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技術 耐塩性、耐熱性、エタノール耐性、凝集沈降性に優れたエタノール発酵性酵母およびその利用

出願人 バイオアカデミア株式会社品川早苗
発明者 品川早苗
出願日 2011年1月11日 (8年8ヶ月経過) 出願番号 2011-549969
公開日 2013年5月20日 (6年4ヶ月経過) 公開番号 WO2011-086985
状態 特許登録済
技術分野 微生物、その培養処理 微生物による化合物の製造
主要キーワード 冷却施設 デンプン質原料 灰分濃度 回収状態 サトウキビ由来 バッチ目 バイオエタノール製造 温度耐性
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (11)

課題・解決手段

本発明の酵母は、高い耐塩性を有し、さらに高いエタノール生産性耐熱性エタノール耐性凝集沈降性を有し、具体的には、(a)2.0MのKClを含有するYPD培地で生育可能であり、(b)糖分15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有する廃糖蜜希釈液原料として、培養温度40℃で7〜10%(v/v)のエタノール生産し、(c)グルコース5%含有YPD培地にて35℃で12時間攪拌培養後、攪拌を停止してから1分以内に凝集沈降することができる。

概要

背景

エタノール発酵生産において、その製造コスト下げるためには、安価な発酵原料発酵収率の向上、冷却水の低減、蒸留エネルギーの低減などが重要である(非特許文献1、2)。このうち、発酵効率の向上と冷却水の低減、蒸留エネルギーの低減は、発酵に使用する酵母の特性に大きく依存する。これまでに発酵効率の向上については、高いエタノール生産性耐熱性耐酸性(特許文献1、4)、耐糖性エタノール耐性(特許文献2)、耐塩性(特許文献3)、凝集沈降性(特許文献4、5)などの観点から酵母の開発がなされている。また冷却水の低減、蒸留エネルギーの低減については、高温条件で発酵可能な酵母(特許文献4、5)の開発が知られている。

エタノール発酵に好適に使用される安価な原料として、廃糖蜜が知られている。廃糖蜜は、サトウキビなどの原料糖から粗糖搾り出した後の粘状黒褐色の液体である。廃糖蜜にはカリウムカルシウムマグネシウムなどの各種塩類が含まれており、その量は原料の産地や、粗糖を搾り出す回数によって異なるが、その濃度は一般に1.5〜4.5Mである。このため、廃糖蜜を原料とするエタノールの発酵生産においては、塩耐性を有することが必須であり、さらに上記の高いエタノール生産性、耐熱性、耐酸性、耐糖性、エタノール耐性、凝集沈降性を有する酵母の開発が望まれている。

概要

本発明の酵母は、高い耐塩性を有し、さらに高いエタノール生産性、耐熱性、エタノール耐性、凝集沈降性を有し、具体的には、(a)2.0MのKClを含有するYPD培地で生育可能であり、(b)糖分15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有する廃糖蜜希釈液を原料として、培養温度40℃で7〜10%(v/v)のエタノールを生産し、(c)グルコース5%含有YPD培地にて35℃で12時間攪拌培養後、攪拌を停止してから1分以内に凝集沈降することができる。

目的

このため、廃糖蜜を原料とするエタノールの発酵生産においては、塩耐性を有することが必須であり、さらに上記の高いエタノール生産性、耐熱性、耐酸性、耐糖性、エタノール耐性、凝集沈降性を有する酵母の開発が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

(a)2.0MのKClを含有するYPD培地で生育可能であり、(b)糖分15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有する廃糖蜜希釈液原料として、培養温度40℃で7〜10%(v/v)のエタノール生産し、(c)グルコース5%含有YPD培地にて35℃で12時間攪拌培養後、攪拌を停止してから1分以内に凝集沈降することを特徴とする酵母

請求項2

糖分15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有する廃糖蜜希釈液を原料として、培養温度38℃で8回以上の繰り返し回分培養が可能であることを特徴とする請求項1に記載の酵母。

請求項3

糖分15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有する廃糖蜜希釈液を原料として、培養温度40℃で4回以上の繰り返し回分培養が可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の酵母。

請求項4

サッカロミセスセレビシエに属することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酵母。

請求項5

サッカロミセスセレビシエBA11株(受託番号NITEBP−793)またはサッカロミセスセレビシエBA16株(受託番号NITEBP−794)である請求項4に記載の酵母。

