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技術 電子材料用銅合金

出願人 JX金属株式会社
発明者 江良尚彦深町一彦桑垣寛
出願日 2006年3月23日 (14年9ヶ月経過) 出願番号 2007-509330
公開日 2008年9月4日 (12年3ヶ月経過) 公開番号 WO2006-101172
状態 特許登録済
技術分野 非鉄金属または合金の熱処理
主要キーワード 質量濃度比 材料表層 水冷ノズル Si組成 析出硬化型銅合金 質量組成比 伸銅品 IACS
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重要な関連分野

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図面 (1)

課題・解決手段

要約 強度及び導電性に優れた、Coを含有する電子材料用Cu−Ni−Si系合金を提供する。Ni:約0.5〜約2.5質量%、Co:約0.5〜約2.5質量%、及びSi:約0.30〜約1.2質量%を含有し、残部Cuおよび不可避的不純物から構成され、NiとCoの合計質量のSiに対する質量濃度比([Ni+Co]/Si比)が約4≦[Ni+Co]/Si≦約5であり、NiとCoの質量濃度比(Ni/Co比)が約0.5≦Ni/Co≦約2である電子材料用銅合金

概要

背景

リードフレームコネクタピン端子リレー、スイッチ等の電子部品等に使用される電子材料用銅合金には、基本特性として高強度及び高導電性(又は熱伝導性)を両立させることが要求される。近年、電子部品の高集積化及び小型化・薄肉化が急速に進み、これに対応して電子部品等に使用される銅合金に対する要求レベルはますます高度化している。

しかしながら、銅合金に限らず合金は一般にそれを構成する成分元素組織の他、熱処理の方法等によっても影響を受け、合金の成分元素やその添加量、熱処理の方法等を微妙に変えた場合に合金の性質にどのような影響を与えるかについては、一般的に予測可能性が極めて低く、高まり続ける要求レベルに満足するような新規銅合金開発は困難を極めている。

高強度及び高導電性の観点から、近年、電子材料用銅合金としては従来のりん青銅黄銅等に代表される固溶強化型銅合金に替わり、時効硬化型の銅合金の使用量が増加している。時効硬化型銅合金では、溶体化処理された過飽和固溶体時効処理することにより、微細析出物が均一に分散して、合金の強度が高くなると同時に、銅中の固溶元素量が減少し電気伝導性が向上する。このため、強度、ばね性などの機械的性質に優れ、しかも電気伝導性、熱伝導性が良好な材料が得られる。

時効硬化型銅合金のうち、Cu−Ni−Si系銅合金は比較的高い導電性と強度、応力緩和特性及び曲げ加工性兼備する代表的な銅合金であり、業界において現在活発に開発が行われている合金の一つである。この銅合金では、銅マトリックス中に微細なNi−Si系金属間化合物粒子析出することにより強度と導電率が上昇する。

強度に寄与するNi−Si系金属間化合物の析出物は化学量論組成で一般に構成されており、例えば、特開2001−207229号公報では合金中のNiとSiの質量比金属間化合物であるNi2Siの質量組成比(Niの原子量×2:Siの原子量×1)に近づけることにより、すなわちNiとSiの質量比をNi/Si=3〜7とすることにより良好な電気伝導性が得られることが記載されている。

また、特許第3510469号明細書ではCoはNiと同様にSiと化合物を形成し、機械的強度を向上させ、Cu−Co−Si系は時効処理させた場合に、Cu−Ni−Si系合金より機械的強度、導電性共に僅かに良くなる旨が記載されている。そしてコスト的に許されるのであれば、Cu−Co−Si系やCu−Ni−Co−Si系を選択してもよい旨が記載されている。
更に、特許第2572042号明細書では銅合金の性質に悪影響を及ぼすことのない、珪化物シリサイド)形成元素及び不純物の例としてCoが挙げられており、そのような元素が存在する場合、それら元素はNiの同等量と置換して存在するべきである旨、及びそのような元素は有効量約1%以下存在させることができる旨の記載がある。

