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技術 毛色が制御された移植用再生毛包原基の製造方法、当該移植用再生毛包原基を含む組成物、およびその移植方法

出願人 株式会社オーガンテクノロジーズ
発明者 豊島公栄辻孝
出願日 2012年2月21日 (9年3ヶ月経過) 出願番号 2013-501043
公開日 2014年7月7日 (6年11ヶ月経過) 公開番号 WO2012-115079
状態 特許登録済
技術分野 医療用材料 微生物、その培養処理
主要キーワード 理科大 分布域 長期間経過後 インプランター 基底領域 関連法規 天然毛 素材強度
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (6)

課題

毛包原基移植により毛を再生させる技術において、再生する毛色を制御することを目的とする。

解決手段

移植後に生じる発毛の毛色が制御された移植用再生毛包原基の製造方法であって、間葉系細胞を含む第1の細胞集合体を調製する工程、上皮系細胞を含む第2の細胞集合体を調製する工程、色素幹細胞を含む細胞集合体を調製する工程、前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体の少なくとも一方に、前記色素幹細胞を含む細胞集合体とを結合させる工程、及び、続いて、前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体であって、少なくとも一方が、前記色素幹細胞を含む細胞集合体と結合した前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体とを密着させて支持体内部で培養する工程を含む製造方法を提供する。

概要

背景

移植医療補完する次世代の医療技術として種々の疾病外傷により機能不全となった臓器器官を、再生した臓器や器官と置換する再生医療が期待されている(非特許文献1)。これまでの再生医療研究では、傷害を受けた組織や部分的に機能障害のある器官に幹細胞前駆細胞移入し、機能回復させる幹細胞移入療法が進められている。

単一の細胞種からなる二次元的な組織の再生、皮膚や角膜上皮細胞心筋細胞などにおいては、細胞シートテクノロジーにより細胞シート状に培養して組織化する組織再生技術も実用化に近い段階にある。なかでも皮膚組織は、間葉系細胞である繊維芽細胞皮膚表皮細胞とを重層化し、組織学的に適切な層構造を人為的に再現させることで機能的な皮膚を再生することが可能であり、重篤熱傷治療において臨床応用されている。

一方、器官は複数種の機能的な細胞が三次元的な配置をとり固有の機能を発現することが知られている。ほとんどすべての器官は、胎児期上皮系細胞と間葉系細胞の相互作用により発生し、固有の形態や器官機能を発揮するようになる。現在の再生医療技術では、複数種の細胞を三次元的に配置することは困難であり、生体外において即時機能可能な再生器構築はまだ開発されていない。

最近になり、外胚葉性器官である歯や唾液腺皮膚付属器官である毛包において、器官原基を再生し、発生過程を再現することによって器官再生を目指した研究が進められている。これらの器官は生命の維持に直結するわけではないものの、器官喪失や機能不全に陥ることが知られている。このような例としては、う蝕や傷害、歯胚形成不全による歯の喪失や、高齢化に伴う唾液分泌障害男性型脱毛症毛包形成不全による毛髪の喪失などが挙げられる。このような、器官喪失や機能不全は、QOL(Quality of Life)に大きな影響を与えるため、器官再生による機能回復が大いに期待されている。

一般的に、ほ乳類鳥類において、毛、羽および爪などの外胚葉性の皮膚付属器は皮膚に遍在し、生存生殖など生物種特異な機能を持つ。ほ乳類において毛は、体温の保持や外傷および紫外線に対する防御機能を持つ。さらに霊長類などの高等ほ乳類では、毛髪により体表面に特徴的な色や模様が生じ、生殖集団内における順位や生殖能力アピールに役立つと考えられている。また、毛髪は、体表面の部域や機能に応じて、太さ、硬さ、色といった毛質に差を生じ、特定部位に多数存在することで、その審美的および機能的価値を発揮する。特にヒトでは、頭髪の色や質は社会的な意味を持ち、加齢や疾病による変化は個人のQOLに対して大きな影響を与えると考えられている。

臨床応用に足る毛包再生医療の確立には、再生毛包が正常な組織構造を有し、移植部位に適した毛幹を有する毛が、形成、伸長することが必要である。このような、毛などの皮膚付属器を含む外胚葉性付属器官は、通常、胎児期において、上皮・間葉系細胞の相互作用により発生する。外胚葉性付属器官の一つである毛包は、個体の生涯にわたって成長退行毛周期)を繰り返し、成長期における毛球部の再生は、毛包器官発生期と同様な分子機構により誘導されることが知られている。また、このような毛周期における毛球部の再生は、間葉系細胞である毛乳頭細胞により誘導されると考えられている。すなわち、成長期において、毛包上皮幹細胞が間葉系細胞である毛乳頭細胞により分化誘導され毛球部が再生される。さらに、バルジ領域およびその下方領域には、神経提由来幹細胞のニッチが存在することから、毛包は複数の幹細胞ニッチを保持し、幹細胞プールとして機能していると考えられている。

これまでに毛包再生に向けて間葉系細胞(毛乳頭細胞および真皮毛根鞘細胞)を置換することによる毛包可変領域の再生や毛包誘導能を有する間葉系細胞による毛包新生、上皮・間葉系細胞による毛包の再構築などが試みられてきた。さらに、最近、本発明者らは、器官原基法(例えば、特許文献1参照)により、成体マウス髭由来のバルジ領域上皮細胞と成体マウス髭由来の培養毛乳頭細胞から再構築した再生毛包原基正常発生模倣して、毛包と毛を再生しうることを示した。しかしながら、成体マウス髭由来の再生毛包原基を用いて毛包を再生させた際には、再生した毛のほとんどが白色毛となってしまう問題を有していた。

概要

毛包原基の移植により毛を再生させる技術において、再生する毛色を制御することを目的とする。 移植後に生じる発毛の毛色が制御された移植用再生毛包原基の製造方法であって、間葉系細胞を含む第1の細胞集合体を調製する工程、上皮系細胞を含む第2の細胞集合体を調製する工程、色素幹細胞を含む細胞集合体を調製する工程、前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体の少なくとも一方に、前記色素幹細胞を含む細胞集合体とを結合させる工程、及び、続いて、前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体であって、少なくとも一方が、前記色素幹細胞を含む細胞集合体と結合した前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体とを密着させて支持体内部で培養する工程を含む製造方法を提供する。なし

目的

このとき、目的とする細胞以外の成分(例えば、培養液緩衝液等)は、細胞の容量と等量以下であることが好ましく、目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
1件

この技術が所属する分野

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請求項1

移植後に生じる発毛毛色が制御された移植用再生毛包原基の製造方法であって、間葉系細胞を含む第1の細胞集合体を調製する工程、上皮系細胞を含む第2の細胞集合体を調製する工程、色素幹細胞を含む細胞集合体を調製する工程、前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体との少なくとも一方に、前記色素幹細胞を含む細胞集合体とを結合させる工程、及び、続いて、前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体であって、少なくとも一方が、前記色素幹細胞を含む細胞集合体と結合した前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体とを密着させて支持体内部で培養する工程、を含む、移植用再生毛包原基の製造方法。

請求項2

前記第1の細胞集合体が間葉系細胞から実質的に構成される請求項1に記載の製造方法。

請求項3

前記第2の細胞集合体が上皮系細胞から実質的に構成される、請求項1に記載の製造方法。

請求項4

前記色素幹細胞を含む細胞集合体が、単一化処理されたものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項5

前記色素幹細胞が、サブバルジ領域由来メラノブラスト、または、毛母基底部由来のメラノサイト前駆細胞である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項6

前記色素幹細胞が、毛母基底部由来のメラノサイト前駆細胞である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項7

前記細胞集合体同士を結合させる工程において、前記第1の細胞集合体の細胞数または前記第2の細胞集合体の細胞数と、前記色素幹細胞を含む細胞集合体の細胞数との比が、0.1:1〜100:1の範囲内である請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項8

前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体とを密着させて支持体内部で培養する工程において、前記第1の細胞集合体の細胞数と、前記第2の細胞集合体の細胞数との比が、0.3:1〜1:1の範囲内である請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項9

前記間葉系細胞が、毛乳頭細胞または真皮毛根鞘細胞である請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項10

前記上皮系細胞が、バルジ領域上皮細胞または毛母基底部上皮細胞である請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項11

前記間葉系細胞または上皮系細胞が、成体の毛包由来である請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項12

前記再生毛包原基にガイドを挿入する工程をさらに含む 、請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項13

請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法によって作製される、毛色が制御された移植用再生毛包原基を含む組成物

請求項14

請求項1〜12のいずれか一項に記載の製造方法により作製された移植用再生毛包原基を、対象とする部位へ移植する工程を含む、毛色が制御された移植用再生毛包原基の移植方法

