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技術 ポリヒドロキシアルカン酸共重合体及びその製造法

出願人 国立大学法人東京工業大学
発明者 柘植丈治山本哲也北川敦沙比
出願日 2009年4月22日 (11年9ヶ月経過) 出願番号 2010-515811
公開日 2011年10月27日 (9年3ヶ月経過) 公開番号 WO2009-147918
状態 不明
技術分野
  • -
主要キーワード 入り口圧 分析ライン 耐圧試験管 VP用 生分解性プラスチック素材 低沸点画分 寒天成分 連続ステップ
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2011年10月27日)のものです。
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図面 (7)

課題・解決手段

(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を含むPHA共重合体、及びその製造法を提供する。 少なくとも(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を含むポリヒドロキシアルカン酸共重合体;及び、炭素源と、(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸の前駆物質との存在下に、大腸菌ラルストニア属菌及びシュードモナス属菌から選ばれる微生物ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が導入された形質転換体を培養し、得られた培養物から、少なくとも(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を含むポリヒドロキシアルカン酸共重合体を採取することを特徴とする、ポリヒドロキシアルカン酸共重合体の製造法。

概要

背景

ポリヒドロキシアルカン酸PHA)は微生物細胞内に蓄積するポリエステルである。近年では、PHAは、生分解性プラスチック素材としてのみならず、バイオマス由来プラスチック素材として注目されている。最も一般的なPHAは、(R)−3−ヒドロキシブタン酸(3HB)を構成単位とするホモポリマー(以下、「P(3HB)」)である。しかし、P(3HB)は結晶性が高いため、柔軟性がないのが欠点であった。その後、3HBと(R)−3−ヒドロキシ吉草酸(3HV)とからなるPHA共重合体(以下、「P(3HB−co−3HV)」)を、高いPHA蓄積能を示すラルストニアユートロファ(Ralstonia eutropha)を用いて製造する方法が開発されたが(特開昭57−150393号公報又は特開昭59−220192号公報)、3HBと3HVとが共結晶化するために、柔軟性はほとんど向上しなかった。
近年、3HBと、(R)−3−ヒドロキシヘキサン酸(3HHx)とからなる共重合体(以下、「P(3HB−co−3HHx)」)の製造法確立され、高い柔軟性を有するポリヒドロキシアルカン酸の製造が可能になった(特開平5−93049号公報又は特開平7−265065号公報)。これらの公報に記載の方法では、P(3HB−co−3HHx)は、土壌細菌アエロモナスキャビエAeromonas caviae)を用いて植物油から製造される。
また、本発明者らは、3HBと、(R)−3−ヒドロキシアルカン酸(3HA)とからなる共重合体(以下、「P(3HB−co−3HA)」、但し、3HA:C4〜C12の(R)−3−ヒドロキシアルカン酸))が、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来のPHA合成酵素遺伝子欠損変異株PHB−4株)にシュードモナスエスピー(Pseudomonas sp.)由来のPHA合成酵素遺伝子の変異体を組み込んだ組換え株を用いて、植物油から製造されることを報告している(特開2007−125004号公報)。
一方、分岐したアルキル基を有する3−ヒドロキシアルカン酸を構成単位とするホモポリマーやそのコポリマーも報告されている(Int.J.Biol.Macromol.,1990,Vol.12,pp.92−101)。しかし、一般的に、分岐したアルキル基を有する3−ヒドロキシアルカン酸を構成単位とするポリマーの製造は、モノマー組成の制御が困難であるために材料物性を考慮したポリマーの合成が難しく、当該公報においても分岐アルキルは分岐オクタン酸に限定されており、その物性についても明らかにされていなかった。

概要

(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を含むPHA共重合体、及びその製造法を提供する。 少なくとも(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を含むポリヒドロキシアルカン酸共重合体;及び、炭素源と、(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸の前駆物質との存在下に、大腸菌、ラルストニア属菌及びシュードモナス属菌から選ばれる微生物にポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が導入された形質転換体を培養し、得られた培養物から、少なくとも(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を含むポリヒドロキシアルカン酸共重合体を採取することを特徴とする、ポリヒドロキシアルカン酸共重合体の製造法。

目的

本発明は、更に高い柔軟性を有する新規なポリヒドロキシアルカン酸の製造を目的として、少なくとも(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸(以下、「3H4MV」と言うことがある)単位を含むポリヒドロキシアルカン酸の共重合体、及びその製造法を提供する

効果

実績

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請求項1

少なくとも(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を含む、ポリヒドロキシアルカン酸共重合体

請求項2

(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位と(R)−3−ヒドロキシブタン酸単位とを含む、請求項1記載のポリヒドロキシアルカン酸共重合体。

請求項3

(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位と、(R)−3−ヒドロキシブタン酸単位と、(R)−3−ヒドロキシ吉草酸単位と、場合により(R)−3−ヒドロキシヘキサン酸単位とを含む、請求項2記載のポリヒドロキシアルカン酸共重合体。

請求項4

(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を14mol%以上含む、請求項1記載のポリヒドロキシアルカン酸共重合体。

請求項5

(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を14mol%〜40mol%含む、請求項1記載のポリヒドロキシアルカン酸共重合体。

請求項6

炭素源と、(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸の前駆物質との存在下に、大腸菌ラルストニア属菌及びシュードモナス属菌から選ばれる微生物ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が導入された形質転換体を培養し、得られた培養物から、少なくとも(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を含むポリヒドロキシアルカン酸共重合体を採取することを特徴とする、ポリヒドロキシアルカン酸共重合体の製造法

請求項7

前記前駆物質が、4−メチル吉草酸、4−メチルペンテン酸又はこれらの混合物から選ばれる、請求項6記載の製造法。

請求項8

前記前駆物質が0.1〜5.0g/Lの濃度で添加される、請求項6又は7記載の製造法。

請求項9

前記ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が、シュードモナスエスピー(Pseudomonassp.)61−3株、シュードモナス・スツッツェリ(Pseudomonasstutzeri)、A33、アロクロマティウム・ビノサム(Allochromatiumvinosum)、バシルスメガテリウム(Bacillusmegaterium)、バシルス・セレウス(Bacilluscereus)、バシルス・エスピー(Bacillussp.)INT005、ランプロシスティス・ロゼオペルシシナ(Lamprocystisroseopersicina)、ノカルディアコラリナ(Nocardiacorallina)、ロドバクターシャエロイデス(Rhodobacorshaeroides)、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonniaeutropha)、ロドコッカス・エスピー(Rhodococcussp.)NCIMB40126、チオカプサ・フェニギー(Thiocapsapfennigii)、アエロモナスキャビエAeromonascaviae)、及びアエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonashydrophila)から選ばれる微生物に由来する、請求項6〜8のいずれか1項記載の製造法。

