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技術 獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対し抗ウイルス活性を有する試料を自然免疫機構のみを有する生物個体またはその培養細胞を利用してスクリーニングする方法、および該抗ウイルス活性を自然免疫機構のみを有する生物個体またはその培養細胞を利用して評価する方法

出願人 株式会社ゲノム創薬研究所
発明者 関水和久
出願日 2005年4月18日 (16年7ヶ月経過) 出願番号 2006-513824
公開日 2008年4月3日 (13年7ヶ月経過) 公開番号 WO2005-116269
状態 特許登録済
技術分野 突然変異または遺伝子工学 酵素、微生物を含む測定、試験
主要キーワード 世代交代 探索過程 環形動物 ミミズ カブトムシ 生存率低下 線形動物門 イソギンチャク
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2008年4月3日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (7)

課題・解決手段

本発明者は、カイコ幼虫核多角体病ウイルスによる感染死が、ヒト臨床でサイトメガロウイルス感染治療薬として用いられるガンシクロビルホスカルネットビダラビンリバビリンにより治療される、という結果を得た。本発明者が見出した知見は、カイコ幼虫などの自然免疫機構のみを有する生物個体またはその培養細胞を利用することで、ヒトなどの獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対し抗ウイルス活性を有する試料スクリーニングおよび該抗ウイルス活性の評価を行うことができることを示している。

概要

背景

すでに本発明者は、カイコ幼虫などの自然免疫機構のみを有する生物を利用して、ヒトなどの獲得免疫機構を有する生物に感染する細菌に対する抗菌活性の評価系を開発したことを報告している。具体的には、カイコ幼虫が黄色ブドウ球菌などのヒトに対する病原性細菌により感染死すること、並びに、ヒト臨床で有効とされる抗生物質が、カイコ幼虫の系でも治療効果を示すことを報告し、抗生物質の治療効果の評価系としてのカイコ幼虫の有用性を提案している(非特許文献1,特許文献1)。また、ヒトの感染症に有効であるとされる抗生物質はカイコ幼虫の系でも治療効果を示した(非特許文献2)。

上記の研究で明らかになった重要な点は、抗菌物質試験管内での細菌増殖阻害効果の有無と、カイコ幼虫の個体レベルでの治療効果の有無とは異なる、ということである。前者をMIC(最小増殖阻害濃度)、後者をED50(治療有効量)で表示した場合、ヒトの臨床で有効とされる抗菌薬では両者の比(ED50/MIC)が例外なく一定値以下を示した。これに対して、ランダムスクリーニングによって得られた合成化合物の大部分は、試験管内での抗菌効果が明瞭であっても、治療効果を示さないことが広く知られている。これらの結果は、試験管内での抗菌活性だけでなく、カイコ幼虫での薬物の体内動態が治療効果に影響を与えていることを意味している。ヒト臨床で有効とされる抗生物質のED50値が、カイコ幼虫と哺乳動物で一致しているという結果(非特許文献2)は、薬物の体内動態について、カイコ幼虫と哺乳動物の間で共通した面があることを示唆している。

無脊椎動物を用いた抗ウイルス薬の治療効果の評価はできないとされてきた。そう考えられている理由として、ヒトに感染するウイルスには、宿主特異性があり、無脊椎動物に対して感染性を持たない、という点があげられる。

WO2001/086287
Kaito et al. Silkworm larvae as an animal model of bacterial infection pathogenic to humans Microbial Pathogenesis 32, 183-190 (2002)
Hamamoto et al. Quantitative evaluation of the therapeutic effects of antibiotic by using silkworms infected with human pathogenic microorganisms. Antimicirob. Agents Chemother. 48, 774-779 (2004)

概要

本発明者は、カイコ幼虫の核多角体病ウイルスによる感染死が、ヒト臨床でサイトメガロウイルス感染治療薬として用いられるガンシクロビルホスカルネットビダラビンリバビリンにより治療される、という結果を得た。本発明者が見出した知見は、カイコ幼虫などの自然免疫機構のみを有する生物個体またはその培養細胞を利用することで、ヒトなどの獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対し抗ウイルス活性を有する試料のスクリーニングおよび該抗ウイルス活性の評価を行うことができることを示している。

目的

本発明は、自然免疫機構のみを有する生物個体またはその培養細胞を利用して、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対し抗ウイルス活性を有する試料をスクリーニングする方法および該抗ウイルス活性の評価方法を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対する、被検試料抗ウイルス活性の有無を評価する方法であって、(a)自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルスおよび被検試料を、該自然免疫機構のみを有する生物の培養細胞に接触させる工程、(b)該自然免疫機構のみを有する生物の培養細胞の感染症状または生存の程度を検出する工程、および(c)被検試料を投与しない場合(対照)と比較して、該被検試料が、該自然免疫機構のみを有する生物の培養細胞の感染症状を改善するか否か、または生存の程度を向上させるか否かを判定する工程、を含む方法。