しかしながら、上記文献にも記載あるようにCoはNiに比較して高価な元素であり、実用上不利な側面を有しているため、Coを添加元素としたCu−Ni−Si系合金に関して詳細に研究されたことはこれまで少なかった。そしてCoがNiと同様にSiと化合物を形成し、NiをCoに置換することで機械的強度、導電性が僅かによくなるとされてきたが、合金特性飛躍的に向上するとは考えられていなかった。

特開2001−207229号公報
特許第3510469号明細書
特許第2572042号明細書

概要

要約 強度及び導電性に優れた、Coを含有する電子材料用Cu−Ni−Si系合金を提供する。Ni:約0.5〜約2.5質量%、Co:約0.5〜約2.5質量%、及びSi:約0.30〜約1.2質量%を含有し、残部Cuおよび不可避的不純物から構成され、NiとCoの合計質量のSiに対する質量濃度比([Ni+Co]/Si比)が約4≦[Ni+Co]/Si≦約5であり、NiとCoの質量濃度比(Ni/Co比)が約0.5≦Ni/Co≦約2である電子材料用銅合金。

目的

本発明は、高強度及び高導電性(又は熱伝導性)を両立させた、優れた特性を有する析出硬化型銅合金を提供することを課題とし、より詳細にはCoを添加することで導電性の低下をできるだけ抑えつつ強度を飛躍的に向上させた、電子材料用Cu−Ni−Si系合金を提供することを課題とする。

効果

実績

技術文献被引用数
3件
牽制数
2件

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請求項1

Ni:約0.5〜約2.5質量%、Co:約0.5〜約2.5質量%、及びSi:約0.30〜約1.2質量%を含有し、残部Cuおよび不可避的不純物から構成され、NiとCoの合計質量のSiに対する質量濃度比([Ni+Co]/Si比)が約4≦[Ni+Co]/Si≦約5であり、NiとCoの質量濃度比(Ni/Co比)が約0.5≦Ni/Co≦約2である電子材料用銅合金

請求項2

更にCrを最大約0.5質量%まで含有する請求項1に記載の電子材料用銅合金。

請求項3

更にP、As、Sb、Be、B、Mn、Mg、Sn、Ti、Zr、Al、Fe、Zn及びAgよりなる群から選択される1種又は2種以上を合計で最大約2.0質量%まで含有する請求項1又は2に記載の電子材料用銅合金。

請求項4

請求項1〜3の何れか一項に記載の電子材料用銅合金を用いた伸銅品

請求項5

請求項1〜3の何れか一項に記載の電子材料用銅合金を用いた電子部品

請求項6

−Ni:約0.5〜約2.5質量%、Co:約0.5〜約2.5質量%、及びSi:約0.30〜約1.2質量%を含有し、残部Cuおよび不可避的不純物から構成され、NiとCoの合計質量のSiに対する質量濃度比([Ni+Co]/Si比)が約4≦[Ni+Co]/Si≦約5であり、NiとCoの質量濃度比(Ni/Co比)が約0.5≦Ni/Co≦約2であるインゴット溶解鋳造する工程と、−熱間圧延工程と、−冷間圧延工程と、−約700℃〜約1000℃に加熱後、毎秒10℃以上で冷却する溶体化処理工程と、−随意的な冷間圧延工程と、−約350℃〜約550℃で行なう時効処理工程と、−随意的な冷間圧延工程と、をこの順に行なうことを含む電子材料用銅合金の製造方法。

請求項7

前記インゴットが更にCrを最大約0.5質量%まで含有する請求項6に記載の製造方法。

請求項8

前記インゴットが更にP、As、Sb、Be、B、Mn、Mg、Sn、Ti、Zr、Al、Fe、Zn及びAgよりなる群から選択される1種又は2種以上を合計で最大約2.0質量%まで含有する請求項6又は7に記載の製造方法。

技術分野

0001

本発明は析出型銅合金に関し、とりわけ各種電子部品に用いるのに好適なCu−Ni−Si系銅合金に関する。

背景技術

0002

リードフレームコネクタピン端子リレー、スイッチ等の電子部品等に使用される電子材料用銅合金には、基本特性として高強度及び高導電性(又は熱伝導性)を両立させることが要求される。近年、電子部品の高集積化及び小型化・薄肉化が急速に進み、これに対応して電子部品等に使用される銅合金に対する要求レベルはますます高度化している。

