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技術 燃料電池システム

出願人 トヨタ自動車株式会社
発明者 加藤学田中道仁川原周也
出願日 2010年8月2日 (10年4ヶ月経過) 出願番号 2011-502577
公開日 2013年9月19日 (7年3ヶ月経過) 公開番号 WO2012-017474
状態 特許登録済
技術分野 燃料電池(システム) 燃料電池(本体)
主要キーワード 積算停止 運転回 基準経過 基準出力電流 量合計値 電圧履歴 システム停止要求 基準形態
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重要な関連分野

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図面 (20)

課題・解決手段

燃料電池を備える燃料電池システムは、燃料電池の発電時に、燃料電池のアノ−ドに対して水素を含有する燃料ガスを供給すると共に、燃料電池のカソ−ドに対して酸素を含有する酸化ガスを供給する、発電時ガス供給部を備える。また、発電時ガス供給部による燃料ガスおよび酸化ガスの供給停止の後に、燃料電池のアノ−ド電位上昇の状態を示す情報であるアノ−ド電位上昇情報を取得するアノ−ド電位上昇情報取得部を備える。さらに、アノ−ド電位上昇情報に基づいて、アノ−ドが備える触媒金属形態変化の程度を導出するアノ−ド形態変化量導出部を備える。

概要

背景

燃料電池の性能が経時的に変化する要因の一つに、電極における触媒形態変化が挙げられる。燃料電池用電極は、一般に、白金等の触媒金属カーボン粒子等の担体上に分散担持した、触媒担持粒子を備えている。電極触媒の形態変化とは、例えば、上記担体上に分散担持された触媒金属微粒子凝集し、電極全体として触媒金属の表面積が減少することをいう。このような電極触媒の形態変化およびその程度を検出する方法の一つとして、従来、サイクリックボルタンメトリ特性に基づいて、電極触媒の有効面積を検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。

概要

燃料電池を備える燃料電池システムは、燃料電池の発電時に、燃料電池のアノ−ドに対して水素を含有する燃料ガスを供給すると共に、燃料電池のカソ−ドに対して酸素を含有する酸化ガスを供給する、発電時ガス供給部を備える。また、発電時ガス供給部による燃料ガスおよび酸化ガスの供給停止の後に、燃料電池のアノ−ド電位上昇の状態を示す情報であるアノ−ド電位上昇情報を取得するアノ−ド電位上昇情報取得部を備える。さらに、アノ−ド電位上昇情報に基づいて、アノ−ドが備える触媒金属の形態変化の程度を導出するアノ−ド形態変化量導出部を備える。

目的

本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、電極触媒の形態変化およびその程度の検出を、簡便に行なうことを目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

燃料電池を備える燃料電池システムであって、前記燃料電池の発電時に、前記燃料電池のアノ−ドに対して水素を含有する燃料ガスを供給すると共に、前記燃料電池のカソ−ドに対して酸素を含有する酸化ガスを供給する、発電時ガス供給部と、前記発電時ガス供給部による前記燃料ガスおよび前記酸化ガスの供給停止の後に、前記燃料電池のアノ−ド電位上昇の状態を示す情報であるアノ−ド電位上昇情報を取得するアノ−ド電位上昇情報取得部と、前記アノ−ド電位上昇情報に基づいて、前記アノ−ドが備える触媒金属形態変化の程度であるアノード形態変化量を導出するアノ−ド形態変化量導出部とを備える燃料電池システム。

請求項2

請求項1記載の燃料電池システムであって、前記アノ−ド電位上昇情報取得部が取得する前記アノード電位上昇情報は、前記燃料電池の発電停止後におけるアノ−ド電位上昇が、1回起こったことを示す情報である燃料電池システム。

請求項3

請求項2記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池の電圧を取得する電圧取得部を備え、前記燃料電池の停止後におけるアノ−ド電位上昇が1回起こったことを示す情報は、前記電圧取得部が取得した電圧の変動パタ−ンに基づいて生成される情報である燃料電池システム。

請求項4

請求項3記載の燃料電池システムであって、前記電圧の変動パターンは、前記燃料電池の発電停止後に、前記電圧取得部が取得した電圧が、低下の状態から上昇に転じ、その後、再び低下に転じるパターンである燃料電池システム。

請求項5

請求項2記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池の発電停止後の経過時間を取得する経過時間取得部を備え、前記燃料電池の発電停止後におけるアノ−ド電位上昇が1回起こったことを示す情報は、前記経過時間取得部が取得した前記経過時間が、アノード形態変化の進行状態に基づいて定められる第1の基準時間が経過したときに生成される情報である燃料電池システム。

請求項6

請求項5記載の燃料電池システムであって、前記第1の基準時間は、前記燃料電池の発電停止後に、アノード電位が上昇して安定するまでに要する時間である燃料電池システム。

請求項7

請求項5記載の燃料電池システムであって、前記第1の基準時間は、前記燃料電池の発電停止後に進行するアノード形態変化の反応が停止するまでに要する時間である燃料電池システム。

請求項8

請求項2記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池内のアノード上に形成される前記燃料ガスの流路における酸素分圧を導出する酸素分圧導出部を備え、前記燃料電池の発電停止後におけるアノ−ド電位上昇が1回起こったことを示す情報は、前記酸素分圧導出部が導出した前記酸素分圧が、予め定めた基準分圧を超えたときに生成される情報である燃料電池システム。

請求項9

請求項2記載の燃料電池システムであって、前記燃料電池の発電停止後におけるアノ−ド電位上昇が1回起こったことを示す情報は、前記発電時ガス供給部による前記燃料ガスおよび前記酸化ガスの供給停止を伴う前記燃料電池の発電停止処理が実行されたときに生成される情報である燃料電池システム。

請求項10

請求項9記載の燃料電池システムであって、前記発電停止処理は、前記燃料電池内の燃料ガスの流路に対して空気を供給するエアパージ処理である燃料電池システム。

請求項11

請求項2ないし10いずれか記載の燃料電池システムであって、さらに、前記アノード形態変化量導出部が導出した前記アノード形態変化量を記憶するアノード形態変化量記憶部を備え、前記アノード形態変化量導出部は、前記燃料電池の発電停止が1回行なわれることにより、アノ−ド電位上昇に伴って進行するアノード形態変化の量として導出される値を、前回前記アノード電位上昇情報を取得した際に前記アノード形態変化量記憶部に記憶した前記アノード形態変化量に加算することにより、前記アノード形態変化量を導出する燃料電池システム。

請求項12

請求項11記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池の温度を取得する燃料電池温度取得部を備え、前記アノード形態変化量導出部は、前記燃料電池の発電停止が1回行なわれることにより、アノ−ド電位上昇に伴って進行するアノード形態変化の量を、前記燃料電池の温度に基づいて導出する燃料電池システム。

請求項13

請求項1記載の燃料電池システムであって、前記アノード電位上昇情報取得部は、前記燃料電池の発電停止後に、アノード電位が上昇することによるアノード形態変化が、前記燃料電池の再起動によって中断されることなく進行したと判断する場合には、第1のアノード電位上昇情報として、前記燃料電池の発電停止後におけるアノ−ド電位上昇が1回起こったことを示す情報を取得し、前記燃料電池の発電停止後に、アノード電位が上昇することによるアノード形態変化が進行している途中で、前記燃料電池の再起動がなされたと判断する場合には、第2のアノード電位上昇情報として、前記燃料電池の再起動までに進行したアノード形態変化量を示す値を取得する燃料電池システム。

請求項14

請求項13記載の燃料電池システムであって、前記アノード電位上昇情報取得部は、前記燃料電池の発電停止後に、前記燃料電池の再起動が無い状態で、アノード形態変化の進行状態に基づいて定められる第1の基準時間が経過したときに、前記第1のアノード電位上昇情報を取得し、前記燃料電池の発電停止後に、アノード形態変化の進行状態に基づいて前記第1の基準時間よりも早いタイミングで設定された第2の基準時間が経過したときであって、前記第1の基準時間が経過する前に、前記燃料電池再起動がなされたときに、前記燃料電池の再起動がなされた時間に係る情報を、前記第2のアノード電位上昇情報として取得する燃料電池システム。

請求項15

請求項13または14記載の燃料電池システムであって、さらに、前記アノード形態変化量導出部が導出した前記アノード形態変化量を記憶するアノード形態変化量記憶部を備え、前記アノード形態変化量導出部は、前記第1のアノード電位上昇情報を取得したときには、前記燃料電池の発電停止が1回行なわれることにより、アノ−ド電位上昇に伴って進行するアノード形態変化の量として導出される値を、前回前記アノード電位上昇情報を取得した際に前記アノード形態変化量記憶部に記憶した前記アノード形態変化量に加算することにより、前記アノード形態変化量を導出し、前記第2のアノード電位上昇情報を取得したときには、前記第2のアノード電位上昇情報に基づいて、前記燃料電池が発電停止してから再起動するまでに進行したアノード形態変化量を導出し、導出したアノード形態変化量を、前回前記アノード電位上昇情報を取得した際に前記アノード形態変化量記憶部に記憶した前記アノード形態変化量に加算することにより、前記アノード形態変化量を導出する燃料電池システム。

請求項16

請求項1ないし15いずれか記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池の発電中に、前記燃料電池を構成する単セルであって、水素不足に起因する負電圧となった単セルを検出すると共に、該負電圧となった単セルの発電条件を検知する負電圧単セル検知部と、前記発電条件に基づいて、前記負電圧になった単セルにおけるアノード形態変化量を導出する負電圧時アノード形態変化量導出部と、前記負電圧時アノード形態変化量導出部が導出した前記アノード形態変化量を、前記単セルごとに積算して、水素不足に起因する負電圧により進行したアノード形態変化量である発電時アノード形態変化量を導出する発電時アノード形態変化量導出部と、を備える燃料電池システム。

請求項17

請求項1ないし16いずれか記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池の発電時に、前記アノード形態変化量導出部が導出した前記アノード形態変化量に基づいて、アノード形態変化に起因する電圧低下を抑制するように、前記発電時ガス供給部による前記アノードに対する前記燃料ガスの供給に係る燃料ガス供給制御を変更する電圧低下抑制部を備える燃料電池システム。

請求項18

請求項16記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池の発電時に、アノード形態変化に起因する電圧低下を抑制するように、前記発電時ガス供給部による前記アノードに対する前記燃料ガスの供給に係る燃料ガス供給制御を変更する電圧低下抑制部を備え、前記電圧低下抑制部は、前記アノード形態変化量導出部が導出した前記アノード形態変化量が第1の基準値以上である場合には、前記アノード形態変化量に基づいて、前記燃料ガス供給制御を変更し、前記アノード形態変化量導出部が導出した前記アノード形態変化量が前記第1の基準値未満の場合であって、前記発電時アノード形態変化量導出部が導出した前記発電時アノード形態変化量が第2の基準値を超える単セルが存在する場合には、前記発電時アノード形態変化量が前記第2の基準値を超える単セルの電圧が基準電圧よりも低くなったときに、前記燃料ガス供給制御を変更する燃料電池システム。

請求項19

請求項17または18記載の燃料電池システムであって、前記電圧低下抑制部は、アノード形態変化に起因する電圧低下を抑制するための前記燃料ガス供給制御の変更として、前記アノードに供給する前記燃料ガスの圧力上昇を行なう燃料電池システム。

請求項20

請求項17または18記載の燃料電池システムであって、前記電圧低下抑制部は、アノード形態変化に起因する電圧低下を抑制するための前記燃料ガス供給制御の変更として、前記アノードに供給する前記燃料ガスの流量増加を行なう燃料電池システム。

請求項21

請求項17または18記載の燃料電池システムであって、前記電圧低下抑制部は、アノード形態変化に起因する電圧低下を抑制するための前記燃料ガス供給制御の変更として、前記アノードに供給する前記燃料ガスの加湿量増加を行なう燃料電池システム。

請求項22

請求項1ないし21いずれか記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池の出力電圧が、上限電圧を超えないように、前記燃料電池の発電状態を制御する高電位回避制御部と、前記アノード形態変化量導出部が導出したアノード形態変化量に基づいて、アノード形態変化に起因する前記アノードの電位上昇量を導出するアノード電位上昇量導出部と、前記上限電圧のために予め設定された基準上限電圧から、前記アノード電位上昇量導出部が導出した前記アノードの電位上昇量を減算した値を、前記上限電圧として設定する上限電圧設定部と、を備える燃料電池システム。

請求項23

請求項1ないし22いずれか記載の燃料電池システムであって、さらに、前記アノードに対する供給水素量不足に起因して前記燃料電池の電圧が下限電圧以下になったときに、水素が不足した状態での発電継続を回避するための水素欠運転回避制御を実行する水素欠運転回避制御部と、前記アノード形態変化量導出部が導出したアノード形態変化量に基づいて、アノード形態変化に起因する前記アノードの電位上昇量を導出するアノード電位上昇量導出部と、前記下限電圧のために予め設定された基準下限電圧から、前記アノード電位上昇量導出部が導出した前記アノードの電位上昇量を減算した値を、前記下限電圧として設定する下限電圧設定部と、を備える燃料電池システム。

請求項24

請求項23記載の燃料電池システムであって、前記水素欠運転回避制御部は、前記水素欠運転回避制御として、前記アノードに供給する前記燃料ガスの流量を増加させる制御を行なう燃料電池システム。

技術分野

0001

本発明は、燃料電池システムに関するものである。

背景技術

0002

燃料電池の性能が経時的に変化する要因の一つに、電極における触媒形態変化が挙げられる。燃料電池用電極は、一般に、白金等の触媒金属カーボン粒子等の担体上に分散担持した、触媒担持粒子を備えている。電極触媒の形態変化とは、例えば、上記担体上に分散担持された触媒金属微粒子凝集し、電極全体として触媒金属の表面積が減少することをいう。このような電極触媒の形態変化およびその程度を検出する方法の一つとして、従来、サイクリックボルタンメトリ特性に基づいて、電極触媒の有効面積を検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。

先行技術

0003

特開2008−218097号公報
特開2009−140751号公報
特開2009−259481号公報
特開2010−80166号公報

発明が解決しようとする課題

0004

しかしながら、サイクリックボルタンメトリ特性を利用して電極触媒の有効面積を検出する場合には、燃料電池システムと共に、サイクリックボルタンメトリの測定のための測定器を設ける必要がある。また、燃料電池における通常の発電および停止の動作を行なわないときに、サイクリックボルタンメトリの測定の機会を、特別に設ける必要があった。

0005

本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、電極触媒の形態変化およびその程度の検出を、簡便に行なうことを目的とする。また、本発明の他の目的は、簡便に検出した電極触媒の形態変化の程度を用いて、燃料電池の発電制御を適正化することである。

課題を解決するための手段

0006

本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実施することが可能である。

0007

[適用例1]
燃料電池を備える燃料電池システムであって、
前記燃料電池の発電時に、前記燃料電池のアノ−ドに対して水素を含有する燃料ガスを供給すると共に、前記燃料電池のカソ−ドに対して酸素を含有する酸化ガスを供給する、発電時ガス供給部と、
前記発電時ガス供給部による前記燃料ガスおよび前記酸化ガスの供給停止の後に、前記燃料電池のアノ−ド電位上昇の状態を示す情報であるアノ−ド電位上昇情報を取得するアノ−ド電位上昇情報取得部と、
前記アノ−ド電位上昇情報に基づいて、前記アノ−ドが備える触媒金属の形態変化の程度であるアノード形態変化量を導出するアノ−ド形態変化量導出部と
を備える燃料電池システム。

0008

適用例1に記載の燃料電池システムによれば、アノード電位上昇情報の取得を行なうため、アノード電位を直接検出する場合よりも容易に、燃料電池の発電停止に伴うアノード電位の上昇を検出することができる。また、上記のようにして導出したアノード電位上昇に基づいてアノード形態変化量を導出するため、アノード形態変化量を直接検出する必要が無く、容易かつ簡便に、アノード形態変化量を知ることが可能になる。

0009

[適用例2]
適用例1記載の燃料電池システムであって、前記アノ−ド電位上昇情報取得部が取得する前記アノード電位上昇情報は、前記燃料電池の発電停止後におけるアノ−ド電位上昇が、1回起こったことを示す情報である燃料電池システム。適用例2記載の燃料電池システムによれば、燃料電池の発電停止後におけるアノード電位上昇が1回起こったことを示す簡便な情報に基づいて、アノード形態変化量を容易に導出することができる。

0010

[適用例3]
請求項2記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池の電圧を取得する電圧取得部を備え、前記燃料電池の停止後におけるアノ−ド電位上昇が1回起こったことを示す情報は、前記電圧取得部が取得した電圧の変動パタ−ンに基づいて生成される情報である燃料電池システム。適用例3に記載の燃料電池システムによれば、燃料電池の電圧を検出するという簡便な構成により、アノード電位上昇情報を取得することができる。

0011

[適用例4]
適用例3記載の燃料電池システムであって、前記電圧の変動パターンは、前記燃料電池の発電停止後に、前記電圧取得部が取得した電圧が、低下の状態から上昇に転じ、その後、再び低下に転じるパターンである燃料電池システム。適用例4記載の燃料電池システムによれば、発電停止後の燃料電池の電圧が、低下の状態から上昇に転じ、その後、再び低下に転じたことを検出することにより、容易に、アノード電位上昇情報を取得することができる。

