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技術 組み換えヘルペスウイルス及び組換えヘルペスウイルスを含む医薬組成物

出願人 国立大学法人東京大学
発明者 藤堂具紀福原浩
出願日 2010年2月19日 (10年2ヶ月経過) 出願番号 2012-500393
公開日 2013年6月17日 (6年10ヶ月経過) 公開番号 WO2011-101912
状態 不明
技術分野
  • -
主要キーワード 連トランス 右半球 ELF ノルアドレナリン作動性ニューロン 絨毛膜性 SES ADC カテコールアミン作動性
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2013年6月17日)のものです。
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図面 (12)

課題・解決手段

本発明は、腫瘍細胞の種類や悪性度増殖速度によらず、高い抗腫瘍活性を示し、且つ、安全性の高い組換えヘルペスウイルスを提供することを目的とする。 本発明は、ウイルスゲノム上において、ICP6遺伝子が腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータの制御下で発現するように構成された組換え単純ヘルペスウイルス等を提供する。

概要

背景

近年、ウイルスゲノム遺伝子工学的改変し、癌細胞で選択的に複製するウイルスを作製して、癌治療に応用する試みがなされている。

遺伝子組換えウイルスを癌治療に応用するという概念は、1991年にMartuzaらにより提唱された(例えば、非特許文献1を参照。)。ウイルスはそれ自体病原性を有するものが多く、そのままヒト等に投与すると正常細胞にも悪影響を及ぼす。しかし、遺伝子組換えで特定の遺伝子を欠失または変異させることによって、正常細胞では複製できないが、増殖が盛んな腫瘍細胞では欠落した遺伝子の機能が補償されることなどによって複製できるウイルスが作製される。

遺伝子組換えによって癌細胞内のみで選択的に複製するよう改変された癌治療ウイルスは、癌細胞に感染するとin situで複製し、その過程宿主の癌細胞を直接破壊する。複製したウイルスは周囲に散らばって再び癌細胞に感染し、その後、複製→細胞死→感染を繰り返して抗腫瘍効果を現す。一方、正常細胞に感染した治療用ウイルスは複製できないので、正常組織には害が生じない。

このような変異ウイルスとして、これまでに、単純ヘルペスウイルスI型(HSV−1)ゲノムから、チミジンキナーゼ(tk)遺伝子を欠失させた変異ウイルス(例えば、上記非特許文献1を参照。);2つのコピーが存在するγ34.5遺伝子を双方とも欠失させ、ICP6遺伝子を不活化させたHSV−1(以下「G207」と言う。)(例えば、非特許文献2〜14を参照);γ34.5遺伝子の双方の欠失とICP6遺伝子の不活化に加え、ICP47遺伝子(α47遺伝子ともいう)も欠失させたHSV−1(以下「G47Δ」という。例えば、特許文献1および非特許文献15を参照。)等が開発されている。これらの変異ウイルスは、正常細胞では複製できないが、腫瘍細胞では複製する能力を保持する。

特に本発明者らが開発したG47Δは、3つの遺伝子を変異させたことにより、ウイルス複製に関しては高い腫瘍特異性を示し、腫瘍細胞に限局した高い殺細胞効果を呈する一方、正常組織では毒性を示さず、親ウイルスであるG207に比較して、安全性は維持され、抗腫瘍効果は格段に改善されたものとなった。また、G47Δは、G207に比べて高い力価ウイルス製剤生産でき、同じ容量で高い治療効果を期待できる。

G47Δの構造を図11に示す。図示されるとおり、G47Δは、2つのγ34.5遺伝子に1kbの欠失を有するとともに、α47遺伝子に312bの欠失を有し、且つ、lacZ遺伝子を挿入することによってICP6遺伝子が不活化されている。

γ34.5遺伝子は、HSV−1の病原性に関連した遺伝子で、これを欠失させた変異株は正常細胞でのウイルス複製能が著しく減弱する。正常細胞では、ウイルス感染が起こると、二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(double stranded RNA-activated protein kinase:PKR)がリン酸化され、それが翻訳開始因子eIF−2aをリン酸化し、その結果ウイルスタンパク質を含む細胞内でのタンパク質合成遮断される。γ34.5遺伝子産物は、リン酸化PKRに拮抗してウイルス蛋白質の合成を可能にするが、γ34.5遺伝子欠失HSV−1は、正常細胞では複製を行うことができない。しかしながら、腫瘍細胞では普遍的にPKRのリン酸化が低いため、γ34.5遺伝子欠失HSV−1も複製が可能となると考えられている。

ICP6遺伝子は、リボヌクレオチド還元酵素RR)の大サブユニットをコードする遺伝子である。RRはウイルスDNA合成に必要な酵素であり、この遺伝子を不活化すると、ウイルスは非分裂細胞では複製できず、分裂が盛んでRR活性の上昇した細胞でのみ、ICP6遺伝子の欠失によるRR活性の欠損が補われ、ウイルス複製が可能となる。

α47遺伝子産物は、宿主細胞抗原提示連トランスポーター(TAP)を阻害して細胞表面のMHCClassIの発現を抑えることによって、ウイルスタンパク質の提示を抑制し、宿主の免疫サーベイランスから逃れる作用を有する。従って、α47遺伝子欠失HSV−1では、宿主細胞のMHC ClassI発現が維持され、抗腫瘍免疫細胞に対する刺激が強くなると期待される。

また、G47Δは、α47遺伝子と重なるUS11遺伝子のプロモータも欠失するため、US11遺伝子の発現時期が早まり、これがγ34.5遺伝子変異のsecond site suppressorとして機能し、γ34.5欠失HSV−1において減弱したウイルスの複製能を腫瘍細胞に限って復元する。

以上のとおり、G47Δは、ウイルスゲノム上に距離の離れた4ヶ所の人為的変異を有することから、野生型HSV−1に戻る(revert)可能性がゼロに等しい。G47Δは、腫瘍特異性および安全性が高く、汎用性及び実用性に優れた治療用ウイルスであるといえる。

しかしながら、G47Δは、複製に必要なRR活性を腫瘍細胞のRR活性で補償するため、理論的には、RR活性が大きく上昇していない腫瘍細胞では効率よくウイルス複製が行われず、十分な抗腫瘍作用が得られなくなる可能性があった。

概要

本発明は、腫瘍細胞の種類や悪性度増殖速度によらず、高い抗腫瘍活性を示し、且つ、安全性の高い組換えヘルペスウイルスを提供することを目的とする。 本発明は、ウイルスゲノム上において、ICP6遺伝子が腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータの制御下で発現するように構成された組換え単純ヘルペスウイルス等を提供する。

目的

本発明は、腫瘍細胞の種類や悪性度、増殖能力によらず、高い抗腫瘍活性を示し、且つ、安全性の高い組換えヘルペスウイルスを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
- 件
牽制数
- 件

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請求項1

内在性ICP6遺伝子が欠失又は不活化され、且つゲノム上に、ICP6遺伝子が腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータの制御下で発現するように構成された発現カセットを有する、組換え単純ヘルペスウイルス

請求項2

前記内在性ICP6遺伝子は、前記発現カセットが該内在性ICP6遺伝子内に挿入されることによって不活化されている、請求項1に記載の組換え単純ヘルペスウイルス。

請求項3

前記発現カセットは、前記内在性ICP6遺伝子の欠失部位に挿入されている、請求項1に記載の組換え単純ヘルペスウイルス。

請求項4

前記発現カセットは、前記内在性ICP6遺伝子と反対方向に挿入されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の組換え単純ヘルペスウイルス。

請求項5

内在性ICP6遺伝子が、腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータと機能的に連結されている、組換え単純ヘルペスウイルス。

