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技術 強酸性ジルコニウム粒子の製造方法、プロトン伝導性材料、プロトン伝導性膜の製造方法、プロトン伝導性膜、燃料電池用電極、膜−電極接合体、燃料電池

出願人 国立大学法人東京工業大学
発明者 山口猛央菊地佑磨李柱明大橋秀伯田巻孝敬
出願日 2010年3月25日 (9年4ヶ月経過) 出願番号 2011-526695
公開日 2013年1月17日 (6年7ヶ月経過) 公開番号 WO2011-018908
状態 特許登録済
技術分野 第5-8族元素を含む化合物及びその製造 重金属無機化合物(II) 第4族元素を含む化合物及びその製造 導電材料 電線ケーブルの製造(1) 無消耗性電極 燃料電池(本体) ナノ構造物
主要キーワード ホットク PP粒子 保温チューブ ジルコニウムアルコキシド溶液 高湿度領域 撥水性層 ジルコニウムナノ粒子 熱水試験後
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重要な関連分野

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図面 (20)

課題・解決手段

ジルコニウムアルコキシドと、キレート剤としてのジルコニウムブトキシドと、触媒としての硝酸溶媒であるイソプロピルアルコール中で反応させて得られる強酸性ジルコニウム粒子の前駆体としてのジルコニウムナノ粒子に、スルホフェニルホスホン酸又は硫酸を加えて反応させることにより、プロトン伝導性材料として高性能な材料であって触媒活性の高いスルホフェニルホスホン酸ジルコニウム硫酸ジルコニウム、又は、硫酸ジルコニア低温で製造することが可能となる。

概要

背景

固体高分子形燃料電池PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)は出力密度が高く、自動車への応用が期待されている。固体高分子形燃料電池は、自動車用として用いられる場合、−30℃での起動及び常温から120℃までの幅広い温度領域、及び、相対湿度20%から100%までの湿度領域プロトン伝導発現させる必要がある。例えば、プロトン伝導性材料として、スルホン酸基をもつフッ素系ポリマー(Nafion(登録商標)等)が用いられているが、高温低湿度プロトン伝導性不足しており、代替材料新規開発が求められている。しかし、固体高分子形燃料電池用のプロトン伝導性材料は、単独素材だけで開発するのは難しく、有機無機複合材料での開発が望ましい。ここで、有機無機複合材料とは、ポリマー無機系材料との複合材料のことをいう。
有機無機複合材料を構成する無機系材料の候補として、スルホフェニルホスホン酸ジルコニウム(Zirconium sulphophenyl phosphonic acid (以下、ZrSPPとする。))、及び、硫酸ジルコニウム(以下、Zr(SO4)2という。)や硫酸ジルコニア(以下、SZrO2という。)等の硫酸ジルコニウム化合物が挙げられる。これらの材料は、ハメット酸性度数H0が、Zr(SO4)2についてはH0=−13、ZrSPPについてはH0=−5、SZrO2についてはH0=−16であり、酸性が強く、高いプロトン供給能力を有すると考えられるため、PEFC用の触媒、プロトン伝導性材料として利用できると考えられる。
ZrSPPは、ジルコニウム化合物であるZrClO2を出発原料として、SPP(m-sulphophenyl phosphonic acid)とリン酸とを還流することで得られる(非特許文献1を参照)。また、SZrO2は、ZrOCl2・8H2OをNH3水溶液(pH=10)に入れてZrO2・nH2Oとし、このZrO2・nH2Oに硫酸を加えて焼成することで得られる(非特許文献2を参照)。
しかしながら、プロトン伝導性材料としてZrSPPや硫酸ジルコニウム化合物を用いる場合には、プロトン伝導性材料としての性能の向上等の観点から、有機無機複合材料を作ることが望ましい。従来の製造方法は、製造過程において有機無機複合材料を構成するポリマーの耐熱温度を超える高温で処理する必要がある。例えば、ZrSPPは、200℃以上の高温で処理する必要があり、SZrO2は、520℃以上の高温で処理する必要がある。その結果、ZrSPP及び硫酸ジルコニウム化合物は、凝集して大きな粒子となってしまうため、プロトン伝導性材料としての性能を持続させるのが難しく、有機無機複合材料を構成する無機系材料として用いるには適当ではなかった。

概要

ジルコニウムアルコキシドと、キレート剤としてのジルコニウムブトキシドと、触媒としての硝酸溶媒であるイソプロピルアルコール中で反応させて得られる強酸性ジルコニウム粒子の前駆体としてのジルコニウムナノ粒子に、スルホフェニルホスホン酸又は硫酸を加えて反応させることにより、プロトン伝導性材料として高性能な材料であって触媒活性の高いスルホフェニルホスホン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、又は、硫酸ジルコニアを低温で製造することが可能となる。

目的

本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、有機無機複合材料を構成する無機系材料として用いることが可能な強酸性ジルコニウム粒子の製造方法及びこの製造方法により得られた強酸性ジルコニウム粒子を用いたプロトン伝導性材料、プロトン伝導性膜の製造方法、この製造方法により得られたプロトン伝導性膜、燃料電池用電極、膜−電極接合体及び燃料電池を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

ジルコニウムアルコキシドキレート剤触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子に、スルホフェニルホスホン酸を加えて反応させることで強酸性ジルコニウム粒子を得る強酸性ジルコニウム粒子の製造方法。

請求項2

上記ジルコニウムアルコキシドが、ジルコニウムブトキシドである請求の範囲第1項記載の強酸性ジルコニウム粒子の製造方法。

請求項3

上記キレート剤が、アセチルアセトンである請求の範囲第1項又は請求の範囲第2項記載の強酸性ジルコニウム粒子の製造方法。

請求項4

上記溶媒が、イソプロピルアルコールである請求の範囲第1項乃至第3項のうちいずれか1項記載の強酸性ジルコニウム粒子の製造方法。

請求項5

上記ジルコニウムナノ粒子は、動的光散乱法により測定した体積平均粒径が2nmである請求の範囲第1項乃至第4項のうちいずれか1項記載の強酸性ジルコニウム粒子の製造方法。

請求項6

請求の範囲第1項乃至第5項のうちいずれか1項記載の強酸性ジルコニウム粒子の製造方法により得られた強酸性ジルコニウム粒子を用いたプロトン伝導性材料

請求項7

プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液を上記ジルコニウムナノ粒子分散体に注いで、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた分散体から、上記第1の極性有機溶媒及び上記第2の極性有機溶媒を除去して上記プロトン伝導性複合材料を得るプロトン伝導性複合材料調製工程と、上記プロトン伝導性複合材料調製工程で得たプロトン伝導性複合材料に、スルホフェニルホスホン酸を加えて反応させることで強酸性ジルコニウム粒子を得る反応工程とを有する強酸性ジルコニウム粒子の製造方法。

請求項8

請求の範囲第7項記載の強酸性ジルコニウム粒子の製造方法により得られた強酸性ジルコニウム粒子を用いたプロトン伝導性材料。

請求項9

請求の範囲第6項又は第8項記載のプロトン伝導性材料を含む触媒層を有する燃料電池用電極

請求項10

プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液と上記ジルコニウムナノ粒子分散体とを混合して、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との複合材料分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた複合材料分散体を多孔性ポリマー基材の孔に含浸する含浸工程と、上記複合材料分散体が含浸された多孔性ポリマー基材とスルホフェニルホスホン酸とを反応させることで、上記多孔性ポリマー基材に、上記ジルコニウムナノ粒子と上記スルホフェニルホスホン酸とから生成された強酸性ジルコニウム化合物と、上記プロトン伝導性ポリマーとが固定されたプロトン伝導性膜を得る反応工程とを有するプロトン伝導性膜の製造方法。

請求項11

請求の範囲第10項記載のプロトン伝導性膜の製造方法により得られたプロトン伝導性膜。

請求項12

請求の範囲第6項又は第8項記載のプロトン伝導性材料を含む触媒層を有する電極と、請求の範囲第11項記載のプロトン伝導性膜とを用いた膜−電極接合体

請求項13

請求の範囲第12項記載の膜−電極接合体を用いた燃料電池

請求項14

ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子に、硫酸を加えて反応させることで強酸性ジルコニウム粒子を得る強酸性ジルコニウム粒子の製造方法。

請求項15

上記ジルコニウムアルコキシドが、ジルコニウムブトキシドである請求の範囲第14項記載の強酸性ジルコニウム粒子の製造方法。

請求項16

上記キレート剤が、アセチルアセトンである請求の範囲第14項又は第15項記載の強酸性ジルコニウム粒子の製造方法。

請求項17

上記溶媒が、イソプロピルアルコールである請求の範囲第14項乃至第16項のうちいずれか1項記載の強酸性ジルコニウム粒子の製造方法。

請求項18

上記ジルコニウムナノ粒子は、動的光散乱法により測定した体積平均粒径が2nmである請求の範囲第14項乃至第17項のうちいずれか1項記載の強酸性ジルコニウム粒子の製造方法。

請求項19

請求の範囲第14項乃至第18項のうちいずれか1項記載の強酸性ジルコニウム粒子の製造方法により得られた強酸性ジルコニウム粒子を用いたプロトン伝導性材料。

請求項20

プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液を上記ジルコニウムナノ粒子分散体に注いで、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた分散体から、上記第1の極性有機溶媒及び上記第2の極性有機溶媒を除去して上記プロトン伝導性複合材料を得るプロトン伝導性複合材料調製工程と、上記プロトン伝導性複合材料調製工程で得たプロトン伝導性複合材料に、硫酸を加えて反応させることで強酸性ジルコニウム粒子を得る反応工程とを有する強酸性ジルコニウム粒子の製造方法。

請求項21

請求の範囲第20項記載の強酸性ジルコニウム粒子の製造方法により得られた強酸性ジルコニウム粒子を用いたプロトン伝導性材料。

請求項22

請求の範囲第19項又は第21項記載のプロトン伝導性材料を含む触媒層を有する燃料電池用電極。

請求項23

プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液と上記ジルコニウムナノ粒子分散体とを混合して、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との複合材料分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた複合材料分散体を多孔性ポリマー基材の孔に含浸する含浸工程と、上記複合材料分散体が含浸された多孔性ポリマー基材と硫酸とを反応させることで、上記多孔性ポリマー基材に、上記ジルコニウムナノ粒子と上記硫酸とから生成された強酸性ジルコニウム化合物と、上記プロトン伝導性ポリマーとが固定されたプロトン伝導性膜を得る反応工程とを有するプロトン伝導性膜の製造方法。

請求項24

請求の範囲第23項記載のプロトン伝導性膜の製造方法により得られたプロトン伝導性膜。

請求項25

請求の範囲第19項又は第21項記載のプロトン伝導性材料を含む触媒層を有する電極と、請求の範囲第24項記載のプロトン伝導性膜とを用いた膜−電極接合体。

請求項26

請求の範囲第25項記載の膜−電極接合体を用いた燃料電池。

請求項27

ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子に、アルカリによりpH調整した硫酸溶液を反応させることで強酸性ジルコニウム粒子を得る強酸性ジルコニウム粒子の製造方法。

請求項28

ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子に、アルカリによりpH調整した硫酸溶液を反応させることで得られた強酸性ジルコニウム粒子を用いたプロトン伝導性材料。

請求項29

プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液を上記ジルコニウムナノ粒子分散体に注いで、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた分散体から、上記第1の極性有機溶媒及び上記第2の極性有機溶媒を除去して上記プロトン伝導性複合材料を得るプロトン伝導性複合材料調製工程と、上記プロトン伝導性複合材料調製工程で得たプロトン伝導性複合材料に、アルカリによりpH調整した硫酸溶液を加えて反応させることで強酸性ジルコニウム粒子を得る反応工程とを有する強酸性ジルコニウム粒子の製造方法。