0012

[適用例5]
適用例2記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池の発電停止後の経過時間を取得する経過時間取得部を備え、前記燃料電池の発電停止後におけるアノ−ド電位上昇が1回起こったことを示す情報は、前記経過時間取得部が取得した前記経過時間が、アノード形態変化の進行状態に基づいて定められる第1の基準時間が経過したときに生成される情報である燃料電池システム。適用例5記載の燃料電池システムによれば、燃料電池の発電停止後の経過時間を検出するという簡便な構成により、アノード電位上昇情報を取得することができる。

0013

[適用例6]
適用例5記載の燃料電池システムであって、前記第1の基準時間は、前記燃料電池の発電停止後に、アノード電位が上昇して安定するまでに要する時間である燃料電池システム。適用例6記載の燃料電池システムによれば、燃料電池の発電停止後におけるアノ−ド電位上昇が1回起こったことを、精度良く検出することができる。

0014

[適用例7]
適用例5記載の燃料電池システムであって、前記第1の基準時間は、前記燃料電池の発電停止後に進行するアノード形態変化の反応が停止するまでに要する時間である燃料電池システム。適用例7記載の燃料電池システムによれば、燃料電池の発電停止後におけるアノ−ド電位上昇が1回起こったことを検出する動作に対する信頼性を、さらに高めることができる。

0015

[適用例8]
適用例2記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池内のアノード上に形成される前記燃料ガスの流路における酸素分圧を導出する酸素分圧導出部を備え、前記燃料電池の発電停止後におけるアノ−ド電位上昇が1回起こったことを示す情報は、前記酸素分圧導出部が導出した前記酸素分圧が、予め定めた基準分圧を超えたときに生成される情報である燃料電池システム。適用例8記載の燃料電池システムによれば、燃料電池の発電停止後におけるアノ−ド電位上昇が1回起こったことを、精度良く検出することができる。

0016

[適用例9]
適用例2記載の燃料電池システムであって、前記燃料電池の発電停止後におけるアノ−ド電位上昇が1回起こったことを示す情報は、前記発電時ガス供給部による前記燃料ガスおよび前記酸化ガスの供給停止を伴う前記燃料電池の発電停止処理が実行されたときに生成される情報である燃料電池システム。適用例9記載の燃料電池システムによれば、簡便な動作により、アノード電位上昇情報を取得することができる。

0017

[適用例10]
適用例9記載の燃料電池システムであって、前記発電停止処理は、前記燃料電池内の燃料ガスの流路に対して空気を供給するエアパージ処理である燃料電池システム。適用例10記載の燃料電池システムによれば、簡便な動作により、アノード電位上昇情報を取得することができる。

0018

[適用例11]
適用例2ないし10いずれか記載の燃料電池システムであって、さらに、前記アノード形態変化量導出部が導出した前記アノード形態変化量を記憶するアノード形態変化量記憶部を備え、前記アノード形態変化量導出部は、前記燃料電池の発電停止が1回行なわれることにより、アノ−ド電位上昇に伴って進行するアノード形態変化の量として導出される値を、前回前記アノード電位上昇情報を取得した際に前記アノード形態変化量記憶部に記憶した前記アノード形態変化量に加算することにより、前記アノード形態変化量を導出する燃料電池システム。適用例11記載の燃料電池システムによれば、簡便な動作により、アノード形態変化量を導出することができる。

0019

[適用例12]
適用例11記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池の温度を取得する燃料電池温度取得部を備え、前記アノード形態変化量導出部は、前記燃料電池の発電停止が1回行なわれることにより、アノ−ド電位上昇に伴って進行するアノード形態変化の量を、前記燃料電池の温度に基づいて導出する燃料電池システム。適用例12記載の燃料電池システムによれば、アノード形態変化量を導出する精度を向上させることができる。

0020

[適用例13]
適用例1記載の燃料電池システムであって、前記アノード電位上昇情報取得部は、前記燃料電池の発電停止後に、アノード電位が上昇することによるアノード形態変化が、前記燃料電池の再起動によって中断されることなく進行したと判断する場合には、第1のアノード電位上昇情報として、前記燃料電池の発電停止後におけるアノ−ド電位上昇が1回起こったことを示す情報を取得し、前記燃料電池の発電停止後に、アノード電位が上昇することによるアノード形態変化が進行している途中で、前記燃料電池の再起動がなされたと判断する場合には、第2のアノード電位上昇情報として、前記燃料電池の再起動までに進行したアノード形態変化量を示す値を取得する燃料電池システム。適用例13記載の燃料電池システムによれば、燃料電池の発電停止後に進行するアノード形態変化が、燃料電池の再起動によって中断される場合とされない場合とを区別して、アノード形態変化量を導出することができる。

0021

[適用例14]
適用例13記載の燃料電池システムであって、前記アノード電位上昇情報取得部は、前記燃料電池の発電停止後に、前記燃料電池の再起動が無い状態で、アノード形態変化の進行状態に基づいて定められる第1の基準時間が経過したときに、前記第1のアノード電位上昇情報を取得し、前記燃料電池の発電停止後に、アノード形態変化の進行状態に基づいて前記第1の基準時間よりも早いタイミングで設定された第2の基準時間が経過したときであって、前記第1の基準時間が経過する前に、前記燃料電池再起動がなされたときに、前記燃料電池の再起動がなされた時間に係る情報を、前記第2のアノード電位上昇情報として取得する燃料電池システム。適用例14記載の燃料電池システムによれば、時間の経過を判断基準として用いるという簡便な構成により、アノード電位上昇情報を取得することができる。

0022

[適用例15]
適用例13または14記載の燃料電池システムであって、さらに、前記アノード形態変化量導出部が導出した前記アノード形態変化量を記憶するアノード形態変化量記憶部を備え、前記アノード形態変化量導出部は、前記第1のアノード電位上昇情報を取得したときには、前記燃料電池の発電停止が1回行なわれることにより、アノ−ド電位上昇に伴って進行するアノード形態変化の量として導出される値を、前回前記アノード電位上昇情報を取得した際に前記アノード形態変化量記憶部に記憶した前記アノード形態変化量に加算することにより、前記アノード形態変化量を導出し、前記第2のアノード電位上昇情報を取得したときには、前記第2のアノード電位上昇情報に基づいて、前記燃料電池が発電停止してから再起動するまでに進行したアノード形態変化量を導出し、導出したアノード形態変化量を、前回前記アノード電位上昇情報を取得した際に前記アノード形態変化量記憶部に記憶した前記アノード形態変化量に加算することにより、前記アノード形態変化量を導出する燃料電池システム。適用例15記載の燃料電池システムによれば、アノード形態変化量を、精度良く導出することができる。

0023

[適用例16]
適用例1ないし15いずれか記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池の発電中に、前記燃料電池を構成する単セルであって、水素不足に起因する負電圧となった単セルを検出すると共に、該負電圧となった単セルの発電条件を検知する負電圧単セル検知部と、前記発電条件に基づいて、前記負電圧になった単セルにおけるアノード形態変化量を導出する負電圧時アノード形態変化量導出部と、前記負電圧時アノード形態変化量導出部が導出した前記アノード形態変化量を、前記単セルごとに積算して、水素不足に起因する負電圧により進行したアノード形態変化量である発電時アノード形態変化量を導出する発電時アノード形態変化量導出部と、を備える燃料電池システム。適用例16記載の燃料電池システムによれば、発電停止後に進行するアノード形態変化量に加えて、燃料電池の発電中に進行するアノード形態変化の量を、単セルごとに導出することができる。

0024

[適用例17]
適用例1ないし16いずれか記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池の発電時に、前記アノード形態変化量導出部が導出した前記アノード形態変化量に基づいて、アノード形態変化に起因する電圧低下を抑制するように、前記発電時ガス供給部による前記アノードに対する前記燃料ガスの供給に係る燃料ガス供給制御を変更する電圧低下抑制部を備える燃料電池システム。適用例17記載の燃料電池システムによれば、アノード形態変化が進行する場合であっても、燃料電池性能の低下を抑制することができる。

0025

[適用例18]
請求項16記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池の発電時に、アノード形態変化に起因する電圧低下を抑制するように、前記発電時ガス供給部による前記アノードに対する前記燃料ガスの供給に係る燃料ガス供給制御を変更する電圧低下抑制部を備え、前記電圧低下抑制部は、前記アノード形態変化量導出部が導出した前記アノード形態変化量が第1の基準値以上である場合には、前記アノード形態変化量に基づいて、前記燃料ガス供給制御を変更し、前記アノード形態変化量導出部が導出した前記アノード形態変化量が前記第1の基準値未満の場合であって、前記発電時アノード形態変化量導出部が導出した前記発電時アノード形態変化量が第2の基準値を超える単セルが存在する場合には、前記発電時アノード形態変化量が前記第2の基準値を超える単セルの電圧が基準電圧よりも低くなったときに、前記燃料ガス供給制御を変更する燃料電池システム。適用例18記載の燃料電池システムによれば、燃料電池を構成する単セルの中に、アノード形態変化が進行することにより電圧低下が始まっている単セルが存在する場合には、燃料電池全体の電圧が低下する以前に、電圧低下を抑制する制御を行なうことができる。そのため、燃料電池の性能低下を抑制する動作の信頼性を高めることができる。

0026

[適用例19]
適用例17または18記載の燃料電池システムであって、前記電圧低下抑制部は、アノード形態変化に起因する電圧低下を抑制するための前記燃料ガス供給制御の変更として、前記アノードに供給する前記燃料ガスの圧力上昇を行なう燃料電池システム。適用例19記載の燃料電池システムによれば、燃料ガスの圧力を上昇させることにより、燃料電池の電圧低下を抑制できる。

0027

[適用例20]
適用例17または18記載の燃料電池システムであって、前記電圧低下抑制部は、アノード形態変化に起因する電圧低下を抑制するための前記燃料ガス供給制御の変更として、前記アノードに供給する前記燃料ガスの流量増加を行なう燃料電池システム。適用例20記載の燃料電池システムによれば、燃料ガスの流量を増加させることにより、燃料電池の電圧低下を抑制できる。

0028

[適用例21]
適用例17または18記載の燃料電池システムであって、前記電圧低下抑制部は、アノード形態変化に起因する電圧低下を抑制するための前記燃料ガス供給制御の変更として、前記アノードに供給する前記燃料ガスの加湿量増加を行なう燃料電池システム。適用例21記載の燃料電池システムによれば、燃料ガスの加湿量を増加させることにより、燃料電池の電圧低下を抑制できる。

0029

[適用例22]
適用例1ないし21いずれか記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池の出力電圧が、上限電圧を超えないように、前記燃料電池の発電状態を制御する高電位回避制御部と、前記アノード形態変化量導出部が導出したアノード形態変化量に基づいて、アノード形態変化に起因する前記アノードの電位上昇量を導出するアノード電位上昇量導出部と、前記上限電圧のために予め設定された基準上限電圧から、前記アノード電位上昇量導出部が導出した前記アノードの電位上昇量を減算した値を、前記上限電圧として設定する上限電圧設定部と、を備える燃料電池システム。適用例22記載の燃料電池システムによれば、燃料電池のカソードが望ましくない程度に高電位となることを、抑制することができる。

0030

[適用例23]
適用例1ないし22いずれか記載の燃料電池システムであって、さらに、前記アノードに対する供給水素量不足に起因して前記燃料電池の電圧が下限電圧以下になったときに、水素が不足した状態での発電継続を回避するための水素欠運転回避制御を実行する水素欠運転回避制御部と、前記アノード形態変化量導出部が導出したアノード形態変化量に基づいて、アノード形態変化に起因する前記アノードの電位上昇量を導出するアノード電位上昇量導出部と、前記下限電圧のために予め設定された基準下限電圧から、前記アノード電位上昇量導出部が導出した前記アノードの電位上昇量を減算した値を、前記下限電圧として設定する下限電圧設定部と、を備える燃料電池システム。適用例23記載の燃料電池システムによれば、水素欠運転回避制御を、過剰に実行することを抑制できる。

0031

[適用例24]
適用例23記載の燃料電池システムであって、前記水素欠運転回避制御部は、前記水素欠運転回避制御として、前記アノードに供給する前記燃料ガスの流量を増加させる制御を行なう燃料電池システム。適用例24記載の燃料電池システムによれば、過剰な水素欠運転回避制御を抑制できることにより、燃料ガスの流量を増加させることに起因する燃料電池システムにおけるシステム効率の低下を抑制できる。

0032

本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、アノード形態変化量の導出方法や、燃料電池の出力低下抑制方法、燃料電池の高電位回避制御方法、あるいは、燃料電池の水素欠運転回避方法などの形態で実現することが可能である。

図面の簡単な説明

0033

燃料電池システム10の概略構成を示すブロック図である。
単セル70を表わす分解斜視図である。
燃料電池の発電停止後における電圧推移の様子を表わす説明図である。
燃料電池電圧の変化と共に、アノード電位変化の様子を表わした説明図である。
発電停止回数アノード触媒表面積との関係を表わす説明図である。
アノード形態変化量導出処理ルーチンを表わすフローチャートである。
異なる温度で発電停止する際のアノード触媒表面積の求め方の説明図である。
アノード電位上昇判断処理ルーチンを表わすフローチャートである。
発電停止後の電圧挙動の他のパターンの一例を表わす説明図である。
発電停止後の経過時間とアノード上酸素分圧の関係を表わす説明図である。
アノード電位上昇判断処理ルーチンを表わすフローチャートである。
燃料電池システム110の概略構成を表わすブロック図である。
燃料電池システム210の概略構成を表わすブロック図である。
電気自動車90の概略構成を表わすブロック図である。
燃料電池出力と、燃料電池効率および補機動力との関係を示す説明図である。
燃料電池出力と、燃料電池システム効率との関係を示す説明図である。
アノード電位上昇判断処理ルーチンを表わすフローチャートである。
経過時間とアノード形態変化速度との関係を表わす説明図である。
燃料電池発電停止回数とアノード触媒表面積との関係を表わす説明図である。
発電時アノード形態変化量導出処理ルーチンを表わすフローチャートである。
アノード形態変化の程度と燃料電池の性能低下量との関係を表わす説明図である。
燃料電池におけるIV特性を表わす説明図である。
形態変化影響抑制処理ルーチンを表わすフローチャートである。
燃料ガス圧力上昇量と、性能向上量との関係を表わす説明図である。
形態変化影響抑制処理ルーチンを表わすフローチャートである。
高電位回避制御処理ルーチンを表わすフローチャートである。
高電位回避上限電圧補正処理ルーチンを表わすフローチャートである。
燃料電池のIV特性、および、電流カソード電位との関係を表わす説明図である。
燃料電池のIV特性、および、電流とカソード電位との関係を表わす説明図である。
燃料電池電圧およびカソード電位の変動の様子の一例を表わす説明図である。
燃料電池電圧およびカソード電位の変動の様子の一例を表わす説明図である。
水素欠運転回避制御処理ルーチンを表わすフローチャートである。
水素不足回避下限電圧補正処理ルーチンを表わすフローチャートである。

実施例

0034

A.燃料電池システム10の全体構成:
図1は、本発明の第1実施例としての燃料電池システム10の概略構成を示すブロック図である。本実施例の燃料電池システム10は、燃料電池15と、水素タンク20と、コンプレッサ30と、水素遮断弁40と、可変調圧弁42と、水素循環ポンプ44と、パージ弁46と、負荷接続部51と、電圧センサ52と、冷媒循環ポンプ60と、ラジエータ61と、冷媒温度センサ63と、制御部50と、を備えている。

0035

燃料電池15は、固体高分子型の燃料電池であり、発電体としての単セル70を複数積層したスタック構造を有している。図2は、燃料電池15を構成する単セル70を表わす分解斜視図である。単セル70は、MEA(膜−電極接合体、Membrane Electrode Assembly)71と、ガス拡散層72,73と、ガスセパレータ74,75と、を備えている。ここで、MEA71は、電解質膜と、電解質膜の各々の面に形成された電極であるアノードおよびカソードによって構成される。このMEA71は、ガス拡散層72,73によって挟持されており、MEA71およびガス拡散層72,73から成るサンドイッチ構造は、さらに両側からガスセパレータ74,75によって挟持されている(ただし、ガス拡散層72は、ガス拡散層73が配置される面の裏面に配置されるため、図2では図示せず)。

0036

MEA71を構成する電解質膜は、固体高分子材料、例えばフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性イオン交換膜であり、湿潤状態で良好な電子伝導性を示す。カソードおよびアノードは、電解質膜上に形成された層であり、電気化学反応を進行する触媒金属(例えば白金)を担持するカーボン粒子と、プロトン伝導性を有する高分子電解質と、を備えている。ガス拡散層72,73は、ガス透過性および電子伝導性を有する部材によって構成されており、例えば、発泡金属金属メッシュなどの金属製部材や、カーボンクロスカーボンペーパなどのカーボン製部材により形成することができる。

