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技術 成形体、その製造方法、電子デバイス用部材及び電子デバイス

出願人 リンテック株式会社
発明者 上村和恵近藤健鈴木悠太
出願日 2011年9月16日 (9年2ヶ月経過) 出願番号 2012-535025
公開日 2014年2月3日 (6年9ヶ月経過) 公開番号 WO2012-039357
状態 特許登録済
技術分野 液晶3(基板、絶縁膜及び配向部材) 液晶3-1(基板及び絶縁膜) エレクトロルミネッセンス光源 積層体(2)
主要キーワード 受光側スリット 取り出し角度 ポリウレタンアクリラート 照射ライン パルス定数 薄膜評価 プラズマイオン注入法 プラズマイオン注入
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重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2014年2月3日)のものです。
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課題・解決手段

本発明は、基材層水酸基含有ポリマーを含むプライマー層、及びガスバリア層がこの順に積層されてなる成形体であって、前記ガスバリア層が、少なくとも、酸素原子及びケイ素原子を含む材料から構成され、その表層部における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在量全体に対する、酸素原子の存在割合が60〜75%、窒素原子の存在割合が0〜10%、ケイ素原子の存在割合が25〜35%であり、かつ、該表層部における膜密度が、2.4〜4.0g/cm3である成形体、その製造方法、この成形体からなる電子デバイス用部材、及びこの電子デバイス用部材を備える電子デバイスである。本発明によれば、ガスバリア性及び透明性に優れる成形体、その製造方法、この成形体からなる電子デバイス用部材、並びに、この電子デバイス用部材を備える電子デバイスが提供される。

概要

背景

従来、プラスチックフィルム等の高分子成形体は、低価格であり加工性に優れるため、所望の機能を付与して種々の分野で用いられている。
例えば、食品医薬品の包装用フィルムには、蛋白質や油脂等の酸化変質を抑制して味や鮮度を保持するため、水蒸気酸素の透過を防ぐガスバリア性のプラスチックフィルムが用いられている。

また、近年、液晶ディスプレイエレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等のディスプレイには、薄型化、軽量化、フレキシブル化等を実現するために、電極を有する基板として、ガラス板に代えて透明プラスチックフィルムを用いることが検討されている。しかしながら、プラスチックフィルムは、ガラス板に比べて水蒸気や酸素等を透過しやすく、ディスプレイ内部の素子劣化を起こしやすいという問題があった。

この問題を解決すべく、特許文献1には、透明プラスチックフィルムに金属酸化物からなる透明ガスバリア層を積層したフレキシブルディスプレイ基板が提案されている。
しかしながら、この文献記載のフレキシブルディスプレイ基板は、透明プラスチックフィルム表面に、蒸着法、イオンプレーティング法スパッター法等により、金属酸化物からなる透明ガスバリア層を積層したものであるため、該基板を丸めたり折り曲げたりすると、ガスバリア層にクラックが発生してガスバリア性が低下するという問題があった。

また、特許文献2には、フィルムの少なくとも一方の面にポリシラザン膜を形成し、該ポリシラザン膜にプラズマ処理を施して、ガスバリア性フィルムを製造する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、ガスバリア層の厚みをミクロンオーダーにしなければ、充分なガスバリア性能を出せないという問題があった。例えば、ガスバリア層の厚みを0.1μmとすると、水蒸気透過率は0.50g/m2/dayであったと記載されている。

概要

本発明は、基材層水酸基含有ポリマーを含むプライマー層、及びガスバリア層がこの順に積層されてなる成形体であって、前記ガスバリア層が、少なくとも、酸素原子及びケイ素原子を含む材料から構成され、その表層部における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在量全体に対する、酸素原子の存在割合が60〜75%、窒素原子の存在割合が0〜10%、ケイ素原子の存在割合が25〜35%であり、かつ、該表層部における膜密度が、2.4〜4.0g/cm3である成形体、その製造方法、この成形体からなる電子デバイス用部材、及びこの電子デバイス用部材を備える電子デバイスである。本発明によれば、ガスバリア性及び透明性に優れる成形体、その製造方法、この成形体からなる電子デバイス用部材、並びに、この電子デバイス用部材を備える電子デバイスが提供される。

目的

本発明は、上記した従来技術に鑑みてなされたものであり、ガスバリア性及び透明性に優れる成形体、その製造方法、この成形体からなる電子デバイス用部材、並びに、この電子デバイス用部材を備える電子デバイスを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

基材層水酸基含有ポリマーを含むプライマー層、及びガスバリア層がこの順に積層されてなる成形体であって、前記ガスバリア層が、少なくとも、酸素原子及びケイ素原子を含む材料から構成され、その表層部における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在量全体に対する、酸素原子の存在割合が60〜75%、窒素原子の存在割合が0〜10%、ケイ素原子の存在割合が25〜35%であり、かつ、該表層部における膜密度が、2.4〜4.0g/cm3である成形体。

請求項2

前記ガスバリア層が、ポリシラザン化合物を含む層にイオン注入されて得られるものである請求項1に記載の成形体。

請求項3

前記水酸基含有ポリマーが、水酸基を含む繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して10mol%以上含有するものである請求項1又は2に記載の成形体。

請求項4

前記イオンが、水素窒素酸素アルゴンヘリウムネオンキセノン及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種ガスイオン化されたものである請求項2又は3に記載の成形体。

請求項5

前記ガスバリア層が、ポリシラザン化合物を含む層に、プラズマイオン注入によりイオンが注入されて得られる層である請求項2〜4のいずれかに記載の成形体。

請求項6

前記ポリシラザン化合物が、ペルヒドロポリシラザンである請求項2〜5のいずれかに記載の成形体。

請求項7

40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が0.10g/m2/day未満である請求項1〜6のいずれかに記載の成形体。

請求項8

JISK7361−1に準拠した全光線透過率が90%以上である請求項1〜7のいずれかに記載の成形体。

請求項9

水酸基含有ポリマーを含むプライマー層が表面に形成された基材の、前記プライマー層上にポリシラザン化合物を含む層を形成する工程と、前記ポリシラザン化合物を含む層の表面部に、イオンを注入する工程を有する請求項2に記載の成形体の製造方法。

請求項10

水酸基含有ポリマーを含むプライマー層が表面に形成された基材の、前記プライマー層上にポリシラザン化合物を含む層を形成する工程と、該ポリシラザン化合物を含む層の表面部に、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のガスをイオン注入する工程を有する請求項9に記載の成形体の製造方法。

請求項11

水酸基含有ポリマーを含むプライマー層が表面に形成された基材の、前記プライマー層上にポリシラザン化合物を含む層を形成する工程と、該ポリシラザン化合物を含む層の表面部に、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のガスを、プラズマイオン注入法によりイオン注入する工程を有する請求項9に記載の成形体の製造方法。

