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課題・解決手段
本発明に係るプラズマエッチング装置用部品1は、基材10と、衝撃焼結法を用いて形成され、基材の表面を被覆する酸化イットリウム被膜20と、を備えたプラズマエッチング装置用部品であって、酸化イットリウム被膜20は、粒子状部と非粒子状部との少なくとも一方を含むものであり、酸化イットリウム被膜20は、膜厚が10μm以上、膜密度が90%以上であり、酸化イットリウム被膜の表面の粒子状部の面積比率が0〜80%、非粒子状部の面積比率が20〜100%である。
概要
背景
半導体装置製造における微細配線は、通常、スパッタリング装置やCVD装置によるSiO2等の絶縁膜の成膜と、エッチング装置によるSiやSiO2の等方性エッチングおよび異方性エッチングとを利用して形成されている。一般的に、これらの装置では成膜速度やエッチング性の向上のためにプラズマ放電が利用されている。たとえば、エッチング装置としてプラズマエッチング装置が用いられている。
プラズマエッチング装置を用いるドライエッチングプロセスとしては、たとえば、半導体の製造の際に、Siの微細加工や基板上に成膜された絶縁膜、電極膜および配線膜等の各種薄膜のドライエッチングプロセスとして、プラズマエッチングを行う方法が知られている。
プラズマエッチングは、たとえば、以下のようにして行われる。はじめに、ドライエッチング装置のチャンバー内に対向して配置された上部電極と下部電極のうち、下部電極面上にSi基板を複数枚搭載する。次に、搭載された基板間に、CF4等の弗素(F)系ガスやCl2等の塩素(Cl)系ガスを導入し、前記電極間でプラズマ放電して弗素系プラズマや塩素系プラズマを発生させる。さらに、発生したプラズマ中で生成された活性なイオンやラジカルで、基板上に形成された薄膜をドライエッチングすることにより、プラズマエッチングの工程が終了する。
なお、Si基板上のGaN、InN等からなる薄膜がプラズマエッチングされると、プラズマ成分と被エッチング材とが反応してSiF4、フルオロカーボン等の反応生成物が生成する。反応生成物の大部分は気体状態となって排気ポンプによりチャンバー外に排出されるが、反応生成物の一部は固体状態となってチャンバー内に堆積して付着膜となる。この反応生成物からなる付着膜は除去されることが好ましい。
このため、付着膜を除去するために、弗素系プラズマや塩素系プラズマを用いてドライエッチングを行うことにより、チャンバー内に付着した反応生成物(付着膜)をチャンバー外に排出する処理が知られている。なお、このドライエッチングは、反応生成物(付着膜)を除去する処理であるため、上記の薄膜等のドライエッチングの場合と異なるガス条件で弗素系プラズマや塩素系プラズマを発生させて処理される。
しかし、付着膜を構成する反応生成物がフルオロカーボン系のエッチング生成物である場合、この反応生成物と、弗素系プラズマや塩素系プラズマとは十分に反応しないため、反応生成物がチャンバー内に残留する。このため、残留した付着膜が剥離し、基板上に混入すると、パターン不良や歩留り低下を招くおそれがある。
そこで、従来、プラズマエッチング装置のうち、チャンバー等のプラズマが照射される部品には、反応生成物が生成しないように、基材の表面に耐プラズマ性および耐食性が高い被膜を形成することが行われている。この被膜としては、酸化イットリウム(Y2O3)や酸化アルミニウム(Al2O3)からなる被膜が知られている。これらの被膜は、反応生成物の発生抑制とプラズマアタックによる部品の損傷防止の効果がある。
例えば、特許第4084689号明細書(特許文献1)には基材に塗布されたY(OH)3ゾル液を熱処理して形成されたY2O3膜が記載されており、特開2006−108178号公報(特許文献2)にはAl2O3溶射被膜が記載されている。
概要
本発明に係るプラズマエッチング装置用部品1は、基材10と、衝撃焼結法を用いて形成され、基材の表面を被覆する酸化イットリウム被膜20と、を備えたプラズマエッチング装置用部品であって、酸化イットリウム被膜20は、粒子状部と非粒子状部との少なくとも一方を含むものであり、酸化イットリウム被膜20は、膜厚が10μm以上、膜密度が90%以上であり、酸化イットリウム被膜の表面の粒子状部の面積比率が0〜80%、非粒子状部の面積比率が20〜100%である。
目的
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、被膜の耐食性および強度が高いために、被膜からのパーティクルの発生や被膜の剥離を安定かつ有効に抑制するプラズマエッチング装置用部品およびその製造方法を提供する
効果
実績
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請求項1
基材と、衝撃焼結法を用いて形成され、前記基材の表面を被覆する酸化イットリウム被膜と、を備えたプラズマエッチング装置用部品であって、前記酸化イットリウム被膜は、顕微鏡観察により外部と区画する粒界が観察される酸化イットリウムからなる粒子状部と、前記粒界が観察されない酸化イットリウムからなる非粒子状部との少なくとも一方を含むものであり、前記酸化イットリウム被膜は、膜厚が10μm以上、膜密度が90%以上であり、前記酸化イットリウム被膜の表面を顕微鏡観察したときに、20μm×20μmの観察範囲中の前記粒子状部の面積比率が0〜80%、前記観察範囲中の前記非粒子状部の面積比率が20〜100%であることを特徴とするプラズマエッチング装置用部品。
請求項2
前記酸化イットリウム被膜の酸化イットリウムの純度は、99.9%以上であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマエッチング装置用部品。
請求項3
前記酸化イットリウム被膜の酸化イットリウムの純度は、99.99%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマエッチング装置用部品。
請求項4
前記酸化イットリウム被膜は、膜厚が10〜200μm、膜密度が99〜100%であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のプラズマエッチング装置用部品。
請求項5
前記酸化イットリウム被膜は、粒子状部の平均粒径が2μm以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のプラズマエッチング装置用部品。
請求項6
前記酸化イットリウム被膜は、粒子状部と非粒子状部との平均粒径が5μm以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のプラズマエッチング装置用部品。
請求項7
前記酸化イットリウム被膜は、XRD分析による立方晶の最強ピークのピーク値をIc、単斜晶の最強ピークのピーク値をImとしたとき、ピーク値比率Im/Icが0.2〜0.6であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のプラズマエッチング装置用部品。
請求項8
前記酸化イットリウム被膜は、表面粗さRaが3μm以下であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のプラズマエッチング装置用部品。
請求項9
基材と、衝撃焼結法を用いて形成され、前記基材の表面を被覆する酸化イットリウム被膜と、を備えたプラズマエッチング装置用部品を製造するプラズマエッチング装置用部品の製造方法であって、酸化イットリウム原料粉末を含む原料スラリーが燃焼室から噴射された燃焼フレームに供給される工程と、前記燃焼フレーム中の酸化イットリウム原料粉末が、噴射速度400〜1000m/secで前記基材の表面に噴射される工程と、を備えることを特徴とするプラズマエッチング装置用部品の製造方法。
請求項10
前記原料スラリー中の酸化イットリウム原料粉末は、前記燃焼フレームの中心部に供給されることを特徴とする請求項9に記載のプラズマエッチング装置用部品の製造方法。
請求項11
前記原料スラリー中の酸化イットリウム原料粉末は、平均粒径が1〜5μmであることを特徴とする請求項9または10に記載のプラズマエッチング装置用部品の製造方法。
請求項12
前記酸化イットリウム被膜の膜厚が10μm以上であることを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1項に記載のプラズマエッチング装置用部品の製造方法。
請求項13
