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技術 母乳または飲食品がアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性を評価する方法、およびアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性が減少された母乳または飲食品

出願人 学校法人埼玉医科大学
発明者 松下祥東丈裕
出願日 2010年10月26日 (8年9ヶ月経過) 出願番号 2011-538435
公開日 2013年3月21日 (6年4ヶ月経過) 公開番号 WO2011-052592
状態 特許登録済
技術分野 生物学的材料の調査,分析 特有な方法による材料の調査、分析 食品の調整及び処理一般
主要キーワード フィルター透過 フィルター状 中間液 塩化シアン 環境物質 スクシニルCoA 経口摂取量 液体画分
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図面 (4)

課題・解決手段

HPLCおよび質量分析により、母乳のTh2アジュバント活性の本体が、コエンザイムAであることを突き止め、コエンザイムAを標的としてアトピー性皮膚炎発症させる危険性を評価することが可能であること、およびコエンザイムAを除去または不活性化することにより、アトピー性皮膚炎を発症させる危険性が減少された飲食品または母乳を製造することが可能であることを見出した。

概要

背景

近年、環境要因免疫応答インターフェイスとして、樹状細胞(Dendritic cells:DC)が重要な役割を演じていることが明らかとなりつつある。樹状細胞とは、造血幹細胞起源単球から分化した細胞で、マクロファージB細胞とともに、主要な抗原提示細胞(antigen-presenting cells:APC)として知られている。樹状細胞は、ナイーブT細胞に抗原提示して該ナイーブT細胞の一次応答誘導できる、唯一プロフェッショナル抗原提示細胞(professional APC)として機能しており、特にヘルパーT細胞Th細胞)への分化誘導には、樹状細胞による抗原提示が必須とされている。樹状細胞による抗原提示は、食作用により取り込まれたタンパク質抗原ペプチドへと断片化され、該ペプチド(抗原ペプチド)がMHCクラスI分子MHCクラスII分子と結合し、該樹状細胞表面に輸送されることにより行われる。

一方、上記のような抗原提示に関与するタンパク質抗原とは異なり、抗原非特異的に樹状細胞の抗原提示機能を増加させ、免疫応答を増強するタンパク質抗原以外の活性物質も知られている。このような物質アジュバントと呼ぶ。アジュバントの一部は、未熟樹状細胞(immature DC:iDC)表面上の特定のTOLL-like receptor(TLR)と結合する。そのシグナルが細胞内に伝達されることにより当該未熟樹状細胞は活性化され、成熟樹状細胞(mature DC:mDC)へと分化する(例えば、非特許文献1参照)。成熟樹状細胞にはいくつかのタイプが知られており、それぞれがナイーブCD4陽性T細胞に対して異なる分化誘導活性を有している。一般に、Th1(T helper 1)細胞を誘導する成熟樹状細胞をDC1、Th2(T helper 2)細胞を誘導する成熟樹状細胞をDC2、Th17(T helper 17)細胞を誘導する成熟樹状細胞をDC17、Tr(T regulatory)細胞を誘導する成熟樹状細胞をDCrと呼ぶ。そして、未熟樹状細胞をDC1に分化させる活性を有するアジュバントをTh1アジュバント、DC2に分化させる活性を有するアジュバントをTh2アジュバント、DC17に分化させる活性を有するアジュバントをTh17アジュバント、DCrに分化させる活性を有するアジュバントをTrアジュバントと言う。

Th1アジュバントとしては、主として細菌によって産生されるリポ多糖類(lipopolysaccharide:LPS)などが、Th2アジュバントとしては、住血吸虫由来リン脂質であるフォスファチジルセリン(phosphatidylserine)などが、Th17アジュバントとしては、カードラン(curdlan)などが、Trアジュバントとしては、リソ・フォスファチジルセリン(lysophosphatidylserine)などが知られている(例えば、非特許文献2参照)。

Th細胞の機能の平衡状態崩れること(Thインバランス)によって多くの免疫疾患が生じることが知られており、例えば、Th1細胞の過剰活性化によって生じる疾患としては、1型糖尿病などの自己免疫疾患が、Th2細胞の過剰活性化によって生じる疾患としては、アトピー性皮膚炎喘息などのアレルギー性疾患が知られている。従って、アジュバントが、ナイーブCD4陽性T細胞をいずれのTh細胞に分化誘導する活性を有するかは、免疫応答反応において、さらには免疫疾患の治療においても重要となってくる。

我々の生活を取り巻く環境物質化学物質などの特定物質の中には、アジュバントとしての免疫応答修飾活性を有するものが多数存在する。実際、それらの特定物質のうちいくつかに関しては、アトピー性皮膚炎、花粉症気管支喘息などのアレルギー疾患の原因因子であることが知られており、現在でも人間の健康的な生活を脅かしている。従って、特定物質が有するアジュバント活性を評価すること、特に、いずれのTh細胞に対するアジュバント活性を有するかを評価することは、特定物質の人体に与える影響を予測する上でも重要であり、また特定物質を含む工業製品などの安全性や、特定物質を含む薬剤などの有効性を確認する上でも極めて重要である。

