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図面 (13)

課題・解決手段

列番号1〜4、13、及び14のいずれかの塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー、又は配列番号5〜9のいずれかの塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーは、配列番号10の塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーと共に用いてPCRを行うことにより、アンドロゲン受容体遺伝子中のCAGリピート領域を特異的に増幅でき、CAGリピート数を正確に評価できる。このため、男性型脱毛症の個体におけるフィナステリド治療効果予測、及び男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果の予測に有用である。

概要

背景

毛包は、胎生期において上皮間絨織相互作用により形成誘導される皮膚付属器である。発生後の毛包は初期発生を反復し、その基底部毛球部)において毛幹の産生を周期的に繰り返す。毛包の発生ばかりでなく、毛周期中も、毛包の多くの分子細胞間相互作用関与している。
男性型脱毛症(以下、「AGA」ということもある)では毛包の成長期が短縮することにより、毛組織の矮小化を引き起こすと考えられている。ヒトおよび霊長類一種であるベニガオザルでは、性成熟期に伴い部域特異的に前頭部から頭頂部にかけて特徴的な脱毛パターンを特徴とするAGAを誘発する。この部域特異的な毛周期の変調は、男性ホルモンが最大のトリガーとなると考えられている。

男性ホルモンは毛乳頭細胞核内受容体の一種であるアンドロゲン受容体(以下、「AR」ということもある)を介して、特定の遺伝子転写活性を調節して成長期の短縮およびアポトーシスの誘導により、脱毛症体毛硬毛化を引き起こすと考えられている。AGA発症部位の毛乳頭細胞ではAR発現が高く、男性ホルモン刺激に対する感受性が高いことが示唆されている。さらに、男性型脱毛症部位の毛乳頭ではII型リダクタゼ活性が高く、この酵素により血中テストステロンからAR結合活性が高いジヒドロテストステロン(DHT)へと変換されることが示されている。これらのことから、男性ホルモン依存的な脱毛現象特異性は、ARとII型5αリダクターゼの発現分布により説明されると考えられる。
ARはステロイドホルモン受容体ファミリーの一つであり、X染色体Xq11.2-12に位置している。このAR遺伝子は、90kb以上の長さであり、3つの主要な機能領域(N末端領域、DNA結合領域、およびアンドロゲン結合領域)をコードする。AR蛋白質のN末領域をコードしている第1エクソンには、ポリグルタミン配列をコードするCAG反復配列があり、遺伝的多型を有する。このCAGリピートが46〜53回反復するような極端に長い場合は、球脊性筋萎縮症を引き起こすことが知られており、逆に短い場合は前立腺腫瘍リスクファクターとなることなど、AR遺伝子のCAGリピート領域の多型と様々な病因について注目されている。さらに最近、ARのCAGリピート数と男性型脱毛症および女性多毛症との間に負の相関性があることが報告された。これらのことから、AR遺伝子のCAGリピート領域は、ARのアンドロゲンに対する感受性を調節することが示唆された。

これらの知見を基礎として、近年II型5αリダクターゼを特異的に阻害するフィナステリド製剤(プロペシアTM)が前立腺肥大治療薬として開発された。さらに、フィナステリドがAGA治療に非常に効果的であることが報告され、また大きな治療効果をあげている。フィナステリドによるAGA治療効果は、病状患者遺伝的背景に影響を受けると考えられることから、ARのアンドロゲンに対する感受性にも影響を受けることが考えられる。
本発明者等は最近、ARのアンドロゲンに対する感受性を調節すると考えられるCAGリピート領域の遺伝的多型がフィナステリドの治療効果に影響することを報告した(第26回日本臨床皮膚科学会総会)。AGAのリスクファクターまたはフィナステリド治療に対する感受性を分析するには、AR遺伝子の塩基配列を読み取ることが必要である。
塩基配列の決定にはポリメラーゼチェーンリアクションPCR)法の技術を応用して行われる。この技術を用いる場合、目標とする遺伝子領域を特異的に増幅し、かつ塩基配列読み取り手法に適した塩基対数増幅産物が得られるように、適切なプライマーを設計することが要求される。さらにゲノムDNAより塩基配列を決定する場合、ゲノム中の非転写領域に多数存在する類似配列を増幅しないことが求められるため、mRNA逆転写産物鋳型とする場合よりも高い特異性を持つプライマー設計が要求される。
また、AR遺伝子中のCAGリピート数を分析する他の方法として、目標領域を含むPCR増幅産物の分子量をキャピラリー電気泳動法などにより精密に測定する方法があげられる。この場合においても、ゲノムDNA中より高い特性を持って目標遺伝子配列を増幅させるプライマーが要求される。
AR遺伝子中のCAGリピート数を分析するための既存のプライマー配列として、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3に記載されたものが知られている。しかし、これらのプライマーを用いたPCRでは、非特異的な増幅産物が現われ、CAGリピート数の評価の精度が悪い。

概要

列番号1〜4、13、及び14のいずれかの塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー、又は配列番号5〜9のいずれかの塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーは、配列番号10の塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーと共に用いてPCRを行うことにより、アンドロゲン受容体遺伝子中のCAGリピート領域を特異的に増幅でき、CAGリピート数を正確に評価できる。このため、男性型脱毛症の個体におけるフィナステリドの治療効果の予測、及び男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果の予測に有用である。

目的

本発明は、AR遺伝子中のCAGリピート数を正確に分析できるPCRプライマーを提供する

効果

実績

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牽制数
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請求項1

列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号13、又は配列番号14に示される塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー

請求項2

配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、又は配列番号9に示される塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー。

請求項3

配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号13、又は配列番号14に示される塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーと、配列番号10に示される塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーとを備えるプライマーセット

請求項4

配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、又は配列番号9に示される塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーと、配列番号10に示される塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーとを備えるプライマーセット。

請求項5

ヒトゲノムDNAを鋳型として、請求項3又は4に記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、PCR増幅産物におけるCAGリピート数を決定する工程とを含む、アンドロゲン受容体遺伝子におけるCAGリピート数の決定方法

請求項6

ヒトゲノムDNAを鋳型として、請求項3又は4に記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、PCR増幅産物におけるCAGリピート数を基準値と比較する工程と、基準値より小さい場合に男性型脱毛症発症するリスクが高いと判定する工程とを含む、男性型脱毛症発症の予測方法

請求項7

ヒトゲノムDNAを鋳型として、請求項3又は4に記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、PCR増幅産物におけるCAGリピート数を決定する工程と、CAGリピート数が24より小さい場合に男性型脱毛症に発症するリスクが高いと判定する工程とを含む、男性型脱毛症発症の予測方法。

請求項8

ヒトゲノムDNAを鋳型としてPCRによりアンドロゲン受容体遺伝子のCAGリピート領域の全域を含む領域を増幅させる工程と、PCR増幅産物におけるCAGリピート数を決定する工程と、CAGリピート数が24より小さい場合に男性型脱毛症に発症するリスクが高いと判定する工程とを含む、男性型脱毛症発症の予測方法。

請求項9

ヒトゲノムDNAを鋳型として、請求項3又は4に記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、PCR増幅産物におけるCAGリピート数を基準値と比較する工程と、基準値以下の場合に男性型脱毛症におけるフィナステリド治療効果があると判定する工程とを含む、男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果の予測方法。

