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課題・解決手段

本発明は、アルデヒドを除去するための組成物を提供することを目的とし、具体的には、アルデヒド分解活性を有するグルコノバクター属に属する微生物又はその抽出物若しくは菌体破砕物を含有するアルデヒド除去組成物であって、前記グルコノバクター属に属する微生物はアルデヒド生成活性よりもアルデヒド分解活性が高いことを特徴とする、前記アルデヒド除去組成物に関する。

概要

背景

疫学調査によれば、飲酒習慣によって口腔癌咽頭癌喉頭癌、食道癌肝癌直腸結腸癌乳癌女性)の罹患リスクが明らかに増大し、この傾向は酒類を問わないことが示されている(非特許文献1)。またWHOの国際癌研究機関IARC(the International Agency for Research on Cancer)の作業委員会では、様々な動物実験の結果に基づいて、アルコールエタノール)には動物に対して発癌性があるとするに十分な証拠があると結論している。

飲酒後、アルコールは一般に肝臓アルコールデヒドロゲナーゼによってアセトアルデヒドに分解され、さらにアルデヒド脱水素酵素(アルデヒドデヒドロゲナーゼ)により酸化されて酢酸になり、最終的には二酸化炭素と水に分解される。このエタノールの異化過程中間体として生成するアセトアルデヒドは、顔面紅潮頭痛眠気悪心嘔吐など、いわゆる「悪酔い」症状の原因物質であるばかりでなく、IARCにおいてGroup Iの発癌性物質(ヒトに対して発癌性がある)と認定されており、アルコールの発癌性も、アルコールから代謝により導かれたアセトアルデヒドが主たる役割を果たすと考えられている。

また、アセトアルデヒドは、ビール日本酒等の醸造酒、ビール風アルコール飲料焼酎等の蒸留酒において青臭さや異臭変質臭の原因であり、香味阻害物質(オフフレーバー)と呼ばれている。さらに、飲酒により生成する過剰なアセトアルデヒドは、唾液中にも蓄積して酒臭い口臭(「熟柿臭」)の原因ともなる。

日本国民は、アセトアルデヒドの解毒を司るアルデヒド脱水素酵素のアイソザイムタイプ2(ALDH2)の欠損型の割合が高い(ヘテロ欠損型ALDH2*1/*2:全人口の約40%;ホモ欠損型ALDH2*2/*2:約10%)。この遺伝子型の人々はアセトアルデヒドの代謝速度が遅いため、飲酒により顔が著しく赤くなるフラッシャー(flusher)タイプとなる(非特許文献2)。フラッシャータイプの人は非フラッシャータイプに比べ、飲酒による上部消化器官群(口腔咽頭及び食道)の発癌リスクが約50倍も高い(非特許文献3)。

過剰なアセトアルデヒドは、血中に分泌されるとともに呼気によって放出され、唾液中にも蓄積する。また口腔内のアルコールは口腔細菌によってアセトアルデヒドに代謝され、上部消化器官群に蓄積する。アセトアルデヒド代謝の遅いフラッシャータイプのヒトの唾液では、飲酒後アセトアルデヒド濃度が著しく上昇し、数時間〜十数時間にわたって上部消化器官内で循環滞留することが認められている。この飲酒によるアセトアルデヒドの上部消化管内での循環・滞留が、フラッシャーの上部消化管癌発症リスク増大の主原因であることがわかってきた。また、アルコール飲料、特に一部の蒸留酒には元来、微量のアセトアルデヒドが含まれている。アルコールによる癌発症リスクの増大が、アルコール飲料にもともと含まれるアセトアルデヒドによるものなのか、唾液中で新たに生成するアセトアルデヒドによるものなのかについて、一致した見解はない。また、フラッシャータイプの割合が低い(全人口の1%未満)欧米諸国では、飲酒による上部消化器癌遺伝子多型によるリスク偏在はあまり話題となっていない。しかしながら、フラッシャータイプが多い日本では、この問題を解決することは国民の健康と福祉の向上のためにきわめて重要であり、且つ緊急を要する。

飲酒後の口腔内のアセトアルデヒドを除去する手段としては、L-システイン(含硫アミノ酸)や大麦青汁等の利用が考えられている(非特許文献4)。当該方法は、L-システインや青汁中のフラボノイドがアセトアルデヒドに付加し、アセトアルデヒドを不活性化するという事実に基づいて考案された方法である。しかしながら、L-システインや青汁中のフラボノイドとアセトアルデヒドの複合体形成反応は可逆反応であり、当該方法はアセトアルデヒドが再生する虞があるという欠点を有する。L-システインや青汁自体はまた、特異な味とにおいを有する物質であり、服用による利用は事実上難しい。

また、口腔内のアセトアルデヒドを除去する別の手段として、アルデヒド分解活性をもつ微生物を服用して、アセトアルデヒドを分解する方法が考えられる。例えば、特許文献1は、pH3以下でアルコールを分解する酢酸菌を含むアルコール分解性組成物を開示する。特許文献1は、pH3以下でもアルコール酸化酵素活性を示す酢酸菌を、アルコール飲用時又はその前に摂取することで、当該酢酸菌によりの中でアルコールがアセトアルデヒドを経て酢酸に酸化され、アルコールが消化管で吸収されないことを記載する。しかしながら、実際にはこうした微生物はほとんどの場合エタノールを酸化する活性も併せ持つので、当該方法は服用によって口腔内に残存するアルコールから、服用前よりもむしろ多量のアセトアルデヒドを生成してしまうという欠点を有する。さらに注意すべきことは、ビール等の食品中の成分や唾液中の成分はアセトアルデヒド生成活性を顕著に増大させるといった点である。従って、アルデヒド分解活性をもつ微生物の服用によってむしろアセトアルデヒドが増大してしまうという逆効果がもたらされる。こうした問題は、微生物からアセトアルデヒド生成活性を純化したり、適当な処理を施すことによりアセトアルデヒド生成活性を選択的に失活させたりすることにより解決することができる。しかしながら、それでもなお、アルデヒド分解活性をもつ微生物の使用は、アセトアルデヒド分解酵素反応に有害物質が生成したり、補酵素の添加を必要としたりする等、実用上の欠点が存在する。

微生物の主なアセトアルデヒド分解酵素として、アルデヒドオキシダーゼとアルデヒドデヒドロゲナーゼが利用できる。アルデヒドオキシダーゼは酸素分子を用いてアルデヒドを酸化し、カルボン酸過酸化水素を生成する反応を触媒する。反応生成物の一つである過酸化水素は発癌性のある有害物質であり、その生成は好ましいものではない。一方、アルデヒドデヒドロゲナーゼはNAD+やNADP+等を補酵素としてアルデヒドの酸化を触媒する。こうした補酵素はきわめて高価である。実用上は、基質に比べて大過剰な量の補酵素を添加するか、あるいは酸化型補酵素の再生系を組み込む必要があるが、コスト的な点から現実的なものではない。

