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技術 成形体、その製造方法、電子デバイス用部材及び電子デバイス

出願人 リンテック株式会社
発明者 鈴木悠太近藤健星慎一
出願日 2010年3月16日 (10年8ヶ月経過) 出願番号 2011-504842
公開日 2012年9月20日 (8年2ヶ月経過) 公開番号 WO2010-107018
状態 特許登録済
技術分野 高分子成形体の被覆 積層体(2) 高分子成形体の処理
主要キーワード 付着対象物 測定終了点 微小突起物 成形体フィルム パルス状高電圧 被成膜材料 受光側スリット プラズマ放電用電極
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2012年9月20日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (2)

課題・解決手段

本発明は、少なくとも、酸素原子及びケイ素原子を含む材料から構成されてなるガスバリア層を有する成形体であって、前記ガスバリア層の表層部における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在量全体に対する、酸素原子の存在割合が60〜75%、窒素原子の存在割合が0〜10%、ケイ素原子の存在割合が25〜35%であり、かつ、前記ガスバリア層の表層部における膜密度が、2.4〜4.0g/cm3であることを特徴とする成形体;ポリシラザン化合物を含む層を表面部に有する成形物の、前記ポリシラザン化合物を含む層の表面部に、イオン注入する工程を有する前記成形体の製造方法;前記成形体からなる電子デバイス用部材;前記電子デバイス部材を備える電子デバイスである。本発明によれば、優れたガスバリア性能を有し、耐折曲げ性に優れ、しかも、透明性が良好な成形体、その製造方法、この成形体からなる電子デバイス用部材、及びこの電子デバイス部材を備える電子デバイスが提供される。

概要

背景

従来、プラスチックフィルム等の高分子成形体は、低価格であり加工性に優れるため、所望の機能を付与して種々の分野で用いられている。
例えば、食品医薬品の包装用フィルムには、蛋白質や油脂等の酸化変質を抑制して味や鮮度を保持するため、水蒸気酸素の透過を防ぐガスバリア性のプラスチックフィルムが用いられている。

また、近年、液晶ディスプレイエレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等のディスプレイには、薄型化、軽量化、フレキシブル化等を実現するために、電極を有する基板として、ガラス板に代えて透明プラスチックフィルムを用いることが検討されている。しかしながら、プラスチックフィルムは、ガラス板に比べて水蒸気や酸素等を透過しやすく、ディスプレイ内部の素子劣化を起こしやすいという問題があった。

この問題を解決すべく、特許文献1には、透明プラスチックフィルムに金属酸化物からなる透明ガスバリア層を積層したフレキシブルディスプレイ基板が提案されている。
しかしながら、この文献記載のフレキシブルディスプレイ基板は、透明プラスチックフィルム表面に、蒸着法、イオンプレーティング法スパッター法等により、金属酸化物からなる透明ガスバリア層を積層したものであるため、該基板を丸めたり折り曲げたりすると、ガスバリア層にクラックが発生してガスバリア性が低下するという問題があった。

また、特許文献2には、フィルムの少なくとも一方の面にポリシラザン膜を形成し、該ポリシラザン膜にプラズマ処理を施して、ガスバリア性フィルムを製造する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、ガスバリア層の厚みをミクロンオーダーにしなければ、充分なガスバリア性能を出せないという問題があった。例えば、ガスバリア層の厚みを0.1μmとすると、水蒸気透過率は0.50g/m2/dayであったと記載されている。

概要

本発明は、少なくとも、酸素原子及びケイ素原子を含む材料から構成されてなるガスバリア層を有する成形体であって、前記ガスバリア層の表層部における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在量全体に対する、酸素原子の存在割合が60〜75%、窒素原子の存在割合が0〜10%、ケイ素原子の存在割合が25〜35%であり、かつ、前記ガスバリア層の表層部における膜密度が、2.4〜4.0g/cm3であることを特徴とする成形体;ポリシラザン化合物を含む層を表面部に有する成形物の、前記ポリシラザン化合物を含む層の表面部に、イオン注入する工程を有する前記成形体の製造方法;前記成形体からなる電子デバイス用部材;前記電子デバイス部材を備える電子デバイスである。本発明によれば、優れたガスバリア性能を有し、耐折曲げ性に優れ、しかも、透明性が良好な成形体、その製造方法、この成形体からなる電子デバイス用部材、及びこの電子デバイス部材を備える電子デバイスが提供される。

目的

本発明は、上記した従来技術に鑑みてなされたものであり、ガスバリア性と透明性に優れる成形体、その製造方法、この成形体からなる電子デバイス用部材、及びこの電子デバイス用部材を備える電子デバイスを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
7件
牽制数
12件

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請求項1

少なくとも、酸素原子及びケイ素原子を含む材料から構成されてなるガスバリア層を有する成形体であって、前記ガスバリア層の表層部における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在量全体に対する、酸素原子の存在割合が60〜75%、窒素原子の存在割合が0〜10%、ケイ素原子の存在割合が25〜35%であり、かつ、前記ガスバリア層の表層部における膜密度が、2.4〜4.0g/cm3であることを特徴とする成形体。

請求項2

ポリシラザン化合物を含む層に、イオン注入されて得られる層を有することを特徴とする成形体。

請求項3

前記イオンが、水素窒素酸素アルゴンヘリウムネオンキセノン及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種ガスイオン化されたものであることを特徴とする請求項2に記載の成形体。

請求項4

ポリシラザン化合物を含む層に、プラズマイオン注入によりイオンが注入されて得られる層を有することを特徴とする請求項2または3に記載の成形体。

請求項5

前記ポリシラザン化合物が、ペルヒドロポリシラザンであることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の成形体。

請求項6

40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が0.50g/m2/day未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の成形体。

請求項7

ポリシラザン化合物を含む層を表面部に有する成形物の、前記ポリシラザン化合物を含む層の表面部に、イオンを注入する工程を有する請求項2に記載の成形体の製造方法。

請求項8

ポリシラザン化合物を含む層を表面部に有する成形物の、前記ポリシラザン化合物を含む層に、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のガスをイオン注入する工程を有する請求項7に記載の成形体の製造方法。

請求項9

ポリシラザン化合物を含む層を表面部に有する成形物の、前記ポリシラザン化合物を含む層に、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のガスをプラズマイオン注入する工程を有する請求項7に記載の成形体の製造方法。

請求項10

ポリシラザン化合物を含む層を表面部に有する長尺の成形物を一定方向に搬送しながら、前記ポリシラザン化合物を含む層に、イオンを注入することを特徴とする請求項7に記載の成形体の製造方法。

請求項11

請求項1〜6のいずれかに記載の成形体からなる電子デバイス用部材

請求項12

請求項11に記載の電子デバイス用部材を備える電子デバイス

技術分野

0001

本発明は、成形体、その製造方法、この成形体からなる電子デバイス用部材、及びこの電子デバイス用部材を備える電子デバイスに関する。

背景技術

0002

従来、プラスチックフィルム等の高分子成形体は、低価格であり加工性に優れるため、所望の機能を付与して種々の分野で用いられている。
例えば、食品医薬品の包装用フィルムには、蛋白質や油脂等の酸化変質を抑制して味や鮮度を保持するため、水蒸気酸素の透過を防ぐガスバリア性のプラスチックフィルムが用いられている。

0003

また、近年、液晶ディスプレイエレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等のディスプレイには、薄型化、軽量化、フレキシブル化等を実現するために、電極を有する基板として、ガラス板に代えて透明プラスチックフィルムを用いることが検討されている。しかしながら、プラスチックフィルムは、ガラス板に比べて水蒸気や酸素等を透過しやすく、ディスプレイ内部の素子劣化を起こしやすいという問題があった。

0004

この問題を解決すべく、特許文献1には、透明プラスチックフィルムに金属酸化物からなる透明ガスバリア層を積層したフレキシブルディスプレイ基板が提案されている。
しかしながら、この文献記載のフレキシブルディスプレイ基板は、透明プラスチックフィルム表面に、蒸着法、イオンプレーティング法スパッター法等により、金属酸化物からなる透明ガスバリア層を積層したものであるため、該基板を丸めたり折り曲げたりすると、ガスバリア層にクラックが発生してガスバリア性が低下するという問題があった。

0005

また、特許文献2には、フィルムの少なくとも一方の面にポリシラザン膜を形成し、該ポリシラザン膜にプラズマ処理を施して、ガスバリア性フィルムを製造する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、ガスバリア層の厚みをミクロンオーダーにしなければ、充分なガスバリア性能を出せないという問題があった。例えば、ガスバリア層の厚みを0.1μmとすると、水蒸気透過率は0.50g/m2/dayであったと記載されている。

先行技術

0006

特開2000−338901号公報
特開2007−237588号公報

発明が解決しようとする課題

0007

本発明は、上記した従来技術に鑑みてなされたものであり、ガスバリア性と透明性に優れる成形体、その製造方法、この成形体からなる電子デバイス用部材、及びこの電子デバイス用部材を備える電子デバイスを提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0008

本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、少なくとも、酸素原子及びケイ素原子を含む材料から構成されてなるガスバリア層を有する成形体において、前記ガスバリア層が、その表層部における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合が特定の値のものであり、かつ、その表層部における膜密度が2.4〜4.0g/cm3である成形体は、ガスバリア性、耐折曲げ性及び透明性のすべてに優れること、並びに、ポリシラザン化合物を含む層に、イオン注入することにより、ガスバリア性、耐折り曲げ性及び透明性の全てに優れる成形体が簡便かつ効率よく製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。