そこで、本発明者らは、樹状細胞を用いてTh細胞に対するアジュバント活性を評価する方法を開発した(特許文献1)。そして、樹状細胞としてTHP-1細胞を用い、アトピー性皮膚炎を発症した乳児が摂取した母乳におけるTh2アジュバント活性を検出した結果、母乳におけるTh2アジュバント活性とアトピー性皮膚炎との関連を見出している(非特許文献3)。

しかしながら、母乳におけるTh2アジュバント活性の本体は、いまだ明らかになっていない。

概要

HPLCおよび質量分析により、母乳のTh2アジュバント活性の本体が、コエンザイムAであることを突き止め、コエンザイムAを標的としてアトピー性皮膚炎を発症させる危険性を評価することが可能であること、およびコエンザイムAを除去または不活性化することにより、アトピー性皮膚炎を発症させる危険性が減少された飲食品または母乳を製造することが可能であることを見出した。

目的

本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、母乳のTh2アジュバント活性の本体を同定することにある

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

母乳または飲食品アトピー性皮膚炎発症誘導する危険性を評価する方法であって、母乳または飲食品におけるコエンザイムAを検出することを特徴とする方法。

請求項2

アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性が減少された母乳または飲食品の製造方法であって、母乳または飲食品におけるコエンザイムAを除去または不活性化することを特徴とする方法。

請求項3

請求項2に記載の方法により製造された、コエンザイムAが除去または不活性化された母乳または飲食品。

請求項4

請求項1に記載の方法に用いるための、下記(a)または(b)を含むキット。(a)コエンザイムAと結合する物質(b)(a)の物質が結合した固相

請求項5

請求項1に記載の方法に用いるための、下記(a)または(b)が結合された器具。(a)コエンザイムAと結合する物質(b)(a)の物質が結合した固相

請求項6

請求項1に記載の方法に用いるための、請求項5に記載の器具を含む装置。

請求項7

請求項2に記載の方法に用いるための、下記(a)または(b)を含むキット。(a)コエンザイムAと結合する物質またはコエンザイムAを不活性化する物質(b)(a)の物質が結合した固相

請求項8

請求項2に記載の方法に用いるための、下記(a)または(b)が結合された器具。(a)コエンザイムAと結合する物質またはコエンザイムAを不活性化する物質(b)(a)の物質が結合した固相

請求項9

請求項2に記載の方法に用いるための、請求項8に記載の器具を含む装置。

技術分野

0001

本発明は、母乳または飲食品アトピー性皮膚炎発症誘導する危険性を評価する方法、およびアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性が減少された母乳または飲食品に関し、より詳しくは、コエンザイムAを標的として、母乳または飲食品がアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性を評価する方法、およびコエンザイムAが除去または不活性化されることにより、アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性が減少された飲食品または母乳に関する。

背景技術

0002

近年、環境要因免疫応答インターフェイスとして、樹状細胞(Dendritic cells:DC)が重要な役割を演じていることが明らかとなりつつある。樹状細胞とは、造血幹細胞起源単球から分化した細胞で、マクロファージB細胞とともに、主要な抗原提示細胞(antigen-presenting cells:APC)として知られている。樹状細胞は、ナイーブT細胞に抗原提示して該ナイーブT細胞の一次応答を誘導できる、唯一プロフェッショナル抗原提示細胞(professional APC)として機能しており、特にヘルパーT細胞Th細胞)への分化誘導には、樹状細胞による抗原提示が必須とされている。樹状細胞による抗原提示は、食作用により取り込まれたタンパク質抗原ペプチドへと断片化され、該ペプチド(抗原ペプチド)がMHCクラスI分子MHCクラスII分子と結合し、該樹状細胞表面に輸送されることにより行われる。

0003

一方、上記のような抗原提示に関与するタンパク質抗原とは異なり、抗原非特異的に樹状細胞の抗原提示機能を増加させ、免疫応答を増強するタンパク質抗原以外の活性物質も知られている。このような物質アジュバントと呼ぶ。アジュバントの一部は、未熟樹状細胞(immature DC:iDC)表面上の特定のTOLL-like receptor(TLR)と結合する。そのシグナルが細胞内に伝達されることにより当該未熟樹状細胞は活性化され、成熟樹状細胞(mature DC:mDC)へと分化する(例えば、非特許文献1参照)。成熟樹状細胞にはいくつかのタイプが知られており、それぞれがナイーブCD4陽性T細胞に対して異なる分化誘導活性を有している。一般に、Th1(T helper 1)細胞を誘導する成熟樹状細胞をDC1、Th2(T helper 2)細胞を誘導する成熟樹状細胞をDC2、Th17(T helper 17)細胞を誘導する成熟樹状細胞をDC17、Tr(T regulatory)細胞を誘導する成熟樹状細胞をDCrと呼ぶ。そして、未熟樹状細胞をDC1に分化させる活性を有するアジュバントをTh1アジュバント、DC2に分化させる活性を有するアジュバントをTh2アジュバント、DC17に分化させる活性を有するアジュバントをTh17アジュバント、DCrに分化させる活性を有するアジュバントをTrアジュバントと言う。

0004

Th1アジュバントとしては、主として細菌によって産生されるリポ多糖類(lipopolysaccharide:LPS)などが、Th2アジュバントとしては、住血吸虫由来リン脂質であるフォスファチジルセリン(phosphatidylserine)などが、Th17アジュバントとしては、カードラン(curdlan)などが、Trアジュバントとしては、リソ・フォスファチジルセリン(lysophosphatidylserine)などが知られている(例えば、非特許文献2参照)。