概要

本発明は、アルデヒドを除去するための組成物を提供することを目的とし、具体的には、アルデヒド分解活性を有するグルコノバクター属に属する微生物又はその抽出物若しくは菌体破砕物を含有するアルデヒド除去組成物であって、前記グルコノバクター属に属する微生物はアルデヒド生成活性よりもアルデヒド分解活性が高いことを特徴とする、前記アルデヒド除去組成物に関する。

目的

本発明は、飲酒後の口腔内に蓄積するアセトアルデヒドを口腔内から安全な手段で除去する方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
3件

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請求項1

アルデヒド分解活性を有するグルコノバクター属に属する微生物又はその抽出物若しくは菌体破砕物を含有するアルデヒド除去組成物であって、前記グルコノバクター属に属する微生物はアルデヒド生成活性よりもアルデヒド分解活性が高いことを特徴とする、前記アルデヒド除去組成物。

請求項2

前記グルコノバクター属に属する微生物がアルデヒド濃度と比較してアルコール濃度が高い条件下でアルデヒドを分解できることを特徴とする、請求項1記載のアルデヒド除去組成物。

請求項3

前記グルコノバクター属に属する微生物がグルコノバクターコンドニイ(Gluconobacter kondonii)又はグルコノバクター・カンチャナブエンシス(Gluconobacter kanchanaburiensis)に属する微生物である、請求項1記載のアルデヒド除去組成物。

請求項4

前記グルコノバクター・コンドニイ又はグルコノバクター・カンチャナブリエンシスに属する微生物がNBRC3266又はNBRC103587で特定される微生物である、請求項3記載のアルデヒド除去組成物。

請求項5

前記アルデヒドがアセトアルデヒドである、請求項1記載のアルデヒド除去組成物。

請求項6

前記アルコールエタノールである、請求項2記載のアルデヒド除去組成物。

請求項7

上部消化管癌罹患リスク低減組成物である、請求項1記載のアルデヒド除去組成物。

請求項8

上部消化管癌が口腔癌咽頭癌及び食道癌から成る群より選択される、請求項7記載のアルデヒド除去組成物。

請求項9

臭い除去組成物である、請求項1記載のアルデヒド除去組成物。

請求項10

臭いが熟柿臭である、請求項9記載のアルデヒド除去組成物。

請求項11

飲酒後口腔内アセトアルデヒド除去に使用するための、請求項1記載のアルデヒド除去組成物。

請求項12

請求項1〜11のいずれか1項記載のアルデヒド除去組成物を含有する飲食品

技術分野

0001

本発明は、例えばアルデヒドを除去するための組成物に関する。

背景技術

0002

疫学調査によれば、飲酒習慣によって口腔癌咽頭癌喉頭癌、食道癌肝癌直腸結腸癌乳癌女性)の罹患リスクが明らかに増大し、この傾向は酒類を問わないことが示されている(非特許文献1)。またWHOの国際癌研究機関IARC(the International Agency for Research on Cancer)の作業委員会では、様々な動物実験の結果に基づいて、アルコールエタノール)には動物に対して発癌性があるとするに十分な証拠があると結論している。

0003

飲酒後、アルコールは一般に肝臓アルコールデヒドロゲナーゼによってアセトアルデヒドに分解され、さらにアルデヒド脱水素酵素(アルデヒドデヒドロゲナーゼ)により酸化されて酢酸になり、最終的には二酸化炭素と水に分解される。このエタノールの異化過程中間体として生成するアセトアルデヒドは、顔面紅潮頭痛眠気悪心嘔吐など、いわゆる「悪酔い」症状の原因物質であるばかりでなく、IARCにおいてGroup Iの発癌性物質(ヒトに対して発癌性がある)と認定されており、アルコールの発癌性も、アルコールから代謝により導かれたアセトアルデヒドが主たる役割を果たすと考えられている。

0004

また、アセトアルデヒドは、ビール日本酒等の醸造酒、ビール風アルコール飲料焼酎等の蒸留酒において青臭さや異臭変質臭の原因であり、香味阻害物質(オフフレーバー)と呼ばれている。さらに、飲酒により生成する過剰なアセトアルデヒドは、唾液中にも蓄積して酒臭い口臭(「熟柿臭」)の原因ともなる。

0005

日本国民は、アセトアルデヒドの解毒を司るアルデヒド脱水素酵素のアイソザイムタイプ2(ALDH2)の欠損型の割合が高い(ヘテロ欠損型ALDH2*1/*2:全人口の約40%;ホモ欠損型ALDH2*2/*2:約10%)。この遺伝子型の人々はアセトアルデヒドの代謝速度が遅いため、飲酒により顔が著しく赤くなるフラッシャー(flusher)タイプとなる(非特許文献2)。フラッシャータイプの人は非フラッシャータイプに比べ、飲酒による上部消化器官群(口腔咽頭及び食道)の発癌リスクが約50倍も高い(非特許文献3)。

0006

過剰なアセトアルデヒドは、血中に分泌されるとともに呼気によって放出され、唾液中にも蓄積する。また口腔内のアルコールは口腔細菌によってアセトアルデヒドに代謝され、上部消化器官群に蓄積する。アセトアルデヒド代謝の遅いフラッシャータイプのヒトの唾液では、飲酒後アセトアルデヒド濃度が著しく上昇し、数時間〜十数時間にわたって上部消化器官内で循環滞留することが認められている。この飲酒によるアセトアルデヒドの上部消化管内での循環・滞留が、フラッシャーの上部消化管癌発症リスク増大の主原因であることがわかってきた。また、アルコール飲料、特に一部の蒸留酒には元来、微量のアセトアルデヒドが含まれている。アルコールによる癌発症リスクの増大が、アルコール飲料にもともと含まれるアセトアルデヒドによるものなのか、唾液中で新たに生成するアセトアルデヒドによるものなのかについて、一致した見解はない。また、フラッシャータイプの割合が低い(全人口の1%未満)欧米諸国では、飲酒による上部消化器癌遺伝子多型によるリスク偏在はあまり話題となっていない。しかしながら、フラッシャータイプが多い日本では、この問題を解決することは国民の健康と福祉の向上のためにきわめて重要であり、且つ緊急を要する。

0007

飲酒後の口腔内のアセトアルデヒドを除去する手段としては、L-システイン(含硫アミノ酸)や大麦青汁等の利用が考えられている(非特許文献4)。当該方法は、L-システインや青汁中のフラボノイドがアセトアルデヒドに付加し、アセトアルデヒドを不活性化するという事実に基づいて考案された方法である。しかしながら、L-システインや青汁中のフラボノイドとアセトアルデヒドの複合体形成反応は可逆反応であり、当該方法はアセトアルデヒドが再生する虞があるという欠点を有する。L-システインや青汁自体はまた、特異な味とにおいを有する物質であり、服用による利用は事実上難しい。

