図面 (/)

技術 培養容器、軟骨細胞培養方法および軟骨細胞評価方法

出願人 田谷正仁株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング
発明者 紀ノ岡正博田谷正仁
出願日 2005年3月30日 (15年10ヶ月経過) 出願番号 2006-511874
公開日 2008年2月21日 (13年0ヶ月経過) 公開番号 WO2005-095577
状態 特許登録済
技術分野 微生物・酵素関連装置 酵素、微生物を含む測定、試験 微生物、その培養処理 医療用材料
主要キーワード 三次元ステージ ホール処理 繊維状体 スポンジ化 人工コラーゲン 三次元形態 細胞数比率 グレイレベル値
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2008年2月21日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (16)

課題・解決手段

本発明は、軟骨細胞形質を維持した状態で細胞増殖が可能な培養容器を提供することを目的とする。このため、培養容器を、表面に未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲン層を備えるように構成する。この培養容器にて細胞を培養することにより、軟骨細胞の形質を維持させあるいは潜在的に軟骨細胞を有する細胞の形質を発現させることができる。

概要

背景

インビトロにおいて細胞を培養し、医療や研究に利用する技術が知られている。例えば、平面培養単層培養)に代表される二次元培養によって増殖させた軟骨細胞を細胞懸濁液の状態で関節内に注入することによって、関節部の疾患を治療する技術が開示されている(Brittberg M.Lindahl A.Nilsson A.Ohlsson C.Isaksson O.Peterson L.,“The New England Journal of Medicine”,1994,331,14,p.889−895)。しかしながら、軟骨細胞は平面培養を継続すると線維芽様細胞脱分化してしまうことが知られているため、軟骨細胞の形質を維持したまま培養する技術が研究されている。
このような技術の1つとして、UV(紫外線架橋したII型コラーゲン塗布面上で軟骨細胞を培養することによって、軟骨細胞の形質を維持できることが開示されている(M.Shakibaei et al,“Cell Biology International”,1997,21,2,p.115−125)。また、一旦脱分化した軟骨細胞であっても、コラーゲンゲル包埋して三次元培養することによって、軟骨細胞を再分化させる方法も開示されている(特表2003−534792号)。また、人工材料細胞外マトリクス成分などで構成された足場材料に軟骨細胞を担持させ、三次元培養することによって軟骨細胞の形質を維持できることも知られている。例えば、コラーゲンゲルに軟骨細胞を包埋させた状態で培養した培養軟骨を関節内に移植することによって、関節部の疾患を治療する技術がある(越智光夫ら,“日本醫事新報”,1998,3875,p.33−36)。その一方で、上皮細胞架橋コラーゲンフィルム被覆した培養面を有する培養容器で培養すると分化が促進されることが開示されている(特開平08−038165号公報)。

概要

本発明は、軟骨細胞の形質を維持した状態で細胞増殖が可能な培養容器を提供することを目的とする。このため、培養容器を、表面に未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲン層を備えるように構成する。この培養容器にて細胞を培養することにより、軟骨細胞の形質を維持させあるいは潜在的に軟骨細胞を有する細胞の形質を発現させることができる。

目的

本発明は上述の背景技術を鑑み、軟骨細胞の形質を維持した状態で細胞増殖が可能な培養容器および軟骨細胞培養方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲン層を備える、培養容器

請求項2

前記コラーゲン層は前記表面1cm2あたり0.5mg以上のコラーゲンを含有する、培養容器。

請求項3

前記コラーゲン層はI型コラーゲンを含む、請求項1または2に記載の培養容器。

請求項4

軟骨細胞を培養するための培養容器である、請求項1〜3のいずれかに記載の培養容器。

請求項5

二次元培養用である、請求項1〜4のいずれかに記載の培養容器。

請求項6

前記コラーゲン層は乾燥している、請求項1〜5のいずれかに記載の培養容器。

請求項7

前記コラーゲン層は、コラーゲンがゲル化する条件が付与されるときコラーゲンの繊維状体によるネットワーク構造を形成する、請求項1〜6のいずれかに記載の培養容器。

請求項8

未架橋又は低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲンゲル層を備える、培養容器。

請求項9

前記コラーゲンゲル層は、コラーゲンの繊維状体によるネットワーク構造を有している、請求項8に記載の培養容器。

請求項10

前記コラーゲンゲル層は、未架橋又は低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲン層が不活性ガス主体とする不活性ガス雰囲気下で保存された後にゲル化されて得られる、請求項8又は9に記載の培養容器。

請求項11

培養容器の製造方法であって、培養容器にコラーゲンを含有するコラーゲン溶液を完全に架橋させることなく乾燥させて培養容器にコラーゲン層を形成する工程を備える、製造方法。

請求項12

前記コラーゲン層を不活性ガスを主体とする不活性ガス雰囲気下で保存する工程を備える、請求項11に記載の製造方法。

請求項13

前記コラーゲン層をゲル化させる工程を備える、請求項11又は12に記載の製造方法。

請求項14

軟骨細胞の培養方法であって、表面に未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲンゲル層の該表面に軟骨細胞を播種する播種工程と、該表面上で軟骨細胞を増殖させる培養工程と、を具備する培養方法。

請求項15

前記コラーゲンゲル層は前記表面1cm2あたり0.5mg以上のコラーゲンを含有する、請求項14に記載の培養方法。

請求項16

前記コラーゲンゲル層はI型コラーゲンを含む、請求項14または15に記載の培養方法。

請求項17

前記コラーゲンゲル層は、コラーゲンの繊維状体によるネットワーク構造を有している、請求項14〜16のいずれかに記載の培養方法。

請求項18

軟骨細胞を評価する方法であって、表面に未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲンゲル層の該表面に軟骨細胞を播種する播種工程と、該コラーゲンゲル層表面で軟骨細胞を増殖させる培養工程と、該コラーゲンゲル層表面の個々の細胞形状に基づいて分化の状態を評価する評価工程と、を具備する軟骨細胞評価方法

請求項19

播種工程において播種される軟骨細胞は、コラーゲンゲル層を有しない培養面で培養した細胞である、請求項18に記載の軟骨細胞評価方法。

請求項20

前記コラーゲンゲル層は前記表面1cm2あたり0.5mg以上のコラーゲンを含有する、請求項18または19に記載の軟骨細胞評価方法。

請求項21

前記評価工程は細胞の円形度に基づいて評価する工程である、請求項18〜20のいずれかに記載の軟骨細胞評価方法。

請求項22

前記円形度は個々の細胞の投影像周長投影面積円相当周で除算した値である、請求項21に記載の軟骨細胞評価方法。

請求項23

前記円形度が所定の閾値以上の細胞を軟骨細胞の形質を維持していると判定する、請求項22に記載の軟骨細胞評価方法。

請求項24

前記コラーゲンゲル層は、コラーゲンの繊維状体によるネットワーク構造を有している、請求項18〜23いずれかに記載の軟骨細胞評価方法。

請求項25

前記評価工程は、前記円形度が0.8以上の細胞数の測定した全細胞数に対する割合(%)を評価する工程である、請求項21〜24のいずれかに記載の軟骨細胞評価方法。

請求項26

軟骨細胞の三次元培養体の生産方法であって、表面に未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲンゲル層の該表面に軟骨細胞を播種する播種工程と、該コラーゲンゲル層表面で軟骨細胞を増殖させる二次元培養工程と、前記培養工程において増殖された軟骨細胞を用いて三次元培養を実施する三次元培養工程と、を具備する生産方法。