0009

かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(6)の成形体が提供される。
(1)少なくとも、酸素原子及びケイ素原子を含む材料から構成されてなるガスバリア層を有する成形体であって、前記ガスバリア層の表層部における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在量全体に対する、酸素原子の存在割合が60〜75%、窒素原子の存在割合が0〜10%、ケイ素原子の存在割合が25〜35%であり、かつ、前記ガスバリア層の表層部における膜密度が、2.4〜4.0g/cm3であることを特徴とする成形体。
(2)ポリシラザン化合物を含む層に、イオンが注入されて得られる層を有することを特徴とする成形体。
(3)前記イオンが、水素窒素、酸素、アルゴンヘリウムネオンキセノン及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種ガスイオン化されたものであることを特徴とする(2)に記載の成形体。
(4)ポリシラザン化合物を含む層に、プラズマイオン注入によりイオンが注入されて得られる層を有することを特徴とする(2)又は(3)に記載の成形体。

0010

(5)前記ポリシラザン化合物が、ペルヒドロポリシラザンであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の成形体。
(6)40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率が、0.50g/m2/day未満であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の成形体。

0011

本発明の第2によれば、下記(7)〜(10)の成形体の製造方法が提供される。
(7)ポリシラザン化合物を含む層を表面部に有する成形物の、前記ポリシラザン化合物を含む層の表面部に、イオンを注入する工程を有する(2)に記載の成形体の製造方法。
(8)ポリシラザン化合物を含む層を表面部に有する成形物の、前記ポリシラザン化合物を含む層に、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のガスをイオン注入する工程を有する(7)に記載の成形体の製造方法。

0012

(9)ポリシラザン化合物を含む層を表面部に有する成形物の、前記ポリシラザン化合物を含む層に、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のガスをプラズマイオン注入する工程を有する(7)に記載の成形体の製造方法。
(10)ポリシラザン化合物を含む層を表面部に有する長尺の成形物を一定方向に搬送しながら、前記ポリシラザン化合物を含む層に、イオンを注入することを特徴とする(7)に記載の成形体の製造方法。

0013

本発明の第3によれば、下記(11)の電子デバイス用部材が提供される。
(11)(1)〜(6)のいずれかに記載の成形体からなる電子デバイス用部材。
本発明の第4によれば、下記(12)の電子デバイスが提供される。
(12)(11)に記載の電子デバイス用部材を備える電子デバイス。

発明の効果

0014

本発明の成形体は、優れたガスバリア性能を有し、耐折り曲げ性に優れ、しかも透明性が良好である。よって、本発明の成形体は、フレキシブルなディスプレイや、太陽電池等の電子デバイス用部材(例えば太陽電池バックシート)として好適に用いることができる。
本発明の製造方法によれば、優れたガスバリア性を有する本発明の成形体を安全に簡便に製造することができる。また、無機膜成膜に比して低コストにて容易に大面積化を図ることができる。
本発明の電子デバイス用部材は、優れたガスバリア性と透明性を有するため、ディスプレイ、太陽電池等の電子デバイスに好適に用いることができる。

図面の簡単な説明

0015

本発明に使用するプラズマイオン注入装置概略構成を示す図である。
本発明に使用するプラズマイオン注入装置の概略構成を示す図である。

0016

以下、本発明を、1)成形体、2)成形体の製造方法、並びに、3)電子デバイス用部材及び電子デバイスに項分けして詳細に説明する。

0017

1)成形体
本発明の成形体は、少なくとも、酸素原子及びケイ素原子を含む材料から構成されてなるガスバリア層を有する成形体であって、前記ガスバリア層の表層部における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在量全体に対する、酸素原子の存在割合が60〜75%、窒素原子の存在割合が0〜10%、ケイ素原子の存在割合が25〜35%であり、かつ、前記ガスバリア層の表層部における膜密度が、2.4〜4.0g/cm3であることを特徴とする。

0018

〈ガスバリア層〉
本発明の成形体はガスバリア層を有し、該ガスバリア層は、
(a)少なくとも、酸素原子及びケイ素原子を含む材料から構成されてなり、
(b)表層部における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在量全体に対する、酸素原子の存在割合が60〜75%、好ましくは、63〜70%、窒素原子の存在割合が0〜10%、好ましくは、0.1〜6%、ケイ素原子の存在割合が25〜35%、好ましくは29〜32%であり、
(c)表層部における膜密度が、2.4〜4.0g/cm3である。

0019

このようなガスバリア層としては、例えば、後述するように、ポリシラザン化合物を含む層にイオンが注入されて得られる層が挙げられる。

0020

前記ガスバリア層の表層部とは、ガスバリア層の表面、及び該表面から深さ方向に5nmまでの領域をいう。また、ガスバリア層の表面は他層との境界面を含む意である。
表層部における、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合は、実施例において説明する方法で測定される。

0021

膜密度は、X線反射率法(XRR)を用いて算出することができる。
X線は、基板上の薄膜に対して非常に浅い角度で入射させると全反射される。入射X線の角度が全反射臨界角以上になると、薄膜内部にX線が侵入し薄膜表面や界面で透過波反射波に分かれ、反射波は干渉する。全反射臨界角を解析することで、膜の密度を求めることができる。なお、入射角度を変えながら測定を行い、光路差の変化に伴う反射波の干渉信号の解析から、薄膜の膜厚も求めることができる。
膜密度は、以下の方法で測定することができる。
一般に、X線に対する物質屈折率n、及び屈折率nの実部部分のδは以下の式1及び式2となることが知られている。

0022

0023

0024

ここで、reは電子の古典半径(2.818×10−15m)を、N0はアボガドロ数を、λはX線の波長を、ρは密度(g/cm3)を、Zi、Mi、xiは、それぞれi番目原子の原子番号、原子量及び原子数比モル比)を、fi’はi番目の原子の原子散乱因子異常分散項)
を表す。また、全反射臨界角度θcは、吸収に関係するβを無視すると、式3で与えられる。

0025

0026

従って、式2及び式3の関係から、密度ρは式4で求めることができる。

0027

0028

ここで、θcはX線反射率より求めることのできる値であり、re、N0、λは定数であり、Zi、Mi、fi’はそれぞれ構成原子固有の値となる。なお、xi:原子数比(モル比)に関しては、XPS測定から得られた結果を用いる。
ガスバリア層の表層部における膜密度は、実施例において説明する方法で測定し、式4を用いて得られる。

0029

また、本発明の成形体は、ポリシラザン化合物を含む層(以下、「ポリシラザン層」ということがある。)に、イオンが注入されて得られる層(以下、「イオン注入層」ということがある。)を有するものであってもよい。このポリシラザン層に、イオンが注入されて得られる層は、ガスバリア層としての機能を有する。
前記イオン注入層は、上記(a)〜(c)の要件を満たすものであることが好ましい。

0030

本発明に用いるポリシラザンは、分子内に、−Si−N−結合を含む繰り返し単位を有する高分子である。具体的には、式(1)

0031

0032

で表される繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。
式(1)中、nは任意の自然数を表す。
Rx、Ry、Rzは、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基又はアルキルシリル基等の非加水分解性基を表す。

0033

前記無置換若しくは置換基を有するアルキル基のアルキル基としては、例えば、メチル基エチル基、n−プロピル基イソプロピル基n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基n−オクチル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。

0034

無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基のシクロアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基が挙げられる。

0035

無置換若しくは置換基を有するアルケニル基のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。

0036

前記アルキル基、シクロアルキル基及びアルケニル基の置換基としては、フッ素原子塩素原子臭素原子ヨウ素原子等のハロゲン原子ヒドロキシル基チオール基エポキシ基グリシドキシ基;(メタアクリロイルオキシ基フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。

0037

無置換又は置換基を有するアリール基のアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。

0038

前記アリール基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基ニトロ基シアノ基;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。

0039

アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基トリエチルシリル基トリイソプロピルシリル基、トリt-ブチルシリル基メチルジエチルシリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、メチルシリル基、エチルシリル基等が挙げられる。

0040

これらの中でも、Rx、Ry、Rzとしては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。

0041

前記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリシラザン化合物としては、Rx、Ry、Rzが全て水素原子である無機ポリシラザン、Rx、Ry、Rzの少なくとも1つが水素原子ではない有機ポリシラザンのいずれであってもよい。
無機ポリシラザンとしては、下記

0042

0043

(式中、aは任意の自然数を表す。)で表される繰り返し単位を有する直鎖状構造を有し、690〜2000の分子量を持ち、一分子中に3〜10個のSiH3基を有するペルヒドロポリシラザン(特公昭63−16325号公報)、式(A)

0044

0045

〔式中、b、cは任意の自然数を表し、Y1は、水素原子又は式(B)

0046

0047

(式中、dは任意の自然数を表し、*は結合位置を表し、Y2は水素原子、又は前記(B)で表される基を表す。)で表される基を表す。〕で表される繰り返し単位を有する、直鎖状構造と分岐構造を有するペルヒドロポリシラザン、式(C)