請求項2

獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対する、被検試料の抗ウイルス活性の有無を評価する方法であって、(a)自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルスおよび被検試料を、該自然免疫機構のみを有する生物個体に投与する工程、(b)該自然免疫機構のみを有する生物個体の感染症状または生存の程度を検出する工程、および(c)被検試料を投与しない場合(対照)と比較して、該被検試料が、該自然免疫機構のみを有する生物個体の感染症状を改善するか否か、または生存の程度を向上させるか否かを判定する工程、を含む方法。

請求項3

以下の工程を含む、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対する、被検試料の抗ウイルス活性の有無を評価する方法。(a)請求項1に記載の方法により、被検試料の抗ウイルス活性の有無を評価する工程(b)工程(a)で抗ウイルス活性を有すると評価された試料について、請求項2に記載の方法により抗ウイルス活性の有無を評価する工程

請求項4

以下の工程を含む、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対する、被検試料の抗ウイルス活性の有無を評価する方法。(a)獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスおよび被検試料を、該獲得免疫機構を有する生物の培養細胞に接触させる工程(b)該獲得免疫機構を有する生物の培養細胞の感染症状または生存の程度を検出する工程(c)被検試料を投与しない場合(対照)と比較して、該被検試料が、該獲得免疫機構を有する生物の培養細胞の感染症状を改善するか否か、または生存の程度を向上させるか否かを判定する工程(d)工程(c)で該獲得免疫機構を有する生物の培養細胞の感染症状を改善する、または生存の程度を向上させると判定された試料について、請求項1に記載の方法により抗ウイルス活性の有無を評価する工程、(e)工程(d)で抗ウイルス活性を有すると評価された試料について、請求項2に記載の方法により抗ウイルス活性の有無を評価する工程

請求項5

以下の工程を含む、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対し抗ウイルス活性を有する試料をスクリーニングする方法。(a)請求項1から4のいずれかに記載の評価方法により、複数の被検試料について、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対する抗ウイルス活性の有無を評価する工程(b)複数の被検試料から、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対して抗ウイルス活性を有すると評価された試料を選択する工程

請求項6

獲得免疫機構を有する生物が哺乳動物である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。

請求項7

哺乳動物がヒトである、請求項6に記載の方法。

請求項8

自然免疫機構のみを有する生物が、無脊椎動物幼虫である、請求項1から7のいずれかに記載の方法。

請求項9

幼虫が大型である、請求項8に記載の方法。

請求項10

無脊椎動物が昆虫である、請求項8または9に記載の方法。

請求項11

昆虫がカイコである、請求項10に記載の方法。

請求項12

自然免疫機構のみを有する生物がカイコ幼虫であり、ウイルスが核多角体病ウイルス細胞質多角体病ウイルス軟化病ウイルス、または濃核病ウイルスである、請求項1から7のいずれかに記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対し抗ウイルス活性を有する試料自然免疫機構のみを有する生物個体またはその培養細胞を利用してスクリーニングする方法、および獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対する抗ウイルス活性を自然免疫機構のみを有する生物個体またはその培養細胞を利用して評価する方法に関する。

背景技術

0002

すでに本発明者は、カイコ幼虫などの自然免疫機構のみを有する生物を利用して、ヒトなどの獲得免疫機構を有する生物に感染する細菌に対する抗菌活性の評価系を開発したことを報告している。具体的には、カイコ幼虫が黄色ブドウ球菌などのヒトに対する病原性細菌により感染死すること、並びに、ヒト臨床で有効とされる抗生物質が、カイコ幼虫の系でも治療効果を示すことを報告し、抗生物質の治療効果の評価系としてのカイコ幼虫の有用性を提案している(非特許文献1,特許文献1)。また、ヒトの感染症に有効であるとされる抗生物質はカイコ幼虫の系でも治療効果を示した(非特許文献2)。

0003

上記の研究で明らかになった重要な点は、抗菌物質試験管内での細菌増殖阻害効果の有無と、カイコ幼虫の個体レベルでの治療効果の有無とは異なる、ということである。前者をMIC(最小増殖阻害濃度)、後者をED50(治療有効量)で表示した場合、ヒトの臨床で有効とされる抗菌薬では両者の比(ED50/MIC)が例外なく一定値以下を示した。これに対して、ランダムスクリーニングによって得られた合成化合物の大部分は、試験管内での抗菌効果が明瞭であっても、治療効果を示さないことが広く知られている。これらの結果は、試験管内での抗菌活性だけでなく、カイコ幼虫での薬物の体内動態が治療効果に影響を与えていることを意味している。ヒト臨床で有効とされる抗生物質のED50値が、カイコ幼虫と哺乳動物で一致しているという結果(非特許文献2)は、薬物の体内動態について、カイコ幼虫と哺乳動物の間で共通した面があることを示唆している。

