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課題・解決手段

本発明の目的は、安定性に優れたsiRNAとシゾフィランとの核酸多糖複合体を提供することである。 siRNAにポリデオキシアデニンホスホジエステル結合部分の少なくとも一部がホスホロチオエート化されたものを付加し、シゾフィランと複合体を形成させることにより、核酸多糖複合体を形成する。

概要

背景

1998年に発見されたRNA干渉(RNAi)、その効果の大きさや持続性が従来のアンチセンス法に比較して顕著に優れており、画期的な遺伝子発現阻害方法であることから医薬応用が期待されてきた。しかしながら、RNAi活性を示す2本鎖RNA(すなわちsiRNA)は、投与から標的細胞に取り込まれる過程、もしくは細胞内で分解されることが多く、その活性本体であるRISC複合体を細胞内で形成することが困難であった。従って、優れた遺伝子発現阻害方法であるにも関わらず、十分な効果が得られないことから、いまだsiRNAを利用した医薬品は存在しない。

未修飾のsiRNAは血中等に存在するヌクレアーゼにより分解され、標的細胞でRNAi効果を発揮するものは少ない。従って、ヌクレアーゼ耐性となるような様々な化学修飾をsiRNAに施すことが試みられてきた。それにもかかわらず、有効に細胞内に導入するには高い用量が必要であった。また、2本鎖ヌクレオチドを高用量で生体に投与すると、自然免疫反応を高めることから、意図しない免疫賦活反応の効果が現われることが知られている。従って標的細胞内に特異的にsiRNAを導入するデリバリー技術が必要である。siRNAのデリバリー技術としては、リポソーム高分子ナノミセル等、siRNAを包埋する技術が開発されてきた。しかしながら、依然として標的性としてはパッシブターゲティングの域を超えず、これを克服するために例えば標的細胞と結合する分子をsiRNAの製剤に付与するなどの工夫が必要とされている。

このような背景から、ポジティブターゲティングや当該標的細胞内において有意にRNAi活性を示すsiRNAのデリバリー技術が求められていた。そこで、siRNAの樹状細胞へのデリバリー方法として、シゾフィランとsiRNAにポリデオキシアデニンが付加したものの複合体(特許文献1を参照)が提案されている。しかしながら、特許文献1の技術では、必ずしも満足治療効果を得ることができなかった。

一方、これまでに、ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンは、シゾフィランと安定な複合体を形成できることが報告されている(非特許文献1を参照)。しかしながら、ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンを付加したsiRNAとシゾフィランの複合体では、次の理由から、有効なRNA干渉効果を奏し得ないと考えられている。ポリデオキシアデニンが付加されたsiRNAとシゾフィランの複合体において、ポリデオキシアデニンとシゾフィランの複合部分は、RISC複合体を形成する上で立体障害となる。そのため、ポリデオキシアデニンが付加されたsiRNAとシゾフィランの複合体は、細胞内でRISC複合体を形成する前に、シゾフィランとの複合体形成部分が取り除かれる必要があるが、ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンとシゾフィランは、顕著に高い安定性を備えており、細胞内で除去され難くなっている。その上、ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンは酵素による切断を受け難いため、ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンが付加されたsiRNA(特に、ダイサーによる作用を受けない21mer型のsiRNA)は、シゾフィランとの複合体形成部分が除去され難くなっている。そのため、ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンを付加したsiRNA(特に21mer型のsiRNA)とシゾフィランの複合体は、細胞内で、ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンとシゾフィランをsiRNAから遊離させることができず、RISC複合体を形成し難くなると考えられている。
そのため、RNA干渉効果を有効に奏させるという技術的観点からは、ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンを付加したsiRNA(特に21mer型のsiRNA)とシゾフィランの複合体は採用し得ないと考えられているのが現状である。

概要

本発明の目的は、安定性に優れたsiRNAとシゾフィランとの核酸多糖複合体を提供することである。 siRNAにポリデオキシアデニンのホスホジエステル結合部分の少なくとも一部がホスホロチオエート化されたものを付加し、シゾフィランと複合体を形成させることにより、核酸多糖複合体を形成する。

目的

本発明は、安定性に優れたsiRNAとシゾフィランとの核酸多糖複合体;該核酸多糖複合体を用いて標的遺伝子発現を抑制することにより樹状細胞等のDectin-1発現細胞の機能を制御し、優れた治療効果を得る方法;及び該方法に使用される医薬を提供することを主な目的とする。また、本発明は、免疫機能を調節する方法、及びそれに使用される医薬を提供することも主な目的とする。更に、本発明は、臓器移植における拒絶反応を抑制するための医薬を提供することも主な目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
1件

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請求項1

共刺激因子に対するsiRNAにポリデオキシアデニンを付加したポリヌクレオチドと、シゾフィランとの核酸多糖複合体を含む、移植治療における拒絶反応を抑制するための製剤。

請求項2

前記siRNAが21mer型であって、該siRNAのセンス鎖ホスホジエステル結合のうち少なくとも一部がホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンを付加したポリヌクレオチドが付加されている、請求項1に記載の製剤。

請求項3

前記ポリデオキシアデニンのホスホジエステル結合のうち少なくとも50%以上がホスホロチオエート化されている、請求項1または2に記載の製剤。

請求項4

前記共刺激因子が、Dectin-1発現細胞において発現している共刺激因子である、請求項1〜3のいずれかに記載の製剤。

請求項5

前記共刺激因子が、CD40、B7.1およびB7.2のいずれか一つである、請求項1〜4のいずれかに記載の製剤。

請求項6

前記共刺激因子が、CD40である、請求項1〜4のいずれかに記載の製剤。

請求項7

移植治療が、腎臓移植心臓移植移植、骨髄移植皮膚移植、または角膜移植である、請求項1〜6のいずれかに記載の製剤。

請求項8

共刺激因子に対するsiRNAにポリデオキシアデニンを付加したポリヌクレオチドと、シゾフィランとの核酸多糖複合体を、移植臓器または組織に対する拒絶の治療または予防が必要とされる動物投与する工程を含む、移植治療における拒絶反応の抑制方法

請求項9

共刺激因子に対するsiRNAにポリデオキシアデニンを付加したポリヌクレオチドと、シゾフィランとの核酸多糖複合体の、移植治療における拒絶反応を抑制するための製剤の製造のための使用。

技術分野

0001

本発明は、siRNAとシゾフィランとの安定性に優れた核酸多糖複合体に関する。また、本発明は、該核酸多糖複合体を用いて標的遺伝子発現を抑制することにより、樹状細胞等のDectin-1発現細胞の機能を制御し効果的な治療効果を得る方法、及び該方法に使用される医薬に関する。更に、本発明は、免疫調節を行う方法、及びそのために使用される医薬に関する。特に、本発明は共刺激因子に対するsiRNAとシゾフィランとの安定性に優れた核酸多糖複合体を用いた臓器移植における拒絶反応の抑制、アレルギー自己免疫疾患治療に使用される医薬等に関する。

背景技術

0002

1998年に発見されたRNA干渉(RNAi)、その効果の大きさや持続性が従来のアンチセンス法に比較して顕著に優れており、画期的な遺伝子発現阻害方法であることから医薬応用が期待されてきた。しかしながら、RNAi活性を示す2本鎖RNA(すなわちsiRNA)は、投与から標的細胞に取り込まれる過程、もしくは細胞内で分解されることが多く、その活性本体であるRISC複合体を細胞内で形成することが困難であった。従って、優れた遺伝子発現阻害方法であるにも関わらず、十分な効果が得られないことから、いまだsiRNAを利用した医薬品は存在しない。

0003

未修飾のsiRNAは血中等に存在するヌクレアーゼにより分解され、標的細胞でRNAi効果を発揮するものは少ない。従って、ヌクレアーゼ耐性となるような様々な化学修飾をsiRNAに施すことが試みられてきた。それにもかかわらず、有効に細胞内に導入するには高い用量が必要であった。また、2本鎖ヌクレオチドを高用量で生体に投与すると、自然免疫反応を高めることから、意図しない免疫賦活反応の効果が現われることが知られている。従って標的細胞内に特異的にsiRNAを導入するデリバリー技術が必要である。siRNAのデリバリー技術としては、リポソーム高分子ナノミセル等、siRNAを包埋する技術が開発されてきた。しかしながら、依然として標的性としてはパッシブターゲティングの域を超えず、これを克服するために例えば標的細胞と結合する分子をsiRNAの製剤に付与するなどの工夫が必要とされている。

0004

このような背景から、ポジティブターゲティングや当該標的細胞内において有意にRNAi活性を示すsiRNAのデリバリー技術が求められていた。そこで、siRNAの樹状細胞へのデリバリー方法として、シゾフィランとsiRNAにポリデオキシアデニンが付加したものの複合体(特許文献1を参照)が提案されている。しかしながら、特許文献1の技術では、必ずしも満足な治療効果を得ることができなかった。

0005

一方、これまでに、ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンは、シゾフィランと安定な複合体を形成できることが報告されている(非特許文献1を参照)。しかしながら、ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンを付加したsiRNAとシゾフィランの複合体では、次の理由から、有効なRNA干渉効果を奏し得ないと考えられている。ポリデオキシアデニンが付加されたsiRNAとシゾフィランの複合体において、ポリデオキシアデニンとシゾフィランの複合部分は、RISC複合体を形成する上で立体障害となる。そのため、ポリデオキシアデニンが付加されたsiRNAとシゾフィランの複合体は、細胞内でRISC複合体を形成する前に、シゾフィランとの複合体形成部分が取り除かれる必要があるが、ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンとシゾフィランは、顕著に高い安定性を備えており、細胞内で除去され難くなっている。その上、ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンは酵素による切断を受け難いため、ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンが付加されたsiRNA(特に、ダイサーによる作用を受けない21mer型のsiRNA)は、シゾフィランとの複合体形成部分が除去され難くなっている。そのため、ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンを付加したsiRNA(特に21mer型のsiRNA)とシゾフィランの複合体は、細胞内で、ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンとシゾフィランをsiRNAから遊離させることができず、RISC複合体を形成し難くなると考えられている。
そのため、RNA干渉効果を有効に奏させるという技術的観点からは、ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンを付加したsiRNA(特に21mer型のsiRNA)とシゾフィランの複合体は採用し得ないと考えられているのが現状である。