請求項6

請求項1〜5のいずれかに記載の酵母を用いることを特徴とするエタノール製造方法

請求項7

廃糖蜜を含有する原料を用いることを特徴とする請求項6に記載のエタノール製造方法。

技術分野

0001

本発明は、耐塩性耐熱性エタノール耐性凝集沈降性に優れたエタノール発酵性酵母、および当該酵母を使用するエタノール製造方法に関するものである。

背景技術

0002

エタノール発酵生産において、その製造コスト下げるためには、安価な発酵原料発酵収率の向上、冷却水の低減、蒸留エネルギーの低減などが重要である(非特許文献1、2)。このうち、発酵効率の向上と冷却水の低減、蒸留エネルギーの低減は、発酵に使用する酵母の特性に大きく依存する。これまでに発酵効率の向上については、高いエタノール生産性、耐熱性、耐酸性(特許文献1、4)、耐糖性、エタノール耐性(特許文献2)、耐塩性(特許文献3)、凝集沈降性(特許文献4、5)などの観点から酵母の開発がなされている。また冷却水の低減、蒸留エネルギーの低減については、高温条件で発酵可能な酵母(特許文献4、5)の開発が知られている。

0003

エタノール発酵に好適に使用される安価な原料として、廃糖蜜が知られている。廃糖蜜は、サトウキビなどの原料糖から粗糖搾り出した後の粘状黒褐色の液体である。廃糖蜜にはカリウムカルシウムマグネシウムなどの各種塩類が含まれており、その量は原料の産地や、粗糖を搾り出す回数によって異なるが、その濃度は一般に1.5〜4.5Mである。このため、廃糖蜜を原料とするエタノールの発酵生産においては、塩耐性を有することが必須であり、さらに上記の高いエタノール生産性、耐熱性、耐酸性、耐糖性、エタノール耐性、凝集沈降性を有する酵母の開発が望まれている。

0004

特開2009−171912号公報
特開平10−262652号公報
特公平7−32701号公報
特開平5−236942号公報
特開昭59−135896号公報

先行技術

0005

図解バイオエタノール製造技術 社団法人アルコール協会編 工業調査会(株)発行(2007年)
図解バイオエタノール最前線大聖泰弘、三井物産(株)編 工業調査会(株)発行(2004年)

発明が解決しようとする課題

0006

本発明は、高い耐塩性を有し、さらに高いエタノール生産性、耐熱性、エタノール耐性、凝集沈降性を有する酵母を提供するとともに、当該酵母を用いるエタノール製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

本発明は、上記の課題を解決するために以下の発明を包含する。
[1](a)2.0MのKClを含有するYPD培地で生育可能であり、(b)糖分15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有する廃糖蜜希釈液を原料として、培養温度40℃で7〜10%(v/v)のエタノールを生産し、(c)グルコース5%含有YPD培地にて35℃で12時間攪拌培養後、攪拌を停止してから1分以内に凝集沈降することを特徴とする酵母。
[2]糖分15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有する廃糖蜜希釈液を原料として、培養温度38℃で8回以上の繰り返し回分培養が可能であることを特徴とする前記[1]に記載の酵母。
[3]糖分15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有する廃糖蜜希釈液を原料として、培養温度40℃で4回以上の繰り返し回分培養が可能であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の酵母。
[4]サッカロミセスセレビシエに属することを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の酵母。
[5]サッカロミセス セレビシエBA11株(受託番号NITEBP−793)またはサッカロミセス セレビシエBA16株(受託番号NITE BP−794)である前記[4]に記載の酵母。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の酵母を用いることを特徴とするエタノール製造方法。
[7]廃糖蜜を含有する原料を用いることを特徴とする前記[6]に記載のエタノール製造方法。

発明の効果

0008

本発明により、高い耐塩性、高いエタノール生産性、耐熱性、エタノール耐性、凝集沈降性を有する酵母、および当該酵母を用いるエタノール製造方法を提供することができる。本発明の酵母を用いれば、発酵収率が向上するとともに冷却水の低減や蒸留エネルギーを低減することができ、さらに酵母の遠心分離工程を省略できるので、バイオエタノールの製造コストを大幅に低減することが可能となる。また、塩含有量の高い廃糖蜜等を原料として効率よくエタノールを生産することができるので、原料コストを大幅に低減することが可能となる。