0003

しかしながら、銅合金に限らず合金は一般にそれを構成する成分元素組織の他、熱処理の方法等によっても影響を受け、合金の成分元素やその添加量、熱処理の方法等を微妙に変えた場合に合金の性質にどのような影響を与えるかについては、一般的に予測可能性が極めて低く、高まり続ける要求レベルに満足するような新規銅合金開発は困難を極めている。

0004

高強度及び高導電性の観点から、近年、電子材料用銅合金としては従来のりん青銅黄銅等に代表される固溶強化型銅合金に替わり、時効硬化型の銅合金の使用量が増加している。時効硬化型銅合金では、溶体化処理された過飽和固溶体時効処理することにより、微細析出物が均一に分散して、合金の強度が高くなると同時に、銅中の固溶元素量が減少し電気伝導性が向上する。このため、強度、ばね性などの機械的性質に優れ、しかも電気伝導性、熱伝導性が良好な材料が得られる。

0005

時効硬化型銅合金のうち、Cu−Ni−Si系銅合金は比較的高い導電性と強度、応力緩和特性及び曲げ加工性兼備する代表的な銅合金であり、業界において現在活発に開発が行われている合金の一つである。この銅合金では、銅マトリックス中に微細なNi−Si系金属間化合物粒子析出することにより強度と導電率が上昇する。

0006

強度に寄与するNi−Si系金属間化合物の析出物は化学量論組成で一般に構成されており、例えば、特開2001−207229号公報では合金中のNiとSiの質量比金属間化合物であるNi2Siの質量組成比(Niの原子量×2:Siの原子量×1)に近づけることにより、すなわちNiとSiの質量比をNi/Si=3〜7とすることにより良好な電気伝導性が得られることが記載されている。

0007

また、特許第3510469号明細書ではCoはNiと同様にSiと化合物を形成し、機械的強度を向上させ、Cu−Co−Si系は時効処理させた場合に、Cu−Ni−Si系合金より機械的強度、導電性共に僅かに良くなる旨が記載されている。そしてコスト的に許されるのであれば、Cu−Co−Si系やCu−Ni−Co−Si系を選択してもよい旨が記載されている。
更に、特許第2572042号明細書では銅合金の性質に悪影響を及ぼすことのない、珪化物シリサイド)形成元素及び不純物の例としてCoが挙げられており、そのような元素が存在する場合、それら元素はNiの同等量と置換して存在するべきである旨、及びそのような元素は有効量約1%以下存在させることができる旨の記載がある。

0008

しかしながら、上記文献にも記載あるようにCoはNiに比較して高価な元素であり、実用上不利な側面を有しているため、Coを添加元素としたCu−Ni−Si系合金に関して詳細に研究されたことはこれまで少なかった。そしてCoがNiと同様にSiと化合物を形成し、NiをCoに置換することで機械的強度、導電性が僅かによくなるとされてきたが、合金特性飛躍的に向上するとは考えられていなかった。

0009

特開2001−207229号公報
特許第3510469号明細書
特許第2572042号明細書

発明が解決しようとする課題

0010

本発明は、高強度及び高導電性(又は熱伝導性)を両立させた、優れた特性を有する析出硬化型銅合金を提供することを課題とし、より詳細にはCoを添加することで導電性の低下をできるだけ抑えつつ強度を飛躍的に向上させた、電子材料用Cu−Ni−Si系合金を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0011

本発明者らは、高度化する電子材料に使用される銅合金に対する要求レベルに対応すべく鋭意研究を行い、Coを含むCu−Ni−Si系合金に着眼するに至った。その後、Coを含むCu−Ni−Si系合金について検討を重ねた結果、Coを含むCu−Ni−Si系合金の強度が、ある組成条件の下では従来説明されていたものより飛躍的に向上することを見出した。また、該組成条件を満たすCu−Ni−Si系合金は強度向上に伴う導電性の低下が小さく、曲げ性、応力緩和特性及び半田濡れ性においても良好な特性を示すことを見出した。