請求項6

前記腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータが、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)プロモータ、PSESプロモータ、及びオステオカルシン(OC)プロモータからなる群から選択されるプロモータである、請求項1から5のいずれか1項に記載の組換え単純ヘルペスウイルス。

請求項7

さらに、γ34.5遺伝子及び/又はICP47遺伝子が欠失若しくは不活化されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の組換え単純ヘルペスウイルス。

請求項8

請求項1から7のいずれか1項に記載の組換え単純ヘルペスウイルスを有効成分として含む医薬組成物

請求項9

腫瘍治療剤である、請求項8に記載の医薬組成物。

請求項10

前記腫瘍が、増殖速度の遅い腫瘍、良性腫瘍、及びリボヌクレオチド還元酵素活性の低い腫瘍からなる群より選択される腫瘍である、請求項9に記載の医薬組成物。

請求項11

前記腫瘍が、前立腺癌腎癌乳癌軟骨肉腫、及び髄膜腫からなる群より選択される腫瘍である、請求項9又は10に記載の医薬組成物。

請求項12

請求項1から7のいずれか1項に記載の組換え単純ヘルペスウイルスを治療有効量投与することを含む、腫瘍治療方法

技術分野

0001

本発明は、腫瘍特異的に増殖する組換えヘルペスウイルス及びこれを含む医薬組成物に関する。

背景技術

0002

近年、ウイルスゲノム遺伝子工学的改変し、癌細胞で選択的に複製するウイルスを作製して、癌治療に応用する試みがなされている。

0003

遺伝子組換えウイルスを癌治療に応用するという概念は、1991年にMartuzaらにより提唱された(例えば、非特許文献1を参照。)。ウイルスはそれ自体病原性を有するものが多く、そのままヒト等に投与すると正常細胞にも悪影響を及ぼす。しかし、遺伝子組換えで特定の遺伝子を欠失または変異させることによって、正常細胞では複製できないが、増殖が盛んな腫瘍細胞では欠落した遺伝子の機能が補償されることなどによって複製できるウイルスが作製される。

0004

遺伝子組換えによって癌細胞内のみで選択的に複製するよう改変された癌治療ウイルスは、癌細胞に感染するとin situで複製し、その過程宿主の癌細胞を直接破壊する。複製したウイルスは周囲に散らばって再び癌細胞に感染し、その後、複製→細胞死→感染を繰り返して抗腫瘍効果を現す。一方、正常細胞に感染した治療用ウイルスは複製できないので、正常組織には害が生じない。

0005

このような変異ウイルスとして、これまでに、単純ヘルペスウイルスI型(HSV−1)ゲノムから、チミジンキナーゼ(tk)遺伝子を欠失させた変異ウイルス(例えば、上記非特許文献1を参照。);2つのコピーが存在するγ34.5遺伝子を双方とも欠失させ、ICP6遺伝子を不活化させたHSV−1(以下「G207」と言う。)(例えば、非特許文献2〜14を参照);γ34.5遺伝子の双方の欠失とICP6遺伝子の不活化に加え、ICP47遺伝子(α47遺伝子ともいう)も欠失させたHSV−1(以下「G47Δ」という。例えば、特許文献1および非特許文献15を参照。)等が開発されている。これらの変異ウイルスは、正常細胞では複製できないが、腫瘍細胞では複製する能力を保持する。

0006

特に本発明者らが開発したG47Δは、3つの遺伝子を変異させたことにより、ウイルス複製に関しては高い腫瘍特異性を示し、腫瘍細胞に限局した高い殺細胞効果を呈する一方、正常組織では毒性を示さず、親ウイルスであるG207に比較して、安全性は維持され、抗腫瘍効果は格段に改善されたものとなった。また、G47Δは、G207に比べて高い力価ウイルス製剤生産でき、同じ容量で高い治療効果を期待できる。

0007

G47Δの構造を図11に示す。図示されるとおり、G47Δは、2つのγ34.5遺伝子に1kbの欠失を有するとともに、α47遺伝子に312bの欠失を有し、且つ、lacZ遺伝子を挿入することによってICP6遺伝子が不活化されている。

0008

γ34.5遺伝子は、HSV−1の病原性に関連した遺伝子で、これを欠失させた変異株は正常細胞でのウイルス複製能が著しく減弱する。正常細胞では、ウイルス感染が起こると、二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(double stranded RNA-activated protein kinase:PKR)がリン酸化され、それが翻訳開始因子eIF−2aをリン酸化し、その結果ウイルスタンパク質を含む細胞内でのタンパク質合成遮断される。γ34.5遺伝子産物は、リン酸化PKRに拮抗してウイルス蛋白質の合成を可能にするが、γ34.5遺伝子欠失HSV−1は、正常細胞では複製を行うことができない。しかしながら、腫瘍細胞では普遍的にPKRのリン酸化が低いため、γ34.5遺伝子欠失HSV−1も複製が可能となると考えられている。

0009

ICP6遺伝子は、リボヌクレオチド還元酵素RR)の大サブユニットをコードする遺伝子である。RRはウイルスDNA合成に必要な酵素であり、この遺伝子を不活化すると、ウイルスは非分裂細胞では複製できず、分裂が盛んでRR活性の上昇した細胞でのみ、ICP6遺伝子の欠失によるRR活性の欠損が補われ、ウイルス複製が可能となる。

0010

α47遺伝子産物は、宿主細胞抗原提示連トランスポーター(TAP)を阻害して細胞表面のMHCClassIの発現を抑えることによって、ウイルスタンパク質の提示を抑制し、宿主の免疫サーベイランスから逃れる作用を有する。従って、α47遺伝子欠失HSV−1では、宿主細胞のMHC ClassI発現が維持され、抗腫瘍免疫細胞に対する刺激が強くなると期待される。

0011

また、G47Δは、α47遺伝子と重なるUS11遺伝子のプロモータも欠失するため、US11遺伝子の発現時期が早まり、これがγ34.5遺伝子変異のsecond site suppressorとして機能し、γ34.5欠失HSV−1において減弱したウイルスの複製能を腫瘍細胞に限って復元する。

0012

以上のとおり、G47Δは、ウイルスゲノム上に距離の離れた4ヶ所の人為的変異を有することから、野生型HSV−1に戻る(revert)可能性がゼロに等しい。G47Δは、腫瘍特異性および安全性が高く、汎用性及び実用性に優れた治療用ウイルスであるといえる。

0013

しかしながら、G47Δは、複製に必要なRR活性を腫瘍細胞のRR活性で補償するため、理論的には、RR活性が大きく上昇していない腫瘍細胞では効率よくウイルス複製が行われず、十分な抗腫瘍作用が得られなくなる可能性があった。

0014

US2002/0187163A1号公報

先行技術

0015

Martuza, R.L. et al.; Science 252: 854-6 (1991)
Chahlavi, A. et al.; Neoplasia 1: 162-169 (1999)
Hunter, W. D. et al.; J Virol 73: 6319-6326 (1999)
Chahlavi, A. et al.; Gene Ther 6: 1751-1758 (1999)
Nakamura, S. et al.; Glia 28: 53-65 (1999)
Todo, T. et al,; Hum Gene Ther 10: 2741-2755 (1999)
Todo, T. et al,; Hum Gene Ther 10: 2869-2878 (1999)
Todo, T. et al,; Cancer Gene Ther. 7: 939-946 (2000)
Markert, JM. et al,; Gene Ther. 7: 867-874 (2000)
Todo, T. et al,; Mol. Ther. 2: 588-595 (2000)
Nakano, K. et al,; Mol. Ther. 3: 431-437 (2001)
Varghese, S. et al,; Hum. Gene Ther. 12: 999-1010 (2001)
Jorgensen, TJ. et al,; Neoplasia 3: 451-456 (2001)
Todo, T. et al,; Tumor Suppressing Viruses, Genes, and Drugs- Innovative Cancer Therapy Approaches. San Diego, Academic Press:45-75 (2001)
Todo, T. et al,; Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 6396-6401 (2001)