0006

Bull. Chem. Soc. Jpn., 77, 1101-1110 (2004)

先行技術

0007

WO2009/078470公報

発明が解決しようとする課題

0008

本発明は、安定性に優れたsiRNAとシゾフィランとの核酸多糖複合体;該核酸多糖複合体を用いて標的遺伝子の発現を抑制することにより樹状細胞等のDectin-1発現細胞の機能を制御し、優れた治療効果を得る方法;及び該方法に使用される医薬を提供することを主な目的とする。また、本発明は、免疫機能を調節する方法、及びそれに使用される医薬を提供することも主な目的とする。更に、本発明は、臓器移植における拒絶反応を抑制するための医薬を提供することも主な目的とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに、siRNAにポリデオキシアデニンのホスホジエステル結合部分の少なくとも一部がホスホロチオエート化されたものを付加し、シゾフィランと複合体を形成させると、安定性に優れ、シゾフィランを特異的に認識するDectin-1発現細胞にデリバリーされてDectin-1発現細胞の機能を調節し、目的の治療効果等が得られることを見出した。更に、本発明者らは、Dectin-1発現細胞が担う生体内機能に影響を及ぼす遺伝子に対するsiRNAにポリデオキシアデニンを付加し、シゾフィランと複合体を形成させた核酸多糖複合体は、生体内の免疫を調節でき、予防的又は治療的に免疫抑制誘導し得ることをも見出した。実際に、CD40に対するsiRNAを用いた心移植モデルにおいて、非常に優れた効果を示すことを見出した。更に、本発明者らは、センス鎖にホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンが付加された21mer型のsiRNAとシゾフィランを複合化させた核酸多糖複合体は、アンチセンス鎖をRISC複合体に取り込ませることによって、RNA干渉効果を有効に奏させ得ることをも見出した。本発明は、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、完成されたものである。

0010

本発明は、以下の核酸多糖複合体、及び当該核酸多糖複合体の製造方法等を提供するものである。
項1.共刺激因子に対するsiRNAにポリデオキシアデニンを付加したポリヌクレオチドと、シゾフィランとの核酸多糖複合体を含む、移植治療における拒絶反応を抑制するための製剤。
項2. 前記siRNAが21mer型であって、該siRNAのセンス鎖にホスホジエステル結合のうち少なくとも一部がホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンを付加したポリヌクレオチドが付加されている、項1に記載の製剤。
項3.前記ポリデオキシアデニンのホスホジエステル結合のうち少なくとも50%以上がホスホロチオエート化されている、項1または2に記載の製剤。
項4.前記共刺激因子が、Dectin-1発現細胞において発現している共刺激因子である、項1〜3のいずれかに記載の製剤。
項5.前記共刺激因子が、CD40、B7.1およびB7.2のいずれか一つである、項1〜4のいずれかに記載の製剤。
項6.前記共刺激因子が、CD40である、項1〜4のいずれかに記載の製剤。
項7.移植治療が、腎臓移植心臓移植移植、骨髄移植皮膚移植、または角膜移植である、項1〜6のいずれかに記載の製剤。
項8.共刺激因子に対するsiRNAにポリデオキシアデニンを付加したポリヌクレオチドと、シゾフィランとの核酸多糖複合体を、移植臓器または組織に対する拒絶の治療または予防が必要とされる動物に投与する工程を含む、移植治療における拒絶反応の抑制方法
項9.共刺激因子に対するsiRNAにポリデオキシアデニンを付加したポリヌクレオチドと、シゾフィランとの核酸多糖複合体の、移植治療における拒絶反応を抑制するための製剤の製造のための使用。
項10.標的遺伝子に対するsiRNAに、ホスホジエステル結合のうち少なくとも一部がホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンを付加したポリヌクレオチドとシゾフィランとの核酸多糖複合体。
項11.前記siRNAが21mer型であって、該siRNAのセンス鎖にホスホジエステル結合のうち少なくとも一部がホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンを付加したポリヌクレオチドが付加されている、項10に記載の核酸多糖複合体。
項12.前記ポリデオキシアデニンのヌクレオチド数が、30〜50である、項10又は11に記載の核酸多糖複合体。
項13.前記ポリデオキシアデニンのホスホジエステル結合のうち少なくとも50%以上がホスホロチオエート化されている、項10〜12のいずれかに記載の核酸多糖複合体。
項14.前記標的遺伝子が、Dectin-1発現細胞において発現している遺伝子である、項10〜13のいずれかに記載の核酸多糖複合体。
項15.前記標的遺伝子が、Dectin-1発現細胞において発現している共刺激因子である、項10〜14のいずれかに記載の核酸多糖複合体。
項16.前記共刺激因子が、CD40遺伝子である、項15に記載の核酸多糖複合体。
項17.項10〜16のいずれかに記載の核酸多糖複合体を含む医薬組成物
項18.項1〜6のいずれかに記載の核酸多糖複合体を含むDectin-1発現細胞の機能調節剤
項19.前記Dectin-1発現細胞の機能が免疫調節機能である、項18に記載の機能調節剤。
項20.項10〜16のいずれかに記載の核酸多糖複合体を含む免疫調節剤
項21.Dectin-1発現細胞が担う生体内機能に影響を及ぼす遺伝子に対するsiRNAにホスホジエステル結合のうち少なくとも一部がホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンを付加したポリヌクレオチドと、シゾフィランとの核酸多糖複合体を、Dctin-1を発現する細胞に接触させる工程を含む、Dectin-1発現細胞の機能調節方法。
項22.前記Dectin-1発現細胞の機能調節が免疫調節である、項21に記載の方法。
項23.Dectin-1発現細胞が担う生体内機能に影響を及ぼす遺伝子に対するsiRNAにホスホジエステル結合のうち少なくとも一部がホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンを付加したポリヌクレオチドと、シゾフィランとの核酸多糖複合体を、免疫機能の調節を必要とする動物に投与することを特徴とする、免疫機能の調節方法
項24.Dectin-1発現細胞が担う生体内機能に影響を及ぼす遺伝子に対するsiRNAにホスホジエステル結合のうち少なくとも一部がホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンを付加したポリヌクレオチドと、シゾフィランとの核酸多糖複合体の、免疫機能調節剤の製造のための使用。

発明の効果

0011

本発明によれば、標的細胞に効果的にsiRNAを導入してRNAi活性を誘導することができ、標的細胞の機能を調節することにより標的細胞に関連する疾患を治療することができる。さらに、本発明の核酸多糖複合体を利用して、低用量のsiRNA医薬で免疫抑制を誘導することに基づく治療方法を提供することも可能である。特に、本発明の核酸多糖複合体を利用することにより、移植治療における拒絶反応を効果的に抑制することができる。

図面の簡単な説明

0012

実施例4の結果、即ち、S化poly(dA)が連結されたsiRNAはDicerに切断されなくてもRNA干渉効果が得られることを示す図である。
実施例8の結果、即ち、アロ反応による増殖の抑制率を示す図である。
実施例8の結果、即ち、dA40(s)-siCD40(27nt)/SPG複合体と共存させたCD11c陽性細胞は、前培養MLRにおいて免疫抑制を誘導することを示す図である。
実施例9の(9-B)の結果、即ち、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体が、ex vivo MLRにおいてリンパ球の活性化を有意に抑制したことを示す図である。
実施例10の結果、即ち、Alexa647標識dA40(s)-siLuc(21nt)/SPG複合体で処理したHEK293T細胞及びdHEK細胞を観察した像を示す。
実施例10の結果を示す。即ち、Alexa647標識dA40(s)-siLuc(21nt)/SPG複合体で処理したHEK293T細胞及びdHEK細胞について、当該複合体の取り込み量(Alexa647の蛍光強度)(図6のA)及び細胞表面のDectin-1発現量(FITCの蛍光強度)(図6のB)を測定した結果を示す図である。
実施例11の(11-A)の結果、即ち、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体の投与によって、リンパ球の活性化を有意に抑制したことを示す図である。
実施例11の(11-B)の結果、即ち、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体の投与によって、リンパ球の活性化を有意に抑制したことを示す図である。
実施例13の結果、即ち、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体を投与した異所心移植モデルマウスにおいて、移植心臓拍動が長期に亘って正常であり、移植後の生存率も高いことを示す図である。

0013

1.ホスホロチオエート化されていてもよいポリデオキシアデニンを含むsiRNAとシゾフィランとを含む核酸多糖複合体、及びその用途
本発明の核酸多糖複合体は、標的遺伝子に対するsiRNAを構成するセンス鎖又はアンチセンス鎖の少なくとも1つの末端に、ポリデオキシアデニンテイルが付加され、当該ポリデオキシアデニンの1本鎖とシゾフィランの2本鎖により三重螺旋を形成している。また、本発明においては、前記ポリデオキシアデニンテイルにおいて、ホスホジエステル結合の少なくとも1部がホスホロチオエート化されていてもよい。

0014

本発明の複合体は、RNA干渉効果を担う部分として、標的遺伝子中標的配列に一致する塩基配列からなるsiRNAを含む。ここで、siRNAは、当該標的配列に対して100%一致する配列であるか、所望のRNA干渉効果が得られる限り1又は数個塩基置換・付加されていてもよい。

0015

ここで、標的遺伝子とは、RNA干渉効果によって遺伝子発現の抑制対象となる遺伝子である。本発明の複合体において、標的遺伝子については、特に制限されず、該核酸多糖複合体の用途に基づいて適宜選択することができる。

0016

本発明における標的遺伝子としては、特に制限されるものではないが、医薬用途への使用という観点からは、病態関与しており、その発現抑制が望まれている遺伝子が好適である。当該標的遺伝子の具体例としては、(a)外部からの刺激などを通じてその転写産物を過剰に産生することによって病態の発症または症状の悪化に関与する因子をコードする遺伝子、(b)標的遺伝子が変異した部位を有し、その転写産物が直接疾患の発症に関与する因子をコードする遺伝子が挙げられる。