請求項27

前記二次元培養工程は継代培養工程である、請求項26に記載の生産方法。

請求項28

前記培養工程における前記コラーゲンゲル層表面の個々の細胞形状に基づいて分化の状態を評価する評価工程を備え、前記三次元培養工程は前記評価工程において軟骨細胞の形質を維持していると判定された細胞を用いて三次元培養を実施する工程である、請求項26または27に記載の生産方法。

請求項29

未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲン層を備えた人工移植物

請求項30

未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲンゲル層と、当該コラーゲンゲル層表面の軟骨細胞と、を備える、人工移植物。

請求項31

表面改質された人工移植物の製造方法であって、人工移植物の表面に未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲンゲル層を形成する工程と、前記コラーゲンゲル層表面で軟骨細胞を培養する工程と、を備える、製造方法。

技術分野

本発明は培養容器軟骨細胞培養方法、軟骨細胞評価方法、軟骨細胞の三次元培養体の生産方法および人工移植物に関する。

背景技術

インビトロにおいて細胞を培養し、医療や研究に利用する技術が知られている。例えば、平面培養単層培養)に代表される二次元培養によって増殖させた軟骨細胞を細胞懸濁液の状態で関節内に注入することによって、関節部の疾患を治療する技術が開示されている(Brittberg M.Lindahl A.Nilsson A.Ohlsson C.Isaksson O.Peterson L.,“The New England Journal of Medicine”,1994,331,14,p.889−895)。しかしながら、軟骨細胞は平面培養を継続すると線維芽様細胞脱分化してしまうことが知られているため、軟骨細胞の形質を維持したまま培養する技術が研究されている。
このような技術の1つとして、UV(紫外線架橋したII型コラーゲン塗布面上で軟骨細胞を培養することによって、軟骨細胞の形質を維持できることが開示されている(M.Shakibaei et al,“Cell Biology International”,1997,21,2,p.115−125)。また、一旦脱分化した軟骨細胞であっても、コラーゲンゲル包埋して三次元培養することによって、軟骨細胞を再分化させる方法も開示されている(特表2003−534792号)。また、人工材料細胞外マトリクス成分などで構成された足場材料に軟骨細胞を担持させ、三次元培養することによって軟骨細胞の形質を維持できることも知られている。例えば、コラーゲンゲルに軟骨細胞を包埋させた状態で培養した培養軟骨を関節内に移植することによって、関節部の疾患を治療する技術がある(越智光夫ら,“日本醫事新報”,1998,3875,p.33−36)。その一方で、上皮細胞架橋コラーゲンフィルム被覆した培養面を有する培養容器で培養すると分化が促進されることが開示されている(特開平08−038165号公報)。

しかしながら、M.Shakibaei et alには、II型コラーゲン塗布面上の培養では、軟骨細胞の形質は維持されるものの、細胞増殖が期待できないことが開示されている。一方、本発明者らによれば、特開平08−038165号公報に記載の架橋コラーゲンフィルム上で軟骨細胞を培養しても軟骨細胞の形質を維持できないこと、すなわち分化を維持することができないことを確認するに至った。また、特表2003−534792号に記載された技術に関しては、脱分化したすべての軟骨細胞がコラーゲンゲル内で再分化するとはいえず、完全に脱分化した細胞ではコラーゲンゲルに包埋して培養しても再分化しないことも確認した。したがって、現在までのところ、脱分化した細胞の内、再分化する細胞と再分化しない細胞との判断は三次元培養して確認するしかなく、三次元培養することなく予め再分化が可能な細胞であるか否かを評価する方法は確立されていない。なお、ゲル包埋による三次元培養では、平面培養に比べて細胞増殖が遅いため、効率的に三次元培養体を得ることが困難であるとともに、細胞が再分化するか否かを判断する手法としては採用することは困難であった。
本発明は上述の背景技術を鑑み、軟骨細胞の形質を維持した状態で細胞増殖が可能な培養容器および軟骨細胞培養方法を提供することを一つの課題とする。また、軟骨細胞の形質を潜在的に具備する細胞であるか否かを評価することのできる軟骨細胞評価方法を提供することも他の一つの課題とする。さらにまた、効率的に軟骨細胞の三次元培養体を生産する方法を提供することも他の一つの課題とする。
課題を解決するための手段
本発明者らは、上記課題につき検討を重ねた結果、コラーゲンゲル層表面で軟骨細胞を培養することで脱分化を抑制しその形質をよく維持して増殖させることができるという知見を得て本発明を完成した。本発明によれば、以下の手段が提供される。
本発明の一つの態様によれば、未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲン層を備える、培養容器が提供される。この培養容器において、前記コラーゲン層は前記表面1cm2あたり0.5mg以上のコラーゲンを含有することが好ましい形態である。これらの培養容器において、前記コラーゲン層はI型コラーゲンを含むことが好ましい形態である。これらのいずれかの培養容器は、軟骨細胞を培養するための培養容器であることが好ましく、また平面培養(単層培養)に代表される二次元培養用であることが好ましい形態である。さらに、前記コラーゲン層は乾燥していてもよい。さらにまた、前記コラーゲン層は、コラーゲンがゲル化する条件が付与されるときコラーゲンの繊維状体によるネットワーク構造を形成する層とすることができる。前記コラーゲン層は、培養容器の培養面に供給したコラーゲン溶液中のコラーゲンを完全に架橋させることなく乾燥して得たコラーゲン層とすることもできる。
また、本発明の他の一つの態様によれば、未架橋又は低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲンゲル層を備える、培養容器も提供される。前記コラーゲン層におけるコラーゲンは、繊維化されていることが好ましく、前記コラーゲンゲル層は、コラーゲンの繊維状体によるネットワーク構造を有することが好ましい。また、前記コラーゲンゲル層は、未架橋又は低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲン層が不活性ガス主体とする不活性ガス雰囲気下で保存された後にゲル化されて得られるものであってもよい。
また、本発明の他の一つの態様によれば、培養容器の製造方法であって、コラーゲン溶液を完全に架橋させることなく乾燥させて培養容器にコラーゲン層を形成する工程を備える、製造方法が提供される。また、この態様において、前記コラーゲン層を不活性ガスを主体とする不活性ガス雰囲気下で保存する工程を備えることもできる。さらに、前記コラーゲン層をゲル化させる工程を備えることもできる。
また、本発明の他の一つの態様によれば、軟骨細胞の培養方法であって、表面に未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲンゲル層の該表面に軟骨細胞を播種する播種工程と、該表面上で軟骨細胞を増殖させる培養工程と、を具備する培養方法が提供される。この培養方法においては、コラーゲンゲル層は前記表面1cm2あたり0.5mg以上のコラーゲンを含有することが好ましい形態である。また、前記コラーゲンゲル層はI型コラーゲンを含むことが好ましい形態である。さらにまた、前記コラーゲンゲル層は、コラーゲンの繊維状体によるネットワーク構造を有していてもよい。さらに、前記コラーゲンゲル層は、培養容器の培養面に供給したコラーゲン溶液中のコラーゲンを完全に架橋させることなく乾燥して得たコラーゲン層に液体を供給して形成される層とすることができる。さらにまた、上記いずれかの培養容器のコラーゲン層に液体を供給してコラーゲンゲル層を形成してもよい。
さらに、本発明の他の一つの態様によれば、軟骨細胞を評価する方法であって、表面に未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲンゲル層の該表面に軟骨細胞を播種する播種工程と、
該コラーゲンゲル層表面で軟骨細胞を増殖させる培養工程と、該コラーゲンゲル層表面の個々の細胞形状に基づいて分化の状態を評価する評価工程と、を具備する軟骨細胞評価方法が提供される。この軟骨細胞評価方法においては、播種工程において播種される軟骨細胞は、コラーゲンゲル層を有しない培養面で培養した細胞とすることができる。また、前記コラーゲンゲル層は前記表面1cm2あたり0.5mg以上のコラーゲンを含有することが好ましい形態である。さらに、これらの軟骨細胞評価方法においては、前記評価工程は細胞の円形度に基づいて評価する工程であることが好ましい。前記円形度は個々の細胞の投影像周長投影面積円相当周で除算した値とすることができ、この形態において、前記円形度が所定の閾値以上の細胞を軟骨細胞の形質を維持していると判定することが好ましい。具体的には、円形度が0.8以上であることが好ましい。なお、前記コラーゲンゲル層は、コラーゲンの繊維状体によるネットワーク構造を有していてもよい。さらに、前記評価工程は、前記円形度が0.8以上の細胞数の測定した全細胞数に対する割合(%)を評価する工程としてもよい。
本発明の他の一つの態様によれば、軟骨細胞の三次元培養体の生産方法であって、表面に未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲンゲル層の該表面に軟骨細胞を播種する播種工程と、該コラーゲンゲル層表面で軟骨細胞を増殖させる二次元培養工程と、前記培養工程において増殖された軟骨細胞を用いて三次元培養を実施する三次元培養工程と、を具備する生産方法が提供される。この生産方法においては、前記二次元培養工程は継代培養工程であることが好ましい。また、これらの生産方法においては、前記培養工程における前記コラーゲンゲル層表面の個々の細胞形状に基づいて分化の状態を評価する評価工程を備え、前記三次元培養工程は前記評価工程において軟骨細胞の形質を維持していると判定された細胞を用いて三次元培養を実施する工程とすることができる。
また、本発明の他の一つの態様によれば、未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲン層を備えた人工移植物も提供される。さらに、本発明によれば、未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲンゲル層と、当該コラーゲンゲル層表面の軟骨細胞と、を備える人工移植物も提供される。さらにまた、表面改質された人工移植物の製造方法であって、人工移植物の表面に未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲンゲル層を形成する工程と、前記コラーゲンゲル層表面で軟骨細胞を培養する工程と、
を備える、製造方法も提供される。