請求項10

前記ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が、シュードモナス・エスピー(Pseudomonassp.)61−3株(DDBJアクセション番号:AB014758)、又はアエロモナス・キャビエ(Aeromonascaviae)(GenBankアクセション番号:D88825)に由来する、請求項9記載の製造法。

請求項11

前記ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が、アエロモナス・キャビエ(Aeromonascaviae)(GenBankアクセション番号:D88825)由来のポリヒドロキシアルカン酸重合酵素の149番のアスパラギンセリンにかつ171番のアスパラギン酸グリシン置換されたポリヒドロキシアルカン酸重合酵素変異体をコードするものである、請求項10記載の製造法。

請求項12

前記炭素源が単糖類である、請求項6〜11のいずれか1項記載の製造法。

請求項13

前記単糖類がフルクトースである、請求項12記載の製造法。

請求項14

請求項1〜5のいずれか1項記載のポリヒドロキシアルカン酸共重合体を含む成形体

請求項15

フィルムである、請求項14記載の成形体。

技術分野

0001

本発明は、ポリヒドロキシアルカン酸共重合体及びその製造法に関する。本発明は、特に、少なくとも(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を含むポリヒドロキシアルカン酸共重合体、及びその製造法に関する。

背景技術

0002

ポリヒドロキシアルカン酸PHA)は微生物細胞内に蓄積するポリエステルである。近年では、PHAは、生分解性プラスチック素材としてのみならず、バイオマス由来プラスチック素材として注目されている。最も一般的なPHAは、(R)−3−ヒドロキシブタン酸(3HB)を構成単位とするホモポリマー(以下、「P(3HB)」)である。しかし、P(3HB)は結晶性が高いため、柔軟性がないのが欠点であった。その後、3HBと(R)−3−ヒドロキシ吉草酸(3HV)とからなるPHA共重合体(以下、「P(3HB−co−3HV)」)を、高いPHA蓄積能を示すラルストニアユートロファ(Ralstonia eutropha)を用いて製造する方法が開発されたが(特開昭57−150393号公報又は特開昭59−220192号公報)、3HBと3HVとが共結晶化するために、柔軟性はほとんど向上しなかった。
近年、3HBと、(R)−3−ヒドロキシヘキサン酸(3HHx)とからなる共重合体(以下、「P(3HB−co−3HHx)」)の製造法が確立され、高い柔軟性を有するポリヒドロキシアルカン酸の製造が可能になった(特開平5−93049号公報又は特開平7−265065号公報)。これらの公報に記載の方法では、P(3HB−co−3HHx)は、土壌細菌アエロモナスキャビエAeromonas caviae)を用いて植物油から製造される。
また、本発明者らは、3HBと、(R)−3−ヒドロキシアルカン酸(3HA)とからなる共重合体(以下、「P(3HB−co−3HA)」、但し、3HA:C4〜C12の(R)−3−ヒドロキシアルカン酸))が、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来のPHA合成酵素遺伝子欠損変異株PHB−4株)にシュードモナスエスピー(Pseudomonas sp.)由来のPHA合成酵素遺伝子の変異体を組み込んだ組換え株を用いて、植物油から製造されることを報告している(特開2007−125004号公報)。
一方、分岐したアルキル基を有する3−ヒドロキシアルカン酸を構成単位とするホモポリマーやそのコポリマーも報告されている(Int.J.Biol.Macromol.,1990,Vol.12,pp.92−101)。しかし、一般的に、分岐したアルキル基を有する3−ヒドロキシアルカン酸を構成単位とするポリマーの製造は、モノマー組成の制御が困難であるために材料物性を考慮したポリマーの合成が難しく、当該公報においても分岐アルキルは分岐オクタン酸に限定されており、その物性についても明らかにされていなかった。

