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技術 セルロース系樹脂およびその製造方法

出願人 日本電気株式会社
発明者 位地正年文成日田中修吉甲斐洋行
出願日 2010年10月4日 (10年1ヶ月経過) 出願番号 2011-535374
公開日 2013年3月4日 (7年8ヶ月経過) 公開番号 WO2011-043279
状態 特許登録済
技術分野 多糖類及びその誘導体
主要キーワード 付加セル 鉱物質粒子 モノカルボン酸由来 イミダゾリウム系イオン液体 破断ひずみ グラフト反応効率 破断歪み カシューナッツ殻液
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この項目の情報は公開日時点(2013年3月4日)のものです。
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課題・解決手段

セルロース又はその誘導体のセルロース水酸基と、カルダノール又はその誘導体のフェノール性水酸基を利用して、該セルロース又はその誘導体に該カルダノール又はその誘導体が結合されてなるセルロース系樹脂

概要

背景

植物を原料とするバイオプラスチックは、石油枯渇対策温暖化対策に寄与できるため、包装容器、繊維などの一般製品に加え、電子機器自動車等の耐久製品への利用も開始されている。

しかし、通常のバイオプラスチック、例えば、ポリ乳酸ポリヒドロキシアルカネート、デンプン変性物などは、いずれもデンプン系材料、すなわち可食部を原料としている。そのため、将来の食料不足への懸念から、非可食部を原料とする新しいバイオプラスチックの開発が求められている。

非可食部を原料とするバイオプラスチックとしては、すでに、非可食部である木材や草木の主要成分であるセルロースを利用した種々のバイオプラスチックが開発され、製品化されている。

セルロースは、β−グルコース重合した高分子であるが、結晶性が高いため、硬くて脆く、熱可塑性もない。さらに、多くの水酸基を含有するため吸水性が高く、耐水性が低い。そこで、セルロースの特性を改善するための種々の検討が行われている。

例えば、特許文献1(特開平11−255801号公報)には、水酸基を有するセルロースアセテートにε−カプロラクトン開環グラフト重合させてなる、熱可塑性を有する生分解性グラフト重合体が開示されている。

一方、セルロース以外の非可食部成分を利用した材料の開発も行われている。例えば、カシューナッツの殻由来カルダノールは、安定した生産量に加え、特徴的な分子構造から機能性にも優れているため、様々な用途に適用されている。

カルダノールを利用した例として、特許文献2(特開平10−8035号公報)には、アラミドパルプセルロース繊維からなる繊維基材炭酸カルシウムカシューダストからなる充填材、及びフェノール樹脂からなる結合材を用いて形成されたブレーキ用の摩擦材が開示されている。特許文献3(特開2001−32869号公報)には、アラミド繊維とセルロース繊維からなるベース基材グラファイトとカシューダストからなる充填材、及び有機無機複合バインダを用いて形成された摩擦材が開示されている。この摩擦材は、自動車等の動力伝達系のクラッチフェーシングに適用されることが記載されている。

非特許文献1(George John et al., Polymer Bulletin, 22, p.89-94(1989))には、紙シートをカルダノールに浸し、この紙シートを構成するセルロースにカルダノールを結合するグラフト化反応を行うことによって、紙の耐水性を向上できることが記載されている。このグラフト化反応においては、ボロントリフルオリドジエチルエーテル(BF3−OEt2)の存在下で、カルダノールの末端二重結合とセルロースのヒドロキシ基が結合することが記載されている。

概要

セルロース又はその誘導体のセルロース水酸基と、カルダノール又はその誘導体のフェノール性水酸基を利用して、該セルロース又はその誘導体に該カルダノール又はその誘導体が結合されてなるセルロース系樹脂

目的

本発明の目的は、熱可塑性、機械的特性および耐水性が改善された、高植物性で且つ非可食部利用率の高いセルロース系樹脂及びその製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
4件
牽制数
6件

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請求項1

セルロース又はその誘導体のセルロース水酸基と、カルダノール又はその誘導体のフェノール性水酸基を利用して、該セルロース又はその誘導体に該カルダノール又はその誘導体が結合されてなるセルロース系樹脂

請求項2

前記セルロース水酸基が結合しているセルロース炭素原子と、前記フェノール性水酸基が結合しているカルダノール炭素原子が有機連結基を介して連結され、前記有機連結基は、前記セルロース炭素原子に結合する、エステル結合エーテル結合およびウレタン結合から選ばれる第1の結合と、前記カルダノール炭素原子に結合する、エステル結合、エーテル結合およびウレタン結合から選ばれる第2の結合を含む、請求項1に記載のセルロース系樹脂。

請求項3

前記第1の結合はエステル結合であり、前記第2の結合はエステル結合又はエーテル結合である、請求項2に記載のセルロース系樹脂。

請求項4

前記有機連結基は、炭素数1〜20の2価の炭化水素基を含む、請求項2に記載のセルロース系樹脂。

請求項5

前記セルロース炭素原子と前記炭化水素基は、前記第1の結合としてエステル結合を介して結合され、前記カルダノール炭素原子と前記炭化水素基は、前記第2の結合としてエステル結合又はエーテル結合を介して結合されている、請求項4に記載のセルロース系樹脂。

請求項6

前記セルロース又はその誘導体のグルコース単位あたりの、前記カルダノール又はその誘導体の付加数DSCDが0.1以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂。

請求項7

前記セルロース又はその誘導体のセルロース水酸基に、該セルロース水酸基と反応できる官能基を持つ反応性炭化水素化合物が付加されてなる、請求項1から6のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂。

請求項8

前記反応性炭化水素化合物は、カルボキシル基カルボン酸ハライド基又はカルボン酸無水物基を持つ炭化水素化合物である、請求項7に記載のセルロース系樹脂。

請求項9

前記反応性炭化水素化合物は、脂肪族カルボン酸芳香族カルボン酸および脂環族カルボン酸から選ばれる少なくとも一種モノカルボン酸、その酸ハロゲン化物又はその酸無水物である、請求項7に記載のセルロース系樹脂。

請求項10

前記反応性炭化水素化合物は、芳香族カルボン酸および脂環族カルボン酸から選ばれる少なくとも一種のモノカルボン酸、その酸ハロゲン化物又はその酸無水物である、請求項7に記載のセルロース系樹脂。

請求項11

前記セルロース又はその誘導体のグルコース単位あたりの、前記反応性炭化水素化合物の付加数DSXXが0.1以上である、請求項7から10のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂。

請求項12

前記セルロース又はその誘導体のセルロース水酸基に、アセチル基プロピオニル基及びブチリル基から選ばれる少なくとも一種のアシル基が付加されている、請求項1から11のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂。

請求項13

前記セルロース又はその誘導体のセルロース水酸基に、アセチル基、プロピオニル基及びブチリル基から選ばれる少なくとも一種の第1のアシル基、及び芳香族カルボン酸および脂環族カルボン酸から選ばれる少なくとも一種のモノカルボン酸由来の第2のアシル基が付加され、該セルロース又はその誘導体のグルコース単位あたりの、前記第2のアシル基の付加数DSXXが0.1以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂。

請求項14

グルコース単位あたりの残存するセルロース水酸基の個数SOHが0.9以下である、請求項1から13のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂。

請求項15

前記セルロース成分および前記カルダノール成分の合計量が樹脂全体に対して50質量%以上である、請求項1から14のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂。

請求項16

前記カルダノール又はその誘導体中の不飽和結合水素添加されている、請求項1から15のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂。

請求項17

請求項1から16のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂をベース樹脂として含む樹脂組成物

請求項18

請求項1から16のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂と熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含む樹脂組成物。

請求項19

請求項1から16のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂と変性シリコーン化合物を含む樹脂組成物。

請求項20

請求項17から19のいずれか一項に記載の樹脂組成物よりなる成形用材料

請求項21

セルロースの水酸基及びカルダノールのフェノール性水酸基と反応できる多官能化合物を、カルダノールと反応させてカルダノール誘導体を形成する工程と、前記カルダノール誘導体をセルロース又はその誘導体と反応させ、該セルロース又はその誘導体に該カルダノール誘導体を結合させる工程を有するセルロース系樹脂の製造方法。

請求項22

前記多官能化合物は、炭素数1〜20の炭化水素基を含む、請求項21に記載のセルロース系樹脂の製造方法。

請求項23

前記多官能化合物は、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基、カルボン酸無水物基、エポキシ基イソシアネート基、及びハロゲン基からなる群から選ばれる官能基を含む、請求項21又は22に記載のセルロース系樹脂の製造方法。

請求項24

前記多官能化合物は、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、及びハロゲン基からなる群から選ばれる官能基を含む、請求項21又は22に記載のセルロース系樹脂の製造方法。

請求項25

前記多官能化合物は、カルボン酸無水物基を含む化合物、又はカルボキシル基とハロゲン基を含む化合物である、請求項21又は22に記載のセルロース系樹脂の製造方法。

請求項26

前記多官能化合物は、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基を含み、前記カルダノール誘導体を形成した後、該カルダノール誘導体のカルボキシル基をカルボン酸ハライド基へ変換する工程をさらに有する、請求項21から25のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂の製造方法。

請求項27

前記カルダノール又はその誘導体中の不飽和結合を水素添加する工程をさらに有する、請求項21から26のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂の製造方法。

請求項28

前記セルロース水酸基と反応できる官能基を持つ反応性炭化水素化合物を、前記カルダノール誘導体と同時に又は別途に、前記セルロース又はその誘導体と反応させ、該セルロース又はその誘導体に該反応性炭化水素化合物を結合させる、請求項21から27のいずれか一項に記載のセルロース系樹脂の製造方法。

請求項29

前記反応性炭化水素化合物は、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基又はカルボン酸無水物基を持つ炭化水素化合物である、請求項28に記載のセルロース系樹脂の製造方法。

請求項30

前記反応性炭化水素化合物は、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸および脂環族カルボン酸から選ばれる少なくとも一種のモノカルボン酸、その酸ハロゲン化物又はその酸無水物である、請求項28に記載のセルロース系樹脂の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、セルロース系樹脂およびその製造方法に関する。

背景技術

0002

植物を原料とするバイオプラスチックは、石油枯渇対策温暖化対策に寄与できるため、包装容器、繊維などの一般製品に加え、電子機器自動車等の耐久製品への利用も開始されている。

0003

しかし、通常のバイオプラスチック、例えば、ポリ乳酸ポリヒドロキシアルカネート、デンプン変性物などは、いずれもデンプン系材料、すなわち可食部を原料としている。そのため、将来の食料不足への懸念から、非可食部を原料とする新しいバイオプラスチックの開発が求められている。

0004

非可食部を原料とするバイオプラスチックとしては、すでに、非可食部である木材や草木の主要成分であるセルロースを利用した種々のバイオプラスチックが開発され、製品化されている。

0005

セルロースは、β−グルコース重合した高分子であるが、結晶性が高いため、硬くて脆く、熱可塑性もない。さらに、多くの水酸基を含有するため吸水性が高く、耐水性が低い。そこで、セルロースの特性を改善するための種々の検討が行われている。

0006

例えば、特許文献1(特開平11−255801号公報)には、水酸基を有するセルロースアセテートにε−カプロラクトン開環グラフト重合させてなる、熱可塑性を有する生分解性グラフト重合体が開示されている。

0007

一方、セルロース以外の非可食部成分を利用した材料の開発も行われている。例えば、カシューナッツの殻由来カルダノールは、安定した生産量に加え、特徴的な分子構造から機能性にも優れているため、様々な用途に適用されている。

0008

カルダノールを利用した例として、特許文献2(特開平10−8035号公報)には、アラミドパルプセルロース繊維からなる繊維基材炭酸カルシウムカシューダストからなる充填材、及びフェノール樹脂からなる結合材を用いて形成されたブレーキ用の摩擦材が開示されている。特許文献3(特開2001−32869号公報)には、アラミド繊維とセルロース繊維からなるベース基材グラファイトとカシューダストからなる充填材、及び有機無機複合バインダを用いて形成された摩擦材が開示されている。この摩擦材は、自動車等の動力伝達系のクラッチフェーシングに適用されることが記載されている。

0009

非特許文献1(George John et al., Polymer Bulletin, 22, p.89-94(1989))には、紙シートをカルダノールに浸し、この紙シートを構成するセルロースにカルダノールを結合するグラフト化反応を行うことによって、紙の耐水性を向上できることが記載されている。このグラフト化反応においては、ボロントリフルオリドジエチルエーテル(BF3−OEt2)の存在下で、カルダノールの末端二重結合とセルロースのヒドロキシ基が結合することが記載されている。