図面の簡単な説明

図1は、本発明の培養容器の作製例を示す図である。
図2は、本発明の軟骨細胞評価方法に用いる細胞観察装置の一例を示す図である。
図3は、実施例1の二次元培養時の軟骨細胞のSEM像を示す図である。
図4は、比較例1の二次元培養時の軟骨細胞のSEM像を示す図である。
図5は、実施例1のII型コラーゲン免疫染色像を示す図である。
図6は、比較例1のII型コラーゲン免疫染色像を示す図である。
図7は、実施例1および比較例1の三次元培養における168時間および504時間後の細胞数の変化を示す図である。
図8実施例2および比較例2の三次元培養における168時間および504時間後の細胞数の変化を示す図。
図9は、実施例3および比較例3の三次元培養における168時間および504時間後の細胞数の変化を示す図である。
図10は、コラーゲン濃度の異なるコラーゲンゲルにおける軟骨細胞の培養状態を示す図((a)〜(c))である。
図11は、コラーゲン濃度に対するGAG産生量を示す図である。
図12は、コラーゲン濃度に対して所定の円形度を有する軟骨細胞数比率を示す図である。
図13は、円形度の分布を示すヒストグラムを示す図((a)、(b))である。
図14は、実施例6におけるコラーゲンゲル層の保存工程を示す図である。
図15は、各保存条件で保存したコラーゲンゲル面での円形細胞率を示すグラフである。
図16は、各保存条件下におけるコラーゲンゲルにおけるコラーゲンの状態を示す電子顕微鏡写真である。
なお、以上の図面において、10は細胞観察装置を示し、11は支持台を示し、13はLEDランプを示し、15はCCDカメラを示し、16は三次元ステージを示し、17はインキュベータを示し、19は制御装置を示し、20は培養容器を示している。