前記燃焼フレーム中の酸化イットリウム原料粉末が、噴射速度400〜1000m/secで前記基材の表面に噴射される工程において、前記燃焼フレーム中の酸化イットリウム原料粉末は、成膜装置のノズルの先端部から基材の表面に向けて噴射され、前記ノズルの先端部と前記基材の表面との間の噴射距離が、100〜400mmであることを特徴とする請求項9ないし12のいずれか1項に記載のプラズマエッチング装置用部品の製造方法。
請求項14
技術分野
0001
本発明は、プラズマエッチング装置用部品およびプラズマエッチング装置用部品の製造方法に関する。
背景技術
0002
半導体装置製造における微細配線は、通常、スパッタリング装置やCVD装置によるSiO2等の絶縁膜の成膜と、エッチング装置によるSiやSiO2の等方性エッチングおよび異方性エッチングとを利用して形成されている。一般的に、これらの装置では成膜速度やエッチング性の向上のためにプラズマ放電が利用されている。たとえば、エッチング装置としてプラズマエッチング装置が用いられている。
0003
プラズマエッチング装置を用いるドライエッチングプロセスとしては、たとえば、半導体の製造の際に、Siの微細加工や基板上に成膜された絶縁膜、電極膜および配線膜等の各種薄膜のドライエッチングプロセスとして、プラズマエッチングを行う方法が知られている。
0004
プラズマエッチングは、たとえば、以下のようにして行われる。はじめに、ドライエッチング装置のチャンバー内に対向して配置された上部電極と下部電極のうち、下部電極面上にSi基板を複数枚搭載する。次に、搭載された基板間に、CF4等の弗素(F)系ガスやCl2等の塩素(Cl)系ガスを導入し、前記電極間でプラズマ放電して弗素系プラズマや塩素系プラズマを発生させる。さらに、発生したプラズマ中で生成された活性なイオンやラジカルで、基板上に形成された薄膜をドライエッチングすることにより、プラズマエッチングの工程が終了する。
0005
なお、Si基板上のGaN、InN等からなる薄膜がプラズマエッチングされると、プラズマ成分と被エッチング材とが反応してSiF4、フルオロカーボン等の反応生成物が生成する。反応生成物の大部分は気体状態となって排気ポンプによりチャンバー外に排出されるが、反応生成物の一部は固体状態となってチャンバー内に堆積して付着膜となる。この反応生成物からなる付着膜は除去されることが好ましい。
0006
このため、付着膜を除去するために、弗素系プラズマや塩素系プラズマを用いてドライエッチングを行うことにより、チャンバー内に付着した反応生成物(付着膜)をチャンバー外に排出する処理が知られている。なお、このドライエッチングは、反応生成物(付着膜)を除去する処理であるため、上記の薄膜等のドライエッチングの場合と異なるガス条件で弗素系プラズマや塩素系プラズマを発生させて処理される。
0007
しかし、付着膜を構成する反応生成物がフルオロカーボン系のエッチング生成物である場合、この反応生成物と、弗素系プラズマや塩素系プラズマとは十分に反応しないため、反応生成物がチャンバー内に残留する。このため、残留した付着膜が剥離し、基板上に混入すると、パターン不良や歩留り低下を招くおそれがある。
0008
そこで、従来、プラズマエッチング装置のうち、チャンバー等のプラズマが照射される部品には、反応生成物が生成しないように、基材の表面に耐プラズマ性および耐食性が高い被膜を形成することが行われている。この被膜としては、酸化イットリウム(Y2O3)や酸化アルミニウム(Al2O3)からなる被膜が知られている。これらの被膜は、反応生成物の発生抑制とプラズマアタックによる部品の損傷防止の効果がある。
0009
例えば、特許第4084689号明細書(特許文献1)には基材に塗布されたY(OH)3ゾル液を熱処理して形成されたY2O3膜が記載されており、特開2006−108178号公報(特許文献2)にはAl2O3溶射被膜が記載されている。
先行技術
0010
特許第4084689号明細書
特開2006−108178号公報
発明が解決しようとする課題
0011
しかしながら、溶射法によって形成された酸化イットリウムや酸化アルミニウムの溶射被膜は、酸化イットリウムや酸化アルミニウムの扁平な粒子が堆積したものであり、この扁平な粒子は溶融した酸化イットリウムや酸化アルミニウムの粒子が基材の表面に衝突し冷却されたものである。このため、溶射法によって形成された酸化イットリウムや酸化アルミニウムの溶射被膜は、マイクロクラックが多数発生しやすく、歪が残留しやすい。
0012
すなわち、溶射熱源によって溶融した酸化イットリウムや酸化アルミニウムの粒子が基材の表面に衝突し急冷凝固して偏平な形状になる際に、偏平な粒子の表面にマイクロクラックが発生し、偏平な粒子の内部に歪が残留する。
0013
そして、このような状態での酸化イットリウム被膜や酸化アルミニウム被膜にプラズマ放電で発生した活性ラジカルが照射されると、活性ラジカルがマイクロクラックをアタックしてマイクロクラックが大きくなるとともに内部歪の開放の際にマイクロクラックが伝播する。この結果、溶射被膜が欠損して溶射被膜に由来するパーティクルが発生しやすくなるとともに、溶射被膜の上に付着した反応生成物が剥離して反応生成物に由来するパーティクルが発生しやすくなる。また、パーティクルの発生は半導体装置等の製品歩留りを低下させるとともに、プラズマエッチング装置用部品のクリーニングや部品の交換が頻繁になり生産性の低下や成膜コストの上昇を生じる。
0014
また、溶射被膜がプラズマを熱源とするプラズマ溶射で形成される場合には、プラズマへの供給粉末である酸化物粉末の粒径が10〜45μm程度と大きい。このため、形成された溶射被膜は、気孔(ボイド)が最大15%程度と多く発生するとともに、溶射表面の粗さが平均粗さRaで6〜10μm程度と粗くなる。
0015
このような気孔が多く表面の粗さが粗い溶射被膜が形成されたプラズマエッチング装置部品を使用すると、気孔を通じて基材のプラズマエッチングが進行してプラズマエッチング装置部品の寿命が短くなるとともに、プラズマ放電が溶射被膜の凸部に集中して溶射被膜が脆くなりパーティクルの発生量が多くなる。
0016
さらに、最近の半導体素子は、高集積度を達成するために配線幅の狭小化が進められている。配線幅の狭小化は、例えば0.18μm、0.13μm、さらには0.09μm以下にまで及ぶ。このように狭小化された配線やそれを有する素子においては、例えば直径0.2μm程度の極微小なパーティクルが混入した場合でも、配線不良や素子不良等が生じる。このため、近年は、極微小なパーティクルであっても、その発生を抑制することが強く要望されている。
0017
また、溶射被膜を形成する場合は、通常、被膜形成の前処理として、砥粒等を高圧粒体と共に基材の表面に吹き付けるブラスト処理を行う。しかし、このようにブラスト処理を行うと、基材の表面にブラスト材(砥粒)の残留片が存在したり、ブラストによって基材の表面に破砕層が形成されたりする。
0018
そして、このようなブラスト材が残存したり破砕層が形成されたりした基材の表面に溶射被膜が形成されると、プラズマ放電での温度変化による熱膜応力により、基材と溶射被膜との界面に応力が作用し、溶射被膜ごと膜剥離し易くなる。特に、ブラスト処理の圧力や砥粒サイズを大きくした場合には、膜剥離の発生が顕著となる。このため、溶射被膜の寿命は、ブラスト処理の条件によっても大きく変わることになる。
0019
このように、プラズマエッチング装置用部品の基材の表面に溶射被膜を形成する方法は、溶射被膜がパーティクルの発生源となり易く製品歩留りを低下させ易いとともに、ブラスト処理の具合により溶射被膜の寿命が変化するという問題があった。
0020
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、被膜の耐食性および強度が高いために、被膜からのパーティクルの発生や被膜の剥離を安定かつ有効に抑制するプラズマエッチング装置用部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0021
本発明は、基材の表面に、従来の溶射法で形成された溶射被膜に代えて、衝撃焼結法で形成された酸化イットリウム被膜を形成すれば、この被膜を構成する酸化イットリウムに内部欠陥、内部歪やマイクロクラックが実質的に発生しないために被膜の耐食性および強度が高くなり、この結果、被膜からのパーティクルの発生や被膜の剥離を安定かつ有効に抑制するとともに、被膜の表面における反応生成物の生成とこの反応生成物からのパーティクルの発生の抑制が可能であることを見出して完成されたものである。
0022