請求項15

請求項12に記載の製造方法により作製された移植用再生毛包原基を、対象とする部位へ移植する工程を含む、毛色が制御された移植用再生毛包原基の移植方法であって、前記ガイドを移植部位より突出した状態で維持することにより、移植した再生毛包原基の上皮系細胞側の部分と前記対象の上皮系細胞とがガイドに沿って伸長し、連結することを特徴とする、移植用再生毛包原基の移植方法。

技術分野

0001

本願の発明は、毛色が制御された移植用再生毛包原基の製造方法、当該移植用再生毛包原基を含む組成物、およびその移植方法に関するものである。

背景技術

0002

移植医療補完する次世代の医療技術として種々の疾病外傷により機能不全となった臓器器官を、再生した臓器や器官と置換する再生医療が期待されている(非特許文献1)。これまでの再生医療研究では、傷害を受けた組織や部分的に機能障害のある器官に幹細胞前駆細胞移入し、機能回復させる幹細胞移入療法が進められている。

0003

単一の細胞種からなる二次元的な組織の再生、皮膚や角膜上皮細胞心筋細胞などにおいては、細胞シートテクノロジーにより細胞シート状に培養して組織化する組織再生技術も実用化に近い段階にある。なかでも皮膚組織は、間葉系細胞である繊維芽細胞皮膚表皮細胞とを重層化し、組織学的に適切な層構造を人為的に再現させることで機能的な皮膚を再生することが可能であり、重篤熱傷治療において臨床応用されている。

0004

一方、器官は複数種の機能的な細胞が三次元的な配置をとり固有の機能を発現することが知られている。ほとんどすべての器官は、胎児期上皮系細胞と間葉系細胞の相互作用により発生し、固有の形態や器官機能を発揮するようになる。現在の再生医療技術では、複数種の細胞を三次元的に配置することは困難であり、生体外において即時機能可能な再生器構築はまだ開発されていない。

0005

最近になり、外胚葉性器官である歯や唾液腺皮膚付属器官である毛包において、器官原基を再生し、発生過程を再現することによって器官再生を目指した研究が進められている。これらの器官は生命の維持に直結するわけではないものの、器官喪失や機能不全に陥ることが知られている。このような例としては、う蝕や傷害、歯胚形成不全による歯の喪失や、高齢化に伴う唾液分泌障害男性型脱毛症毛包形成不全による毛髪の喪失などが挙げられる。このような、器官喪失や機能不全は、QOL(Quality of Life)に大きな影響を与えるため、器官再生による機能回復が大いに期待されている。

0006

一般的に、ほ乳類鳥類において、毛、羽および爪などの外胚葉性の皮膚付属器は皮膚に遍在し、生存生殖など生物種特異な機能を持つ。ほ乳類において毛は、体温の保持や外傷および紫外線に対する防御機能を持つ。さらに霊長類などの高等ほ乳類では、毛髪により体表面に特徴的な色や模様が生じ、生殖集団内における順位や生殖能力アピールに役立つと考えられている。また、毛髪は、体表面の部域や機能に応じて、太さ、硬さ、色といった毛質に差を生じ、特定部位に多数存在することで、その審美的および機能的価値を発揮する。特にヒトでは、頭髪の色や質は社会的な意味を持ち、加齢や疾病による変化は個人のQOLに対して大きな影響を与えると考えられている。

0007

臨床応用に足る毛包再生医療の確立には、再生毛包が正常な組織構造を有し、移植部位に適した毛幹を有する毛が、形成、伸長することが必要である。このような、毛などの皮膚付属器を含む外胚葉性付属器官は、通常、胎児期において、上皮・間葉系細胞の相互作用により発生する。外胚葉性付属器官の一つである毛包は、個体の生涯にわたって成長退行毛周期)を繰り返し、成長期における毛球部の再生は、毛包器官発生期と同様な分子機構により誘導されることが知られている。また、このような毛周期における毛球部の再生は、間葉系細胞である毛乳頭細胞により誘導されると考えられている。すなわち、成長期において、毛包上皮幹細胞が間葉系細胞である毛乳頭細胞により分化誘導され毛球部が再生される。さらに、バルジ領域およびその下方領域には、神経提由来幹細胞のニッチが存在することから、毛包は複数の幹細胞ニッチを保持し、幹細胞プールとして機能していると考えられている。

0008

これまでに毛包再生に向けて間葉系細胞(毛乳頭細胞および真皮毛根鞘細胞)を置換することによる毛包可変領域の再生や毛包誘導能を有する間葉系細胞による毛包新生、上皮・間葉系細胞による毛包の再構築などが試みられてきた。さらに、最近、本発明者らは、器官原基法(例えば、特許文献1参照)により、成体マウス髭由来のバルジ領域上皮細胞と成体マウス髭由来の培養毛乳頭細胞から再構築した再生毛包原基は正常発生模倣して、毛包と毛を再生しうることを示した。しかしながら、成体マウス髭由来の再生毛包原基を用いて毛包を再生させた際には、再生した毛のほとんどが白色毛となってしまう問題を有していた。

0009

国際公開第2006/129672号パンフレット

先行技術

0010

Sharpe PT, Young CS. Test−tube teeth.Sc.Am.293,34−41,2005

発明が解決しようとする課題

0011

上述のように、臨床応用に足るような毛包再生技術、特に毛色について制御された毛包再生技術については現在までに報告されていない。特に毛髪の再生技術をヒトへ適用する際には、成体由来の組織より毛色の制御された再生毛を得ることが必要であり、成体組織由来の再生毛の毛色を制御する方法が強く望まれていた。

課題を解決するための手段

0012

上記課題を解決するために、本発明者らは、まず毛色を司る細胞であるメラノブラスト分布と、その分布領域に着目し、それぞれの分布域に存在する細胞の機能を解析した。そして、本発明者らは、このメラノブラスト分布域に含まれる細胞の機能を応用することで、毛色を制御した移植用再生毛包原基の作製方法を見出した。
即ち、本発明は、移植後に生じる発毛の毛色が制御された移植用再生毛包原基の製造方法であって、間葉系細胞を含む第1の細胞集合体を調製する工程、上皮系細胞を含む第2の細胞集合体を調製する工程、色素幹細胞を含む細胞集合体を調製する工程、前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体との少なくとも一方に、前記色素幹細胞を含む細胞集合体とを結合させる工程、及び、続いて、前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体であって、少なくとも一方が、前記色素幹細胞を含む細胞集合体と結合した前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体とを密着させて支持体内部で培養する工程、を含む、移植用再生毛包原基の製造方法に関する。

0013

ここで、本発明の移植用再生毛包原基の製造方法の一実施態様においては、前記第1の細胞集合体が間葉系細胞から実質的に構成されることを特徴とする。
また、本発明の移植用再生毛包原基の製造方法の一実施態様においては、前記第2の細胞集合体が上皮系細胞から実質的に構成されることを特徴とする。
また、本発明の移植用再生毛包原基の製造方法の一実施態様においては、前記色素幹細胞を含む細胞集合体が、単一化処理されたものであることを特徴とする。
また、本発明の移植用再生毛包原基の製造方法の一実施態様においては、前記色素幹細胞が、サブバルジ領域由来のメラノブラスト、または、毛母基底部由来のメラノサイト前駆細胞であることを特徴とする。
また、本発明の移植用再生毛包原基の製造方法の一実施態様においては、前記細胞集合体同士を結合させる工程において、前記第1の細胞集合体の細胞数または前記第2の細胞集合体の細胞数と、前記色素幹細胞を含む細胞集合体の細胞数との比が、0.1:1〜100:1の範囲内であることを特徴とする。
また、本発明の移植用再生毛包原基の製造方法の一実施態様においては、前記間葉系細胞が、毛乳頭細胞または真皮毛根鞘細胞であることを特徴とする。
また、本発明の移植用再生毛包原基の製造方法の一実施態様においては、前記上皮系細胞が、バルジ領域上皮細胞または毛母基底部上皮細胞であることを特徴とする。
また、本発明の移植用再生毛包原基の製造方法の一実施態様においては、前記間葉系細胞または上皮系細胞が、成体の毛包由来であることを特徴とする。
また、本発明の移植用再生毛包原基の製造方法の一実施態様においては、前記再生毛包原基にガイドを挿入する工程をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明の移植用再生毛包原基の製造方法の一実施態様においては、前記再生毛包原基を移植した際に再生する再生毛包が、メラノブラストの幹細胞ニッチを備えることを特徴とする。
また、本発明の移植用再生毛包原基の製造方法の一実施態様においては、前記再生毛包原基を移植した際に再生する再生毛包が、永続的に有色毛を形成可能であることを特徴とする。

