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課題・解決手段

樹状細胞などの免疫細胞の核内に核酸を効率的に送達することができる脂質膜構造体であって、脂質膜が下記の(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド及び/又は(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1個又は数個アミノ酸欠失及び/又は置換及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、細胞の核内への脂質膜構造体の移行を促進する活性を有するポリペプチドで修飾された細胞核内物質を送達するための脂質膜構造体。

概要

背景

薬剤患部に特異的に輸送する手段として脂質膜構造体であるリポソームに薬剤を封入する方法が提案されている。特に、悪性腫瘍治療分野において抗腫瘍剤を封入したリポソームの有効性が数多く報告されている。また、遺伝子発現利用可能な脂質膜構造体として多機能性エンベロープ型ナノ構造体(MEND: Multifunctional envelope-type nano device;以下、本明細書において「MEND」と略す場合がある。例えばDrug Delivery System, 22-2, pp.115-122, 2007などを参照のこと)が提案されている。この構造体は、遺伝子などを特定の細胞内に選択的に送達するためのドラッグデリバリーシステムとして用いることができ、例えば、腫瘍遺伝子治療などに有用であることが知られている。

脂質膜構造体を用いて薬物、核酸ペプチドポリペプチド、糖などの目的物質標的臓器腫瘍組織など特異的な部位に送達するための手段として、脂質膜構造体の表面を機能性分子で修飾する方法が多数提案されている。抗腫瘍剤などの薬剤を内包した脂質膜構造体は標的細胞に到達するとエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれエンドソーム内に包含された状態となるが、その後、リソソーム酵素による加水分解作用などを受けて内包されていた薬剤を細胞質内に放出する。エンドソーム内に取り込まれたリポソームからの薬剤放出性を高めるために、リポソームの表面をペプチド(GALA: Biochemistry, 26, pp.2964-2972, 1987)で修飾したリポソーム(Biochemistry, 43, pp.5618-5623, 2004)やMEND(特開2006-28030号公報)が提案されている。

また、核酸などの目的物質を内包した脂質膜構造体を標的細胞の核内に移行させるための手段としては、例えば、リポソームの外側表面をオクタアルギニンで修飾したリポソーム(国際公開WO2005/32593; Journal of Controlled Release, 98, pp.317-323, 2004)、核移行性ペプチドで修飾された脂質膜を有する2枚膜リポソーム(国際公開WO2006/101201)、ガラクトースマンノースなどの単糖で表面を修飾したリポソーム(国際公開WO2007/102481)が提案されている。単糖で修飾された多重脂質膜構造体(T-MEND)は脂質膜及び核膜融合性を示し、in vitroでの試験結果において遺伝子発現効率を改善できたとされている。

一方、免疫細胞、特に抗原提示作用を有する樹状細胞の核内に抗原性タンパク質をコードする核酸を導入することできれば、樹状細胞内で核酸から転写翻訳されたタンパク質を樹状細胞表面に抗原提示させることができ、生体は当該タンパク質に対する免疫を獲得することができる。このような観点から、樹状細胞などの免疫細胞の核内に核酸を効率的に送達する技術が求められている。

しかしながら、上記のMENDなどの脂質膜構造体を用いて樹状細胞の核内に核酸を導入する場合の核酸導入効率は、その他の細胞、例えば腫瘍細胞肝実質細胞の場合と比較して十分ではない。導入された核酸が最終的に核内で発現するまでには、細胞内への取り込み、エンドソーム脱出核内移行、及び核内転写などのさまざまな細胞内動態プロセスを経る必要があるが、樹状細胞などの非分裂細胞においては2枚膜からなる核膜が常にインタクトに存在しており、この核膜が脂質膜構造体の核内移行能を妨げているものと推察される。従って、脂質膜構造体を用いて樹状細胞の核に核酸を送達するためには、上記の各プロセス、特に2枚膜からなる核膜によるバリヤーを如何に突破するかが、きわめて重要な課題となる。

なお、KALAペプチドと称される27アミノ酸残基のポリペプチドが知られており、自身のカチオン電荷を利用してプラスミドDNAとコンプレックスを形成することができることが報告されているが(Biochemistry, 36, pp.3008-3017, 1997)、上記刊行物にはこのペプチドが脂質膜構造体の核内移行を促進するか否かについての示唆はない。

概要

樹状細胞などの免疫細胞の核内に核酸を効率的に送達することができる脂質膜構造体であって、脂質膜が下記の(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド及び/又は(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1個又は数個アミノ酸欠失及び/又は置換及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、細胞の核内への脂質膜構造体の移行を促進する活性を有するポリペプチドで修飾された細胞核内物質を送達するための脂質膜構造体。

目的

本発明の課題は、免疫細胞、特に抗原提示能を有する樹状細胞の核内に核酸を効率的に送達するための手段を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
1件

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請求項1

細胞の核内に物質送達するための脂質膜構造体であって、脂質膜が下記の(a)及び/又は(b)のポリペプチド:(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1個又は数個アミノ酸欠失及び/又は置換及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、細胞の核内への脂質膜構造体の移行を促進する活性を有するポリペプチドで修飾された脂質膜構造体。

請求項2

脂質膜構造体がリポソームである請求項1に記載の脂質膜構造体。

請求項3

細胞が免疫細胞である請求項1又は2に記載の脂質膜構造体。

請求項4

上記(a)及び/又は(b)のポリペプチドが疎水性基で修飾されており、前記疎水性基が脂質膜に挿入された請求項1ないし3のいずれか1項に記載の脂質膜構造体。

請求項5

連続した複数個アルギニン残基を含むポリペプチドを表面に有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の脂質膜構造体。

請求項6

ポリアルキレングリコールを表面に有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の脂質膜構造体。

請求項7

免疫細胞表面に提示すべき抗原ポリペプチドをコードする核酸を該細胞の核内に導入するために用いる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の脂質膜構造体。

請求項8

送達すべき物質が内部に封入された請求項1ないし7のいずれか1項に記載の脂質膜構造体。

請求項9

内部に核酸及びカチオン性ポリマーが封入された請求項8に記載の脂質膜構造体。

請求項10

送達すべき物質が免疫細胞表面に提示すべき抗原ポリペプチドをコードする核酸である請求項8又は9に記載の脂質膜構造体。

請求項11

上記抗原ポリペプチドに対する免疫療法に用いるための請求項10に記載の脂質膜構造体。

請求項12

該核酸がDNAであり、該DNAがCpGを含まないDNAである請求項10又は11に記載の脂質膜構造体。

請求項13

請求項8ないし12のいずれか1項に記載の脂質膜構造体を有効成分として含む医薬組成物

請求項14

悪性腫瘍の予防及び/又は治療のために用いる請求項13に記載の医薬組成物。

請求項15

細胞の核内への脂質膜構造体の移行を促進するために用いるポリペプチドであって、下記の(a)及び/又は(b)のポリペプチド:(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1個又は数個のアミノ酸が欠失及び/又は置換及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド。

技術分野

0001

本発明は核内移行性を有する脂質膜構造体に関する。より具体的には、本発明は、免疫細胞の核内、特に樹状細胞の核内に容易に移行することができるリポソームなどの脂質膜構造体に関するものである。

背景技術

0002

薬剤患部に特異的に輸送する手段として脂質膜構造体であるリポソームに薬剤を封入する方法が提案されている。特に、悪性腫瘍治療分野において抗腫瘍剤を封入したリポソームの有効性が数多く報告されている。また、遺伝子発現利用可能な脂質膜構造体として多機能性エンベロープ型ナノ構造体(MEND: Multifunctional envelope-type nano device;以下、本明細書において「MEND」と略す場合がある。例えばDrug Delivery System, 22-2, pp.115-122, 2007などを参照のこと)が提案されている。この構造体は、遺伝子などを特定の細胞内に選択的に送達するためのドラッグデリバリーシステムとして用いることができ、例えば、腫瘍遺伝子治療などに有用であることが知られている。

0003

脂質膜構造体を用いて薬物、核酸ペプチドポリペプチド、糖などの目的物質標的臓器腫瘍組織など特異的な部位に送達するための手段として、脂質膜構造体の表面を機能性分子で修飾する方法が多数提案されている。抗腫瘍剤などの薬剤を内包した脂質膜構造体は標的細胞に到達するとエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれエンドソーム内に包含された状態となるが、その後、リソソーム酵素による加水分解作用などを受けて内包されていた薬剤を細胞質内に放出する。エンドソーム内に取り込まれたリポソームからの薬剤放出性を高めるために、リポソームの表面をペプチド(GALA: Biochemistry, 26, pp.2964-2972, 1987)で修飾したリポソーム(Biochemistry, 43, pp.5618-5623, 2004)やMEND(特開2006-28030号公報)が提案されている。

0004

また、核酸などの目的物質を内包した脂質膜構造体を標的細胞の核内に移行させるための手段としては、例えば、リポソームの外側表面をオクタアルギニンで修飾したリポソーム(国際公開WO2005/32593; Journal of Controlled Release, 98, pp.317-323, 2004)、核移行性ペプチドで修飾された脂質膜を有する2枚膜リポソーム(国際公開WO2006/101201)、ガラクトースマンノースなどの単糖で表面を修飾したリポソーム(国際公開WO2007/102481)が提案されている。単糖で修飾された多重脂質膜構造体(T-MEND)は脂質膜及び核膜融合性を示し、in vitroでの試験結果において遺伝子発現効率を改善できたとされている。

0005

一方、免疫細胞、特に抗原提示作用を有する樹状細胞の核内に抗原性タンパク質をコードする核酸を導入することできれば、樹状細胞内で核酸から転写翻訳されたタンパク質を樹状細胞表面に抗原提示させることができ、生体は当該タンパク質に対する免疫を獲得することができる。このような観点から、樹状細胞などの免疫細胞の核内に核酸を効率的に送達する技術が求められている。

0006

しかしながら、上記のMENDなどの脂質膜構造体を用いて樹状細胞の核内に核酸を導入する場合の核酸導入効率は、その他の細胞、例えば腫瘍細胞肝実質細胞の場合と比較して十分ではない。導入された核酸が最終的に核内で発現するまでには、細胞内への取り込み、エンドソーム脱出、核内移行、及び核内転写などのさまざまな細胞内動態プロセスを経る必要があるが、樹状細胞などの非分裂細胞においては2枚膜からなる核膜が常にインタクトに存在しており、この核膜が脂質膜構造体の核内移行能を妨げているものと推察される。従って、脂質膜構造体を用いて樹状細胞の核に核酸を送達するためには、上記の各プロセス、特に2枚膜からなる核膜によるバリヤーを如何に突破するかが、きわめて重要な課題となる。

0007

なお、KALAペプチドと称される27アミノ酸残基のポリペプチドが知られており、自身のカチオン電荷を利用してプラスミドDNAとコンプレックスを形成することができることが報告されているが(Biochemistry, 36, pp.3008-3017, 1997)、上記刊行物にはこのペプチドが脂質膜構造体の核内移行を促進するか否かについての示唆はない。

0008

国際公開WO2005/32593
国際公開WO2006/101201
国際公開WO2007/102481
特開2006-28030号公報

先行技術

0009

Drug Delivery System, 22-2, pp.115-122, 2007
Biochemistry, 26, pp.2964-2972, 1987
Biochemistry, 43, pp.5618-5623, 2004
Journal of Controlled Release, 98, pp.317-323, 2004
Biochemistry, 36, pp.3008-3017, 1997

発明が解決しようとする課題

0010

本発明の課題は、免疫細胞、特に抗原提示能を有する樹状細胞の核内に核酸を効率的に送達するための手段を提供することにある。より具体的には、樹状細胞などの免疫細胞の核内に核酸を効率的に送達することができる脂質膜構造体を提供することが本発明の課題である。