図面の簡単な説明

0009

2.0MのKClを含むYPD寒天培地における各種酵母の生育を検討した結果を示す図である。
KClを含まないYPD寒天培地における各種酵母の生育を検討した結果を示す図である。
BA11株の凝集沈降性を検討した結果を示す図である。
BA11株およびBA16株の凝集沈降性を検討した結果を示す図である。
BA11株と従来株Aの発酵性能を比較した結果を示す図である。
BA11株の40℃における繰り返し発酵性能を検討した結果を示す図である。
BA11株およびBA16株の発酵性能を検討した結果を示す図である。
BA11株の耐熱性を検討した結果を示す図である。
BA11株およびBA16株の耐熱性を検討した結果を示す図であり、(A)は38℃、(B)は43℃における生育を確認した結果を示す図である。
BA11株およびBA16株の倍数性解析した結果を示す図である。
(A)は酵母のrDNA領域を示す図であり、(B)はBA11株およびBA16株のrDNA領域の塩基配列を解析した結果を示す図である。

0010

〔酵母〕
本発明の酵母は、以下の(a)、(b)、(c)の特性を有するものであればよい。
(a)2.0MのKClを含有するYPD培地で生育できる。
(b)糖分15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有する廃糖蜜希釈液を原料として、培養温度40℃で7〜10%(v/v)のエタノールを生産する。
(c)グルコース5%含有YPD培地にて35℃で12時間攪拌培養後、攪拌を停止してから1分以内に凝集沈降する。

0011

本発明の酵母は、さらに以下の(d)、(e)の特性を有することが好ましい。
(d)糖分15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有する廃糖蜜希釈液を原料として、培養温度38℃で8回以上の繰り返し回分培養が可能である。
(e)糖分15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有する廃糖蜜希釈液を原料として、培養温度40℃で4回以上の繰り返し回分培養が可能である。

0012

上記(a)の特性を有することは、例えば、2.0MのKClを含有するYPD寒天培地に酵母を接種し、約35℃で約24時間培養することで確認できる。具体的には、2.0MとなるようにKClを添加したYPD寒天培地(酵母エキス1%(w/v)、ペプトン2%(w/v)、グルコース2%(w/v)、寒天1.5〜2%(w/v))を作製し、これに酵母を接種して約35℃に設定した恒温器中で約24時間静置した後に、酵母の増殖の有無を確認すればよい。

0013

上記(b)の特性を有することは、糖分15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有する廃糖蜜希釈液に酵母を加えて培養温度40℃で培養し、培養液中のエタノール濃度を測定することで確認できる。ここで、廃糖蜜はサトウキビなどの原料糖から粗糖を搾り出した後の粘状黒褐色の液体であり、廃糖蜜を水で希釈することにより廃糖蜜希釈液を調製することができる。糖分および灰分は、公知の方法により測定することができる。糖分の測定方法としては、例えば、高速液体クロマトグラフィー法が挙げられ、灰分の測定方法としては、例えば、廃糖蜜を約600℃で加熱して灰化させ、その重量を測定する方法が挙げられる。エタノール濃度は、例えば、ガスクロマトグラフィー法等の公知の方法で測定することができる。

0014

培養温度が40℃であること以外の培養条件は限定されない。以下に、培養方法の一例を示すが、限定されるものではない。
(1)前培養;500mlバッフル三角フラスコを用いて、5%グルコースを含むYPD培地100mLに凍結保存酵母株(例えば、15%グリセロール中で−80℃保存した酵母株)を2白金耳植菌し、38℃、170rpmで24時間振盪培養する。続いて、5%グルコース含有YPD培地3Lを入れた5Lジャーファーメンターに、培養液の全量を投入し、38℃、200rpm撹拌、0.5VVM通気の条件で24時間培養する。
(2)本培養;100L酒母槽に、糖分10%(w/w)となるように水で希釈した廃糖蜜希釈液(最終濃度0.8%の硫安添加したもの)60Lを入れ、その中に前培養液3Lを投入し、38℃、20HZ撹拌、0.5VVM通気の条件下で24時間培養する。
(3)発酵;10,000L発酵槽に糖分15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)となるように水で希釈した廃糖蜜(最終濃度0.8%の硫安添加したもの)4275Lを入れ、その中に214Lの上記培養菌体液を投入し、40℃、緩速撹拌(150rpm)、通気循環量15m3/hr条件下で17時間培養する。