0003

従って、本発明は、更に高い柔軟性を有する新規なポリヒドロキシアルカン酸の製造を目的として、少なくとも(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸(以下、「3H4MV」と言うことがある)単位を含むポリヒドロキシアルカン酸の共重合体、及びその製造法を提供することを目的とする。なお、「(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸」は、「(R)−3−ヒドロキシイソヘキサン酸」と同義である。
本発明者らは、斯かる実状に鑑み鋭意検討した結果、炭素源の存在下に、ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が導入された宿主微生物を培養する、従来のポリヒドロキシアルカン酸の合成系において、(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を含む新規なポリヒドロキシアルカン酸共重合体が得られることを見出し、培養時に、(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸の前駆物質を添加することにより、(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位の組成比の高いポリヒドロキシアルカン酸共重合体(以下、単に、「PHA共重合体」又は「PHA」と言うことがある)が効率よく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、(1)本発明は、少なくとも(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を含む、ポリヒドロキシアルカン酸共重合体を提供する。
(2)本発明は、(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位と(R)−3−ヒドロキシブタン酸単位とを含む、(1)記載のポリヒドロキシアルカン酸共重合体を提供する。
(3)本発明は、(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位と、(R)−3−ヒドロキシブタン酸単位と、(R)−3−ヒドロキシ吉草酸単位と、場合により(R)−3−ヒドロキシヘキサン酸単位とを含む、(2)記載のポリヒドロキシアルカン酸共重合体を提供する。
(4)本発明は、(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を14mol%以上含む、(1)記載のポリヒドロキシアルカン酸共重合体を提供する。
(5)本発明は、(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を14mol%〜40mol%含む、(1)記載のポリヒドロキシアルカン酸共重合体を提供する。
(6)本発明は、炭素源と、(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸の前駆物質との存在下に、大腸菌、ラルストニア属菌及びシュードモナス属菌から選ばれる微生物にポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が導入された形質転換体を培養し、得られた培養物から、少なくとも(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を含むポリヒドロキシアルカン酸共重合体を採取することを特徴とする、ポリヒドロキシアルカン酸共重合体の製造法を提供する。
(7)本発明は、前記前駆物質が、4−メチル吉草酸、4−メチルペンテン酸又はこれらの混合物から選ばれる、(6)記載の製造法を提供する。
(8)本発明は、前記前駆物質が0.1〜5.0g/Lの濃度で添加される、(6)又は(7)記載の製造法を提供する。
(9)本発明は、前記ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)61−3株、シュードモナス・スツッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、A33、アロクロマティウム・ビノサム(Allochromatium vinosum)、バシルスメガテリウム(Bacillus megaterium)、バシルス・セレウス(Bacillus cereus)、バシルス・エスピー(Bacillus sp.)INT005、ランプロシスティス・ロゼオペルシシナ(Lamprocystis roseopersicina)、ノカルディアコラリナ(Nocardia corallina)、ロドバクターシャエロイデス(Rhodobactor shaeroides)、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonnia eutropha)、ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)NCIMB 40126、チオカプサ・フェニギー(Thiocapsa pfennigii)、アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)、及びアエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)から選ばれる微生物に由来する、(6)〜(8)のいずれか1記載の製造法を提供する。
(10)本発明は、前記ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)61−3株(DDBJアクセション番号:AB014758)、又はアエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)(GenBankアクセション番号:D88825)に由来する、(9)記載の製造法を提供する。
(11)本発明は、前記ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が、アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)(GenBankアクセション番号:D88825)由来のポリヒドロキシアルカン酸重合酵素の149番のアスパラギンセリンにかつ171番のアスパラギン酸グリシン置換されたポリヒドロキシアルカン酸重合酵素変異体をコードするものである、(10)記載の製造法を提供する。
(12)本発明は、前記炭素源が単糖類である、(6)〜(11)のいずれか1記載の製造法を提供する。
(13)本発明は、前記単糖類がフルクトースである、(12)記載の製造法を提供する。
(14)本発明は、(1)〜(5)のいずれか1記載のポリヒドロキシアルカン酸共重合体を含む成形体を提供する。
(15)本発明は、フィルムである、(14)記載の成形体を提供する。
本発明の製造法によれば、少なくとも(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を含むPHA共重合体を安価かつ収率よく製造できる。また、該PHA共重合体は、十分な強度と柔軟性を有し、フィルム等に加工し易く、工業的に有用な高分子材料である。

図面の簡単な説明

0004

図1は、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)によって合成されたPHA共重合体、及び化学的に合成された3H4MV、のGCMS分析を示す図である。(a)フルクトースから合成されたPHAのm/z 103イオンクロマトグラム;(b)フルクトース及び4−メチル吉草酸(4MV)から合成されたPHAのm/z 103イオンクロマトグラム;(c)化学的に合成された3H4MV(3H4MV標品)のm/z 103イオンクロマトグラム;並びに(d)ターポリマーP(3HB−co−3HV−co−3HHx)のm/z 103イオンクロマトグラム。GCにおける温度プログラムは、1分間、100℃で開始し、次いで8℃/分の連続ステップで280℃まで昇温した。
図2は、シリル化3HAメチルエステルのGC−MS分析の結果を示す図である。(A)総イオンクロマトグラム;(B)ピーク1(3.5分)、ピーク2(4.6分)及びピーク3(5.3分)のイオンフラグメントパターンは、それぞれ、シリル化3HB、シリル化3HV及びシリル化3H4MVに相当する。
図3は、フルクトース(20g/l)及び4−メチル吉草酸(4MV)(1g/l)で培養したR. eutropha(phaC1Ps)から単離したP(3HB−co−3H4MV)の500MHz 1H−NMRスペクトルを示す図である。P(3HB−co−3H4MV)の化学式において、x及びyは繰り返し数を示す。
図4は、フルクトース(20g/l)及び4−メチル吉草酸(4MV)(1g/l)で培養したR. eutropha(phaC1Ps)から単離したP(3HB−co−3H4MV)の125MHz 13C−NMRスペクトルを示す図である。
図5は、R. eutropha(phaCAc(NSDG変異体))から単離した様々なP(3HB−co−3H4MV)サンプルの溶液キャストフィルムDSC容量変化を示す図である。加熱温度は、20℃/分である。
図6は、1日、40日及び180日保存後の、R. eutropha(phaCAc(NSDG変異体))から製造した、(A)P(3HB−co−7mol% 3H4MV);(B)P(3HB−co−9mol% 3H4MV);(C)P(3HB−co−14mol% 3H4MV);(D)P(3HB−co−16mol% 3H4MV);及び(E)P(3HB−co−22mol% 3H4MV)の各フィルムの応力歪み曲線を示す。
図7は、以下の共重合体:P(3HB−co−3H4MV)フラクション(黒三角)、P(3HB−c−3HHx)フラクション(白三角)、P(3HB−co−3HV)フラクション(黒丸)、及びP(3HB−co−4B)フラクション(白丸)についての、(A)融点(Tm)と第二モノマー単位含量との関係;(B)ガラス転移点(Tg)と第二モノマー単位含量との関係;及び(C)破壊伸びの割合(%)と第二モノマー単位含量との関係を示す図である。横軸の第二モノマーフラクションは、3H4MV単位の含量(mol%)を示す。P(3HB−co−3H4MV)の傾向線(trend line)を太線で示す。

0005

本発明の(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を含むPHA共重合体は、その(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸(3H4MV)単位の組成比が低いながらも、炭素源の存在下に、ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が導入された宿主微生物を培養する、従来のポリヒドロキシアルカン酸の合成系によって製造できることが本発明者らにより今回初めて明らかにされた(図1参照)。更に、培養時に、3H4MVの前駆物質を添加することにより、3H4MV単位の組成比が増加した共重合体が製造できることも明らかにされた。
すなわち、本発明のPHA共重合体は、少なくとも、下記式(I):

で表わされる3H4MV単位を含む。式(I)のPHA共重合体における3H4MV単位の含量は、好ましくは14mol%以上、より好ましくは14mol%〜40mol%である。3H4MV単位の含量が14mol%未満では、PHA共重合体の結晶化が進行し易く、得られたPHA共重合体が脆くなりやすい。また、3H4MV単位の含量が40mol%を超えるとエラストマー状となる。
本発明のPHA共重合体は、好ましくは、下記式(II):