課題を解決するための手段

0011

本発明者らは上記の課題を解決すべく、核内移行能を高めることのできる機能性ポリペプチドであるオクタアルギニンポリペプチドで修飾されたMEND(国際公開WO2005/32593)や、エンドソーム脱出能を付与する機能性ポリペプチドであるGALAペプチドで修飾されたMEND(特開2006-28030号公報)に核酸を封入して樹状細胞への導入を試みたが、その核酸からのポリペプチド発現はほとんど認められなかった。また、エンドソームと融合性を示す脂質膜及び核膜と融合性を示す脂質膜を有する多重脂質膜構造体(T-MEND)に核酸を封入して樹状細胞への核酸導入を試みたが、核内において導入核酸からのポリペプチド発現促進がわずかに認められるものの、樹状細胞表面への該ポリペプチドの提示は観察されなかった。

0012

本発明者らはさらに研究を重ねた結果、核酸を封入したMENDなどの脂質膜構造体の脂質膜をKALAペプチドで修飾すると、樹状細胞などの免疫細胞の核内への核酸導入効率が顕著に高まることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。

0013

すなわち、本発明により、細胞の核内に物質を送達するための脂質膜構造体であって、脂質膜が下記の(a)及び/又は(b)のポリペプチド:
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1個又は数個アミノ酸欠失及び/又は置換及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、細胞の核内への脂質膜構造体の移行を促進する活性を有するポリペプチド
で修飾された脂質膜構造体が提供される。

0014

上記脂質膜構造体の好ましい態様によれば、脂質膜構造体がリポソームである上記の脂質膜構造体;細胞が免疫細胞、好ましくは樹状細胞である上記の脂質膜構造体;上記(a)及び/又は(b)のポリペプチドが疎水性基、好ましくはステアリル基若しくはコレステリル基などで修飾されており、前記疎水性基が脂質膜に挿入された上記の脂質膜構造体;連続した複数個アルギニン残基を含むポリペプチド、好ましくは4ないし20個の連続したアルギニン残基を含むポリペプチド、さらに好ましくは4ないし20個の連続したアルギニン残基のみからなるポリペプチド、特に好ましくはオクタアルギニンを表面に有する上記の脂質膜構造体;ポリアルキレングリコール又はリン脂質縮合したポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)を表面に有する上記の脂質膜構造体;脂質二重層を構成する総脂質に対するカチオン性脂質の割合が0〜40%(モル比)である上記の脂質膜構造体が提供される。

0015

また、別の観点からは、送達すべき物質が内部に封入された上記のいずれかの脂質膜構造体が提供される。この発明の好ましい態様によれば、送達すべき物質が核酸、例えば遺伝子を含む核酸やsiRNAなどの機能性核酸である上記のいずれかの脂質膜構造体;送達すべき物質がDNAである上記の脂質膜構造体;該DNAがCpGを含まないベクターDNAと結合したDNAである上記の脂質膜構造体;該DNAがCpGを含まず、かつ該DNAがCpGを含まないベクターDNAと結合したDNAである上記の脂質膜構造体;送達すべき物質が免疫細胞表面、好ましくは樹状細胞表面に提示すべき抗原ポリペプチドをコードする核酸である上記の脂質膜構造体;脂質膜構造体が多機能性エンベロープ型ナノ構造体(MEND)である上記のいずれかの脂質膜構造体;内部に核酸及びカチオン性ポリマー、好ましくはプロタミンが封入された上記のいずれかの脂質膜構造体が提供される。

0016

また、免疫細胞表面、好ましくは樹状細胞表面に提示すべき抗原ポリペプチドをコードする核酸を該細胞の核内に導入するために用いる上記の脂質膜構造体;上記抗原ポリペプチドに対する免疫療法に用いるための上記の脂質膜構造体;上記抗原ポリペプチドががん細胞に特異的は表面ポリペプチドである上記の脂質膜構造体が提供される。この脂質膜構造体を有効成分として含む医薬組成物、好ましくは送達すべき物質として核酸を含む医薬組成物も本発明により提供される。

0017

さらに別の観点からは、ヒトを含む哺乳類動物生体内において細胞の核内、好ましくは免疫細胞の核内、さらに好ましくは樹状細胞の核内に核酸を送達する方法であって、核酸を内部に封入した上記の脂質膜構造体を該動物投与する工程を含む方法;ヒトを含む哺乳類動物の生体内において免疫細胞、好ましくは樹状細胞の表面に抗原ポリペプチドを提示させる方法であって、該抗原ポリペプチドをコードする核酸を内部に封入した上記の脂質膜構造体を該動物に投与する工程を含む方法が提供される。

0018

また、ヒトを含む哺乳類動物の生体内において免疫細胞、好ましくは樹状細胞の表面に抗原ポリペプチドを提示させて該抗原ポリペプチドに対する免疫を獲得させる方法であって、該抗原ポリペプチドをコードする核酸を内部に封入した上記の脂質膜構造体を該動物に投与する工程を含む方法;及びヒトを含む哺乳類動物の生体内において免疫細胞、好ましくは樹状細胞の表面にがん細胞特異的な表面ポリペプチドを提示させて該ポリペプチドに対する免疫を獲得させる悪性腫瘍の免疫療法であって、該ポリペプチドをコードする核酸を内部に封入した上記の脂質膜構造体を該動物に投与する工程を含む方法が提供される。

0019

さらに、本発明により、細胞の核内、好ましくは免疫細胞の核内、さらに好ましくは樹状細胞の核内への脂質膜構造体の移行を促進するために用いるポリペプチドであって、下記の(a)及び/又は(b)のポリペプチド:
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1個又は数個のアミノ酸が欠失及び/又は置換及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
が提供される。

発明の効果

0020

本発明により提供される脂質膜構造体は樹状細胞を含む免疫細胞などの任意の細胞の核内に効率的に移行することができ、核内において封入された核酸などの物質を効率的に放出して該核酸によりコードされるポリペプチドを発現させることができる。本発明の脂質膜構造体を用いて樹状細胞の核内にポリペプチドをコードする核酸を導入する場合には、該核酸から転写翻訳されたポリペプチドが樹状細胞の表面に提示され、生体は当該ポリペプチドに対する免疫を獲得することができるので、所望のポリペプチドに対して有効な免疫療法を行うことができるようになる。

0021

また、本発明により提供される脂質膜構造体はそれ自体が樹状細胞に対してアジュバント作用を発揮することができ、種々のサイトカイン産生を促進することができるという特徴もあり、本発明により提供される脂質膜構造体で形質転換した樹状細胞を投与することにより、アジュバントの有無にかかわらず腫瘍の増悪や増殖を顕著に抑制することができ、抗原タンパク質を封入して投与することによりインビボ細胞障害活性を増強することができる。さらに、封入するDNAにおいてベクター部分からCpG配列を除去し、さらに必要に応じて、発現させるべきタンパク質をコードするDNAからもCpG配列を除去することにより遺伝子発現効率が顕著に向上するという特徴もある。

図面の簡単な説明

0022

ポリペプチド(a)(KALA)により脂質膜が修飾されたMENDの遺伝子発現効率を示した図である。
ポリペプチド(a)(KALA)により脂質膜が修飾された4枚膜のカチオン性T-MEND及びアニオン性T-MENDの遺伝子発現効率を示した図である。
本発明の脂質膜構造体を用いて樹状細胞の核内に抗原分子をコードする遺伝子を導入し、発現した抗原分子を樹状細胞表面に提示させた結果を示した図である。
MEND表面に修飾したKALAが樹状細胞に対してアジュバント効果を有することを示した図である。
タンパク封入KALA修飾リポソームのCTL活性を示した図である。
例6におけるプラスミドDNA(2)の構築方法の第1工程として、新たなマルチプルクロニングイトを有するCpGfreeプラスミドDNAを構築する工程を示した図である。
例6におけるプラスミドDNA(2)の構築方法の第2工程として、CpGfree-NEWmcsへのルシフェラーゼ遺伝子の組み込み工程を示した図である。
例6におけるプラスミドDNA(2)の構築方法の第3工程として、一つ残ったCpG配列を除去する工程を示した図である。
導入プラスミドのベクター改変によるKALA−MENDの遺伝子発現活性の増強効果を示した図である。
KALAで表面修飾したMENDがアジュバントの有無に関わらず高い抗腫瘍活性を有することを示した図である。
腫瘍が形成された後にKALAで表面修飾したMENDを投与した場合の抗腫瘍効果を示した図である。

0023

本発明の脂質膜構造体を構成する脂質としては、例えば、リン脂質、糖脂質ステロール、又は飽和若しくは不飽和の脂肪酸などが挙げられる。
リン脂質及びリン脂質誘導体としては、例えば、ホスファチジルエタノールアミンホスファリジルコリンホスファチジルセリンホスファチジルイノシトールホスファチジルグリセロールカルジオリピンスフィンゴミエリンセラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール、セラミドホスホリルグリセロールホスファート、1,2-ジミリストイル-1,2-デオキシホスファチジルコリンプラスマロゲンホスファチジン酸などを挙げることができ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらリン脂質における脂肪酸残基は特に限定されないが、例えば、炭素数12〜20の飽和又は不飽和の脂肪酸残基を挙げることができ、具体的には、ラウリン酸ミリスチン酸パルミチン酸ステアリン酸オレイン酸リノール酸などの脂肪酸由来アシル基を挙げることができる。また、卵黄レシチン大豆レシチンなどの天然物由来のリン脂質を用いることもできる。

0025

ステロールとしては、例えば、動物由来のステロール(例えば、コレステロール、コレステロールコハク酸ラノステロールジヒドロラノステロール、デスモステロールジヒドロコレステロール)、植物由来のステロール(フィトステロール)(例えば、スチグマステロールシトステロールカンペステロールブラシカステロール)、微生物由来のステロール(例えば、チモステロールエルゴステロール)などが挙げられる。
飽和又は不飽和の脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸などの炭素数12〜20の飽和又は不飽和の脂肪酸が挙げられる。

0026

脂質膜構造体の形態は特に限定されないが、例えば、水系溶媒に分散した形態として一枚膜リポソーム多重層リポソーム、O/W型エマルション、W/O/W型エマルション、球状ミセルひもミセル、又は不定型の層状構造物などを挙げることができる。本発明の脂質膜構造体の好ましい形態としてリポソームを挙げることができる。以下、本発明の脂質膜構造体の好ましい態様としてリポソームについて説明する場合があるが、本発明の脂質膜構造体はリポソームに限定されることはない。

0027

本発明の脂質膜構造体は、細胞の核内に物質を送達するための脂質膜構造体であって、脂質膜が下記の(a)及び/又は(b)のポリペプチド:(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド;(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1個又は数個のアミノ酸が欠失及び/又は置換及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、細胞の核内への脂質膜構造体の移行を促進する活性を有するポリペプチドで修飾されていることを特徴としている。

0028

配列番号1で表される上記のポリペプチド(a)は、30個のアミノ酸残基からなる公知のポリペプチド(WEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKACEA)よりC末端より3アミノ酸分を除去した27個のアミノ酸残基からなるポリペプチドである(以下、本明細書においてこのポリペプチドを「KALAペプチド」と呼ぶ場合がある: Biochemistry, 36, pp.3008-3017, 1997)。上記刊行物にはこのペプチドが自身のカチオン電荷を利用してプラスミドDNAとコンプレックスを形成することができることが記載されているが、脂質膜構造体の核内移行を促進するか否かについての示唆はない。また、公知のKALAペプチドは、GALAペプチドと称される30個のアミノ酸残基からなる機能性ポリペプチド(Bioor. Med. Chem., 5, pp.1883-1891, 1997)において複数のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換されたアミノ酸配列を有している(例えば複数のグルタミン残基リジン残基により置換されている)。しかしながら、GALAペプチドはpH応答して脂質膜の融合を促進する機能を有し、脂質膜構造体のエンドソームからの脱出能を高めることができる機能を有するポリペプチドであり、本発明において利用されるKALAペプチドの機能(脂質膜構造体の細胞における核内移行性を向上させる機能)とは相違する。