発明が解決しようとする課題

0016

そこで、本発明は、腫瘍細胞の種類や悪性度増殖能力によらず、高い抗腫瘍活性を示し、且つ、安全性の高い組換えヘルペスウイルスを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0017

本発明者らは、γ34.5遺伝子とα47遺伝子のみ不活化されICP6遺伝子は正常なHSV−1と、3つの遺伝子が不活化されたG47Δとを用いて、種々の腫瘍細胞株でウイルス複製能を調べたところ、一部の腫瘍細胞株では、前者のウイルス複製能がG47Δに比べて有意に高いことを見出した。差が生じた腫瘍細胞では、RR活性の上昇が、G47Δのウイルス複製を補うには不十分であると推察された。
そこで、さらに検討を重ねた結果、内在性ICP6遺伝子を欠失させたHSV−1のゲノムに、腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータでICP6遺伝子の発現を制御できる発現カセットを導入すること等により、RR活性が低い腫瘍細胞でも高い複製能を有し、正常細胞では複製能を有しないHSV−1を作製できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は
〔1〕内在性ICP6遺伝子が欠失又は不活化され、且つ
ゲノム上に、ICP6遺伝子が腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータの制御下で発現するように構成された発現カセットを有する、
癌細胞選択的に複製する組換え単純ヘルペスウイルス;
〔2〕前記内在性ICP6遺伝子は、前記発現カセットが該内在性ICP6遺伝子内に挿入されることによって不活化されている、上記〔1〕に記載の組換え単純ヘルペスウイルス;
〔3〕前記発現カセットは、前記内在性ICP6遺伝子の欠失部位に挿入されている、上記〔1〕に記載の組換え単純ヘルペスウイルス;
〔4〕前記発現カセットは、前記内在性ICP6遺伝子と反対方向に挿入されている、上記〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載の組換え単純ヘルペスウイルス;
〔5〕内在性ICP6遺伝子が、腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータと機能的に連結されている、癌細胞選択的に複製する組換え単純ヘルペスウイルス;
〔6〕前記腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータが、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)プロモータ、PSESプロモータ、及びオステオカルシン(OC)プロモータからなる群から選択されるプロモータである、上記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載の組換え単純ヘルペスウイルス;
〔7〕さらに、γ34.5遺伝子及び/又はICP47遺伝子が欠失若しくは不活化されている、上記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載の組換え単純ヘルペスウイルス;
〔8〕上記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載の組換え単純ヘルペスウイルスを有効成分として含む医薬組成物;
〔9〕腫瘍治療剤である、上記〔8〕に記載の医薬組成物;
〔10〕前記腫瘍が、増殖速度の遅い腫瘍、良性腫瘍、及びリボヌクレオチド還元酵素活性の低い腫瘍からなる群より選択される腫瘍である、上記〔9〕に記載の医薬組成物;
〔11〕前記腫瘍が、前立腺癌腎癌乳癌軟骨肉腫、及び髄膜腫からなる群より選択される腫瘍である、上記〔9〕又は〔10〕に記載の医薬組成物;及び
〔12〕上記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載の組換え単純ヘルペスウイルスを治療有効量投与することを含む、腫瘍治療方法
に関する。

発明の効果

0018

本発明の組換えヘルペスウイルスによれば、腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータが機能する細胞においては、感染した細胞のRR活性に依存することなくICP6遺伝子を発現させることができるので、悪性腫瘍や増殖の速い腫瘍に限らず、良性腫瘍やゆっくりと増殖する腫瘍においても高い抗腫瘍効果を得ることができる。また、腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータが機能しない細胞ではICP6遺伝子は発現しないので、従来のICP6遺伝子不活化ヘルペスウイルスの安全性は維持される。

図面の簡単な説明

0019

図1は、本発明に係る組換えヘルペスウイルス(T−hTERT、T−PSES、T−OC)及び比較例として用いたT−01ウイルスの構造を示す模式図である。
図2は、3.4kbのICP6フラグメントを、3分割して増幅し、それぞれを連結して作製した工程を示す概念図である。
図3は、組み換えヘルペスウイルスにおけるRRの発現を確認するウェスタンブロッティングの結果を示す。
図4は、組み換えヘルペスウイルスの腎癌細胞における増殖能を測定した結果を示す。
図5は、組み換えヘルペスウイルスの前立腺癌細胞における増殖能を測定した結果を示す。
図6は、組換えヘルペスウイルス及び野生型ヘルペスウイルスのマウス脳内投与による安全性試験の結果を示す。
図7は、腎癌皮下腫瘍モデルに組換えヘルペスウイルスを投与して抗腫瘍効果を測定した結果を示す。
図8は、腎癌皮下腫瘍モデル(遅延投与モデル)に組換えヘルペスウイルスを投与して抗腫瘍効果を測定した結果を示す。
図9は、前立腺癌皮下腫瘍モデルに組換えヘルペスウイルスを投与して抗腫瘍効果を測定した結果を示す。
図10は、悪性脳腫瘍皮下腫瘍モデルに組換えヘルペスウイルスを投与して抗腫瘍効果を測定した結果を示す。
図11は、従来技術であるG47Δの構造を示す模式図である。

0020

(組換え単純ヘルペスウイルス)
本発明の組換え単純ヘルペスウイルスの第一の態様は、内在性ICP6遺伝子が欠失又は不活化されていること、及び、ICP6遺伝子が腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータの制御下で発現するように構成された発現カセットをゲノム上に有すること、を特徴とする。

0021

本明細書において「組換え単純ヘルペスウイルス」とは、遺伝子組み換え技術によって、本発明の効果を奏するように改変された単純ヘルペスウイルス(以下、「HSV」という場合もある。)を意味する。天然のHSVの遺伝子のうち、いずれの遺伝子を改変したものであってもよく、またいかなる外来遺伝子を挿入したものであってもよい。またHSVの血清型は、1型(HSV−1)であっても2型(HSV−2)であってもよいが、好ましくは1型が用いられる。

0022

HSV−1は、エンベロープを有する二本鎖DNAウイルスに分類され、癌治療に有利な以下の特徴を備えている。1)ヒトのあらゆる種類の細胞に感染可能である;2)ウイルスの生活環ゲノム配列解明されている;3)ウイルス遺伝子の大半は機能が判明しており、遺伝子操作を加えることが可能である;4)ウイルスゲノムが大きい(約152kb)為に、大きな遺伝子や複数の遺伝子を組み込むことができる。さらに、HSV−1は臨床応用に適した以下の利点を備える;5)比較的低いmultiplicity of infection(MOI)で全ての細胞の死滅が可能である;6)増殖を抑制する抗ウイルス薬が存在する;7)血中抗HSV−1抗体は、ウイルスの細胞から細胞への感染拡大に影響しない;8)HSV−1に感受性を示すマウスやサルが存在するために、動物で安全性や効果の前臨床的評価を行える;9)ウイルスDNAが宿主細胞のゲノムに取り込まれず染色体外に存在する。

0023

本明細書において「内在性ICP6遺伝子」とは、HSVが元来ゲノム上に有する、感染細胞タンパク質6(Infected−cell protein 6;ICP6)をコードする遺伝子を意味する。ICP6は、リボヌクレオチド還元酵素(RR)の大サブユニットであり、非分裂細胞におけるヌクレオチド代謝及びウイルスDNA合成のために重要な酵素である。従って、HSVは、ICP6遺伝子を欠失又は不活化すると正常な非分裂細胞では複製できない。しかし、分裂が盛んでRR活性が上昇した細胞では、ウイルスの欠落酵素が補われて複製が可能となる。