請求項12

請求項1〜8のいずれかに記載の成形体からなる電子デバイス用部材

請求項13

請求項12に記載の電子デバイス用部材を備える電子デバイス

技術分野

0001

本発明は、成形体、その製造方法、この成形体からなる電子デバイス用部材、及びこの電子デバイス用部材を備える電子デバイスに関する。

背景技術

0002

従来、プラスチックフィルム等の高分子成形体は、低価格であり加工性に優れるため、所望の機能を付与して種々の分野で用いられている。
例えば、食品医薬品の包装用フィルムには、蛋白質や油脂等の酸化変質を抑制して味や鮮度を保持するため、水蒸気酸素の透過を防ぐガスバリア性のプラスチックフィルムが用いられている。

0003

また、近年、液晶ディスプレイエレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等のディスプレイには、薄型化、軽量化、フレキシブル化等を実現するために、電極を有する基板として、ガラス板に代えて透明プラスチックフィルムを用いることが検討されている。しかしながら、プラスチックフィルムは、ガラス板に比べて水蒸気や酸素等を透過しやすく、ディスプレイ内部の素子劣化を起こしやすいという問題があった。

0004

この問題を解決すべく、特許文献1には、透明プラスチックフィルムに金属酸化物からなる透明ガスバリア層を積層したフレキシブルディスプレイ基板が提案されている。
しかしながら、この文献記載のフレキシブルディスプレイ基板は、透明プラスチックフィルム表面に、蒸着法、イオンプレーティング法スパッター法等により、金属酸化物からなる透明ガスバリア層を積層したものであるため、該基板を丸めたり折り曲げたりすると、ガスバリア層にクラックが発生してガスバリア性が低下するという問題があった。

0005

また、特許文献2には、フィルムの少なくとも一方の面にポリシラザン膜を形成し、該ポリシラザン膜にプラズマ処理を施して、ガスバリア性フィルムを製造する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、ガスバリア層の厚みをミクロンオーダーにしなければ、充分なガスバリア性能を出せないという問題があった。例えば、ガスバリア層の厚みを0.1μmとすると、水蒸気透過率は0.50g/m2/dayであったと記載されている。

先行技術

0006

特開2000−338901号公報
特開2007−237588号公報

発明が解決しようとする課題

0007

本発明は、上記した従来技術に鑑みてなされたものであり、ガスバリア性及び透明性に優れる成形体、その製造方法、この成形体からなる電子デバイス用部材、並びに、この電子デバイス用部材を備える電子デバイスを提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0008

本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、基材層水酸基含有ポリマーを含むプライマー層、及び、ガスバリア層がこの順に積層されてなる成形体であって、前記ガスバリア層が、少なくとも、酸素原子及びケイ素原子を含む材料から構成され、その表層部における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合、並びに膜密度が特定の値のものである成形体は、ガスバリア性及び透明性に優れることを見出した。また、並びに、基材層上に水酸基含有ポリマーを含むプライマー層を形成し、さらにその上にガスバリア層として、ポリシラザン化合物を含む層を形成した後、該ポリシラザン化合物を含む層に、イオン注入することにより、ガスバリア性及び透明性に優れる成形体を簡便かつ効率よく製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。

0009

かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(8)の成形体が提供される。
(1)基材層、水酸基含有ポリマーを含むプライマー層、及びガスバリア層がこの順に積層されてなる成形体であって、前記ガスバリア層が、少なくとも、酸素原子及びケイ素原子を含む材料から構成され、その表層部における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在量全体に対する、酸素原子の存在割合が60〜75%、窒素原子の存在割合が0〜10%、ケイ素原子の存在割合が25〜35%であり、かつ、該表層部における膜密度が、2.4〜4.0g/cm3である成形体。
(2)前記ガスバリア層が、ポリシラザン化合物を含む層にイオンが注入されて得られるものである(1)に記載の成形体。
(3)前記水酸基含有ポリマーが、水酸基を含む繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して10mol%以上含有するものである(1)又は(2)に記載の成形体。
(4)前記イオンが、水素窒素、酸素、アルゴンヘリウムネオンキセノン及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種ガスイオン化されたものである(2)又は(3)に記載の成形体。

0010

(5)前記ガスバリア層が、ポリシラザン化合物を含む層に、プラズマイオン注入によりイオンが注入されて得られる層である(2)〜(4)のいずれかに記載の成形体。
(6)前記ポリシラザン化合物が、ペルヒドロポリシラザンである(2)〜(5)のいずれかに記載の成形体。
(7)40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が0.10g/m2/day未満である(1)〜(6)のいずれかに記載の成形体。
(8)JISK7361−1に準拠した全光線透過率が90%以上である(1)〜(7)のいずれかに記載の成形体。

0011

本発明の第2によれば、下記(9)〜(11)の成形体の製造方法が提供される。
(9)水酸基含有ポリマーを含むプライマー層が表面に形成された基材の、前記プライマー層上にポリシラザン化合物を含む層を形成する工程と、前記ポリシラザン化合物を含む層の表面部に、イオンを注入する工程を有する(2)に記載の成形体の製造方法。
(10)水酸基含有ポリマーを含むプライマー層が表面に形成された基材の、前記プライマー層上にポリシラザン化合物を含む層を形成する工程と、該ポリシラザン化合物を含む層の表面部に、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のガスをイオン注入する工程を有する(9)に記載の成形体の製造方法。
(11)水酸基含有ポリマーを含むプライマー層が表面に形成された基材の、前記プライマー層上にポリシラザン化合物を含む層を形成する工程と、該ポリシラザン化合物を含む層の表面部に、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のガスを、プラズマイオン注入法によりイオン注入する工程を有する(9)に記載の成形体の製造方法。

0012

本発明の第3によれば、下記(12)の電子デバイス用部材が提供される。
(12)前記(1)〜(8)のいずれかに記載の成形体からなる電子デバイス用部材。
本発明の第4によれば、下記(13)の電子デバイスが提供される。
(13)前記(12)に記載の電子デバイス用部材を備える電子デバイス。

発明の効果

0013

本発明の成形体は、優れたガスバリア性能を有し、透明性が良好である。よって、本発明の成形体は、太陽電池タッチパネル電子ペーパー、ディスプレイ等の電子デバイス用部材として好適に用いることができる。
本発明の製造方法によれば、優れたガスバリア性を有する本発明の成形体を安全に簡便に製造することができる。また、無機膜成膜に比して低コストにて容易に大面積化を図ることができる。
本発明の電子デバイス用部材は、優れたガスバリア性と透明性を有するため、タッチパネル、電子ペーパー、有機無機ELのフレキシブルディスプレイ、太陽電池等の電子デバイス等に好適に用いることができる。

図面の簡単な説明

0014

ポリシラザン層にイオン注入してガスバリア層を形成することにより、本発明の成形体を得る工程での、成形体の層構成断面図である。
本発明の成形体の層構成断面図である。
実施例1の成形体1の表面部領域(表面から深さ方向に50nm程度の領域)における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合(%)を表す図である。
比較例4の成形体4rの表面部領域(表面から深さ方向に50nm程度の領域)における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合(%)を表す図である。
実施例1の成形体1における、酸素原子、炭素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合(%)を表す図である。
比較例4の成形体4rにおける、酸素原子、炭素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合(%)を表す図である。