請求項30

請求の範囲第29項記載の強酸性ジルコニウム粒子の製造方法により得られた強酸性ジルコニウム粒子を用いたプロトン伝導性材料。

請求項31

請求の範囲第28項又は第30項記載のプロトン伝導性材料を含む触媒層を有する燃料電池用電極。

請求項32

プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液と上記ジルコニウムナノ粒子分散体とを混合して、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との複合材料分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた複合材料分散体を多孔性ポリマー基材の孔に含浸する含浸工程と、上記複合材料分散体が含浸された多孔性ポリマー基材とアルカリによりpH調整した硫酸溶液とを反応させることで、上記多孔性ポリマー基材に、上記ジルコニウムナノ粒子と上記アルカリによりpH調整した硫酸溶液とから生成された強酸性ジルコニウム化合物と、上記プロトン伝導性ポリマーとが固定されたプロトン伝導性膜を得る反応工程とを有するプロトン伝導性膜の製造方法。

請求項33

請求の範囲第32項記載のプロトン伝導性膜の製造方法により得られたプロトン伝導性膜。

請求項34

請求の範囲第28項又は第30項記載のプロトン伝導性材料を含む触媒層を有する電極と、請求の範囲第33項記載のプロトン伝導性膜とを用いた膜−電極接合体。

請求項35

請求の範囲第34項記載の膜−電極接合体を用いた燃料電池。

請求項36

ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子に、スルホン酸を加えて反応させることで強酸性ジルコニウム粒子を得る強酸性ジルコニウム粒子の製造方法。

請求項37

請求の範囲第36項記載の強酸性ジルコニウム粒子の製造方法により得られた強酸性ジルコニウム粒子を用いたプロトン伝導性材料。

技術分野

0001

本発明は、プロトン伝導性材料として高性能な材料であって触媒活性の高い強酸性ジルコニウム粒子の製造方法及びこの製造方法により得られた強酸性ジルコニウム粒子を用いたプロトン伝導性材料、高性能なプロトン伝導性膜の製造方法、この製造方法により得られたプロトン伝導性膜、燃料電池用電極、膜−電極接合体及び燃料電池に関する。
本出願は、日本国において2009年8月13日に出願された日本特許出願番号2009−187729、日本国において2009年11月30日に出願された日本特許出願番号2009−272239及び2010年2月24日に出願された国際特許出願第PCT/JP2010/52852号を基礎として優先権を主張するものであり、これらの出願を参照することにより、本出願に援用される。

背景技術

0002

固体高分子形燃料電池PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)は出力密度が高く、自動車への応用が期待されている。固体高分子形燃料電池は、自動車用として用いられる場合、−30℃での起動及び常温から120℃までの幅広い温度領域、及び、相対湿度20%から100%までの湿度領域プロトン伝導発現させる必要がある。例えば、プロトン伝導性材料として、スルホン酸基をもつフッ素系ポリマー(Nafion(登録商標)等)が用いられているが、高温低湿度プロトン伝導性不足しており、代替材料新規開発が求められている。しかし、固体高分子形燃料電池用のプロトン伝導性材料は、単独素材だけで開発するのは難しく、有機無機複合材料での開発が望ましい。ここで、有機無機複合材料とは、ポリマー無機系材料との複合材料のことをいう。
有機無機複合材料を構成する無機系材料の候補として、スルホフェニルホスホン酸ジルコニウム(Zirconium sulphophenyl phosphonic acid (以下、ZrSPPとする。))、及び、硫酸ジルコニウム(以下、Zr(SO4)2という。)や硫酸ジルコニア(以下、SZrO2という。)等の硫酸ジルコニウム化合物が挙げられる。これらの材料は、ハメット酸性度数H0が、Zr(SO4)2についてはH0=−13、ZrSPPについてはH0=−5、SZrO2についてはH0=−16であり、酸性が強く、高いプロトン供給能力を有すると考えられるため、PEFC用の触媒、プロトン伝導性材料として利用できると考えられる。
ZrSPPは、ジルコニウム化合物であるZrClO2を出発原料として、SPP(m-sulphophenyl phosphonic acid)とリン酸とを還流することで得られる(非特許文献1を参照)。また、SZrO2は、ZrOCl2・8H2OをNH3水溶液(pH=10)に入れてZrO2・nH2Oとし、このZrO2・nH2Oに硫酸を加えて焼成することで得られる(非特許文献2を参照)。
しかしながら、プロトン伝導性材料としてZrSPPや硫酸ジルコニウム化合物を用いる場合には、プロトン伝導性材料としての性能の向上等の観点から、有機無機複合材料を作ることが望ましい。従来の製造方法は、製造過程において有機無機複合材料を構成するポリマーの耐熱温度を超える高温で処理する必要がある。例えば、ZrSPPは、200℃以上の高温で処理する必要があり、SZrO2は、520℃以上の高温で処理する必要がある。その結果、ZrSPP及び硫酸ジルコニウム化合物は、凝集して大きな粒子となってしまうため、プロトン伝導性材料としての性能を持続させるのが難しく、有機無機複合材料を構成する無機系材料として用いるには適当ではなかった。

先行技術

0003

Alberti, G. et al., Journal of Materials Chemistry 14 (2004) 1910-1914
Hara, S. et. al., Solid State Ionics 168 (2004) 111

発明が解決しようとする課題

0004

そこで、本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、有機無機複合材料を構成する無機系材料として用いることが可能な強酸性ジルコニウム粒子の製造方法及びこの製造方法により得られた強酸性ジルコニウム粒子を用いたプロトン伝導性材料、プロトン伝導性膜の製造方法、この製造方法により得られたプロトン伝導性膜、燃料電池用電極、膜−電極接合体及び燃料電池を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
すなわち、本発明に係る強酸性ジルコニウム粒子の製造方法では、ジルコニウムアルコキシドキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子に、スルホフェニルホスホン酸を加えて反応させることで強酸性ジルコニウム粒子を得る。
本発明に係るプロトン伝導性材料は、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子に、スルホフェニルホスホン酸を加えて反応させることで得られた強酸性ジルコニウム粒子を用いたものである。
本発明に係る強酸性ジルコニウム粒子の製造方法は、プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液を上記ジルコニウムナノ粒子分散体に注いで、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた分散体から、上記第1の極性有機溶媒及び上記第2の極性有機溶媒を除去して上記プロトン伝導性複合材料を得るプロトン伝導性複合材料調製工程と、上記プロトン伝導性複合材料調製工程で得たプロトン伝導性複合材料に、スルホフェニルホスホン酸を加えて反応させることで強酸性ジルコニウム粒子を得る反応工程とを有する。
本発明に係るプロトン伝導性材料は、プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液を上記ジルコニウムナノ粒子分散体に注いで、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた分散体から、上記第1の極性有機溶媒及び上記第2の極性有機溶媒を除去して上記プロトン伝導性複合材料を得るプロトン伝導性複合材料調製工程と、上記プロトン伝導性複合材料調製工程で得たプロトン伝導性複合材料に、スルホフェニルホスホン酸を加えて反応させることで強酸性ジルコニウム粒子を得る反応工程とを有する強酸性ジルコニウム粒子の製造方法によって得られる強酸性ジルコニウム粒子を用いたものである。
本発明に係るプロトン伝導性膜の製造方法は、プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液と上記ジルコニウムナノ粒子分散体とを混合して、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との複合材料分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた複合材料分散体を多孔性ポリマー基材の孔に含浸する含浸工程と、上記複合材料分散体が含浸された多孔性ポリマー基材とスルホフェニルホスホン酸とを反応させることで、上記多孔性ポリマー基材に、上記ジルコニウムナノ粒子と上記スルホフェニルホスホン酸とから生成された強酸性ジルコニウム化合物と、上記プロトン伝導性ポリマーとが固定されたプロトン伝導性膜を得る反応工程とを有する。
本発明に係るプロトン伝導性膜は、プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液と上記ジルコニウムナノ粒子分散体とを混合して、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との複合材料分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた複合材料分散体を多孔性ポリマー基材の孔に含浸する含浸工程と、上記複合材料分散体が含浸された多孔性ポリマー基材とスルホフェニルホスホン酸とを反応させることで、上記多孔性ポリマー基材に、上記ジルコニウムナノ粒子と上記スルホフェニルホスホン酸とから生成された強酸性ジルコニウム化合物と、上記プロトン伝導性ポリマーとが固定されたプロトン伝導性膜を得る反応工程とを有するプロトン伝導性膜の製造方法によって得られたものである。
本発明に係る強酸性ジルコニウム粒子の製造方法では、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子に、硫酸を加えて反応させることで強酸性ジルコニウム粒子を得る。
本発明に係るプロトン伝導性材料は、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子に、硫酸を加えて反応させる強酸性ジルコニウム粒子の製造方法により得られた強酸性ジルコニウム粒子を用いたものである。
本発明に係る強酸性ジルコニウム粒子の製造方法は、プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液を上記ジルコニウムナノ粒子分散体に注いで、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた分散体から、上記第1の極性有機溶媒及び上記第2の極性有機溶媒を除去して上記プロトン伝導性複合材料を得るプロトン伝導性複合材料調製工程と、上記プロトン伝導性複合材料調製工程で得たプロトン伝導性複合材料に、硫酸を加えて反応させることで強酸性ジルコニウム粒子を得る反応工程とを有する。
本発明に係るプロトン伝導性材料は、プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液を上記ジルコニウムナノ粒子分散体に注いで、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた分散体から、上記第1の極性有機溶媒及び上記第2の極性有機溶媒を除去して上記プロトン伝導性複合材料を得るプロトン伝導性複合材料調製工程と、上記プロトン伝導性複合材料調製工程で得たプロトン伝導性複合材料に、硫酸を加えて反応させることで強酸性ジルコニウム粒子を得る反応工程とを有するプロトン伝導性材料の製造方法により得られた強酸性ジルコニウム粒子を用いたものである。
本発明に係るプロトン伝導性膜の製造方法は、プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液と上記ジルコニウムナノ粒子分散体とを混合して、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との複合材料分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた複合材料分散体を多孔性ポリマー基材の孔に含浸する含浸工程と、上記複合材料分散体が含浸された多孔性ポリマー基材と硫酸とを反応させることで、上記多孔性ポリマー基材に、上記ジルコニウムナノ粒子と上記硫酸とから生成された強酸性ジルコニウム化合物と、上記プロトン伝導性ポリマーとが固定されたプロトン伝導性膜を得る反応工程とを有する。
本発明に係るプロトン伝導性膜は、プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液と上記ジルコニウムナノ粒子分散体とを混合して、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との複合材料分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた複合材料分散体を多孔性ポリマー基材の孔に含浸する含浸工程と、上記複合材料分散体が含浸された多孔性ポリマー基材と硫酸とを反応させることで、上記多孔性ポリマー基材に、上記ジルコニウムナノ粒子と上記硫酸とから生成された強酸性ジルコニウム化合物と、上記プロトン伝導性ポリマーとが固定されたプロトン伝導性膜を得る反応工程とを有するプロトン伝導性膜の製造方法により得られたものである。
本発明に係る強酸性ジルコニウム粒子の製造方法では、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子に、アルカリによりpH調整した硫酸溶液を反応させることで強酸性ジルコニウム粒子を得る。
本発明に係るプロトン伝導性材料は、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子に、アルカリによりpH調整した硫酸溶液を反応させることで得られた強酸性ジルコニウム粒子を用いたものである。
本発明に係る強酸性ジルコニウム粒子の製造方法は、プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液を上記ジルコニウムナノ粒子分散体に注いで、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた分散体から、上記第1の極性有機溶媒及び上記第2の極性有機溶媒を除去して上記プロトン伝導性複合材料を得るプロトン伝導性複合材料調製工程と、上記プロトン伝導性複合材料調製工程で得たプロトン伝導性複合材料に、アルカリによりpH調整した硫酸溶液を加えて反応させることで強酸性ジルコニウム粒子を得る反応工程とを有する。
本発明に係るプロトン伝導性材料は、プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液を上記ジルコニウムナノ粒子分散体に注いで、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた分散体から、上記第1の極性有機溶媒及び上記第2の極性有機溶媒を除去して上記プロトン伝導性複合材料を得るプロトン伝導性複合材料調製工程と、上記プロトン伝導性複合材料調製工程で得たプロトン伝導性複合材料に、アルカリによりpH調整した硫酸溶液を加えて反応させることで強酸性ジルコニウム粒子を得る反応工程とを有するプロトン伝導性材料の製造方法により得られた強酸性ジルコニウム粒子を用いたものである。
本発明に係る強酸性ジルコニウム粒子の製造方法は、プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液と上記ジルコニウムナノ粒子分散体とを混合して、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との複合材料分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた複合材料分散体を多孔性ポリマー基材の孔に含浸する含浸工程と、上記複合材料分散体が含浸された多孔性ポリマー基材とアルカリによりpH調整した硫酸溶液とを反応させることで、上記多孔性ポリマー基材に、上記ジルコニウムナノ粒子と上記アルカリによりpH調整した硫酸溶液とから生成された強酸性ジルコニウム化合物と、上記プロトン伝導性ポリマーとが固定されたプロトン伝導性膜を得る反応工程とを有する。
本発明に係るプロトン伝導性膜は、プロトン伝導性ポリマーを、第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得るポリマー溶液調製工程と、第2の極性有機溶媒に、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子分散体を得る第1の分散工程と、上記ポリマー溶液と上記ジルコニウムナノ粒子分散体とを混合して、上記極性有機溶媒と、プロトン伝導性ポリマー及び上記ジルコニウムナノ粒子を有するプロトン伝導性複合材料との複合材料分散体を得る第2の分散工程と、上記第2の分散工程で得られた複合材料分散体を多孔性ポリマー基材の孔に含浸する含浸工程と、上記複合材料分散体が含浸された多孔性ポリマー基材とアルカリによりpH調整した硫酸溶液とを反応させることで、上記多孔性ポリマー基材に、上記ジルコニウムナノ粒子と上記アルカリによりpH調整した硫酸溶液とから生成された強酸性ジルコニウム化合物と、上記プロトン伝導性ポリマーとが固定されたプロトン伝導性膜を得る反応工程とを有するプロトン伝導性膜の製造方法により得られたものである。
本発明に係る強酸性ジルコニウム粒子の製造方法では、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子に、スルホン酸を加えて反応させることで強酸性ジルコニウム粒子を得る。
本発明に係るプロトン伝導性材料は、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤と触媒とを溶媒中で反応させて得られるジルコニウムナノ粒子に、スルホン酸を加えて反応させることで得られた強酸性ジルコニウム粒子を用いたものである。
本発明に係る燃料電池用電極は、上記プロトン伝導性材料を含む触媒層を有するものである。
本発明に係る膜−電極接合体は、上記プロトン伝導性膜と、上記プロトン伝導性材料を含む触媒層を有する電極とを用いたものである。
本発明に係る燃料電池は、上記膜−電極接合体を用いたものである。
発明の効果
本発明によれば、ジルコニウムナノ粒子を用いることで、プロトン伝導性材料として高性能な材料であって触媒活性の高い強酸性ジルコニウム粒子を低温で製造することが可能となるため、強酸性ジルコニウム粒子をプロトン伝導性材料として用いることが可能となる。

