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技術 糖脂質含有化合物、それを固定化したバイオセンサー、糖脂質含有微粒子、該微粒子を含む検出試薬および糖結合性化合物の検出方法

出願人 国立研究開発法人産業技術総合研究所
発明者 鵜沢浩隆箕浦憲彦大賀幸二
出願日 2005年2月9日 (16年0ヶ月経過) 出願番号 2005-517807
公開日 2007年10月11日 (13年4ヶ月経過) 公開番号 WO2005-075493
状態 特許登録済
技術分野 生物学的材料の調査,分析 ナノ構造物 糖類化合物 多糖類及びその誘導体
主要キーワード 水晶振動子センサー 側鎖部位 分析対象化合物 AM法 基盤表面 配列制御 結合割合 QCM法
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重要な関連分野

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図面 (7)

課題・解決手段

〔課題〕 本発明は、糖化合物基板表面あるいは微粒子表面へ、高度な配向性と高密度に簡便に固定することが可能で、しかも高感度簡便かつ迅速に糖結合性化合物定量評価することを可能とする糖含有化合物を提供することを課題とする。さらに本発明は、高感度で簡便かつ迅速に糖結合性化合物を定量評価できるセンサー検出試薬、または該糖結合性化合物の検出方法を提供することを課題とする。 〔解決手段〕 本発明に係る糖脂質含有化合物は、下記一般式(1)〔式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示し; Xは、−O−または−NH−を示し; R1は、−C(=O)−CnH2n−Yまたは−CH2−CnH2n−Y(式中、nは2〜10の整数を示し、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示す。)で表されるリンカー部位を示し; R2は、置換基を有していてもよいC2〜20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルケニル基、置換基を有していてもよいC1〜21アルキルカルボニルオキシメチル基、置換基を有していてもよいC2〜22アルキルオキシメチル基、置換基を有していてもよいC2〜21アルケニルカルボニルオキシメチル基、または置換基を有していてもよいC2〜22アルケニルオキシメチル基で示される側鎖部位を示す。〕で表されることを特徴とする。

概要

背景

バイオテクノロジー生化学研究臨床検査食品検査などの分野においては、対象となる糖結合性蛋白質などの糖結合性化合物高感度な検出・定量方法が必要である。
現在、臨床検査等で用いられるセンシング法では、抗原−抗体反応を利用した測定が多く採用されている。しかし、従来法では煩雑な作業や標識物質を必要とすることから、標識物質を用いることなくリガンドの変化を高感度に検出することのできる表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:SPR)あるいは水晶振動子(Quartz Crystal Microbalance:QCM)を利用したバイオセンサーも使用されている。このSPRの現象は、表面プラズモンが金属/液体界面励起した場合に起こる光学現象を利用している。すなわち、センサーチップ表面で生じる微量な質量変化がSPRシグナルとして検出されるため、たとえば、金表面固定化した物質検体との間の二分子間の結合および解離の変化を定量的に測定することができる。一方、QCM法は、周波数の変化から、物質の吸着量を質量に換算して求める方法であり、金表面に固定化した物質(リガンド分子)と検体(アナライト)との2分子間の結合変化に関する情報を定量的に考察できる。

ところで、糖化合物を用いた一般的なバイオセンサーとして、金などの基板表面に糖化合物を固定化したセンサーが提案されている(特許文献1)。このバイオセンサーは、糖化合物を有する基が金表面に直接共有結合した構造を有している。このセンサーは、糖化合物に炭化水素などの低分子化合物を結合させ、次に該炭化水素にチオール基を結合させ、さらに金表面とチオール基(-SH)との直接的な共有結合あるいは吸着により糖化合物を基板に固定化させる方法を採用している。

チオール基を介した結合は安定であるが、糖化合物には、抗原や抗体、酵素などと異なり多くの水酸基が存在し立体構造も複雑である。このため、糖化合物に当該チオール基を導入するには多くの工程数と労力が必要で、糖化合物にチオール基を簡便に導入できないという問題がある。

他方、金表面にまずチオール基を有する基を導入し、別途合成した糖化合物を結合させることも理論的に可能であるが、この方法では金表面への糖化合物の導入効率が悪く実用上採用できない。

そこで、SPR用のセンサーチップの表面に天然の糖化合物を固定化するため、あらかじめチップ表面を疎水処理しておき、これに先の糖鎖をチップ表面に疎水性相互作用を利用して固定化後、コレラ毒素を検出する試みがされている(非特許文献1)。さらに、糖鎖を高度に配列制御し、同時に、糖鎖を高密度に固定化するために、Langmuir-Blodgett製膜法を用いて、水晶振動子センサーチップ上に合成糖脂質気水界面単分子膜を作成後、ベロ毒素の検出に応用する方法も知られている(特許文献2、非特許文献2)。

即ち、後者(特許文献2、非特許文献2)の方法は、あらかじめチップ表面に長鎖アルキル鎖の単分子膜を作ることで疎水処理を施し、その表面に糖脂質のLB膜展開することにより、糖脂質が疎水性相互作用によりセンサーチップ上に固定化することができる。しかしながら、疎水性相互作用による固定化は固定化能が比較的弱く、水中や緩衝液中への長時間浸漬や、センサーチップを繰り返し使用すると基板から糖鎖が、時に一部、剥離するという可能性があるなど、安定性耐久性などに欠けるという問題があった。

また、前者(非特許文献1)の方法では、単に疎水性相互作用のみの作業のため、高度な配向性と高密度な固定化を行うことができず、高感度なセンサーチップの作製法としては実用性に乏しいという問題があった。さらに、LB製膜法においては、単分子膜を作製後、しかるべき基板に移し取る(累積)作業が必要となるが、大量の基板に当該糖脂質を移し固定化する場合、一度に数多くの処理をすることが困難であるという問題がある。つまり、単分子膜を疎水処理した金表面に累積するという作業は、迅速に大量に行うことには限界があり、実用性に乏しいという問題点があった。

固定化作業を簡素化するため、オリゴ糖鎖を、SPR等のセンサーチップやアフィニティークロマトグラフィー担体等のタンパク質分析用支持体一段で導入し、固定することが可能なリンカー化合物および該リンカー化合物を用いたリガンドおよび該リガンドを用いたオリゴ糖鎖の固定化方法も試みられている(特許文献3)。しかしながら、上記方法によっても高度な配向性で高密度な固定化を行うことができず、高感度なセンサーチップの作製法としてはさらなる性能向上が求められる。

一方、迅速で簡便に行えるセンシング方法として、金微粒子の表面に糖化合物を結合させた金コロイド凝集法による検出方法が提案されている。金コロイド凝集法とは、金微粒子表面に特異的結合物質化学的及び/又は物理化学的に固定し、この微粒子測定対象物との間で特異的な結合をさせて金コロイド凝集させ、金コロイド液の色調の変化を検出する方法である。色調の変化は目視あるいは分光計で検出できる。

金微粒子に特異的結合物質を固定化する方法は、一般的に抗原−抗体反応等に代表される免疫反応による物質固定が知られている(非特許文献3)。また金コロイド標識抗体と、抗原との反応によって、金コロイドが凝集し、色調を変化させる方法に関して、金コロイド標識ウサギマンナン抗体と酵母マンナンとの場合についてその方法が知られている(非特許文献4)。さらに、ヒト・ヘモグロビンと金コロイド標識抗ヒト・ヘモグロビン抗体との凝集についても知られている(特許文献4)。

このうち、金微粒子の表面に糖化合物を固定化したバイオセンシングが近年、盛んに研究されている。例えば、金固定化が可能なジスルフィド基の両端にアルキル鎖あるいはポリオキシエチレン鎖をもち、両末端に糖鎖を結合した化合物による、金微粒子の表面修飾が知られている(非特許文献5)。また、金表面にまずチオール基を有する基ポリエチレングリコール鎖を導入し、末端に存在するアルデヒド基を用いて、別途合成した糖化合物を結合させる、糖認識タンパク質特異的吸着方法が知られている(非特許文献6)。

金表面との結合のため、グリコスフィンゴ脂質およびグリセロ脂質の混合物を用いることができることが記載されている(非特許文献7,8)。
米国特許第3231733号
特開2002−022745号公報
特開2003−83969号公報
特開平2−141665号公報
Biochemistry, Vol.35, P.6375, 1996年
Biomacromolecules, vol. 3, p411,2002年
J. Histochem. Cytochem.、Vol.25、P.1187、1977年
J. Histochem. Cytochem.、Vol.25、P.295、1977年
Angew. Chem. Int. Ed.、Vol.40、P.2257、2001年
J. Am. Chem. Soc.、Vol.123、P.8226、2001年
Tetrahedron Letters 40 (1999) 2011-2014
Tetrahedron 56(2000) 9975-9984

概要

〔課題〕 本発明は、糖化合物を基板表面あるいは微粒子表面へ、高度な配向性と高密度に簡便に固定することが可能で、しかも高感度で簡便かつ迅速に糖結合性化合物を定量評価することを可能とする糖含有化合物を提供することを課題とする。さらに本発明は、高感度で簡便かつ迅速に糖結合性化合物を定量評価できるセンサー、検出試薬、または該糖結合性化合物の検出方法を提供することを課題とする。 〔解決手段〕 本発明に係る糖脂質含有化合物は、下記一般式(1)〔式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示し; Xは、−O−または−NH−を示し; R1は、−C(=O)−CnH2n−Yまたは−CH2−CnH2n−Y(式中、nは2〜10の整数を示し、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示す。)で表されるリンカー部位を示し; R2は、置換基を有していてもよいC2〜20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルケニル基、置換基を有していてもよいC1〜21アルキルカルボニルオキシメチル基、置換基を有していてもよいC2〜22アルキルオキシメチル基、置換基を有していてもよいC2〜21アルケニルカルボニルオキシメチル基、または置換基を有していてもよいC2〜22アルケニルオキシメチル基で示される側鎖部位を示す。〕で表されることを特徴とする。

目的

したがって、糖化合物を高度な配向性と高密度で簡便に固定でき、しかも糖結合性化合物を高感度で簡便かつ迅速に定量・評価できるセンサー、検出試薬、およびその検出手法が望まれていた。

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
2件

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請求項1

下記一般式(1)〔式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示し;Xは、−O−または−NH−を示し;R1は、−C(=O)−CnH2n−Yまたは−CH2−CnH2n−Y(式中、nは2〜10の整数を示し、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示す。)で表されるリンカー部位を示し;R2は、置換基を有していてもよいC2〜20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルケニル基、置換基を有していてもよいC1〜21アルキルカルボニルオキシメチル基、置換基を有していてもよいC2〜22アルキルオキシメチル基、置換基を有していてもよいC2〜21アルケニルカルボニルオキシメチル基、または置換基を有していてもよいC2〜22アルケニルオキシメチル基で示される側鎖部位を示す。〕で表されることを特徴とする糖脂質含有化合物

請求項2

前記R2が、置換基を有していてもよいC10〜20アルキル基、置換基を有していてもよいC10〜20アルケニル基、置換基を有していてもよいC10〜21アルキルカルボニルオキシメチル基、置換基を有していてもよいC11〜22アルキルオキシメチル基、置換基を有していてもよいC10〜21アルケニルカルボニルオキシメチル基、または置換基を有していてもよいC11〜22アルケニルオキシメチル基である、請求項1に記載の糖脂質含有化合物。

請求項3

前記R1の主鎖に含まれる原子の合計数(N1)(Y中の硫黄原子とXとを最長で結合する複数の原子を主鎖を構成する原子とし、Yがジスルフィド基の場合はそのうちのXに近い硫黄原子側を主鎖上の原子とし、合計数N1には硫黄原子を含まない。)と、前記R2の主鎖に含まれる原子の合計数(N2)(R2末端とXとを最長で結合する複数の原子を主鎖を構成する原子とする。)とが、N1:N2=1:1.5〜1:5の範囲にある、請求項1または2に記載の糖脂質含有化合物。

請求項4

前記R2が、下記式(2)(式中、pは1〜17の整数を示す。)で表される基、下記式(3)(式中、qは1〜20の整数を示す。)で表される基、または、下記式(4)(式中、qは1〜20の整数を示す。)で表される基であることを特徴とする請求項1に記載の糖脂質含有化合物。

請求項5

前記式(1)で表される化合物が、下記式(5)〔式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示し;リンカー部位中のnは2〜10の整数を示し、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示し;側鎖部位中のpは9〜17の整数を示す。〕であることを特徴とする請求項1に記載の糖脂質含有化合物。

請求項6

前記式(1)で表される化合物が、下記式(6)〔式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示し;R1は、−C(=O)−CnH2n−Yまたは−CH2−CnH2n−Y(式中、nは2〜10の整数を示し、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示す。)で表されるリンカー部位を示し;R3は、−C(=O)−CqH2q−CH3または−CH2−CqH2q−CH3(式中、qは9〜20の整数を示す。)で表される基を示す。〕であることを特徴とする請求項1に記載の糖脂質含有化合物。

請求項7

前記式(6)で表される化合物が、下記式(7)〔式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示し;リンカー部位中のnは2〜10の整数を示し、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示し;側鎖部位中のqは9〜20の整数を示す。〕であることを特徴とする請求項6に記載の糖脂質含有化合物。

請求項8

前記式(6)で表される化合物が、下記式(8)〔式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示し;リンカー部位中のnは2〜10の整数を示し、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示し;側鎖部位中のqは9〜20の整数を示す。〕であることを特徴とする請求項6に記載の糖脂質含有化合物。

請求項9

前記式(6)で表される化合物が、下記式(9)〔式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示し;リンカー部位中のnは2〜10の整数を示し、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示し;側鎖部位中のqは9〜20の整数を示す。〕であることを特徴とする請求項6に記載の糖脂質含有化合物。

請求項10

前記式(6)で表される化合物が、下記式(10)〔式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示し;リンカー部位中のnは2〜10の整数を示し、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示し;側鎖部位中のqは9〜20の整数を示す。〕であることを特徴とする請求項6に記載の糖脂質含有化合物。