請求項10

(a)ヒトゲノムDNAを鋳型として、請求項3又は4に記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、(b)PCR増幅産物におけるCAGリピート数を決定する工程と、(c)CAGリピート数が24以下である場合に、男性型脱毛症においてフィナステリドを投与すれば毛髪の微増以上の効果があると判定し、CAGリピート数が22以下である場合に、男性型脱毛症においてフィナステリドを投与すれば毛髪の中程度増加以上の効果があると判定し、CAGリピート数が20以下である場合に、男性型脱毛症においてフィナステリドを投与すれば毛髪の高度増加以上の効果があると判定する工程とを含む、男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果の予測方法。

請求項11

(d)ヒトゲノムDNAを鋳型としてPCRによりアンドロゲン受容体遺伝子のCAGリピート領域の全域を含む領域を増幅させる工程と、(e)PCR増幅産物におけるCAGリピート数を決定する工程と、(f)CAGリピート数が24以下である場合に、男性型脱毛症においてフィナステリドを投与すれば毛髪の微増以上の効果があると判定し、CAGリピート数が22以下である場合に、男性型脱毛症においてフィナステリドを投与すれば毛髪の中程度増加以上の効果があると判定し、CAGリピート数が20以下である場合に、男性型脱毛症においてフィナステリドを投与すれば毛髪の高度増加以上の効果があると判定する工程とを含む、男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果の予測方法。

技術分野

0001

本発明は、アンドロゲン受容体遺伝子多型分析に資するPCR用プライマーに関するものである。さらに詳しくは、本発明は、主に、男性型脱毛症治療におけるフィナステリドの効果を診断する目的で、アンドロゲン受容体遺伝子のCAGリピート数解析するために用いるPCR用プライマーに関するものである。

背景技術

0002

毛包は、胎生期において上皮間絨織相互作用により形成誘導される皮膚付属器である。発生後の毛包は初期発生を反復し、その基底部毛球部)において毛幹の産生を周期的に繰り返す。毛包の発生ばかりでなく、毛周期中も、毛包の多くの分子細胞間相互作用関与している。
男性型脱毛症(以下、「AGA」ということもある)では毛包の成長期が短縮することにより、毛組織の矮小化を引き起こすと考えられている。ヒトおよび霊長類一種であるベニガオザルでは、性成熟期に伴い部域特異的に前頭部から頭頂部にかけて特徴的な脱毛パターンを特徴とするAGAを誘発する。この部域特異的な毛周期の変調は、男性ホルモンが最大のトリガーとなると考えられている。

0003

男性ホルモンは毛乳頭細胞核内受容体の一種であるアンドロゲン受容体(以下、「AR」ということもある)を介して、特定の遺伝子転写活性を調節して成長期の短縮およびアポトーシスの誘導により、脱毛症体毛硬毛化を引き起こすと考えられている。AGA発症部位の毛乳頭細胞ではAR発現が高く、男性ホルモン刺激に対する感受性が高いことが示唆されている。さらに、男性型脱毛症部位の毛乳頭ではII型リダクタゼ活性が高く、この酵素により血中テストステロンからAR結合活性が高いジヒドロテストステロン(DHT)へと変換されることが示されている。これらのことから、男性ホルモン依存的な脱毛現象特異性は、ARとII型5αリダクターゼの発現分布により説明されると考えられる。
ARはステロイドホルモン受容体ファミリーの一つであり、X染色体Xq11.2-12に位置している。このAR遺伝子は、90kb以上の長さであり、3つの主要な機能領域(N末端領域、DNA結合領域、およびアンドロゲン結合領域)をコードする。AR蛋白質のN末領域をコードしている第1エクソンには、ポリグルタミン配列をコードするCAG反復配列があり、遺伝的多型を有する。このCAGリピートが46〜53回反復するような極端に長い場合は、球脊性筋萎縮症を引き起こすことが知られており、逆に短い場合は前立腺腫瘍リスクファクターとなることなど、AR遺伝子のCAGリピート領域の多型と様々な病因について注目されている。さらに最近、ARのCAGリピート数と男性型脱毛症および女性多毛症との間に負の相関性があることが報告された。これらのことから、AR遺伝子のCAGリピート領域は、ARのアンドロゲンに対する感受性を調節することが示唆された。

0004

これらの知見を基礎として、近年II型5αリダクターゼを特異的に阻害するフィナステリド製剤(プロペシアTM)が前立腺肥大治療薬として開発された。さらに、フィナステリドがAGA治療に非常に効果的であることが報告され、また大きな治療効果をあげている。フィナステリドによるAGA治療効果は、病状患者遺伝的背景に影響を受けると考えられることから、ARのアンドロゲンに対する感受性にも影響を受けることが考えられる。
本発明者等は最近、ARのアンドロゲンに対する感受性を調節すると考えられるCAGリピート領域の遺伝的多型がフィナステリドの治療効果に影響することを報告した(第26回日本臨床皮膚科学会総会)。AGAのリスクファクターまたはフィナステリド治療に対する感受性を分析するには、AR遺伝子の塩基配列を読み取ることが必要である。
塩基配列の決定にはポリメラーゼチェーンリアクションPCR)法の技術を応用して行われる。この技術を用いる場合、目標とする遺伝子領域を特異的に増幅し、かつ塩基配列読み取り手法に適した塩基対数増幅産物が得られるように、適切なプライマーを設計することが要求される。さらにゲノムDNAより塩基配列を決定する場合、ゲノム中の非転写領域に多数存在する類似配列を増幅しないことが求められるため、mRNA逆転写産物鋳型とする場合よりも高い特異性を持つプライマー設計が要求される。
また、AR遺伝子中のCAGリピート数を分析する他の方法として、目標領域を含むPCR増幅産物の分子量をキャピラリー電気泳動法などにより精密に測定する方法があげられる。この場合においても、ゲノムDNA中より高い特性を持って目標遺伝子配列を増幅させるプライマーが要求される。
AR遺伝子中のCAGリピート数を分析するための既存のプライマー配列として、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3に記載されたものが知られている。しかし、これらのプライマーを用いたPCRでは、非特異的な増幅産物が現われ、CAGリピート数の評価の精度が悪い。

先行技術

0005

Ryan A. Irvine, Mimi C. Yu, Ronald K. et al. The CAG and GGCMicrosatellites of the Androgen Receptor Gene Are in Linkage Disequilibrium in Men with Prostate Cancer . Cancer Research, 55, 1937-1940, 1995
Nakao R, Yanase T, Sakai Y, et al. A Single Amino Acid Substitution (Gly743 + Val) in the Steroid-Binding Domain of the Human Androgen Receptor Leadsto Reifenstein Syndrome Journal of Clinical Endocrinology and Metabohsm. 77(1), 103-107, 2008
Sawaya ME and Shalita AR, Androgen receptor polymorphisms (CAG repeat lengths) in androgenetic alopecia, hirsutism, and acne; J Cutaneous Medicine and Surgery, 3(1), 9-15, 1998

発明が解決しようとする課題

0006

本発明は、AR遺伝子中のCAGリピート数を正確に分析できるPCRプライマーを提供することを課題とする。また、本発明は、高精度で男性型脱毛症の発症予測できる方法、及び高精度で男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果を予測できる方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0007