0010

特開平11−255801号公報
特開平10−8035号公報
特開2001−32869号公報

先行技術

0011

George John et al., Polymer Bulletin, 22, p.89-94(1989)

発明が解決しようとする課題

0012

セルロース系バイオプラスチックは、セルロース自体が持つ特性の影響により、強度や耐熱性、耐水性、熱可塑性が不十分であり、特に電子機器用外装などの耐久製品に適用するためには、これらの特性の改善が必要である。

0013

また、セルロース系バイオプラスチックは、熱可塑性を改善するために可塑剤を添加すると、耐熱性や強度(特に剛性)が低下したり、均一性の低下や可塑剤のブリードアウト成形体表面への染みだし)の問題が生じたりする。また、石油原料からなる可塑剤を多量に添加すると、植物利用率植物性)が低下する。

0014

本発明の目的は、熱可塑性、機械的特性および耐水性が改善された、高植物性で且つ非可食部利用率の高いセルロース系樹脂及びその製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0015

本発明の一態様によれば、セルロース又はその誘導体のセルロース水酸基と、カルダノール又はその誘導体のフェノール性水酸基を利用して、該セルロース又はその誘導体に該カルダノール又はその誘導体が結合されてなるセルロース系樹脂が提供される。

0016

本発明の他の態様によれば、上記のセルロース系樹脂をベース樹脂として含む成形用材料が提供される。

0017

本発明の他の態様によれば、上記のセルロース系樹脂と熱可塑性ポリウレタンエラストマー又は変性シリコーン化合物を含む樹脂組成物が提供される。

0018

本発明の他の態様によれば、セルロースの水酸基及びカルダノールのフェノール性水酸基と反応できる多官能化合物を、カルダノールと反応させてカルダノール誘導体を形成する工程と、
前記カルダノール誘導体をセルロース又はその誘導体と反応させ、該セルロース又はその誘導体に該カルダノール誘導体を結合させる工程を有するセルロース系樹脂の製造方法が提供される。

発明の効果

0019

本発明によれば、熱可塑性、機械的特性および耐水性が改善された、高植物性で且つ非可食部利用率の高いセルロース系樹脂及びその製造方法を提供することができる。

0020

本発明の一実施形態のセルロース系樹脂は、セルロース(又はその誘導体)に、カルダノール(又はその誘導体)をグラフト状に結合(以下「グラフト化」)させたものである。

0021

このようなグラフト化によって、機械的特性(特に靭性)及び耐水性を改善することができる。また、このグラフト化によって良好な熱可塑性が付与されるため、可塑剤の添加量を低減あるいは可塑剤を添加しなくてもよくなる。その結果、可塑剤を加えたセルロース系樹脂に比べて耐熱性や強度(特に剛性)の低下を抑えることができ、また樹脂均質性を高めることができ、ブリードアウトの問題も解消できる。さらに、石油原料からなる可塑剤の添加量を低減または無添加にできるため、結果、植物性を高めることができる。加えて、セルロースとカルダノールは、いずれも植物の非可食部であるため、非可食部の利用率を高めることができる。

0022

セルロースは、下記式(1)で示されるβ−グルコースの直鎖状重合物であり、各グルコース単位は三つの水酸基(ヒドロキシ基)を有している。これらの水酸基を利用して、カルダノール(又はその誘導体)をグラフト化することができる。

0023

0024

セルロースは、草木類の主成分であり、草木類からリグニン等の他の成分を分離処理することによって得られる。このように得られたものの他、セルロース含有量の高い綿やパルプを精製してあるいはそのまま用いることができる。

0025

セルロース(又はその誘導体)の重合度は、グルコース重合度として、50〜5000の範囲が好ましく、100〜3000がより好ましい。重合度が低すぎると、製造した樹脂の強度、耐熱性などが十分でない場合がある。逆に、重合度が高すぎると、製造した樹脂の溶融粘度が高くなりすぎて成形に支障をきたす場合がある。

0026

セルロース(又はその誘導体)には、類似の構造のキチンキトサンが混合されていてもよく、混合されている場合は、混合物全体に対して30質量%以下が好ましく、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。

0027

ここでセルロース誘導体としては、これらの水酸基の一部をアシル化エーテル化、又はグラフト化したものが挙げられる。具体的には、セルロースアセテート、セルロースブチレートセルロースプロピオネート等の有機酸エステル硝酸セルロース硫酸セルロースリン酸セルロース等の無機エステルセルロースアセテートプロピオネートセルロースアセテートブチレートセルロースアセテートフタレート硝酸酢酸セルロース等の混成エステル;メチルセルロースヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルセルロース等のエーテル化セルロース等が挙げられる。また、スチレン、(メタアクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、ε−カプロラクトン、ラクチドグリコリドなどをグラフト化させたセルロースが挙げられる。これらのアシル化セルロース、エーテル化セルロース、及びグラフト化セルロースは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。

0028

本実施形態におけるセルロース(又はその誘導体)は、例えば、その水酸基の一部がアシル化された、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート及びセルロースブチレートから選ばれる少なくとも一種のアシル化セルロースを好適に用いることができる。

0029

本明細書では、セルロース誘導体の用語は、セルロース化合物、及びセルロースを原料として生物的あるいは化学的官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する化合物のいずれも含む意味で用いる。

0030

カルダノールは、カシューナッツの殻に含まれる成分であり、下記式(2)で示されるフェノール部分直鎖状炭化水素部分からなる有機化合物である。カルダノールには、その直鎖状炭化水素部分Rにおいて不飽和結合数の異なる4種類が存在し、通常、これらの4成分の混合物である。すなわち、下記式(2)に記載した、3−ペンタデシルフェノール、3−ペンタデシルフェノールモノエン、3−ペンタデシルフェノールジエン、および3−ペンタデシルフェノールトリエンの混合物である。カシューナッツ殻液から抽出および精製して得られたカルダノール成分を用いることができる。

0031

0032

カルダノールの直鎖状炭化水素部分は樹脂の柔軟性と疎水性の向上に寄与し、フェノール部分はグラフト化に利用される反応性富むフェノール性水酸基を有する。このようなカルダノール(又はその誘導体)をセルロース(又はその誘導体)にグラフト化させると、カルダノール(又はその誘導体)がブラシ状に付与されたセルロース系構造体が形成され、この結果、このグラフト化したカルダノール同士の相互作用によって機械的特性(特に靭性)を改善できるとともに、熱可塑性も付与でき、さらにカルダノールの疎水性によって耐水性を改善できる。

0033

グラフト化は、カルダノール(又はその誘導体)のフェノール性水酸基とセルロース(又はその誘導体)中の水酸基との脱水結合反応によって行うことができる。その際、硫酸トルエンスルホン酸塩化水素などの脱水触媒を添加することができる。結果、セルロース(又はその誘導体)中の水酸基が結合しているセルロース炭素原子と、カルダノール(又はその誘導体)のフェノール性水酸基が結合しているカルダノール炭素原子とが酸素原子を介して連結される。

0034

また、グラフト化は、セルロースの水酸基及びカルダノールのフェノール性水酸基と反応できる多官能化合物を用いて行うことができる。結果、セルロース(又はその誘導体)中の水酸基が結合しているセルロース炭素原子と、カルダノール(又はその誘導体)のフェノール性水酸基が結合しているカルダノール炭素原子とが、有機連結基を介して連結される。このようなグラフト化によれば、グラフト反応効率を向上することができ、また副反応を抑制することができる。

0035

上記の有機連結基は、前記セルロース炭素原子に結合する、エステル結合エーテル結合およびウレタン結合から選ばれる第1の結合と、前記カルダノール炭素原子に結合する、エステル結合、エーテル結合およびウレタン結合から選ばれる第2の結合を含むことができる。

0036

例えば、この多官能化合物とカルダノールとを、このカルダノールのフェノール性水酸基とこの多官能化合物の官能基を利用して結合し、得られたカルダノール誘導体とセルロース(又はその誘導体)とを、このセルロース(又はその誘導体)の水酸基とこのカルダノール誘導体の官能基(多官能化合物由来の官能基)を利用して結合することができる。

0037

上述のグラフト化によれば、セルロース(又はその誘導体)の水酸基とカルダノール(又はその誘導体)の水酸基を消失させてグラフト結合を形成するとともに、セルロース(又はその誘導体)にカルダノールの疎水性構造を導入することができ、耐水性を改善できる。

0038

カルダノール(又はその誘導体)をセルロース(又はその誘導体)にグラフト化させるには、上述のように、カルダノールのフェノール性水酸基とセルロースの水酸基を利用することが、グラフト反応の効率や、形成した分子構造、耐水性の点から好ましい。このようなグラフト化は、カルダノールの直鎖状炭化水素部分中の不飽和結合二重結合)を利用するグラフト化に比べて、反応性の高いフェノール性水酸基を利用するため、より効率的なグラフト化を実現できる。また、本実施形態のグラフト化によれば、カルダノールのフェノール部分がセルロースと反応して固定化されるため、グラフト化されたカルダノールの直鎖状炭化水素部分同士の相互作用が高まり、機械的特性の所望の改善効果を得ることが可能になる。さらに、本実施形態は、カルダノールのフェノール性水酸基を消失させてグラフト化するため、フェノール性水酸基を利用しないグラフト化に比べて、耐水性を改善する(吸水性を抑える)観点からも有利である。

0039

上記の多官能化合物および有機連結基は、炭化水素基を含むことが好ましく、この炭化水素基の炭素数は1以上が好ましく、2以上がより好ましく、また炭素数が20以下が好ましく、14以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。炭素数が多すぎると、分子が大きくなりすぎて反応性が低下し、その結果、グラフト化率を上げることが困難となる場合がある。このような炭化水素基としては、2価基が好ましく、メチレン基エチレン基プロピレン基ブチレン基、ペンタメチレン基ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基などの2価の直鎖状脂肪族炭化水素基(特に直鎖状アルキレン基);シクロヘプタン環、シクロヘキサン環シクロオクタン環、ビシクロペンタン環、トリシクロヘキサン環、ビシクロオクタン環、ビシクロノナン環、トリシクロデカン環などの2価の脂環式炭化水素基ベンゼン環ナフタレン環ビフェニレン基などの2価の芳香族炭化水素基、これらの組み合わせからなる2価基が挙げられる。

0040

上記の炭化水素基が、芳香族炭化水素基や脂環式炭化水素基である場合、それらの剛直性から、樹脂の剛性を向上できる。一方、その炭化水素基が直鎖状脂肪族炭化水素基である場合、その柔軟性から、樹脂の靭性を向上できる。

0041

上記の多官能化合物の官能基としては、カルボキシル基カルボン酸無水物基カルボン酸ハライド基(特にカルボン酸クロライド基)、アクリル基エポキシ基イソシアネート基ハロゲン基から選ばれる基が好ましい。中でもカルボキシル基、カルボン酸無水物基、ハロゲン基(特にクロライド基)、及びイソシアネート基が好ましい。カルダノールのフェノール性水酸基と反応させる官能基としては、特に、カルボン酸無水物基、ハロゲン基(特にクロライド基)及びイソシアネート基が好ましい。セルロースの水酸基と反応させる官能基としては、特にカルボン酸ハライド基(特にカルボン酸クロライド基)、酸無水物基、アクリル基、及びイソシアネート基が好ましい。カルボン酸ハライド基は、グラフト化前のカルボキシル基を酸ハライド化して形成することができる。酸無水物基はオリゴマー化したものでもよい。

0042

このような多官能化合物の具体例としては、ジカルボン酸カルボン酸無水物ジカルボン酸ハライドモノクロロカルボン酸、アクリル酸及びその誘導体、ジイソシアネート類を挙げることができる。ジカルボン酸としては、マロン酸コハク酸グルタル酸ピメリン酸スベリン酸アゼライン酸セバシン酸ドデカンジカルボン酸ペンタデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸が挙げられ、カルボン酸無水物としてはこれらのジカルボン酸の無水物及びマレイン酸無水物が挙げられる。マレイン酸無水物はオリゴマー化していてもよい。ジカルボン酸ハライドとしてはこれらのジカルボン酸の酸ハライドが挙げられる。モノクロロカルボン酸としては、モノクロロ酢酸、3−クロプロピオン酸、3−フルオロプロピオン酸、4−クロロ酪酸、4−フルオロ酪酸、5−クロロ吉草酸、5−フルオロ吉草酸、6−クロロヘキサン酸、6−フルオロヘキサン酸、8−クロロオクタン酸、8−フルオロオクタン酸、12−クロロドデカン酸、12−フルオロドデカン酸、18−クロロステアリン酸、18−フルオロステアリン酸が挙げられる。アクリル酸及びその誘導体としては、アクリル酸、アクリル酸クロライドメタクリル酸メタクリル酸クロライドが挙げられる。ジイソシアネート類としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートMDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、トリイソシアネートテトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネートメチルオクタン、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI:水素添加MDI)が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を好適に用いることができる。