[式中、x及びyは繰り返し数であり、それぞれ独立に1〜20,000の整数を示す。]
で表わされる、(R)−3−ヒドロキシブタン酸(3HB)単位と3H4MV単位とを含む共重合体P(3HB−co−3H4MV)である。
また、本発明のPHA共重合体は、3HB単位と3H4MV単位とに加えて(R)−3−ヒドロキシ吉草酸(3HV)単位を更に含む、下記式(III):

[式中、x、y及びzは繰り返し数であり、それぞれ独立に1〜20,000の整数を示す。]
で表わされる共重合体P(3HB−co−3HV−co−3H4MV)も好ましい。共重合体P(3HB−co−3HV−co−3H4MV)において、該共重合体中の3HVの含量は、共重合体が高い柔軟性を有するためには、できるだけ低いことが好ましく、例えば、3HVの含量が1.6mol%以下であれば柔軟性に支障を与えない。共重合体P(3HB−co−3HV−co−3H4MV)は、場合により、(R)−3−ヒドロキシヘキサン酸単位を更に含んでもよい。
本発明のポリヒドロキシアルカン酸共重合体は、炭素源と、3H4MVの前駆物質との存在下に、宿主にポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が導入されてなる形質転換体を培養し、得られた培養物から(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を含むポリヒドロキシアルカン酸共重合体を採取することによって製造できる。
ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が導入された形質転換体は、宿主中で目的の遺伝子を発現するための広宿主域ベクターに、ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子及び公知のモノマー供給遺伝子を挿入して得られるプラスミド宿主細胞に導入することによって得られる。
宿主中で目的の遺伝子を発現するための広宿主域ベクターとしては、例えば、移動能を有するmob領域を持つベクターpBBR1MCS−2、pJRD215及びpLA2917が挙げられる。
ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子としては、例えば、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)61−3株、シュードモナス・スツッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)A33、アロクロマティウム・ビノサム(Allochromatium vinosum)、バシルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バシルス・セレウス(Bacillus cereus)、バシルス・エスピー(Bacillus sp.)INT005、ランプロシスティス・ロゼオペルシシナ(Lamprocystis roseopersicina)、ノカルディア・コラリナ(Nocardia corallina)、ロドバクター・シャエロイデス(Rhodobactor shaeroides)、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonnia eutropha)、ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)NCIMB 40126、チオカプサ・フェニギー(Thiocapsa pfennigii)、アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)、及びアエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)から選ばれる微生物に由来するものが挙げられる。これらの中で、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)61−3株由来のポリヒドロキシアルカン酸重合酵素は、細胞内に共重合体P(3HB−co−3HA)(3HA:C4〜C12の(R)−3−ヒドロキシアルカン酸)を蓄積する能力を有し、アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)由来のポリヒドロキシアルカン酸重合酵素は、共重合体P(3HB−co−3HA)(3HA:C4〜C7の(R)−3−ヒドロキシアルカン酸)を蓄積する能力を有する点で、特に好ましい。
また、ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子としては、上記のポリヒドロキシアルカン酸重合酵素の変異体をコードする遺伝子であってもよい。このような遺伝子は、野生型のポリヒドロキシアルカン酸重合酵素のアミノ酸配列において、1個もしくは数個アミノ酸欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつポリヒドロキシアルカン酸重合活性を有するタンパク質をコードする遺伝子である。このような変異体としては、具体的には、Aeromonas caviae由来のポリヒドロキシアルカン酸重合酵素の149番のアスパラギンがセリンに、かつ171番のアスパラギン酸がグリシンに置換された変異体(NSDG変異体)が挙げられる。該NSDG変異体の製造法は、FEMS Microbiol Lett,277(2007),p.217−222に詳細に記載されている。
公知のモノマー供給遺伝子としては、例えば、Ralstonia eutropha由来のphbA、phbB、phaB、phbB(Peoples,O.P.and Sinskey,A.J.,J.Biol.Chem.264:15293−15297(1989))、Aeromonas caviae由来のphaJ(Fukui,T.and Doi,Y.,J.Bacteriol.179:4821−4830(1997))等が挙げられる。
ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子及び公知のモノマー供給遺伝子を挿入する微生物発現用ベクターは、プロモーターリボゾーム結合部位遺伝子クローニング部位、ターミネーター等を有する公知のベクターを用いることができる。
宿主としては、糖類や油脂類を炭素源として使用した場合の増殖性が良好で、菌株の安全性が高く、菌体培養液との分離が比較的容易である点から、例えば、大腸菌、ラルストニア属菌、シュードモナス属菌等の微生物細胞が挙げられる。本発明では、具体的には、Ralstonia eutropha H16のPHA蓄積能欠損株であるRalstonia eutrophaPHB−4株を使用することができる。
現在のところ、Pseudomonas sp. 61−3株由来のポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子(phaC1Ps)のRalstonia eutropha PHB−4株への効率的な形質転換法は確立されていないが、接合伝達によって遺伝子phaC1Psを再現性よく伝達することができる。具体的には、Ralstonia eutropha中で目的の遺伝子を発現するための広宿主域ベクターに、遺伝子phaC1Ps及び公知のモノマー供給遺伝子を含む上記プラスミドのDNA断片ライゲーションし、ライゲーションによって得られるプラスミドを、DNAの移動に直接関わるtra領域が染色体中に組み込まれている大腸菌中で形質転換した後、得られたプラスミドをRalstonia eutropha PHB−4株と接触させる。大腸菌の形質転換は、例えば、カルシウム法(Lederberg.E.M.et al.,J.Bacteriol.119.1072(1974))やエレクトロポレーション法(Current Protocols in Molecular Biology,1巻,184頁,1994年)等によって行うことができる。
3H4MVの前駆物質としては、例えば、4−メチル吉草酸、4−メチルペンテン酸、又はこれらの混合物が好ましい。3H4MVの前駆物質の添加量は、約0.1〜約5.0g/Lの範囲が好ましく、約0.5〜約2.0g/Lの範囲がより好ましい。
炭素源としては、例えば、糖類、油脂類等を用いることができる。糖類としては、グルコース、フルクトース、ガクトース、キシロースアラビノースサッカロースマルトースでんぷん、でんぷん加水分解物等が挙げられる。油脂類としては、植物油が好ましく、例えば大豆油コーン油綿実油落花生油ヤシ油パーム油パーム核油、又はこれらの分別油、例えばパームオレイン油(パーム油を2回無溶媒分別した低沸点画分)、パーム核油オレイン(パーム核油を1回無溶媒分別した低沸点画分)、又はこれらの油脂やその画分を化学的もしくは生化学的に処理した合成油、あるいはこれらの混合油が挙げられる。
培養温度は、菌の生育可能な温度、好ましくは15〜40℃、より好ましくは20〜40℃、更により好ましくは28〜34℃である。培養時間は、特に限定されないが、例えばバッチ培養では1〜7日間が好ましく、また連続培養も可能である。培養培地は、本発明の宿主が利用できるものである限り特に限定されない。炭素源に加えて、窒素源無機塩類、その他の有機栄養源等を含有する培地を使用することができる。
窒素源としては、例えばアンモニア塩化アンモニウム硫酸アンモニウムリン酸水素二アンモニウム等のアンモニウム塩ペプトン肉エキス酵母エキス等が挙げられる。
無機塩類としては、例えばリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウムリン酸水素マグネシウム硫酸マグネシウム塩化ナトリウム等が挙げられる。
その他の有機栄養源としては、例えばグリシン、アラニン、セリン、スレオニンプロリン等のアミノ酸類ビタミンB1、ビタミンB12、ビオチンニコチン酸アミドパントテン酸ビタミンC等のビタミン類などが挙げられる。
本発明のPHA共重合体の菌体からの回収は、例えば、次の方法によって行うことができる。培養終了後、遠心分離器等で培養液から菌体を分離し、その菌体を蒸留水メタノール等により洗浄した後、乾燥させた後、この乾燥菌体から、クロロホルム等の有機溶媒を用いて共重合体を抽出する。次いで、この共重合体を含む有機溶媒溶液から、濾過等によって菌体成分を除去し、その濾液にメタノール、ヘキサン等の貧溶媒を加えて共重合体を沈殿させる。沈殿した共重合体から、濾過や遠心分離によって上澄み液を除去し、乾燥させ、共重合体を回収することができる。得られた共重合体の分析は、例えば、ガスクロマトグラフ法核磁気共鳴法等により行うことができる。
本発明のPHA共重合体は、フィルム、シート等の成形体に加工できる。フィルムの厚みは特に特定されないが、通常、1mm以下、好ましくは0.5mm以下である。
本発明のフィルムは、溶液キャスト法射出成形プレス成形ブロー成形等により得られるが、簡便に無色透明なフィルムを得るためにはキャスト法が好ましい。また、本発明のフィルムは機械的特性を向上させることなどを目的として、高温熱処理してもよい。熱処理温度は共重合体の種類によって異なるが、通常、50〜200℃の範囲で行われる。更に、本発明のフィルムは延伸処理を施すことによって、引張強度弾性率等の機械的特性などを更に向上させることができる。
また、本発明の成形体には本発明の目的を損なわない範囲内で、通常フィルムに用いられる各種添加剤、例えば紫外線吸収剤熱安定剤酸化防止剤着色剤などを添加してもよい。
本発明の(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸単位を含むPHA共重合体は、十分な強度と柔軟性を有し、医療用材料食品その他の包装材料農業用ビニールシートやゴミ袋などに有用である。