本発明者は上記課題を解決するために研究を重ね、AR遺伝子のCAGリピート領域増幅用の公知のプライマーと組み合わせてPCRを行うことにより、AR遺伝子中のCAGリピートを含む領域を特異的に増幅することができ、それにより非常に正確にAR遺伝子中のCAGリピート数を決定できるプライマーを見出した。
また、ヒトゲノムDNAのAR遺伝子中のCAGリピート数が24より小さい場合に、通常より、AGA発症リスクが高くなると予測できることを見出した。
さらに、ヒトゲノムDNAのAR遺伝子中のCAGリピート数が27以下の場合に、AGAに対するフィナステリド投与により毛髪量微増以上の効果が得られると予測できることを見出した。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記のプライマー、男性型脱毛症発症の予測方法、及び男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果の予測方法を提供する。

0008

項1.
列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号13、又は配列番号14に示される塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー。
項2.
配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、又は配列番号9に示される塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー。
項3.
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号13、又は配列番号14に示される塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーと、配列番号10に示される塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーとを備えるプライマーセット
項4.
配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、又は配列番号9に示される塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーと、配列番号10に示される塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーとを備えるプライマーセット。
項5.
ヒトゲノムDNAを鋳型として、項3又は4に記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、PCR増幅産物におけるCAGリピート数を決定する工程とを含む、アンドロゲン受容体遺伝子におけるCAGリピート数の決定方法
項6.
ヒトゲノムDNAを鋳型として、項3又は4に記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、PCR増幅産物におけるCAGリピート数を基準値と比較する工程と、基準値より小さい場合に男性型脱毛症を発症するリスクが高いと判定する工程とを含む、男性型脱毛症発症の予測方法。
項7.
ヒトゲノムDNAを鋳型として、項3又は4に記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、PCR増幅産物におけるCAGリピート数を決定する工程と、CAGリピート数が24より小さい場合に男性型脱毛症を発症するリスクが高いと判定する工程とを含む、男性型脱毛症発症の予測方法。
項8.
ヒトゲノムDNAを鋳型としてPCRによりアンドロゲン受容体遺伝子のCAGリピート領域の全域を含む領域を増幅させる工程と、PCR増幅産物におけるCAGリピート数を決定する工程と、CAGリピート数が24より小さい場合に男性型脱毛症を発症するリスクが高いと判定する工程とを含む、男性型脱毛症発症の予測方法。
項9.
ヒトゲノムDNAを鋳型として、項3又は4に記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、PCR増幅産物におけるCAGリピート数を基準値と比較する工程と、基準値以下の場合に男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果があると判定する工程とを含む、男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果の予測方法。
項10.
(a) ヒトゲノムDNAを鋳型として、項3又は4に記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、
(b) PCR増幅産物におけるCAGリピート数を決定する工程と、
(c) CAGリピート数が24以下である場合に、男性型脱毛症においてフィナステリドを投与すれば毛髪の微増以上の効果があると判定し、
CAGリピート数が22以下である場合に、男性型脱毛症においてフィナステリドを投与すれば毛髪の中程度増加以上の効果があると判定し、
CAGリピート数が20以下である場合に、男性型脱毛症においてフィナステリドを投与すれば毛髪の高度増加以上の効果があると判定する工程と
を含む、男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果の予測方法。
項11.
(d) ヒトゲノムDNAを鋳型としてPCRによりアンドロゲン受容体遺伝子のCAGリピート領域の全域を含む領域を増幅させる工程と、
(e) PCR増幅産物におけるCAGリピート数を決定する工程と、
(f) CAGリピート数が24以下である場合に、男性型脱毛症においてフィナステリドを投与すれば毛髪の微増以上の効果があると判定し、
CAGリピート数が22以下である場合に、男性型脱毛症においてフィナステリドを投与すれば毛髪の中程度増加以上の効果があると判定し、
CAGリピート数が20以下である場合に、男性型脱毛症においてフィナステリドを投与すれば毛髪の高度増加以上の効果があると判定する工程と
を含む、男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果の予測方法。

発明の効果

0009

本発明のプライマーは、例えば、非特許文献3に記載のAR遺伝子増幅用のプライマーと組み合わせてPCRを行うことにより、AR遺伝子中のCAGリピートを含む領域を特異的に増幅することができる。これにより、増幅産物のダイレクトシーケンシングにより、或いは、増幅産物の大きさを電気泳動などで決定することにより、CAGリピート数を正確に決定したり、比較したりすることができる。従って、本発明のプライマーは、個体におけるAGA発症の予測、及びAGAにおけるフィナステリド治療効果の予測などに有用である。
また、本発明の男性型脱毛症発症の予測方法によれば、PCRという簡単な方法で、精度良く、男性型脱毛症の発症を予測できる。さらに、本発明の男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果の予測方法によれば、PCRという簡単な方法で、精度良く、男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果を予測できる。

図面の簡単な説明

0010

AR遺伝子の塩基配列と、プライマーに対応する領域を示す図である。
既存のプライマーセット(Fw/R0)、本発明のプライマーセット(Fw/R1)及び(Fw/R2)を用いた場合のPCR増幅産物の電気泳動の結果を示す図である。
既存のプライマーセット(Fw/R0)、並びに本発明のプライマーセット(Fw/R1)、及び(Fw/R2)をそれぞれ用いたPCRによるAR遺伝子のダレクトシーケンシングで発生した判読不能塩基の位置を示す図である。
プライマーR1において5’末端、3’末端に変更を加えたプライマーを用いた場合のPCR増幅産物の電気泳動の結果を示す図である。
プライマーR2において5’末端、3’末端に変更を加えたプライマーを用いた場合のPCR増幅産物の電気泳動の結果を示す図である。
日本人の男性型脱毛症におけるAR遺伝子CAGリピート数の頻度を示す図である。
(A)は、男性型脱毛症の発症年齢と発症頻度との関係を示す図である。(B)は、分析対象群のCAGリピート数と発症自覚年齢との関係を示す図である。
(A)は、フィナステリドの治療効果スコアとCAGリピート数との関係を示す図である。(B)は、フィナステリドの治療効果スコアとフィナステリド投与期間との関係を示す図である。
AR遺伝子のCAGリピート数とフィナステリド治療効果との相関を示す図である。
CAGリピート数とフィナステリド治療効果スコアとの関係を示す図である。
日本人男性AGA患者(A)と正常男性(B)のCAGリピート数の分布を示す図である。
正常男性およびAGA患者のCAGリピート平均数SD値より求めた仮想的な正規分布曲線を示す。Aは正常男性群のSDが実測値(1.997)である場合であり、BはAGA群と同じ(2.871)である場合を示す。
Aは、CAGリピート数とP(H|D)値との関係を示す図である。Bは、任意のCAGリピート数におけるAGA疾患確率曲線を示す。

発明を実施するための最良の形態

0011

以下、本発明を詳細に説明する。
(I)プライマー
本発明の第1のプライマーは、配列番号1〜4、13および14のいずれかの塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーである。配列番号2は配列番号1において、3’末端にGが1塩基付加された配列であり、配列番号3は配列番号1において5’末端から1塩基削除された配列であり、配列番号4は配列番号1において、5’末端にCが1塩基付加された配列である。また配列番号13は配列番号1において、3’末端から1塩基削除され、かつ5’末端にCが1塩基付加された配列であり、配列番号14は配列番号1において、3’末端から1塩基削除され、かつ5’末端からも1塩基削除された配列である。
これらのプライマーの塩基数は、最大30であることが好ましく、最大25であることがより好ましく、最大22であることがさらにより好ましい。5’末端に付加されることがある塩基配列は特に限定されず任意の配列とすることができる。
本発明の第2のプライマーは、配列番号5〜9のいずれかの塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーである。配列番号6は配列番号5において、3’末端から1塩基削除された配列であり、配列番号7は、配列番号5において、3’末端にCが1塩基付加された配列であり、配列番号8は配列番号5において5’末端から1塩基削除された配列であり、配列番号9は配列番号5において、5’末端にGが1塩基付加された配列である。
これらのプライマーの塩基数は、最大30であることが好ましく、最大25であることがより好ましく、最大22であることがさらにより好ましい。5’末端に付加されることがある塩基配列は特に限定されず任意の配列とすることができる。
上記説明した本発明のプライマーは、化学合成により容易に製造することができる。