図面の簡単な説明

0005

図1は、硫酸ジルコニウム化合物の製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図2A及び図2Bは、ZrSPPの反応式を模式的に示す模式図である。
図3は、ZrSPPのSEM画像を示す図である。
図4は、ZrSPPのXRDパターンを示す図である。
図5は、ZrSPPのFT−IRスペクトルを示す図である。
図6は、ZrSPPのTGAスペクトルを示す図である。
図7は、ZrSPPのTG−MSスペクトルを示す図である。
図8は、TGA測定後のZrSPPのXRDパターンを示す図である。
図9Aは、測定温度が90℃の場合、図9Bは、測定温度が80℃の場合、図9Cは、測定温度が70℃の場合のZrSPPのプロトン伝導性を示すグラフである。
図10は、熱水試験後のZrSPPのXRDパターンを示す図である。
図11は、熱水試験後のZrSPPのFT−IRスペクトルを示す図である。
図12は、フェントン試験後のZrSPPの重量変化を示す図である。
図13は、フェントン試験前後のZrSPPのXRDパターンを示す図である。
図14は、硫酸ジルコニウム化合物のSEM画像を示す図である。
図15は、硫酸ジルコニウム化合物のXRDパターンを示す図である。
図16Aは、1.0M硫酸を用いた場合、図16Bは、2.0M硫酸を用いた場合、図16Cは、3.0M硫酸を用いた場合の硫酸ジルコニウム化合物のXRDパターンを示す図である。
図17Aは、硫酸処理の際の温度が150℃の場合、図17Bは、硫酸処理の際の温度が60℃の場合、図17Cは、硫酸処理の際の温度が40℃の場合の硫酸ジルコニウム化合物のXRDパターンを示す図である。
図18は、硫酸ジルコニウム化合物のXRDパターンを示す図である。
図19は、硫酸ジルコニウム化合物のXRDパターンを示す図である。
図20は、硫酸ジルコニウム化合物のFT−IRスペクトルを示す図である。
図21は、硫酸ジルコニウム化合物のFT−IRスペクトルを示す図である。
図22は、硫酸ジルコニウム化合物のFT−IRスペクトルを示す図である。
図23Aは、実施例10で得られたサンプル、図23Bは、既報の文献に記載された硫酸ジルコニウム化合物のXRDパターンを示す図である。
図24Aは、実施例2で得られたサンプル、図24Bは、実施例11で得られたサンプル、図24Cは、既報の文献に記載された硫酸ジルコニウム化合物のXPSスペクトルを示す図である。
図25は、硫酸ジルコニウム化合物のTGAスペクトルを示す図である。
図26は、硫酸ジルコニウム化合物のTG−MSスペクトルを示す図である。
図27は、TGA測定後の硫酸ジルコニウム化合物のXRDパターンを示す図である。
図28は、硫酸ジルコニウム化合物のTGAスペクトルを示す図である。
図29A及び図29Bは、硫酸ジルコニウム化合物のTGAスペクトル及びTG−MSスペクトルを示す図である。
図30は、ジルコニウムナノ粒子のTGAスペクトル及びTG−MSスペクトルを示す図である。
図31Aは、実施例10で得られたサンプル、図31Bは、既報の文献に記載されたジルコニウムナノ粒子のTGAスペクトル及びTG−MSスペクトルを示す図である。
図32は、硫酸ジルコニウム化合物の耐水性試験後のXRDパターンを示す図である。
図33は、硫酸ジルコニウム化合物のプロトン伝導性を示すグラフであり、測定温度が90℃の場合である。
図34Aは、測定温度が90℃の場合、図34Bは、測定温度が80℃の場合、図34Cは、測定温度が70℃の場合の硫酸ジルコニウム化合物のプロトン伝導性を示すグラフである。
図35は、硫酸ジルコニウム化合物のプロトン伝導性を示すグラフであり、測定温度が90℃の場合である。
図36Aは、熱水試験前後の実施例2で得られたサンプルのXRDパターン、図36Bは、熱水試験前後の実施例10で得られたサンプルのXRDパターンを示す図である。
図37Aは、熱水試験前後の実施例2で得られたサンプルのFT−IRスペクトル、図37Bは、熱水試験前後の実施例10で得られたサンプルのFT−IRスペクトルを示す図であり、図37Cは、既報の文献に記載された硫酸ジルコニウム化合物のFT−IRスペクトルを示す図である。
図38Aは、フェントン試験後の実施例2で得られたサンプルの重量変化、図38Bは、フェントン試験後の実施例10で得られたサンプルの重量変化を示す図である。
図39Aは、フェントン試験後の実施例2で得られたサンプル、図39Bは、フェントン試験後の実施例10で得られたサンプルのXRDパターンを示す図である。
図40は、フェントン試験後の実施例2で得られたサンプルのFT−IRスペクトルを示す図である。
図41は、ZrSPP−SPESキャスト膜のXRDパターンを示す図である。
図42は、ZrSPP−SPES細孔フィリング膜のXRDパターンを示す図である。
図43は、ZrSPP−SPES細孔フィリング膜のFT−IRスペクトルを示す図である。
図44は、90℃で測定したZrSPP−SPES細孔フィリング膜のプロトン伝導性を示すグラフである。
図45は、0℃以下で測定したZrSPP−SPES細孔フィリング膜のプロトン伝導性を示すグラフである。
図46Aは、実施例16で得られたキャッピングMEAを模式的に示す図であり、Bは、実施例16で得られたキャッピングMEAを模式的に示す断面図である。
図47は、燃料電池試験の構成例を模式的に示す図である。
図48は、60℃、湿度20〜80%における実施例16で得られたキャッピングMEAの電池性能評価の結果を示すグラフである。
図49は、90℃、湿度20〜80%における実施例16で得られたキャッピングMEAの電池性能評価の結果を示すグラフである。
図50は、120℃、湿度10〜50%における実施例16で得られたキャッピングMEAの電池性能評価の結果を示すグラフである。

実施例

0006

以下、発明を実施するための形態(以下、実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.ジルコニウムナノ粒子(Zr precursor)の製造方法
2.ジルコニウムナノ粒子を用いた硫酸ジルコニウム化合物の製造方法
3.ジルコニウムナノ粒子を用いたZrSPPの製造方法
4.プロトン伝導性ポリマー内での硫酸ジルコニウム化合物又はZrSPPの製造方法
5.細孔フィリング膜中での硫酸ジルコニウム化合物又はZrSPPの製造方法
6.膜−電極接合体(MEA)
7.燃料電池
8.実施例
9.評価試験
<1.ジルコニウムナノ粒子の製造方法>
本実施の形態に係るジルコニウムナノ粒子は、出発原料として、ジルコニウムアルコキシドとキレート剤(表面改質剤)と触媒とを溶媒中で反応させて、一般にゾルゲル法と呼ばれる金属アルコキシド加水分解及び重縮合反応により得られる。
溶媒は、出発原料であるジルコニウムアルコキシドを溶解させるものであり、例えば、アルコール類メタノールエタノール1−プロパノール2−プロパノールイソプロピルアルコール)、2−メトキシエタノール2−エトキシエタノール、1−ブタノールエチレングリコールモノアルキルエーテルプロピレングリコールモノアルキルエーテルポリエチレングリコールモノアルキルエーテルポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類エチレングリコールプロピレングリコールポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、カーボネート化合物エチレンカーボネートプロプレンカーボネート等)、環状エーテル類ジオキサンテトラヒドロフラン等)、鎖状エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテルポリプロピレンジアルキルエーテル等)、ニトリル化合物アセトニトリルグルタロジニトリルメトキシアセトニトリル、プロピオニトリルベンゾニトリル等)、エステル類カルボン酸エステルリン酸エステルホスホン酸エステル等)、非プロトン極性物質ジメチルスルホキシドスルホランジメチルホルムアミドジメチルアセトアミド等)、非極性溶媒トルエンキシレン等)、塩素系溶媒メチレンクロライドエチレンクロライド等)、水等が用いられる。これらの溶媒の中では、キレート効果及び生成物粒径に及ぼす効果等を考慮して、2−プロパノールを用いることが好ましい。なお、これらの溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ジルコニウムアルコキシドにおけるアルコキシドは、直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜10である。アルコキシドとしては、例えば、メチル基エチル基プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、ペンチル基ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、t−オクチル基、デシル基ドデシル基テトラデシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシルメチル基、オクチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
キレート剤としては、ジルコニウムアルコキシドに対してキレート化して加水分解、重縮合反応を抑制しうるもの、例えば、アセト酢酸エステル類アセト酢酸エチル等)、1,3−ジケトン類アセチルアセトン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン等)、アセトアセタミド類(N,N'−ジメチルアミノアセトアセタミド等)が用いられる。これらのキレート剤の中では、キレート効果をより発揮させるためにアセチルアセトンを用いるのが好ましい。キレート剤の濃度は、例えば、ジルコニウム原子に対するモル比で0.5〜2.5倍程度とするのが好ましい。このような濃度とすることで、キレート同士で反発しあってキレート効果が不十分となってしまうのを防止して、ナノサイズの粒径を有するジルコニウムナノ粒子を作製することが可能となる。
触媒は、ジルコニウムアルコキシドの加水分解、重縮合反応を開始させるために加えるものであり、例えば、酸やアルカリが用いられる。酸としては、無機又は有機プロトン酸を用いることができる。無機プロトン酸としては、例えば、塩酸、硫酸、ホウ酸硝酸過塩素酸テトラフルオロホウ酸ヘキサフルオロ砒素酸、臭化水素酸等が挙げられる。有機プロトン酸としては、例えば、酢酸シュウ酸メタンスルホン酸等が挙げられる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物アンモニア等が挙げられる。また、これらの酸やアルカリを2種以上併用してもよい。触媒としては、例えば、1Mの硝酸溶液を使用し、ジルコニウムに対するプロトンのモル比が0.2〜0.6となることが好ましい。このような濃度の硝酸溶液を使用することで、キレート剤によるキレート効果を十分に発揮させて、ジルコニウムナノ粒子の粒径が重縮合反応により大きくなりすぎるのを防止することが可能となる。
続いて、ジルコニウムナノ粒子の製造方法の一例について説明する。ジルコニウムアルコキシドを溶媒に分散させ、ジルコニウムアルコキシド溶液中にキレート剤を加える。そして、キレート剤を加えたジルコニウムアルコキシド溶液中に触媒を加える。
例えば、キレート剤としてアセチルアセトン、触媒として硝酸溶液をそれぞれジルコニウムアルコキシド溶液中に加えた場合には、下記の〔化1〕に示す加水分解反応、及び、〔化2〕に示す重縮合反応が進行する。