0043

このような多官能化合物の官能基とカルダノールのフェノール性水酸基とを反応させてカルダノール誘導体を形成し、このカルダノール誘導体とセルロース(又はその誘導体)を、このセルロース(又はその誘導体)の水酸基とこのカルダノール誘導体の官能基(多官能化合物由来の官能基)を利用して結合することができる。

0044

例えば、カルボン酸系の多官能化合物(ジカルボン酸、カルボン酸無水物又はモノクロロカルボン酸)をカルダノールと反応させ、このカルダノールのフェノール性水酸基とこの多官能化合物の官能基(カルボキシル基、カルボン酸無水物基又はハロゲン基(特にクロライド基))とを反応させてカルダノール誘導体を形成し、残りの官能基(カルボキシル基)をカルボン酸ハライド基(特にカルボン酸クロライド基)に変換する。このカルダノール誘導体をセルロース(又はその誘導体)と反応させ、このセルロース(又はその誘導体)の水酸基とこのカルダノール誘導体のカルボン酸ハライド基とを反応させてグラフト化を行うことができる。この場合、極めて効率的にグラフト化を行うことができる。

0045

多官能化合物を用いたグラフト化の結果、セルロース(又はその誘導体)の水酸基が結合しているセルロース炭素原子と多官能化合物の炭化水素基とは、例えば、エステル結合、エーテル結合又はウレタン結合、好ましくはエステル結合を介して結合され、カルダノール(又はその誘導体)のフェノール性水酸基が結合しているカルダノール炭素原子と多官能化合物の炭化水素基とは、例えば、エステル結合、エーテル結合又はウレタン結合、好ましくはエステル結合又はエーテル結合を介して結合される。

0046

カルダノールは、カルダノールの直鎖状炭化水素部分の不飽和結合(二重結合)が水素添加され飽和結合に変換されることが好ましい。水素添加による不飽和結合の変換率水添率)は、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましい。水素添加後のカルダノール中の不飽和結合の残存率(カルダノールの1分子当たりの不飽和結合の数)は、0.2個/分子以下が好ましく、0.1個/分子以下がより好ましい。また、カルダノールのフェノール部分の芳香環が水素添加されシクロヘキサン環に変換されてもよい。

0047

直鎖状炭化水素部分に不飽和結合が多く含まれたままでカルダノール(又はその誘導体)をセルロース(又はその誘導体)へグラフト化すると、副反応が起こりやすく、効率的にグラフト化が行われなかったり、グラフト化生成物溶媒への溶解性が著しく低下したりする場合がある。水素添加を行って直鎖状炭化水素部分の不飽和結合が飽和結合に十分に変換されたカルダノール誘導体をグラフト化すると、副反応が抑制され、効率的にグラフト化を行うことができ、またグラフト化生成物の溶媒への溶解性低下を抑えることができる。

0048

水素添加する方法としては、特に限定されるものではなく、通常の方法を用いることができる。触媒としては、パラジウムルテニウムロジウムなどの貴金属またはニッケル、或いはこれらから選ばれる金属を活性炭素活性アルミナ珪藻土などの担体上に担持したものが挙げられる。反応方式としては、粉末状の触媒を懸濁攪拌しながら反応を行うバッチ方式や、成形した触媒を充填した反応塔を用いた連続方式を採用することができる。水素添加の際の溶媒は、水素添加の方式によっては用いなくてもよいが、溶媒を使用する場合は、通常、アルコール類エーテル類エステル類飽和炭化水素類が挙げられる。水素添加の際の反応温度は、特に限定されないが、通常20〜250℃、好ましくは50〜200℃に設定できる。反応温度が低すぎると水素化速度が遅くなり、逆に高すぎると分解生成物が多くなる虞がある。水素添加の際の水素圧は、通常10〜80kgf/cm2(9.8×105〜78.4×105Pa)、好ましくは20〜50kgf/cm2(19.6×105〜49.0×105Pa)に設定できる。

0049

水素添加は、カルダノール誘導体を形成する前、カルダノール誘導体を形成した後グラフト化前、カルダノール誘導体のグラフト化後のいずれにおいても行うことができるが、水素添加やグラフト化の反応効率等の観点から、カルダノール誘導体のグラフト化前が好ましく、カルダノール誘導体の形成前がさらに好ましい。

0050

セルロース(又はその誘導体)に対する、当該セルロース(又はその誘導体)に結合したカルダノール(又はその誘導体)の割合(グラフト化率)は、セルロース(又はその誘導体)のグルコース単位当たりのカルダノール(又はその誘導体)の付加数平均値)、すなわち、カルダノール(又はその誘導体)と結合した水酸基の個数水酸基置換度、DSCD)(平均値)によって表される。DSCDは、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.4以上に設定してもよい。DSCDが低すぎると、グラフト化による効果が十分に得られない場合がある。

0051

DSCDの最大値は、理論上「3」であるが、製造(グラフト化)のし易さの観点から、2.5以下が好ましく、2以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい。さらに、DSCDが1以下の場合であってもよく、十分な改善効果を得ることができる。DSCDが大きくなると、引張破断歪み靱性)が高くなる一方で最大強度引張強度曲げ強度)が低下する傾向があるため、所望の特性に応じて適宜設定することが好ましい。

0052

カルダノール(又はその誘導体)をグラフト化するとともに、特定の反応性炭化水素化合物を、セルロース(又はその誘導体)にグラフト化させてもよい。これにより、セルロース系樹脂を所望の特性に改善することができる。

0053

この反応性炭化水素化合物は、セルロース(又はその誘導体)中の水酸基と反応できる官能基を少なくとも一つ持つ化合物であり、例えばカルボキシル基、カルボン酸ハライド基またはカルボン酸無水物基、イソシアネート基、またはアクリル基を有する炭化水素化合物が挙げられる。具体的には、脂肪族モノカルボン酸芳香族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸等のモノカルボン酸から選ばれる少なくとも一種の化合物、その酸ハロゲン化物又はその酸無水物脂肪族モノイソシアネート芳香族モノイソシアネート、脂環族モノイソシアネートから選ばれる少なくとも一種の化合物、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが挙げられる。脂肪族モノカルボン酸としては、直鎖状の又は分岐した側鎖をもつ脂肪酸が挙げられる。芳香族モノカルボン酸としては、芳香環にカルボキシル基が直接結合したもの、芳香環にアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基)を介してカルボキシル基が結合したもの(芳香環に脂肪族カルボン酸基が結合したもの)が挙げられる。脂環族モノカルボン酸としては、脂環にカルボキシル基が直接結合したもの、脂環にアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基)を介してカルボキシル基が結合したもの(脂環に脂肪族カルボン酸基が結合したもの)が挙げられる。脂肪族モノイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネートと直鎖状の又は分岐した側鎖を持つ脂肪族モノアルコールを1:1で反応させたものが挙げられる。芳香族モノイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネートと直鎖状の又は分岐した側鎖を持つ脂肪族モノアルコールを1:1で反応させたものが挙げられる。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、アクリル酸またはメタクリル酸と直鎖状の又は分岐した側鎖を持つ脂肪族モノアルコールとのエステルが挙げられる。

0054

この反応性炭化水素化合物は、炭素数が1〜32の範囲にあることが好ましく、1〜20の範囲にあることがより好ましい。炭素数が多すぎると、分子が大きくなりすぎて立体障害によって反応効率が低下し、その結果、グラフト化率を上げることが困難となる。

0055

この反応性炭化水素化合物は、特に、グラフト化されたカルダノール(又はその誘導体)からなる立体構造の隙間部分を埋めるように配置された場合に特性改善に効果的である。

0056

この反応性炭化水素化合物の炭化水素基が、芳香族炭化水素基や脂環式炭化水素基の場合、特に剛性や耐熱性の改善に有効であり、また、脂肪族炭化水素基の場合は特に靭性の改善に有効である。

0057

反応性炭化水素化合物として用いられる脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸エナント酸カプリル酸ペラルゴン酸カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸ベヘン酸リグノセリン酸セロチン酸ヘプタコサン酸、モンタン酸メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸ブテン酸ペンテン酸ヘキセン酸オクテン酸ウンデシレン酸オレイン酸ソルビン酸リノール酸リノレン酸アラキドン酸等の不飽和脂肪酸;それらの誘導体を挙げることができる。これらはさらに置換基を有してもよい。

0058

反応性炭化水素化合物として用いられる芳香族モノカルボン酸としては、安息香酸等のベンゼン環にカルボキシル基が導入されたもの;トルイル酸等のベンゼン環にアルキル基が導入された芳香族カルボン酸フェニル酢酸フェニルプロピオン酸等のベンゼン環に脂肪族カルボン酸基が導入されたもの;ビフェニルカルボン酸、ビフェニル酢酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族カルボン酸;ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等の縮合環構造を有する芳香族カルボン酸;それらの誘導体を挙げることができる。

0059

反応性炭化水素化合物として用いられる脂環族モノカルボン酸としては、シクロペンタンカルボン酸シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸等の脂環にカルボキシル基が導入されたもの;シクロヘキシル酢酸等の脂環に脂肪族カルボン酸基が導入されたもの;それらの誘導体が挙げられる。

0060

これらの反応性炭化水素化合物の構造中に有機シリコン化合物有機フッ素化合物が付加されていると、耐水性などの一層の改善効果が得られる。

0061

これらの反応性炭化水素化合物中の反応性官能基は、セルロースの水酸基と反応できる官能基であればよく、カルボキシル基やカルボン酸ハライド基(特にカルボン酸クロライド基)、カルボン酸無水物基の他、エポキシ基、イソシアネート基、ハロゲン基(特にクロライド基)が挙げられる。これらの中でもカルボキシル基とカルボン酸ハライド基が好ましく、特にカルボン酸クロライド基が好ましい。カルボン酸ハライド基(特にカルボン酸クロライド基)としては、上記の各種カルボン酸のカルボキシル基が酸ハロゲン化された酸ハライド基(特に酸クロライド基)が挙げられる。

0062

本実施形態に用いる反応性炭化水素化合物は、特に樹脂の剛性(曲げ強度等)の観点から、芳香族カルボン酸および脂環族カルボン酸から選ばれる少なくとも一種のモノカルボン酸、その酸ハロゲン化物又はその酸無水物が好ましい。このような反応性炭化水素化合物がセルロース水酸基に付加することにより、芳香族カルボン酸および脂環族カルボン酸から選ばれる少なくとも一種のモノカルボン酸由来アシル基がセルロース水酸基に付加した構造(すなわち、セルロース水酸基の水素原子がアシル基に置換された構造)が得られる。

0063

セルロース(又はその誘導体)のグルコース単位あたりの反応性炭化水素化合物の付加数(アシル基の付加数)(平均値)、すなわち、反応性炭化水素化合物と結合した水酸基の個数(水酸基置換度、DSXX)(平均値)は、所望の効果を得る点から、0.1以上0.6以下が好ましく、0.1以上0.5以下がより好ましい。また、カルダノール(又はその誘導体)と反応性炭化水素化合物のグラフト化後のグルコース単位あたりの残存する水酸基の個数(水酸基残存度、DSOH)(平均値)は、耐水性を十分に確保する点から、0.9以下が好ましく、0.7以下がより好ましい。

0064

この反応性炭化水素化合物は、カルダノール(又はその誘導体)のグラフト化工程においてグラフト化することができる。これにより均質にグラフト化することが可能になる。その際、これらを同時又は別途に添加してもよいが、カルダノール(又はその誘導体)をグラフト化させた後に、反応性炭化水素化合物を添加してグラフト化させることにより、グラフト化反応効率を向上できる。

