等)が開示されている。これにより、パノラマ画像等の医療用画像から対象の位置を特定するためにアトラスを生成する試みが多くなされ、歯性上顎洞炎の可能性を判断するために、上顎洞の領域を特定するためにも有用な技術であると考えられている。

概要

診断支援システム1は、複数の下顎骨モデルデータ9を取得するモデルデータ取得手段14と、下顎骨モデルデータから輪郭モデルデータ15を生成する輪郭モデル生成手段16と、輪郭モデルデータ15等から輪郭モデルデータベース19を構築する輪郭データベース記憶手段20と、被験者診断画像データ6の入力を受付ける診断画像データ受付手段21と、診断画像データ6からエッジデータ22を抽出するエッジ抽出手段23と、エッジデータ22に基づいて類似する輪郭モデルデータ15を検索する類似モデル検索手段24と、撮影情報17に基づいて撮影位置等及び画像品質を判定する位置判定手段25及び画像品質判定手段26と、提供者情報18に基づいて診断支援情報7を提供する診断支援情報提供手段27とを有する診断支援コンピュータ3を具備する。

目的

本発明は、パノラマエックス線写真を利用した診断支援システム(以下、単に「診断支援システム」と称す)、及びパノラマエックス線写真を利用した診断支援プログラム(以下、単に「診断支援プログラム」と称す)に関するものであり、特に、歯科治療の際に撮影されるパノラマエックス線写真を使用して撮影条件適切性を判定し、罹患リスクの高い疾病(歯性上顎洞炎等)の診断に関する情報を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

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請求項1

診断支援コンピュータを使用してパノラマエックス線写真解析し、診断支援情報を提供可能な診断支援システムであって、前記診断支援コンピュータは、適正撮影条件及び非適正撮影条件を含む複数の撮影条件に基づいて下顎骨モデル提供者の下顎骨領域の前記パノラマエックス線写真をそれぞれ撮影し、複数の下顎骨モデルデータを取得するモデルデータ取得手段と、取得された前記下顎骨モデルデータから前記下顎骨の輪郭を抽出し、輪郭モデルデータを生成する輪郭モデル生成手段と、生成された輪郭モデルデータを撮影位置撮影姿勢、及び画像品質に係る撮影情報及び前記下顎骨モデル提供者に関する年齢性別、及び疾病履歴を含む提供者情報と併せて記憶し、輪郭モデルデータベース構築する輪郭データベース記憶手段と、診断支援対象の被験者の下顎骨領域のパノラマエックス線写真を撮影して取得された診断画像データの入力を受付ける診断画像データ受付手段と、受付けた前記診断画像データから前記下顎骨のエッジデータを抽出するエッジ抽出手段と、抽出された前記エッジデータと前記輪郭モデルデータベースの複数の輪郭モデルデータとを照合し、類似する前記輪郭モデルデータを検索する類似モデル検索手段と、類似検索された前記輪郭モデルデータの前記撮影情報に基づいて、前記診断画像データの撮影位置及び撮影姿勢に係る位置適正を判定する位置判定手段と、類似検索された前記輪郭モデルデータの前記撮影情報に基づいて、前記診断画像データの濃度プロフィール及びコントラストを含む画像品質の適正度を判定する画像品質判定手段とを具備することを特徴とするパノラマエックス線写真を利用した診断支援システム。

請求項2

前記診断支援コンピュータは、前記位置判定手段及び前記画像品質判定手段によって前記適正撮影条件で撮影されたと判定された前記診断画像データに対し、類似検索された前記輪郭モデルデータの前記提供者情報に基づいて罹患リスクのある疾病を前記診断支援情報として提供する診断支援情報提供手段をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のパノラマエックス線写真を利用した診断支援システム。

請求項3

前記診断支援コンピュータは、前記診断画像データに含まれる前記下顎骨の輪郭を検出する下顎骨輪郭検出手段と、検出された前記下顎骨の輪郭に係る診断輪郭データに基づいて、骨粗鬆症頸動脈石灰化、及び上顎洞炎の少なくとも一つの疾病の検知を行う疾病検知手段とをさらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパノラマエックス線写真を利用した診断支援システム。

請求項4

前記類似モデル検索手段は、抽出された前記エッジデータを使用して前記下顎骨の前記エッジからの距離に応じて濃淡を変化させて描画した距離画像を生成する距離画像生成手段と、前記輪郭モデルデータから前記下顎骨の輪郭形状を復元する輪郭復元手段と、復元された前記輪郭形状に係る復元データ及び生成された前記距離画像に係る距離画像データを重ね合わせ、輪郭上の平均値を算出する平均値算出手段と、算出された前記平均値が最小値を示す前記下顎骨の輪郭形状を有する前記輪郭モデルデータを特定し、類似する前記輪郭モデルデータとする輪郭モデル特定手段とをさらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパノラマエックス線写真を利用した診断システム

請求項5

前記モデルデータ取得手段は、前記下顎モデル提供者の前記下顎骨領域及び上顎洞領域を含む領域を被写体として撮影した前記パノラマエックス線写真に係るパノラマ画像データを取得し記憶する画像データ取得手段を具備し、前記診断画像データ受付手段は、診断対象の被験者の前記下顎骨及び前記上顎洞を含む領域を前記パノラマエックス線写真で撮影した検査対象画像に係る下顎骨・上顎洞診断画像データの入力を受付ける下顎骨・上顎洞診断画像データ受付手段を具備し、前記エッジ抽出手段は、受付けた前記下顎骨・上顎洞診断画像データからデジタル解析技術を使用して前記下顎骨の輪郭候補のエッジデータを抽出するエッジデータ抽出手段を具備し、前記類似モデル検索手段は、抽出された前記エッジデータ及び前記モデルデータベースに記憶された複数の参照モデルデータを照合し、前記エッジデータに類似する前記下顎骨の輪郭形状を有する類似参照モデルデータを検索する下顎骨類似モデル検索手段を具備し、前記診断支援コンピュータは、前記パノラマ画像データから前記下顎骨の輪郭形状及び前記上顎洞の位置を特定し、参照モデルデータを生成する参照モデルデータ生成手段と、生成された複数の前記参照モデルデータを記憶し、モデルデータベースを構築する参照データベース構築手段と、類似検索された前記類似参照モデルデータから前記上顎洞の位置の領域を抽出し、前記上顎洞に係るアトラスを生成するアトラス生成手段と、前記アトラスに基づいて、前記下顎骨・上顎洞診断画像データから前記上顎洞の領域に相当する上顎洞画像を抽出する上顎洞画像抽出手段と、抽出された左右一対の前記上顎洞画像のそれぞれの特徴量を算出する特徴量算出手段と、算出された前記特徴量に係る特徴量データから前記下顎骨・上顎洞診断画像データを取得した前記被験者の歯性上顎洞炎罹患に係る危険率推定する危険率推定手段とを具備することを特徴とする請求項3に記載のパノラマエックス線写真を利用した診断支援システム。

請求項6

前記エッジデータ抽出手段は、前記下顎骨・上顎洞診断画像データに対しガウシアンフィルタを用いて平滑化処理を行い、前記診断画像データに含まれるノイズを除去する平滑化手段と、得られた平滑化データに対し前記下顎骨の存在が期待される位置に予めマスク処理を行うマスク手段と、得られたマスクデータに対し前記下顎骨の輪郭形状を構成するエッジの勾配方向予測する勾配方向予測手段と、得られた勾配予測データに対しKirsh法を使用して前記エッジの勾配及び強度を算出する勾配強度算出手段と、算出された強度データに対し非最大値抑制処理によって前記エッジを細線化する細線化手段と、得られた細線化データに対しヒステリシスしきい値処理によって前記エッジデータを抽出するしきい値処理手段とをさらに具備することを特徴とする請求項5に記載のパノラマエックス線写真を利用した診断支援システム。

請求項7

前記下顎骨類似モデル検索手段は、前記診断画像データから抽出された前記エッジデータから距離変換画像を生成する距離変換手段と、前記モデルデータベースに記憶された前記参照モデルデータに対してアフィン変換処理をするアフィン変換手段と、前記距離変換画像に係る距離変換画像データ及びアフィン変換処理後の前記参照モデルデータの類似度を推定し、類似参照モデルを抽出する類似度推定手段とをさらに具備することを特徴とする請求項5または請求項6に記載のパノラマエックス線写真を利用した診断支援システム。

請求項8

適正撮影条件及び非適正撮影条件を含む複数の撮影条件に基づいて下顎骨モデル提供者の下顎骨領域のパノラマエックス線写真をそれぞれ撮影し、複数の下顎骨モデルデータを取得するモデルデータ取得手段、取得された前記下顎骨モデルデータから前記下顎骨の輪郭を抽出し、輪郭モデルデータを生成する輪郭モデル生成手段、生成された輪郭モデルデータを撮影位置、撮影姿勢、及び画像品質に係る撮影情報及び前記下顎骨モデル提供者に関する年齢、性別、及び疾病履歴を含む提供者情報と併せて記憶し、輪郭モデルデータベースを構築する輪郭データベース記憶手段、診断支援対象の被験者の下顎骨領域のパノラマエックス線写真を撮影して取得された診断画像データの入力を受付ける診断画像データ受付手段、受付けた前記診断画像データから前記下顎骨のエッジデータを抽出するエッジ抽出手段、抽出された前記エッジデータと前記輪郭モデルデータベースの複数の輪郭モデルデータとを照合し、類似する前記輪郭モデルデータを検索する類似モデル検索手段、類似検索された前記輪郭モデルデータの前記撮影情報に基づいて、前記診断画像データの撮影位置及び撮影姿勢に係る位置適正を判定する位置判定手段、類似検索された前記輪郭モデルデータの前記撮影情報に基づいて、前記診断画像データの濃度プロフィール及びコントラストを含む画像品質の適正度を判定する画像品質判定手段として、診断支援コンピュータを機能させることを特徴とするパノラマエックス線写真を利用した診断支援プログラム

請求項9

前記位置判定手段及び前記画像品質判定手段によって前記適正撮影条件で撮影されたと判定された前記診断画像データに対し、類似検索された前記輪郭モデルデータの前記提供者情報に基づいて罹患リスクのある疾病を前記診断支援情報として提供する診断支援情報提供手段として、前記診断支援コンピュータをさらに機能させることを特徴とする請求項8に記載のパノラマエックス線写真を利用した診断支援プログラム。

請求項10

前記診断画像データに含まれる前記下顎骨の輪郭を検出する下顎骨輪郭検出手段、及び検出された前記下顎骨の輪郭に係る診断輪郭データに基づいて、骨粗鬆症、頸動脈の石灰化、及び上顎洞炎の少なくとも一つの疾病の検知を行う疾病検知手段として、前記診断支援コンピュータをさらに機能させることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のパノラマエックス線写真を利用した診断支援プログラム。

請求項11

抽出された前記エッジデータを使用して前記下顎骨の前記エッジからの距離に応じて濃淡を変化させて描画した距離画像を生成する距離画像生成手段、前記輪郭モデルデータから前記下顎骨の輪郭形状を復元する輪郭復元手段、復元された前記輪郭形状に係る復元データ及び生成された前記距離画像に係る距離画像データを重ね合わせ、輪郭上の平均値を算出する平均値算出手段、及び算出された前記平均値が最小値を示す前記下顎骨の輪郭形状を有する前記輪郭モデルデータを特定し、類似する前記輪郭モデルデータとする輪郭モデル特定手段を有する前記類似モデル検索手段として、前記診断支援コンピュータをさらに機能させることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のパノラマエックス線写真を利用した診断支援プログラム。