0017

上記標的遺伝子としては、例えば、TNFα、インターロイキンMIF等のサイトカイン等の炎症を誘導する因子をコードする遺伝子が挙げられる。

0018

また、(a)の標的遺伝子には、細胞内活性のオンオフを左右する因子をコードする遺伝子が包含される。このような遺伝子としては、プロテインキナーゼ(例えば、Raf、MEK、Jaks等)、転写因子(例えばStats等)等が挙げられる。

0019

さらに、(a)の標的遺伝子としては、標的遺伝子が、細胞表面受容体をコードするものであり、且つ該細胞表面受容体により病体が発症または悪化に作用する因子をコードするものである場合も包含される。このような遺伝子としては、TNFR(腫瘍壊死因子受容体)、PDGFR血小板由来成長因子受容体)、インターロイキン受容体等をコードする遺伝子が挙げられる。

0020

(b)の標的遺伝子としては、当該標的遺伝子が変異した部位を有することによって、その転写産物が正常な細胞の機能を喪失させるか、または細胞毒性を有する物質となって蓄積して、炎症や細胞死などの病態の発症・悪化を誘導する因子をコードする遺伝子を指す。このような遺伝子としては、Jak2変異V617F、ATN1変異CAGリピートTTR変異V30M、KT14変異R125C等が挙げられる。

0021

本発明において、好ましくはDectin-1発現細胞において発現される遺伝子であって、当該細胞が担う生体内機能に影響を及ぼすものを標的遺伝子とする。Dectin-1とは、細胞膜上に存在するC型レプチンタイプの糖鎖認識ドメインを有する受容体(Pattern Recognition Receptor)である。Dectin-1は、細胞外にβ-1,3-グルカンを特異的に認識する領域を有し、細胞内にITAM(immunoreceptor tyrosinase-based activation motif-1)と呼ばれる活性化シグナルを伝えるモチーフを持つ。Dectin-1はβ-1,3-グルカンを認識すると、NF-κBや炎症性サイトカインの産生を促し、生体防御反応惹起する。本発明においてDectin-1発現細胞とは、マクロファージ、樹状細胞、好中球等を挙げることができる。シゾフィランはβ-1,3-グルカン骨格を有しており、Dectin-1発現細胞の細胞膜に存在するDectin-1と結合することによって誘導されるシグナルを通じ、Dectin-1発現細部内に送達されることが知られている。本発明の核酸多糖複合体は、その構成成分であるシゾフィランがDectin-1に認識されることにより、Dectin-1発現細胞内に送達される。また、本発明の核酸多糖複合体に含まれるsiRNAとして、Dectin-1発現細胞が担う生体内機能に影響を及ぼす遺伝子を標的とするものを選択することにより、生体内の免疫抑制を誘導して、免疫を調節することが可能になる。

0022

Dectin-1発現細胞において発現され、当該細胞が担う生体内機能に影響を及ぼす遺伝子を標的遺伝子にする場合、その遺伝子の種類は特に制限されず、複合体の用途に基づいて適宜選択することができるが、例えば、CD40、B7.1 (CD80)、B7.2(CD86)、CCR7、CCL21、DC-SIGN、IL-6、IL-12、IL-15、IL-18、IFN-α、IFN-γ等が挙げられる。また、当該遺伝子には、signal cascadeを担うタンパク質をコードする遺伝子も含まれる。これらの遺伝子の中でも、生体内の免疫調節、とりわけ免疫抑制をより有効に誘導するとの観点から、好適な標的遺伝子として、CD40、B7.1(CD80)及びB7.2(CD86)等の共刺激因子(共刺激分子ともいう)をコードする遺伝子をはじめとする抗原提示に関連する遺伝子等が挙げられる。とりわけ、本発明の核酸多糖複合体において、上記共刺激因子をコードする遺伝子に対するsiRNAを使用することにより、臓器移植における拒絶反応を効果的に抑制することができる。

0023

本発明の核酸多糖複合体を構成するsiRNAの好適な態様の一例として、前記センス鎖RNA及び前記アンチセンス鎖が共に21個のリボヌクレオチドから構成されており、且つ前記センス鎖RNAの5’末端及び前記アンチセンス鎖RNAの5’末端に2個のリボヌクレオチドからなるダングリングエンドが形成されているものが挙げられる。即ち、このような2本鎖RNAの場合には、前記アンチセンス鎖RNAの3’末端側から1〜19個目のリボヌクレオチド配列は、前記センス鎖RNAの5’末端側から3〜21番目のリボヌクレオチドに相補的な配列である。このような21merのsiRNAを本明細書において21mer型siRNAとも呼ぶ。21mer型siRNAはダイサーに切断されない。本明細書において21mer型siRNAは、ダイサーにより切断されないでRNAi効果を奏するsiRNAをいう。21mer型siRNAにおいて、センス鎖にホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンが付加されいる場合には、本発明の核酸多糖複合体は、アンチセンス鎖をRISC複合体に取り込ませることによって、RNA干渉効果を有効に奏させることができる。

0024

本発明において、前記2本鎖RNAに対する前記1本鎖dAの結合本数が1であり、且つ前記1本鎖dAが前記センス鎖の5’末端に結合しているものが好適である。このように、前記センス鎖の5’末端に対してのみ前記1本鎖dAが結合している場合には、2本鎖RNAに基づく、RNA干渉効果を顕著ならしめることができる。

0025

また、21mer型siRNAの場合には、センス鎖/アンチセンス鎖、5’末端/3’末端のいずれに1本鎖ポリデオキシアデニンが結合していてもよく、特にセンス鎖の5'末端に結合している場合には、優れたRNA干渉効果を発揮することができる。

0026

前記1本鎖ポリデオキシアデニンを構成するデオキシアデニンの数としては、後述するシゾフィランとの複合体形成が可能であることを限度として、特に限定されるものではないが、例えば、10〜100個、好ましくは20〜100個、より好ましくは20〜80個、更に好ましくは30〜50個が挙げられる。

0027

本発明の核酸多糖複合体において、siRNAとシゾフィランの複合化を担う部位(すなわちポリデオキシアデニン(dA)テイル部分)のホスホジエステル結合は、少なくとも一部がホスホロチオエート化(S化)されていることが望ましい。本明細書において、dAテイル(ポリデオキシアデニン)部分のS化率とは、dAテイル中のホスホジエステル結合の総数に対して、S化されているホスホジエステル結合の割合(%)を示す。また、S化されているホスホジエステル結合とは、ホスホジエステル結合部分のリン酸残基酸素原子の一つが硫黄原子に置換されている結合構造を示す。

0028

ポリデオキシアデニンのS化は、従来公知の方法に従って行うことができる。dAテイル部分におけるS化の分布は特に限定されず、任意の位置に所望のS化を行えばよい。S化されたdAテイル部分は、シゾフィランと良好な複合体を形成し、このようにして得られる核酸多糖複合体は高い分解酵素耐性を有する。dAテイル部分のS化率としては、通常50%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%である。

0029

前記1本鎖ポリデオキシアデニンは、前記2本鎖RNAのセンス鎖RNA及び/又はアンチセンス鎖RNAの末端リボヌクレオチドに直接結合していてもよいが、リンカースペーサー)を介して結合していてもよい。

0030

本発明の核酸多糖複合体には、RNA干渉効果以外の所望の機能を担う部分として、シゾフィランを含む。シゾフィランは、β-1,3-グルカン骨格を有する多糖であり、前述の細胞表面に存在する受容体、Dctin-1と結合することによって誘導されるシグナルを通じ、細部内に送達される。

0031

本発明の核酸多糖複合体の構成成分であるシゾフィラン(SPGと略記することがある)は、文献(A.C.S.38(1),253(1997);Carbohydrate Research, 89, 121-135(1981))記載の定法に従って製造することができる。このようにして得られたシゾフィランは、超音波処理により所望の分子量のシゾフィランを得ることができる。

0032

SPGに機能性分子を結合させる場合、機能性分子の結合割合としては、例えば、SPGの側鎖100個当たり、機能性分子が1〜200個、好ましくは1〜100個、特に好ましくは1〜50個が例示される。このような機能性分子の結合割合は、上記製造法において、分枝グルコース残基に対する過ヨウ素酸ナトリウム等の酸化剤の添加量を制御することにより調整できる。
また、SPGへの機能性分子の結合部位や当該機能性分子を連結させるリンカーを結合する部位については、特に限定されるものではないが、SPGのβ-1,3-グルカンの主鎖から分枝された1,6-グルコピラノシド結合を持つグルコースの1,2-ジオール部位と置換されて結合していることが好ましい。

0033

本発明の核酸多糖複合体に使用されるシゾフィランの分子量については、特に制限されず、前述のdAテイルの鎖長等に応じて適宜設定すればよい。具体的には、シゾフィランの分子量として、通常25,000〜500,000、好ましくは25,000〜250,000が例示される。

0034

本発明の核酸多糖複合体は、公知の方法に従って調製することができる。具体的には、以下の(1)〜(3)の工程で製造する方法が例示される:(1)前記1本鎖dAテイルが直接又はリンカーを介して結合したポリヌクレオチド結合2本鎖RNAを公知の方法に従って調製する、(2)また、別途、SPGを用意する、或いは機能性分子が直接又はリンカーを介して結合しているSPG(修飾型SPG)を調製する、(3)次いで、DNA結合2本鎖RNAに結合した1本鎖dAテイルと前記SPG又は前記修飾型SPGとを用いて複合体を形成させる。