0012

(II)AR遺伝子におけるCAGリピート数の決定方法
本発明のアンドロゲン受容体遺伝子におけるCAGリピート数の決定方法は、ヒトゲノムDNAを鋳型として、配列番号10に示される塩基配列を3’末端に含む最大30塩基のプライマーと、上記説明した本発明の第1又は第2のプライマーとのセット(以下、「本発明のプライマーセット」ということもある。)を用いてPCRを行う工程と、PCR増幅産物におけるCAGリピート数を決定する工程とを含む方法である。
配列番号10の塩基配列を3’末端に含むプライマーの塩基数は、最大30であることが好ましく、最大25であることがより好ましく、最大22であることがさらにより好ましい。5’末端に付加されることがある塩基配列は特に限定されず任意の配列とすることができる。このプライマーは、フォワードプライマーとして使用され、本発明の第1又は第2のプライマーは、リバースプライマーとして使用される。

0013

対象者
対象者は特に限定されない。男性型脱毛症に罹患しているヒトの他、男性型脱毛症の発症リスクを知る目的で正常な頭髪を有する人も好適な対象となる。特に日本人男性が好適な対象である。さらに、CAGリピート数は女性の多毛症とも負の相関性を有することから、女性も対象とすることができる。
被検試料
被検ヒト試料は、DNAを抽出できるものであればよく、例えば、毛髪、血液、頬粘膜細胞などが挙げられる。
毛髪は、頭皮生着しているものを採取して使用してもよく、抜け落ちたものを使用してもよい。毛髪からのゲノムDNAの抽出は常法により行うことができる。例えば、毛髪をエタノール洗浄して皮脂汚れを除去した後、例えばISOHAIRキット(Nippon Gene)などの市販のキットを用いて毛髪溶解液を調製し、フェノールクロロフォルム法などで抽出したDNAをそのまま、またはDNeasy Blood & Tissue Kit(QUIAGEN)などのDNA精製キット等を用いて精製した後、PCRに用いることができる。

0014

血液からのゲノムDNAの抽出は、例えば、GenfindTMV2(BECKMANCOULTER)、QuickGene sp kit DNA whole blood(FUJI FILM)などの市販のキットを用いて行うことができる。また、頬粘膜細胞からのゲノムDNAの抽出は、一般的なフェノールクロロフォルム抽出法や、Ampdirect Plus(島津バイオテク社)、Mag ExtractorTM-Genome-(TOYOBO)などの市販のキットを用いて行うことができる。抽出したDNAはそのまま、又は精製した後、PCRに用いることができる。
PCR
PCRを行うに当たり、先ず、上記のプライマーセット、DNA又は組織抽出液、及び適切な反応溶液を混合して熱変性させる。反応溶液は、一般的なPCR反応溶液を使用することができ、市販のキット(AmpliTaq GoldR Fast PCR Master Mix, UP、アプライドバイオシステムズ)も使用できる。また、例えば、Gold TaqDNAポリメラーゼ濃度を約5〜500 units/ml、好ましくは約25〜100 units/ml とし;dNTP濃度を約50〜500 μM、好ましくは約150〜300 μM とし;Mg2+濃度を約0〜100 mM、好ましくは約5〜25 mMとする条件が挙げられる。反応溶液中のプライマー濃度は、例えば約50〜5,000 nMとすればよい。
また、熱サイクル条件も、特に限定されず、PCR装置毎に最適条件を定めればよい。例えば、以下の条件が挙げられる。

0015

初期熱変性:通常85〜105℃程度、好ましくは90〜98℃程度で、通常60秒間〜15分間程度、好ましくは8分間〜12分間程度加熱する。
・2本鎖DNAの1本鎖DNAへの熱変性:通常85〜105℃程度、好ましくは90〜98℃程度で、通常15秒間〜10分間程度、好ましくは20秒間〜1分間程度加熱する。
アニーリング:通常50〜70℃程度、好ましくは60〜65℃程度で、通常15秒間〜2分間程度、好ましくは20秒間〜1分間程度加熱する。
・DNA伸長反応:通常60〜80℃程度、好ましくは70〜75℃程度で、通常15秒間〜2分間程度、好ましくは20秒間〜1分間程度加熱する。
アニーリングとDNA伸長反応は分けずに同時に行うことも可能である。
この反応を、通常10〜60サイクル程度、好ましくは20〜40サイクル程度行うことにより、目的DNAを検出可能な程度に増幅することができる。

0016

CAGリピート数の決定
次いで、PCR増幅産物におけるCAGリピート数を決定する。PCR増幅産物の塩基配列を決定することにより、CAGリピート数を決定することができる。また、キャピラリー電気泳動法のような高精度の電気泳動、Single Strand Conformation Polymorphism(SSCP)法などにより増幅産物のサイズを分析することによっても、CAGリピート数を決定することができる。
健常毛髪を有するヒトにおいては、CAGリピート数が少ないほど、男性型脱毛症や女性多毛症の発症リスクが高くなる。また、男性型脱毛症のヒトにおいては、CAGリピート数が少ないほど、フィナステリドによる高い治療効果が得られる。このため、本発明のCAGリピート数の決定方法は、個体における男性型脱毛症や女性多毛症の発症の予測や、男性型脱毛症の個体におけるフィナステリドによる治療効果の予測に有用である。

0017

(III)男性型脱毛症発症の予測方法
本発明の男性型脱毛症発症の予測方法は、ヒトゲノムDNAを鋳型として、上記説明した本発明のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、PCR増幅産物におけるCAGリピート数を基準値と比較する工程と、基準値より小さい場合に男性型脱毛症を発症するリスクが高いと判定する工程とを含む方法である。
基準値は例えば24であり、24より小さい場合に、発症リスクが男性の平均発症リスクより高いと判定できる。また、22より小さい場合、発症リスクが男性の平均発症リスクの2倍以上と判定することができ、21より小さい場合、発症リスクが男性の平均発症リスクの3倍以上と判定することができる。
比較に際しては、例えばPCR増幅産物の塩基配列を決定することより、CAGリピート数を決定した上で、基準値と比較することができる。即ち、本発明は、ヒトゲノムDNAを鋳型として、上記説明した本発明のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、PCR増幅産物におけるCAGリピート数を決定する工程と、CAGリピート数が24より小さい場合に男性型脱毛症に発症するリスクが高いと判定する工程とを含む男性型脱毛症発症の予測方法を包含する。