実施例

0006

次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
材料及び調製方法
(1)微生物
(a)Escherichia coli S17−1株(H.G.Schlegel(Georg−August−Universitat、ドイツより入手
(b)Ralstonia eutrophaPHB−4(Ralstonia eutropha H16のポリヒドロキシアルカン酸蓄積能欠損株DSM541、ドイツDSMより入手)
(2)培地
(a)Luria−Bertani(LB)培地
Bacto trypton 10g、酵母エキス5g、NaCl 10gを脱イオン水1Lに溶かして、121℃で20分間オートクレーブして調製した。また、寒天培地は、上記成分に寒天1.5〜2%(wt/vol)となるよう加えオートクレーブ処理して調製した。抗生物質カナマイシン終濃度50μg/mL)は、液体培地、寒天培地ともにオートクレーブ処理後に添加した。
(b)Nutrient−rich(NR)培地(pH7.0)
Bacto trypton 10g、酵母エキス 2g、肉エキス10gを脱イオン水1Lに溶かして、121℃で20分間オートクレーブ処理した後、抗生物質(カナマイシン:終濃度50μg/mL)を添加した。
(c)シモンズクエン酸培地
クエン酸ナトリウム二水和物2g、NaCl 5g、NH4H2PO4 1g、K2HPO4 1g、0.2g/mL MgSO4溶液を脱イオン水1Lに溶かして、121℃で20分間オートクレーブ処理して調製した。寒天培地は、まず液体培地をpH6.9に調整し、変を防ぐため当該液体培地と寒天成分とを別々に121℃で20分間オートクレーブ処理した後にこれらを混合した。更に、200g/Lに調整したMgSO4・7H2Oをフィルター滅菌し、培地全量に対し1/1000量及び抗生物質(カナマイシン:終濃度50μg/mL)を加えた。
(d)MS培地
ミネラル培地(pH7.0):K2HPO4 1.5g、Na2HPO4・12H2O 9.0g、NH4Cl 0.5g、NaCl 0.5gを脱イオン水1Lに溶かして、121℃で20分間オートクレーブ処理した後、MgSO4・7H2O 0.2g、微量金属塩培地1ml、及びカナマイシン50mgを加えて調製した。
なお、微量金属塩培地(0.1N HCl)は、CoCl2・6H2O 0.218g、FeCl3 9.7g、CaCl2 7.8g、NiCl3・6H2O 0.118g、CrCl3・6H2O 0.105g、及びCuSO4・5H2O 0.156gを脱イオン水1Lに溶かして調製した。
(3)プラスミド
(a)pBBR1″C1PsABRe
pGEM−Tベクタープロメガより入手)に、Pseudomonas sp.61−3株由来のPHA合成酵素遺伝子phaC1Ps(DDBJアクセション番号:AB014758)と、Ralstonia eutropha由来のモノマー供給遺伝子phaABRe(GenBankアクセション番号:J04987)とを挿入して、pGEM″C1PsABReを作製した。
pGEM″C1PsABReプラスミドをE. coli DH5α株に形質転換し、抗生物質含有LB寒天培地で37℃、12時間培養した。プレート上に形成された単一コロニーを拾い、抗生物質含有LB培地1.7mLに植菌し、37℃、160/分で12時間振盪培養した。当該培養液からE. coli DH5α株を回収し、75μLのTE溶液(10mM Tris−HCl,1mMEDTA,pH8.0)を用い、Rapid Plasmid Miniprep System(MARLIGEN BIOSCIENCE社製)によりプラスミドを抽出した。
上記の抽出プラスミドをBamHIによって消化し、0.8%アガロースゲル(TaKaRa社製)を用いて電気泳動を行った。その後、分離した目的のDNA断片のゲル切り出し、Rapid Gel Extraction System(MARLIGEN BIOSCIENCE社製)を用いて精製した。その際、50μLのTE溶液を用いて溶出した。更に、このDNA断片をエタノール沈殿によって濃縮し、10μLのTE溶液に溶解した。
このようにして得られた挿入DNA断片4μLとpBBR1MCS−2ベクター(M.E.K.Kovach,Louisiana State University,米国より入手)1μLとを混合し、DNA Ligation kit ver.2(TaKaRa社製)を5μL加えた後、16℃で約2〜3時間反応させ、pGEM″C1PsABReのBamHI断片(phaC1PsとphaABReとを含む)を挿入したプラスミドpBBR1″C1PsABReを作製した。
(b)pBBREE32d13
Pseudomonas sp.61−3株由来のポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子(phaC1Ps)の代わりにAeromonas caviae由来のPHA合成酵素遺伝子(phaCAc)(GenBankアクセション番号:D88825)を用いる以外は、上記(a)と同様にしてプラスミドpBBREE32d13を作製した。
(4)PHA共重合体の構造及び物性の分析法
(a)ガスクロマトグラフィー(GC)
菌体内のPHA共重合体含有率とその組成は、ガスクロマトグラフィーで決定した(Brauneggら,1978)。まず、得られた乾燥菌体を耐圧ガラス管に10〜15mg量し、ここに硫酸メタノール溶液(硫酸:メタノール=15vol%:85vol%)2mL及びクロロホルム2mLを加えて密栓し、100℃、140分間ヒートブロックで加熱しメタノール分解した。加熱中は約30分ごとにサンプルを撹拌した。その後、室温まで冷却し、純水1mLを加えて激しく撹拌した。静置後、二層に分離した下層クロロホルム層)をパスツールピペット吸引し、0.45μm径のMillex−FHPVDFフィルター(ミリポア社製)でろ過した。ろ過後のクロロホルム層500μLに内部標準物質である0.1vol%カプリル酸メチル500μLを加え混合したものをサンプルとした。GC装置島津製作所製のガスクロマトグラフGC14Bを用い、カラムにはGLサイエンス社製NEUTRA−BOND−1(内径30m×0.25mm、膜厚0.4μm)を用いた。キャリアガスとしてHe及びN2を用い、成分の検出には水素炎イオン化検出器を用いた。
(b)PHA共重合体の抽出及び精製
PHA共重合体を蓄積させた乾燥菌体を100mgの蓋付ガラス瓶に移し、100mLのクロロホルムを加えスターラーで72時間攪拌した。撹拌後の溶液をNo.1濾紙アドバンテック社製)でろ過し、ナス型フラスコに移し変えた。その後、ロータリーエバポレーターで完全に濾液を揮発させ、共重合体を析出させた。
ついで、析出したPHA共重合体を少量のメタノールで洗い取り、約20mLのクロロホルムに完全に溶解させた後、400mLのメタノールに少量ずつ滴下しながら撹拌を行い精製した。精製した共重合体をNo.1濾紙で回収し、48時間ドラフト中で乾燥させた。
(c)GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー
菌体から精製したPHA共重合体の数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)(Mw:重量平均分子量)をGPC測定によって求めた。標準物質としてポリスチレンを使用しているため、本発明で求めた分子量はポリスチレン換算相対分子量である。用いた5種類のポリスチレンの分子量は、3,790、30,300、219,000、756,000及び4,230,000である。
GPCサンプルは、精製したPHA共重合体を約1mg/mLとなるようにクロロホルムに溶解し、孔径0.45μmのMillex−FH PVDFフィルター(ミリポア社製)を取り付けたシリンジでろ過して調製した。
GPC測定には島津製作所社製のLC−VPシリーズシステムコントローラー:SCL−10AVPオートインジェクター:SIL−10A VP、送液ユニット:LC−10AD VP、カラムオーブン:CTO−10A、ディテクターRID−10A)を使用し、カラムにはShodex社製のK−806M及びK−802を用いた。移動層にはクロロホルムを用い、総液流量は0.8mL/分、カラム温度は40℃に設定し、サンプル注入量は50μLとした。データの解析にはCLASSVP用GPC(島津製作所社製)を用いた。ポリスチレンスタンダードから検量線を引き、これとサンプルデータとを照合することによりポリスチレン換算分子量及び分子量分布を算出した。
(d)示差走査熱量(DSC)
