図面 (/)

技術 無方向性電磁鋼板及びその製造方法

出願人 新日鐵住金株式会社
発明者 山崎修一久保田猛黒崎洋介藤倉昌浩島津高英
出願日 2011年2月15日 (9年10ヶ月経過) 出願番号 2011-527118
公開日 2013年6月17日 (7年6ヶ月経過) 公開番号 WO2011-102328
状態 特許登録済
技術分野 金属の化成処理 金属質材料の表面への固相拡散 電磁鋼板の製造 その他の表面処理 軟質磁性材料
主要キーワード 加工耐性 断面観察用 応力付与型 励磁条件 有機樹脂エマルジョン クロム酸水溶液 方向特性 各含有量
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2013年6月17日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (8)

課題・解決手段

無方向性電磁鋼板は、地鉄(1)と、地鉄(1)の表面上に形成された1g/m2以上6g/m2以下の応力付与型絶縁被膜(2)と、を有する。地鉄(1)の表面に、Si、Al及びCrからなる群から選択された少なくとも一種酸化物を含有し、厚さが0.01μm以上0.5μm以下の酸化物層(3)が形成されている。

概要

背景

電気機器の効率化が強く望まれており、電気機器に含まれるモータ鉄心材料に用いられる無方向性電磁鋼板に対して更なる低鉄損化が要求されている。そこで、Si及びAl等を無方向性電磁鋼板に含有させて固有抵抗を高め、かつ結晶粒径を大きくする技術、熱延板焼鈍及び冷延率の調整により集合組織を改善する技術等について検討が行われている。

また、無方向性電磁鋼板はその表面に平行な方向では結晶方位ランダム電磁鋼板であるが、無方向性電磁鋼板の用途によっては、表面に平行なある一方向、例えば圧延方向の磁気特性が他の方向の磁気特性よりも優れたものが好ましい場合もある。例えば、モータのステータとして分割コアを用いる場合には、上述のような電磁鋼板を分割コアに用いることが好ましい。圧延方向の磁気特性が優れた電磁鋼板としては方向性電磁鋼板も考えられるが、方向性電磁鋼板の表面にはグラス皮膜が存在するため、打ち抜き加工が困難である。また、無方向性電磁鋼板と比較すると方向性電磁鋼板の製造にはより多くの制御が必要であり、方向性電磁鋼板は高価である。なお、モータのステータとして分割コアを用いた場合には、磁束の流れの方向に電磁鋼板の容易磁化方向を一致させることができるため、モータの効率を向上させることができる。また、素材である電磁鋼板の歩留まりを向上させ、巻き線充填率を増加させることができる。

しかしながら、分割コア用の無方向性電磁鋼板に関する種々の提案がなされているものの、従来の技術では、十分な圧延方向の磁気特性を得ることが困難である。

概要

無方向性電磁鋼板は、地鉄(1)と、地鉄(1)の表面上に形成された1g/m2以上6g/m2以下の応力付与型絶縁被膜(2)と、を有する。地鉄(1)の表面に、Si、Al及びCrからなる群から選択された少なくとも一種酸化物を含有し、厚さが0.01μm以上0.5μm以下の酸化物層(3)が形成されている。

目的

本発明は、より良好な圧延方向の磁気特性を得ることができる無方向性電磁鋼板及びその製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
1件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

地鉄と、前記地鉄の表面上に形成された1g/m2以上6g/m2以下の応力付与型絶縁被膜と、を有し、前記地鉄は、Si、Al及びCr:総含有量で2質量%以上6質量%以下、及びMn:0.1質量%以上1.5質量%以下、を含有し、前記地鉄のCの含有量が0.005質量%以下であり、前記地鉄の残部がFe及び不可避的不純物からなり、前記地鉄の表面に、Si、Al及びCrからなる群から選択された少なくとも一種酸化物を含有し、厚さが0.01μm以上0.5μm以下の酸化物層が形成されていることを特徴とする無方向性電磁鋼板

請求項2

前記地鉄のAl及びCrの総含有量が0.8質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。

請求項3

前記絶縁被膜が、リン酸塩及びコロイダルシリカを含む塗布液焼き付けにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。

請求項4

前記絶縁被膜が、ほう酸及びアルミナゾルを含む塗布液の焼き付けにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。