0008

また、口腔内のアセトアルデヒドを除去する別の手段として、アルデヒド分解活性をもつ微生物を服用して、アセトアルデヒドを分解する方法が考えられる。例えば、特許文献1は、pH3以下でアルコールを分解する酢酸菌を含むアルコール分解性組成物を開示する。特許文献1は、pH3以下でもアルコール酸化酵素活性を示す酢酸菌を、アルコール飲用時又はその前に摂取することで、当該酢酸菌によりの中でアルコールがアセトアルデヒドを経て酢酸に酸化され、アルコールが消化管で吸収されないことを記載する。しかしながら、実際にはこうした微生物はほとんどの場合エタノールを酸化する活性も併せ持つので、当該方法は服用によって口腔内に残存するアルコールから、服用前よりもむしろ多量のアセトアルデヒドを生成してしまうという欠点を有する。さらに注意すべきことは、ビール等の食品中の成分や唾液中の成分はアセトアルデヒド生成活性を顕著に増大させるといった点である。従って、アルデヒド分解活性をもつ微生物の服用によってむしろアセトアルデヒドが増大してしまうという逆効果がもたらされる。こうした問題は、微生物からアセトアルデヒド生成活性を純化したり、適当な処理を施すことによりアセトアルデヒド生成活性を選択的に失活させたりすることにより解決することができる。しかしながら、それでもなお、アルデヒド分解活性をもつ微生物の使用は、アセトアルデヒド分解酵素反応に有害物質が生成したり、補酵素の添加を必要としたりする等、実用上の欠点が存在する。

0009

微生物の主なアセトアルデヒド分解酵素として、アルデヒドオキシダーゼとアルデヒドデヒドロゲナーゼが利用できる。アルデヒドオキシダーゼは酸素分子を用いてアルデヒドを酸化し、カルボン酸過酸化水素を生成する反応を触媒する。反応生成物の一つである過酸化水素は発癌性のある有害物質であり、その生成は好ましいものではない。一方、アルデヒドデヒドロゲナーゼはNAD+やNADP+等を補酵素としてアルデヒドの酸化を触媒する。こうした補酵素はきわめて高価である。実用上は、基質に比べて大過剰な量の補酵素を添加するか、あるいは酸化型補酵素の再生系を組み込む必要があるが、コスト的な点から現実的なものではない。

0010

特開平9-51778号公報

先行技術

0011

Seitz, H.K., Becker, P., 「Alcohol Research & Health」,2007年,第30巻,pp. 38-47
Takeshita, T., Morimoto, K., 「Environmental Health and Preventive Medicine」,1996年,第1巻,pp. 1-8
横山 顕, 「医学のあゆみ」,2007年,第222巻,pp. 643-647
Salaspuro, V., et al., 「Int. J. Cancer」, 2002年, 第97巻, pp. 361-364

発明が解決しようとする課題

0012

上述した実情に鑑み、本発明は、飲酒後の口腔内に蓄積するアセトアルデヒドを口腔内から安全な手段で除去する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、フラッシャーにおける上部消化管癌の発癌リスク因子であり、飲酒後の口腔内に蓄積するアセトアルデヒドを分解して、その口腔内濃度を発癌濃度(2.2 ppm)以下にまで速やかに低減させる方法を提供することを目的とする。その方法の一つとして、食品微生物腸内細菌のようにヒトの体内天然に存在している菌又は環境中に存在するヒトに無害な微生物を用いて、アセトアルデヒドを分解除去する方法が考えられる。ただし、当該方法が満たすべき課題は、i)飲酒・飲食後の口腔内に残存するアルコールからアセトアルデヒドの生成をもたらさないこと、又はアセトアルデヒドを防止することを目的とした特段の処理(精製や熱処理等)を必要としないこと、ii)アセトアルデヒドの分解除去を促すための酸化型補酵素(NAD等)の添加を必要としないこと、及びiii)アセトアルデヒドを分解する過程で有害物質を生成しないこと、又はアセトアルデヒド分解の過程で生成する有害物質の分解を目的とした添加物を加える必要がないことである。特に飲酒後の口腔内ではアルコールの濃度がアセトアルデヒドの濃度の数百倍から数千倍に及び、そのような条件下でアセトアルデヒドを効率よく分解する必要がある。一般にアセトアルデヒド分解能をもつ微生物は強力なエタノール酸化活性をもつため、大過剰のエタノール存在下ではアセトアルデヒドを生成してしまう。このため、飲酒後の口腔内に蓄積するアセトアルデヒドを口腔内から除去しうる微生物製剤は知られていない。

課題を解決するための手段

0013

上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、発癌リスク因子であり、また熟柿臭等の臭いの原因であるアセトアルデヒド等のアルデヒドを大過剰のアルコール存在下で分解できる微生物を探索し、グルコノバクター(Gluconobacter)属に属する微生物の中に本発明の目的に合致した微生物を見出し、本発明を完成するに至った。

0014

本発明は以下を包含する。

0015

(1)アルデヒド分解活性を有するグルコノバクター属に属する微生物又はその抽出物若しくは菌体破砕物を含有するアルデヒド除去組成物であって、前記グルコノバクター属に属する微生物はアルデヒド生成活性よりもアルデヒド分解活性が高いことを特徴とする、前記アルデヒド除去組成物。

0016

(2)前記グルコノバクター属に属する微生物がアルデヒド濃度と比較してアルコール濃度が高い条件下でアルデヒドを分解できることを特徴とする、(1)記載のアルデヒド除去組成物。

0017

(3)前記グルコノバクター属に属する微生物がグルコノバクター・コンドニイ(Gluconobacter kondonii)又はグルコノバクター・カンチャナブエンシス(Gluconobacter kanchanaburiensis)に属する微生物である、(1)記載のアルデヒド除去組成物。

0018

(4)前記グルコノバクター・コンドニイ又はグルコノバクター・カンチャナブリエンシスに属する微生物がNBRC3266又はNBRC103587で特定される微生物である、(3)記載のアルデヒド除去組成物。

0019

(5)前記アルデヒドがアセトアルデヒドである、(1)記載のアルデヒド除去組成物。

0020

(6)前記アルコールがエタノールである、(2)記載のアルデヒド除去組成物。

0021

(7)上部消化管癌罹患リスク低減組成物である、(1)記載のアルデヒド除去組成物。

0022

(8)上部消化管癌が口腔癌、咽頭癌及び食道癌から成る群より選択される、(7)記載のアルデヒド除去組成物。

0023

(9)臭い除去組成物である、(1)記載のアルデヒド除去組成物。

0024

(10)臭いが熟柿臭である、(9)記載のアルデヒド除去組成物。

0025

(11)飲酒後の口腔内アセトアルデヒド除去に使用するための、(1)記載のアルデヒド除去組成物。

0026

(12)(1)〜(11)のいずれか1記載のアルデヒド除去組成物を含有する飲食品

0027

本明細書は本願の優先権基礎である日本国特許出願2010-114008号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。