請求項11

前記GN−が、下記式(i)〜(xv)(式(xii)中、W1、W2は、水素原子又は−SO3M(Mは水素原子又はその生理的に許容される塩を形成する基を示す)を示し、W1、W2のうちの少なくとも一方は−SO3Mである;式(xiii)および(xiv)中、R1は−NHAcまたは−OHであり、−COOMは−COOHまたはその生理的に許容される塩を示す。)で表されるいずれかの基である、請求項1〜10のいずれかに記載の糖脂質含有化合物。

請求項12

請求項1〜11のいずれかに記載の糖脂質含有化合物が、リンカー部位を介して金属基板表面に固定されていることを特徴とするバイオセンサー

請求項13

前記糖脂質含有化合物が金属基板表面に固定されたときの密度が、0.1〜10個/nm2である、請求項12に記載のバイオセンサー。

請求項14

前記金属基板が、金基板であることを特徴とする請求項12または13に記載のバイオセンサー。

請求項15

前記バイオセンサーが、リシン毒素大腸菌O−157、ベロ毒素ボツリヌス毒素HIVまたはインフルエンザウイルス検出用バイオセンサーである、請求項12〜14のいずれかに記載のバイオセンサー。

請求項16

下記の工程からなる、糖結合性化合物検出方法:(1)試験化合物を、請求項12〜14のいずれかに記載のバイオセンサーの基板表面に接触させる工程、(2)基板に結合した糖結合性化合物を検出する工程。

請求項17

前記GN−が、下記式(i)〜(v)のいずれかで表される基である、請求項16に記載の方法。

請求項18

前記GN−が、下記式(vi)または(vii)で表される、請求項16に記載の方法。

請求項19

前記GN−が、下記式(i)、(viii)〜(xi)で表されるいずれかの基である、請求項16に記載の方法。

請求項20

前記GN−が、下記式(i)、(xii)(式(xii)中、W1、W2は、水素原子又は−SO3M(Mは水素原子又はその生理的に許容される塩を形成する基を示す)を示し、W1、W2のうちの少なくとも一方は−SO3Mである。)で表されるいずれかの基である、請求項16に記載の方法。

請求項21

前記GN−が、下記式(xiii)または(xiv)(式中、R1は−NHAcまたは−OHであり、−COOMは−COOHまたはその生理的に許容される塩を示す。)で表されるいずれかの基である、請求項16に記載の方法。

請求項22

前記糖結合性化合物が、リシン毒素である、請求項17に記載の方法。

請求項23

前記糖結合性化合物が、大腸菌O−157またはベロ毒素である、請求項18に記載の方法。

請求項24

前記糖結合性化合物が、ボツリヌス毒素である、請求項19に記載の方法。

請求項25

前記糖結合性化合物が、HIVである、請求項20に記載の方法。

請求項26

前記糖結合性化合物が、インフルエンザウイルスである、請求項21に記載の方法。

請求項27

請求項1〜11のいずれかに記載の糖脂質含有化合物が、リンカー部位を介して金属微粒子表面に固定されていることを特徴とする糖脂質含有微粒子

請求項28

前記金属微粒子平均粒子径が、1〜100nmの範囲にあることを特徴とする請求項27に記載の糖脂質含有微粒子。

請求項29

前記糖脂質含有化合物が金属微粒子表面に固定されたときの密度が、0.1〜10個/nm2である、請求項27に記載の糖脂質含有微粒子。

請求項30

前記金属微粒子が金微粒子であることを特徴とする請求項27〜29のいずれかに記載の糖脂質含有微粒子。

請求項31

請求項27〜30のいずれかに記載の糖脂質含有微粒子を含有することを特徴とする糖結合性化合物検出試薬

請求項32

前記糖脂質含有微粒子が、溶液中にコロイドで存在していることを特徴とする請求項31に記載の糖結合性化合物検出試薬。

請求項33

前記糖結合性化合物検出試薬が、リシン毒素、大腸菌O−157、ベロ毒素、ボツリヌス毒素、HIVまたはインフルエンザウイルスの検出試薬である、請求項31または32に記載の糖結合性化合物検出試薬。

請求項34

下記の工程からなる、糖結合性化合物の検出方法:(1)試験化合物を、請求項31または32に記載の糖結合性化合物検出試薬に添加して、糖脂質含有微粒子に接触させる工程、(2)糖脂質含有微粒子に結合した糖結合性化合物を検出する工程。

請求項35

前記GN−が、下記式(i)〜(v)のいずれかで表される基である、請求項34に記載の方法。

請求項36

前記GN−が、下記式(vi)または(vii)で表される、請求項34に記載の方法。

請求項37

前記GN−が、下記式(i)、(viii)〜(xi)で表されるいずれかの基である、請求項34に記載の方法。

請求項38

前記GN−が、下記式(i)、(xii)(式(xii)中、W1、W2は、水素原子又は−SO3M(Mは水素原子又はその生理的に許容される塩を形成する基を示す)を示し、W1、W2のうちの少なくとも一方は−SO3Mである。)で表されるいずれかの基である、請求項34に記載の方法。

請求項39

前記GN−が、下記式(xiii)または(xiv)(式中、R1は−NHAcまたは−OHであり、−COOMは−COOHまたはその生理的に許容される塩を示す。)で表されるいずれかの基である、請求項34に記載の方法。

請求項40

前記糖結合性化合物が、リシン毒素である、請求項35に記載の方法。

請求項41

前記糖結合性化合物が、大腸菌O−157またはベロ毒素である、請求項36に記載の方法。

請求項42

前記糖結合性化合物が、ボツリヌス毒素である、請求項37に記載の方法。

請求項43

前記糖結合性化合物が、HIVである、請求項38に記載の方法。

請求項44

前記糖結合性化合物が、インフルエンザウイルスである、請求項39に記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、糖鎖部位、側鎖部位およびリンカー部位を有する糖脂質含有化合物に関する。
また、本発明は、該糖脂質含有化合物を含有するバイオセンサー、該糖脂質含有化合物が金属微粒子表面固定化された糖脂質含有微粒子、および該微粒子を含有する糖結合性化合物検出試薬に関する。
さらに本発明は、前記バイオセンサーまたは糖結合性化合物検出試薬を用いる糖結合性化合物の検出方法に関する。

背景技術

0002

バイオテクノロジー生化学研究臨床検査食品検査などの分野においては、対象となる糖結合性蛋白質などの糖結合性化合物の高感度な検出・定量方法が必要である。
現在、臨床検査等で用いられるセンシング法では、抗原−抗体反応を利用した測定が多く採用されている。しかし、従来法では煩雑な作業や標識物質を必要とすることから、標識物質を用いることなくリガンドの変化を高感度に検出することのできる表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:SPR)あるいは水晶振動子(Quartz Crystal Microbalance:QCM)を利用したバイオセンサーも使用されている。このSPRの現象は、表面プラズモンが金属/液体界面励起した場合に起こる光学現象を利用している。すなわち、センサーチップ表面で生じる微量な質量変化がSPRシグナルとして検出されるため、たとえば、金表面に固定化した物質検体との間の二分子間の結合および解離の変化を定量的に測定することができる。一方、QCM法は、周波数の変化から、物質の吸着量を質量に換算して求める方法であり、金表面に固定化した物質(リガンド分子)と検体(アナライト)との2分子間の結合変化に関する情報を定量的に考察できる。

0003

ところで、糖化合物を用いた一般的なバイオセンサーとして、金などの基板表面に糖化合物を固定化したセンサーが提案されている(特許文献1)。このバイオセンサーは、糖化合物を有する基が金表面に直接共有結合した構造を有している。このセンサーは、糖化合物に炭化水素などの低分子化合物を結合させ、次に該炭化水素にチオール基を結合させ、さらに金表面とチオール基(-SH)との直接的な共有結合あるいは吸着により糖化合物を基板に固定化させる方法を採用している。

0004

チオール基を介した結合は安定であるが、糖化合物には、抗原や抗体、酵素などと異なり多くの水酸基が存在し立体構造も複雑である。このため、糖化合物に当該チオール基を導入するには多くの工程数と労力が必要で、糖化合物にチオール基を簡便に導入できないという問題がある。

0005

他方、金表面にまずチオール基を有する基を導入し、別途合成した糖化合物を結合させることも理論的に可能であるが、この方法では金表面への糖化合物の導入効率が悪く実用上採用できない。

0006

そこで、SPR用のセンサーチップの表面に天然の糖化合物を固定化するため、あらかじめチップ表面を疎水処理しておき、これに先の糖鎖をチップ表面に疎水性相互作用を利用して固定化後、コレラ毒素を検出する試みがされている(非特許文献1)。さらに、糖鎖を高度に配列制御し、同時に、糖鎖を高密度に固定化するために、Langmuir-Blodgett製膜法を用いて、水晶振動子センサーチップ上に合成糖脂質の気水界面単分子膜を作成後、ベロ毒素の検出に応用する方法も知られている(特許文献2、非特許文献2)。

0007

即ち、後者(特許文献2、非特許文献2)の方法は、あらかじめチップ表面に長鎖アルキル鎖の単分子膜を作ることで疎水処理を施し、その表面に糖脂質のLB膜展開することにより、糖脂質が疎水性相互作用によりセンサーチップ上に固定化することができる。しかしながら、疎水性相互作用による固定化は固定化能が比較的弱く、水中や緩衝液中への長時間浸漬や、センサーチップを繰り返し使用すると基板から糖鎖が、時に一部、剥離するという可能性があるなど、安定性耐久性などに欠けるという問題があった。

0008

また、前者(非特許文献1)の方法では、単に疎水性相互作用のみの作業のため、高度な配向性と高密度な固定化を行うことができず、高感度なセンサーチップの作製法としては実用性に乏しいという問題があった。さらに、LB製膜法においては、単分子膜を作製後、しかるべき基板に移し取る(累積)作業が必要となるが、大量の基板に当該糖脂質を移し固定化する場合、一度に数多くの処理をすることが困難であるという問題がある。つまり、単分子膜を疎水処理した金表面に累積するという作業は、迅速に大量に行うことには限界があり、実用性に乏しいという問題点があった。

0009

固定化作業を簡素化するため、オリゴ糖鎖を、SPR等のセンサーチップやアフィニティークロマトグラフィー担体等のタンパク質分析用支持体一段で導入し、固定することが可能なリンカー化合物および該リンカー化合物を用いたリガンドおよび該リガンドを用いたオリゴ糖鎖の固定化方法も試みられている(特許文献3)。しかしながら、上記方法によっても高度な配向性で高密度な固定化を行うことができず、高感度なセンサーチップの作製法としてはさらなる性能向上が求められる。

0010

一方、迅速で簡便に行えるセンシング方法として、金微粒子の表面に糖化合物を結合させた金コロイド凝集法による検出方法が提案されている。金コロイド凝集法とは、金微粒子表面に特異的結合物質化学的及び/又は物理化学的に固定し、この微粒子と測定対象物との間で特異的な結合をさせて金コロイド凝集させ、金コロイド液の色調の変化を検出する方法である。色調の変化は目視あるいは分光計で検出できる。

0011

金微粒子に特異的結合物質を固定化する方法は、一般的に抗原−抗体反応等に代表される免疫反応による物質固定が知られている(非特許文献3)。また金コロイド標識抗体と、抗原との反応によって、金コロイドが凝集し、色調を変化させる方法に関して、金コロイド標識ウサギマンナン抗体と酵母マンナンとの場合についてその方法が知られている(非特許文献4)。さらに、ヒト・ヘモグロビンと金コロイド標識抗ヒト・ヘモグロビン抗体との凝集についても知られている(特許文献4)。

0012

このうち、金微粒子の表面に糖化合物を固定化したバイオセンシングが近年、盛んに研究されている。例えば、金固定化が可能なジスルフィド基の両端にアルキル鎖あるいはポリオキシエチレン鎖をもち、両末端に糖鎖を結合した化合物による、金微粒子の表面修飾が知られている(非特許文献5)。また、金表面にまずチオール基を有する基ポリエチレングリコール鎖を導入し、末端に存在するアルデヒド基を用いて、別途合成した糖化合物を結合させる、糖認識タンパク質特異的吸着方法が知られている(非特許文献6)。

0013

金表面との結合のため、グリコスフィンゴ脂質およびグリセロ脂質の混合物を用いることができることが記載されている(非特許文献7,8)。
米国特許第3231733号
特開2002−022745号公報
特開2003−83969号公報
特開平2−141665号公報
Biochemistry, Vol.35, P.6375, 1996年
Biomacromolecules, vol. 3, p411,2002年
J. Histochem. Cytochem.、Vol.25、P.1187、1977年
J. Histochem. Cytochem.、Vol.25、P.295、1977年
Angew. Chem. Int. Ed.、Vol.40、P.2257、2001年
J. Am. Chem. Soc.、Vol.123、P.8226、2001年
Tetrahedron Letters 40 (1999) 2011-2014
Tetrahedron 56(2000) 9975-9984

発明が解決しようとする課題

0014

したがって、糖化合物を高度な配向性と高密度で簡便に固定でき、しかも糖結合性化合物を高感度で簡便かつ迅速に定量・評価できるセンサー、検出試薬、およびその検出手法が望まれていた。

0015

前記非特許文献7、8には、金表面との結合のため、グリコスフィンゴ脂質およびグリセロ脂質の混合物を用いることができることが記載されている。これらの文献は、グリセロ脂質を混合して天然の細胞膜生体膜)を模倣したものであり、非特異的吸着を抑制できるかもしれないと述べている。
しかし、該文献に記載されたグリコスフィンゴ脂質およびグリセロ脂質を用いたセンサーは具体的には開示されていない。さらに本明細書の実施例にも示すとおり、該文献の脂質では、金微粒子の表面に糖化合物を結合させた金コロイド凝集法による検出方法に適用する場合には、コロイド粒子の分散安定性が悪く、センサーとして使えない。