DSCサンプルは、精製したPHA共重合体を約10mg秤り取り、5mL容のサンプルバイアルに入れ、約1〜2mLのクロロホルムに完全に溶解した。これをドラフト中で約3週間乾燥させることによりキャストフィルムを作製した。このキャストフィルムから約3mgを秤量し、専用アルミニウムパンに入れたものをDSC測定サンプルとした。測定には、パーキンエルマー社製のPyris 1 DSCを使用した。測定は20mL/分の窒素雰囲気下で行った。対照には試料の入っていないアルミニウムパンを用いた。測定の条件として、初めに25℃〜200℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し、200℃で1分間保持した後、−500℃/分で−120℃まで急冷した。次に、−120℃で1分間保持した後、20℃/分の昇温速度で200℃に加熱した。解析には、パーキンエルマー社製の解析ソフトData Analysisを用いた。測定した試料の融点Tm及び融解エンタルピーΔHmの決定は、最初に昇温した時のサーモグラムより、ガラス転移温度Tgは二度目に昇温した時のサーモグラムより求めた。
(e)3H4MV標品の合成
NaBH4 1gを100mLナスフラスコに秤り取り、メタノール10mLを加えた。次に、この溶液にイソブチリル酢酸メチル(東京化成工業)3mL/メタノール10mLを上で撹拌しながら徐々に滴下した。発熱しなくなるまで氷上で撹拌し、その後室温で12時間撹拌した。反応終了後、未反応のNaBH4をろ別し、クロロホルム40mLを加え、飽和塩化ナトリウム水溶液40mLで3回洗浄した。クロロホルム層を乾燥後、ロータリーエバポレーターで濃縮し、無色透明液体を得た。
(f)ガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(GC/MS)
PHA共重合体に含まれる微量の3−ヒドロキシアルカン酸の組成は、GC/MSにより決定した。定性SCANモード、定量はSIM(selectedion monitoring)モードを使用した。
<装置>
ガスクロマトグラフ:GC−2010(島津製作所)
ガスクロマトグラフ質量分析計:GCMC−QC2010(島津製作所)
カラム:Inert Cap 1(GLサイエンス)
検出器質量分析計(MS)
イオン化源電子衝撃イオン化法EI
分析ソフト:GC MS Solution(島津製作所)
サンプル調製
メチルエステル化
ネジ口耐圧試験管にPHAを所定量秤量し、硫酸メタノール溶液2mL及びクロロホルム2mLを加え、100℃で140分間、数回攪拌しながら加熱した。反応終了後、室温まで冷却し超純水1mLを加え激しく撹拌し、静置後下層をサンプルとした。
トリメチルシリル化
メチルエステル化サンプル200μLにジメチルホルムアミド300μL、ビストリメチルシリルトリフルオロアセトアミド100μLを加え、70℃で30分間、数回攪拌しながら加熱した。反応終了後、室温まで冷却し、超純水1mL、ヘキサン1mLを加え激しく撹拌し、静置後上層をサンプルとした。
測定条件
MSの質量数較正にはパーフルオロトリブチルアミンを用いた。
キャリアガスとしてヘリウムを用い、入り口圧は120kPaとした。
各装置の分析ライン温度条件GC:試料気化温度280℃;カラム初期温度100℃;カラム最終温度280℃;カラム昇温速度 8℃/分;注入モードスプリット、GC−MS:イオン源温度 230℃;インターフェース温度 250℃;溶媒溶出時間 1.7分;検出器ゲイン 0.8kV。測定条件 MS SCAN:開始時間2分;終了時間 24分;スキャン速度 1250;開始m/z 45.00;終了m/z 600.00。
サンプル注入量は1μLとした。
(g)1H−NMR及び13C−NMR測定
CDCl3に3%(wt/vol)となるようPHA共重合体を溶解し、測定サンプルとした。核磁気共鳴分光装置を使用し、室温で測定を行った。
(5)PHA共重合体の力学的強度の測定
PHAフィルムを作製し、PHAのフィルムのヤング率破壊応力、破壊伸びを、引張試験によって決定した。
<装置>
引張試験機:AGS−H/EZTest(島津製作所)
分析ソフト:TRAPEZIUM 2(島津製作所)
<サンプル調製>
(a)キャストフィルムの作製
精製したポリマーを適量のクロロホルムの溶解し、フラットシャーレ展開した。ここで用いたポリマー重量は、シャーレの面積を考慮して、厚さが150μmになるように計算した。展開後、穴をあけたアルミホイルでシャーレにふたをして、クロロホルムが完全に気化するまで、平滑な場所に室温で静置した。乾燥後、シャーレからフィルムを丁寧に剥がし、一週間、室温で静置した。シャーレから剥がれにくいポリマーは、シャーレとポリマーの間に超純水を滴下することにより、剥離した。
(b)引張試験片の作製
作製したキャストフィルムを縦20mm、横3mmに切断したものをサンプルとした。切断には剃刀を使用し、ポリマーの真上から押さえつけるように切断した。
<測定条件>
つかみ間距離10mm、引張速度10mm/分とし、室温で測定した。
データ解析
ポリマーが破断しときの応力を破断応力伸び率を破壊伸びとした。ヤング率は、応力−歪み曲線における開始点の傾きとした。
以下、実施例において用いる語句、「本発明のPHA共重合体」、「PHA」又は「P(3HB−co−3H4MV)」は、「P(3HB−co−3H4MV)」及び/又は「P(3HB−co−3HV−co−3H4MV)」を意味するものとする。
実施例1〜2 Pseudomonas sp.61−3株由来重合酵素を用いるP(3HB−co−3H4MV)の製造
(1)形質転換体Ralstonia eutropha PHB−4株の作製
E. coli S17−1株のコンピテントセルは、対数増殖期の細胞を塩化カルシウム溶液で処理することによって得た。当該処理細胞にプラスミドpBBR1″C1PsABReのDNAを加え、42℃に温度を上げるヒートショックによって細胞内への取り込みを促進させた。
Ralstonia eutropha PHB−4株に遺伝子を導入するために接合伝達を行った。プラスミドpBBR1″C1PsABReが導入されたE. coli S17−1株を1.7mL LB培地に植菌し、37℃で15時間振盪培養した。また、導入する宿主(Ralstonia eutropha PHB−4株)も1.7mL NR培地に植菌し、30℃で15時間培養した。培養後、それぞれの培養液全量をオートクレーブ済みエッペンチューブに移し、12,000rpmで2分間遠心した。抗生物質を含むE. coli S17−1株には、500μL LB培地を加えて更に遠心して、抗生物質を完全に除去した。上清を50μLほど残るように捨てて、E. coli S17−1株とRalstonia eutropha PHB−4株を混合し、LB寒天培地に滴下し、乾燥後、30℃で5時間培養した。その後、抗生物質を含むシモンズクエン酸寒天培地にストリークし、30℃で2日間培養した。ここで得られた単一コロニーを再度シモンズクエン酸培地にストリークし、30℃で2日間培養した。これにより単離したコロニー(形質転換体Ralstonia eutropha株)を以降の実験で使用した。
(2)形質転換体Ralstonia eutropha株の培養
形質転換体Ralstonia eutropha株の培養にはMS培地を用いた。シモンズクエン酸培地上で単離した単一コロニーを白金耳を用いて1.7mLのNR培地に植菌し、30℃で12時間振盪培養した(前培養)。この培養液1mLを、フルクトース20g/L、抗生物質、3H4MVの前駆物質として4−メチル吉草酸又は4−メチルペンテン酸(いずれも、1g/L)を含む100mLのMS培地に植菌し、30℃、130/分で72時間振盪培養を行った(本培養)。また、比較のために、L−バリン又はL−ロイシンを添加して同様に培養を行った。
培養後、250mL遠心管に培養液を移し、4℃、6,000rpm(4,050×g)で10分間遠心し集菌した。菌を遠心分離した後、約20mLの水に菌体を懸濁させ、再度4℃、6,000rpmで10分間遠心し集菌を行い、上清を取り除いた。集菌した菌のペレットを2〜3mLの超純水に懸濁させ、5mLのポリプロピレン容器に移し、風穴を開けたパラフィルムを貼り付け、−80℃で凍結乾燥し、72時間真空乾燥させることにより乾燥菌体を得た。
乾燥菌体を前記のようにして精製してPHAを得、GC−MS(図1、2)、1H−NMR(図3)及び13C−NMR(図4)によりその構造を分析した。表1に、3HAメチルエステルの各々の分子量及びGC保持時間を示す。