発明の効果

0028

本発明によれば、飲酒習慣に伴う上部消化管の発癌リスクを高めるアセトアルデヒド及び臭いの原因であるアルデヒドを分解除去し、上部消化管の発癌リスク因子及び臭いの原因を根本的に除去することができる組成物が提供される。

図面の簡単な説明

0029

Gluconobacter oxydans JCM7642株の細胞抽出液を様々な飲料に懸濁し、37℃で10分間インキュベートした場合における飲料中のアセトアルデヒドの生成を示すグラフである。
Gluconobacter属菌体とエタノールの反応におけるアセトアルデヒドの生成を示すグラフである。
ビール・唾液混合系でのGluconobacter属菌体によるアセトアルデヒド分解を示すグラフである。
アセトアルデヒドの除去における菌体量の影響を示すグラフである。
間欠的に添加されたアセトアルデヒドのGluconobacter属菌体による除去を示すグラフである。
Gluconobacter属菌体によるアセトアルデヒドの除去のpH依存性を示すグラフである。
飲酒後の口腔内のアセトアルデヒド除去におけるグルコノバクター・コンドニイ細胞摂取の効果を示すグラフである。

0030

以下、本発明を詳細に説明する。

0031

本発明に係るアルデヒド除去組成物(以下、「本発明に係る組成物」という)は、アルデヒド分解活性を有するグルコノバクター属に属する微生物又はその抽出物若しくは菌体破砕物を含有するものである。該グルコノバクター属に属する微生物はアルデヒド生成活性よりもアルデヒド分解活性が高く、またアルデヒド濃度と比較してアルコール濃度が高い条件下でアルデヒドを分解できるものである。本発明に係る組成物は、飲酒習慣に伴う上部消化管の発癌リスクを高めるアセトアルデヒド及び臭いの原因であるアルデヒドの分解除去のために使用でき、上部消化管癌罹患リスク低減組成物又は臭い除去組成物として使用することができる。

0032

ここで、上部消化管癌としては、例えば口腔癌、咽頭癌及び食道癌が挙げられる。WHOのIARCによる発癌物質分類表によれば、飲酒に伴うアセトアルデヒドは2010年にGroup 1に分類され、ヒトに対して確実に発癌性があると認められている。飲酒に伴うアセトアルデヒドの発癌濃度は2 ppm(50 microM)と見積もられている。従って、本発明に係るアルデヒド除去組成物により口腔内のアセトアルデヒドを即座に2 ppm以下に下げることができれば、本発明に係る組成物は発癌リスクを低減できると見なすことができる。本発明に係る組成物によれば、服用により飲酒後の口腔内のアセトアルデヒドを分解除去し、飲酒習慣に伴う上部消化管の発癌リスクを高めるアセトアルデヒドを根本的に除去することができる。

0033

一方、臭いとしては、例えばアセトアルデヒドを原因とする熟柿臭、ノネナールを原因とする加齢臭等の体臭ヘキサナールを原因とする青臭さが挙げられる。例えば、本発明に係る組成物によれば、服用により飲酒後の口腔内の熟柿臭物質であるアセトアルデヒドを分解除去し、臭いの原因を根本的に除去することができる。また、本発明に係る組成物を体臭除去に使用することもできる。さらに、本発明に係る組成物を豆乳等の飲食品における青臭さ除去に使用することもできる。

0034

また、本発明においてアルデヒド化合物としては、例えばアセトアルデヒド、ノネナール、ヘキサナール等が挙げられる。

0035

本発明に使用する微生物は、アルデヒド(例えば、アセトアルデヒド)生成活性よりもアルデヒド分解活性が高く、またアルデヒド(例えば、アセトアルデヒド)濃度と比較してアルコール(例えば、エタノール)濃度が高い条件下でアルデヒドを分解できるものである。換言すれば、本発明に使用する微生物は、アセトアルデヒド等のアルデヒドに対して大過剰(例えば、モル比にして数百倍〜数千倍)のエタノール等のアルコールが存在する条件下でもアルデヒドを効率的に分解できるものである。例えばエタノール存在下でもアセトアルデヒドを生成せず、また飲酒後の口腔内の状態を模倣した酒類(例えば、ビール)・唾液混合系においてもエタノールからアセトアルデヒドを生成することなくアセトアルデヒドを分解することができ、且つ分解反応中に過酸化水素等の有害物質を生成することがないグルコノバクター属に属する微生物である。このようなグルコノバクター属に属する微生物としては、例えばGluconobacter kondonii、Gluconobacter kanchanaburiensis等の種に属する微生物が挙げられる。また、本発明に使用できる代表的な菌株としては、Gluconobacter kondonii NBRC3266及びGluconobacter kanchanaburiensis NBRC103587が挙げられる。これら菌株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の生物遺伝資源部門(NBRC)(日本国千葉県木更津市かずさ足2-5-8)から入手することができる。

0036

さらに、本発明に使用する微生物としては、グルコノバクター属細菌であって、エタノール存在下でアセトアルデヒドを生成せずアセトアルデヒドを効率よく分解しうる微生物、又は酒類・唾液混合系においてもエタノールからアセトアルデヒドを生成することなくアセトアルデヒドを分解し、且つ分解反応中に過酸化水素等の有害物質を生成することがない微生物であれば、野生株変異株のいずれであってもよい。

0037

ここで、「エタノール存在下でアセトアルデヒドを生成しない」とは、エタノールを全く酸化しないか、又は弱いエタノール酸化活性(すなわち、アセトアルデヒド生成活性)を有していてもそれがアセトアルデヒド酸化活性(すなわち、アセトアルデヒド分解活性)に比べて極めて弱いことをいう。例えば、エタノール酸化活性がアセトアルデヒド酸化活性の1/10程度、好ましくは1/50程度である。

0038

また、変異株は、例えば従来からよく用いられている変異剤であるエチルメタンスルホン酸による変異処理ニトロソグアニジンメチルメタンスルホン酸等の他の化学物質処理、紫外線照射、あるいは変異剤処理なしで得られる自然突然変異によって取得することができる。

0039

一方、多数の微生物種の中からアセトアルデヒド分解能の高い微生物を探索し、多くの酢酸菌・グルコン酸菌とシュードモナス(Pseudomonas)属細菌に強い活性を認めた。しかしながら、これらの微生物はエタノール存在下ではアセトアルデヒド生成能を示し、また、ビール等の食品中の成分や唾液中の成分がこうしたアセトアルデヒド生成活性をさらに増大させることが判った。