0015

以下、本発明を、1)成形体、2)成形体の製造法、並びに、3)電子デバイス用部材及び電子デバイスに項分けして詳細に説明する。

0016

1)成形体
本発明の成形体は、基材層、水酸基含有ポリマーを含むプライマー層、及び、ガスバリア層がこの順に積層されてなる成形体であって、前記ガスバリア層が、少なくとも、酸素原子及びケイ素原子を含む材料から構成され、その表層部における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在量全体に対する、酸素原子の存在割合が60〜75%、窒素原子の存在割合が0〜10%、ケイ素原子の存在割合が25〜35%であり、かつ、該表層部における膜密度が、2.4〜4.0g/cm3であることを特徴とする。

0017

(基材層)
本発明の成形体は、基材層を有する。該基材層の素材としては、ポリシラザン化合物以外であって、成形体の目的に合致するものであれば特に制限されない。例えば、ポリイミドポリアミドポリアミドイミドポリフェニレンエーテルポリエーテルケトンポリエーテルエーテルケトンポリオレフィンポリエステルポリカーボネートポリスフォンポリエーテルスルフォンポリフェニレンスルフィドポリアリレートアクリル系樹脂シクロオレフィン系ポリマー芳香族系重合体等が挙げられる。

0018

これらの中でも、透明性に優れ、汎用性があることから、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート又はシクロオレフィン系ポリマーが好ましく、ポリエステル又はシクロオレフィン系ポリマーがより好ましい。

0019

ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートポリブチレンテレフタレートポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等が挙げられる。
ポリアミドとしては、全芳香族ポリアミドナイロン6ナイロン66ナイロン共重合体等が挙げられる。

0020

シクロオレフィン系ポリマーとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。その具体例としては、アペル(三井化学社製のエチレンシクロオレフィン共重合体)、アートン(JSR社製のノルボルネン系重合体)、ゼオノア(日本ゼオン社製のノルボルネン系重合体)等が挙げられる。

0021

基材層の厚みとしては、特に限定されず、成形体の目的に合わせて決定すればよいが、通常0.5〜500μm、好ましくは1〜100μmである。

0022

(水酸基含有ポリマーを含むプライマー層)
本発明の成形体は、水酸基含有ポリマーを含むプライマー層(以下、単に「プライマー層」ということがある。)を、前記基材層と後述するガスバリア層との間に有する。
かかるプライマー層を形成することで、後述するように、基材層とガスバリア層との密着性を高め、かつ、ポリシラザン化合物を含む層にイオンを注入してガスバリア層を形成する場合において、イオンがポリシラザン化合物を含む層を通過し、基材層へイオンが注入されて基材層が着色するのを防止することができる。

0023

前記プライマー層は、水酸基含有ポリマーを、重量比で30%以上含むのが好ましく、50%以上含むのがより好ましい。

0024

水酸基含有ポリマーとしては、水酸基を含有するポリマーであれば特に制限されないが、水酸基を有する繰り返し単位を繰り返し単位全体に対して10mol%以上含有するものであるのが好ましく、50mol%以上含有するものがより好ましい。水酸基の含有量がこの範囲であれば、基材層とガスバリア層との層間密着性が向上させることができる。

0026

これらの中でも、成形体の透明性の低下をより効果的に防止する観点などから、ポリビニルアルコール系ポリマーが好ましく、ポリビニルアルコールがより好ましい。また、ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルが部分的にケン化されてなるケン化物であってもよく、完全にケン化されてなるものでもよい。ポリビニルアルコールのケン化度は80%以上であるのが好ましい。
また、ポリビニルブチラールやポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアセタール化ケタール化したものであり、水酸基を上記の範囲の量が残存するように反応したものが好ましい。

0027

水酸基含有ポリマーの数平均分子量は、200〜1,000,000であるのが好ましく、300〜800,000であるのがより好ましく、1,000〜20,000がさらに好ましい。

0028

水酸基含有ポリマーを含むプライマー層は、例えば、水酸基含有ポリマーを適当な溶剤に溶解又は分散してなるプライマー層形成用溶液を基材層上に塗付し、得られた塗膜を乾燥させ、所望により加熱することより形成することができる。プライマー層形成用溶液としては、市販品(例えば、日本合成化学工業社製、ゴーセノールGL−03等)をそのまま用いてもよい。

0029

プライマー層形成用溶液を基材層に塗付する方法としては、通常の湿式コーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法ロールコート、グラビアコートナイフコート、エアナイフコート、ロールナイフコート、ダイコートスクリーン印刷法スプレーコートグラビアオフセット法等が挙げられる。

0030

プライマー層形成用溶液の塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。
プライマー層の厚みは、通常1〜1000nm、好ましくは10〜100nmである。

0031

(ガスバリア層)
本発明の成形体は、前記基材層上に形成されたプライマー層の上にさらにガスバリア層を有する。
該ガスバリア層は、下記の(a)〜(c)を特徴とする。
(a)少なくとも、酸素原子及びケイ素原子を含む材料から構成されてなる。
(b)表層部における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在量全体に対する、酸素原子の存在割合が60〜75%、好ましくは、60〜72%、より好ましくは、63〜70%、窒素原子の存在割合が0〜10%、好ましくは、0.1〜8%、より好ましくは、0.1〜6%、ケイ素原子の存在割合が25〜35%、好ましくは27〜35%、より好ましくは、29〜32%である。
(c)表層部における膜密度が、2.4〜4.0g/cm3である。

0032

前記ガスバリア層の表層部とは、ガスバリア層の表面、及び該表面から深さ方向に5nmまでの領域をいう。また、ガスバリア層の表面とは他層との境界面の場合も含む意であり、前述するプライマー層とは逆の面である。
表層部における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合は、実施例において説明する方法で測定される。

0033

膜密度は、X線反射率法(XRR)を用いて算出することができる。
X線は、基板上の薄膜に対して非常に浅い角度で入射させると全反射される。入射X線の角度が全反射臨界角以上になると、薄膜内部にX線が侵入し薄膜表面や界面で透過波反射波に分かれ、反射波は干渉する。全反射臨界角を解析することで、膜の密度を求めることができる。なお、入射角度を変えながら測定を行い、光路差の変化に伴う反射波の干渉信号の解析から、薄膜の膜厚も求めることができる。
膜密度は、以下の方法で測定することができる。
一般に、X線に対する物質屈折率n、及び屈折率nの実部部分のδは、以下の式1及び式2をみたすことが知られている。