0015

上記(c)の特性を有することは、グルコース5%含有YPD培地に酵母を接種し、35℃で12時間攪拌培養を行った後に攪拌を停止することで確認することができる。具体的には、200mLのフラスコに100mLのグルコース5%含有YPD培地(酵母エキス1%(w/v)、ペプトン2%(w/v)、グルコース5%(w/v))を入れ、酵母を接種(約0.5白金)して35℃、150rpmで撹拌培養を行い、培養開始12時間経過後に撹拌を停止する。ビーカーメスシリンダー等の適当な容器培養物を移して静置し、その1分後に、凝集沈降した菌体層と濁りのない液層とが分離していることを確認すればよい。

0016

上記(d)の特性を有することは、糖分15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有する廃糖蜜希釈液に酵母を添加して培養温度38℃で回分培養し、これを8回以上繰り返すことで確認することができる。一回の培養ごとに新たな培地を準備し、培養終了まで培地を加えない培養方法を回分培養という。繰り返し回分培養は、酵母の凝集沈降性を利用して、培養終了後に遠心分離を行うことなく酵母と上清(もろみ)とを分離し、分離した酵母に新たな培地を添加して次の培養を行う培養方法である。「8回以上の繰り返し回分培養が可能である」とは、8回以上の繰り返し回分培養を行ってもエタノール生産性が低下しない状態を維持できることをいう。「エタノール生産性が低下しない状態」とは、その回のエタノール生産量が、前回以前における最もエタノール生産量が高い回の70%以上であることを基準とする。具体的には、廃糖蜜を水で希釈することにより、規定の糖分および灰分を含有する廃糖蜜希釈液を調製し、適当な培養容器を用いて酵母を添加して38℃で培養する。培養終了後酵母を凝集沈降させて上清(もろみ)を回収し、分離した酵母に新たに廃糖蜜希釈液を添加して2回目の培養を開始する。これを8回以上繰り返し、各回の回収した上清中のエタノール濃度を測定して、エタノール生産性が低下しない状態を維持していることを確認する。

0017

上記(e)の特性を有することは、糖分15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有する廃糖蜜希釈液に酵母を添加して培養温度40℃で回分培養し、これを4回以上繰り返すことで確認することができる。具体的には、上記(d)の特性を確認する方法において、培養温度を40℃に変更し、繰り返し回数を4回以上に変更すればよい。

0018

本発明の酵母としては、例えば、子嚢菌門のSaccharomyces属、Candida属、Torulopsis属、Zygosaccharomyces属、Schizosaccharomyces属、Pichia属、Yarrowia属、Hansenula属、Kluyveromyces属、Debaryomyces属、Geotrichum属、Wickerhamia属、Fellomyces属、Sporobolomyces属に属するものが挙げられ、なかでもSaccharomyces(サッカロミセス)属に属するものが好ましく、特に好ましくはSaccharomyces cerevisiae(サッカロミセスセレビシエ)である。

0019

本発明の酵母は、天然の酵母または公知の育種方法(例えば、突然変異誘導法細胞融合法、性的接合法など)によって作出した酵母についてスクリーニングを行い、上記(a)、(b)および(c)の特性を有するものを選択することにより取得することができる。このような酵母として、本発明者が突然変異誘導法により作出したサッカロミセスセレビシエBA11株、および、細胞融合法により作出したサッカロミセス セレビシエBA16株が挙げられる。サッカロミセス セレビシエBA11株(受託番号NITEBP−793)、および、サッカロミセス セレビシエBA16株(受託番号NITE BP−794)は、それぞれ独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292−0818日本国千葉県木更津市かずさ足2−5−8)に国際寄託済みである(受託日:2009年8月11日)。

0020

〔エタノール製造方法〕
本発明のエタノール製造方法は、上記本発明の酵母を用いるものであればよい。したがって、エタノール製造における個々の具体的な工程は特に限定されない。例えば、非特許文献1、非特許文献2等に記載された公知のバイオエタノールの製造方法から使用する原料等に応じて適宜選択し、使用することができる。