0048

0049

で表されるペルヒドロポリシラザン構造を有する、分子内に、直鎖状構造、分岐構造及び環状構造を有するペルヒドロポリシラザン等が挙げられる。

0050

有機ポリシラザンとしては、
(i)−(Rx’SiHNH)−(Rx’は、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基、又はアルキルシリル基を表す。以下のRx’も同様である。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(ii)−(Rx’SiHNRz’)−(Rz’は、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基、又はアルキルシリル基を表す。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(iii)−(Rx’Ry’SiNH)−(Ry’は、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基、又はアルキルシリル基を表す。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(iv)下記式で表される構造を分子内に有するポリオルガノ(ヒドロシラザン

0051

0052

(v)下記式

0053

0054

〔Rx’、Ry’は前記と同じ意味を表し、e、fは任意の自然数を表し、Y3は、水素原子又は式(E)

0055

0056

(式中、gは任意の自然数を表し、*は結合位置を表し、Y4は水素原子、又は前記(E)で表される基を表す。)で表される基を表す。〕
で表される繰り返し構造を有するポリシラザン等が挙げられる。

0057

上記有機ポリシラザンは、従来公知の方法により製造することができる。例えば、下記式(2)で表される無置換若しくは置換基を有するハロゲノシラン化合物と2級アミンとの反応生成物に、アンモニア又は1級アミンを反応させることにより得ることができる。

0058

0059

式(2)中、mは2又は3を表し、Xはハロゲン原子を表し、R1は、前述した、Rx、Ry、Rz、Rx’、Ry’、Rz’のいずれかの置換基を表す。)
用いる2級アミン、アンモニア及び1級アミンは、目的とするポリシラザン化合物の構造に応じて、適宜選択すればよい。

0060

また、本発明においては、ポリシラザン化合物として、ポリシラザン変性物を用いることもできる。ポリシラザン変性物としては、例えば、金属原子(該金属原子は架橋をなしていてもよい。)を含むポリメタロシラザン、繰り返し単位が〔(SiH2)g(NH)h)〕及び〔(SiH2)iO〕(式中、g、h、iはそれぞれ独立して、1、2又は3である。)で表されるポリシロキサザン(特開昭62−195024号公報)、ポリシラザンにボロン化合物を反応させて製造するポリボロシラザン(特開平2−84437号公報)、ポリシラザンとメタルアルコキシドとを反応させて製造するポリメタロシラザン(特開昭63−81122号公報等)、無機シラザン高重合体改質ポリシラザン(特開平1−138108号公報等)、ポリシラザンに有機成分を導入した共重合シラザン(特開平2−175726号公報等)、ポリシラザンにセラミックス化を促進するための触媒的化合物を付加又は添加した低温セラミックス化ポリシラザン(特開平5−238827号公報等)、

0061

ケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アセチルアセトナト錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報等)、

0062

上記ポリシラザン又はその変性物に、アミン類及び/又は酸類を添加してなるポリシラザン組成物(特開平9−31333号公報)、ペルヒドロポリシラザンにメタノール等のアルコール或いはヘキサメチルジシラザン末端N原子に付加して得られる変性ポリシラザン(特開平5−345826号公報、特開平4−63833号公報)等が挙げられる。

0063

これらの中でも、本発明において用いるポリシラザン化合物としては、Rx、Ry、Rzが全て水素原子である無機ポリシラザン、Rx、Ry、Rzの少なくとも1つが水素原子ではない有機ポリシラザンが好ましく、入手容易性及び優れたガスバリア性を有する注入層を形成できる観点から、無機ポリシラザンがより好ましい。

0064

用いるポリシラザン化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、100〜50,000であるのが好ましい。

0065

さらに、本発明においては、ポリシラザン化合物は、ガラスコーティング材等として市販されている市販品をそのまま使用することができる。

0066

ポリシラザン化合物を含む層は、ポリシラザン化合物の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、硬化剤、他の高分子、老化防止剤光安定剤難燃剤等が挙げられる。

0067

ポリシラザン化合物を含む層中の、ポリシラザン化合物の含有量は、優れたガスバリア性を有するイオン注入層を形成できる観点から、50重量%以上であるのが好ましく、70重量%以上であるのがより好ましい。

0068

ポリシラザン化合物を含む層を形成する方法としては、特に制約はなく、例えば、ポリシラザン化合物の少なくとも一種、所望により他の成分、及び溶剤等を含有する層形成用溶液を、適当な基材層の上に塗布し、得られた塗膜を適度に乾燥して形成する方法が挙げられる。

0069

塗工装置としては、スピンコーターナイフコーターグラビアコーター等の公知の装置を使用することができる。

0070

得られた塗膜の乾燥、成形体のガスバリア性向上のため、塗膜を加熱することが好ましい。加熱は80〜150℃で、数十秒から数十分行う。

0071

また、ポリシラザン化合物を含む層は、ジメチルジシラザンテトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザンなどの、プラズマ重合シラザン化合物のガスを、プラスチック成形体と接触させて、プラズマ重合処理を施すことによって形成することもできる(特開平9−143289号公報)。

0072

形成されるポリシラザン化合物を含む層の厚みは、特に制限されないが、通常20nm〜100μm、好ましくは30〜500nm、より好ましくは40〜200nmである。
本発明においては、ポリシラザン化合物を含む層がナノオーダーであっても、充分なガスバリア性能を有する成形体を得ることができる。

0073

本発明の成形体において、イオン注入層は、ポリシラザン化合物の少なくとも一種を含む層であって、該層中にイオンが注入されてなるものであれば特に制約はない。
イオンの注入量は、形成する成形体の使用目的(必要なガスバリア性、透明性等)等に合わせて適宜決定すればよい。

0074

注入されるイオンとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノンなどの希ガスフルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素塩素フッ素硫黄等のイオン;金、銀、銅、白金ニッケルパラジウムクロムチタンモリブデンニオブタンタルタングステンアルミニウム等の金属のイオン;等が挙げられる。

0075

なかでも、より簡便に注入することができ、特に優れたガスバリア性と透明性を有するイオン注入層が得られることから、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のイオンが好ましい。

0076

イオンの注入量は、形成する成形体の使用目的(必要なガスバリア性、透明性等)等に合わせて適宜決定すればよい。

0077

イオンを注入する方法は特に限定されず、例えば、ポリシラザン化合物を含む層を形成した後、該ポリシラザン化合物を含む層にイオンを注入する方法が挙げられる。

0078

イオンを注入する方法としては、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオンを注入する方法等が挙げられる。なかでも、本発明においては、簡便にガスバリア性の成形体が得られることから、後者のプラズマイオンを注入する方法が好ましい。

0079

プラズマイオン注入は、例えば、希ガス等のプラズマ生成ガスを含む雰囲気下でプラズマを発生させ、ポリシラザン化合物を含む層に負の高電圧パルス印加することにより、該プラズマ中のイオン(陽イオン)を、ポリシラザン化合物を含む層の表面部に注入して行うことができる。

0080

イオン注入層が形成される部分の厚みは、イオンの種類や印加電圧、処理時間等の注入条件により制御することができ、ポリシラザン化合物を含む層の厚み、成形体の使用目的等に応じて決定すればよいが、通常、10〜1000nmである。

0081

イオンが注入されたことは、X線光電子分光分析(XPS)を用いて表面から10nm付近元素分析測定を行うことによって確認することができる。

0082

本発明の成形体の形状は、特に制限されず、例えば、フィルム状、シート状、直方体状、多角柱状、筒状などが挙げられる。後述するごとき電子デバイス用部材として用いる場合には、フィルム状、シート状であることが好ましい。該フィルムの厚みは、目的とする電子デバイスの用途によって適宜決定することができる。

0083

本発明の成形体は、イオン注入層のみからなるものであってもよいし、さらに他の層を含むものであってもよい。また、本発明の成形体は、他の層の一種又は同種又は異種の2層以上を有するものであってもよい。

0084

本発明の成形体が他の層を含む積層体である場合、各層の積層順はどのようなものであってもよい。また、イオン注入層の配置位置は特に限定されないが、効率よく製造できること等の理由から、イオン注入層を表面に有するのが好ましい。さらに、イオン注入層は、他の層の片面のみに形成されていても、他の層の両面に形成されていてもよい。他の層としては、基材層、無機化合物層衝撃吸収層導電体層プライマー層等を挙げることができる。

0086

これらの中でも、透明性に優れ、汎用性があることから、ポリエステル、ポリアミド又はシクロオレフィン系ポリマーが好ましく、ポリエステル又はシクロオレフィン系ポリマーがより好ましい。

0087

ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートポリブチレンテレフタレートポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等が挙げられる。
ポリアミドとしては、全芳香族ポリアミドナイロン6ナイロン66ナイロン共重合体等が挙げられる。

0088

シクロオレフィン系ポリマーとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。その具体例としては、アペル(三井化学社製のエチレンシクロオレフィン共重合体)、アートン(JSR社製のノルボルネン系重合体)、ゼオノア(日本ゼオン社製のノルボルネン系重合体)等が挙げられる。

0089

(無機化合物層)
無機化合物層は、無機化合物の一種又は二種以上からなる層である。無機化合物層を構成する無機化合物としては、一般的に真空成膜可能で、ガスバリア性を有するもの、例えば無機酸化物無機窒化物、無機炭化物無機硫化物、これらの複合体である無機酸化窒化物、無機酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化炭化物等が挙げられる。本発明においては、これらの中でも、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物が好ましい。