0024

本明細書において、遺伝子の欠失又は不活化とは、遺伝子の全部又は一部を欠失させるか、一部の塩基置換、修飾、不要な配列の挿入等を通じて、当該遺伝子の発現を抑制することを意味する。
内在性ICP6遺伝子の欠失又は不活化は、公知の方法又はそれに準ずる方法で当業者が行うことができ、例えば、相同組換えによる方法を用いることができる。例えば、ICP6遺伝子の一部と、ICP6遺伝子に無関係な配列とを含むDNA断片を適当なプラスミドベクタークローニングし、これをHSVに導入することによって、ICP6遺伝子の一部領域に相同組換えが生じ、ICP6遺伝子を分断して不活化することが可能である。また、ICP6遺伝子の上流と下流を含み、ICP6遺伝子を含まないDNA断片を構築し、相同組換えを起こさせることにより、ICP6遺伝子を欠失させることが可能である。

0025

本明細書において、腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータとは、所望の腫瘍細胞や組織において特異的に、その制御下にある遺伝子の発現を可能にするプロモータを意味する。

0026

本発明に用いられる組織特異的プロモータとしては、例えば、前立腺の細胞に特異的な前立腺特異的抗原(PSA)プロモータ;前立腺特異的膜抗原(PSMA)プロモータ;前立腺の細胞に特異的なPSESプロモータ(Lee SJ et al., Mol Ther., 6(3):415-421, 2002);オステオカルシン(OC)プロモータ(Matsubara S. et al., Cancer Res., 61(16):6012-6019, 2001);HER2/neuプロモータ;PEPCKプロモーターカゼインプロモーター;IgGプロモーター;絨毛膜性抗原プロモーター;エラスターゼプロモーター;ポルホビリノーゲンデアミナーゼプロモーター;インシュリンプロモーター;成長ホルモン因子プロモーター;アセチルコリン受容体プロモーター;アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター;α又はβグロビンプロモーター;T細胞受容体プロモーター;IL-2プロモーター;IL-2受容体プロモーター;ホエー(wap)プロモーター及びMHCクラスIIプロモーター;筋細胞に特異的なデスミンプロモータ(Liら、Gene 78:243,1989;Liら、J.Biol.Chem.266:6562,1991;Liら、J.Biol.Chem.268:10403,1993);ニューロンに特異的なエノラーゼプロモータ(Forss-Petterら、J.Neuroscience Res.16(1):141-156,1986);赤血球に特異的なβ-グロビンプロモータ(Townesら、EMBO J.4:1715,1985);やはり赤血球に特異的なτ-グロビン(tau-globin)プロモータ(Brinsterら、Nature 283:499,1980);下垂体細胞に特異的な成長ホルモンプロモータ(Behringerら、Genes Dev.2:453,1988);膵臓β細胞に特異的なインスリンプロモータ(Seldenら、Nature 321:545,1986);星状細胞に特異的なグリア細胞繊維性酸性タンパク質プロモータ(Brennerら、J.Neurosci.14:1030,1994);カテコールアミン作動性ニューロンに特異的なチロシンヒドロキシラーゼプロモータ(Kimら、J.Biol.Chem.268:15689,1993);ニューロンに特異的なアミロイド前駆タンパク質プロモータ(Salbaumら、EMBO J.7:2807,1988);ノルアドレナリン作動性ニューロンおよびアドレナリン作動性ニューロンに特異的なドーパミンβ-ヒドロキシラーゼプロモータ(Hoyleら、J.Neurosci.14:2455,1994);セロトニン/松果体細胞に特異的なトリプトファンヒドロキシラーゼプロモータ(Boularandら、J.Biol.Chem.270:3757,1995);コリン作動性ニューロンに特異的なコリンアセチルトランスフェラーゼプロモータ(Hershら、J.Neurochem.61:306,1993);カテコールアミン作動性/5-HT/D型細胞に特異的な芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)プロモータ(Thaiら、Mol.Brain Res.17:227,1993);ニューロン/精子形成精巣上体細胞に特異的なプロエンケファリンプロモータ(Borsookら、Mol.Endocrinol.6:1502,1992);結腸および直腸の腫瘍ならびに膵臓および腎臓の細胞に特異的なreg(膵臓結石タンパク質(pancreatic stone protein))プロモータ(Watanabeら、J.Biol.Chem.265:7432,1990);肝臓および盲腸の腫瘍、および神経鞘腫、腎臓、膵臓、および副腎の細胞に特異的な副甲状腺ホルモン関連ペプチドPTHrP)プロモータ(Camposら、Mol.Rnfovtinol.6:1642,1992);肝細胞に特異的なアルブミンプロモータ(Huber,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88:8099,1991);ならびに平滑筋細胞に特異的なカルポニンプロモータ(Yamamuraら、Cancer Res . 61:3969, 2001)が挙げられる。

0027

本発明に用いられる腫瘍特異的プロモータとしては、例えば、テロメラーゼ逆転写酵素プロモータ(hTERTプロモータ)(Komata et al., Cancer Res. 61, 2001:5796-5802);星状細胞や神経膠腫細胞に特異的なグリア繊維性酸性タンパク質プロモータ(GFAPプロモータ)(Vandier et al., Cancer Gene Ther. 7, 2000:1120-1126等);E2Fプロモータ;survivinプロモータ;COX-2プロモータ;EGD-2プロモータ;ELF-1プロモータ;低酸素特異的プロモータ;癌胎児性抗原CEA)プロモータ;乳癌細胞に特異的なストロメライシン3プロモータ(Bassetら、Nature 348:699,1990);非小細胞肺癌細胞に特異的なサーファクタントタンパク質Aプロモータ(Smithら、Hum.Gene Ther.5:29-35,1994);SLPI発現癌腫に特異的な分泌性ロイコプロテアーゼインヒビター(SLPI)プロモータ(Garverら、Gene Ther.1:46-50,1994);黒色腫細胞に特異的なチロシナーゼプロモータ(Vileら、Gene Therapy 1:307,1994;国際公開第WO94/16557号パンフレット;国際公開第WO94/004196号パンフレット);繊維肉腫/腫瘍原性細胞に特異的なストレス誘導可能grp78/BiPプロモータ(Gazitら、Cancer Res.55(8):1660,1995);脂肪細胞に特異的なAP2 adiposeエンハンサー(Graves,J.Cell.Biochem.49:219,1992);肝細胞に特異的なα-1アンチトリプシントランスチレチンプロモータ(Graysonら、Science 239:786,1988);多形神経膠芽腫細胞に特異的なインターロイキン-10プロモータ(Nittaら、Brain Res.649:122,1994);膵細胞乳房細胞細胞、卵巣細胞、および非小細胞肺癌細胞に特異的なc-erbB-2プロモータ(Harrisら、Gene Ther.1:170,1994);脳腫瘍細胞に特異的なα-B-クリスタリン/熱ショックタンパク質27プロモータ(Aoyamaら、Int.J.Cancer 55:760,1993);神経膠腫および髄膜腫の細胞に特異的な塩基性繊維芽細胞増殖因子プロモータ(Shibataら、Growth Fact.4:277,1991);扁平上皮癌、神経膠腫、および乳房腫瘍の細胞に特異的な上皮増殖因子受容体プロモータ(Ishiiら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:282,1993);乳癌細胞に特異的なムチン様糖タンパク質DF3、MUC1)プロモータ(Abeら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:282,1993);転移性腫瘍に特異的なmts1プロモータ(Tulchinskyら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:9146,1992);小細胞肺癌細胞に特異的なNSEプロモータ(Forss-Petterら、Neuron 5:187,1990);小細胞肺癌細胞に特異的なソマトスタチン受容体プロモータ(Bombardieriら、Eur.J.Cancer 31A:184,1995;Kohら、Int.J.Cancer 60:843,1995);乳癌細胞に特異的なc-erbB-3プロモータおよびc-erbB-2プロモータ(Quinら、Histopathology 25:247,1994);乳癌および胃癌の細胞に特異的なc-erbB4プロモータ(Rajkumarら、Breast Cancer Res.Trends29:3,1994);甲状腺癌細胞に特異的なチログロブリンプロモータ(Mariottiら、J.Clin.Endocrinol.Meth.80:468,1995);肝細胞癌細胞に特異的なα-フェトプロテインプロモータ(Zuibelら、J.Cell.Phys.162:36,1995);胃癌細胞に特異的なビリンプロモータ(Osbornら、Virchows Arch.A.Pathol.Anat.Histopathol.413:303,1988);肉腫に特異的なカルポニンプロモータ;ならびに肝細胞癌細胞に特異的なアルブミンプロモータ等が挙げられる。
腫瘍特異的プロモータは汎用性があって好ましく、なかでも、hTERTプロモータやE2Fプロモータが特に好ましく用いられる。後述する実施例で示すとおり、本発明者らは、腫瘍特異的プロモータとしてhTERTプロモータを用いたウイルス(T-hTERT)が、増殖の遅い癌においても有効であることを確認した。