請求項5

前記絶縁被膜が、リン酸塩及びコロイダルシリカを含む塗布液の焼き付けにより形成されていることを特徴とする請求項2に記載の無方向性電磁鋼板。

請求項6

前記絶縁被膜が、ほう酸及びアルミナゾルを含む塗布液の焼き付けにより形成されていることを特徴とする請求項2に記載の無方向性電磁鋼板。

請求項7

冷延鋼帯仕上げ焼鈍を行う工程と、前記冷延鋼帯の表面に1g/m2以上6g/m2以下の張力付与型の絶縁被膜を形成する工程と、を有し、前記冷延鋼帯は、Si、Al及びCr:総含有量で2質量%以上6質量%以下、及びMn:0.1質量%以上1.5質量%以下、を含有し、前記冷延鋼帯のCの含有量が0.005質量%以下であり、前記冷延鋼帯の残部がFe及び不可避的不純物からなり、前記仕上げ焼鈍を行う工程は、前記冷延鋼帯のSi及びAlの総含有量をX(質量%)と表したときに、水素に対する水蒸気分圧比が0.005×X2以下となる雰囲気中で前記冷延鋼帯の温度を800℃以上1100℃以下として、前記冷延鋼帯の表面に、Si及びAlからなる群から選択された少なくとも一種の酸化物を含有し、厚さが0.01μm以上0.5μm以下の酸化物層を形成する工程を有することを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項8

前記絶縁被膜を形成する工程は、前記仕上げ焼鈍を行う工程の後に、前記冷延鋼帯の表面に塗布液を塗布する工程と、前記冷延鋼帯の温度を800℃以上1100℃以下として前記塗布液の焼き付けを行う工程と、を有することを特徴とする請求項7に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項9

前記塗布液は、リン酸塩及びコロイダルシリカを含むことを特徴とする請求項8に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項10

前記塗布液は、ほう酸及びアルミナゾルを含むことを特徴とする請求項8に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項11

前記絶縁被膜を形成する工程は、前記仕上げ焼鈍を行う工程の前に前記冷延鋼帯の表面に塗布液を塗布する工程と、前記仕上げ焼鈍の際に前記塗布液の焼き付けを行う工程と、を有することを特徴とする請求項7に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項12

前記塗布液は、リン酸塩及びコロイダルシリカを含むことを特徴とする請求項11に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項13

前記塗布液は、ほう酸及びアルミナゾルを含むことを特徴とする請求項11に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項14

前記冷延鋼帯のAl及びCrの総含有量が0.8質量%以上であることを特徴とする請求項7に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項15

前記冷延鋼帯のAl及びCrの総含有量が0.8質量%以上であることを特徴とする請求項8に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項16

前記冷延鋼帯のAl及びCrの総含有量が0.8質量%以上であることを特徴とする請求項9に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項17

前記冷延鋼帯のAl及びCrの総含有量が0.8質量%以上であることを特徴とする請求項10に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項18

前記冷延鋼帯のAl及びCrの総含有量が0.8質量%以上であることを特徴とする請求項11に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項19

前記冷延鋼帯のAl及びCrの総含有量が0.8質量%以上であることを特徴とする請求項12に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

請求項20

前記冷延鋼帯のAl及びCrの総含有量が0.8質量%以上であることを特徴とする請求項13に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、モータ鉄心材料に好適な無方向性電磁鋼板及びその製造方法に関する。

背景技術

0002

電気機器の効率化が強く望まれており、電気機器に含まれるモータの鉄心材料に用いられる無方向性電磁鋼板に対して更なる低鉄損化が要求されている。そこで、Si及びAl等を無方向性電磁鋼板に含有させて固有抵抗を高め、かつ結晶粒径を大きくする技術、熱延板焼鈍及び冷延率の調整により集合組織を改善する技術等について検討が行われている。