0034

0035

0036

ここで、reは電子の古典半径(2.818×10−15m)を、N0はアボガドロ数を、λはX線の波長を、ρは密度(g/cm3)を、Zi、Mi、xiは、それぞれi番目原子の原子番号、原子量及び原子数比モル比)を、fi’はi番目の原子の原子散乱因子異常分散項)を表す。また、全反射臨界角度θcは、吸収に関係するβを無視すると、式3で与えられる。

0037

0038

従って、式2及び式3の関係から、密度ρは式4で求めることができる。

0039

0040

ここで、θcはX線反射率より求めることのできる値であり、re、N0、λは定数であり、Zi、Mi、fi’はそれぞれ構成原子固有の値となる。なお、xi:原子数比(モル比)に関しては、XPS測定から得られた結果を用いる。
ガスバリア層の表層部における膜密度は、実施例において説明する方法で測定し、式4を用いて得られる。

0041

本発明において、ガスバリア層の厚みは、特に制限されないが、通常20nmから100μm、好ましくは30〜500nm、より好ましくは40〜200nmである。
本発明においては、ガスバリア層がナノオーダーであっても、充分なガスバリア性能を有する成形体を得ることができる。

0042

また、本発明のガスバリア層は、ポリシラザン化合物を含む層(以下、「ポリシラザン層」ということがある。)に、イオンが注入されて得られる層(以下、「イオン注入層」ということがある。)であってもよい。
前記イオン注入層は、上記(a)〜(c)の要件を満たすものであることが好ましい。

0043

本発明に用いるポリシラザン化合物は、分子内に、−Si−N−結合を含む繰り返し単位を有する高分子である。具体的には、式(1)

0044

0045

で表される繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。
式(1)中、nは任意の自然数を表す。
Rx、Ry、Rzは、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基又はアルキルシリル基等の非加水分解性基を表す。

0046

前記無置換若しくは置換基を有するアルキル基のアルキル基としては、例えば、メチル基エチル基、n−プロピル基イソプロピル基n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基n−オクチル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。

0047

無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基のシクロアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基が挙げられる。

0048

無置換若しくは置換基を有するアルケニル基のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。

0049

前記アルキル基、シクロアルキル基及びアルケニル基の置換基としては、フッ素原子塩素原子臭素原子ヨウ素原子等のハロゲン原子ヒドロキシル基チオール基エポキシ基グリシドキシ基;(メタアクリロイルオキシ基フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。

0050

無置換又は置換基を有するアリール基のアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。

0051

前記アリール基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基ニトロ基シアノ基;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。

0052

アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基トリエチルシリル基トリイソプロピルシリル基、トリt−ブチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、メチルジエチルシリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、メチルシリル基、エチルシリル基等が挙げられる。

0053

これらの中でも、Rx、Ry、Rzとしては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。

0054

前記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリシラザン化合物としては、Rx、Ry、Rzが全て水素原子である無機ポリシラザン、Rx、Ry、Rzの少なくとも1つが水素原子ではない有機ポリシラザンのいずれであってもよい。
無機ポリシラザンとしては、下記

0055

0056

(式中、aは任意の自然数を表す。)で表される繰り返し単位を有する直鎖状構造を有し、690〜2000の分子量を持ち、一分子中に3〜10個のSiH3基を有するペルヒドロポリシラザン(特公昭63−16325号公報)、式(A)

0057

0058

〔式中、b、cは任意の自然数を表し、Y1は、水素原子又は式(B)

0059

0060

(式中、dは任意の自然数を表し、*は結合位置を表し、Y2は水素原子、又は前記(B)で表される基を表す。)で表される基を表す。〕で表される繰り返し単位を有する、直鎖状構造と分岐構造を有するペルヒドロポリシラザン、式(C)

0061

0062

で表されるペルヒドロポリシラザン構造を有する、分子内に、直鎖状構造、分岐構造及び環状構造を有するペルヒドロポリシラザン等が挙げられる。

0063

有機ポリシラザンとしては、
(i)−(Rx’SiHNH)−(Rx’は、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基、又はアルキルシリル基を表す。以下のRx’も同様である。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(ii)−(Rx’SiHNRz’)−(Rz’は、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基、又はアルキルシリル基を表す。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(iii)−(Rx’Ry’SiNH)−(Ry’は、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基、又はアルキルシリル基を表す。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(iv)下記式で表される構造を分子内に有するポリオルガノ(ヒドロシラザン

0064

0065

(v)下記式

0066

0067

〔Rx’、Ry’は前記と同じ意味を表し、e、fは任意の自然数を表し、Y3は、水素原子又は式(E)

0068

0069

(式中、gは任意の自然数を表し、*は結合位置を表し、Y4は水素原子、又は前記(E)で表される基を表す。)で表される基を表す。〕
で表される繰り返し構造を有するポリシラザン等が挙げられる。

0070

上記有機ポリシラザンは、従来公知の方法により製造することができる。例えば、下記式(2)で表される無置換若しくは置換基を有するハロゲノシラン化合物と2級アミンとの反応生成物に、アンモニア又は1級アミンを反応させることにより得ることができる。

0071

0072

式(2)中、mは2又は3を表し、Xはハロゲン原子を表し、R1は、前述した、Rx、Ry、Rz、Rx’、Ry’、Rz’のいずれかの置換基を表す。)
用いる2級アミン、アンモニア及び1級アミンは、目的とするポリシラザン化合物の構造に応じて、適宜選択すればよい。

0073

また、本発明においては、ポリシラザン化合物として、ポリシラザン変性物を用いることもできる。ポリシラザン変性物としては、例えば、金属原子(該金属原子は架橋をなしていてもよい。)を含むポリメタロシラザン、繰り返し単位が〔(SiH2)g(NH)h)〕及び〔(SiH2)iO〕(式中、g、h、iはそれぞれ独立して、1、2又は3である。)で表されるポリシロキサザン(特開昭62−195024号公報)、ポリシラザンにボロン化合物を反応させて製造するポリボロシラザン(特開平2−84437号公報)、ポリシラザンとメタルアルコキシドとを反応させて製造するポリメタロシラザン(特開昭63−81122号公報等)、無機シラザン高重合体改質ポリシラザン(特開平1−138108号公報等)、ポリシラザンに有機成分を導入した共重合シラザン(特開平2−175726号公報等)、ポリシラザンにセラミックス化を促進するための触媒的化合物を付加又は添加した低温セラミックス化ポリシラザン(特開平5−238827号公報等)、

0074

ケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アセチルアセトナト錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報等)、

0075

上記ポリシラザン又はその変性物に、アミン類及び/又は酸類を添加してなるポリシラザン組成物(特開平9−31333号公報)、ペルヒドロポリシラザンにメタノール等のアルコール或いはヘキサメチルジシラザン末端N原子に付加して得られる変性ポリシラザン(特開平5−345826号公報、特開平4−63833号公報)等が挙げられる。