0028

上記腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータのうち、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)プロモータ、PSESプロモータ、オステオカルシン(OC)プロモータ、及びE2Fプロモータが特に好ましい。

0029

本明細書において、「ICP6遺伝子が腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータの制御下で発現するように構成された発現カセット」とは、ICP6遺伝子が腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータの下流に作動可能に連結されたDNA構築物を意味する。
発現カセットは、ICP6遺伝子及びプロモータのほか、転写終結させるターミネータ配列、エンハンサーなどの調節エレメント選択マーカー(例えば、lacZ遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子ピューロマイシン耐性遺伝子ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子等)、スプライシングシグナルポリA付加シグナルリボソーム結合配列(S−D配列)などを含んでいてもよい。

0030

本発明に係る組換えHSVにおいて発現カセットは、機能する限りゲノム上のどの位置に挿入されていてもよいが、例えば、内在性ICP6遺伝子内に挿入されていることが好ましい。このような構成によれば、発現カセットを挿入することによって、同時に、内在性ICP6遺伝子を不活化することができる。
また、発現カセットは、内在性ICP6遺伝子の全部または一部を欠失させ、当該欠失部位に挿入してもよい。かかる構成により、自然の組換えを防ぎ、より安定な組換えHSV-1を作製することができる。

0031

また、発現カセットは、本来のICP6遺伝子と反対方向に挿入されることが好ましい。反対方向に挿入するとは、本来のICP6遺伝子の5’末端→3’末端方向と、発現カセットの5’末端→3’末端方向が反対向きになっていることを意味する。このような構成によれば、挿入したICP6遺伝子が内在性のICP6プロモータなどの影響を受けて発現することを防いで、正常細胞でHSVが増殖するのを防ぐことができる。

0032

本発明の第一の態様の組換え単純ヘルペスウイルスは、上記のとおり構成を有するので、正常な非分裂細胞では発現カセットのプロモータが機能せず、ICP6遺伝子が発現しないため複製できない。一方、分裂が盛んでRR活性が上昇した細胞では、ウイルスの欠落酵素が補われて複製が可能となる。また、腫瘍特異的プロモータや組織特異的プロモータが機能する細胞においては、内在性ICP6遺伝子が発現し、複製が可能となる。

0033

本発明の組換え単純ヘルペスウイルスの第二の態様は、内在性ICP6遺伝子が、腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータと機能的に連結されていることを特徴とする。このような単純ヘルペスウイルスも、正常な非分裂細胞ではプロモータが機能せずICP6遺伝子が発現しないため複製できない。一方、分裂が盛んでRR活性が上昇した細胞では、ウイルスの欠落酵素が補われて複製が可能となる。また、腫瘍特異的プロモータや組織特異的プロモータが機能する細胞においては、内在性ICP6遺伝子が発現し、複製が可能となる。

0034

本明細書において、遺伝子がプロモータと機能的に連結されているとは、遺伝子がプロモータの下流に作動可能に連結されていることを意味し、遺伝子がプロモータの制御下で発現する構成をいう。

0035

内在性ICP6遺伝子と腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータを機能的に連結するための方法は、公知の方法又はそれに準ずる方法を用いることができ、例えば、相同組換えによる方法を用いることができる。具体的には、内在性ICP6遺伝子のプロモータの上流と下流を含み、且つ、内在性プロモータの代わりに腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータを含むDNA断片を、適当なプラスミドベクターにクローニングしてHSVに導入する。これにより、ICP6遺伝子のプロモータ領域に相同組換えが生じ、内在性プロモータが、腫瘍特異的プロモータ又は組織特異的プロモータに置換される。
なお、本発明の組換え単純ヘルペスウイルスの第二の態様に用いられる腫瘍特異的プロモータと組織特異的プロモータは、上記第一の態様に用いられるものと同様である。

0036

本発明に係る組換えHSVは、野生型への復帰を防止してさらに安全性を高めるために、他の変異を含むことも好ましい。このような変異としては、例えば、内在性γ34.5遺伝子、ICP47遺伝子、α0遺伝子(ICP0遺伝子)、UL41遺伝子(vhs遺伝子)、UL56遺伝子の欠失又は不活化が挙げられる。

0037

γ34.5遺伝子は、HSV−1の病原性に関連した遺伝子で、これを欠失させた変異株では、正常細胞におけるウイルス複製能が著しく減弱することが知られている。正常細胞では、HSV−1感染に呼応して、二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(double stranded RNA-activated protein kinase;PKR)がリン酸化される。リン酸化PKRは翻訳開始因子eIF−2aをリン酸化し、その結果、ウイルス蛋白質を含む細胞内でのタンパク質合成が抑制される。γ34.5遺伝子産物は、リン酸化PKRの機能に拮抗するので、γ34.5遺伝子が機能すれば、正常細胞におけるウイルスタンパク質の合成は可能となるが、γ34.5遺伝子が機能しないと、正常細胞ではウイルスの複製が抑制されることになる。しかしながら、腫瘍細胞においては、普遍的にPKRのリン酸化が抑制されるため、γ34.5遺伝子が欠失又は不活化されている変異株であっても、ウイルスの複製が可能となる。

0038

γ34.5遺伝子の欠失又は不活化は、ICP6遺伝子の欠失又は不活化と同様に、当業者が公知の方法に従って行うことができる。γ34.5遺伝子を2コピーとも欠失させることが好ましい。

0039

ICP47遺伝子産物は、抗原提示関連トランスポーター(transporter associated with antigen processing;TAP)を阻害することによって、感染細胞のMHCClassIの発現を低下させ、ウイルスが宿主の免疫サーベイランスから逃れられるように作用する。ICP47遺伝子を欠失又は不活化すると、感染した腫瘍細胞のMHC ClassIの発現が維持されるため、抗腫瘍免疫が増強される。従って、ICP47遺伝子を欠失又は不活化したHSVを投与すると、患者において全身性免疫応答が誘導されるので、転移性癌の治療や予防にも有用である。