0035

前記方法の(3)の工程において、前記ポリヌクレオチド結合2本鎖RNAと、前記SPG又は前記修飾型SPGとの混合比は、dAテイルの鎖長や前記SPG又は前記修飾型SPGの鎖長に応じて適宜選択することができる。本発明の核酸多糖複合体は、dAテイルのアデニン1分子に対してSPGの主鎖のグルコース1分子が対応して、dAテイル1本とSPG2本が3重らせん構造を取る。すなわち、本発明の核酸多糖複合体では、2本のSPGで形成された2重らせん構造の1カ所又は2カ所以上にdAテイルが取り込まれて3重らせん構造が形成されている。例えば、40merのdAテイルを付加したsiRNAと分子量150000のSPGであれば、分子量150000のSPG2分子に40merのdAを付加したsiRNAを17分子含んで3重らせん構造を取ることができる。dAテイルを付加したsiRNAとSPGの好ましいモル比としては、20:1〜1:5、好ましくは10:1〜1:1で混合し、前記ポリヌクレオチド結合2本鎖RNAの1本鎖ポリデオキシアデニン領域と前記SPG又は前記修飾型SPGを複合化させることが好ましい。このようなモル比で、前記siRNAと、前記SPG又は前記修飾型SPGとを複合体形成条件下に晒すことにより、両者を効率的に相互作用させることが可能になり、本発明の核酸多糖複合体の製造効率を向上させることができる。

0036

本発明の核酸多糖複合体の3重鎖螺旋構造の形成は、具体的には以下の方法に従って実施できる。SPGは、天然若しくは水中では、3重螺旋構造をとっている。このSPGを、DMSO(ジメチルスルホオキシド)等の極性溶媒水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液に溶解して1本鎖に変性させた後、dAテイルを付加したsiRNAを加え、溶媒を水に戻すことまたはアルカリ水溶液を中和すること(再生過程)によって、2本鎖RNAに連結したポリヌクレオチド1本鎖部分と2本のSPGからなる、3重螺旋型に複合化された構造(会合構造)が形成される。このようなポリヌクレオチドと多糖の複合化は、主に、水素結合疎水性相互作用を介して形成されると考えられる。

0037

本発明の核酸多糖複合体は、細胞内に導入されることにより、細胞内での標的遺伝子の発現を抑制することができるので、標的遺伝子の発現抑制を目的とした医薬組成物として使用できる。当該医薬組成物は、有効成分として本発明の核酸多糖複合体を治療有効量含有させ、更に薬学的に許容される担体を適宜組み合わせて調製することができる。このような担体としては、精製水糖含有水溶液緩衝液生理食塩水、ヌクレアーゼフリーの水等の水性担体賦形剤等が挙げられる。

0038

核酸多糖複合体(またはそのフラグメント)の投与経路は、経口、非経口静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸内、内投与を含む)、吸入全身投与局所投与(皮膚や頬面窩洞への外用;眼、等の実質的に血流侵入しない部位への点滴注入を含む)等、患者の症状、病態、疾患の種類等に基づいて従来利用されている方法から適宜選択することができる。

0039

本発明の核酸多糖複合体は、Dectin-1発現細胞に特異的に取り込まれることから、siRNAの標的遺伝子をDectin-1発現細胞が担う生体内機能に影響を及ぼす遺伝子に設定することにより、Dectin-1発現細胞の機能調節剤の有効成分として用いることもできる。前述のように、Dectin-1発現細胞は、マクロファージ、樹状細胞、好中球等の免疫機能に関与する細胞であり、前記機能調節剤は、すなわち免疫機能調節剤としての働きが期待される。さらに、本発明は、本発明の核酸多糖複合体を有効成分として含有する免疫調節剤をも提供するものである。これらの製剤に含まれる各種担体、製剤の投与経路等は、上述の通りである。

0040

特に、本発明の核酸多糖複合体を免疫調節(特に、免疫抑制)の目的として使用する場合、前述の共刺激因子(共刺激分子ともいう)をコードする遺伝子を標的遺伝子とする。共刺激因子は、対応する補助刺激分子インテグリンリガンド)と共に、補助刺激経路を構成し、生体防御のためのシグナル伝達を行うと共に、抗原提示細胞Tリンパ球との間の細胞内接着性強化する機能を有する。本発明において好適な共刺激因子の具体例としてはCD40が挙げられる。CD40は分子量50kDaの細胞膜表面に存在する抗原であり、Dectin-1を発現する細胞において発現している。CD40は、B細胞や樹状細胞の増殖、分化に重要な働きをしていることが知られている。CD40は、ヒトB細胞表面に発現する抗原として同定され、アミノ酸配列相同性からTNFレセプターファミリーに属すると考えられている。

0041

本発明の核酸多糖複合体の用途において、例えば免疫抑制を誘発する能力については、混合リンパ球反応試験(mixed lymphocyte reaction:MLR)又はチミジン若しくはBrdU(ブロモデオキシウリジン)の取り込みにより測定されるT細胞増殖の抑制を測定する試験で確認することができる。

0042

本発明の核酸多糖複合体は、標的遺伝子を適時選択することにより、移植臓器または組織(たとえば、腎臓、心臓、肺、骨髄、皮膚、角膜など)に対する抵抗または拒絶の治療または予防;自己免疫疾患、炎症疾患増殖性および過増殖性疾患、および免疫学的媒体された疾患の皮膚症状(例えば、慢性関節リウマチエリテマトーデス全身性エリテマトーデス橋本甲状腺炎多発性硬化症重症筋無力症1型糖尿病、ぶどう膜炎、ネフローゼ症候群乾癬アトピー性皮膚炎接触皮膚炎湿疹性皮膚炎脂漏性皮膚炎偏平せん、天疱瘡水泡性天疱瘡、表皮水泡症、蕁麻疹、血管浮腫脈管炎紅斑、皮膚好酸球増加症円形脱毛症等)の治療または予防;可逆性閉塞性気道疾患(reversible obstructive airways disease)、胃腸炎症、アレルギー(例えば、炎症性胆汁疾患、小児脂肪便症直腸炎好酸球増加性胃腸炎、肥満細胞症クローン病および潰瘍性大腸炎)、食物関連アレルギー(例えば、偏頭痛鼻炎および湿疹)および他のタイプのアレルギーの治療のために使用することができる。当業者であれば日常的な実験により、免疫抑制を誘発するために本発明の核酸多糖複合体の有効かつ非毒性の量を決定することが可能であり、特に限定されないが、例えばsiCD40/SPG複合体を用いる場合の有効投与量は、通常、1日当たり体重1kg当たり約0.001〜10mgの範囲から選択することができる。

0043

さらに、本発明は、上述の核酸多糖複合体を標的細胞に接触させる工程を含む、核酸多糖複合体を標的細胞に導入する方法を提供する。本発明の核酸多糖複合体の細胞内への導入量や方法は、従来のsiRNAの場合と同様である。なお、本発明の核酸多糖複合体は、単独でも優れた細胞内移行能を示すので、siRNAの細胞内への導入に使用されている従来の遺伝子導入試薬を用いずに、或いは従来の遺伝子導入試薬の使用量を低減して、細胞内に導入することも可能である。なお、本発明の核酸多糖複合体の標的遺伝子の発現抑制は、in vivoで行ってもよく、またin vitro又はex vivoで行うこともできる。

0044

また、本発明は、細胞内で標的遺伝子の発現を抑制するための上記核酸多糖複合体の使用、及び標的遺伝子の発現抑制剤の製造のための上記核酸多糖複合体の使用をも提供する。更に、本発明は、上記核酸多糖複合体を、標的遺伝子を含む細胞に接触させる工程を含む、標的遺伝子の発現抑制方法を提供する。これらの使用及び方法において、核酸多糖複合体、その使用方法等については上述の通りである。

0045

2.免疫機能調節剤
本発明は、更に、Dectin-1発現細胞が担う生体内機能に影響を及ぼす遺伝子に対するsiRNAにポリデオキシアデニンを付加したポリヌクレオチドと、シゾフィランとの核酸多糖複合体を有効成分として含有する免疫機能調節剤を提供する。

0046

本免疫機能調節剤において、siRNAの標的遺伝子は、Dectin-1発現細胞において発現しており、Dectin-1発現細胞が担う生体内機能に影響を及ぼす遺伝子であり、好ましくはDectin-1発現細胞の抗原提示に関連する遺伝子、更に好ましくは共刺激因子をコードする遺伝子、特に好ましくはCD40をコードする遺伝子が挙げられる。これらの遺伝子を標的とするsiRNAを使用することにより、生体内の免疫抑制を誘導して、免疫機能を調節することが可能になる。

0047

本免疫機能調節剤では、siRNAに付加されているポリデオキシアデニンは、ホスホジエステル結合は、少なくとも一部がホスホロチオエート化されているものが使用される。ポリデオキシアデニンのS化率については、前記「1.ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンを含むsiRNAとシゾフィランとを含む核酸多糖複合体、及びその用途」の欄に記載の通りである。

0048

また、本免疫機能調節剤で使用される核酸多糖複合体において、siRNAの構造、ポリデオキシアデニンを構成するデオキシアデニンの数、siRNAとポリデオキシアデニンの結合様式、シゾフィランの構造等についても、前記「1.ホスホロチオエート化されていてもよいポリデオキシアデニンを含むsiRNAとシゾフィランとを含む核酸多糖複合体、及びその用途」の欄に記載の通りである。

0049

本免疫機能調節剤は、上記核酸多糖複合体と共に、薬学的に許容される担体を適宜組み合わせて免疫調節用の医薬組成物として調製される。本免疫機能調節剤に含まれる担体の種類についても、前記「1.ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンを含むsiRNAとシゾフィランとを含む核酸多糖複合体、及びその用途」の欄に記載の通りである。