0016

本発明は、糖化合物を基板表面あるいは微粒子表面へ、高度な配向性と適切な密度に簡便に固定することが可能で、しかも高感度で簡便かつ迅速に糖結合性化合物を定量評価することを可能とする糖脂質含有化合物および糖脂質含有微粒子を提供することを課題とする。
さらに本発明は、高感度で簡便かつ迅速に糖結合性化合物を定量評価できるバイオセンサー、検出試薬、または該糖結合性化合物の検出方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0017

本発明者らは、上記課題を鑑み鋭意研究の結果、糖鎖部位と、特定のリンカー部位と、特定の側鎖部位とを有する糖脂質含有化合物を金属基板あるいは金属微粒子表面に固定化すると、高度な配向性で高密度に該固定を行うことができるとともに、該糖脂質含有化合物を含有するセンサーあるいは糖脂質含有微粒子を含有する検出試薬を用いると、極微量の糖結合性化合物でも高感度に検出・定量できることを見出し、本発明を完成した。

0018

すなわち本件発明は以下を含む。
〔1〕 下記一般式(1)

〔式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示し;
Xは、−O−または−NH−を示し;
R1は、−C(=O)−CnH2n−Yまたは−CH2−CnH2n−Y(式中、nは2〜10の整数を示し、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示す。)で表されるリンカー部位を示し;
R2は、置換基を有していてもよいC2〜20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルケニル基、置換基を有していてもよいC1〜21アルキルカルボニルオキシメチル基、置換基を有していてもよいC2〜22アルキルオキシメチル基、置換基を有していてもよいC2〜21アルケニルカルボニルオキシメチル基、または置換基を有していてもよいC2〜22アルケニルオキシメチル基で示される側鎖部位を示す。〕で表されることを特徴とする糖脂質含有化合物。
〔2〕前記R2が、置換基を有していてもよいC10〜20アルキル基、置換基を有していてもよいC10〜20アルケニル基、置換基を有していてもよいC10〜21アルキルカルボニルオキシメチル基、置換基を有していてもよいC11〜22アルキルオキシメチル基、置換基を有していてもよいC10〜21アルケニルカルボニルオキシメチル基、または置換基を有していてもよいC11〜22アルケニルオキシメチル基である、〔1〕に記載の糖脂質含有化合物。
〔3〕 前記R1の主鎖に含まれる原子の合計数(N1)(Y中の硫黄原子とXとを最長で結合する複数の原子を主鎖を構成する原子とし、Yがジスルフィド基の場合はそのうちのXに近い硫黄原子側を主鎖上の原子とし、合計数N1には硫黄原子を含まない。)と、前記R2の主鎖に含まれる原子の合計数(N2)(R2末端とXとを最長で結合する複数の原子を主鎖を構成する原子とする。)とが、N1:N2=1:1.5〜1:5の範囲にある、〔1〕または〔2〕に記載の糖脂質含有化合物。
〔4〕 前記R2が、下記式(2)

(式中、pは1〜17の整数を示す。)で表される基、
下記式(3)

(式中、qは1〜20の整数を示す。)で表される基、または、
下記式(4)

(式中、qは1〜20の整数を示す。)で表される基であることを特徴とする〔1〕に記載の糖脂質含有化合物。
〔5〕 前記式(1)で表される化合物が、下記式(5)

〔式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示し;
リンカー部位中のnは2〜10の整数を示し、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示し;
側鎖部位中のpは9〜17の整数を示す。〕であることを特徴とする〔1〕に記載の糖脂質含有化合物。
〔6〕 前記式(1)で表される化合物が、下記式(6)

〔式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示し;
R1は、−C(=O)−CnH2n−Yまたは−CH2−CnH2n−Y(式中、nは2〜10の整数を示し、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示す。)で表されるリンカー部位を示し;
R3は、−C(=O)−CqH2q−CH3または−CH2−CqH2q−CH3(式中、qは9〜20の整数を示す。)で表される基を示す。〕であることを特徴とする〔1〕に記載の糖脂質含有化合物。
〔7〕前記式(6)で表される化合物が、下記式(7)

〔式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示し;
リンカー部位中のnは2〜10の整数を示し、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示し;
側鎖部位中のqは9〜20の整数を示す。〕であることを特徴とする〔6〕に記載の糖脂質含有化合物。
〔8〕 前記式(6)で表される化合物が、下記式(8)

〔式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示し;
リンカー部位中のnは2〜10の整数を示し、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示し;
側鎖部位中のqは9〜20の整数を示す。〕であることを特徴とする〔6〕に記載の糖脂質含有化合物。
〔9〕 前記式(6)で表される化合物が、下記式(9)

〔式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示し;
リンカー部位中のnは2〜10の整数を示し、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示し;
側鎖部位中のqは9〜20の整数を示す。〕であることを特徴とする〔6〕に記載の糖脂質含有化合物。
〔10〕 前記式(6)で表される化合物が、下記式(10)

〔式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示し;
リンカー部位中のnは2〜10の整数を示し、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示し;
側鎖部位中のqは9〜20の整数を示す。〕であることを特徴とする〔6〕に記載の糖脂質含有化合物。
〔11〕 前記GN−が、下記式(i)〜(xv)




(式(xii)中、W1、W2は、水素原子又は−SO3M(Mは水素原子又はその生理的に許容される塩を形成する基を示す)を示し、W1、W2のうちの少なくとも一方は−SO3Mである;
式(xiii)および(xiv)中、R1は−NHAcまたは−OHであり、−COOMは−COOHまたはその生理的に許容される塩を示す。)
で表されるいずれかの基である、〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の糖脂質含有化合物。
〔12〕〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の糖脂質含有化合物が、リンカー部位を介して金属基板表面に固定されていることを特徴とするバイオセンサー。
〔13〕 前記糖脂質含有化合物が金属基板表面に固定されたときの密度が、0.1〜10個/nm2である、〔12〕に記載のバイオセンサー。
〔14〕 前記金属基板が、金基板であることを特徴とする〔12〕または〔13〕に記載のバイオセンサー。
〔15〕 前記バイオセンサーが、リシン毒素大腸菌O−157、ベロ毒素、ボツリヌス毒素HIVまたはインフルエンザウイルス検出用バイオセンサーである、〔12〕〜〔14〕のいずれかに記載のバイオセンサー。
〔16〕 下記の工程からなる、糖結合性化合物の検出方法:
(1)試験化合物を、〔12〕〜〔14〕のいずれかに記載のバイオセンサーの基板表面に接触させる工程、
(2)基板に結合した糖結合性化合物を検出する工程。
〔17〕 前記GN−が、下記式(i)〜(v)


のいずれかで表される基である、〔16〕に記載の方法。
〔18〕 前記GN−が、下記式(vi)または(vii)


で表される、〔16〕に記載の方法。
〔19〕 前記GN−が、下記式(i)、(viii)〜(xi)


で表されるいずれかの基である、〔16〕に記載の方法。
〔20〕 前記GN−が、下記式(i)、(xii)

(式(xii)中、W1、W2は、水素原子又は−SO3M(Mは水素原子又はその生理的に許容される塩を形成する基を示す)を示し、W1、W2のうちの少なくとも一方は−SO3Mである。)で表されるいずれかの基である、〔16〕に記載の方法。
〔21〕 前記GN−が、下記式(xiii)または(xiv)


(式中、R1は−NHAcまたは−OHであり、−COOMは−COOHまたはその生理的に許容される塩を示す。)で表されるいずれかの基である、〔16〕に記載の方法。
〔22〕 前記糖結合性化合物が、リシン毒素である、〔17〕に記載の方法。
〔23〕 前記糖結合性化合物が、大腸菌O−157またはベロ毒素である、〔18〕に記載の方法。
〔24〕 前記糖結合性化合物が、ボツリヌス毒素である、〔19〕に記載の方法。
〔25〕 前記糖結合性化合物が、HIVである、〔20〕に記載の方法。
〔26〕 前記糖結合性化合物が、インフルエンザウイルスである、〔21〕に記載の方法。
〔27〕 〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の糖脂質含有化合物が、リンカー部位を介して金属微粒子表面に固定されていることを特徴とする糖脂質含有微粒子。
〔28〕 前記金属微粒子平均粒子径が、1〜100nmの範囲にあることを特徴とする〔27〕に記載の糖脂質含有微粒子。
〔29〕 前記糖脂質含有化合物が金属微粒子表面に固定されたときの密度が、0.1〜10個/nm2である、〔27〕に記載の糖脂質含有微粒子。
〔30〕 前記金属微粒子が金微粒子であることを特徴とする〔27〕〜〔29〕のいずれかに記載の糖脂質含有微粒子。
〔31〕 〔27〕〜〔30〕のいずれかに記載の糖脂質含有微粒子を含有することを特徴とする糖結合性化合物検出試薬。
〔32〕 前記糖脂質含有微粒子が、溶液中にコロイドで存在していることを特徴とする〔31〕に記載の糖結合性化合物検出試薬。
〔33〕 前記糖結合性化合物検出試薬が、リシン毒素、大腸菌O−157、ベロ毒素、ボツリヌス毒素、HIVまたはインフルエンザウイルスの検出試薬である、〔31〕または〔32〕に記載の糖結合性化合物検出試薬。
〔34〕 下記の工程からなる、糖結合性化合物の検出方法:
(1)試験化合物を、〔31〕または〔32〕に記載の糖結合性化合物検出試薬に添加して、糖脂質含有微粒子に接触させる工程、
(2)糖脂質含有微粒子に結合した糖結合性化合物を検出する工程。
〔35〕 前記GN−が、下記式(i)〜(v)

のいずれかで表される基である、〔34〕に記載の方法。
〔36〕 前記GN−が、下記式(vi)または(vii)

で表される、〔34〕に記載の方法。
〔37〕 前記GN−が、下記式(i)、(viii)〜(xi)


で表されるいずれかの基である、〔34〕に記載の方法。
〔38〕 前記GN−が、下記式(i)、(xii)

(式(xii)中、W1、W2は、水素原子又は−SO3M(Mは水素原子又はその生理的に許容される塩を形成する基を示す)を示し、W1、W2のうちの少なくとも一方は−SO3Mである。)で表されるいずれかの基である、〔34〕に記載の方法。
〔39〕 前記GN−が、下記式(xiii)または(xiv)

(式中、R1は−NHAcまたは−OHであり、−COOMは−COOHまたはその生理的に許容される塩を示す。)で表されるいずれかの基である、〔34〕に記載の方法。
〔40〕 前記糖結合性化合物が、リシン毒素である、〔35〕に記載の方法。
〔41〕 前記糖結合性化合物が、大腸菌O−157またはベロ毒素である、〔36〕に記載の方法。
〔42〕 前記糖結合性化合物が、ボツリヌス毒素である、〔37〕に記載の方法。
〔43〕 前記糖結合性化合物が、HIVである、〔38〕に記載の方法。
〔44〕 前記糖結合性化合物が、インフルエンザウイルスである、〔39〕に記載の方法。

図面の簡単な説明

0019

図1は化合物(1d)の1H-NMRスペクトル(5.0ppm〜3.0ppm)である。
図2は化合物(2d)の1H-NMRスペクトル(5.0ppm〜3.0ppm)である。
図3は糖鎖部位にガラクトースをもつ化合物(2b)、化合物(3b)または化合物(4b)を固定化したセンサーチップ表面とリシン120との相互作用SPRセンサーグラムである。リシン120溶液の注入量は1000ng/mL(8.3nM)溶液100μLを流速10μL/minで注入している。
図4は糖鎖部位にラクトースをもつ化合物(2c)または化合物(3c)を固定化したセンサーチップ表面とリシン120との相互作用のSPRセンサーグラムである。リシン120溶液の注入量は1000ng/mL(8.3nM)溶液100μLを流速10μL/minで注入している。
図5は化合物(2b)を固定化したセンサーチップ表面と各濃度のリシン120との相互作用のセンサーグラムである。リシン120溶液の注入量は10000、1000、100および10ng/mL溶液100μLを流速10μL/minで注入している。
図6は化合物(2c)を固定化したセンサーチップ表面と各濃度のリシン120との相互作用のセンサーグラムである。リシン120溶液の注入量は10000、1000、100および10ng/mL溶液100μLを流速10μL/minで注入している。
図7は化合物(2d)を固定化したセンサーチップ表面と各濃度のボツリヌス毒素Cとの相互作用のセンサーグラムである。ボツリヌス毒素C溶液の注入量は1000、500、100および10ng/mL溶液100μLを流速10μL/minで注入している。

発明を実施するための最良の形態

0020

以下に、糖脂質含有化合物、バイオセンサー、糖結合性化合物検出試薬について具体的に説明する。
<糖脂質含有化合物>
本発明に係る糖脂質含有化合物は、下記一般式(1)で表される。

0021

式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示す。
GNは糖結合性化合物との関係により決定され限定されず、任意の糖鎖であってよい。
たとえば、糖が直鎖状に共有結合した糖鎖部位は、Nは好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜5である糖鎖部位が挙げられる。分岐状の場合、Nは好ましくは5〜10である糖鎖部位が挙げられる。

0022

直鎖状の糖鎖部位(GN)の場合の具体的な例としては、下記(i)〜(vii)のような糖鎖部位が挙げられる。

0023

このうち、たとえば、(i)で表されるガラクトース単位、および、(ii)で表されるN−アセチルガラクトサミン単位、さらには、(iii)で表される2糖のラクトース単位、(iv)で表される2糖のラクトサミン単位、(v)で表されるガラクトースとN−アセチルガラクトサミンがβ結合した2糖単位(Galβ1-3GalNAc)は、リシン毒素の検出に有効である。
また、上記(vi)で表されるガラクトース2個がα結合した2糖単位(Galα1−4Galβ1−)のものおよび上記(vii)で表されるガラクトース2個がα結合したものに、さらにグルコースが結合した3糖単位(Galα1-4Galβ1-4Glcβ1-)のものは、大腸菌O−157または大腸菌O−157が生産するベロ毒素の検出に有効である。
前記(i)で表される糖鎖部位はボツリヌス菌が生産するボツリヌス毒素Bの検出にも有効である。