0040

そこで、さらに本発明に係る組成物に使用する微生物は、例えば、以下のようにして同定することができる。例えば、酒類・唾液混合系において、エタノールからアセトアルデヒドを生成することなくアセトアルデヒドを特異的に分解する微生物を探索する。これらの要件を満たす菌株は、一例として次のようにスクリーニングすることによって得ることができる。1)果実表皮洗浄液発酵食品、ヒトの腸内容物等を適切な選択培地に塗布し、2)生育したコロニーを分離し、3)エタノール存在下でアセトアルデヒドを生成せずアセトアルデヒドを効率よく分解しうる微生物株選別する。さらに、4)酒類・唾液混合系においてもエタノールからアセトアルデヒドを生成することなくアセトアルデヒドを分解することができる微生物を得る。5)アセトアルデヒド分解反応中の過酸化水素の生成の有無を、ペルオキシダーゼを用いた比色定量法により確認する。

0041

また、本発明においては、アセトアルデヒドの他に、臭いの原因物質であるノネナール、ヘキサナール等の他のアルデヒド分解活性を有する微生物を使用することもできる。当該微生物は、上記アセトアルデヒド分解活性を有する微生物のスクリーニングに準じて同定することができる。

0042

本発明に使用する微生物の生育に使用する培地は、例えば当該微生物が資化しうる炭素源(例えば、グルコース等)及び窒素源を含有するものとすることができる。窒素源としては、例えば有機窒素源(ペプトン肉エキス酵母エキスコーンスチープ・リカー等)、無機窒素源(硫酸アンモニウム塩化アンモニウム等)等が挙げられる。さらに所望により、培地はナトリウムイオンカリウムイオンカルシウムイオンマグネシウムイオン等の陽イオン硫酸イオン塩素イオンリン酸イオン等の陰イオンとから成る塩類を含んでもよい。さらに、培地は、ビタミン類、各酸類等の微量要素を含有することもできる。培地における炭素源の濃度は、例えば0.1%〜10%程度である。また、培地における窒素源の濃度は、種類により異なるが、例えば0.01%〜5%程度である。さらに、培地における無機塩類の濃度は、例えば0.001%〜1%程度である。好ましくは、アセトアルデヒドを分解できない微生物の混入を除く目的で、培地中にアセトアルデヒドを添加する。添加するアセトアルデヒドの濃度は適宜決定できるが、0.1%が好ましい。

0043

本発明に使用する微生物の生育条件としては、例えば温度20℃〜30℃(好ましくは25〜28℃)及びpH 5.0〜7.0(好ましくはpH 6.0〜6.5)下で1〜3日間(好ましくは2日間)が挙げられる。

0044

微生物の菌体は、培養後の培養液に懸濁した状態で本発明に係る組成物のために用いてもよいし、あるいは遠心分離等の通常の方法によって培養液から回収又は濃縮したものを用いてもよい。回収又は濃縮した菌体は、適当な担体固定化し、固定化菌体として用いることもできる。あるいは、回収又は濃縮した菌体は、凍結乾燥等の通常の方法によって粉末状として用いてもよい。本発明に係る組成物は、例えば当該菌体粉末と各種賦形剤とを混合し、散剤錠剤カプセル剤等の剤形とすることができる。

0045

また、微生物から、例えば超音波破砕界面活性剤処理等の通常の方法によって細胞抽出物又は酵素抽出画分等の抽出物あるいは菌体破砕物(例えば細胞膜を含むもの)を調製し、本発明に係る組成物に使用することもできる。これら抽出物及び菌体破砕物はそのまま用いてもよいし、あるいは適当な担体に固定化して固定化酵素として用いてもよい。

0046

飲酒後の口腔内のアセトアルデヒドを除去すべく、例えば含有する微生物の乾燥菌体5 mg〜80 mg、好ましくは10 mg〜60 mgを服用するように、本発明に係る組成物を服用することができる。

0047

一方、本発明に係る飲食品は、本発明に係る組成物を含有するものである。例えば、本発明に係る微生物を飲食品に添加することで、上部消化管癌の発癌リスクを低減する飲食品又は口腔内における熟柿臭予防飲食品とすることができる。

0048

本発明に係る飲食品は、例えば、生菌体、死菌体、固定化菌体、細胞抽出液、菌体破砕物、微生物から精製されたアセトアルデヒド分解酵素標品等の本発明に係る組成物を含有する。本発明に係る飲食品によれば、本発明に係る組成物を摂取することによって、体内に存在するか又は発生したアセトアルデヒドを除去することができる。本発明に係る飲食品には、アセトアルデヒド除去効果を有する限りにおいて、甘味料酸味料香料酸化防止剤等を適宜加えても良い。具体的な製品形態としては、例えばトローチガムキャンデー、錠剤、散剤、ドリンク剤ヨーグルト等が挙げられる。添加物の添加法や食品又は飲料等への加工法は、製品性質等を考慮しつつ、適宜選択し、実施することができる。

0049

以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。

0050

〔比較例1〕グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)細胞抽出液による様々な飲料中でのアセトアルデヒド生成
グルコン酸培地(2%グルコン酸ナトリウム、0.3%グルコース、0.3%酵母エキス、0.2%ペプトン)50mLを用いて、Gluconobacter oxydans JCM7642株を30℃で3日間前培養した。次いで、前培養後の培養液10mLを同組成の培地1Lに加え、30℃で3日間培養した。培養後、菌体は遠心分離(3,000×g)により回収した。

0051

菌体1g(湿重量)を100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に懸濁し、細胞を超音波破砕した(強度2、50サイクル、5分間)。遠心分離により上清を回収した後、同緩衝液に対して4℃で十分に透析した。透析内液のタンパク濃度は22mg/mLであった。

0052

得られた酵素液(透析内液)50μLと飲料(緑茶ウーロン茶、ビール、ウィスキー)550μLを混合し、37℃で10分間インキュベートした。コントロールとして、ビールにもともと含まれる濃度のアセトアルデヒド(3ppm)とエタノール(5%)を含有する水溶液(3ppm AcH/5%EtOH)も試験した。反応液に60μLの6M過塩素酸を加えることにより反応を停止した。

0053

反応液中のアセトアルデヒド濃度はヘッドスペースガスクロマトグラフ法によって測定した。ヘッドスペースガスクロマトグラフ法によるアセトアルデヒド濃度測定は、Perkin Elmer TurboMatrix 40型ヘッドスペースオートサンプラーを使用し、INNOWAX 19091N-233キャピラリーカラム(長さ30m、内径0.25mm、フィルム0.25μm)を装着したSHIMADZUGC-2010型ガスクロマトグラフを使用することにより行った。