0005

Th細胞の機能の平衡状態崩れること(Thインバランス)によって多くの免疫疾患が生じることが知られており、例えば、Th1細胞の過剰活性化によって生じる疾患としては、1型糖尿病などの自己免疫疾患が、Th2細胞の過剰活性化によって生じる疾患としては、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー性疾患が知られている。従って、アジュバントが、ナイーブCD4陽性T細胞をいずれのTh細胞に分化誘導する活性を有するかは、免疫応答反応において、さらには免疫疾患の治療においても重要となってくる。

0006

我々の生活を取り巻く環境物質化学物質などの特定物質の中には、アジュバントとしての免疫応答修飾活性を有するものが多数存在する。実際、それらの特定物質のうちいくつかに関しては、アトピー性皮膚炎、花粉症気管支喘息などのアレルギー疾患の原因因子であることが知られており、現在でも人間の健康的な生活を脅かしている。従って、特定物質が有するアジュバント活性を評価すること、特に、いずれのTh細胞に対するアジュバント活性を有するかを評価することは、特定物質の人体に与える影響を予測する上でも重要であり、また特定物質を含む工業製品などの安全性や、特定物質を含む薬剤などの有効性を確認する上でも極めて重要である。

0007

そこで、本発明者らは、樹状細胞を用いてTh細胞に対するアジュバント活性を評価する方法を開発した(特許文献1)。そして、樹状細胞としてTHP-1細胞を用い、アトピー性皮膚炎を発症した乳児が摂取した母乳におけるTh2アジュバント活性を検出した結果、母乳におけるTh2アジュバント活性とアトピー性皮膚炎との関連を見出している(非特許文献3)。

0008

しかしながら、母乳におけるTh2アジュバント活性の本体は、いまだ明らかになっていない。

0009

国際公開2006/054415号公報

先行技術

0010

Takeda K, Akira S. Cell Microbiol 5: 143-153, 2003
van der Kleij D, et al., J Biol Chem. 277(50): 48122-48129, 2002
アレルギー第57巻 第9・10号 第58回日本アレルギー学季学術大会号、「アトピー性皮膚炎患児摂取母乳の試験管内アジュバント活性評価法を用いたコホート研究」、社団法人 日本アレルギー学会、第14ページ、平成20年10月30日

発明が解決しようとする課題

0011

本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、母乳のTh2アジュバント活性の本体を同定することにある。さらなる本発明の目的は、同定されたTh2アジュバント活性の本体を標的としてアトピー性皮膚炎を発症させる危険性を評価する方法を提供すること、および該本体が除去または不活性化されることにより、アトピー性皮膚炎を発症させる危険性が減少された飲食品または母乳を提供することにある。

課題を解決するための手段

0012

本発明者らは、上記課題を解決すべく、まず、高速液体クロマトグラフィーHPLC)により、生後6ヶ月の時点でアトピー性皮膚炎を発症した患児の母乳におけるTh2アジュバント活性の本体の精製を試みた。その結果、この活性が、母乳における液相中に回収され、逆相HPLCにおいて、単一画分として溶出されることが判明した。本発明者らは、次に、この画分に対して、質量分析を行った。質量分析においては、多くのシグナルが検出されたが、その中の「Mi=384.7719、Mi+1=385.2754(Mi+1-Mi=0.5035)」のシグナルが、高Th2アジュバント活性の母乳においては検出される一方、低Th2アジュバント活性の母乳においては検出されないことが判明した。このシグナル分子の分子量を決定したところ、767.5292であり、この分子量は、コエンザイムAの分子量と完全に一致していた。コエンザイムAが母乳におけるTh2アジュバント活性の本体であることを裏づけるため、本発明者らは、次に、独自に開発した系で、コエンザイムAのTh2アジュバント活性を測定した。その結果、コエンザイムAは、in vitroにおいて、低濃度でも、Th2アジュバント活性を示すことが判明した。また、母乳におけるコエンザイムAの濃度は、患児のアトピー性皮膚炎と明らかな相関を示した。さらに、コエンザイムAのTh2アジュバント活性は、コエンザイムAを経口投与したマウスを用いた実験においても見出された。以上から、出生直後に摂取した母乳中に含まれるコエンザイムAが、乳児のアトピー性皮膚炎の発症を誘導していることが示唆された。

0013

コエンザイムAとアトピー性皮膚炎の発症の誘導との関係が示されたことから、本発明者らは、コエンザイムAを標的として、母乳または飲食品がアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性を評価することが可能であり、また、コエンザイムAを除去または不活性化することにより、アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性が減少された母乳または飲食品を製造することが可能であることを見出した。