0024

さらに、直鎖状の糖鎖部位(GN)の場合の具体的な例として、下記(xii)のような糖鎖部位も挙げられる。

式(xii)中、W1、W2は、水素原子又は−SO3M(Mは水素原子又はその生理的に許容される塩を形成する基を示す)を示し、W1、W2のうちの少なくとも一方は−SO3Mである。
具体的には、下記(xv)〜(xvii)で表される基が挙げられる。

前記(i)、(xii)で表される基は、AIDS(後天性免疫不全症候群)の原因となるHIV(human immunodeficiency virus;ヒト免疫不全ウイルス) (別冊日系サイエンス111、89〜101ページ)の検出に有効である。

0025

またさらに、前記GN−は、下記式(xiii)または(xiv)

(式中、R1は−NHAcまたは−OHであり、−COOMは−COOHまたはその生理的に許容される塩を示す。)で表されるいずれかの基であってもよい。
前記(xiii)、(xiv)で表される基は、インフルエンザウイルス(別冊日系サイエンス111、89〜101ページ)の検出に有効である。

0026

前記−SO3M、−CO2Mが生理的に許容される塩である場合、その塩の形態は特に限定されず、例えば、無機酸塩有機酸塩無機塩基塩、有機塩基塩、酸性または塩基性アミノ酸塩などがあげられる。

0027

無機酸塩の好ましい例としては、例えば塩酸塩臭化水素酸塩硫酸塩、硝酸塩リン酸塩などがあげられ、有機酸塩の好ましい例としては、例えば酢酸塩コハク酸塩フマル酸塩マレイン酸塩酒石酸塩クエン酸塩乳酸塩ステアリン酸塩安息香酸塩メタンスルホン酸塩p−トルエンスルホン酸塩などがあげられる。

0028

無機塩基塩の好ましい例としては、例えばナトリウム塩カリウム塩などのアルカリ金属塩カルシウム塩マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩アルミニウム塩アンモニウム塩などがあげられ、有機塩基塩の好ましい例としては、例えばジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩ジエタノールアミン塩、メグルミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩などがあげられる。

0029

酸性アミノ酸塩の好ましい例としては、例えばアスパラギン酸塩グルタミン酸塩などが挙げられ、塩基性アミノ酸塩の好ましい例としては、例えばアルギニン塩リジン塩オルニチン塩などがあげられる。

0030

分岐状の糖鎖部位の場合のより具体的な例としては、下記(viii)〜(xi)のような糖鎖部位が挙げられる。

0031

本発明の糖脂質含有化合物は、ボツリヌス毒素の検出にも有効である。ボツリヌス毒素としては、ボツリヌス毒素A、B、C、D、E、Fが挙げられる。
前記(viii)で表される6糖の糖鎖部位はボツリヌス菌が生産するボツリヌス毒素A、Bの検出に有効である。
前記(ix)で表される7糖の糖鎖部位はボツリヌス菌が生産するボツリヌス毒素A、B、C、Fの検出に有効である。
前記(x)で表される8糖の糖鎖部位はボツリヌス菌が生産するボツリヌス毒素A、Eの検出に有効である。
前記(xi)で表される6糖の糖鎖部位はボツリヌス菌が生産するボツリヌス毒素Bの検出に有効である。

0032

なお、たとえば、前記式(x)で表される8糖の糖鎖部位は下記式で表される場合がある。

0033

NeuAc(α2-8)NeuAc(α2-3)Gal(β1-3)GalNAc(β1-4)(NeuAc(α2-8)NeuAc(α2-3))Gal(β1-4)Glc(β)-

0034

なお、NeuAcはN−アセチルノイラミン酸シアル酸)を、Galはガラクトースを、GalNAcは、N−アセチルガラクトサミンを、Glcはグルコースを表す。また、数字とギリシャ文字は、糖同士の結合様式を示す。たとえば、Gal(β1-4)Glcは、ガラクトースの1位がβ結合でグルコースの4位と結合していることを意味する。Acはアセチル基(−C(=O)CH3)を示す。

0035

前記Xは、−O−または−NH−で表される2価の基である。

0036

前記R1は、−C(=O)−CnH2n−Yまたは−CH2−CnH2n−Yで表されるリンカー部位を示す。式中、nは2〜10の整数を示し、好ましくは3〜8、さらに好ましくは3〜5である。
nが上記範囲にあると、糖脂質含有化合物を、基板表面あるいは微粒子表面に結合したときのセンサーの感度が向上するとともに、糖結合性化合物との結合に適した密度・配向性をもって基板表面または微粒子表面に効果的に結合させることができる。

0037

前記式(1)中、Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示す。本明細書において「チオール基」とは−SHで表される基であり、「ジスルフィド基」とは、−S−S−で表される構造を有する基である。

0038

これらのうちでは、ジスルフィド基が好ましい。ジスルフィド基の場合、糖脂質含有化合物を基板表面又は微粒子表面に強固に安定に固定化することができる。特に、本発明では、糖鎖部、リンカー部位、および側鎖の立体障害予測され、結合密度の低下、感度低下などが考えられるが、本発明のように特定のリンカーと側鎖とジスルフィド基の組み合わせにより、強固で安定な固定化が可能となり、立体障害の影響がなく高感度のセンサーとすることができる。

0039

前記ジスルフィド基としては、好ましくは環状ジスルフィド基が挙げられ、このうち5員環ジチオラニル基、たとえば1,2−ジチオラン−3−イル基、1,2−ジチオラン−4−イル基など、6員環のジチアニル基、たとえば1,2−ジチアン−3−イル基、1,2−ジチアン−4−イル基などが挙げられる。これらのうちでは、5員環のジチオラニル基が好ましく、1,2−ジチオラン−3−イル基がより好ましい。また、チオクト酸リポ酸)から誘導される基を用いることもできる。

0040

R2は、置換基を有していてもよいC2〜20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜20アルケニル基、置換基を有していてもよいC1〜21アルキルカルボニルオキシメチル基、置換基を有していてもよいC2〜22アルキルオキシメチル基、置換基を有していてもよいC2〜21アルケニルカルボニルオキシメチル基、または置換基を有していてもよいC2〜22アルケニルオキシメチル基で示される側鎖部位を示す。

0041

さらに、前記R2は、好ましくは、置換基を有していてもよいC10〜20アルキル基、置換基を有していてもよいC10〜20アルケニル基、置換基を有していてもよいC10〜21アルキルカルボニルオキシメチル基、置換基を有していてもよいC11〜22アルキルオキシメチル基、置換基を有していてもよいC10〜21アルケニルカルボニルオキシメチル基、または置換基を有していてもよいC11〜22アルケニルオキシメチル基である。

0042

さらに、前記R1の主鎖に含まれる原子の合計数(N1)と、前記R2の主鎖に含まれる原子の合計数(N2)とは、好ましくはN1:N2=1:1.5〜1:5、さらに好ましくは1:2〜1:3の範囲にある。
なお、N1においては、Y中の硫黄原子とXとを最長で結合する複数の原子を、主鎖を構成する原子とし、Yがジスルフィド基の場合はそのうちのXに近い硫黄原子側を主鎖上の原子とし、合計数N1には硫黄原子を含まない。また、N2においては、R2末端とXとを最長で結合する複数の原子を、主鎖を構成する原子とする。

0043

このような側鎖部位が含まれていると、側鎖部位が存在しない場合と比較して、検出感度を格段に向上させることができる。これは、側鎖部位と分析するタンパク質などの糖結合性化合物との適度な疎水性相互作用に基づくのではないかと推測される。
さらに、このような炭素数あるいは原子数で側鎖部位が構成され、側鎖部位が前記リンカー部位よりも大きい長さとなる場合、糖脂質含有化合物を、糖結合性化合物との結合に適した、より高度な配向性で基板や微粒子に固定することができるとともに、該糖脂質含有化合物を含有するバイオセンサーあるいは糖脂質含有微粒子を含有する検出試薬に応用すると、極微量の糖結合性化合物でも高感度に検出・定量できる。
これは、側鎖部位がリンカー部位の長さに応じて折り畳み構造をとり、折りたたまれた側鎖部位によって、糖脂質含有化合物同士が糖結合性化合物との結合に適した高配向性をもって基板表面や微粒子表面に効果的に結合するためではないかと推測される。
先述の非特許文献7、8が細胞膜(生体膜)の模倣であるのに対し、本願の特徴は、細胞膜よりも糖脂質化合物をより適切な配向性で固定化した基板、微粒子を提供でき、検出感度が格段に向上する。

0044

本発明では、前記R2は、−CmH2m−CH3で表される、疎水性の基を含むことが好ましい。式中、mは1〜21の整数を示し、好ましくはmは10〜20、さらに好ましくは13〜18である。
このような疎水性の側鎖部位を有することにより、側鎖部位が存在しない場合と比較して、糖脂質含有化合物を高度な配向性で高密度に基板や微粒子に固定することができるとともに、該糖脂質含有化合物を含有するバイオセンサーあるいは糖脂質含有微粒子を含有する検出試薬を用いると、極微量の糖結合性化合物でも高感度に検出・定量できる。

0045

「C2〜20アルキル基」とは、炭素原子数2〜20のアルキル基であり、直鎖状、分岐状アルキル基のいずれよいが、好ましくは直鎖状アルキル基である。

0046

「C2〜20アルケニル基」とは、炭素原子数2〜20のアルケニル基であり、直鎖状、分岐状のいずれでもよいが、好ましくは直鎖状アルケニル基である。不飽和結合は1つまたは2以上含んでいてもよい。複数の不飽和結合を含む場合には、−CH=CH−CH2−CH=CH−のような配置を含んでいてもよい。

0047

「C1〜20アルキルカルボニルオキシメチル基」とは、C1〜20アルキル基−CO−O−CH2−で表される基であり、C1〜20アルキル基は直鎖状、分岐状アルキル基のいずれよいが、好ましくは直鎖状アルキル基である。

0048

「C2〜21アルキルオキシメチル基」とは、C2〜21アルキル基−O−CH2−で表される基であり、C2〜21アルキル基は直鎖状、分岐状アルキル基のいずれよいが、好ましくは直鎖状アルキル基である。

0049

「C2〜20アルケニルカルボニルオキシメチル基」とは、C2〜20アルケニル基−CO−O−CH2−で表される基であり、C2〜20アルケニル基は直鎖状、分岐状のいずれでもよい。不飽和結合は1つまたは2以上含んでいてもよい。複数の不飽和結合を含む場合には、−CH=CH−CH2−CH=CH−のような配置を含んでいてもよい。

0050

「C2〜21アルケニルオキシメチル基」とは、C2〜21アルケニル基−O−CH2−で表される基であり、C2〜21アルケニル基は直鎖状、分岐状のいずれでもよい。不飽和結合は1つまたは2以上含んでいてもよい。複数の不飽和結合を含む場合には、−CH=CH−CH2−CH=CH−のような配置を含んでいてもよい。

0051

「置換基を有していてもよい」とは、置換可能な部位に、任意に組み合わせて1または複数個の置換基を有してもよいことを意味する。当該置換基とは具体的には例えば、以下の置換基A群から選ばれる基をあげることができる。

0053

これらの置換基のうちでは、水酸基、またはC1〜6アルコキシ基が好ましい。

0054

「置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20のアルキル基」とは、炭素原子数2〜20のアルキル基(−CtH2t+2(tは2〜20))を意味する。

0055

「置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20のアルキレン基」のうちでは、下記式(2)で表される基が好ましい。

式中、pは1〜17の整数を示す。前記pは好ましくは7〜17、さらに好ましくは10〜15である。

0056

前記(2)で表される基を有する化合物(1)のうち、下記式(5)で表される化合物が好ましい。

式中、GNは式(1)中のそれと同意義である。リンカー部位中のnは2〜10の整数を示し、好ましくは3〜8、さらに好ましくは3〜5である。Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示し、好ましくは1個のジスルフィド基である。側鎖部位中のpは好ましくは1〜17の整数を示し、さらに好ましくは7〜17、特に好ましくは10〜15である。

0057

さらに、前記−COCnH2nYの主鎖に含まれる原子の合計数(N1)と、前記−C(OH)C=CCpH2pCH3の主鎖に含まれる原子の合計数(N2)とは、好ましくはN1:N2=1:1.5〜1:5、さらに好ましくは1:2〜1:3の範囲にある。
なお、N1においては、Y中の硫黄原子とXとを最長で結合する複数の原子を、主鎖を構成する原子とし、Yがジスルフィド基の場合はそのうちのXに近い硫黄原子側を主鎖上の原子とし、合計数N1には硫黄原子を含まない。また、N2においては、R2末端とXとを最長で結合する複数の原子を、主鎖を構成する原子とする。

0058

上述のとおり、このような側鎖部位が含まれていると、側鎖部位が存在しない場合と比較して、検出感度を格段に向上させることができる。
さらに、このような炭素数あるいは原子数で側鎖部位が構成されて、側鎖部位が前記リンカー部位よりも大きい長さとなる場合、糖脂質含有化合物を、より高度な配向性で高密度に基板や微粒子に固定することができるとともに、該糖脂質含有化合物を含有するバイオセンサーあるいは糖脂質含有微粒子を含有する検出試薬を用いると、極微量の糖結合性化合物でも高感度に検出・定量できる。
式(5)中、−NHとこれに隣接する−OHは、D−エリスロ体であることが好ましい。

0059

このような(5)で表される化合物は、細胞二重層膜の表側に多く存在するスフィンゴ糖脂質スフィンゴイド脂肪酸が結合したセラミドに糖が結合した化合物)などから誘導することができ、原料入手容易性からも好適である。