0003

また、無方向性電磁鋼板はその表面に平行な方向では結晶方位ランダム電磁鋼板であるが、無方向性電磁鋼板の用途によっては、表面に平行なある一方向、例えば圧延方向の磁気特性が他の方向の磁気特性よりも優れたものが好ましい場合もある。例えば、モータのステータとして分割コアを用いる場合には、上述のような電磁鋼板を分割コアに用いることが好ましい。圧延方向の磁気特性が優れた電磁鋼板としては方向性電磁鋼板も考えられるが、方向性電磁鋼板の表面にはグラス皮膜が存在するため、打ち抜き加工が困難である。また、無方向性電磁鋼板と比較すると方向性電磁鋼板の製造にはより多くの制御が必要であり、方向性電磁鋼板は高価である。なお、モータのステータとして分割コアを用いた場合には、磁束の流れの方向に電磁鋼板の容易磁化方向を一致させることができるため、モータの効率を向上させることができる。また、素材である電磁鋼板の歩留まりを向上させ、巻き線充填率を増加させることができる。

0004

しかしながら、分割コア用の無方向性電磁鋼板に関する種々の提案がなされているものの、従来の技術では、十分な圧延方向の磁気特性を得ることが困難である。

先行技術

0005

特開2004−332042号公報
特開2006−265720号公報
特開2008−260996号公報
特開昭56−55574号公報
特開2001−140018号公報
特開2001−279400号公報

発明が解決しようとする課題

0006

本発明は、より良好な圧延方向の磁気特性を得ることができる無方向性電磁鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

本発明者らは、特許文献4に開示された技術に着目し、無方向性電磁鋼板の地鉄の表面上に形成する絶縁被膜として張力付与型の絶縁被膜を用いることにより圧延方向の磁気特性を向上することができるのではないかと考え、種々の実験等を行った。しかしながら、単純に、張力付与型の絶縁被膜を用いた場合には、絶縁被膜が分割コアを形成するための各種加工(打ち抜き、かしめ等)に十分に耐えられないことが判明した。つまり、絶縁被膜の剥がれ等が生じることがある。また、圧延方向の磁気特性が向上するものの、必ずしも十分なものとはいえなかった。本発明者らは、これらの原因を究明すべく鋭意検討を行ったところ、張力付与型の絶縁被膜と地鉄との間の密着性が低いこと、及びこれに伴って地鉄に十分な張力が作用していないことを見出した。そして、本発明者らは、これらの知見に基づいて更に鋭意検討を行ったところ、地鉄の表面に特定の酸化物層が存在する場合に、この酸化物層が地鉄と張力付与型の絶縁被膜との密着性の向上に寄与し、圧延方向の磁気特性が著しく向上することを見出した。また、密着性の向上に伴って絶縁被膜の剥がれ等が抑制されることも見出した。

0008

本発明の要旨は、以下の通りである。

0009

(1)地鉄と、
前記地鉄の表面上に形成された1g/m2以上6g/m2以下の応力付与型の絶縁被膜と、
を有し、
前記地鉄は、
Si、Al及びCr:総含有量で2質量%以上6質量%以下、及び
Mn:0.1質量%以上1.5質量%以下、
を含有し、
前記地鉄のCの含有量が0.005質量%以下であり、
前記地鉄の残部がFe及び不可避的不純物からなり、
前記地鉄の表面に、Si、Al及びCrからなる群から選択された少なくとも一種酸化物を含有し、厚さが0.01μm以上0.5μm以下の酸化物層が形成されていることを特徴とする無方向性電磁鋼板。

0010

(2) 前記地鉄のAl及びCrの総含有量が0.8質量%以上であることを特徴とする(1)に記載の無方向性電磁鋼板。

0011

(3) 前記絶縁被膜が、リン酸塩及びコロイダルシリカを含む塗布液焼き付けにより形成されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の無方向性電磁鋼板。

0012

(4) 前記絶縁被膜が、ほう酸及びアルミナゾルを含む塗布液の焼き付けにより形成されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の無方向性電磁鋼板。

0013

(5)冷延鋼帯仕上げ焼鈍を行う工程と、
前記冷延鋼帯の表面に1g/m2以上6g/m2以下の張力付与型の絶縁被膜を形成する工程と、
を有し、
前記冷延鋼帯は、
Si、Al及びCr:総含有量で2質量%以上6質量%以下、及び
Mn:0.1質量%以上1.5質量%以下、
を含有し、
前記冷延鋼帯のCの含有量が0.005質量%以下であり、
前記冷延鋼帯の残部がFe及び不可避的不純物からなり、
前記仕上げ焼鈍を行う工程は、前記冷延鋼帯のSi及びAlの総含有量をX(質量%)と表したときに、水素に対する水蒸気分圧比が0.005×X2以下となる雰囲気中で前記冷延鋼帯の温度を800℃以上1100℃以下として、前記冷延鋼帯の表面に、Si及びAlからなる群から選択された少なくとも一種の酸化物を含有し、厚さが0.01μm以上0.5μm以下の酸化物層を形成する工程を有することを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。