0012

本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、一側面において、Ni:約0.5〜約2.5質量%、Co:約0.5〜約2.5質量%、及びSi:約0.30〜約1.2質量%を含有し、残部Cuおよび不可避的不純物から構成され、該合金組成中のNiとCoの合計質量のSiに対する質量濃度比([Ni+Co]/Si比)が約4≦[Ni+Co]/Si≦約5であり、該合金組成中のNiとCoの質量濃度比(Ni/Co比)が約0.5≦Ni/Co≦約2である電子材料用銅合金である。

0013

また、本発明は別の一側面において、更にCrを最大約0.5質量%まで含有する電子材料用銅合金である。

0014

また、本発明は更に別の一側面において、更にP、As、Sb、Be、B、Mn、Mg、Sn、Ti、Zr、Al、Fe、Zn及びAgよりなる群から選択される1種又は2種以上を合計で最大約2.0質量%まで含有する電子材料用銅合金である。

0015

また、本発明は更に別の一側面において、上記銅合金を用いた伸銅品である。

0016

また、本発明は更に別の一側面において、上記銅合金を用いた電子部品である。

0017

また、本発明は更に別の一側面において、
− Ni:約0.5〜約2.5質量%、Co:約0.5〜約2.5質量%、及びSi:約0.30〜約1.2質量%を含有し、残部Cuおよび不可避的不純物から構成され、NiとCoの合計質量のSiに対する質量濃度比([Ni+Co]/Si比)が約4≦[Ni+Co]/Si≦約5であり、NiとCoの質量濃度比(Ni/Co比)が約0.5≦Ni/Co≦約2であるインゴット溶解鋳造する工程と、
熱間圧延工程と、
冷間圧延工程と、
− 約700℃〜約1000℃に加熱後、毎秒10℃以上で冷却する溶体化処理工程と、
随意的な冷間圧延工程と、
− 約350℃〜約550℃で行なう時効処理工程と、
− 随意的な冷間圧延工程と、
をこの順に行なうことを含む電子材料用銅合金の製造方法である。

0018

本発明に係る製造方法の一実施形態では、前記インゴットは更にCrを最大約0.5質量%まで含有することができる。

0019

本発明に係る製造方法の別の一実施形態では、前記インゴットには更にP、As、Sb、Be、B、Mn、Mg、Sn、Ti、Zr、Al、Fe、Zn及びAgよりなる群から選択される1種又は2種以上を合計で最大約2.0質量%まで含有することができる。

発明の効果

0020

本発明によれば、導電性の低下をできるだけ抑えつつ強度を飛躍的に向上させ、かつ応力緩和特性及び半田濡れ性においても良好な特性を示す電子材料用Cu−Ni−Si系合金を提供できる。

図面の簡単な説明

0021

本発明の実施例と比較例についての強度(YS)と導電率(EC)の関係を示す図である。

発明を実施するための最良の形態

0022

Ni、Co及びSiの添加量
Ni、Co及びSiは、適当な熱処理を施すことにより金属間化合物を形成し、導電率を劣化させずに高強度化が図れる。以下、Ni、Co及びSiの個々の添加量について説明する。
Ni及びCoについてはNi:約0.5〜約2.5質量%、Co:約0.5〜約2.5質量%とすることが目標とする強度と導電率を満たすために必要であり、好ましくはNi:約1.0〜約2.0質量%、Co:約1.0〜約2.0質量%、より好ましくはNi:約1.2〜約1.8質量%、Co:約1.2〜約1.8質量%である。しかし夫々Ni:約0.5質量%、Co:約0.5質量%未満だと所望の強度を得られず、逆に約Ni:2.5質量%、約Co:2.5質量%を超えると高強度化は図れるが導電率が著しく低下し、更には熱間加工性が低下するので好ましくない。
Siについては約0.30〜約1.2質量%とすることが目標とする強度と導電率を満たすために必要であり、好ましくは約0.5〜約0.8質量%である。しかし約0.3%未満では所望の強度が得られず、約1.2質量%を超えると高強度化は図れるが導電率が著しく低下し、更には熱間加工性が低下するので好ましくない。