a)3HB:(R)−3−ヒドロキシブタン酸;3HV:(R)−3−ヒドロキシ吉草酸;3H4MV:(R)−3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸;3HHx:(R)−3−ヒドロキシヘキサン酸
b)GC温度プログラムは、1分間100℃で開始し、次いで8℃/分の連続ステップで280℃めで昇温した。
図1より、前駆物質の非存在下でも、3H4MVを構成単位とするP(3HB−co−3H4MV)が得られることが初めて見出された(図1の(a))。以下に、P(3HB−co−3H4MV)の1H−NMRデータ、及び13C−NMRのデータを示す。
1H−NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):5.30−5.23(m,3HBのCCHCH3),5.13(d,3H4MVのCCHCH2),2.67−2.44(m,3HBのCCH2CO),1.89(dd,3H4MVのCCH2CO),1.27(dd,3HBのCCH3),0.90(d,3H4MVのC(CH3)2)。13C−NMR(125MHz,CDCl3)δ(ppm):169.1(3HB単位のカルボニル炭素),169.7(3H4MV単位のカルボニル炭素)。
また、前駆物質の存在下では、3H4MVの組成比が高いP(3HB−co−3H4MV)が得られることが明らかになった(図1の(b))。結果を表2に纏めた。一方、前駆物質の代わりにL−ロイシン又はL−バリンを添加した場合には、P(3HB−co−3H4MV)は全く検出されなかった。