請求項12

前記下顎モデル提供者の前記下顎骨領域及び上顎洞領域を含む領域を被写体として撮影した前記パノラマエックス線写真に係るパノラマ画像データを取得し記憶する画像データ取得手段を具備する前記モデルデータ取得手段、診断対象の被験者の前記下顎骨及び前記上顎洞を含む領域を前記パノラマエックス線写真に撮影した検査対象画像に係る下顎骨・上顎洞診断画像データの入力を受付ける下顎骨・上顎洞診断画像データ受付手段を具備する前記診断画像データ受付手段、受付けた前記下顎骨・上顎洞診断画像データからデジタル解析技術を使用して前記下顎骨の輪郭候補のエッジデータを抽出するエッジデータ抽出手段を具備する前記エッジ抽出手段、抽出された前記エッジデータ及び前記モデルデータベースに記憶された複数の参照モデルデータを照合し、前記エッジデータに類似する前記下顎骨の輪郭形状を有する類似参照モデルデータを検索する下顎骨類似モデル検索手段を具備する前記類似モデル検索手段、前記パノラマ画像データから前記下顎骨の輪郭形状及び前記上顎洞の位置を特定し、参照モデルデータを生成する参照モデルデータ生成手段、生成された複数の前記参照モデルデータを記憶し、モデルデータベースを構築する参照データベース構築手段、類似検索された前記類似参照モデルデータから前記上顎洞の位置の領域を抽出し、前記上顎洞に係るアトラスを生成するアトラス生成手段、前記アトラスに基づいて、前記下顎骨・上顎洞診断画像データから前記上顎洞の領域に相当する上顎洞画像を抽出する上顎洞画像抽出手段、抽出された左右一対の前記上顎洞画像のそれぞれの特徴量を算出する特徴量算出手段、及び算出された前記特徴量に係る特徴量データから前記下顎骨・上顎洞診断画像データを取得した前記被験者の歯性上顎洞炎の罹患に係る危険率を推定する危険率推定手段として、前記診断支援コンピュータをさらに機能させることを特徴とする請求項8に記載のパノラマエックス線写真を利用した診断支援プログラム。

請求項13

前記下顎骨・上顎洞診断画像データに対しガウシアンフィルタを用いて平滑化処理を行い、前記診断画像データに含まれるノイズを除去する平滑化手段、得られた平滑化データに対し前記下顎骨の存在が期待される位置に予めマスク処理を行うマスク手段、得られたマスクデータに対し前記下顎骨の輪郭形状を構成するエッジの勾配方向を予測する勾配方向予測手段、得られた勾配予測データに対しKirsh法を使用して前記エッジの勾配及び強度を算出する勾配強度算出手段、算出された強度データに対し非最大値抑制処理によって前記エッジを細線化する細線化手段、及び得られた細線化データに対しヒステリシスしきい値処理によって前記エッジデータを抽出するしきい値処理手段を有する前記エッジデータ抽出手段として、前記診断支援コンピュータをさらに機能させることを特徴とする請求項12に記載のパノラマエックス線写真を利用した診断支援プログラム。

請求項14

前記下顎骨・上顎洞診断画像データから抽出された前記エッジデータから距離変換画像を生成する距離変換手段、前記モデルデータベースに記憶された前記参照モデルデータに対してアフィン変換処理をするアフィン変換手段、及び前記距離変換画像に係る距離変換画像データ及びアフィン変換処理後の前記参照モデルデータの類似度を推定し、類似参照モデルを抽出する類似度推定手段を有する前記下顎骨類似モデル検索手段として、前記診断支援コンピュータをさらに機能させることを特徴とする請求項12または請求項13に記載のパノラマエックス線写真を利用した診断支援プログラム。

技術分野

0001

本発明は、パノラマエックス線写真を利用した診断支援システム(以下、単に「診断支援システム」と称す)、及びパノラマエックス線写真を利用した診断支援プログラム(以下、単に「診断支援プログラム」と称す)に関するものであり、特に、歯科治療の際に撮影されるパノラマエックス線写真を使用して撮影条件適切性を判定し、罹患リスクの高い疾病歯性上顎洞炎等)の診断に関する情報を提供することが可能な診断支援システム、及び診断支援プログラムに関するものである。

背景技術

0002

歯科治療の際に患者上下顎顎関節、及び上顎洞を含む額面の領域を一枚のパノラマエックス線写真(以下、単に「パノラマ画像」と称す)として撮影することがあり、歯科領域における主な疾病の有無の判断やその他の治療方針等を決定するための有益な参考情報として用いられている。特に、近年におけるエックス線撮影機器デジタル情報機器高性能化、コンパクト化、及び低コスト化等によって、デジタルパノラマ画像を撮影する撮影機器を導入する歯科医院も増加している。

0003

撮影されたパノラマ画像は画像データとして、患者の氏名、生年月日性別等の基本情報、及び当該患者のこれまでの治療歴やその他の疾病履歴等の医療情報と併せて電子カルテ等に保存されている。そのため、事後の患者の治療内容を確認したり、治癒状態を把握することが容易に行える。また、パノラマ画像からは、上記歯科領域に対する疾病以外にも全身疾患についての診断を行うための有益な情報を含んでる場合もあり、下顎骨領域を含むパノラマ画像から当該情報を提供する技術の開発も進められている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照)。

0004

さらに具体的に説明すると、パノラマ画像はの左右に位置する副鼻腔の一つである一対の上顎洞の領域を含んで撮影されている。上顎洞はその底部が歯根部と近接しているため、上顎側奥歯虫歯歯周病等の歯科系疾患を引き起こす細菌が、上顎洞の領域まで侵攻し、“歯性上顎洞炎”を発症させることがある。この歯性上顎洞炎は、原因歯となる虫歯等の治療を併せて行う必要があり、一般に歯科医院において治療されている。

0005

歯性上顎洞炎に罹患した患者のパノラマ画像は、鼻を中心として左右に存在する一対の上顎洞のうち、罹患した側の一方の上顎洞の領域はエックス線不透過性のため主に白色または明るい色で描出され、正常な側の他方の上顎洞の領域はエックス線透過性のため黒色または濃色で描出される特徴を有している。すなわち、上顎洞領域を含むパノラマ画像において、左右の上顎洞の描出濃度に著しい違いが認められる場合には、歯性上顎洞炎に罹患している可能性が高いとの知見が示される。なお、“歯性”以外の“鼻性”或いは“血行性”の上顎洞炎の場合には左右の上顎洞領域の描出濃度が相違するような特徴的な所見が示されることは少ない。

0006

一方、本願発明者等は、撮影したパノラマ画像に含まれる左右の上顎洞の領域の濃度差強調表示する画像処理システムを開発し、左右差分像を作成するシステムの開発を行っている(非特許文献1参照)。これにより、左右差分像に基づいて、歯科医師等が濃度差を容易に認識することができ、患者の上顎洞炎の可能性の有無を判断し、その後の精密な検査等を行うことで、歯性上顎洞炎の早期診断及び早期治療が可能となる。

0007

ここで、得られた医療用画像から事前情報に基づいて特定の対象部位が存在する位置を推定する技術(アトラス)が多く開発されている。例えば、脳領域に対するアトラスの生成に関する手法(非特許文献2及び非特許文献3参照)、脳領域よりも形態の個体差が大きい腹部臓器に対するアトラスを生成する手法(非特許文献4及び非特許文献5参照)、さらに、相互情報量を用いて画像間の類似度を評価し類似の高い画像のみを用いてアトラスを生成する技術(非特許文献6等)が開示されている。これにより、パノラマ画像等の医療用画像から対象の位置を特定するためにアトラスを生成する試みが多くなされ、歯性上顎洞炎の可能性を判断するために、上顎洞の領域を特定するためにも有用な技術であると考えられている。

発明が解決しようとする課題

0008

しかしながら、パノラマ画像を使用した歯科領域或いは全身疾患に係る診断を行うためには、以下に掲げる問題点を生じる可能性があった。すなわち、パノラマ画像を撮影する際の撮影条件は、精度良く厳密に行う必要があり、高度な撮影技術が求められることがあった。具体的に説明すると、下顎骨領域を含むパノラマ画像を撮影する場合には、被撮影者の顔の中心の“正中線”、左右いずれかの眼窩外耳道上縁の三つの点を結んで形成される“フランクフルト平面”、及び断層撮影の際に撮影される領域を示す“断層域”の三つのポイントを基準としてこれらを常に一致させた状態で撮影する必要があり、この三つのポイントがずれることで最終的に得られるパノラマ画像に偏りや変形等の不具合を生じることがあった。また、撮影時のエックス線の位置や強度、濃度やコントラスト等の画像品質にばらつきが生じる場合もあった。このような適正でない撮影条件で撮影されたパノラマ画像では、疾病等を十分に判断することができず、疾病を見逃したり或いは誤った疾病を示唆する可能性を有していた。そのため、十分な経験を有する歯科放射線専門医等が撮影したパノラマ画像か否かによって疾病の診断を行うことができない場合があった。

0009

加えて、歯科医院等で撮影されたパノラマ画像から類推される疾病は主に歯科領域に限られ、全身疾患に関する知見を有する歯科医自体が少ないため、適正な撮影条件で撮影されたパノラマ画像であっても重大な疾病が見過ごされてしまう可能性があった。

0010

さらに、パノラマ画像を使用した歯性上顎洞炎の診断は、下記に掲げる問題点を生じることがあった。すなわち、上述したように、パノラマ画像から歯性上顎洞炎の症例を読影することは高度な専門知識を必要とし、一般の開業医では適確な診断を下すことは困難であった。さらに、非特許文献1に示した支援システムを使用する場合であっても、画像処理による左右の上顎洞の領域の濃度差を強調する処理を行うに過ぎず、係る濃度差が定量的に示されるものではなかった。そのため、読影を行う医師等の主観に頼り、正確な診断を下せないことがあった。特に、パノラマ画像の場合、複数の構造が複合的に組み合わさり、一枚のパノラマ画像として構築されるため、撮影条件等によって得られるパノラマ画像が大きく相違していた。さらに、アトラスを生成する技術は、脳領域や腹部臓器の領域等を主たる対象とするものであり、上顎洞を含む領域に対する試みは行われていなかった。

0011

そこで、本発明は、上記実情に鑑み、パノラマ画像を撮影した際の撮影条件を判定し、適正な撮影条件で撮影されたものか否かの判断を行い、パノラマ画像から得られた情報に基づいて歯科領域の疾患及びそれ以外の全身疾患の種々の疾病を推定し、罹患リスクのある疾病を診断支援情報として医師や被験者等に提供することを課題とするものである。

課題を解決するための手段

0012

上記課題を解決するため、本発明の診断支援システムは、「診断支援コンピュータを使用してパノラマエックス線写真を解析し、診断支援情報を提供可能な診断支援システムであって、前記診断支援コンピュータは、適正撮影条件及び非適正撮影条件を含む複数の撮影条件に基づいて下顎骨モデル提供者の下顎骨領域の前記パノラマエックス線写真をそれぞれ撮影し、複数の下顎骨モデルデータを取得するモデルデータ取得手段と、取得された前記下顎骨モデルデータから前記下顎骨の輪郭を抽出し、輪郭モデルデータを生成する輪郭モデル生成手段と、生成された輪郭モデルデータを撮影位置撮影姿勢、及び画像品質に係る撮影情報及び前記下顎骨モデル提供者に関する年齢、性別、及び疾病履歴を含む提供者情報と併せて記憶し、輪郭モデルデータベースを構築する輪郭データベース記憶手段と、診断支援対象の被験者の下顎骨領域のパノラマエックス線写真を撮影して取得された診断画像データの入力を受付ける診断画像データ受付手段と、受付けた前記診断画像データから前記下顎骨のエッジデータを抽出するエッジ抽出手段と、抽出された前記エッジデータと前記輪郭モデルデータベースの複数の輪郭モデルデータとを照合し、類似する前記輪郭モデルデータを検索する類似モデル検索手段と、類似検索された前記輪郭モデルデータの前記撮影情報に基づいて、前記診断画像データの撮影位置及び撮影姿勢に係る位置適正を判定する位置判定手段と、類似検索された前記輪郭モデルデータの前記撮影情報に基づいて、前記診断画像データの濃度プロフィール及びコントラストを含む画像品質の適正度を判定する画像品質判定手段と」を具備して主に構成されている。