0023

[Ni+Co]/Si比
本発明では、更に合金組成中のNiとCoの総量のSiに対する質量濃度比([Ni+Co]/Si比)を規定した。
本発明ではNi/Si比を従来報告されている規定範囲約3≦Ni/Si≦約7よりも低い数値範囲とすることにより、すなわち高Si濃度に制御することにより、共に添加するNi及びCoのシリサイド形成にSiが寄与し、また析出に寄与しない過剰Ni及びCoの固溶による導電率の低下を軽減できる。しかし、質量濃度比が[Ni+Co]/Si<約4の場合では、今度はSiの比率が高過ぎるため固溶Siにより導電率が低下するだけでなく、焼鈍工程において材料表層にSiO2の酸化皮膜を形成するため半田付け性が劣化する。また、強化に寄与しないNi−Co−Si系析出粒子が粗大化しやすく、曲げ加工時割れ発生の起点やめっき不良部となりやすい。一方Siに対するNi及びCoの割合を高くしていき、[Ni+Co]/Si>約5となるとシリサイド形成に必要なSiが不足して高い強度が得られない。
よって本発明では、合金組成中の[Ni+Co]/Si比を約4≦[Ni+Co]/Si≦約5の範囲に制御する。
[Ni+Co]/Si比は好ましくは約4.2≦[Ni+Co]/Si≦約4.7である。

0024

Ni/Co比
本発明では、更に合金組成中のNiとCoの質量濃度比(Ni/Co比)を規定した。理論によって本発明が限定されることを意図するものではないが、Ni及びCoは共にSiとの化合物生成に寄与するのみならず、相互に関係しあって合金特性を改善するものと考えられる。Ni/Co比を約0.5≦Ni/Co≦約2の範囲とすることにより、強度の向上が顕著に見られる。好ましくは約0.8≦Ni/Co≦約1.3である。しかし、質量濃度比が約Ni/Co<約0.5の場合では、高強度が得られるものの導電率が低下する。また、溶解鋳造時凝固偏析の原因にもなる。一方Ni/Co>約2の場合では、Ni濃度が高すぎるため導電率が低下し、好ましくない。

0025

Crの添加量
本発明では上記のCoを含むCu−Ni−Si系合金にCrを最大で約0.5質量%、好ましくは約0.09〜約0.5質量%、より好ましくは約0.1〜約0.3質量%添加してもよい。Crは適当な熱処理を施すことにより銅母相中でCr単独またはSiとの化合物として析出し、強度を損なわずに導電率の上昇を図ることができる。ただし、約0.09質量%未満ではその効果が小さく、約0.5質量%を超えると強化に寄与しない粗大な介在物となり、加工性及びめっき性が損なわれるため好ましくない。

0026

その他の添加元素
P、As、Sb、Be、B、Mn、Mg、Sn、Ti、Zr、Al、Fe、Zn及びAgは所定量を添加することで様々な効果を示すが、相互に補完し、強度、導電率だけでなく曲げ加工性、めっき性や鋳塊組織の微細化による熱間加工性の改善のような製造性をも改善する効果もあるので上記のCoを含むCu−Ni−Si系合金にこれらの1種又は2種以上を求められる特性に応じて適宜添加することができる。そのような場合、その総量は最大で約2.0質量%、好ましくは約0.001〜2.0質量%、より好ましくは約0.01〜1.0質量%である。逆にこれらの元素の総量が約0.001質量%未満だと所望の効果が得られず、約2.0質量%を超えると導電率の低下や製造性の劣化が顕著になり好ましくない。

0027

次に本発明の銅合金に関しては、Cu−Ni−Si系合金の慣例の製造方法により製造可能であり、当業者であれば組成や求められる特性に応じて最適な製法を選択することができるため特別の説明を要しないと考えられるが、以下に例示目的のための一般的な製造方法を説明する。Cu−Ni−Si系銅合金の一般的な製造プロセスでは、まず大気溶解炉を用い、電気銅、Ni、Si、Co等の原料を溶解し、所望の組成の溶湯を得る。そして、この溶湯をインゴットに鋳造する。その後、熱間圧延を行い、冷間圧延と熱処理を繰り返して、所望の厚み及び特性を有する条や箔に仕上げる。熱処理には溶体化処理と時効処理がある。溶体化処理では、約700〜約1000℃の高温で加熱して、Ni−Si系化合物やCo−Si系化合物をCu母地中に固溶させ、同時にCu母地を再結晶させる。溶体化処理を、熱間圧延で兼ねることもある。時効処理では、約350〜約550℃の温度範囲で1h以上加熱し、溶体化処理で固溶させたNi及びSiの化合物とCo及びSiの化合物を微細粒子として析出させる。この時効処理で強度と導電率が上昇する。より高い強度を得るために、時効前及び/又は時効後に冷間圧延を行なうことがある。また、時効後に冷間圧延を行なう場合には、冷間圧延後に歪取焼鈍(低温焼鈍)を行なうことがある。