0065

グラフト化処理は、セルロース(又はその誘導体)、カルダノール(又はその誘導体)、必要に応じて反応性炭化水素化合物を、これらを溶解できる溶媒中で、適切な温度で加熱することによって実施できる。セルロースは通常の溶媒には溶解しにくいが、ジメチルスルホキシドアミン系溶媒ジメチルホルムアミドクロラールピリジン系溶媒ジメチルアセトアミドリチウムクロライド系溶媒、イミダゾリウム系イオン液体などに溶解できる。通常の溶媒中でグラフト化反応を行う場合、あらかじめセルロースの水酸基の一部にカルボン酸やアルコールを結合させ、分子間力を低下させることによって溶解性を変化させたセルロース誘導体を用いることができる。水酸基の水素原子がアセチル基プロピオニル基ブチリル基等のアシル基で置換されたアシル化セルロースが好ましく、特に酢酸や酢酸クロライドを用いて酢酸化(アセチル化)された酢酸セルロースが好ましい。これらのアシル化に用いられる、酢酸、プロピオン酸、酪酸、及びこれらの酸のハロゲン化物や無水物は、前述の反応性炭化水素化合物に含まれるが、この例のように、所定の反応性炭化水素化合物の一部もしくは全部を、カルダノール(又はその誘導体)のグラフト化前にセルロースの水酸基に付加(グラフト)させることができる。

0066

カルダノール(又はその誘導体)のグラフト化に利用されない残りのセルロース水酸基は、水酸基のままであるものと、上記のようにアセチル化等により変性されたもの或いは反応性炭化水素化合物が付加(グラフト)したものがある。水酸基の量が多いほど、最大強度や耐熱性が大きくなる傾向がある一方で、吸水性が高くなる傾向がある。水酸基の変換率(置換度)が高いほど、吸水性が低下し、可塑性や破断歪みが増加する傾向がある一方で、最大強度や耐熱性が低下する傾向がある。これらの傾向とグラフト化条件を考慮して、水酸基の変換率を適宜設定することができる。

0067

耐水性を十分に確保する観点からは、グラフト化後のセルロース系樹脂のグルコース単位あたりの残存する水酸基の個数(水酸基残存度、DSOH)(平均値)は、0.9以下が好ましく、0.7以下がより好ましい。

0068

吸水性や機械的強度、耐熱性の観点から、セルロース水酸基は、その一部が前記の反応性炭化水素によりアシル化されていることが好ましく、さらにカルダノール(又はその誘導体)の前述のグラフト化処理上の観点から、セルロース水酸基は、カルダノール(又はその誘導体)のグラフト化前に、適度にアシル化(特にアセチル化)されていることが好ましい。セルロース(又はその誘導体)のグルコース単位あたりのアシル基の付加数(平均値)、すなわちアシル化された水酸基の個数(水酸基置換度、DSAC)(平均値)は、十分なアシル化効果を得る点から、0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、1.5以上がさらにより好ましい。また、カルダノール(又はその誘導体)のグラフト化率(DSCD)を十分に確保する点から、このアシル化による水酸基置換度DSACは2.7以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.2以下がさらに好ましい。このアシル化による付加するアシル基は、アセチル基、プロピオニル基およびブチリル基から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なお、アセチル化の場合の置換度をDSAce、プロピオニル化の場合の置換度をDSPr、ブチリル化の場合の置換度をDSBuと示す。

0069

本実施形態のセルロース系樹脂は、十分な植物利用率を確保する観点から、グラフト化後のセルロース系樹脂の全体に対するセルロース成分とカルダノール成分との合計の質量比率植物成分率)が、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。ここでセルロース成分は、水酸基がアシル化やグラフト化されていない前記の式(1)で示される構造に対応し、カルダノール成分は前記の式(2)で示される構造に対応するものとして算出する。

0070

以上に説明した実施形態のセルロース系樹脂には、通常の熱可塑性樹脂に使用する各種の添加剤を適用できる。例えば、可塑剤を添加することで、熱可塑性や破断時の伸びを一層向上できる。このような可塑剤としては、フタル酸ジブチルフタル酸ジアリールフタル酸ジエチルフタル酸ジメチル、フタル酸ジ−2−メトキシエチル、エチルフタリル・エチルグリコレート、メチルフタリル・エチルグリコレート等のフタル酸エステル酒石酸ジブチル等の酒石酸エステルアジピン酸ジオクチルアジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステルトリアセチンジアセチルグリセリン、トリプロピオニトリルグリセリン、グリセリンモノステアレートなどの多価アルコールエステルリン酸トリエチルリン酸トリフェニルリン酸トリクレシルなどのリン酸エステルジブチルアジペートジオクチルアジペートジブチルアゼレートジオクチルアゼレートジオクチルセバケート等の二塩基性脂肪酸エステルクエン酸トリエチルクエン酸アセチルトリエチルアセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステルエポキシ化大豆油エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油ヒマシ油およびその誘導体;O−ペンイル安息香酸エチル等の安息香酸エステルセバシン酸エステルアゼライン酸エステル等の脂肪族ジカルボン酸エステルマレイン酸エステル等の不飽和ジカルボン酸エステル;その他、N−エチルトルエンスルホンアミド、トリアセチン、p−トルエンスルホン酸O−クレジル、トリプロピオニンなどが挙げられる。

0071

その他の可塑剤として、シクロヘキサンジカルボン酸ジヘキシル、シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−メチルオクチル等のシクロヘキサンジカルボン酸エステルトリメリット酸ジヘキシル、トリメリット酸ジエチルヘキシル、トリメリット酸ジオクチル等のトリメリット酸エステルピロメリット酸ジヘキシル、ピロメリット酸ジエチルヘキシル、ピロメリット酸ジオクチル等のピロメリット酸エステルが挙げられる。

0072

このような可塑剤中の反応性官能基(カルボン酸基、カルボン酸基から誘導された基、その他の官能基)とカルダノールの水酸基や不飽和結合とを反応させて、カルダノールを付加させた可塑剤を用いることもできる。このような可塑剤を用いると、本実施形態のセルロース系樹脂と可塑剤の相溶性を向上できるため、可塑剤の添加効果を一層向上できる。

0073

本実施形態のセルロース系樹脂には、必要に応じて、無機系もしくは有機系の粒状または繊維状の充填剤を添加できる。充填剤を添加することによって、強度や剛性を一層向上できる。充填剤としては、例えば、鉱物質粒子タルクマイカ焼成珪成土、カオリンセリサイトベントナイトスメクタイトクレイシリカ石英粉末ガラスビーズガラス粉ガラスフレークミルドファイバーワラストナイト(またはウォラストナイト)など)、ホウ素含有化合物窒化ホウ素炭化ホウ素ホウ化チタンなど)、金属炭酸塩炭酸マグネシウム重質炭酸カルシウム軽質炭酸カルシウムなど)、金属珪酸塩珪酸カルシウム珪酸アルミニウム珪酸マグネシウムアルミノ珪酸マグネシウムなど)、金属酸化物酸化マグネシウムなど)、金属水酸化物水酸化アルミニウム水酸化カルシウム水酸化マグネシウムなど)、金属硫酸塩硫酸カルシウム硫酸バリウムなど)、金属炭化物炭化ケイ素炭化アルミニウム炭化チタンなど)、金属窒化物窒化アルミニウム窒化ケイ素窒化チタンなど)、ホワイトカーボン、各種金属箔が挙げられる。繊維状の充填剤としては、有機繊維天然繊維紙類など)、無機繊維ガラス繊維アスベスト繊維カーボン繊維シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ウォラストナイト、ジルコニア繊維チタン酸カリウム繊維など)、金属繊維などが挙げられる。これらの充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。

0074

本実施形態のセルロース系樹脂には、必要に応じて、難燃剤を添加できる。難燃剤を添加することによって、難燃性を付与できる。難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイトのような金属水和物塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、ゼオライト臭素系難燃剤三酸化アンチモンリン酸系難燃剤芳香族リン酸エステル類、芳香族縮合リン酸エステル類など)、リン窒素を含む化合物(フォスファゼン化合物)などが挙げられる。これらの難燃剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。

0075

また、難燃剤として、酸化リン、リン酸またはこれらの誘導体とカルダノールとの反応物や、これらの反応物の重合体を用いることができる。このような難燃剤を用いると、本実施形態のセルロース系樹脂と難燃剤との相互作用が強化され、優れた難燃効果が得られる。このような難燃剤としては、例えば、酸化リン(P205)やリン酸(H3PO4)とカルダノールの水酸基とを反応させた反応物や、この反応物にヘキサメチレンテトラミンを加えて重合させた重合体が挙げられる。

0076

本実施形態のセルロース系樹脂には、必要に応じて、耐衝撃性改良剤を添加できる。耐衝撃性改良剤を添加することによって、耐衝撃性を向上できる。耐衝撃性改良剤としては、ゴム成分やシリコーン化合物を挙げられる。ゴム成分としては、天然ゴムエポキシ化天然ゴム合成ゴムなどが挙げられる。また、シリコーン化合物としては、アルキルシロキサンアルキルフェニルシロキサンなどの重合によって形成された有機ポリシロキサン、もしくは、前記有機ポリシロキサンの側鎖または末端ポリエーテル、メチルスチリルアルキル高級脂肪酸エステル、アルコキシフッ素アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、カルビノール基メタクリル基メルカプト基フェノール基などで変性した変性シリコーン化合物などが挙げられる。これらの耐衝撃性改良剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。

0077

このシリコーン化合物としては、変性シリコーン化合物(変性ポリシロキサン化合物)が好ましい。この変性シリコーン化合物としては、ジメチルシロキサン繰り返し単位から構成される主鎖を持ち、その側鎖または末端のメチル基の一部が、アミノ基、エポキシ基、カルビノール基、フェノール基、メルカプト基、カルボキシル基、メタクリル基、長鎖アルキル基アラルキル基フェニル基フェノキシ基、アルキルフェノキシ基、長鎖脂肪酸エステル基、長鎖脂肪酸アミド基、ポリエーテル基から選ばれる少なくとも1種類の基を含む有機置換基で置換された構造を有する変性ポリジメチルシロキサンが好ましい。変性シリコーン化合物は、このような有機置換基を有することによって、前述のカルダノール付加セルロース系樹脂に対する親和性が改善され、セルロース系樹脂中分散性が向上し、耐衝撃性に優れる樹脂組成物を得ることができる。

0078

このような変性シリコーン化合物は、通常の方法に従って製造されるものや市販品を用いることができる。

0079

この変性シリコーン化合物に含まれる上記の有機置換基としては、下記式(3)〜(21)で表されるものを挙げることができる。

0080

0081

0082

0083

0084

0085

0086

0087

0088

0089

上記の式中、a、bはそれぞれ1から50の整数を表す。

0090

上記の式中、R1〜R10、R12〜R15、R19、R21は、それぞれ2価の有機基を表す。2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基、フェニレン基トリレン基等のアルキルアリーレン基、−(CH2−CH2−O)c−(cは1から50の整数を表す)、−〔CH2−CH(CH3)−O〕d−(dは1から50の整数を表す)等のオキシアルキレン基ポリオキシアルキレン基、−(CH2)e−NHCO−(eは1から8の整数を表す)を挙げることができる。これらのうち、アルキレン基が好ましく、特に、エチレン基、プロピレン基が好ましい。

0091

上記の式中、R11、R16〜R18、R20、R22は、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基プロピル基ブチル基、ペンチル基ヘキシル基、ヘプチル基オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基などが挙げられる。また、上記アルキル基の構造中に、1つ以上の不飽和結合を有していてもよい。

0092

変性シリコーン化合物中の有機置換基の合計平均含有量は、セルロース系樹脂組成物の製造時において、当該変性シリコーンマトリックスのカルダノール付加セルロース系樹脂中に適度な粒径(例えば0.1μm以上100μm以下)で分散可能な範囲とすることが望ましい。カルダノール付加セルロース系樹脂中において、変性シリコーン化合物が適度な粒径で分散すると、弾性率の低いシリコーン領域の周囲への応力集中が効果的に発生し、優れた耐衝撃性を有する樹脂成形体を得ることができる。かかる有機置換基の合計平均含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、また、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。変性シリコーン化合物は、有機置換基が適度に含有されていれば、セルロース系樹脂との親和性が向上し、カルダノール付加セルロース系樹脂中において適度な粒径で分散でき、さらに、成形品において当該変性シリコーン化合物の分離によるブリードアウトを抑制することができる。有機置換基の合計平均含有量が少なすぎると、カルダノール付加セルロース系樹脂中において適度な粒径での分散が困難になる。

0093

変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基がアミノ基、エポキシ基、カルビノール基、フェノール基、メルカプト基、カルボキシル基、メタクリル基の場合、この変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基の平均含有量は下記式(I)から求めることができる。