0013

ここで、適正撮影条件とは、下顎骨領域のパノラマ画像を撮影する場合において、下顎骨モデル提供者の顔中心の正中線等の位置付け精細に調整し、かつ濃度プロフィール等の画像品質についても調整した上でパノラマ画像を撮影する条件であり、得られたパノラマ画像は偏り、変形、及び画質異常がなく、これに基づいて疾病の推定等を行うのに十分なものである。一方、非適正撮影条件とは、上記と相違し、被写体となる下顎骨領域の位置、向き、下顎骨モデル提供者の撮影姿勢が適正範囲からずれて不正な位置で撮影されたもの、或いは線量不足や線量過剰、またはコントラスト不良等の画像品質が適正でない条件で撮影されたものである。なお、非適正撮影条件は、適正撮影条件を基準として同一被写体に対して故意に撮影条件を変化させた複数の条件であり、これに伴って同一被写体について複数の下顎骨モデルデータが取得されることになる。そして、複数の下顎骨モデル提供者に対して複数の下顎骨モデルデータの取得を繰り返すことにより、複数の下顎骨モデルデータが集積されることになる(モデルデータ取得手段)。なお、パノラマ画像(下顎骨モデルデータ)を撮影するための撮影装置は、歯科医院等に導入された周知のパノラマエックス線写真撮影装置を用いて行われる。

0014

一方、輪郭モデル生成手段とは、取得された複数の下顎骨モデルデータから下顎骨の輪郭を画像解析に基づいて抽出し、輪郭モデルデータを生成するものである。このとき、キャニー(Canny)フィルタ(非特許文献7参照)のようなデジタルフィルタを用いて生成するものや、或いは下顎骨モデルデータの輪郭を手動で指示するものであっても構わない。さらに、非特許文献8に示すように、P形フーリエ記述子を用いて抽出された輪郭形状を数値化して規定し、フーリエ記述子の係数を変量として主成分分析を行うことにより、輪郭モデルデータの生成が可能となる。なお、生成された輪郭モデルデータについて、主成分を定義する固有ベクトルから、それぞれの主成分得点が0または標準偏差の+2倍の値をとり、他の主成分得点はすべて0となる場合等、任意の条件を予め設定することによりフーリエ係数を求め、逆フーリエ変換によって下顎骨の輪郭形状を規定することが知られている(非特許文献1参照)。

0015

さらに、輪郭データベース記憶手段は、上述した処理によってモデル化された輪郭モデルデータを輪郭モデルデータベースに記憶するものであり、特に、当該輪郭モデルデータを撮影する際の位置、姿勢、画像品質、撮影装置の状態等の撮影条件に係る撮影情報と、下顎骨モデル提供者の年齢、性別、疾病履歴等を含む提供者情報を併せて記憶し、輪郭モデルデータベースを構築するものである。

0016

エッジ抽出手段とは、診断支援対象の被験者のパノラマ画像を撮影することによって得られた診断画像データから上記の輪郭モデル生成手段の下顎骨の輪郭検出と同様に画素数の違い等を使用して画像解析処理を行い、下顎骨のエッジデータを抽出するものである。このとき、予め下顎骨のおおよその領域を特定し、処理速度の効率化及びエッジデータの精度を高めるために、マスク処理を行うものであっても構わない。さらに、エッジ処理について具体的に説明すると、デジタルデータの画素が不連続に変化している場所を特定するものであり、周知のキャニー法等を使用することができる。

0017

したがって、本発明に係る診断支援システムによれば、入力された診断画像データに対してエッジ処理を施し、得られたエッジデータと予め構築された複数の下顎骨の輪郭モデルデータとの対比処理が行われ、輪郭モデルデータベースの中から最も類似する輪郭モデルデータの検索が行われる。そして、類似検索に該当する輪郭モデルデータに対応する撮影情報に基づいて撮影位置等の位置適正及びコントラスト等の画像品質の適正が判定される。これにより、診断画像データが適正な撮影条件で撮影されたか否かの判断がなされる。このとき、撮影情報に基づいて輪郭モデルデータが適正撮影条件か非適正撮影条件で撮影されたのかが判断され、輪郭モデルデータが適正撮影条件で撮影されていれば当該診断画像データも適正撮影条件で撮影されたものと判定され、輪郭モデルデータが非適正撮影条件で撮影されていれば当該診断画像データも非適正撮影条件で撮影されたものと判定される。

0018

ここで、非適正撮影条件で撮影されたと判定された診断画像データは、その旨が出力され、処理を終了する。この場合、改めて適正撮影条件でパノラマ画像を撮影し、診断画像データを再度取得する必要がある。

0019

さらに、本発明の診断支援システムは、上記構成に加え、「前記診断支援コンピュータは、前記位置判定手段及び前記画像品質判定手段によって前記適正撮影条件で撮影されたと判定された前記診断画像データに対し、類似検索された前記輪郭モデルデータの前記提供者情報に基づいて罹患リスクのある疾病を前記診断支援情報として提供する診断支援情報提供手段を」さらに具備するものであっても構わない。

0020

したがって、本発明に係る診断支援システムによれば、撮影位置等及び画像品質の全てにおいて適正と判定された診断画像データについては、輪郭モデルデータに対応する提供者情報に基づいて罹患リスクの高い疾病が推定されリスト化される。具体的には、輪郭モデルデータを提供した下顎骨モデル提供者の提供者情報に含まれる治療履歴や疾病歴から下顎骨が類似することによってリスクが想定される疾病が判断され、これが診断支援情報として提供される。これにより、下顎骨領域のパノラマ画像から、輪郭モデルデータベースに含まれる複数の輪郭モデルデータとの類似が判定され、類似検索に該当した輪郭モデルデータベースから当該パノラマ画像の被験者が罹患する可能性の高い疾病に関する情報が提供されることになる。これにより、パノラマ画像の適正の有無及び疾病リスクの情報の提供が一連の流れで処理されることになる。

0021

さらに、本発明の診断支援システムは、上記構成に加え、「前記診断支援コンピュータは、前記診断画像データに含まれる前記下顎骨の輪郭を検出する下顎骨輪郭検出手段と、検出された前記下顎骨の輪郭に係る診断輪郭データに基づいて、骨粗鬆症頸動脈石灰化、及び上顎洞炎の少なくとも一つの疾病の検知を行う疾病検知手段と」を具備するものであっても構わない。

0022

したがって、本発明に係る診断支援システムによれば、診断画像データから下顎骨の輪郭がさらに検出される。このとき、既に類似検索された輪郭モデルデータの下顎骨を初期輪郭とし、作成されたエッジデータに基づいて下顎骨のエッジ収束する動的輪郭モデルの生成を行い、輪郭を検出するものであっても構わない。これにより、検出された輪郭形状から各種疾病の検知を行うことができる。

0023

さらに、本発明の診断支援システムは、上記構成に加え、「前記類似モデル検索手段は、抽出された前記エッジデータを使用して前記下顎骨の前記エッジからの距離に応じて濃淡を変化させて描画した距離画像を生成する距離画像生成手段と、前記輪郭モデルデータから前記下顎骨の輪郭形状を復元する輪郭復元手段と、復元された前記輪郭形状に係る復元データ及び生成された前記距離画像に係る距離画像データを重ね合わせ、輪郭上の平均値を算出する平均値算出手段と、算出された前記平均値が最小値を示す前記下顎骨の輪郭形状を有する前記輪郭モデルデータを特定し、類似する前記輪郭モデルデータとする輪郭モデル特定手段と」を具備するものであっても構わない。

0024

したがって、本発明に係る診断支援システムによれば、生成されたエッジデータに基づいてエッジ部分からの距離に応じて濃淡を変化させた距離画像が生成され、輪郭モデルデータから復元化された下顎骨の輪郭形状との照合処理が行われる。このとき、互いの輪郭における平均値を算出し、算出された平均値が最小値を示す輪郭モデルデータを類似する輪郭モデルであることを特定する処理を行う。これにより、距離画像と復元された輪郭モデルデータの輪郭形状との違いに基づいて類似の有無を判断することが可能となる。

0025

さらに、左右の上顎洞の濃度差による歯性上顎洞炎の可能性に関する情報を提供するための本発明の診断支援システムは、上記構成に加え、「前記モデルデータ取得手段は、前記下顎モデル提供者の前記下顎骨領域及び上洞領域を含む領域を被写体として撮影した前記パノラマエックス線写真に係るパノラマ画像データを取得し記憶する画像データ取得手段を具備し、前記診断画像データ受付手段は、診断対象の被験者の前記下顎骨及び前記上顎洞を含む領域を前記パノラマエックス線写真で撮影した検査対象画像に係る下顎骨・上顎洞診断画像データの入力を受付ける下顎骨・上顎洞診断画像データ受付手段を具備し、前記エッジ抽出手段は、受付けた前記下顎骨・上顎洞診断画像データからデジタル解析技術を使用して前記下顎骨の輪郭候補のエッジデータを抽出するエッジデータ抽出手段を具備し、前記類似モデル検索手段は、抽出された前記エッジデータ及び前記モデルデータベースに記憶された複数の参照モデルデータを照合し、前記エッジデータに類似する前記下顎骨の輪郭形状を有する類似参照モデルデータを検索する下顎骨類似モデル検索手段を具備し、前記診断支援コンピュータは、前記パノラマ画像データから前記下顎骨の輪郭形状及び前記上顎洞の位置を特定し、参照モデルデータを生成する参照モデルデータ生成手段と、生成された複数の前記参照モデルデータを記憶し、モデルデータベースを構築する参照データベース構築手段と、類似検索された前記類似参照モデルデータから前記上顎洞の位置の領域を抽出し、前記上顎洞に係るアトラスを生成するアトラス生成手段と、前記アトラスに基づいて、前記下顎骨・上顎洞診断画像データから前記上顎洞の領域に相当する上顎洞画像を抽出する上顎洞画像抽出手段と、抽出された左右一対の前記上顎洞画像のそれぞれの特徴量を算出する特徴量算出手段と、算出された前記特徴量に係る特徴量データから前記下顎骨・上顎洞診断画像データを取得した前記被験者の歯性上顎洞炎の罹患に係る危険率を推定する危険率推定手段と」を具備するものであっても構わない。

0026

ここで、画像データ取得手段とは、複数の下顎モデル提供者(生体)に対し、下顎骨及び上顎洞を含む領域を被写体としてパノラマ画像をパノラマエックス線写真撮影装置を使用して撮影しパノラマ画像データとして電子的に取得及び記憶するものであり、画像ファイルとしてハードディスクドライブ不揮発性メモリ等の記憶手段に保存可能なものである。なお、パノラマ画像データの中には、人工骨を用いて構築した頭部撮影用ファントムの下顎骨及び上顎洞の領域を被写体として撮影したものを含んでもよい。これにより、複数の被写体に対するパノラマ画像データが蓄積されることになる。

0027

一方、参照モデルデータ生成手段とは、取得されたパノラマ画像データから下顎骨の輪郭形状及び上顎洞の位置を特定し、参照モデルデータとして生成するものであり、例えば、キャニーフィルタのようなデジタルフィルタを使用した画像解析技術を応用し輪郭形状を抽出するものや、或いはパノラマ画像データに含まれる輪郭部分に沿って手動で位置を指定しながら特定するものであってもよい。さらに、上顎洞の領域に関しても画像解析技術を応用し自動的に特定するものや、高度な読影技術を有する医師等が当該領域を手作業で特定するものであっても構わない。これにより、下顎骨の輪郭形状及び上顎洞の位置に関する情報が互いに相関的に特定される。パノラマ画像に描出される下顎骨の輪郭形状(下縁部+後縁部)は、歯の有無、口の開閉状態、及び障害陰影の映込みによる影響が少ないため、パノラマ画像における基準位置として使用することができる。下顎骨の輪郭形状に対して上顎洞の相対的位置関係を決定することで、上顎洞の位置を正確に把握することができる。なお、上顎洞の位置の特定は、例えば、上顎洞の領域の形状に応じて精密な形状で抽出するものであっても、或いは矩形状等の単純な図形で上顎洞の領域を特定するものであっても構わない。これにより、参照モデルデータには、下顎骨の輪郭形状に関する情報と輪郭形状と相対的な位置関係で特定された上顎洞の領域の位置及びそのサイズ等に関する情報が含まれている。そして、それぞれ生成された参照モデルデータが集積され、モデルデータベースが構築され記憶手段に記憶されている。