0050

本免疫機能調節剤は、免疫機能の調節を必要とする動物(ヒトを含む)に投与することにより、該動物中のDectin-1発現細胞に上記核酸多糖複合体を接触させ、該細胞内の標的遺伝子の発現を抑制して、該動物の免疫機能を調節することを可能にする。ここで、免疫機能の調節としては、具体的には、免疫抑制が挙げられる。本免疫機能調節剤では、例えば、標的遺伝子として共刺激因子であるCD40、B7.1またはB7.2が好ましい。免疫抑制を必要とする動物の具体例として、移植臓器または組織(たとえば、腎臓、心臓、肺、骨髄、皮膚、角膜など)に対する抵抗または拒絶の治療または予防が必要とされる動物;自己免疫疾患、炎症疾患、増殖性または過増殖性疾患、あるいは免疫学的に媒体された疾患の皮膚症状(例えば、慢性関節リウマチ、エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、1型糖尿病、ぶどう膜炎、ネフローゼ症候群、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、偏平苔せん、天疱瘡、水泡性天疱瘡、表皮水泡症、蕁麻疹、血管浮腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、円形脱毛症等)の治療または予防が必要とされる動物;可逆性閉塞性気道疾患(reversible obstructive airways disease)、胃腸炎症、アレルギー(例えば、炎症性胆汁疾患、小児脂肪便症、直腸炎、好酸球増加性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病または潰瘍性大腸炎)、食物関連アレルギー(例えば、偏頭痛、鼻炎または湿疹)または他のタイプのアレルギーの治療が必要とされる動物等が例示される。これらの免疫抑制を達成するためには、本免疫調節剤と免疫抑制を必要とする抗原と投与することが好ましい。例えば、移植臓器または組織(例えば、腎臓、心臓、肺、骨髄、皮膚、角膜など)に対する抵抗または拒絶の治療または予防が必要とされる動物に関しては、移植臓器または組織のドナーおよびレシピエントに移植の前、又は後もしくは前後に投与する。自己免疫疾患やアレルギーの治療に関しては、その原因の抗原とともに投与するのが望ましい。

0051

本免疫調節剤のうち、共刺激因子を標的とするものについては、樹状細胞等の抗原提示細胞特異的に共刺激因子の発現を抑制し、抗原特異的に免疫抑制を誘導することができ、共刺激因子を発現する抗原提示細胞以外の細胞に影響を与えないため、副作用が少なく、効率的な免疫抑制(特に、臓器移植における拒絶反応の抑制)が達成される。

0052

本免疫機能調節剤の投与方法、投与量等類については、前記「1.ホスホロチオエート化されたポリデオキシアデニンを含むsiRNAとシゾフィランとを含む核酸多糖複合体、及びその用途」の欄に記載の通りである。

0053

また、本発明は、免疫機能調節剤の製造のための上記核酸多糖複合体の使用をも提供する。更に、本発明は、上記核酸多糖複合体を、免疫機能の調節を必要とする動物に投与する工程を含む、免疫機能調節方法を提供する。また、本発明は、移植治療における拒絶反応を抑制するための製剤の製造のための上記核酸多糖複合体の使用をも提供する。更に、本発明は、上記核酸多糖複合体を、移植臓器または組織に対する拒絶の治療または予防が必要とされる動物に投与する工程を含む、移植治療における拒絶反応の抑制方法を提供する。これらの方法及び使用において、核酸多糖複合体、その使用方法等については上述の通りである。

0054

以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、本実施例において、シゾフィランを「SPG」と表記することがある。また、本実施例において、ルシフェラーゼに対するsiRNAを「siLuc」と表記し、CD40に対するsiRNAを「siCD40」と表記することもある。

0055

実施例1:SPGとsiRNAの核酸多糖複合体の形成
以下の実施例で用いた核酸多糖複合体は次のようにして形成した。分子量約15万のSPGを、0.25N水酸化ナトリウム水溶液に最終濃度15mg/ml になるように調製した後、1時間振動攪拌して4℃で1日静置し変性させた。330mMの第1リン酸ナトリウムに溶解させたS化poly(dA)を付加したsiRNAの溶液を、この変性SPG溶液に加えて中和し4℃で24時間以上静置した。この時、siRNA 1モルに対してSPGが0.27モルとなるようにした。なお、S化poly(dA)を付加したsiRNAは、siRNAのセンス鎖5’末端にホスホロチオエート化された40個のデオキシアデニンが、リン酸エステル結合によって連結されたものである。以下の実施例において、S化poly(dA)をdA40(s)と略記することがある。また、以下の実施例で使用されるS化ポリデオキシアデニンのS化率はいずれも100%である。

0056

実施例2: S化poly(dA)を付加したsiRNAとSPGとの核酸多糖複合体の細胞培養培地中での安定性
表1に記載の条件になるように、試料リン酸緩衝液PBS)もしくは細胞培養培地(10%FBS+RPMI(FBS;バイオロジカルインダストリー社 Cat# 04-001-1A、RPMI;和光純薬工業社Cat# 189-02025))を加え調製した。その試料を37℃で4時間もしくは24時間インキュベートした後、12.5%ポリアクリルアミドゲル(Tris-ホウ酸-EDTA(TBE))を用いて100ボルト、60分の条件で電気泳動を行い、SYBRGold(ライフテクノロジージャパン社)で染色した。

0057

表1中、dA40(s)- siLuc(21nt)は、ルシフェラーゼに対する21merのsiRNA(配列番号1)にホスホチオエート化した40merのポリデオキシアデニンがセンス鎖の5’末端に付加したものを表す。dA40(s)-siLuc(27nt)は、ルシフェラーゼに対する27merのsiRNA(配列番号3)にホスホチオエート化した40merのポリデオキシアデニンがセンス鎖の5’末端に付加したものを表す。

0058

0059

その結果、ホスホチオエート化した40merのpoly(dA)を付加したsiRNAについて、分解酵素が存在する細胞培養培地でsiRNAとSPGが複合体を形成していないもの(レーン2及び5)は、対照のレーン1及び4の位置のバンドは薄く分解されるが、siRNAとSPGが複合体を形成したもの(レーン3、6、7)は、濃いバンドであり、核酸多糖複合体として安定であることが示された。なお、ホスホロチオエート化していないpoly(dA)を付加したsiRNAに比べ、ホスホチオエート化したものは、分解酵素が存在する細胞培養培地でより安定であった。

0060

実施例3:核酸多糖複合体のDicer感受性
(3-1)非S化dAテイル核酸多糖複合体のDicer感受性
本実施例においては、Recombinant human dicer enzymeキット(Genlantis社製:Cat# T510002)を使用した。また、下記組成(A〜E)のプレミックスを調製した。

0061

A.核酸試料: 2.5μl(25ng)
B. 10mMATP: 1μl
C. 50mM MgCl2 : 0.5μl
D. Dicer Reactionバッファー: 4μl
E. Recombinant Dicer Enzyme (1 Unit) : 2μl
PCRチューブに上記のB〜DもしくはB〜Eのサンプルを混合した後、Aの核酸試料を添加した。その後ヌクレアーゼフリーの蒸留水により最終容量を10μlに合わせた。その後、37℃にて15時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、反応停止液で反応を終了させた。15%ポリアクリルアミドゲル(Tris-borate-EDTA(TBE))を用いて150V、80分で電気泳動を行い、SYBR(r)Gold(ライフテクノロジーズジャパン社)で染色した。

0062

表2中のsiCD40(21nt)はCD40に対する21merのsiRNA(配列番号5及び6)を表す。dA40-siCD40(21nt)は、CD40に対する21merのsiRNA(配列番号5及び6)においてセンス鎖(配列番号5)の5’末端に40merのポリデオキシアデニンを付加したものを表す。siLuc21は、配列番号1及び2に示されるルシフェラーゼに対する21merのsiRNAを表す。dA40-siLuc(21nt)は、ルシフェラーゼに対する21merのsiRNA(配列番号1及び2)においてセンス鎖(配列番号1)の5’末端に40merのポリデオキシアデニンを付加したものを表す。

0063

0064

以上の結果より、電気泳動によるバンドの濃さはレーン2と3は同等の濃さであり、また、レーン6と7は同等の濃さであったので、poly(dA)-siRNA(21nt)はDicerによって切断されないが、一方、レーン10のバンドは、レーン9より薄く、poly(dA)-siRNA(27nt)はDicerによって切断されることが示された。

0065

(3-2)S化dAテイル核酸多糖複合体のDicer感受性
上記(3-1)と同様の方法により、S化されたdAテイルを有する核酸多糖複合体のDicer感受性を評価した。

0066

0067

表3中のsiLuc(21nt)は、ルシフェラーゼに対する21merのsiRNA(配列番号1及び2)を表す。siLuc(27nt)は、ルシフェラーゼに対する27merのsiRNA(配列番号3及び4)を表す。dA40(s)-siCD40(21nt)は、CD40に対する21merのsiRNA(配列番号5及び6)においてセンス鎖(配列番号5)の5’末端にホスホチオエート化した40merのポリデオキシアデニンを付加したものを表す。dA40(s)-siCD40(27nt)は、CD40に対する27merのsiRNA(配列番号7及び8)においてセンス鎖(配列番号7)の5’末端にホスホチオエート化した40merのポリデオキシアデニンを付加したものを表す。

0068

電気泳動の結果より、レーン6のバンドは対照のレーン4及びレーン5のバンドの濃さは同程度であり、S化されたポリdAを付加した場合でも21nt型siRNAはDicerによって切断されなかったが、一方、レーン12のバンドは、対照のレーン10およびレーン11のバンドより薄く、27nt型siRNAはDicerによって切断されることが示された。

0069

実施例4: poly(dA)が連結されたsiRNAのRNA干渉効果
Dual Luciferase発現ベクターpsiCHECKTM-2(プロメガ社 Cat# C8021)を、LipofectamineTMLTX(ライフテクノロジーズジャパン社 Cat# 15338-500)を用いHEK293細胞に導入した。この時、1ウェルあたりの細胞数を5万個となるよう揃えた。これに、dA40-siLuc (21nt)又はdA40-siLuc (27nt)を、TransITTM-TKO(タカラバイオ社、Cat# V2154)を用いて細胞に導入し、CO2インキュベーターで37℃、20時間インキュベーションをした。その後、Dual Luciferaseアッセイ(プロメガ社製, Dual-Glo Luciferase assay system , Cat# E2920)を行い、RNA干渉効果を測定した。コントロールとして、核酸試料を用いずに同様の操作を行った。RNA干渉効果は、コントロールにおける2つのルシフェラーゼの発現を比較し、その時のRNA干渉効果を0%とし、各試料における発現抑制の割合を%で表した。