0007

0008

そして、溶媒を乾燥させて乾燥後の生成物、すなわち、ジルコニウムナノ粒子の粉体回収する。回収されたジルコニウムナノ粒子は、ナノサイズの粒径を有する。ここで、ナノサイズの粒径を有するジルコニウムナノ粒子とは、例えば、動的光散乱法により測定した体積平均粒径が数nm〜数十nmのものをいう。
<2.ジルコニウムナノ粒子を用いた硫酸ジルコニウム化合物の製造方法>
次に、上述したジルコニウムナノ粒子を用いた強酸性ジルコニウム粒子である硫酸ジルコニウム化合物の製造方法の一例について説明する。図1に示すように、上述したジルコニウムナノ粒子に、硫酸又はアルカリによりpH調整した硫酸溶液を加えて加熱しながら攪拌する(ステップS1)。アルカリとは、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アンモニアやアミンなど水溶液で塩基性を示すものが挙げられ、例えば、アンモニウム水溶液、水酸化ナトリウムが例示できる。ステップS1において、加える硫酸の濃度及びアルカリによりpH調整した硫酸溶液の硫酸イオン濃度は、1〜3Mとするのが好ましい。また、アルカリによりpH調整した硫酸溶液のpHは、1〜8程度とするのが望ましい。このような濃度及びpHとすることで、硫酸ジルコニウム化合物の基本骨格を形成することが可能となる。ステップS1において、撹拌時間は、硫酸ジルコニウム化合物の基本骨格を十分に形成することが可能となる時間、例えば、16時間以上とするのが好ましい。ステップS1において、撹拌する際の温度は、硫酸ジルコニウム化合物の基本骨格を形成することを考慮して、40℃以上とするのが好ましい。
続いて、ステップS1で得られたサンプルに水を加え攪拌する(ステップS2)。続いて、ステップS2で攪拌したサンプルと硫酸とを遠心分離する(ステップS3)。そして、ステップS3で得られたサンプルを乾燥させて(ステップS4)、生成物を回収する(ステップS5)。
このように、本実施の形態に係る硫酸ジルコニウム化合物の製造方法では、粒径をナノサイズとして表面積を増大させて酸環境下での反応性が高いジルコニウムナノ粒子を用いることで、硫酸又はアルカリによりpH調整した硫酸溶液をジルコニウムナノ粒子に反応させて硫酸ジルコニウム化合物を得るのに必要なエネルギー、例えば、従来の方法のような高温条件下での反応が不要となる。これにより、硫酸ジルコニウム化合物を低温条件下で生成することが可能となる。
また、本実施の形態に係る硫酸ジルコニウム化合物の製造方法によれば、プロトン伝導性が良好な硫酸ジルコニウム化合物を得ることが可能となる。したがって、本実施の形態に係る硫酸ジルコニウム化合物の製造方法により得られた硫酸ジルコニウム化合物は、プロトン伝導性材料としての性能向上を図ることが可能となるため、イオン交換膜、触媒、燃料電池(例えば、燃料電池用触媒層燃料電池用電解質膜)として適用することが可能となる。
<3.ジルコニウムナノ粒子を用いたZrSPPの製造方法>
次に、上述したジルコニウムナノ粒子を用いた強酸性ジルコニウム粒子であるZrSPPの製造方法の一例について説明する。
ZrSPPは、図2Aに示すように、ジルコニウムナノ粒子(Zr precursor)に、SPPを加えて加熱しながら攪拌することで得られる。SPPは、図2Bに示す反応により得られる(詳細には、Montoneri, E. et al., Journal of the Chemical Society-Dalton Transcations (1989) 1819 を参照)。
図2Aに示す反応に用いるSPPの濃度は、ジルコニウムナノ粒子に対するSPPのモル比を2倍以上とするのが好ましい。また、硫酸の濃度は、1〜2M程度とするのが好ましい。このようなSPPの濃度とすることで、ZrSPPの基本骨格を形成することが可能となる。図2Aに示す反応における撹拌時間は、ZrSPPの基本骨格を十分に形成することが可能となる時間、例えば、16時間以上とするのが好ましい。図2Aに示す反応において撹拌する際の温度は、ZrSPPの基本骨格を形成することを考慮して、80℃以上とするのが好ましい。
本実施の形態に係るZrSPPの製造方法では、粒径をナノサイズとして表面積を増大させて酸環境下での反応性が高いジルコニウムナノ粒子を用いることで、図2Aに示す矢印方向の反応に必要なエネルギー、例えば、従来の方法のような高温条件下での反応が不要となるため、ZrSPPを低温条件下で生成することが可能となる。
また、本実施の形態に係るZrSPPの製造方法によれば、プロトン伝導性が良好なZrSPPを得ることが可能となる。したがって、本実施の形態に係るZrSPPの製造方法により得られたZrSPPは、プロトン伝導性材料としての性能向上を図り、例えば、イオン交換膜、触媒、燃料電池(例えば、燃料電池用触媒層、燃料電池用電解質膜)として適用することが可能となる。
<4.プロトン伝導性ポリマー内での硫酸ジルコニウム化合物又はZrSPPの製造方法>
PEFC用のプロトン伝導性材料に上述したZrSPP等を用いる場合には、例えば、プロトン伝導性材料としての性能の向上等の観点から、硫酸ジルコニウム化合物又はZrSPPとプロトン伝導性ポリマーとのハイブリッド複合)材料を作ることが望ましい。
プロトン伝導性ポリマーとして、例えば、以下のスルホン化ポリマーを挙げることができる。すなわち、SPEEK:スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、SPEK:スルホン化ポリエーテルケトン、SPES:ポリエーテルスルホン、SP3O:ポリ(2,6−ジフェニル−4−フェニレンオキサイド)、SPPBP:スルホン化ポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン)、SPPO:スルホン化ポリフェニレンオキサイド又はポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)、SPPQ:ポリ(フェニルキノリン)、SPSスルホン化ポリスチレン、SPSF:スルホン化ポリスルホン、SPSU:スルホン化ポリスルホンウデル(sulfonated polysulfone Udel)、パーフルオロスルホン酸ポリマー(Nafion(登録商標)等)である。
上述したZrSPP等とプロトン伝導性ポリマーとのハイブリッド材料は、例えば、次の手順により作製することができる。
すなわち、プロトン伝導性ポリマーを第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得る。第1の極性有機溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP:N-methylpyrrolidone)、N、N-ジメチルホルムアミド(DMF:N,N-dimethylformamide)、ジメチルスルホキシド等が用いられる。
続いて、第2の極性溶媒に上述したジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子の分散体を得る。第2の極性有機溶媒としては、上述した第1の極性有機溶媒と同様に、N−メチルピロリドン、N、N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が用いられる。
続いて、上述したポリマー溶液を上述したジルコニウムナノ粒子の分散体に注ぐか、又は、ジルコニウムナノ粒子分散体にポリマー溶液を注いで、極性有機溶媒及びハイブリッド材料を有する分散体を得る。
続いて、極性有機溶媒及びハイブリッド材料を有する分散体から、第1の極性有機溶媒及び第2の極性有機溶媒を除去することで、ハイブリッド材料を得る。そして、このハイブリッド材料に、上述したZrSPPの製造方法又は硫酸ジルコニウム化合物の製造方法と同様の条件で硫酸、アルカリでpH調整した硫酸溶液又はSPPを反応させることで、プロトン伝導性ポリマー内、すなわち、ポリマーマトリクス内で、ZrSPP又は硫酸ジルコニウム化合物を得ることが可能となる。
このようにポリマーマトリクス内で、ZrSPP又は硫酸ジルコニウム化合物を得ることにより、ZrSPP又は硫酸ジルコニウム化合物を低温条件下で生成することが可能となる。これにより、プロトン伝導性が良好なZrSPP又は硫酸ジルコニウム化合物を得ることができる。したがって、例えば、ポリマーマトリクス内で得られたZrSPP又は硫酸ジルコニウム化合物をイオン交換膜、触媒、燃料電池(例えば、燃料電池用触媒層、燃料電池用電解質膜)として適用することが可能となる。
<5.細孔フィリング膜中での硫酸ジルコニウム化合物又はZrSPPの製造方法>
PEFC用のプロトン伝導性材料に上述したZrSPP等を用いる場合には、例えば、後に詳述するようにプロトン伝導性材料としての性能を向上させる等の観点から、細孔フィリング膜中でZrSPP又は硫酸ジルコニウム化合物を形成するのが好ましい。細孔フィリング膜とは、多孔性ポリマー基材の細孔と、この細孔を充填する上述したプロトン伝導性ポリマーなどのポリマー電解質及びハイブリッド材料とからなるものである。
プロトン伝導性ポリマーとしては、例えば、上述したスルホン化ポリマーを挙げることができる。
多孔性ポリマー基材としては、機械的強度化学的定性及び耐熱性などに優れているフッ素系樹脂炭化水素系樹脂を用いることができる。フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレンPTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ポリフッ化ビニリデンPVDF)、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)等を挙げることができる。これらのフッ素系樹脂の中では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)が、上述したように機械的強度などに優れている観点から多孔性ポリマー基材として好ましい。
また、炭化水素系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートポリイミドポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンポリエーテルエーテルケトンポリスルホンポリスルフィドポリアミドポリアミドイミドポリフェニレンポリエーテルポリエーテルイミドポリエーテルアミド、耐熱性架橋ポリエチレンなどを挙げることができる。これらの炭化水素系樹脂の中では、熱的安定性の面から、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリスルフィド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレン、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルアミドであるのが好ましいが、これらに限定されない。
なお、多孔性ポリマー基材としては、複数種の材料を用いてもよく、例えば、上述のフッ素系樹脂及び炭化水素系樹脂の中から2種以上を用いてもよい。
また、多孔性ポリマー基材は、膜厚が0.01〜300μm、好ましくは0.1〜100μm、空孔率が10〜95%、より好ましくは40〜90%、破断強度が1.961×104kPa(200kg/cm2)以上、平均貫通孔径が0.001〜100μmであるものが、機械的強度などの観点から好ましい。
例えば、次の手順により細孔フィリング膜中でZrSPP又は硫酸ジルコニウム化合物を形成することで、多孔性ポリマー基材に、硫酸ジルコニウム化合物又はZrSPPとプロトン伝導性ポリマーとが固定されたプロトン伝導性膜(細孔フィリング膜)を作製することができる。
まず、プロトン伝導性ポリマーを上述した第1の極性有機溶媒に溶解してポリマー溶液を得る。続いて、上述した第2の極性溶媒にジルコニウムナノ粒子を分散させて、ジルコニウムナノ粒子の分散体を得る。続いて、上述したポリマー溶液をジルコニウムナノ粒子の分散体に注ぐか、又は、ジルコニウムナノ粒子分散体にポリマー溶液を注いで、極性有機溶媒及びハイブリッド材料を有する分散体を得る。続いて、多孔性ポリマー基材の孔に極性有機溶媒及びハイブリッド材料を有する分散体を含侵し、含浸した後、溶媒を乾燥により除去することにより、多孔性ポリマー基材の細孔の中に、極性有機溶媒及びハイブリッド材料を有する分散体を充填して固定させた細孔フィリング膜(電解質膜)とする。この細孔フィリング膜に、上述したZrSPPの製造方法又は硫酸ジルコニウム化合物の製造方法と同様の条件で硫酸、アルカリでpH調整した硫酸溶液又はSPPを反応させることで、多孔性ポリマー基材に、ZrSPP又は硫酸ジルコニウム化合物と、プロトン伝導性ポリマーとが固定されたプロトン伝導性膜が得られる。
このように細孔フィリング膜中でZrSPP又は硫酸ジルコニウム化合物を形成することで、ZrSPP又は硫酸ジルコニウム化合物を低温条件下で生成することが可能となる。これにより、プロトン伝導性が良好なZrSPP又は硫酸ジルコニウム化合物を得ることができる。また、多孔性ポリマー基材に、ZrSPP又は硫酸ジルコニウム化合物とプロトン伝導性ポリマーとが固定されたプロトン伝導性膜は、幅広い温度領域(例えば−30℃〜120℃)及び低湿度(例えば50%相対湿度以下)の条件下での高い伝導性、高機械的安定性及び高化学的安定性などを有する。したがって、このプロトン伝導性膜を、例えば、イオン交換膜、触媒、燃料電池(例えば、燃料電池用触媒層、燃料電池用電解質膜)として適用することが可能となる。
なお、本実施の形態では、ジルコニウムナノ粒子と反応させるものとして、硫酸、アルカリによりpH調整した硫酸溶液、又はSPPを例示したが、これ以外にも、例えば、硫酸ジルコニウム化合物の基本骨格を形成することが可能なスルホン酸を用いることができる。
<6.膜−電極接合体>
本実施の形態に係る膜−電極接合体(膜−電極複合体(MEA:Membrane Electrode Assembly))は、上記プロトン伝導性膜(以下、「電解質膜」ともいう。)と、この電解質膜の少なくとも1面又は電解質膜の両面に設けた電極とを含む。
(6−1)電極
電極は、ガス拡散層と、少なくともガス拡散層上及び内部の少なくとも1方に設けた触媒層とを有する。
(6−1−1)ガス拡散層