0014

(6) 前記絶縁被膜を形成する工程は、前記仕上げ焼鈍を行う工程の後に、
前記冷延鋼帯の表面に塗布液を塗布する工程と、
前記冷延鋼帯の温度を800℃以上1100℃以下として前記塗布液の焼き付けを行う工程と、
を有することを特徴とする(5)に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

0015

(7) 前記絶縁被膜を形成する工程は、
前記仕上げ焼鈍を行う工程の前に前記冷延鋼帯の表面に塗布液を塗布する工程と、
前記仕上げ焼鈍の際に前記塗布液の焼き付けを行う工程と、
を有することを特徴とする(5)に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

0016

(8) 前記塗布液は、リン酸塩及びコロイダルシリカを含むことを特徴とする(6)又は(7)に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

0017

(9) 前記塗布液は、ほう酸及びアルミナゾルを含むことを特徴とする(6)又は(7)に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

0018

(10) 前記冷延鋼帯のAl及びCrの総含有量が0.8質量%以上であることを特徴とする(5)〜(9)のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。

発明の効果

0019

本発明によれば、地鉄と張力付与型の絶縁被膜との間の高い密着性を得ることができ、圧延方向の磁気特性を著しく向上することができる。

図面の簡単な説明

0020

図1Aは、分圧比(PH2O/PH2)が0.1の雰囲気で仕上げ焼鈍を行った鋼帯の表面の酸化物の走査型電子顕微鏡断面写真を示す図である。
図1Bは、分圧比(PH2O/PH2)が0.01の雰囲気で仕上げ焼鈍を行った鋼帯の表面の酸化物の走査型電子顕微鏡断面写真を示す図である。
図2は、外部酸化膜102の赤外高感度反射スペクトルを示す図である。
図3は、冷延鋼帯の組成及び仕上げ焼鈍の雰囲気と、地鉄の表面の状態との関係を示す図である。
図4は、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板の構造を示す断面図である。
図5は、無方向性電磁鋼板の製造方法の例を示すフローチャートである。
図6は、無方向性電磁鋼板の製造方法の他の例を示すフローチャートである。

0021

先ず、本発明者らが行った張力付与型の絶縁被膜の無方向性電磁鋼板への適用に関する実験について説明する。

0022

この実験では、Si:3質量%、Mn:0.15質量%、及びAl:1.2質量%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる厚さが0.35mmの2つの無方向性電磁鋼板用の冷延鋼帯を作製した。そして、冷延鋼帯毎に異なる焼鈍雰囲気で1000℃の仕上げ焼鈍を行った。一方の焼鈍雰囲気では、水素に対する水蒸気の分圧比(PH2O/PH2)を0.01とし、他方の焼鈍雰囲気では分圧比(PH2O/PH2)を0.1とした。そして、周波数が50Hz、最大磁束密度が1.0Tの励磁条件下での鉄損値(W10/50)を、圧延方向(L方向)、及び冷延鋼帯の表面内で圧延方向に直交する方向(C方向)について測定した。その後、各鋼帯の両面に、リン酸アルミニウム、コロイダルシリカ、及びクロム酸から構成される塗布液(コーティング液)を片面あたり3g/m2塗布し、800℃で焼き付けた。つまり、張力付与型の絶縁被膜を形成した。そして、鉄損値(W10/50)を、L方向及びC方向について再度測定した。これらの結果を表1に示す。

0023

0024

表1に示すように、分圧比(PH2O/PH2)が0.1の雰囲気で焼鈍した場合には、L方向の鉄損に8%程度の改善が認められた。しかしながら、このようにして形成された絶縁被膜を備えた無方向性電磁鋼板から分割コアを作製しようとすると、打ち抜き及びかしめ等の加工に絶縁被膜が耐えられなかった。