0028

但し、前記溶体化処理において加熱後の冷却速度を意識的に高くすると、本発明に係るCu−Ni−Si系銅合金の強度向上効果は更に発揮されることを本発明者は見出した。具体的には、冷却速度を毎秒約10℃以上、好ましくは約15℃以上、より好ましくは毎秒約20℃以上として約400℃〜室温まで冷却するのが効果的である。但し、冷却速度をあまりに高くすると、逆に強度上昇の効果が十分に得られなくなるため、好ましくは毎秒約30℃以下、より好ましくは毎秒約25℃以下である。冷却速度の調整は、当業者に知られた公知の方法で行なうことができる。一般的に単位時間当たりの水量が減少すると冷却速度の低下を招くので、例えば、水冷ノズル増設または単位時間当たりにおける水量を増加することによって冷却速度の上昇を達成することができる。ここで、“冷却速度”とは溶体化温度(700℃〜1000℃)から400℃までの冷却時間を計測し、“(溶体化温度−400)(℃)/冷却時間(秒)”によって算出した値(℃/秒)をいう。

0029

従って、本発明に係る銅合金の製造方法の好適な一実施形態では、
− Ni:約0.5〜約2.5質量%、Co:約0.5〜約2.5質量%、及びSi:約0.30〜約1.2質量%を含有し、残部Cuおよび不可避的不純物から構成され、NiとCoの合計質量のSiに対する質量濃度比([Ni+Co]/Si比)が約4≦[Ni+Co]/Si≦約5であり、NiとCoの質量濃度比(Ni/Co比)が約0.5≦Ni/Co≦約2であるインゴットを溶解鋳造する工程と、
−熱間圧延工程と、
−冷間圧延工程と、
− 約700℃〜約1000℃に加熱後、毎秒10℃以上で冷却する溶体化処理工程と、
−随意的な冷間圧延工程と、
− 約350℃〜約550℃で行なう時効処理工程と、
− 随意的な冷間圧延工程と、
をこの順に行なうことを含む。

0030

また、本発明に係る製造方法の一実施形態では、前記インゴットは更にCrを最大約0.5質量%まで含有することができる。

0031

本発明に係る製造方法の別の一実施形態では、前記インゴットには更にP、As、Sb、Be、B、Mn、Mg、Sn、Ti、Zr、Al、Fe、Zn及びAgよりなる群から選択される1種又は2種以上を合計で最大約2.0質量%まで含有することができる。

0032

なお、当業者であれば、上記各工程の合間に適宜、表面の酸化スケール除去のための研削研磨ショットブラスト酸洗等の工程を行なうことができることは理解できるだろう。

0033

本発明によるCu−Ni−Si系銅合金は特定の実施形態において、0.2%耐力が800MPa以上でかつ導電率が45%IACS以上とすることができ、更には0.2%耐力が840MPa以上でかつ導電率が45%IACS以上とすることができ、更には0.2%耐力が850MPa以上でかつ導電率が45%IACS以上とすることもできる。

0034

本発明のCu−Ni−Si系合金は種々の伸銅品、例えば板、条、管、棒及び線に加工することができ、更に、本発明によるCu−Ni−Si系銅合金は、高い強度及び高い電気伝導性(又は熱伝導性)を両立させることが要求されるリードフレーム、コネクタ、ピン、端子、リレー、スイッチ、二次電池用箔材等の電子部品等に使用することができる。