0060

「C1〜20アルキルカルボニルオキシメチル基」のうちでは、下記式(3)で表される基が好ましい。

式中、qは1〜20の整数を示し、好ましくは10〜20、さらに好ましくは13〜18である。

0061

「C2〜21アルキルオキシメチル基」のうちでは、下記式(4)で表される基が好ましい。

式中、qは1〜20の整数を示し、好ましくは10〜20、さらに好ましくは13〜18である。

0062

前記(3)または(4)で表される基を有する化合物(1)のうち、下記式(6)で表される化合物が好ましい。

式中、GNはN個(Nは1〜10の整数)の糖が直鎖状または分岐状に共有結合した糖鎖部位を示し;
R1は、−C(=O)−CnH2n−Yまたは−CH2−CnH2n−Yで表されるリンカー部位を示す。式中、nは2〜10の整数を示し、好ましくは3〜8、さらに好ましくは3〜5である。Yは1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示し、好ましくは1個のジスルフィド基である。
R3は、−C(=O)−CqH2q−CH3または−CH2−CqH2q−CH3で表される基を示す。式中、qは1〜20の整数を示し、好ましくは10〜20、さらに好ましくは13〜18である。

0063

前記式(6)で表される化合物としては、具体的には、たとえば、下記式(7)〜(10)で表される化合物が挙げられる。

0064

式中、GNは、前記と同義である。Yは前記のとおり、1個又は2個以上のチオール基または1個又は2個以上ジスルフィド基を有する基を示し、好ましくは1個のジスルフィド基である。nは前記のとおり、2〜10の整数を示し、好ましくは3〜8、さらに好ましくは3〜5である。qは1〜20の整数を示し、好ましくは10〜20、さらに好ましくは13〜18である。

0065

さらに、前記−COCnH2nYおよび−CH2CnH2nYの主鎖に含まれる原子の合計数(N1)と、前記−CH2O(CO)CqH2qCH3および−CH2OCH2CqH2qCH3の主鎖に含まれる原子の合計数(N2)とは、好ましくはN1:N2=1:1.5〜1:5、さらに好ましくは1:2〜1:3の範囲にある。
なお、N1においては、Y中の硫黄原子とXとを最長で結合する複数の原子を、主鎖を構成する原子とし、Yがジスルフィド基の場合はそのうちのXに近い硫黄原子側を主鎖上の原子とし、合計数N1には硫黄原子を含まない。また、N2においては、R2末端とXとを最長で結合する複数の原子を、主鎖を構成する原子とする。

0066

上述のとおり、このような側鎖部位が含まれていると、側鎖部位が存在しない場合と比較して、検出感度を格段に向上させることができる。
さらに、このような炭素数あるいは原子数で側鎖部位が構成され、側鎖部位が前記リンカー部位の長さよりも大きい長さとなる場合、糖脂質含有化合物を、より高度な配向性で基板や微粒子に固定することができるとともに、該糖脂質含有化合物を含有するバイオセンサーあるいは糖脂質含有微粒子を含有する検出試薬を用いると、極微量の糖結合性化合物でも高感度に検出・定量できる。

0067

このような式(6)あるいは式(7)〜(10)で表される化合物は、細胞二重層膜の表側に多く存在するグリセロ糖脂質親水性基として糖、脂溶性基としてグリセリド部位又はジアシルグリセロール部位を有する糖脂質)などから誘導することができ、原料入手の容易性からも好適である。

0068

このようなリンカー部位と側鎖部位とを有すると、糖脂質含有化合物を高度な配向性で高密度に基板や微粒子に固定することができるとともに、該糖脂質含有化合物を含有するバイオセンサーあるいは糖脂質含有微粒子を含有する検出試薬を用いると、極微量の糖結合性化合物でも高感度に検出・定量できる。

0069

糖脂質含有化合物の製造方法
本発明に係る糖脂質含有化合物(1)の製造方法に限定はないが、たとえば、下記工程1に示すような、出発原料として天然に由来するスフィンゴ糖脂質を用いる方法が挙げられる。

0070

工程1

スフィンゴ糖脂質(1a)(式中、GNは式(1)中のGNと同様であり、R4は−C10〜18H20〜30−CH3であり、R'は−C10〜20H20〜40−CH3である。)は、1個以上の糖が直鎖あるいは分岐鎖で共有結合している糖鎖部位と、スフィンゴシン構造またはスフィンゴシン部位に脂肪酸がN-アシル結合したセラミドと呼ばれる脂質を骨格としている。該スフィンゴ糖脂質は、脊椎動物無脊椎動物、植物などに広く存在する化合物である。

0071

たとえば、該スフィンゴ糖脂質(1a)を公知の方法を用いて酵素処理することにより(J. Biol. Chem.、Vol.250、P.24370、1995年)、セラミド部位にあるアミド結合を選択的に加水分解し、アミノ基をもつスフィンゴシン構造またはスフィンゴシン部位が疎水性部となる一本鎖糖脂質である化合物(2a)(リゾ体)を得ることができる。該酵素反応は、スフィンゴ糖脂質やスフィンゴミエリン特異的作用することのできる酵素、スフィンゴ脂質セラミドN-デアシラーゼ(Sphingolipid ceramide N-deacylase: SCDase, E.C. 3.5.1.69)を用いる。当該酵素はすべてのスフィンゴ糖脂質とスフィンゴミエリンに作用する。

0072

前記SCDaseは、反応液のpHや界面活性剤濃度により、加水分解以外に、縮合反応と脂肪酸交換反応も効率よく触媒することができる(J. Lipid Res.、Vol.38、P.1923、1997年)。

0073

前記酵素による加水分解反応は、スフィンゴ糖脂質10μmolに対してSCDaseを好ましくは1〜5U添加し、好ましくはpH5.5〜6.5の酢酸緩衝液中で、界面活性剤としてたとえばタウデオキシコール酸ナトリウム0.5%〜2.0%の存在下に、30〜40℃で実施することが好ましい。さらに反応液の上層部に、好ましくは反応液の10倍量に相当する炭素数10〜18の炭化水素溶媒を加えることにより高い収率で化合物(2a)を得ることができる。

0074

次に、得られた化合物(2a)のアミノ基に、金属基板または金属微粒子表面と化学的及び/又は物理化学的な固定が可能なリンカー部位となる化合物(3a)を化学結合により結合させて化合物(4a)を得ることができる。このような化合物としてはたとえば、HOOC−CnH2nY(3a)(式中、n、Yは前記式(1)中のn、Yと同意義である。)で表される、チオクト酸、チオール基を末端に有する脂肪酸、ジスルフィド基を有する脂肪酸が挙げられる。

0075

また、リンカー部位を誘導する化合物(3a)は、あらかじめカルボキシル基をN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)などで活性化したものを用いてもよい。
リゾ体(2a)のアミノ基と化合物(3a)のカルボキシル基との反応は、溶媒中、必要に応じ脱水縮合剤の存在下に実施する。化合物(3a)の使用量は、リゾ体(2a)に対して、1〜3当量の範囲にあることが好ましい。
前記溶媒としては、たとえば、N,N-ジメチルホルムアミドDMF)、ジメチルスルホキシドDMSO)、アセトニトリルエタノールなどの有機溶媒、水などが挙げられる。溶媒は、1種単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。

0076

脱水縮合剤を用いる場合、たとえば、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリン塩(DMT-MM)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(EDCまたはWSC)などが挙げられる。また、N-メチルモルホリン(NMP)、NHS等の活性化剤を上記脱水縮合剤を併用して用いることもできる。
反応は、好ましくは0℃から40℃の範囲の温度で、好ましくは1〜48時間程度行う。

0077

工程2
糖脂質含有化合物は、工程2に示すように、さらに側鎖部分の2重結合に、エポキシ基、水酸基を導入したり、アルデヒドに変換することにより、側鎖部分の炭素数を変換することができる。

0078

上記工程2において、R5は−CnH2n−Yである。R4は、−CpH2p−CH3で表される基である。R4'は、R4と異なる−CpH2p−CH3で表される基である。
GN、n、pは、前記と同義である。

0079

オレフィン部分にエポキシ基を導入するには、アルカリ性過酸化水素(Prilezhaevエポキシ化反応)、m-クロ過安息香酸(m-chloro perbenzoic acid;MCPBA酸化)、Ti(O-i-Pr)4と酒石酸ジエチルメタノールの存在下tert-ブチルヒドロペルオキシド(香月−Sharpless不斉酸化)などを用いて行うことができる。

0080

オレフィンに水酸基を導入するには、カンファースルホン酸(CSA)やp−トルエンスルホン酸(pTsOH)のような酸、もしくは、水酸化ナトリウム(NaOH)や水酸化カリウム(KOH)のような塩基の存在下、先のエポキシ基を開裂させ水酸基(ジオール)を導入できる。

0081

また、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)により、還元的に開裂させてもよい。あるいは、オレフィンにBH3を作用させ、その後、過酸化水素水で処理して、モノオールモノアルコール)に変換できる(ヒドロボレーション)。

0082

さらに、オレフィンをオゾン気流下でオゾン酸化すると、アルデヒドが得られる。エポキシ基を開裂させて得られる水酸基(ジオール)を、過ヨウ素酸酸化して同様の誘導体を得ることもできる(但し、糖水酸基は、例えば、アセチル基などのアシル系保護基で保護しておく必要がある)。

0083

得られるアルデヒドは、その後、Wittig反応により、任意の長さの炭化水素を有するリンイリドと反応させて、式(5)中の側鎖の長さを任意に変換することができる。

0084

工程3
さらに工程3に示すような、出発原料として天然に由来するグリセロ糖脂質を用いる方法が挙げられる。

0085

式中、GNは式(1)中のGNと同義であり、R6、R7は、互いに独立に−CrH2r−CH3(式中、rは、1〜20の整数を示す。)である。

0086

化合物6aは、化合物5aのアシル基部分を通常の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート水酸化リチウムなどで処理して、脱アシル化を行うことにより得ることができる。
また、アシル部分の2位に選択的に作用するリパーゼを使用すると、化合物6bへと変換できる。同様に、1,3−特異的リパーゼを作用させると、化合物6cに変換できる。これらの反応は、緩衝液中で行うことが好ましい。

0087

次に、HOOC−CnH2nY(7a)、またはこのビニールエステルトリクロロアセチルのエステル(活性エステル)体を用い、有機溶媒(エーテルクロロホルムトルエン塩化メチレン、アセトニトリル、THF、DMFなど)中で、リパーゼを作用させると、エステル交換反応が生じ、対応する化合物8a〜8cを得ることができる。

0088

なお、以上の反応は、特に糖中の水酸基を保護しなくてもよい。また、必要に応じ、糖の6位を、シリル系保護基(t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基)、トリチル基のようなエーテル系保護基、4位と6位をイソプロピリデン基ベンジリデン基のようなアセタール系保護基、あるいは、レブリロイル基などで選択的に保護してもよい。

0089

シリル系保護基は、酢酸共存下、テトラブチルアンモニウムフルオリドで、トリチル基は、CSAやp-TsOHあるいは、接触水添により除去できる。アセタール系保護基も、酸処理で除去できる。側鎖に飽和炭化水素基を含む場合には、ベンジリデン基は、接触水添によっても脱保護が可能である。レブリロイル基は、ヒドラジン−酢酸で選択的に除去できる。これらの脱保護の条件はいずれも、グリセロール部位のアシル基に何ら影響を及ぼすことなく、除去できる。

0090

さらに側鎖部分のR6が、二重結合などを有するときには、前記と同様にして別の置換基を導入できる。

0091

なお、上記のようにして得られる糖脂質含有化合物において、さらに、下記工程4に示すように、糖鎖部位を酵素反応により変換することができる。
工程4

0092

酵素としては、糖転移酵素糖加水分解酵素を用いることができる。
糖転移酵素としては、たとえば、シアリールトランスフェラーゼガラクトシルトランスフェラーゼなどが挙げられ、それぞれ、ガラクトースあるいはラクトースあるいはラクトサミンの非還元末端側の3位もしくは6位にシアル酸を、グルコースの4位にガラクトースを、転移させることができる。

0093

糖加水分解酵素としては、ガラクトシダーゼ、N−アセチルヘキソサミニダーゼシアリダーゼなどが挙げられ、それぞれ、ガラクトースをグルコースの4位に、N−アセチルグルコサミンをグルコースやガラクトースに、そして、シアル酸をガラクトースなどに転移させることができる。

0094

なお、転移酵素による反応は、緩衝液を、また、加水分解酵素による反応では、過飽和に近い基質濃度のほか、必要に応じ、アセトニトリル、メタノール、THF、DMFを共溶媒として用いることがある。
これらの酵素反応条件下では、元の糖鎖構造や酵素の基質特異性にも依存するが、元の糖鎖に影響を及ぼすことなく、別の種類の糖を導入できる。

0095

前記に例示した糖鎖部位(i)〜(xvii)は、より具体的には、たとえば、下記の方法で入手することができる。

0096

糖鎖部位が、式(i)、(iii)、(vii)〜(xi)で記載されるセラミド型の糖脂質は、いずれも市販品(コスモバイオ、Sigma、生化学工業、タカラバイオなど)から誘導できる。これらのセラミド誘導体は、sphingolipid ceramide N-deacylase (E.C. 3.5.1.69)による選択的な加水分解により、リゾ体へと変換でき、遊離したアミノ基にリポ酸のようなチオカルボン酸を反応させた後、センサーチップに固定化できる。

0097

糖鎖部位に、式(ii)を有する誘導体は、N-アセチルガラクトサミンを出発原料に用い、これの完全アセチル体、1−ブロモ体、1−トリクロロアセトイミデート体、1−フルオロ体などのいずれかに誘導後、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート三フッ化ホウ素エーテレート、過塩素酸銀、トリメチルシリル銀塩などの触媒を用いて、天然のセラミドを糖のアグリコン部位に導入して、合成することができる。
ついで、保護基を脱保護(除去)し、sphingolipid ceramide N-deacylase (E.C. 3.5.1.69)により、側鎖のアミド結合を選択的に加水分解し、アミノ基の遊離したリゾ体へと変換する。あるいは、1本鎖のスフィンゴシンを上記と類似の方法により、完全アセチル体、1−ブロモ体、1−トリクロロアセトイミデート体、1−フルオロ体などのいずれかに導入してもよい。この場合には、出発物質にスフィンゴシンを用いているため遊離したアミノ基が存在しており、sphingolipid ceramide N-deacylaseによる加水分解は不要である。いずれの場合も、遊離したアミノ基にリポ酸のようなチオカルボン酸を反応させ、センサーチップ上に固定化することができる。