0054

アセトアルデヒド(AcH)測定結果図1に示す。図1に示すように、ビールにおいて特に著しいアセトアルデヒドの生成が見られた。JCM7642株はアセトアルデヒド分解能を有する微生物として知られているが、当該結果は、ビールの飲酒後に本菌を服用すると、この微生物細胞内に共存する強いエタノール酸化活性によって、口腔のアセトアルデヒドの濃度がむしろ上昇してしまう危険性があることを示している。

0055

〔比較例2〕各種のGluconobacter属微生物の菌体とエタノールの反応
5種のGluconobacter属微生物(グルコノバクター・アサイ(G. asaii)JCM21279、グルコノバクター・セリナス(G.cerinus)JCM20277、グルコノバクター・エスピー(Gluconobacter sp.)JCM20280、グルコノバクター・タイランディカス(G. thailandicus)JCM12310及びG.oxydans JCM7642)を、アセトバクター寒天培地(10%グルコース、1%酵母エキス、3%炭酸カルシウム、1.5%寒天)上で30℃で3日間培養した。

0056

培養後、一白金耳分の菌体を生理食塩水50μLに懸濁した。5%エタノール(終濃度)を含む50mMリン酸緩衝液(550μL)にこの菌体懸濁液(50μL)を添加し、37℃で10分間インキュベートした。反応液に60μLの6M過塩素酸を加えることにより反応を停止した。反応液に含まれるアセトアルデヒドを比較例1で述べた方法によって測定した。

0057

アセトアルデヒド(AcH)測定結果を図2に示す。図2に示すように、いずれの微生物も2ppm以上のアセトアルデヒドを生成した。Gluconobacter属細菌は一般にアセトアルデヒド分解能を有する微生物として知られているが、当該結果は、アルコール飲料の摂取後にこれらの微生物を服用すると、これらの微生物細胞内に共存する強いエタノール酸化活性によって、口腔内のアセトアルデヒドの濃度がむしろ上昇してしまう危険性があることを示している。

0058

〔比較例3〕Pseudomonas属微生物の菌体とエタノールの反応
アセトアルデヒド分解微生物として知られるPseudomonas sp. AL-5株を培地(1.5%寒天)上で30℃で3日間培養した。

0059

培養後、一白金耳分の菌体を生理食塩水50μLに懸濁した。5%エタノール(終濃度)を含む50mMリン酸緩衝液(550μL)にこの菌体懸濁液(50μL)を添加し、37℃で10分間インキュベートした。反応液に60μLの6M過塩素酸を加えることにより反応を停止した。反応液に含まれるアセトアルデヒドを比較例1で述べた方法によって測定した。

0060

測定の結果、同微生物の菌体は17.8 ppmのアセトアルデヒドを生成した。当該結果は、アルコール飲料の摂取後にこの微生物を服用すると、これらの微生物細胞内に共存する強いエタノール酸化活性によって、口腔内のアセトアルデヒドの濃度がむしろ上昇してしまう危険性があることを示している。

0061

〔実施例1〕Gluconobacter属微生物の菌体とビールの反応
グルコノバクター・フラツリイ(G. frateurii)JCM20278、G. kondonii NBRC3266及びG. kanchanaburiensis NBRC103587を比較例1で述べた方法と同様にして培養した。次いで、これら3種の微生物並びに比較例2で述べた5種のGluconobacter属微生物を、それぞれ600nmにおける光学濁度が約0.9となるように500μLのMilliQ水に懸濁した。

0062

250μLの50mMリン酸緩衝液(pH7.0)と300μlのビールを混合し、50μLの菌体懸濁液を添加して37℃で10分間インキュベートした。反応液に60μLの6M過塩素酸を加えることにより反応を停止した。各反応液に含まれるアセトアルデヒドを比較例1で述べた方法によって測定した。その結果、G. asaii、G. cerinus、G. frateurii、Gluconobacter sp.、G. thailandicus及びG. oxydans添加系では、それぞれ22 ppm、8 ppm、32 ppm、9 ppm、43 ppm及び17 ppmのアセトアルデヒドの生成が認められた。このことは、これら6種のグルコノバクターについては、ビール中の未知成分(おそらくビタミンあるいはそれらの誘導体)により、微生物細胞内に共存するエタノール酸化活性が高度に活性化され、飲酒後の口腔内のアセトアルデヒドの濃度がむしろ上昇してしまう危険性があることを示している。一方、G. kondonii NBRC3266及びG. kanchanaburiensis NBRC103587については、そうした未知成分の存在下でもアセトアルデヒド分解活性がアセトアルデヒド生成活性を大幅に上回っており、ビールにもともと含まれていたアセトアルデヒド(3.5 ppm)を分解した(残存アセトアルデヒド濃度:0.2 ppm)。このことは以下の実施例2においてもさらに再現性よく確認された。

0063

〔実施例2〕Gluconobacter kondoniiの凍結乾燥菌体を用いる唾液中のアセトアルデヒドの除去
G. kondonii NBRC3266を実施例1で述べた方法により培養し、得られた菌体を凍結乾燥に供した。凍結乾燥菌体約30mgをMilliQ水500μLに懸濁した。

0064

アセトアルデヒド(初濃度2.5ppm 及び9.5ppm)を含有するビール・唾液混合液(容量比:1:1、550μL)に菌体懸濁液50μLを添加して37℃で10分間インキュベートした。また、比較のため、0.1%エタノール550μLにも同菌体懸濁液50μLを添加して37℃で10分間インキュベートした。反応液に60μLの6M過塩素酸を加えることにより反応を停止した。さらに、反応液に含まれるアセトアルデヒドを比較例1で述べた方法によって測定した。

0065

アセトアルデヒド(AcH)測定結果を図3に示す。図3に示すように、0.1%エタノールやビール・唾液混合系でもアセトアルデヒドの生成はなく、ビール・唾液混合系中のアセトアルデヒドは凍結乾燥菌体によって効率よく分解された。

0066

一方、反応時間を0、2、5、10分間に設定した以外は、上記と同様にして得られた反応液(各0.6mL)に、20mM 2,4-ジクロロフェノール0.05mL、20mM4-アミノアンチピリン0.05mL、水0.2mL及び10mg/mL西ワサビペルオキシダーゼ0.1mLを添加し、この反応液の505nmにおける吸光度一定値を示すまで、室温で20分間インキュベートした。505nmにおける吸光度の増加から反応液に含まれる過酸化水素の濃度を見積もった。その結果、全ての反応液中の過酸化水素濃度は本方法の検出限界0.5μM(0.02ppm)以下であった。

0067

〔実施例3〕アセトアルデヒドの除去のタイムコース比活性
G. kondonii NBRC3266を実施例1で述べた方法により培養し、得られた菌体を凍結乾燥に供した。凍結乾燥菌体10mgをMilliQ水500μLに懸濁した。