0021

本発明のエタノール製造方法に使用する酵母は、高いエタノール生産性を有するので、どのような原料を用いても効率よくエタノールを生産することができる。例えば、サトウキビ、テンサイサトウキビ由来の廃糖蜜等の糖質原料トウモロコシジャガイモサツマイモ、イネ、ムギ類等のデンプン質原料セルロース系バイオマスなどを好適に用いることができるが、これらに限定されるものではない。本発明のエタノール製造方法に使用する酵母は、高い耐塩性を有するので、塩濃度の高い原料を好適に用いることができる。塩濃度の高い原料としては、サトウキビ由来の廃糖蜜が挙げられる。サトウキビ由来の廃糖蜜中の塩濃度は、産地、粗糖の回収状態等によって異なるが、例えば本発明者が使用した縄産サトウキビから粗糖を3回回収した後の廃糖蜜の分析結果によれば、マグネシウムイオン濃度が0.7〜1.1%(w/w)、カリウムイオン濃度が5.6〜9.4%(w/w)、カルシウム濃度が1.1〜1.8%(w/w)であり、灰分濃度として約15〜20%(w/w)を含有しているものであった。本発明のエタノール製造方法によれば、本来エタノール発酵用としては利用価値の低いサトウキビ由来の廃糖蜜を原料として利用できるので、原料コストを低減することが可能となる。

0022

本発明のエタノール製造方法に使用する酵母は、優れた耐熱性を有するので、発酵工程を38〜40℃程度の高温で行うことができる。従来株は耐熱性が低いため30〜33℃で発酵工程を行う必要があり、そのため、冷却施設チラー)を用いて発酵槽を冷却することが必須であった。本発明のエタノール製造方法によれば、夏季においても地下水等で冷却するだけで十分であるため、冷却のための電力コストを大幅に節約することが可能となる。冷却コストの削減は熱帯亜熱帯地域でのエタノール生産に特に顕著である。さらに、セルロース原料セルラーゼによって糖化する場合、温度が高いほどセルラーゼの活性が高いので、本発明の酵母は、糖化とエタノール発酵を同時に行わせるエタノール製造方法に好適に使用することができる。

0023

本発明のエタノール製造方法に使用する酵母は、優れたエタノール耐性、凝集沈降性を有するので、本発明のエタノール製造方法において繰り返し回分培養法(「繰り返し回分発酵法」ともいう。)を好適に採用することができる。繰り返し回分培養法を採用することにより、酵母の遠心分離工程を省略でき、もろみを抜き取り、原料を追加するだけで、直ちに次の発酵サイクルを開始することができる。更に毎回酒母を作る必要がないので、製造コストを大幅に低減することが可能となる。

0024

以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

0025

〔実施例1:サッカロミセスセレビシエBA11株の作製〕
バイオアカデミア株式会社保存株のうちアルコール耐性高温耐性、凝集沈降性に優れたサッカロミセス セレビシエBA6株に対して、公知の突然変異誘導法(大嶋泰治編、酵母の分子遺伝学実験法、学会出版センター、1996年)に従い、EMS(エチルメタンスルフォネート)処理を加え、菌体を0.1M燐酸緩衝液(pH7.0)で洗浄後、高耐塩性、耐熱性を有する株を選択する目的で1.2M KClを含むYPD培地(酵母エキス10g、ポリペプトン20g、グルコース20g、水1000mL)中、42℃の培養温度で液体培地および寒天培地でスクリーニングした。最終的にグルコース20%と1.2M KClを含むYPD培地で培養し、エタノール発酵性(発酵速度および残糖)、凝集沈降性(沈降速度の目視)を指標にしてBA11株を選択した。沖縄産廃糖蜜(サトウキビから3回砂糖を回収した廃糖蜜)を水で希釈して糖分を約15%(w/w)含有するように調整した培養液中でBA6株およびBA11株を40℃で培養したところ、エタノール発酵性および凝集沈降性においてBA11株がBA6株より優れていることを確認した。サッカロミセス セレビシエBA11株は受託番号NITEBP−793として独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292−0818日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に国際寄託済みである(受託日:2009年8月11日)。