0028

一方、エッジデータ抽出手段とは、診断対象の被験者の下顎骨及び上顎洞を含む領域に係るパノラマ画像(検査対象画像)を撮影することによって得られ、下顎骨・上顎洞診断画像データ受付手段によって入力を受付けた下顎骨・上顎洞診断画像データを画像解析処理を行い、下顎骨の輪郭候補のエッジデータを抽出するものである。そして、得られたエッジデータと、予め構築されたモデルデータベースに記憶された複数の下顎骨の輪郭形状に関するデータを含む参照モデルデータとを照合し、エッジデータに類似する輪郭形状の参照モデルデータ(類似参照モデルデータ)を検索することが行われる。

0029

さらに、アトラス生成手段とは、類似検索された類似参照モデルデータに基づいて、上顎洞の領域を特定しアトラスとして生成するものであり、上顎洞画像抽出手段とは、生成されたアトラスと診断画像データとを下顎骨の輪郭形状を一致させるようにして重ね合わせ、アトラスに相当する診断画像データの領域(関心領域)を上顎洞画像として抽出するものである。ここで、上顎洞は鼻を中心に顔の左右に一対設けられているものであり、生成されるアトラス及び抽出される上顎洞画像も左右一対になっている。これにより、下顎骨の輪郭形状を基準として上顎洞の領域が特定され、診断画像データから上顎洞画像が自動的に抽出される。一方、特徴量算出手段は、得られた上顎洞画像の濃度差を各種パラメータに基づいて定量的に求めるものであり、上顎洞画像に係る画素値の平均値や中央値等の数値或いは上顎洞の領域のサイズ等を求めることができる。これに基づいて、左右の上顎洞画像の特徴量の差異に応じて危険率を推定することができる。

0030

したがって、本発明に係る診断支援システムによれば、受付けた下顎骨・上顎洞診断画像データに対してエッジ処理を施し、得られたエッジデータに基づいて予め構築されたモデルデータベースの中から最も類似する類似参照モデルデータの検索が行われる。そして、類似検索に該当する類似参照モデルデータから上顎洞の領域のアトラスが生成され、当該アトラスと診断画像データとを下顎骨を基準として重ね合わせ、上顎洞画像の抽出が行われ、特徴量の算出及び危険率の推定が行われる。

0031

さらに、本発明の診断支援システムは、上記構成に加え、「前記エッジデータ抽出手段は、前記下顎骨・上顎洞診断画像データに対しガウシアンフィルタを用いて平滑化処理を行い、前記下顎骨・上顎洞診断画像データに含まれるノイズを除去する平滑化手段と、得られた平滑化データに対し前記下顎骨の存在が期待される位置に予めマスク処理を行うマスク手段と、得られたマスクデータに対し前記下顎骨の輪郭形状を構成するエッジの勾配方向予測する勾配方向予測手段と、得られた勾配予測データに対しKirsh法(非特許文献9参照)を使用して前記エッジの勾配及び強度を算出する勾配強度算出手段と、算出された強度データに対し非最大値抑制処理によって前記エッジを細線化する細線化手段と、得られた細線化データに対しヒステリシスしきい値処理によって前記エッジデータを抽出するしきい値処理手段と」を具備するものであっても構わない。

0032

したがって、本発明に係る診断支援システムによれば、診断画像データから下顎骨のエッジデータを抽出するために、キャニー法及びKirsh法を組合わせた手法が用いられる。特に、平滑化処理及びマスク処理によって、輪郭のエッジの勾配を予測可能にした後、Kirsh法を採用し、勾配及び強度を算出することが行われる。これにより、抽出されるエッジデータの精度が高くなる。

0033

さらに、本発明の診断支援システムは、上記構成に加え、「前記下顎骨類似モデル検索手段は、前記診断画像データから抽出された前記エッジデータから距離変換画像を生成する距離変換手段と、前記モデルデータベースに記憶された前記参照モデルデータに対してアフィン変換処理をするアフィン変換手段と、前記距離変換画像に係る距離変換画像データ及びアフィン変換処理後の前記参照モデルデータの類似度を推定し、類似参照モデルを抽出する類似度推定手段と」を具備するものであっても構わない。

0034

したがって、本発明に係る診断支援システムによれば、抽出されたエッジデータから距離変換画像を生成し、さらにモデルデータベースに記憶された複数の下顎骨・上顎洞モデルデータに対しアフィン変換を施した後、生成した距離変換画像データとの間で類似度の推定が行われる。ここで、アフィン変換とは、画像の拡大縮小、回転、平行移動などをまとめて行列を使って変換するものである。これにより、アフィン変換後の下顎骨・上顎洞モデルデータと距離変換画像データとの間で類似度が推定される。このとき、類似の最も高いモデルのみを出力するものであっても、或いは類似度の高い順番に複数のモデルデータを出力するものであってもよい。また、予め類似度のしきい値を定め、当該しきい値以内のものを出力するものでもよい。

0035

一方、本発明の診断支援プログラムは、「適正撮影条件及び非適正撮影条件を含む複数の撮影条件に基づいて下顎骨モデル提供者の下顎骨領域のパノラマエックス線写真をそれぞれ撮影し、複数の下顎骨モデルデータを取得するモデルデータ取得手段、取得された前記下顎骨モデルデータから前記下顎骨の輪郭を抽出し、輪郭モデルデータを生成する輪郭モデル生成手段、生成された輪郭モデルデータを撮影位置、撮影姿勢、及び画像品質に係る撮影情報及び前記下顎骨モデル提供者に関する年齢、性別、及び疾病履歴を含む提供者情報と併せて記憶し、輪郭モデルデータベースを構築する輪郭データベース記憶手段、診断支援対象の被験者の下顎骨領域のパノラマエックス線写真を撮影して取得された診断画像データの入力を受付ける診断画像データ受付手段、受付けた前記診断画像データから前記下顎骨のエッジデータを抽出するエッジ抽出手段、抽出された前記エッジデータと前記輪郭モデルデータベースの複数の輪郭モデルデータとを照合し、類似する前記輪郭モデルデータを検索する類似モデル検索手段、類似検索された前記輪郭モデルデータの前記撮影情報に基づいて、前記診断画像データの撮影位置及び撮影姿勢に係る位置適正を判定する位置判定手段、類似検索された前記輪郭モデルデータの前記撮影情報に基づいて、前記診断画像データの濃度プロフィール及びコントラストを含む画像品質の適正を判定する画像品質判定手段として、診断支援コンピュータを機能させる」ものから主に構成される。さらに、「前記位置判定手段及び前記画像品質判定手段によって前記適正撮影条件で撮影されたと判定された前記診断画像データに対し、類似検索された前記輪郭モデルデータの前記提供者情報に基づいて罹患リスクのある疾病を前記診断支援情報として提供する診断支援情報提供手段として、前記診断支援コンピュータをさらに機能させる」、「前記診断画像データに含まれる前記下顎骨の輪郭を検出する下顎骨輪郭検出手段、及び検出された前記下顎骨の輪郭に係る診断輪郭データに基づいて、骨粗鬆症、頸動脈の石灰化、及び上顎洞炎の少なくとも一つの疾病の検知を行う疾病検知手段として、前記診断支援コンピュータをさらに機能させる」或いは「抽出された前記エッジデータを使用して前記下顎骨の前記エッジからの距離に応じて濃淡を変化させて描画した距離画像を生成する距離画像生成手段、前記輪郭モデルデータから前記下顎骨の輪郭形状を復元する輪郭復元手段、復元された前記輪郭形状に係る復元データ及び生成された前記距離画像に係る距離画像データを重ね合わせ、輪郭上の平均値を算出する平均値算出手段、及び算出された前記平均値が最小値を示す前記下顎骨の輪郭形状を有する前記輪郭モデルデータを特定し、類似する前記輪郭モデルデータとする輪郭モデル特定手段を有する前記類似モデル検索手段として、前記診断支援コンピュータをさらに機能させる」ものであっても構わない。さらに、「前記下顎モデル提供者の前記下顎骨領域及び上顎洞領域を含む領域を被写体として撮影した前記パノラマエックス線写真に係るパノラマ画像データを取得し記憶する画像データ取得手段を具備する前記モデルデータ取得手段、診断対象の被験者の前記下顎骨及び前記上顎洞を含む領域を前記パノラマエックス線写真に撮影した検査対象画像に係る下顎骨・上顎洞診断画像データの入力を受付ける下顎骨・上顎洞診断画像データ受付手段を具備する前記診断画像データ受付手段、受付けた前記下顎骨・上顎洞診断画像データからデジタル解析技術を使用して前記下顎骨の輪郭候補のエッジデータを抽出するエッジデータ抽出手段を具備する前記エッジ抽出手段、抽出された前記エッジデータ及び前記モデルデータベースに記憶された複数の参照モデルデータを照合し、前記エッジデータに類似する前記下顎骨の輪郭形状を有する類似参照モデルデータを検索する下顎骨類似モデル検索手段を具備する前記類似モデル検索手段、前記パノラマ画像データから前記下顎骨の輪郭形状及び前記上顎洞の位置を特定し、参照モデルデータを生成する参照モデルデータ生成手段、生成された複数の前記参照モデルデータを記憶し、モデルデータベースを構築する参照データベース構築手段、類似検索された前記類似参照モデルデータから前記上顎洞の位置の領域を抽出し、前記上顎洞に係るアトラスを生成するアトラス生成手段、前記アトラスに基づいて、前記下顎骨・上顎洞診断画像データから前記上顎洞の領域に相当する上顎洞画像を抽出する上顎洞画像抽出手段、抽出された左右一対の前記上顎洞画像のそれぞれの特徴量を算出する特徴量算出手段、及び算出された前記特徴量に係る特徴量データから前記下顎骨・上顎洞診断画像データを取得した前記被験者の歯性上顎洞炎の罹患に係る危険率を推定する危険率推定手段として、前記診断支援コンピュータをさらに機能させる」もの、或いは「前記下顎骨・上顎洞診断画像データに対しガウシアンフィルタを用いて平滑化処理を行い、前記診断画像データに含まれるノイズを除去する平滑化手段、得られた平滑化データに対し前記下顎骨の存在が期待される位置に予めマスク処理を行うマスク手段、得られたマスクデータに対し前記下顎骨の輪郭形状を構成するエッジの勾配方向を予測する勾配方向予測手段、得られた勾配予測データに対しKirsh法を使用して前記エッジの勾配及び強度を算出する勾配強度算出手段、算出された強度データに対し非最大値抑制処理によって前記エッジを細線化する細線化手段、及び得られた細線化データに対しヒステリシスしきい値処理によって前記エッジデータを抽出するしきい値処理手段を有する前記エッジデータ抽出手段として」、或いは「前記下顎骨・上顎洞診断画像データから抽出された前記エッジデータから距離変換画像を生成する距離変換手段、前記モデルデータベースに記憶された前記参照モデルデータに対してアフィン変換処理をするアフィン変換手段、及び前記距離変換画像に係る距離変換画像データ及びアフィン変換処理後の前記参照モデルデータの類似度を推定し、類似参照モデルを抽出する類似度推定手段を有する前記下顎骨類似モデル検索手段として」、前記診断支援コンピュータをさらに機能させるものであっても構わない。

0036

したがって、本発明に係る診断支援プログラムによれば、上記プログラムを実行することにより、上述の診断支援システムにおける診断支援コンピュータを稼動させることができ、撮影され、入力されたパノラマエックス線写真の撮影の適正度や得られた診断画像データから罹患リスクの高い歯性上顎洞炎の推定に関する情報を提供可能な作用効果を当該診断支援コンピュータに奏させることが可能となる。

発明の効果

0037

本発明の効果として、輪郭モデルデータベースから下顎骨形状の類似度を判定し、類似する輪郭モデルデータの撮影情報によって撮影条件の適正度を判断し、かつ提供者情報に基づいて罹患リスクの高い疾病に関する情報を提供することができる。さらに、抽出された類似参照モデルデータから上顎洞のアトラスとして生成し、特定された左右の上顎洞画像の特徴量を算出し、互いに対比することで歯性上顎洞炎の可能性(危険率)に関する情報を提供することができる。これにより、画像解析を行う医師等の作業負担を軽減し、パノラマ画像を使用して有益な診断支援情報の提供を行うことができる。