0094

有機置換基平均含有量(%)=
(有機置換基の式量/有機置換基当量)×100 (I)
式(I)中、有機置換基当量は、有機置換基1モルあたりの変性シリコーン化合物の質量の平均値である。

0095

変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基がフェノキシ基、アルキルフェノキシ基、長鎖アルキル基、アラルキル基、長鎖脂肪酸エステル基、長鎖脂肪酸アミド基の場合、この変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基の平均含有量は下記式(II)から求めることができる。

0096

有機置換基平均含有量(%)=
x×w/[(1−x)×74+x×(59+w)]×100 (II)
式(II)中、xは変性ポリジメチルシロキサン化合物中の全シロキサン繰り返し単位に対する有機置換基含有シロキサン繰り返し単位のモル分率の平均値であり、wは有機置換基の式量である。

0097

変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基がフェニル基の場合、この変性ポリジメチルシロキサン化合物中のフェニル基の平均含有量は下記式(III)から求めることができる。

0098

フェニル基平均含有量(%)=
154×x/[74×(1−x)+198×x]×100 (III)
式(III)中、xは変性ポリジメチルシロキサン化合物(A)中の全シロキサン繰り返し単位に対するフェニル基含有シロキサン繰り返し単位のモル分率の平均値である。

0099

変性ポリジメチルシロキサン化合物中の有機置換基がポリエーテル基の場合、この変性ポリジメチルシロキサン化合物中のポリエーテル基の平均含有量は下記式(IV)から求めることができる。

0100

ポリエーテル基平均含有量(%)=HLB値/20×100 (IV)
式(IV)中、HLB値は界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す値であり、グリフィン法に基づいて下記の式(V)により定義される。

0101

HLB値=20×(親水部の式量の総和/分子量) (V)

0102

本実施形態のセルロース系樹脂へは、当該樹脂に対する親和性が異なる2種類以上の変性シリコーン化合物を添加してもよい。この場合、比較的親和性の低い変性シリコーン化合物(A1)の分散性が、比較的親和性の高い変性シリコーン化合物(A2)によって改善され、より一層優れた耐衝撃性を有するセルロース系樹脂組成物を得ることができる。比較的親和性の低い変性シリコーン化合物(A1)の有機置換基の合計平均含有量としては、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、また15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。比較的親和性の高い変性シリコーン化合物(A2)の有機置換基の合計平均含有量は、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、また90質量%以下が好ましい。

0103

変性シリコーン化合物(A1)と変性シリコーン化合物(A2)との配合比質量比)は、10/90〜90/10の範囲で設定できる。

0104

変性シリコーン化合物においては、ジメチルシロキサン繰返し単位および有機置換基含有シロキサン繰り返し単位が、同種のものが連続して接続されても、交互に接続されても、また、ランダムに接続されていてもよい。変性シリコーン化合物は、分岐構造を有していてもよい。

0105

変性シリコーン化合物の数平均分子量は、900以上が好ましく、1000以上がより好ましく、また1000000以下が好ましく、300000以下がより好ましく、100000以下がさらに好ましい。変性シリコーン化合物の分子量が十分に大きいと、カルダノール付加セルロース系樹脂組成物の製造時において、溶融した当該セルロース系樹脂と混練時に揮発による喪失を抑制することができる。また、変性シリコーン化合物の分子量が大きすぎることなく適度な大きさであると、分散性がよく均一な成形品を得ることができる。

0106

数平均分子量は、試料クロロホルム0.1%溶液のGPCによる測定値ポリスチレン標準試料で較正)を採用することができる。

0107

このような変性シリコーン化合物の添加量は、十分な添加効果を得る点から、セルロース系樹脂組成物全体(特にセルロース系樹脂と変性シリコーン化合物との合計量)に対して1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。セルロース系樹脂の強度等の特性を十分に確保し、またブリードアウトを抑制する点から、変性シリコーン化合物の添加量は20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。

0108

このような変性シリコーン化合物をセルロース系樹脂に添加することにより、樹脂中に変性シリコーンを適度な粒径(例えば0.1〜100μm)で分散させることができ、樹脂組成物の耐衝撃性を向上できる。

0109

耐衝撃性改良剤として、カルダノールを主成分とするカルダノール重合体を用いてもよい。このような耐衝撃性改良剤は、本実施形態のセルロース系樹脂との相溶性に優れるため、より高度な耐衝撃性改良効果が得られる。具体的には、カルダノールにホルムアルデヒドを加え、これとカルダノールの直鎖状炭化水素中の不飽和結合との反応により得られるカルダノール重合体や、カルダノールに硫酸、リン酸、ジエトキシトリフルオロボロン等の触媒を加え、カルダノールの直鎖状炭化水素中の不飽和結合同士の反応により得られるカルダノール重合体が挙げられる。

0110

本実施形態のセルロース系樹脂には、必要に応じて、着色剤酸化防止剤熱安定剤など、通常の樹脂組成物に適用される添加剤を添加してもよい。

0111

本実施形態のセルロース系樹脂には、必要に応じて、一般的な熱可塑性樹脂を添加してもよい。

0112

特に、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)などの柔軟性に優れる熱可塑性樹脂を添加することにより、耐衝撃性を向上できる。このような熱可塑性樹脂(特にTPU)の添加量は、十分な添加効果を得る点から、本実施形態のセルロース系樹脂を含む組成物全体(特にセルロース系樹脂と熱可塑性樹脂(特にTPU)との合計量)に対して1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。セルロース系樹脂の強度等の特性を確保し、またブリードアウトを抑える点から、この熱可塑性樹脂の添加量は20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。

0113

耐衝撃性向上に好適な熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)は、ポリオール、ジイソシアネート、および鎖延長剤を用いて調製されるものを用いることができる。

0115

上記のポリエステルポリオールとしては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等)、芳香族ジカルボン酸フタル酸テレフタル酸イソフタル酸ナフタレンジカルボン酸等)、脂環族ジカルボン酸ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等)等の多価カルボン酸又はこれらの酸エステルもしくは酸無水物と、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の多価アルコール又はこれらの混合物との脱水縮合反応で得られるポリエステルポリオール;ε−カプロラクトン等のラクトンモノマー開環重合で得られるポリラクトンジオール等が挙げられる。

0116

上記のポリエステルエーテルポリオールとしては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、脂環族ジカルボン酸(ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等)等の多価カルボン酸又はこれらの酸エステルもしくは酸無水物と、ジエチレングリコールもしくはアルキレンオキサイド付加物プロピレンオキサイド付加物等)等のグリコール等又はこれらの混合物との脱水縮合反応で得られる化合物が挙げられる。

0117

上記のポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール等の多価アルコールの1種または2種以上と、ジエチレンカーボネートジメチルカーボネートジエチルカーボネート等とを反応させて得られるポリカーボネートポリオールが挙げられる。また、ポリカプロラクトンポリオール(PCL)とポリヘキサメチレンカーボネート(PHL)との共重合体であってもよい。

0118

上記のポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドテトラヒドロフラン等の環状エーテルをそれぞれ重合させて得られるポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及び、これらのコポリエーテルが挙げられる。

0119

TPUの形成に用いられるジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、トリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネートメチルオクタン、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI;HMDI)等が挙げられる。これらの中でも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を好適なものとして用いることができる。

0120

TPUの形成に用いられる鎖延長剤としては、低分子量ポリオールが使用できる。この低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン等の脂肪族ポリオール;1,4−ジメチロールベンゼンビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物等の芳香族グリコールが挙げられる。
これらの材料から得られる熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)に、シリコーン化合物が共重合されていると、さらに優れた耐衝撃性を得ることができる。

0121

これらの熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)は、単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。

0122

本実施形態のセルロース系樹脂に各種添加剤や熱可塑性樹脂を添加した樹脂組成物の製造方法については、特に限定はなく、例えば各種添加剤とセルロース系樹脂をハンドミキシングや、公知の混合機、例えばタンブラーミキサーリボンブレンダー単軸多軸混合押出機、混練ニーダー混練ロール等のコンパウンディング装置溶融混合し、必要に応じ適当な形状に造粒等を行うことにより製造できる。また別の好適な製造方法として、有機溶媒等の溶剤に分散させた、各種添加剤と樹脂を混合し、さらに必要に応じて、凝固用溶剤を添加して各種添加剤と樹脂の混合組成物を得て、その後、溶剤を蒸発させる製造方法がある。

0123

以上に説明した実施形態によるセルロース系樹脂は、成形用材料のベース樹脂として用いることができる。当該セルロース系樹脂をベース樹脂として含む樹脂組成物よりなる成形用材料は、電子機器用外装などの筺体などの成形体に好適である。

0124

ここでベース樹脂とは、組成物中の主成分を意味し、この主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容することを意味し、特にこの主成分の含有割合を限定するものではないが、この主成分が組成物中の好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上を占めることを包含するものである。

0125

以下、具体例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。

0126

[合成例1]カルダノール誘導体1(コハク酸変性カルダノールのクロライド化物)の作製
カルダノールの直鎖状炭化水素部分の不飽和結合が水素化された水添カルダノール(ACROS Organics製、m−n−ペンタデシルフェノール)を原料とした。この水添カルダノールを、1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)で測定したところ不飽和結合が検出されなかったので、水添率は少なくとも90モル%以上であることが確認できた。そのフェノール性水酸基を無水コハク酸と反応させることでカルボキシル基を付与し、カルボキシル化水添カルダノールを得た。次に、このカルボキシル基をオキサリルクロライドでクロライド化して酸クロライド基へ変換し、クロライド化水添カルダノールを得た。具体的には、下記に従って、クロライド化水添カルダノールを作製した。

0127

まず、無水コハク酸33g(0.33mol)を脱水クロロホルム250mLに溶解させ、脱水ピリジン5.0mL(0.062mol)と原料の水添カルダノール50g(0.16mol)を加え、窒素雰囲気下、70℃で24時間加熱還流した。反応溶液を室温まで冷却後、析出した無水コハク酸の結晶濾別した。濾過したクロロホルム溶液を0.1mol/L塩酸250mLで2回洗浄し、さらに水250mLで2回洗浄した。洗浄後のクロロホルム溶液を硫酸マグネシウムで脱水した後、硫酸マグネシウムを濾別し、クロロホルムを減圧留去することでカルボキシル化水添カルダノールの褐色固体60g(0.15mol)を得た。

0128

得られたカルボキシル化水添カルダノール50g(0.12mol)を脱水クロロホルム250mLに溶解させ、オキサリルクロライド24g(0.19mol)とN,N−ジメチルホルムアミド0.25mL(3.2mmol)を加え、室温で72時間撹拌した。クロロホルム、過剰のオキサリルクロライド及びN,N−ジメチルホルムアミドを減圧留去し、クロライド化水添カルダノール52g(0.12mol)を得た。

0129

[合成例2]カルダノール誘導体2(モノクロロ酢酸変性カルダノールのクロライド化物)の作製
カルダノールの直鎖状炭化水素部分の不飽和結合が水素化された水添カルダノール(ACROS Organics製、m−n−ペンタデシルフェノール)を原料とし、そのフェノール性水酸基をモノクロロ酢酸と反応させることでカルボキシル基を付与し、カルボキシル化水添カルダノールを得た。次に、このカルボキシル基をオキサリルクロライドでクロライド化して酸クロライド基へ変換し、クロライド化水添カルダノールを得た。具体的には、下記に従って、クロライド化水添カルダノールを作製した。

0130

まず、水添カルダノール80g(0.26mol)をメタノール120mLに溶解させ、これに、水酸化ナトリウム64g(1.6mol)を蒸留水40mLに溶解させた水溶液を加えた。その後、室温で、関東化学(株)製モノクロロ酢酸66g(0.70mol)をメタノール50mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下完了後、73℃で4時間還流させつつ攪拌を継続した。反応溶液を室温まで冷却後、この反応混合物を、希塩酸でpH=1となるまで酸性化し、メタノール250mLとジエチルエーテル500mL、さらに、蒸留水200mLを加えた。分液漏斗水層を分離、廃棄し、エーテル層を蒸留水400mLで2回洗浄した。エーテル層に無水マグネシウムを加え乾燥させた後、これを濾別した。濾液(エーテル層)をエバポレーター(90℃/3mmHg)で減圧濃縮し、残渣として黄色粉末状の粗生成物を得た。この粗生成物をn−ヘキサンから再結晶し、真空乾燥させることにより、カルボキシル化水添カルダノールの白色粉末46g(0.12mol)を得た。