0090

無機酸化物としては、一般式MOxで表される金属酸化物が挙げられる。
式中、Mは金属元素を表す。xはMによってそれぞれ範囲が異なり、例えば、Mがケイ素(Si)であれば0.1〜2.0、アルミニウム(Al)であれば0.1〜1.5、マグネシウム(Mg)であれば0.1〜1.0、カルシウム(Ca)であれば0.1〜1.0、カリウム(K)であれば0.1〜0.5、スズ(Sn)であれば0.1〜2.0、ナトリウム(Na)であれば0.1〜0.5、ホウ素(B)であれば0.1〜1.5、チタン(Ti)であれば0.1〜2.0、鉛(Pb)であれば0.1〜1.0、ジルコニウム(Zr)であれば0.1〜2.0、イットリウム(Y)であれば、0.1〜1.5の範囲の値である。

0091

無機窒化物としては、式:MNyで表される金属窒化物が挙げられる。
式中、Mは金属元素を表す。yはMによってそれぞれ範囲が異なり、Mがケイ素(Si)であればy=0.1〜1.3、アルミニウム(Al)であればy=0.1〜1.1、チタン(Ti)であればy=0.1〜1.3、スズ(Sn)であればy=0.1〜1.3の範囲の値である。

0092

無機酸化窒化物としては、式:MOxNyで表される金属酸化化物が挙げられる。
式中、Mは金属元素を表す。x及びyの値は、Mによってそれぞれ範囲が異なる。すなわち、x、yは、例えば、Mがケイ素(Si)であればx=1.0〜2.0、y=0.1〜1.3、アルミニウム(Al)であればx=0.5〜1.0、y=0.1〜1.0、マグネシウム(Mg)であればx=0.1〜1.0、y=0.1〜0.6、カルシウム(Ca)であればx=0.1〜1.0、y=0.1〜0.5、カリウム(K)であればx=0.1〜0.5、y=0.1〜0.2、スズ(Sn)であればx=0.1〜2.0、y=0.1〜1.3、ナトリウム(Na)であればx=0.1〜0.5、y=0.1〜0.2、ホウ素(B)であればx=0.1〜1.0、y=0.1〜0.5、チタン(Ti)であればx=0.1〜2.0、y=0.1〜1.3、鉛(Pb)であればx=0.1〜1.0、y=0.1〜0.5、ジルコニウム(Zr)であればx=0.1〜2.0、y=0.1〜1.0、イットリウム(Y)であればx=0.1〜1.5、y=0.1〜1.0の範囲の値である。
なお、金属酸化物、金属窒化物及び金属酸化窒化物には、2種類以上の金属が含まれていても良い。

0093

無機化合物層の形成方法としては特に制限はなく、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法プラズマCVD法等が挙げられる。本発明においては、簡便に無機化合物層が形成できることから、スパッタリング法が好ましい。

0094

スパッタリング法は、真空槽内に放電ガス(アルゴン等)を導入し、無機化合物からなるターゲット基材などの付着対象物(プラスチックフィルム等)との間に高周波電圧あるいは直流電圧を加えて放電ガスをプラズマ化し、該プラズマをターゲットに衝突させることでターゲット材料を飛ばし、付着対象物に付着させて薄膜を得る方法である。ターゲットとしては、例えば、前記の金属酸化物、金属窒化物、金属酸化窒化物、あるいはこれらに含まれる金属の単体が挙げられる。

0095

スパッタリング法としては、基本的な方式である2極法;2極法に熱電子を放出する熱陰極を追加した3極法磁界発生手段によりターゲット表面に磁界を印加することにより、プラズマを安定化させ成膜速度を上げるマグネトロンスパッタリング法高エネルギーのイオンビームをターゲットに照射するイオンビーム法;2枚のターゲットを平行に対向させてこれらのターゲット面に垂直に磁界を印加する対向ターゲット法;電子サイクロトロン共鳴ECR)を利用するECR法;ターゲットと基板を同軸円筒状に配置する同軸型スパッタリング法;反応性ガス基板近傍に供給して成膜組成を制御する反応性スパッタリング法等が挙げられる。
これらの中でも、本発明においては、簡便にガスバリア性に優れた積層体が得られることから、マグネトロンスパッタリング法が好ましい。

0096

また、本発明においては、ダイナミックイオンミキシング法により無機化合物層を形成することができる。
ダイナミックイオンミキシング法とは、膜形成とイオン注入とを同時に行うことによって膜形成材料注入イオン種との化合物膜を成膜する方法である。
このダイナミックイオンミキシング法は、膜形成及びイオン注入の条件を変化させることによって、膜の組成制御及び結晶制御を容易に行うことができ、これら条件を最適化することにより、ピンホールが少なく、機械的特性に優れた膜を成膜することができる。また、膜形成初期段階で、被成膜材料の表面に到達した膜形成材料の原子の一部が、膜に注入されたイオンとの衝突によってエネルギーを受けとり、被成膜材料中にノックオンされる。これにより、被成膜材料と膜との界面には、被成膜材料を構成する原子と膜形成材料の原子との混合層ミキシング層)が形成される。このような混合層では、被成膜材料へ侵入した膜形成材料の原子が、被成膜材料にくさびをうつような構造をなし、成膜された膜を被成膜材料に留めるアンカーとして機能する。このため、成膜された膜は、被成膜材料に対して強く密着する。したがって、本発明においては、ダイナミックイオンミキシング法によって成膜された無機化合物層は、ポリシラザン層と強く密着しており、また、ピンホールが少ないため、優れたガスバリア性が得られるとともに、屈曲させたと、きにクラックが発生し難く、そのガスバリア性を長期間に亘って維持することができる。

0097

ダイナミックイオンミキシング法で用いる膜形成方法としては、特に限定されないが、スパッタリング法を用いることが好ましい。スパッタリング法を用いるダイナミックイオンミキシング法では、例えば、次のようにして無機化合物層を形成する。

0098

まず、真空チャンバー内に、ポリシラザン層が設けられた基材及びターゲットを配置する。そして、真空チャンバー内を減圧状態とした後、プラズマ生成ガスをチャンバー内に導入する。プラズマ生成ガスは、スバッタガス(希ガス)と、必要に応じて希ガス以外の電離し得るガス(反応性ガス)とを含むものであり、基材に高周波電力が印加されることによってプラズマ化するものである。

0099

そして、基材に高周波電力を印加するとともに、負の直流高電圧パルス状に印加する。基材に高周波電力が印加されることによって、基材の周辺でプラズマ生成ガスがプラズマ化し、プラズマ中のスバッタガスのイオンがターゲットに衝突して、該ターゲットからスバッタ粒子が弾き出される。弾き出されたスバッタ粒子は、ポリシラザン層の表面に付着、堆積し、スバッタ粒子の堆積膜(ターゲット材料よりなる膜)が形成される。また、それと同時に、基材に負の直流高電圧がパルス状に印加されることによって、プラズマ中のイオンが、基材側に誘引され、成膜された膜(無機化合物層)中に注入される。これにより、膜を構成する原子にエネルギーが付与されて、該原子がポリシラザン層中にノックオンされる。反応性ガスを用いた場合は、原子がノックオンされるとともに、膜を構成する原子と反応性ガスのイオンとが反応する。その結果、ターゲット材料と反応性ガスとの化合物膜(無機化合物層)がポリシラザン層に強く密着して形成される。

0100

なお、このダイナミックイオンミキシング法では、高周波電力を基材に印加していることにより、イオン注入による基材の帯電を除去することができる。

0101

以上のようなダイナミックイオンミキシング法において、ターゲット及びプラズマ生成ガスは目的とする無機化合物層の組成に応じて適宜選択される。

0102

具体的には、ターゲットとしては、目的とする無機化合物層を構成する金属の単体、珪素グラファイト、又は金属を含む化合物(酸化物、窒化物、酸窒化物等)等が挙げられる。なお、ターゲットとして金属の単体、ケイ素、グラファイトを用いる場合は、反応性ガスを含むプラズマ生成ガスを用いることにより、無機化合物層が形成される。

0103

また、プラズマ生成ガスにおいて、スバッタガスとしては、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、反応性ガスとしては、水素、酸素、窒素、フルオロカーボン等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。

0104

反応性スパッタリングの場合、プラズマ生成ガスはスバッタガスを主成分とすることが好ましく、ターゲット材料の組成比と目的とする膜質によるが、具体的には導入ガス中のスバッタガスの割合が50%〜100%であるのが好ましく、55%〜98%であるのがより好ましく、60〜96%が特に好ましい。これにより、膜形成速度を上げることができ、無機化合物層を効率よく成膜することができる。

0105

また、プラズマ生成ガス圧力(混合ガスの場合は総圧)は、1.0×10〜1.0×10−3Paが好ましく、1.0×100〜1.0×10−3Paがより好ましく、1.0×100〜1.0×10−2Paが特に好ましい。

0106

基材に印加する負のパルス状高電圧は、−100kV〜−100V、より好ましくは−50kV〜−1kVである。

0107

また、膜に注入するイオン濃度は、通常1×1015ions/cm2以上、好ましくは1×1016ions/cm2以上、より好ましくは1×1016〜1×1018ions/cm2である。