0040

ICP47遺伝子の欠失又は不活化も、ICP6遺伝子の欠失又は不活化と同様に、当業者が公知の方法に従って行うことができる。
ICP47遺伝子の不活化は、例えばHSVのBamHI x断片のBstEII−EcoN1断片を変異させることによって行うことができ、特に、BstEII−EcoNI断片の全部又は一部を欠失させることが好ましい。この方法によれば、α47遺伝子と重なるUS11遺伝子のプロモータも欠失するため、US11遺伝子の発現時期が早まる。US11遺伝子の早期発現は、γ34.5遺伝子のsecond site suppressorとして機能するので、γ34.5遺伝子の欠失又は不活化によって減弱したウイルス複製能を、腫瘍細胞に限って回復させるという効果が得られる。

0041

また、ICP47遺伝子の不活化方法として、ICP47遺伝子を、ICP47遺伝子の発現を抑制するペプチドをコードするDNAと融合させる方法も好ましい。かかるペプチドとしては、例えば、プロリングルタミン酸セリントレオニンに富み、急速なタンパク質分解のための分子内シグナルを提供するPEST配列が挙げられる(Rechsteiner et al., TrendsBiochem. Sci. 21(7):267-271, 1996)。
ICP47遺伝子の不活化によって、US11遺伝子の早期発現が生じない場合、本発明に係る組換えHSVは、US11遺伝子の上流にUS11遺伝子を早期発現させるプロモータをさらに含むことも好ましい。かかるプロモータとしては、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)IEプロモータ、HSV−1IEプロモータ、HSV−1Eプロモータ、その他HSVゲノムにおけるDNA複製開始前に活性なその他の異種プロモータを用いることができる。

0042

本発明に係る組換えHSVは、HSVのゲノムに上記の変異を加えることによって作製することができる。
また、γ34.5遺伝子、ICP6遺伝子及び/又はICP47遺伝子の欠失又は不活化を含むHSVとしては、上述のとおり、γ34.5遺伝子を2コピーとも欠失させ、ICP6遺伝子を不活化させたG207や、γ34.5遺伝子遺伝子の2コピーの欠失、ICP6遺伝子の不活化、及びICP47遺伝子の欠失を含むG47Δがある。従って、本発明の組換えHSVは、G207やG47Δにさらに改変を加えることによって作製することもできる。

0043

以上のとおり、本発明に係る組換えHSVは、正常細胞では複製できず、RR活性の高い腫瘍細胞、又は、ICP6遺伝子の発現を制御する腫瘍特異的プロモータ若しくは組織特異的プロモータが機能できる細胞においてのみ複製できるので、安全性が高い。また、腫瘍特異的プロモータ若しくは組織特異的プロモータが機能できる細胞においては、RR活性に依存することなく増殖できるので、RR活性の低い比較的増殖の遅い癌や良性腫瘍においても殺細胞効果を発揮する。

0044

(医薬組成物)
本発明は、上述した本発明に係る組換えHSVを含む医薬組成物も包含する。本発明に係る医薬組成物は、腫瘍細胞で特異的に増殖し、且つ、RR活性の低い比較的増殖の遅い癌や良性腫瘍においても殺細胞効果を発揮するので、従来の組換えHSVでは、十分な治療効果が得られなかった腫瘍に対しても有効である。

0045

本発明の医薬組成物は、ICP6遺伝子を特異的に発現させることができる組織特異的プロモータや腫瘍特異的プロモータが機能する細胞において殺細胞効果を発揮する。従って、本発明の医薬組成物は、組織特異的プロモータや腫瘍特異的プロモータが機能する細胞を破壊することによって治療されるあらゆる疾患に有効である。
本発明の医薬組成物が有効な疾患としては、例えば、神経系型腫瘍、例えば星状細胞腫乏突起膠腫、髄膜腫、神経繊維腫、神経膠芽腫、上衣腫、神経鞘腫、神経繊維肉腫神経芽細胞腫下垂体部腫瘍(例えば、下垂体腺腫)、髄芽細胞腫黒色腫脳腫瘍、前立腺癌、頭頚部癌食道癌、腎癌、腎細胞癌膵臓癌、乳癌、肺癌結腸癌大腸癌、胃癌、皮膚癌卵巣癌膀胱癌、繊維肉腫、扁平上皮癌、神経外胚葉甲状腺腫瘍リンパ腫肝細胞腫中皮腫類表皮癌、良性腫瘍(例えば、甲状腺の良性腫瘍または良性前立腺肥大症)等が挙げられる。

0046

本発明の医薬組成物は、上述のとおりRR活性の低い腫瘍細胞においても高い効果を示すので、G207やG47Δでは十分に効果が得られないことがあった増殖の遅い腎癌、前立腺癌、乳癌、軟骨肉腫、髄膜腫等の良性腫瘍に特に有用である。一方、本発明の医薬組成物は、RR活性の高い腫瘍細胞においては、腫瘍細胞のRR活性に依存する従来の組換えHSVと同等の殺細胞効果を示すので、これらの腫瘍においても有用である。

0047

本発明の医薬組成物の投与方法は特に限定されず、例えば、静脈内、動脈内、脳室内腹腔内、胸腔内脊髄腔内、皮下、皮内、表皮内筋肉内、粘膜表面(例えば、眼、鼻腔内、口腔、腸、直腸、尿路表面)内に投与されうる。好ましくは、注射、内視鏡又は外科的方法により、腫瘍組織に直接投与する。

0048

本発明の医薬組成物は、ヒトを含む哺乳動物体内にウイルスを導入するためのあらゆる製剤化方法によって製剤化することができる。例えば、本発明の医薬組成物は、アジュバントや任意の担体を含んでいてもよく、アジュバントや担体を添加せずに無菌生理食塩水又は無菌緩衝生理食塩水のような生理学的に許容される溶液で単に希釈したものでもよい。

0049

本発明の医薬組成物は、本発明の組換えHSVを治療有効量含む。本明細書において、治療有効量とは、治療する疾患の一つ又は複数の症状が、それによりある程度緩和される作用物質の量を意味する。抗腫瘍剤の場合、腫瘍サイズの低下;腫瘍の転移の阻害(遅延又は停止);腫瘍増殖の阻害(遅延又は停止)、及び癌と関連する一つ又は複数の症状の緩和、の少なくとも1つを示す量を意味する。具体的な投与量は、症状の程度、投与対象年齢性別、体重、感受性差、投与方法、投与時期投与間隔、製剤の性質、プロモータの強度等により、当業者が適宜決定することができる。
本発明の医薬組成物は、例えば、約101〜約1012プラーク形成単位(pfu)、好ましくは約107〜約1010pfu、さらに好ましくは約108pfu〜約5×109を、注射によりそれぞれ1回又は数回に分けて投与することができる。

0050

また、本発明の医薬組成物は、さらに他の有効成分を含有することもできるし、他の有効成分を含有する医薬組成物と組み合わせて用いることもできる。

0051

なお、本明細書において用いられる用語は、特定の実施態様を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。
また、本明細書において用いられる「含む」との用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記述された事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを排除しない。

0052

異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書及び関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、又は、過度形式的な意味において解釈されるべきではない。