0014

本発明は、上記知見に基づくものであり、より詳しくは、下記の発明を提供するものである。
(1)母乳または飲食品がアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性を評価する方法であって、母乳または飲食品におけるコエンザイムAを検出することを特徴とする方法。
(2) アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性が減少された母乳または飲食品の製造方法であって、母乳または飲食品におけるコエンザイムAを除去または不活性化することを特徴とする方法。
(3) (2)に記載の方法により製造された、コエンザイムAが除去または不活性化された母乳または飲食品。
(4) (1)に記載の方法に用いるための、下記(a)または(b)を含むキット
(a) コエンザイムAと結合する物質
(b) (a)の物質が結合した固相
(5) (1)に記載の方法に用いるための、下記(a)または(b)が結合された器具
(a) コエンザイムAと結合する物質
(b) (a)の物質が結合した固相
(6) (1)に記載の方法に用いるための、(5)に記載の器具を含む装置。
(7) (2)に記載の方法に用いるための、下記(a)または(b)を含むキット。
(a) コエンザイムAと結合する物質またはコエンザイムAを不活性化する物質
(b) (a)の物質が結合した固相
(8) (2)に記載の方法に用いるための、下記(a)または(b)が結合された器具。
(a) コエンザイムAと結合する物質またはコエンザイムAを不活性化する物質
(b) (a)の物質が結合した固相
(9) (2)に記載の方法に用いるための、(8)に記載の器具を含む装置。

発明の効果

0015

本発明により、コエンザイムAとアトピー性皮膚炎の発症の誘導との関係が見出されたことから、母乳または飲食品がアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性をコエンザイムAを標的として効率的に評価することが可能となった。また、コエンザイムAを除去または不活性化することにより、アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性が減少された母乳または飲食品を効率的に製造することが可能となった。

図面の簡単な説明

0016

分画された母乳におけるTh2アジュバント活性を検出した結果を示すグラフである。A.母乳試料遠心により、表面脂質、中間液相および沈殿の画分に分離し、cAMP指標にTh2アジュバント活性を検出した結果を示す。B.生後6カ月目にアトピー性皮膚炎を発症した群(AD(+))の母乳の液体画分をろ過したものについて、IL-5/IFNγを指標にTh2アジュバント活性を検出した結果を示す。
母乳の液相をC8 RP-HPLCにロードした結果を示すグラフである。実線は、A280を、点線は%ACNを示す。
in vitroにおける、コエンザイムAのTh2アジュバント活性を検出した結果を示すグラフである。A.cAMPを指標にTh2アジュバント活性を検出した結果を示す。B.IL-5またはIL-5/IFNγを指標にTh2アジュバント活性を検出した結果を示す。
in vivoにおける、コエンザイムAのTh2アジュバント活性を検出した結果を示すグラフである。A.コエンザイムAを経口投与したマウスから採取したCD3ε陰性細胞と、アロジェネイックなナイーブCD4陽性T細胞とを用いてリンパ球混合培養反応を誘導し、T細胞におけるIL-4、IL-5、およびIFNγの産生を検出した。B.Th2アジュバント活性を、IL-4/IFNγおよびIL-5/IFNγで表したグラフである。

0017

本発明は、コエンザイムAがTh2アジュバント活性を有し、その摂取により、アトピー性皮膚炎の発症が誘導されうるという、本発明者らの知見に基づく。従って、本発明は、母乳または飲食品がアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性を評価する方法であって、母乳または飲食品におけるコエンザイムAを検出することを特徴とする方法を提供する。

0018

本発明の方法に用いる「母乳」としては特に制限はなく、アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性を評価したい所望の母乳を用いることができる。母乳としては、ヒト、サルウシヒツジウマイヌ、マウス、ラットなど種々の哺乳動物由来のものを対象とすることができる。ヒトの乳児におけるアトピー性皮膚炎発症を誘導する危険性を評価する場合には、母乳は、出産直後のものであることが好ましい。ここで「出産直後」とは、出産後2週間以内、好ましくは1週間以内(例えば、4日以内)を意味する。本発明の方法により、出産直後の母乳におけるコエンザイムAを検出することで、それを摂取した乳児におけるアトピー性皮膚炎発症の危険性を評価することができる。

0019

本発明の方法に用いる「飲食品」としては特に制限はなく、アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性を評価したい所望の飲食品を用いることができる。飲食品としては、例えば、食品、健康食品、機能性食品栄養補助食品特定保健用食品医薬部外品などが挙げられる。具体的には、乳幼児用人工乳離乳食ヨーグルト乳飲料などの乳製品ジュース菓子類、麺・穀類インスタント食品サプリメントなどが考えられる。

0020

母乳または飲食品におけるコエンザイムAの検出は、例えば、コエンザイムAに特異的な抗体を用いたエンザイムイムノアッセイウェスタンブロッティングなどの公知の方法により測定することができる。コエンザイムAに対する抗体は、それを認識し得る限り、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよい。コエンザイムAに対する抗体は、コエンザイムAを抗原として用い、公知の抗体または抗血清製造法に従って製造することができる。例えば、ポリクローナル抗体は、コエンザイムAをウサギなどの免疫動物に免疫し、一定期間のにちに血液を採取し、血ぺいを除去することにより調製することが可能である。また、モノクローナル抗体は、コエンザイムAで免疫した動物抗体産生細胞骨腫瘍細胞とを融合させ、目的とする抗体を産生する単一クローンの細胞(ハイブリドーマ)を単離し、該細胞から抗体を得ることにより調製することができる。免疫に際しては、コエンザイムAは、必要に応じて、KLHなどの抗原性刺激のあるキャリアプロティンに結合して用いることができる。