0108

無機化合物層の厚さは、特に限定されないが、10〜1000nmであることが好ましく、20〜500nmであることがより好ましく、50〜200nmであることが特に好ましい。無機化合物層の厚さが前記範囲より薄い場合には、ガスバリア性が十分に得られない可能性がある。また、無機化合物層の厚さが前記範囲より厚い場合には、ガスバリア性フィルムの透明性が損なわれることがある。

0109

以上のように構成されたガスバリア性フィルムでは、基材上に、ポリシラザン層が設けられていることにより、基材表面の凸凹が埋まり、基材表面の凸凹形状が表面に浮き出すのが抑えられる。このため、このガスバリア性フィルムは、高い表面平滑性が得られる。

0110

また、ポリシラザン層の上に該無機化合物層がダイナミックイオンミキシング法によって成膜されていることにより、ポリシラザン層と無機化合物層とで高い密着性が得られ、ポリシラザン層と無機化合物の剥離が抑えられる。

0111

また、無機化合物層の表面の中心平均粗さ(Ra)は、特に制約されないが、2.0nm以下であることが好ましく、1.0nm以下であることがより好ましい。中心平均粗さ(Ra)は、JIS BO601に規定されているものを、測定面に対して適用できるよう三次元拡張して、基準面から測定面までの偏差の絶対値を平均した値であり、次式で表される。

0112

0113

式中、F(X,Y)、S0、Z0、YT、YB、XR及びXLは次の意味を表す。
F(X,Y):全測定データの示す面
S0:指定面から理想的にフラットであると仮定したときの面積
Z0:指定面内のZデータの平均値
YT:測定終了点のy座標
YB:測定開始点のy座標
XR:測定終了点のx座標
XL:測定開始点のx座標

0114

この中心平均粗さ(Ra)は、無機化合物層の表面平滑性の指標となり、この値が小さいもの程、表面平滑性が高いことを意味する。そして、無機化合物層の中心平均粗さ(Ra)が前記範囲であることにより、このガスバリア性フィルムを、その表面に電極膜が設けられる構成を有する電子デバイスに適用した場合でも、電極膜に突起が形成されるのが防止され、この突起に起因する断線短絡を回避することができる。

0115

ポリシラザン層上に、ダイナミックイオンミキシング法によって無機化合物層を形成する方法を、スパッタリング法を用いるダイナミックイオンミキシング法によって、酸窒化珪素層を形成する場合を例にして説明する。

0116

まず、チャンバー内に設けられたフィルム走行系に、ポリシラザン層が形成された基材を掛け渡し、該チャンバー内に、珪素ターゲットを設置する。このとき、基材は、フイルム走行系の途中で、ポリシラザン層が形成された側の面がターゲットと対向するようにする。そして、ロータリーポンプ及び油拡散ポンプによって、チャンバー内を減圧状態とした後、プラズマ生成ガスを導入する。ここでは、プラズマ生成ガスとして、アルゴン、窒素、酸素の混合ガスを使用する。そして、基材を走行させつつ、該基材に高周波電力を印加するとともに、直流高電圧をパルス状に印加する。例えば、10μSから400msにパルス変調された13.56MHzの高周波電力を基材に印加する。

0117

基材に高周波電力が印加されることによって、基材の周辺でプラズマ生成ガスがプラズマ化し、プラズマ中のアルゴンイオンが珪素ターゲットに衝突して、該ターゲットから珪素粒子が弾き出される。弾き出された珪素粒子は、ポリシラザン化合物を含む層の表面に付着、堆積し、珪素粒子の堆積膜が形成される。また、それと同時に、基材に負の直流高電圧がパルス状に印加されることによって、プラズマ中のイオンが、基材側に誘引され、成膜された膜中に注入される。これにより、膜を構成する珪素原子がイオンのエネルギーを受け取ってポリシラザン化合物を含む層中にノックオンされるとともに、膜を構成する珪素原子と、反応性ガス(窒素及び酸素)のイオンとが反応して酸窒化珪素が生成される。その結果、酸窒化珪素層がポリシラザン層に強く密着して形成される。

0118

そして、このような膜形成過程が、走行している基材の長手方向に沿って連続的に行われる。その結果、ポリシラザン層と酸窒化珪素層(無機化合物層)とが順次積層された長尺状のガスバリア性フィルムが完成する。

0119

一般的に、無機化合物層はガスバリア性能を有するが、ガスバリア性を高めるために無機化合物層をあまりに厚くすると、耐折り曲げ性、透明性が低下し、クラックが発生しやすくなり、軽量化にも反する。本発明の成形体によれば、無機化合物層の他に前記イオン注入層を有するため、無機化合物層を厚くしなくても、優れたガスバリア性能を有する。

0120

また、前記イオン注入層と無機化合物層が、直接積層されることで、イオン注入層が、無機化合物層にクラックが発生するのを抑える働きをし、優れた耐折り曲げ性、ガスバリア性を有する積層体が得られる。

0121

本発明の成形体のイオン注入層、無機化合物層の数や配置は特に限定されない。例えば、基材層をさらに含んでいる場合、イオン注入層、無機化合物層は、基材層の片面のみに形成されていても、基材層の両面に形成されていてもよい。基材層にイオン注入層を積層することによって基材表面の凹凸微小突起物)が覆われて平滑性が向上するので、その上に無機化合物層を積層すれば、無機化合物層のピンホール発生が抑制されて優れたガスバリア性を有する積層体が得られる。また、基材層の種類によっては無機化合物との密着性が得られない場合があるが、基材層と無機化合物層の間にイオン注入層を設けることで十分な密着性が得られる。

0122

他の層として無機化合物層を有する本発明の成形体は、優れたガスバリア性、透明性、及び耐折り曲げ性(折り曲げが容易で、折り曲げてもクラックが発生することがない)を有する。

0123

(衝撃吸収層)
衝撃吸収層を形成する素材としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂シリコーン系樹脂オレフィン系樹脂ゴム系材料等を用いることができる。これらの中でも、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系材料が好ましい。

0124

アクリル系樹脂としては、主成分として、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、2種以上の(メタ)アクリル酸エステル単位を含む共重合体、及び(メタ)アクリル酸エステルと他の官能性単量体との共重合体の中から選ばれた少なくとも1種を含有するものが挙げられる。なお、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸の意である(以下同様。)

0125

(メタ)アクリル酸エステルとしては、エステル部分の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸が好ましく、後述する衝撃吸収層の貯蔵弾性率を特定の範囲内とすることが容易であることから、エステル部分の炭素数が4〜10の(メタ)アクリル酸エステルを用いることがより好ましい。このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル等が挙げられる。

0126

官能性単量体としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有単量体、(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有単量体、(メタ)アクリル酸等のカルボン酸基含有単量体等が挙げられる。

0127

(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体は、例えば、溶液重合法乳化重合法懸濁重合法等の公知の重合方法により得ることができる。なお、(共)重合体は、単独重合体又は共重合体の意である(以下、同様)。

0128

(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体は、架橋剤と混合して、少なくとも一部に架橋体を形成して用いることもできる。
架橋剤としては、トリレンジイソシアネートヘキサメチレンジイソシアナート等、あるいはそれらのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤ヘキサ〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤;アルミニウムキレート等のキレート系架橋剤;等が挙げられる。

0129

架橋剤の使用量は、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体の固形分100質量部に対して通常0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部である。架橋剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。

0130

シリコーン系樹脂としては、ジメチルシロキサンを主成分とするものが挙げられる。また、ゴム系材料としては、イソプレンゴムスチレンブタジエンゴムポリイソブチレンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム等を主成分とするものが挙げられる。

0131

衝撃吸収層には、酸化防止剤粘着付与剤可塑剤紫外線吸収剤着色剤帯電防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。

0132

また、衝撃吸収層を形成する素材は、粘着剤コート剤封止剤等として市販されているものを使用することもでき、特に、アクリル系粘着剤シリコーン系粘着剤ゴム系粘着剤等の粘着剤が好ましい。

0133

衝撃吸収層の形成方法としては特に制限はなく、例えば、前記ポリシラザン化合物を含む層の形成方法と同様に、前記衝撃吸収層を形成する素材、及び、所望により、溶剤等の他の成分を含む衝撃吸収層形成溶液を、積層すべき層上に塗布し、得られた塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等して形成する方法が挙げられる。
また、別途剥離基材上に衝撃吸収層を成膜し、得られた膜を、積層すべき層上に転写して積層してもよい。
衝撃吸収層の厚みは、通常1〜100μm、好ましくは5〜50μmである。

0134

衝撃吸収層の25℃における貯蔵弾性率は、1×102Pa以上、1×109Pa以下であるのが好ましく、1×103Pa以上、1×107Pa以下であるのがより好ましく、1×104Pa以上、1×106Pa以下であるのがさらに好ましい。貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いて、ねじりせん断法により周波数1Hzで測定を行う。

0135

衝撃吸収層を有する本発明の成形体は、衝撃吸収性能に優れ、衝撃を受けても、無機化合物層にクラックや割れが生じることがない。よって、各層のクラックや割れによるガスバリア性の低下のおそれがない。

0136

(導電体層)
導電体層を構成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体的には、酸化スズアンチモンをドープした酸化スズ(ATO);フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これら金属と導電性金属酸化物との混合物;ヨウ化銅硫化銅等の無機導電性物質ポリアニリンポリチオフェンポリピロール等の有機導電性材料;等が挙げられる。導電体層は、これらの材料からなる層が複数積層されてなる積層体であってもよい。