0070

結果を図1に示す。poly(dA)が連結された21merのdA40-siLuc (21nt)はDicerに切断されなくても、27merのdA40-siLuc(27nt)と同様のRNA干渉効果活性が得られることが示された。

0071

実施例5:S化poly(dA)が連結されたsiRNA/SPG複合体のRNA干渉効果
ホスホロチオエート化poly(dA)を有するキメラsiRNAとSPGの複合体を用いたRNA干渉効果を、Dual Luciferaseアッセイ(プロメガ社製、Dual-Glo Luciferase assay system, Cat# E2920)を用いて評価した。細胞はDectin-1を強く発現するRAW264.7細胞(dRAW細胞)(東京薬科大学薬学部免疫学安達禎之准教授より入手)を使用した。使用した試料は、下表4に示す通りである。下表3において試料4は、TransITTM-TKO(タカラバイオ社、Cat# V2154)を用いてdA40(s)-siLuc(21nt)を導入したものである。

0072

結果を下表4に併せて示す。

0073

0074

表5より、poly(dA)(s)-siRNA/SPG複合体でRNA干渉効果が得られることが示された。

0075

実施例6:
poly(dA)(s)-siRNA複合体によるRNA干渉効果の用量依存
本実施例においては、siRNA活性の用量依存性を確認した。細胞は、10%血清培養において増殖性を示すdRAW 細胞を用いた。本実施例で使用した試料は下表5に示される。

0076

本実施例は下記手順に従って行った。
dRAW細胞を回収し、48ウェルプレートに20000細胞/ウェル/200μlになるように播種して、37℃のCO2インキュベーターで20時間インキュベーションを行った。psiCHECKTM-2/LTX複合体を20μl/ウェル、培地を180μl/ウェルで混合し、48ウェルプレートに添加した。その後、Dual Lucアッセイ(プロメガ社製, Dual-Glo Luciferase assay system, Cat#: E2920)を行った。結果を下表5に示す。

0077

0078

表5より、poly(dA)(s)-siRNA複合体の用量依存的にRNA干渉効果が得られることが示された。

0079

実施例7:poly(dA)(s)-siRNA複合体の細胞導入
(7-A)dRAW細胞への導入性
dRAW細胞を、1000000細胞/ディッシュ(5ml)になるように播種して、37℃のCO2インキュベーターで20時間インキュベーションを行った。その後、Alexa 647標識ネイキッドdA40(s)siLuc(21nt)、及びAlexa 647標識dA40(s)siLuc(21nt)/SPG複合体をそれぞれ100nMの濃度で培地に添加し、dRAW細胞に接触させた。各siRNA添加後、1,2,4,8時間後に、細胞を回収した。回収した細胞を10%平衡化ホルムアルデヒド(100μl/dish)で固定し、フローサイトメトリーFACS)で、Alexia647で標識されている細胞数を測定した。

0080

この結果、ネイキッドdA40(s)siLuc(21nt)と比較すると、dA40(s)siLuc(21nt)/SPG複合体は、Alexia647で標識されている細胞数は2倍以上であり、dA40(s)siLuc(21nt)/SPG複合体の細胞内取り込みが2倍以上になっていると考えられる。

0081

(7-B)CD11c(+)への導入性
マウス(C57BL/6,雄,7週齢;4匹)から常法に従い脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞の一部をコントロールとして使用するために氷冷保存した。残りの脾臓細胞をMACS MSカラムによりCD11c(-)細胞群とCD11c(+)細胞群に分離した。カラムによる細胞の分離は2回行った。CD11c(+)細胞群を7×105cellsに調製し、下表6に示す各条件で、6ウェルプレート(容量2ml)で48時間(37℃;5% CO2)培養した。培養後、表6中の括弧内に示すFACS抗体を用いてFACS解析を行った。表中、Dectin-1-FITCはFITCで修飾された抗Dectin-1抗体を、CD11c-FITCはFITCで修飾された抗CD11c抗体を、PE Isotype controlはPEで修飾されたアイソタイプコントロール抗体を表す。

0082

0083

この結果から、試料5は試料4よりDectin-1陽性細胞の割合は少なく、また試料7は試料4や試料6よりDectin-1陽性細胞の割合は少なく、siRNA/SPG複合体がDectin-1発現細胞内へ取り込まれると、その細胞のDectin-1の発現量が減少することが確認された。

0084

(7-C)RLC(RISCLoading Complex)への取り込み
マウス(C57BL/6,雄,7週齢;4匹)から常法に従って脾臓細胞を得た。得られた脾臓細胞の一部をコントロールとして使用するために氷冷保存した。残りの脾臓細胞をMACS MSカラムによりCD11c(-)細胞群とCD11c(+)細胞群に分離した。カラムによる細胞の分離は2回行った。CD11c(+)細胞群を2×104細胞になるように調製し、チャンバーカバーガラス(4ウェル、容量1ml/ウェル)で24時間(37℃;5% CO2)培養した。その後、アンチセンス鎖の5'末端にAlexa647標識したsiLucおよびアンチセンス鎖の5'末端にAlexa647標識したdA40(s)siLuc/SPG複合体を100 nMとなるようにCD11c(+)細胞に添加し、1時間培養(37℃;5% CO2)した。

0085

1時間経過後、培養上清吸引により取り除いた。各ウェル500 mlの4%パラホルムアルデヒド/PBS溶液を加えて、15分間、室温でインキュベーションした。パラホルムアルデヒド/PBS溶液を吸引により取り除いた後、各ウェル1 mlのPBSを加え、室温で5分間、インキュベーションし、その後、PBSを吸引により取り除いた。この操作をもう一度繰り返した(以下、PBSによる室温での5分間インキュベーションの操作を洗浄操作と記載する)。各ウェル500 mlの0.1% Triton X-100/PBS溶液を加え、室温で10分間、インキュベーションし、その後、0.1% Triton X-100/PBS溶液を吸引により取り除いた。洗浄操作を2回行った。10% Normal Goat Serum (NGS)/PBS溶液を 各ウェルに500 ml加え、室温で30分間インキュベーションした。10% NGS/PBS溶液を吸引により取り除いた後、抗TRBP2マウス抗体を0.1% Triton X-100, 1.5% NGS,BSA/PBSで130 ng/mlに調製し、それを各ウェルに500 ml加え、室温で2時間、インキュベーションした。抗体溶液を吸引により取り除き、洗浄操作を3回行った。Alexa-488-anti-mouseIgG抗体(ライフテクノロジーズジャパン社)をTriton X-100, 1.5% NGS, BSA/PBSで750倍に希釈し、室温で1時間、インキュベーションした。抗体溶液を吸引により取り除き、洗浄操作を3回行った。PBSを吸引により取り除いた後、チャンバーを取り外し、退色防止剤入り封入剤マウントした。この試料をレーザー共焦点顕微鏡撮影、解析した。

0086

この結果、dA40(s)siLuc/SPG複合体によって細胞内に取り込まれたsiRNAと、RLCのコアタンパクであるTRBP2が、同じ位置に局在し、且つ同一焦点深度で画像が一致していることが確認された。この結果から、細胞内に取り込まれたsiRNAとTRBP2が相互作用できる距離に存在している、即ち siRNAがRLCに取り込まれていることが明らかになった。一方、Alexa647で標識されたsiLucのみの場合は、取り込まれたsiLucは観察できなかった。

0087

(7-D) in vitroでのCD40mRNAの発現抑制
(i) Real TimePCR
継代培養しているdRAW細胞(80% confluency)を培地(10 % FBS-RPMI(ライフテクノロジーズジャパン社, cat No 12718011S ))に懸濁し、1×105個/mlに調製した。その細胞懸濁液を各ウェル10000 個ずつ(100μl/well)、96ウェルプレートに加え、37℃、5% CO2条件下で一晩、培養した。培養後、培養上清をアスピレーターで取り除き、各ウェル100μlずつ培地を加えた。この操作を2回繰り返した。予め培地を用いて100nMの濃度に調整した各試料(表7)を各ウェル100μlずつ加え、37℃、5% CO2条件下で20時間、培養した。培養後、各ウェルに100μlの培地を加え、その後、アスピレーターで培地を取り除いた。予め培地を用いて調製した60ng/ml interferon-gamma(IFN-γ、PEPRTOTECH社、cat No 315-05)を各ウェル100μlずつ加え、37℃、5% CO2条件下で4時間、培養した。培養後、各ウェルの細胞からCellAmp Direct RNA Prep kit (タカラバイオ社、cat No 37329)を用いてtotal RNAを調製した。調製したtotal RNAをテンプレートとして、PrimerScriptRTreagent Kit (タカラバイオ社、cat NoRR037A)を用いてcDNAを合成した。合成したcDNAをSYBR Prime Ex Taq II
(タカラバイオ社、cat No RR081A)を用いてreal time qPCR を行い、CD40 mRNA発現量を測定した。同時にbeta-actin mRNAの発現量を測定し、これを用いてCD40 mRNAの測定値補正を行った。補正後の値を各条件におけるCD40 mRNA 発現量とした。qPCRに用いたプライマー配列は表8に示す通りである。

0088

0089

0090

この結果、SPGのみ、或いはネイキッドsiCD40をDectin-1発現細胞に添加しても、コントロール(No sample)に比べて、CD40の発現量は減少せず、RNAi活性を誘導しなかったが、siCD40/SPG複合体をDectin-1発現細胞に添加すると、siRNAが有する本来のRNAi活性を減弱することなくCD40mRNA発現を抑制することが確認された。

0091

(ii)FACS
マウス脾臓細胞中のCD11(+)細胞を分離し、CD11(+)細胞におけるCD40陽性細胞の割合をFACSにて解析した。さらに、細胞培養と同様の環境、すなわち、10%FBS+RPMI培地に添加し、CO2インキュベーションで37℃に加温して指定の4時間〜48時間培養した。この時、CD11(+)細胞にSPG、ネイキッドdA40(s)siCD40(27nt)及びdA40(s)siCD40(27nt)/SPG複合体で処理し、その後のCD40発現をFACSで解析した。脾臓細胞の処理方法は上記(7-B)に記載の通りである。FACSで用いた抗体を下表9の括弧内に示す。表中、PE Isotype controlはPEで修飾されたアイソタイプ・コントロール抗体を、CD40-PEはPEで修飾された抗CD40抗体を表す。