0029

本発明においてはポリペプチド(b):配列番号1に記載のアミノ酸配列において1個又は数個のアミノ酸が欠失及び/又は置換及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(以下、「改変ポリペプチド」と呼ぶ)であって、細胞の核内への脂質膜構造体の移行を促進する活性を有するポリペプチドを用いてもよい。脂質膜構造体の核内への移行を促進する活性としては、例えば、樹状細胞における核内移行能を促進する活性を評価することができる。例えば、標的細胞として樹状細胞を用い、その核内において発現可能な状態にある核酸、例えば樹状細胞の核内で作動可能プロモーターの下流に連結されたポリペプチドをコードする核酸を内部に保持した脂質膜構造体において、その脂質膜を改変ポリペプチドで修飾した脂質膜構造体(以下、「修飾脂質膜構造体」と呼ぶ)及び改変ポリペプチドで修飾していない脂質膜構造体(以下、「非修飾脂質膜構造体」と呼ぶ)を調製し、修飾脂質膜構造体を導入した細胞におけるマーカーポリペプチドの発現量が非修飾脂質膜構造体を導入した細胞におけるポリペプチドの発現量を増加するか否かを評価すればよい。発現量の増加が認められる場合には、その改変ポリペプチドを上記ポリペプチド(b)として使用することができる。上記ポリペプチド(b)の1種又は2種以上をポリペプチド(a)と組み合わせて使用することも可能である。

0030

上記ポリペプチド(a)及びポリペプチド(b)は当業者に利用可能な各種の遺伝子組み換え技術によって宿主細胞を用いて生物学的に調製することができる。また、上記ポリペプチドを当業者に利用可能な固相合成法などのペプチド合成反応を利用した有機化学的方法で製造してもよい。あるいはペプチドシンセサイザーを用いて自動合成してもよい。

0031

上記ポリペプチド(a)及び/又はポリペプチド(b)を脂質膜構造体の脂質膜に固定する手段は特に限定されないが、例えば、ステアリル基又はコレステリル基などの疎水性基で上記ポリペプチド(a)及び/又はポリペプチド(b)を修飾し、該疎水性基が脂質膜構造体の脂質膜に埋没するように脂質膜構造体を調製することにより、容易に脂質膜修飾を行うことができる。疎水性基としては任意の疎水性化合物の残基を用いることができる。脂質膜構造体として脂質多重膜を有するリポソームなどを用いる場合には、上記ポリペプチド(a)及び/又はポリペプチド(b)による脂質膜修飾を外側の脂質膜のほか、内側の脂質膜に対して行ってもよい。

0032

本発明の脂質膜構造体は細胞の核内に物質を送達するために使用することができるが、細胞の種類は特に限定されず、送達すべき物質の種類や核内への物質送達の目的などに応じて、適宜の細胞を標的とすることができる。標的とすべき細胞として、好ましくは免疫細胞を挙げることができ、免疫細胞のなかでも抗原提示細胞を好ましく用いることができる。例えばマクロファージ、樹状細胞、B細胞などの抗原提示細胞が好ましく、特に好ましいのは樹状細胞である。

0033

本発明の脂質膜構造体の核内移行を促進するために、例えば、脂質膜構造体を3糖以上のオリゴ糖化合物で表面修飾することもできる。3糖以上のオリゴ糖化合物の種類は特に限定されないが、例えば、3個ないし10個程度の糖ユニットが結合したオリゴ糖化合物を用いることができ、好ましくは3個ないし6個程度の糖ユニットが結合したオリゴ糖化合物を用いることができる。

0034

オリゴ糖化合物としてより具体的には、例えば、セロトリオース(Cellotriose: β-D-グルコピラノシル-(1→4)-β-D-グルコピラノシル-(1→4)-D-グルコース)、カコトリオース(Chacotriose: α-L-ラムピラノシル-(1→2)-[α-L-ラムノピラノシル-(1→4)]-D-グルコース)、ゲンチアノース(Gentianose: β-D-フルクトフラノシルβ-D-グルコピラノシル-(1→6)-α-D-グルコピラノシド)、イソマルトトリオース(Isomaltotriose: α-D-グルコピラノシル-(1→6)-α-D-グルコピラノシル-(1→6)-D-グルコース)、イソパノース(Isopanose: α-D-グルコピラノシル-(1→4)-[α-D-グルコピラノシル-(1→6)]-D-グルコース)、マルトトリオース(Maltotriose: α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-D-グルコース)、マンニノトリオース(Manninotriose: α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-D-グルコース)、メレジトース(Melezitose: α-D-グルコピラノシル-(1→3)-β-D-フルクトフラノシル=α-D-グルコピラノシド)、パノース (Panose: α-D-グルコピラノシル-(1→6)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-D-グルコース)、プランテオース(Planteose: α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-β-D-フルクトフラノシル=α-D-グルコピラノシド)、ラフィノース(Raffinose: β-D-フルクトフラノシル=α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-α-D-グルコピラノシド)、ソラトリオース(Solatriose: α-L-ラムノピラノシル-(1→2)-[β-D-グルコピラノシル-(1→3)]-D-ガラクトース)、ウンベリフェロース(Umbelliferose: β-D-フルクトフラノシル=α-D-ガラクトピラノシル-(1→2)-α-D-ガラクトピラノシド)などの3糖化合物;リコテトラオース(Lycotetraose: β-D-グルコピラノシル-(1→2)-[β-D-キシロピラノシル-(1→3)]-β-D-グルコピラノシル-(1→4)-β-D-ガラクトース)、マルトテトラオース(Maltotetraose: α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-D-グルコース)、スタキオース(Stachyose: β-D-フルクトフラノシル=α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-α-D-グルコピラノシド)などの4糖化合物;マルトペンタオース(Maltopentaose: α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-D-グルコース)、ベルバスコース(Verbascose: β-D-フルクトフラノシル=α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-α-D-ガラクトピラノシル-(1→6)-α-D-グルコピラノシド)などの5糖化合物;マルトヘキサオース(Maltohexaose: α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-D-グルコース)などの6糖化合物を挙げることができるが、これらに限定されることはない。

0035

好ましくはグルコースの3量体ないし6量体であるオリゴ糖化合物を用いることができ、さらに好ましくはグルコースの3量体又は4量体であるオリゴ糖化合物を用いることができる。より具体的には、イソマルトトリオース、イソパノース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、又はマルトヘキサオースなどを好適に用いることができ、これらのうち、グルコースがα1-4結合したマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、又はマルトヘキサオースがさらに好ましい。特に好ましいのはマルトトリオース又はマルトテトラオースであり、最も好ましいのはマルトトリオースである。オリゴ糖化合物による脂質膜構造体の表面修飾量は特に限定されないが、例えば、総脂質量に対して1〜30モル%程度、好ましくは2〜20モル%程度、より好ましくは5〜10モル%程度である。

0036

オリゴ糖化合物で脂質膜構造体を表面修飾する方法は特に限定されないが、例えば、脂質膜構造体をガラクトースやマンノースなどの単糖で表面を修飾したリポソーム(国際公開WO2007/102481)が知られているので、この刊行物に記載された表面修飾方法を採用することができる。上記刊行物の開示の全てを参照により本明細書の開示として含める。この手段はポリアルキレングリコール化脂質に単糖化合物を結合して脂質膜構造体の表面修飾を行なう方法であり、この手段により脂質膜構造体の表面をポリアルキレングリコールにより同時に修飾することができるので好ましい。

0037

脂質膜構造体の表面をポリアルキレングリコールなどの親水性ポリマーで修飾することによりリポソームの血中滞留性を高めることができる。この手段については、例えば、特開平1-249717号公報、特開平2-149512号公報、特開平4-346918号公報、特開2004-10481号公報などに記載されている。親水性ポリマーとしてはポリアルキレングリコールが好ましい。ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールポリヘキサメチレングリコールなどを用いることができる。ポリアルキレングリコールの分子量は、例えば300〜10,000程度、好ましくは500〜10,000、さらに好ましくは1,000〜5,000程度である。

0038

ポリアルキレングリコールによる脂質膜構造体の表面修飾は、例えばポリアルキレングリコール修飾脂質を脂質膜構成脂質として用いて脂質膜構造体を構築することにより容易に行なうことができる。例えば、ポリエチレングリコールによる修飾を行う場合にはステアリル化ポリエチレングリコール(例えばステアリン酸PEG45(STR-PEG45)など)を用いることができる。その他、N-{カルボニルメトキシポリエチレングリコール-2000}-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン、n-{カルボニル-メトキシポリエチレングリコール-5000}-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン、N-{カルボニル-メトキシポリエチレングリコール-750}-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン、N-{カルボニル-メトキシポリエチレングリコール-2000}-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン、N-{カルボニル-メトキシポリエチレングリコール-5000}-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミンなどのポリエチレングリコール誘導体などを用いることもできるが、ポリアルキレングリコール化脂質はこれらに限定されることはない。

0039

例えば、ポリアルキレングリコールで修飾された上記ポリペプチド(a)及び/又はポリペプチド(b)を用いて脂質膜構造体の表面修飾を行うこともできる。例えば、適当なリン脂質が縮合したポリアルキレングリコール、例えばステアリル化ポリエチレングリコールで修飾された上記ポリペプチド(a)及び/又はポリペプチド(b)を使用することができる。例えば、ポリアルキレングリコールをN末端又はC末端のシステイン(Cys)残基に縮合させたポリペプチドを利用することが好ましい。この態様により、ポリアルキレングリコールと上記ポリペプチド(a)及び/又はポリペプチド(b)とによる脂質膜修飾を同時に達成することができる。

0040

また、ポリアルキレングリコールにオリゴ糖化合物を結合させることにより、ポリアルキレングリコール及びオリゴ糖化合物による表面修飾を同時に達成することができる。もっとも、脂質膜構造体をポリアルキレングリコールやオリゴ糖化合物で表面修飾する方法は上記の方法に限定されることはなく、例えば、ステアリル化されたポリアルキレングリコールやオリゴ糖化合物など脂質化された化合物を脂質膜構造体の構成脂質として使用することにより、表面修飾を行なうことができる場合もある。

0041

本発明の脂質膜構造体の製造にあたり、血中滞留性を高めるための脂質誘導体として、例えば、グリコフォリン、ガングリオシドGM1、ホスファチジルイノシトール、ガングリオシドGM3、グルクロン酸誘導体グルタミン酸誘導体ポリグリセリンリン脂質誘導体などを利用することもできる。また、血中滞留性を高めるための親水性ポリマーとして、ポリアルキレングリコールのほかにデキストランプルランフィコールポリビニルアルコールスチレン無水マレイン酸交互共重合体ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、アミロースアミロペクチンキトサンマンナンシクロデキストリンペクチンカラギーナンなどを表面修飾に用いることもできる。

0042

エンドソーム内から脂質膜構造体を細胞質中に効率的に脱出させるために本発明の脂質膜構造体の脂質膜をGALAで修飾してもよい。例えば、特開2006-28030号公報にはGALAで表面修飾を施したリポソームが開示されているので、上記公報に記載された方法に従って、GALAで表面修飾した脂質膜構造体を容易に製造することができる。一般的にはGALAのコレステロール誘導体(Chol-GALA)を脂質成分として用いて脂質膜構造体を調製することにより、GALAで表面修飾した脂質膜構造体を製造することができる。GALAによる表面修飾量は特に限定されないが、例えば、総脂質量に対して0.01〜10モル%程度、好ましくは0.1〜4モル%程度、より好ましくは1〜3モル%程度である。

0043

本明細書において「GALA」の用語には特開2006-28030号公報の配列表の配列番号1により特定されるペプチドのほか、上記ペプチドのアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、実質的にGALAと同様の性質(例えば酸性条件下において脂質膜同士を融合できる性質)を有する修飾ペプチドも包含される。本明細書における「GALA」の用語をいかなる意味においても限定して解釈してはならない。GALA及びGALAによる脂質膜構造体の表面修飾方法に関して、特開2006-28030号公報の開示の全てを参照により本明細書の開示として含める。

0044

本発明の脂質膜構造体の表面をMPCポリマーで修飾することもできる。MPCポリマーは2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンMPC)を重合して得られるMPCポリマーである。このポリマー生体膜と類似の分子構造を有していることからポリペプチドや血球などの生体成分との相互作用が極めて小さく、優れた生体適合性を有することが示されている。本明細書において、「MPCポリマー」の用語にはMPCのホモポリマー、及びMPCと他の重合成分とのコポリマーのいずれも包含される。