0025

一方、分圧比(PH2O/PH2)が0.01の雰囲気で焼鈍した場合には、L方向の鉄損に17%もの改善が認められ、また、打ち抜き及びかしめ等の加工に絶縁被膜が十分に耐えることができた。

0026

本発明者らは、上述のような仕上げ焼鈍の雰囲気に起因する絶縁被膜の加工耐性差異の原因を調査するために、仕上げ焼鈍後の鋼帯の表面の酸化物の断面観察を行った。図1Aに、分圧比(PH2O/PH2)が0.1の雰囲気で仕上げ焼鈍を行った鋼帯の表面の酸化物の走査型電子顕微鏡断面写真を示し、図1Bに、分圧比(PH2O/PH2)が0.01の雰囲気で仕上げ焼鈍を行った鋼帯の表面の酸化物の走査型電子顕微鏡断面写真を示す。

0027

図1Aに示すように、分圧比(PH2O/PH2)が0.1の雰囲気で仕上げ焼鈍を行った鋼帯の地鉄101の表面には、厚い内部酸化層103が存在していた。一方、図1Bに示すように、分圧比(PH2O/PH2)が0.01の雰囲気で仕上げ焼鈍を行った鋼帯の地鉄101の表面には、厚さが50nm程度の薄い外部酸化膜102が存在していた。なお、外部酸化膜102及び内部酸化層103上に存在するAu蒸着層104は、断面観察用試料を作製するに当たり外部酸化膜102及び内部酸化層103の保護のために形成したものである。

0028

また、図2に、外部酸化膜102の赤外高感度反射スペクトルを示す。図2に示すスペクトルから、外部酸化膜102が主にAl2O3からなることが確認できた。

0029

以上のことから、無方向性電磁鋼板の製造に際し、冷延鋼帯の仕上げ焼鈍時に外部酸化膜を形成し、その後に、張力付与型の絶縁被膜を形成すると、絶縁被膜と地鉄との密着性が著しく向上し、また、L方向の磁気特性が著しく改善されることがわかった。なお、後述するように、張力付与型の絶縁被膜の原料(塗布液)の塗布を行った後に、仕上げ焼鈍を行って、外部酸化膜の形成及び塗布液の焼き付けによる絶縁被膜の形成を並行して行っても、密着性の向上及びL方向の磁気特性の著しい改善が達成される。

0030

ここで、仕上げ焼鈍時に外部酸化膜を形成するためには、焼鈍条件が重要である。そこで、本発明者らは、仕上げ焼鈍の対象である冷延鋼帯の組成及び仕上げ焼鈍の雰囲気と、地鉄の表面の状態との関係について調査した。この調査では、Si、Al及びCrの総含有量(X(質量%))が異なる種々の冷延鋼帯を作製し、種々の分圧比(PH2O/PH2)の雰囲気下で仕上げ焼鈍を行った。そして、仕上げ焼鈍後の地鉄の表面の状態を観察した。なお、仕上げ焼鈍の温度は900℃とした。この結果を図3に示す。図3中の白抜きの印は内部酸化層が形成されていたことを示し、黒塗りの印は外部酸化膜が形成されていたことを示す。

0031

図3から、Si、Al及びCrの総含有量(X(質量%))に関し、分圧比(PH2O/PH2)が0.005×X2未満である条件下であれば、外部酸化膜を形成できることがわかる。

0032

以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。図4は、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板の構造を示す断面図である。

0033

図4に示すように、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、地鉄1の表面上に1g/m2以上6g/m2以下の応力付与型の絶縁被膜2が形成されている。また、地鉄1の表面には、Si、Al及びCrからなる群から選択された少なくとも一種の酸化物を含有し、厚さが0.01μm以上0.5μm以下の外部酸化膜3が形成されている。地鉄1には、基部4及び外部酸化膜3が含まれている。外部酸化膜3は、酸化物層の一例である。

0034

地鉄1は、Si、Al及びCr:総含有量で2質量%以上6質量%以下、及びMn:0.1質量%以上1.5質量%以下を含有する。地鉄1のCの含有量は0.005質量%以下であり、地鉄1の残部はFe及び不可避的不純物からなる。

0035

次に、このような無方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。図5は、無方向性電磁鋼板の製造方法の例を示すフローチャートである。