0018

また、基準となるPCR増幅産物のサイズと被検試料のPCR増幅産物のサイズとを、直接対比することによっても、CAGリピート数を基準値と比較することができる。例えば、両PCR増幅産物を電気泳動に供し、泳動状態目視で比較したり、両PCR増幅産物のサイズをSingle Strand Conformation Polymorphism(SSCP)法などで分析して比較することによっても、CAGリピート数を基準値と比較することができる。ここで、基準となるPCR増幅産物は、AR遺伝子のCAGリピート数が基準値であることが分っているヒトゲノムを鋳型として、被検試料のPCR増幅に用いたのと同じプライマーセットを用いてPCRを行って得られるPCR増幅産物である。
さらに、本発明方法では、上記説明した本発明のプライマーセットに限らず、AR遺伝子のCAGリピート配列の全域を含む領域を増幅させることができる従来公知のPCRプライマーセットを用いることができる。AR遺伝子のCAGリピート領域の全域を含む領域は特に限定されないが、AR遺伝子の全長領域であってもよい。このようなプライマーセットとして、例えば、実施例の項目に記載のフォワードプライマーFWとリバースプライマーROとのセット(非特許文献3)が挙げられる。

0019

AR遺伝子のCAGリピート配列は、配列番号15に示すヒトAR遺伝子エクソン1の塩基配列(遺伝子データ番号; M27423.1GI:178897、参照文献;JOURNALProc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86 (23), 9534-9538 (1989))において、通常、塩基番号250から始まる。CAGリピート配列の末端は、リピート数によって異なる。
即ち、本発明は、ヒトゲノムDNAを鋳型としてPCRによりAR遺伝子のCAGリピート配列の全域を含む領域を増幅させる工程と、PCR増幅産物におけるCAGリピート数を決定する工程と、CAGリピート数が24より小さい場合に男性型脱毛症に発症するリスクが高いと判定する工程とを含む男性型脱毛症発症の予測方法も包含する。この場合、CAGリピート数は22より小さいことがさらに好ましく、21より小さいことがより好ましい。
対象者は、男性であればよく、特に限定されないが、特に日本人男性が好適な対象である。被検試料、DNAの抽出方法、PCRの方法、CAGリピート数の決定方法は、「(II)CAGリピート数の決定」の項目で述べた通りである。

0020

(IV)フィナステリドの治療効果の予測方法
本発明の男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果の予測方法は、ヒトゲノムDNAを鋳型として、上記説明した本発明のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、PCR増幅産物におけるCAGリピート数を基準値と比較する工程と、基準値以下の場合に男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果があると判定する工程とを含む方法である。
基準値は例えば24であり、24以下である場合に、フィナステリドの治療効果があると判定できる。効果があるとは、毛髪量が微増以上に増大することをいう。また、22以下である場合、毛髪量が中程度以上に増大すると判定することができる。さらに、20以下である場合、毛髪量が高度以上に増大すると判定することができる。本発明における「微増」「中程度増大」「高度増大」は、「 Kawashima M, Hayashi MIgarashi A et al. Finasteride in the treatment of Japanese men with male pattern hair loss. Eur. J. Dermatol. 2004; 14: 247-54」、及び「Kaufman KD, Olsen EA, Whiting D et al. Finasteride in the treatment of men with androgenetic alopecia. J. American Acad. Dermatol. 1998; 39: 578-89」に定義されている。

0021

比較に際しては、例えばPCR増幅産物の塩基配列を決定することより、CAGリピート数を決定した上で、基準値と比較することができる。
即ち、本発明は、
(a)ヒトゲノムDNAを鋳型として、上記説明した本発明のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、
(b) PCR増幅産物におけるCAGリピート数を決定する工程と、
(c) CAGリピート数が24以下である場合に、男性型脱毛症に対してフィナステリドを投与すれば毛髪の微増以上の効果があると判定し、
CAGリピート数が22以下である場合に、男性型脱毛症に対してフィナステリドを投与すれば毛髪の中程度増加以上の効果があると判定し、
CAGリピート数が20以下である場合に、男性型脱毛症に対してフィナステリドを投与すれば毛髪の高度増加以上の効果があると判定する工程とを含む男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果の予測方法も包含する。

0022

また、基準となるPCR増幅産物のサイズと被験試料のPCR増幅産物のサイズとを、直接対比することによっても、CAGリピート数を基準値と比較することができる。直接対比の方法は、「(III)男性型脱毛症発症の予測方法」の項目で述べた通りである。
さらに、本発明方法は、上記説明した本発明のプライマーセットに限らず、AR遺伝子のCAGリピート配列の全域を含む領域を増幅させることができる従来公知のPCRプライマーセットを用いることができる。
即ち、本発明は、
(d)ヒトゲノムDNAを鋳型としてPCRによりAR遺伝子のCAGリピート配列の全域を含む領域を増幅させる工程と、
(e) PCR増幅産物におけるCAGリピート数を決定する工程と、
(f) CAGリピート数が24以下である場合に、男性型脱毛症に対してフィナステリドを投与すれば毛髪の微増以上の効果があると判定し、
CAGリピート数が22以下である場合に、男性型脱毛症に対してフィナステリドを投与すれば毛髪の中程度増加以上の効果があると判定し、
CAGリピート数が20以下である場合に、男性型脱毛症に対してフィナステリドを投与すれば毛髪の高度増加以上の効果があると判定する工程とを含む、男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果の予測方法も包含する。この場合、CAGリピート数は24より小さいことが好ましく、20より小さいことがより好ましい。
対象となるヒトは、男性であればよく特に限定されないが、特に日本人男性が好適な対象である。被検試料、DNAの抽出方法、PCRの方法、CAGリピート数の決定方法は、「(II)CAGリピート数の決定」の項目で述べた通りである。

0023

以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
後述する各実施例で行った毛髪からのゲノムDNAの抽出方法、使用したプライマーの塩基配列、PCR条件、電気泳動方法は、次の通りである。
(1)毛髪ゲノムDNAの抽出
採取された毛髪を99.5%エタノール(和光純薬)で洗浄し、皮脂および整髪料等を除去した。その後、約1 mm程度に切断し、ISOHAIR(ニッポンジーン)を用いてゲノムDNAを抽出、及び精製した。

0024

(2)プライマー
以下の塩基配列からなるプライマー(本件発明者らが設計し、アプライドバイオシステムズが合成した)を用いて、AR遺伝子のPCR増幅を行った。
FW ; 5’-TCCAGAGCGTGCGCGAAGTG-3’ (配列番号10)
R0 ; 5’-GCCTGTGGGGCCTCTACGAT-3’ (配列番号11)
R1 ; 5’-TCCAGGGCCGACTGCGGCTGT-3’ (配列番号1)
R1 (3’-1); 5’-TCCAGGGCCGACTGCGGCTG-3’ (配列番号12)
R1 (3’+1); 5’-TCCAGGGCCGACTGCGGCTGTG-3’(配列番号2)
R1 (5’-1); 5’-CCAGGGCCGACTGCGGCTGT-3’ (配列番号3)
R1 (5’+1); 5’-CTCCAGGGCCGACTGCGGCTGT-3’(配列番号4)
R1 (3’-1, 5’+1); 5’-CTCCAGGGCCGACTGCGGCTG-3’ (配列番号13)
R1 (3’-1, 5’-1); 5’-CCAGGGCCGACTGCGGCTG-3’ (配列番号14)

R2 ; 5’-ATCCAGGACCAGGTAGCCTG-3’ (配列番号5)
R2 (3’-1); 5’-ATCCAGGACCAGGTAGCCT-3’ (配列番号6)
R2 (3’+1); 5’-ATCCAGGACCAGGTAGCCTGC-3’ (配列番号7)
R2 (5’-1); 5’-TCCAGGACCAGGTAGCCTG-3’ (配列番号8)
R2 (5’+1); 5’-GATCCAGGACCAGGTAGCCTG-3’ (配列番号9)