0045

MPCポリマーは市販のポリマーを容易に入手することができる。例えば、日油株式会社から登録商標リピジュア(LIPIDURE)」としてMPCのホモポリマー(CAS: 67881-99-6);MPCとブチルメタクリレートとのコポリマー(CAS: 125275-25-4);MPC、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ブチルの3元コポリマー;MPCと2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドとの2元コポリマー;リン脂質ポリマー(LIPIDURE-S)などが提供されており、いずれも本発明に用いることができる。

0046

本発明において用いられるMPCポリマーの種類は特に限定されないが、例えば、MPCとブチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルとのコポリマー、特にブロックコポリマーなどを好ましく用いることができる。このコポリマーについては特許第2890316号公報に製造方法が詳細に記載されており、当業者はこの特許公報を参照することにより所望のコポリマーを容易に製造することができる。この特許公報の開示の全てを参照により本明細書の開示として含める。本発明においては、水溶性を有し、かつ疎水性基を有するMPCポリマーを用いることが好ましいが、このような観点から炭素数4ないし18程度のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを用いて製造されたMPCコポリマーを好適に使用することができる。MPCとブチルメタクリレート(BMA)とのコポリマーとしては、例えば、MPCとBMAのモル比が5:5のコポリマー(PMB50)やMPCとBMAのモル比が3:7のコポリマー(PMB30)などが知られており、例えば、Polymer Journal, 22, pp.355-360, 1990などに記載の方法に従って容易に調製することが可能である(例えば特開2007-314526号公報に具体的な製造方法の説明がある)。本発明にはPMB50を特に好ましく用いることができる。MPCポリマーの重合度や分子量は特に限定されないが、例えば、水溶性を維持する観点から平均分子量(重量平均分子量)が5,000〜300,000程度、好ましくは10,000〜100,000程度のポリマーを用いることができる。

0047

MPCポリマーで脂質膜構造体を修飾する方法は特に限定されないが、例えば、リポソームなどの脂質膜構造体の水性分散物にMPCポリマーを添加し、室温で数分から数時間程度放置すればよい。上記水性分散物へのMPCポリマーの添加量は特に限定されないが、修飾すべきMPCポリマーの量に応じて、例えば、脂質膜構造体の総脂質量に対して0.01〜1質量%の範囲、好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜3質量%程度のMPCポリマーを添加すればよい。この操作によりMPCポリマーは速やかに脂質膜構造体の脂質成分に取り込まれ、表面がMPCポリマーで修飾された脂質膜構造体を調製することができる。MPCポリマーによる表面修飾量は特に限定されないが、例えば脂質膜構造体の総脂質量に対して0.1〜5質量%程度の範囲である。

0048

本発明の脂質膜構造体は、ステロール、又はグリセリン若しくはその脂肪酸エステルなどの膜安定化剤、トコフェロール没食子酸プロピルパルミチン酸アスコルビル、又はブチル化ヒドロキシトルエンなどの抗酸化剤荷電物質、及び膜ポリペプチドなどからなる群から選ばれる1種又は2種以上の物質を含んでいてもよい。正荷電を付与する荷電物質としては、例えば、ステアリルアミンオレイルアミンなどの飽和又は不飽和脂肪族アミンジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパンなどの飽和又は不飽和カチオン性合成脂質;あるいはカチオン性ポリマーなどを挙げることができ、負電荷を付与する荷電物質としては、例えば、ジセチルホスフェートコレステリルヘミスクシネート、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸などを挙げることができる。膜ポリペプチドとしては、例えば、膜表在性ポリペプチド、又は膜内在性ポリペプチドなどが挙げられる。これらの物質の配合量は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。

0049

また、本発明の脂質膜構造体には、例えば、温度変化感受性機能、膜透過機能、遺伝子発現機能、及びpH感受性機能などのいずれか1つ又は2つ以上の機能を付与することができる。これらの機能を適宜付加することにより、例えば遺伝子を含む核酸などを内包する脂質膜構造体の血液中での滞留性を向上させ、肝臓脾臓などの細網内皮系組織による捕捉率を低下させるとともに、標的細胞におけるエンドサイトーシスの後にエンドソームから効率的に脂質膜構造体を脱出させて核内に移行させることができ、核内において高い遺伝子発現活性を達成することが可能になる。

0050

温度変化感受性機能を付与することができる温度変化感受性脂質誘導体としては、例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリンなどを挙げることができる。また、pH感受性機能を付与することができるpH感受性脂質誘導体としては、例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンなどを挙げることができる。

0051

また、本発明の脂質膜構造体は、細胞表面の受容体抗原に対して特異的に結合可能な抗体などの物質で修飾を施すこともでき、細胞の核内への物質送達効率を改善することができる。例えば標的組織又は臓器に特異的に発現する生体成分に対するモノクローナル抗体を脂質膜構造体の表面に配置することが好ましい。この手法は、例えば、STEALTH LIPOSOME(第233-244頁、CRCPress, Inc.発行, Danilo Lasic及びFrank Martin編)などに記載されている。脂質膜構造体の構成成分として、モノクローナル抗体やそのフラグメント(例えば、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメント、又はFab’フラグメントなど)中のメルカプト基と反応し得る脂質誘導体、例えばポリ(エチレングリコール)-α-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン-ω-マレインイミド、α-[N-(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォリル-エチルカルバミル)-ω-{3-[2-(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル)エタンカルボキサミド]プロピル}-ポリ(オキシ-1,2-エタンジル)などのマレインイミド構造を有する脂質誘導体を含有させることにより、モノクローナル抗体を脂質膜構造体の膜の表面に結合させることができる。

0052

本発明の脂質膜構造体の表面は連続した複数個のアルギニン残基を含むポリペプチド(以下、「ポリアルギニン」と呼ぶ。)で修飾されていてもよい。ポリアルギニンとしては、好ましくは4ないし20個の連続したアルギニン残基を含むポリペプチド、さらに好ましくは4ないし20個の連続したアルギニン残基のみからなるポリペプチド、特に好ましくはオクタアルギニンなどを用いることができる。リポソームなどの脂質膜構造体の表面をオクタアルギニンなどのポリアルギニンで修飾することにより、リポソームに封入された目的物質の細胞内送達効率を向上させることができる(Journal of Controlled Release, 98, pp.317-323, 2004;国際公開WO2005/32593)。ポリアルギニンによる脂質膜構造体表面の修飾は、上記の刊行物に記載された方法に従って、例えば脂質修飾ポリアルギニン、例えばステアリル化オクタアルギニンなどを脂質膜構造体の構成脂質として使用することにより容易に行なうことができる。上記刊行物の開示及びこの刊行物において引用された全ての文献の開示を参照により本明細書の開示として含める。

0053

さらに、本発明の脂質膜構造体の表面はINF7で修飾されていてもよい。INF7はインフルエンザHAポリペプチド(HA2)由来のペプチド(1-23)を改変したグルタミン酸リッチペプチドであり、リポソームと混在させることにより脂質構造が崩壊して内包された物質が容易に放出されることが報告されており(Biochemistry, 46, pp.13490-13504, 2007)、ポリエチレングリコールテトラアクリレート(PEG-TA)にINF7を結合させた送達システムも提案されている(The Journal of Gene Medicine, 10, pp.1134-1149, 2008)。当業者はこれらの刊行物を参照することにより本発明においてINF7を容易に使用することが可能である。本明細書において「INF7」の用語にはBiochemistry, 46, pp.13490-13504, 2007のTable 1に記載された配列により特定されるペプチドのほか、上記ペプチドのアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、実質的にINF7と同様の性質を有する修飾ペプチドも包含される。本明細書における「INF7」の用語をいかなる意味においても限定して解釈してはならない。上記刊行物の開示及びこの刊行物において引用された全ての文献の開示を参照により本明細書の開示として含める。

0054

INF7による脂質膜構造体の修飾方法は特に限定されないが、一般的には、脂質化合物とINF7とが共有結合した脂質修飾INF7を脂質膜構成脂質として用いて脂質膜構造体を構築することにより、INF7により表面修飾された脂質膜構造体を容易に製造することができる。脂質修飾INFとしては、例えばステアリル化INF7などを利用することができ、この化合物はFutaki, S. et al., Biocongug. Chem., 12(6), pp.1005-1011, 2001に記載された方法に従って容易に製造することができる。INF7による表面修飾量は特に限定されないが、一般的には脂質膜構造体の総脂質量に対して1〜5モル%の範囲であり、好ましくは総脂質量に対して3 〜5 モル%程度である。

0055

多機能性を付加したエンベロープ型ナノ構造体(MEND)が知られており、本発明の脂質膜構造体として好適に使用することができる。MENDは、例えば、プラスミドDNAなどの核酸とプロタミンなどのカチオン性ポリマーとの複合体をコアとし、このコアがリポソーム形態の脂質エンベロープ膜の内部に封入された構造を有している。MENDの脂質エンベロープ膜には、必要に応じてpH応答性膜透過性を調節するためのペプチドを配置することができ、脂質エンベロープ膜の外側表面はポリエチレングリコールなどのアルキレングリコールで修飾することができる。MENDの脂質エンベロープの内部には、凝縮化されたDNA及びカチオン性ポリマーが封入されており、効率的に遺伝子発現を達成できるように設計されている。本発明に好適に使用可能なMENDとしては、所望の遺伝子を組み込んだプラスミドDNAとプロタミンとの複合体が内部に封入され、脂質エンベロープの外側表面がオリゴ糖結合PEGで修飾されたMENDが好ましい。オリゴ糖結合PEGによる修飾は構成脂質成分として上記のポリペプチド(a)及び/又はポリペプチド(b)が結合したステアリル化ポリエチレングリコールを用いることが好ましい。MENDについては、例えばDrug Delivery System, 22-2, pp.115-122, 2007などの総説を参照することができる。上記刊行物の開示及びこの総説において引用された全ての文献の開示を参照により本明細書の開示として含める。

0056

脂質膜構造体の形態は特に限定されないが、例えば、水系溶媒(例えば水、生理食塩水リン酸緩衝生理食塩水など)に分散された形態やこの水性分散物を凍結乾燥した形態などが挙げられる。

0057

脂質膜構造体の製造方法も特に限定されず、当業者に利用可能な任意の方法を採用することができる。一例を挙げれば、全ての脂質成分をクロロホルムなどの有機溶媒に溶解し、エバポレータによる減圧乾固噴霧乾燥機による噴霧乾燥を行うことによって脂質膜を形成した後、水系溶媒を乾燥した上記の混合物に添加し、さらにホモジナイザーなどの乳化機、超音波乳化機、又は高圧噴射乳化機などにより乳化することで製造することができる。また、リポソームを製造する方法としてよく知られている方法、例えば逆相蒸発法などによっても製造することができる。脂質膜構造体の大きさを制御したい場合には、孔径のそろったメンブランフィルターなどを用いて、高圧下でイクストルージョン(押し出し濾過)を行えばよい。分散した状態の脂質膜構造体の大きさは特に限定されないが、例えば、リポソームの場合には粒子径が50 nmから5μm程度であり、50 nmから400 nm程度が好ましく、50 nmから300 nm程度が好ましく、150 nmから250 nm程度がより好ましい。粒子径は、例えばDLS(dynamic light scattering)法により測定することができる。

0058

水系溶媒(分散媒)の組成は特に限定されないが、例えば、リン酸緩衝液クエン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩液などの緩衝液、生理食塩水、細胞培養用培地などを挙げることができる。これら水系溶媒(分散媒)は脂質膜構造体を安定に分散させることができるが、さらに、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースイノシトールリボースキシロース糖単糖類乳糖ショ糖セロビオーストレハロースマルトースなどの二糖類、ラフィノース、メレジノースなどの三糖類、シクロデキストリンなどの多糖類エリスリトールキシリトールソルビトールマンニトールマルチトールなどの糖アルコールなどの糖(水溶液)や、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールトリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテルジエチレングリコールモノアルキルエーテル、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール(水溶液)などを加えてもよい。この水系溶媒に分散した脂質膜構造体を安定に長期間保存するには、凝集抑制などの物理的安定性の面から水系溶媒中の電解質を極力排除することが望ましい。また、脂質の化学的安定性の面からは水系溶媒のpHを弱酸性から中性付近(pH3.0から8.0程度)に設定し、及び/又は窒素バブリングなどにより溶存酸素を除去することが望ましい。