本発明に係るプラズマエッチング装置用部品は、上記問題点を解決するものであり、基材と、衝撃焼結法を用いて形成され、前記基材の表面を被覆する酸化イットリウム被膜と、を備えたプラズマエッチング装置用部品であって、前記酸化イットリウム被膜は、顕微鏡観察により外部と区画する粒界が観察される酸化イットリウムからなる粒子状部と、前記粒界が観察されない酸化イットリウムからなる非粒子状部との少なくとも一方を含むものであり、前記酸化イットリウム被膜は、膜厚が10μm以上、膜密度が90%以上であり、前記酸化イットリウム被膜の表面を顕微鏡観察したときに、20μm×20μmの観察範囲中の前記粒子状部の面積比率が0〜80%、前記観察範囲中の前記非粒子状部の面積比率が20〜100%であることを特徴とすることを特徴とする。
0023
また、本発明に係るプラズマエッチング装置用部品の製造方法は、上記問題点を解決するものであり、基材と、衝撃焼結法を用いて形成され、前記基材の表面を被覆する酸化イットリウム被膜と、を備えたプラズマエッチング装置用部品を製造するプラズマエッチング装置用部品の製造方法であって、酸化イットリウム原料粉末を含む原料スラリーが燃焼室から噴射された燃焼フレームに供給される工程と、前記燃焼フレーム中の酸化イットリウム原料粉末が、噴射速度400〜1000m/secで前記基材の表面に噴射される工程と、を備えることを特徴とする。
発明の効果
0024
本発明に係るプラズマエッチング装置用部品およびその製造方法によれば、プラズマエッチング装置用部品の耐プラズマ性を向上させ、パーティクルの発生が安定的かつ有効的に抑制される。
図面の簡単な説明
0026
以下、本発明に係るプラズマエッチング装置用部品およびその製造方法について説明する。
0027
[プラズマエッチング装置用部品]
本発明に係るプラズマエッチング装置用部品は、基材と、基材の表面を被覆する酸化イットリウム被膜とを備えたプラズマエッチング装置用部品である。
0028
(基材)
本発明に係るプラズマエッチング装置用部品で用いられる基材は、プラズマエッチング装置用部品のうち、酸化イットリウム被膜で被覆される部材である。
0029
基材としては、プラズマエッチング装置用部品の部材のうち、プラズマエッチング処理の際に生成したプラズマやラジカルに曝される部材が挙げられる。このような部材としては、たとえば、半導体製造装置や液晶デバイス製造装置の部材である、ウエハー配置部材、内壁部、デポシールド、インシュレータリング、上部電極、バッフルプレート、フォーカスリング、シールドリング、ベローズカバー等が挙げられる。
基材の材質としては、たとえば、石英等のセラミックスや、アルミニウム等の金属が挙げられる。
0030
(酸化イットリウム被膜)
本発明に係るプラズマエッチング装置用部品で用いられる酸化イットリウム被膜は、衝撃焼結法を用いて形成され、基材の表面を被覆する酸化イットリウム被膜である。
0031
ここで、衝撃焼結法とは、焼結対象である酸化イットリウム原料粉末等の原料粉末を含む原料含有物を燃焼ガスの燃焼フレーム中に供給し、基材の表面において原料粉末を衝突時の破壊熱により焼結結合させ粒子を堆積させることにより、基材の表面に被膜を形成する方法である。また、破壊熱を使っていることから、溶射のように原料粉末を溶融させずに燃焼フレームの燃焼ガスとともに被覆対象である基材に向けて高速で噴射することができる。言い換えると、衝撃焼結法によれば、溶融していない酸化イットリウム原料粉末が基材に噴射され基材の表面で固着することにより被膜を形成することができる。
0032
なお、本発明において、原料粉末とは、被膜を作製するために噴射される粒子を意味する。たとえば、酸化イットリウム原料粉末とは、酸化イットリウム被膜を作製するために噴射される酸化イットリウム粒子を意味する。一方、酸化イットリウム被膜を構成する酸化イットリウム粒子については、単に酸化イットリウム粒子と称する。
0033
ところで、衝撃焼結法で形成された被膜の表面を顕微鏡等で観察すると、通常、表面に対して奥行きの大きい立体的な形状の部分と、奥行きの小さい平面的な形状の部分とが観察される。
この理由は以下のとおりである。
0034
すなわち、衝撃焼結法では、噴射された溶融していない原料粉末が、基材の表面または既に形成された被膜の表面に高速で衝突する際に、原料粉末そのままの粒子または衝突時に破砕された原料粉末の破片が、衝突時の破壊熱により焼結結合する。ここで、衝突時の破壊熱とは、衝突時の原料粉末の変形または原料粉末の破砕によって生じる熱を意味する。
0035
このように、衝撃焼結法で形成された被膜は、衝突時の破壊熱による焼結結合で形成されるため、被膜には、原料粉末の衝突数が少なく衝突時の破壊熱が小さいため原料粉末そのままの粒子またはその破片に近い形状が維持された立体的な形状の部分と、原料粉末の衝突数が多く衝突時の破壊熱が大きいため原料粉末またはその破片が結合したり大きく変形したりして生じた平面的な形状の部分とが生じる。
0036
ここで、立体的な形状の部分は、顕微鏡観察により外部と区画する粒界が観察されることが多いため、本発明において、この部分を粒子状部という。また、平面的な形状の部分は、顕微鏡観察により外部と区画する粒界が観察されないことが多いため、本発明において、この部分を非粒子状部という。つまり、酸化イットリウム被膜において、酸化イットリウム粒子の粒界が観察される部分を粒子状部、酸化イットリウム粒子の粒界が確認できない部分を非粒子状部と呼ぶのである。
粒子状部の粒界は、たとえば、電子顕微鏡を用いて倍率5000倍で観察することにより確認することができる。
0037
また、粒子状部は原料粉末またはその破片からの変形の度合いが小さいため、通常、粒子状の輪郭を有する。また、非粒子状部は原料粉末またはその破片からの変形の度合いが大きいため、通常、粒子状の輪郭を有さない。
0038
なお、衝撃焼結法で形成された被膜は、ほとんど溶融していない原料粉末を高速で噴射して形成したものであるため、噴射条件により、原料粉末の衝突の仕方にばらつきが生じる。また、ほとんど溶融していない原料粉末を噴射するときは、通常、原料粉末を含む原料含有物を燃焼ガスの燃焼フレーム中に供給して噴射するため、原料粉末が燃焼フレーム内または燃焼フレームの表面のいずれかに存在するかで原料粉末の衝突の仕方にばらつきが生じる。このため、衝撃焼結法で形成された被膜は、粒子状部と非粒子状部とが混在したものになりやすい。
0039
また、衝撃焼結法で形成された被膜は、粒子状部と非粒子状部とが混在し、粒子状部間の隙間が非粒子状部で埋められるため、膜密度が高くなりやすい。ここで、膜密度とは、被膜のみかけ体積に対する、被膜を構成する物質の実体積の比率を意味する。
0040
ところで、従来の溶射法では、原料粉末を溶融させて噴射するため、凝固して得られた溶射被膜を構成する物質の略全量が原料粉末の結晶構造や粉末形状を保持していない。このため、溶射法で形成された溶射被膜は、被膜の内部に応力が発生する。また、溶射法で形成された溶射被膜は、基材の表面に扁平な形状の粒子で堆積するため、扁平な形状の粒子の表面にマイクロクラックが発生する。
0041
これに対し、衝撃焼結法で形成された被膜は、原料粉末をほとんど溶融させずに高速で噴射して形成されるため、原料粉末の噴射時には原料粉末の結晶構造や粉末形状が維持される。このため、得られた被膜を構成する物質の結晶構造は、一部が衝撃による破壊熱の影響により原料粉末と異なる結晶構造に変化するが、残部は原料粉末の結晶構造を保持する。また、得られた被膜を構成する物質の微視的な形状は、一部が衝撃による破壊熱の影響により原料粉末の形状と大きく異なる非粒子状部になるが、残部は原料粉末の形状または原料粉末が破砕された形状に類似した粒子状部になる。このため、衝撃焼結法で形成された被膜は、被膜の内部に発生する応力が適度になり、膜強度が高くなる。
0042
また、衝撃焼結法で形成された被膜は、衝撃焼結法での製造条件を調整することにより、得られた被膜を構成する物質の結晶構造を制御することができるため好ましい。たとえば、原料粉末の結晶構造が立方晶のみからなり、衝撃焼結法で形成された被膜の結晶構造が立方晶と単斜晶とからなる場合において、衝撃焼結法での製造条件を調整することにより、被膜における立方晶と単斜晶との存在比率を調整することができる。
0043
また、衝撃焼結法で形成された被膜は、原料粉末をほとんど溶融させずに高速で噴射して形成されるため、被膜の粒子状部は、原料粉末のほとんどそのままの形状または原料粉末が破砕された形状であり、球状に近い形状になる。このため、衝撃焼結法で形成された被膜の粒子状部には、球状に近い形状の粒子の表面にマイクロクラックが発生しにくい。
0044
さらに、衝撃焼結法で形成された被膜のうち非粒子状部は、原料粉末またはその破片が衝突時の大きな破壊熱により結合したり大きく変形したりしたものであるため、堆積した物質の結合が強固である。このため、衝撃焼結法で形成された被膜は、非粒子状部の存在により、緻密で結合力の強い被膜になりやすい。