発明を実施するための最良の形態

以下、本発明の各種形態について詳細に説明する。
本発明の培養容器は、未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲン層を備えている。この培養容器によれば、このコラーゲン層をゲル化して得たコラーゲンゲル層は、軟骨細胞を平面培養した場合であっても、軟骨細胞の形質を維持した状態のまま、細胞増殖させることができる。また、潜在的に軟骨細胞の形質を有した細胞であるか否かを容易に判定することができる。また、このコラーゲン層をゲル化したときには、繊維状態のコラーゲンによるネットワーク構造を有するコラーゲンゲル層を形成することができる。
さらに、このコラーゲン層を不活性ガスを主体とする不活性ガス雰囲気下で保存することにより、その後のゲル化によりコラーゲンの繊維状体のネットワーク構造を形成させることができ、保存後においても軟骨細胞の形質を維持しまたは潜在的な軟骨細胞における軟骨細胞の形質を顕在化させる培養状態を提供できるものとなっている。
以下、本発明の培養容器について説明するとともに、培養容器の製造方法、本発明の培養容器を用いた軟骨細胞の培養方法、その評価方法等について説明する。
(培養容器)
本発明の培養容器としては、特に限定しないで従来公知の各種の培養容器を用いることができる。本発明においてはコラーゲン層を形成するのに適した平面または曲面の面を培養面相当部位として備えていることが好ましい。このような培養容器としては、各種の平面培養用(単層培養用)容器を挙げることができ、具体的には、T型フラスコ、角型フラスコ、TD型フラスコ、シャーレ等を挙げることができる。培養表面の材質も限定しないで用いることができる。本培養容器は軟骨細胞の増殖に好ましく用いられるため、軟骨細胞を培養するのに用いられる培養容器であることが好ましい。
コラーゲン層を形成する培養容器の部位は、培養液および培養細胞と接触する培養容器内の表面とすることができるが、培養キャビティの底面を構成する部位であることが好ましい。
本培養容器は、表面に未架橋または低架橋状態のコラーゲンを有するコラーゲン層を有している。表面に未架橋または低架橋の状態のコラーゲン層を有することにより、培養細胞、特に軟骨細胞の分化を維持して、すなわち、脱分化を抑制して細胞増殖させることができる。
未架橋または低架橋の状態のコラーゲンとは、コラーゲン構成分子α鎖など)が互いに架橋しないかあるいは低い架橋度で含まれている状態を意味している。したがって、未架橋または低架橋状態のコラーゲンとは、架橋しないで存在するコラーゲン構成分子を含んでいる。なお、コラーゲンの架橋状態は、その構成分子が紫外線などの電子線のほか熱や各種の架橋剤によって相互に架橋することによって形成される。
このような未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含むコラーゲン層は、架橋反応を伴わないコラーゲン層形成工程あるいは架橋程度を制限した架橋反応を伴ったコラーゲン層形成工程を実施することによって得ることができる。ここで架橋反応を伴わないコラーゲン層の形成工程とは、物理的架橋あるいは化学的架橋のいずれの架橋反応も行わないことに加えて、意図しない架橋を回避するため、一連の操作において紫外線等への曝露を回避することも含めることができる。また、架橋程度を制限した架橋反応を伴ったコラーゲン層形成工程とは、未架橋のコラーゲン構成分子を残存可能に電子線照射量や架橋剤添加量を調整して架橋反応を行なうことによって実施することができる。なお、架橋させる場合には、架橋はコラーゲン溶液の乾燥前、乾燥中および乾燥後のいずれであってもよい。
コラーゲン層におけるコラーゲンが本発明において有効な未架橋または低架橋の状態であるとき、すなわち、培養細胞の形質を維持して培養可能とする有効量の未架橋のコラーゲン構成分子が残留しているときには、軟骨細胞や軟骨細胞に由来する線維芽細胞様の細胞の良好な培養状態を形成することができる。例えば、ポリスチレン面を有する通常の培養容器で脱分化したように観察される軟骨細胞由来の線維芽様細胞であってコラーゲンゲル包理培養にて軟骨細胞の形質を取り戻すことのできる細胞を、当該コラーゲン層をゲル化して得たコラーゲンゲル層表面において培養したとき、好ましくはその細胞数の50%以上が球形状の形態として観察可能となっている。例えば、上記軟骨細胞由来の線維芽様細胞につき、コラーゲンゲル包理培養とコラーゲンゲル層表面における培養とを並行して行なうことにより、軟骨細胞の形質を取り戻した細胞とコラーゲンゲル層表面で球形状の形態で観察可能となる細胞との関係を知ることができる。なお、球形状を呈する細胞数の比率は、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは約100%である。なお、球形状の形態を有しているか否かは、後述するように細胞の円形度に基づいて判断することができる。
以上のことから、本発明の培養容器によれば、コラーゲンが未架橋または低架橋であるために、軟骨細胞の分化状態を維持して培養可能又は潜在的な分化能を顕在化させることができるものとなっており、この結果、潜在的な分化能を有しているか否かを判断可能となっていると考えられる。本発明の培養容器のコラーゲン層をゲル化すると、コラーゲンが未架橋または低架橋であるにもかかわらず繊維化が進み繊維状体のコラーゲンによるネットワーク構造が形成されることがわかっている(実施例6参照)。本発明を拘束するものではないが、こうした未架橋または低架橋コラーゲンによるネットワーク構造が培養細胞の分化能を顕在化等させることができると推測される。
コラーゲン層は、培養時に培養液等の水分により培養表面に均一なコラーゲンゲル層を形成できる程度に形成されていればよいが、好ましくは、コラーゲン層は培養表面の全体を均一に被覆する。コラーゲン層の厚みは特に限定しないが、培養容器下方からの観察を妨げない程度の厚さとすることが好ましい。
コラーゲン層を形成するコラーゲンとしては、特に限定しないで入手あるいは調製可能なコラーゲンを用いることができる。例えば、酸可溶性コラーゲン中性塩可溶性コラーゲンアテロコラーゲンなどの酵素可溶化コラーゲンアルカリ可溶化コラーゲンおよびこれらのコラーゲンに対してスクシニル化アシル化メチル化などの化学修飾をした化学修飾コラーゲンを用いることができる。また,コラーゲンのモチーフを有する合成ペプチド人工コラーゲン)を用いることができる。好ましくは、酸可溶性コラーゲンや、アテロコラーゲンなどの酵素可溶化コラーゲンを用いる。酸可溶性コラーゲンは、コラーゲン層を作製する操作の容易性から、酵素可溶化コラーゲンは安全性の観点からそれぞれ好ましい。また、コラーゲン層を構成するコラーゲンの種類は特に限定しないで、I型、II型III型、IVおよびV型等を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。このうち、I型コラーゲンは、脱分化した軟骨細胞が分泌するコラーゲンであり、II型コラーゲンは分化を維持した軟骨細胞が分泌するコラーゲンであるが、好ましくはI型コラーゲンを用いる。I型コラーゲンであると分化維持だけでなく、十分な細胞増殖能を得ることができるからである。また、プロテアーゼペプシン等の酵素で処理したアテロコラーゲンを用いることが好ましい。また、コラーゲン層を形成する操作を考慮すると酸性コラーゲンを用いることが好ましい。コラーゲン層は表面1cm2あたり0.5mg以上のコラーゲンを有することが好ましい。コラーゲン濃度が0.5mg/cm2未満であると、平面培養等の二次元培養では軟骨細胞の形質(特に、細胞形態などの外形上の形質やII型コラーゲン産生能、グリコサミノグリカン産生能)を維持することが困難となるからである。一方、0.5mg/cm2以上であると、通常の平面培養によって軟骨細胞の外形的形質を提示しなくなった軟骨細胞であってもその外形的形質を提示させて培養することができる。コラーゲン濃度は、好ましくは、1mg/cm2以上である。また、軟骨細胞の形質維持の観点からは、コラーゲン濃度を高くすることが好ましいが、コラーゲン濃度を高くし過ぎるとコラーゲン層の作製が困難になったり、細胞の増殖率が低くなったりする可能性も考えられるため、予め予備実験などを行った上でコラーゲン濃度を設定することが好ましい。
なお、こうした未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを有するコラーゲン層は、例えば、コラーゲン溶液を培養面に対して供給した後、ゲル化させないであるいはゲル化させた後、架橋させることなくあるいは架橋を抑制して水分を留去し乾燥することによって得ることができる。なお、コラーゲン溶液は未架橋あるいは低架橋を維持するためにゲル化させることなく乾燥することが好ましい。