0053

本発明の実施態様は模式図を参照しつつ説明される場合があるが、模式図である場合、説明を明確にするために、誇張されて表現されている場合がある。

0054

以下に示す本発明の実施例及び試験例は例示であり、本発明は以下に示す具体例に限定されるものではない。当業者は、以下に示す実施例に様々な変更を加えて本発明を最大限に実施することができ、かかる変更は本願特許請求の範囲に包含される。
なお、以下の実験で使用した細胞は、Vero細胞アフリカミドリザル腎臓)、U87MG細胞、及びOSRC2細胞は、ATCCより入手し、10%FCSを加えたDMEM培地(Collegro社)で培養した。DU145細胞はATCCより入手し、10%FBS、1%非必須アミノ酸、及び1%ピルビン酸ナトリウムを加えたMEM培地で培養した。
1.組換えHSV-1の作製
本発明に係る組換えHSVとして、腫瘍特異的ヒトテロメラーゼ逆転写酵素プロモータ(hTERTプロモータ)、前立腺特異的PSESプロモータ、及びオステオカルシンプロモータ(OCプロモータ)によってICP6遺伝子が制御されている組み換えHSV-1(以下、それぞれ順に、「T-hTERT」、「T-PSES」、「T-OC」という。)を作製した。また、コントロールとしては、ICP6遺伝子の一部が欠失し、γ34.5遺伝子とα47遺伝子にはG47Δと同一の変異を有するT-01を用いた。
各ウイルスのゲノムの模式図を図1に示す。上段ラインボックスは、HSV-1 DNAの長短ユニーク配列(それぞれUL、US)のそれぞれに隣接する末端もしくは逆方向の長短の反復配列を示す。図示されるとおり、いずれのウイルスも、2ヶ所のγ34.5遺伝子に1.0kbの欠失、α47遺伝子に312bpの欠失、ICP6遺伝子に894bpの欠失を有する。各プロモータで制御されたICP6遺伝子を含む発現カセットは、ICP6遺伝子が内在性ICP6遺伝子と反対方向になるように、内在性ICP6遺伝子内に挿入されている。発現カセットには、lacZ遺伝子がマーカーとして挿入されている。太い矢印は転写領域を示す。
これらのウイルスは、本発明者らが開発したバクテリア人工染色体(BAC)と2つのリコンビナーゼステム(Cre/loxP及びFlp/FRT)を用いたウイルス療法用組換えHSV-1の製造方法(T-BACシステム;Fukuhara et al., Cacner Res 65:10663-10668, 2005)に従って作製した。即ち、図1に示される各カセットを含むシャトルベクターを作製し、これをT-BACのloxP部位にCreリコンビナーゼを用いて挿入して、得られた構築物FLP発現プラスミドと共にVero細胞(アフリカミドリザル腎臓)にコトランスフェクトし、FRTで挟まれる部位をT-BACから切り出した。その後、ウイルスを増殖させ、限界希釈法クローンを単離し、制限酵素消化サザンブロッティングにより目的のウイルスが得られたことを確認した。以下、より具体的に説明する。

0055

(1)シャトルベクターの作製
ICP6遺伝子フラグメントは、図2に示すとおり、3分割してPCRにより増幅し、得られたフラグメントを順にプラスミドに挿入して連結して3.4kbのフラグメントを得た。ICP6-1、ICP6-2、及びICP6-3の各フラグメントの増幅に用いたプライマーを配列番号:1〜6に示す。ICP6の配列は、ABI377 DNA auto-sequencer(Applied Biosystems社)により確認した。
続いて、45bpのFRTアダプター、50bpのloxPアダプター、pcDNA6E/Uni-lacZ(Clontech社)由来のlacZ遺伝子、3.4kbのICP6遺伝子、λHindIIIの3,989bpのフラグメント、及び制限酵素(ScaI、SpeI、SbfI、AflII、Acc65I、NheI、SwaI及びSalI)の認識配列を有する複数のクローニング部位を含む、シャトルベクターpVec-proを調製した。
hTERTのコアプロモータフラグメント(-367−+56)は、配列番号:7及び8に記載のプライマーを用いてpGL3-378(金沢大学のDr. Satoru Kyoより提供を受けた)からPCRで増幅した。hTERTプロモータの配列を確認後、pVec-proのSpeI部位に挿入し、pVec-hTERTを得た。
オステオカルシン(OC)プロモータフラグメントは、配列番号:9及び10に記載のプライマーを用いてOCプラスミド(インディアナ大学のDr. Chinghai Kaoから提供を受けたOC-luc inPGL3; Matsubara S. et al., Cancer Res., 61:6012-6019, 2001)からPCRで増幅した。OCプロモータの配列を確認後、pVec-proのSpeI/AflII部位に挿入し、pVec-OCを得た。
PSESプロモータは、PSESプロモータを含むプラスミド(インディアナ大学のDr. Chinghai Kaoから提供を受けたPSES in GL3-Basic; Lee SJ et al., Mol Ther., 6:415-421, 2002)から、467bpのAvrII/SmaIフラグメントとして得た。PSESプロモータをpVec-proのSpeI/SwaI部位に挿入し、pVec-PSESを得た。
T-01作製のためのシャトルベクターは、transgeneを挿入しないことを除き、Fukuharaらの方法(Fukuhara et al, 2005)に従って作製した。

0056

(2) T-BACプラスミドへのシャトルベクターの挿入
T-BACプラスミドと(1)で得られた各シャトルベクターの混合物をCreリコンビナーゼ(NEB社)存在下、37℃で30分インキュベートし、E.coli DH10Bにエレクトロポレートした。クロラムフェニコール(Cm; 15μg/ml)及びカナマイシン(Kan; 10μg/ml)を含むLBプレートにバクテリアをストリークし、37℃で一晩インキュベートした。各組換えT-BACプラスミドのDNAの完全性は、エンドヌクレアーゼ消化とゲル分析で確認した。

0057

(3)Vero細胞への組換えT-BACプラスミドのトランスフェクト〜ウイルスの精製
各組換えT-BACプラスミド及びpOG44(Life Technologies社)のVero細胞へのトランスフェクトは、Lipofectamine(Life Technologies社)を使用し、取扱説明書に従って行った。トランスフェクトした細胞はインキュベートし、子孫ウイルスは、倒立蛍光顕微鏡によりGFP陰性であること、及びX-gal染色によりlacZが陽性であることをもって確認した。単一クローンを得るために、限界希釈法を3ラウンド行った。
組換えウイルス回収し、ウイルスDNAの構造をHindIII消化により確認した。組換えウイルスの構造はサザンブロッティングによっても確認した。HindIII消化の後、DNAフラグメントは、1×Tris-borate-EDTA緩衝液中、0.6%(w/v)アガロースゲルで、30Vで18時間の電気泳動により分離した。
EcoRI(lacZの配列に対応)で消化したpcDNA6E/Uni-lacZのDNAプローブ、又は、hTERTのPCR産物のフラグメントは、AlkPhos DirectキットとCDP-Star detection(Amersham Biosciences社)を使用して標識した。

0058

(4) ICP6遺伝子発現の確認
各ウイルスのICP6遺伝子の発現をウェスタンブロッティングにより確認した。
約5×105個のDU145細胞に、各ウイルスをMOI=0.02で感染させた。48時間後、細胞をRIPA緩衝液(150mM NaCl、1% NP-40、0.5%DOC、50mM Tris-HCl、pH8.0)で洗浄し、同緩衝液中で上に10分間載置した後、遠心分離した。細胞溶解物(8μg)を10%SDSポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、semi-dry transfer blot system(Atto社)を使用してImmobilon-P transfer membrane(Millipore社)に転写した。0.1%(v/v)のTween 20及び5%(w/v)のスキムミルクを含むTBSで1時間ブロッキングした後、メンブレンをQ3299(1:250、ウイルスRRに対応)に対する一次抗体と共に1時間インキュベートし、洗浄し、ECLペルオキシダーゼで標識した抗ウサギ抗体(NA934VS;1:10000)及びHRPアビジンとインキュベートした。タンパク質を、ECL(enhanced chemiluminescence system; 富士フイルム社)によって検出した。
結果を図3に示す。T-hTERT、T-PSES、T-OCについては、RR(ICP6遺伝子産物)に相当する140kDaのバンドが観察されたが、T-01では観察されなかった。
T-hTERT及びT-01については、OSRC2細胞を用いたウェスタンブロッティングも行ったが、同様にT-hTERTについては140kDaのバンドが見られたが、T-01では見られなかった。