0004

無脊椎動物を用いた抗ウイルス薬の治療効果の評価はできないとされてきた。そう考えられている理由として、ヒトに感染するウイルスには、宿主特異性があり、無脊椎動物に対して感染性を持たない、という点があげられる。

0005

WO2001/086287
Kaito et al. Silkworm larvae as an animal model of bacterial infection pathogenic to humans Microbial Pathogenesis 32, 183-190 (2002)
Hamamoto et al. Quantitative evaluation of the therapeutic effects of antibiotic by using silkworms infected with human pathogenic microorganisms. Antimicirob. Agents Chemother. 48, 774-779 (2004)

発明が解決しようとする課題

0006

本発明は、自然免疫機構のみを有する生物個体またはその培養細胞を利用して、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対し抗ウイルス活性を有する試料をスクリーニングする方法および該抗ウイルス活性の評価方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

本発明者は、カイコ幼虫の核多角体病ウイルスによる感染死が、ヒト臨床でサイトメガロウイルス感染治療薬として用いられるガンシクロビルホスカルネットビダラビンリバビリンにより治療される、という結果を得た。ヒトの臨床で使われている抗ウイルス薬が、無脊椎動物の個体に対する感染死を抑制することが示されたのは、この結果が初めてである。

0008

本発明者が見出した知見は、カイコ幼虫などの自然免疫機構のみを有する生物個体またはその培養細胞を利用することで、ヒトなどの獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対し抗ウイルス活性を有する試料のスクリーニングおよび該抗ウイルス活性の評価を行うことができることを示している。

0009

即ち、本発明は、自然免疫機構のみを有する生物個体またはその培養細胞を利用した、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対し抗ウイルス活性を有する試料のスクリーニングおよび該抗ウイルス活性の評価に関し、より詳しくは、以下の〔1〕〜〔12〕を提供するものである。
〔1〕 獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対する、被検試料の抗ウイルス活性の有無を評価する方法であって、
(a)自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルスおよび被検試料を、該自然免疫機構のみを有する生物の培養細胞に接触させる工程、
(b)該自然免疫機構のみを有する生物の培養細胞の感染症状または生存の程度を検出する工程、および
(c)被検試料を投与しない場合(対照)と比較して、該被検試料が、該自然免疫機構のみを有する生物の培養細胞の感染症状を改善するか否か、または生存の程度を向上させるか否かを判定する工程、を含む方法。
〔2〕 獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対する、被検試料の抗ウイルス活性の有無を評価する方法であって、
(a)自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルスおよび被検試料を、該自然免疫機構のみを有する生物個体に投与する工程、
(b)該自然免疫機構のみを有する生物個体の感染症状または生存の程度を検出する工程、および
(c)被検試料を投与しない場合(対照)と比較して、該被検試料が、該自然免疫機構のみを有する生物個体の感染症状を改善するか否か、または生存の程度を向上させるか否かを判定する工程、を含む方法。
〔3〕 以下の工程を含む、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対する、被検試料の抗ウイルス活性の有無を評価する方法。
(a)〔1〕に記載の方法により、被検試料の抗ウイルス活性の有無を評価する工程
(b)工程(a)で抗ウイルス活性を有すると評価された試料について、〔2〕に記載の方法により抗ウイルス活性の有無を評価する工程
〔4〕 以下の工程を含む、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対する、被検試料の抗ウイルス活性の有無を評価する方法。
(a)獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスおよび被検試料を、該獲得免疫機構を有する生物の培養細胞に接触させる工程
(b)該獲得免疫機構を有する生物の培養細胞の感染症状または生存の程度を検出する工程
(c)被検試料を投与しない場合(対照)と比較して、該被検試料が、該獲得免疫機構を有する生物の培養細胞の感染症状を改善するか否か、または生存の程度を向上させるか否かを判定する工程
(d)工程(c)で該獲得免疫機構を有する生物の培養細胞の感染症状を改善する、または生存の程度を向上させると判定された試料について、〔1〕に記載の方法により抗ウイルス活性の有無を評価する工程、
(e)工程(d)で抗ウイルス活性を有すると評価された試料について、〔2〕に記載の方法により抗ウイルス活性の有無を評価する工程
〔5〕 以下の工程を含む、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対し抗ウイルス活性を有する試料をスクリーニングする方法。
(a)〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の評価方法により、複数の被検試料について、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対する抗ウイルス活性の有無を評価する工程
(b)複数の被検試料から、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対して抗ウイルス活性を有すると評価された試料を選択する工程
〔6〕 獲得免疫機構を有する生物が哺乳動物である、〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕 哺乳動物がヒトである、〔6〕に記載の方法。
〔8〕 自然免疫機構のみを有する生物が、無脊椎動物の幼虫である、〔1〕から〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕 幼虫が大型である、〔8〕に記載の方法。
〔10〕 無脊椎動物が昆虫である、〔8〕または〔9〕に記載の方法。
〔11〕 昆虫がカイコである、〔10〕に記載の方法。
〔12〕 自然免疫機構のみを有する生物がカイコ幼虫であり、ウイルスが核多角体病ウイルス、細胞質多角体病ウイルス軟化病ウイルス、または濃核病ウイルスである、〔1〕から〔7〕のいずれかに記載の方法。