0021

母乳または飲食品におけるコエンザイムAの検出は、コエンザイムAに結合する、上記抗体以外の物質を利用して検出することもできる。このような物質としては、例えば、コエンザイムAと結合するタンパク質酵素を含む)が挙げられる。コエンザイムAと結合する酵素は、例えば、デホスホCoAキナーゼアセチルトランスフェラーゼアシルCoAリダクターゼ、パルミトイルCoAヒドラーゼスクシニルCoAヒドラーゼ、シトレートシンターゼ、あるいは、これらの混合物でありうる。

0022

コエンザイムAの検出において、コエンザイムAに結合する抗体その他の物質は、必要に応じて、適宜標識されうる。標識としては、検出可能であれば特に制限はないが、例えば、蛍光標識酵素標識放射標識が挙げられる。

0023

また、母乳または飲食品におけるコエンザイムAの検出は、コエンザイムAの補酵素活性を指標として検出することもできる。検出の対象となる補酵素活性としては、例えば、アシル基(例えば、アセチル基)の転移活性が挙げられる(E. R. STADTMAN, et al., J. Biol. Chem. 191(1): 365-76, 1951参照のこと)。市販のキットを利用すれば、このような補酵素活性を簡便に検出することが可能である。例えば、Coenzyme A Assay kit(BioVision Research Products)を利用した場合、コエンザイムAの補酵素活性により生産された物質が、OxiRedプローブと反応し、色(λ=570nm)と蛍光(Ex=535/Em=587nm)が生じるため、これらを測定することにより、コエンザイムAの濃度を定量することが可能である。

0024

さらには、本実施例や特許第3780283号公報に記載のように、LC-MS法によって、コエンザイムAを検出することも可能である。例えば、オクチルシラン基(C8)が結合したシリカゲル基剤を用いた逆相クロマトグラフィーを行い、TFA-アセトニトリル濃度勾配により溶出した、コエンザイムAが含まれると考えられる所定の画分について、質量分析器により分析を行うことにより、コエンザイムAのピークを検出することが可能である。

0025

本発明の方法においては、母乳や飲食品を上記方法により評価した結果、母乳や飲食品が有意な濃度もしくは量でコエンザイムAを含むと評価された場合、その母乳や飲食品は、アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性があると評価される。

0026

ここで「有意な濃度もしくは量」とは、アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性があるレベルの濃度もしくは量を意味する。例えば、本発明の方法において母乳を用いる場合には、対照として、アトピー性皮膚炎を発症していない乳児の母乳におけるコエンザイムAの濃度の値を用い、母乳中のコエンザイムAの濃度が、この対照値よりも高いとき(好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上であるとき)、母乳検体は、アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性があると評価される。一般に、出産直後の母乳において、0.5nMの濃度以上のコエンザイムAが含まれていた場合、アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性があると評価され、濃度が1.0nM以上であった場合は、アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性が高いと評価される。この評価に基づいて、乳児における、アトピー性皮膚炎の発症を予防することが可能である。

0027

本発明は、また、アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性が減少された母乳または飲食品の製造方法であって、母乳または飲食品におけるコエンザイムAを除去または不活性化することを特徴とする方法を提供する。

0028

本発明の方法において、母乳または飲食品からコエンザイムAを除去するには、例えば、コエンザイムAと結合する物質を用いることができる。このような物質としては、例えば、上記のコエンザイムAに対する抗体や上記のコエンザイムAと結合する酵素が挙げられる。これら抗体や酵素、あるいは、コエンザイムAを生産する微生物からの抽出物を、例えば、ハロゲン化シアンで活性化させた、水に不溶性多糖類(例えば、ブロモシアンヨウ化シアン、あるいは塩化シアンで活性化させたセファロースセファデックスデキストランアガロースなど)に結合させ、コエンザイムAのアフィニティー精製に用いることができる(特開昭49-35584号公報、米国特許3935072号公報)。また、母乳または飲食品におけるコエンザイムAの不活性化には、例えば、コエンザイムAを不活性化する物質を用いることができる。このような物質としては、例えば、アロキサンが挙げられる(S. J. COOPERSTEIN., J. Biol. Chem. 232: 695-704, 1958)。アロキサンは、コエンザイムAと直接反応し、アセチル化反応阻害する。その他、エタノールアセトアルデヒド一酸化窒素がコエンザイムAを不活性化することが知られており(H. P. T. Ammon, et al., Biochem. Pharmacol. 18(1): 29-33, 1969、W. E. W. Roediger, Digestion 65: 191-195, 2002)、これらを本発明に利用することも考えられる。

0029

なお、本発明における「コエンザイムAを不活性化する物質」は、コエンザイムAと結合する活性を有する場合、「コエンザイムAと結合する物質」でもある。また、「コエンザイムAと結合する物質」は、コエンザイムAを不活性化する活性を有する場合、「コエンザイムAを不活性化する物質」でもある。

0030

コエンザイムAと結合する物質あるいはコエンザイムAを不活性化する物質は、それらが固相に結合可能である限り、それらを結合させた固相に、母乳や飲食品(材料や製造過程加工物などを含む)を適用することによって、母乳や飲食品からコエンザイムAを除去あるいは母乳や飲食品に含まれるコエンザイムAを不活性化することができる。母乳や飲食品を固相に適用する場合には、事前に、これらを蒸留水緩衝液、あるいは水溶性溶媒などに溶解させ、遠心などにより、不純物沈殿物を除去することが好ましい。