0059

得られた脂質膜構造体の水性分散物を凍結乾燥又は噴霧乾燥する場合には、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、イノシトール、リボース、キシロース糖の単糖類、乳糖、ショ糖、セロビオース、トレハロース、マルトースなどの二糖類、ラフィノース、メレジノースなどの三糖類、シクロデキストリンなどの多糖類、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトールなどの糖アルコールなどの糖(水溶液)を用いると安定性を改善できる場合がある。また、上記水性分散物を凍結する場合には、例えば、前記の糖類やグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール(水溶液)を用いると安定性を改善できる場合がある。

0060

本発明の脂質膜構造体、例えばリポソームの内部には、標的組織又は臓器の細胞の核内に送達すべき物質を封入することができる。封入すべき物質の種類は特に限定されないが、抗腫瘍剤、抗炎症剤抗菌剤抗ウイルス剤などの任意の医薬の有効成分のほか、糖類、ペプチド類核酸類低分子化合物金属化合物など任意の物質を封入することができる。核酸としては、例えば遺伝子を含む核酸を挙げることができ、より具体的には、例えば、プラスミドに組み込まれた遺伝子などを挙げることができるが、この特定の態様に限定されることはない。また、遺伝子としては任意の遺伝子を用いることができることは言うまでもない。本発明の一例として、以下、核酸を封入する場合について具体的に説明するが、本発明の範囲はこの特定の態様に限定されることはない。

0061

本発明の脂質膜構造体には、好ましくは核酸を封入することができる。核酸にはDNA又はRNAのほか、これらの類似体又は誘導体(例えば、ペプチド核酸(PNA)やホスホロチオエートDNAなど)が包含される。核酸は一本鎖又は二本鎖のいずれであってもよく、線状又は環状のいずれであってもよい。核酸には遺伝子が含まれていてもよい。遺伝子としては、オリゴヌクレオチド、DNA、又はRNAのいずれでもよく、特に形質転換などのイン・ビトロにおける導入用遺伝子や、イン・ビボで発現することにより作用する遺伝子、例えば、相同組換え用の正常遺伝子などの遺伝子治療用遺伝子などを挙げることができる。治療用の核酸としては、アンチセンスオリゴヌクレオチドアンチセンスDNAアンチセンスRNA、酵素、サイトカインなどの生理活性物質をコードする遺伝子のほか、遺伝子の発現を調節する機能を有する核酸、例えばsiRNAなどのRNAなどを含む機能性核酸を用いることもでき、これらも本明細書における核酸の用語に含める。本明細書において「核酸」の用語は最も広義に解釈する必要があり、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。例えば核酸としてDNAを用いる場合には、例えば、発現させるべき遺伝子DNAをベクターDNAに結合させて脂質膜構造体に封入することができるが、より高い遺伝子発現効率を達成するためには、該ベクターDNAがCpG配列を含まないことが好ましく、それに加えて、発現させるべき遺伝子DNAがCpG配列を含まないことがさらに好ましい場合もある。該ベクターにはエンハンサー及び/又はプロモーターが結合されていることが好ましい。

0062

また、本発明の脂質膜構造体に核酸を封入する場合には、核酸導入機能を有する化合物を加えることもできる。このような化合物としては、例えば、O,O'-N-ジドデカノイル-N-(α-トリメチルアンモニオアセチル)-ジエタノールアミンクロリド、O,O'-N-ジテトラデカノイル-N-(α-トリメチルアンモニオアセチル)-ジエタノールアミンクロリド、O,O'-N-ジヘキサデカノイル-N-(α−トリメチルアンモニオアセチル)-ジエタノールアミンクロリド、O,O'-N-ジオクタデセノイル-N-(α-トリメチルアンモニオアセチル)-ジエタノールアミンクロリド、O,O',O''-トリデカノイル-N-(ω-トリメチルアンモニオデカノイル)アミノメタンブロミド及びN-[α-トリメチルアンモニオアセチル]-ジドデシル-D-グルタメートジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチル-1-プロパンアンモニウムトリフルオロアセテート、1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、3-β-[N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロールなどを挙げることができる。これらの核酸導入機能を有する化合物は、脂質膜構造体の膜の任意の位置に配置されていてもよく、及び/又は脂質膜構造体の内部に充填されていてもよい。

0063

例えば、核酸を封入した脂質膜構造体は、標的組織又は臓器の細胞の核内に該核酸を送達するためのキャリアーとして用いることができる。遺伝子発現を目的とする場合には、核酸として所望の遺伝子を含む核酸を用い、上記のMENDを用いることが特に好ましい。例えば、遺伝子を含む核酸を封入した脂質膜構造体、好ましくはMENDをヒトを含む哺乳類動物に投与することにより、標的組織又は臓器の細胞の核内に所望の遺伝子を送達して効率よく発現させることができる。投与方法は特に限定されないが、非経口投与が好ましく、静脈内投与がさらに好ましい。本発明の脂質膜構造体を医薬として使用する場合には、例えば、適宜の製剤用添加物とともに医薬組成物の形態の医薬を調製して投与することができる。

0064

本発明の脂質膜構造体を用いて免疫細胞、好ましくは樹状細胞の核内に核酸を移行させると、核内において封入された核酸などの物質を効率的に放出して該核酸によりコードされるポリペプチドを発現させることができる。本発明の脂質膜構造体を用いて樹状細胞の核内にポリペプチドをコードする核酸を導入する場合には、該核酸から転写翻訳されたポリペプチドが樹状細胞の表面に提示され、生体は当該ポリペプチドに対する免疫を獲得することができるので、所望のポリペプチドに対して有効な免疫療法を行うことができるようになる。この態様は本発明において特に好ましい態様である。

0065

本発明により提供される脂質膜構造体はそれ自体が樹状細胞に対してアジュバント作用を発揮することができ、種々のサイトカイン産生を促進することができる。従って、本発明の脂質膜構造体を用いることにより、極めて効率的に免疫療法を行うことができる。また、本発明により提供される脂質膜構造体で形質転換した樹状細胞をヒトを含む哺乳類動物に投与することにより、アジュバントの有無にかかわらず悪性腫瘍の増悪や増殖を顕著に抑制することができ、抗原タンパク質を封入して投与することによりイン・ビボで細胞障害活性を増強することができることから、高い有効性を有する悪性腫瘍の予防ワクチン又は悪性腫瘍の治療のための医薬の有効成分として利用することができる。

0066

以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1
(a)封入する核酸の調製(プロタミンによる凝縮体)
ルシフェラーゼをコードしているプラスミド(pDNA、BD Biosciences Clontech社製)を10 mMHEPES緩衝液に0.1 mg/mLとなる様に溶解した。0.1 mg/mL(10 mM HEPES緩衝液)の プロタミン(Protamine)溶液150μLにpDNA溶液を100μL少量ずつ攪拌しながら滴下して、プロタミンとpDNAのコンパクション体を調製した(N/P比は2.2)。

0067

(b)プロタミンコア封入リポソームの作成
1 mMDOPE 112.5μL及び1 mM CHEMS 25μLをDOPE:CHEMS=9:2となるようにガラス試験管に加えた。さらに、Biochemistry, 43, pp.5618-5628, 2004に記載の方法に従って合成された1mg/mL Chol-GALA、及び特開2003-343857号公報に記載された方法に準じて合成した1mg/mLステアリル化KALA(STR-KALA)を総脂質濃度の1〜8%分の修飾量となるように加え、さらに全量が200μLとなるようにクロロホルムを加えた後、デシケーター減圧乾燥して溶媒を留去させて脂質膜を得た。この脂質膜に、総脂質濃度が0.55 mMとなるように上記(a)のコンパクション体を添加し、室温で10分間静置して水和させた後、ソニケーターで1分間超音波処理した。特開2003-343857号公報に記載の方法で合成したステアリル化オクタアルギニン(STR-R8)(2 mg/mL水溶液を総脂質の 5 mol%分添加し、室温で10 分間静置した。

0068

(c)封入する核酸の調製(ポリロタキサンによる凝縮体)
ルシフェラーゼをコードしているプラスミド(pDNA、BD Biosciences Clontech社製)を10 mMHEPES緩衝液に0.1 mg/mLとなる様に溶解した。J. Control. Release, 131, pp.137-144, 2008に記載の方法に従って合成されたポリロタキサン(平均ポリエチレングリコール鎖長4,000、シクロデキストリン貫通数29、1鎖内平均カチオン数46)を10 mM HEPES緩衝液により溶解し(1 mMアミン濃度換算)、得られた溶液150μLにpDNA溶液を100μL少量ずつ攪拌しながら滴下して、ポリロタキサンとpDNAのコンパクション体を調製した(N/P比は5.0)。

0069

(d)ポリロタキサンコア封入リポソームの作成
1 mMDOPE 107 μL及び1 mMホスファチジン酸(PA) 30.5μLをDOPE:PA=7:2となるようにガラス試験管に加えた。特開2003-343857号公報に記載された方法に準じて合成した1mg/mLのSTR-KALAを総脂質濃度の1.5〜5%分の修飾量(8.25μL〜27.5μL)となるように加え、さらに全量が200μLとなるようにクロロホルムを加えた後、デシケーターで減圧乾燥して溶媒を留去させて脂質膜を得た。この脂質膜に、総脂質濃度が0.55 mMとなるように上記(c)のコンパクション体を添加し、室温で10 min静置し水和させた後、ソニケーターで1分間超音波処理した。特開2003-343857号公報に記載の方法で合成したステアリル化オクタアルギニン(STR-R8)2 mg/mL水溶液を総脂質の 10 mol%となるように添加し、室温で10 分間静置し水和させた。

0070

(e)形質転換細胞の作製
JAWS II細胞を8×104cells/ウェルとなるように24ウェルプレート播種し、αMEM培地で24時間培養した。培養後の細胞をPBS500 μLで洗浄した後、上記(b)及び(d)で作製したリポソームとコントロールリポソーム(ステアリル化KALA及びChol-GALA未修飾)をpDNA量が0.4μg/wellとなる様にαMEM に添加した後、各ウェルに加えて37 ℃、5% CO2で3時間インキュベーションした。インキュベーション後に細胞をPBS 500 μLで洗浄した後、αMEM 1 mLを各ウェルに添加し、37℃、5% CO2の条件下でさらに21時間インキュベーションして形質転換細胞を作製した。

0071

(f)発現量の測定
上記(e)の形質転換細胞をPBS500μLで洗浄し、そのPBSを1.5 mLサンプルチューブ回収し、遠心(4℃、2,000 rpm, 2分間)して上清を除去した。各ウェルにReporter Lysis Buffer(Promega社)75μLを添加し、-80℃のリーザーに移して凍結した。凍結させたサンプルを解凍させた後、セルスクレーパーを用いて細胞をはがし、1.5 mLサンプルチューブに回収した。回収した細胞溶解液を遠心(4℃、15,000 rpm、5分間)して遠心分離し、その上清45μLを回収した。得られた上清を用いてルシフェラーゼ活性測定(RLU/mL)を測定した。さらにBCA法によるタンパク定量(mg/mL)を行い、単位ポリペプチド量当たりのルシフェラーゼ活性(RLU/ mg protein)を算出し、ルシフェラーゼ発現量を比較した。結果を図1に示す。

0072

図1に示される様に、プロタミンによりコアを形成し、DOPE/CHEMSにより封入したリポソームの場合には、Chol-GALA修飾時において2%修飾時に遺伝子発現が最大となるが、その遺伝子発現は3倍程度であった。一方、STR-KALAを修飾した際には遺伝子発現レベルは10倍以上に上昇し、特に5%修飾時においては100倍以上発現が促進することが明らかとなった。また、ポリロタキサンによりコアを形成し、DOPE/PAの脂質で封入した際にも最適値である1.5%修飾時においてR8のみの修飾に比較して10倍以上遺伝子発現の発現上昇が得られた。