0036

本実施形態では、先ず、所定の温度に加熱した所定の組成のスラブ鋼素材)の熱間圧延を行って熱延鋼帯を作製する(ステップS1)。次いで、酸洗によりスケールを除去し、熱延鋼帯の冷間圧延を行って冷延鋼帯を作製する(ステップS2)。冷間圧延としては、1回のみの冷間圧延を行ってもよく、間に中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行ってもよい。なお、冷間圧延の前に、必要に応じて焼鈍を行ってもよい。

0037

ここで、スラブ(鋼素材)に含まれる成分について説明する。

0038

Cは鉄損を増加させかつ磁気時効の原因となる。従って、C含有量は0.005質量%以下とする。

0039

Si、Al、及びCrは無方向性電磁鋼板の固有抵抗を増大させて渦電流損失を低減する効果を呈する。また、Si、Al、及びCrは、詳細は後述するが、外部酸化膜3の形成に用いられる。但し、Si、Al及びCrの総含有量が2質量%未満であると、これらの効果が十分に得られない。従って、Si、Al及びCrの総含有量は2質量%以上とする。Si、Al及びCrの総含有量が6質量%超であると、冷間圧延等の冷間加工が困難となる。従って、Si、Al及びCrの総含有量は6質量%以下とする。

0040

Mnはスラブ加熱時に固溶Sを低減する効果を呈する。但し、Mn含有量が0.1質量%未満であると、この効果が十分に得られない。従って、Mn含有量は0.1質量%以上とする。その一方で、Mn含有量が1.5質量%超であると、磁気特性が低下する。従って、Mn含有量は1.5質量%以下とする。

0041

なお、S、N及びO、並びにこれらと結合して非磁性介在物を形成する可能性のあるTi、V、Zr、Nb等の不可避的不純物の含有量は極力少なくする。また、S、N及びOをスカベンジするために希土類元素及びCa等が含まれていてもよい。希土類元素及びCa等の好ましい含有量は、0.002質量%以上、0.01質量%以下である。

0042

SnやSbは、集合組織改善によりL方向特性改善効果があり、添加して本願発明による効果との相乗作用を期待することができる。

0043

冷間圧延(ステップS2)の後、所定の雰囲気で冷延鋼帯の仕上げ焼鈍を行い、表面に外部酸化膜3が形成された地鉄1を作製する(ステップS3)。この仕上げ焼鈍では、冷延鋼帯の温度を800℃以上1100℃以下とする。温度が800℃未満であると、外部酸化膜3を十分に形成することが困難である。一方、温度が1100℃超であると、コストが著しく上昇すると共に、安定した操業が困難になる。また、仕上げ焼鈍の雰囲気としては、上記の知見を考慮して、Si、Al及びCrの総含有量(X(質量%))に関し、水蒸気の水素に対する分圧比(PH2O/PH2)を0.005×X2未満とする。この条件が満たされていれば、上述のように、所望の外部酸化膜を酸化物層3として形成することができる。この外部酸化膜3が張力付与型の絶縁被膜2と地鉄1との密着性の著しい向上に寄与する。そして、密着性の向上に伴って張力が効果的に作用し、L方向の磁気特性がより一層改善される。

0044

なお、外部酸化膜3の厚さが0.01μm未満であると、十分な密着性を得ることが困難である。従って、外部酸化膜3の厚さは0.01μm以上であることが望ましい。また、外部酸化膜3の厚さが0.5μm超である場合にも、十分な密着性を得ることが困難である。これは、外部酸化膜3が厚く形成されることによって地鉄1の基部4の表面に不必要な応力が生じるためであると推定される。従って、外部酸化膜3の厚さは0.5μm以下であること望ましい。外部酸化膜3の厚さは、例えば、仕上げ焼鈍の温度及び均熱時間を調整して制御することが可能である。即ち、均熱温度が高いほど、均熱時間が長いほど、外部酸化膜3が厚く形成される。