0014

本発明の別の態様は、上記移植用再生毛包原基の製造方法によって作製される、毛色が制御された移植用再生毛包原基を含む組成物に関する。
さらに、本発明の別の態様は、上記移植用再生毛包原基の製造方法により作製された移植用再生毛包原基を、対象とする部位へ移植する工程を含む、毛色が制御された移植用再生毛包原基の移植方法に関する。
また、本発明の移植用再生毛包原基の移植方法の一実施態様においては、前記ガイドを移植部位より突出した状態で維持することにより、移植した再生毛包原基の上皮系細胞側の部分と前記対象の上皮系細胞とがガイドに沿って伸長し、連結することを特徴とする。

発明の効果

0015

本発明によれば、再生毛包原基の作製時に上皮系細胞または間葉系細胞とは別に調製した色素幹細胞を用いることで、移植後最初に発毛する毛が有色毛である移植用再生毛包原基を作製することができる。また、本発明により作製される移植用再生毛包原基は、毛色のみならず、正常な毛幹を有する毛を再生させることができる。
さらに、本発明の一実施態様においては、本発明により作製される移植用再生毛包原基の移植後に再生する再生毛包において、メラノブラストの幹細胞ニッチを形成させることができる。これにより、毛胞中のメラノブラストの幹細胞ニッチが、メラノブラストを維持するとともに、メラノサイトを適宜供給することができるため、長期間にわたり有色毛を形成させることができる。

図面の簡単な説明

0016

図1は、毛包におけるメラノブラストとメラノサイト前駆細胞の分布を示す模式図である。毛包のサブバルジ領域には、メラノブラストが分布しているメラノブラストニッチが存在しており、毛母基底部にはメラノサイト前駆細胞が分布している。図1中、DP毛乳頭を示し、SGは、皮脂腺を示す。
図2は、下記三つの条件により作製した再生毛包原基を移植後、毛包再生し、発毛した移植部位の実体顕微鏡による写真を示す(図2a〜c)。図2aは、成体マウス頬髭由来のバルジ領域上皮細胞と成体マウス頬髭由来の毛乳頭細胞とから作製した再生毛包原基を移植した発毛部位を示す(コントロール)。また、成体マウス頬髭由来のバルジ領域上皮細胞と成体マウス頬髭由来の毛乳頭細胞に対して、成体マウス頬髭由来のサブバルジ領域細胞をさらに加えて再生毛包原基を作製し、移植した際の発毛部位を図2bに示し(サブバルジ添加区)、成体マウス頬髭由来の毛母基底部より採取した細胞をさらに加えて再生毛包原基を作製し、移植した際の発毛部位を図2c(毛母基底部添加区)に示す。コントロールでは、白色毛が得られたのに対し(図2a)、サブバルジ添加区および毛母基底部添加区では黒色毛を得ることができた(図2bの黒矢印および図2c)。なお、図2bの白矢印は、白色の再生毛を示す。
図3は、天然の毛包または再生毛包原基の移植により再生した毛包のメラノブラスト幹細胞ニッチが存在する部位であるサブバルジ領域の外毛根鞘において、メラノブラストの分化系譜マーカーであるドーパクロームトウメラーゼ(dopachrome tautomerase:Dct)のin situハイブリダイゼーションを行った際の結果を示す。図3の画像は、in situ ハイブリダイゼーション後の蛍光顕微鏡下で撮影した画像を示す。図3A〜Cはそれぞれ、黒色毛を有する天然の毛包(A)、成体マウス頬髭由来のバルジ領域上皮細胞と成体マウス頬髭由来の毛乳頭細胞とから作製した再生毛包原基由来の白色毛を有する毛包(B)、成体マウス頬髭由来のバルジ領域上皮細胞と成体マウス頬髭由来の毛乳頭細胞に対して、成体マウス頬髭由来のサブバルジ領域細胞(サブバルジ添加区)を添加して作製した再生毛包原基由来の黒色毛を有する毛包(C)の画像を示す。図3中の矢印は、ドーパクロームトウトメラーゼの検出部位を示す。
図4は、成体マウス頬髭由来のバルジ領域上皮細胞と成体マウス頬髭由来の毛乳頭細胞とから作製した再生毛包原基(コントロール)、成体マウス頬髭由来のバルジ領域上皮細胞と成体マウス頬髭由来の毛乳頭細胞に対して、成体マウス頬髭由来のサブバルジ領域細胞(サブバルジ添加区)、または、成体マウス頬髭由来の毛母基底部より採取した細胞(毛母基底部添加区)を、さらに加えて作製した再生毛包原基をそれぞれ移植した後、最初に発毛した毛の有色毛率を示す。
図5は、成体マウス頬髭由来のバルジ領域上皮細胞と、成体マウス頬髭由来の毛乳頭細胞と、成体マウス頬髭由来の毛母基底部より採取した細胞とを用いて作製した再生毛包原基をレシピエントマウスの皮内へ移植し、再生された毛包より発毛した毛の毛幹を、電子顕微鏡で観察した結果を示す。
図6は、下記二つの条件により作製した再生毛包原基の移植後36日目および移植後306日目において、その発毛した移植部位を実体顕微鏡に撮影した写真を示す。図6中、左図および中図は、成体マウス頬髭由来のバルジ領域上皮細胞と成体マウス頬髭由来の毛乳頭細胞に対して、成体マウス頬髭由来の毛母基底部より採取した細胞をさらに加えて再生毛包原基を作製し、移植後36日目および306日目の発毛部位を示す(毛母基底部添加区)。また、図6中、右図は、成体マウス頬髭由来のバルジ領域上皮細胞と成体マウス頬髭由来の毛乳頭細胞とから作製した再生毛包原基を移植後、306日目の発毛部位を示す(コントロール)。

0017

本発明に係る製造方法の第一の態様は、移植後に生じる発毛の毛色が制御された移植用再生毛包原基の製造方法であって、間葉系細胞を含む第1の細胞集合体を調製する工程、上皮系細胞を含む第2の細胞集合体を調製する工程、色素幹細胞を含む細胞集合体を調製する工程、前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体の少なくとも一方に、前記色素幹細胞を含む細胞集合体とを結合させる工程、及び、続いて、前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体であって、少なくとも一方が、前記色素幹細胞を含む細胞集合体と結合した前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体とを密着させて支持体内部で培養する工程、を含むことを特徴とする。

0018

本明細書において「間葉系細胞」とは、間葉組織由来の細胞及びその細胞を培養して得られる細胞を意味し、「上皮系細胞」とは、上皮組織由来の細胞及びその細胞を培養して得られる細胞を意味する。

0019

色素細胞とは、皮膚の表皮層真皮層内および毛包の上皮層内に分布し、メラニンを作り出す細胞であり、色素細胞が作るメラニンは、毛髪の色に深く関与している。また、色素細胞は、色素幹細胞や色素細胞の前駆細胞より分化することが知られている。
また、本明細書において、「色素幹細胞」とは、色素細胞(メラノサイト)へ分化するメラノサイト前駆細胞、メラノブラスト(色素幹細胞)を意味する。なお、色素幹細胞を含むという場合には、上記細胞のいずれか一種を用いることもできるし、組み合わせて用いることもできる。また、メラノブラストとは、メラノサイトおよびメラノサイト前駆細胞へと分化可能であって、未分化状態色素を持たない幹細胞をいう。メラノブラストは、毛包中の特定の幹細胞ニッチにて長期間、未分化状態が維持される。また、メラノサイト前駆細胞とは、メラノサイトへ分化可能な前駆細胞であって、未分化状態の色素を持たない前駆細胞をいう。そして、色素細胞(メラノサイト)とは、最終分化した色素を有する細胞をいう。
また、本明細書において、「色素幹細胞を含む細胞集合体」とは、上記のような色素幹細胞を含む組織や領域、これらの組織や領域を酵素処理や単一化処理等により細胞単位に分離させた状態の細胞、または、分離した細胞を遠心分離等により細胞凝集塊にした状態を含む。また、色素幹細胞を含む細胞集合体は、実質的に色素幹細胞より構成される細胞集合体とすることもできる。