0137

また、導電体層は透明であっても透明でなくてもよいが、導電体層が透明である場合には、透明性に優れた積層体を得ることができる。透明性の点からは、導電体層を形成する材料として導電性金属酸化物が好ましく、ITOが特に好ましい。

0138

導電体層の形成方法としては、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法等が挙げられる。これらの中でも、本発明においては、簡便に導電体層が形成できることから、スパッタリング法が好ましい。

0139

スパッタリング法は、真空槽内に放電ガス(アルゴン等)を導入し、ターゲットと基板との間に高周波電圧あるいは直流電圧を加えて放電ガスをプラズマ化し、該プラズマをターゲットに衝突させることでターゲット材料を飛ばし、基板に付着させて薄膜を得る方法である。ターゲットとしては、前記導電体層を形成する材料からなるものが使用される。

0140

導電体層の厚さはその用途等に応じて適宜選択すればよい。通常10nm〜50μm、好ましくは20nm〜20μmである。
得られる導電体層の表面抵抗率は、通常1000Ω/□以下である。

0141

形成された導電体層には、必要に応じてパターニングを行ってもよい。パターニングする方法としては、フォトリソグラフィー等による化学的エッチングレーザ等を用いた物理的エッチング等、マスクを用いた真空蒸着法やスパッタリング法、リフトオフ法印刷法等が挙げられる。

0142

(プライマー層)
プライマー層は、基材層とイオン注入層あるいはポリシラザン化合物を含む層との層間密着性を高める役割を果たす。プライマー層を設けることにより、層間密着性及び表面平滑性に極めて優れるガスバリア性フィルムを得ることができる。

0143

プライマー層を構成する材料としては、特に限定されず、公知のものが使用できる。例えば、ケイ素含有化合物光重合性モノマー及び/又は光重合性プレポリマーからなる光重合性化合物、及び少なくとも可視光域の光でラジカルを発生する重合開始剤を含む光重合性組成物ポリエステル系樹脂ポリウレタン系樹脂(特にポリアクリルポリオールポリエステルポリオールポリエーテルポリオール等とイソシアネート化合物との2液硬化型樹脂)、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂塩化ビニル酢酸ビニル共重合体ポリビニルブチラール系樹脂ニトロセルロース系樹脂等の樹脂類アルキルチタネートエチレンイミン;等が挙げられる。これらの材料は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。

0144

プライマー層は、プライマー層を構成する材料を適当な溶剤に溶解又は分散してなるプライマー層形成用溶液を、基材層の片面又は両面に塗付し、得られた塗膜を乾燥させ、所望により加熱することより形成することができる。

0145

プライマー層形成用溶液を基材層に塗付する方法としては、通常の湿式コーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法ロールコート、グラビアコートナイフコート、エアナイフコート、ロールナイフコート、ダイコートスクリーン印刷法スプレーコートグラビアオフセット法等が挙げられる。

0146

プライマー層形成用溶液の塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。プライマー層の厚みは、通常、10〜1000nmである。

0147

また、得られたプライマー層に、イオン注入層にイオン注入する方法と同様な方法によりイオン注入を行い、その後、イオン注入層を形成するようにしてもよい。プライマー層にもイオン注入を行うことにより、より優れたガスバリア性フィルムを得ることができる。

0148

本発明の成形体の全体の厚みは、特に制限されず、目的とする電子デバイスの用途によって適宜決定することができる。

0149

本発明の成形体は、優れたガスバリア性と透明性を有し、また、その形状がフィルム状又はシート状(以下、「フィルム状」という。)の場合、耐折り曲げ性に優れ、かつ折り曲げなどを行ってもガスバリア性を維持するものが好ましい。

0150

本発明の成形体が優れたガスバリア性を有していることは、本発明の成形体の水蒸気等のガスの透過率が、非常に小さいことから確認することができる。例えば、水蒸気透過率は、40℃、相対湿度90%雰囲気下で、0.50g/m2/day未満が好ましく、0.35g/m2/day以下がより好ましい。なお、成形体の水蒸気等の透過率は、公知のガス透過率測定装置を使用して測定することができる。

0151

本発明の成形体が優れた透明性を有していることは、本発明の成形体の可視光透過率が高いことから確認することができる。可視光透過率は波長550nmにおける透過率であり、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。成形体の可視光透過率は、公知の可視光透過率測定装置を使用して測定することができる。

0152

本発明の成形体が耐折り曲げ性に優れ、折り曲げなどを行ってもガスバリア性を維持できることは、フィルム状の成形体をふたつに折り曲げて圧力をかけ、再び開いたときに折り曲げた部分が劣化しておらず、水蒸気透過率もほとんど低下しないことから確認することができる。本発明のフィルム状の成形体は、同じ厚みの無機膜に比較して、折り曲げ後もガスバリア性を維持することに優れている。

0153

2)成形体の製造方法
本発明の成形体の製造方法は、ポリシラザン化合物を含む層を表面部に有する成形物の、前記ポリシラザン化合物を含む層に、イオンを注入する工程を有することを特徴とする。

0154

本発明の成形体の製造方法においては、ポリシラザン化合物を含む層を表面部に有する長尺状の成形物を一定方向に搬送しながら、ポリシラザン化合物を含む層にイオンを注入させて成形体を製造するのが好ましい。
この製造方法によれば、例えば、長尺状の成形物を巻き出しロールから巻き出し、それを一定方向に搬送しながらイオンを注入し、巻き取りロールで巻き取ることができるので、イオンが注入されて得られる成形体を連続的に製造することができる。

0155

長尺状の成形物の形状はフィルム状であり、ポリシラザン化合物を含む層のみでもよいし、他の層を含むものであってもよい。他の層としては、上述したものと同様のものが挙げられる。

0156

成形物の厚さは、巻き出し、巻き取り及び搬送の操作性の観点から、1μm〜500μmが好ましく、5μm〜300μmがより好ましい。

0157

ポリシラザン化合物を含む層に、イオンを注入する方法は、特に限定されない。なかでも、プラズマイオン注入法により前記層の表面部にイオン注入層を形成する方法が特に好ましい。

0158

プラズマイオン注入法は、プラズマ中に曝した、ポリシラザン化合物を含む層を表面に有する成形物に、負の高電圧パルスを印加することにより、プラズマ中のイオンを前記層の表面部に注入してイオン注入層を形成する方法である。

0159

プラズマイオン注入法としては、(A)外部電界を用いて発生させたプラズマ中に存在するイオンを、前記層の表面部に注入する方法、又は(B)外部電界を用いることなく、前記層に印加する負の高電圧パルスによる電界のみで発生させたプラズマ中に存在するイオンを、前記層の表面部に注入する方法が好ましい。

0160

前記(A)の方法においては、イオン注入する際の圧力(プラズマイオン注入時の圧力)を0.01〜1Paとすることが好ましい。プラズマイオン注入時の圧力がこのような範囲にあるときに、簡便にかつ効率よく均一なイオン注入層を形成することができ、透明性、ガスバリア性を兼ね備えたイオン注入層を効率よく形成することができる。

0161

前記(B)の方法は、減圧度を高くする必要がなく、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮することができる。また、前記層全体にわたって均一に処理することができ、負の高電圧パルス印加時にプラズマ中のイオンを高エネルギーで層の表面部に連続的に注入することができる。さらに、radio frequency(高周波、以下、「RF」と略す。)や、マイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、層に負の高電圧パルスを印加するだけで、層の表面部に良質のイオン注入層を均一に形成することができる。

0162

前記(A)及び(B)のいずれの方法においても、負の高電圧パルスを印加するとき、すなわちイオン注入するときのパルス幅は、1〜15μsecであるのが好ましい。パルス幅がこのような範囲にあるときに、透明で均一なイオン注入層をより簡便にかつ効率よく形成することができる。

0163

また、プラズマを発生させるときの印加電圧は、好ましくは−1kV〜−50kV、より好ましくは−1kV〜−30kV、特に好ましくは−5kV〜−20kVである。印加電圧が−1kVより大きい値でイオン注入を行うと、イオン注入量ドーズ量)が不十分となり、所望の性能が得られない。一方、−50kVより小さい値でイオン注入を行うと、イオン注入時に成形体が帯電し、また成形体への着色等の不具合が生じ、好ましくない。

0164

プラズマイオン注入するイオン種は、上述した通りである。より簡便にイオン注入することができ、透明で優れたガスバリア性を有する成形体を効率良く製造することができることから、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトンが好ましく、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウムがより好ましい。

0165

層の表面部にプラズマ中のイオンを注入する際には、プラズマイオン注入装置を用いる。
プラズマイオン注入装置としては、具体的には、(α)ポリシラザン化合物を含む層(以下、「イオン注入する層」ということがある。)に負の高電圧パルスを印加するフィードスルーに高周波電力を重畳してイオン注入する層の周囲を均等にプラズマで囲み、プラズマ中のイオンを誘引、注入、衝突、堆積させる装置(特開2001−26887号公報)、(β)チャンバー内にアンテナを設け、高周波電力を与えてプラズマを発生させてイオン注入する層周囲にプラズマが到達後、イオン注入する層に正と負のパルスを交互に印加することで、正のパルスでプラズマ中の電子を誘引衝突させてイオン注入する層を加熱し、パルス定数を制御して温度制御を行いつつ、負のパルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させる装置(特開2001−156013号公報)、(γ)マイクロ波等の高周波電力源等の外部電界を用いてプラズマを発生させ、高電圧パルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させるプラズマイオン注入装置、(δ)外部電界を用いることなく高電圧パルスの印加により発生する電界のみで発生するプラズマ中のイオンを注入するプラズマイオン注入装置等が挙げられる。