図面の簡単な説明

0038

第一実施形態の診断支援システムにおける診断支援コンピュータの機能的構成を示すブロック図である。
第一実施形態の診断支援コンピュータによる処理の流れを示すフローチャートである。
第一実施形態の診断支援コンピュータによる処理の流れを示すフローチャートである。
(a)パノラマエックス線写真、(b)下顎骨の模式図、(c)輪郭モデルデータを示す説明図である。
(a)適正撮影条件、(b)前へ10mm移動(非適正撮影条件)、(c)後ろへ10mm移動(非適正撮影条件)、及び(d)右へ10mm移動(非適正撮影条件)の各条件のパノラマエックス線写真の撮影例を示す説明図である。
(a)診断支援対象のパノラマエックス線写真、(b)エッジデータ、(c)マスクパターン、及び(d)マスク処理後のエッジデータを示す説明図である。
(a)距離画像を示す説明図、(b)類似検索されたパノラマエックス線写真、及び(c)動的輪郭モデルを用いた下顎骨の輪郭形状の検出例を示す説明図である。
(a)健常者皮質骨、(b)骨粗鬆症患者の皮質骨、(c)動的輪郭モデルを使用したオトガイ孔に対応する位置と下顎角の決定、及び(d)下顎皮質骨の厚み計測のための関心領域設定の一例を示す説明図である。
(a)頸動脈石灰化の一例、及び(b)頸動脈石灰化を検出するための関心領域設定の一例を示す説明図である。
(a)上顎洞のエックス線不透過像の一例、及び(b)上顎洞の関心領域設定の一例を示す説明図である。
第二実施形態の診断支援システムにおける診断支援コンピュータの機能的構成を示すブロック図である。
第二実施形態における診断支援コンピュータによる処理の流れを示すフローチャートである。
第二実施形態における診断支援コンピュータによる処理の流れを示すフローチャートである。
(a)検査対象画像、(b)人体構造の模式図、及び(c)平滑化画像を示す説明図である。
(a)マスク画像、(b)エッジ強調画像、(c)細線化画像、(d)エッジ画像、及び(e)距離変換画像を示す説明図である。
距離変換画像の一例を示す説明図である。
類似参照モデルデータから生成されるアトラス及び上顎洞の関心領域を示す説明図である。
検査対象画像から上顎洞の関心領域を抽出した結果を示す説明図である。
検査対象画像の左右差分像から上顎洞の関心領域を抽出した結果を示す説明図である。

実施例

0039

以下、本発明の第一実施形態である診断支援システム1及び診断支援プログラム2について、図1乃至図10に基づいて主に説明する。本実施形態の診断支援システム1は、図1等に示されるように、撮影されたパノラマ画像4に係る診断画像データ6の入力を受付け、画像解析を行い、撮影条件等の適正度の判定処理を行うことにより、医師等の診断をサポートするための診断支援情報7の提供を行うことが可能な診断支援コンピュータ3によって主に構成されている。ここで、下顎骨モデル提供者及び診断対象の被験者の下顎骨領域のパノラマ画像4を撮影するパノラマエックス線写真撮影装置8(以下、「撮影装置8」)は、第一実施形態では診断支援コンピュータ3と直に接続されており、撮影されたパノラマ画像4を電子化した下顎骨モデルデータ9または診断画像データ6として診断支援コンピュータ3にそのまま取込み可能な構成となっている。さらに、診断支援コンピュータ3には、本発明の診断支援プログラム2がインストールされ、当該診断支援プログラムを起動することにより、診断支援コンピュータ3が本発明の診断支援システム1に係る各作用効果を奏するように機能させることができる。

0040

診断支援コンピュータ3は、市販のパーソナルコンピュータを応用して構築することが可能であり、筐体状のコンピュータ本体10と、コンピュータ本体10と接続して各種情報及びデータを表示出力可能な液晶ディスプレイ等の表示手段11と、コンピュータ本体10に対して各種操作を行うキーボードマウス等の入力手段12とを具備して主に構成されている。なお、診断支援コンピュータ3を所謂「ノート型パソコン」で構成するものであっても構わない。

0041

診断支援コンピュータ3は、前述の撮影装置8と画像データ入力用のインターフェイス13を介して接続されている。さらに、コンピュータ本体10の内部は、通常のパーソナルコンピュータと同様に、各種処理を行う中央演算処理装置(CPU)、一時的なデータの記憶を行うメモリ、各種情報及びデータを保存する記憶手段としてのハードディスクドライブ、インターネット等のネットワーク機能を付加するためのネットワークインターフェイス等の各種ハードウェアによって構成されている(一部図示を省略する)。なお、撮影装置8は、コンピュータ本体10と前述のように直に接続されている必要はなく、取得した下顎骨モデルデータ9や診断画像データ6を周知の記憶媒体を介して、或いはネットワーク回線を使用して入力を受付けるものであっても構わない。

0042

第一実施形態の診断支援システム1における診断支援コンピュータ3は、図1等に示されるように、その機能的構成として、撮影装置8を使用して下顎骨モデル提供者(図示しない)の下顎骨領域を被写体として少なくとも一つの適正撮影条件を含む複数の撮影条件で撮影されたパノラマ画像4を電子化した下顎骨モデルデータ9を取得するモデルデータ取得手段14と、取得された下顎骨モデルデータ9から下顎骨の輪郭を抽出し、輪郭モデルデータ15を生成する輪郭モデル生成手段16と、生成された輪郭モデルデータ15とともに下顎骨モデルデータ9を撮影した撮影位置、撮影姿勢、及び画像品質等の撮影情報17及び下顎骨モデル提供者に関する疾病履歴等を含む提供者情報18と併せて記憶し、輪郭モデルデータベース19を構築する輪郭データベース記憶手段20と、診断支援対象の被験者のパノラマ画像4を撮影装置8によって撮影して取得された診断画像データ6の入力を受付ける診断画像データ受付手段21と、受付けた診断画像データ6から下顎骨のエッジデータ22を抽出するエッジ抽出手段23と、エッジデータ22と輪郭モデルデータベース19に記憶された輪郭モデルデータ15とを互いに照合し、類似する輪郭モデルデータを検索する類似モデル検索手段24と、類似検索された輪郭モデルデータ15の撮影情報17に基づいて診断画像データ6の撮影位置等の適正を判定する位置判定手段25と、撮影情報17に基づいて診断画像データ6の画像品質の適正を判定する画像品質判定手段26と、位置及び画像品質が適正と判定された診断画像データ6に対し、類似検索された輪郭モデルデータ15に対応する提供者情報18の下顎骨モデル提供者の疾病履歴等に基づいて罹患リスクのある疾病を推定し、診断支援情報7として提供する診断支援情報提供手段27とを具備している。

0043

また、類似モデル検索手段24は、抽出されたエッジデータ22を使用して下顎骨のエッジ31からの距離に応じて濃淡を変化させて描画した距離画像5を生成する距離画像生成手段32と、輪郭モデルデータ15から下顎骨の輪郭形状を復元する輪郭復元手段33と、復元された輪郭形状の復元データ34及び生成された距離画像5の距離画像データ35を重ね合わせ、平均値を算出する平均値算出手段36と、算出された平均値が最小値を示す輪郭モデルデータ15を特定し、診断画像データ6と類似する輪郭モデルデータ15とする輪郭モデル特定手段37とをさらに具備している。

0044

次に、第一実施形態の診断支援システム1に基づく診断支援情報7の提供の具体例について、図2及び図3のフローチャート等に基づいて説明を行う。なお、本実施形態の診断支援システム1は、類似検索の対象となる輪郭モデルデータ15を記憶し、輪郭モデルデータベース19を構築するための処理、構築された輪郭モデルデータベース19を使用して被験者の診断画像データ6から罹患リスクの高い疾病に関する診断支援情報7を提供する処理等を行う。

0045

まず、輪郭モデルデータベース19の構築処理について説明をする。始めに、複数の下顎骨モデル提供者の下顎骨領域を被写体として撮影装置8を使用してパノラマ画像4を撮影する(ステップS1、図4(a)参照)。図4(b)は一般的な下顎骨を模式化した模式図を示している。これから確認できるように、下顎骨の輪郭、すなわち、下縁部及び後縁部は、歯の有無、口の開閉状態、或いは障害陰影の映り込みによる影響が少ないことが予想され、安定した画像描出が可能であることが推定される。そのため、下顎骨領域のパノラマ画像4が使用される。

0046

撮影されたパノラマ画像4に係る下顎骨モデルデータ9から下顎骨の輪郭を抽出する(ステップS2)。具体的には前述したキャニーフィルタによる画像解析技術を使用し、デジタルデータの画素値が不連続な部位を特定して輪郭部分を検出する処理が行われる。そして、抽出された輪郭形状を数式化(モデル化)する(ステップS3)。これにより、パノラマ画像4から下顎骨の輪郭形状に係る輪郭モデルデータ15が生成される(図4(c)参照)。なお、輪郭形状のモデル化のためには、前述した非特許文献8に示されるP形フーリエ記述子を用いた手法を採用することができる。これらの処理についての詳細は省略する。

0047

ここで、ステップS1においてパノラマ画像4は、下顎骨領域を被写体とする撮影位置や下顎骨モデル提供者の姿勢、パノラマ画像の濃度やコントラスト等の画像品質を予め規定した適正範囲の条件で撮影する適正撮影条件と、故意に当該撮影条件を非適正の条件に変化させ、非適正撮影条件で撮影する複数の撮影条件によって撮影が行われている。例えば、図5(a)から(d)に示されるように、適正撮影条件(図5(a))に対し、撮影位置を10mmずつ前方向、後方向、及び右方向に撮影位置を変化させてパノラマ画像4を撮影し、それぞれについて輪郭の抽出及び輪郭モデルデータ15の生成処理を行う。これにより、一つの被写体に対して複数のパノラマ画像4、下顎骨モデルデータ9、及び輪郭モデルデータ15が情報として取得される。係る処理を複数の下顎骨モデル提供者に対して行うことにより、輪郭モデルデータベース19が構築される(ステップS4)。なお、下顎骨モデル提供者は、通常は生体(人間)を示すものの、例えば、人工骨を用いた頭部撮影用ファントムを一部に含み、パノラマ画像4を撮影するものであっても構わない。

0048

このとき、輪郭モデルデータ15は、それぞれの撮影条件(撮影位置、下顎骨モデル提供者の撮影姿勢、撮影角度、回転、撮影装置の種別管電流及び管電圧の数値、画像の濃度プロフィール、画像コントラスト等)を示す撮影情報17と、下顎骨モデル提供者に関する年齢、性別、過去の疾患有無(例えば、歯周病、上顎洞炎等)、治癒歴または治療歴、得られたパノラマ画像4から計測された下顎骨の形状の形態計測値(皮質骨の厚み、濃度値)等の提供者情報18とを併せて記憶し、上記輪郭モデルデータベース19が構築されている。なお、取得された輪郭モデルデータ15からは、輪郭形状を復元した復元データ34を作成することもできる。また、構築された輪郭モデルデータベース19は、コンピュータ本体10の内部の記憶手段38(ハードディスクドライブに相当)に保存され、入力手段12の操作によって必要に応じて検索及び再生表示等をすることができる。これにより、輪郭モデルデータベース19の構築処理は完了する。

0049

次に、診断支援コンピュータ3は、撮影装置8によって撮影された診断支援情報7を提供する支援対象の被験者の下顎骨領域のパノラマ画像4に係る診断画像データ6の入力を受付ける(ステップS5、図6(a)参照)。得られた診断画像データ6からキャニーフィルタを使用した画像解析技術によってエッジ31を抽出し(ステップS6、図6(b)参照))、予め下顎骨領域の周辺のみを抽出するために、それ以外のエッジ部分を排除するためのマスクパターン(図6(c)参照)を使用してマスク処理(ステップS7)を行うことにより、エッジデータ22を生成する(ステップS8、図6(d)参照)。これにより、エッジデータ22には、下顎骨の輪郭を含むものとなる。なお、エッジ31の検出は、上記画像解析技術のみを使用して行うものであっても、不要なエッジ31が残存しているのが肉眼で確認できる場合には必要に応じて手作業で除去を行う工程を追加するものであっても構わない。