培養容器の培養表面にコラーゲン層を有する培養容器の作製工程を図1に例示する。図1に示すように、表面が0.5mg/cm2以上の濃度のコラーゲン濃度となるように、所定の濃度に調製されたコラーゲン溶液を培養容器底面に供給し敷設する。このときのコラーゲン溶液の必要量は、必要とするコラーゲン溶液量をV(ml)、コラーゲン塗布面をA(cm2)、目的とするコラーゲン塗布濃度をCCL(mg/cm2)、敷設するコラーゲン溶液の濃度をCliquid(wt%)とし、目的とするコラーゲン塗布量W(g)と必要とするコラーゲン溶液量V(ml)がほぼ同じと考えて算出した。具体的には、W=Vと、W×Cliquid=A×CCL×10−3からV=(A×CCL×10−3)/Cliquidを算出すればよい。
乾燥方法についても特に限定しない。例えば、敷設後、室温で数日間風乾し、最後に減圧乾燥機によって完全に水分を飛ばして乾燥させることによってコラーゲン層(乾燥体)を得ることができる。こうすることで、培養表面に対して設定した濃度のコラーゲン層を備える培養容器を得ることができる。なお、風乾は必ずしも必要でないが、風乾を行う場合の風乾を行う期間に関しては、コラーゲン濃度により異なり、濃度が高いほど風乾実施期間を長くすることが好ましい。また、急速に乾燥処理を行うとスポンジ化してしまうため、徐乾、すなわち時間をかけて風乾することによってスポンジ化を防いでいる。なお、これらの一連の工程においては、コラーゲンの架橋を回避するため光や熱を遮断して実施される。
なお、コラーゲン層は、コラーゲンのみで構成することもできるが、本発明の目的を妨げない範囲で他の成分を含めることができる。例えば、生体適合性のある高分子や、生体内吸収高分子、生体分解性高分子等を含めることも可能である。具体的には、ヒアルロン酸キチンキトサンムコ多糖のような糖類、ポリ乳酸ポリグリコール酸等の合成高分子ポリメタクリル酸ヒドロキシエチルなどの高含水高分子、フィブリンアルブミン等のタンパク質を混合することができる。
本培養容器によれば、コラーゲン層に液体を供給することで軟骨細胞などの培養細胞の培養に適したコラーゲンゲル層を形成することができる。このコラーゲンゲル層は、既に説明したように、未架橋または低架橋ながら繊維状体のコラーゲンによるネットワーク構造を有している。なお、前記コラーゲン層がゲル化して形成されたコラーゲンゲル層を備える培養容器も本発明の一形態に含まれる。コラーゲン層から、コラーゲンゲル層を形成するには、後段にて詳述するが、PBSなど中性緩衝液などをコラーゲン層に供給して水の存在下コラーゲン層を中性状態とすることでコラーゲンをゲル化できる。コラーゲン層は、ゲル化するまで保存することもできる。保存する場合には、好ましくは、不活性ガスを主体とする不活性ガス雰囲気下で保存する。不活性ガスとは、例えば、窒素アルゴンヘリウム及びこれらの混合気体が挙げられるが、好ましくは窒素である。また、不活性ガスを主体とするとは、不活性ガスを50%以上含有していることが好ましい。より好ましくは、70%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、一層好ましくは90%以上である。
空気若しくは酸素の存在下で保存すると、ゲル化してもコラーゲンの繊維状体によるネットワーク構造を形成しにくくなるか又は形成できなくなる。こうした繊維化の抑制は、架橋の進行によるものと推測される。こうしたコラーゲンゲル層においては、軟骨細胞の分化能を維持した状態の培養が困難になるとともに潜在的分化能を顕在化することができにくくなる傾向がある。
好ましいコラーゲン層の保存工程についての保存期間及び温度は特に限定しない。数日から1週間、若しくは数週間程度とすることができる。温度は、一般的には20〜30℃程度とすることができる。保存するガス雰囲気は、乾燥された、例えば、10%R.H.以下の湿度であることが好ましい。より好ましくは、5%R.H.以下である。保存工程における水分は、意図しないコラーゲンの架橋を促進して繊維化を抑制する可能性があるからである。
また、保存工程では、乾燥工程と同様に遮光することが好ましい。光は架橋を促進するおそれがあるからである。
(人工移植物)
本発明によれば、未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲン層を備えた人工移植物も提供される。ここでいうコラーゲン層は、上記した本発明の培養容器におけるコラーゲン層と同義であり、また、コラーゲン層を構成するコラーゲンは、上記培養容器のコラーゲン層を構成するコラーゲンと同義である。人工移植物が備えるコラーゲン層は、液体を供給して所定のゲル化条件を与えるとゲル化してコラーゲンゲルとなる。なお、コラーゲン層がゲル化したコラーゲンゲル層を備える人工移植物も本発明の一形態に含まれる。
人工移植物において、コラーゲン層またはコラーゲンゲル層は、培養表面に対応して備えられていることが好ましい。また、コラーゲン層またはコラーゲンゲル層の表面は一様な平坦面を構成していてもよいが、半球形状、柱形状、球形状、錐形状方体形状などの種々の形状を採ることができる。また、人工移植物の三次元形態は、代替しようとする身体部位の外形形態(例えば、人工骨人工関節、人工半月板など)を備えることができる他、例えば、シート状、柱形状、球形状、錐形状、直方体状とすることができる。人工移植物は、例えば、金属材料セラミック材料合成樹脂材料生体由来材料などで構成することができる。好ましくは、生体適合性ないし生体内分解性に優れる材料を用いる。
この人工移植物によれば、生体外においてそのコラーゲンゲル層表面にて軟骨細胞を増殖させるとき、軟骨細胞の形質を維持させることができる。このため、人工移植物の表面に分化状態を維持した軟骨細胞層を容易に形成させることができる。この結果、生体内への移植後の生体親和性を向上させることができる。すなわち、この実施形態によれば、軟骨細胞層を表面に備えて表面改質された人工移植物あるいは表面改質された人工移植物の製造方法(人工移植物の表面改質方法)も提供される。
(軟骨細胞培養方法)
本発明の軟骨細胞培養方法は、未架橋又は低架橋状態のコラーゲンを含有するコラーゲンゲル層表面に軟骨細胞を播種する播種工程と、該ゲル表面上で軟骨細胞を増殖させる培養工程と、を具備している。コラーゲンゲル層を構成するコラーゲンとしては、上記したコラーゲン層に使用できるコラーゲンを同様に用いることができ、上記したコラーゲン層に好ましく用いられるコラーゲンを同様に好ましく用いることができる。
コラーゲンゲル層は、コラーゲンに液体(典型的には培養液、水、緩衝液等)を加えて、コラーゲンの種類等に応じた温度、濃度、pH、塩濃度等のいずれかあるいはこれらの組み合わせからなるゲル化条件によりゲル化させることにより得ることができる。また、コラーゲンゲル層は、上記したコラーゲン層に液体を供給して必要なゲル化条件を付与することによってゲル化することによっても得ることができる。したがって、播種工程に先立って、培養容器あるいは人工移植物の表面にコラーゲンの溶液を供給して、架橋させることなく乾燥してコラーゲン層を形成し、その後このコラーゲン層に液体を供給してコラーゲンゲル層を作製することができる。また、培養表面に上記コラーゲン層を予め備える培養容器あるいは人工移植物に液体を供給してそのコラーゲン層をゲル化してコラーゲンゲル層を作製することもできる。
本培養方法は、コラーゲンゲル層表面において軟骨細胞を培養するものである。このため、コラーゲンゲル層の表面形態にもよるが、基本的には平面ないし曲面における二次元での培養形態となる。したがって、いわゆるコラーゲンゲル包理培養などの三次元培養とは異なり、培養細胞の形態観察を容易に行うことができるとともに、良好な細胞増殖率を得ることもできる。細胞観察の容易さ等の観点からは好ましくは平面培養である。
本培養方法によれば、表面に未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを有するコラーゲンゲル層表面にて軟骨細胞を培養することで、軟骨細胞がその形質を維持していることの指標であるGAG(グリコサミノグリカン)やII型コラーゲン産生能はもとより、外形上での指標となる球形の細胞形態(投影像では円形の細胞形態)を提示させながら増殖させることができる。したがって、軟骨細胞の培養方法に好ましく、特に継代培養による培養方法に好ましい。また、本培養方法によれば、従来の二次元培養により本来的には軟骨細胞の形質を維持しながらも外観上はその特有の球状の細胞形態を喪失してしまった軟骨細胞(少なくとも外形的には潜在的軟骨細胞といえる。)を、その外形的形質を再び提示させながら増殖させることができる。
(軟骨細胞評価方法)
本発明の軟骨細胞評価方法は、表面に低架橋状態のコラーゲンを含有するコラーゲンゲル層表面に軟骨細胞を播種する播種工程と、該ゲル表面で軟骨細胞を増殖させる培養工程と、該ゲル表面の個々の細胞形状に基づいて分化の状態を評価する評価工程を具備している。本評価方法は、上記培養方法における播種工程と培養工程とを備えており、これらに評価工程を備えている。以下、本評価方法について特徴的である評価工程について説明する。