0068

ビールと50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)の1:1混合液を調製し、アセトアルデヒドを7.8ppmとなるように添加した。この混合液550μL(計5本)にそれぞれ異なる菌体濃度の菌体懸濁液50μLを添加して37℃でインキュベートした。0、1、3、5及び10分間反応後、反応液に60μLの6M過塩素酸を加えることにより反応を停止した。反応液に含まれるアセトアルデヒドを比較例1で述べた方法によって測定した。

0069

アセトアルデヒド測定の結果、反応系中のアセトアルデヒドは、この菌体量では1分間でほぼ完全に分解することがわかった。このことから、当該条件下(37℃)におけるG. kondonii NBRC3266の凍結乾燥菌体1mgあたりのアセトアルデヒド分解速度は3.9μg・min-1・(mg dry cells)-1と見積もられた。

0070

〔実施例4〕アセトアルデヒドの除去における菌体量の影響
G. kondonii NBRC3266を実施例1で述べた方法により培養し、得られた菌体を凍結乾燥に供した。凍結乾燥菌体10mgをMilliQ水500μLに懸濁した。これをさらにMillQ水で希釈することにより異なる菌体濃度の懸濁液を調製した。

0071

2.5%エタノールを含有する25mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を調製し、アセトアルデヒドを溶解した。この混合液550μLに各菌体濃度に調整した菌体懸濁液50μLを添加して、37℃で1分間又は5分間反応させた。1分間及び5分間反応におけるアセトアルデヒド初濃度はそれぞれ10.1ppm及び11.1ppmであった。反応液に60μLの6M過塩素酸を加えることにより反応を停止した。反応液に含まれるアセトアルデヒドを比較例1で述べた方法によって測定した。

0072

アセトアルデヒド(AcH)測定結果を図4に示す。図4において、白抜きの丸は1分間反応を示し、黒塗りの丸は5分間反応を示す。

0073

図4から判るように、5分間の反応では0.5 mgの菌体を、また1分間の反応では1.0 mgの菌体を用いることにより90%以上のアセトアルデヒドを除去することができる。また、この実施例から菌体のアセトアルデヒド除去速度はおよそ3.9μg・min-1・(mg dry cells)-1と見積もられた。

0074

〔実施例5〕間欠的に添加されたアセトアルデヒドの除去
G. kondonii NBRC3266を実施例1で述べた方法により培養し、得られた菌体を凍結乾燥に供した。凍結乾燥菌体30mgをMillQ水500μLに懸濁した。

0075

1.5%エタノールを含有する25mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を調製し、アセトアルデヒドを約10ppmとなるように溶解し、37℃に保った。この反応系(1.80mL)に菌体懸濁液(200μL)を添加し、37℃で3分間インキュベートしたところで、反応系から200μLをサンプリングして、これを20μLの6M過塩素酸と混合し、反応を停止した。

0076

また、残りの反応液(1.80ml)に100ppmアセトアルデヒド水溶液200μLを加え、37℃でさらに3分間インキュベートを続けた。この反応系から200μLをサンプリングして、20μLの6M過塩素酸と混合し、反応を停止した。この操作を3分ごとに全部で3回繰り返した。

0077

停止した各反応液に含まれるアセトアルデヒドを比較例1で述べた方法によって測定した。なお、反応液サンプリング後のアセトアルデヒド水溶液(200μL)の添加を水(200μL)の添加で置き換えた以外は、同一の操作を行ったものをコントロール実験とした。

0078

各反応時間において反応液に含まれていたアセトアルデヒド(AcH)濃度をプロットした結果を図5に示す。コントロール実験では、アセトアルデヒド添加のたびにその濃度が累積的に増加していくのに対し、菌体添加系ではアセトアルデヒドの濃度は0.1〜0.8ppmに保たれた。

0079

〔実施例6〕アセトアルデヒドの除去におけるエタノール濃度の影響
G. kondonii NBRC3266を実施例1で述べた方法により培養し、得られた菌体を凍結乾燥に供した。凍結乾燥菌体10mgをMilliQ水500μLに懸濁した。

0080

各濃度のエタノールを含有する25mMリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)を調製し、6〜8ppm(終濃度)のアセトアルデヒドを溶解した。この混合液550μLに菌体懸濁液(50μL)を添加して、37℃で5分間反応させた。反応液に60μLの6M過塩素酸を加えることにより反応を停止した。反応液に含まれるアセトアルデヒドを比較例1で述べた方法によって測定した。

0081

その結果、同菌体は、10%までの濃度のエタノールを含有する反応系では、ほぼ全量のアセトアルデヒドを効率よく分解した(アセトアルデヒド残存量:0.07ppm〜0.19ppm)。しかしながら、20%よりも高濃度のエタノールを含有する反応系ではAcH分解能力が減少し、20%、35%及び50%のエタノールを含有する系におけるアセトアルデヒド残存量は、それぞれ3.4ppm、5.5ppm及び5.2ppmであった。

0082

〔実施例7〕アセトアルデヒドの除去におけるpHの影響
G. kondonii NBRC3266を実施例1で述べた方法により培養し、得られた菌体を凍結乾燥に供した。凍結乾燥菌体10mgをMilliQ水500μLに懸濁した。

0083

2.5%エタノールを含有する各種のpHの緩衝液を調製し、10.5±0.5ppm(終濃度)のアセトアルデヒドを溶解した。この混合液550μLに菌体懸濁液(50μL)を添加して、37℃で5分間反応させた。反応液に60μLの6M過塩素酸を加えることにより反応を停止した。反応液に含まれるアセトアルデヒドを比較例1で述べた方法によって測定した。

0084

アセトアルデヒド(AcH)測定結果を図6に示す。図6は、初濃度10.5±0.5ppmのアセトアルデヒドをGluconobacter属菌体で分解したときのアセトアルデヒドの残存濃度を示す。図6に示すように、同菌体はpH2〜10の幅広い範囲にわたってアセトアルデヒド分解能力を示した。特に酸性領域で十分な分解活性が認められ、胃や腸内でも同菌体は優れたAcH分解能を示す可能性が示唆された。