図面の簡単な説明

0010

核多角体病ウイルスによるカイコ幼虫の感染死量を示すグラフである。核多角体病ウイルス量は、BmN細胞におけるプラーク形成で定量した。それぞれの量のウイルスを5齢カイコ幼虫(1群10匹)の血液中に注射し、生存率の減少を記録した。
ガンシクロビル及びホスカルネットの核多角体病ウイルスによるカイコ幼虫の感染死に対する治療効果を示す写真である。カイコ5齢幼虫の血液中に、核多角体病ウイルス4 x 104p.f.u.を注射し、さらに生理食塩液(左から2番目)ガンシクロビル(0.5mg、右から2番目)あるいは、ホスカルネット(2.5mg、右端)を注射し、120時間後の様子を撮影した。ウイルス液の代わりに、培養液及び生理食塩液を注射したものをコントロール(左端)とした。
カイコ幼虫の生存率低下時間経過を示すグラフである。カイコ5齢幼虫に核多角体病ウイルス4 x 104 p.f.u.を注射し、さらに生理食塩液、ガンシクロビル(0.5mg)あるいは、ホスカルネット(2.5mg)を注射し、カイコ幼虫の生存率の減少を記録した。
抗ウイルス薬による、カイコ幼虫体内でのウイルス粒子の増加の抑制を示すグラフである。カイコ5齢幼虫に核多角体病ウイルス4x104pfuを注射し、さらに生理食塩液、ガンシクロビル(1mg)、あるいはホルカルネット(2.5mg)、ビダラビン(2mg)、リバビリン(1mg)を注射後、3日目に幼虫から血液を採取し、プラークアッセイを行い、血液1mLあたりのウイルス数を求めた。実験はそれぞれの薬剤毎に独立に行った。白棒は生理食塩水を注射したコントロール群黒棒は薬剤を注射した群である。
カイコ幼虫由来培養細胞における、抗ウイルス薬の核多角体病ウイルス増殖の抑制を示すグラフである。24穴培養皿に1x105個のBmN4細胞と、ウイルスを1x105個加え、さらに抗ウイルス薬を様々な濃度になるように添加し、5日間培養した。細胞の培養液を回収し、プラークアッセイを行い1mLあたりのウイルス数を計測した。
抗ウイルス薬の核多角体病ウイルス感染カイコ幼虫に対するED50値と、培養細胞系におけるIC50値を示した図である。IC50はウイルスの増殖が、抗ウイルス薬を加えない場合に比べ、ウイルスの増殖が50%に抑制するのに必要な培養液中での抗ウイルス薬の濃度を示す。
漢方薬の核多角体病ウイルス感染カイコ幼虫に対する治療効果を示したグラフである。1.6x104個の核多角体病ウイルスを注射した幼虫に、さらに市販されている麻黄湯100mg、または小柴胡湯200mg、葛根湯200mgを腸管内に投与し、生存率を経時的に測定した。

発明を実施するための最良の形態

0011

本発明は、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対し抗ウイルス活性を有する試料(候補化合物)を自然免疫のみを有する生物個体またはその培養細胞を利用してスクリーニングする方法、および該抗ウイルス活性を自然免疫のみを有する生物またはその培養細胞を利用して評価する方法を提供する。

0012

獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対する、被検試料の抗ウイルス活性の有無を評価する方法としては、以下の工程を含む方法が挙げられる。
(a)自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルスおよび被検試料を、該自然免疫機構のみを有する生物個体に投与する工程
(b)該自然免疫機構のみを有する生物個体の感染症状または生存の程度を検出する工程
(c)被検試料を投与しない場合(対照)と比較して、該被検試料が、該自然免疫機構のみを有する生物個体の感染症状を改善するか否か、または生存の程度を向上させるか否かを判定する工程

0013

上記方法では、対照と比較して、被検試料が、自然免疫機構のみを有する生物個体の感染症状を改善する、または生存の程度を向上させる場合に、該被検試料が、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対して抗ウイルス活性を有すると評価される。自然免疫機構のみを有する生物個体を利用する評価方法により、抗ウイルス活性を有すると評価された試料は、臨床でも治療効果を発揮する可能性が高く、抗ウイルス薬の有力な候補となる。

0014

自然免疫機構のみを有する生物個体を利用する評価方法は、(1)自然免疫機構のみを有する生物のウイルス感染死に対する治療効果を指標とした抗ウイルス薬の探索、並びに(2)後述するように、細胞培養系においてウイルス増殖阻害効果が示された試料の治療効果試験、に利用できる。

0015

自然免疫機構のみを有する生物個体を利用する評価方法により、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスと自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルスに共通するウイルスの生存に必須な機構を標的とした抗ウイルス薬が探索できる。