ガス拡散層としては、例えば、カーボン繊維織布、カーボンペーパー等、通気性を有する既知基体を使用することができる。好ましくは、これらの基体等を撥水処理したものが使用される。撥水処理は、例えば、これら基体を、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素樹脂等からなる撥水剤の水溶液中に浸漬し、乾燥し、焼成することにより行われる。
(6−1−2)触媒層
触媒層に使用される触媒物質としては、例えば、白金ロジウムルテニウムイリジウムパラジウムオスニウムなどの白金族金属及びその合金が好ましい。また、触媒層に使用される触媒物質としては、これら触媒物質及び触媒物質の塩類を単独または混合して用いてもよい。また、触媒層内でも良好なプロトン伝導性を確保するために、触媒物質が担持された炭素微粒子とともに、上述したプロトン伝導性材料(ZrSPP、硫酸ジルコニウム化合物、プロトン伝導性ポリマー内で得られたZrSPP又は硫酸ジルコニウム化合物)や、高分子電解質及び/又はオリゴマー電解質を併用することが好ましい。
触媒の粒径は、特に限定されないが、触媒活性の大きくなる適当な大きさの観点から、平均粒径が0.5〜20nmであることが好ましい。
触媒の量は、付着方法等により異なるが、ガス拡散層の表面に例えば、約0.02〜約20mg/cm2の範囲、好ましくは、約0.02〜20mg/cm2の範囲で付着されていることが適当である。また、電極の総量に対し、例えば、0.01〜10重量%、好ましくは、0.3〜5重量%の量で存在することが適当である。
(6−2)膜−電極接合体の製造方法
膜−電極接合体は、例えば、電解質膜上に、上記電極を設けることによって製造される。
例えば、膜−電極接合体の製造方法としては、触媒物質とガス拡散層材料とを含む電極材料を直接電解質膜上に適用する方法が挙げられる。
具体的には、触媒物質として、白金−ルテニウム(Pt−Ru)白金(Pt)等の触媒物質を担持した触媒担持カーボン粒子を用い、この触媒物質を、溶媒と混合してペーストを作製する。溶媒としては、例えば、炭素数1−6のアルコ−ル、グリセリン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチルカーボネート、エチレンカルバメートプロピレンカルバメート、ブチレンカルバメート、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン及びスルホラン等の極性溶媒が挙げられる。有機溶媒は単独で使用してもよくまた水との混合液として使用してもよい。ペーストは、粘度を0.1〜1000Pa・sの範囲に調節しておくことが望ましい。この粘度は、各粒子サイズを選択する方法、水の含有量を調節する方法、粘度調節剤を添加することなどで調節可能である。粘度調整剤としては、例えばカルボキシメチルセルロースメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールポリビニルピロリドンポリアクリル酸ナトリウムポリメチルビニルエーテルなどが挙げられる。また、このペーストは、ガス拡散性を考慮して、上記触媒物質をガス拡散層の製造に使用されるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子のような撥水剤と共に混合して作製してもよい。
続いて、上記ペーストを直接電解質膜上に塗布あるいは噴霧により適用して製膜し、その後加熱乾燥して、高分子電解質上に触媒層(撥水剤を含む場合はガス拡散層の一部をなす撥水性層を含む)を形成する。ペーストを電解質膜上に製膜する方法としては、触媒層形成用ペーストを電解質膜の片面側に、好適にはスクリ−ン印刷ロールコーターコンマコーターなどを用いて1回以上、好適には1〜5回程度塗布し、次いで他面側に、同様にして塗布し、乾燥する方法が挙げられる。なお、触媒層形成用ペーストには、上述した本実施の形態に係るプロトン伝導性材料、その前駆体(ジルコニウムナノ粒子とプロトン伝導性ポリマーとから成るハイブリッド材料)又は高分子電解質及び/又はオリゴマー電解質(イオノマー)が混合されていてもよい。例えば、このように、プロトン伝導性材料の前駆体を触媒層形成用ペーストに加えた場合には、触媒層形成後に酸処理してプロトン伝導性材料とすることができる。
続いて、触媒層上に、任意に撥水処理されたガス拡散層を熱プレス等することによって膜−電極接合体を作製することができる。触媒層の厚さは、例えば、0.1〜1000μm、好ましくは、1〜500μm、より好ましくは2〜50μmであることが適当である。なお、ガス拡散層基材上に、スクリーン印刷、ロ−ルコーター等を使用して触媒層を形成した後、熱プレス等を用いて電解質膜と接合してもよい。
<7.燃料電池>
本実施の形態に係る燃料電池は、上記膜−電極接合体を用いたものである。本発明の燃料電池としては、固体高分子形(PEFC)や直接メタノール供給型燃料電池DMFC)が挙げられる。
また、本実施の形態に係る燃料電池の製造方法は、上記電解質膜を2つの電極の間に配置して膜−電極接合体を得る工程を含む。
具体的には、例えば、電解質膜の各面上に触媒層を付着させ、さらにガス拡散層を設けた膜−電極接合体の各面にアノード極及びカソード極の2つの極板を配置又は挟持して積層体を得る。得られた積層体の一方の面には、常圧又は加圧された水素ガス、或いは加圧されたメタノールガス又はメタノール水溶液を保持できる燃料室を配置する。積層体の他方の面には、常圧又は加圧された酸素或いは空気を保持できるガス室を配置することにより燃料電池が作製される。このように作製された燃料電池は、水素或いはメタノールと酸素が反応して生じた電気エネルギーを取り出すものである。
また、本実施の形態に係る燃料電池は、必要な電力を取り出すために、膜−電極接合体又は積層体を1単位として直列或いは並列に多数の単位を配してもよい。
実施例
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
実施例1では、ジルコニウムアルコキシドの希釈溶液(0.05M)をイソプロピルアルコール(IPA)で調製した。ジルコニウムアルコキシド溶液中に、キレート剤としてアセチルアセトンを滴下し、30分間攪拌を続けた。ジルコニウムアルコキシド中のジルコニウムとアセチルアセトンとの濃度の比率は、1:2とした。上述したジルコニウムアルコキシド溶液に、触媒として1Mの硝酸溶液を加えて、6時間攪拌してジルコニアゾルを得た。このジルコニアゾルを乾燥機で、12時間以上、80℃で乾燥することでジルコニウムナノ粒子を得た。得られたジルコニウムナノ粒子に、SPP硫酸溶液を混合し、80℃で加熱した。ジルコニウムナノ粒子に対するSPPのモル比は2倍、硫酸濃度は1.5Mとした。反応後、溶媒を除去してサンプルを乾燥し、乾燥させたサンプルをイソプロピルアルコールで洗浄、精製して、ZrSPPを得た。
<実施例2>
実施例2では、実施例1で得られた0.2gのジルコニウムナノ粒子を1.5Mの硫酸2mlに加えて80℃で16時間攪拌した後に、乾燥機にて80℃で乾燥させた。
次に、乾燥させたサンプルをイソプロピルアルコールで洗浄、精製して、硫酸ジルコニウム化合物を得た。
<実施例3>
実施例3では、40℃で硫酸処理を行ったこと以外は、実施例2と同様に行った。
<実施例4>
実施例4では、60℃で硫酸処理を行ったこと以外は、実施例2と同様に行った。
<実施例5>
実施例5では、150℃で硫酸処理を行ったこと以外は、実施例2と同様に行った。
<実施例6>
実施例6では、1.0Mの硫酸を用いて硫酸処理を行ったこと以外は、実施例2と同様に行った。
<実施例7>
実施例7では、2.0Mの硫酸を用いて硫酸処理を行ったこと以外は、実施例2と同様に行った。
<実施例8>
実施例8では、3.0Mの硫酸を用いて硫酸処理を行ったこと以外は、実施例2と同様に行った。
<実施例9>
実施例9では、実施例1で得られた0.2gのジルコニウムナノ粒子と、1.5Mの硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)水溶液(pH=7)2ml(S/Zr=3.6)とを混合して1時間攪拌させた後に、高温槽にて80℃で乾燥させながら16時間反応させた。乾燥させたサンプルをメタノールで洗浄、精製して、硫酸ジルコニウム化合物を回収した。
<実施例10>
実施例10では、実施例1で得られた0.2gのジルコニウムナノ粒子と、1.5Mの硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)水溶液(pH=3)2ml(S/Zr=3.6)とを混合して1時間攪拌させた後に、高温槽にて80℃で乾燥させながら16時間反応させた。乾燥させたサンプルをメタノールで洗浄、精製して、硫酸ジルコニウム化合物を回収した。
<実施例11>
実施例11では、硫酸水溶液NaOH水溶液を入れてpHを1〜3に調整し、その後硫酸イオン濃度が1.5Mとなるように調整した硫酸溶液2ml(S/Zr=3.6)と、実施例1で得られた0.2gのジルコニウムナノ粒子とを混合して1時間攪拌させた後に、高温槽にて80℃で乾燥させながら16時間反応させた。乾燥させたサンプルをDMF及びメタノールで洗浄、精製して、硫酸ジルコニウム化合物を回収した。
<実施例12>
実施例12では、実施例1で得たジルコニウムナノ粒子をスルホン化ポリエーテルスルホン(SPES)へ組み込むことにより、プロトン伝導性ハイブリッド材料の合成を行った。ポリマーを有機極性溶媒であるN−メチルピロリドンに溶解することにより、SPESの10wt%溶液を作製した。ジルコニウムナノ粒子の粉体を極性有機溶媒(NMP)に溶解することにより、ジルコニウムナノ粒子の10wt%溶液を調製した。SPES溶液とジルコニアナノ粒子溶液とを重量比1:1で混合した混合溶液を調整した。100℃のホットプレート上で混合溶液をキャストし、その後に80℃で一晩、真空乾燥することにより、自立(self-standing)ハイブリッドフィルム(Zr−SPESキャスト膜)を調製した。SPESポリマーマトリクス中に均質に分散されたジルコニウムナノ粒子が、ZrSPPへと変換されるように、得られたZr−SPESキャスト膜をSPP硫酸溶液と混合し、80℃で加熱処理した。ここで、膜中のジルコニウムナノ粒子に対するSPPのモル比は2倍以上とし、硫酸の濃度は1.5Mとした。
<実施例13>
実施例13では、実施例12で調整した、SPES溶液とジルコニアナノ粒子溶液とを重量比1:1で混合した混合溶液を多孔質基材(耐熱性架橋型ポリエチレン基材)に充填させたZr−SPES細孔フィリング膜を調整した。得られたZr−SPES細孔フィリング膜をSPP硫酸溶液と混合し、80℃で加熱処理した。ここで、膜中のジルコニウムナノ粒子に対するSPPのモル比は2倍以上とし、硫酸の濃度は1Mとした。
<実施例14>
実施例14では、硫酸の濃度を1.5Mとしたこと以外は、実施例13と同様に行った。
<実施例15>
実施例15では、有機極性溶媒としてN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)を用いたこと以外は、実施例12と同様にしてSPESの10wt%溶液及びジルコニウムナノ粒子の10wt%溶液を調製した。この調整したSPES溶液と、ジルコニウムナノ粒子溶液とを重量比1:1で混合した混合溶液を多孔質基材(耐熱性架橋型ポリエチレン基材)に充填させたZr−SPES細孔フィリング膜を調整した。得られたZr−SPES細孔フィリング膜をSPP硫酸溶液と混合し、80℃で加熱処理することでZrSPP−SPES細孔フィリング膜を得た。ここで、膜中のジルコニウムナノ粒子に対するSPPのモル比は2倍以上とし、硫酸の濃度は1.5Mとした。
<実施例16>
実施例16では、実施例15で作成したZrSPP−SPES細孔フィリング膜を用いて膜・電極接合体を作成した。
(1)拡散層の作成
以下の操作によりカーボンペーパー(東レ社製カーボンペーパー EC-TP1-060T)上に拡散層を形成した。フッ素処理済みカーボンペーパーを3cm×3cmに切断した。30mLのビーカーに、XC−72を0.37gと、イソプロパノ−ル(IPA)を4.0gとを加え、超音波処理や撹拌にて印刷に適した粘度になるまで混ぜた。その後、このビーカーに0.140gのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)溶液を添加し、約1分間撹拌し、拡散層作製用のペーストとした。その後、カーボンペーパー上に、スクリ−ン印刷法により拡散層作製用のペーストを塗布して拡散層を得た。その後、マッフル炉にて作製した拡散層を280℃で2時間焼成した後、350℃で2時間の条件にて焼成した。
(2)触媒層の作成
実施例16では、まず、有機極性溶媒としてDMFを用いたこと以外は、実施例12と同様にしてSPESの5wt%溶液及びジルコニウムナノ粒子の5wt%溶液を調製した。この調整したSPES溶液と、ジルコニウムナノ粒子溶液とを重量比1:1で混合して混合溶液を得た。46、5質量%の白金を坦持カーボン(Pt:46.5%(田中貴金属社製、TEC10E50E))0.12gに、上記調製した1.0gの混合溶液(キャッピング溶液)を入れ撹拌にて混合し、触媒層形成用のペーストを得た。続いて、スクリ−ン印刷法により、上記作製した拡散層付きカーボンペーパー上に触媒層形成用のペーストを2回に分けて塗布し、電極(キャッピング電極)を作製した。作製した電極を室温、約1時間の条件で乾燥を行い、80℃で12時間真空乾燥を行った。
(3)キャッピング電極の酸処理
1.5MのSPP硫酸溶液を用い、80℃16時間の条件にて、キャッピング電極の酸処理を行った。酸処理後のキャッピング電極を約60℃のRO(ReverseOsmosis:逆浸透膜)水にて約8時間洗浄を行った。
(4)キャッピングした膜・電極接合体(キャッピングMEA)の作製
実施例15で得られたキャッピング細孔フィリング膜と、上記方法で作製したキャッピング電極とをホットプレスを用いて接合し、MEAを作製した。接合条件は、次の2段階とした。1段階目は、80℃、2.21kNの条件で1分間とした。2段階目は、120℃、2.21kNの条件で1分間とした。キャッピング電極に担持した触媒量は、アノード及びカソードで0.3mg−Pt/cm2であった。
<参照例1>
参照例1では、有機極性溶媒としてN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)を用いてSPESの10wt%溶液を調製し、このSPESの10wt%溶液を多孔質基材(耐熱性架橋型ポリエチレン基材)に充填させたSPES細孔フィリング膜を調整した。
実施例1〜16及び参照例1をまとめたものを表1として示す。