0059

2.組換えHSV-1のウイルス複製能の検討
作製した組換えHSV-1の複製能をin vitroで測定した。RR活性が低く、比較的増殖の遅い、腎癌OSRC2細胞及びDU145前立腺癌細胞を用いた。
<腎癌OSRC2細胞における複製能>
腎癌OSRC2細胞を6穴プレートに5.0×105個/wellで培養し、24時間後にウイルスをmultiplicities of infection (MOI)=0.01(5.0x103 plaque-forming units(PFU))で感染させ、48時間後にウイルスを回収し、細胞を剥離し、凍結融解を3サイクル行って溶解させ、Todoらの方法(Proc Natl Acad Sci USA, 2001, 98:6396-6401)に従って力価を測定した。2回の実験結果の平均値を図4に示す。
回収したウイルスのタイター(力価)は、T-01ウイルスでは2.2x104 pfu、T-hTERTは5.0x106pfuであり、本発明の組換えHSV-1は腎癌細胞におけるウイルス複製能が有意に上昇していることが確認された。

DU145前立腺癌細胞を6穴プレートに5.0×105個/wellで培養し、24時間後にウイルスをmultiplicities of infection (MOI)=0.01(5.0x103 plaque-forming units(PFU))で感染させ、48時間後にウイルスを回収し、力価を測定した。2回の実験結果の平均値を図5に示す。
回収したウイルスのタイター(力価)は、T-01ウイルスは7.8x103 pfu、T-hTERTは3.0x105pfu、T-PSESは3.6x105 pfu、T-OCは2.4x105 pfuであり、本発明の組換えHSV-1は前立腺癌細胞におけるウイルス複製能が有意に上昇していることが確認された。

0060

3.組換えHSV-1の安全性の検討
HSV-1に感受性のあるA/Jマウスの脳内に定位的にウイルスを投与して、安全性試験を行った。
1.0x106 pfuのT-01、1.0x106 pfuのT-hTERT、1.0x103 pfuの野生型HSV-1(strain F)の各ウイルスを5μlとして、A/Jマウス(6週齢、雌、各ウイルスにつきn=5)の脳の右半球に5分以上かけて注入した。Kopf stereotactic frame(Kopf Instruments社)を用いた。ケージを覆い、3週間、臨床症状を毎日観察した。結果を図6に示す。なお、図6以降の実施例において「mock」は、Vero細胞にウイルスを感染させない点を除き、ウイルスストックの生産と同様の工程を行って得られたmock-infected extractを意味する。
野生型HSV-1(strain F)投与群は、投与7日目までに全マウスが死亡した。T-hTERT投与群と、T-01投与群では、strain Fの1000倍量のウイルスを投与しているにもかかわらず、死亡したマウスはおらず、健康状態も全経過観察中良好であった。T-hTERTは少なくともT-01と同程度の安全性があることが確認された。

0061

4.組換えHSV-1の腎癌OSRC-2細胞に対する抗腫瘍効果の検討
Balb/cヌードマウスの皮下に、ヒト腎癌OSRC-2細胞を1x107個接種し、Fukuharaらの方法(Fukuhara et al, 2005)に従って腎癌皮下腫瘍モデルを作製した。
皮下腫瘍が径約5mmとなった時点(図中Day 0)で、mock又は2x105 pfuのT-01若しくはT-hTERTを腫瘍内に投与し、3日後(図中Day 3)に同量のウイルスを再投与した。腫瘍組織を測定し、長さ×幅×高さ(mm)により体積を求めた。結果を図7に示す。図中のエラー・バーは、平均値の標準誤差(SEM)を示す。
T-hTERT投与群は、mock及びT-01投与群に比較して有意に高い抗腫瘍効果を示した(t検定にてp<0.05)。T-01による抗腫瘍効果が得られなかったのは、腎癌OSRC-2細胞のRR活性が低いため、T-01ウイルスのICP6遺伝子欠失に伴うウイルスRRの欠落が補償されなかったためと考えられる。
次に、同様に作製した腎癌皮下腫瘍モデルにおいて、腫瘍径が8-9mmまで大きくなった時点(図中Day 0)で、mock又は2x105 pfuのT-01若しくはT-hTERTを腫瘍内に投与し、3日後(図中Day 3)に同量のウイルスを再投与した。結果を図8に示す。図中のエラー・バーは、平均値の標準誤差(SEM)を示す。
T-hTERTは、腫瘍が成長してから投与する遅延投与モデルにおいても、T-01と比較して有意に高い抗腫瘍効果を示し(t検定にてp<0.05)、T-hTERTは腫瘍が大きく成長してからも有効であることが確認された。

0062

5.組換えHSV-1の前立腺癌DU145細胞に対する抗腫瘍効果の検討
Balb/cヌードマウスの皮下に、ヒト前立腺癌DU145細胞を1x107個接種し、前立腺癌皮下腫瘍モデルを作製した。前立腺癌も、一般に、RR活性が低く増殖が遅いことが知られている。
皮下腫瘍が径約5mmとなった時点(図中Day 0)で、mock又は2x105 pfuのT-01若しくはT-hTERTを腫瘍内に投与し、3日後(図中Day 3)に同量のウイルスを再投与した。腫瘍組織を測定し、長さ×幅×高さ(mm)により体積を求めた。結果を図9に示す。図中のエラー・バーは、平均値の標準誤差(SEM)を示す。
T-01によっても抗腫瘍効果を得られたが、T-hTERTはT-01に比較しても有意に高い抗腫瘍効果を示した(t検定にてp<0.05)。

実施例

0063

6.組換えHSV-1の悪性脳腫瘍U87MG細胞に対する抗腫瘍効果の検討
Balb/cヌードマウスの皮下に、ヒト悪性グリオーマU87MG細胞を2x106個接種し、悪性脳腫瘍皮下腫瘍モデルを作製した。悪性脳腫瘍は、腫瘍細胞におけるRR活性が高く、増殖が速いことが知られている。
皮下腫瘍が径約5mmとなった時点(図中Day 0)で、mock又は2x105 pfuのT-01若しくはT-hTERTを腫瘍内に投与し、3日後(図中Day 3)に同量のウイルスを再投与した。腫瘍組織を測定し、長さ×幅×高さ(mm)により体積を求めた。結果を図10に示す。図中のエラー・バーは、平均値の標準誤差(SEM)を示す。
T-hTERTはコントロール群(mock)に対して有意に高い抗腫瘍効果を示したが(t検定にてp<0.05)、腫瘍細胞のRR活性が元来高いこの腫瘍に対しては、T-01とは有意な抗腫瘍効果の差を示さなかった。

0064

配列番号:1は、ICP6-1フラグメントのPCR増幅に用いたフォワードプライマーDNA配列である。
配列番号:2は、ICP6-1フラグメントのPCR増幅に用いたリバースプライマーのDNA配列である。
配列番号:3は、ICP6-2フラグメントのPCR増幅に用いたフォワードプライマーのDNA配列である。
配列番号:4は、ICP6-2フラグメントのPCR増幅に用いたリバースプライマーのDNA配列である。
配列番号:5は、ICP6-3フラグメントのPCR増幅に用いたフォワードプライマーのDNA配列である。
配列番号:6は、ICP6-3フラグメントのPCR増幅に用いたリバースプライマーのDNA配列である。
配列番号:7は、hTERTコアプロモータフラグメントのPCR増幅に用いたフォワードプライマーのDNA配列である。
配列番号:8は、hTERTコアプロモータフラグメントのPCR増幅に用いたリバースプライマーのDNA配列である。
配列番号:9は、OCプロモータフラグメントのPCR増幅に用いたフォワードプライマーのDNA配列である。
配列番号:10は、OCプロモータフラグメントのPCR増幅に用いたリバースプライマーのDNA配列である。

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