0016

本発明において「自然免疫機構」とは、獲得免疫後天性免疫)機構によらない免疫的生体防御機構(先天性免疫機構)を意味する。脊椎動物は、病原体侵入に対し抗体などの侵入者を特異的に認識する分子を利用して生体防御する獲得免疫機構を有するが、無脊椎動物や植物はこのような獲得免疫機構を有しない。本発明における「自然免疫機構のみを有する生物」とは、換言すれば、獲得免疫機構を有しない無脊椎動物および植物である。

0017

本発明においてウイルスを投与する生物としては、自然免疫機構のみを有する生物であれば特に制限はないが、昆虫類に属する生物が好適な一例である。本発明において「昆虫類」とは、節足動物門大顎亜門の一網であって、カマアシムシ類、トビムシ類、無翅昆虫類および有翅昆虫類の4亜綱からなるを意味する。本発明に用いる昆虫類に属する生物としては、特に制限はない。取り扱いの便宜性から幼虫であることが好ましい。

0018

ウイルスや被検試料の投与のしやすさの観点から、幼虫は大型のものであることが好ましい。本発明において「大型の幼虫」とは、体長が1cm以上である幼虫を指す。昆虫類以外の生物としては、例えば、クモサソリ等の昆虫類以外の節足動物ナメクジカタツムリ等の軟体動物ミミズ等の環形動物ヒトデウニ等のキョク皮動物、ギョウ虫、回虫等の線形動物ヒドライソギンチャククラゲ等の腔腸動物、イネ、ダイコン等のすべての植物が挙げられ、これら生物も本発明に用いることが考えられる。

0019

本発明における幼虫としては、例えば、鱗翅目(ガやチョウを含む)及び甲虫目カブトムシを含む)の幼虫が挙げられるが、これらに制限されない。また幼虫としては、世代交代が早く、研究室で容易に飼育でき、遺伝学解析が進んでいるカイコ(節足動物門、大顎亜門、有翅昆虫類、チョウ目に属する)が好ましい。カイコは幼虫が大型であるため、C. elegans(線形動物門双腺網、線虫亜門カンセンチュウ目に属する)などの小型の生物と比較して病原体や薬物の注射が極めて容易である(Okada, E. et al. 1997. J.Seric.Sci.Jpn. 66: 116-122.)。このため、病原体に対する抗菌薬の評価に極めて適していると考えられる。また、カイコ幼虫を使用することは、倫理上の問題もなく、哺乳動物と比較して有用性が高い。

0020

医薬品の治療効果発揮において、化合物の体内動態が大きく影響することが分かっている。しかしながら一般には、体内動態に基づく治療効果の有無を探索の初期段階で調べることは、コストの点で問題があった。カイコ幼虫はサルなどの哺乳動物に比べ取り扱いに要する費用が格段に安価である。そのため、カイコ幼虫を使用することで、抗ウイルス薬の探索の初期段階で、ウイルス感染死に対する被検試料の治療効果の有無を判定することが可能となると期待される。

0021

これまでの抗ウイルス薬の開発においては、ヒト細胞培養系におけるウイルスの増殖阻害を指標に候補化合物が選択され、ウイルス増殖阻害に必要な濃度(IC50)が低い化合物について、サルなどの感染モデルにおける治療効果が評価されてきた。そのため、動物実験に必要なコストが膨大となるという問題があった。カイコ幼虫を用いれば、候補化合物の個体内での動態がよい物質を選択できると考えられる。

0022

本発明者のカイコ幼虫を用いた抗菌薬の探索による研究によれば、試験管内で抗菌活性を示した化合物のうち、ほとんどの化合物は治療効果を示さない。これらの化合物は、体内動態が悪いため、治療効果を示さなかったと考えられる。一方、ヒト臨床での感染治療で有効とされる抗菌薬の中で、ED50/MICの比が10以上のものはなく、いずれもカイコ幼虫の系で効率の高い治療効果を示した。この結果は、カイコ幼虫を用いた系で、ヒト臨床で有効な化合物を探索過程で落とすことはないことを示している。抗ウイルス薬の探索においても、体内動態のよい、治療効果を示す化合物を選択する必要があり、そのためにカイコ幼虫の系は有効であると考えられる。

0023

カイコ幼虫は、手で扱うのに都合がよい大きさであり、また、動きが少ないため、ウイルスや薬剤の注射がきわめて容易にできる。熟練した研究者ならば、1時間に100匹以上のカイコ幼虫を処理することができる。本発明者の経験では、試験管内の培養細胞系での候補化合物の抗ウイルス効果を調べるよりも簡単である。また、候補化合物の個体に対する毒性も簡単に評価することが可能である。

0024

また、カイコ幼虫を利用すれば、抗ウイルス薬のスクリーニングおよび抗ウイルス活性の評価において、従来の哺乳動物を利用する場合と異なり、一個当り入手費用、飼育費用、および実験スペースを大幅に節減することが可能となる。