0092

0093

その結果、試料4ではCD陽性細胞の発現細胞は少なくなっており、siCD40/SPG複合体は、プライマリ細胞表面上のCD40発現を抑制することが示された。一方、SPGを複合化させていないsiCD40では、CD40陽性細胞の数は減少が見られず、CD40発現を十分に抑制できなかった。

0094

本実施例においては、siRNAとSPGとの複合体を形成してsiRNAを血清下、血中下で安定化させることにより、ネイキッドのsiRNAよりも細胞内への導入効率が向上し、細胞質内までsiRNAが届けられた結果、mRNAの発現が抑制され、細胞膜表面の標的分子の発現が抑制されたと考えられる。

0095

実施例8
免疫反応初期応答因子として知られる共刺激因子CD40を標的分子として設定し、本分子に対するsiRNAによりResponder mouseの細胞を処理した。薬理効果はStimulator細胞とsiRNA未処理あるいは処理Responder細胞群とのMLR(Mixed Lymphocyte Reaction)を行い、それぞれの細胞増殖率をBrdU化学発光キットで測定することによって評価した。

0096

MLRを行う際、CD11c(-) Responder脾臓細胞を用いると、抗原提示細胞(Antigen Presenting Cells;APC)が欠乏して正常なリンパ球反応が抑えられ細胞増殖が抑制される。ここにsiCD40/SPG複合体で処理したCD11c(+)脾臓細胞を添加し細胞増殖の回復程度を観察した。dA40(s)-siCD40(27nt)/SPG複合体を添加又は非添加のアロジェニックMLR及びシンジェニックMLRをそれぞれ比較したところ、dA40(s)-siCD40(27nt)/SPG複合体の添加によって顕著な免疫抑制の誘導が達成されることが確認された(細胞増殖の回復程度が下がった:図2及び図3)。

0097

本実施例においては、ResponderマウスとしてC57BL/6マウス、StimulatorマウスとしてBalb/cを用いた。MLR時には、Stimulator脾臓細胞は、採取時にマイトマイシンCMMC)を添加して細胞増殖を制止させて使用した。

0098

前培養in vitro MLRとは、Responderマウス脾臓細胞から分離したCD11c陽性細胞にsiCD40/SPG複合体を添加後、CD11陰性細胞群に戻し、その後マイトマイシンC(MMC)処理したStimulator脾臓細胞と混合してMLR反応を観察する方法を指す。即ち、予め標的細胞にdA40(s) siRNA/SPG複合体を結合(または導入)させてMLR反応において免疫抑制誘導を評価した。

0099

(8-A):CD11c陽性細胞を用いた前培養MLRでの核酸多糖複合体による免疫抑制効果
本試験においては、dA40(s)-siCD40(27nt)/SPG複合体が免疫抑制作用を発揮することを確認した。

0100

細胞の調製
マウス(Balb/c(雄9週齢;2匹)、C57BL/6(雄9週齢;2匹))から脾臓細胞を回収した。溶血剤塩化アンモニウムカリウム)を添加して赤血球を溶解させた(溶血剤 5 ml, RPMI5ml)。10% FBS(DSファーマバイオメディカル社)、RPMI 5mlで細胞を懸濁し、responder 側の脾臓細胞にマイトマイシンC(MMC)処理を行った(最終107細胞に対して25μgのMMC添加)。

0101

CD11c陽性細胞の精製(磁気標識
脾臓細胞より回収した細胞を108細胞/試料に調整し、緩衝溶液(400μl)に懸濁した。CD11cマイクロビーズを100μl添加し、15分間冷蔵庫(2〜8℃)で静置した。

0102

磁気分離
カラムを緩衝溶液(MACSバッファー:2mMEDTA, 0.5%BSA inPBS(1×)の溶液を調製後、脱気)でリンスした後、磁気標識された細胞の懸濁液500μlをピペットで注いで流出させた。流出した液を回収し、CD11c(-)細胞として用いた。

0103

複合体群添加操作
回収したCD11c陽性細胞を1.0×10 5 cells/conditionに分けた。そこにネイキッドsiCD40、siCD40/SPG複合体を最終濃度100 nMになるように添加し、37℃で4時間インキュベーションを行った。MLRは、5×105responder (splenocyte) 、5×105stimulator(CD11c陽性細胞 2.5×10 4とCD11c陰性細胞4.75×10 5の混合)を用いた。MLR条件を下表10に示す。

0104

0105

結果を図2に示す。図2はアロ反応による増殖回復の抑制率を示す。Balb/c全脾臓細胞とC57BL/6から分離したCD11c(-)細胞をMLRにかけると細胞増殖は確認されなかった。一方、Balb/c全脾臓細胞と、C57BL/6から分離したCD11c(-/+)細胞のMLRをおこなうと、アロジェニック反応が活性化し、細胞増殖反応が回復した。標的細胞であるCD11c(+)細胞に複合体を接触させた後、CD11c(-)細胞と混ぜ戻してBalb脾臓細胞とMLRを行うと、細胞増殖回復が抑制された。すなわち、CD11c陽性細胞は前培養MLRにおいて免疫抑制を誘導することが示された。

0106

(8-B):CD11c陽性細胞を用いた核酸多糖複合体による免疫抑制作用の用量依存性
本試験においては、dA40(s)-siCD40(27nt)/SPG複合体が用量依存的に免疫抑制作用を発揮することを確認した。細胞の調製は、マウス(Balb/c(雄7週齢;2匹)、C57BL/6(雄7週齢;2匹))を用い、上記(A)に記載の方法と同様に行った。また、CD11c陽性細胞の精製、磁気分離についても上記(A)の方法に従った。MLR条件を下表11に示す。

0107

0108

MLRの結果を図3に示す。図3より、CD11c陽性細胞は、前培養MLRにおいて免疫抑制を用量依存的に誘導することが示された。

0109

実施例9
(9-A)in vitro MLR
本試験においては、in vitroでdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体を投与した場合のリンパ球の増殖抑制効果を評価した。細胞の調製方法は次の通りである。

0110

マウス(stimulator:Balb/c(雄7週齢;2匹)、responder:C57BL/6(雄7週齢;2匹))から脾臓細胞を回収した。溶血剤(塩化アンモニウム、カリウム)を添加して赤血球を溶解させた(溶血剤 3ml、2分)。RPMI8mlを添加し、300×g、10分間遠心分離を行った。上清をアスピレーターで取り除き、そこに10mlのRPMIを加え、細胞を懸濁した。遠心分離操作以降、同様の操作を繰り返して行った。上清をアスピレーターで除去後、10%FBS/RPMI 5mlで細胞を懸濁し、細胞数を計数した。stimulator側の脾臓細胞にマイトマイシンC(MMC)処理(37℃、30分)を行った(最終107細胞に対して25μgのMMC添加)。MMC処理後、細胞をRPMI 10mlで懸濁し、300×g、10分間遠心分離を行った。上清をアスピレーターで取り除き、そこに10mlのRPMIを加え、遠心分離操作以降、同様の操作を4回繰り返した。上清をアスピレーターで除去後、10%FBS/RPMI 3mlで細胞を懸濁し、細胞数を計数し、細胞濃度を5×106個/mlに調製した。Responder側の脾臓細胞(各条件5×106個)に複合体(又はsiMOCK)を最終濃度10nMになるように添加し、4時間、37℃で培養した。培養後、細胞液に10mlのRPMI加えて懸濁し、300×g、10分間遠心分離を行った。上清をアスピレーターで取り除き、そこに10mlのRPMIを加え、遠心分離操作以降、同様の操作を2回繰り返した。10%FBS/RPMI 1mlで細胞を懸濁し、細胞数を計数し、細胞濃度を5×106個/mlに調製した。Stimulator細胞、Responder細胞それぞれ5×105個ずつを1ウェル中で混ぜ合わせ(最終容量200ml/well)、37℃、5%CO2環境下で72時間培養した。培養後、BrdU取り込みによる化学発光を用いたアッセイ(Cell ProliferationELISA、BrdU)(Roche Applied Science社)により細胞増殖を測定した。

0111

また、siRNAをStimulator脾臓細胞に対して処理したin vitro MLRも行った。Stimulator細胞のMMC処理後、siRNA処理を行ったこと、Responder細胞は細胞数計数後、無処理でMLR開始まで氷冷保存していること以外は、上記操作準じて行った。MLRの条件を表12に示す。

0112

0113

その結果、dA40(s)-siCD40/SPG複合体で処理したResponder細胞のMLRでは、対照であるsiMockに比べて、約60%の細胞増殖抑制が確認された。また、dA40(s)-siCD40/SPG複合体で処理したStimulator細胞のMLRでは、対照であるsiMockに比べて、約50%の細胞増殖抑制が確認された。即ち、dA40(s)-siCD40/SPG複合体添加群を、Stimulaor脾臓細胞に添加しても、Responder脾臓細胞に添加しても、Allogenic MLR応答を Syngenic MLR応答まで抑制することが確認された。これらのことからdA40(s)-siCD40/SPG複合体が有意にリンパ球の活性化を抑制していることが明らかになった。

0114

(9-B)ex vivo MLR
本試験では、ResponderマウスにdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体を尾静脈注射(i.v.)により投与して4時間経過後に脾臓細胞を採取し、Stimulatorマウス脾臓細胞とのMLRを行って、生体内におけるsiRNAの挙動を確認した。細胞の調製方法は以下の通りである。