0131

得られたカルボキシル化水添カルダノール46g(0.12mol)を脱水クロロホルム250mLに溶解させ、オキサリルクロライド24g(0.19mol)とN,N−ジメチルホルムアミド0.25mL(3.2mmol)を加え、室温で72時間撹拌した。クロロホルム、過剰のオキサリルクロライド及びN,N−ジメチルホルムアミドを減圧留去し、クロライド化水添カルダノール48g(0.13mol)を得た。

0132

[合成例3]ビフェニル酢酸クロライドの作製
シグマアルドリッチジャパン(株)製ビフェニル酢酸6.0g(0.028mol)を脱水クロロホルム60mlに溶解させ、オキサリルクロライド3.7g(0.029mol)とN,N−ジメチルホルムアミド0.04mL(0.51mmol)を加え、室温で72時間攪拌した。クロロホルム、過剰のオキサリルクロライド及びN,N−ジメチルホルムアミドを減圧留去し、ビフェニル酢酸クロライド6.5g(0.028mol)を得た。

0133

[実施例1]
合成例1で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体1)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、下記に従って、グラフト化セルロースアセテートを作製した。

0134

セルロースアセテート10g(水酸基量0.036mol)を脱水ジオキサン200mLに溶解させ、反応触媒および酸捕捉剤としてトリエチルアミン5.0mL(0.036mol)を加えた。この溶液に、合成例1で作製したクロライド化水添カルダノール46g(0.11mol)を溶解したジオキサン溶液100mLを加え、100℃で6時間加熱還流した。反応溶液をメタノール3Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥することでグラフト化セルロースアセテート20gを得た。

0135

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.90であった。

0136

また、この試料について、下記に従って評価を行った。結果を表1Aに示す。

0137

[熱可塑性(プレス成形性)の評価]
プレス成形を下記条件で行って成形体を得、その際の成形性を下記基準にしたがって評価した。
成形条件
温度:170℃、時間:2分、圧力:100kgf(9.8×102N)、
成形体サイズ:厚み:2mm、幅:13mm、長さ:80mm。
評価基準
○:良好、△:不良(ボイドヒケ、一部未充填が発生)、×:成形不可。

0138

ガラス転移温度の測定(耐熱性評価)]
DSC(セイコーインスツルメンツ社製、製品名:DSC6200)によりガラス転移温度を測定した。

0139

曲げ試験
上記の成形により得られた成形体について、JIS K7171に準拠して曲げ試験を行った。

0140

引張試験
試料2gをクロロホルム20mLに溶解した溶液を調製し、この溶液を用いてキャスティングを行い、カッターナイフ切り出して幅10mm、長さ60mm、厚さ0.2mmのフィルムを作製した。このフィルムについて、JIS K7127に準拠して引張試験を行った。

0141

吸水率の測定]
JIS K7209に準拠して吸水率を測定した。具体的には、成形体を24時間、常温の純水に浸漬した際の重量増加率を測定した。

0142

[植物成分率の決定]
セルロース成分、カルダノール成分を植物成分として、試料全体に対する植物成分の合計含有率(質量%)を求めた。ここでセルロース成分は、水酸基がアシル化やグラフト化されていない前記の式(1)で示される構造に対応し、カルダノール成分は前記の式(2)で示される構造に対応するものとして算出した。

0143

[実施例2]
合成例1で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体1)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、下記に従って、グラフト化セルロースアセテートを作製した。

0144

セルロースアセテート10g(水酸基量0.036mol)を脱水ジオキサン200mLに溶解させ、反応触媒および酸補足剤としてトリエチルアミン5.0mL(0.036mol)を加えた。この溶液に、合成例1で作製したクロライド化水添カルダノール23g(0.054mol)を溶解したジオキサン溶液100mLを加え、100℃で6時間加熱還流した。反応溶液をメタノール3Lに攪拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥することでグラフト化セルロースアセテート16gを得た。

0145

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.55であった。

0146

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Aに示す。

0147

[実施例3]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、下記に従って、グラフト化セルロースアセテートを作製した。

0148

セルロースアセテート10g(水酸基量0.036mol)を脱水ジオキサン200mLに溶解させ、反応触媒および酸捕捉剤としてトリエチルアミン5.0mL(0.036mol)を加えた。この溶液に、合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール14g(0.037mol)を溶解したジオキサン溶液100mLを加え、100℃で3時間加熱還流した。反応溶液をメタノール3Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥することでグラフト化セルロースアセテート15gを得た。

0149

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.55であった。

0150

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Aに示す。

0151

[実施例4]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、クロライド化水添カルダノールの仕込み量を21g(0.054mol)に変更する以外は実施例3と同様の分量と方法に従って作製し、グラフト化セルロースアセテート19gを得た。

0152

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.80であった。

0153

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Aに示す。

0154

[実施例5]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、クロライド化水添カルダノールの仕込み量を12g(0.031mol)に変更する以外は実施例3と同様の分量と方法に従って作製し、グラフト化セルロースアセテート14gを得た。

0155

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.44であった。

0156

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Aに示す。

0157

[実施例6]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、クロライド化水添カルダノールの仕込み量を6.9g(0.018mol)に変更する以外は実施例3と同様の分量と方法に従って作製し、グラフト化セルロースアセテート13gを得た。

0158

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.30であった。

0159

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Aに示す。

0160

[実施例7]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)と、反応性炭化水素としてベンゾイルクロライド(BC)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、下記に従って、グラフト化セルロースアセテートを作製した。

0161

セルロースアセテート10g(水酸基量0.036mol)を脱水ジオキサン200mLに溶解させ、反応触媒および酸捕捉剤としてトリエチルアミン5.0mL(0.036mol)を加えた。この溶液に、合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール4.1g(0.011mol)と東京化成工業(株)製のベンゾイルクロライド(BC)2.8g(0.020mol)を溶解したジオキサン溶液100mLを加え、100℃で5時間加熱還流した。反応溶液をメタノール3Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥することでグラフト化セルロースアセテート13gを得た。

0162

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.30、DSBCは0.14であった。

0163

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Bに示す。

0164

[実施例8]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)と、反応性炭化水素としてベンゾイルクロライド(BC)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、クロライド化水添カルダノールの仕込み量を3.1g(0.008mol)に変更し、ベンゾイルクロライドの仕込み量を8.4g(0.060mol)に変更する以外は実施例7と同様の分量と方法に従って作製し、グラフト化セルロースアセテート14gを得た。

0165

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.22、DSBCは0.27であった。

0166

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Bに示す。

0167

[実施例9]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)と、反応性炭化水素としてベンゾイルクロライド(BC)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、クロライド化水添カルダノールの仕込み量を7.6g(0.020mol)に変更し、ベンゾイルクロライドの仕込み量を8.4g(0.060mol)に変更する以外は実施例7と同様の分量と方法に従って作製し、グラフト化セルロースアセテート16gを得た。

0168

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.44、DSBCは0.22であった。

0169

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Bに示す。

0170

[実施例10]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)と、反応性炭化水素としてベンゾイルクロライド(BC)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、クロライド化水添カルダノールの仕込み量を4.1g(0.011mol)に変更し、ベンゾイルクロライドの仕込み量を28.1g(0.20mol)に変更する以外は実施例7と同様の分量と方法に従って作製し、グラフト化セルロースアセテート15gを得た。

0171

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.24、DSBCは0.42であった。

0172

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Bに示す。

0173

[実施例11]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)と、反応性炭化水素としてベンゾイルクロライド(BC)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、クロライド化水添カルダノールの仕込み量を4.6g(0.012mol)に変更し、ベンゾイルクロライドの仕込み量を1.1g(0.008mol)に変更する以外は実施例7と同様の分量と方法に従って作製し、グラフト化セルロースアセテート14gを得た。

0174

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.30、DSBCは0.07であった。

0175

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Bに示す。

0176

[実施例12]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)と、反応性炭化水素としてベンゾイルクロライド(BC)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、クロライド化水添カルダノールの仕込み量を1.5g(0.004mol)に変更し、ベンゾイルクロライドの仕込み量を2.2g(0.016mol)に変更する以外は実施例7と同様の分量と方法に従って作製し、グラフト化セルロースアセテート12gを得た。

0177

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.08、DSBCは0.16であった。

0178

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Bに示す。

0179

[実施例13]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)と、反応性炭化水素として合成例3で作製したビフェニル酢酸クロライド(BAA)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、下記に従って、グラフト化セルロースアセテートを作製した。

0180

セルロースアセテート10g(水酸基量0.036mol)を脱水ジオキサン200mLに溶解させ、反応触媒および酸捕捉剤としてトリエチルアミン5.0mL(0.036mol)を加えた。この溶液に、合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール7.0g(0.018mol)と合成例3で作製したビフェニル酢酸クロライド(BAA)1.5g(0.0065mol)を溶解したジオキサン溶液100mLを加え、100℃で5時間加熱還流した。反応溶液をメタノール3Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥することでグラフト化セルロースアセテート13gを得た。

0181

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.27、DSBAAは0.15であった。

0182

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Bに示す。

0183

[実施例14]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)と、反応性炭化水素として合成例3で作製したビフェニル酢酸クロライド(BAA)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、クロライド化水添カルダノールの仕込み量を12.2g(0.032mol)に変更し、ビフェニル酢酸クロライドの仕込み量を4.6g(0.020mol)に変更する以外は実施例13と同様の分量と方法に従って作製し、グラフト化セルロースアセテート14gを得た。

0184

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.40、DSBAAは0.40であった。

0185

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Bに示す。

0186

[実施例15]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)と、反応性炭化水素として合成例3で作製したビフェニル酢酸クロライド(BAA)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、クロライド化水添カルダノールの仕込み量を15.2g(0.040mol)に変更し、ビフェニル酢酸クロライドの仕込み量を3.2g(0.014mol)に変更する以外は実施例13と同様の分量と方法に従って作製し、グラフト化セルロースアセテート14gを得た。

0187

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.55、DSBAAは0.28であった。

0188

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Bに示す。

0189

[実施例16]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)と、反応性炭化水素として合成例3で作製したビフェニル酢酸クロライド(BAA)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、クロライド化水添カルダノールの仕込み量を7.6g(0.020mol)に変更し、ビフェニル酢酸クロライドの仕込み量を7.4g(0.032mol)に変更する以外は実施例13と同様の分量と方法に従って作製し、グラフト化セルロースアセテート14gを得た。

0190

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.30、DSBAAは0.52であった。

0191

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Bに示す。

0192

[実施例17]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)と、反応性炭化水素としてフェニルプロピオニルクロライド(PPA)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、下記に従って、グラフト化セルロースアセテートを作製した。

0193

セルロースアセテート10g(水酸基量0.036mol)を脱水ジオキサン200mLに溶解させ、反応触媒および酸捕捉剤としてトリエチルアミン5.0mL(0.036mol)を加えた。この溶液に、合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール4.0g(0.011mol)と東京化成工業(株)製フェニルプロピオニルクロライド(PPA)2.0g(0.012mol)を溶解したジオキサン溶液100mLを加え、100℃5時間加熱還流した。反応溶液をメタノール3Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥することでグラフト化セルロースアセテート13gを得た。

0194

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.17、DSPPAは0.25であった。

0195

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Cに示す。

0196

[実施例18]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)と、反応性炭化水素としてフェニルプロピオニルクロライド(PPA)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、クロライド化水添カルダノールの仕込み量を3.8g(0.010mol)に変更し、フェニルプロピオニルクロライドの仕込み量を2.7g(0.016mol)に変更する以外は実施例17と同様の分量と方法に従って作製し、グラフト化セルロースアセテート14gを得た。

0197

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.13、DSPPAは0.35であった。

0198

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Cに示す。

0199

[実施例19]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)と、反応性炭化水素としてシクロヘキサンカルボン酸クロライド(CHC)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、下記に従って、グラフト化セルロースアセテートを作製した。

0200

セルロースアセテート10g(水酸基量0.036mol)を脱水ジオキサン200mLに溶解させ、反応触媒および酸捕捉剤としてトリエチルアミン5.0mL(0.036mol)を加えた。この溶液に、合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール3.7g(0.0096mol)とシグマアルドリッチジャパン(株)製のシクロヘキサンカルボン酸クロライド(CHC)2.5g(0.017mol)を溶解したジオキサン溶液100mLを加え、100℃で5時間加熱還流した。反応溶液をメタノール3Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥することでグラフト化セルロースアセテート13gを得た。