0045
本発明の酸化イットリウム被膜は、原料粉末として酸化イットリウム原料粉末を用い、衝撃焼結法で形成された被膜である。
0046
酸化イットリウムは、塩素系プラズマ、フッ素系プラズマ等のプラズマによるプラズマアタックや、活性なFラジカル、Clラジカル等のラジカルによるラジカルアタックに対して耐食性が高いため、プラズマエッチング装置用部品の被膜として好ましい。
酸化イットリウム被膜は、酸化イットリウムの純度が、通常99.9%以上、好ましくは99.99%以上である。
0047
酸化イットリウム被膜の酸化イットリウムの純度が99.9%以上であると、プラズマエッチング装置用部品を用いてプラズマエッチングを行う際に、プラズマエッチングされる製品への不純物の混入のおそれが小さい。
0048
特に、酸化イットリウム被膜の酸化イットリウムの純度が99.99%以上であると、半導体の製造工程のような、製品への不純物の混入が厳しく制限される工程においても、半導体に不純物が混入するおそれが実質的になくなる。
0049
一方、酸化イットリウム被膜の酸化イットリウムの純度が99.9%未満であると、プラズマエッチングを行う際に、酸化イットリウム被膜を構成する酸化イットリウム中の不純物がプラズマエッチングされる製品に混入するおそれがある。
0050
本発明の酸化イットリウム被膜は、顕微鏡観察により外部と区画する粒界が観察される酸化イットリウムからなる粒子状部と、粒界が観察されない酸化イットリウムからなる非粒子状部との少なくとも一方を含む。
0051
粒子状部の粒界は、たとえば、酸化イットリウム被膜の表面を、電子顕微鏡を用いて倍率5000倍で観察し、粒子状部の周囲の粒子状部に隣接する部分との間に、粒子状部の中央部に比較してコントラストの差の大きい線が観察されたときに、この線を粒界として認定することができる。コントラストは、通常、粒子状部の周囲の線が、粒子状部の中央部よりも暗いトーンで表される。
一方、非粒子状部には、粒子形状の部分の周囲に、粒子形状の部分に対してコントラストの差の大きい線である粒界は観察されない。
0052
<粒子状部と非粒子状部との比率>
本発明の酸化イットリウム被膜は、酸化イットリウム被膜の表面を顕微鏡観察したときに、通常、20μm×20μmの観察範囲中の粒子状部の面積比率が0〜80%かつ前記観察範囲中の非粒子状部の面積比率が20〜100%であり、好ましくは、粒子状部の面積比率が0〜50%かつ非粒子状部の面積比率が50〜100%である。ここで、粒子状部の面積比率と非粒子状部の面積比率との合計は100%である。
0053
粒子状部の面積比率と非粒子状部の面積比率との算出は、たとえば、前記20μm×20μmの観察範囲を3箇所以上設定し、各観察範囲における粒子状部の面積比率および非粒子状部の面積比率の平均値として算出する。
0054
酸化イットリウム被膜の粒子状部の面積比率が80%を超えると、酸化イットリウム被膜が低密度化したり結合力が低くなったりし、この結果、酸化イットリウム被膜にクラックの発生するおそれが生じる。
この理由は、以下のとおりである。
0055
すなわち、粒子状部の面積比率が80%を超える程度に大きいということは、原料粉末である酸化イットリウム原料粉末の衝撃による破壊熱が十分でない部分が多いことを意味する。この衝撃による破壊熱が十分でない部分とは、噴射された酸化イットリウム原料粉末が基材または酸化イットリウム被膜の表面において急激に冷却された部分であるから、形成された酸化イットリウム被膜は、酸化イットリウムが低密度化したり結合力が低くなったりし、クラックが発生しやすくなるからである。
0056
<粒子状部の平均粒径>
酸化イットリウム被膜は、粒子状部の平均粒径が、通常2μm以下、好ましくは0.5〜2μmである。
0057
ここで粒子状部の平均粒径とは、粒子状部の粒径の平均値である。また、粒子状部の粒径とは、酸化イットリウム被膜の表面を顕微鏡観察して撮影された写真を用い、この写真に写された粒子状部の粒界上に設定した任意の2点を結ぶ線分のうち、長さが最大になる線分の長さである。粒子状部の粒径の測定は、50個の粒子状部について行い、50個の粒子状部の粒径の相加平均値を、粒子状部の平均粒径と決定する。
粒子状部の平均粒径が2μm以下であると、粒子状部を構成する酸化イットリウム粒子同士の隙間(三重点)を小さくすることができることから膜密度を高くするため好ましい。
一方、粒子状部の平均粒径が2μmを超えると、酸化イットリウム粒子同士の隙間が大きくなり膜密度を低下させるおそれがある。
0058
<粒子状部および非粒子状部の全体の平均粒径>
酸化イットリウム被膜は、粒子状部および非粒子状部の全体の平均粒径が、通常5μm以下、好ましくは1〜5μmである。
ここで粒子状部および非粒子状部の全体の平均粒径とは、粒子状部の平均粒径と非粒子状部の平均粒径との相加平均値である。
0059
なお、非粒子状部の平均粒径とは、酸化イットリウム被膜の表面を顕微鏡観察して撮影された写真を用い、この写真に写された非粒子状部に設定した仮想円の直径である。ここで、仮想円とは、不定形の非粒子状部を構成する半円以上の輪郭を有する部分において、この半円以上の輪郭を有する部分の輪郭を、円周の一部として仮想して作成した円である。仮想円は、50箇所設定し、50個の仮想円の直径の相加平均値を、非粒子状部の平均粒径と決定する。
0060
上記のように粒子状部の平均粒径は粒子状部の50個の線分に基づいて算出され、非粒子状部の平均粒径は非粒子状部の50個の仮想円に基づいて算出される。このため、粒子状部の平均粒径と非粒子状部の平均粒径との相加平均値である粒子状部および非粒子状部の全体の平均粒径は、粒子状部の50個の線分の長さと、非粒子状部の50個の仮想円の直径とに基づいて算出された相加平均値である。
粒子状部および非粒子状部の全体の平均粒径が5μm以下であると、粒子状部および非粒子状部を構成する酸化イットリウム粒子同士の隙間(三重点)が小さくなり膜密度が向上するとともに、隣り合う酸化イットリウム粒子同士が結合する面積が大きくなり膜強度が向上するため好ましい。
粒子状部および非粒子状部の全体の平均粒径が5μmを超えると、酸化イットリウム粒子同士の隙間が大きくなり膜密度が低下または膜強度が低下するおそれがある。
0061
<酸化イットリウム被膜の結晶構造>
酸化イットリウム被膜は、立方晶と単斜晶との両方の結晶構造を含む。
酸化イットリウム被膜は、XRD分析(X線回折分析)による立方晶の最強ピークのピーク値をIc、単斜晶の最強ピークのピーク値をImとしたとき、ピーク値比率Im/Icが、通常0.2〜0.6である。
0062
XRD分析は、2θ法で、Cuターゲットを用い、管電圧40kV、管電流40mAの条件で行う。
立方晶の最強ピークは、28〜30°の領域に検出される。また、単斜晶の最強ピークは、30〜33°の領域に検出される。
ところで、酸化イットリウム被膜の原料粉末である酸化イットリウム原料粉末は、通常、常温で、立方晶のみからなる。
0063
これに対し、本発明の酸化イットリウム被膜は、酸化イットリウム被膜の形成の際の衝撃による破壊熱により、一部の立方晶の結晶構造が変化して単斜晶になる。本発明の酸化イットリウム被膜では、ピーク値比率Im/Icが、上記のように通常0.2〜0.6になる。
0064
酸化イットリウム被膜のピーク値比率Im/Icが0.2〜0.6であると、立方晶と単斜晶とが適度の量で共存し、酸化イットリウム被膜の膜強度が高くなる。酸化イットリウム原料粉末は通常立方晶である。立方晶と単斜晶が共存しているということは衝撃焼結法により結晶構造が変化していること、つまりは破壊熱による結合が進んでいることを示すものである。このため、膜強度が向上するのである。
0065
一方、酸化イットリウム被膜のピーク値比率Im/Icが0.6を超えると、単斜晶の量が多すぎて、酸化イットリウム被膜を構成する酸化イットリウムに単斜晶化に伴う内部応力が強く働く。このため、酸化イットリウム被膜のピーク値比率Im/Icが0.6を超えると、酸化イットリウム被膜の膜強度等の膜特性が低下する。
0066
<膜厚>
本発明の酸化イットリウム被膜は、膜厚が、通常10μm以上、好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは50〜150μmである。
0067
酸化イットリウム被膜の膜厚が10μm以上であると、基材の表面に酸化イットリウム被膜を設けることによるパーティクルの発生の抑制等の効果が十分得られる。
0068
なお、酸化イットリウム被膜の膜厚が大きすぎると、基材の表面に酸化イットリウム被膜を設けることによるパーティクルの発生の抑制等の効果のさらなる向上がなくなり、かえって酸化イットリウム被膜の作製のためのコストが上昇して経済的でなくなる。このため、酸化イットリウム被膜の膜厚の上限を200μmとすることが好ましい。