0025

本発明において、「自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルス」とは、少なくとも自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルスを意味する。よって、「自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルス」には、自然免疫機構のみを有する生物と獲得免疫機構を有する生物の両方に感染するウイルスも含まれる。また、「自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルス」は、少なくとも、自然免疫機構のみを有する生物の少なくとも一種に感染するウイルスである。また、「自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルス」のタイプは特に制限はなく、DNAウイルスであっても、RNAウイルスであってもよい。自然免疫機構のみを有する生物としてカイコ幼虫を用いる場合、カイコ核多角体病ウイルス、細胞質多角体病ウイルス、軟化病ウイルス、濃核病ウイルスが例示できるが、この限りではない。

0026

自然免疫機構のみを有する生物個体を利用する評価方法において、自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルスとしてDNAウイルスを用いれば、獲得免疫機構を有する生物に感染するDNAウイルスに対する抗ウイルス薬、また自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルスとしてRNAウイルスを用いれば、獲得免疫機構を有する生物に感染するRNAウイルスに対する抗ウイルス薬の探索が少なくとも可能である。

0027

本発明において「獲得免疫機構を有する生物」は、好ましくは、コイなどの魚類ニワトリなどの鳥類マウスラットウサギイヌネコ、サル、などの哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。

0028

本発明において「獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルス」の好ましい態様は、宿主に感染して病気を引き起こす能力を有するウイルスであり、例えばサイトメガロウイルス、ヘルペスウイルスなどのDNAウイルス、また、AIDSウイルスなどのレトロウイルスインフルエンザウイルスなどのオルソミキソウイルス、SARSなどのコロナウイルスポリオウイルスなどのピコルナウイルスラッサウイルスを含むアレナウイルスなどのRNAウイルスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。

0029

本発明において、被検試料としては特に制限はなく、抗ウイルス活性の評価を行ないたい所望の試料が用いられる。被検試料としては、例えば、細胞抽出物細胞培養上清発酵微生物産生物海洋生物抽出物植物抽出物、精製若しくは粗精製蛋白質ペプチド非ペプチド性化合物、合成低分子化合物天然化合物、化合物ライブラリーなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。

0030

自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルスおよび被検試料の自然免疫機構のみを有する生物個体への投与は、例えば、腹腔内投与、血液中への注射、飼料エサ)への添加、腸内への注入などの方法で行なうことができる。

0031

自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルスや被検試料の自然免疫機構のみを有する生物個体への投与量は、ウイルス、宿主及び被検試料の種類などにより変動する。一般的には、ウイルスは、100ないし10000p.f.u.(プラークフォーミングユニット)程度の量を投与する。昆虫類に属する生物の幼虫を宿主に用いる場合には、例えば、100ないし10000p.f.u.程度の量を背部から血液中に注射すればよい。

0032

被検試料は、用いる自然免疫機構のみを有する生物個体あるいはその培養細胞を殺傷する最小量を求め、それ以下の量を投与する。当業者であれば、自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルス、自然免疫機構のみを有する生物及び被検試料の種類などに応じて、適切な投与量を選択することが可能であろう。

0033

検出する感染症状としては、例えば、(i)自然免疫機構のみを有する生物(以下、宿主を称す)個体内におけるウイルスの数の増加、(ii)宿主の体重の減少あるいは宿主の体重の増加の阻害、(iii)宿主の血液中の抗ウイルス物質量の低下、(iv)宿主の免疫機能不全、(v)宿主の体液及び体内臓器中の種々の酵素活性の低下などが挙げられる。宿主が昆虫の幼虫であれば、例えば、高齢幼虫へと脱皮しない、あるいは成虫とならないことなどを検出してもよい。本発明においては、また、上記感染症状以外に、宿主の生存の程度を検出してもよい。生存の程度としては、例えば、生存率や生存期間が挙げられる。

0034

また、本発明の評価方法としては、以下の工程を含む方法が挙げられる。
(a)自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルスおよび被検試料を、該自然免疫機構のみを有する生物の培養細胞に接触させる工程
(b)該自然免疫機構のみを有する生物の培養細胞の感染症状または生存の程度を検出する工程
(c)被検試料を投与しない場合(対照)と比較して、該被検試料が、該自然免疫機構のみを有する生物の培養細胞の感染症状を改善するか否か、または生存の程度を向上させるか否かを判定する工程

0035

上記方法では、対照と比較して、被検試料が、自然免疫機構のみを有する生物の培養細胞の感染症状を改善する、または生存の程度を向上させる場合に、該被検試料が、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対して抗ウイルス活性を有すると評価される。

0036

本発明において、自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルスおよび被検試料を、該自然免疫機構のみを有する生物の培養細胞に接触させる方法としては、例えば、培養細胞の培養液にウイルスおよび被検試料を添加することにより行うことができる。被検試料がタンパク質の場合には、例えば、該タンパク質をコードするDNAを含むベクターを、培養細胞へ導入することも可能である。