0098

式(ii)を有する誘導体と類似の方法により、N−アセチルガラクトサミンのかわりに出発原料にN−アセチルグルコサミンを用い、これとセラミドとをカップリングさせれば、N−アセチルグルコサミニルセラミドを合成できる。あるいは、N−アセチルグルコサミンとスフィンゴシンをカップリングさせれば、N−アセチルグルコサミニル スフィンゴシンを合成できる。

0099

次に、ガラクトース転移酵素を用いて、これらの4位にガラクトースを選択的に転移させれば、糖鎖部位(iv)を有する2糖誘導体へと変換できる。その後の変換は、上記と同様である。このほか、最初から市販のN−アセチルラクトサミンである2糖に、セラミド、スフィンゴシンをそれぞれ、導入しても良い。この方法は、上記の化学的変換法に準ずる。なお、N−アセチルラクトサミンである2糖とセラミドとをカップリングさせた後には、セラミドのアミド結合を先のsphingolipid ceramide N-deacylaseにより加水分解して、アミノ基を遊離させ、リポ酸と結合して、センサーチップを作ることができる。スフィンゴシンを使用したときには、この酵素による加水分解は不要で、直接スフィンゴシンにリポ酸を導入後、センサーチップに用いることができる。

0100

(v)を糖部位に有する誘導体も、上記と類似の方法により調製することができる。すなわち、(ii)に相当する糖脂質を調製後、これの3位に選択的にガラクトースを導入するか(化学的に保護、脱保護を繰り返すのが好ましい)、または、はじめからGal・1-3GalNAcの2糖構造を化学的に合成後、セラミド、もしくは、スフィンゴシンを上記に示したグリコシル化反応により導入しても良い。先述したように、セラミドを導入したときには、sphingolipid ceramide N-deacylaseによる加水分解のプロセスが必要となる。

0101

(vi)を糖鎖部位に有する誘導体は、文献、Biomacromolecules, 3, 411-414 (2002).に記載の方法と同様にして、調製することができる。

0102

式(xii)は、式(xv)、(xvi)、(xvii)の3つを意味しているが、これらは、2つの文献、Chem. Commun., 1998, 2311-2312; ChemBioChem, 4, 640-647 (2003)に記載した方法により調製することができる。

0103

式(xiii)、式(xiv)を糖鎖部位に有する誘導体は、市販のpNPN−アセチルグルコサミンを、ガラクトシダーゼのような加水分解酵素を用いてN−アセチルグルコサミンの4位にガラクトースを選択的に転移させて2糖とし、さらに、α2,3−シアリルトランスフェラーゼあるいはα2,6−シアリルトランスフェラーゼを作用させることにより、これらの糖鎖部位を誘導することができる。

0104

<バイオセンサー>
本発明に係るバイオセンサーは、前記糖脂質含有化合物がリンカー部位を介して金属基板表面に固定されていることを特徴とする。前記糖脂質含有化合物は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。

0105

金属基板の素材としては、たとえば、好ましくは金、銀、白金、銅、パラジウムなどが挙げられ、これらのうちさらに好ましくは金または白金、特に好ましくは金が挙げられる。基板の形状は限定されず、板状、管状、球状などの形状が挙げられる。このうち板状の形状を有する基板を好ましく用いることができる。

0106

自己組織化単分子膜(SAM:Self-Assembled Monolayer)により、前記糖脂質含有化合物を金などの金属基板へ固定化する際に側鎖部位が疎水性効果を生じ、高度な配向性と高密度な固定化を達成させるのではないかと推測される。側鎖部位がある程度の長さを有するとこの効果が向上する。

0107

具体的には、側鎖部位のR2がC2〜20アルキル基(−CmH2m−CH3)の場合、mは2〜20、さらに好ましくは3〜19、より好ましくは9〜19、特に好ましくは12〜17となるに従い、上記効果が向上する。

0108

また、R2が前記式(2)で表される基の場合、式(2)中の−CpH2p−CH3において、pは好ましくは1〜17、より好ましくは7〜17、さらに好ましくは10〜15となるに従い、上記効果が向上する。

0109

さらに、R2が前記式(3)または(4)で表される基の場合、式(3)または(4)中の−CqH2q−CH3において、qは好ましくは1〜20、より好ましくは10〜20、さらに好ましくは13〜18となるに従い、上記効果が向上する。

0110

なお、前記自己組織化とは、特定の構造物集合体)を形成する上で必要とする分子や原子が、それらの分子や原子間に起こる相互作用によって、自ら集合・配列し、望ましい構造を自然に形成することを意味する。

0111

前述のとおり側鎖部位とリンカー部位とは、一定の範囲の長さあるいは関係を有していることが好ましく、上記範囲にあると、より高感度なセンサーを得ることができる。

0112

金属基板への固定化は、金属表面と、一定の長さを有するリンカー部位のチオール基(-SH)あるいはジスルフィド基(-S-S-)との直接的な共有結合や吸着により行うが、さらに、側鎖部位の自己組織化による相乗効果により、高度な配向性と高密度な固定が可能となると推測される。

0113

さらに、この自己組織化は、スフィンゴシン構造またはスフィンゴシン部位のような天然由来の側鎖を有することが望ましい。

0114

前記SAM法は、チオール基あるいはジスルフィド基を有する化合物が、金などと特異的に吸着し、アルキル鎖間のvan der Waals 力によりSAMを形成させる方法である。糖脂質含有化合物による金属基板表面への単分子膜の構築は、特殊な装置を必要とせず、これら誘導体の溶液中に基板を浸漬するだけで容易に実施できる。浸漬条件(溶媒、濃度、温度、時間)によって構造、配向の制御も可能である。ここで用いられる溶媒は特に限定されるものではないが、固定化させる誘導体が溶解する有機溶媒であることが好ましい。

0115

金属基板表面における糖脂質含有化合物の結合割合は、好ましくは0.1〜10個/nm2、さらに好ましくは1〜10個/nm2の範囲である。このような結合割合であると、優れた検出感度を発揮することができる。
特に、本発明の糖脂質含有化合物においては、特定の原子数で側鎖部位、リンカー部位が構成される。この場合、側鎖部位が前記リンカー部位よりも長くなり、側鎖部位がリンカー部位の長さに応じて折り畳み構造をとり、折りたたまれた側鎖部位によって、糖脂質含有化合物同士が糖結合性化合物との結合に適した配向性をもって基板表面や微粒子表面に効果的に結合するためではないかと推測される。それにより、上記のような好ましい結合割合が達成されたものと推測される。

0116

糖結合性化合物の検出方法(1)
本発明に係る糖結合性化合物の検出方法は、下記の工程からなる。
(1)試験化合物を、前記バイオセンサーの基板表面に接触させる工程、
(2)基板に結合した糖結合性化合物を検出する工程。

0117

このような糖結合性化合物としては、たとえば、糖結合性蛋白質、レクチン糖蛋白質毒素、抗体、細菌やウイルスの持つ表面蛋白質などが挙げられる。

0118

本発明に係る前記糖脂質含有化合物(1)を金属基板に固定化したバイオセンサーと、糖結合性化合物との接触は通常、溶媒の存在下で行うことが好ましい。前記バイオセンサーを用いる糖結合性化合物の検出においては、これらの糖結合性化合物が変性しない溶媒を選択することが必要であり、たとえば水または緩衝液などを用いる。
溶媒のpHは、好ましくは6〜8の範囲であり、温度は好ましくは0〜60℃、さらに好ましくは25〜40℃の範囲である。

0119

緩衝液は、糖結合性化合物の種類により異なるが、たとえば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、HEPES緩衝液、またはトリス緩衝液、より好ましくはHEPES緩衝液(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15N)などが挙げられる。

0120

以下に、本発明に係るバイオセンサーのうち、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:SPR)による、糖結合性蛋白質の検出方法の一例を示す。SPRによる検出方法では、標識物質を用いることなくアナライト(分析対象化合物)の変化を検出することができる。このSPRの現象は、表面プラズモンが金属/液体界面で励起した場合に起こる光学現象を利用するもので、センサーチップ表面で生じる微量な質量変化がSPRシグナルとして検出されるため、たとえば、金属表面に固定化した物質と検体との間の二分子間結合および解離の変化を定量的に得ることができる。

0121

糖結合性蛋白質の検出は、温度を好ましくは0〜60℃、さらに好ましくは25〜40℃の範囲で一定に保持し、好ましくはリン酸緩衝液、酢酸緩衝液、HEPES緩衝液、またはトリス緩衝液、より好ましくはHEPES緩衝液で行う。

0122

これに糖結合性蛋白質をゆっくりと注入する。アフィニティー定数を求める場合には、糖結合性蛋白質の濃度を変化させ、2〜8回の測定をすることが望ましい。反応時間は結合・解離反応ともに3〜30分程度が好ましいが、目的の相互作用によっては測定時間を変更する場合がある。

0123

また、緩衝液の流速は好ましくは10〜30μL/minで、検体量はnM〜mMを1回の測定につき100〜300μL程度にするのが好ましい。アフィニティー定数は2〜8点の測定濃度をとり、各濃度のセンサーグラムにおいて、平衡状態よりスキャッチャードプロットを作成してアフィニティー定数(kaおよびkd)を算定する。

0124

このような、本発明のバイオセンサーを用いる、表面プラズモン共鳴バイオセンサーは極微量(<0.01nM)の糖結合性化合物でも、前処理あるいは標識物質を用いないで、高感度に検出できることができる。バイオセンサーと糖結合性化合物との結合速度定数(ka)、結合定数(KA)および解離定数(KD)は、側鎖部位を有しないものと比較すると極めて高い値を示す。たとえば、スフィンゴジン塩基を有するものの結合速度定数および解離定数はスフィンゴシン構造またはスフィンゴシン部位を持たないものの約1000倍の値を示し、非常に強い結合力を有する。

0125

このような効果はスフィンゴシン構造またはスフィンゴシン部位などの側鎖部位の自己組織化機能により、高度な配向性と高密度な固定化が行われ、複数の近接する糖鎖部位が効率よく糖結合性化合物を強く結合させるためと推測される。

0126

<糖脂質含有微粒子、糖結合性化合物検出試薬>
糖脂質含有微粒子
本発明に係る糖脂質含有微粒子は、前記本発明に係る糖脂質含有化合物が、リンカー部位を介して金属微粒子表面に固定されている微粒子である。前記糖脂質含有化合物は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。

0127

金属微粒子の素材としては、好ましくは金、銀、白金、銅、パラジウムなどが挙げられ、これらのうちより好ましくは金または白金、特に好ましくは金である。

0128

このような金属微粒子は、平均粒子径が、好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは1〜50nmの範囲にある。また、金属微粒子は、単分散粒子径であることが好ましい。この範囲の金属微粒子を用いることで、視覚的に検出可能なシグナル色(オレンジ〜赤)が得られ、かつ溶媒中における分散安定性が良好になり、高感度で検出時間の短縮を図ることができる。

0129

本発明で用いる金属微粒子は、公知の方法により製造することができる。たとえば、金微粒子は、Frensの方法を用いることにより、種々の大きさの微粒子を容易に製造することができる(Nature Phys. Sci.、Vol.241、P.20、1973年)。

0130

具体的には、たとえば金微粒子の製造方法としては、塩化金の溶液を加熱沸騰させ、ついで、クエン酸ナトリウムの溶液と混合して塩化金を還元する方法により行うことができる。上記二つの溶液を混合するとすぐに沸騰溶液は薄い青色に変色して核生成が開始される。ついで、すぐに青色から赤色に変わって単一分散微粒子の生成が起こり、塩化金の還元は沸騰をさらに続けることで完了する。
得られる微粒子の粒子径は、クエン酸ナトリウム溶液の濃度を変化させることにより調整することができる。このような金微粒子は溶液中に分散して存在できることが好ましく、その状態は特に限定されないが、金微粒子が安定な分散状態で存在していることが好ましい。例えば、コロイド状態分散コロイド状態)となることがより好ましい。

0131

金属微粒子に、本発明の糖脂質含有化合物を固定化する方法としては、抗原−抗体反応等に代表される免疫反応に係る物質の固定方法(例えばJ. Histochem. Cytochem.,Vol.30、P.691、1982年)、本発明で行っているセンサーチップに糖脂質含有化合物を固定化した方法を応用することが可能である。すなわち、金属微粒子を分散させた溶液と該糖脂質含有化合物溶液を5分以上混合する。この時、金属微粒子に対して十分量の糖脂質含有化合物が固定されれば、金属コロイドは安定に分散され、糖脂質含有微粒子を得ることができる。ここで、金属微粒子表面における糖脂質含有化合物の結合割合は、溶液中の糖脂質含有化合物濃度やその他条件(例えば、溶媒、温度、時間など)でコントロールすることができる。

0132

通常、金属微粒子表面における糖脂質含有化合物の結合割合は、好ましくは0.1〜10個/nm2、さらに好ましくは1〜10個/nm2の範囲である。このような結合割合であると、優れた検出感度を発揮することができる。
特に、本発明の糖脂質含有化合物においては、特定の原子数で側鎖部位、リンカー部位が構成される。この場合、側鎖部位が前記リンカー部位よりも長くなり、側鎖部位がリンカー部位の長さに応じて折り畳み構造をとり、折りたたまれた側鎖部位によって、糖脂質含有化合物同士が糖結合性化合物との結合に適した配向性をもって基板表面や微粒子表面に効果的に結合するためではないかと推測される。それにより、上記のような好ましい結合割合が達成されたものと推測される。