本評価方法においては、前記評価工程は細胞の円形度に基づいて軟骨細胞を評価することが好ましい。細胞の円形度は、軟骨細胞が球形形状を有しているか否かの有効な指標だからである。細胞の円形度は、個々の細胞のアスペクト比等から算出することもできるが、個々の細胞の投影像周長を投影面積円相当周で除算した値であることが好ましい。ここで、投影像周長とは、細胞の投影像の周囲の長さを意味し、投影面積円相当周とは、細胞の投影像の面積に相当する正円の円周を意味している。細胞の投影像周長と投影面積円相当周とは、コラーゲンゲル表面で培養されている軟骨細胞の投影像をCCDカメラなどの撮像機器撮像し、さらに、この撮影像からあるいは撮影像に対して画像処理を加えることで容易に得ることができる。なお、特開平08−287261号には、個々の細胞の形状を認識するシステムおよび細胞の円形度の概念が記載されている。
さらに、円形度を用いた軟骨細胞の分化状態の評価にあたっては、円形度が所定の閾値以上であるときに軟骨細胞の形質を維持していると判定することが好ましい。ここでいう所定の閾値とは、軟骨細胞が形質を維持していると判定することができる円形度をいい、CCDカメラなどの撮像機器の解像度や画像処理のフローに基づいて設定することができ、予め実施した予備実験に基づいて設定することが好ましい。例えば、円形度が0.8以上であるときに軟骨細胞の形質を維持していると判定することが好ましい。円形度判定の閾値を0.8未満とすると、軟骨細胞の特徴的な産生物質であるII型コラーゲンを生成しない細胞が含まれることになるため、好ましくない。0.8以上とすると、特に、上記した投影像周長/投影面積円相当周を円形度とするときにおいて、高い精度で軟骨細胞の分化状態(軟骨細胞様形質を維持しているか否か)を判定することができる。より好ましくは0.9以上である。
さらに、細胞円形度が一定以上の細胞数の測定した全細胞数に対する割合(%)を評価することもできる。細胞円形度は、例えば、0.8以上とすることができ、好ましくは0.9以上である。こうした一定以上の円形度を有する細胞数の割合を指標とすることで、軟骨細胞の培養状態の良好性やコラーゲンゲル層の特性等を容易に把握することができる。
なお、細胞の投影像を得るには、例えば、図2に示す細胞観察装置を使用することができる。この細胞観察装置10は、培養容器20を支持する支持台11と、培養容器20を照らし出すLEDランプ13と、培養容器20の底面を撮影するCCDカメラ15と、これらを内包し所定温度を維持するインキュベータ17と、CCDカメラ15によって撮影した画像を解析する制御装置19とを備えている。支持台11は、軟骨細胞が底面に接着している培養容器20を、その底面が下方に視覚的に露出した状態で支持している。即ち、支持台11は、培養容器20の底面縁部のみを支持したり、培養容器20の底面部分に相当する箇所を透明部材としたりすることで、CCDカメラ15による撮影が妨げられないように構成されている。LEDランプ13は、支持台11に支持された培養容器20を上方から照らすことにより培養容器20内の個々の細胞を培養容器20の底面に投影させる。CCDカメラ15は、培養容器20の底面を撮影できるように培養容器20の下方に設置されている。このCCDカメラ15は、制御装置19からの指令信号を受信すると、LEDランプ13によって上方から照らされた培養容器20の下方から底面を撮影し、培養容器20内の個々の細胞が培養容器20の底面に投影された投影画像を得て、その投影画像のデータを制御装置19に送信する。また、CCDカメラ15は、三次元ステージ16に取り付けられ、上下・左右・前後に移動可能である。この三次元ステージ16は制御装置19からの指令信号によって作動して所定の位置にCCDカメラ15を位置決めする。インキュベータ17は、支持台11とLEDランプ13とCCDカメラ15とを内包した温度調節が可能なケースであり、5%CO2含有エアを支持台11に支持されている培養容器20に供給するラインと培養容器20からガスを排出するラインとを備えている。制御装置19は、周知のCPU、ROM、RAM等で構成されている。この制御装置19は、三次元ステージ16に指令信号を出力してCCDカメラ15を所定の位置に位置決めしたあと、CCDカメラ15に指令信号を出力して投影画像を撮影させ、その投影画像をCCDカメラ15から入力して画像解析処理を施し、画像解析処理後の投影画像に基づいて上記円形度や細胞濃度等を算出する。
また、画像処理に関しては、例えば以下のようにして処理することができる。細胞観察装置10の制御装置19は、培養容器20の底面の投影画像を二値化したあとクロージング処理フィリングホール処理を施すことにより個々の細胞像を明確化することができる。ここで、二値化とは、ある閾値以下のグレイレベル値をもつピクセルを値1に設定しそれ以外のピクセルを値0に設定して画像を白と黒の2つの領域に区画分離する処理である。二値化後、所定の大きさ以上の黒色体を細胞とみなし、その黒色体についてクロージング処理により小さな穴を埋めて境界平滑化を行い、更にフィリングホール処理により孤立した穴を埋めることにより細胞像とする。
本評価方法によれば、コラーゲンゲル層表面で培養している軟骨細胞の個々の細胞形状を容易に把握できるため、軟骨細胞の評価に適しているといえ、また、良好な増殖状態が得られ、継代も可能であることから継続的な観察に基づく評価も容易に行うことができる。軟骨細胞が形質を維持している場合には略球形状を維持していることが知られているが、本評価方法においては、軟骨細胞の細胞形状の観察が容易であるため、軟骨細胞がその形質を維持しているかどうかを容易に評価できる。
また、本評価方法によれば、表面に低架橋状態のコラーゲンを有するコラーゲンゲル層の当該表面にて軟骨細胞を培養することで、軟骨細胞がその形質を維持していることの外観上での指標となる球形の細胞形態(投影像では円形の細胞形態)を提示させながら増殖させることができる。したがって、軟骨細胞の分化状態を高い精度で評価することができる。
また、本評価方法によれば、通常の平面培養などの二次元培養における潜在的軟骨細胞を培養することで、軟骨細胞特有の球状細胞形態を提示させることができる。すなわち、通常の培養容器のポリスチレンなどからなる培養面などのコラーゲンゲル層を有しない面で培養した球形状を呈していない細胞であっても、当該細胞が軟骨細胞の形質を潜在的に保持しているかどうかを判定することができる。したがって、本評価方法によれば、線維芽様形態を呈している細胞が潜在的軟骨細胞かあるいは完全に軟骨細胞から脱分化した細胞かを、コラーゲンゲル層表面に播種前の細胞の培養履歴にかかわらず、容易に判定することができる。従来、このような判定は、三次元培養しないと行なうことができなかった。三次元培養は操作も煩雑でありしかも増殖速度が遅いため、上記のような分化状態の判断を速やかにしかも正確に判断することが困難であった。しかしながら、本評価方法によれば、三次元培養をすることなく、速やかにかつ精度よく軟骨細胞、特に潜在的軟骨細胞の分化状態を判断することができる。なお、本明細書における潜在的軟骨細胞とは、ポリスチレンなどの通常の培養面では線維芽様の形態を呈している軟骨細胞であって、三次元培養へ移行した後には、高い確率で球形状の軟骨細胞への分化が期待できる又は分化する軟骨細胞をいう。
(軟骨細胞の三次元培養体の生産方法)
本生産方法は、表面に未架橋または低架橋の状態のコラーゲンを含有するコラーゲンゲル層の該表面に軟骨細胞を播種する播種工程と、該コラーゲンゲル層表面で軟骨細胞を増殖させる二次元培養工程と、前記培養工程において増殖された軟骨細胞を用いて三次元培養を実施する三次元培養工程とを備えている。この生産方法によれば、二次元培養工程において、培養される軟骨細胞の脱分化が抑制され十分な増殖率で軟骨細胞が培養されるため、効率的に三次元培養体を得ることができる。また、二次元培養工程では、軟骨細胞がその分化状態を維持しているか否かをその細胞形態から容易に判断できるため、確実に軟骨細胞を増殖させることができる。二次元培養工程では、継代培養を行なっても十分な分化状態と増殖率とが維持されるため、継代培養とすることが好ましい。
また、前記二次元培養工程の後、あるいは前記二次元培養工程に伴って前記評価工程を実施して、軟骨細胞の形質を維持していると判断された軟骨細胞を用いて三次元培養工程を実施することもできる。こうすることで確実に軟骨細胞の三次元培養体を得ることができる。なお、三次元培養工程における三次元培養とは、例えば、コラーゲンスポンジなどの任意形状を有する足場材料での培養や、任意形状を有しないコラーゲンゲルやアガロースゲルでの包理培養などを挙げることができる。以上のことから、本発明によれば、これらの生産方法によって得られる三次元培養体も提供される。
以上説明したように、本発明では、軟骨細胞の形質維持や潜在的軟骨細胞の評価という本来三次元培養でのみ可能であったことを二次元培養空間で行うことを可能とした。すなわち、本発明の二次元培養空間は、擬似三次元培養空間を構成しているということができる。