0009

以下、実施例1についての評価試験を評価試験1、実施例2〜11についての評価試験を評価試験2、実施例12〜15及び参照例1についての評価試験を評価試験3、実施例16についての評価試験を評価試験4として説明する。
<7.評価試験>
・評価試験1
〔ジルコニウムナノ粒子の評価〕
実施例1で得られたジルコニウムナノ粒子の粒径の測定は、NMP中での動的光散乱法(Dynamic Light Scattering:DLS)により行った。測定装置は、Zetasizer Nano S90((株)シスメックス製)を用いた。実施例1で合成したジルコニウムナノ粒子をNMPに分散させ、動的光散乱法で粒径が2nmであることを確認した。
〔SEM観察〕
実施例1では、図3に示すSEM撮影の結果から、得られたZrSPPの粒子の粒径が、数マイクロメートルから数十マイクロメートル程度であることが確認できる。
XRD測定
実施例1で得られたZrSPPは、図4に示すXRD測定の結果から、横軸(2θ)が4.8°の位置に(001)面のピーク、横軸が9.5°の位置に(002)面のピーク、横軸が13.8°の位置に(003)面のピークを観察することができる。図4に示すXRD測定の結果から、(001)面のピーク、(002)面のピーク、及び、(003)面のピークが、ZrSPP由来のものであることが分かる(E.W. Stein, et al., Solid State lonics83 (1996) 113 を参照)。
〔FT−IR測定
実施例1で得られたZrSPPは、図5に示すFT−IR測定の結果から、900〜1300cm−1付近にP−O結合のピークが観察できる。また、実施例1で得られたZrSPPは、680cm−1付近及び800cm−1付近にメタの位置のベンゼン環のピークが観察できる。さらに、実施例1で得られたZrSPPは、600−700cm−1付近、1000〜1075cm−1付近、及び、1150〜1250cm−1付近に、S=O結合又はS−O結合のピークが観察できる。このように、図5に示すFT−IR測定の結果から、実施例1では、ジルコニウムナノ粒子にSPP基が導入されたことが分かる。
したがって、図4及び図5に示す結果から、実施例1では、従来のZrSPPの製造方法よりも低温でZrSPPを合成することが可能であることが確認できる。
耐熱性評価
実施例1で得られたZrSPPの耐熱性評価としては、TGA測定(熱重量測定)、TG−MS測定、XRD測定を行った。
図6に示すTGAの測定結果から、実施例1で得られたZrSPPの耐熱性が、約400℃であることが確認できる。また、図7に示すTG−MS測定の結果から、実施例1で得られたZrSPPにおけるスルホン酸基(SO3H)が、500℃付近で加熱分解(cracking)していることが確認できる。なお、図7において、aは、m/z(SO)=48、bは、m/z(SO2)=64、cは、m/z(SO3)=80を示す。また、実施例1では、図6に示すTGA測定後にXRD測定を行った図8に示すXRD測定の結果から、ZrSPPの構造が、アモルファス構造となっていることが確認できる。
〔プロトン伝導性評価〕
実施例1で得られたサンプルのプロトン伝導性評価は、インピーダンス測定により行った。具体的に、実施例1で得られたサンプルをKB錠剤成型機ペレット状とし、ペレット状にしたサンプルの厚み方向の両端に白金ペーストを塗布した白金電極を付けてガラスプレートで挟み、二端子法で測定した。プロトン伝導性の測定温度は、90℃、80℃及び70℃とし、相対湿度(RH:Relative Humidity)を20%〜80%に変化させた。
図9A〜Cにおいて、丸は、高湿度から低湿度側にインピーダンス測定を行った場合の結果、三角は、低湿度から高湿度側にインピーダンス測定を行った場合の結果をそれぞれ示す。実施例1では、測定温度が90℃の場合には図9Aに示す結果が、測定温度が80℃の場合には図9Bに示す結果が、測定温度が70℃の場合には図9Cに示す結果がそれぞれ得られた。すなわち、図9A〜Cに示すように、実施例1で得られたサンプルは、90℃〜70℃の温度領域において、横軸の相対湿度が80%での縦軸のσの値が、0.01S/cm以上の値を示した。したがって、実施例1で得られたサンプルは、従来の方法で得られるZrSPPと同等のプロトン伝導度を示していることから、プロトン伝導体として適用可能であることが分かる(上記非特許文献1を参照)。
〔熱水試験〕
実施例1で得られたサンプルの熱水性を調べるため、耐圧性ホットクレーブ(TVS-1, TAIATSU TECHNO Corporation)を用い、150℃の熱水試験を行った。
図10に示す熱水試験前後のXRD測定の結果及び図11に示す熱水試験前後のFT−IR測定の結果において、aは、熱水試験前の測定結果、bは、熱水試験後の測定結果をそれぞれ示す。図10及び図11に示す結果から、実施例1で得られたサンプルは、熱水試験前後で変化が見られなかった。また、本熱水試験は、通常の燃料電池試験より高温、高圧加速試験である。したがって、実施例1で得られたサンプルは、燃料電池試験条件下では安定であることが分かる。
フェントン(Fenton)試験〕
実施例1で得られたサンプルの耐ラジカル性を調べるため、ラジカル加速劣化試験であるフェントン試験を行った。具体的に、実施例1で得られた約0.1gのサンプルと、5ppm FeSO4入り3wt%H2O2水溶液4.9mlとをサンプル瓶に加え、実施例1で得られたサンプルを2wt%含むサンプル溶液を作製した。このサンプル溶液入りのサンプル瓶を60℃のオイルバスに入れ、サンプル溶液を攪拌しながら所定の時間反応させた。反応停止材として、イソプロピルアルコールを過剰量加え攪拌した。攪拌後のサンプル溶液を80℃で十分乾燥させた。
図12に示すフェントン試験後のZrSPPの重量変化から、実施例1で得られたサンプルは、フェントン試験前後において、質量においてほぼ違いが見られないことが分かる。また、図13に示すフェントン試験前後のXRD測定の結果から、実施例1で得られたサンプルには、違いが見られなかった。なお、図13において、aは、フェントン試験から24時間後、bは、フェントン試験から3時間後、cは、フェントン試験前のXRD測定の結果をそれぞれ示す。したがって、実施例1で得られたサンプルは、ラジカルに対して安定であることが分かる。
・評価試験2
〔SEM観察〕
実施例2では、図14に示すSEM観察の結果から、得られた粒子の粒径が、数マイクロメートルから数十マイクロメートル程度であることが確認できる。
〔XRD測定〕
実施例2では、図15に示すXRD測定の結果が、Zr(SO4)2のXRDパターン(J.C.Juan, et al.,Journal of Molecular Catalysis A:Chemical 272(2007) 91を参照。)と略一致していることから、得られたサンプルが、Zr(SO4)2であることが確認できる。
次に、硫酸処理に用いた硫酸濃度が1.0Mである場合(実施例6)のXRD測定の結果を図16A、硫酸濃度が2.0Mである場合(実施例7)のXRD測定の結果を図16B、及び、硫酸濃度が3.0Mである場合(実施例8)のXRD測定の結果を図16Cにそれぞれ示す。図16A〜Cに示すように、実施例6〜8では、硫酸処理に用いた硫酸の濃度を1.5Mとした実施例2とほぼ同じXRDパターンが確認できる。この図16A〜Cに示す結果から、実施例2において、硫酸処理を行う際の硫酸濃度による影響は、ほとんどないことが分かる。
また、硫酸処理の際の温度を150℃とした場合のXRD測定の結果を図17A、硫酸処理の際の温度を60℃とした場合のXRD測定の結果を図17B、硫酸処理の際の温度を40℃とした場合のXRD測定の結果を図17Cにそれぞれ示す。図17A〜Cに示すように、実施例3及び実施例4では、80℃以下の温度では、実施例2の結果と同様に、Zr(SO4)2の結晶構造となっていると考えられる。一方、実施例5では、実施例3及び実施例4とは挙動が異なり、多くの異なるピークが確認できる。
図18において、aは、実施例9のXRD測定の結果、bは、実施例10のXRD測定の結果、図19は、実施例11のXRD測定の結果をそれぞれ示す。実施例9〜11で得られたサンプルは、図18及び図19に示すXRD測定の結果から、Zr(SO4)2とは異なる結晶構造となっていることが示された。また、実施例9〜実施例11で得られたサンプルは、図18及び図19に示すXRD測定の結果から、骨格結晶性の低いZrO2骨格であることが分かる。
〔FT−IR測定〕
実施例2では、図20に示すFT−IRの測定結果から、1267cm−1付近に、S=Oassymmetricの結合が観察でき、1000〜1100cm−1付近に、S=Osymmetryの結合のピークが観察できる。
実施例3及び実施例5では、図21に示すFT−IR測定の結果が得られた。図21において、aは、実施例5のFT−IR測定の結果、bは、実施例3のFT−IR測定の結果をそれぞれ示す。実施例5では、1337cm−1の位置にピークが観測できる。このピークは、S=Oのasymmetric stretchingである(上記非特許文献2を参照。)。すなわち、実施例5では、1337cm−1の位置にS=Oのasymmetric stretchingを確認できたので、実施例5ではSZrO2を含むことが確認できる。また、実施例3及び実施例5では、図21に示すFT−IR測定の結果から、1630cm−1付近に水の吸着のピークが観測できる。この結果から、実施例5の結晶中にも、Zr(SO4)2が含まれることが確認できた。
図22において、aは、実施例9のFT−IR測定の結果、bは、実施例10のFT−IR測定の結果をそれぞれ示す。実施例9及び実施例10で得られたサンプルでは、図22に示すFT−IR測定の結果から、ジルコニウムナノ粒子と硫酸アンモニウム水溶液とを反応させた結果、スルホン酸基に由来すると考えられる1400cm−1付近及び1100cm−1付近のピークが観測できた。これらのピークは、既往報告(E. Escalona Platero ,et al., Catalysis Letters 30 (1995) 31-39)によるZr(SO4)2を熱処理して得られたSZrO2試料のFT−IR測定結果と一致する。