0020

また、本発明において、「バルジ領域」とは、毛包の皮脂腺付着部位より下方であり、かつ、立毛筋付着部位より上方の毛包定常領域をいう。なお、立毛筋が存在しないマウスヒゲ等の場合には、立毛筋付着部位に相当する部位にリングブルスト(Ringwurst)が存在する。リングブルストとは、頬ヒゲ毛包不変部の再下端部に付着している神経提由来間葉細胞からなるリング状の構造であり、齧歯類の頬ヒゲに特有の構造である。よって、本明細書において、立毛筋が存在しない頬ヒゲ等の毛包における「バルジ領域」とは、毛包の皮脂腺付着部位より下方であり、かつ、リングブルストより上方の領域とする。なお、定常領域(不変部領域)とは、毛包の毛周期に関連した成長または退行のような毛包の組織構造上の変化をしない領域をいう。「サブバルジ領域」とは、バルジ領域の下方に隣接した定常領域の最下端部をいう。
また、本発明において、「毛母基底部」とは、毛球部の毛母のうちでAuber氏線よりも下方に位置し、メラニンを産生するメラノサイトが分布しない領域をいう。

0021

本明細書において、「再生毛包原基」は、間葉系細胞を含む第1の細胞集合体と、上皮系細胞を含む第2の細胞集合体とを密着させて支持体内部で培養する工程を含む方法によって作製される毛包原基を意味する。

0022

「間葉系細胞を含む第1の細胞集合体と、上皮系細胞を含む第2の細胞集合体とを密着させて支持体内部で培養する工程」は、例えば、特許文献1、特開2008−29756号公報、特開2008−206500号公報、特開2008−200033号公報、及び特開2008−29757号公報に記載されており、それら各文献の開示は全体として本明細書に参照として組み込まれる。

0023

上記第1の細胞集合体と第2の細胞集合体の少なくとも一方は、色素幹細胞を含む細胞集合体と結合させる。その後、他方の細胞集合体とともに支持体内部で培養し、再生毛包原基を作製する。この際、上記第1の細胞集合体と第2の細胞集合体は、いずれか一方に色素幹細胞を含む細胞集合体を結合させておくこともできるし、また、両方に色素幹細胞を含む細胞集合体を結合させておくこともできる。
なお、メラノブラストは毛包の上皮層に存在するため、色素幹細胞としてメラノブラストを用いる際は、上皮系細胞を含む細胞集合体へ結合させる方が幹細胞の機能を維持できる点で好ましい。

0024

なお、本明細書において、「第1または第2の細胞集合体と色素幹細胞を含む細胞集合体とを結合させる」とは、ある細胞集合体を、全体的または部分的に、他の細胞集合体と混ぜ合わせることを含み、また、細胞集合体の表面同士を接触または接着させることも含む。よって、色素幹細胞を含む細胞集合体と結合させた第1または第2の細胞集合体は、その細胞集合体の中に色素幹細胞が混合された状態、または含んだ状態となる。

0025

第1の細胞集合体と第2の細胞集合体との少なくとも一方に、色素幹細胞を含む細胞集合体とを結合させる工程において、第1の細胞集合体の細胞数または第2の細胞集合体の細胞数と、色素幹細胞を含む細胞集合体の細胞数との比は、使用する細胞等の条件により適宜設定することができるが、例えば、0.1:1〜100:1の範囲内となるように調整することが好ましく、0.1:1〜10:1の範囲内となるように調整することがより好ましく、0.5:1〜2:1の範囲内となるように調整することがさらに好ましい。
しかしながら、第1の細胞集合体の細胞数または第2の細胞集合体の細胞数と、色素幹細胞を含む細胞集合体の細胞数との比は、作製される再生毛包原基の毛色を制御できる限りにおいて上記の範囲に限定されない。
第1の細胞集合体および第2の細胞集合体の両方に色素幹細胞を含む細胞集合体を結合させる際にも、それぞれの細胞集合体に対して、上記の範囲内となるように色素幹細胞を含む細胞集合体を結合させることができる。
またこのとき、第1の細胞集合体または第2の細胞集合体に結合させる色素幹細胞の細胞数の割合を調整することで、毛色の濃淡についても制御することができる。

0026

また、色素幹細胞を含む細胞集合体を結合させた後、第1の細胞集合体と第2の細胞集合体とを密着させて支持体内部で培養する工程において、間葉系細胞を含む細胞集合体の細胞数と、上皮系細胞を含む細胞集合体の細胞数との比は、使用する細胞等の条件により適宜設定することができるが、例えば、0.1:1〜3:1の範囲内となるように調整することが好ましく、0.3:1〜1:1の範囲内となるように調整することがより好ましい。なお、培養の際に、上皮系細胞の細胞数の比率を上げると、再生毛の発生率の向上と毛質の向上を望むことができ、この点において好ましい。

0027

また、上記第1の細胞集合体と第2の細胞集合体は、いずれか一方の細胞集合体に色素幹細胞を含む場合、他方の細胞集合体を実質的に間葉系細胞のみ又は実質的に上皮系細胞のみで構成することができる。「実質的に間葉系細胞のみで構成されている」とは、本発明において、ある細胞集合体が間葉系細胞のみから構成されている場合と同じ機能を果たすことを意味する。好ましくは、間葉系細胞となる細胞以外のものをできるだけ含まない状態をいう。また、間葉系細胞であれば、異なる種類の細胞を含んでいてもよい。「実質的に上皮系細胞で構成される」という場合も同様である。

0028

ここで、細胞集合体とは、細胞が密着した状態でも細胞が密着していない状態でもよく、組織、または、組織から採取後に単一化処理された細胞群であってもよく、ばらばらの細胞から調製された細胞凝集塊であってもよい。組織を用いれば、細胞配置や形状の正しい器官が得られやすいという利点があるが、入手できる量に制約がある場合もある。細胞凝集塊は、培養細胞も用いることができるので、比較的入手しやすく、少なくともその点においては好ましい。なお、再生毛包原基を作製するために細胞集合体を支持体内部へ注入し、密着させて培養する際には、細胞集合体は、細胞が密着した状態である組織や細胞凝集塊であることが好ましい。

0029

本発明に使用される色素幹細胞として、毛包に由来する色素幹細胞を用いると、毛包再生への方向付けが容易なため、この点において好ましい。例えば、色素幹細胞として、メラノブラストを用いる際は、毛包のサブバルジ領域に存在するメラノブラストを用いることができ、また、色素幹細胞としてメラノサイト前駆細胞を用いる際には、毛包の毛母基底部に存在するメラノサイト前駆細胞を用いることができる。
また、毛包以外に由来する色素幹細胞としては、皮膚内の表皮層内に分布しているものを用いることができる。

0030

本発明に使用される、間葉系細胞と上皮系細胞の少なくとも一方は、毛包(毛包を構成する器官、組織、細胞を含む)に由来することが好ましい。これにより、毛包へ方向付けがすでに行われている細胞を用いて容易に器官を形成することができる。また、より確実に毛包を製造するには、間葉系細胞と上皮系細胞とが、共に毛包に由来することが最も好ましい。

0031

すなわち、再生毛包原基を作製する場合には、毛包由来の間葉系細胞または上皮系細胞を用いることができる。より具体的には、間葉系細胞として、毛乳頭細胞や真皮毛根鞘細胞、および、発生期の皮膚間葉系細胞等を用いることができ、上皮系細胞としては、バルジ領域の外毛根鞘最外層細胞、および、毛母基底部の上皮系細胞等を用いることができる。また、間葉系細胞として、iPS細胞ES細胞から誘導した毛包間葉系細胞も用いることができ、上皮系細胞として、iPS細胞やES細胞から誘導した毛包上皮系細胞も用いることができる。

0032

また、間葉系細胞、上皮系細胞、及び色素幹細胞を採取するための毛包は、成長期のものであることが好ましい。成長期の毛包由来の細胞を使用することで、高頻度品質の良い再生毛を誘導することが可能である。また、毛包は、胎児由来であっても、成体由来であってもよい。胎児由来の毛包より細胞を採取する場合には、毛包器官発生期の毛包細胞を効率よく採取することができ、また、未分化な細胞を取得できるため、この点において好ましい。一方、成体由来の毛包より細胞を採取する場合には、器官内における細胞分布領域性を利用して有用な細胞を分離取得できるため、この点において好ましく、特に本発明をヒトの臨床へ応用する際には、対象者の細胞を利用できるため、免疫による拒絶反応の回避や、ES細胞の利用等倫理的な問題の回避の点において好ましい。さらに、移植後の毛包は免疫寛容されるという報告もあり(Reynoldset.al., Trans−gender induction of hair follicles. Nature. 1999 Nov 4;402(6757):33−4.)、または、その他の方法により免疫抑制が可能であるならば、美容形成手術などで生じた他家の成体由来の手術材料等を利用することができ、産業利用上の価値が非常に高く好ましい。

0033

毛包以外に由来する間葉系細胞として、生体内の他の間葉系組織に由来する細胞を用いることもできる。好ましくは、血液細胞を含まない骨髄細胞や間葉系細胞、さらに好ましくは口腔内間葉系細胞や顎骨の内部の骨髄細胞、頭部神経堤細胞に由来する間葉系細胞、これらの間葉系細胞に分化しうる間葉系前駆細胞やその幹細胞等である。間葉系細胞として、羊膜由来細胞を用いる例が特開2008−206500号公報に、全能性幹細胞を分化誘導した細胞を用いる例が特開2008−200033号公報に記載されており、その開示は全体として本明細書に参照として組み込まれる。