0037

自然免疫機構のみを有する生物の培養細胞は、当業者に周知の培養細胞を用いることが可能であり、カイコ幼虫由来の培養細胞であれば、例えばBmN細胞を用いることが可能である。

0038

検出する感染症状としては、例えば、自然免疫機構のみを有する生物の培養細胞内におけるウイルスの数の増加などが挙げられる。本発明においては、また、MTTアッセイ等による培養細胞のミトコンドリア代謝活性の低下を指標に該培養細胞の生存の程度を検出してもよい。生存の程度としては、例えば、生存率や生存期間が挙げられる。

0039

また、本発明においては、まず上記の自然免疫機構のみを有する生物の培養細胞を利用して、被検試料の抗ウイルス活性の有無の評価を行い、次いで、自然免疫機構のみを有する生物個体を利用して、抗ウイルス活性を有すると評価された試料の抗ウイルス活性の有無の評価を行うことも可能である。このような方法により、被検試料が、臨床応用可能な抗ウイルス薬の候補であるか否かを、より的確に評価できる。なお、抗ウイルス薬を探索することを目的とする場合、自然免疫機構のみを有する生物の培養細胞を利用する工程、および自然免疫機構のみを有する生物個体を利用する工程のうち、どちらか一方を省略して実施してもよい。

0040

さらに、本発明においては、以下の工程を含む方法で、被検試料の抗ウイルス活性の有無の評価を行うことも可能である。
(a)獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスおよび被検試料を、該獲得免疫機構を有する生物の培養細胞に接触させる工程
(b)該獲得免疫機構を有する生物の培養細胞の感染症状または生存の程度を検出する工程
(c)被検試料を投与しない場合(対照)と比較して、該被検試料が、該獲得免疫機構を有する生物の培養細胞の感染症状を改善するか否か、または生存の程度を向上させるか否かを判定する工程
(d)工程(c)で該獲得免疫機構を有する生物の培養細胞の感染症状を改善する、または生存の程度を向上させると判定された試料について、上記の自然免疫機構のみを有する生物の培養細胞を利用して、被検試料の抗ウイルス活性の有無を評価する工程
(e)工程(d)で抗ウイルス活性を有すると評価された試料について、自然免疫機構のみを有する生物個体を利用して、抗ウイルス活性の有無を評価する工程
上記により、抗ウイルス活性を有すると評価された試料は、臨床でも治療効果を発揮する可能性が高く、抗ウイルス薬の有力な候補となる。

0041

上記工程(a)〜(c)において、獲得免疫機構を有する生物と該生物に感染するウイルスの種類は、特に制限されない。本発明においては、例えば、ヒト培養細胞にヒトに感染する所望のウイルスと被検試料を接触させ、当業者に周知の方法で、被検試料が該ヒト培養細胞の感染症状を改善するか否か、または生存の程度を向上させるか否かを判定することができる。

0042

以下に上記方法の具体例を示すが、この方法に限定されるものではない。上記方法としては、例えば、(1)被検試料のヒトウイルスに対する抗ウイルス作用を、ヒトの培養細胞を用いたウイルス増殖系で、IC50aとして求める工程、(2)その試料のカイコ核多角体病ウイルスに対する抗ウイルス作用を、カイコ幼虫の培養細胞(例えばBmN細胞)を用いた核多角体病ウイルス増殖系で、IC50bとして求める工程、(3)その試料のカイコ幼虫に対する核多角体病ウイルスの感染死阻害効果をED50として求める工程を含む方法が挙げられる。IC50aの値が低いことは、その化合物の標的ウイルスに対する作用を判断する基準として重要である。さらに、ED50/IC50bの値は、その化合物のカイコ幼虫の系での治療効果を判断する基準となる。この値が小さいほど、被検試料のカイコ幼虫の体内動態がよく、治療効果が高いことを意味している。

0043

本発明においては、上記の種々の評価方法を利用して、複数の被検試料について、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対する抗ウイルス活性の有無を評価し、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対して抗ウイルス活性を有すると評価された試料を選択することも可能である。本発明は、このような獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対し抗ウイルス活性を有する試料をスクリーニングする方法もまた提供するものである。
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。

0044

以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
核多角体病ウイルス(核多角体形成遺伝子に変異を与え、経口感染ができなくなった変異体)のタイターは、カイコ幼虫由来培養細胞BmNを用いて、ソフトアガー上でのプラーク形成能により計測した。

0045

カイコ幼虫(Hu・Yo x Tukuba・Ne)は種から購入し、シルクメート2S(日本農産)を与えて4齢眠状態まで生育させ、1〜3日放置した後、再びを与えて1日後に核多角体病ウイルス液0.05mlをテルモシリンジ(1mL)により血液内注射した。さらに、続けて0.6%NaClに溶解した抗ウイルス薬0.05mlを血液内注射した。1群10匹とし、カイコ幼虫の生存率を少なくとも5日間継続して観察した。