0037

ガスセパレータ74,75は、ガス不透過導電性部材、例えば、カーボン圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン等のカーボン製部材や、プレス成形したステンレス鋼などの金属製部材により形成されている。ガスセパレータ74,75は、MEA71との間に形成される反応ガス(水素を含有する燃料ガスあるいは酸素を含有する酸化ガス)の流路の壁面を成す部材であって、その表面には、ガス流路を形成するための凹凸形状が形成されている。表面に溝88が形成されたガスセパレータ74とMEA71との間には、酸化ガスの流路であるセル内酸化ガス流路が形成される。また、表面に溝89が形成されたガスセパレータ75とMEA71との間には、燃料ガスの流路であるセル内燃料ガス流路が形成される。単セル70を組み立てる際には、MEA71の外周にシール部(図示せず)を配置して、単セル70内のガス流路のシール性を確保しつつ、ガスセパレータ74、75間を接合する。

0038

ここで、ガスセパレータ74,75では、セル内ガス流路を形成するための溝88,89が設けられた面の裏面において、凹部87が形成されている(ただし、ガスセパレータ74の裏面に形成される凹部87は図示せず)。これらの凹部87は、ガスセパレータ74,75上にガス拡散層72,73が配置される領域全体と重なる範囲にわたって形成されており、隣り合う単セル70間で、冷媒の流路であるセル間冷媒流路を形成する。なお、セル間冷媒流路は、各単セル70間に設けるのではなく、例えば、単セル70を所定数積層する毎に設けることとしても良い。

0039

ガスセパレータ74,75は、その外周近くの互いに対応する位置に、複数の孔部を備えている。単セル70を複数積層して燃料電池を組み立てると、各セパレータの対応する位置に設けられた孔部は、互いに重なり合って、ガスセパレータの積層方向に燃料電池内部を貫通する流路を形成する。具体的には、孔部83は、各セル内酸化ガス流路に酸化ガスを分配する酸化ガス供給マニホールドを形成し、孔部84は、各セル内酸化ガス流路から酸化ガスが集合する酸化ガス排出マニホールドを形成する。また、孔部85は、各セル内燃料ガス流路に燃料ガスを分配する燃料ガス供給マニホールドを形成し、孔部86は、各セル内燃料ガス流路から燃料ガスが集合する燃料ガス排出マニホールドを形成する。また、孔部81は、各セル間冷媒流路に冷媒を分配する冷媒供給マニホールドを形成し、孔部82は、各セル間冷媒流路から冷媒が集合する冷媒排出マニホールドを形成する。

0040

本実施例の燃料電池15は、図1に示すように、単セル70を複数積層して成る積層体の両端に、出力端子を備える集電板ターミナル)78、絶縁板インシュレータ)77、エンドプレート76を順次配置することによって形成される。なお、燃料電池15は、図示しない保持部材(例えば、双方のエンドプレート76にボルトで結合されたテンションプレート)によって、単セル70の積層方向に締結圧がかかった状態で保持される。

0041

燃料電池システム10が備える水素タンク20は、燃料ガスとしての水素ガス貯蔵される貯蔵装置であり、水素供給流路22を介して燃料電池15の水素供給マニホールドに接続されている。水素供給流路22上において、水素タンク20から近い順に、水素遮断弁40と、可変調圧弁42とが設けられている。可変調圧弁42は、水素タンク20から燃料電池15へ供給される水素圧水素量)を調整可能な調圧弁である。なお、水素タンク20は、高圧の水素ガスを貯蔵する水素ボンベとする他、水素吸蔵合金を備えて水素吸蔵合金に水素を吸蔵させることによって水素を蓄えるタンクとすることもできる。

0042

燃料電池15の水素排出マニホールドには、水素排出流路24が接続されている。この水素排出流路24には、パージ弁46が設けられている。また、水素供給流路22と水素排出流路24とを接続して、接続流路25が設けられている。接続流路25は、可変調圧弁42よりも下流側で水素供給流路22に接続し、パージ弁46よりも上流側で水素排出流路24に接続している。接続流路25には、流路内を水素が循環する際の駆動力を発生する水素循環ポンプ44が設けられている。

0043

水素タンク20から水素供給流路22を介して供給される水素は、燃料電池15で電気化学反応に供され、水素排出流路24に排出される。水素排出流路24に排出された水素は、接続流路25を経由して、再び水素供給流路22に導かれる。このように、燃料電池システム10において水素は、水素排出流路24の一部、接続流路25、水素供給流路22の一部、および、燃料電池15内に形成される燃料ガスの流路(これらの流路を併せて、水素循環流路と呼ぶ)を循環する。なお、燃料電池15の発電時には、通常はパージ弁46は閉弁されているが、循環する水素中の不純物窒素水蒸気等)が増加したときにはパージ弁46は適宜開弁され、これによって、不純物濃度が増加した水素ガスの一部がシステムの外部に排出される。また、電気化学反応の進行による水素の消費や、パージ弁46の開弁によって、水素循環流路内の水素量が不足するときには、可変調圧弁42を介して水素タンク20から水素循環流路へと水素が補われる。

0044

コンプレッサ30は、外部から空気を取り込んで圧縮し、酸化ガスとして燃料電池15に供給するための装置であり、空気供給流路32を介して、燃料電池15の酸化ガス供給マニホールドに接続されている。また、燃料電池15の酸化ガス排出マニホールドには、空気排出流路34が接続されている。コンプレッサ30から空気供給流路32を介して供給される空気は、燃料電池15で電気化学反応に供され、空気排出流路34を介して燃料電池15の外部に排出される。

0045

上記したように、燃料電池15の発電時には、水素タンク20、可変調圧弁42、および水素循環ポンプ44が、燃料電池15のアノードに対して燃料ガスを供給し、コンプレッサ30が、燃料電池15のカソードに対して酸化ガスを供給する。そのため、これらの各部は、全体として、燃料電池の発電時に燃料電池のアノ−ドに燃料ガスを供給すると共にカソ−ドに酸化ガスを供給する、発電時ガス供給部として機能する。

0046

燃料電池15の各集電板78には、配線56を介して負荷57が接続されている。負荷57は、例えば、2次電池や、電力消費装置モータなど)とすることができる。また、この配線56には、燃料電池15と負荷57との間の接続を入り切りするスイッチとしての負荷接続部51が設けられている。負荷接続部51は、燃料電池15の発電時には、燃料電池15と負荷57とが接続されるように切り替えられ、燃料電池15の発電停止時には、燃料電池15と負荷57との接続が遮断されるように切り替えられる。

0047

電圧センサ52は、燃料電池15の燃料電池電圧Vfを検出することができるセンサである。また、電圧センサ52は、燃料電池15を構成する個々の単セル70の電圧を検出することもできる。

0048

ラジエータ61は、冷媒流路62に設けられ、冷媒流路62内を流れる冷媒を冷却する。冷媒流路62は、燃料電池15の既述した冷媒供給マニホールドおよび冷媒排出マニホールドに接続されている。また、冷媒流路には冷媒循環ポンプ60が設けられており、冷媒循環ポンプ60を駆動することにより、ラジエータ61と燃料電池15との間で冷媒を循環させて、燃料電池15の内部温度を調節可能となっている。冷媒流路62において、燃料電池15の冷媒排出マニホールドとの接続部近傍には、冷媒の温度を検出するための冷媒温度センサ63が設けられている。

0049

制御部50は、マイクロコンピュータを中心とした論理回路として構成され、詳しくは、予め設定された制御プログラムに従って所定の演算などを実行するCPUと、CPUで各種演算処理を実行するのに必要な制御プログラムや制御データ等が予め格納されたROMと、同じくCPUで各種演算処理をするのに必要な各種データが一時的に読み書きされるRAMと、各種信号入出力する入出力ポート等を備える。制御部50は、コンプレッサ30、水素遮断弁40、可変調圧弁42、負荷接続部51、水素循環ポンプ44、パージ弁46、冷媒循環ポンプ60等に対して駆動信号を出力する。また、電圧センサ52や冷媒温度センサ63等から、検出信号を取得する。また、制御部50は、所定期間の時間を計測可能なタイマ機能を有している。

0050

図1では、燃料電池システム10は、負荷57に対して電力供給する電源として燃料電池15のみを記載しているが、燃料電池システム10は、さらに、図示しない2次電池を電源として備えている。この2次電池は、燃料電池15と共に、あるいは単独で、負荷57であるモータ等の電力消費装置に対して電力供給することが可能である。また、この2次電池は、残存容量が低下したときには燃料電池15による充電が可能であって、充電時には燃料電池15にとって負荷57となる。さらに、この2次電池は、燃料電池15が発電を停止した後には、制御部50を始めとする燃料電池システム10の各部に対して、電力を供給する。

0051

B.発電停止時におけるアノードの電位上昇:
燃料電池システム10では、その起動時に燃料電池15の発電を開始する際には、制御部50が、発電開始のための処理を実行する。具体的には、制御部50は、燃料電池システム10の起動の指示信号を受信すると、負荷接続部51を制御して燃料電池15と負荷57とを接続させる。また、制御部50は、水素遮断弁40を開弁させると共に、可変調圧弁42を調整し、負荷要求に基づいてコンプレッサ30を駆動制御すると共に、水素循環ポンプ44および冷媒循環ポンプ60を駆動させる。これにより、燃料電池15に対する燃料ガスおよび酸化ガスの供給が開始される。そして、例えば負荷57がモータである場合には、負荷57に対しても、負荷57を駆動するための駆動信号を、負荷要求に応じて出力する。なお、燃料電池15の発電時には、制御部50はさらに、パージ弁46の開弁制御を適宜行なう。

0052

これに対して、燃料電池15の発電停止時、例えば燃料電池システム10がシステム停止要求を受信したときには、制御部50は、発電停止処理を行なう。具体的には、制御部50は、負荷接続部51を駆動して、燃料電池15と負荷57との接続を遮断する。また、制御部50は、水素遮断弁40を閉弁させると共に、水素循環ポンプ44およびコンプレッサ30を駆動停止させることにより、燃料電池15への燃料ガスおよび酸化ガスの供給を停止させる。また、発電停止中は、パージ弁46は閉弁状態に維持される。これにより、セル内燃料ガス流路と、燃料ガスマニホールドと、水素遮断弁40に一端が閉塞された水素供給流路22と、パージ弁46に一端が閉塞された水素排出流路24と、接続流路25と、から成る燃料ガスの流路(以下、アノード側流路と呼ぶ)は、水素が封入された状態となる。また、上記のようにコンプレッサ30が停止されたときには、セル内酸化ガス流路と、酸化ガスマニホールドと、空気排出流路34と、コンプレッサ30によって一端が閉塞された空気供給流路32と、から成る酸化ガスの流路(以下、カソード側流路と呼ぶ)は、空気が満たされた状態となる。なお、冷媒循環ポンプ60は、システム停止時おいて最終的には駆動停止される。しかしながら、後述するように、発電停止時に燃料電池温度に基づく制御を行なう場合には、発電停止後しばらくの間は、冷媒循環ポンプ60の駆動を継続しても良い。

0053

以下に、燃料電池15の発電停止後における燃料電池の電圧上昇および電極における電位上昇について説明する。図3は、燃料電池の発電停止後における電圧推移の様子を表わす説明図である。図3では、横軸に、燃料電池の発電停止時(ガス供給の停止および負荷57との接続遮断を行なったとき)からの経過時間を表わし、縦軸に、燃料電池15の電圧を表わしている。システム停止時に、燃料電池15への燃料ガスおよび酸化ガスの供給を停止して発電を停止したときには、既述したように、アノード側流路内には燃料ガス(水素)が封入され、カソード側流路内には酸化ガス(空気)が満たされた状態となる。このような状態で燃料電池15と負荷57との接続が遮断されると、燃料電池15の電圧は、ある程度高い値(停止直後はOCVに対応する値)を示す。その後、各単セル70内においては、電解質膜を介してアノード側からカソード側へと水素が拡散し、拡散した水素とカソード側の空気(酸素)とがカソード上で反応して、セル内酸化ガス流路内の酸素が消費される。また、電解質膜を介してカソード側からアノード側への酸素の拡散も進行し、これらによってセル内酸化ガス流路内の酸素が減少し、燃料電池15の電圧は降下し始める。アノード側流路に封入される水素量が充分に多い場合には、上記のようなカソード側流路内の酸素量の減少と共に燃料電池15の電圧が低下し、やがて、安定した低電圧状態(例えば、略0V)となる。

0054

上記のようにセル内酸化ガス流路内の酸素が消費されると、カソード側流路内の圧力が低下することにより、空気排出流路34における大気開放された端部から、外気(空気)がカソード側流路内へと流入する。このような空気の流入により、燃料電池15の電圧が、再上昇を始める。具体的には、上記のようにカソード側流路へと空気が流入すると、電解質膜を介してカソード側からアノード側へと空気が拡散することにより、アノード上において部分的に水素濃度が高い領域と低い領域とが生じて内部電池が形成される。このように内部電池が形成されると、カソードの電位が上昇し、燃料電池電圧が上昇を始める(図3における時間TA)。内部電池が形成される状態とは、外部の回路電子が流れることなく、MEA71面内の領域ごとに進行する反応の間で、電子のやり取りが行なわれる状態をいう。

0055

具体的には、MEA71において、アノード上の水素濃度が高い領域では、通常の電池反応と同様の反応(水素からプロトンと電子が生じるアノードの反応や、酸素とプロトンと電子から水が生じるカソードの反応)が進行する。これに対して、アノード上の水素濃度が低い領域では、カソードにおいて、カソードの構成要素、特に触媒担持担体(本実施例ではカーボン粒子)の酸化が進行する。そして、これらの反応の間で電子のやり取りが行なわれる。その結果、触媒担持担体の酸化により、触媒担持担体の粒径比表面積が変化して、カソードの形態変化が進行する。

0056

図3に示すように、燃料電池の電圧が再上昇した後には、燃料電池の電圧は再び降下する。このような電圧降下は、上記のように内部電池となる反応が進行して、アノード側流路内に封入されていた水素が消費され、電極における反応がそれ以上起こらなくなることにより起こる。上記のように水素が消費される間にも、外部からカソード側流路内への空気の流入は継続するため、やがて、アノード側流路内もカソード側流路内も、水素を含むことのない同様のガス組成となる。すなわち、同様に空気で満たされる状態になる。双方のガス流路が同様に空気で満たされた状態になると、燃料電池15の電圧は、再び安定した低電圧状態(例えば、略0V)になる。

0057

システム停止後、燃料電池15の電圧が再上昇するときには、上記のようにカソードが高電位となっているが、アノードの電位もまた上昇している。通常の発電時には、アノードには水素が供給されているため、アノード電位は略0Vとなっている。燃料電池電圧はカソード電位とアノード電位の差であるため、燃料電池電圧はカソード電位に等しくなる。これに対して、ガス供給の停止を伴う発電停止後には、上記したようにセル内燃料ガス流路へと酸素が流入することにより、アノードの電位が上昇を始める。図4は、図3に示したシステム停止後の燃料電池15の電圧の変化の様子と共に、アノード電位の変化の様子を示した説明図である。図4では、燃料電池電圧の変化の様子を実線で表わすと共に、アノード電位の変化の様子を破線で表わしている。図4に示すように、カソード側流路内の酸素が消費されて燃料電池15の電圧が略0Vへと低下するまでは、アノード側流路内には充分量の水素が存在して酸素がほとんど存在しないため、アノード電位は略0Vとなっている。その後、燃料電池15の電圧が再上昇する際には、カソード側流路内へと外気(空気)が流入し、流入した空気中の酸素が電解質膜を介してアノード側へと拡散する。このように、セル内燃料ガス流路中における酸素濃度が上昇するに従って、アノード電位が上昇する。既述したように、アノード側流路およびカソード側流路が同様に空気で満たされて、燃料電池15の電圧が再び安定した低電圧状態(略0V)になるときには、アノード電位は、カソード電位と同等の高電位状態になっている。

0058

燃料電池15の電圧が再び安定した低電圧状態(略0V)になった後は、アノード電位とカソード電位とが同等の高電位となる状態が継続する。そして、燃料電池システム10が次回に起動され、燃料電池15に対して燃料ガスおよび酸化ガスの供給が開始されると、すなわち、セル内燃料ガス流路に対する水素の供給が開始されると、アノード電位が略0Vに低下すると共に燃料電池15の電圧が上昇する。

0059

上記のように、システム停止時に燃料電池15の発電が停止されて、アノード電位が上昇すると、アノードにおいて電極触媒の形態変化が進行する。電極電位がある程度高電位になると、担体であるカーボン粒子上に担持された触媒金属が溶出し、また、電極電位が高電位と低電位との間で変動すると、触媒金属は溶出と析出とを繰り返す。このように、触媒金属が溶出したり析出したりすることにより、電極触媒の形態変化が進行する。アノードにおいては、主として、上記した発電停止時の高電位化によって、形態変化が起こる。このように、アノード電位が高電位になって、触媒金属が溶出すると、担体上に担持された触媒金属が減少し、あるいは凝集して、担体上に分散担持された触媒金属微粒子の表面積が減少する。

0060

燃料電池システム10の停止時には、既述したように、高電位になったアノード電位は、次回起動時までその高電位状態が維持される。しかしながら、高電位化に伴って電極触媒の形態変化が進行すると、やがて、触媒金属の表面に酸化被膜が形成されることにより触媒金属の溶出が停止し、形態変化の進行も止まる。そのため、アノード電位が高電位となる期間、すなわち、燃料電池システム10が停止した後に次回起動するまでの期間にかかわらず、燃料電池システムの停止の度に、アノードにおける形態変化は、ある定まった量だけ進行する。