0034

毛包以外に由来する上皮系細胞として、生体内の他の上皮系組織に由来する細胞を用いることもできる。好ましくは、皮膚や口腔内の粘膜歯肉の上皮系細胞、さらに好ましくは皮膚や粘膜などの分化した、例えば角化した、あるいは錯角化した上皮系細胞に分化しうる未熟な上皮系前駆細胞、例えば非角化上皮系細胞やその幹細胞等である。口腔内上皮細胞やその初代培養細胞を上皮系細胞として用いる例が特開2008−29756号公報に記載されており、その開示は全体として本明細書に参照として組み込まれる。なお、自家組織の利用の観点からは、移植対象の間葉系細胞および上皮系細胞又はこれらの細胞を含む組織を用いることが好ましい。

0035

再生毛包原基を作製するための間葉系細胞、上皮系細胞、色素幹細胞、又はこれらの細胞を含む組織は、哺乳動物の霊長類(例えばヒト、サルなど)、有蹄類(例えばブタウシウマなど)、小型哺乳類げっ歯類(例えばマウス、ラットウサギなど)のほか、イヌネコなど種々の動物から採取することができる。間葉系細胞、上皮系細胞、色素幹細胞、又はこれらの細胞を含む組織の採取は、通常、組織の採取で用いられる条件をそのまま適用すればよく、無菌状態で取り出し、適当な保存液に保存すればよい。

0036

毛包からの間葉系細胞及び上皮系細胞の調製は、例えば、まず周囲の組織から単離された毛包を、形状に従って、間葉組織及び上皮組織に分離することによって行われる。
また、毛包からの色素幹細胞の調製は、例えば、メラノブラストを含むサブバルジ領域を分離する際には、顕微鏡検鏡下で皮脂腺と立毛筋を目印として、バルジ領域に隣接した定常部最下端部として分離することができる。また、メラノサイト前駆細胞を含む毛母基底部を分離する際には、顕微鏡検鏡下、毛乳頭の毛球部を目印として、Auber氏線よりも下方の可変部最下端部より分離することができる。さらに、メラノブラストのマーカーであるDctのプロモーター下にGFPを組み込んだ遺伝子を導入した動物由来の細胞や培養細胞を材料とする場合は、酵素処理により単一化した細胞から、さらにメラノブラストをセルソーターで分離・取得することができる。また、組織から間葉系細胞、上皮系細胞、サブバルジ領域、および毛母基底部等を分離する際には、分離を容易に行うため酵素を用いてもよい。酵素としては、ディスパーゼコラゲナーゼトリプシン等、公知のものを挙げることができ、当業者は適宜好ましい酵素を使用することができる。

0037

また、毛包より分離された間葉系細胞、上皮系細胞、または色素幹細胞を含む細胞集合体は、再生毛包原基の作製に使用される前に、細胞分離用のフィルタを通し、単一化処理されることが好ましい。単一化処理とは、細胞間の接着を解離させて流動性を持たせることであり、この処理をすることにより、添加細胞を一様に混合可能となり、また再生毛包原基を作製する際にマイクロピペットで取り扱うことができるため好ましい。細胞分離用のフィルタとしては、間葉系細胞、上皮系細胞、または色素幹細胞を含む細胞集合体を、他の組織および他の細胞から分離できるものであれば特に限定されない。細胞分離用フィルタの径は、採取する細胞ごとに、当業者により適宜選択することができ、例えば、40μm〜100μmの径を有するフィルタを用いることができる。

0038

本発明における細胞凝集塊は、間葉組織もしくは上皮組織に由来する細胞が凝集したもの、色素幹細胞を含む細胞群が凝集したもの、または間葉組織または上皮組織に由来する細胞と色素幹細胞を含む細胞群が凝集したもの等を意味する。このような細胞凝集塊は、例えば、間葉組織、上皮組織、又は色素幹細胞を含む領域をばらばらに分散させて得た細胞、あるいは当該細胞の初代または継代培養によって得た細胞を凝集させても調製することができる。

0039

細胞を分散させるためには、ディスパーゼ、コラゲナーゼ、トリプシン等の酵素を用いてもよい。十分な細胞数を得るために、細胞凝集塊を調製する前に分散した細胞の初代または継代培養を行う場合、培養に用いられる培地としては、一般に動物細胞の培養に用いられる培地、例えばダルベッコ改変イーグル培地DMEM)等を用いることができる。細胞の増殖を促進するための血清を添加するか、あるいは血清に代替するものとして、例えばFGF、EGF、PDGF等の細胞増殖因子トランスフェリン等の既知血清成分を添加してもよい。なお、血清を添加する場合の濃度は、そのときの培養状態によって適宜変更することができるが、通常10%前後とすることができる。細胞の培養には、通常の培養条件、例えば約37℃の温度で5%CO2濃度インキュベータ内での培養が適用される。また、適宜、ストレプトマイシン等の抗生物質を添加したものであってもよい。

0040

細胞を凝集させるためには、例えば、細胞懸濁液を遠心処理すればよい。間葉系細胞及び上皮系細胞の細胞凝集塊は、両者を密着させたときに確実に細胞相互作用するよう、それぞれを高密度の状態にしておくことが好ましい。高密度の状態とは、組織を構成する際の密度と同等程度であることをいい、例えば、5×107個/ml〜1×109個/ml、好ましくは1×108個/ml〜1×109個/ml、最も好ましくは2×108個/ml〜8×108個/mlである。細胞凝集塊を高密度にする方法は特に限定されないが、例えば、細胞を遠心処理によって凝集させ沈殿化する方法によって行うことができる。遠心処理は細胞の活性を損なわずに簡便に高密度化できるため好ましい。遠心処理は、300×g〜1200×g、好ましくは500×g〜1000×gの遠心力を与える回転数で3分間〜10分間行えばよい。300×gよりも低い遠心処理では、細胞密度を十分に高くできなくなる傾向があり、一方、1200×gよりも高い遠心処理では、細胞が損傷を受ける場合がある。

0041

遠心分離によって高密度の細胞凝集塊を調製する場合には、通常、細胞の遠心分離をするために用いられるチューブ等の容器に細胞の懸濁液を調製してから遠心分離を行い、沈殿物としての細胞を残して上清をできるだけ除去すればよい。このとき、目的とする細胞以外の成分(例えば、培養液緩衝液等)は、細胞の容量と等量以下であることが好ましく、目的とする細胞以外の成分を含まないことが最も好ましい。このような高密度の細胞集合体を後述する方法により支持担体内で密着させれば、細胞が緊密に接触し、細胞間相互作用が効果的に発揮される。

0042

また、間葉系細胞または上皮系細胞と、色素幹細胞とを含む細胞凝集塊の作製は、例えば、上記のような遠心分離の処理によっても調製することができ、具体的には、遠心分離する際の細胞懸濁液中に、それぞれ好ましい割合で間葉系細胞または上皮系細胞と色素幹細胞を含む細胞集合体とを調整して含ませ、遠心分離処理をすることにより、色素幹細胞が混入した細胞凝集塊を作製することができる。

0043

第1及び第2の細胞集合体を培養する目的で用いられる支持担体としては、内部で細胞の培養が可能なものであれば特に限定されないが、例えば、ゲル状、繊維状、固体状のものが好ましく、かかる支持担体を用いることによって、さらに生体内で再生毛包原基に過剰な圧力がかかるのを防ぐことができる。
本発明で用いられる支持担体としては、例えば、コラーゲンアガロースゲルカルボキシメチルセルロースゼラチン寒天ハイドロゲルセルマトリクス商品名)、メビオールゲル(商品名)、マトリゲル(商品名)、エラスチンフィブリンラミニン細胞外マトリクス合物ポリグリコール酸PGA)、ポリ乳酸PLA)、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)等を挙げることができる。中でも、適切な硬さや保持力を有するコラーゲン、アガロースゲル、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、寒天、ハイドロゲル、セルマトリクス、メビオールゲル、マトリゲル、細胞外マトリクス混合物、エラスチン、フィブリン、ラミニンが好ましい。
例えば、支持担体は液状のものを用い、第1と第2の細胞集合体からなる再生毛包原基を配置した後に硬化させてもよい。例えば培養用のディッシュ上にコラーゲンゲルドロップを作製し、コラーゲンドロップ内に再生毛包原基を配置した後、37℃のCO2インキュベータ内で培養することにより、コラーゲンをゲル化させることができる。