0046

1.カイコ幼虫の核多角体病ウイルスによる感染死
図1は核多角体病ウイルスをカイコ幼虫の血液内に注射した場合の、カイコ幼虫の生存率の変化を示している。ウイルス量に依存したカイコ幼虫の感染死が観察された。また、40p.f.u.のウイルスでも感染死がみられることから、この系では、少数のウイルス粒子で感染死が引き起こされると考えられる。

0047

2.核多角体病ウイルスによるカイコ幼虫の感染死に対する、ガンシクロビル及びホスカルネットの治療効果
ガンシクロビル及びホスカルネットは、それぞれ核酸誘導体リン酸類似物質である。前者はウイルス遺伝子にコードされたチミジンキナーゼによりリン酸化されてDNA合成基質となり、その結果DNA合成を阻害する。また、後者は、ウイルスのDNAポリメラーゼ阻害剤である。これらは、ヒトのサイトメガロウイルスやヘルペスウイルスによる感染症治療薬として臨床に用いられている。図2、3に示すように、4 x 104 p.f.u.の核多角体病ウイルスの血液内注射による感染死は、カイコ幼虫1匹あたり0.5mgのガンシクロビル、あるいは、2.5mgのホスカルネットを注射することにより、明瞭に抑制された。ウイルス注射後120時間後には、カイコ幼虫の全数が死亡したが、そのとき50%を生存させた抗ウイルス薬量(ED50)は、ガンシクロビルでは0.05mg/g・幼虫、ホスカルネットでは0.6mg/g・幼虫であった。また、ビダラビンでは0.145mg/g・幼虫、リバビリンでは0.01mg/g・幼虫であった。これらの値は、ヒトの治療量の4〜10倍である。

0048

3.抗ウイルス薬による、カイコ幼虫体内でのウイルスの増殖抑制
図4に示すように、抗ウイルス薬の投与によりカイコ幼虫でのウイルスの増殖が抑制される。従って、抗ウイルス薬の核多角体病ウイルスによるカイコ幼虫で感染死の抑制は、体内でウイルスの増殖を抑制するためであると考えられる。

0049

4.カイコ幼虫由来培養細胞での抗ウイルス薬のウイルス増殖抑制
図5のように抗ウイルス薬の濃度依存に、培養細胞に感染させたウイルスの増殖が抑制される。この系においてウイルスの増殖を抗ウイルス薬無しの場合に比べ50%に抑制を示す濃度をIC50とし、ED50/IC50値を算出したところ、図6のように3.0以下となった。この値は、新規の抗ウイルス薬の治療効果を評価する上で参照になる値である。

0050

5.核多角体病ウイルス感染カイコ幼虫に対する漢方薬の治療効果
抗ウイルス効果があると考えられているが、その効果を示す化合物が明らかにされていない漢方薬について、核多角体病ウイルス感染カイコ幼虫に対する治療効果を検討した。図7に示すように、検討した麻黄湯、小柴胡湯、葛根湯の3つの漢方薬のうち、麻黄湯に延命効果があることがわかった。さらに、麻黄湯を構成する生薬のうち、ケイヒにカイコ幼虫の核多角体病ウイルスによる感染に対し延命効果があることがわかった。これらの結果は、本発明を用いて未知の抗ウイルス薬を発見できることを示している。

0051

無脊椎動物などの自然免疫機構のみを有する生物を用いた抗ウイルス薬の治療効果の評価はできないとされてきた。本発明者は、このような技術常識のもとで、自然免疫機構のみを有する生物個体またはその培養細胞を用いても、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスに対し抗ウイルス活性を有する試料のスクリーニングおよび該抗ウイルス活性の評価を行うことができることを世界で初めて見出した。

0052

本発明によれば、獲得免疫機構を有する生物に感染しないが、自然免疫機構のみを有する生物には感染するウイルスを用いた場合であっても、獲得免疫機構を有する生物に感染するウイルスと自然免疫機構のみを有する生物に感染するウイルスに共通した機構を標的とした抗ウイルス薬を探索することができる。さらに本発明によれば、ウイルス感染死に対する被検試料の治療効果を個体レベルで評価することができる。

0053

本発明の方法のうち、自然免疫機構のみを有する生物個体を利用する方法を使用することで、従来のヒト培養細胞系を利用した方法と比較して、より効率的に、臨床応用可能な抗ウイルス薬の候補化合物を単離・同定できる。また、本発明の方法で使用される自然免疫機構のみを有する生物個体またはその培養細胞は、従来の方法で利用されているサルなどの感染モデルと比較して、低コストであり、また扱いやすい。すなわち、本発明により、低コストかつ簡便な抗ウイルス薬の候補化合物のスクリーニング方法および評価方法が提供できる。

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