0061

なお、燃料電池システム10が次回に起動され、燃料電池15に対して燃料ガスの供給が開始されると、アノードの触媒金属表面に形成された酸化被膜は直ちに還元されて消滅し、触媒金属は、触媒としての活性回復する。

0062

C.発電停止時におけるアノード触媒の形態変化量の導出の概要
図5は、発電時ガス供給部による燃料ガスおよび酸化ガスの供給の停止を伴う燃料電池の発電停止回数と、アノード触媒の形態変化の程度、具体的には、アノード触媒の表面積(アノード触媒として機能し得る有効表面積)との関係を表わす説明図である。既述したように、システム停止時にアノード電位が高電位になると、アノードの触媒金属表面に酸化被膜が形成されるまで形態変化が進行する。そのため、形態変化開始時(燃料電池の発電停止時)のアノード触媒表面積ごとに、その後にアノード電位の高電位化が1回起こることによるアノード触媒表面積の減少量を定めることができる。したがって、図5に示すように、燃料電池の発電停止回数と、アノード触媒表面積との関係を、定めることができる。

0063

図6は、燃料電池システム10の制御部50において実行されるアノード形態変化量導出処理ルーチンを表わすフローチャートである。本ルーチンは、燃料電池システム10の起動時に起動される。本ルーチンが起動されると、制御部50のCPUは、アノード電位上昇情報を取得したか否かを判断する(ステップS100)。アノード電位上昇情報とは、アノードの電位上昇の状態を示す情報であり、例えば、上記したように、発電時ガス供給部によるガス供給の停止を伴う燃料電池の発電停止が1回行なわれたことを示す情報とすることができる。燃料電池の発電停止が1回行なわれたことを示す情報の取得に係る具体的な動作については、後に詳しく説明する。ステップS100では、アノード電位上昇情報を取得するまで、この判断を繰り返し実行する。ステップS100においては、制御部50のCPUは、アノード電位上昇情報取得部として機能する。

0064

ステップS100において、アノード電位上昇情報を取得したと判断すると、制御部50のCPUは、取得したアノード電位上昇情報に基づいて、アノード形態変化の程度であるアノード形態変化量を導出し、導出したアノード形態変化量を記憶する(ステップS110)。本実施例では、制御部50内に、図5に示す発電停止回数とアノード触媒表面積との関係を表わすマップを記憶している。さらに、制御部50内には、それまでに行なった発電停止の回数、および、現在のアノード形態変化量を表わす値を記憶している。現在のアノード形態変化量を表わす値とは、具体的には、現在のアノード触媒表面積である。

0065

ステップS110では、それまでの発電停止の回数として記憶した回数(例えばn回)に、さらに1回を加えて(n+1回)、発電停止回数の記憶を更新する。そして、制御部50内に記憶しておいた上記マップに基づいて、発電停止回数が(n+1)回のときのアノード触媒表面積を導出する。図5では、発電停止がn回行なわれたときのアノード触媒表面積が値Aであり、発電停止がさらにもう一回行なわれることにより、アノード触媒表面積が値Bに減少する様子が示されている。ステップS110においては、制御部50のCPUは、アノード形態変化量導出部として機能する。

0066

なお、図5では、アノード触媒表面積は、発電停止回数に応じて一義的に定まるように表わしているが、実際には、発電停止回数以外の環境要因、例えば、発電停止時の燃料電池15の温度(アノードの温度)の影響を受ける。アノードが高電位化するときに触媒金属が溶出する反応は化学反応であるため、燃料電池15の温度が高いほど、発電停止1回当たりのアノード形態変化量は多くなり、燃料電池15の温度が低いほど、発電停止1回当たりのアノード形態変化量は少なくなる。ある特定の温度条件下における発電停止1回当たりのアノード触媒表面積の減少量に対して、異なる温度条件下で発電停止を1回行なうときのアノード触媒表面積減少量が変化する程度(割合)は、上記異なる温度条件ごとに、予め定めることができる。すなわち、図5に示す特定の温度条件(基準温度条件)下における発電停止回数とアノード触媒表面積との関係を表わすマップに対して、上記基準温度とは異なる温度ごとに、発電停止1回当たりのアノード触媒面積減少量が変化する割合を、予め定めて記憶しておけばよい。上記基準温度条件における発電停止1回当たりのアノード触媒表面積減少量に対して、上記異なる温度ごとに求めた、発電停止1回当たりのアノード触媒表面積減少量が変化する割合を、以下、温度感度係数と呼ぶ。

0067

図7は、制御部50に記憶したマップに対応する基準温度とは異なる温度で発電停止する際の、アノード触媒表面積の求め方を表わす説明図である。既述したように、それまでの発電停止回数がn回であるときに、上記基準温度条件で(n+1)回目の発電停止を行なうと、アノード触媒表面積は値Aから値Bへと減少する。図5および図7では、このようなアノード触媒表面積の減少の様子を、矢印αで表わしている。これに対して、上記基準温度条件よりも高い温度条件で(n+1)回目の発電停止を行なうと、アノード触媒表面積は、値Aから、値Bよりも小さい値Cへと減少する。図7では、このようなアノード触媒表面積の減少の様子を、矢印βで表わしている。上記した高い温度条件で(n+1)回目の発電停止を行なうときのアノード触媒表面積の減少量は、基準温度条件におけるアノード触媒表面積の変化量を表わす矢印αの傾きに対して、上記した高い温度条件に対応する温度感度係数を乗じることにより求めることができる。矢印αの傾きに対して温度感度係数を乗じることにより、上記した高い温度条件におけるアノード触媒表面積の変化量を表わす矢印βの傾きが求められ、変化前のアノード触媒表面積である値Aと矢印βの傾きから、(n+1)回目の発電停止を行なったときのアノード触媒表面積である値Cを求めることができる。

0068

上記のように、発電停止時の燃料電池の温度に基づいて、アノード形態変化量を補正して導出する場合には、ステップS110において、制御部50は、さらに、燃料電池15の温度を取得すればよい。燃料電池15の温度は、例えば、燃料電池15から排出された冷媒の温度を検知する冷媒温度センサ63の検出信号として取得すればよい。なお、燃料電池15の温度を検出する精度を向上させるためには、燃料電池15の発電を停止する際に、ステップS110の動作が終了するまでは、冷媒循環ポンプ60の駆動を継続することが望ましい。あるいは、燃料電池15において、燃料電池15内の温度を直接検出するための温度センサを設け、この温度センサの検出信号を取得することとしても良い。いずれの場合であっても、燃料電池内の温度を示す値を、直接的、あるいは間接的に、検知することができればよい。

0069

なお、図7に示すように、制御部50に記憶した基準温度条件におけるマップに対して温度感度係数に基づく補正を行なって、(n+1)回目の発電停止後のアノード触媒表面積として求められた値Cは、基準温度条件下では、m回目の発電停止後のアノード触媒表面積に該当する。そのため、このような場合には、制御部50は、(n+1)回目の発電停止を行なった後に、それまでに行なった発電停止の回数(積算停止回数)を、(n+1)回ではなくm回に補正して記憶する。そして、次回、図6のアノード形態変化量導出処理ルーチンを実行する際には、ステップS110において、アノード触媒表面積が値Cである状態から、(m+1)回目の発電停止を行なうものとして、必要に応じて温度感度係数に基づく補正を行ないつつ、アノード触媒表面積の導出を行なう。

0070

ステップS110において、アノード形態変化量の導出および記憶を行なうと、制御部50のCPUは、今回の発電停止が、燃料電池システム10の停止によるものであるか否かを判断する(ステップS120)。上記した説明では、燃料電池システム10の停止に伴う燃料電池15の発電停止時におけるアノード電位上昇について説明したが、燃料電池システム10の停止時以外であっても、アノード電位上昇を伴う燃料電池15の発電停止が行なわれる場合がある。ステップS120において、システム停止時ではないと判断したときには、制御部50のCPUは、ステップS100に戻る。ステップS120において、システム停止時であると判断したときには、制御部50のCPUは、本ルーチンを終了する。なお、燃料電池システム10の停止時以外の、アノード電位上昇を伴う燃料電池15の発電停止については、後に詳しく説明する。

0071

なお、上記実施例では、アノード形態変化量(アノード触媒表面積)を求めるために、図7に示したマップを制御部50内に記憶し、ステップS110において参照することとしたが、異なる構成としても良い。例えば、図7に示すマップに代えて、図7のマップに示した発電停止回数とアノード触媒表面積との関係を表わす近似式を予め求めて、制御部50内に記憶することとしても良い。この場合には、ステップS110では、記憶しておいた積算停止回数(n回)に、さらに1回を加えた回数(n+1回)を、上記近似式に代入して、アノード触媒表面積を求めればよい。この場合にも、燃料電池温度が基準温度とは異なる場合には、既述した温度感度係数を用いればよい。具体的には、近似式から求められる積算停止回数n回目のアノード触媒表面積と、積算停止回数(n+1)回目のアノード触媒表面積との差に、温度感度係数を乗じて、得られた値を、上記積算停止回数n回目のアノード触媒表面積に加算することにより、積算停止回数(n+1)回目における実際のアノード触媒表面積を導出することができる。

0072

D.システム停止時におけるアノード電位上昇情報の取得:
D−1.燃料電池の電圧に基づく取得:
第1実施例の燃料電池システム10では、図6のステップS100において、アノード電位上昇を伴う燃料電池の発電停止が1回行なわれたというアノード電位上昇情報を取得する動作を、燃料電池15の電圧に基づいて行なう。既述したように、発電時ガス供給部によるガス供給の停止を伴う燃料電池の発電停止が行なわれると、燃料電池電圧は、一旦低下した後に再上昇し、その後再び低下する。そして、このような燃料電池電圧の変化のパターンに対応して、アノード電位は、所定のタイミングで上昇する。具体的には、アノード電位は、セル内燃料ガス流路に流入する酸素量の増加に応じて上昇するため、燃料電池電圧が再上昇するから上昇を始め、燃料電池電圧が再上昇して最大値を取る頃に、上昇した状態で安定する(図4参照)。このように、燃料電池電圧の変化のパターンに対して、一定のタイミングでアノード電位が上昇するため、燃料電池電圧を検出することにより、燃料電池の発電停止に伴うアノード電位上昇が行なわれたと推定することができる。以下に、燃料電池電圧に基づいてアノード電位上昇情報を取得する動作を詳しく説明する。

0073

図8は、第1実施例の燃料電池システム10において、制御部50のCPUがステップS100において実行するアノード電位上昇判断処理ルーチンを表わすフローチャートである。本ルーチンが起動されると、制御部50のCPUは、まず、負荷接続部51において燃料電池15と負荷57との接続が遮断されているか否かを判断する(ステップS200)。ステップS200では、アノード電位上昇を伴う燃料電池の発電停止が行なわれたか否かを判断するために、負荷接続部51における接続が遮断されているか否かを判断している。

0074

ステップS200で、負荷接続部51における接続が遮断されていると判断すると、制御部50のCPUは、単位時間当たりの燃料電池電圧の変化量である電圧変化量ΔVFCを導出する(ステップS210)。具体的には、制御部50は、電圧センサ52から、所定の微小時間間隔ΔTで、燃料電池15の電圧を取得してRAMに記憶する。そして、今回検出した燃料電池電圧から、前回検出した燃料電池電圧を減算することによって、上記微小な時間間隔の間の電圧変化量を算出する。その後、上記微小な時間間隔の間の電圧変化量を、電圧の検出間隔である時間ΔTで除することにより、単位時間当たりの燃料電池電圧の変化量である電圧変化量ΔVFCを算出する。

0075

電圧変化量ΔVFCを算出すると、制御部50のCPUは、求めた電圧変化量ΔVFCが、第1の基準値ΔVst1より大きいか否かを判断する(ステップS220)。このステップS220は、燃料電池電圧が下がりきった後に上昇に転じたか否かを判断するためのステップである。図4に示したように、負荷接続部51における接続を遮断して燃料電池の発電を停止すると、燃料電池電圧はその後低下を続け、時間TAを経過した後に上昇に転じる。そのため、第1の基準値ΔVst1は、正の値であって、時間TAを経過して電圧変化が上昇に転じたことを判断可能な値として設定されている。

0076

ステップS220において、電圧変化量ΔVFCが第1の基準値ΔVst1以下であると判断されると、制御部50のCPUは、ステップS210に戻る。そして、電圧変化量ΔVFCの導出と、第1の基準値ΔVst1との比較の動作を繰り返す。

0077

ステップS220において、電圧変化量ΔVFCが第1の基準値ΔVst1より大きいと判断すると、制御部50のCPUは、再び単位時間当たりの燃料電池電圧の変化量である電圧変化量ΔVFCを導出する(ステップS230)。このステップS230の動作は、ステップS210と同様の動作である。その後、制御部50のCPUは、導出した電圧変化量ΔVFCが、第2の基準値ΔVst2より小さいか否かを判断する(ステップS240)。このステップS240は、燃料電池電圧が下がりきった後に上昇に転じ、その後再び下降を始めたか否かを判断するためのステップである。図4に示したように、負荷接続部51における接続を遮断して燃料電池の発電を停止すると、燃料電池電圧は低下の後に再上昇し、ピークを過ぎると再び下降する。そのため、第2の基準値ΔVst2は、負の値であって、燃料電池電圧が再び下降に転じたことを判断可能な値として設定されている。

0078

ステップS240において、電圧変化量ΔVFCが第2の基準値ΔVst2以上であると判断されると、制御部50のCPUは、ステップS230に戻る。そして、電圧変化量ΔVFCの導出と、第2の基準値ΔVst2との比較の動作を繰り返す。

0079

ステップS240において、電圧変化量ΔVFCが第2の基準値ΔVst1より小さいと判断すると、制御部50のCPUは、アノード電位上昇を伴う発電停止が1回行なわれたと判断して(ステップS250)、本ルーチンを終了する。このとき、図6のアノード形態変化量導出処理ルーチンのステップS100では、制御部50のCPUは、アノード電位上昇を伴う燃料電池の発電停止が1回行なわれたというアノード電位上昇情報を取得したと判断する。

0080

なお、図8のステップS200において、負荷接続部51における接続が遮断されていないと判断されるときには、制御部50のCPUは、アノード電位上昇を伴う発電停止が行なわれなかったと判断し(ステップS260)、本ルーチンを終了する。このとき、図6のアノード形態変化量導出処理ルーチンのステップS100では、制御部50のCPUは、アノード電位上昇情報を取得しなかったと判断する。

0081

D−2.燃料電池の発電停止後の経過時間に基づく取得:
図6のステップS100において、アノード電位上昇を伴う燃料電池の発電停止が1回行なわれたというアノード電位上昇情報を取得する動作の他の具体例として、燃料電池15の発電停止後の経過時間に基づく方法を挙げることができる。以下に、燃料電池システム10において、発電停止後の経過時間に基づいてアノード電位上昇情報を取得する動作を、第2実施例として説明する。

0082

負荷接続部51における接続を遮断しつつ燃料電池15の発電を停止する際に、発電停止から、アノード電位が上昇して安定し始めるまでの経過時間を、経過時間TB(図4参照)とすると、この経過時間TBは、発電停止後、セル内酸化ガス流路および電解質膜を経由してセル内燃料ガス流路へと酸素が流入するのに要する時間に応じて定まる。このような、セル内燃料ガス流路へ酸素が流入してアノード電位が上昇するまでの経過時間TBは、発電停止時にアノード側流路内に封入される水素量や、発電停止時にカソード側流路内に残留する酸素量、燃料電池が備える触媒量、セル内燃料ガス流路およびセル内酸化ガス流路の形状、一端が大気開放された空気排出流路34の形状等の影響を受け、燃料電池システムごとにほぼ一定の値をとる。そのため、燃料電池の発電停止後、アノード電位が上昇するまでの経過時間TBは、用いる燃料電池システムごとに予め求めることができる。そのため、ステップS100において、燃料電池の発電停止後の経過時間に基づいてアノード電位上昇情報を取得する場合には、負荷接続部51における接続の遮断を伴う燃料電池の発電停止後の経過時間を計測し、当該経過時間が、上記のように予め定めて制御部50内に記憶した基準経過時間である経過時間TBに達したか否かを判断すればよい。具体的には、ステップS100において制御部50のCPUは、制御部50内に備えるタイマを用いて発電停止からの経過時間を取得し、取得した経過時間を、記憶しておいた基準経過時間TBと比較すればよい。発電停止後の経過時間が、基準経過時間TBに達したときには、制御部50のCPUは、ステップS100において、アノード電位上昇を伴う燃料電池の発電停止が1回行なわれたというアノード電位上昇情報を取得したと判断すればよい。