0025

Fwは非特許文献3に記載のフォワードプライマーであり、R0は同文献に記載のリバースプライマーである。
また、R1、R1 (3’-1)、R1 (3’+1)、R1 (5’-1)、R1 (5’+1)、R2、R2 (3’-1)、R2 (3’+1)、R2 (5’-1)、R2 (5’+1)は、それぞれリバースプライマーである。(3’ -1)はそのプライマーの3’末端から1塩基削除した塩基配列を有することを示し、(3’ +1)はそのプライマーの3’末端に1塩基付加した塩基配列を有することを示し、(5’ -1)はそのプライマーの5’末端から1塩基削除した塩基配列を有することを示し、(5’ +1)はそのプライマーの5’末端に1塩基付加した塩基配列を有することを示す。

0026

(3)PCR条件
PCR反応は、以下の反応条件にてGeneAmp 9700(アプライドバイオシステムズ)を用いて行った。PCR反応の温度条件は、全てのプライマーにおいて共通とした。
(3-1)
ABIAmpliTaq Gold DNA polymerase.(アプライドバイオシステムズ)
10×PCRバッファー 5.0 μl
dNTP Mix 200 μM
フォワードプライマー400 nM
リバースプライマー400 nM
鋳型DNA 100 ng
Gold Taq Polymerase 2.5 U
蒸留したMili-Q 水を用いて合計50.0μlにメスアップした。
(3-2)PCR反応プログラム
95℃で10分間の初期熱変性
以下を30サイクル
熱変性94℃で30秒
アニーリング62℃で30秒
伸長72℃で30秒
最後の伸長72℃で7分間、次いで4℃で保存

0027

(4)アガロースゲル電気泳動
PCR増幅産物は、3%アガロースゲルを用いてMupidスラブゲル電気泳動装置(アドバンス)により電気泳動を行った。分子量マーカーには100 bpラダーを用いた。泳動後のゲル臭化エチジウム(和光純薬社)で染色し、紫外線イルミネーター写真撮影装置写真撮影した。

0028

実施例1
特異的にゲノムAR遺伝子のCAGリピート領域をPCR増幅するプライマーの設計
公開されているゲノム塩基配列(NM000044,GI21322251)情報を用いて、ゲノム塩基配列中の特異性およびフォワードプライマーとのアニーリング温度整合性の観点よりリバースプライマーを設計した。
図1に、AR遺伝子の部分塩基配列を示す。図1において、非特許文献3において報告されているフォワードプライマーに対応する領域をFwと示し、同文献において報告されているリバースプライマーに対応する領域をR0と示した。
今回用いた公開塩基配列情報には22回のCAGリピートを含む。ヒト頭髪より抽出したゲノムDNAをテンプレートとして、非特許文献3に記載された既存のプライマーセット(Fw/R0)、プライマーセット(Fw/R1)、及びプライマーセット(Fw/R2)をそれぞれ用いてPCR増幅を行った。電気泳動の結果を図2に示す。
既存のプライマーセット(Fw/R0)を用いた場合、239 bpの目標増幅産物より小さな約100 bpの非特異的な増幅産物が検出された。これに対して、本発明のプライマーR1とプライマーFwとを組み合わせた場合は、292 bpの目標増幅産物のみ検出され、非特異的な増幅産物は検出されなかった。また、本発明のプライマーR2とプライマーFwとを組み合わせた場合は、254bpの目標増幅産物のみ検出され、非特異的な増幅産物は検出されなかった。なお、239bp、292bp、254bpの各数値は、AR遺伝子配列とプライマー対応領域の位置とから予測した値である。
非特異的な増幅産物は、ダイレクトシーケンシングによるCAGリピート数分析において、良好な結果を阻害する要因となる。本発明のプライマーを用いた場合は、単一バンドの増幅産物が得られたことから、増幅産物の精製を行わずにダイレクトシーケンシング法による塩基配列決定が可能となった。

0029

実施例2
本発明のプライマー配列による塩基配列読み取りにおける有効性
既存のプライマーセット(Fw/R0)、並びに本発明のプライマーセット(Fw/R1)、及び(Fw/R2)をそれぞれ用いたPCRによるAR遺伝子のダレクトシーケンシングで発生した判読不能塩基の位置を図3に示す。図3中、矢印で示したのがCAGリピート配列中に発生した判別不能塩基であり、矢尻で示したのがその他の領域に発生した判別不能塩基である。
塩基配列をダイレクトシーケンシングで判読する場合、使用するプライマー配列付近を読み取ることが原理的に難しい。既存のプライマーセット(Fw/RO)は、目的とするCAGリピート領域付近に設定されているため、目標とするCAGリピート領域中にも、その他の領域にも判読不能塩基が発生した(図3A)。
そこで、目標配列よりも数十から数百塩基対離れた領域に読み取り用プライマーを設定することとした。既存リバースプライマーROより下流にリバースプライマーR1、R2を設計し、ダイレクトシーケンシングを行うと目標とするCAG領域中に判別不能塩基は出現しないことが示された(図3B、図3C)。

0030

実施例3
新規発明プライマーR1の特性およびプライマー塩基配列の特異性保持範囲
リバースプライマーR1の3’末端から1塩基削除したプライマー(R1(3’-1))、R1の3’末端に1塩基付加したプライマー(R1(3’+1))、R1の5’末端から1塩基削除したプライマー(R1(5’-1))、R1の5’末端に1塩基付加したプライマー(R1(5’+1))、R1の3’末端から1塩基削除するとともに5’末端に1塩基付加したプライマー(R1(3’-1,5’+1))、又はR1の3’末端から1塩基削除するとともに5’末端から1塩基削除したプライマー(R1(3’-1,5’-1))と、フォワードプライマーFwとのセットを用いてPCR及び電気泳動を行った。電気泳動の結果を図4に示す。
プライマーセット(Fw/R1)を用いた場合は非特異的なPCR産物は発生しなかった。しかし、R1プライマーの3’側から1塩基を減らすと、非特異的なバンドが2本出現した。逆に3’側に1塩基を追加した場合は、非特異的な増幅産物は発生しなかった。また、R1プライマーの5’側に1塩基追加しても、削除しても非特異的な増幅産物は発生しなかった。
また、R1プライマーの3’側から1塩基削除するとともに5’側に1塩基追加した場合も、R1プライマーの3’側から1塩基削除するとともに5’側からも1塩基削除した場合も、非特異的な増幅産物は発生しなかった。

0031

実施例4
新規発明プライマーR2の特性およびプライマー塩基配列の特異性保持範囲
リバースプライマーR2の3’末端から1塩基削除したプライマー(R2(3’-1))、R2の5’末端から1塩基削除したプライマー(R2(5’-1))、R2の3’末端に1塩基付加したプライマー(R2(3’+1))、R2の5’末端に1塩基付加したプライマー(R2(5’+1))と、フォワードプライマーFwとのセットを用いてPCR及び電気泳動を行った。電気泳動の結果を図5に示す。
図5から明らかなように、いずれのプライマーを用いた場合も、非特異的増幅産物は発生せず、単一バンドが観察された。