0044

第1及び第2の細胞集合体を培養する目的で用いられる支持担体は、細胞が分散することなく、細胞集合体の密着状態保持可能な保持力を備えていることが好ましい。密着した状態とは、上述した高密度の間葉系細胞及び上皮系細胞の細胞集合体が、間葉系細胞と上皮系細胞の接触面付近においても同程度の高さの密度を維持している状態を意味する。密着状態を保持可能な支持担体は、例えば、コラーゲンの場合、最終濃度2mg/ml〜3mg/mlの濃度、即ちJIS−K6503−1996に準拠した方法(12.7mm径プランジャーで4mm押し下げるのに必要な荷重として測定)によって120g〜250gのゼリー強度となる濃度での使用が適切な硬さを提供する。他の種類の支持担体においても、同様の評価方法によって同様の強度があれば本発明の支持担体として好ましく用いられる。また1種又は複数種の支持担体を混合することによって、目的とするゼリー強度に相当する硬さの支持担体を得てもよい。

0045

第1及び第2の細胞集合体を支持担体内に配置する方法は特に限定されないが、細胞集合体が細胞凝集塊である場合は、例えば上述した遠心分離で得られる沈殿物をマイクロシリンジ等で支持担体内に挿入して配置することができる。細胞集合体が組織である場合には、シリンジの針の先端などを用いて支持担体内の任意に位置に配置することができる。

0046

本発明において第1と第2の細胞集合体を支持担体に密着させて配置する方法は特に限定されないが、例えば、一方の細胞集合体を支持担体内に配置したあと、他方の細胞集合体をそれに押しつけるように配置することによって、両者を密着させることができる。より具体的には、支持担体内において上記シリンジの針の先端の位置を適宜変更することで一方の細胞集合体を他方の細胞集合体に押し付けることが可能である。なお、細胞集合体として上皮系組織又は間葉系組織を用いる場合には、当該組織が元々の器官(当該器官に属する組織を含む)においてそれぞれ間葉系組織又は上皮系組織と接触していた面を、他方の細胞集合体に接触するように配置することが好ましい。
また、配置した後に、支持担体を固化する工程を設けることも好ましい。これにより、細胞がさらに凝集して、より高密度な状態とすることができる。例えば、コラーゲンゲルの場合、培養温度下で数分〜数十分間静置することによって固化することができる。このとき、細胞集合体内に細胞以外の成分が少なければ少ないほど、より高密度な状態が実現される。

0047

培養期間は、支持担体内部に配置された細胞数、細胞集合体の状態、培養の条件、動物種等によって異なり、当業者が適宜選択することができる。
培養期間は、長くすることによって、再生毛包原基の形成をより進行させることができる。所望の状態を得るために、例えば、1日以上、2日以上、6日以上、30日以上、50日以上、100日以上、又は300日以上培養してもよく、培養の途中で、培地や培養条件を変更することもできる。
例えば、再生毛包原基を移植した際に、機能的な毛髪を得るためには、再生毛包原基を少なくとも1日培養することが好ましく、2日以上がより好ましい。

0048

支持担体内部における培養工程は、第1及び第2の細胞集合体を内包する支持担体を単独で培養してもよく、他の動物細胞等の存在下で培養してもよい。
支持担体を単独で培養する場合、培養条件は、一般的な動物細胞の培養に用いられる条件とすることができる。また、培養には、哺乳動物由来の血清を添加してもよく、またこれらの細胞の増殖や分化に有効であることが知られている各種細胞因子を添加してもよい。このような細胞因子としては、FGF、BMP等を挙げることができる。

0049

細胞集合体のガス交換栄養供給の観点、及び他の動物細胞との接触・混入がなく、且つ全工程をin vitroで行うことができるという観点から、支持担体内部における培養を、器官培養とすることが好ましい。器官培養では、一般に、動物細胞の増殖に適した培地上に多孔性の膜をフロートさせ、その膜上に第1及び第2の細胞集合体を内包する支持担体を載置して培養を行う。ここで用いられる多孔性の膜は、0.3〜5μm程度の孔を多数有するものであることが好ましく、例えば、セルカルチャーインサート(商品名)やアイポアフィルター(商品名)を挙げることができる。

0050

また、本発明の別の態様によれば、第1と第2の細胞集合体を支持担体に密着させて配置し、または培養した後、第1と第2の細胞集合体からなる再生毛包原基へガイドを挿入することもできる。

0051

本発明に使用することができる「ガイド」とは、器官培養により構築した培養中の再生毛包原基へ挿入し、再生毛包原基の移植後に、再生毛包原基の上皮系細胞側の部分とレシピエント側の上皮系細胞との連結を促進させるためのものである。用いられるガイドとしては、上記の効果を有するものであれば特に制限されず、例えば、ナイロン等のポリマーや合成又は天然の生体吸収可能なポリマーより作られた繊維、ステンレス等の金属繊維炭素繊維、および、ガラス繊維等の化学繊維、ならびに天然の動物繊維植物繊維等を挙げることができ、より具体的には、ナイロン糸ステンレス線等を挙げることができる。特に、再生毛包原基に対しては、生体由来の毛髪をガイドとして使用することもできる。また、本発明に使用されるガイドは、中空糸の形状とすることもできる。ガイドの直径は、当業者により適宜設定することができるが、例えば、5〜100μmとすることが好ましく、20〜50μmとすることがより好ましい。また、再生毛包原基に対して使用するガイドの長さも当業者により適宜設定することができるが、例えば、1〜10mmとすることが好ましく、4〜6mmとすることがより好ましい。

0052

ガイドの挿入は、再生毛包原基の構造、特に第1の細胞集合体と第2の細胞集合体との接触面を壊さず第1の細胞週当該と第2の細胞集合体とを垂直に貫くように、再生毛包原基となる細胞集合体の上皮系細胞側より挿入する。
また、再生毛包原基となる細胞集合体へのガイドの挿入は、器官培養開始直後、すなわち、上皮系細胞および間葉系細胞を培地内へ配置した後すぐに挿入することができる。しばらく培養した後に、ガイドを挿入する際には、再生毛包原基の上皮系細胞は器官培養により細胞接着により強度を増すことから、ガイドの素材強度(たとえばステンレス線などを用いたり)とガイドの先端を鋭利とするなどで貫通力を増すことで、培養開始後1〜2日目に挿入することもできる。ガイド挿入のタイミングを、器官原基作成直後とすることは、ナイロン糸などの生体に対する異物応答が低くフレキシブル素材を用いることができる点において好ましい。また、しばらく培養した後にガイドを挿入すると、第1の細胞集合体と第2の細胞集合体との接触面がより強固に接着しており、ガイドの挿入により接触面を壊すことがなく、この点において好ましい。

0053

また、再生毛包原基へガイドを挿入した後は、再生毛包原基を、ガイドが挿入された状態で培養することができる。ガイド挿入後の培養期間は、例えば、1〜4日間培養することが好ましく、1.5〜2日間培養することがより好ましい。ガイド挿入後、2日間培養することにより、ガイドと再生毛包原基との接着が強くなり、移植時に容易にはずれることがなくなる。また、ガイド挿入後の培養により、再生毛包原基の上皮系細胞側の部分を、ガイドに沿って伸長させることができ好ましい。このような伸長は、再生毛包原基移植後に、再生毛包原基の上皮系細胞側の部分とレシピエントの上皮系細胞との自律的な接着の効率および安定性を向上させることができる。

0054

本発明の一実施態様において、本発明の製造方法により作製される移植用再生毛包原基は、移植後に再生する毛包内に、機能的なメラノブラストの幹細胞ニッチを形成可能な再生毛包原基である。このメラノブラストの幹細胞ニッチは、天然の毛包と同様に、サブバルジ領域の外毛根鞘に形成される。ここで、機能的なメラノブラストの幹細胞ニッチとは、当該ニッチを構成する部分において、メラノブラストを維持する機能を有するとともに、メラノサイトを分化・供給する機能を有するものをいう。本発明の一実施態様における移植用再生毛包原基は、機能的なメラノブラストの幹細胞ニッチを備えた毛包を再生可能であるため、当該毛包は永続的に有色毛の形成を可能とする。