0050

次に、得られたエッジデータ22と、輪郭モデルデータベース19に記憶された複数の輪郭モデルデータ15とを照合し、最も類似した輪郭モデルデータ15の検索処理を行う。このとき、類似検索処理は、輪郭モデルデータベース19に記憶された全ての輪郭モデルデータ15を対象とするものであっても、或いは各種検索条件を設定し、検索対象を限定するもの(例えば、性別、年齢等)を限定するものであっても構わない。ここで、検索条件の対象となる情報は、輪郭モデルデータ15と併せて記憶された撮影情報17及び提供者情報18に含まれているものとなる。

0051

類似する輪郭モデルデータ15の検索の具体的手法について説明すると、画像解析技術において周知となるユークリッド距離変換処理技術を使用して得られたエッジデータ22から距離画像5の生成を始めに行う(ステップS9、図7(a)参照)。ここで、図7(a)に示されるように、生成される距離画像5は、画素値が低い(すなわち、黒色である)ほど、下顎骨のエッジ31からの距離が近いことを示している。これにより、エッジデータ22に基づいて下顎骨の輪郭形状が特定される。一方、輪郭モデルデータベース19に記憶されている各輪郭モデルデータ15に基づいて上述した輪郭形状の復元処理を行う(ステップS10)。そして、復元された復元データ34と生成された距離画像5とを重ね合わせ、輪郭上の平均値を算出する(ステップS11)。すなわち、復元データ34と距離画像5の輪郭位置がどの程度ずれているのかを算出し、その平均値を求めることが行われる。その結果、算出された平均値が最小となる下顎骨の輪郭形状を有する輪郭モデルデータ15が特定される(ステップS12)。これにより、診断画像データ6と類似する輪郭モデルデータ15が決定する(図7(b)参照)。

0052

次に、上記処理によって決定された輪郭モデルデータ15に係る撮影情報17に基づいて、診断画像データ6の撮影条件における撮影位置等の適否を判定する(ステップS13)。すなわち、特定された輪郭モデルデータ15は各種撮影条件等を記憶した撮影情報17が予め関連付けられており、撮影情報17には輪郭モデルデータ15が適正撮影条件で撮影されたか否かに関する情報が含まれている。ここで、輪郭モデルデータ15の撮影位置や撮影姿勢等が適正撮影条件である場合(ステップS13においてYES)、すなわち、撮影情報17に基づいて類似検索された輪郭モデルデータ15が適正撮影条件で撮影された場合、輪郭モデルデータ15の画像品質の判定処理を行う(ステップS14)。一方、撮影位置等が非適正条件である場合(ステップS13においてNO)、すなわち、撮影情報17に基づいて類似検索された輪郭モデルデータ15が非適正撮影条件で撮影された場合、診断支援情報7の提供処理を終了する旨を表示手段11に出力し(ステップS15)、以後の処理を終了する(ステップS16)。つまり、類似検索された輪郭モデルデータ15が適正撮影条件で撮影されている場合、診断画像データ6も適正撮影条件で撮影されたものと判断し、輪郭モデルデータ15が非適正撮影条件で撮影されていた場合、当該診断画像データも非適正撮影条件で撮影されたものとみなす処理が行われる。そのために、輪郭モデルデータベース19には、予め複数の適正及び非適正の撮影条件でパノラマ画像4の撮影を行い、上記判断の基礎とすることができるようになっている。

0053

さらに、類似検索された輪郭モデルデータ15の画像品質(濃度プロフィールやコントラスト等)が適正範囲であるか否かの画像品質の適否の判定が行われる(ステップS14)、輪郭モデルデータ15の画像品質が適正である場合(ステップS14においてYES)、ステップS17の処理に移行する。一方、輪郭モデルデータ15の画像品質が適正でない場合(ステップS14においてNO)、すなわち、撮影情報17に基づいて類似検索された輪郭モデルデータ15が濃度プロフィール等に不具合のある非適正撮影条件で撮影された場合、上記ステップS15及びステップS16と同様に、診断支援情報7の提供処理を終了する旨を出力し(ステップS18)、以後の処理を終了する(ステップS19)。これにより、適正撮影条件以外の撮影条件で撮影されたパノラマ画像4の診断画像データ6しか以降の処理が行われないことになる。すなわち、非適正撮影条件で撮影されたパノラマ画像4に基づいて診断を行う場合、画像が不鮮明や不明瞭な場合も想定され、疾病の判定に疑義が生じやすい。そのため、適正な撮影条件で撮影されたパノラマ画像4のみを診断対象とすることにより、本実施形態の診断支援システム1による診断支援情報7の精度が高いものとすることができる。

0054

その後、撮影位置等及び画像品質のいずれについても適正であると判定された輪郭モデルデータ15に基づいて被験者の罹患リスクの高い疾病を推定する処理を行う(ステップS17)。ここで、輪郭モデルデータ15は下顎骨モデル提供者の性別等の基礎情報及び治癒歴や疾病履歴等の医療情報を含む提供者情報18がそれぞれ関連付けられて記憶されている。そして、係る提供者情報18から下顎骨モデル提供者の罹患または過去に発症した疾病に関する情報を抽出し、抽出された情報を診断支援情報7として出力する(ステップS20)。すなわち、下顎骨の輪郭形状が類似する下顎骨モデル提供者の提供者情報18に基づいて診断画像データ6を提供した被験者の疾病リスクを予測することができる。また、医師等は提供された診断支援情報7に基づいて、被験者のパノラマ画像4を精細に読影することにより、当該疾病の可能性を判断することができる。すなわち、医師に対して読影に際して予め留意すべき疾病等の情報を提供し、疾病診断の判断を速やかに行わせることができ、判断ミス等を未然に防止することができる。

0055

次に、適正撮影条件の判定及び診断支援情報7の提供された診断画像データ6に基づいて、全身疾患に関する検知を行うための処理について説明する。まず、診断支援情報7の提供された診断画像データ6から下顎骨の輪郭を抽出する(ステップS21)。具体的には、係る処理は、既に前ステップで類似検索された輪郭モデルデータ15を使用し、当該輪郭モデルデータの下顎骨の輪郭を初期輪郭形状として、既に生成されているエッジデータ22のエッジ31に収束するように動的輪郭モデルを適用して輪郭検出の処理を行う。ここで、動的輪郭モデルを適用する画像解析については説明を省略する。これにより、医師等に対する診断支援情報7の提供処理が完了する(ステップS22)。

0056

第一実施形態の診断支援システム1の診断支援コンピュータ3は、上記処理によって適正撮影条件の判定及び疾病に係る診断支援情報7の提供が行われた診断画像データ6に基づいて、下顎骨の輪郭形状から全身疾患の関心領域に関する情報を提供をする疾病検知手段(図示しない)をさらに備えるものであっても構わない。具体的には、骨粗鬆症の検知、頸動脈石灰化の検知、及び上顎洞炎の検知を行うことができ、パノラマ画像4から上記疾患を判断するためのコンピュータアルゴリズムを開発する上で上記関心領域の決定を自動化することにより、医師等の作業負担を大幅に軽減することができる。以下、疾病検知手段の例を示す。

0057

骨粗鬆症患者の場合、下顎骨領域のパノラマ画像4を撮影すると健常者のパノラマ画像(対照群図8(a)参照)よりも、皮質骨が薄い状態の画像(図8(b)参照)として描出されることがこれまでの知見から明らかとなっている。このとき、下顎皮質骨の厚みは、オトガイ孔と呼ばれる部位に対応する位置で計測を行うことにより、骨粗鬆症の検知性能が良好であると知られている(非特許文献10参照)。そのため、下顎骨モデル提供者の下顎骨モデルデータ9を輪郭モデルデータベース19に記憶する際に、オトガイ孔に対応する座標を予め記録しておき、上記処理の際の初期輪郭形状とする場合にその座標を配置しておく。そして、動的輪郭モデルの適用後の座標を関心領域(すなわち、オトガイ孔に対応する位置)として決定することにより(図8(c))、オトガイ孔の周辺位置を下顎皮質骨の厚みを計測するための関心領域として設定することができる(図8(d))。

0058

一方、頸動脈は、パノラマ画像4では、下顎角の下方と外方に位置し、頸動脈の石灰化は、局所的に濃度値が高い領域として描出される(図9(a)の矢印参照)。したがって、下顎角の位置を自動的に決定し、それに基づいて頸動脈石灰化を検出するための関心領域を自動的に設定することができる(非特許文献11参照)。なお、下顎角の決定は、上述した骨粗鬆症のオトガイ孔に対応する位置の決定と同様の手法で行うことができるため、ここでは説明を省略する。これにより、下顎角の下方及び外方の領域のみを頸動脈の石灰化の検出のための関心領域とすることができる(図9(b)参照)。

0059

以上、説明したように、第一実施形態の診断支援システム1によれば、被験者の下顎骨領域を撮影したパノラマ画像4を使用し、予め構築された輪郭モデルデータベース19との類似検索の結果、該当した輪郭モデルデータ15に関連付けられた撮影情報17及び提供者情報18に基づいて、撮影条件の適正度と被験者が罹患しやすい疾病に関する診断支援情報7を提供することができる。すなわち、撮影情報17に基づく適正度の判定により、非適正の撮影条件で撮影されたパノラマ画像4に基づいて診断を行うことが排除され、診断の精度を高めることができる。さらに、下顎骨の輪郭形状の類似に基づいて、予め罹患リスクの高い疾病を被験者に対して提示すること、及び実際に診断を下す医師等に有益な情報として提供することができる。これにより、医師が診断の際に提示された疾病についての正確な診断を下すことができ、パノラマ画像の読影の際に当該疾病を見逃すといったミスを未然に防止することができる。

0060

第一実施形態における撮影条件の適正度を判定する処理を行った後に、さらに、歯性上顎洞炎の診断に係る情報を提供するための係る本発明の第二実施形態の診断システム101及び診断支援プログラム102について、図11乃至図19に基づいて説明する。なお、第二実施形態の診断支援システム101は、図11等に示されるように、被験者の下顎骨及び上顎洞を含む領域を撮影した検査対象画像104(パノラマ画像)に係る下顎骨・上顎洞診断画像データ116の入力を受付け、各種の画像解析処理を施すことにより、下顎骨・上顎洞診断画像データ116から上顎洞画像データ153を抽出し、これに基づいて歯性上顎洞炎の診断に有益な情報を提供するものであり、診断支援コンピュータ103によって主に構成されている。

0061

ここで、モデルデータ提供者(図示しない)及び頭部撮影用ファントム等の被写体及び、診断対象の被験者のそれぞれの下顎骨及び上顎洞の領域を含む被写体について撮影されるパノラマ画像データ及び検査対象画像104は、パノラマエックス線写真撮影装置118(以下、単に「撮影装置118」と称す)を使用して取得され、当該撮影装置118は診断支援コンピュータ103と直に接続され、撮影された検査対象画像104に係るパノラマ画像データ119または下顎骨・上顎洞診断画像データ116としてそのまま電子的に取込ことが可能となっている。なお、撮影装置118を診断支援コンピュータ103と接続しない場合であっても、CD−ROMやDVD−ROM等の記憶媒体、或いは、インターネット等の電気通信回線を通じて当該データを診断支援コンピュータ103に取込み、入力可能にするものであっても構わない。

0062

診断支援システム101に使用される診断支援コンピュータ103は、第一実施形態の診断支援コンピュータ3と同様のハードウェア構成を採用することができ、筐体状のコンピュータ本体120と、ディスプレイ121と、キーボード・マウス122等によって構成されている。さらに、診断支援コンピュータ103は、前述した撮影装置118とインターフェイス157を介して電気的に接続され下顎骨・上顎洞診断画像データ116等の入力が可能となっている。また、コンピュータ本体120の内部は、各種信号処理を行う中央演算処理装置(CPU)、一時的なデータの記憶処理を行うメモリ、及び各種情報及びデータ等を保存し記憶する記憶手段123としてのハードディスクドライブ等の各種ハードウェア構成(一部図示を省略する)を有して構築されている。さらに、記憶手段123には、診断支援コンピュータ103を本発明の診断支援システム101に係る各種作用効果を奏するように機能させるための、診断支援プログラム102が記憶され、プログラムを稼動可能にインストールされている。