0069
一方、酸化イットリウム被膜の膜厚が10μm未満であると、基材の表面に酸化イットリウム被膜を設けることによるパーティクルの発生の抑制等の効果が十分得られない上、酸化イットリウム被膜が剥離するおそれがある。
0070
<膜密度>
本発明の酸化イットリウム被膜は、膜密度が、90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99〜100%である。
0071
本発明の酸化イットリウム被膜において、膜密度とは、被膜のみかけ体積に対する、被膜を構成する物質の実体積の比率を示す指標である。なお、膜密度は、気孔率と対立する概念であり、膜密度と気孔率との合計が100%となる。たとえば、膜密度が90%以上であるということは、気孔率10%未満であることと同じ意味を表わす。
0072
膜密度は、たとえば、酸化イットリウム被膜の厚さ方向に沿った断面について光学顕微鏡で500倍の拡大写真を撮った後、この拡大写真で設定した測定領域において空間部分の面積比率を算出して気孔率(%)とし、100%から気孔率(%)を差し引いた値を膜密度(%)とすることにより算出される。
0073
ここで、拡大写真の測定領域は、通常、縦200μm×横200μm=40000μm2の正方形の領域とする。なお、酸化イットリウム被膜の膜厚が小さい等の理由で200μm×200μmの正方形の測定領域を見つけることができないときは、拡大写真の測定領域として、200μm×200μmの正方形以外の形状の測定領域を合計面積が40000μm2になるように複数個所設定し、合計面積40000μm2あたりの気孔率(%)を算出し、膜密度(%)を算出する。
0074
酸化イットリウム被膜の膜密度が90%以上であると、酸化イットリウム被膜中の気孔(ボイド)を介したプラズマアタック等の浸食の進行が少ないため、酸化イットリウム被膜の寿命が長くなる。
0075
一方、酸化イットリウム被膜の膜密度が90%未満であると、酸化イットリウム被膜中に気孔(ボイド)が多くあり、この気孔からプラズマアタック等の浸食が進行するため、酸化イットリウム被膜の寿命が短くなりやすい。
0076
なお、プラズマエッチング装置用部品において、酸化イットリウム被膜中の気孔(ボイド)を介したプラズマアタック等の浸食が進行しないようにするためには、特に酸化イットリウム被膜の表面に存在する気孔が少ないことが好ましい。このため、本発明では、膜密度の測定のために酸化イットリウム被膜の厚さ方向に沿った断面の拡大写真で設定する測定領域が、酸化イットリウム被膜の表面に近い部分のものであることが好ましい。
0077
<表面粗さ>
酸化イットリウム被膜は、表面粗さRaが、通常3μm以下、好ましくは2μm以下である。
表面粗さRaは、JIS−B−0601−1994に記載された方法に準拠して測定される。
0078
酸化イットリウム被膜の表面粗さRaが3μm以下であると、酸化イットリウム被膜の表面の粒子状部および非粒子状部が形成する凹部や凸部に、プラズマアタック等の攻撃が集中せず酸化イットリウム被膜の寿命が長くなる。
0079
一方、酸化イットリウム被膜の表面粗さRaが3μmを超えると、酸化イットリウム被膜の表面の粒子状部および非粒子状部が形成する凹部や凸部に、プラズマアタック等の攻撃が集中して酸化イットリウム被膜の寿命を短くするおそれがある。
0080
本発明の酸化イットリウム被膜は、衝撃焼結法で形成された被膜であるため、緻密で結合力が強い。また、本発明の酸化イットリウム被膜は、衝撃焼結法で形成された被膜であるため、被膜の内部に応力が発生し難く、被膜の表面にマイクロクラックが発生しにくい。
0081
なお、プラズマエッチング装置用部品に高い絶縁性が要求される場合、本発明に係るプラズマエッチング装置用部品では、基材と酸化イットリウム被膜との間に、さらに絶縁性の高い酸化物被膜が設けられていてもよい。この酸化物被膜を、下地酸化物被膜と称する。
0082
下地酸化物被膜としては、たとえば、酸化アルミニウム被膜が用いられる。また、酸化アルミニウム被膜のうちでも、α構造の酸化アルミニウムが緻密に形成されてなる酸化アルミニウム被膜は、絶縁性が高いため好ましい。
下地酸化物被膜の膜厚は、通常、500μm以下である。
下地酸化物被膜の形成方法は衝撃焼結法に限定されない。下地酸化物被膜は、衝撃焼結法で形成されてもよいし、衝撃焼結法以外の方法で形成されてもよい。
0083
本発明に係るプラズマエッチング装置用部品について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明のプラズマエッチング装置用部品の一例の断面図である。
図1に示すように、プラズマエッチング装置用部品1では、基材10の表面に酸化イットリウム被膜20が形成されている。
図2は、酸化イットリウム被膜の一例の表面の電子顕微鏡写真である。図3は、図2の一部を拡大した電子顕微鏡写真である。
図2および図3に示すように、酸化イットリウム被膜20は、粒子状部21と非粒子状部22とで形成されている。
0084
[プラズマエッチング装置用部品の製造方法]
本発明に係るプラズマエッチング装置用部品の製造方法は、基材と、基材の表面を被覆する酸化イットリウム被膜とを備えたプラズマエッチング装置用部品を製造する製造方法である。
0085
(基材)
本発明に係るプラズマエッチング装置用部品の製造方法で用いられる基材は、本発明に係るプラズマエッチング装置用部品で用いられる基材と同じであるため、説明を省略する。
0086
(酸化イットリウム被膜)
本発明に係るプラズマエッチング装置用部品の製造方法で用いられる酸化イットリウム被膜は、本発明に係るプラズマエッチング装置用部品で用いられる酸化イットリウム被膜と同様に、衝撃焼結法を用いて形成され、基材の表面を被覆する酸化イットリウム被膜である。
0087
このように本発明に係るプラズマエッチング装置用部品の製造方法で用いられる酸化イットリウム被膜は、本発明に係るプラズマエッチング装置用部品で用いられる酸化イットリウム被膜と同様であるため酸化イットリウム被膜についての説明を省略する。
0088
(成膜装置)
衝撃焼結法を用いて基材の表面に酸化イットリウム被膜で被覆する成膜装置について説明する。
0089
成膜装置は、たとえば、燃焼ガス等の燃焼源が燃焼する燃焼室を有し燃焼室内のフレームを燃焼フレーム口を介して高速の燃焼フレームとして外部に噴射する燃焼部と、燃焼部の燃焼フレーム口から噴射された燃焼フレームに酸化イットリウム原料粉末を含む原料スラリーを供給するスラリー供給口と、酸化イットリウム原料粉末を含む燃焼フレームの噴射状態を制御するノズルとを備える。
0090
具体的には、燃焼部は、たとえば、燃焼室と、燃焼室に燃焼源を供給する燃焼源供給口と、燃焼室よりも断面積が小さく形成され燃焼室中のフレームを高速の燃焼フレームとして外部に噴射する燃焼フレーム口とを備える。
なお、スラリー供給口は、通常、原料スラリーを、噴射された燃焼フレームの側面に供給するように設けられる。
燃焼源としては、たとえば、酸素、アセチレン、灯油等が用いられる。燃焼源は、必要に応じ、2種以上組み合わせて用いてもよい。
0091
このような成膜装置を用い、燃焼フレーム中のほとんど溶融していない酸化イットリウム原料粉末を燃焼フレームとともにノズルを介して基材の表面に向けて高速噴射すると、衝撃焼結法により、基材の表面に、酸化イットリウム被膜が形成される。
0092
なお、成膜装置は、必要により、燃焼フレームに圧縮空気を供給する圧縮空気供給口がさらに設けられていてもよい。圧縮空気供給口は、たとえば、燃焼フレーム口から噴射された燃焼フレーム、またはスラリー供給口から原料スラリーが供給された燃焼フレームに、圧縮空気を供給するように設けられる。圧縮空気供給口を設け、燃焼フレームに圧縮空気を供給できるようにすると、酸化イットリウム原料粉末を含む燃焼フレームの高速噴射が容易になる。
0093
本発明に係るプラズマエッチング装置用部品の製造方法は、酸化イットリウム原料粉末を含む原料スラリーが燃焼室から噴射された燃焼フレームに供給される工程(酸化イットリウム原料粉末供給工程)と、燃焼フレーム中の酸化イットリウム原料粉末が、噴射速度400〜1000m/secで基材の表面に噴射される工程(酸化イットリウム原料粉末噴射工程)とを備える。
0094
(酸化イットリウム原料粉末供給工程)
酸化イットリウム原料粉末供給工程は、酸化イットリウム原料粉末を含む原料スラリーが燃焼室から噴射された燃焼フレームに供給される工程である。
0095
<原料スラリー>
本発明で用いられる酸化イットリウム原料粉末を含む原料スラリーは、原料粉末である酸化イットリウム原料粉末を溶媒に分散させたものである。