0031

本発明に用いる固相は、コエンザイムAを除去または不活性化するための物質が結合可能な表面を持つ固体である。この表面は、好ましくは疎水性の表面である。固相としては、例えば、シリカ粒子フィルター、固相抽出カラムポリマー材料フィルター材料ポリスチレンビーズ磁性微粒子ラテックス、あるいはこれらの表面を加工したものが挙げられる。

0032

本発明において、コエンザイムAの除去または不活性化のために、様々な手法を選択することが可能である。例えば、コエンザイムAを除去または不活性化するための物質が結合した固相に微粒子状のものを使用した場合、バッチ法によるコエンザイムAの除去が可能となる。すなわち、試料溶液中に、上記固相を懸濁させ、その後、コエンザイムAと固相との複合体を沈殿させ、液体成分を分離することで、コエンザイムAを除去することが可能である。この沈殿過程においては重力による沈殿のほかに、遠心分離操作により沈殿をさせることも可能である。また、微粒子に磁石により吸引される性質を付与しておけば、沈殿操作を磁石による吸引により行うこともできる。

0033

また、固相にフィルター状や固相カラム状のものを使用した場合、フィルター透過法によるコエンザイムAの除去あるいは不活性化が可能となる。この場合は、試料とコエンザイムAを除去または不活性化するための物質が結合した固相との接触は、試料がフィルターもしくはカラム中を透過する過程で行われる。

0034

また、コエンザイムAを除去または不活性化するための物質あるいは当該物質が結合した固相を結合させた器具(例えば、これら物質または固相で表面加工したフラスコビーカータンクなどの容器、これら物質または固相が充填されたカラムなど)を用いれば、ここに母乳または飲食品の試料を適用することにより、それらに含まれるコエンザイムAの除去または不活性化を行うこともできる。

0035

また、上記器具が設置された装置であって、その装置における試料の注入部に、試料を注入することにより、注入された試料が、器具におけるコエンザイムAを除去または不活性化するための物質と接触し、装置の排出部から、コエンザイムAが除去または不活性化された試料が回収される装置を用いれば、簡便に本発明の方法を実施することが可能である。例えば、コエンザイムAを除去または不活性化するための物質が結合した固相が充填されたカラムを利用する場合、当該装置には、カラム中で、試料溶液の流れを形成させるためのポンプボンベなどの機器や温度や処理時間の調節のための機器などが含まれうる。

0036

コエンザイムAを不活性化するための物質を用いる場合、当該物質を母乳または飲食品に添加して、母乳または飲食品に含まれるコエンザイムAを不活性化することもできる。この場合は、コエンザイムAを不活性化するための物質が、摂取した哺乳動物生体において有害でないものであることが望ましい。

0037

本発明は、上記の本発明の方法により製造された、コエンザイムAが除去または不活性化された母乳または飲食品を提供するものである。このような母乳または飲食品は、アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性が少ない母乳または飲食品として、有用である。本発明の母乳または飲食品は、特に、乳児が摂取する場合において、有効性が高いと考えられる。

0038

本発明は、また、上記本発明の母乳または飲食品がアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性を評価する方法、あるいは上記本発明のアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性が減少された母乳または飲食品の製造方法、に用いるための、キットを提供する。

0039

本発明のキットには、上記のコエンザイムAと結合する物質または当該物質が結合した固相が含まれる。これらは、上記した通り、必要に応じて適宜標識することにより、母乳または飲食品がアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性を評価するための試薬(あるいはその有効成分)となる。アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性が減少された母乳または飲食品の製造方法に用いる場合、キットは、コエンザイムAと結合する物質に代えて、上記のコエンザイムAを不活性化する物質を用いることもできる。本発明のキットには、さらに、その使用説明書が含まれていてもよい。

0040

本発明は、また、上記本発明の母乳または飲食品がアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性を評価する方法、あるいは上記本発明のアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性が減少された母乳または飲食品の製造方法、に用いるための、器具を提供する。

0041

本発明の器具は、上記のコエンザイムAと結合する物質または当該物質が結合した固相が結合されたものである。母乳または飲食品がアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性を評価する方法に用いる場合、本発明の器具に結合させる物質としては、コエンザイムAと結合する物質に代えて、上記のコエンザイムAを不活性化する物質を用いることもできる。

0042

本発明は、さらに、上記本発明の母乳または飲食品がアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性を評価する方法、あるいは上記本発明のアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性が減少された母乳または飲食品の製造方法、に用いるための、上記器具を含む装置を提供する。

0043

上記本発明のキット、器具、あるいは装置を用いれば、簡便に、母乳または飲食品がアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性を評価することが可能であり、また、簡便に、アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性が減少された母乳または飲食品を製造することが可能である。

0044

以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。

0045

なお、本実施例における材料および方法は、次の通りである。

0046

<コホート>
2007年1月から2008年5月までに千葉大医学部附属病院産科、JFE川鉄千葉病院を受診し、出生コホート調査へ参加同意の得られた妊婦から出生した児900名を対象とした。アトピー性皮膚炎(AD)の定義は、生後6か月時の質問票により2か月以上続くかゆみのある湿疹とした。生後6ヶ月時でのアトピー性皮膚炎児55名、対照健康児55名を選び、採取してあった母乳中のTh2アジュバント活性を測定した。