0032

実施例5
CAGリピート数とフィナステリドの治療効果との関係
(1)方法
(1-1)フィナステリドの治療効果判定方法
初診時において18から50歳の人であって、男性型脱毛症を主訴とし、臨床診断として男性型脱毛症のNorwood-Hamilton分類II、IIa、 IIv、III、IIIa、IIIv、VI,およびV型の症状を示す症例を対象とした。
対象とした患者に対して、1.0mg/dayのフィナステリドを48週間以上投与し、48週間経過後来院し、かつ経過観察のための写真撮影を承諾した症例にフィナステリド治療効果判定を実施した。
表1に対象患者の特徴を示す。分析対象の初診時平均年齢±SDは40.0±7.5歳(18-50)であった。平均罹患期間±SDは5.4±2.9年であった。初診時よりフィナステリド投与による治療効果判定までの平均期間±SDは74.0±13.1週間であった。
また、表2に、初診時における全症例をNHスケール(Ann NY Acad Aci.53:708-728、South Med J.68:1359-1365)により分類した場合の各型の比率を示す。

0033

0034

0035

初診時の脱毛主訴および臨床診断より、頭頂部および前頭部ヘアライン部を一定の角度より写真撮影し、これをベースラインとした。全ての撮影において、50 mm接写レンズ付きデジタルカメラにて写真撮影を行った。治療効果判定にはKawashima et al. の方法(Kawashima M, Hayashi MIgarashi A et al. Finasteride in the treatment of Japanese men with male pattern hair loss. Eur. J. Dermatol. 2004; 14: 247-54)とKaufman et al.の方法(Kaufman KD, Olsen EA, Whiting D et al. Finasteride in the treatment of men with androgenetic alopecia. J. American Acad. Dermatol. 1998; 39: 578-89)を一部改変した方法を用い、毛髪研究者2名および医師1名により治療前後の写真による目視判定を行った。

0036

(1-2)遺伝子分析用毛髪検体の採取とゲノムDNA抽出のための前処理方法
初診時においてフィナステリド効果判定試験の対象となり、かつ遺伝子解析インフォームドコンセントを得た229症例に対して、アンドロゲン受容体遺伝子のCAGリピート多型分析を行った。
アンドロゲン受容体ゲノム塩基配列解析には、外科用持針器または毛抜きにより根本より抜去し、外毛根鞘の一部を含む毛髪(頭髪または体毛)を用いた。毛髪は99.5%エタノールにより皮脂分と整髪料を洗浄除去し、他者検体へのコンタミネーションを防ぐために、ビニールパックに個別包装した。毛髪検体は、使い捨ての片刃カミソリ刃を用いて、0.5 -1.0 mm程度の長さになるように細断した後にIsoHairキット(Nippon Gene, Tokyo, Japan)の添付手順書に従ってDNA抽出を行った。DNA抽出の全行程について、個別の滅菌済みプラスチック皿試験チューブ内で処理を行った。

0037

(1-3)毛髪検体ゲノムDNAのPCR増幅およびCAGリピート数分析方法
抽出されたゲノムDNAより、AR遺伝子第1エクソンのCAGリピート数を含む領域をPCR法にて増幅し、増幅産物のダイレクトシーケンシング法によりCAGリピート数を分析した。PCR増幅には、プライマーR1とF0とのセット、及びR2とF0とのセットをそれぞれ使用し、PCR増幅はABI-9600(ABI)を用いてPCR増幅した。

0038

(1-3-1)PCR条件
PCR反応の条件は以下の(i)および(ii)の条件を採用した。
(i)
ABIAmpliTaq GoldDNAポリメラーゼ(アプライドバイオシステムズ)
10×PCRバッファー 5.0 μl
dNTP Mix 200 μM
フォワードプライマー400 nM
リバースプライマー400 nM
鋳型DNA 100 ng
GoldTaqポリメラーゼ2.5 U
滅菌Mili-Q 水で合計50.0 μlにメスアップ
(ii) PCR反応プログラム
95℃で10分間の初期熱変性
以下を30サイクル
熱変性94℃で30秒
アニーリング62℃で30秒
伸長72℃で30秒
最後の伸長72℃で7分間、次いで4℃で保存

0039

(1-3-2)アガロースゲル電気泳動・塩基配列決定
反応増幅産物をアガロースゲル電気泳動(NUGEL、Mupid)し、増幅を確認した。
増幅を確認したPCR産物(4.0〜10.0 ng相当)を鋳型とし、BigDye Termination Cycling Sequencing Kit (ABI)の手順書に従って、3100-Avante Genetic Analyzer (ABI) を用いてダイレクトシーケンシングを行い、塩基配列データよりCAGリピート数を計測した。

0040

(1-4)統計検定の方法
有意性は、Student'st検定により判定した。P値が0.05以下である場合に有意であると判定した。効果判定スコアに対するCAGリピート数の分布データ単回帰分析により回帰直線を得た。

0041

(2)結果
(2-1)AR遺伝子CAGリピート数
図6に、AR遺伝子のCAGリピート数の分布を示す。CAGリピート数の分布は正規分布に近く、最頻値は21である。AR遺伝子のCAGリピート数の最小値は16リピート、最大値は32リピートであり、平均CAGリピート数±標準偏差は22.1±2.7であった。
また、図7(A)に、分析対象群の発症自覚年齢の分布を示す。その分布はほぼ正規分布を示していた。発症自覚の平均年齢±標準偏差は、30.7±10.0歳であり、その度数分布の最頻度は28歳であった。発症自覚年齢ごとの平均CAGリピート数はほぼ一定であった。
また、図7(B)に、分析対象群のCAGリピート数と発症自覚年齢との関係を示す。発症年齢とCAGリピート数に有意な相関性を認めなかった。

0042

(2-2)AR遺伝子CAGリピート数とフィナステリド治療効果との関係
AR遺伝子のCAGリピート数とフィナステリド治療効果との関連を明らかとするために、分析群の全228症例について、投与前と治療後における頭髪の状態を、川島らによるフィナステリド治検における効果判定法(Kawashima M, Hayashi MIgarashi A et al. Finasteride in the treatment of Japanese men with male pattern hair loss. Eur. J. Dermatol. 2004; 14: 247-254)による7段階(1〜7)の評価方法で比較した。具体的には、初診時をベースラインとし、48週間以上経過時における頭髪の状況を定点写真撮影(Global photograph)して、治療効果スコアを判定した。
対象とした全症例で治療効果スコアは4(不変)以上であった。判定スコアは6 (中程度増加) が最も多く109例であり、4(不変)は9例、5 (微増) は68例、7 (高度に増加) は3例であった。治療効果スコアとCAGリピート数との関係を図8(A)に示す。治療効果スコアと判定したスコア群ごとのAR遺伝子CAGリピートの平均を比較すると、スコアの上昇に伴いCAGリピート数が減少する傾向があり、判定スコア間で統計的な有意差が認められた。また、治療効果スコアとフィナステリド投与期間との関係を図8(B)に示す。臨床治療例を試験対象としたため、フィナステリド投与期間と経過観察期間にばらつきが存在する。そのために、各治療判定における平均投与期間±標準偏差の値を示す。効果判定6では、他の症例より投与期間が長い傾向にあるが、判定スコア間でフィナステリド投与期間に有意差は認められなかった。