0083

実施例の燃料電池システム10では、空気排出流路34の一端は大気開放されている。そのため、既述したように、燃料電池の発電停止後にセル内燃料ガス流路内に残留する酸素が水素と反応して消費されると、直ちに空気排出流路34を介した外気の浸入が始まり、燃料電池電圧およびアノード電位の上昇が始まる。これに対し、空気排出流路34に封止弁を設け、燃料電池の発電停止時にはこの封止弁を閉弁して、カソード側流路と外部との間の空気の流通を抑制することとしても良い。また、必要に応じて、空気供給流路32側(例えばコンプレッサ30内)にも同様の封止弁を設けて、発電停止時にはこの封止弁を閉弁することとしてもよい。このような構成とすれば、燃料電池の発電停止後に、カソード側流路内に封入された酸素が消費されても、外部からの空気の浸入が抑えられ、セル内酸化ガス流路および電解質膜を介したセル内燃料ガス流路への酸素の流入が極めてゆっくりになる。そのため、燃料電池の発電を停止した後、空気の流入に起因する燃料電池電圧の上昇およびアノード電位の上昇に要する経過時間を、極めて長くすることが可能になる。このような場合であっても、封止弁の封止能力等をさらに考慮することによって、アノード電位が上昇するまでの基準経過時間TBを求めることができ、発電停止からの経過時間に基づくアノード電位上昇情報の取得が可能になる。

0084

また、燃料電池システムの構成によっては、燃料電池の発電停止後の電圧変動のパターンが、図4に示すように、下降から上昇に転じた後に、上昇から下降に転じるという2つの変曲点を有するパターンを示さない場合がある。例えば、燃料電池の発電停止時にアノード側流路内に封入する水素圧が比較的低い(封入する水素量が比較的少ない)場合には、発電停止後、カソード上で水素と反応することによる酸素の消費速度が遅くなる。このような場合には、カソード側流路内に残留する酸素が消費される間に、空気排出流路34を介した空気(酸素)の流入が徐々に進行し、燃料電池電圧が充分に低下して低電圧状態となる前に電圧低下が鈍化したり、あるいは、低電圧状態となる前に若干の電圧上昇に転じたりして、高電圧状態が比較的長く継続する電圧挙動を示す場合がある。このような電圧挙動の一例を、図9に示す。また、図9には、発電停止後の電圧挙動がこのようなパターンを示すときの、アノード電位上昇の様子を合わせて示す。図9のように異なる電圧変動パターンを示す燃料電池システムであっても、アノード電位の上昇までの基準経過時間TBを同様に導出して記憶しておくことが可能であり、発電停止からの経過時間を、上記基準経過時間TBと比較することにより、ステップS100におけるアノード電位上昇情報の取得が可能になる。なお、図9に示すように、電圧変動パターンが明確な変曲点を示さない場合には、燃料電池電圧を検出して、例えば単位時間当たりの電圧変化量に基づいてアノード電位上昇を検知することは困難となる可能性があるが、経過時間に基づくことにより、容易に精度良く、アノード電位上昇情報を取得することができる。

0085

なお、燃料電池の発電停止からアノード電位上昇までに要する基準経過時間TBは、既述したように燃料電池システムの構成によって定まるが、さらに、発電停止の際の燃料電池の温度の影響も受ける。触媒上で進行する化学反応の速度は温度の影響を受けるため、温度が変化すれば、カソード上における酸素の消費速度等が変化するためである。そのため、燃料電池システムの使用環境温度変化する場合には、発電停止後にアノード電位上昇するまでの基準経過時間TBは、発電停止時の燃料電池温度に対応したマップとして制御部50内に記憶しておくことが望ましい。そして、図6のステップ100では、制御部50のCPUは、燃料電池の温度を取得すると共に上記マップを参照することによって、今回停止時にアノード電位上昇までに要する基準経過時間TBを求め、実測している経過時間との比較を行なえばよい。燃料電池の温度は、既述したように、冷媒温度センサ63の検出信号や、燃料電池の内部温度を検出するために別途設けた温度センサの検出信号によって取得すればよい。

0086

また、上記説明では、発電停止からの経過時間に基づいて、アノード電位上昇を伴う燃料電池の発電停止が1回行なわれたという情報を取得するための基準経過時間を、アノード電位が上昇して安定し始めるまでの経過時間TBとしたが、異なる構成としても良い。アノード形態変化の進行状態に基づいて、発電停止1回分のアノード形態変化が進行したと判断可能となるように予め定めた基準経過時間であれば良い。例えば、燃料電池の発電停止後に、燃料電池電圧が一旦低下して再上昇し、燃料電池電圧がピークに達するまでに要する時間を、基準経過時間として設定しても良い。あるいは、燃料電池電圧が、発電停止後に再上昇した後に再び低下して略0になるまでに要する時間を、基準経過時間として設定しても良い。

0087

また、発電停止後に、アノード形態変化が進行して、触媒金属表面が酸化被膜で覆われてアノード形態変化の反応が停止するまでに要する時間(図4において、基準経過時間TCと表わす)を、基準経過時間として設定しても良い。基準経過時間TCもまた、燃料電池システムごとに予め導出することができる。具体的には、発電停止後、アノード形態変化量(アノード触媒表面積低下量やアノード触媒金属の溶出量)を経時的に測定することによって、アノード形態変化が終了するまでに要する経過時間として、基準経過時間TCを導出すればよい。このような構成とすれば、発電停止時のアノード電位上昇に伴う1回分のアノード形態変化が完了したことを検出することになるため、アノード形態変化量の推定の精度を向上させることができる。なお、アノード電位が上昇を始めるまでの経過時間だけでなく、触媒金属表面が酸化被膜で覆われるまでの経過時間も、温度の影響を受ける。そのため、基準経過時間TCに基づいてアノード電位上昇情報を取得する場合にも、基準経過時間TCは、発電停止時の燃料電池温度に対応したマップとして記憶しておき、発電停止時の温度をさらに参照して、ステップS100の判断を行なうこととすれば良い。

0088

D−3.アノード上の酸素分圧に基づく取得:
図6のステップS100において、アノード電位上昇を伴う燃料電池の発電停止が1回行なわれたというアノード電位上昇情報を取得する動作のさらに他の具体例として、燃料電池15の発電停止後のセル内燃料ガス流路における酸素分圧に基づく方法を挙げることができる。アノード電位は、アノードが置かれた環境中の酸素分圧、具体的には、セル内燃料ガス流路中の酸素分圧によって定まる。そのため、セル内燃料ガス流路内の酸素分圧を導出することにより、アノード電位の上昇を検出することができる。以下に、セル内燃料ガス流路内の酸素分圧に基づいてアノード電位上昇情報を取得する動作を、第3実施例として説明する。

0089

第3実施例の燃料電池システムは、既述した燃料電池システム10と同様の構成を有しているが、さらに、図示しない酸素濃度センサおよび圧力センサを有している。酸素濃度センサは、セル内燃料ガス流路に設けられ、セル内燃料ガス流路内の酸素濃度を検出する。圧力センサは、セル内燃料ガス流路に設けられ、セル内燃料ガス流路内のガス全圧を検出する。上記のように検出された酸素濃度とガスの全圧とに基づいて、セル内燃料ガス流路における酸素分圧が算出される。

0090

図10は、発電時ガス供給部によるガスの供給停止を伴う燃料電池の発電停止後の経過時間と、アノード上酸素分圧の関係を表わす説明図である。図10に示した経過時間に対するアノード上酸素分圧の変化の挙動は、経過時間に対するアノード電位の変化の挙動とほぼ一致する。そのため、アノード上酸素分圧を導出することによって、アノード電位の上昇を検出することができる。

0091

図11は、第3実施例の燃料電池システム10において、制御部50のCPUがステップS100において実行するアノード電位上昇判断処理ルーチンを表わすフローチャートである。図11では、図8と共通する工程には同じ工程番号を付しており、共通する工程については詳しい説明を省略する。

0092

本ルーチンが起動されると、制御部50のCPUは、まず、負荷接続部51において燃料電池15と負荷57との接続が遮断されているか否かを判断する(ステップS200)。ステップS200で、負荷接続部51における接続が遮断されていると判断すると、制御部50のCPUは、アノード上酸素分圧Paoを導出する(ステップS310)。具体的には、制御部50のCPUは、酸素濃度センサからセル内燃料ガス流路における酸素濃度を取得すると共に、圧力センサからセル内燃料ガス流路におけるガスの全圧を取得する。そして、制御部50のCPUは、測定した酸素濃度およびガスの全圧に基づいて、セル内燃料ガス流路内での酸素分圧である、アノード上酸素分圧Paoを導出する。

0093

アノード上酸素分圧Paoを導出すると、制御部50のCPUは、求めたアノード上酸素分圧Paoが、基準酸素分圧Pstより大きいか否かを判断する(ステップS320)。基準酸素分圧Pstは、対応するアノード電位が、アノード形態変化を引き起こす程度に充分に高くなったことを判断するための値として、予め定めて制御部50内に記憶されている。

0094

ステップS320において、アノード上酸素分圧Paoが基準酸素分圧Pst以下であると判断すると、制御部50のCPUは、ステップS310に戻る。そして、アノード上酸素分圧Paoの導出と、基準酸素分圧Pstとの比較の動作を繰り返す。

0095

ステップS320において、アノード上酸素分圧Paoが基準酸素分圧Pstより大きいと判断すると、制御部50のCPUは、アノード電位上昇を伴う発電停止が1回行なわれたと判断して(ステップS250)、本ルーチンを終了する。

0096

なお、一つの単セルにおけるセル内燃料ガス流路においても、酸素濃度は均一ではない。例えば酸化ガス排出マニホールドに位置的に近い領域ほど、酸素濃度が早くに高くなるため、アノード面内において厳密には電位の不均一が生じる。また、燃料電池15を構成する各々の単セル同士を比較するならば、例えば空気排出流路34に近い端部の単セルほど、セル内燃料ガス流路における酸素濃度は早くに高くなる。そのため、例えば燃料電池15の中ほどに配置された単セル内の、セル内燃料ガス流路の中ほどの位置に酸素濃度センサを設けるならば、燃料電池15全体の平均的なアノード上酸素濃度を検出することができる。そして、このようにして検出したアノード上酸素濃度に基づいて導出した平均的な酸素分圧を用いるならば、燃料電池15全体の平均的なタイミングで、アノード電位上昇を伴う燃料電池の発電停止が1回行なわれたというアノード電位上昇情報を取得することができる。

0097

また、空気排出流路34との接続部に最も近い端部セルのセル内燃料ガス流路における、酸化ガス排出マニホールドに近い位置は、燃料電池15全体のセル内燃料ガス流路の内で、酸素濃度が最も早く高くなる位置であるといえる。そのため、このような位置に酸素濃度センサを設けて検出した酸素濃度を用いるならば、最も早くアノード電位の上昇を検出することができる。そして、燃料電池15全体の中で最も早くアノード形態変化が進行する位置の状態に基づいて、アノード電位上昇情報を取得することができる。また、燃料電池15全体の平均的な値としてアノード上酸素濃度を測定したい場合には、燃料電池15において、空気排出流路34との接続部からの距離の異なる複数の位置に配置された単セル内の各々に酸素濃度センサを設け、各々のセンサの検出値の平均を求めることとしても良い。

0098

なお、アノード上酸素分圧を導出する際に、アノード上酸素濃度を直接的あるいは間接的に取得できるならば、セル内燃料ガス流路に設けた酸素濃度センサを用いる以外の方法によって、アノード上酸素濃度を取得しても良い。例えば、セル内燃料ガス流路に存在し得る酸素以外のガスの濃度を検出するセンサを設け、酸素以外のガスの濃度を検出することによって、アノード上酸素濃度を導出しても良い。

0099

D−4.発電停止処理の実行に基づく取得:
図6のステップS100において、アノード電位上昇を伴う燃料電池の発電停止が1回行なわれたというアノード電位上昇情報を取得する動作のさらに他の具体例として、燃料電池の発電停止時に行なわれる特定の発電停止処理の実行に基づく方法を挙げることができる。以下に、特定の発電停止処理が実行される回数(特定の発電停止処理が実行されたという事実)に基づいてアノード電位上昇情報を取得する種々の動作について、順次説明する。

0100

D−4−1.燃料電池システム10における停止処理
第4実施例の燃料電池システム10においては、制御部50のCPUは、システム停止の指示を取得すると、発電時ガス供給部による燃料ガスおよび酸化ガスの供給を停止する工程と、負荷接続部51において燃料電池15と負荷57との接続を遮断するという工程と、を含む発電停止処理を実行する。したがって、第4実施例では、図6のステップS100において、燃料電池システム停止に伴うこれら一連の発電停止処理が行なわれたか否かを判断する。そして、上記一連の発電停止処理が行なわれた場合には、アノード電位上昇を伴う燃料電池の発電停止が1回行なわれたというアノード電位上昇情報を取得したと判断する。また、上記一連の処理が行なわれない場合には、ステップS100において制御部50のCPUは、アノード電位上昇情報を取得しないと判断する。

0101

D−4−2.燃料電池システム110における停止処理:
燃料電池システムの構成によっては、燃料電池システムの発電停止処理は、種々の態様を取ることが可能である。図12は、燃料電池システム10とは異なる発電停止処理を実行する第5実施例の燃料電池システム110の概略構成を表わすブロック図である。燃料電池システム110は、発電停止処理に係る構成以外は燃料電池システム10と同様の構成を有している。図12では、燃料電池システム10と共通する部分には同じ参照番号を付しており、以下では、発電停止処理に係る構成についてのみ説明する。

0102

燃料電池システム110は、空気供給流路32と水素供給流路22とを接続するパージ流路136を備えている。このパージ流路136は、可変調圧弁42よりも下流の位置で水素供給流路22と接続している。また、燃料電池システム110において、空気供給流路32には、パージ流路136との接続部よりも下流の位置に開閉弁137が設けられており、パージ流路136には開閉弁138が設けられている。上記空気供給流路32に設けられた開閉弁137は、燃料電池15の発電時には開弁され、システム停止時には閉弁される。また、パージ流路136に設けられた開閉弁138は、後述するように、燃料電池15の発電時には閉弁され、システム停止時には一時的に開弁される。

0103

燃料電池システム110では、制御部50のCPUは、システム停止の指示を取得すると、発電停止処理として、発電時ガス供給部によるガス供給を停止する工程と、負荷接続部51における接続遮断の工程と共に、アノード側流路を空気でパージする(アノードエアパージ)工程を行なう。アノードエアパージ工程とは、具体的には、コンプレッサ30の駆動を継続した状態で、開閉弁137を閉弁すると共に、開閉弁138を開弁する。また、水素排出流路24のパージ弁46を開弁する。これにより、コンプレッサ30から供給される空気は、カソード側流路へと供給されることなく、パージ流路136を経由してアノード側流路へと流入する。このとき、パージ弁46が開弁されているため、コンプレッサ30からの空気の供給をしばらく続けることにより、アノード側流路内のガスが、空気で置き換えられる。上記アノードエアパージ工程が開始された後、アノード側流路内を空気で置き換えるための時間として設定された時間が経過すると、制御部50のCPUは、コンプレッサ30を停止し、開閉弁138およびパージ弁46を閉弁して、アノードエアパージ工程を終了する。なお、上記したアノードエアパージ工程では、コンプレッサ30の駆動が継続されているが、カソード側流路への空気の供給は停止されており、燃料電池15の発電も停止している。そのため、アノードエアパージ工程においてアノード側流路へと空気を供給するコンプレッサ30は、「燃料電池の発電時に燃料電池のアノ−ド側に燃料ガスを供給すると共にカソ−ドに酸化ガスを供給する発電時ガス供給部」を構成しない。

0104

上記のようにアノードエアパージを行なうと、セル内燃料ガス流路における酸素濃度が急激に上昇し、アノード電位が上昇する。そして、カソード側流路もアノード側流路も空気で満たされて、カソードもアノードも共に、高電位な状態で安定する。このとき、カソードおよびアノードでは、触媒金属の表面が酸化被膜で覆われるまで形態変化が進行する。

0105

したがって、第5実施例の燃料電池システム110では、図6のステップS100において、燃料電池システムの停止時処理としてのこれら一連の発電停止処理が行なわれたか否かを判断すれば良い。そして、上記一連の発電停止処理が行なわれた場合には、アノード電位上昇を伴う燃料電池の発電停止が1回行なわれたというアノード電位上昇情報を取得すればよい。なお、アノードエアパージを伴うシステム停止を行なうと、直ちにアノード側流路に酸素が流入することにより、燃料電池の発電停止の処理を開始してから、燃料電池の発電停止1回分のアノード形態変化が進行するまでの時間が短くなる。しかしながら、アノードエアパージを行なうと、アノード上に水素と酸素が存在することにより内部電池が形成される期間を極めて短くすることができ、システム停止時においてカソード電位が極めて高くなることを抑制可能となる。

0106

D−4−3.燃料電池システム210における停止処理:
図13は、燃料電池システム10,110とは異なる発電停止処理を実行する第6実施例の燃料電池システム210の概略構成を表わすブロック図である。燃料電池システム210は、発電停止処理に係る構成以外は燃料電池システム10と同様の構成を有している。図13では、燃料電池システム10と共通する部分には同じ参照番号を付しており、以下では、発電停止処理に係る構成についてのみ説明する。

0107

燃料電池システム210は、窒素タンク239を備えると共に、窒素タンク239と水素供給流路22とを接続するパージ流路236を備えている。このパージ流路236は、可変調圧弁42よりも下流の位置で水素供給流路22と接続している。また、パージ流路236には、窒素タンク239との接続部近傍において、開閉弁238が設けられている。開閉弁238は、燃料電池15の発電時には閉弁されており、システム停止時には一時的に開弁される。