以下、本発明の具体例を、実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜3)
(培養容器の作製)
培養容器として、25cm2のT型フラスコを使用し、コラーゲン層を有する培養容器を作製した。培養容器底面(培養面)に、0.5wt%の酸性I型コラーゲン溶液(高研株式会社製)を5.25mlを注いで塗布し、この培養容器をアルミホイル包み、室温で3日間風乾した後、減圧乾燥装置にて10Paから100Pa常温で約二日間乾燥し、コラーゲン濃度がCCL=1.05mg/cm2の未架橋の状態のコラーゲンを有するコラーゲン層を備える培養容器を作製した。
(二次元培養)
作製した培養容器のコラーゲン層をPBSで2回洗浄した後、ウシ胎児血清含有DMEM培地を用いてポリスチレン製培養容器にて3回継代したウサギ軟骨細胞を1.0×104cells/cm2の濃度となるように播種し、37℃、5%CO2で培養した。なお、培養液を培養容器のコラーゲン層に供給することにより、コラーゲン層は膨潤しゲル化してコラーゲンゲル層となり、その表面にウサギ軟骨細胞が存在する状態となった。継代実験に対しては、初代細胞からコラーゲン層上で上記と同様の条件で培養を行い、70%コンフルエント状態目安に3回継代および5回継代した上、コラーゲンゲル包埋による三次元培養を行った。なお、二次元培養の段階で、3回継代したものを実施例1とし、5回継代したものを実施例2とした。
(三次元培養)
コラーゲンゲル包埋による三次元培養は、実施例1および2として得られた培養細胞を用いて調製した2.5×106cells/mlの細胞密度の細胞懸濁液と3wt%アテロコラーゲン溶液とを1:4の体積比で混合(混合後のコラーゲン濃度:0.4wt%)し、この混合液を48穴プレートに220μlずつドーム状に播種した(5×105cells/ml)。このときの厚さはおよそ2mmであった。軟骨細胞播種後、37℃で1時間静置することでゲル化させ、その後液体培地を加えて、37℃、5%CO2で三次元培養を行い、実施例1および2の三次元培養体を得た。さらに、実施例1については播種密度を2×106cells/mlとして播種して同様に三次元培養を行って、実施例3の三次元培養体を得た。
なお、ポリスチレン上にて培養する以外は実施例と同様にして二次元培養にて3回継代および5回継代したウサギ軟骨細胞を用いてコラーゲンゲル包埋による三次元培養を行い、比較例1〜3の三次元培養体を得た。また、対照例として初代ウサギ軟骨細胞を用いてコラーゲンゲル包理による三次元培養を行った。二次元培養の結果を図3図6に示し、三次元培養の結果を図7図9に示す。
(結果)
図3および図4には、それぞれ実施例1(コラーゲンゲル層表面で二次元培養した軟骨細胞)のSEM観察写真と比較例1(ポリスチレン面で二次元培養した軟骨細胞)のSEM観察写真とを示す。図5および図6には、それぞれ実施例1(コラーゲンゲル層表面で二次元培養した軟骨細胞)のII型コラーゲン免疫染色像および比較例1(ポリスチレン面で培養した軟骨細胞)のII型コラーゲン免疫染色像を示す。図3図6から明らかなように、コラーゲンゲル層表面で二次元培養した軟骨細胞は、軟質細胞の形質維持の指標である球形状の細胞形態を維持しているとともにII型コラーゲンを産生していることが観察できた。一方、ポリスチレン面で培養した軟骨細胞は、偏平した線維芽様細胞形態を示し、軟骨細胞の産生する細胞外マトリクスであるII型コラーゲンをほとんど産生していなかった。以上のことから、未架橋状態のコラーゲンゲル層表面において軟骨細胞を培養することにより、その脱分化を抑制し分化状態をよく維持して増殖させ、継代培養することができることがわかった。
図7図9には、実施例1〜3および比較例1〜3および対照例の三次元培養における168時間および504時間後の細胞数の変化を示す。また、このときの倍加時間を表1に示す。倍加時間は168時間および504時間後の細胞数から算出した。