0115

マウス(stimulator:Balb/c(雄8週齢;3匹)、responder:C57BL/6(雄8週齢;3匹))から脾臓細胞を回収した。Responderマウスには、脾臓細胞を回収する4時間前にsiRNA/SPG複合体を静脈注射で投与した。溶血剤(塩化アンモニウム、カリウム)を添加して赤血球を溶解させた(溶血剤 5 ml, RPMI5ml)。10% FBS(DSファーマバイオメディカル社)、RPMI 5mlで細胞を懸濁し(4×105/ウェル)、stimulator側の脾臓細胞にマイトマイシンC(MMC)処理を行った(最終107細胞に対して25μgのMMC添加)。MLR条件を下表13に示す。

0116

0117

結果を、図4に示す。図4には、コントロールのアロジェニック反応の数値からシンジェニック反応の数値を差し引いた値(splenocyte Activity)(試料6の細胞数から試料2の細胞数を引いた値)を100%としてプロットされており、アロジェニック反応によってリンパ球が増殖する反応をdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体の投与でどれほど抑制できたかを示している。この結果より、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体は、生体内投与においてリンパ球の活性化を有意に抑制することが明らかとなった。

0118

実施例10:Dectin-1発現細胞に特異的な細胞内への取り込み
本試験では、Alexa647標識dA40(s)-siLuc(21nt)/SPG複合体について、Dectin-1発現細胞への特異的な取り込みについて評価した。試験方法は次の通りである。

0119

4 well chamber に collagen Type I-Pをコーティングした。次いで、HEK293T細胞及びdHEK細胞1×105個/mlの濃度でを 500μl添加し、終夜培養(37℃、5%CO2)した。その後、培地交換を行い、10nM及び100nMのAlexa647標識dA40(s)-siLuc(21nt)/SPG複合体を含む培地を添加し、2〜8時間インキュベート37℃、5% CO2)した。次いで、PBSで2回洗浄し、10%平衡化ホルムアルデヒドで固定した。固定した細胞について、レーザー共焦点顕微鏡(Carl Zeiss LSM710NLO System)で細胞を観察し、更に、フローサイトメトリーにて細胞が呈するAlexa647の蛍光強度を測定した。更に、固定した細胞について、FITC標識抗体を用いて細胞表面に発現しているDectin-1量をフローサイトメトリーにて測定した。

0120

なお、本試験に使用したHEK293T細胞は、Dectin-1未発現のヒト胎児腎臓上皮細胞であり、dHEK細胞は、HEK293T細胞にDectin-1を発現するように形質転換が行われた細胞である。

0121

得られた結果を図5及び6に示す。図5には、Alexa647標識dA40(s)-siLuc(21nt)/SPG複合体で処理した細胞を観察した像を示し、図6のAには、Alexa647標識dA40(s)-siLuc(21nt)で処理した細胞についてAlexa647の蛍光強度を測定した結果を示し、図6のBには、Alexa647標識dA40(s)-siLuc(21nt)で処理した細胞についてFITCの蛍光強度を測定した結果を示す。この結果から、Dectin-1を発現しているdHEK細胞においてのみ、Alexa647標識dA40(s)-siLuc(21nt)/SPG複合体の取り込みが確認され、本発明の核酸多糖複合体は、Dectin-1発現細胞においてエンドサイトーシスにより取り込まれることが明らかとなった。また、dHEK細胞に発現しているDectin-1量は、dA40(s)-siLuc(21nt)/SPG複合体の取り込みに伴って減少しており、Dectin-1はdA40(s)-siLuc(21nt)/SPG複合体と共に細胞内に取り込まれることも明らかとなった。

0122

実施例11
(11-A)
本試験では、ResponderマウスにdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体を尾静脈注射(i.v.)により投与して4時間経過後に脾臓細胞を採取し、Stimulatorマウス脾臓細胞とのMLRを行って、生体内におけるsiRNAの挙動を確認した。細胞の調製方法は以下の通りである。

0123

マウス(stimulator:Balb/c(雄8週齢;3匹)、responder:C57BL/6(雄8週齢;3匹))から脾臓細胞を回収した。Responderマウスには、脾臓細胞を回収する4時間前にsiRNA/SPG複合体を静脈注射で投与した。溶血剤(塩化アンモニウム、カリウム)を添加して赤血球を溶解させた(溶血剤 5 ml, RPMI5ml)。10% FBS(DSファーマバイオメディカル社)、RPMI 5mlで細胞を懸濁し(4×105/ウェル)、stimulator側の脾臓細胞にマイトマイシンC(MMC)処理を行った(最終107細胞に対して25μgのMMC添加)。MLR条件を表14に示す。

0124

0125

得られた結果を図7に示す。図7には、コントロールのアロジェニック反応の数値からシンジェニック反応の数値を差し引いた値(splenocyte Activity)(試料6の細胞数から試料2の細胞数を引いた値)を100%としてプロットされており、アロジェニック反応によってリンパ球が増殖する反応をdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体の投与でどれほど抑制できたかを示している。この結果から、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体は、生体内投与においてリンパ球の活性化を有意に抑制することが明らかとなった。

0126

(11-B)
本試験では、ResponderマウスおよびStimulatorマウスの双方に、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体を尾静脈注射(i.v.)により投与して12時間経過後に脾臓細胞を採取し、Stimulatorマウス脾臓細胞とのMLRを行って、生体内におけるsiRNAの挙動を確認した。細胞の調製方法は以下の通りである。

0127

マウス(stimulator:Balb/c(雄8週齢;3匹)、responder:C57BL/6(雄8週齢;3匹))から脾臓細胞を回収した。StimulatorマウスとResponderマウスの双方に、脾臓細胞を回収する12時間前にsiRNA/SPG複合体を静脈注射で投与した。溶血剤(塩化アンモニウム、カリウム)を添加して赤血球を溶解させた(溶血剤 5 ml, RPMI5ml)。10% FBS(DSファーマバイオメディカル社)、RPMI 5mlで細胞を懸濁し(4×105/ウェル)、stimulator側の脾臓細胞にマイトマイシンC(MMC)処理を行った(最終107細胞に対して25μgのMMC添加)。MLR条件を表15に示す。

0128

0129

得られた結果を、図8に示す。図8は、コントロールのアロジェニック反応の数値からシンジェニック反応の数値を差し引いた値(splenocyte Activity)(試料6の細胞数から試料2の細胞数を引いた値)を100%としてプロットされており、アロジェニック反応によってリンパ球が増殖する反応をdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体の投与でどれほど抑制できたかを示している。この結果からも、上記(9-A)の結果と同様に、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体は、生体内投与においてリンパ球の活性化を有意に抑制することが確認された。

0130

実施例12
Balb/cマウスから脾臓細胞を回収した。24穴プレート上に5×106/wellで細胞を播種して1 ml/wellになるように10容量%FBSを含むRPMI培地を加えた。そのプレートに、ビオチンを側鎖修飾したSPGを用いたdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体をsiRNA量として300ng/well、又はsiMockとしてのPBSを含むコントールサンプルを添加し、CO2インキュベーター(37℃)で一晩培養した。培地を吸引除去後、100 mM NaCl及び1 mMEDTAを含む10 mM Tris-HCl(pH7.5)に再懸濁し、ソニケーターで細胞を15秒間破砕し、50 mlのstreptavidin labeled magnetic particles (Roche Applied Science社、cat# 11641778001)を加え、室温で撹拌しながら15分間反応した。遠心分離を行い沈殿を回収し、得られた沈殿を100μlのSDS(ドデシル酸ナトリウム)バッファーに再懸濁し、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動に供して、ニトロセルロースメンブレン転写した。次いで、マウス抗TRBP2抗体及びペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG抗体でTRBP2を検出した。

0131

その結果、SPGと複合体を形成しているdA40(s)-siCD40(21nt)は、TRBP2と複合体を形成していることが分かった。

0132

実施例13
異所心移植モデルマウスを利用し、心臓同種移植におけるdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体の効果を試験した。

0133

具体的には、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体2μg/headをDonorマウス(C57/BL10、male)及びRecipientマウス(CBA、male)に尾静脈より投与した。投与スケジュールは、次の通りである。donorマウスには心臓摘出の3日前(day -3)及び1日前(day -1)に一回当たり2μg/headで投与し、Recipient マウスには移植の3日前(day -3)及び1日前(day -1)に同じく一回当たり2mg/headで投与した。day 0に、Donorマウスから心臓を摘出し、Recipientマウスに外科的に異所移植した。移植後、Recipientマウスに対して、更に心臓移植の1日後(day 1)、3日後(day 3)、5日後(day 5)、及び7日後(day 7)にdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体を一回当たり2μg/head ずつ、尾静脈より投与した。投与終了後、経時的にRecipientマウスの移植心臓の拍動を観察した。また、比較として、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体の代わりに、dA40(s)-siGAPDH(Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)(21nt)/SPG複合体を同量投与した場合、及びdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体を投与しなかった場合についても、上記と同様に試験を行った。

0134

得られた結果を図9に示す。図9中、「siCD40/SPG複合体」はdA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体を示し、「siGAPDH/SPG複合体」はdA40(s)-siGAPDH(21nt)/SPG複合体を示す。図9から明らかなように、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体を投与した場合には、移植後全てのRecipientマウスにおいて移植心臓が長期に亘り正常に拍動しており、移植90日後でも全てのRecipientマウスの生存が確認された。一方、dA40(s)-siGAPDH(21nt)/SPG複合体を投与した場合、または何も投与しなかった場合には、移植後10日でRecipientマウスの生存率が0%になった。

0135

更に、dA40(s)-siCD40(21nt)/SPG複合体 2μg/headをdonorマウス(C57/BL10、male)のみ、またはRecipientマウス(CBA、male)のみに投与し、移植心臓の拍動を観察した結果、Donorのみ、またはRecipientのみに投与した場合であっても、移植心臓の拍動が長時間にわたって観察された。

0136

本結果から、 dA40(s)-siCD40(21nt)が、効果的に抗原提示細胞に導入されておりCD40の発現を抑制し、抗原特異的なT細胞の活性化を抑制したと考えられる。

0137

なお、実施例1〜13において使用したsiLuc及びsiCD40のヌクレオチド配列は、下表16に示される通りである。

実施例

0138

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