0108

燃料電池システム210では、制御部50のCPUは、システム停止の指示を取得すると、発電停止処理として、発電時ガス供給部によるガス供給を停止する工程と、負荷接続部51における接続遮断の工程と共に、アノード側流路を窒素ガスでパージする(アノード窒素パージ)工程を行なう。アノード窒素パージ工程とは、具体的には、開閉弁238を開弁すると共に、パージ弁46を開弁して、窒素タンク239内の窒素を、パージ流路236を介してアノード側流路へと供給し、アノード側流路内のガスを、窒素ガスで置き換える工程をいう。上記アノード窒素パージ工程が開始された後、アノード側流路内を窒素ガスで置き換えるための時間として設定された時間が経過すると、制御部50のCPUは、開閉弁238およびパージ弁46を閉弁して、アノード窒素パージ工程を終了する。

0109

上記のようにアノード窒素パージを行なうと、しばらくは、アノード電位は略0Vの状態を維持する。このような発電停止状態においては、電解質膜を介して、セル内酸化ガス流路とセル内燃料ガス流路との間で、濃度差に応じてガスの移動が起こる。すなわち、酸素濃度の高いセル内酸化ガス流路から、セル内燃料ガス流路へと酸素が移動する。また、窒素濃度の高いセル内燃料ガス流路から、セル内酸化ガス流路へと窒素が移動する。そして、最終的には、セル内酸化ガス流路もセル内燃料ガス流路も共に、ほぼ同じ成分のガス(空気)によって満たされた状態になる。このように、セル内燃料ガス流路における酸素濃度が上昇するにつれてアノード電位が上昇し、やがてアノード電位は高電位状態で安定する。そして、アノードにおいては、触媒金属の表面が酸化被膜で覆われるまで形態変化が進行する。

0110

したがって、第6実施例の燃料電池システム210では、図6のアノード形態変化量導出処理ルーチンを実行する際に、ステップS100において、燃料電池システムの停止時処理としてのこれら一連の発電停止処理が行なわれたか否かを判断すれば良い。そして、上記一連の発電停止処理が行なわれた場合には、アノード電位上昇を伴う燃料電池の発電停止が1回行なわれたというアノード電位上昇情報を取得すればよい。このようなアノード窒素パージ工程を伴う発電停止処理もまた、システム停止時においてカソード電位が極めて高くなることを抑制するためのシステム停止方法である。

0111

燃料電池システムの停止時に、最終的にセル内燃料ガス流路へと酸素が流入する発電停止処理を実行するならば、発電停止処理として、第4ないし第6実施例とは異なる処理を行なっても良い。最終的にセル内燃料ガス流路に酸素が流入してアノード電位が上昇するならば、このような発電停止処理が行なわれたことを判断することによって、アノード電位上昇を伴う燃料電池の発電停止が1回行なわれたというアノード電位上昇情報を取得すればよい。

0112

また、発電停止処理としての一連の処理が実際に行なわれたか否かを判断するのではなく、制御部50に上記発電停止処理を行なわせるための、システム停止の指示入力があったか否かを判断しても良い。あるいは、システム停止の指示入力を受けて、制御部50が、一連の発電停止処理の少なくとも一部を実行させるための駆動信号を出力したか否かを判断しても良い。これらの場合には、システム停止の指示入力があったとき、あるいは、停止処理の一部を実行させるための駆動信号を制御部50が出力したときに、アノード電位上昇を伴う燃料電池の発電停止が1回行なわれたというアノード電位上昇情報を取得すれば良い。

0113

以上のように構成された第1ないし第6実施例の燃料電池システムによれば、アノード電位上昇情報の取得を行なうため、アノード電位を直接検出することなく、燃料電池の発電停止に伴うアノード電位の上昇があったことを検出することができる。すなわち、燃料電池電圧の変化の様子や、燃料電池の発電停止の処理を開始してからの経過時間や、アノード上の水素濃度や、システム停止時における発電停止処理の実行等を検出することによって、アノード電位を直接検出することなく、燃料電池の発電停止に伴うアノード電位の上昇を検出することができる。このように、アノード電位が上昇するときと一定の関係を示す値であって、アノード電位よりも容易に、また、簡便に検出可能な値を検出することによって、アノード電位上昇を、容易に推定することができる。

0114

また、第1ないし第6実施例の燃料電池システムによれば、上記のようにして導出したアノード電位上昇に基づいてアノード形態変化量を導出するため、アノード形態変化量を直接検出する必要が無く、容易かつ簡便に、アノード形態変化量を知ることが可能になる。すなわち、アノード電位上昇を伴う発電停止の回数とアノード形態変化量との関係に基づいてアノード形態変化量を導出するため、システム停止の動作と同時に現在のアノード形態変化量を求めることができる。したがって、例えば、サイクリックボルタンメトリ特性を用いて電極触媒表面積を測定する場合のように、特別な測定器を用意する必要が無く、また、電極触媒表面積を測定するための特別な機会を設ける必要がない。さらに、このようなアノード電位上昇情報に基づくアノード形態変化量の導出は、アノード形態変化を伴うシステム停止の度に、システム停止時の処理と共に行なわれるため、常に、現在のアノード形態変化量を把握することが可能になる。

0115

E.システム稼働中におけるアノード電位上昇情報の取得:
既述した説明では、システムを停止するために燃料電池の発電を停止する際に、アノード電位上昇情報を取得する動作について説明したが、燃料電池システムの稼働中に燃料電池の発電を停止する際にも、同様にアノード電位上昇が起こり得る。以下に、システム稼働中の発電停止時に、アノード電位上昇情報を取得する構成を、第7実施例として説明する。

0116

図14は、燃料電池システム10を搭載する第7実施例の電気自動車90の概略構成を表わすブロック図である。ただし、電気自動車90は、燃料電池システム10に代えて、第5実施例の燃料電池システム110や、第6実施例の燃料電池システム210を備えることとしても良い。

0117

電気自動車90は、駆動用電源として、燃料電池15と共に、2次電池91を備えている。なお、図14では、燃料電池15以外の燃料電池システム10の構成要素については記載を省略している。電気自動車90には、燃料電池15および2次電池91から電力供給を受ける負荷として、補機94と、駆動モータ95に接続される駆動インバータ93とを備えている。駆動モータ95の出力軸98に出力される動力は、車両駆動軸99に伝えられる。補機94は、コンプレッサ30、水素循環ポンプ44、冷媒循環ポンプ60等の燃料電池補機や、空調装置エアコン)等の車両補機を含む。燃料電池15および2次電池91と、上記各負荷とは、配線56を介して互いに並列に接続されている。また、配線56には、燃料電池15との接続を入り切りするための負荷接続部51が設けられている。また、2次電池91は、DC/DCコンバータ92を介して配線56に接続されている。本実施例では、制御部50によってDC/DCコンバータ92の出力側目標電圧値を設定することによって、配線56の電圧を調節し、燃料電池15の発電量および2次電池91の充放電状態を制御可能となっている。また、DC/DCコンバータ92は、2次電池91と配線56との接続状態を制御するスイッチとしての役割も果たしており、2次電池91において充放電を行なう必要のないときには、2次電池91と配線56との接続を切断する。

0118

上記のような構成とすることで、電気自動車90では、燃料電池15と2次電池91との少なくとも一方から、上記負荷に対して電力供給が可能となっている。また、燃料電池15による2次電池91の充電も可能となっている。さらに、電気自動車90の制動時には、駆動モータ95を発電機として動作させることにより、2次電池91の充電が可能となっている。なお、図14では、電気自動車90の各部を制御部50によって制御することとなっているが、燃料電池システム10内の制御を行なう制御部と、電気自動車90の各部を制御する制御部とは、一体であっても別体であっても良い。

0119

電気自動車90は、運転状態として、「発電運転モード」と「間欠運転モード」と「回生運転モード」とを取り得る。「発電運転モード」は、負荷要求に応じた電力の少なくとも一部を燃料電池15から供給することによって、所望の走行状態を実現する運転状態である。「回生運転モード」は、電気自動車90の制動時に、駆動モータ95を発電機として動作させることによって、2次電池91を充電する運転状態である。「間欠運転モード」は、燃料電池15による電力供給を行なうと、燃料電池システム10のエネルギ効率が望ましくない程度に低下してしまう場合に、燃料電池15の発電を停止して、必要な電力を2次電池91から得る運転状態である。

0120

以下に、「間欠運転モード」についてさらに説明する。図15は、燃料電池15の出力の大きさと、燃料電池15におけるエネルギ効率および燃料電池補機が要する動力との関係を示す説明図である。また、図16は、燃料電池15の出力と、燃料電池システム10全体の効率との関係を示す説明図である。図15に示すように、燃料電池15の出力が大きくなるほど、燃料電池15におけるエネルギ効率は次第に低下する。また、燃料電池15の出力が大きくなるほど、補機動力、すなわち燃料電池補機を駆動するために消費するエネルギが大きくなる。ここで、電気自動車90においては、燃料電池補機の消費電力の大きさは、駆動モータ95の消費電力の大きさに比べてはるかに小さい。しかしながら、燃料電池15の出力が小さいときには、発電によって得られる電力量に比べて、発電のために燃料電池補機が消費する電力量の割合が大きくなる。そのため、図15に示した燃料電池エネルギ効率と補機動力に基づいて、燃料電池システム10全体のエネルギ効率(燃料電池システム効率)を求めると、図16に示すように、燃料電池システム効率は、燃料電池15の出力が所定の値のときに最も高くなる。すなわち、燃料電池15の出力が小さいときには、燃料電池システム効率が低くなる。本実施例の電気自動車90では、燃料電池システム効率が悪くなる低負荷時(燃料電池15の出力が図16に示すP0 よりも小さくなって、燃料電池システム効率がE0 よりも低くなるとき)には、燃料電池15を停止して2次電池91を用いるという「間欠運転モード」を採用することによって、燃料電池システム効率が低下するのを防止している。

0121

上記したように、「間欠運転モード」と「回生運転モード」を採用するときには、燃料電池15の発電は停止される。そして、「間欠運転モード」においては、発電時ガス供給部による燃料ガスおよび酸化ガスの供給も停止される。そのため、燃料電池システム10の稼働中であっても、「間欠運転モード」を採用しているときには、システム停止時と同様にアノード電位上昇が起こり得る。本実施例では、燃料電池システム10が稼働中である「間欠運転モード」においても、システム停止時と同様にして、アノード電位上昇情報の取得が行なわれる。なお、「回生運転モード」においても発電時ガス供給部による燃料ガスおよび酸化ガスの供給を停止する場合には、「回生運転モード」採用時にもアノード電位上昇情報の取得を行なうこととしても良い。

0122

既述したように、図6のアノード形態変化量導出処理ルーチンは、燃料電池システム10が起動された後、システムが停止されるまで継続して実行される。そして、制御部50のCPUは、ステップS100において、燃料電池システム稼働中の燃料電池発電停止時にも、既述したいずれかのアノード電位上昇判断処理ルーチンを実行することにより、アノード電位上昇情報を取得することができる。例えば、図8のアノード電位上昇判断処理ルーチンを実行することにより、燃料電池電圧に基づいてアノード電位上昇情報を取得することができる。また、燃料電池15の発電停止後の経過時間に基づいてアノード電位上昇情報を取得しても良く、図11に示すようにアノード上のガス濃度に基づいてアノード電位上昇情報を取得しても良い。

0123

ステップS100において、アノード電位上昇を伴う燃料電池の発電停止が1回行なわれたというアノード電位上昇情報を取得したと判断すると、制御部50のCPUは、燃料電池システム稼働中であっても、システム停止時と同様に、ステップS110におけるアノード形態変化量の導出・記憶の工程を行なう。すなわち、記憶しておいたこれまでのアノード形態変化量(アノード触媒表面積)と、積算発電停止回数、およびマップ等に従って、必要に応じて温度に基づく補正を行ないつつ、アノード電位上昇を伴う発電停止をさらに1回行なった後のアノード形態変化量を導出し、記憶する。また、発電停止回数を更新して記憶する。このとき、アノード形態変化量について温度に基づく補正を行なったときには、導出したアノード形態変化量に基づいて、積算発電停止回数を補正して更新する。

0124

燃料電池システム稼働中に、上記のようにステップS110においてアノード形態変化量を導出・記憶した場合には、ステップS120では、制御部50のCPUは、システム停止時ではないと判断する。そのため、その後は、再びステップS100に戻る。

0125

燃料電池システム稼働中において、ステップS100におけるアノード電位上昇情報の取得を、「間欠運転モード」採用に伴う発電停止のための一連の処理が行なわれたことにより判断することも可能である。しかしながら、「間欠運転モード」では発電停止時間が短く、アノード電位上昇が起こらない場合も多いと考えられる。そのため、最終的にアノード電位上昇が起こったことを確認可能な方法、すなわち、燃料電池電圧や経過時間やアノード上ガス濃度等に基づく方法を採用することが望ましい。

0126

なお、燃料電池システム稼働中に燃料電池の発電停止が行なわれても、ステップS100でアノード電位上昇情報を取得したと判断されるまでの間に、燃料電池15の発電が再開される場合があり得る。このような場合、例えば、図8のステップS200〜S240の処理を実行中に、負荷接続部51が接続される場合には、制御部50のCPUは、割り込み処理により、アノード電位上昇を伴う発電停止が行なわれなかったと判断する。すなわち、ステップS100において、アノード電位上昇情報を取得しなかったと判断する。そして、その後は、再びステップS100における判断を繰り返す。

0127

上記のように、燃料電池システムの停止時に限らず、アノード側流路に酸素が流入する燃料電池の発電停止時であれば、アノード電位上昇を伴う発電停止として検出して、アノード形態変化量を導出することで、アノード形態変化量導出の精度を向上させることができる。

0128

燃料電池システム稼働中における発電停止に伴うアノード電位上昇情報の取得は、燃料電池システムを電気自動車の駆動用電源として用いる場合以外であっても、適用できる。燃料電池システムを停止することなく燃料電池の発電を停止する運転モードを有する燃料電池システムであれば、同様の動作により、燃料電池システム稼働中におけるアノード電位上昇情報の取得を行なうことができる。

0129

F.アノード触媒の形態変化進行中の発電開始を考慮したアノード電位上昇情報の取得:
燃料電池システムの停止時に燃料電池を発電停止する場合であっても、システム稼働中に燃料電池を発電停止する場合であっても、アノード電位上昇に伴うアノード形態変化が進行する途中で、燃料電池の発電が再開される場合がある。例えば、燃料電池システムに対してシステム停止の指示がなされた後、短い時間の経過後に、システム起動の指示がなされる場合がある。あるいは、システム稼働中に「間欠運転モード」での運転が開始された後、短い時間の経過後に負荷要求が増大して、「発電運転モード」へと運転制御が変更される場合がある。このような場合には、発電停止回数1回分に相当するアノード形態変化が進行しない。以下に、このような、燃料電池の発電停止に伴うアノード形態変化が進行する途中で燃料電池の発電が再開される場合を考慮したアノード電位上昇情報の取得の動作を、第8実施例として説明する。以下では、燃料電池システム10において行なわれる動作であって、燃料電池15の発電停止後の経過時間に基づいてアノード電位上昇情報を取得する動作について説明するが、燃料電池システム110,210等、異なるシステムであっても同様の処理を行なうことができる。

0130

図17は、燃料電池システム10の制御部50のCPUが、図6のステップS100において、図8の処理に代えて実行するアノード電位上昇判断処理ルーチンを表わすフローチャートである。図17では、図8と共通する工程には同じ工程番号を付しており、共通する工程については詳しい説明を省略する。

0131

本ルーチンが起動されると、制御部50のCPUは、まず、負荷接続部51において燃料電池15と負荷57との接続が遮断されているか否かを判断する(ステップS200)。この負荷接続部51における接続の遮断は、システム停止時に行なわれる動作であっても良く、システム稼働時に燃料電池の発電が停止される際の動作であっても良い。ステップS200で負荷接続部51における接続が遮断されていると判断すると、制御部50のCPUは、燃料電池15の発電を停止してからの経過時間Tpasを取得して、経過時間Tpasが、第1の基準経過時間TBに達したか否かを判断する(ステップS405)。第1の基準経過時間TBとは、既述したように、アノード電位が上昇して安定し始めるまでの経過時間として定めた値である。ステップS405では、上記第1の基準経過時間TBを、アノード形態変化が進行し始めたことを判断するための基準時間として用いている。

0132

ステップS405で、経過時間Tpasが第1の基準経過時間TB以上であると判断すると、制御部50のCPUは、再び経過時間Tpasを取得して、経過時間Tpasが、第2の基準経過時間TCに達したか否かを判断する(ステップS410)。第2の基準経過時間TCとは、既述したように、発電停止1回当たりのアノード形態変化が終了するまでに要する経過時間である。

0133

ステップS410で、経過時間Tpasが第2の基準経過時間TC以上である場合には、アノード電位が上昇することによるアノード形態変化が、燃料電池の再起動によって中断されることなく進行したと判断することができる。そのため、経過時間Tpasが第2の基準経過時間TC以上であると判断すると、制御部50のCPUは、アノード電位上昇を伴う発電停止が1回行なわれたと判断して(ステップS250)、本ルーチンを終了する。このとき、図6のアノード形態変化量導出処理ルーチンのステップS100では、制御部50のCPUは、アノード電位上昇を伴う燃料電池の発電停止が1回行なわれたというアノード電位上昇情報を取得したと判断する。この場合、図6のステップS110では、既述したように、記憶しておいたこれまでのアノード形態変化量(アノード触媒表面積)と、積算発電停止回数、およびマップ等に従って、必要に応じて温度に基づく補正を行ないつつ、アノード電位上昇を伴う発電停止をさらに1回行なった後のアノード形態変化量を導出し、記憶する。