実施例11で得られたサンプルでは、図23Aに示すFT−IR測定の結果から、図23Bに示す既往の報告(Yinyong S et al., J. Phys. Chem. B 109(2005) 2567-2572)によるSZrO2のFT−IR測定結果におけるスルホン酸基由来のピーク(995,1043,1140,1223cm−1)とぼぼ同様の位置にピークが観測された。
〔XPS測定〕
図24Aは、実施例2で得られたサンプル、図24Bは、実施例11で得られたサンプルについてのX線光電子分光法(XPS)測定の結果である。図24A及び図24Bの結果と、図24Cに示す既往の報告(K.Arata, Materials Chem and Phys 26(1990)213-237のFig.8)によるZrSO4とSZrO2のXPS測定の結果とを比較すると、いずれの結果においても、ZrSO4のBinding energyが高い位置に表れており、ピークの位置もほぼ一致した。この結果から、実施例2及び実施例11で得られたサンプルにおいては、Zr原子周りの原子との電気陰性度の差によって当該Zr原子が正に帯電するが、周りの原子にS原子を含む(ZrSO4)ものと含まないもの(SZrO2)によって電荷の状態に差が生じたと考えられる。
上より図15〜24に示す結果から、実施例2〜4及び実施例6〜8、すなわち、ジルコニウムナノ粒子を80℃以下で硫酸処理した場合にはZr(SO4)2が得られ、実施例5、すなわち、ジルコニウムナノ粒子を150℃で硫酸処理した場合にはZr(SO4)2とSZrO2との混晶が得られることが確認できた(上記非特許文献2を参照。)。また、実施例9〜実施例11、すなわち、ジルコニウムナノ粒子をアルカリによりpH調整した硫酸溶液によって80℃以下で処理した場合には、SZrO2が得られることが確認できた。
〔耐熱性評価〕
実施例2、3、5、9、11で得られたサンプルの耐熱性評価は、次のようにして行った。
図25において、aは、実施例2のDTG測定の結果、bは、実施例2のTGA測定の結果をそれぞれ示す。実施例2で得られたサンプルは、図25に示すTGA測定の結果から、160〜200℃において、吸着した水の減少に由来する質量減少が起こることが確認できる。また、実施例2で得られたサンプルは、図26に示すTG−MS測定の結果から、スルホン酸基(SO3H)が、700℃付近で加熱分解(cracking)することが確認できる。図26において、aは、m/z(SO)=48、bは、m/z(SO2)=64、cは、m/z(SO3)=80をそれぞれ示す。また、実施例2で得られたサンプルは、図27に示すTGA測定後のXRD測定の結果から、相転移温度以上の温度で加熱することにより、結晶構造が正方晶となることが確認できる。
図28において、aは、実施例3のTGA測定の結果、bは、実施例5のTGA測定の結果をそれぞれ示す。実施例3で得られたサンプルは、図28に示すTGA測定の結果から、実施例2と同様に、160℃付近まで水を保持し、質量減少が起きることが確認できる。一方、実施例5で得られたサンプルは、100℃付近で一旦質量減少が起こり、160℃付近で再び質量の減少が起きていることが確認できる。SZrO2は、100℃以下で水の脱離が起こることから、実施例5で得られたサンプルは、100℃付近で質量が減少しているため、SZrO2が含まれていると考えられる。
実施例9で得られたサンプルについては、TGA及びTG−MS測定を50℃から5℃/minの測定条件で行った。図29A、Bにおいて、aは、実施例9で得られたサンプルのTGA曲線(TGA curve)、bは、SOのMSスペクトル、cは、SO2のMSスペクトル、dは、CO2のMSスペクトルをそれぞれ示す。図29A、図29Bに示す結果から、CO2のMSスペクトルの結果、炭素(C)の分解が300℃付近で確認された。つまり、無機化合物中に炭素元素を含むと考えられる。これは、Zr(SO4)2のMSスペクトルでは、CO2のスペクトルが検出されなかったことや、図30に示すジルコニウムナノ粒子のTG−MSスペクトルを考慮すると、一部のアセチルアセトンが脱離していない、言い換えれば、未反応のジルコニウムナノ粒子が存在している可能性が示唆された。なお、図30において、aは、ジルコニウムナノ粒子のTGA曲線、bは、CO2のMSスペクトルをそれぞれ示す。
図31Aにおいて、aは、実施例11で得られたサンプルのTGA曲線、bは、m/z(SO2)=64をそれぞれ示す。実施例11で得られたサンプルでは、図31Aに示すTGA及びTG−MS測定の結果から、500℃付近で分解反応が起こっていることが確認できた。つまり、実施例11で得られたサンプルは、500℃までは耐熱性があることが示唆された。なお、既往の文献(上述の非特許文献1を参照)で報告されたSZrO2でも、図31Bに示すように600℃付近まで安定な構造を保っていることが報告されている。
耐水性評価
実施例2で得られたサンプルの耐水性評価は、次のようにして行った。すなわち、実施例2で得られたサンプル0.2gを10mlの水に分散させ、1時間攪拌した後80℃で乾燥させ、再び結晶化した粉末をXRD測定で測定した。
実施例2では、図32に示すXRDの測定結果から、図15に示すXRD測定の結果、すなわち、水に分散させる前の結果と比べると、ピーク比微小な変化はあるものの、ピークの位置が変わっていないことが確認できる。これら図15及び図32に示す結果から、実施例2で得られたサンプルは、水に分散しても構造が変わらないことから、高湿度領域においても電解質として用いることができることが分かる。
〔プロトン伝導性評価〕
実施例2及び実施例9で得られたサンプルのプロトン伝導性評価を上述した評価試験1と同様に、インピーダンス測定により行った。
実施例2で得られたサンプルでは、測定温度が90℃の場合、図33に示す結果となった。すなわち、実施例2で得られたサンプルは、90℃、相対湿度20〜60%において1×10−4〜4×10−4S/cm程度のプロトン伝導性を示した。
実施例9で得られたサンプルは、測定温度が90℃の場合には、図34Aに示す結果となり、測定温度が80℃の場合には、図34Bに示す結果となり、測定温度が70℃の場合には、図34Cに示す結果となった。すなわち、図34A〜Cに示すように、実施例9で得られたサンプルは、90℃〜70℃の温度領域で相対湿度20〜60%において、3×10−4〜2×10−3S/cm程度のプロトン伝導性を示した。
実施例10で得られたサンプルでは、測定温度が90℃の場合、図35に示す結果となった。すなわち、実施例10で得られたサンプルは、90℃、相対湿度20〜60%において6×10−4〜3×10−3S/cm程度のプロトン伝導性を示した。
〔熱水試験〕
実施例2、10で得られたサンプルの熱水試験について、耐圧性ホットクレーブ(TVS-1, TAIATSU TECHNO Corporation)を用い、XRD測定及びFT−IR測定を150℃で行った。
図36Aにおいて、aは、熱水試験前の実施例2で得られたサンプルのXRDパターン、bは、熱水試験後の実施例2で得られたサンプルのXRDパターンをそれぞれ示す。また、図36Bにおいて、aは、熱水試験前の実施例10で得られたサンプルのXRDパターン、bは、熱水試験後の実施例10で得られたサンプルのXRDパターンをそれぞれ示す。実施例2、10で得られたサンプルは、図36A、Bに示すXRD測定の結果から、熱水試験前後で変化が見られないことが分かる。
図37Aにおいて、aは、熱水試験前の実施例2で得られたサンプルのFT−IRスペクトル、bは、熱水試験後の実施例2で得られたサンプルのFT−IRスペクトルをそれぞれ示す。また、図37Bにおいて、aは、熱水試験前の実施例10で得られたサンプルのFT−IRスペクトル、bは、熱水試験後の実施例10で得られたサンプルのFT−IRスペクトルをそれぞれ示す。
実施例2で得られたサンプルは、図37Aに示すFT−IR測定の結果から、熱水試験後に、1278cm−1、593cm−1に新たにピークが生じた。また、実施例10で得られたサンプルは、図37Bに示すFT−IR測定の結果から、試験前後で変化が見られなかった。なお、本熱水試験は、通常の燃料電池試験より高温、高圧な加速試験である。
図37Aに示すピークの帰属は、図37C(I. J. Dijs, et al., Phys. Chem. Chem. Phys., 2001, 3, 4423-4429の文献を参照)を参考に判断した。図37Cに示すグラフは、ZrOCl2から発煙硫酸を用いて硫酸ジルコニウム化合物(Zr(SO4)2)を合成過程で熱処理を加え、無水硫酸ジルコニウム化合物(図37Cのものを「ZrSO4」とする)を合成し、この無水ZrSO4を合成直後図37Cのa)、無水ZrSO4を大気中に1週間(図37Cのb)及び2週間(図37Cのc)放置し、大気中の水を吸着させ、安定な4水和物への変化を追ったものである。
図37Aのbに示す熱水試験後の実施例2で得られたサンプルのFT−IRスペクトルと、図37Cのaに示す乾燥したZrSO4のFT−IRスペクトルとを比較すると、実施例2で得られたサンプルは、無水ZrSO4に近い構造であることが分かる。この結果から、実施例2で得られたサンプルに配位した水への熱水による影響が示唆されたものの、骨格のZrとスルホン酸基との結合には熱水による影響がないと考えられる。
また、熱水試験後の実施例2で得られたサンプルを水へ再分散させ、回収したところ、熱水試験前と同様のFT−IRスペクトルが得られた。このことから、熱水試験による結晶水の脱離に伴う構造変化は、可逆的であると考えられる。
以上の結果から、実施例2、10で得られたサンプルは、燃料電池試験条件下では安定であることが分かる。
〔フェントン試験〕
実施例2、10で得られたサンプルの耐ラジカル性を調べるため、上述した実施例1と同様にフェントン試験を行った。具体的に、実施例2、10で得られた約0.1gのサンプルと、5ppm FeSO4入り3wt%H2O2水溶液4.9mlとをサンプル瓶に加え、2wt%サンプル溶液を作製した。サンプル瓶を60℃のオイルバスに入れ、攪拌しながら所定の時間反応させた。反応停止材として、イソプロピルアルコールを過剰量加え攪拌した。攪拌後のサンプル溶液を80℃で十分乾燥させた。