0076

これらの中でも、本発明において用いるポリシラザン化合物としては、Rx、Ry、Rzが全て水素原子である無機ポリシラザン、Rx、Ry、Rzの少なくとも1つが水素原子ではない有機ポリシラザンが好ましく、入手容易性及び優れたガスバリア性を有する注入層を形成できる観点から、無機ポリシラザンがより好ましい。

0077

用いるポリシラザン化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、100〜50,000であるのが好ましい。

0078

さらに、本発明においては、ポリシラザン化合物は、ガラスコーティング材等として市販されている市販品をそのまま使用することができる。

0079

ポリシラザン層は、ポリシラザン化合物の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、硬化剤、他の高分子、老化防止剤光安定剤難燃剤等が挙げられる。

0080

ポリシラザン層中の、ポリシラザン化合物の含有量は、優れたガスバリア性を有するイオン注入層を形成できる観点から、50重量%以上であるのが好ましく、70重量%以上であるのがより好ましい。

0081

ポリシラザン層を形成する方法としては、特に制約はなく、例えば、ポリシラザン化合物の少なくとも一種、所望により他の成分、及び溶剤等を含有する層形成用溶液を、前記プライマー層の上に塗布し、得られた塗膜を適度に乾燥して形成する方法が挙げられる。

0082

塗工装置としては、スピンコーターナイフコーターグラビアコーター等の公知の装置を使用することができる。

0083

得られた塗膜の乾燥、成形体のガスバリア性向上のため、塗膜を加熱することが好ましい。加熱は80〜150℃で、数十秒から数十分行う。

0084

また、ポリシラザン層は、ジメチルジシラザンテトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザンなどの、プラズマ重合シラザン化合物のガスを、プラスチック成形体と接触させて、プラズマ重合処理を施すことによって形成することもできる(特開平9−143289号公報)。

0085

本発明において、形成されるポリシラザン層の厚みは、特に制限されないが、通常20nmから100μm、好ましくは30〜500nm、より好ましくは40〜200nmである。
本発明においては、ポリシラザン層がナノオーダーであっても、充分なガスバリア性能を有する成形体を得ることができる。

0086

ポリシラザン層がプライマー層上に形成されると、図1(a)に示すように、ポリシラザン層30とプライマー層20との境界部において、ポリシラザン化合物と、水酸基含有ポリマーが有する水酸基とが反応してできた反応生成物の層40が形成されると考えられる。図1(b)に示すように、この層40は、ポリシラザン層30にイオンを注入して、図1(c)に示すような、イオンが注入される領域60を有するイオン注入層(ガスバリア層)50aが形成された成形体100aを得る場合において、イオンがポリシラザン層30を通過して、基材層10の表面に注入されることを阻止する役割を果たす。
すなわち、ポリシラザン層30とプライマー層20の境界部において、ポリシラザン層30のポリシラザン化合物と、プライマー層20中の水酸基含有ポリマーの水酸基が反応し、前記反応生成物の層40として、SiO2等のごとく分子内に−Si−O−結合を有する化合物の層が形成されると考えられる。この形成された分子内に−Si−O−結合を有する化合物の層の存在により、ポリサラザン層30にイオンを注入する工程において、基材層10へのイオン注入が阻止され、基材層10が炭化されることがない。よって、基材層10の着色を防ぐことができ、結果として、成形体の透明性が低下しない。
反応生成物の層40は、実施例において説明する方法を用いて、ポリシラザン層30とプライマー層20の境界部における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合を測定することで確認することができる。

0087

本発明の成形体において、イオン注入層は、ポリシラザン化合物の少なくとも一種を含む層であって、該層中にイオンが注入されてなるものであれば特に制約はない。
イオンの注入量は、形成する成形体の使用目的(必要なガスバリア性、透明性等)等に合わせて適宜決定すればよい。

0088

注入されるイオンとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノンなどの希ガスフルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素塩素フッ素硫黄等のイオン;金、銀、銅、白金ニッケルパラジウムクロムチタンモリブデンニオブタンタルタングステンアルミニウム等の金属のイオン;等が挙げられる。

0089

なかでも、より簡便に注入することができ、特に優れたガスバリア性と透明性を有するイオン注入層が得られることから、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のイオンが好ましい。

0090

イオンの注入量は、形成する成形体の使用目的(必要なガスバリア性、透明性等)等に合わせて適宜決定すればよい。

0091

イオンを注入する方法は特に限定されず、例えば、ポリシラザン層を形成した後、該ポリシラザン層にイオンを注入する方法が挙げられる。

0092

イオンを注入する方法としては、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオンを注入する方法等が挙げられる。なかでも、本発明においては、簡便にガスバリア性の成形体が得られることから、後者のプラズマイオンを注入する方法が好ましい。

0093

プラズマイオン注入は、例えば、希ガス等のプラズマ生成ガスを含む雰囲気下でプラズマを発生させ、ポリシラザン層に負の高電圧パルス印加することにより、該プラズマ中のイオン(陽イオン)を、ポリシラザン層の表面部に注入して行うことができる。

0094

イオン注入により、イオンが注入される領域の厚みは、イオンの種類や印加電圧、処理時間等の注入条件により制御することができ、ポリシラザン層の厚み、成形体の使用目的等に応じて決定すればよいが、通常、10〜1000nmである。

0095

イオンが注入されたことは、X線光電子分光分析(XPS)を用いて表面から10nm付近元素分析測定を行うことによって確認することができる。

0096

(成形体)
本発明の成形体100bの層構成断面図を図2に示す。図2中、10は基材層、20はプライマー層、50bはガスバリア層である。本発明の成形体100bは、水酸基を含有するポリマーを含むプライマー層20が基材層10とガスバリア層50bとの間に形成されているので、基材層10とガスバリア層50bとの密着性に優れ、かつ、ガスバリア性及び透明性にも優れる成形体となっている。

0097

本発明の成形体は、図2に示す層構成を有するものに限定されず、さらに他の層が配置されたものであってもよい。他の層は、1種又は同種又は異種の2層以上であってもよい。他の層としては、無機化合物層衝撃吸収層導電体層等が挙げられる。

0098

無機化合物層は、無機化合物の一種又は二種以上からなる層である。無機化合物層を設けることで、ガスバリア性をさらに向上させることができる。
無機化合物としては、一般的に真空成膜可能で、ガスバリア性を有するもの、例えば無機酸化物無機窒化物、無機炭化物無機硫化物、これらの複合体である無機酸化窒化物、無機酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化炭化物等が挙げられる。

0099

無機化合物層の厚みは、通常10〜1000nm、好ましくは20〜500nm、より好ましくは20〜100nmの範囲である。

0100

衝撃吸収層は、ガスバリア層に衝撃が加わった時に、ガスバリア層を保護するためのものである。衝撃吸収層を形成する素材は、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂シリコーン系樹脂オレフィン系樹脂ゴム系材料等が挙げられる。
また、粘着剤コート剤封止剤等として市販されているものを使用することもでき、特に、アクリル系粘着剤シリコーン系粘着剤ゴム系粘着剤等の粘着剤が好ましい。