0133

また、このような糖脂質含有微粒子は、溶液形態で保存することが、該糖脂質含有微粒子の保存安定性の観点から好ましい。
この場合、本発明の糖脂質含有化合物が結合した微粒子は、R1において、−C(=O)−CnH2n−Yまたは−CH2−CnH2n−Yで表されるリンカー部位が、nが好ましくは2〜10の整数、さらに好ましくは3〜8、特に好ましくは3〜5であるとおり、リンカー部位の長さが特定範囲以内にあるため、溶液中での分散安定性に極めて優れている。したがって、本発明の糖脂質含有化合物が結合した微粒子を含む試薬は、特に溶液中での使用に優れる。

0134

前記糖脂質含有化合物の金属微粒子への固定化においては、糖脂質含有化合物の高度な配向性と高密度な固定を目的にしていることから、必要十分量の糖脂質含有化合物を混合して固定化を図ることが好ましいが、過剰量の糖脂質含有化合物を混合すると、混合溶液中から糖脂質含有化合物の除去作業が必要となる。

0135

たとえば、金微粒子の場合、糖脂質含有化合物を固定化した金微粒子の分散溶液の分散安定性、および糖結合性化合物の添加量色調変化の関係から、糖脂質含有化合物の最適な混合量を決定することができる。
すなわち、添加した化合物が最適量以下の場合、糖脂質含有化合物を自己組織化するための十分な量に達しないため、金微粒子表面の疎水性が増加して分散安定性の低下し、色調の変化および凝集−沈殿を生じる。
また、添加した化合物が最適量以上の場合、糖結合性化合物を添加した後、凝集反応が過剰に添加した化合物によって阻害され、色調変化が小さくなる。したがって、色調変化や凝集が発生せず、かつ糖結合性化合物を添加したときに色調変化が大きい範囲内に制御することにより、最適な固定化を行うことができる。

0136

糖結合性化合物検出試薬
前記金属微粒子への糖脂質含有化合物の固定化により、糖脂質含有微粒子を得ることができるが、該糖脂質含有微粒子を含む溶液は、そのまま本発明の糖結合性化合物検出試薬として使用することができる。
このため、前記固定化に使用する溶媒は、検出対象となる糖結合性化合物が変性しないことが必要であり、たとえば水または緩衝液などを用いる。
溶媒のpHは、好ましくは6〜8の範囲であり、温度は好ましくは0〜60℃、さらに好ましくは25〜40℃の範囲である。

0137

緩衝液は、糖結合性化合物の種類により異なるが、たとえば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、HEPES緩衝液、またはトリス緩衝液、より好ましくはHEPES緩衝液(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15N)などが挙げられる。

0138

このようにして、糖脂質含有微粒子の合成に伴って糖脂質含有微粒子を溶媒中に含有する試薬が得られることとなる。このような糖結合性化合物検出試薬においては、溶液中に糖脂質含有微粒子がコロイドになって存在していることが好ましく、該コロイドは分散して存在していることがより好ましい。

0139

糖脂質含有微粒子の金属コロイドが安定化されたかの確認は、たとえば、金コロイドの場合、混合溶液に等量の10%塩化ナトリウム水溶液を加えて、金コロイドの色調に変化がなければ安定化されていると認定することができる。
糖結合性化合物検出試薬中の糖脂質含有微粒子の濃度は、好ましくは1.0×105〜1.0×1015個/L、さらに好ましくは1.0×107〜1.0×1013個/Lの範囲である。
このような濃度範囲であると、糖脂質含有微粒子のコロイドが分散して安定に存在し、保存安定性を向上させることができるとともに、糖結合化合物の検出感度を向上させることができる。

0140

糖結合性化合物の検出方法(2)
本発明に係る糖結合性化合物の検出方法は下記の工程からなる。
(1)試験化合物を、前記糖結合性化合物検出試薬に添加して、糖脂質含有微粒子に接触させる工程、
(2)糖脂質含有微粒子に結合した糖結合性化合物を検出する工程。

0141

糖脂質含有微粒子に結合した糖結合性化合物の検出手段としては、たとえば、糖脂質含有微粒子のコロイド溶液において、該糖脂質含有微粒子が糖結合性化合物と結合する際の色調変化から糖結合性化合物の検出を行う方法が挙げられる。
具体的には、たとえば、金微粒子の場合、糖結合性化合物が糖脂質含有微粒子と結合していない状態において、糖脂質含有微粒子のコロイド粒子が分散した状態で溶液は赤色を示すが、糖結合性化合物が結合すると糖脂質含有微粒子が凝集して赤色が薄れるあるいは無色透明に変化する。

0142

リシン毒素の場合、必要に応じて、試験化合物を前処理して使用してもよい。試験化合物(リシン毒素を含有)は、粉体(白い粉)として提供されるか、溶液として供給されるかは、一義的に決定できないが、いずれの場合においても、試験化合物を、直接、前記記載の糖脂質含有微粒子と反応させてもよく、あるいは、試験化合物をメルカプトエタノールジチオスレイトール(dithiothreitol)、ジチオエリスリトール(dithioerythritol)のような還元剤で処理して試料に供してもよい。

0143

使用するこれらの還元剤の量は、試験化合物に対して当量(1モル当量)または過剰量(2モル当量〜100モル当量)でよいが、糖脂質含有微粒子の安定性を考慮し、できるだけ少量の還元剤を用いることが望ましく、好ましくは1モル当量〜10モル当量である。反応時間は、好ましくは1分〜24時間、さらに好ましくは2分〜12時間である。反応温度は、好ましくは0℃〜60℃、さらに好ましくは4℃〜40℃である。

0144

色調変化の計測手法としては、目視により観測し、その結果に基づいて測定対象物質の存在を簡便に半定量することができる。

0145

また、色調変化を分光光度計により高感度検出することも可能である。その場合、色調変化を測定するための波長としては、色調変化を測定可能な波長であれば、特に限定されないが、たとえば、金微粒子の場合、金微粒子の極大吸収波長付近500〜550nm付近測定感度を高くすることができるので望ましい。多波長による吸光度測定を行うことで、精度の高い検出が可能であることは言うまでもない。
色調変化の測定を行える装置としては、比色計、分光光度計、マイクロプレートリーダー、生化学自動分析機等が挙げられる。

0146

このような色調変化を計測することにより、高感度に対象化合物を検出することができる。たとえば、実施例にも示すように、最適化された糖脂質含有微粒子(前記式(1)中、糖鎖部位が前記式(i)、nが4、Xが5員環のジスルフィド基、mが12、金微粒子(平均粒径20nm)、)を用いて、金微粒子分散溶液の色調変化から目視にて、糖結合性化合物としてリシン120を用い、その検出限界濃度を求めたところ、リシン120の検出限界は1〜5μg/mLであり、リシンの致死量が150μg/人であることから、極めて高感度であると予測された。また、阻害性試験についても同様の方法で評価したところ、蒸留水水道水、雨水ともに、これらの外的影響による色調変化は起こらず、環境中に存在する糖結合性化合物を良好に検出できる。

0147

以下に、本発明の実施例および比較例を挙げ、具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
糖脂質含有化合物の合成
〔実施例1〕

〔化合物(1b)の合成〕
Galactosyl-ceramide 10.0mg(13.7μmol)(SIGMA社製)を1.0%タウロデオキシコール酸ナトリウムの50mM酢酸緩衝液(pH:6.0)10mLに溶かし500mL梨型フラスコに入れた。次にスフィンゴ脂質セラミドN-デアシラーゼ(SCDase)1.5U(タカラバイオ社製)を加え、n-デカン100mLを反応液と混ざらないように静かに加えて37℃で24時間反応させた後、さらにSCDase0.5Uを加えて37℃で24時間反応させた。上層部であるn-デカンを取り除いた後、反応液を沸騰した水浴中で3分間熱した。さらに、反応液はフィルター濾過した後、濃縮した。
ODSカラムクロマトグラフィーで精製した。その結果、化合物(1b)を収率64%(4.0mg)で得た。
1H-NMR(400MHz,DMF-d7=8.028ppm):δ5.645(ddd, -CH(OH)-CH=CH-CH2-, J=6.4Hz, 6.8Hz, 15.6Hz), 5.544(dd, -CH(OH)-CH=CH-CH2-, J=7.2Hz, 15.6Hz), 4.426(brd, H-4, J=4.0Hz), 4.385(t, H-2, J=7.2Hz), 4.171(d, H-1, J=7.2Hz), 3.833(q, Gal-O-CH2-CH(NH2)-), 1.284(brs, -(CH2)-), 0.878(t, -CH2-CH3).
ESI(+)-MS m/z=462.4 (M+H)+
ESI(-)-MS m/z=460.3(M-H)-, 506.3(M+HCOO)-

0148

〔化合物(2b)の合成〕
化合物(1b)3.7mg(8.0μmol)およびチオクト酸2.0mg(9.7μmol)をエタノール3mLに溶かし、撹拌しながら4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリン塩(DMT-MM)2.7mg(9.8μmol)を含むエタノール溶液2mLを加え室温で12時間反応させた。反応液は濃縮した後、ODSカラムクロマトグラフィーで精製した。その結果、化合物(2b)を収率76%(3.9mg)で得た。
1H-NMR(400MHz,DMF-d7=8.028ppm):δ7.466(d, -NH-CO), 5.631(ddd, -CH(OH)-CH=CH-CH2-, J=6.8Hz, 7.2Hz, 15.2Hz), 5.500(dd, -CH(OH)-CH=CH-CH2-, J=6.8Hz, 15.2Hz), 4.187(d, H-1, J=7.2Hz), 3.28-3.12 (m, N-thioctyl), 2.33, 2.01, 1.84, 1.75, 1.55, 1.43 (6xm, five of six are N-thioctyl), 1.113 (brs, -(CH2)-), 0.707(t, -CH2-CH3).
ESI(+)-MS m/z=650.1 (M+H)+
ESI(-)-MS m/z=648.1(M-H)-, 694.2(M+HCOO)-

0149

〔実施例2〕

〔化合物(2c)の合成〕
実施例1の化合物(1b)の合成と同様な手法で合成した化合物(1c)10.0mg(16.0μmol)をDMF5mLに溶かし、撹拌しながらあらかじめN-ヒドロキシこはくイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミドで活性化させたチオクト酸10.0mg(33.0μmol)を含むDMF溶液2mLを加え室温で24時間反応させた。反応液は濃縮した後、ODSカラムクロマトグラフィーで精製した。その結果、化合物(2c)を収率71%(9.2mg)で得た。
1H-NMR(600MHz, MeOH-d4):δ5.642(dt, -CH(OH)-CH=CH-CH2-, J=6.6Hz, 15.4Hz), 5.444(dd, -CH(OH)-CH=CH-CH2-, J=7.7Hz, 15.4Hz), 4.354(d, Gal H-1, J=7.7Hz), 4.302(d, Glc H-1, J=7.7Hz), 4.16-4.14(m, -O-CH2-CH(NH-)-, 4.073(t, -CH(NH-)-CH(OH)-, J=7.7Hz), 3.98-3.97(m, -CH(NH-)-CH(OH)-), 3.898(brd, GlcH-6, J=10.6Hz), 3.833(dd, Glc H-6’, J=4.4Hz, 12.1Hz), 3.806(d, Gal H-4, J=3.3Hz), 3.770(dd, Gal H-6, J=7.5Hz, 11.6Hz), 3.692(dd, Gal H-6’, J=4.6Hz, 11.6Hz), 3.60-3.51(m, Glc H-3, H-4, Gal H-2, H-5, -Glc-O-CH2-CH(NH-)-, CH2-CH(S-)- ), 3.471(dd, Gal H-3, J=3.3Hz, 9.5Hz), 3.43-3.40(m, Glc H-5), 3.28(overlap, Glc H-2), 3.19-3.15(m, -CH2-CH2-S-), 3.12-3.07(m, -CH2-CH2-S-), 2.49-2.43(m, -CH2-CH2-S-), 2.21-2.16(m, -C(O)-CH2-CH2-), 2.04-2.00(br, -CH=CH-CH2-CH2-), 1.91-1.85(m, -CH2-CH2-S-), 1.75-1.57, 1.50-1.41(2xm, N-thioctyl), 1.39-1.25 (m, -(CH2)-), 0.891(t, -CH2-CH3, 7.0Hz).
ESI(+)-MS m/z=812.6(M+H)+
ESI(-)-MS m/z=810.7(M-H)-, 856.6(M+HCOO)-

0150

〔実施例3〕

〔化合物(1d)の合成〕
GangliosideGT1b 5.0mg(2.3μmol)を1.0%タウロデオキシコール酸ナトリウムの50mM酢酸緩衝液(pH:6.0)10mLに溶かし500mL梨型フラスコに入れた。次にSCDase 1Uを加え、n-デカン100mLを反応液と混ざらないように静かに加えて37℃で24時間反応させた。さらにSCDase 0.5Uを加えて37℃で24時間反応させた。上層部のn-デカンを取り除いた後、反応液を沸騰した水浴中で3分間熱した。反応液はフィルターで濾過したのち、ODSカラムクロマトグラフィーで精製した結果、化合物(1d)を収率70%(3.1 mg)で得た。
1H-NMR(600MHz, MeOH-d4):δ5.642(dt, -CH(OH)-CH=CH-CH2-, J=6.6Hz, 15.4Hz), 5.444(dd, -CH(OH)-CH=CH-CH2-, J=7.7Hz, 15.4Hz), 2.80-2.77(m, 3He of NeuAc), 2.04-2.00(overlap, -CH=CH-CH2-CH2-, NHAc), 1.94-1.85(m, 3Ha of NeuAc), 1.36-1.25 (m, -(CH2)-), 0.892(t, -CH2-CH3, 7.0Hz).
また得られた化合物(1d)の1H-NMRスペクトル(5.0ppm〜3.0ppm)を図1に示す。
ESI(-)-MS m/z=944.5(M-2H)2-