0055

また、本発明の別の態様によれば、本発明の製造方法により作製された毛色が制御された移植用再生毛包原基を、対象とする部位に移植する方法を提供する。
本発明の製造方法により作製された毛色が制御された移植用再生毛包原基を移植することにより、毛色が制御された発毛を移植部位において得ることができる。特に、成体由来の毛包より再生毛包原基を再構築した際であっても、その再生毛包原基の移植により、移植部位において有色毛を得ることができる。
毛色が制御された移植用再生毛包原基は、当業者に公知の方法で対象とする部位に移植することができ、例えば、シャピロ植毛術やチョイ式植毛器を用いた植毛、空気圧を利用したインプランター等を使用し、移植することができる。シャピロ式植毛術とは、対象とする移植部位にマイクロメス等で移植創を作った後に、ピンセットを用いて移植物を移植する方法である。このような植毛術を適用する際には、移植用再生毛包原基がガイドを有することで、再生毛包原基を直接触れることなく操作可能であり、簡便に操作することができる。

0056

再生毛包原基の移植深度としては、例えば、0.05〜5mmとすることが好ましく、0.1〜1mmとすることがより好ましく、0.3〜0.5mmとすることが最も好ましい。特に、再生毛包原基をレシピエントに移植する際には、真皮層内に移植すること好ましい場合があり、毛包形成およびその後の発毛効率の優れた真皮皮下組織境界面より上方とするとより好ましい場合がある。移植時の再生毛包原基は、レシピエントの体表面側に再生毛包原基の上皮系細胞側を、レシピエントの体内側に再生毛包原基の間葉系細胞側がくるように移植することが、発毛方向を体表面側に制御できる点で好ましい。また、移植創上端部に再生毛包原基の上皮系細胞成分の上端部が露出するよう移植深度を調節すると、さらにレシピエントの上皮系細胞との連続性を高めることができる点において好ましい。

0057

また、ガイドを有する再生毛包原基を移植した後は、ガイドが抜けないように皮膚接合用テープバンド等でガイドと対象部位とを固定することもできる。
ガイドは、再生毛包原基を移植後しばらくしてレシピエント側の上皮系細胞と、再生毛包原基の上皮系細胞由来の側との連続性が確保された後、移植部位より抜くことができる。ガイドを抜くタイミングは、適宜設定することができるが、例えば、移植後3日〜7日で移植部位から抜くことが好ましい。または、ガイドが、自然と移植部位より抜けるまで放置することもできる。生体吸収性の材料のガイドは、自然と移植部位より抜けるか、分解・吸収されるまで放置することができる。

0058

このように、移植用の再生毛包原基へガイドを保持させることにより、レシピエント側の上皮系細胞が、異物を排除するように、ガイドに沿って移植部位の内側へ伸長し、一方、再生毛包原基の上皮系細胞由来の細胞が、ガイドに沿って伸長する。これにより、移植後のレシピエント側の上皮系細胞と再生毛包原基の上皮系細胞側との連続性を向上させることができる。また、ガイドの挿入により、培養中の再生毛包原基において、上皮系細胞および間葉系細胞との極性の維持も向上させることができ好ましい。これにより、毛包形成の効率を高めるとともに、移植時の方向づけを容易にすることができる。特に、再生毛包原基へガイドを使用した場合には、再生毛包原基とレシピエント側の上皮系細胞との連続性を確保できる上、意図した方向へ毛包形成を促すことができる。その結果、再生毛包原基からの発毛率を向上させることができるとともに、発毛方向の制御も可能となる。

0059

なお、本明細書において用いられる用語は、特定の実施態様を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。
また、本明細書において用いられる「含む」との用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記述された事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを排除しない。

0060

異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書及び関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、又は、過度形式的な意味において解釈されるべきではない。

0061

本発明の実施態様は模式図を参照しつつ説明される場合があるが、模式図である場合、説明を明確にするために、誇張されて表現されている場合がある。
第一の、第二のなどの用語が種々の要素を表現するために用いられるが、これらの要素はそれらの用語によって限定されるべきではないことが理解される。これらの用語は一つの要素を他の要素と区別するためのみに用いられているのであり、例えば、第一の要素を第二の要素と記し、同様に、第二の要素は第一の要素と記すことは、本発明の範囲を逸脱することなく可能である。
また、本明細書において、毛包における上方または下方の表現は、便宜上、毛包の構成において、毛乳頭が存在する部分を下方とし、毛包において毛乳頭とは反対側、すなわち毛が発毛・伸長する方向を上方とする。

0062

以下において、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本発明はいろいろな態様により具現化することができ、ここに記載される実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。

0063

1. 材料と方法
(1)実験動物
7−8週齢のC57BL/6マウス(日本クレア)およびC57BL/6 6−TgN(act−EGFP)マウスより毛包を採取した。また、下記実験手法により作製された再生毛包原基は6−8週齢のBalb/c nu/nuマウス(SLC)に移植した。動物の飼育および実験は、関連法規省令、および指針遵守し、東京理科大動物実験倫理審査会の承認のもとに実施した。

0064

(2)毛乳頭細胞の培養
7−8週齢のC57BL/6マウスを頸椎脱臼により安楽死させた後に、毛球部を傷つけないように頬部皮膚全層および皮下組織を採取した。頬髭周囲の皮下組織を除去した後に、毛包を分離した。分離した毛包より成長期I−IV期の頬髭毛包を選択し、選択した頬髭毛包より25G注射針を用いてコラーゲンを取り除き、毛包を露出させた。さらに、露出させた毛包より毛球部を分離し、毛乳頭を摘出した。なお、分離した毛包および摘出した毛乳頭を作業中に保存するための保存液として、10 mMのHEES,10%牛胎児血清、および1%ペニシリン・ストレプトマイシン溶液を含むDMEM培地(DMEM10)を用いた。分離した毛乳頭は、3.5cm培養プラスチックディッシュ(日本ベクトン・ディキンソン)に播種し、10ng/mlのFGF2(和光純薬)を含むDMEM10にて、5%CO2、37℃、湿度95%環境下にて初代培養を行った。初代培養毛乳頭細胞は4日目および8日目に培地交換し、9日間培養したのちに、再生毛包原基の作製のために使用した。9日間培養後の初代培養毛乳頭細胞は、PBS(−)で3回洗浄した後に、0.05%トリプシンを含む10mMEDTA溶液(GIBCO)で剥離し、DMEM10でトリプシン中和し、十分洗浄した後に温下で使用時まで保存した。

0065

(3)毛包バルジ上皮細胞の取得
上記(2)において分離した頬髭組織の毛包より、25G注射針を用いてコラーゲン鞘を取り除き、バルジ領域を分離した。バルジ領域組織は終濃度4.8U/mlのDispase II(Becton Dickson)及び100U/mlのCollagenase(Worthington,Lakewood,NJ)溶液にて37℃で4分間反応させ、その後、25G注射針を用いて外科的にバルジ領域上皮組織とバルジ周囲の間葉組織とに分離した。分離したバルジ領域上皮組織は0.05%Trypsin(Invitrogen,Carlsbad,US)でインキュベータにて1時間酵素処理を行い、35μm poreセルストレイナーを通して単一化細胞とした。
また、再生毛包原基の作製直前に、培養毛乳頭細胞は0.05%Trypsin(Invitrogen, Carlsbad,US)にて回収し、35μm poreセルストレイナーを通して単一化細胞とした。

0066

(4)再生毛包原基の作製
再生毛包原基は器官原基法に従って作製した。以下に手順の詳細を記載する。上記のように取得した、単一化したバルジ領域細胞と単一化した培養毛乳頭細胞は、それぞれシリコングリースを塗布した1.5mlマイクロチューブエッペンドルフ)に移し、遠心分離器にかけた。遠心分離により沈殿した単一化したバルジ領域細胞または単一化した培養毛乳頭細胞を回収するため、遠心後の培養液の上清をGELoader Tip0.5−20ml(エッペンドルフ)を用いて完全に除去した。次に、シリコングリース(東レ・ダウコーニング)を塗布したペトリディッシュ上にCellmatrix type I−A (Nitta gelatin,Osaka,Japan)を30ml滴下してコラーゲンゲルドロップを作製し、上記にて調製した単一化した培養毛乳頭細胞を0.1−10mlのピペットチップ(Quality Scientific plastics)を用いて、0.2ml程度注入し細胞凝集塊を作製した。続いて、同ゲルドロップ内へ、上記にて調製したバルジ領域細胞を0.1−10mlのピペットチップ(Quality Scientific plastics)を用いて、培養毛乳頭細胞の凝集塊の上に密着させるように0.2ml程度注入し細胞凝集塊を作製した。さらに細胞凝集塊のバルジ領域細胞より全長5mmのナイロン糸(医科工業)を挿し、その後37℃にて5分間静置し、ゲルドロップを固化させることにより、バルジ領域細胞と培養毛乳頭細胞の結合をより強固にすることで再生毛包原基を作製した。