0047

<母乳の採取>
生後数日と生後1か月時の母乳を、ディスポーザブルポリスピッツに採取し、凍結保存(-80℃)した。凍結保存しておいた母乳を流水にて溶解し、1mlずつマイクロチューブ(1.5ml)に分注した。10,000g、10分4℃で遠心を行い、細胞(下層)と乳性脂肪上層)を分離した。乳性脂肪をアスピレーターで吸引して取り除いた後、中間のクリア水溶性画分をマイクロチューブ(1.5ml)にとって、4℃で保存した。

0048

<細胞内cAMP濃度の測定>
THP-1細胞を、加湿培養器中、37℃で、5% CO2の条件下、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリンおよびストレプトマイシン、および1% L−グルタミン補完したRPMI1640培地で培養した。50ng/mlのPMA(ホルボール12-ミリステート13-アセテート)に48時間曝したTHP-1細胞を洗浄し、その後、1mMの3-イソブチル-1-メチルキサンチンの存在下で、37℃で培養した。10分後、細胞を30%の母乳(AD:n=55、非AD:n=55)で10分間刺激し、cell lysis buffer(Molecular Devices)で溶解した。いくつかの実験においては、50ng/mlのPMAで48時間処理したTHP-1細胞を10μMのプロスタグランジンE2(PGE2)に曝した。細胞内cAMPレベルは、メーカー使用説明書に従い、CatchPointTM cyclicAMP fluorescent assay kit(Molecular Devices社)を用いて計測した。いくつかの実験においては、デルタ(Δ)-cAMPを、アジュバント刺激ありのPMA刺激を与えたTHP-1おけるcAMPの濃度から、アジュバント刺激なしのPMA刺激を与えたTHP-1におけるcAMPの濃度を差し引くことにより算出した。

0049

ヒト単球由来樹状細胞(Mo-DCs)とTリンパ球の調製>
ヒトMo-DCsおよびCD45RA陽性ナイーブT細胞(99%を超える純度)は、従前の報告(Takagi, R. et al., J Immunol 181: 186-189, 2008)に従い調製した。

0050

<樹状細胞を用いたT細胞分化解析
未熟Mo-DCsは、1〜10%の母乳液体画分または0〜10μg/mlのコエンザイムAで刺激した。液体画分またはコエンザイムAとの培養から2日後、混合リンパ球培養反応(MLR)を誘導するために、細胞成分をさらに、HLA-DR-非共有アロジェニックCD4陽性ネガティブT細胞とともに、10%ヒト血清を補完したRPMI1640培地で、6〜8日間培養した。その後、T細胞を抗CD3抗体と抗CD28抗体(BD Pharmingen社)で再刺激した。IFNγとIL-5のELISAキット(R&D systems社)を用いたELISAによるIFNγとIL-5の解析のために、培養上清を48時間後に回収した。

0051

<HPLC解析>
母乳の液相は、0.06% TFAで平衡化した、4.6×250mmのC8逆相(RP)-HPLCカラム(Shiseido)にロードした。A214とA280を継続的にモニターしながら、カラムを、室温下、1.0ml/分の流速で、0.052% TFA-アセトニトリル濃度勾配により溶出した。画分は、濃縮し、Speed Vac(Savant社)で乾燥させた。

0052

<質量分析>
マススペクトルは、エレクトロスプレーイオン化源を備えたLCMS-IT-TOF mass spectrometer(島津製作所)に記録した。試料は、0.2ml/分の流速にて、50%アセトニトリルと0.1%ギ酸の混合物を含む緩衝液でパルス注入された。操作のために、エレクトロスプレー電圧は、4.5kVにセットし、キャピラリー温度を200℃とした。窒素ガス噴霧は、1.5L/分でセットした。スペクトルは、200〜1000 質量/電荷(m/z)の範囲を、0.3秒毎に2分間スキャンすることにより取得した。スキャン時間における各スペクトルの統合予想された範囲における質量の計算のために、コンピュータプログラムLCMSソルーションを用いた。

0053

<コエンザイムA濃度の決定>
コエンザイムAの濃度は、Coenzyme A Assay kit(BioVision Research Products)を用いて、メーカー使用説明書に従い、決定した。

0054

<コエンザイムAを経口投与したマウスから採取したCD3ε陰性細胞を用いたリンパ球混合培養反応>
SJL/Jマウス(H-2s)とNc/Ngaマウス(非H-2s)をCharles River社と日本エスエルシー株式会社からそれぞれ購入した。SJL/Jマウスに50μg/mlのコエンザイムAを経口投与した。2日後に、「CD3ε¯ cell isolation kit」(Miltenyi Biotec社)を用いて、腸間膜リンパ節細胞よりCD3ε陰性細胞を得た。同日に、「CD4+ T cell isolation kit」と「CD62L+ T cell isolation kit」(Miltenyi Biotec社)を用いて、Nc/Ngaマウスの脾臓からCD62L陽性ナイーブCD4陽性T細胞を得た。その後、1×104のCD3ε陰性細胞と1×105のアロジェネイックなCD62L陽性ナイーブCD4陽性T細胞を96ウェル平底培養プレート共培養し、10%FCSが補充されたRPMI1640培地中で7日間、リンパ球混合培養反応(MLR)を誘導した。次いで、T細胞を抗CD3抗体および抗CD28抗体(Biolegends社)で再刺激した。培養上清を16時間後に採取し、IFNγ、IL-4およびIL-5のELISAキット(R&D systems社)を用いて、IFNγ、IL-4、およびIL-5に関して解析した。