0073

例2
(a)正電荷コアT-MENDの調製
3.3 mMカルジオリピン(CL) 84 μL及び10 mMDOPE 27.5 μLをCL:DOPE=1:1となるようにガラス試験管に加えた。1 mg/mLのSTR-KALAを総脂質濃度の0.5%、1%、2%、及び5%の修飾量となるようにそれぞれ加え、さらに全量が200μLとなるようにクロロホルムを加えた後、デシケーターで減圧乾燥して溶媒を留去させて脂質膜を得た。この脂質膜に総脂質濃度が0.55 mMとなるように10 mMHEPES溶液を1mL加え、水和した脂質膜をバスタイプソニケーターを用いてガラス試験管から剥離させた後、プローブ型ソニケーターを用いて10分間超音波処理した。超音波処理後、遠心分離(15,000 rpm、20℃、5分間)して上清を回収する操作を3回行い、STR-KALA濃度の異なる4種類のリポソーム(SUV1−1〜5)を回収した。

0074

10 mM PA 12.2μL及び10 mMDOPE 42.8μLをPA:DOPE=7:2となるようにガラス試験管に加えた。1 mg/mLのSTR-KALAを総脂質濃度の1.5%の修飾量となるように加え、さらに全量が200μLとなるようにクロロホルムを加えた後、デシケーターで減圧乾燥して溶媒を留去させて脂質膜を得た。この脂質膜に、総脂質濃度が0.55 mMとなるように10 mMHEPES溶液を1 mL加え、水和した脂質膜をバスタイプソニケーターを用いてガラス試験管から剥離させた後、プローブ型ソニケーターを用いて10分間超音波処理した。超音波処理後、遠心分離(15,000 rpm、20℃、5分間)して上清を回収する操作を3回行い、リポソームを回収した(SUV2)。

0075

例1(c)で得られたコンパクション体100μlとSUV1−1〜5の各溶液200μlを1.5 mLサンプルチューブ内で混合し、5種類の2枚膜リポソーム(D-MEND)を形成させた。D-MEND形成後、正電荷を付加するために2 mg/mL STR-R8をSUV1総脂質量に対して20 mol%相当添加し、室温で30分程度インキュベートして、R8修飾を行った。

0076

さらに、上記インキュベーション後の各溶液200μlに対し、400μl のSUV2を加えて1.5 mLサンプルチューブ内で混合して4枚膜MEND(T-MEND)を形成させ、さらに2 mg/mL STR-R8をSUV2総脂質量に対して10mol%相当添加し、室温で30分程度インキュベートすることで、内膜外膜の両方にKALAとR8を有するカチオン性T-MENDを作製した。

0077

(b)負電荷コアT-MENDの調製
ルシフェラーゼをコードしているプラスミド(pDNA、BD Biosciences Clontech社製)を10 mMHEPES緩衝液に0.1 mg/mLとなるように溶解した。0.1 mg/mL pDNA 60μLにアミン濃度換算で1 mMのポリロタキサン溶液(平均ポリエチレングリコール鎖長4,000、シクロデキストリン貫通数29、1鎖内平均カチオン数46) 90μLを少量ずつ攪拌しながら滴下して、ポリロタキサンとpDNAのコンパクション体を調製した(N/P比は0.5)。

0078

3.3 mMカルジオリピン(CL) 84μL及び10 mMDOPE 27.5μLをCL:DOPE=1:1となるようにガラス試験管に加えた。2 mg/mLの STR-R8を総脂量の20 mol%相当、及び1 mg/mLの STR-KALA溶液を総合脂質濃度の0あるいは5 mol%となるように加え、さらに全量が200μLとなるようにクロロホルムを加えた後、デシケーターで減圧乾燥して溶媒を留去させて脂質膜を得た。この脂質膜に、総脂質濃度が0.55 mMとなるように10 mMHEPES溶液を1 mL加え、水和した脂質膜をバスタイプソニケーターを用いてガラス試験管から剥離させた後、プローブ型ソニケーターを用いて10分間超音波処理した。超音波処理後、遠心分離(15,000 rpm、20℃、5分間)して上清を回収する操作を3回行い、リポソームを回収した(SUV1−0、1−5)。

0079

10 mM PA 12.2μL及び10 mMDOPE 42.8μLをPA:DOPE=7:2となるようにガラス試験管に加え、1 mg/mLのSTR-KALAを総脂質濃度の0あるいは1.5%分(0あるいは8.3μl)の修飾量となるように加え、さらに全量が200μLとなるようにクロロホルムを加えた後、デシケーターで減圧乾燥して溶媒を留去させて2種類の脂質膜を得た。この脂質膜に、総脂質濃度が0.55 mMとなるように10 mMHEPES溶液を1 mL加え、水和した脂質膜をバスタイプソニケーターを用いてガラス試験管から剥離させた後、プローブ型ソニケーターを用いて10分間超音波処理した。超音波処理後、遠心分離(15,000 rpm、20℃、5分間)して上清を回収する操作を3回行い、リポソームを回収した(SUV2−0、2−1.5)。

0080

上記N/P=0.5でpDNAとポリロタキサンとから得られるコンパクション体100μl及びSUV1−0、1−5溶液200μlを1.5 mLサンプルチューブ内で混合し、2枚膜リポソーム(D-MEND-0、-5)を形成させた。D-MEND形成後、2 mg/mL STR-R8をSUV1の総脂質量に対して5 mol%相当添加し、室温で30分程度インキュベートした。

0081

さらに、上記インキュベーション後の溶液(D-MEND-0、-5)200μlに対し、それぞれ400μl のSUV2−0あるいは2−1.5を1.5 mLサンプルチューブ内で混合し、4枚膜MEND(T-MEND)を形成後、2 mg/mL STR-R8をSUV2総脂質量に対して10 mol%相当を添加し、室温で30分程度インキュベートして、内膜と外膜の両方にKALAとR8を有するアニオン性T-MENDを作製した。

0082

(c)形質転換細胞の作製ならびに発現量の測定
例1(e)に記載の方法に従って、上記(a)及び(b)でそれぞれ調製した2種のT-MENDを用いて形質転換細胞を作製し、さらに例1(f)に記載の方法に従って、各細胞におけるルシフェラーゼの発現量を測定した。その結果、カチオン性T-MENDにおいて、KALAの修飾密度依存的に封入された遺伝子発現の上昇が認められた(図2)。また、アニオン性T-MENDに対しても、内膜と外膜をKALAで修飾することで遺伝子発現が10倍以上に上昇した。特にアニオン性T-MENDは市販の遺伝子導入試薬であるLipofectaminePLUSよりも高い遺伝子発現を示した。

0083

例3
(a)抗原提示量の評価
種々のベクターを用いて、抗原である卵白抗原(Ovalbumin)をコードするプラスミドDNAを樹状細胞に導入し、トランスフェクションから24時間後に樹状細胞を回収し、培地で洗浄後96 well plateに1×104 cells/100μLの樹状細胞と2×105 cells/100μLのB3Z(MHC-I)細胞を播種し、16時間共培養した。その後PBSで細胞を洗い、CPRG buffer(5 mM CPRG(Roche Diagnotics), 0.125% NP-40(Igepal CA-630, SIGMA), 9 mM MgCl2となるように二回蒸留水に溶解し、1 mLずつ分注して-20℃で遮光保存したもの)100μLを添加して37℃で4時間インキュベートした。その後、Benchmark Plus microplate spectrophotometer(Bio-Rad)を用いて595 nmの吸光度を測定した。未処理の樹状細胞のみの吸光度を1として規格化した。結果を図3に示す。

0084

Ovalbumin遺伝子を導入した後に抗原への提示を評価した結果、市販のlipofectaminePLUSや従来型のT-MENDではコントロール(遺伝子導入なしの樹状細胞)と比較して優位な抗原提示は観察されたかった(点線)。一方、図2においてもっとも高い遺伝子発現を有するKALA修飾T-MENDにおいては抗原提示が観察された。この結果から、本発明の脂質膜構造体は樹状細胞の核内に遺伝子を極めて効率的に導入することができ、導入された遺伝子から発現した抗原タンパク質を樹状細胞表面に抗原提示できることが示された。

0085

例4:マイクロアレイ解析を用いた免疫関連遺伝子群遺伝子発現解析
(a) R8-MEND及びR8/KALA-MENDの調製
ベクターのコアとして、pDNA溶液、Protamine溶液をそれぞれ、10 mMHEPESbufferで0.1 mg/mLに希釈した。0.1 mg/mL Protamine 150 μLに対し、0.1 mg/mL pDNA 100 μLを攪拌しながら少量ずつ滴下してProtamineとpDNAのコンパクション体を調製した(N/P比=2.2)。脂質膜は、DOPE:CHEMS=9:2となるように、1 mM DOPE 112.5 μL、1 mM CHEMS 25 μLをガラス試験管に加え、全量が200 μLとなるようにCHCl3を加えた後、デシケーターで減圧乾燥し、溶媒を留去して脂質膜を得た。脂質膜に総脂質濃度が0.55 mMとなるようにコンパクション体溶液を添加した後、R8-MENDにおいてはSTR-R8単独を総脂質量の5mol%、、R8/KALA-MENDにおいてはSTR-KALA、STR-R8を総脂質の5 mol%となるようにそれぞれ添加し、室温で10 min静置し水和させた後、ソニケーターで1 min超音波処理した。

0086

(2)RNA調製
トランスフェクション2日前にJAWS-II細胞を4×105 cells/wellとなるように6 well plateに播種した。細胞をPBS(-)500 μLでwashした後、αMEM(血清なし、抗生物質なし)によって2 μg/mL(プラスミドDNA濃度相当)に希釈したMEND溶液を1 mL細胞に加え、37℃で5%CO2インキュベーター内に静置した。トランスフェクションしてから1、3、及び6時間後に細胞をPBS(-) 500 μLで洗浄し、サンプルごとに合計1 mLとなるようにTRIzol Reagent(invitrogen社)を加えた。Cell scraperで細胞をはがし、エッペンドルフチューブに回収した。1分間ボルテックスにより混合して-80℃で保存した。mRNAの精製に際し、各サンプルを室温で解凍した後、クロロホルムを200 μL加え、15 秒間 ボルテックスにより混合した。室温で3分間インキュベーションした後、4℃環境下で12,000 rpmで15 min遠心した。上清を他のエッペンドルフチューブに移し、イソプロパノールを500 μL加えた後に室温で10 minインキュベーションした。4℃環境下で12,000 rpm、10 min遠心した後、上清を除き、pelletに75%エタノールを1 mLを加えてボルテックスにより混合し、遠心した(4℃、12,000 rpm、4分間)。上清を除去し、ジエチルピロカーボネート(DEPC)処理水を25 μL加え、10 min インキュベーションし、Nano Drop(Thermo Scientific社)を用い、260 nmにおける吸光度よりRNA量を定量した。

0087

(3)RNAのラベル化
DNAマイクロアレイ実験用のラベル化RNAをQuick Amp Labeling Kit、one-color(Agilent)を用いて添付プロトコルに従い調製した。Total RNA 500 ngから逆転写反応によりcDNAを合成した。次に、cDNAからin vitro転写反応によってCyanine3(Cy3)-CTPでラベルしたcRNAを調製した。未反応のCy3を除去するために、ラベル化cRNAをRNeasy Mini Kitを用いて精製した。得られたCy3ラベル化cRNA溶液について、Nano Dropを用いて濃度とCy3取り込み量を算出し、品質を確認した。

0088

精製したラベル化cRNAプローブのCy3の取り込み効率(pmol/μg)はcRNA濃度(ng/μL)とCy3の取り込み量(pmol/μL)から算出した。計算方法を以下に示す。
(1)以下の式で、cRNA濃度(ng/μL)を算出した。
cRNA濃度(ng/μL)=OD260×10※×40(μg/mL)
※ NanoDropの光路長は1 mm
(2)以下の式で、Cy3の取り込み量(pmol/μL)を算出した。
Cy3取り込み量(pmol/μL)=(OD550×10※×1000)/(150 mM-1cm-1)
※ NanoDropの光路長は1 mm
(3)以下の式で、Cy3の取り込み効率(pmol/μg)を算出した。
Cy3取り込み効率(pmol/μg)= Cy3取り込み量(pmol/μL)/ cRNA濃度(ng/μL)
全Cy3ラベル化cRNAサンプルに関して、cRNAの収量が1.65 μg以上かつCy3の取り込み効率が9 pmol/μg以上であることを確認した。