0035

以下に本発明の具体例を示すが、これら実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。

0036

本発明の実施例に用いる銅合金は、表1に示すようにNi、Co、Cr及びSiの含有量をいくつか変化させた銅合金に適宜Mg、Sn、Zn、Ag、TiおよびFeを添加した組成を有する。また、比較例に用いる銅合金は、それぞれ本発明の範囲外のパラメータをもつCu−Ni−Si系合金である。

0037

表1に記載の各種成分組成の銅合金を、高周波溶解炉で1100℃以上で溶製し、厚さ25mmのインゴットに鋳造した。次いで、このインゴットを900℃以上で加熱後、板厚10mmまで熱間圧延し、速やかに冷却を行った。表面のスケール除去のため厚さ9mmまで面削を施した後、冷間圧延により厚さ0.3mmの板とした。次にNiおよびCoの添加量に応じて950℃で溶体化処理を5〜3600秒行い、これを直ちに冷却速度:約10℃/秒として100℃以下にした。その後0.15mmまで冷間圧延して、最後に添加量に応じて500℃で各1〜24時間かけて不活性雰囲気中で時効処理を施して、試料を製造した。

0038

このようにして得られた各合金につき強度及び導電率の特性評価を行った。強度については圧延行方向での引っ張り試験を行って0.2%耐力(YS)を測定し、導電率(EC;%IACS)についてはWブリッジによる体積抵抗率測定により求めた。
曲げ加工性の評価は、W字型金型を用いて試料板厚と曲げ半径の比が1となる条件で90°曲げ加工を行なった。評価は曲げ加工部表面を光学顕微鏡で観察し、クラックが観察されない場合を実用上問題ないと判断して○とし、クラックが認められた場合を×とした。
応力緩和特性は、EMAS−3003に準拠して行なった。150℃の大気中で、0.2%耐力の80%に相当する曲げ応力負荷し、1000時間後の応力緩和率を評価した。応力緩和特性の良比は、緩和率20%を目安とし、これより低い場合を良好とした。表面特性は半田付け性により評価を行った。半田付け性の評価はメニスコグラフ法で行い、235±3℃の60%Sn−Pb浴に深さ2mmで10秒間浸漬し、半田が完全に濡れるまでの時間、半田濡れ時間を測定した。なお半田付け性評価前の前処理は、アセトン脱脂後、酸洗として10vol%硫酸水溶液に10秒間浸漬し、水洗・乾燥後、25%ロジンエタノール溶液中に試験片を5秒間浸漬させフラックスを塗布した。半田濡れ時間の良否の目安は2秒以下を良好とした。