0045

外部酸化膜3を構成する物質は、Si、Al及びCrの各含有量に応じて決定され、外部酸化膜3の主要構成物は、例えばSiO2、Al2O3、Cr2O3等である。例えば、冷延鋼帯中のAl及びCrが少ない場合、SiO2が外部酸化膜3の主体となり、Al及びCrの総含有量が0.8質量%以上であると、Al2O3、Cr2O3又は(Al,Cr)2O3が外部酸化膜3の主体となる。外部酸化膜3の主要構成物は特に限定されないが、主体がAl2O3、Cr2O3又は(Al,Cr)2O3の場合に、特に高い密着性を得ることができる。従って、Al及びCrの総含有量は0.8質量%以上であることが望ましい。なお、外部酸化膜3がこれら主要構成物のみから構成されるのではなく、Al及びCrが少ない場合でも、Al2O3及びCr2O3等が含まれることがあり、Al及びCrの総含有量が0.8質量%超の場合でも、SiO2が含まれ得る。

0046

仕上げ焼鈍及び酸化物層の形成(ステップS3)の後、地鉄1の表面上に張力付与型の絶縁被膜2を形成する(ステップS4)。絶縁被膜2の形成では、所定の塗布液の塗布及び焼き付けを行う。塗布液としては、方向性電磁鋼板に用いられている塗布液を使用することが可能である。例えば、リン酸塩及びコロイダルシリカを主体とする塗布液を用いることができる。リン酸塩及びコロイダルシリカの割合は特に限定されないが、コロイダルシリカの割合が4質量%〜24質量%、リン酸塩の割合が5質量%〜30質量%であることが好ましい。このような塗布液は、例えば特開昭48−39338号公報及び特開昭50−79442号公報等に記載されている。また、ほう酸及びアルミナゾルを主体とする塗布液を用いることもできる。アルミニウム及び硼素成分比は特に限定されないが、それぞれの酸化物換算酸化アルミニウムが50質量%〜95質量%であることが好ましい。このような塗布液は、例えば特開平6−65754号公報及び特開平6−65755号公報に記載されている。

0047

また、張力付与型の絶縁被膜2の形成量は片面あたり1g/m2以上6g/m2以下とする。絶縁被膜2の形成量が1g/m2未満であると、張力が十分に付与されず、圧延方向(L方向)の磁気特性を十分に改善することが困難である。一方、絶縁被膜2の形成量が6g/m2超であると、占積率が低下する。

0048

また、焼き付け温度は800℃以上1100℃以下とすることが好ましい。焼き付け温度が800℃未満であると、張力が十分に付与されず、圧延方向(L方向)の磁気特性を十分に改善することが困難である。一方、焼き付け温度が1100℃超であると、コストが著しく上昇すると共に、安定した操業が困難になる。

0049

このような一連の処理により、実施形態に係る無方向性電磁鋼板を製造することができる。そして、この無方向性電磁鋼板では、外部酸化膜3が地鉄1と張力付与型の絶縁被膜2とを互いに強固に密着させる。このため、より高い張力が付与されて圧延方向(L方向)の磁気特性が更に改善されると共に、分割コアを形成するための各種加工(打ち抜き、かしめ等)を行った場合でも、絶縁被膜2の剥がれ等を抑制することができる。

0050

なお、この製造方法では、絶縁被膜2の形成(ステップS4)のための塗布液の塗布及び焼き付けを仕上げ焼鈍(ステップS3)後に行っているが、焼き付けを仕上げ焼鈍と並行して行ってもよい。即ち、図6に示すように、冷間圧延(ステップS2)の後に、冷延鋼帯に塗布液を塗布し(ステップS11)、塗布液の焼き付けを兼ねる仕上げ焼鈍(ステップS12)を行ってもよい。

0051

また、張力付与型の絶縁被膜2の形成後に、分割コア等のコアを形成する際の打ち抜き性を改善するために、張力付与型の絶縁被膜2上に、樹脂のみからなる被膜、及び/又は無機物及び樹脂から構成される被膜を形成してもよい。即ち、無方向性電磁鋼板の絶縁被膜の形成に通常用いられている塗布液の塗布及び焼き付けを行うことにより、打ち抜き性をより良好なものとすることができる。このような塗布液としては、クロム酸塩及びアクリル樹脂を含む塗布液を用いることができる。例えば、クロム酸水溶液金属酸化物金属水酸化物金属炭酸塩を溶解させ、更にエマルジョンタイプの樹脂を添加した塗布液を用いることができる。このような塗布液は、例えば特公昭50−15013号公報に記載されている。また、リン酸塩及びアクリル樹脂を含む塗布液を用いることもできる。例えば、100質量部のリン酸塩に対して1質量部〜300質量部の有機樹脂エマルジョンを添加した塗布液を用いることができる。このような塗布液は、例えば特開平6−330338号公報に記載されている。