0026

〔実施例2:サッカロミセスセレビシエBA16株の作製〕
バイオアカデミア株式会社保存株のうち凝集沈降性とアルコール耐性において優れたサッカロミセス セレビシエBA5株と上記BA11株を細胞融合し、BA11株の特徴を維持しつつ凝集沈降性およびエタノール発酵能が向上した酵母株の作出を試みた。細胞融合は両菌株に別々の遺伝的マーカーをつけて、ポリエチレングリコールによって融合させ、遺伝的マーカーを相補する融合株を選択する公知の方法(大嶋泰治編、酵母の分子遺伝学実験法、学会出版センター、1996年)に従って行った。融合株を1.2M KClを含むYPD培地で42℃にて培養し、続いて同じ組成のYPD平板培地コロニーを形成させ、生育の良いコロニーを選択した。選択したコロニーを、沖縄産廃糖蜜(サトウキビから3回砂糖を回収した廃糖蜜)を水で希釈して糖分を約15%(w/w)含有するように調整した培養液を用いて40℃で培養し、最もエタノール発酵性に優れたBA16株を選択した。BA16株は、BA11株の特徴を維持するとともに、高温でのエタノール生産能力と凝集沈降性においてBA11株より優れていることを確認した。サッカロミセス セレビシエBA16株は受託番号NITEBP−794として独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292−0818日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に国際寄託済みである(受託日:2009年8月11日)。

0027

〔実施例3:耐塩性の検討〕
KClを含まないYPD寒天培地および2.0MのKClを含むYPD寒天培地に、BA11株、BA16株、BA6株およびS288C株(出芽酵母遺伝学研究用の標準株)の4種類の酵母をそれぞれ接種し、35℃で24時間培養した。
2.0MのKClを含むYPD寒天培地の結果を図1に、KClを含まないYPD寒天培地の結果を図2に示した。図1および図2から明らかなように、KClを含まないYPD寒天培地ではすべての菌株が生育できたが、2.0MのKClを含むYPD寒天培地では、BA6株およびS288C株は生育できなった。この結果は、BA11株およびBA16株が非常に優れた耐塩性を有していることを示すものである。

0028

〔実施例4:BA11株の40℃における発酵性能の検討〕
沖縄産廃糖蜜(サトウキビから3回砂糖を回収した廃糖蜜)を水で約3倍に希釈して糖分15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有するように調整し、この廃糖蜜希釈液を原料として、BA11株の発酵性能を検討した(培養方法の詳細は実施例6を参照)。結果を表1に示した。



表1から明らかなように、BA11株は、糖分15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有する廃糖蜜希釈液を原料として、培養温度40℃で7%(v/v)を超えるエタノールを生産した。この結果は、BA11株が耐熱性および高温におけるエタノール生産性に優れていることを示すものである。

0029

〔実施例5:凝集沈降性の検討(1)〕
BA11株を、グルコース5%含有YPD培地100mLを入れた200mLの三角フラスコ中で、恒温振とう培養機を用いて35℃、回転数150rpmの条件下で12時間攪拌培養した。攪拌を停止して100mLビーカーに移し1分後の状態を図3に示した。図3から明らかなように、BA11株は攪拌停止から1分以内に凝集沈降して液層の濁りがなくなった。

0030

〔実施例6:凝集沈降性の検討(2)〕
BA11株、BA16株およびS288C株(出芽酵母遺伝学研究用の標準株)を、グルコース5%含有YPD培地を入れた三角フラスコ中で、恒温振とう培養機を用いて35℃、回転数150rpmの条件下で12時間攪拌培養した。各酵母の培養液を十分混和して同時にメスシリンダーに移して静置した。静置直後(スタート)および1分経過後に写真撮影し、沈降性を比較した。
結果を図4に示した。図4から明らかなように、S288C株は全く沈降性が認められなかった。1分間の静置により、BA11株およびBA16株とも液層の濁りが目視で認められなくなり、液層と菌体層に分離した。BA16株の方がBA11株より優れた沈降性を示した。