0201

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.20、DSCHCは0.22であった。

0202

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Cに示す。

0203

[実施例20]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)と、反応性炭化水素としてビフェニルカルボニルクロライド(BCC)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、下記に従って、グラフト化セルロースアセテートを作製した。

0204

セルロースアセテート10g(水酸基量0.036mol)を脱水ジオキサン200mLに溶解させ、反応触媒および酸捕捉剤としてトリエチルアミン5.0mL(0.036mol)を加えた。この溶液に、合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール4.6g(0.012mol)とシグマアルドリッチジャパン(株)製のビフェニルカルボニルクロライド(BCC)13.0g(0.060mol)を溶解したジオキサン溶液100mLを加え、100℃で5時間加熱還流した。反応溶液をメタノール3Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥することでグラフト化セルロースアセテート16gを得た。

0205

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.30、DSBCCは0.30であった。

0206

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Cに示す。

0207

[実施例21]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−40、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.4)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、下記に従って、グラフト化セルロースアセテートを作製した。

0208

セルロースアセテート15.8g(水酸基量0.036mol)を脱水ジオキサン200mLに溶解させ、反応触媒および酸捕捉剤としてトリエチルアミン5.0mL(0.036mol)を加えた。この溶液に、合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール6.8g(0.018mol)を溶解したジオキサン溶液100mLを加え、100℃で5時間加熱還流した。反応溶液をメタノール3Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥することでグラフト化セルロースアセテート19gを得た。

0209

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.19であった。

0210

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表2に示す。

0211

[実施例22]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−40、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.4)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、クロライド化水添カルダノールの仕込み量を41.2g(0.108mol)に変更する以外は、実施例22と同様の分量と方法に従って作製し、グラフト化セルロースアセテート25gを得た。

0212

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.50であった。

0213

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表2に示す。

0214

[実施例23]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)を、セルロースアセテートブチレート(イーストマンケミカル製、商品名:CAB−381−20、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=1.0、セルロースのグルコース単位当たりの酪酸の付加数(ブチリル化の置換度DSBu)=1.66)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、下記に従って、グラフト化セルロースアセテートブチレートを作製した。

0215

セルロースアセテートブチレート10g(水酸基量0.011mol)を脱水ジオキサン200mLに溶解させ、反応触媒および酸捕捉剤としてトリエチルアミン2.5mL(0.018mol)を加えた。この溶液に、合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール13g(0.035mol)を溶解したジオキサン溶液100mLを加え、100℃で5時間加熱還流した。反応溶液をメタノール3Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥することでグラフト化セルロースアセテートブチレート13gを得た。

0216

得られた試料(グラフト化セルロースアセテートブチレート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.34であった。

0217

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表3に示す。

0218

[実施例24]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)を、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製、商品名:CAP−482−20、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=0.18、セルロースのグルコース単位当たりのプロピオン酸の付加数(プロピオニル化の置換度DSPr)=2.49)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートプロピオネートを得た。具体的には、下記に従って、グラフト化セルロースアセテートプロピオネートを作製した。

0219

セルロースアセテートプロピオネート10g(水酸基量0.010mol)を脱水ジオキサン200mLに溶解させ、反応触媒および酸捕捉剤としてトリエチルアミン2.5mL(0.018mol)を加えた。この溶液に、合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール13g(0.035mol)を溶解したジオキサン溶液100mLを加え、100℃で5時間加熱還流した。反応溶液をメタノール3Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥することでグラフト化セルロースアセテート13gを得た。

0220

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.34であった。

0221

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表3に示す。

0222

[実施例25]
合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール(カルダノール誘導体2)と、反応性炭化水素としてベンゾイルクロライド(BC)を、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製、商品名:CAP−482−20、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=0.18、セルロースのグルコース単位当たりのプロピオン酸の付加数(プロピオニル化の置換度DSPr)=2.49)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートプロピオネートを得た。具体的には、下記に従って、グラフト化セルロースアセテートプロピオネートを作製した。

0223

セルロースアセテートプロピオネート10g(水酸基量0.010mol)を脱水ジオキサン200mLに溶解させ、反応触媒および酸捕捉剤としてトリエチルアミン2.5mL(0.018mol)を加えた。この溶液に、合成例2で作製したクロライド化水添カルダノール4.5g(0.012mol)と東京化成工業(株)製のベンゾイルクロライド(BC)2.8g(0.020mol)を溶解したジオキサン溶液100mLを加え、100℃で5時間加熱還流した。反応溶液をメタノール3Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥することでグラフト化セルロースアセテート13gを得た。

0224

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSCDは0.21、DSBCは0.10であった。

0225

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表3に示す。

0226

[実施例26]
カルダノールの直鎖状炭化水素部分の不飽和結合が水素化された水添カルダノール(ACROS Organics製、m−n−ペンタデシルフェノール)を原料とし、そのフェノール性水酸基をモノクロロ酢酸と反応させることでカルボキシル基を付与し、カルボキシル化水添カルダノールを得た。具体的には、下記に従って、カルボキシル化水添カルダノールを作製した。

0227

まず、水添カルダノール80g(0.26mol)をメタノール120mLに溶解させ、これに、水酸化ナトリウム64g(1.6mol)を蒸留水40mLに溶解させた水溶液を加えた。その後、室温で、関東化学(株)製モノクロロ酢酸66g(0.70mol)をメタノール50mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下完了後、73℃で4時間還流させつつ攪拌を継続した。反応溶液を室温まで冷却後、この反応混合物を、希塩酸でpH=1となるまで酸性化し、メタノール250mLとジエチルエーテル500mL、さらに、蒸留水200mLを加えた。分液漏斗で水層を分離、廃棄し、エーテル層を蒸留水400mLで2回洗浄した。エーテル層に無水マグネシウムを加え乾燥させた後、これを濾別した。濾液(エーテル層)をエバポレーター(90℃/3mmHg)で減圧濃縮し、残渣として黄茶色粉末状の粗生成物を得た。この粗生成物をn−ヘキサンから再結晶し、真空乾燥させることにより、カルボキシル化水添カルダノールの白色粉末46g(0.12mol)を得た。

0228

こうして作製したカルボキシル化水添カルダノールを、セルロース(日本製紙ケミカル(株)製、商品名:KCフロックW−50G)に結合させ、グラフト化セルロースを得た。具体的には、下記に従って、グラフト化セルロースを作製した。

0229

セルロース2.5g(水酸基量47mmol)をメタノール100mLに懸濁させ1時間室温で撹拌し、吸引濾過した。濾別した固体をジメチルアセトアミド(DMAc)100mLに膨潤させ1時間室温で撹拌した後、吸引濾過して溶媒を除去した。その後、DMAcでの膨潤と吸引濾過による溶媒の除去を同様に3回繰り返した。DMAc250mLにLiCl21gを溶解し、先のDMAc膨潤セルロースを混合して室温で一晩撹拌し、セルロース溶液を得た。こうして得られたセルロース溶液に、カルボキシル化水添カルダノールを17.3g(46.5mmol)、ピリジン11.0g(140mmol)、トシルクロライド8.8g(46mmol)を溶解したDMAc溶液20mLを加え、50℃で1時間加熱反応させた。反応溶液をメタノール2Lに滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体をメタノール500mLで3回洗浄した後、105℃で5時間真空乾燥することで、グラフト化セルロース10.4gを得た。回収量から求められたDSCDは1.49であった。また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表4に示す。

0230

[比較例1]
実施例1で使用したグラフト化前のセルロースアセテートを比較試料とした。

0231

このセルロースアセテートについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1Cに示す。

0232

なお、このセルロースアセテートは、加熱しても溶融せず、熱可塑性を示さなかった。また、成形もできなかったため曲げ試験を行えなかった。

0233

[比較例2]
実施例1で使用したグラフト化前のセルロースアセテートに、可塑剤としてクエン酸トリエチル(ファイザー社製、商品名:Citroflex−2)を、樹脂組成物全体に対する含有量が45質量%となるように添加し、押し出し混合機(HAAKEMiniLab Rheomex extruder (Model CTW5, Thermo Electron Corp., Waltham, Mass.))で混合(温度200℃、スクリュー回転速度60rpm)し、セルロースアセテート樹脂組成物を作製した。

0234

この樹脂組成物について、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1Cに示す。

0235

なお、この樹脂組成物を用いてキャスティングすると相分離が起こり、均一なフィルムを作製できなかったため、引張試験は行わなかった。

0236

[比較例3]
クエン酸トリエチルの添加量を、樹脂組成物全体に対して56質量%となるように変更する以外は比較例2と同様の分量と方法に従って、セルロースアセテート樹脂組成物を作製した。

0237

この樹脂組成物について、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1Cに示す。

0238

なお、この樹脂組成物を用いてキャスティングすると相分離が起こり、均一なフィルムを作製できなかったため、引張試験は行わなかった。

0239

[比較例4]
クエン酸トリエチルの添加量を、樹脂組成物全体に対して34質量%となるように変更する以外は比較例2と同様の分量と方法に従って、セルロースアセテート樹脂組成物を作製した。

0240

この樹脂組成物について、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1Cに示す。

0241

なお、この樹脂組成物を用いてキャスティングすると相分離が起こり、均一なフィルムを作製できなかったため、引張試験は行わなかった。

0242

[比較例5]
反応性炭化水素としてフェニルプロピオニルクロライド(PPA)を、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:LM−80、セルロースのグルコース単位当たりの酢酸の付加数(アセチル化の置換度:DSAce)=2.1)に結合させ、グラフト化セルロースアセテートを得た。具体的には、下記に従って、グラフト化セルロースアセテートを作製した。

0243

セルロースアセテート10g(水酸基量0.036mmol)を脱水ジオキサン200mLに溶解させ、反応触媒および酸捕捉剤としてトリエチルアミン5.0mL(0.036mmol)を加えた。この溶液に、東京化成工業(株)製のフェニルプロピオニルクロライド(PPA)10g(0.060mol)を溶解したジオキサン溶液100mLを加え、100℃で1時間加熱還流した。反応溶液をメタノール3Lに撹拌しながらゆっくりと滴下して再沈殿し、固体を濾別した。濾別した固体を一晩空気乾燥し、さらに105℃で5時間真空乾燥することでグラフト化セルロースアセテート12gを得た。

0244

得られた試料(グラフト化セルロースアセテート)を1H−NMR(Bruker社製、製品名:AV−400、400MHz)によって測定したところ、DSPPAは0.47であった。

0245

また、この試料について、実施例1と同様の方法に従って評価を行った。結果を表1Cに示す。

0246

なお、このセルロースアセテートは、加熱しても溶融せず、熱可塑性を示さなかった。また、成形もできなかったため曲げ試験を行えなかった。

0247

[比較例6]
実施例21で使用したグラフト化前のセルロースアセテート(DSAce=2.4)を比較試料とした。

0248

このセルロースアセテートについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。

0249

なお、このセルロースアセテートは、加熱しても溶融せず、熱可塑性を示さなかった。また、成形もできなかったため曲げ試験を行えなかった。

0250

[比較例7]
実施例21で使用したグラフト化前のセルロースアセテート(DSAce=2.4)に、可塑剤としてクエン酸トリエチル(ファイザー社製、商品名:Citroflex−2)を、樹脂組成物全体に対する含有量が20質量%となるように添加し、押し出し混合機(HAAKEMiniLab Rheomex extruder (Model CTW5, Thermo Electron Corp., Waltham, Mass.))で混合(温度190℃、スクリュー回転速度60rpm)し、セルロースアセテート樹脂組成物を作製した。

0251

この樹脂組成物について、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。

0252

なお、この樹脂組成物を用いてキャスティングすると相分離が起こり、均一なフィルムを作製できなかったため、引張試験は行わなかった。

0253

[比較例8]
クエン酸トリエチルの添加量を、樹脂組成物全体に対して40質量%となるように変更する以外は比較例7と同様の分量、方法に従って、セルロースアセテート樹脂組成物を作製した。

0254

この樹脂組成物について、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。

0255

なお、この樹脂組成物を用いてキャスティングすると相分離が起こり、均一なフィルムを作製できなかったため、引張試験は行わなかった。

0256

[比較例9、10]
実施例23、24で使用したグラフト化前のセルロースアセテートブチレート、およびセルロースアセテートプロピオネートを比較試料とした。

0257

このセルロースアセテートブチレート、およびセルロースアセテートプロピオネートについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。

0258

なお、このセルロースアセテートブチレート、およびセルロースアセテートプロピオネートは、加熱した際に溶融し熱可塑性はあるものの溶融粘度が非常に大きく、成形が困難であったため曲げ試験を行えなかった。