0166

これらの中でも、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮でき、連続使用に適していることから、(γ)又は(δ)のプラズマイオン注入装置を用いるのが好ましい。
以下、前記(γ)及び(δ)のプラズマイオン注入装置を用いる方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。

0167

図1は、前記(γ)のプラズマイオン注入装置を備える連続的プラズマイオン注入装置の概要を示す図である。
図1(a)において、1aはポリシラザン化合物を含む層を表面部に有する長尺のフィルム状の成形物(以下、「フィルム」という。)、11aはチャンバー、20aはターボ分子ポンプ、3aはイオン注入される前のフィルム1aを送り出す巻き出しロール、5aはイオン注入されたフィルム(成形体)1bをロール状に巻き取る巻取りロール、2aは高電圧印加回転キャン、6aはフィルムの送り出しロール、10aはガス導入口、7aは高電圧パルス電源、4aはプラズマ放電用電極(外部電界)である。図1(b)は、前記高電圧印加回転キャン2aの斜視図であり、15は高電圧導入端子(フィードスルー)である。

0168

用いるポリシラザン化合物を含む層を表面部に有する長尺のフィルム1aは、基材層上に、ポリシラザン化合物を含む層を形成したフィルムである。

0169

図1に示す連続的プラズマイオン注入装置においては、フィルム1aは、チャンバー11a内において、巻き出しロール3aから、図1中矢印X方向に搬送され、高電圧印加回転キャン2aを通過して、巻き取りロール5aに巻き取られる。フィルム1aの巻取りの方法や、フィルム1aを搬送する方法等は特に制約はないが、本実施形態においては、高電圧印加回転キャン2aを一定速度で回転させることにより、フィルム1aの搬送を行っている。また、高電圧印加回転キャン2aの回転は、高電圧導入端子15の中心軸13をモーターにより回転させることにより行われる。

0170

高電圧導入端子15、及びフィルム1aが接触する複数の送り出し用ロール6a等は絶縁体からなり、例えば、アルミナの表面をポリテトラフルオロエチレン等の樹脂被覆して形成されている。また、高電圧印加回転キャン2aは導体からなり、例えば、ステンレスで形成することができる。

0171

フィルム1aの搬送速度は適宜設定できる。フィルム1aが巻き出しロール3aから搬送され、巻き取りロール5aに巻き取られるまでの間にフィルム1aの表面部(ポリシラザン化合物を含む層)にイオン注入され、所望のイオン注入層が形成されるだけの時間が確保される速度であれば、特に制約されない。フィルムの巻取り速度(搬送速度)は、印加電圧、装置規模等にもよるが、通常0.1〜3m/min、好ましくは0.2〜2.5m/minである。

0172

まず、チャンバー11a内をロータリーポンプに接続されたターボ分子ポンプ20aにより排気して減圧とする。減圧度は、通常1×10−4Pa〜1Pa、好ましくは1×10−3Pa〜1×10−2Paである。

0173

次に、ガス導入口10aよりチャンバー11a内に、窒素等のイオン注入用のガス(以下、「イオン注入用ガス」ということがある。)を導入して、チャンバー11a内を減圧イオン注入用ガス雰囲気とする。なお、イオン注入用ガスはプラズマ生成ガスでもある。

0174

次いで、プラズマ放電用電極4(外部電界)によりプラズマを発生させる。プラズマを発生させる方法としては、マイクロ波やRF等の高周波電力源等による公知の方法が挙げられる。

0175

一方、高電圧導入端子15を介して高電圧印加回転キャン2aに接続されている高電圧パルス電源7aにより、負の高電圧パルス9aが印加される。高電圧印加回転キャン2aに負の高電圧パルスが印加されると、プラズマ中のイオンが誘因され、高電圧印加回転キャン2aの周囲のフィルムの表面に注入され(図1(a)中、矢印Y)、フィルム状の成形体1bが得られる。

0176

前述のように、イオン注入する際の圧力(チャンバー11a内のプラズマガスの圧力)は、0.01〜1Paであるのが好ましく、イオン注入するときのパルス幅は、1〜15μsecであるのが好ましく、高電圧印加回転キャン2aに負の高電圧を印加する際の印加電圧は、−1kV〜−50kVであるのが好ましい。

0177

次に、図2に示す連続的プラズマイオン注入装置を使用して、ポリシラザン化合物を含む層を表面部に有するフィルムの、前記ポリシラザン化合物を含む層にイオン注入する方法を説明する。

0178

図2に示す装置は、前記(δ)のプラズマイオン注入装置を備える。このプラズマイオン注入装置は、外部電界(すなわち、図1におけるプラズマ放電用電極4)を用いることなく印加する高電圧パルスによる電界のみでプラズマを発生させるものである。

0179

図2に示す連続的プラズマイオン注入装置においては、フィルム(フィルム状の成形物)1cは、前記図1の装置と同様に高電圧印加回転キャン2bを回転させることによって巻き出しロール3bから図2中矢印X方向に搬送され、巻き取りロール5bに巻き取られる。

0180

図2に示す連続的プラズマイオン注入装置では、前記フィルムのポリシラザン化合物を含む層の表面部へのイオン注入は次のように行われる。

0181

まず、図1に示すプラズマイオン注入装置と同様にしてチャンバー11b内にフィルム1cを設置し、チャンバー11b内をロータリーポンプに接続されているターボ分子ポンプ20bにより排気して減圧とする。そこへ、ガス導入口10bよりチャンバー11b内に、窒素等のイオン注入用ガスを導入して、チャンバー11b内を減圧イオン注入用ガス雰囲気とする。

0182

イオン注入する際の圧力(チャンバー11b内のプラズマガスの圧力)は、10Pa以下、好ましくは0.01〜5Pa、より好ましくは0.01〜1Paである。

0183

次に、フィルム1cを、図2中Xの方向に搬送させながら、高電圧導入端子(図示せず)を介して高電圧印加回転キャン2bに接続されている高電圧パルス電源7bから高電圧パルス9bを印加する。

0184

高電圧印加回転キャン2bに負の高電圧が印加されると、高電圧印加回転キャン2bの周囲のフィルム1cに沿ってプラズマが発生し、そのプラズマ中のイオンが誘因され、高電圧印加回転キャン2bの周囲の成形体フィルム1cの表面に注入される(図2中、矢印Y)。フィルム1cのポリシラザン化合物を含む層の表面部にイオンが注入されると、フィルム表面部にイオン注入層が形成され、フィルム状の成形体1dが得られる。

0185

高電圧印加回転キャン2bに負の高電圧を印加する際の印加電圧、パルス幅及びイオン注入する際の圧力は、図1に示す連続的プラズマイオン注入装置の場合と同様である。

0186

図2に示すプラズマイオン注入装置では、プラズマを発生させるプラズマ発生手段を高電圧パルス電源によって兼用しているため、RFやマイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、負の高電圧パルスを印加するだけで、プラズマを発生させ、フィルムのポリシラザン化合物を含む層の表面部にプラズマ中のイオンを注入し、イオン注入層を連続的に形成し、フィルムの表面部にイオン注入層が形成された成形体を量産することができる。

0187

3)電子デバイス用部材及び電子デバイス
本発明の電子デバイス用部材は、本発明の成形体からなることを特徴とする。従って、本発明の電子デバイス用部材は、優れたガスバリア性を有しているので、水蒸気等のガスによる素子の劣化を防ぐことができる。また、光の透過性が高いので、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ等のディスプレイ部材太陽電池用バックシート;等として好適である。

0188

本発明の電子デバイスは、本発明の電子デバイス用部材を備える。具体例としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー、太陽電池等が挙げられる。
本発明の電子デバイスは、本発明の成形体からなる電子デバイス用部材を備えているので、優れたガスバリア性と透明性を有する。

0189

以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。

0190

用いたX線光電子分光測定装置、X線反射率法による膜密度測定方法、プラズマイオン注入装置、水蒸気透過率測定装置測定条件、可視光透過率測定装置及び折り曲げ試験の方法は以下の通りである。なお、用いたプラズマイオン注入装置は外部電界を用いてイオン注入する装置である。

0191

(X線光電子分光測定装置)
下記に示す測定条件にて、ガスバリア層(イオン注入されて得られた層)の表層部における酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合の測定を行った。
測定装置:「PHI Quantera SXM」アルバックファイ社製
X線源:AlKα
X線ビーム径:100μm
電力値:25W
電圧:15kV
取り出し角度:45°
真空度:5.0×10−8Pa

0192

(X線反射率法による膜密度の測定方法)
ガスバリア層の表層部における膜密度は、下記に示す測定条件にてX線の反射率を測定して全反射臨界角度θcを求め、その値から算出した。