0085

以上の実施例の結果から、飲酒後の口腔内のアセトアルデヒドを除去するために必要な菌体量が次のように見積もられる。

0086

G. kondonii NBRC3266の凍結乾燥菌体1 mgあたりのアセトアルデヒド分解速度は4〜5μg・min-1・(mg dry cells)-1である。飲酒後の唾液中のアセトアルデヒドの濃度は、多くの場合2〜4 ppmの範囲にあると報告されている(Yokoyama A, Tsutsumi E, Imazeki H, Suwa Y, Nakamura C, Mizukami T, Yokoyama T. Alcohol Clin. Exp. Res. 32, 1607-1614 (2008))。また、例えば10分間のガムをかんだ後に分泌される標準的な唾液量(刺激唾液量)として11mlという値が示されており(三輪ら,日本口腔検査学会誌1,40-43 (2009))、これを口腔内に存在する唾液量と見なすものとする。仮に、飲酒後の口腔内の11mlの唾液中に10ppmのアセトアルデヒド(110μg)が存在するとき、30mgの凍結乾燥菌体を口腔内に存在させれば、1分以内にアセトアルデヒドを消去することができると予想される。さらに、実施例5の結果から、10 ppmのアセトアルデヒドを含有する唾液が唾液腺から1分間あたり1mlの割合で分泌されるとしても、その間60mgの凍結乾燥菌体が口腔内に存在していれば、口腔内アセトアルデヒド濃度は0.2ppm程度以下に保たれることが予想される。

0087

〔実施例8〕臭い物質の除去
G. kondonii NBRC3266を実施例1で述べた方法により培養し、得られた菌体を凍結乾燥に供した。凍結乾燥菌体10mgをMilliQ水500μLに懸濁した。

0088

0.5ppmノネナール又は0.5ppmヘキサナールを含有する25mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)550μLに菌体懸濁液(50μL)を添加して、37℃で5分間反応させた。反応液に60μLの6M過塩素酸を加えることにより反応を停止した。反応液に含まれるノネナール又はヘキサナールを比較例1で述べた方法と同じ方法によって測定した。

0089

その結果、菌体はこれらのアルデヒドを効率よく分解し、反応停止後の反応液にノネナール又はヘキサナールを検出することはできなかった。

0090

〔実施例9〕飲酒後の口腔内のアセトアルデヒド除去におけるグルコノバクター・コンドニイ細胞摂取の効果
被験者(51、体重70 kg;ALDH2*1/*1)は、朝食食パン野菜牛乳)を6時にとり、11時間絶食した。飲酒前に唾液採取用のチューインガムを噛み、唾液2 mlをサンプリングした。

0091

ウイスキー(山崎10年、アルコール度数40度)をミネラルウオーターで希釈し、水割り(アルコール度数13度;アセトアルデヒド濃度18.2 ppm)を調製した。この水割り90 mlを8分間かけて摂取し、これを4回繰り返すことにより、32分間で合計360 mlの水割りを摂取した(アルコール摂取総量:47 g;0.67g/体重kg)。この間、副食(おつまみ)はとらなかった。

0092

全量飲酒後、直ちに唾液採取用のチューインガムを噛み、2 mlの唾液を採取した。採取した唾液は直ちに氷冷し、その500μlを50μlの6 M過塩素酸と混合した。グルコノバクター・コンドニイ細胞非服用区(2回:control)では、飲酒完了5分、30分、60分、90分、120分、180分後にそれぞれ2 mlの唾液を採取した。

0093

一方、グルコノバクター・コンドニイ細胞(G. kondonii NBRC3266)服用区では、最初の唾液採取後直ちにグルコノバクター・コンドニイ細胞(凍結乾燥品30 mg)を服用し、口腔内に均一に分散させた。第1回目実験では、服用5分間後に唾液採取用のチューインガムを噛み、2 mlの唾液を菌体とともに採取した。第2回目の実験では、服用5分間後に菌体を飲み込んでから、唾液採取用のチューインガムを噛み、2 mlの唾液を採取した。飲酒完了30分、60分、90分、120分、180分後に、それぞれ2 mlの唾液を採取した。第2回目の実験では、飲酒完了15分後にも唾液を採取した。

0094

採取した唾液中のアセトアルデヒド濃度をヘッドスペースガスクロマトグラフィーで測定した(n=2)。なお、実験は全て同一の被験者により実施され、次の実験まで2日以上の間隔が設けられた。また服用したグルコノバクター・コンドニイ細胞の比活性は4 U/mgであった。

0095

飲酒後の口腔内アセトアルデヒド濃度の推移図7に示す。図7において、横軸は飲酒後の時間(min)を示す。飲酒直後に2.5 ppm程度のパルス的なアセトアルデヒドの濃度上昇が見られた。グルコノバクター・コンドニイ細胞非服用(図7において「control」のグラフ)では、その後およそ1時間にわたって口腔内のアセトアルデヒドは1.8 ppmの濃度で推移し、90分後に1.1 ppm、120分後に0.9 ppm、180分後に0.6 ppmとなった。

0096

一方、グルコノバクター・コンドニイ細胞服用区(図7において「30mg服用」のグラフ)では、服用後直ちに口腔内のアセトアルデヒドは0.5 ppmにまで減少し、菌体の吐き出し又は飲み込み後に再び上昇し、飲酒完了30分後に1.4 ppm、1時間後に1.1 ppm、90分後に0.8 ppmとなった。口腔内アセトアルデヒドの濃度は、飲酒120分後及び180分後においてグルコノバクター・コンドニイ細胞非服用の場合と有意な差はなかったが、飲酒後90分間まではグルコノバクター・コンドニイ細胞の服用による口腔内アセトアルデヒド濃度は、非服用よりも有意に低かった。

0097

本実験により、口腔内アセトアルデヒドがいったん除去された後、菌体が除去されればアセトアルデヒド濃度は再び上昇に転じることが初めてわかった。これは、体内平衡濃度のアセトアルデヒド(1〜1.5 ppm)を含む唾液が唾液腺から持続的に分泌されるためか、あるいは体内の残存エタノールからアセトアルデヒドが持続的に生成するためであると思われる。しかしながら、飲酒後90分間まではグルコノバクター・コンドニイ細胞の服用時の口腔内アセトアルデヒド濃度は非服用時よりも有意に低いことは注目に値する。これは口腔内の微細構造にグルコノバクター・コンドニイ細胞が捕捉されるなどして残存し、アセトアルデヒドを分解するためではないかと推察される。

0098

剤型処方により口腔内にグルコノバクター・コンドニイ細胞をより長時間定着させるような工夫を施せば、口腔内アセトアルデヒド濃度をより効果的に低レベルに維持できる可能性が示唆された。

0099

〔実施例10〕食品へのグルコノバクター・コンドニイ細胞添加による影響
G. kondonii NBRC3266を実施例1で述べた方法により培養し、得られた菌体を凍結乾燥に供した。得られた菌体と下記の表1に示す食品との組み合わせによるアセトアルデヒド(AcH)生成の可能性を調べた。

0100

予め37℃でプレインキュベートした食品(400 μl)に菌体懸濁液(20 mg dry wt/mL)50μl(dry wt, 1 mg)を加え、37℃で5分間反応させ、50μlの6M過塩素酸と混合した。

0101

次いで、AcH含有量の変化をヘッドスペースガスクロマトグラフィーにて測定した。その結果、表1に挙げた食品と菌体との混合で有意なAcH生成は認められなかった。

実施例

0102

本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

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