0063

診断支援コンピュータ103は、図11等に示されるように、その機能的構成として撮影装置118によって撮影された複数のパノラマ画像に係るパノラマ画像データ119を取得する画像データ取得手段124と、パノラマ画像データ119から下顎骨の輪郭及び上顎洞の領域を特定し、参照モデルデータ125を生成する参照モデルデータ生成手段126と、生成された複数の参照モデルデータ125を集積して記憶し、モデルデータベース127を構築する参照データベース構築手段128と、診断対象となる被験者の下顎骨及び上顎洞の領域を含む検査対象画像104を撮影し取得した下顎骨・上顎洞診断画像データ116の入力を受付ける下顎骨・上顎洞診断画像データ受付手段151と、受付けた下顎骨・上顎洞診断画像データ116から下顎骨のエッジデータ129を抽出するエッジデータ抽出手段130と、抽出されたエッジデータ129とモデルデータベース127に含まれる参照モデルデータ125とを照合し、エッジデータ129に類似する下顎骨の輪郭形状を有する参照モデルデータ125を検索する下顎骨類似モデル検索手段131と、類似検索された類似参照モデルデータ113から上顎洞の領域を特定し、上顎洞のアトラス114を生成するアトラス生成手段133と、生成されたアトラス114に基づいて下顎骨・上顎洞診断画像データ116から左右一対の上顎洞の関心領域115に相当する上顎洞画像134を抽出する上顎洞画像抽出手段135と、抽出された上顎洞画像134から特徴量を算出する特徴量算出手段136と、算出した特徴量から下顎骨・上顎洞診断画像データ116の歯性上顎洞炎の危険率を推定する危険率推定手段137とを具備して主に構成されている。

0064

さらに、エッジデータ抽出手段130は、下顎骨・上顎洞診断画像データ116に含まれるノイズを除去するための平滑化処理を行う平滑化手段138と、得られた平滑化データ139に対し、下顎骨の存在が予め期待される範囲に対してマスク処理を行うマスク手段140と、マスク処理によって得られたマスクデータ141に対し、下顎骨の輪郭を構成するエッジの勾配方向を予測する勾配方向予測手段142と、得られた勾配予測データ143に基づいてKirsh法を使用してエッジの勾配及び強度を算出する勾配強度算出手段144と、算出された強度データ145に対し、非最大値抑制処理によってエッジを細線化する細線化手段146と、細線化手段146によって得られた細線化データ132に対し、ヒステリシスしきい値処理によってエッジデータ129を抽出するしきい値処理手段147とを具備している。

0065

また、下顎骨類似モデル検索手段131は、下顎骨・上顎洞診断画像データ116から抽出されたエッジデータ129に基づいて距離変換画像データ148を生成する距離変換手段149と、モデルデータベース127に記憶された参照モデルデータ125をアフィン変換するアフィン変換手段152と、アフィン変換された参照モデルデータ125とエッジデータ129との類似度を推定し、類似参照モデルデータ113を抽出する類似度推定手段150とをさらに具備している。

0066

診断支援コンピュータ103が、上記機能的構成を包含することによって、被験者の下顎骨・上顎洞診断画像データ116から歯性上顎洞炎の罹患の可能性に関する情報を歯科医師等に提供することができる。すなわち、検査対象画像104に含まれる上顎洞の領域の特徴量を対比し、当該特徴量の差異の大きさに応じて危険率を定量的に提示することができる。

0067

以下に、本実施形態の診断支援システム101による歯性上顎洞炎に関する情報の提供の処理の具体例について、図12及び図13のフローチャートに基づいて主に説明する。まず、下顎骨・上顎洞診断画像データ116に類似する類似参照モデルデータ113を検索するためのモデルデータベース127の構築処理について説明する。始めに、複数のモデルデータ提供者の下顎骨及び上顎洞の領域を被写体として撮影装置118を使用してパノラマ画像を撮影する(ステップT1、図14(a)参照)。ここで、被写体は生体のモデルデータ提供者以外にも、人工骨で製作した頭部撮影用のファントムを含むものであっても構わない。これにより、年齢、性別等のそれぞれ異なる複数のパノラマ画像データ119が取得される。ここで、図14(b)は一般的な下顎骨及び上顎洞の領域を含む人体構造を模式化したものである。図14(a)及び図14(b)から明らかなように、下顎骨の輪郭形状、すなわち、下顎骨の下縁部及び左右の後縁部は、歯の有無、口の開閉状態、或いは障害陰影の映り込みによる影響が少なく、常に安定したパノラマ画像の描出が可能である。そのため、本実施形態の診断支援システム101において、上顎洞領域を特定するための基準点基準領域)として下顎骨の輪郭が使用される。

0068

撮影されたパノラマ画像は、診断支援コンピュータ103の記憶手段123にパノラマ画像データ119として電子的に記憶され、その後、デジタルフィルタによって処理され、下顎骨の輪郭位置及び上顎洞の領域位置の特定された参照モデルデータ125が生成される(ステップT2及びステップT3)。具体的に説明すると、デジタルフィルタの一種であるキャニーフィルタ(キャニー法)による画像解析技術を応用し、パノラマ画像データ119を構成する画素値が不連続な部分を特定し、当該不連続部分を輪郭部分として検出する処理を行う(ステップT2)。さらに、検出された輪郭部分を形式化(モデル化)することで下顎骨の輪郭形状の特定が行われる。また、解析対象となる上顎洞の位置(関心領域115)を同一の画面上(パノラマ画像データ119)で特定する(ステップT3)。ここで、関心領域115の特定は、例えば、画面表示されたパノラマ画像データ119(検査対象画像104)の領域を歯科医師等が手動で画面上の点または領域を指し示すことによって特定されるものであってもよい。

0069

このとき、関心領域115は、上顎洞の外郭形状に沿って特定されるものであっても、或いは矩形状等の単純な図形によって特定されるものであってもよい。この輪郭の形状の特定及び上顎洞の関心領域115に関する特定の情報を含んだ参照モデルデータ125が生成される(ステップT4)。複数のパノラマ画像データ119に対して上記処理を繰返すことによって、診断支援コンピュータ103に取込まれた個々のパノラマ画像データ119から、各々参照モデルデータ125が生成され、蓄積される。ここで、参照モデルデータ125には、それぞれ下顎骨の輪郭形状に関する情報とともに、左右一対の上顎洞の位置に関する情報が含まれ、下顎骨を基準とした上顎洞の相対的位置関係が記述された情報が含まれている。これにより、下顎骨の位置を特定することで、必然的にこれに対応する上顎洞の位置を決定することができる。そして、複数の参照モデルデータ125が集積されることで、モデルデータベース127が構築される(ステップT5)。

0070

撮影装置118によって取得されたパノラマ画像データ119には、それぞれの撮影条件等に関する情報と、参照モデル提供者の年齢、性別、過去の疾病履歴等に関する情報と、検査対象画像104から計測された下顎骨等の形態計測(皮質骨の厚み等)に関する情報とが含まれている。係る情報は、生成された参照モデルデータ125と関連付けて、構築されるモデルデータベース127に併せて記憶されるものであってもよい(図示しない)。構築されたモデルデータベース127は、診断支援コンピュータ103の記憶手段123に保存され、マウス122等の操作手段による操作に応じて適宜読み出すことが可能となっている。なお、下顎骨の輪郭形状のモデル化処理については、P形フーリエ記述子を用いた周知の技法を採用することができ、これについての詳細は省略するものとする。これにより、モデルデータベース127の構築が完了する。なお、図12及び図13において、上記モデルデータベース127の構築処理と、以降に示す下顎骨・上顎洞診断画像データ116に対する処理を連続的に行うものを示しているが、これに限定されるものではなく、上記ステップT1乃至ステップT5の処理を予め行い、モデルデータベース127を構築した後に適宜、下記のステップT6からの処理を行うものであっても構わない。

0071

モデルデータベース127の構築が完了した後、診断支援コンピュータ103は、撮影装置118によって撮影された診断対象の被験者の下顎骨及び上顎洞の領域を含む検査対象画像104の下顎骨・上顎洞診断画像データ116の入力を受付ける(ステップT6、図14(a)参照)。その後、受付けた下顎骨・上顎洞診断画像データ116に対してデジタルフィルタを使用した画像解析処理により、下顎骨の輪郭(エッジ)に係るエッジデータ129の抽出を行う(ステップT7乃至ステップT13:エッジデータ抽出手段130に相当)。ここで、本実施形態の診断支援システム101は、エッジデータ129の抽出のために、キャニーフィルタによる処理に加え、Kirsh法を適用することで、下顎骨・上顎洞診断画像データ116からエッジの勾配方向及び強度に関する情報に基づいて、より精細なエッジデータ129の抽出を可能としている。

0072

具体的に説明すると、撮影装置118によってインターフェイス157を介して入力された下顎骨・上顎洞診断画像データ116を受付けた後、当該下顎骨・上顎洞診断画像データ116に含まれるノイズを除去するために、ガウシアンフィルタを用いて平滑化処理をする(ステップT7、図14(c)参照)。これにより、下顎骨・上顎洞診断画像データ116が平滑化データ139に転換される。このとき、2次元デジタル画像のi行j列における画素値をf(i,j)と定義すると、上記ガウシアンフィルタは下記の数1によって示される。

0073

0074

ここで、σは標準偏差を示している。このとき、σの値が小さくなるほど平滑化の効果が小さくなり、σの値が大きくなるほど平滑化の効果が大きくなる。さらに、得られた平滑化データ139に対し、下顎骨の存在が期待される位置をマスク領域として定義する。マスク領域は、各領域毎に特定のエッジパターンを想定したテンプレートを準備し、Kirsh法によりマッチングを行う(ステップT8、図15(a)参照)。ここで、図15(a)のマスク画像107をMとし、M={m(i,j)}で表されるマスク領域R∈Mを7つの小領域に分割した場合の個々のR(R1,R2・・・R7)について説明する。下顎骨の形状(図14(a)等参照)を考慮した場合、下顎骨の輪郭のエッジは、両端側のR1及びR7は縦方向のエッジ、中央に位置するR4は横方向のエッジであることが予測可能である。この事前入手可能な知識に基づいて、Kirsh法によりエッジの勾配方向と強度を次式(数2)に基づいて決定する(ステップT9)。

0075

0076

上記式に基づいてエッジ強度を算出したエッジ強調画像108の一例を図15(b)に示す。ここで、Kirsh法によって得られたエッジ強調画像108は、平滑化処理の際のガウシアンフィルタの影響によって個々の線画が太くなる傾向がある。そこで、非最大値抑制処理によって細線化を行う(ステップT10)。ここで、非最大値抑制処理は、予め算出されたエッジの強度データ145の値と、当該エッジの鉛直方向の隣接画素の値とを比較し、最大でない場合を0とする処理を行う。これにより、得られた細線化画像109を図15(c)に示す。

0077

次に、得られた細線化データ132に対し、ヒステリシスしきい値処理によりエッジを検出する(ステップT11)。ここで、ヒステリシスしきい値処理では、低い値(下限値)と高い値(上限値)の2つのしきい値を規定し、(1)上限値より高い強度値の画素をエッジ、(2)下限値より低い強度値の画素は非エッジ、(3)下限値以上、上限値以下の強度値の画素のうち、エッジに結合している画素をエッジとする判断によって処理するものである。