0101

衝撃吸収層の形成方法としては特に制限はなく、例えば、前記ポリシラザン化合物を含む層の形成方法と同様に、前記衝撃吸収層を形成する素材(粘着剤等)、及び、所望により、溶剤等の他の成分を含む衝撃吸収層形成溶液を、積層すべき層上に塗布し、得られた塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等して形成する方法が挙げられる。
また、別途剥離基材上に衝撃吸収層を成膜し、得られた膜を、積層すべき層上に転写して積層してもよい。
衝撃吸収層の厚みは、通常1〜100μm、好ましくは5〜50μmである。

0102

導電体層は、本発明の成形体が電極等として使用される場合や、帯電防止性能を付与する場合に、導電性を持たせるためのものである。導電体層を構成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体的には、アンチモンをドープした酸化スズATO);フッ素をドープした酸化スズ(FTO);酸化スズ、酸化亜鉛酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の半導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これら金属と導電性金属酸化物との混合物;ヨウ化銅硫化銅等の無機導電性物質ポリアニリンポリチオフェンポリピロール等の有機導電性材料;等が挙げられる。

0103

導電体層の形成方法としては特に制限はない。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法プラズマCVD法等が挙げられる。

0104

導電体層の厚さはその用途等に応じて適宜選択すればよい。通常10nmから50μm、好ましくは20nmから20μmである。

0105

本発明の成形体が他の層を含む場合、プライマー層とガスバリア層が隣接している限り、他の層の配置位置は特に限定されない。

0106

本発明の成形体の形状としては、フィルム状またはシート状が好ましい。本発明の成形体の形状がフィルム状またはシート状の場合、厚みは、目的とする電子デバイスの用途によって適宜決定することができる。

0107

本発明の成形体は、優れたガスバリア性と透明性を有する。
本発明の成形体が優れたガスバリア性を有していることは、本発明の成形体の水蒸気等のガスの透過率が、非常に小さいことから確認することができる。例えば、水蒸気透過率は、40℃、相対湿度90%雰囲気下で、0.10g/m2/day未満が好ましく、0.05g/m2/day以下がより好ましい。なお、成形体の水蒸気等の透過率は、公知のガス透過率測定装置を使用して測定することができる。

0108

本発明の成形体が優れた透明性を有していることは、本発明の成形体の全光線透過率や可視光線透過率が高いことから確認することができる。
例えば、JISK7361−1に準拠した全光線透過率は90%以上であることが好ましい。
可視光線透過率は波長550nmにおける透過率であり、90%以上が好ましい。成形体の全光線透過率及び可視光線透過率は、公知の測定装置を使用して測定することができる。

0109

2)成形体の製造方法
本発明の成形体の製造方法は、水酸基含有ポリマーを含むプライマー層が表面に形成された基材の、前記プライマー層上にポリシラザン化合物を含む層を形成する工程と、前記ポリシラザン化合物を含む層の表面部に、イオンを注入する工程を有することを特徴とする。

0110

水酸基含有ポリマーを含むプライマー層が表面に形成された基材の、前記プライマー層上にポリシラザン層を形成する方法としては、特に制約されないが、前述の、基材層上にプライマー層を形成する方法によりプライマー層を形成した後、得られたプライマー層上に、前述の、ポリシラザン層を形成する方法によりポリシラザン層を形成する方法が好ましく例示される。

0111

本発明の成形体の製造方法においては、基材層上に水酸基含有ポリマーを含むプライマー層が形成され、さらにその上にポリシラザン層が形成された長尺状の成形物を、一定方向に搬送しながら、前記ポリシラザン層の表面部に、イオンを注入して成形体を製造するのが好ましい。
この製造方法によれば、例えば、長尺状の成形物を巻き出しロールから巻き出し、それを一定方向に搬送しながらイオンを注入し、巻き取りロールで巻き取ることができるので、イオンが注入されて得られる成形体を連続的に製造することができる。

0112

長尺状の成形物は、ポリシラザン層が表面部に形成され、かつ、プライマー層とポリシラザン層が隣接していれば、他の層を含むものであってもよい。他の層としては、上述したものと同様のものが挙げられる。

0113

成形物の厚さは、巻き出し、巻き取り及び搬送の操作性の観点から、1μm〜500μmが好ましく、5μm〜300μmがより好ましい。

0114

ポリシラザン層に、イオンを注入する方法は、特に限定されない。なかでも、プラズマイオン注入法により前記層の表面部にイオン注入層を形成する方法が特に好ましい。

0115

プラズマイオン注入法は、プラズマ中に曝した、ポリシラザン層を表面に有する成形物に、負の高電圧パルスを印加することにより、プラズマ中のイオンを前記層の表面部に注入してイオン注入層を形成する方法である。

0116

プラズマイオン注入法としては、(A)外部電界を用いて発生させたプラズマ中に存在するイオンを、前記層の表面部に注入する方法、又は(B)外部電界を用いることなく、前記層に印加する負の高電圧パルスによる電界のみで発生させたプラズマ中に存在するイオンを、前記層の表面部に注入する方法が好ましい。

0117

前記(A)の方法においては、イオン注入する際の圧力(プラズマイオン注入時の圧力)を0.01〜1Paとすることが好ましい。プラズマイオン注入時の圧力がこのような範囲にあるときに、簡便にかつ効率よく均一なイオン注入層を形成することができ、透明性、ガスバリア性を兼ね備えたイオン注入層を効率よく形成することができる。

0118

前記(B)の方法は、減圧度を高くする必要がなく、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮することができる。また、前記層全体にわたって均一に処理することができ、負の高電圧パルス印加時にプラズマ中のイオンを高エネルギーで層の表面部に連続的に注入することができる。さらに、radio frequency(高周波、以下、「RF」と略す。)や、マイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、層に負の高電圧パルスを印加するだけで、層の表面部に良質のイオン注入層を均一に形成することができる。

0119

前記(A)及び(B)のいずれの方法においても、負の高電圧パルスを印加するとき、すなわちイオン注入するときのパルス幅は、1〜15μsecであるのが好ましい。パルス幅がこのような範囲にあるときに、透明で均一なイオン注入層をより簡便にかつ効率よく形成することができる。

0120

また、プラズマを発生させるときの印加電圧は、好ましくは−1kV〜−50kV、より好ましくは−1kV〜−30kV、特に好ましくは−5kV〜−20kVである。印加電圧が−1kVより大きい値でイオン注入を行うと、イオン注入量ドーズ量)が不十分となり、所望の性能が得られない。一方、−50kVより小さい値でイオン注入を行うと、イオン注入時に成形体が帯電し、また成形体への着色等の不具合が生じ、好ましくない。

0121

プラズマイオン注入するイオン種は、上述した通りである。より簡便にイオン注入することができ、透明で優れたガスバリア性を有する成形体を効率良く製造することができることから、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトンが好ましく、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウムがより好ましい。