0055

[実施例1]母乳におけるTh2アジュバント活性本体の精製と質量分析
本発明者らは、樹状細胞としてTHP-1細胞を用い、母乳におけるTh2アジュバント活性を検出した結果、アトピー性皮膚炎と関連した母乳において、cAMPの形成を指標としたTh2アジュバント活性が増加していることを見出している(非特許文献3)。そこで、本発明者らは、母乳を遠心により3つの画分、すなわち、細胞を含む沈殿、中間液相、表面脂質に分離した。これらの画分をPMA処理したTHP-1細胞と共培養し、cAMPを上昇させる活性を評価した。その結果、cAMPを上昇させる活性は、沈殿や脂質画分ではなく、液体画分に効率よく回収された(図1A)。この活性は、除菌のためろ過した後でも、そのまま残っていた。

0056

次に、本発明者らは、樹状細胞が仲介するT細胞分化の解析において、Th1/Th2サイトカインプロファイルを調査した。この解析では、Mo-DCsを用い、ろ過した母乳の液相による刺激を行った。この解析においては、母乳調製物は、樹状細胞のみと共培養した(T細胞は、母乳に曝さなかった)。LPSとフォルスコリンをそれぞれTh1アジュバントとTh2アジュバントの陽性対照として用いた(データは示していない)。その結果、母乳の液相は、高いIL-5/IFNγ比を示したことから、実際に、樹状細胞に作用してTh2細胞の分化を誘導する活性を持つことが判明した(図1B)。

0057

そこで、次に、本発明者らは、C8逆相HPLCを用いることにより、母乳の液相の精製を行った。30秒毎の画分のcAMP誘導活性を決定したところ、高cAMP誘導性の母乳における11.0〜11.5分の画分が、排他的に、最も高い活性を示す一方、低cAMP誘導性の母乳における11.0〜11.5分の画分は、このようなcAMP誘導活性を示さなかった(図2)。この画分は、A280シグナルをほとんど含んでいなかったことから、ほとんどタンパク質を含まないことが示唆された。15〜25分の画分は、多くのA280シグナルを示したが、cAMP誘導シグナルは示さなかった(データは示していない)。

0058

[実施例2]母乳中のTh2アジュバント活性の本体の質量分析による同定
本発明者らは、高cAMP誘導性の母乳における11.0〜11.5分の画分を質量分析により解析した。その結果、検出された多くのシグナルのうち、「Mi=384.7719、Mi+1=385.2754(Mi+1-Mi=0.5035)」のシグナルが、高活性の母乳において検出されたが、低活性の母乳においては検出されないことが判明した(表1)。

0059

0060

このシグナルの分子の分子量を算出したところ、767.5292であった。これは、コエンザイムAの分子量と完全に一致した。2つの他の母乳調製物の実験においても同様の結果が得られた。以上から、母乳中のコエンザイムAがTh2アジュバント活性に関与していることが示唆された。

0061

[実施例3] in vitroにおける、コエンザイムAのTh2アジュバント活性の解析
次いで、本発明者らは、樹状細胞を用い、in vitroにおいて、コエンザイムAのTh2アジュバント活性を試験した。Th2アジュバント活性は、MLRと細胞内cAMP濃度の変化により試験した。その結果、PMAで処理したTHP-1細胞は、10〜30μg/ml(13〜39μM)のコエンザイムAと共培養すると、細胞内cAMPが上昇した。さらに、Mo-DCsを1μg/mlのコエンザイムAで前処理すると、アロジェニックナイーブCD4陽性T細胞がTh2細胞に分化した(図3B)。以上から、コエンザイムA自体にTh2アジュバント活性があることが判明した。

実施例

0062

[実施例4] in vivoにおける、コエンザイムAのTh2アジュバント活性の解析
さらに、本発明者らは、コエンザイムAがin vivoにおいてTh2アジュバント活性を示すか試験した。マウスにコエンザイムAを含む飲用水(10〜20μg/kg/日)を経口投与した。この投与量は、母乳が最も高いTh2アジュバント活性を示した幼児によるコエンザイムAの経口摂取量に対応する。CD3ε陰性細胞は、コエンザイムA投与の2日後に、腸間膜リンパ節より単離し、アロジェネイックなCD62L陽性ナイーブCD4陽性T細胞と共培養した。このMLR解析において、高濃度のIL-4とIL-5が有意に誘導された(図4A)。IFNγにおいては統計的有意差は認められなかった(図4A)。IL-4/IFNγ比およびIL-5/IFN比は、処理したマウスにおいて顕著に高かった(図4B)。以上から、in vivoにおいても、コエンザイムAにTh2アジュバント活性があることが判明した。

0063

以上説明したように、本発明によれば、母乳または飲食品におけるアトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性をコエンザイムAを標的として効率的に評価することが可能となる。また、コエンザイムAを除去または不活性化することにより、アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性が減少された母乳または飲食品を効率的に製造することが可能となる。従って、本発明は、アトピー性皮膚炎の発症予防などの医療分野において、また、アトピー性皮膚炎の発症を誘導する危険性の少ない母乳や飲食品の開発などの食品分野において、大きく貢献しうるものである。

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