0078

その後、上記処理によって得られた全てのエッジをラベル付けし、下顎骨の輪郭のエッジを抽出する(ステップT12)。ここで、検査対象画像104を撮影する撮影法の特性を考慮すると、検査対象画像104の左右両端、中央、及び下顎角の周辺は、頸椎や反対側の下顎角による障害陰影の影響を受ける。一方でオトガイ孔付近は比較的安定的に描出され、患者の位置付けが適切で頸椎の陰影との重なりがなければ、下顎枝の後縁部も安定的に描出される。さらに、ヒステリシスしきい値処理を適用することで、下顎骨の輪郭のエッジは、それ以外のエッジよりも長いエッジとして検出される傾向がある。

0079

そこで、オトガイ孔付近(図15(a)におけるR3,R5)で最も横に長いエッジと下顎枝の後縁部(同R1,R7)で最も縦に長いエッジを下顎角の輪郭に決定する。その後、それ以外の領域(同R2,R4,R6)で下顎骨の輪郭と決定したエッジに隣接したエッジも下顎骨の輪郭とする処理を行い、下顎骨の輪郭候補エッジが決定される(ステップT13)。これにより、下顎骨・上顎洞診断画像データ116からキャニーフィルタ及びKirsh法を使用し、下顎骨の輪郭の形状(エッジ)に係るエッジデータ129が規定される。

0080

次に、上記処理によって得られた下顎骨の輪郭(エッジデータ129)に従って、類似参照モデルデータ113を構築されたモデルデータベース127から検索する(ステップT14乃至ステップT17)。具体的に説明すると、F={f3(i,j)}を、下顎骨・上顎洞診断画像データ116の下顎骨の輪郭の候補エッジの画素値を0、それ以外の画素値を1とする画像、D={d(i,j)}をその距離変換画像112とする。このとき、上記Dは次式(数3)によって決定される。

0081

0082

ここで、距離変換を適用した距離変換画像112(距離変換画像データ148)を図15に示す(ステップT14)。これにより、画素値が低い(黒い)ほど下顎骨の輪郭のエッジデータ129に近似し、一方、画素値が高い(白)ほど下顎骨の輪郭のエッジデータ129から遠くなることが示される。そこで、k番目の参照モデルデータ125をMk={m(i,j)}と定義し、アフィン変換を適用する(ステップT15)。ここで、アフィン変換適用後の参照モデルデータ125をM’k={m’(i’,j’)}とし、次式(数4)で表すことができる。

0083

0084

ここで、a,b,c,d,e,fはアフィン変換における任意の係数値であり、以下に示す式(数5)の出力値が低くなるように設定する。そして、参照モデルデータ125と下顎骨・上顎洞診断画像データ116の類似度(類似度データ156)を推定する(ステップT16)。

0085

0086

上記式において、出力値が低い程、参照モデルデータ125(M’k)と下顎骨・上顎洞診断画像データ116とが類似していることが示される。これにより、類似参照モデルデータ113が特定され、類似検索が完了する(ステップT17)。ここで、検索該当の類似参照モデルデータ113は、最も類似度の高い(出力値が低い)一つの類似参照モデルデータ113のみを出力するものであっても、或いは類似度の高い順番に複数モデルを出力するものであっても、或いは予め設定したしきい値未満の全ての類似参照モデルデータ113を出力するものであっても構わない。図16に、上記式による評価値(Sim)が0.10mm以下に該当する類似参照モデルデータ113の出力結果を示す。

0087

その後、類似検索された類似参照モデルデータ113から上顎洞の領域を抽出し、上顎洞のアトラス114を生成する(ステップT18)。ここで、本実施形態の診断支援システム101は、上記処理によって類似検索された複数の類似参照モデルデータ113を使用し、上記アトラス114の生成を行うものについて例示する。ここで、n2(1≦n2≦n1)が類似参照モデルデータ113の数を示し、Ik(i,j)をk番目の類似参照モデルデータ113の画素(i,j)が上顎洞の領域であれば1を、上顎洞の領域でない場合に0を返す関数と定義すると、上顎洞のアトラス114は、下記の式(数6)によって決定される。

0088

0089

このとき、上顎洞のアトラス114は、上顎洞が存在する確率に応じて0から1の範囲で規定される。さらに、しきい値処理により、上顎洞の関心領域115を規定する(ステップT19)。このとき、G={f4(i,j)}を上顎洞の関心領域115の画素が1、それ以外の画素が0の画像とすると、次式(数7)によって定義される。

0090

0091

ここで、αは任意の固定しきい値を表す。前述した図16の類似参照モデルデータ113から、上顎洞のアトラス114を生成し、α=1として上顎洞の関心領域115を規定した画像の例を図17に示す。ここで、図17は、三つの類似参照モデルデータ113を重ね合わせることによりアトラス114を生成している。ここで、アトラス114は上顎洞の領域である確率が高い程、白い画素で表示されている。また、上顎洞の関心領域115は、しきい値処理により、三つの類似参照モデルデータ113がすべて重なり合った画素のみを抽出している。すなわち、本実施形態の診断支援システム101によれば、類似検索された1または複数の類似参照モデルデータ113に対し、参照モデルデータ125によって特定された上顎洞の関心領域115を重ね合わせることで、下顎骨の輪郭(エッジデータ129)に対応するアトラス114を生成している。

0092

上記処理によって得られた上顎洞の関心領域115に基づいて、下顎骨・上顎洞診断画像データ116から上顎洞画像134(上顎洞画像データ153)を抽出する(ステップT20)(図18参照)。これにより、下顎骨・上顎洞診断画像データ116から上顎洞に相当する領域が自動的に抽出される。下顎骨の輪郭のエッジデータ129を基準とし、さらに複数の類似参照モデルデータ113に基づいてアトラス114の生成及び関心領域115の規定が行われるため、上記抽出処理によって得られる上顎洞画像134は被験者の上顎洞の位置を正しく示している。なお、図19に示すように、下顎骨・上顎洞診断画像データ116の左右差分像117を生成し、係る左右差分像117から上顎洞の領域を抽出するものであってもよい。係る処理によって抽出された上顎洞の領域(上顎洞画像134)について特徴量(特徴量データ154)を算出する(ステップT21)。ここで、特徴量は、上顎洞の領域を構成する画素の平均値、中央値、最頻値、標準偏差、ヒストグラム分布、及び領域のサイズ等が相当し、鼻を中心として左右のそれぞれに対して定量的に示される。

0093

その後、算出された特徴量データ154に基づいて、被験者の左右の上顎洞の領域における差異を比較し、危険率(危険度データ155)を推定する(ステップT22)。ここで、危険率は、例えば、算出された特徴量データ154の差異の大きさに応じて、予め危険率の程度を定義したものに基づいて70%や80%等の数値で表すものや、正常な上顎洞側の特徴量に対する歯性上顎洞炎に罹患している側の上顎洞の特徴量の変更率から求めるものであってもよい。これにより、特徴量及び危険率のいずれもが定量的に示されるため、歯科医師等は検査対象画像104から歯性上顎洞炎の可能性に関する情報の提供を受け、パノラマ画像の読影及び再検査等から最終的な判断を下すことができる。その結果、歯科医院等において日常的に撮影されるパノラマ画像から有益な情報の提供を受けることができる。さらに、大量のパノラマ画像であっても処理が可能であるため、歯科検診等の多くの被験者に対してパノラマ画像の撮影を行った場合でも、歯性上顎洞炎の疑いについての初期判断を行うための有用なものとなる。上記特徴量及び危険率に関する情報がディスプレイ121に出力表示された後、本実施形態の診断支援システム101の処理が完了する(ステップT23)。

0094

以上、説明したように、本実施形態の診断支援システム101によれば、被験者の下顎骨及び上顎洞を含んで撮影された検査対象画像104から、下顎骨のエッジデータ129を決定し、予め構築されたモデルデータベース127のパノラマ画像データ119及び参照モデルデータ125から、エッジデータ129と類似する類似参照モデルデータ113を検索し、上顎洞のアトラス114を生成し、下顎骨・上顎洞診断画像データ116における上顎洞の関心領域115を特定し、上顎洞画像134を抽出することができる。係る処理を自動化することで、上顎洞画像134の特徴量に基づく左右の対比を容易に行うことができ、歯性上顎洞炎の可能性の示唆を歯科医師等に提供することができる。

0095

以上、本発明について好適な第一及び第二実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。

0096

すなわち、第一実施形態の診断支援システム1における診断支援コンピュータ3の処理の流れとして図2及び図3、及び、第二実施形態の診断支援システム101における診断支援コンピュータ103の処理の流れとして、図12及び図13のそれぞれのフローチャートに基づいて説明したが、処理の流れはこれに限定されるものではない。例えば、第一実施形態の診断支援システム1では、輪郭モデルデータベース19の構築とその後の適正判定等の処理を連続的に行う必要はなく、また撮影位置等の撮影条件と濃度プロフィール等の画像品質の判定処理を同時或いは判定処理順を逆に行うものであっても構わない。さらに、エッジデータ22の生成及び類似する輪郭モデルデータ15の検索の際に、種々の周知の画像解析技術を使用するものを示したが、これらの手法については限定されるものではなく、その他の画像解析技術及び画像解析手法を用いてエッジデータ22等や輪郭形状の特定を行うものであっても構わない。

0097

また、第二実施形態の診断支援システム101において、下顎骨・上顎洞診断画像データ116からエッジデータ129を抽出するエッジデータ抽出手段130において、キャニーフィルタ及びKirsh法を組合わせたものを示したが、これに限定されるものではなく、その他の画像解析技術を使用してエッジデータ129の抽出を行うものであっても構わない。さらに、類似検索された複数の類似参照モデルデータ113を使用して上顎洞のアトラス114の生成及び関心領域115の規定を行うものを示したが、これに限定されるものではなく、最も類似度が高いと推定された一つの類似参照モデルデータ113のみを使用するものであっても構わない。

0098

特開2008−36068号公報
特許第3964795号公報
国際公開番号WO2006/043523

先行技術

0099

Hara T, Mori S, Kaneda T, Hayashi T, Katsumata A, Fujita H,"Automated contralateral subtraction of dental panoramic radiographs fordetecting abnormalities in paranasal sinus", Proc. of SPIE, 2011,Vol.7963, p.79632R-1-79632R-6
Guimond A, Meunier J, Thirion JP, "Average Brain Models:A Convergence Study", Computer Vision and Image Understanding, 2000,Vol.77, p.192-210
Dinov ID, Mega MS, Thompson PM, Lee L, WoodsRP, Holmes CJ,SumnersDW, Toga AW, "Analyzing Functional Brain Images in a ProbabilisticAtlas; A Validation of Subvolume Thresholding", Journal of ComputerAssisted Tomography, 2000, Vol.24(1), p.128-138
Park H, Bland PH, Meyer CR, "Construction of anAbdominal Probabilistic Atlas and its Application in Segmentation",IEEETRANSACTIONS ONMEDICALIMAGING, 2003, Vol.22(4), p.483-492
川 輝彦、周 向栄、原 武史、田 広志、横山 龍二郎、近藤 浩史、兼雅之、星 博昭、「体幹部非造影X線CT画像における肝臓アトラスの構築とその肝臓自動抽出法への応用」、電気情報通信学会論文誌 D、2008、Vol.J91−D(7)、p.1837−1850
Blezek DJ, Miller JV, "Atlas stratification", MedicalImage Analysis, 2007, Vol.11, p.443-457
Canny JF, "A Computational Approach Edge Detection", IEEETRANSACTION ON PATTERN ANALYSIS AND MACHINE INTELLIGENCE, 1986,VOL.PAMI-8(6),p.679-698
鄭 澤宇、外3名、「P形フーリエ記述子に基づくハナハス花弁部分形状特徴の定量的評価」、育種学研究、2005年、7(3)、p133−142
Kirsh R, " Computer Determination of the Constituent Structureof Biological Images", COMPUTERSAND BIOMEDICAL RESEARCH, 1971, Vol.4,p.315-328
松本拓也、外8名、「歯科パノラマX線画像における下顎骨の皮質骨の厚み計測に関する基礎的研究」、第29回日本医用画像工学大会予稿集CD−ROM、2010年、p3−11
林 達郎、外7名、「歯科パノラマX線写真におけるトップハットフィルタを用いた頸動脈石灰化の自動検出法の開発」、NPO法人日本歯放射線学会第15回臨床画像大会、2010年、O−S5−16,p47

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