原料粉末である酸化イットリウム原料粉末は、酸化イットリウムの純度が、通常99.9%以上、好ましくは99.99%以上である。
0096
酸化イットリウム原料粉末の酸化イットリウムの純度が通常99.9%以上である理由は、本発明に係るプラズマエッチング装置用部品の酸化イットリウム被膜の純度が通常99.9%以上である理由と同じであるため、説明を省略する。
酸化イットリウム原料粉末は、平均粒径が、通常1〜5μm、好ましくは1〜3μmである。
ここで、平均粒径とは、レーザー粒度分布測定機を用いて測定した体積積算平均粒径D50を意味する。
0097
酸化イットリウム原料粉末の平均粒径が5μm以下であると、酸化イットリウム原料粉末の微粒子が基材や酸化イットリウム被膜の表面に衝突する際に、酸化イットリウム原料粉末の微粒子の破砕が適度に進行するため、破砕による発熱で酸化イットリウム粒子の結合が助長されて被膜が形成され易くなる。このようにして形成された酸化イットリウム被膜は酸化イットリウム粒子間の結合力が大きくなるため、プラズマアタックおよびラジカルアタックによる損耗が低減し、パーティクル発生量が少なくなり、耐プラズマ性が向上する。
0098
一方、酸化イットリウム原料粉末の平均粒径が5μmを超えると、酸化イットリウム原料粉末が基材や酸化イットリウム被膜の表面に衝突する際に破砕されずに飛び散るために酸化イットリウム被膜が形成され難くなるとともに、酸化イットリウム原料粉末自体のブラスト作用により酸化イットリウム被膜がダメージを受けて酸化イットリウム被膜にクラックが発生するおそれがある。
0099
また、酸化イットリウム原料粉末の平均粒径が1μm未満であると、酸化イットリウム原料粉末が基材や酸化イットリウム被膜の表面に衝突する際に酸化イットリウム原料粉末が破砕し難くなるため、形成される酸化イットリウム被膜は、低密度の被膜となり、耐プラズマ性および耐食性が低くなるおそれがある。
0100
なお、酸化イットリウム原料粉末の平均粒径が通常1〜5μmである限りにおいては、酸化イットリウム原料粉末に、粒径が1μm未満の酸化イットリウム粒子が含まれていてもよい。たとえば、酸化イットリウム原料粉末の平均粒径が通常1〜5μmである限り、粒径が1μm未満の酸化イットリウム粒子が酸化イットリウム原料粉末全体の体積の5%未満程度含まれていてもよい。
0101
酸化イットリウム原料粉末は、最大粒径が、通常20μm未満である。酸化イットリウム原料粉末が粒径20μm以上の粗大な粒子を含むと、酸化イットリウム被膜の厚さが均一になり難くなる。
0102
なお、酸化イットリウム原料粉末の最大粒径を20μm未満にする方法としては、たとえば、酸化イットリウム原料粉末またはその原料である酸化イットリウム粉末を十分に粉砕する方法が挙げられる。
0103
本工程で酸化イットリウム原料粉末の粒径を制御すると、酸化イットリウム被膜における粒子状部および非粒子状部の混在の度合いを制御することができる。
酸化イットリウム原料粉末を分散させる溶媒としては、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール等の比較的揮発し易い有機溶媒が用いられる。
原料スラリーは、酸化イットリウム原料粉末の含有量、すなわちスラリー濃度が、通常、30〜80体積%、好ましくは40〜70体積%である。
0104
スラリー濃度が30〜80体積%の範囲内にあると、原料スラリーが適度な流動性を有してスラリー供給口にスムーズに供給されることにより燃焼フレームへの原料スラリーの供給量が安定するため、酸化イットリウム被膜の膜厚および組成が均一になりやすい。
0105
<原料スラリーの燃焼フレームへの供給>
上記のように成膜装置のスラリー供給口は、通常、原料スラリーを、噴射された燃焼フレームの側面に供給するように設けられる。また、燃焼フレームは噴射速度が高い。
0106
このため、スラリー供給口から燃焼フレームの側面に供給された原料スラリー中の酸化イットリウム原料粉末は、通常、一部が燃焼フレームの内側に入り込んで燃焼フレームとともに噴射され、残部が燃焼フレームに接触せずに燃焼フレームの外側に存在したまま噴射される。
0107
また、原料スラリー中の酸化イットリウム原料粉末が燃焼フレームの内側に入り込んで燃焼フレームとともに噴射される場合でも、原料スラリー中の酸化イットリウム原料粉末が燃焼フレームの内部のどの程度深くまで供給されるかについては、燃焼フレームへの原料スラリーの供給速度等の条件により異なる。
0108
本発明では、原料スラリー中の酸化イットリウム原料粉末が燃焼フレームの中心部に供給されると、燃焼フレーム中の酸化イットリウム原料粉末の噴射速度が安定して噴射速度にばらつきが生じにくいとともに、燃焼フレームの温度が一定で酸化イットリウム被膜の粒子状部および非粒子状部の酸化イットリウムの組織の制御が容易であるため好ましい。
0109
ここで、原料スラリー中の酸化イットリウム原料粉末が燃焼フレームの中心部に供給されるとは、原料スラリー中の酸化イットリウム原料粉末が、燃焼フレームの側面から中心部に至るまで供給されることを意味する。また、燃焼フレームの中心部とは、燃焼フレーム口から噴射された燃焼フレームの噴射方向に対する垂直な断面をとったときの、この断面における中心部を意味する。
0110
一方、原料スラリー中の酸化イットリウム原料粉末が燃焼フレームの中心部に供給されず、燃焼フレームの側面や燃焼フレームの外部に供給されるに留まると、燃焼フレーム中の酸化イットリウム原料粉末の噴射速度が安定せず噴射速度にばらつきが生じやすくなるとともに、燃焼フレームの温度のばらつきが大きく酸化イットリウム被膜の粒子状部および非粒子状部の酸化イットリウムの組織の制御が困難になる。
0111
原料スラリーが燃焼フレームの中心部に供給されるようにする方法としては、たとえば、原料スラリーの燃焼フレームへの供給量や供給速度を調整する方法が挙げられる。
0112
(酸化イットリウム原料粉末噴射工程)
前記工程で調製された燃焼フレームと酸化イットリウム原料粉末とは、成膜装置のノズルから基材に向けて噴射される。ノズルでは、燃焼フレームおよび酸化イットリウム原料粉末の噴射状態が制御される。制御される噴射状態としては、たとえば、酸化イットリウム原料粉末の噴射速度等が挙げられる。
0113
成膜装置のノズルは、通常、燃焼フレームと酸化イットリウム原料粉末とを横方向に噴射するように設けられる。基材は、通常、基材の表面が、成膜装置の横向きのノズルの延長線上に位置するように配置される。
0114
酸化イットリウム原料粉末噴射工程は、燃焼フレーム中の酸化イットリウム原料粉末が、噴射速度400〜1000m/secで基材の表面に噴射される工程である。
0115
<噴射速度>
酸化イットリウム原料粉末の噴射速度が400〜1000m/secであると、酸化イットリウム原料粉末が基材や酸化イットリウム被膜に衝突した際に、酸化イットリウム原料粉末の粉砕が十分に行われ、膜密度が高く、かつ、立方晶と単斜晶との共存量が適度の酸化イットリウム被膜が得られる。
ここで、酸化イットリウム原料粉末の噴射速度とは、成膜装置のノズルの先端における酸化イットリウム原料粉末の噴射速度を意味する。
0116
上記のように、酸化イットリウム原料粉末の粒子の結晶構造は、常温で、通常、立方晶のみからなる。しかし、この酸化イットリウム原料粉末は、燃焼フレーム程度の高温にさらされると、溶融等により結晶構造が単斜晶に変化しやすい。たとえば、酸化イットリウム原料粉末を原料として溶射法で膜形成を行うと、得られる酸化イットリウム被膜は、酸化イットリウムの多くまたは全てが単斜晶になる。
0117
これに対し、本工程では、酸化イットリウム原料粉末が基材や酸化イットリウム被膜の表面で堆積し始める臨海速度以上の速度である上記速度で、酸化イットリウム原料粉末を高速噴射する衝撃焼結法を用いるため、酸化イットリウム原料粉末をほとんど溶融させずに噴射することができる。このため、噴射された酸化イットリウム原料粉末の酸化イットリウムの結晶構造は、化学的に安定な立方晶を維持する。また、堆積して得られた酸化イットリウム被膜を構成する酸化イットリウムの結晶構造は、一部が衝撃による破壊熱により変化して単斜晶となるものの、残部は化学的に安定な立方晶を維持する。このように、本発明の酸化イットリウム被膜は、立方晶と単斜晶とが適度な比率で共存するため、膜密度および膜強度が高くなる。
0118
一方、酸化イットリウム原料粉末の噴射速度が400m/sec未満であると、酸化イットリウム原料粉末の衝突エネルギーが小さいために、酸化イットリウム原料粉末が基材や酸化イットリウム被膜に衝突した際に、酸化イットリウム原料粉末の粉砕が十分に行われず、膜密度や膜強度の高い酸化イットリウム被膜が得られ難くなる。