0089

(4)DNAマイクロアレイ
マウスオリゴDNAマイクロアレイ(4x44K)へのラベル化cRNAのハイブリダイゼーションは、Gene Expression Hybridization Kitを用いて添付プロトコルに従い実験を行った。ラベル化cRNAをランダムに切断してフラグメント化し、1.65 μgのRNAを使用してハイブリダイゼーション溶液を調製した。マイクロアレイスライドにサンプルをアプライし、65℃、17時間ハイブリダイゼーションを行った後、10% Triton X-102を含むExpression Wash Bufferでスライドを洗浄した。

0090

マイクロアレイスライドをAgilent DNA Microarray Scanner(Agilent Technologies)を用いてスキャンした。Cy3の測定には532 nmのレーザーを使用した。作成したTIFF画像をFeature Extraction Softwareで読み込み、各スポットの情報(遺伝子プロファイル)をtext file形式で保存した。取得した発現プロファイルをGeneSpringGX11へインポートし、解析を行った。

0091

スポットとして検出した41220遺伝子のうち、信頼性の低い遺伝子の除去(Quality Control)を行い、解析対象となる21995遺伝子(Qualified genes)の抽出を行った。
(1)コントロールスポットの除去
解析ソフトGeneSpring GX11にデータを取り込むと、アレイ四隅を認識させるスポットなどを含むコントロールスポットまで検出するため、これらのスポットの除去を行った。
(2)フラグの除去
スポットの検出時に、形が乱れている、蛍光が飽和している、などシグナルの状況に応じてPresent(P)、Marginal(M)、Absent(A)の3段階のフラグが評価される。(P、M、Aの順に信頼度が低下する)。全サンプル中少なくとも1サンプルでPresentの評価が下された遺伝子を抽出した。
(3)低発現遺伝子の除去
発現レベルの低い遺伝子は、同一サンプル同士の発現レベルもばらつくため、除去を行った。シグナル強度の絶対値であるRaw値が全サンプル中少なくとも1サンプルで、100以上の遺伝子を抽出した。以上のQuality controlを行った後、21995遺伝子を対象として解析を進めた。

0092

免疫に関わる遺伝子群を抽出し、R8-MENDとR8/KALA-MEND間で遺伝子発現比較を行った。本結果では未処理の細胞における各遺伝子の発現を1として規格化した際の値を示す。その結果、R8-MENDと比較し、R8/KALA-MENDにおいて免疫関連遺伝子の発現上昇倍率は高く、多くの遺伝子で時間依存的に上昇していることが認められた。このことから、MEND表面に修飾したKALAは、樹状細胞に対してアジュバント効果を示すことが明らかとなった(図4)。

0093

例5:タンパク封入KALA修飾リポソームのCTL活性
(1)抗原封入R8修飾リポソーム、KALA修飾リポソームの調整
ガラス試験管にEPC/Chol/CHEMS(モル比70:20:10)からなる脂質薄膜を調製し、OVA(5 mg/mL, 10 mM HB)を脂質濃度が10 mMとなるように添加後、室温で15分間水和した。水和後、ボルテックスにより混合し15 mLコニカルチューブに移し、凍結融解を5回行った。400 nmのメンブレンフィルターエクストリュージョンし、超遠心(43,000 rpm, 4℃, 30 min)して上清を除去後、ペレットをHBG 200 μLで静かにすすぎ、適量のHBGに再懸濁した。下記の項にある手順に従い、OVA濃度及び脂質濃度を定量した。実験に使用する前にSTR-R8(10 mg/mL)又はSTR-KALA(10 mg/mL)を脂質モル濃度の7.5%添加し、室温で30分間以上インキュベートすることで、R8-Lip及びKALA-Lipを調製した。R8-Lipの粒子径は189.5 nm、PDIは0.095、ζ電位は47.8mVであり、KALA-Lipの粒子径は188.4 nm、PDIは0.317、ζ電位は33.7 mVであった。

0094

リポソーム溶液25 μL及び、検量線用のOVAを滅菌水で希釈して1 mLとしたものに、0.15% sodium deoxycholate 100 μLを添加後、室温で10分間インキュベーションした。72%トリクロロ酢酸100μLを添加し、遠心後(3,500 rpm, 4℃, 20〜30 min)上清を除去した。得られたペレットを0.5% SDS -0.1 N NaOH 50 μLに溶解しBCA assay reagent 1 mLを添加して、プロトコールに従い定量した。脂質濃度はリン脂質C-テストワコー(和光純薬工業)により定量した。

0095

(2)イン・ビボCTL(cytotoxic T lymphocyte)活性
C57BL/6マウス(雌、7-9週齢)に50 μgのOVAを内封したR8-LipもしくはKALA-Lipを皮下投与した(26G針)。免疫から1週間後に、以下の方法で調製した標的細胞を投与した。頚椎脱臼したnaiveマウスより脾臓を摘出し、RPMI1640培地3〜5 mLの入ったシャーレ中で細胞をほぐし2.5 mLシリンジを用いて回収後、ナイロンメッシュを通して50 mLコニカルチューブに移した。遠心(1600〜1700 rpm、4℃、5分)後、上清を除去し、ACKLysing buffer(Lonza, Walkersville, MD) 1 mLに懸濁して室温で5 分間インキュベートし溶血した。RPMI1640培地9 mLを添加後遠心し、さらに培地 10 mLで洗浄後、20 mLに懸濁しナイロンメッシュを通して50 mLコニカルチューブ2本に移した。細胞を計数後遠心し、培地に再懸濁した(107 cells/mL)。2本のうち1本にOVA257-264ペプチド(1 mM、終濃度5 μM)を添加し、この細胞懸濁液を37℃、5% CO2条件下で60分間インキュベートした。培地10 mL及びPBS10 mLで洗浄後、OVA257-264ペプチドによってパルスした細胞群は5 μM CFSE(Molecular probe) (CFSEHigh) により、パルスしていない細胞群は0.5 μM CFSE (CFESLow)を含むPBSに3×107 cells/mLとなるよう懸濁し、37℃で10分間インキュベーションした。RPMI1640培地10 mLで2回、PBS 10 mLで2回洗浄後、最終的にPBSに懸濁した(5×107 cells/mL)。投与直前に異なる濃度で染色した2種の細胞を等量混合し、免疫したマウスに尾静脈より投与した(1×107 cells/200 μL/mouse、26G針)。

0096

標的細胞を投与してから20時間後に脾臓を摘出し、脾臓を上記の方法で溶血後、RPMI1640培地10 mL及びPBS10 mLで洗浄しFACSbuffer 5 mLに懸濁した。調製した細胞懸濁液をナイロンメッシュを通してFACSチューブに移し、フローサイトメーターによってCFSE陽性細胞数を測定した。低濃度で染色した細胞(CFSElow)について、7,500個の細胞を解析した。CTL活性はCFSEHighとCFSELowの細胞数を比較して算出した。実験間の誤差は、naiveマウスにおけるCFSEHigh/CFSELow比により補正した。

0097

結果を図5に示す。縦軸はCTL活性を示し、CTLの標的となる細胞(OVA257-264ペプチドによってパルスした細胞群)のうち何%の細胞が殺されたかを示す。標的としている細胞(CFSEHigh)はMHCクラスIにOVAペプチドを提示しているので、本評価における細胞殺傷効果はOVA特異的なCTLによるものである。

0098

R8-Lipは特異的なMHCクラスI提示及びin vivoにおける抗腫瘍活性を誘導可能なキャリアであることが示されている(Nakamura, T. et al. Mol. Ther., 16, pp.1507-1514, 2008)。上記の結果で示されるように、リポソーム表面にR8の代わりにKALAを修飾することでCTL活性の飛躍的な向上が認められた。R8-Lip、KALA-Lip共にアジュバント未使用であるが、KALA-LipのCTL活性は、R8-Lipにアジュバントとして知られているCpG配列含有オリゴヌクレオチドを搭載した場合のCTL活性に匹敵するものであった。この結果は、KALAが高いアジュバント機能を有するという例4の結果を機能の面から支持するものである。

0099

例6:導入プラスミドのベクター改変によるKALA−MENDの遺伝子発現活性の増強
(a)各種プラスミドDNAの調製
以下の4種類のプラスミドDNA:(1)プラスミドDNAのバックボーンにCpG配列を含み、かつマーカー遺伝子であるルシフェラーゼ配列の開始コドンからストップコドンにもCpG配列を有するプラスミドDNA(pcDNA3.1-Luc(+);CpG配列合計425個)、(2)プラスミドDNAのバックボーン及びルシフェラーゼ配列の開始コドンからストップコドンまでの間のいずれにもCpG配列を含まないもの(pCpGfree-Luc(0); CpG配列合計0個)、(3)プラスミドDNAのバックボーンにCpG配列を含み、ルシフェラーゼ配列の開始コドンからストップコドンにはCpG配列を含まないもの(pcDNA3.1-Luc (0);CpG配列合計332個)、及び(4)プラスミドDNAのバックボーンにはCpG配列を含まず、ルシフェラーゼ配列の開始コドンからストップコドンにはCpG配列を含むもの(pCpGfree-Luc(+);CpG配列合計98個)を作成した。

0100

バックボーンにCpG配列を含む発現プラスミドDNA(上記(1)及び(3))の構築にはInvitrogen社から購入した発現ベクターpcDNA3.1を用いた。また、CpG配列を含まないバックボーンからなる発現プラスミドDNA(上記(2)及び(4))の構築には、Invivogen社から購入した発現ベクターpCpGfree-mcsを用いた。

0101

プラスミドDNA(1)に関しては、CpG配列を含むルシフェラーゼを含むDNAフラグメントプロメガ社のpGL3-basicvectorの制限酵素Hind III / Xba I切断により得た。本フラグメントをpcDNA3.1ベクターのHind III / Xba Iサイトに導入した(pcDNA3.1-Luc(+))。

0102

プラスミドDNA(2)に関しては、pCpGfree-mcsのマルチクローニングサイト(BglII-KpnI-EcoO109I-NcoI-NheI)をBglII/NheIにより処理し、本制限酵素切断部位相補的末端を有する2本鎖DNAフラグメントを挿入することで、新たなマルチクローニングサイト(BglII-PvuII-NcoI-XbaI-NheI)を作成した(pCpGfree-NEWmcs)(図6)。pORF-Luc::Sh-ΔCpG(invivogen社)のNcoI/NheI処理により得たCpG配列を持たないルシフェラーゼコード遺伝子をpCpGfree-NEWmcsのNcoI/NheIサイトに導入した(pCpGfree-Luc(+1))。本方法で作成したプラスミドDNAは、ルシフェラーゼ遺伝子のコドンから数えて12番目後に一つだけCpG配列を有している(図7)。残存CpG配列は、pCpGfree-Luc(+1)からDraIII/NheI処理によりストップコドン並びにCpG配列を含む配列部分切り出し、本制限酵素切断部位に相補的な末端を有し、かつCpG配列部分に変異を加えたオリゴヌクレオチドを挿入することで除去した。この際、ストップコドン直下に存在するEcoRIサイトは、EcoRVサイトに置き換えを行った(pCpGfree-Luc(0))(図8)。

0103

プラスミドDNA(3)に関しては、pcDNA3.1のBamHI/RVサイトに対して、プラスミドDNA(2)の構築において作成したpCpGfree-Luc(0)よりBglII/EcoRV切り出したCpGフリーのルシフェラーゼ遺伝子を挿入することで作成した(pcDNA3.1-Luc(0))。

0104

プラスミドDNA(4)に関しては、pCpGfree-NEWmcsのPvuII/XbaI切断サイトに対して、プラスミドDNA(1)の構築において作成したpcDNA3.1-Luc(+)よりPmeI/XbaI処理によって得られたルシフェラーゼコード遺伝子を挿入することで作成した(pCpGfree-Luc(+))。