<実施例および比較例の説明>
・実施例1+比較例1:二次元培養時に3回継代
・実施例2+比較例2:二次元培養時に5回継代
・実施例3+比較例3:二次元培養時に3回継代、三次元培養時の接種密度2×106cells/ml
図7図9および表1から、コラーゲンゲル上で継代した軟骨細胞は、コラーゲンゲル包理培養による三次元培養時においてポリスチレン上で継代した細胞よりもよく増殖していた。また、二次元培養の形態にかかわらず継代培養を重ねることによって脱分化し、コラーゲンゲルに包埋して培養しても三次元培養組織内における増殖能が低下する傾向は認められたが、コラーゲンゲル上で継代培養した軟骨細胞では、初代細胞には劣るものの十分な増殖能が得られていることが確認された。また、実施例3および比較例3(三次元培養時の接種密度を2×106cells/mlとした)において、コラーゲン上で継代した細胞の倍加時間は5.01〔day〕であったのに対し、ポリスチレン上で継代した細胞の倍加時間は19.92〔day〕であった。すなわち、高濃度に細胞を接種して三次元培養を行なった場合、実施例3では顕著な細胞倍加時間の増大は見られず十分な増殖能をもって増殖していたのに対し、比較例3では顕著に細胞倍加時間が増大しており細胞の増殖能の低下が明らかであった。
(実施例4)
培養容器として、25cm2のT型フラスコを使用し、コラーゲン層を有する培養容器を作製した。培養容器底面(培養面)に、0.5wt%の酸性I型コラーゲン溶液(高研株式会社製)を5.25mlを注いて塗布し、この培養容器をアルミホイルで包み、室温で3日間風乾した後、減圧乾燥装置にて10Paから100Pa常温で約二日間乾燥し、コラーゲン濃度(CCL)が(a)5.3×10−3mg/cm2、(b)1.6×10−2mg/cm2、(c)1.05mg/cm2の各濃度の未架橋の状態のコラーゲンを有するコラーゲン層を備える培養容器を作製した。作製した培養容器のコラーゲン層をPBSで2回洗浄した後、ウシ胎児血清含有DMEM培地を用いてポリスチレン製培養容器にて2回継代したウサギ軟骨細胞を1.0×104cells/cm2の濃度となるように播種し、37℃、5%CO2で培養した。これらの培養に伴って、異なるコラーゲン濃度の培養面における軟骨細胞の細胞状態を観察した。結果を図10に示す。
図10(a)は、コラーゲンゲル濃度CCLが5.3×10−3mg/cm2、同(b)は1.6×10−2mg/cm2、同(c)は、1.05mg/cm2の各培養表面上にて軟骨細胞を120時間培養したときの細胞画像を示す。図10から明らかなように、コラーゲン濃度の希薄な(a)および(b)では細胞の形態が線維芽様を示しているのに対し、(c)においては軟骨細胞の形態は球形を示している。後述するように軟骨細胞の平面培養における細胞円形度は軟骨細胞の外形的形質の一つであって、軟骨細胞がその形質を維持していることを示す指標である。したがって、所定濃度以上のコラーゲン濃度のコラーゲンゲル表面における軟骨細胞の培養が軟骨細胞の形質維持に有効であることがわかった。
(実施例5)
実施例4と同様にして、コラーゲン濃度(CCL)が5.3×10−4mg/cm2、5.3×10−3mg/cm2、5.3×10−2mg/cm2、1.05mg/cm2の4種の濃度の未架橋の状態のコラーゲンを有するコラーゲン層を備える培養容器を作製して、実施例4と同様にウサギ軟骨細胞を1.0×104cells/cm2の濃度となるように播種し、37℃、5%CO2で培養した。これらの培養に伴って、グリコサミノグリカン(GAG)生産速度、細胞円形度が0.9以上の細胞比率およびコラーゲン濃度における円形度を測定した。結果を図11図13に示す。
図11はコラーゲンゲル濃度(CCL)に対するGAG産生量を示している。詳しくは、培養20−31日目の平均GAG生成速度(ν/ν0)を示している。GAG生産速度は軟骨細胞形質保持の一つの指標とすることができる。ここでは、ポリスチレン面で軟骨細胞を培養した場合のGAG産生量をν0とし、各濃度での産生量νを無次元化している。図11から明らかなように、コラーゲン濃度が約0.01mg/cm2ではν/ν0が約1であって、ポリスチレン面での培養状態とほぼ同様のGAG産生量であるが、コラーゲン濃度が0.5mg/cm2〜1.0mg/cm2近傍においてGAG生産速度が顕著に上昇していることがわかった。以上のことから、約0.5mg/cm2以上のコラーゲン濃度のコラーゲンゲル表面での軟骨細胞の培養がその形質維持に有効であることがわかった。
図12はコラーゲンゲル濃度(CCL)に対して所定の円形度を有する軟骨細胞数比率を示している。ここでは、円形度が0.9以上の細胞数をNroundとし、総細胞数をNallとした。円形度の算出方法は後述する。図12から明らかなように、コラーゲン濃度が低い場合には、円形度0.9以上の細胞数比率は極めて低く、図10(a)に示す細胞形態観察結果を支持したものとなっている。これに対し、約0.5mg/cm2付近から当該細胞数比率の上昇が顕著となり、約1mg/cm2においては当該細胞数比率がほぼ1となっており、図10(c)に示す細胞形態観察結果をよく支持する結果であった。
図13は、コラーゲン濃度に対する円形度の分布を示すヒストグラムである図13(a)は、ポリスチレン面で同様にしてウサギ軟骨細胞を培養した場合の結果であり、図13(b)は、コラーゲン濃度が1.05g/cm2の培養面での結果である。同世代の細胞なので、そのヒストグラムは同じ傾向が示されるはずであるが、図13に示すように、高濃度コラーゲンゲル上でインキュベートした細胞の方が円形度の値の高いもの(軟骨細胞の形質を維持した細胞)が多く観察された。これらの細胞は、コラーゲンゲル包埋三次元培養に移行した後も軟骨細胞の形質を維持したまま増殖する細胞と考えられた。
(実施例6)
本実施例は、コラーゲン層の保存工程と軟骨細胞の培養との関係とを確認したものである。本実施例では、図14に示すように、コラーゲン層を形成した後、保存工程を実施し、その後コラーゲン層をゲル化してコラーゲンゲル層を形成して軟骨細胞を播種した。
コラーゲン層は、コラーゲン濃度が1.05mg/cm2となるように、メスピペットで0.5wt%酸性コラーゲン溶液(高研株式会社製)を5.25mlをTフラスコ(25ml)底面に注いだ後、遮光された減圧乾燥装置にて10Paから100Pa下、約25℃で約3日間乾燥し、コラーゲン層を形成した。その後、直ちにPBSを加えてゲル化するほか、4日間及び7日間それぞれ空気雰囲気下及び窒素雰囲気下で保存工程を実施し、その後に同様にゲル化を行った。保存工程は、いずれも、遮光した状態で、10%R.H.以下、25℃で行った。各コラーゲンゲル層調製後は、速やかにコラーゲン層をPBSで2回洗浄した後、ウシ胎児血清含有DMEM培地を用いてポリスチレン製培養容器にて3回継代したウサギ軟骨細胞を1.0×104cells/cm2の濃度となるように播種し、37℃、5%CO2で培養した。適宜、円形度が0.9以上の細胞数を測定し測定した全細胞数に対する割合を求めた。なお、細胞数の測定及び円形度の測定については、先の実施例と同様に行った。対称例としてコラーゲン層及びコラーゲンゲル層を有しないポリスチレン製のTフラスコについて保存工程なしで同様の操作を行った。結果を図15に示す。
図15に示すように、保存工程を実施せずにコラーゲン層をゲル化した場合において最も良好な円形細胞率を示し、対照例において最も低い円形細胞率を示した。また、窒素雰囲気下で保存したコラーゲン層由来のコラーゲンゲル層が空気雰囲気下で保存したコラーゲン層に由来するコラーゲンゲル層よりも良好な円形細胞率を示していた。
以上の結果から、コラーゲン層をコラーゲンゲル層の形成に先立って保存する場合には、酸素などが排除され窒素など不活性ガスを主体とする不活性ガス雰囲気下で保存することが好ましいことがわかった。
さらに、コラーゲン層について保存工程を実施しなかったコラーゲンゲル層(a)、酸素雰囲気下で4日間保存工程を実施して得たコラーゲンゲル層(b)及び窒素雰囲気下で4日間保存工程を実施して得たコラーゲンゲル層(c)の各ゲル層表面の電子顕微鏡写真を図16に示す。
図16に示すように、(a)及び(c)のコラーゲンゲル層では、複数本フィラメントが撚れて形成された繊維状体がネットワーク構造を形成したのに対し、(b)のコラーゲンゲル層では、フィラメント様のものが観察されるものの、ネットワーク構造ではなく平坦で空孔のない表面が形成されていた。
以上のことから、酸素雰囲気下でコラーゲン層を保存することにより、ゲル化して得られるコラーゲンゲル層はもはや適度な空孔を有するネットワーク構造を形成できず、このような構造の相違が円形細胞率の差、すなわち、軟骨細胞の分化能維持及び潜在的分化能の保持を困難にしていると考えられた。
なお、空気及び窒素雰囲気下のそれぞれについて、7日間保存して得たコラーゲンゲル層も併せて観察したが、それぞれ4日間保存したものと同様の構造を示していた。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

  • 日本板硝子株式会社の「 反応処理容器」が 公開されました。( 2020/12/17)

    【課題】試料を蛇行状流路で停止する精度を向上することのできる反応処理容器を提供する。【解決手段】反応処理容器10は、基板14と、基板の上面14aに形成された溝状の流路12とを備える。流路12は、高温蛇... 詳細

  • 株式会社J-ARMの「 イヌのリンパ球由来のがん殺傷性細胞集団の製造方法」が 公開されました。( 2020/12/17)

    【課題】 イヌのがん免疫療法として使用するリンパ球由来の高い細胞殺傷能を有する細胞集団を、作業リスクの少ない簡便で且つ安全な方法で生産することができるより安価な方法を提供する。【解決手段】 好まし... 詳細

  • 国立大学法人新潟大学の「 アンブレインの効率的製造方法」が 公開されました。( 2020/12/17)

    【課題・解決手段】本発明の目的は、簡便に且つ効率的にアンブレインを得ることができるアンブレインの製造方法を提供することにある。前記課題は、本発明の(1)DXDDモチーフの第4番目のアミノ酸残基であるア... 詳細

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