0119
また、酸化イットリウム原料粉末の噴射速度が1000m/secを超えると、酸化イットリウム原料粉末の衝突エネルギーが大きいために、酸化イットリウム原料粉末が基材や酸化イットリウム被膜に衝突した際に、酸化イットリウム原料粉末自体のブラスト作用により酸化イットリウム被膜がダメージを受けて酸化イットリウム被膜にクラックが発生するおそれがある。
0120
本工程で酸化イットリウム原料粉末の噴射速度を制御すると、酸化イットリウム被膜における粒子状部と非粒子状部との混在の度合い、および立方晶と単斜晶との混在の度合いを制御することができる。
0121
<噴射距離>
本発明では、ノズルの先端部と基材の表面との間の噴射距離が、通常100〜400mm、好ましくは100〜200mmである。
0122
噴射距離が100〜400mmであると、噴射される酸化イットリウム原料粉末が基材や酸化イットリウム被膜に衝突した際に、酸化イットリウム原料粉末の粒子が適度の衝撃力で破砕されるため、粒子状部と非粒子状部とが適度に混在するとともに立方晶と単斜晶とが適度な比率で共存する酸化イットリウム被膜が得られる。
0123
一方、噴射距離が100mm未満であると、距離が近すぎて酸化イットリウム原料粉末の衝突の機会が少ないことから酸化イットリウム原料粉末が十分に破砕されないため、粒子状部と非粒子状部とが適度に混在するとともに立方晶と単斜晶とが適度な比率で共存する酸化イットリウム被膜が得られにくくなる。
0124
また、噴射距離が400mmを超えると、距離が遠すぎて衝撃力が弱くなり酸化イットリウム原料粉末が十分に破砕されないため、粒子状部と非粒子状部とが適度に混在するとともに立方晶と単斜晶とが適度な比率で共存する酸化イットリウム被膜が得られにくくなる。
0125
<膜厚>
本工程で得られる酸化イットリウム被膜は、膜厚が、通常10μm以上、好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは50〜150μmである。
0126
本工程で得られる酸化イットリウム被膜の膜厚が通常10μm以上である理由は、本発明に係るプラズマエッチング装置用部品の酸化イットリウム被膜の膜厚が通常10μm以上である理由と同じであるため、説明を省略する。
0127
なお、従来のプラズマエッチング装置用部品において基材の表面に酸化イットリウム被膜等の酸化物被膜を形成する場合は、基材の表面に砥粒を用いたブラスト処理等の前処理をすることが必要であった。このため、従来のプラズマエッチング装置用部品では、基材の表面に砥粒等のブラスト材の残留片が存在したり、ブラストによって基材の表面に破砕層が形成されたりし、酸化物被膜ごと膜剥離し易いという問題があった。
0128
これに対し、本発明に係るプラズマエッチング装置用部品の製造方法では、基材の表面に衝撃焼結法で酸化イットリウム被膜を形成する前に、基材の表面にブラスト処理する必要がない。本発明で衝撃焼結法を用いて酸化イットリウム原料粉末を高速噴射すると、基材の表面の酸化被膜が衝突した酸化イットリウム原料粉末により破壊され、活性面が露出して、ブラスト処理と同様の作用が生じる。このため、本発明では、別途、ブラスト処理を行う必要がないからである。したがって、本発明では、ブラスト処理を省略することができるため、生産コストを低減することができる。
0129
(プラズマエッチング装置用部品およびプラズマエッチング装置用部品の製造方法の奏する効果)
実施形態に係るプラズマエッチング装置用部品、および実施形態に係るプラズマエッチング装置用部品の製造方法で得られるプラズマエッチング装置用部品では、酸化イットリウム原料粉末をほとんど溶融させずに堆積する衝撃焼結法を用いて酸化イットリウム被膜を形成していることから偏平状の溶融粒子が生じ難いため、酸化イットリウム被膜の表面欠陥を少なくすることができる。
0130
また、実施形態に係るプラズマエッチング装置用部品、および実施形態に係るプラズマエッチング装置用部品の製造方法で得られるプラズマエッチング装置用部品では、酸化イットリウム被膜の高密度化と表面の平滑化とを図ることができるため、酸化イットリウム被膜の内部欠陥を少なくすることができる。
0131
さらに、実施形態に係るプラズマエッチング装置用部品、および実施形態に係るプラズマエッチング装置用部品の製造方法で得られるプラズマエッチング装置用部品では、酸化イットリウム被膜を構成する酸化イットリウムの結晶構造の安定性が高くなるため、酸化イットリウム被膜の化学的安定性を向上することができる。
0132
このように、実施形態に係るプラズマエッチング装置用部品、および実施形態に係るプラズマエッチング装置用部品の製造方法で得られるプラズマエッチング装置用部品の酸化イットリウム被膜は、表面欠陥および内部欠陥が少なく、かつ酸化イットリウム被膜の化学的安定性が高い。このため、実施形態に係るプラズマエッチング装置用部品およびその製造方法によれば、プラズマエッチング装置用部品からのパーティクルの発生が安定的かつ有効的に抑制される。
0133
また、実施形態に係るプラズマエッチング装置用部品、および実施形態に係るプラズマエッチング装置用部品の製造方法で得られるプラズマエッチング装置用部品によれば、プラズマエッチング装置のクリーニングの回数を少なくしてプラズマエッチング装置の稼働率を向上させることにより、生産性が高くなる。
0134
さらに、実施形態に係るプラズマエッチング装置用部品、および実施形態に係るプラズマエッチング装置用部品の製造方法で得られるプラズマエッチング装置用部品によれば、プラズマエッチング装置用部品の交換の頻度が少なくなり、プラズマエッチング装置用部品のコストが低くなる。
0135
また、実施形態に係るプラズマエッチング装置用部品、および実施形態に係るプラズマエッチング装置用部品の製造方法で得られるプラズマエッチング装置用部品を有するプラズマエッチング装置を用いて作製される薄膜、素子等の製品は、歩留りが高くなる。
0136
(プラズマエッチング装置用部品の製造方法の奏する効果)
実施形態に係るプラズマエッチング装置用部品の製造方法によれば、基材の表面に酸化イットリウム被膜を形成する前に、基材の表面にブラスト処理する必要がない。
0137
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されて解釈されるものではない。
0138
[実施例1〜7、比較例1]
(基材)
基材として、縦100mm×横200mmのアルミニウム製基材を用意した。
(原料スラリーの調製)
表1に示す酸化物からなる原料粉末と、溶媒としてのエチルアルコールとを混合して、表1に示す組成の原料スラリーを調製した。
0140
(酸化イットリウム被膜の作製)
燃焼フレーム型噴射装置(成膜装置)を用い、表1に示す供給条件で衝撃焼結法により原料スラリーを燃焼フレームに供給するとともに、原料スラリー中の酸化イットリウム原料粉末を表1に示す噴射条件で基材に向けて噴射させた。
なお、原料スラリーの燃焼フレームへの供給は、原料スラリーを燃焼フレームの中心部に達するように供給する方法(実施例1〜6)と、原料スラリーを燃焼フレームの中心部に達しないように供給する方法(実施例7)とを行った。
実施例1〜7では、燃焼フレーム中の酸化イットリウム原料粉末は、ほとんど溶融させずに噴射された後、基材の表面に堆積して酸化イットリウム被膜を形成していた。これにより、プラズマエッチング装置用部品が得られた。
0141
また、比較例として、表1に示す酸化物からなる原料粉末を用い、上記衝撃焼結法に代えてプラズマ溶射法を用いた以外は実施例1と同様にしてプラズマエッチング装置用部品を作製した(比較例1)。
表1に、製造条件および酸化イットリウム被膜の厚さを示す。
0142
0143
(プラズマエッチング装置用部品の酸化イットリウム被膜の評価)
得られたプラズマエッチング装置用部品の酸化イットリウム被膜について、膜密度、粒子状部(粒界が観察される粒子)と非粒子状部(粒界が観察されない粒子)との面積比、および粒子状部の平均粒径を測定した。
0144
<膜密度>
膜密度は、はじめに、膜断面の合計の単位面積が200μm×200μmとなるように倍率500倍の拡大写真を撮った。次に、この拡大写真の単位面積中の気孔の面積の割合を気孔率(%)として算出し、100%からこの気孔率(%)を差し引いた値を膜密度(%)として算出した。
0145
<粒子状部と非粒子状部との面積比>
酸化イットリウム被膜の表面における単位面積20μm×20μm、倍率5000倍の拡大写真を撮り、目視して、酸化イットリウム粒子1個の粒界の分かるものを粒界が観察される粒子(粒子状部)、粒界が結合して分からないものを粒界が観察されない粒子(非粒子状部)として面積比を求めた。粒子状部の面積比と非粒子状部の面積比の合計は100%である。