0259

[比較例11、12]
実施例23、24で使用したグラフト化前のセルロースアセテートブチレート、およびセルロースアセテートプロピオネートに、可塑剤としてクエン酸トリエチル(ファイザー社製、商品名:Citroflex−2)を、それぞれ樹脂組成物全体に対する含有量が27質量%となるように添加し、押し出し混合機(HAAKEMiniLab Rheomex extruder (Model CTW5, Thermo Electron Corp., Waltham, Mass.))で混合(温度180℃、スクリュー回転速度60rpm)し、セルロースアセテートブチレート樹脂組成物、およびセルロースアセテートプロピオネート樹脂組成物を作製した。

0260

この樹脂組成物について、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示す。

0261

なお、この樹脂組成物を用いてキャスティングすると相分離が起こり、均一なフィルムを作製できなかったため、引張試験は行わなかった。

0262

[比較例13]
実施例26と比較するため、可塑剤のクエン酸トリエチルの添加量を、樹脂組成物全体に対して63質量%となるように変更する以外は比較例2と同様の方法に従って、セルロースアセテートと本可塑剤からなる樹脂組成物を作製した。本可塑剤とアセチル基の総量は、実施例26のカルダノール量と同量にした。この樹脂組成物について、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表4に示す。

0263

この樹脂組成物を用いてキャスティングすると相分離が起こり、均一なフィルムを作製できなかったため、引張試験は行わなかった。

0264

[比較例14]
不飽和結合を持つ上記式(2)で示される、カルダノール(東化工(株)製、LB−7000:3−ペンタデシルフェノール約5%、3−ペンタデシルフェノールモノエン約35%、3−ペンタデシルフェノールジエン約20%、3−ペンタデシルフェノールトリエン約40%の混合物)の不飽和結合とセルロース(日本製紙ケミカル(株)製、商品名:KCフロックW−50G)の水酸基(ヒドロキシ基)を化学結合させ、カルダノールグラフト化セルロースを得た。具体的には、下記に従って、カルダノールグラフト化セルロースを作製した。

0265

ドライボックス中、窒素ガス雰囲気下でボロントリフルオリドジエチルエーテル(BF3−OEt2)(関東化学(株)製)80mLと塩化メチレン(関東化学(株)製)100mLの反応溶媒を作製した後、これに、セルロース2gを加え、室温下で2時間攪拌した。その後、上記反応溶媒からセルロースを濾別し、真空乾燥させた後、これに上記液状のカルダノール(LB−7000)100mLを加え、室温下で3時間攪拌しながらグラフト化反応を行った。反応終了後、生成物を濾別し、アセトン洗浄ソックスレ抽出を行い、105℃で5時間真空乾燥することで、目的物のカルダノールグラフト化セルロースの組成物2.5gを得た。回収量から求められたDSCDは0.16であった。

0266

この組成物は、加熱しても溶融せず、熱可塑性を示さなかった。また、成形もキャスティングもできなかったため、曲げ試験や引張試験などの評価を行えなかった。

0267

[実施例27]
実施例5において得られたセルロース系樹脂(グラフト化セルロースアセテート)90質量部にTPU(アジペートエステル系TPU、大日精化(株)製、商品名:レザミンP6165)10質量部を添加し、混合押出機(HAAKEMiniLab Rheomex extruder, Model CTW5, Thermo Electron Corp., Waltham, Mass.)で混合し(温度200℃、スクリュー回転速度50rpm)、セルロース系樹脂組成物を作製した。

0268

得られたセルロース系樹脂組成物について、下記に従って評価を行った。結果を表5に示す。表中のA−1は、本実施例で用いたTPUを示す。

0269

ガラス転移温度の測定(耐熱性評価)および吸水率の測定は、実施例1と同様に行った。

0270

得られたセルロース系樹脂組成物の成形は、下記条件で行った。

0271

(成形条件)
温度:200℃、時間:2分、圧力:100kgf(9.8×102N)、
成形体サイズ(成形体1):厚み:2mm、幅:13mm、長さ:80mm、
成形体サイズ(成形体2):厚み:4mm、幅:10mm、長さ:80mm。

0272

アイゾット衝撃強度の評価]
上記の成形により得られた成形体2について、JIS K7110に準拠して成形体のノッチ付アイゾット衝撃強度を測定した。

0273

[曲げ試験]
上記の成形により得られた成形体1について、JIS K7171に準拠して曲げ試験を行った。

0274

[実施例28]
TPU(表中のA−2)として、カプロラクトン系TPU(大日精化(株)製、商品名:レザミンP4038Sを用いた以外は、実施例27と同様にしてセルロース系樹脂組成物を製造し、評価を行った。結果を表5に示す。

0275

[実施例29]
TPU(表中のA−3)として、シリコーン共重合アジペート系TPU(大日精化(株)製、商品名:レザミンPS62470)を用いた以外は、実施例27と同様にしてセルロース系樹脂組成物を製造し、評価を行った。結果を表5に示す。

0276

[参考例1]
TPUに代えて、可塑剤であるシクロヘキサンジカルボン酸エステル(BASF社製、製品名:Hexamoll DINCH)を用いた以外は、実施例27と同様にしてセルロース系樹脂組成物を製造し、評価を行った。結果を表5に示す。

0277

[実施例30〜35]
実施例5において得られたセルロース系樹脂(グラフト化セルロースアセテート)へ、表6に示す信越化学工業(株)製のポリジメチルシロキサン化合物(シリコーン化合物)を表7に示す配合条件に従って添加し、混合押出機(HAAKEMiniLab Rheomex extruder, Model CTW5, Thermo Electron Corp., Waltham, Mass.)で混合し(温度200℃、スクリュー回転速度50rpm)、セルロース系樹脂組成物を作製した。

0278

得られたセルロース系樹脂組成物について、下記に従って評価を行った。結果を表7に示す。

0279

ガラス転移温度の測定(耐熱性評価)および吸水率の測定は、実施例1と同様に行った。

0280

得られたセルロース系樹脂組成物の成形は、下記条件で行った。

0281

(成形条件)
温度:200℃、時間:2分、圧力:100kgf(9.8×102N)、
成形体サイズ(成形体1):厚み:2mm、幅:13mm、長さ:80mm、
成形体サイズ(成形体2):厚み:4mm、幅:10mm、長さ:80mm。

0282

[アイゾット衝撃強度の評価]
上記の成形により得られた成形体2について、JIS K7110に準拠して成形体のノッチ付アイゾット衝撃強度を測定した。

0283

[曲げ試験]
上記の成形により得られた成形体1について、JIS K7171に準拠して曲げ試験を行った。

0284

分散粒径の評価]
得られた樹脂組成物を200℃ホットプレートにて融解プレパラートを作製し、光学顕微鏡(KEYENCE製、商品名:VHX−500)で1000倍に拡大してポリシロキサン化合物の分散粒径を観察した。

0285

[実施例36〜44]
実施例5のセルロース系樹脂に代えて実施例7のセルロース系樹脂を用い、表8に示す配合条件に従ってポリシロキサン化合物(シリコーン化合物)を添加した以外は、実施例30〜35と同様にして、セルロース系樹脂組成物を作製し、評価を行った。結果を表8に示す。

0286

[参考例2]
ポリシロキサン化合物(シリコーン化合物)としてB−11を用いた以外は、実施例30〜35と同様にして、セルロース系樹脂組成物を作製し、評価を行った。結果を表7に示す。

0287

[参考例3]
ポリシロキサン化合物(シリコーン化合物)としてB−10を用いた以外は、実施例36〜41と同様にして、セルロース系樹脂組成物を作製し、評価を行った。結果を表8に示す。

0288

[参考例4]
ポリシロキサン化合物(シリコーン化合物)としてB−11を用いた以外は、実施例36〜41と同様にして、セルロース系樹脂組成物を作製し、評価を行った。結果を表8に示す。

0289

0290

0291

0292

0293

0294

0295

0296

0297

0298

0299

実施例1〜6と比較例1を対比すると、本実施例のカルダノールグラフト化セルロース系樹脂(セルロース水酸基にアセチル基も付加)は、熱可塑性を示さないグラフト化前のセルロース誘導体(セルロースアセテート)に対して、植物成分率を下げることなく、熱可塑性(プレス成形性)を示し優れた曲げ特性が得られ、さらに引っ張り特性(特に破断ひずみ)及び耐水性(吸水率)が改善されている。また、実施例1〜6と比較例2〜4を対比すると、本実施例のカルダノールグラフト化セルロース系樹脂(セルロース水酸基にアセチル基も付加)は、グラフト化前のセルロース誘導体(セルロースアセテート)に可塑剤を添加したものよりも、曲げ特性、引っ張り特性および耐水性が改善されているとともに、植物成分率を下げることなく高い耐熱性(ガラス転移温度)が得られている。

0300

実施例7〜20に示されているように、カルダノールとともに反応性炭化水素をグラフト化させることにより、高い耐水性を得ながら、曲げ特性(特に曲げ強度)及び引張特性(特に引っ張り強度)をより一層改善することができる。

0301

実施例21〜22及び比較例6〜8は、実施例1〜20及び比較例1〜5に対して、セルロース水酸基に付加したアセチル基を増加させた例である。このような場合であっても、実施例21〜22と比較例6を対比すると、本実施例のカルダノールグラフト化セルロース系樹脂は、熱可塑性を示さないグラフト化前のセルロース誘導体に対して、植物成分率を下げることなく、熱可塑性を示し優れた曲げ特性が得られ、さらに引っ張り特性(特に破断ひずみ)及び耐水性が改善されている。また、実施例21及び22と比較例7及び8を対比すると、本実施例のカルダノールグラフト化セルロース系樹脂は、グラフト化前のセルロース誘導体に可塑剤を添加したものよりも、曲げ特性(特に曲げ強度)、引っ張り特性および耐水性が改善されているとともに、植物成分率を下げることなく高い耐熱性が得られている。

0302

可塑剤を添加した比較例2〜4、7及び8が示すように、可塑剤を添加するだけでは、優れた耐熱性は得られていない。本発明の実施形態によれば、セルロース系樹脂に熱可塑性を付与することができるとともに、優れた耐熱性を得ることができる。

0303

また、反応性炭化水素のみをグラフトさせた比較例5が示すように、反応性炭化水素のみをグラフトさせるだけでは、熱可塑性は示さず、曲げ特性、引っ張り特性(特に破断ひずみ)及び耐水性は改善されていない。本発明の実施形態によれば、セルロース系樹脂に熱可塑性を付与することができるとともに、優れた曲げ特性、引っ張り特性(特に破断ひずみ)及び耐水性を得ることができる。

0304

実施例23〜25及び比較例9〜12は、アセチル基に加えてブチリル基あるいはプロピオニル基が水酸基に付加したセルロース誘導体を用いて作製したセルロース系樹脂の例である。このような場合であっても、実施例23〜25と比較例9及び10を対比すると、本実施例のカルダノールグラフト化セルロース系樹脂は、グラフト化前のセルロース誘導体に対して、植物成分率を下げることなく、優れた熱可塑性及び曲げ特性が得られ、さらに引っ張り特性(特に破断ひずみ)及び耐水性が改善されている。また、実施例23〜25と比較例11及び12を対比すると、本実施例のカルダノールグラフト化セルロース系樹脂は、グラフト化前のセルロース誘導体に可塑剤を添加したものよりも、曲げ特性(特に曲げ強度)、引っ張り特性および耐水性が改善されているとともに、植物成分率を下げることなく高い耐熱性が得られている。

0305

実施例26は、セルロース水酸基にアセチル基等のアシル基が付加していないセルロースを用いて作製したセルロース系樹脂の例である。このような場合であっても、実施例26と比較例13を対比すると、本実施例のカルダノールグラフト化セルロース系樹脂は、比較例13のセルロース誘導体(セルロースアセテート)に可塑剤を添加したもの(セルロース成分の重量分率は同じ)よりも、曲げ特性(特に曲げ強度)、引っ張り特性および耐水性が改善されているとともに、植物成分率を下げることなく高い耐熱性が得られている。

0306

このように、本実施例によれば、高い植物成分率(高植物性)を有しながら、耐水性が改善され、良好な熱可塑性(プレス成形性)と十分な耐熱性をもつセルロース系樹脂を提供できる。また、プレス成形体については高い曲げ特性が得られ、フィルム成形体ついては引張特性(特に靱性)を改善することができる。また、本実施例のグラフト化セルロース系樹脂は、植物成分率が高いとともに、非可食部の利用率が高い。

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