0031

〔実施例7:BA11株と従来株Aの発酵性能の比較〕
沖縄産廃糖蜜(サトウキビから3回砂糖を回収した廃糖蜜)を水で約3倍に希釈して糖分約15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有するように調整した廃糖蜜希釈液を原料とした。従来株Aは33℃で培養し、BA11株は38℃で培養してエタノール生産性と糖の減少を測定した。具体的には、BA11株は以下の方法で培養を行った。
(1)前培養;−80℃の冷凍庫に15%グリセロール中で保存されていたBA11株を、500mlバッフル付三角フラスコに100mlの5%グルコースを含むYPD培地に2白金耳分を植菌し38℃、170rpmで24時間振とう培養した。5Lジャーファーメンターに5%グルコース含有YPD培地3Lを入れ、その中に培養液全量を投入し38℃、200rpm撹拌、0.5VVM通気の条件下で24時間培養した。
(2)本培養;100L酒母槽に水で糖分が約10%になるように希釈した廃糖蜜(最終濃度0.8%硫安添加)60Lを入れその中に前培養液3Lを投入し、38℃、20Hz撹拌、0.5VVM通気の条件下で24時間培養した。1000L培養槽に同組成の希釈廃糖蜜600Lを入れ、その中にこの培養菌体液30Lを投入し、38℃、20Hz撹拌、0.5VVM通気の条件下で24時間培養した。
(3)発酵;10,000L発酵槽に、糖分約15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)になるように希釈した廃糖蜜(最終濃度0.8%硫安添加)4275Lを入れ、その中に214Lの上記培養菌体液を投入し、38℃、緩速撹拌(150rpm)、通気循環量15m3/hr条件下で17時間培養した。発酵終了後撹拌および通気を停止し約2時間清置することによって、菌体を凝集沈降させて固液を分離し、上清のもろみを抜き出した。
(4)繰り返し回分発酵(回分培養);発酵槽中の沈降菌体液720Lに廃糖蜜希釈液(糖分約15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)、最終濃度0.8%硫安添加)4500Lを加え、(3)と同様の条件下で発酵させた。この操作を繰り返した。

0032

結果を図5に示した。BA11株、従来株A(図中、従来酵母)とも、糖を約50%エタノールに変換し、ほぼ理論値限界エタノール生成収率を得た。しかし、データを示していないが、従来株Aは34℃では生成収率が減少し38℃では全くエタノールを生産できないので、温度耐性(耐熱性)においてBA11株は従来株Aを大きく凌いでいた。本実施例ではBA11株を用いて38℃で8回の繰り返し回分培養が可能であることが確認できた。この結果はBA11株がエタノール耐性に顕著に優れていることを示している。なお、比較に用いた従来株Aでは33℃において4回の繰り返し回分培養を確認できた。

0033

〔実施例8:BA11株の40℃における繰り返し発酵性能〕
沖縄産廃糖蜜(サトウキビから3回砂糖を回収した廃糖蜜)を水で約3倍に希釈して糖分約15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有するように調整した廃糖蜜希釈液を原料として、BA11株の40℃における繰り返し発酵性能を検討した(培養方法の詳細は実施例6を参照)。
結果を図6に示した。この結果から、BA11株を用いて40℃で4回の繰り返し回分培養が可能であることが確認できた。なお、各バッチの生産性は1バッチ目が2.33g/h・L、2バッチ目が2.35g/h・L、3バッチ目が2.11g/h・L、4バッチ目が1.67g/h・Lであった。

0034

〔実施例9:BA11株およびBA16株の発酵性能〕
沖縄産廃糖蜜(サトウキビから3回砂糖を回収した廃糖蜜)を水で約3倍に希釈して糖分約15%(w/w)、灰分5〜6%(w/w)を含有するように調整した廃糖蜜希釈液を原料として、BA11株およびBA16株の発酵性能を検討した(培養方法の詳細は実施例6を参照)。1回目は30℃で21時間培養し、攪拌を止めて6時間静置して凝集沈降させた。上清を回収して新たに原料を添加し、2回目は38℃で16時間培養し、攪拌を止めて7時間静置した。
結果を図7に示した。BA11株は1コロニー(菱形)BA16株は3コロニー(丸、三角四角)を使用した。図7から明らかなように、BA16株は、BA11株と同等以上の発酵性能を有しており、特に高温(38℃)での発酵性能はBA11株より優れていることが確認できた。