0043

CAGリピート数に依存したフィナステリド治療効果スコアの割合の変化を明らかとするため、CAGリピート数ごとの治療効果スコアの割合を比較分析した。結果を図9に示す。CAGリピート数が減少するに従い、スコア7の割合が増加する傾向があった。また逆にCAGリピート数が増加するに従ってスコア5、4の割合が増加する傾向が認められた。また、22リピート以下では、効果判定スコア6と7の合計が80%以上となったが、逆にCAGリピート数が23以上の場合、効果判定スコア6と7の合計の割合が50%以下となった。
フィナステリド投与により中程度以上の効果が期待できるCAGリピート数を予測するために、全症例のフィナステリド治療効果スコアとCAGリピート数の関係をプロットし、回帰分析を行った。結果を図10に示す。yを治療効果、xをCAG リピート数とすると、回帰直線(実線)はy=9.6388-0.17263xで定義された。回帰直線より中程度増加(グレード6以上)が期待されるCAGリピート数は21.1(細破線)であり、この結果は図9の結果を支持している。さらに、軽微な増加(グレード5)以上が期待されるCAGリピート数は26.9(太破線)であった。CAGリピート数が26.9以下の時に、微量な増加以上の治療効果が期待できることが分る。

0044

実施例6
AR遺伝子CAGリピート数と男性型脱毛症の発症リスクとの関係
(1)方法
(1-1)日本人正常男性、及びAGA患者のCAGリピート数分析
18人の正常日本人男性、及び229人のAGA日本人男性の後頭部より抜毛を行い、毛髪検体を採取した。この毛髪検体より、実施例5で実施したAGA患者におけるゲノムDNA分析と同様の手法によりゲノムを抽出し、AR遺伝子のCAGリピート数を分析した。
(1-2)CAGリピート数分析
AGAおよび正常男性のAR遺伝子CAGリピート数の分布より、それぞれの平均値と標準偏差を求めた。

0045

(1-3)CAGリピート数の正規分布化変換
上記の(1-2)で求めた数値より、これらの分布が正規分布に従ったものであると仮定して、正規分布曲線を算出した。任意のCAGリピート数に対応する正規分布における存在確率はEXCELの関数NORMDIST(C, mean, SD,FALSE)を使用し、この分布が正規分布であると仮定した場合における任意のCAGリピート数に対する存在確率を求めた。この存在確率を用いて、(1-5)で述べる変数および定数を規定および算出した。

0046

(1-4)ベイズの定理による事後疾患確率の計算
日本人成人の正常男性およびAGA患者のCAGリピート数分布を用いて、以下の項を算出することにより、CAGリピート数分析を行った場合の疾患確率を求めた。
(a) CAGリピート数解析試験[D]を行った時にAGAである確率[H]をP(H|D)とする。
(b)日本人成人男性のAGA罹患率をP(H)とする。
(c)日本人成人男性の頭髪正常である確率をP(notH)とする
(d) AGA患者のCAGリピート数が任意の値以下となる確率をP(D|H)とする。
(e)正常男性において任意のCAGリピート数以下となる確率をP(D|notH)とする。
(f) CAGリピート数を分析した時に、任意のCAGリピート数以下となる確率をP(D)とする。
この仮定において、ベイズの定理より、次の(i)と(ii)が成り立つ。
P(D)=P(D|H)P(H)+P(D|notH)P(notH)・・・・・・(i)
P(H|D)=P(D|H)P(H)/P(D) ・・・・・・・・・・・(ii)
この定理により任意のCAGリピート数における疾患確率P(H|D)の関数を求める。

0047

(1-5)定数と変数の定義
(1-5-1)上記(1-4)で定義した項のうち、次の項を定数とする。
日本人成人男性全体のAGA疾患確率:P(H)=0.253
・日本人成人(20歳以上)男性人口は約4,971万人(平成17年国政調査結果より)
薄毛人口1,260万人(板見 智: 日本醫事新報 2004; No.4209: 27-29.より)
日本人成人男性の頭髪正常である確率:P(notH)=0.747
・日本人成人男性人口から薄毛認識人口を引いた数値より算出
(1-5-2)上記(1-4)で定義した項のうち、次の項を独立変数であるCAGリピート数の仮想正規分布に従属する変数と定義する。
AGA患者のCAGリピート数が任意の値となる確率:P(D|H)
正常男性において任意のCAGリピート数となる確率:P(D|notH)
(1-5-3)定数P(H)、P(notH)および変数P(D|H)、P(D|notH)よりCAGリピート数を分析した時に、任意のCAGリピート数となる確率P(D)は公式(ii)で表される関数となる。

0048

(2)結果
図11に、日本人男性AGA患者(A)と正常男性(B)のCAGリピート数の分布を示す。日本人AGA患者のCAGリピート数の平均±標準偏差は、22.179±2.871(284例)であった。また、正常男性のCAGリピート数の平均±標準偏差は、24.882±1.996(18例)であった。
AGA群と正常男性群の分布をステューデントt検定により有意差検定を行った結果、P=0.00018であり、明確な有意差が示された。結果をまとめて以下の表3に示す。

0049

また、AGA患者および正常男性のCAGリピート数分布が正規分布にのると仮定し、この平均値とSDより任意のCAGリピート数における確率密度をEXCELL(NORMDIST関数)により計算した。正常男性およびAGA患者のCAGリピート平均数とSD値より求めた仮想的な正規分布曲線を図12に示す。Aは正常男性群のSDが実測値(1.997)である場合である。正常男性のサンプル数は18件と少なく、より大きな母集団では、AGA患者と同程度のSD値を示すことが考えられる。そこで、正常男性のCAGリピート数分布の平均値24.882と、AGA患者のCAGリピート数分布の標準偏差値である2.871を用いて、仮想的な正規分布の確率密度を同様に求めた。この結果がBであり、これは標準偏差値がAGA群と同じ(2.871)である場合を示す。

0050

このAGA患者群における任意のCAGリピート数に対する確率分布をP(D|H)とした。また、正常男性CAGリピート数分布より、任意のCAGリピート数における確率分布をP(D|notH)とした。このP(D|notH)は、正常男性CAGリピート数分布の実測SD値と、AGA患者のSDに対応した2つの関数とした。
変数P(D|H)とP(D|notH)および定数(AGA疾患確率P(H)=0.253)より、任意のCAGリピート数(16-33)における条件付きAGA疾患確率P(H|D)を求めた(P(H/D)SD2.87およびP(H/D)SD1.97)。
P(D)=P(D|H)P(H)+P(D|notH)P(notH)・・・・・・(i)
P(H|D)=P(D|H)P(H)/P(D) ・・・・・・・・・・・(ii)
P(H|D)は任意のCAGリピート数を持つ集団全体を1とした時のAGA疾患確率である。日本人成人男性の平均罹患率(P(H)=0.257)を1としたときの、P(H|D)の値をAGAリスク倍率として計算した。
さらに、この2つのP(H|D)の値の平均を求めた。この関数をCAGリピート数16〜33までの範囲でプロットしたものを図13に示す。図13中、Aは正常男性(SD=1.996, ●)およびAGA群(SD=2.871, ○)のSD値より計算したAGA疾患確率分布を示し、Bはその平均値をプロットしたものである。
AGAリスク倍率は、いずれのSD値をとっても、CAGリピート数が24より大きい場合、リスク倍率は1以下となり、21から22のときに1倍〜2倍となった。またCAGリピート数21〜18以下の範囲でリスク倍率は3倍以上となった。また、18以下および25以上では、傾きが緩やかになり、リスク曲線シグモイド曲線状となることが示された。

0051

AR遺伝子のCAGリピート数は、男性型脱毛症の発症リスクの予測、及び男性型脱毛症におけるフィナステリドの治療効果の予測の指標として有用である。特に、本発明のPCRプライマーを用いることにより、これらの予測を精度良く行える。

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