0067

下記(5)および(6)に記すように、サブバルジ領域細胞および毛母基底細胞を調整し、再生毛包原基の作製に使用した。
(5)サブバルジ領域細胞の調製
(3)に記載のバルジ領域の取得と同様の手順で、7−8週齢のC57BL/6マウスの頬髭の毛包よりリングブルスト付着部位より上方の定常領域を分離し、バルジ領域に隣接した定常部最下端部をサブバルジ領域として分離し、酵素処理および細胞分離用フィルタを用いて単一化したサブバルジ領域細胞とした。

0068

(6)毛母基底部細胞の調製
上記(2)において分離した、7−8週齢のC57BL/6マウス頬髭組織の毛包の毛球部からコラーゲン鞘と真皮毛根鞘を除去し、25G注射針を用いて毛乳頭の基底部に隣接している毛母基底部組織を分離した。分離した毛母基底部組織を0.25%トリプシンにて37℃で10分間処理し、DMEM10で洗浄したのちに35μm poreセルストレイナーを通して単一化した毛母基底部細胞とした。

0069

(4)に記載の再生毛包原基の作製法において、単一化したバルジ領域細胞を遠心分離により濃縮させる際に、上記(6)または(7)で得られた、単一化した約400個のサブバルジ領域細胞または単一化した約400個の毛母基底部細胞を約10,000個のバルジ領域上皮細胞と混合し、遠心分離することにより、単一化したサブバルジ領域細胞または単一化した毛母基底部細胞と、単一化したバルジ領域細胞とを含む細胞凝集塊を作製した。このようにして得られた細胞凝集塊を、バルジ領域細胞の代わりに、ゲルドロップ内の培養毛乳頭細胞の凝集塊の上に密着させるように注入することで、サブバルジ領域細胞添加群または毛母基底部細胞添加群として再生毛包原基を作製した。

0070

上記の方法により、ゲル中で作製した各再生毛包原基は、DMEM10を1ml加えた6well Plate(ベクトン・ディッキンソン)にセットした0.4ml pore sizeのCell Culture Insert(ベクトン・ディッキンソン)上にコラーゲンゲルごと移して37℃、5%CO2、湿度95%条件下にて2日間培養を行った。

0071

(8)再生毛包原基のヌードマウス内移植
ヌードマウスを定法に従ってペントバルビタール麻酔を行い、背部イソジン消毒した後、自然横臥位をとらせた。Vランスマイクロメス(日本アルコン)を用いて穿刺し、皮膚表皮層から真皮層下層部に至る移植創を形成した。移植創は体表面より垂直方向に400μmの深度までとし、水平方向は1mm程度とした。ナイロン糸製ガイドを挿入した再生毛包原基よりコラーゲンゲルを除去し、移植創の体表側に上皮細胞成分が向くように挿入した。移植創上端部に再生毛包原基の上皮細胞成分の上端部が露出するよう移植深度を調節し、ナイロン糸製ガイドが体表面に露出するように位置させた。ナイロン糸製ガイドを移植創に近接した皮膚表面にステリストリップスリエム)で固定し、その後、ナースバンおよびサージカルテープ(スリーエム)で移植創を保護した。移植後5−7日で保護テープを除去し、移植物の生着目視または蛍光実体顕微鏡で判定した後に経過観察を行った。

0072

(9)発毛経過観察および組織学的分析
再生毛包原基の移植部位を目視および蛍光実体顕微鏡にて観察し、発毛を評価した。

0073

2.結果
(1)再生毛包原基の皮内移植による体毛と髭の再生における毛色
有色マウスの成体頬髭由来のバルジ領域と成体頬髭由来の毛乳頭細胞より作製した再生毛包原基の移植により再生した髭は95.5%の頻度で白色であった(図2a)。図1に示すように、毛幹にメラニン沈着し毛色を制御する色素幹細胞は、バルジ領域下方のサブバルジ領域に分布していることが知られている。また、メラノサイトの前駆細胞は毛球部の毛母基底部にも分布し、毛母中でメラノサイトへと分化して毛幹に色づける。成体頬髭由来の再生毛包原基は、メラノブラストが含まれないバルジ領域に限局して再生毛包原基を構築したため、再生毛包原基はメラノブラストを持たず、再生した毛包の毛母に分化したメラノサイトが含まれないために白色となる可能性が示唆された。

0074

(2)色素幹細胞添加による毛色制御
マウス成体頬髭毛包において、有色毛メラノブラストが存在するサブバルジ領域および、メラノサイト前駆細胞が分布する毛母基底部領域よりそれぞれ単一化した細胞を取得して再生毛包原基を構成する細胞集合体に添加したときに、再生毛の毛色に影響するかどうかを検証した。再生毛包原基を皮内移植後3週間後に発毛した毛幹の色と性状を解析した結果、サブバルジ領域または毛母基底部細胞を添加した両方の区において、黒色毛の再生毛を得ることに成功した(図2bの黒矢印及び図2c)。

0075

ここで、再生毛包原基より再生した毛包であって、黒色毛を形成させた毛包において、天然の毛包と同様にメラノブラストの幹細胞ニッチが形成されているかを確認するため、メラノブラストの分化系譜マーカーであるドーパクロームトウトメラーゼ(dopachrome tautomerase:Dct)のin situハイブリダイゼーションを行った。その結果、有色マウス成体頬髭由来のバルジ領域および毛乳頭細胞の細胞集合体に対して、サブバルジ領域の単一化細胞を添加して作製した再生毛包原基由来の毛包であって、黒色毛を形成させた毛包においては、天然の毛包と同様に、メラノブラストの幹細胞ニッチが存在すべき場所であるサブバルジ領域の外毛根鞘にメラノブラストを検出することができた。これは、サブバルジ領域の単一化細胞を添加して作製した再生毛包原基により再生された毛包が、メラノブラストの幹細胞ニッチを形成してメラノブラストが適切に格納されていることを示す。一方で、有色マウス成体頬髭由来のバルジ領域と毛乳頭細胞とにより作製した再生毛包原基より再生した毛包であって、白色毛を形成させた毛包においては、メラノブラストの幹細胞ニッチが存在すべき場所に、メラノブラストを検出することができなかった(図3)。

0076

また、サブバルジ領域細胞または毛母基底細胞の添加の有無による毛色変化の頻度を計測した。その結果、サブバルジ領域細胞添加群では、65.4%が有色となり、上皮系細胞としてバルジ領域細胞を単独で使用したコントロールと比較して黒色毛の比率は14.5倍も高くなった(図4)。同様に毛母基底領域細胞添加群では、31.6%が黒色毛となり、バルジ領域細胞を単独で使用したコントロールと比較して黒色毛率は7.0倍高くなった(図4)。また、毛母基底細胞を添加して作製した再生毛包原基より発毛した毛を採取し、走査型電子顕微鏡にて毛幹の表面の形態を解析したところ、天然毛と同様にキューティクル構造が発達していることが観察された(図5)。

0077

ここで、黒色毛を作り出す再生された毛包においてメラノブラストの幹細胞ニッチが幹細胞維持機能を再現し、黒色毛を永続的に形成可能かどうか確認するため、移植より長期間経過後の再生された毛包における黒色毛形成能について観察を行った。観察に用いる再生毛包原基として、有色マウス成体頬髭由来のバルジ領域上皮細胞と成体マウス頬髭由来の毛乳頭細胞に対して、毛母基底部領域由来の単一化細胞を添加することにより作製した再生毛包原基(毛母基底部添加区)を使用した。なお、対照区として、有色マウス成体頬髭由来のバルジ領域上皮細胞と成体マウス頬髭由来の毛乳頭細胞とから作製した再生毛包原基の移植により再生された毛包を観察した。
その結果、毛母基底部添加区においては、再生毛包原基移植後36日目および306日目においても、黒色毛が形成されていることが確認された(図6)。本試験において、再生毛包原基により形成する毛包は、平均約15日で毛周期が1周するため、平均約20回黒色毛の形成が繰り返されていることが確認された。一方、対照区においては、移植後306日目においても、白色毛の形成しか認められなかった。

実施例

0078

これらの結果より、再生毛包原基にメラノブラストまたはメラノサイト前駆細胞を含む領域の細胞を添加することで、毛色を制御可能であることが示された。また、色素幹細胞の添加により作製した再生毛包原基より生じる有色毛は、正常な形態の毛幹を有することが示された。
さらに、色素幹細胞の添加により作製した再生毛包原基より再生した毛包は、その毛包内にメラノブラストの幹細胞ニッチを再生可能であることが示された。また、色素幹細胞の添加により作製した再生毛包原基より再生した毛包は、有色毛の形成を永続的に維持可能であることが示された。これは、再生された毛包内のメラノブラストの幹細胞ニッチにおいて、長期間に渡りメラノブラストを維持することができ、かつ、さらに毛包の生理的な機能を再現して毛母にメラノサイトを供給することができることを示す。

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