0039

0040

特性評価の結果について表1を参照しながら述べる。
Coを含まない比較例1と比べて、本発明の実施例1〜16は、飛躍的な強度の向上が見られ、導電率も向上していることがわかる。更に曲げ加工性、応力緩和特性及び半田付け性も良好であることがわかる。そしてCrを添加した実施例10以降は導電率の向上が見られ、更にMgやSn等を添加した実施例19以降は強度の向上も付加されていることが理解できる。
比較例1はCoを含まない例である。強度、導電率共に本発明に比べて劣っているのがわかる。更に、固溶Si濃度が高く、酸化皮膜ができて半田付け性が劣化した。
比較例2はNi及びCoの個々の濃度が不足している例である。そのため、本発明のような強度の顕著な向上が見られなかった。
比較例3は、Niが不足した例である。導電率の向上は見られたが強度の向上が見られなかった。
比較例4は、比較例1とは対照的にNiを含まない例である。導電率の向上を図るべくCrも添加した。導電率は確かに向上したが、Niを含まないため強度の向上が見られなかった。また、晶出物が粗大となり、応力緩和率が低下した。
比較例5もNiを含まないが、比較例4に比べてCoの添加量を高く2.6質量%とした例である。強度及び導電率がCoを含まない比較例1よりも向上したが本発明のような強度の向上は見られない。また、晶出物が粗大となり、応力緩和率が極端に低下した。
比較例6は、Ni/Co比が大きすぎる例である。強度の向上は見られたが導電率が不足し、本発明のような強度と導電率の両立を達成できていない。
比較例7もNi/Co比が大きすぎる例である。比較例6よりもNi/Co比を本発明の規定範囲に近づけたが導電率が不足し、やはり本発明のような強度と導電率の両立は達成できていない。
比較例8もNi/Co比が大きすぎる例である。比較例7よりも更にNi/Co比を本発明の規定範囲に近づけ、臨界条件にかなり近づけたが、規定範囲よりも若干大きいため本発明のような強度と導電率の両立は達成できていない。
比較例9もNi/Co比が大きすぎる例である。Crを加えることで、導電率不足を補おうとしたが、導電率の向上が図れないどころか逆に低下した。Ni/Co比が大きすぎるとCrの効果が充分に発揮されないことを示唆している。更に、半田濡れ性も極端に低下した。
比較例10は、Ni/Co比が小さすぎる例である。Crの寄与もあり、Ni/Co比が高すぎる場合よりも導電率は改善したが、逆に強度が不足した。晶出物が粗大となり、曲げ性も悪くなった。応力緩和率も低下した。
比較例11もNi/Co比が小さすぎる例である。比較例10よりもNi/Co比を本発明の規定範囲に近づけた。強度の向上は見られたが導電率が不足し、本発明のような強度と導電率の両立を達成できていない。更に、晶出物が粗大となり、曲げ性も悪くなった。応力緩和率も低下した。
比較例12もNi/Co比が小さすぎる例である。比較例11に比べてCo濃度を高くして、Coによる強度や導電率への向上効果を期待した。しかし、強度は比較例11と同程度しか得られず、導電率は比較例11に比べて低下してしまった。更に、晶出物が粗大であり、曲げ性及び応力緩和率も悪いままであった。
比較例13は[Ni+Co]/Si比が小さすぎる例である。強度の向上は見られたがCrを含有しているにも拘わらず導電率の向上があまり見られず、本発明のような強度と導電率の両立を達成できていない。また、半田濡れ性も悪かった。
比較例14も[Ni+Co]/Si比が小さすぎる例である。Si濃度が比較例13に比べて高く、熱間圧延時に割れを生じ、特性評価ができなかった。
比較例15は[Ni+Co]/Si比が大きすぎる例である。Crが含有していることも手伝って導電率の向上は見られたが強度の向上が少なく、本発明のような強度と導電率の両立は達成できていない。
比較例16も[Ni+Co]/Si比が大きすぎる例である。比較例15よりもNi濃度を高くした。比較例15に比べて強度は向上したが、やはり本発明のような強度と導電率の両立は達成できていない。
比較例17は実施例5においてCr濃度を過剰に加えた例である。Crが多すぎたため強度及び導電率が低下し、実施例5のような強度と導電率の両立を達成できなくなった。また、粗大晶出物の残留により、曲げ加工性、半田濡れ性、応力緩和率がともに劣化した。
比較例18は実施例5と同様のNi、Co及びSi組成を有するが、他の添加元素が多すぎる例である。導電率が低下し、実施例5のような強度と導電率の両立を達成できなくなった。

0041

図1に、実施例(1〜24)及び曲げ加工性、応力緩和特性及び半田濡れ性が良好であった比較例(2、3、6、7、8、15、16、17)並びにCoを含まない比較例1についての強度(YS)と導電率(EC)の関係を示した。本発明によるCu−Ni−Co−Si系合金が強度と導電率を高い次元で両立できていることが視覚的に理解できる。

0042

冷却速度が強度に与える影響の検討
次に、溶体化処理時の冷却速度が銅合金の強度及び導電率に与える影響を調査した。試験は、先の実施例1〜18(8及び17を除く)に係る銅合金の製造過程において、溶体化処理時の冷却速度を約5℃/秒又は約20℃/秒に変え、それ以外は同一条件とした場合に、それぞれ得られる銅合金の強度及び導電率の変化を調べることで行った。結果を表2に示す。冷却速度を高くする方が強度の向上を図ることができることが理解できる。

0043

0044

これまでの説明によって、本発明が属する分野の当業者であれば、本発明の本質的な特徴の意図から逸脱することなく多くの改変及びその他の実施形態が思い浮かぶであろう。従って、本発明は開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、そのような改変及びその他の実施形態は添付の請求の範囲に含まれることが意図されていることが理解される。

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