図38A、図39A、図40は、それぞれ実施例2の測定結果を示す図であり、図38B、図39Bは、それぞれ実施例10の測定結果を示す図である。図39A、Bにおいて、aは、フェントン試験から24時間後のXRDパターン、bは、フェントン試験から3時間後のXRDパターン、cは、フェントン試験前のXRDパターンをそれぞれ示す。また、図40において、aは、フェントン試験直後(0時間後)のFT−IRスペクトル、bは、フェントン試験から24時間後のFT−IRスペクトルをそれぞれ示す。
実施例2で得られたサンプルは、図38Aに示すように、フェントン試験前後で、質量が約10%減少した。実施例2で得られたサンプルは、図39Aに示すXRD測定の結果から、結晶構造が変化したことが分かる。
図40は、フェントン試験後の実施例2で得られたサンプルのFT−IRスペクトルを示す図である。図40に示すピークの帰属は、上述した図37Cを参考に判断した。
また、図40に示すフェントン試験後の実施例2で得られたサンプルのFT−IRスペクトルと、図37Cのaに示す乾燥したZrSO4のFT−IRスペクトルとを比較すると、図40に示す実施例2で得られたサンプルは、無水ZrSO4に近い構造であることが分かる。また、上記文献では、図39Aの結果と同様に、結晶構造に関して、無水ZrSO4が、XRD測定において回折が観測できないと報告されている。これらの結果から、実施例2で得られたサンプルに配位した水へのラジカルによる影響が示唆されたものの、骨格のZrとスルホン酸基との結合にはラジカルによる影響がないと考えられる。
また、フェントン試験後の実施例2で得られたサンプルを水へ再分散させ、回収したところ、フェントン試験前と同様のFT−IRスペクトル及びXRDスペクトルが得られた。このことから、フェントン試験による結晶水の脱離に伴う構造変化は、可逆的であると考えられる。
一方、実施例10で得られたサンプルは、図38Bに示すように、フェントン試験前後において、質量において違いが見られなかった。また、実施例10で得られたサンプルは、図39Bに示すように、フェントン試験前後において、XRD測定において違いが見られなかった。したがって、実施例10で得られたサンプルは、ラジカルに対して極めて安定であることが分かる。
以上の結果より、実施例2、10で得られたサンプルは、いずれもフェントン試験において高い耐久性を示した。
・評価試験3
〔XRD測定〕
図41において、aは、Zr−SPESキャスト膜のXRD測定の結果を示し、bは、ZrSPP−SPESキャスト膜(SPP硫酸溶液との反応後)のXRD測定の結果を示す。実施例12では、図41に示すXRDの測定結果から、ZrSPP−SPESキャスト膜のピークが、ZrSPPのピークと近い位置に確認できる。また、実施例13では、図42に示すXRDの測定結果から、ZrSPP−SPES細孔フィリング膜のピークが、図41に示すZrSPPのピークと近い位置に確認できる。すなわち、これらの図41及び図42に示すXRD測定の結果から、実施例12で得られたキャスト膜及び実施例13で得られた細孔フィリング膜ともに、ZrSPPと近い位置にピークが確認できる。
〔FT−IR測定〕
図43において、実線の丸は、SPES由来の芳香族C−O−C結合のピークを示し、破線の丸は、ZrSPP由来のP−O結合のピークを示す。実施例14では、図43に示すFT−IR測定の結果から、メタノールで1日(図43中のa)、2日(図43中のb)、10日(図43中のc)間洗浄した後のいずれの場合にも、ZrSPP由来のP−O結合のピーク、SPES由来の芳香族C−O−C結合のピークが観察された。
以上の図41図43に示す結果から、実施例12〜14では、キャスト膜又は細孔フィリング膜において、SPESポリマーマトリクス中でジルコニウムナノ粒子がZrSPPへ変換されたことが確認できる。
〔プロトン伝導性評価〕
実施例15で得られたサンプル(ZrSPP−SPES細孔フィリング膜)及び参照例1で得られたサンプル(SPES細孔フィリング膜)のプロトン伝導性評価は、インピーダンス測定により行った。実施例15及び参照例1で得られたサンプルをガラスプレートで挟み、白金電極を用いて四端子法で測定した。プロトン伝導性の測定温度は、90℃とし、相対湿度を20%〜80%に変化させた。また、同様の測定法で、実施例15及び参照例1で得られたサンプルの低温(−30℃〜0℃)でのプロトン伝導性の測定を行った。
90℃でのプロトン伝導性の測定結果を図44に示す。図44において、aは、参照例1で得られたサンプルの結果を示し、bは、実施例15で得られたサンプルの結果を示す。実施例15で得られたサンプルは、20〜80%の湿度領域において、プロトン伝導度の値が、約5.0×10−2S/cm以上の値を示した。このように、実施例15で得られたZrSPP−SPES細孔フィリング膜は、測定した全ての湿度領域において、参照例1で得られたサンプル(SPP粒子を含まないSPES細孔フィリング膜)より極めて高いプロトン伝導性を示した。
また、0℃以下でのプロトン伝導性の測定結果を図45に示す。図45において、aは、参照例1で得られたサンプルの結果を示し、bは、実施例15で得られたサンプルの結果を示す。実施例15で得られたサンプルは、−30〜0℃の温度領域において、プロトン伝導度の値が、約5.0×10−2S/cm以上の値を示した。このように、実施例15で得られたサンプルは、参照例1で得られたサンプルより極めて高いプロトン伝導性を示した。
・評価試験4
〔キャッピングMEAの電池性能評価〕
実施例16で得られたキャッピングMEAを用いて電池性能評価を行った。実施例16で得られたキャッピングMEAは、図46のa及びcに示すキャッピング電極(アノード及びカソード)と、図46のbに示すキャッピング細孔フィリング膜とが接合している。図46のa及びcに示すキャッピング電極中の触媒量、すなわち白金量は、それぞれ0.3mg/cm2である。また、図46のbに示すキャッピング細孔フィリング膜は、5cm×5cmの大きさである。
図47に示すように、MEAの電池性能は、アノード10へ水素ガス12、カソード14へ酸素ガス16をそれぞれ供給し、測定器17でI−V性能を測定することで評価した。
具体的に、図47に示すように、アノード10に供給する水素ガス12の湿度及びカソード14に供給する酸素ガス16の湿度の制御は、アノード10に繋がっている加湿器バブラー)18に接続された温度調節器20、カソード14に繋がっている加湿器22に接続された温度調節器24及び温度調節器26の温度設定にて行った(例えば、湿度21.0%の場合、セル温度:アノードバブラー温度:カソードバブラー温度=60℃:23℃:23℃とした)。また、I−V性能は、10サイクル目測定開始から2時間後)の結果を用いて評価した。なお、図47に示すように、アノード10と加湿器18とは、保温チューブ28により接続されている。また、カソード14と加湿器22とは、保温チューブ30により接続されている。また、水素ガス12と加湿器18とは、チューブ32により接続されている。また、酸素ガス16と加湿器22とは、チューブ34により接続されている。
図48は、60℃、湿度20〜80%における実施例16で得られたキャッピングMEAの電池性能評価の結果を示すグラフである。
図48のaは、湿度79.0%、セル温度:アノードバブラー温度:カソードバブラー温度=60℃:60℃:55℃での電池性能ある。図48のbは、湿度61.4%、セル温度:アノードバブラー温度:カソードバブラー温度=60℃:42℃:42℃での電池性能ある。図48のcは、湿度39.9%、セル温度:アノードバブラー温度:カソードバブラー温度=60℃:34℃:34℃での電池性能ある。図48のdは、湿度21.0%、セル温度:アノードバブラー温度:カソードバブラー温度=60℃:23℃:23℃での電池性能ある。
図48に示す結果から、実施例16で得られたMEAは、20〜80%の幅広い湿度領域で、ほぼ同等の電池性能が得られたことが分かる。
図49は、90℃、湿度20〜80%における実施例16で得られたキャッピングMEAの電池性能評価の結果を示すグラフである。
図49のaは、湿度79.0%、セル温度:アノードバブラー温度:カソードバブラー温度=90℃:90℃:84℃での電池性能ある。図49のbは、湿度59.6%、セル温度:アノードバブラー温度:カソードバブラー温度=90℃:77℃:77℃での電池性能ある。図49のcは、湿度40.6%、セル温度:アノードバブラー温度:カソードバブラー温度=90℃:68℃:68℃での電池性能ある。図49のdは、湿度20.3%、セル温度:アノードバブラー温度:カソードバブラー温度=90℃:53℃:53℃での電池性能ある。
図49に示す結果から、実施例16で得られたMEAは、60℃の場合と同様に湿度に依存しない電池性能が得られた。すなわち、実施例16で得られたキャッピングMEAは、自動車用途で必要とされる過酷な条件である温度90℃、湿度20%においても、性能が低下しないMEAであることが分かる。また、90℃20%における電池性能は、少なくとも6時間にわたり低下しなかった。
図50は、120℃、湿度10〜50%における実施例16で得られたキャッピングMEAの電池性能評価の結果を示すグラフである。
図50のaは、湿度51.0%、セル温度:アノードバブラー温度:カソードバブラー温度=120℃:100℃:100℃での電池性能ある。図50のbは、湿度39.6%、セル温度:アノードバブラー温度:カソードバブラー温度=120℃:93℃:93℃での電池性能ある。図50のcは、湿度20.2%、セル温度:アノードバブラー温度:カソードバブラー温度=120℃:76℃:76℃での電池性能ある。図50のdは、湿度10.0%、セル温度:アノードバブラー温度:カソードバブラー温度=120℃:60℃:60℃での電池性能ある。
図50に示すように、実施例16で得られたMEAは、非常に低い湿度、すなわち湿度10.0%においても、性能低下が見られなかった。

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