0134

ステップS410で、経過時間Tpasが第2の基準経過時間TC未満であると判断すると、制御部50のCPUは、燃料電池15を発電開始すべきか否かについて判断する(ステップS420)。例えば、ステップS200における負荷接続部51の遮断が、システム停止に伴うものであれば、ステップS420において制御部50のCPUは、システム起動の指示がなされたか否かに基づき、起動の指示がなされたときには発電開始すべきと判断すればよい。また、ステップS200における負荷接続部51の遮断が、システム稼働中に行なわれたものであれば、ステップS420において制御部50のCPUは、「間欠運転モード」等から「発電運転モード」に切り替える判断を行なったか否かに基づき、切り替える判断を行なったときには発電開始すべきと判断すればよい。

0135

ステップS420において、燃料電池15の発電開始をすべきであると判断したときには、制御部50のCPUは、発電開始すべきと判断したときの経過時間Tpas1を、アノード電位上昇情報として取得して(ステップS425)、本ルーチンを終了する。上記経過時間Tpas1において発電開始をすべきであると判断された後には、燃料電池15では、発電が開始のための一連の処理が実行され、発電時ガス供給部による燃料ガスおよび酸化ガスの供給が開始される。

0136

ステップS425において、基準経過時間TBから基準経過時間TCまでの間に発電開始すべきと判断されたときの経過時間Tpas1を、アノード電位上昇情報として取得すると、制御部50のCPUは、図6のステップS110では、上記経過時間Tpas1に基づいて、今回の発電停止に伴うアノード形態変化量(アノード触媒表面積の減少量)を導出する。そして、導出した今回の発電停止に伴うアノード形態変化量を、記憶しておいたこれまでのアノード形態変化量に加えて、積算値としてのアノード形態変化量を導出し、記憶する。

0137

経過時間Tpas1に基づくアノード形態変化量の導出について、以下に説明する。図18は、発電停止からの経過時間と、アノード形態変化を起こす反応が進行する速度との関係を表わす説明図である。図18では、アノード形態変化速度の変化の様子と共に、経過時間に対応するアノード電位の変化の様子も併せて示している。図18に示すように、アノード電位が上昇を始めると、アノード形態変化速度は0から次第に上昇する。そして、アノード形態変化速度は、アノード電位が上昇して安定する経過時間TBを過ぎた後にピークに達し、アノードの触媒金属表面が酸化被膜で覆われる経過時間TCには、略0に低下する。このような、発電停止からの経過時間とアノード形態変化速度との関係は、燃料電池ごとに予め定めることができる。そのため、今回の発電停止に伴うアノード形態変化量ΔCa(アノード触媒表面積の減少量)は、上記経過時間Tpas1までのアノード形態変化速度を時間で積分することにより、導出することができる。図18では、経過時間Tpas1までに進行したアノード形態変化によるアノード触媒表面積の減少量ΔCaを、ハッチを付して示している。

0138

ここで、上記発電停止からの経過時間とアノード形態変化速度との関係は、発電停止時の燃料電池温度の影響も受ける。そのため、制御部50では、実際には、発電停止からの経過時間と、発電停止時の燃料電池温度とをパラメータとして、経過時間Tpas1までのアノード形態変化量ΔCaを導出可能なマップを記憶している。そして、図6のステップS110では、ステップS425で取得した経過時間Tpas1と、発電停止時の温度とに基づいて、上記マップを参照して、アノード形態変化量ΔCaを導出する。

0139

図19は、アノード電位上昇を伴う燃料電池の発電停止回数と、アノード触媒の形態変化の程度(アノード触媒の表面積)との関係を表わす説明図である。図19では、図7と同様に、発電停止回数がn回のときのアノード触媒表面積が値Aとなる様子と共に、アノード触媒表面積が、値Aから、上記アノード触媒表面積減少量ΔCaだけ減少した値Dに対応する発電停止回数が、k回となる様子が表わされている。ステップS110では、上記したアノード触媒表面積である値Dが導出・記憶されると共に、発電停止回数を、(n+1)回ではなくk回として、記憶を更新する。

0140

ステップS420において、燃料電池15の発電開始をすべきでないと判断したときには、制御部50のCPUは、再びステップS410に戻る。そして、経過時間Tpasを取得して、経過時間Tpasが第2の基準経過時間TCに達したか否かの判断を繰り返す。

0141

ステップS405において、経過時間Tpasが第1の基準経過時間TB未満であると判断すると、制御部50のCPUは、燃料電池15を発電開始すべきか否かについて判断する(ステップS415)。このステップS415における動作は、既述したステップS420と同様の動作である。

0142

ステップS415で、燃料電池15の発電開始をすべきであると判断したときには、制御部50のCPUは、アノード電位上昇を伴う発電停止が行なわれなかったと判断し(ステップS260)、本ルーチンを終了する。このとき、図6のアノード形態変化量導出処理ルーチンのステップS100では、制御部50のCPUは、アノード電位上昇情報を取得しなかったと判断する。

0143

ステップS415で、燃料電池15の発電開始をすべきでないと判断したときには、制御部50のCPUは、再びステップS405に戻る。そして、経過時間Tpasを取得して、経過時間Tpasが第1の基準経過時間TBに達したか否かの判断を繰り返す。

0144

なお、ステップS200において、負荷接続部51における接続が遮断されていないと判断すると、制御部50のCPUは、アノード電位上昇を伴う発電停止が行なわれなかったと判断し(ステップS260)、本ルーチンを終了する。

0145

以上のような構成では、経過時間Tpasが第2の基準時間TCに達すると、アノード電位上昇を伴う発電停止が1回行なわれたというアノード電位上昇情報を取得し、発電停止回数に基づいて、発電停止後のアノード形態変化量(アノード触媒表面積)を導出する。そして、経過時間Tpasが第1の基準時間TBと第2の基準時間TCの間であるときに発電開始されると、発電が開始されるときの経過時間Tpas1を、アノード電位上昇情報として取得し、経過時間Tpas1に基づいて、今回発電停止をしたことによるアノード触媒表面積減少量を導出して、発電停止後のアノード触媒表面積を求めている。そのため、発電停止の回数のみに基づいてアノード形態変化量を導出する場合に比べて、アノード形態変化量の導出の精度を高めることができる。

0146

上記した説明では、アノード形態変化が開始されたことを判断するための第1の経過時間として、アノード電位が上昇して安定し始めるまでの経過時間TBを用いているが、異なる構成としても良い。例えば、燃料電池電圧が一旦低下して再上昇してピークに達するまでに要する時間に基づいて、第1の基準経過時間を設定しても良い。あるいは、経過時間TBよりも短い経過時間であって、実際にアノード形態変化が開始されるタイミングにより近い経過時間(例えば、実験的に、アノード触媒の溶出やアノード触媒表面積の低下の開始など、アノード形態変化の開始が検出される経過時間)を、第1の基準経過時間として用いることとしても良い。

0147

また、上記説明では、燃料電池の発電停止時を起算点とする経過時間Tpasに基づいて、アノード形態変化の進行の程度(開始や終了など)を判断しているが、異なる構成としても良い。燃料電池の発電が停止してから、セル内酸化ガス流路および電解質膜を介してセル内燃料ガス流路へと酸素が流入するまでの時間は、実際には、発電停止時の環境条件等により、ある程度の誤差を生じ得る。そのため、燃料電池の発電停止からの経過時間Tpasに代えて、例えば、燃料電池電圧が下降から上昇に転じる既述した経過時間TAからの経過時間に基づいて、同様の判断を行なっても良い。アノード電位が上昇してアノード形態変化が進行していることを判断可能であって、進行しているアノード形態変化の程度を導出可能な経過時間を用いれば、同様の処理を行なうことができる。あるいは、燃料電池電圧に基づいて、今回発電停止をしたことによるアノード触媒表面積減少量を導出することも可能である。発電停止後に低下し、再上昇し、その後再び低下する燃料電池電圧の変動パターンと、アノード触媒表面積減少量とは、一定の対応関係にある。そのため、燃料電池電圧に基づいて、アノード形態変化の進行の程度(開始や終了、あるいはどの程度進行したか)を判断し、同様の処理を行なうことができる。

0148

G.発電時の負電圧履歴によるアノード触媒形態変化量の導出:
既述した説明では、燃料電池の発電を停止する際に、アノード電位上昇情報を取得する動作について説明したが、燃料電池の発電中にも、アノード形態変化は起こり得る。以下に、燃料電池の発電中に生じるアノード電位上昇をさらに考慮して、アノード形態変化量を導出する構成を、第9実施例として説明する。第9実施例も、燃料電池システム10における動作として説明するが、燃料電池システム110,210等、異なるシステムであっても同様の処理を行なうことができる。

0149

燃料電池の発電中は、アノード側流路には水素が供給されるため、アノード電位は0になる。しかしながら、例えばセル内燃料ガス流路で水が凝縮することにより、アノードに供給される水素量が不足すると、水素不足を起こした単セルにおいて、アノードの電位が上昇して燃料電池電圧が負電圧となり、アノード形態変化が起こる。図20は、このような発電中に進行するアノード形態変化量を導出するための、発電時アノード形態変化量導出処理ルーチンを表わすフローチャートである。本ルーチンは、燃料電池15の発電中に、図6に示すアノード形態変化量導出処理ルーチンと平行して、制御部50のCPUにおいて、繰り返し実行される。

0150

本ルーチンが起動されると、制御部50のCPUは、水素欠乏が発生して負電圧となった単セルが存在するか否かを判断する(ステップS130)。燃料電池においては、燃料電池内に配置される単セルの配置場所によって、凝縮水滞留しやすく水素欠乏による負電圧化が起こりやすい単セルと特定することができる場合がある。本実施例のステップS130では、電圧センサ52によって個々の単セルの電圧を検出すると共に、負電圧であることが検出された単セルが、上記のように予め特定した単セルに該当するか否かを判断している。そして、負電圧セルが上記予め特定した単セルに該当する場合に、当該負電圧セルの電圧が基準値以下であれば、水素欠乏を起こした単セルが存在すると判断する。

0151

ステップS130において、水素欠乏セルが存在すると判断すると、制御部50のCPUは、水素欠乏が検出された単セルごとに、発電時アノード形態変化量を導出する(ステップS140)。発電時アノード形態変化量は、図5に示した発電停止回数とアノード触媒表面積との関係のように、水素欠乏回数とアノード触媒表面積との関係のマップとして求めることができる。また、発電時アノード形態変化量は、負電圧となった単セルの発電条件、具体的には、電圧、電流、温度、負電圧となっている時間の影響を受ける。これらの各発電条件の、水素欠乏回数1回に対応するアノード触媒表面積低下量に対する影響の程度は、電圧ごと、電流ごと、温度ごと、時間ごとに、水素欠乏1回当たりのアノード触媒表面積減少量を変化させる割合として、既述した温度感度係数と同様の感度係数として導出することができる。ステップS140では、制御部50のCPUは、水素欠乏回数を積算しており、上記マップを参照して、今回の水素欠乏によるアノード形態変化量を導出する。また、負電圧となった単セルごとに、発電条件(電圧、電流、温度、負電圧となっている時間)を検出すると共に、上記各感度係数を用いて、今回の水素欠乏によるアノード形態変化量を補正することによって、最終的に発電時アノード形態変化量を導出する。

0152

ステップS140で、今回の水素欠乏による発電時アノード形態変化量を導出すると、制御部50のCPUは、負電圧が検出された単セルごとに、発電時アノード形態変化量を積算して記憶し(ステップS150)、本ルーチンを終了する。このように、制御部50においては、いずれの単セルであるか、という情報と共に、各々の単セルにおける発電時アノード形態変化量の積算値が記憶される。発電停止時におけるアノード形態変化量は、燃料電池15を構成するいずれの単セルにおいても同様の進行するものとして推定される。これに対し、燃料電池の発電中におけるアノード形態変化量は、実際にアノード電位が上昇した個々の単セルについて導出される。

0153

ステップS130において、水素欠乏セルが存在しないと判断すると、制御部50のCPUは、本ルーチンを終了する。

0154

このような構成とすれば、燃料電池15の発電停止時だけでなく、燃料電池15の発電中に生じるアノード電位上昇に起因するアノード形態変化量を求めることができる。そのため、アノードの高電位化に起因するアノード形態変化量を、より精度良く推定することが可能になる。

0155

H.アノード触媒の形態変化量に基づく制御の変更:
アノード形態変化が進行すると、通常の発電時における燃料電池の出力電圧が次第に低下して、燃料電池の性能が低下する。以下に、アノード形態変化に起因する燃料電池の性能低下についてさらに詳しく説明する。

0156

アノード形態変化に起因する燃料電池電圧の低下は、アノード形態変化に起因して、発電中は本来略0であるアノード電位が上昇することにより生じる。アノード形態変化に起因してアノード電位が上昇する理由の少なくとも一つは、以下のように考えられる。既述したように、アノードが形態変化したときには、アノードにおいて、担体上に分散担持された触媒金属微粒子の表面積が減少している。このような触媒金属の表面積の減少は、アノード反応である水素酸化反応が進行する場の減少をもたらすため、過電圧の上昇、すなわち、アノード電位の上昇を引き起こすと考えられる。その結果、燃料電池の電圧低下(燃料電池の性能低下)が引き起こされる。

0157

図21は、アノード形態変化の程度(燃料電池15の製造当初と比較したアノード触媒表面積低下量)と、燃料電池の性能低下量(特定の発電条件における電圧低下量)との関係を表わす説明図である。特定の発電条件における電圧低下量とは、温度条件やガス供給条件を一定に定めて、出力電流が特定の値となるように燃料電池15を発電させた場合に、電圧がどのくらい低下するかを表わす。このような電圧低下量が多いほど、燃料電池15における電流値電圧値の関係であるIV特性が低下して、電池性能が低下することになる。図22は、燃料電池におけるIV特性を表わす説明図である。図22に矢印で示すように、アノード触媒表面積が低下してアノード電位が上昇すると、燃料電池電圧が低下して電池性能が低下する。

0158

このように、アノード形態変化量が増加して、燃料電池の電圧が低下するときには、電圧低下量に基づいて、燃料電池の発電に係る制御を変更することで、制御の更なる適正化を図ることが可能になる。以下に、アノード形態変化に起因する燃料電池電圧の低下量に基づいて、種々の制御を変更する構成について説明する。

0159

H−1.電圧低下の抑制:
図21に示すように、燃料電池の性能低下(電圧低下)の程度は、アノード触媒表面積の低下がある程度進行するまでは、比較的緩やかに増加する。しかしながら、アノード触媒表面積の低下がある程度進行すると、アノード触媒表面積の低下量に対する燃料電池の性能低下の程度が次第に大きくなる。燃料電池の電圧が低下すると、例えば既述したように燃料電池の電圧によって燃料電池の出力電力を制御する場合には、性能低下前と同様の制御を行なったのでは、燃料電池から所望の電力を得られなくなってしまう。そのため、アノード触媒表面積の低下量がある程度大きくなったときには、アノード触媒表面積低下に起因する電圧低下を抑制するように、燃料電池発電時出力制御を変更して、燃料電池の性能をより高く維持することが望ましい。以下に、アノード触媒表面積の低下時に行なう、燃料電池電圧をより高く維持するための制御変更に係る構成を、第10実施例として説明する。

0160

図23は、第10実施例の燃料電池システム10の制御部50のCPUにおいて実行される形態変化影響抑制処理ルーチンを表わすフローチャートである。本ルーチンは、燃料電池15の発電時に、繰り返し実行される。なお、燃料電池システム110、あるいは210において、同様の動作を行なうこととしても良い。

0161

本ルーチンが起動されると、制御部50のCPUは、アノード触媒表面積低下量が、基準値以上であるか否かを判断する(ステップS500)。図21に示すように、アノード触媒表面積低下量と燃料電池電圧低下量とは一定の関係にある。そのため、電圧低下量ΔVdの許容できる限界値としてΔVd1を定めることにより、許容できるアノード触媒表面積低下量の限界値としての基準アノード触媒表面積低下量SAを設定することができる(図21参照)。制御部50は、このようにして定めた基準アノード触媒表面積低下量SAを予め記憶している。

0162

ステップS500では、制御部50のCPUは、図6のアノード形態変化量導出処理ルーチンにより導出・記憶された最新のアノード形態変化量を読み込む。そして、最新のアノード形態変化量が、基準アノード触媒表面積低下量SA以上であるか否かを判断する。図6に基づくアノード形態変化量の導出は、燃料電池の発電停止時に行なわれるものであるため、ステップS500では、最新のアノード形態変化量として、前回燃料電池15が発電停止したときに導出したアノード形態変化量を読み込むことになる。