0122

ポリシラザン層の表面部にプラズマ中のイオンを注入する際には、プラズマイオン注入装置を用いる。
プラズマイオン注入装置としては、具体的には、(α)ポリシラザン層(以下、「イオン注入する層」ということがある。)に負の高電圧パルスを印加するフィードスルー高周波電力重畳してイオン注入する層の周囲を均等にプラズマで囲み、プラズマ中のイオンを誘引、注入、衝突堆積させる装置(特開2001−26887号公報)、(β)チャンバー内にアンテナを設け、高周波電力を与えてプラズマを発生させてイオン注入する層周囲にプラズマが到達後、イオン注入する層に正と負のパルスを交互に印加することで、正のパルスでプラズマ中の電子を誘引衝突させてイオン注入する層を加熱し、パルス定数を制御して温度制御を行いつつ、負のパルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させる装置(特開2001−156013号公報)、(γ)マイクロ波等の高周波電力源等の外部電界を用いてプラズマを発生させ、高電圧パルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させるプラズマイオン注入装置、(δ)外部電界を用いることなく高電圧パルスの印加により発生する電界のみで発生するプラズマ中のイオンを注入するプラズマイオン注入装置等が挙げられる。

0123

これらの中でも、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮でき、連続使用に適していることから、(γ)又は(δ)のプラズマイオン注入装置を用いるのが好ましい。
以下、前記(γ)及び(δ)のプラズマイオン注入装置を用いる方法については、国際公開WO2010/021326号公報に記載のものが挙げられる。

0124

前記(γ)及び(δ)のプラズマイオン注入装置では、プラズマを発生させるプラズマ発生手段を高電圧パルス電源によって兼用しているため、RFやマイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、負の高電圧パルスを印加するだけで、プラズマを発生させ、ポリシラザン層の表面部にプラズマ中のイオンを注入し、イオン注入層を連続的に形成し、イオン注入層が形成された成形体を量産することができる。

0125

3)電子デバイス用部材及び電子デバイス
本発明の電子デバイス用部材は、本発明の成形体からなることを特徴とする。従って、本発明の電子デバイス用部材は、優れたガスバリア性を有しているので、水蒸気等のガスによる素子の劣化を防ぐことができる。また、光の透過性が高いので、電子ペーパー、タッチパネル、ディスプレイ、太陽電池等の電子デバイス用部材等として好適である。

0126

本発明の電子デバイスは、本発明の電子デバイス用部材を備える。具体例としては、タッチパネル、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー、太陽電池等が挙げられる。
本発明の電子デバイスは、本発明の成形体からなる電子デバイス用部材を備えているので、優れたガスバリア性と透明性を有する。

0127

以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。

0128

用いたX線光電子分光測定装置、X線反射率法による膜密度測定方法、プラズマイオン注入装置、水蒸気透過率測定装置測定条件酸素透過率測定装置と測定条件、全光線透過率測定装置、可視光線透過率測定装置は以下の通りである。なお、用いたプラズマイオン注入装置は外部電界を用いてイオン注入する装置である。

0129

(X線光電子分光測定装置)
下記に示す測定条件にて、ガスバリア層の表層部における酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合の測定を行った。
測定装置:「PHI Quantera SXM」アルバックファイ社製
X線源:AlKα
X線ビーム径:100μm
電力値:25W
電圧:15kV
取り出し角度:45°
真空度:5.0×10−8Pa
スパッタリング条件
スパッタリングガス:アルゴン
加電圧:−4kV

0130

(X線反射率法による膜密度の測定方法)
ガスバリア層の表層部における膜密度は、下記に示す測定条件にてX線の反射率を測定して全反射臨界角度θcを求め、その値から算出した。

0131

測定装置と測定条件は以下の通りである。
測定装置:薄膜評価試料水平型X線回折装置「SmartLab」、リガク社製
測定条件:
X線源;Cu−Kα1(波長:1.54059Å)
光学系;並行ビーム光学系
入射側スリット系;Ge(220)2結晶高さ制限スリット5mm、入射スリッ ト0.05mm
受光側スリット系;受光スリット0.10mm、ソーラースリット5°
検出器シンチレーションカウンター
管電圧管電流;45kV−200mA
走査軸;2θ/θ
走査モード連続スキャン
走査範囲;0.1−3.0deg.
走査速度;1deg./min.
サンプリング間隔;0.002°/step
なお、原子数比(xi)は、X線光電子分光測定により得られたガスバリア層の表層部における酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合を用いた。

0132

(プラズマイオン注入装置)
RF電源日本電子社製、型番号「RF」56000
高電圧パルス電源:製作所社製、「PV−3−HSHV−0835」

0133

(水蒸気透過率の測定)
水蒸気透過率測定装置:mocon社製、「PERATRAN−W3/33」
測定条件:相対湿度90%、40℃

0134

(酸素透過率の測定)
酸素透過率測定装置:mocon社製、「OX−TRAN2/21」
測定条件:相対湿度60%、23℃

0135

(全光線透過率の測定)
全光線透過率測定装置:日本電色工業社製、「NDH2000」を用いて、JIS K 7361−1に準拠して全光線透過率を測定した。
(可視光線透過率の測定)
紫外可視近赤外分光透過率計島津製作所社製、「UV3600」を用いて、可視光線透過率を測定した。
測定条件:波長550nm

0136

プライマー層の形成に、次のものを用いた。
樹脂A:ポリビニルアルコールを主成分とする「ゴーセノールGL−03」(日本合成化学工業社製、水酸基を含む繰り返し単位:86.5−89.0mol%)
・樹脂B:ポリビニルアルコールを主成分とする「ゴーセノールLW−300」(日本合成化学工業社製、水酸基を含む繰り返し単位:53.0〜60.0mol%)
・樹脂C:エチレン/ビニルアルコール(27/73mol%)共重合体エバールL−104B」(クラレ社製、水酸基を含む繰り返し単位:73mol%)
・樹脂D:水酸基を含む繰り返し単位を含まないものとして、ポリウレタンアクリラートUV硬化型樹脂化合物を主成分とする樹脂(東洋紡社製、商品名「バイロンUR1350」)をメチルエチルケトン溶媒に溶解した溶液固形分重量比8%)
・樹脂E:ポリビニルアセタール樹脂エスレックKS−10」(積水化学工業社製、水酸基を含む繰り返し単位:25mol%)

0137

ポリシラザン層形成用組成物としては、次のものを用いた。
ペルヒドロポリシラザンを主成分とするコーティング剤アクアミカNL110−20」(クラリアントジャパン社製)