0105

(b)マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)の単離・誘導
頚椎脱臼したC57BL/6マウス(6〜8週齢)より大腿骨および頸骨を摘出し、70%エタノールで軽く消毒した後、PBSに浸した。骨の両端を切断し、培地入りの1 mLシリンジ(26G針)で骨髄細胞をRPMI1640培地中に押しだした。細胞懸濁液を40 μmのセルストレイナーFALCON)を通して50 mLコニカルチューブに移した。遠心(450 g、4℃、5分間)後上清を除去し、タッピングして細胞を分散させた後、ACKLysing Buffer1 mLを添加、混合し、室温で3〜5分間静置した。培地10 mLを添加後、遠心して上清を除去し、さらに培地10 mLで2回洗浄した。次に、細胞を培地10 mLに懸濁し、10 cm細胞培養ディッシュ(FALCON)に添加し、37℃、5% CO2条件下で4時間以上培養した。軽くピペッティングして浮遊細胞のみを50 mLコニカルチューブに回収し、遠心、上清除去後、培地10 mLに懸濁して計数した。1×106 cells/mLとなるよう培地に懸濁し、GM-CSF(終濃度10 ng/mL)を添加後、24 well plate(Corning, NY)に1 mLずつ播種し、37℃、5% CO2条件下で2日間培養した。2日後および4日後に細胞の凝集塊を残し浮遊細胞を除去した後、新しいGM-CSF含有RPMI1640培地1 mLを添加した。GM-CSF存在下で培養開始後6〜8日目の浮遊及び弱付着細胞未成熟樹状細胞として実験に用いた。CD11c抗体(PE anti-mouse CD11c, Clone: N418, BioLegend)を用いた評価では純度は85〜90%であった。

0106

(c)KALA−MENDの調製
上記(a)で得られた各種プラスミドDNAを10 mMHEPES緩衝液に0.1 mg/mLとなる様に溶解した。0.1 mg/mL(10 mM HEPES緩衝液)のプロタミン(Protamine)溶液150 μLにpDNA溶液を100μL少量ずつ攪拌しながら滴下し、プロタミンとpDNAのコンパクション体を調製した(N/P比は2.2)。

0107

DOPE:CHEMS=9:2となるように1 mM DOPE 112.5 μL及び1 mM CHEMS 25 μLをガラス試験管に加えた。1mg/mLステアリル化KALA(STR-KALA)を総脂質濃度の5%分の修飾量となるように加え、さらに全量が200 μLとなるようにクロロホルムを加えた後、デシケーターで減圧乾燥して溶媒を留去させて脂質膜を得た。この脂質膜に、総脂質濃度が0.55 mMとなるようにコンパクション体を添加し、室温で10 min静置し水和させた後、ソニケーターで1 min超音波処理した。さらにステアリル化KALA(STR-KALA)(1 mg/mL水溶液を総脂質の5 mol%となるように添加し、室温で10 分間静置した。

0108

R8-MENDの調製においては、DOPE:CHEMS=9:2となるように1 mM DOPE 112.5 μL及び1 mM CHEMS 25 μLをガラス試験管に加えた後、さらに全量が200 μLとなるようにクロロホルムを加え、デシケーターで減圧乾燥して溶媒を留去させて脂質膜を得た。この脂質膜に対して総脂質濃度が0.55 mMとなるようにコンパクション体を添加し、室温で10 min静置し水和させた後、ソニケーターで1 min超音波処理した。ステアリル化R8(STR-R8)(2 mg/mL水溶液を総脂質の5 mol%となるように添加し、室温で10 分間静置した。

0109

(d)BMDCにおける遺伝子発現活性評価
上記(b)に示す方法により誘導したBMDCを24wellプレートに4×105 cells/wellとなるように播種した。調製したMENDをpDNA量が0.4 μg/well含むようにRPMI1640(血清なし、抗生物質なし)で希釈し、500 μLとなるように調製した。各wellにMEND溶液をアプライし、37℃、5% CO2環境下でインキュベーションした。3時間後にRPMI 1640(血清、抗生物質有り) 500μLを各wellに添加し、さらに21時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。ルシフェラーゼ活性の測定に関して、浮遊している細胞群はメディウムごと回収し、遠心(4℃、500 g、5分間)し、上清を除去することで集めた。各wellに残っている細胞、及び先に回収した浮遊細胞群にReporter Lysis Buffer(1×)を添加して両者を混合した後、合計75 μLにした後、ピペッティングを行い、-80℃で凍結した。-80℃で凍結させたサンプルを解凍させた後、セルスクレーパーを用いて細胞をはがし、エッペンドルフチューブに回収した。回収した細胞溶解液を15,000 rpm、4℃、2分間遠心分離し、その上清50 μLを回収した。得られた上清を用いてルシフェラーゼ活性測定(RLU/mL)を測定した。さらにBCA法によるタンパク定量(mg/mL)行い、単位タンパク質量当たりのルシフェラーゼ活性(RLU/ mg protein)を算出した。

0110

結果を図9に示す。左図は(a)で作成した(1)pcDNA3.1-Luc(+)及び(4)pCpGfree-Luc(0)を用いた場合におけるR8-MEND、KALA-MENDのBMDCにおける遺伝子発現活性を示す。R8-MEND、KALA-MEND共に、pCpGfree-Luc(0)を用いた際に高い遺伝子発現活性促進効果が認められた。特に、KALA-MENDに(2)pCpGfree-Luc(0)を封入した際には、JAWS IIを用いた例2及び3の結果を踏まえて考えられる抗原提示が可能となる遺伝子発現レベル(107 RUL/mg protein程度)が達成できることが明らかとなった。

0111

インサートのみ((3);pcDNA3.1-Luc(0))からCpG配列を除いた場合には遺伝子発現の上昇は認められなかった。一方、バックボーン側((4);pCpGfree-Luc(+))からCpG配列を除いた場合には遺伝子発現活性の促進が認められた。このことから、プロモーターの選択として、the mouse CMV enhancer 及び the human elongation factor 1 alpha core promoterの組み合わせが樹状細胞への遺伝子導入に有用であることが示された。また、CpG配列を完全に除いた(2)pCpGfree-Luc(0)のほうが(3)pCpGfree-Luc(+)と比較して遺伝子発現が高いことから、the mouse CMV enhancer 及び the human elongation factor 1 alpha core promoterをもち、かつCpG配列を完全に除いたプラスミドDNAが樹状細胞に最も適していることが示された。

0112

例7:がん予防ワクチン効果
(a)CpGフリーOVA発現プラスミドDNAの調製
CpG配列をすべて除いた抗原(OVA)遺伝子配列を設計し(配列表の配列番号2に示す1161bpのDNA配列)、カスタム合成を行った(TAKARA)。本配列を、pCpGfree-NEWmcsのマルチクローニングサイトのうち、NcoI/NheIサイトにサブクローニングした(pCpGfree-OVA(0))。

0113

(b)BMDCへの抗原(OVA)発現プラスミドDNAの遺伝子導入とアジュバントによる刺激
例6(b)に記載した方法により単離・分化された樹状細胞を24wellプレートに4×105 cells/wellとなるように播種した。CpGフリーのOVA発現プラスミドDNA(pCpGfree-OVA(0))を用いて調製されたKALA-MENDを例6(c)に記載した方法に従って調製した。MENDをpDNA量が0.4 μg/well含むようにRPMI1640(血清なし、抗生物質なし)で希釈し、500 μLとなるように調製した。各wellにMEND溶液をアプライし、37℃、5% CO2環境下でインキュベーションした。3時間後にRPMI 1640(血清、抗生物質有り) 500μLを各wellに添加し、さらに21 時間後に細胞を回収した。浮遊している細胞及びPBS中でピペッティングすることによってはがした付着細胞をまとめ、遠心(4℃、500 g、5分間)することで回収した。

0114

CpGオリゴヌクレオチドをアジュバントとしてBMDCを活性化する際には、KALA-MENDのトランスフェクション前に、1時間 RPMI1640(血清なし、抗生物質なし)中で1 μg/mLの濃度でBMDCとインキュベーションを行った。

0115

(c)抗腫瘍効果の評価
抗原(OVA)発現腫瘍細胞(E.G7-OVA細胞)を移植する14日前、7日前に、C57BL/6マウス(雌、8週齢)に(1)DCのアジュバントであるCpGのみを作用させたBMDC、(2)KALA-MENDを用いて非抗原タンパクであるルシフェラーゼを発現させたBMDC、(3)KALA-MENDを用いて抗原タンパク(OVA)を発現させたBMDC、(4)KALA-MENDを用いて抗原タンパク(OVA)を発現させ、かつCpGアジュバントにより活性化したBMDCを4×105 cells/40μLPBSになるように調製し、全量をマウスの足の裏に投与した。2回目の免疫から1週間後に8×105個のE.G7-OVA細胞を左脇腹に移植し、経時的に腫瘍体積を測定した。腫瘍体積(tumor volume (mm3))は長径×短径×短径×0.52の式により算出した。

0116

結果を図10に示す。PBSを投与したコントロール群と比較して、CpG配列によるアジュバント刺激をかけることにより腫瘍増殖の減少が認められたが、本効果は、KALA-MEND(非抗原タンパク;ルシフェラーゼ発現)のほうで高いことが明らかとなった、このことは、KALA−MEND自体が高いアジュバント効果を有するという例4及び5の結果を支持するものである。また、アジュバントであるCpGの有無に関わらず、OVA発現プラスミドDNAをKALA-MENDを用いて導入することにより、ほぼ同等の極めて高い腫瘍予防効果が認められた。このことから、KALA-MENDは、細胞障害活性を示すのに十分な抗原発現レベルをBMDCに付与することができ、同時にアジュバント効果も有していること明らかとなった。

0117

例8:腫瘍増殖抑制効果
(a)BMDCへの抗原(OVA)発現プラスミドDNAの遺伝子導入
例6(b)に記載した方法により単離・分化された樹状細胞を24wellプレートに4×105 cells/wellとなるように播種した。CpGフリーのOVA発現プラスミドDNA(pCpGfree-OVA(0))を用いて調製されたKALA-MENDを例6(c)に記載した方法に従って調製した。MENDをpDNA量が0.8 μg/well含むようにRPMI1640(血清なし、抗生物質なし)で希釈し、500 μLとなるように調製した。各wellにMEND溶液をアプライし、37℃、5% CO2環境下でインキュベーションした。3 時間後にRPMI 1640(血清、抗生物質有り) 500μLを各wellに添加し、さらに21時間後に細胞を回収した。浮遊している細胞及びPBS中でピペッティングすることによってはがした付着細胞をまとめ、遠心(4℃、500 g、5分間)することで回収した。

0118

(b)抗腫瘍効果の評価
8×105個の抗原(OVA)発現腫瘍細胞(E.G7-OVA細胞)をC57BL/6マウス(雌、8週齢)の左脇腹に移植して15日目及び22日目に、(1)未処理のBMDC、(2)KALA-MENDを用いて非抗原タンパクであるルシフェラーゼを発現させたBMDC、(3)KALA-MENDを用いて抗原タンパク(OVA)を発現させたBMDCを40μLPBS中に4x 105個のBMDCが入るように懸濁し、足の裏に投与した。経時的に腫瘍体積を測定し、腫瘍体積(tumor volume (mm3))は長径×短径×短径×0.52の式により算出した。

実施例

0119

未処理のDC及び非抗原タンパク発現BMDCでは抗腫瘍効果は認められなかったが、OVA発現KALA-MENDにおいては、未処理マウスと比較して優位な抗腫瘍増殖効果が認められた。従って、KALA-MENDは、腫瘍ができた後に投与しても抗腫瘍効果が得られることが明らかとなった。

0120

本発明により提供される脂質膜構造体は樹状細胞を含む免疫細胞などの任意の細胞の核内に効率的に移行することができ、核内において封入された核酸などの物質を効率的に放出して該核酸によりコードされるポリペプチドを発現させることができること、さらには、効率的なアジュバント効果も発揮することができることから、所望のポリペプチドに対して有効な免疫療法を行うことができるという特徴がある。

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