0146
この作業を酸化イットリウム被膜の表面の任意の3ヵ所について行い、それぞれ粒子状部の面積比と非粒子状部の面積比を求めた。さらに、粒子状部の面積比の3ヵ所の平均値と、非粒子状部の面積比の3ヵ所の平均値とをそれぞれ求めた。
0147
<粒子状部の平均粒径>
粒子状部と非粒子状部との面積比の算出のために撮影した倍率5000倍の拡大写真を用いて、粒子状部の平均粒径を測定した。
0148
はじめに、倍率5000倍の拡大写真に写された粒子状部の粒界上に設定した任意の2点を結ぶ線分のうち、長さが最大になる線分の長さを測定し、この値を粒子状部の粒径とした。次に、この粒子状部の粒径の測定を、倍率5000倍の拡大写真に写った50個の粒子状部について行い、50個の粒子状部の粒径の相加平均値を、粒子状部の平均粒径とした。
表2に、膜密度、粒子状部と非粒子状部との面積比、および粒子状部の平均粒径の測定結果を示す。
0149
0150
表2に示される結果より、実施例1〜7のプラズマエッチング装置用部品は、酸化イットリウム被膜の膜密度が高く、粒子状部の面積比が0〜80%の範囲内であることが分かった。
0151
また、衝撃焼結法を用いて作製した実施例1〜7のプラズマエッチング装置用部品は、酸化イットリウム被膜の粒子状部の平均粒径が、酸化イットリウム原料粉末の平均粒径より小さくなっていることが分かった。
一方、溶射法を用いて作製した比較例1のプラズマエッチング装置用部品は、酸化イットリウム被膜の粒子状部の平均粒径が、酸化イットリウム原料粉末の平均粒径より大きくなっていることが分かった。
0152
また、実施例1〜6のプラズマエッチング装置用部品は、酸化イットリウム被膜の表面粗さRaが3μm以下であった。また、実施例7のプラズマエッチング装置用部品は、酸化イットリウム被膜の表面粗さRaが6.2μmであった。これは非粒子状部が少ないために、表面の凹凸が大きくなったものと考えられる。なお、比較例1のプラズマエッチング装置用部品は、酸化イットリウム被膜の表面粗さRaが3.4μmであった。
0153
(プラズマエッチング装置用部品のエッチング試験)
プラズマエッチング装置内に、各実施例および比較例にかかるプラズマエッチング装置用部品を配置し、この部品をCF4(流量50sccm)、O2(流量20sccm)、およびAr(流量50sccm)からなる混合エッチングガスに晒した。
エッチングチャンバー内を10mTorr、出力300W、バイアス100Wとし、プラズマエッチング装置を2時間連続稼働させてプラズマエッチングした。
0154
<重量減少量>
プラズマエッチング装置用部品の酸化イットリウム被膜について、プラズマエッチング前後の重量を測定し、プラズマエッチングによる重量減少量を測定した。
0155
<付着面積率>
プラズマエッチング後のプラズマエッチング装置用部品の酸化イットリウム被膜について、テープ引き剥がし法によるピーリング試験を行い、付着面積率を測定した。
ここで、付着面積率とは、テープが酸化イットリウム被膜に接着した全面積(125μm×95μm)に対する、引き剥がしたテープに付着した酸化イットリウム粒子の存在する面積の比率である。付着面積率は、値が小さいほど好ましい。たとえば、引き剥がしたテープに付着した酸化イットリウム粒子の存在する面積が125μm×95μmであれば、100%となり最も悪い値となる。
表3に、重量減少量、および付着面積率の測定結果を示す。
0156
0157
表3に示される結果より、実施例1〜7のドライエッチング装置用部品の酸化イットリウム被膜は、重量減少量および付着面積率が小さく、プラズマアタックおよびラジカルアタックへの耐性が高いことが分かった。このため、実施例1〜7のドライエッチング装置用部品を、ドライエッチング装置の構成部材として用いると、パーティクルの発生を効果的に抑制することができると考えられる。
0158
[実施例8〜14]
製造条件および酸化イットリウム被膜の厚さを表4に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、プラズマエッチング装置用部品を作製した。
0159
なお、各実験例で用いられる酸化イットリウム原料粉末としては、立方晶で、純度99.99質量%以上、かつ十分な粉砕および篩分けにより20μmを超える粗大粒子を含まないものを用いた。
表4に、製造条件および酸化イットリウム被膜の厚さを示す。
0160
0161
(プラズマエッチング装置用部品の酸化イットリウム被膜の評価)
得られたプラズマエッチング装置用部品の酸化イットリウム被膜について、実施例1と同様にして膜密度、粒子状部(粒界が観察される粒子)と非粒子状部(粒界が観察されない粒子)との面積比、および粒子状部の平均粒径を測定した。
また、得られたプラズマエッチング装置用部品の酸化イットリウム被膜について、酸化イットリウム被膜の最強ピーク比率(Im/Ic)を測定した。
0162
<酸化イットリウム被膜の最強ピーク比率(Im/Ic)>
酸化イットリウム被膜の表面について、Cuターゲット、管電圧40kV、管電流40mAの条件でX線表面分析を行い、酸化イットリウム被膜の結晶構造を調べた。
次に、単斜晶の最強ピークのピーク値Imを、立方晶の最強ピークのピーク値Icで除して、最強ピーク比率(Im/Ic)を算出した。
ここで、単斜晶の最強ピークとは、単斜晶の複数個のピークのうち、ピーク値が最大のピークを意味する。立方晶の最強ピークとは、立方晶の複数個のピークのうち、ピーク値が最大のピークを意味する。
0163
表5に、膜密度、粒子状部と非粒子状部との面積比、粒子状部の平均粒径、および酸化イットリウム被膜の最強ピーク比率(Im/Ic)の測定結果を示す。
0164
0165
表5に示される結果より、実施例8〜14のプラズマエッチング装置用部品は、酸化イットリウム被膜の膜密度が高く、粒子状部の面積比が0〜80%の範囲内であることが分かった。
0166
また、実施例8〜14のプラズマエッチング装置用部品は、酸化イットリウム被膜の粒子状部の平均粒径が、酸化イットリウム原料粉末の平均粒径より小さくなっていることが分かった。
0167
さらに、実施例8〜14のプラズマエッチング装置用部品は、最強ピーク比率(Im/Ic)が0.2〜0.6の範囲内であった。
0168
また、実施例8〜14のプラズマエッチング装置用部品は、酸化イットリウム被膜の表面粗さRaが3μm以下であった。
0169
(プラズマエッチング装置用部品のエッチング試験)
得られたプラズマエッチング装置用部品の酸化イットリウム被膜について、実施例1と同様にして重量減少量、および付着面積率を測定した。
また、得られたプラズマエッチング装置用部品の酸化イットリウム被膜について、膜強度を測定した。
0170
<膜強度>
膜強度は、セバスチャン引張試験法により測定した。すなわち、試験用端子を、エポキシ接着剤を用いて、酸化イットリウム被膜の表面に接合した後、試験用端子を酸化イットリウム被膜の表面の垂直方向に引っ張って、基材と酸化イットリウム被膜との剥離強度を求めた。
膜強度は、比較例1についても測定した。
表6に、重量減少量、付着面積率、および膜強度の測定結果を示す。
0171
0172
表6に示される結果より、実施例8〜14のドライエッチング装置用部品の酸化イットリウム被膜は、重量減少量および付着面積率が小さく、プラズマアタックおよびラジカルアタックへの耐性が高いことが分かった。このため、実施例8〜14のドライエッチング装置用部品を、ドライエッチング装置の構成部材として用いると、パーティクルの発生を効果的に抑制することができると考えられる。
0173
また、実施例8〜14のプラズマエッチング装置用部品は、膜強度が高いことが分かった。
0174
これらの結果より、実施例8〜14のプラズマエッチング装置用部品の酸化イットリウム被膜は、プラズマアタックおよびラジカルアタックを受けても、割れや欠けの発生を抑制することができることが分かった。一方、比較例1のプラズマエッチング装置用部品の膜強度は、28.3MPaと非常に低いことが分かった。
0175
なお、上記各実施例では部品本体表面に直接に酸化イットリウム被膜を形成した例で示しているが、部品本体表面にAl2O3等から成るような酸化膜を少なくとも1層形成し、その最表面に酸化イットリウム被膜を形成することにより、部品の絶縁性を高められることができる。
実施例
0176
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
0177
1プラズマエッチング装置用部品
10基材
20酸化イットリウム被膜
21粒子状部
22 非粒子状部