0163

なお、図6のステップS110において、アノード形態変化量を表わす値としてアノード触媒表面積を導出・記憶した場合には、ステップS500では、記憶したアノード触媒表面積に基づいて、製造当初と比較したアノード触媒表面積低下量を導出し、上記基準アノード触媒表面積低下量SAと比較すればよい。あるいは、基準アノード触媒表面積低下量SAに代えて、ΔVd1に対応する基準アノード触媒表面積を設定して、ステップS500における判断で用いても良い。あるいは、ステップS110において、アノード形態変化量として、アノード触媒表面積低下量を導出・記憶しても良い。ステップS110で導出したアノード形態変化の進行の程度に応じて、電圧低下量が許容範囲を超えたか否かを判断できればよい。

0164

ステップS500において、最新のアノード形態変化量が基準アノード触媒表面積低下量SA以上であると判断すると、制御部50のCPUは、アノード形態変化に起因する燃料電池の電圧低下を抑制するための制御の変更量を決定する(ステップS510)。アノード形態変化に起因する燃料電池の電圧低下を抑制するための制御の変更は、例えば、燃料ガス圧力の上昇、燃料ガス流量の増加(燃料ガスの循環量の増加)、燃料ガスからの不純物(窒素や水蒸気等)排出量増加、あるいは、燃料ガスの加湿量の増加等として行なえば良い。燃料ガス圧力を上昇させるには、水素タンク20から燃料電池15へと供給される水素圧を高めるように、可変調圧弁42を調節する際の目標圧力を変更すればよい。燃料ガス流量を増加(燃料ガスの循環量を増加)させるには、水素循環ポンプ44の駆動量を増加させればよい。燃料ガスからの不純物排出量を増加させるには、パージ弁46の開弁1回当たりの開弁時間を長くする、あるいは、開弁間隔を短くする、等により、単位時間当たりの開弁時間を長くすればよい。燃料ガスの加湿量の増加は、アノード側流路において、燃料ガスを加湿するための図示しない加湿装置を設けて、当該加湿装置による加湿量を増加させればよい。このような制御変更を行なうことにより、燃料電池15の電圧を上昇させる(IV特性の低下分の少なくとも一部を回復させる)ことができる。なお、燃料電池システム10では、既述したように水素循環流路内で燃料ガスを循環させるため、通常は、アノード側流路に加湿装置を設ける必要はない。そのため、加湿量を増加させることによる電圧低下抑制の制御は、燃料ガスを循環させることなく、比較的湿度の低い燃料ガスを予め加湿するための加湿装置を備えた燃料電池システムにおいて適用することが望ましい。

0165

図24は、アノード形態変化に起因する燃料電池の電圧低下を抑制するための制御の変更として、燃料ガス圧力の上昇を行なう場合の、燃料ガス圧力上昇量と、性能向上量(電圧回復量)との関係を表わす説明図である。制御部50は、図24に示す燃料ガス圧力上昇量と性能向上量の関係を示すマップを、予め記憶しておけばよい。さらに、制御部50は、図21に示したアノード触媒表面積低下量と、燃料電池の電圧低下量ΔVdとの関係を表わすマップも記憶しておけば良い。ステップS510では、制御部50のCPUは、上記マップを参照して、図21に基づき、最近のアノード形態変化量に対応する電圧低下量ΔVdを導出すると共に、図24に基づき、導出した電圧低下量ΔVdを回復するために要する燃料ガス圧力上昇量を導出し、制御の変更量として決定する。なお、図24に示すように、燃料ガス圧力を上昇させることによる電圧上昇量は、燃料ガス圧力上昇量が値Puに達すると最大値ΔVmaxとなり、それ以上燃料ガス圧力を上昇させても電圧上昇量が増加しなくなる。そのため、本実施例では、最新のアノード形態変化量に対応して求めた電圧低下量ΔVdが、上記最大値ΔVmaxに達した後は、燃料ガス圧力上昇量を、値Puを超えて決定することはない。

0166

なお、燃料電池においては、燃料ガスと酸化ガスの内の一方のガスの圧力のみが高くなると、電解質膜のそれぞれの面上を流れるガスの圧力差が大きくなることにより、電解質膜が損傷する可能性が生じる。そのため、アノード形態変化に起因する燃料電池の電圧低下を抑制するための制御の変更として、燃料ガス圧力の上昇を行なう場合には、燃料ガス圧力の上昇量に応じて、酸化ガス圧力も上昇させることが望ましい。したがって、ステップS510では、燃料ガス圧力上昇量を導出すると共に、導出した燃料ガス圧力上昇量に見合うように、酸化ガス圧力上昇量も決定する。酸化ガスの圧力上昇は、コンプレッサ30の駆動量を増加させることにより行なうことができる。

0167

図24では、燃料ガス圧力上昇量と性能向上量(電圧回復量)との関係を示したが、アノード形態変化に起因する燃料電池の電圧低下を抑制するための制御の変更として、既述した他の制御変更を行なう場合にも、制御変更量と性能向上量との関係は、同様になる。ここで、上記した燃料電池の電圧低下を抑制するための制御変更は、通常は、燃料電池システムにおけるエネルギ効率の低下を引き起こす。例えば、上記制御変更として、燃料ガス圧力の上昇を行なう場合には、コンプレッサ30の駆動量も同時に増加させることにより、システム全体のエネルギ効率が低下する。また、上記制御変更として、燃料ガス流量を増加させる場合には、水素循環ポンプ44の駆動量を増加させることにより、システム全体のエネルギ効率が低下する。また、上記制御変更として、燃料ガスからの不純物排出量を増加させる場合には、パージ弁46を開弁することにより、不純物排出と同時に水素も排出されてしまうため、システム全体のエネルギ効率(燃料利用効率)が低下する。また、上記制御変更として、燃料ガスの加湿量を増加させる場合には、加湿のためにエネルギを消費することにより、システム全体のエネルギ効率が低下する。そのため、図21に示した電圧低下量ΔVdの許容できる限界値としてΔVd1は、電圧を回復させることによる効果と、電圧回復のために生じるエネルギ効率の低下による影響とを考慮して、適宜設定すればよい。

0168

ステップS510で、アノード形態変化に起因する燃料電池の電圧低下を抑制するための制御の変更量を決定すると、制御部50のCPUは、決定した制御の変更量が実現されるように、各部に駆動信号を出力して(ステップS520)、本ルーチンを終了する。すなわち、制御変更の内容に応じて、可変調圧弁42およびコンプレッサ30や、水素循環ポンプ44や、パージ弁46や、加湿装置に対して、駆動信号を出力する。例えば、制御量の変更を、燃料ガス圧力上昇により行なう場合には、ステップS510で決定した燃料ガス圧力上昇量が実現されるように、可変調圧弁42およびコンプレッサ30の駆動量を変更する。なお、ステップS500で、最新のアノード形態変化量が基準アノード触媒表面積低下量SA未満であると判断するときには、性能低下量が許容範囲内であると判断されるため、制御部50のCPUは本ルーチンを終了する。

0169

アノード形態変化に起因する燃料電池の電圧低下を抑制するための制御の変更は、例示した複数の制御変更のいずれかを行なうのではなく、複数の制御変更を組み合わせて行なっても良い。具体的には、一つの制御変更(例えば、燃料ガス圧力上昇)により性能回復を図った場合に、電圧上昇量が、図24に示した最大値ΔVmaxに達すると、それ以上の燃料ガス圧力上昇は行なわず、さらなる燃料電池の性能低下に対応するためには、異なる制御(例えば、燃料ガス流量増加)を行なうこととしても良い。あるいは、複数種類の制御の変更を、同時に組み合わせることとしても良い。

0170

以上のような構成とすれば、アノード形態変化量を直接検出することなく簡便に精度良く推定したアノード形態変化量に基づいて、発電時の制御を変更することにより、アノード形態変化に起因する燃料電池の性能低下を抑制することができる。

0171

なお、アノード電位上昇に起因するアノード形態変化量は、その導出方法によっては、燃料電池15全体の中の、特にアノード形態変化が進行しやすい部分に着目して導出することが可能である。例えば、燃料電池の電圧に基づいてアノード電位上昇情報を取得する場合には、燃料電池全体の電圧に基づくのではなく、セル内燃料ガス流路への酸素の流入が最も早くなる場所に配置された単セルの電圧に基づいて、アノード電位上昇情報を取得すればよい。また、燃料電池の発電停止後の経過時間に基づいてアノード電位上昇情報を取得する場合には、判断に用いる基準経過時間を、セル内燃料ガス流路への酸素の流入が最も早くなる場所に配置された単セルに着目して、予め設定すればよい。また、アノード上の酸素濃度に基づいてアノード電位上昇情報を取得する場合には、セル内燃料ガス流路への酸素の流入が最も早くなる場所に配置された単セル内のセル内燃料ガス流路における、最も早く酸素が流入し始める箇所の酸素濃度に基づいて、アノード電位上昇情報を取得すればよい。このように、アノード形態変化が進行しやすい箇所に着目して導出したアノード形態変化量を用いて上記制御変更を行なうならば、最も性能低下が進みやすい箇所における性能低下を抑制して、燃料電池の性能を維持することが可能になる。

0172

H−2.発電時アノード形態変化を考慮した出力制御の補正:
図23では、図6のステップS110で導出・記憶されたアノード形態変化量に基づいて、アノード形態変化に起因する電圧低下を抑制する制御を行なったが、さらに、図20で導出した発電時アノード形態変化量を考慮して、上記電圧低下を抑制する制御を行なうこととしても良い。以下に、上記発電時アノード形態変化量を考慮して電圧低下を抑制する構成を、第11実施例として説明する。図25は、制御部50のCPUにおいて、図23の形態変化影響抑制処理に代えて実行される、形態変化影響抑制処理ルーチンを表わすフローチャートである。本ルーチンにおいて、図23と共通する処理工程には、同じ参照番号を付しており、以下では、図23とは異なる処理について説明する。

0173

本ルーチンが起動されると、制御部50のCPUは、アノード触媒表面積低下量が、基準値以上であるか否かを判断する(ステップS500)。このステップS500では、既述したように、図6のアノード形態変化量導出処理ルーチンにより導出・記憶された最新のアノード形態変化量を読み込んで、最新のアノード触媒表面積低下量が、基準アノード触媒表面積低下量SA以上であるか否かを判断する。すなわち、ステップS500では、発電停止時におけるアノード電位上昇に起因するアノード形態変化量として、燃料電池全体を対象として推定されたアノード触媒表面積低下量に基づいて、燃料電池全体の電圧低下を抑制するための制御を行なうべきであるか否かを判断する。

0174

ステップS500で、最新のアノード触媒表面積低下量が、基準アノード触媒表面積低下量SA未満であると判断すると、制御部50のCPUは、アノード形態変化が進行している特定セルが存在するか否かを判断する(ステップS530)。具体的には、制御部50のCPUは、図20の発電時アノード形態変化量導出処理ルーチンのステップS150において発電時アノード形態変化量を積算して記憶した個々の単セルについて、記憶した発電時アノード形態変化量の値と、図6のステップS110において全ての単セルで同様に進行しているものとして導出した発電停止に起因するアノード形態変化量の値と、を加算する。そして、得られたアノード形態変化量合計値が、予め定めた基準形態変化量を超えているか否かを判断する。基準形態変化量とは、アノード形態変化量がこれ以上進行すると、アノード形態変化に起因する電圧低下が許容できない程度となる可能性がある値として予め設定した値であり、例えば、ステップS500で用いた基準アノード触媒表面積低下量SAと同じ値とすることができる。

0175

ステップS530で、アノード形態変化が進行している特定セルが存在すると判断すると、制御部50のCPUは、当該アノード形態変化が進行した単セルの電圧が、基準電圧以下であるか否かを判断する(ステップS540)。ステップS540で用いる基準電圧とは、燃料電池内のいずれかの単セルの電圧がこれ以上低下すると、燃料電池全体の性能低下を引き起こす可能性がある値として予め設定して制御部50内に記憶した値である。

0176

ステップS540で、アノード形態変化が進行した単セルの電圧が基準電圧以下であると判断すると、制御部50のCPUは、アノード形態変化に起因する電圧低下を抑制するための制御変更を行なうように、各部に駆動信号を出力して(ステップS520)、本ルーチンを終了する。電圧低下を抑制するための制御変更は、例えば、可変調圧弁42およびコンプレッサ30の駆動量を変更して、燃料ガス圧力を上昇させればよい。あるいは、水素循環ポンプ44や、パージ弁46の駆動量を変更して、燃料電池流量を増加させても良い。あるいは、燃料ガスの加湿量を増加させても良い。このとき、各部の駆動量を変更する程度は、例えば、ステップS530で求めたアノード形態変化量合計値に基づいて定めることができる。あるいは、予め定めた一定量だけ駆動量を変更することとして、特定セルの電圧低下状態が解消されるまで、駆動量の変更量を増加させても良い。

0177

ステップS540において、アノード形態変化が進行した単セルの電圧が基準電圧を上回ると判断すると、制御部50のCPUは、特別な制御変更は不要であると判断して、本ルーチンを終了する。また、ステップS530で、アノード形態変化が進行している特定セルが存在しないと判断する場合にも、制御部50のCPUは、特別な制御変更は不要であると判断して、本ルーチンを終了する。

0178

以上のような構成とすれば、特定の単セルにおいて、発電中にアノード電位上昇に起因するアノード形態変化が進行して、当該特定の単セルにおいて電圧低下が生じる場合であっても、このような電圧低下を抑制するように制御変更することができる。これにより、当該特定の単セルに起因する燃料電池全体の性能低下を抑えることができる。燃料電池においては、単セルの一つにおいて電圧低下が生じても、燃料電池全体としては充分な出力が可能であり、燃料電池全体の電流値や電圧値が直ちに望ましくない値になることはない。しかしながら、電圧低下を起こした単セルが生じた状態を放置すると、やがて、燃料電池全体の出力状態に支障を来たすようになる可能性がある。上記のように、発電時アノード形態変化量を用い、発電時アノード形態変化量の値が大きく、かつ、実際にセル電圧が低下している単セルが存在する場合には、燃料電池全体の出力状態に異常が無くても電圧低下を抑制する制御を行なうことで、燃料電池の発電状態を、安定して維持することが可能になる。

0179

H−3.高電位回避処理の上限電圧値の補正:
アノード触媒表面積が低下して、燃料電池電圧が低下するときには、既述したように、発電時におけるアノード電位が0Vよりも上昇している。そのため、燃料電池の発電中に、燃料電池電圧に基づく運転制御を行なう場合には、このようなアノード電位上昇を考慮して、制御に用いる基準値を補正することが望ましい。以下に、アノード電位上昇を考慮して高電位回避処理を行なう構成を、第12実施例として説明する。

0180

図22に示したように、燃料電池の出力電圧は、出力電流が小さいほど高くなる。燃料電池の出力電圧が高いときとは、カソード電位が高いときであるため、燃料電池の出力電圧に上限値を設定して発電制御を行なうことにより、カソードが望ましくない程度の高電位に曝されることに起因するカソード形態変化を抑制することができる。具体的には、負荷要求が小さくなって、負荷要求に応じた電力を燃料電池から出力するならば燃料電池の出力電圧が上限値よりも大きくなる場合には、上限値を越えないように燃料電池の出力電圧を設定し、負荷要求を超える発電を行なわせることによって、カソードの過剰な電位上昇を抑制できる。

0181

以下に、カソードの過剰な電位上昇を抑制するために実行される高電位回避処理の概要について説明する。ここでは、高電位回避処理の動作の一例として、図1の燃料電池システム10を搭載する図14の電気自動車90において実行される高電位回避処理について説明する。図26は、高電位回避制御処理ルーチンを表わすフローチャートである。本ルーチンは、燃料電池システム10の制御部50のCPUにおいて、燃料電池15の発電中に、繰り返し実行される。

0182

本ルーチンが起動されると、制御部50のCPUは、負荷要求に基づいて、燃料電池15に要求される発電量を決定する(ステップS600)。負荷要求は、例えば、電気自動車90に設けた図示しない車速センサの検出信号や、アクセル開度センサの検出信号に基づいて導出される要求駆動動力として求めることができる。あるいは、要求駆動動力に、さらに補機94が要求するエネルギを加えて、負荷要求を導出しても良い。ステップS600では、このような負荷要求を満たすための発電量として、燃料電池15の要求発電量が決定される。

0183

燃料電池15の要求発電量が決定されると、制御部50のCPUは、決定した要求発電量に対応する燃料電池15の出力電圧V1を導出する(ステップS610)。制御部50は、図22に示したIV特性を記憶しており、ステップS610では、このIV特性を参照して、ステップS600で決定した要求発電量を発電するための運転ポイント(出力電流と出力電圧の組み合わせ)を導出する。上記出力電圧V1は、このようにして求めた運転ポイントにおける出力電圧である。

0184

出力電圧V1を導出すると、制御部50のCPUは、出力電圧V1が、上限電圧値Vth1以上であるか否かを判断する(ステップS620)。上限電圧値Vth1とは、カソード形態変化が起こるほどカソード電位が高くなり過ぎることを避けるために、燃料電池電圧の上限値として設けた値である。ステップS620において、出力電圧V1が上限電圧値Vth1以上であると判断すると、制御部50のCPUは、DC/DCコンバータ92に対する電圧指令値を、要求発電量を得るための電圧V1ではなく、電圧V1より低い上限電圧値Vth1に設定する(ステップS630)。

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