0193

測定装置と測定条件は以下の通りである。
測定装置:薄膜評価試料水平型X線回折装置「SmartLab」株式会社リガク製
測定条件:
X線源;Cu−Kα1(波長:1.54059Å)
光学系;並行ビーム光学系
入射側スリット系;Ge(220)2結晶高さ制限スリット5mm、入射スリット0.05mm
受光側スリット系;受光スリット0.10mm、ソーラースリット5°
検出器シンチレーションカウンター
管電圧管電流;45kV−200mA
走査軸;2θ/θ
走査モード連続スキャン
走査範囲;0.1−3.0deg.
走査速度;1deg./min.
サンプリング間隔;0.002°/step
なお、原子数比(xi)は、X線光電子分光測定により得られたガスバリア層の表層部における酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合を用いた。

0194

(プラズマイオン注入装置)
RF電源日本電子社製、型番号「RF」56000
高電圧パルス電源:製作所社製、「PV−3−HSHV−0835」

0195

(水蒸気透過率の測定)
透過率測定器:水蒸気透過率が0.01g/m2/day以上のとき、LYSSY社製、「L89−500」を用い、水蒸気透過率が0.01g/m2/day未満のとき、TECHNOLOX社製、「deltaperm」を用いた。
測定条件:相対湿度90%、40℃

0196

可視光線透過率の測定)
可視光透過率測定装置:島津製作所社製、「UV−3101PC」
測定条件:波長550nm

0197

(折り曲げ試験)
得られた成形体のイオン注入面(比較例1はペルヒドロポリシラザンを含む層側、比較例3は窒化ケイ素膜側)を外側にし、中央部分で半分に折り曲げてラミネーター(フジプラ社製、「LAMIACKERLPC1502」)の2本のロール間を、ラミネート速度5m/min、温度23℃の条件で通した後、折り曲げた部分を顕微鏡で観察(100倍)してクラック発生の有無を観察した。クラックの発生が認められなかった場合を「なし」、クラックの発生が認められた場合を「あり」と評価した。

0198

ポリシラザン化合物としては、下記A又はBを用いた。
A:ペルヒドロポリシラザンを主成分とするコーティング剤クラリアントジャパン社製、「アクアミカNL110−20」)
B:飽和炭化水素基を有するオルガノポリシラザン化合物の混合物を主成分とするコーティング材(クラリアントジャパン社製、「tutoProm Bright」)

0199

(実施例1)
基材層としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、「PET38 T−100」、厚さ38μm、以下、「PETフィルム」という。)に、ポリシラザン化合物としてAを塗布し、120℃で1分間加熱してPETフィルム上にペルヒドロポリシラザンを含む厚さ60nm(膜厚)の層を形成して成形物を得た。次に、図1に示すプラズマイオン注入装置を用いてペルヒドロポリシラザンを含む層の表面に、アルゴン(Ar)をプラズマイオン注入して成形体1を作製した。

0200

プラズマイオン注入の条件を以下に示す。
・プラズマ生成ガス:Ar
ガス流量:100sccm
Duty比:0.5%
繰り返し周波数:1000Hz
・印加電圧:−10kV
・RF電源:周波数13.56MHz、印加電力1000W
チャンバー内圧:0.2Pa
・パルス幅:5μsec
・処理時間(イオン注入時間):5分間
・搬送速度:0.2m/min

0201

(実施例2)
加熱時間を1分間から5分間に変更した以外は、実施例1と同様にして成形体2を得た。

0202

(実施例3)
PETフィルム上に形成するペルヒドロポリシラザンを含む層の厚さを60nmから100nmとした以外は、実施例2と同様にして成形体3を得た。

0203

(実施例4)
PETフィルム上に形成するペルヒドロポリシラザンを含む層の厚さを60nmから150nmとした以外は、実施例2と同様にして成形体4を得た。

0204

(実施例5)
加熱時間を1分間から20分間に変更した以外は、実施例1と同様にして成形体5を得た。

0205

(実施例6)
プラズマ生成ガスとしてアルゴンに変えて窒素(N2)を用いた以外は、実施例2と同様にして成形体6を作製した。

0206

(実施例7)
イオン注入を行う際の印加電圧を−10kVに変えて−5kVとした以外は、実施例2と同様にして成形体7を作製した。

0207

(実施例8)
イオン注入を行う際の印加電圧を−10kVに変えて−15kVとした以外は、実施例2と同様にして成形体8を作製した。

0208

(実施例9)
ポリシラザン化合物Aの変わりに、ポリシラザン化合物Bを用いた以外は、実施例2と同様にして成形体9を作製した。

0209

(実施例10)
プラズマ生成ガスとしてアルゴンに変えて水素(H2)を用いた以外は、実施例2と同様にして成形体10を作製した。

0210

(実施例11)
プラズマ生成ガスとしてアルゴンに変えて酸素(O2)を用いた以外は、実施例2と同様にして成形体11を作製した。

0211

(実施例12)
プラズマ生成ガスとしてアルゴンに変えてヘリウム(He)を用いた以外は、実施例2と同様にして成形体12を作製した。

0212

(実施例13)
プラズマ生成ガスとしてアルゴンに変えてネオン(Ne)を用いた以外は、実施例2と同様にして成形体13を作製した。

0213

(実施例14)
プラズマ生成ガスとしてアルゴンに変えてキセノン(Xe)を用いた以外は、実施例2と同様にして成形体14を作製した。

0214

(実施例15)
プラズマ生成ガスとしてアルゴンに変えてクリプトン(Kr)を用いた以外は、実施例2と同様にして成形体15を作製した。

0215

(比較例1)
イオン注入を行わない以外は、実施例1と同様にして成形体を作製した。すなわち、PETフィルム上にペルヒドロポリシラザンを含む層を形成し、成形体16とした。

0216

(比較例2)
PETフィルム上にペルヒドロポリシラザンを含む層を形成しない以外は、実施例1と同様にして成形体を作製した。すなわち、PETフィルムの表面にアルゴンをプラズマイオン注入して成形体17とした。

0217

(比較例3)
PETフィルムに、スパッタリング法により、厚さ60nmの窒化ケイ素(SiN)の膜を設け、成形体18を作製した。

0218

(比較例4)
実施例2で得られた成形物のペルヒドロポリシラザンを含む層にアルゴン(Ar)をプラズマ生成ガスとして用いてプラズマ処理を行い、成形体19を作製した。プラズマ処理は、実施例で用いた装置の印加電圧を0kVとしてプラズマイオン注入が起きない状態で行った。

0219

プラズマ処理の条件を以下に示す。
・プラズマ生成ガス:Ar
・ガス流量:100sccm
・Duty比:0.5%
・繰り返し周波数:1000Hz
・印加電圧:0kV
・RF電源:周波数13.56MHz、印加電力1000W
・チャンバー内圧:0.2Pa
・パルス幅:5μsec
・処理時間(イオン注入時間):5分間
・搬送速度:0.2m/min

0220

(比較例5)
プラズマ生成ガスとして酸素(O2)を用いた以外は、比較例4と同様にしてプラズマ処理を行い成形体20を作製した。

0221

実施例1〜5、7〜9、11〜15及び比較例2において、XPS(アルバックファイ社製)を用いて、表面から10nm付近の元素分析測定を行うことにより、それぞれのイオンが注入されたことを確認した。
なお、実施例6ではポリシラザン系化合物に含まれる窒素と注入された窒素イオンの区別が困難であり、実施例10及び実施例12の注入されたイオンをXPSで検出することはできないが、行った操作、他の実施例ではイオンが注入されたことが確認できたこと、ガスバリア性が向上したことなどを考慮すると、イオンが注入されたことは明らかである。

0222

下記第1表に、各実施例、比較例において用いたポリシラザン化合物の種類、成形物を得る際の加熱時間(分)、形成された層の膜厚(nm)、用いたプラズマ生成ガス、印加電圧(kV)をまとめて記載する。

0223

実施例1〜15、及び比較例1〜5で得られた成形体1〜20につき、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合(成形体17を除く)、膜密度(成形体17を除く)、水蒸気透過率、並びに全光線透過率を測定した。測定結果を下記第1表に示す。

0224

次に、実施例1〜15及び比較例1〜5の成形体1〜20について、折り曲げ試験を行い、クラックの発生の有無を確認した。結果を第1表に示す。
また、折り曲げ試験後における成形体1〜20について、水蒸気透過率を測定した。結果を第1表に示す。

0225

実施例

0226

第1表から、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在量全体に対する、酸素原子の存在割合が60〜75%、窒素原子の存在割合が0〜10%、ケイ素原子の存在割合が25〜35%であり、かつ、膜密度が、2.4〜4.0g/cm3である実施例の成形体1〜15は、上記の条件を満たさない比較例の成形体16〜20に比して、水蒸気透過率が小さく、高いガスバリア性を有していた。また、全光線透過率が高く、透明性に優れていた。
また、折り曲げ試験後において実施例の成形体1〜15はクラックの発生がみられず、無機膜(窒化ケイ素膜)を形成した比較例3に比して水蒸気透過率の上昇が少なく、耐折り曲げ性に優れていた。

0227

1a、1c・・・フィルム状の成形物
1b、1d・・・フィルム状の成形体
2a、2b・・・回転キャン
3a、3b・・・巻き出しロール
4・・・プラズマ放電用電極
5a、5b・・・巻き取りロール
6a、6b・・・送り出し用ロール
7a、7b・・・パルス電源
9a、9b・・・高電圧パルス
10a、10b・・・ガス導入口
11a、11b・・・チャンバー
13・・・中心軸
15・・・高電圧導入端子
20a、20b・・・ターボ分子ポンプ

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