0035

〔実施例10:耐熱性の検討(1)〕
約3倍希釈した廃糖蜜を含むYPD寒天培地にBA11株を接種し、種々の温度で24時間培養して耐熱性を検討した。対照として清酒酵母K7株(日本醸造協会)を使用した。結果を図8に示した。図8から明らかなように、BA11株は43℃でも生育可能であった。

0036

〔実施例11:耐熱性の検討(2)〕
YPD寒天培地にBA11株およびBA16株を接種し、38℃または43℃で12時間培養して耐熱性を検討した。対照としてS288C株(出芽酵母遺伝学研究用の標準株)を使用した。結果を図9に示した。図9から明らかのようにBA11株およびBA16株は43℃でも生育可能であった。

0037

〔実施例12:BA11株およびBA16株の倍数性の解析〕
比較株として、1倍体株SC288C(J. Biol. Chem. 246, 7817-7819. 1971)、2倍体株K14(清酒酵母協会14号、日本醸造協会)、4倍体株SC1333(別名NCYC1333、英国National Collection of Yeast Culture保存株)を用い、BA11株およびBA16株の倍数性を解析した。具体的には、YPD培地で30℃、16時間培養した対数増殖期細胞OD660が約0.1になるように希釈し、蛍光色素ヨウ化プロビジウム(PI)で染色した後、フローサイトメトリー法で1細胞あたりのDNA含量と、対応する細胞数を解析した。
結果を図10に示した。図10において各チャート横軸はDNA含量を表し、縦軸は細胞数を表す。図10から明らかなように、BA11株およびBA16株のDNA含量の分布は、比較菌株のK14(2倍体)と同様であった。したがって、BA11株およびBA16株は、いずれも2倍体であることが確認された。

0038

〔実施例13:BA11株およびBA16株のrDNA領域の塩基配列解析
核のリボゾームRNAをコードする領域(rDNA)は、酵母では細胞あたり約150コピー繰り返し配列を持ち、転写スプライスで除かれるITS1、ITS2(Internal Transcribed Spacer 1, 2、図11(A)参照)領域は進化の速度が速いため、同種の中での固有の菌株で異なる場合が多い。そのためITS領域の塩基配列は菌株の識別に用いることが可能である(Amplification and direct sequencing of fungal ribosomal RNA genes for phylogenetics in “PCRProtocols; A Guide to Methodsand Applications”, Academic Press. 1990)。
rDNAのITS1およびITS2領域の塩基配列の決定法、これらの領域の塩基配列の決定およびクローニングに用いたプライマーの配列はKawahataらの文献(Kawahata M. et al. Biosci. Biotechnol. Biochem. 71,1616-1620, 2007)に従った。出芽酵母遺伝学研究用の標準株であるS288C株(1倍体)を対照とした。BA11株、BA16株およびS288C株からそれぞれDNAを抽出し、PCR法でITS1およびITS2領域のDNAを増幅した。得られたDNA断片をプラズミドにクローニングして塩基配列を解析した。

0039

結果を図11(B)に示した。ITS1の領域Aにおいて、対照株(S288C株)は28番目からTが7個続くが、BA11株およびBA16株ではTが7個続く配列とTが9個続く配列の2種類の配列が同定された。ITS1の領域Bでは、BA11株において242番目のTがCに置換された配列が10クローン中1クローンだけに見出されたが、PCRにより生じたエラーの可能性がある。ITS1の領域Cの301番目が対照株ではCであるのに対しBA11株およびBA16株ではTであった。ITS2の領域Dでは対照株とBA16株ではTが8個続く配列を有したが、BA11株ではTが8個続く配列と9個続く配列の2種類の配列が同定された。領域Eにおいて、対照株は163番目からTが7個続く配列を有したが、BA11株およびBA16株ではTが6個続く配列であった。
BA11株およびBA16株がヘテロな配列の領域を持つことは両株が細胞融合法で作成されたヘテロ2倍体であることと合致している。BA11株およびBA16株がITS領域において少なくとも4箇所の配列が対照株と異なること、並びに上記Kawahataらの文献で解析されたSaccharomyces cerevisiae 29株のいずれとも異なるユニークな配列を有していることが判明したので、ITS領域の塩基配列はBA11株およびBA16株の識別に極めて有効であると考えられる。

実施例

0040

なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。

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