実施例3〜6 Aeromonas caviae由来重合酵素を導入したRalstonia eutropha株によるフルクトース及び4−メチル吉草酸からのP(3HB−co−3H4MV)の製造
プラスミドpBBR1″C1PsABReの代わりにプラスミドpBBREE32d13を用いる以外は実施例2と同様にして、Aeromonas caviae由来のポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が3H4MVを取り込むか否かについて検討した。また、Aeromonas caviae由来のポリヒドロキシアルカン酸重合酵素の149番のアスパラギンがセリンに、かつ171番のアスパラギン酸がグリシンに置換された変異体(NSDG変異体)を、FEMS Microbiol Lett,277(2007),p.217−222に記載の方法に準じて製造し、該変異体をコードする重合酵素遺伝子が3H4MVを取り込むか否かについても検討した。結果を表3に示す。



表3より、野生型のRalstonia eutropha H16由来のPHA合成酵素遺伝子でも3H4MVを取り込んだが、Pseudomonas sp.61−3株由来のPHA合成酵素遺伝子、Aeromonas caviae株由来のPHA合成酵素遺伝子、及びAeromonas caviae株由来のPHA合成酵素変異体遺伝子では、更に取り込み率が高くなることが分かった。
実施例7 4−メチル吉草酸の濃度の影響
4−メチル吉草酸の濃度を変える以外は、実施例4、6と同様にしてP(3HB−co−3H4MV)を製造した。結果を表4に示す。



a)乾燥菌体重量、PHA含有率及びPHA組成の値は、少なくとも3つ独立した培養物からの平均及び標準偏差である。細胞は、フルクトース(20g/L)及び異なった濃度の4MVを含むMS培地で培養した。
b)微量のため定量できず。
実施例8 P(3HB−co−3H4MV)の分子量、並びにP(3HB−co−3H4MV)を含む溶液キャストフィルムの熱的特性及び力学的特性
実施例7で作製したサンプル番号(1)〜(18)の共重合体を含む溶液キャストフィルムを前記のようにして作製し(得られたフィルムのサンプル番号(1′)〜(18′)とする)、熱的特性及び力学的特性を測定した(表5)。



結晶融解エンタルピー(ΔHm)が高い値ほど、得られたPHA共重合体の結晶性は高くなる。結晶性が高くなると、該PHA共重合体の硬度は増すが、脆くなる。
本発明において、特に3H4MVを14mol%以上含むサンプル(6)、(7)及び(14)〜(18)では、PHA共重合体の結晶性が低く、その内のサンプル(6′)、(7′)及び(14′)〜(16′)は、ヤング率及び破壊伸びの値から、高い柔軟性を有することが実際に確認された。サンプル(9′)〜(16′)及び(18′)のDSC熱容量変化を図5に示す。また、P(3HB−co−3H4MV)、P(3HB−co−3HHx)、P(3HB−co−3HV)、及びP(3HB−co−4HB)についての、(A)融点(Tm)と第二モノマー単位含量との関係;(B)ガラス転移点(Tg)と第二モノマー単位含量との関係;及び(C)破壊伸びの割合(%)と第二モノマー単位含量との関係を図7に示す。
参考として、3HV組成が14mol%であるP(3HB−co−3HV)の融点は、150℃(P.Holms,in Development in Crystalline Polymers−2,D.C.Bassett,Ed.,Elsevier,London,1988,pp.1−65)、3HHx組成が15mol%であるP(3HB−co−3HHx)の融点は、115℃(Macromolecules,1995,Vol.28,pp.4822−4828)、3HBのホモポリマーの融点は、174℃である。
実施例9 経時的な(3HB−co−3H4MV)の力学的特性の変化
実施例8で得られたサンプル(1′)〜(18′)を室温で1日、40日、180日保存した後に、引張強度及び破壊伸びを測定した(表6、図6)。



表6及び図6より、本発明のPHA共重合体を含む溶液キャストフィルムは、180日保存後も製造時の力学的特性を有することから、安定性が高いことが分かった。

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