0052

次に、本発明者らが行った実験について説明する。これらの実験における条件等は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した例であり、本発明は、これらの例に限定されるものではない。

0053

(第1の実験)
先ず、表2に示す種々の成分を含有し、残部がFe及び不可避的不純物の鋼スラブ(鋼No.1〜No.7)を熱間圧延して厚さが2.5mmの熱延鋼帯を作製した。次いで、900℃で1分間の熱延鋼帯の焼鈍(熱延板焼鈍)を行った。その後、酸洗し、冷間圧延を行って厚さが0.35mmの冷延鋼帯を作製した。

0054

0055

続いて、表3に示す条件で仕上げ焼鈍を行い、形成された外部酸化膜(酸化物層)の主要構成物質及び厚さを調査した。外部酸化膜の主要構成物質の同定は赤外高感度反射スペクトルにより行い、外部酸化膜の厚さは透過電子顕微鏡観察により調べた。

0056

次いで、表3に示す条件で塗布液の塗布及び焼き付けを行って張力付与型の絶縁被膜を形成した。表3中の「塗布液」の欄の「S」は、コロイダルシリカ、リン酸アルミニウム及びクロム酸を含む塗布液を用いたことを示し、「A」は、ほう酸及びアルミナゾルを含む塗布液を用いたことを示す。

0057

そして、絶縁被膜の密着性を評価した。この結果も表3に示す。表3中の「密着性」の欄の「×」は、直径が30mmの丸棒に無方向性電磁鋼板を巻き付けた場合に絶縁被膜が剥離したことを示す。また、「○」は、直径が30mmの丸棒に巻き付けた場合は剥離しなかったものの、直径が20mmの丸棒に巻き付けた場合に剥離したことを示す。「◎」は、直径が20mmの丸棒に巻き付けた場合でも剥離しなかったことを示す。

0058

また、L方向の鉄損改善率の評価も行った。この評価では、上記の方法で製造された無方向性電磁鋼板の鉄損値W1(W10/50)を測定し、基準試料の鉄損値W0(W10/50)と比較した。基準試料としては、張力付与型の絶縁被膜に代えて、特開平6−330338号公報に記載されたリン酸塩及びアクリル樹脂を含む塗布液の塗布及び焼き付けにより絶縁被膜を形成したものを用いた。このような評価を行ったのは、鉄損の絶対値は成分と工程条件に依存するためである。この結果も表3に示す。表3中の「L方向の鉄損改善率」の欄中の数値は、「(W0−W1)/W0」で表される値である。

0059

0060

表3に示すように、本発明の条件が満たされる場合には、絶縁被膜の密着性及びL方向の磁気特性が極めて良好であった。また、外部酸化膜が形成されずに内部酸化層が形成された場合には、密着性が極めて低かった。

0061

(第2の実験)
表2に示す鋼No.1、No.3及びNo.4の鋼スラブを熱間圧延して厚さが2.5mmの熱延鋼帯を作製した。次いで、900℃で1分間の熱延鋼帯の焼鈍(熱延板焼鈍)を行った。その後、酸洗し、冷間圧延を行って厚さが0.35mmの冷延鋼帯を作製した。

0062

続いて、表4に示す条件で塗布液の塗布を行った。次いで、表4に示す条件で塗布液の焼き付けを兼ねる仕上げ焼鈍を行った。つまり、第1の実験では、図5に示すフローチャートに従った処理を行ったのに対し、第2の実験では、図6に示すフローチャートに従った処理を行った。そして、第1の実験と同様にして、絶縁被膜の密着性及びL方向の鉄損改善率を評価した。この結果も表4に示す。

0063

実施例

0064

表4に示すように、図6に示すフローチャートに従って、塗布液の焼き付けを兼ねる仕上げ焼鈍を行った場合にも、極めて良好な絶縁被膜の密着性及びL方向の磁気特性を得ることができた。

0065

本発明は、例えば、電磁鋼板製造産業及び電磁鋼板利用産業において利用することができる。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