0138

(実施例1)
基材層としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「PET25T−61M」、厚さ25μm、以下、「PETフィルム」という。)に、プライマー層として、樹脂Aの水溶液をプライマー層形成用溶液として、乾燥後の厚みが45nmとなるようにスピンコートで塗布し、得られた塗膜を120℃で2分間加熱し、プライマー層を形成した。
その後、得られたプライマー層上に、樹脂Eのコーティング液スピンコート法により乾燥後の厚みが45nmとなるように塗布し、得られた塗膜を120℃で2分間加熱して、PETフィルム上にプライマー層(厚さ45nm)と、ポリシラザン層(厚さ45nm)を形成し、プラズマイオン注入装置を用いてポリシラザン層の表面に、アルゴン(Ar)をプラズマイオン注入してガスバリア層を形成し、成形体1を作製した。

0139

プラズマイオン注入の条件を以下に示す。
ガス流量:100sccm
Duty比:0.5%
繰り返し周波数:1000Hz
・印加電圧:−10kV
・RF電源:周波数13.56MHz、印加電力1000W
チャンバー内圧:0.2Pa
・パルス幅:5μsec
・処理時間(イオン注入時間):5分間
・搬送速度:0.2m/分

0140

(実施例2)
実施例1において、樹脂Aの代わりに樹脂Bを用いた以外は、実施例1と同様にして成形体2を得た。

0141

(実施例3)
実施例1において、樹脂Aの水溶液の代わりに、樹脂Cをメチルスルホキシドに溶解させた溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして成形体3を得た。

0142

(実施例4)
実施例1において、樹脂Aの水溶液の代わりに、樹脂Eをトルエン酢酸エチル= :
容積比混合液に溶解させた溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして成形体4を得た。

0143

(比較例1)
イオン注入を行わない以外は、実施例1と同様にして成形体を作製した。すなわち、PETフィルム上にプライマー層、さらにポリシラザン層を形成し、成形体1rとした。

0144

(比較例2)
プライマー層上にポリシラザン層を形成しない以外は、実施例1と同様にして成形体を作製した。すなわち、PETフィルム上に形成したプライマー層の表面にアルゴンをプラズマイオン注入して成形体2rとした。

0145

(比較例3)
PETフィルム上にプライマー層を形成しない以外は、実施例1と同様にして成形体を作製した。すなわち、PETフィルム上にポリシラザン層を形成し、該ポリシラザン層の表面にアルゴンをプラズマイオン注入してガスバリア層を形成し、成形体3rとした。

0146

(比較例4)
実施例1において、樹脂Aの水溶液の代わりに、樹脂Dをメチルエチルケトン/シクロヘキサン=1:1(容積比)混合液に溶解させた溶液を用いて、乾燥後の厚みが45nmとなるようにスピンコートで塗布し、120℃で2分間加熱し、UV光照射ラインを用いて、UV光照射(高圧水銀灯ライン速度:20m/分、積算光量100mJ/cm2、ピーク強度1.466W、パス回数2回)を行ない、プライマー層を形成した以外は、実施例1と同様にして成形体4rを得た。

0147

(比較例5)
PETフィルムそのものを成形体5rとした。

0148

実施例1〜3及び比較例2〜4において、X線光電子分光測定装置を用いて、X線光電子分光分析(XPS)により、表面から10nm付近の元素分析測定を行うことにより、イオンが注入されたことを確認した。

0149

下記第1表に、各実施例、比較例において用いたプライマー層等形成用樹脂の種類、形成されたプライマー層等の厚み、ポリシラザン層形成用組成物の種類、形成されたポリシラザン層の厚み、イオン注入の有無をまとめて記載する。

0150

0151

実施例1、及び比較例4で得られた成形体1、4rの、XPSによる元素分析測定による、ガスバリア層の表面から深さ方向に50nm程度の領域における酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合の分析結果を図3、4にそれぞれ示す。図3、4において、縦軸は、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在量の合計を100とした場合の原子の存在割合(%)を表し、横軸スパッタリングの積算時間(Sputter Time、分)を表す。スパッタリングの条件は一定であるので、スパッタリングの積算時間(Sputter Time)は、ガスバリア層の表面からの深さに対応する。

0152

また、実施例1、及び比較例4で得られた成形体1、4rの、XPSによる元素分析測定による、酸素原子、窒素原子、炭素原子及びケイ素原子の存在割合の分析結果を図5、6にそれぞれ示す。図5、6において、縦軸は、酸素原子、窒素原子、炭素原子及びケイ素原子の存在量の合計を100とした場合の原子の存在割合(%)を表し、横軸はスパッタリングの積算時間(Sputter Time、分)を表す。スパッタリングの条件は一定であるので、スパッタリングの積算時間(Sputter Time)は、ガスバリア層の表面からの深さに対応する。

0153

図5図6(あるいは図3図4)の比較から、ガスバリア層表面からある一定の深さ(50nm程度)までスパッタリングするのに要するスパッタリングの積算時間は、比較例4(図4図6)よりも、実施例1(図3図5)の方が長いことが分かる。スパッタリングの積算時間が長いほど、スパッタリングがし難い、つまり層が硬いということを示す。実施例1(図3図5)で得られた成形体においては、ガスバリア層表面からある一定の深さ(50nm程度)の領域において、ケイ素原子と酸素原子からなる、スパッタリングがし難い領域(硬い層)が存在するということが分かる。

0154

これは、プライマー層として水酸基含有ポリマーを含む実施例1の成形体1は、ガスバリア層とプライマー層との境界部において、ポリシラザン化合物と、水酸基含有ポリマーが有する水酸基とが反応してできた反応生成物の層が存在し、この層が存在することにより、成形体1のスパッタリングの積算時間が長くなったと考えられる。

0155

また、実施例1〜4、及び比較例1、3、4で得られた成形体1〜4、1r、3r、4rにつき、ガスバリア層の表層部の酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合、膜密度を測定した。また、実施例1〜4、及び比較例1〜5で得られた成形体1〜4、1r〜5rにつき、全光線透過率、可視光線透過率、酸素透過率、並びに水蒸気透過率を測定した。測定結果を下記第2表に示す。

0156

実施例

0157

第2表から、水酸基含有ポリマーを含むプライマー層と、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在量全体に対する、酸素原子の存在割合が60〜75%、窒素原子の存在割合が0〜10%、ケイ素原子の存在割合が25〜35%であり、かつ、膜密度が、2.4〜4.0g/cm3のガスバリア層を有する実施例の成形体1〜4は、プライマー層を有しない比較例3の成形体3r、及びプライマー層として水酸基含有ポリマーを含まない比較例4の成形体4rに比して、全光線透過率及び可視光線透過率が高く、基材層が着色もしておらず、透明性に優れていることがわかる。
また、実施例の成形体1〜4は、比較例の成形体1r〜5rに比して、酸素透過率、水蒸気透過率が小さく、高いガスバリア性を有することがわかる。

0158

10・・・基材層
20・・・プライマー層
30・・・ポリシラザン層
40・・・ポリシラザン化合物と水酸基含有ポリマーが有する水酸基とが反応してできた反応生成物の層
50a・・・イオン注入層(ガスバリア層)
50b・・・ガスバリア層
60・・・・イオンが注入される領域
100a、100b・・・本発明の成形体

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