0151

〔化合物(2d)の合成〕
化合物(1d)3.0mg(1.6μmol)をDMF3mLに溶かし、撹拌しながらあらかじめN-ヒドロキシこはく酸イミド、ジシクロヘキシルカルボジイミドで活性化させたチオクト酸2.0mg(6.6μmol)を含むN,N-ジメチルホルムアミド溶液1mLを加え室温で24時間反応させた。反応液は濃縮した後、ODSカラムクロマトグラフィーで精製した。その結果、化合物(2d)を収率54%(1.8 mg)で得た。
1H-NMR(600MHz, MeOH-d4):δ5.645(dt, -CH(OH)-CH=CH-CH2-, J=6.6Hz, 15.4Hz), 5.444(dd, -CH(OH)-CH=CH-CH2-, J=7.7Hz, 15.4Hz), 3.19-3.15(m, -CH2-CH2-S-), 3.11-3.07(m, -CH2-CH2-S-), 2.85-2.80(m, 3He of NeuAc), 2.48-2.43(m, -CH2-CH2-S-), 2.22-2.17(m, -C(O)-CH2-CH2-), 2.05-1.97(overlap, -CH=CH-CH2-CH2-, NHAc), 1.94-1.85(overlap, -CH2-CH2-S-, 3Ha of NeuAc), 1.75-1.58, 1.50-1.41(2xm, N-thioctyl), 1.35-1.25 (m, -(CH2)-), 0.892(t, -CH2-CH3, 7.0Hz).
また得られた化合物(2d)の1H-NMRスペクトル(5.0ppm〜3.0ppm)を図2に示す。
ESI(-)-MS m/z=692.1(M-3H)3-, 1039.0(M-2H)2-
〔比較例1〕

0152

〔化合物(3b)の合成〕
p-Aminophenylβ-D-galactopyranoside 10mg(36.9μmol)およびチオクト酸9.1mg(44.1μmol)をメタノール5mLに溶かし、撹拌しながらDMT-MM 12.2mg(44.1μmol)を含むメタノール溶液5mLを加え室温で12時間反応させた。反応液は濃縮した後、ODSカラムクロマトグラフィーで精製した。その結果、化合物(3b)を収率82%(13.9mg)で得た。
〔比較例2〕

0153

〔化合物(3c)の合成〕
p-Aminophenyl D-lactoside 10mg(23.1μmol)をDMF3mLに溶かし、撹拌しながらあらかじめN-ヒドロキシこはく酸イミド、ジシクロヘキシルカルボジイミドで活性化させたチオクト酸10.0mg(33.0μmol)を含むDMF溶液2mLを加え室温で24時間反応させた。反応液は濃縮した後、ODSカラムクロマトグラフィーで精製した。その結果、化合物(3c)を収率86%(12.3mg)で得た。
〔比較例3〕

0154

〔化合物(4b)の合成〕
化合物(1b)10.0mg(21.7μmol)およびメタノールから再結晶により精製した16-Mercaptohexadecanoic acid(Aldrich社製)6.3mg(21.7μmol)をメタノール3mLに溶かし、撹拌しながら4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリン塩(DMT-MM)7.5mg(27.0μmol)を含むメタノール溶液2mLを加え室温で24時間反応させた。反応液は濃縮した後、ODSカラムクロマトグラフィーで精製した。その結果、化合物(4b)を収率42%(6.8mg)で得た。

0155

SPRセンサーによるリシン120の検出
(センサーチップの作成)
Biacore社より市販されているSIA kit Auの金基板をオゾンクリーナー洗浄し、実施例1で合成した化合物(2b)100nmolを溶解させたメタノール溶液2mLに室温で24時間浸漬した。その後、メタノール、水の順で3回洗浄してセンサーチップ(1)を作成した。また、上記と同様な方法で実施例2の化合物(2c)、比較例1の化合物(3b)、比較例2の化合物(3c)、比較例3の化合物(4b)を用いて、それぞれセンサーチップ(2)、センサーチップ(3)、センサーチップ(4)、センサーチップ(5)を作成した。

0156

SPR測定
得られたセンサーチップ(1)に対する糖結合性タンパク質の特異的吸着の特性を計測するため、実施例1の化合物(2b)を固定化したセンサーチップ(1)を市販の表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore2000、Biacore社製)に装着して、設定温度25℃、流速10μL/minでHEPES(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)緩衝液を流した。計測前にセンサーグラムが安定したことを確認した。
糖結合性タンパク質としては、リシン120(Ricinus communis agglutinin 120、和光純薬製)を用い、HEPES(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)緩衝液で1000ng/mL(8.3nM)に調製した。リシン120溶液は流速10μL/min で100μLインジェクトした。
同様にして、実施例2の化合物(2c)、比較例1の化合物(3b)、比較例2の化合物(3c)、比較例3の化合物(4b)をそれぞれ固定化したセンサーチップ(2)、センサーチップ(3)、センサーチップ(4)、センサーチップ(5)も測定した。その結果、図3および図4に示すように、リシン120の検出強度は、実施例1で1214RU、比較例1で420RU、実施例2で1640RU、比較例2で630RU、比較例3で957RUであった。
なお、「RU」は「Resonance unit」の略で、基盤表面に物質が吸着、付着、固定化されると、その量に応じて値が増大することを意味する。1RU=約1pg/mm2(Biacore社)である。

0157

この結果から、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、比較例3のセンサーチップ(1〜5)ともに、リシン120を検出できるが、スフィンゴシン構造またはスフィンゴシン部位を有する実施例1、実施例2では、比較例1、比較例2の結果と比較して、極めて強いシグナルが得られることを確認した。これは化合物(2b)、(2c)の側鎖部位であるスフィンゴシン構造またはスフィンゴシン部位により、糖結合性化合物を高感度に検出できたと推測される。また、実施例1のセンサーチップ(1)と比較例3のセンサーチップ(5)を比較すると、リンカー部位がジスルフィド基とアルキル鎖長n=5であるリポ酸をもつ実施例1はチオール基と長鎖アルキル基n=15をもつ比較例3より格段に高感度になることがわかった。

0158

(リシン120の各種濃度におけるSPR測定)
実施例1の化合物(2b)を固定化したセンサーチップ(1)を上記と同様の方法で表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore2000、Biacore社製)に装着して、設定温度25℃、流速10μL/minでHEPES(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)緩衝液を流した。計測前にセンサーグラムが安定したことを確認した。
測定は、リシン120(Ricinus communis agglutinin 120、和光純薬製)を用い、HEPES(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)緩衝液でそれぞれ10000ng/mL(83nM)、1000ng/mL(8.3nM)、100ng/mL(0.83nM)および10ng/mL(0.083nM)に調製した。リシン120溶液は流速10μL/min で100μLインジェクトした。同様にして、実施例2の化合物(2c)を固定化したセンサーチップ(2)についても測定した。

0159

その結果、図5および図6に示すように、いずれの濃度においても良好なセンサーグラムが得られ、各濃度におけるリシン120の検出強度は、実施例1で2536RU、1214RU、423RUおよび267RU、実施例2で2352RU、1640RU、494RUおよび228RUであった。この結果から、極微量(<0.01nM)のリシン120でも、前処理あるいは標識物質を用いないで、高感度に検出できることが確認できた。

0160

(結合定数の算出)
上記SPR測定結果から、結合定数を求める最適な条件を推定した。すなわち、実施例1の化合物(2b)を固定化したセンサーチップ(1)を表面プラズモン共鳴バイオセンサーに装着して、設定温度25℃、流速30μL/minのHEPES(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)緩衝液を流した。計測前にセンサーグラムが安定したことを確認した。結合定数はリシン120(Ricinus communis agglutinin 120、和光純薬製)を用い、HEPES(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)緩衝液でそれぞれ1000ng/mL(8.3nM)、750ng/mL(6.3nM)、500ng/mL(4.2nM)および100ng/mL(0.83nM)に調製した。リシン120溶液は30μL/min で100μLインジェクトした。

0161

また、実施例2の化合物(2c)、比較例1の化合物(3b)、比較例2の化合物(3c)、比較例3の化合物(4b)をそれぞれ固定化したセンサーチップ(2)、センサーチップ(3)、センサーチップ(4)、センサーチップ(5)についても、同様な方法で行ったが、センサーチップ(3)、センサーチップ(4)については、SPRシグナルが非常に小さいため、リシン120の濃度を1000倍量にして測定した。

0162

得られたセンサーグラムから1:1反応の結合定数を求めた結果、表1に示すように、スフィンゴシン構造またはスフィンゴシン部位を有する実施例1、実施例2および比較例3では、比較例1、比較例2の結果と比較して、結合速度定数(ka)、結合定数(KA)および解離定数(KD)が約10〜1000倍の値を示し、非常に強い結合力をもつことが確認できた。これは固定化した糖脂質含有化合物の構造に含まれる側鎖部分の影響である。また、リンカー部位の構造による影響について、ジスルフィド基を有するリポ酸をもつ実施例1とチオール基を有する長鎖アルキル基をもつ比較例3を比較すると、結合速度定数(ka)が格段に向上することが確認できた。これは、側鎖部位とリンカー部位の長さによる影響と、リンカー部位に含まれるジスルフィド基とチオール基の違いによる影響の両方が関与し、糖脂質含有化合物のセンサーチップ表面での配向性に対して何らかの影響を与えたものと推測される。

0163

0164

SPRセンサーによるボツリヌス毒素の検出
(センサーチップの作成)
Biacore社より市販されているSIA kit Auの金基板をオゾンクリーナーで洗浄し、実施例3で合成した化合物(2d)100nmolを溶解させたメタノール溶液2mLに室温で24時間浸漬した。その後、メタノール、水の順で3回洗浄してセンサーチップを作成した。

0165

(SPR測定)
得られたセンサーチップに対する糖結合性タンパク質の特異的吸着の特性を計測するため、実施例3の化合物(2d)を固定化したセンサーチップを市販の表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore2000、Biacore社製)に装着して、設定温度25℃、流速10μL/minでHEPES(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)緩衝液を流した。計測前にセンサーグラムが安定したことを確認した。糖結合性タンパク質はボツリヌス毒素C(Botulinus Toxin C、和光純薬製)を用い、HEPES(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)緩衝液でそれぞれ1000ng/mL(2860pM)、500ng/mL(1430pM)、100ng/mL(286pM)および10ng/mL(28.6pM)に調製した。ボツリヌス毒素C溶液は流速10μL/min で100μLインジェクトした。その結果、図7に示すように、いずれの濃度においても良好なセンサーグラムが得られ、各濃度におけるボツリヌス毒素Cの検出強度は579RU、258RU、92RUおよび10RUであった。この結果から、従来、測定が困難とされたボツリヌス毒素でも、前処理あるいは標識物質を用いないで、高感度に検出できることが確認できた。

0166

(結合定数の算出)
上記SPR測定結果から、結合定数を求める最適な条件を推定した。すなわち、実施例3の化合物(2d)を固定化したセンサーチップを表面プラズモン共鳴バイオセンサーに装着して、設定温度25℃、流速20μL/minのHEPES(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)緩衝液を流した。計測前にセンサーグラムが安定したことを確認した。結合定数はボツリヌス毒素C(Botulinus Toxin C、和光純薬製)を用い、HEPES(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15M)緩衝液でそれぞれ1000ng/mL(2860pM)、750ng/mL(2160pM)、500ng/mL(1430pM)および100ng/mL(286pM)に調製した。ボツリヌス毒素C溶液は20μL/min で100μLインジェクトした。得られたセンサーグラムから1:1反応の結合定数を求めた結果、表2に示すように、化合物(2d)を固定化したセンサーチップとボツリヌス毒素Cの結合速度定数(ka)、結合定数(KA)および解離定数(KD)の値から、非常に強い結合力をもつことが確認できた。

0167

0168

金微粒子検出試薬による糖結合性化合物の検出
(最適固定化量を有する糖脂質含有微粒子および検出試薬の調製)
粒子径20nmの金微粒子分散溶液(微粒子濃度:5.0×1011個/mL)500μLに0〜10μgの化合物(2b)を溶解させた100μLエタノール溶液を撹拌しながら添加し、室温で1時間、固定化反応した。
この間、化合物(2b)添加直後から金微粒子分散溶液の色調は赤色に変化し、その変化は添加濃度によって異なった。

0169

それぞれ化合物(2b)濃度を変化させて固定化した金微粒子分散溶液200μLにリシン120(Ricinus communis agglutinin 120、和光純薬製)をHEPES(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15N)緩衝液で調製した1.0mg/mL溶液を50μL添加し、室温で1時間静置した。

0170

分散安定性およびリシン120添加後の色調変化についての結果は、金微粒子分散溶液1の色調変化から目視にて評価した。ここで、分散安定性結果は化合物(2b)を固定した1時間後、リシン120添加後の色調変化結果は添加1時間後の結果である。

0171

また、比較例1で合成した化合物(3b)または比較例3で合成した化合物(4b)を用いて、上記と同様な方法で、化合物(3b)または化合物(4b)が固定化された金微粒子を作成し、金微粒子分散溶液を調製した。

0172

表3の結果で明らかなように、添加した化合物(2b)量が1.5μg以下の場合、自己組織化するための十分な化合物(2b)量に達しないことで、金微粒子表面の疎水性が増加し、分散安定性の低下が確認できた。また、添加した化合物(2b)量が5.0μg以上の場合、リシン120を添加した後の色調変化が小さいことから、過剰に添加した化合物(2b)が凝集反応を阻害した。
したがって、粒子径20nmの金微粒子(微粒子濃度:5.0×1011個/mL)分散溶液500μL当たりの化合物(2b)の最適固定化量は2.0μg 〜2.5μgであり、最適固定化量を簡便に設定できた。また、この場合、金表面1nm2あたり約5.5個が固定化されており、極めて高密度かつ高配向な結合であることが確認された。

0173

一方、添加した化合物(3b)では、表3に示すように分散安定性が悪く、リシン120の検出ができなかった。また、粒子径20nmの金微粒子(微粒子濃度:5.0×1011個/mL)分散溶液500μL当たりの化合物(3b)の最適固定化量は0.3μg 〜0.4μgであり、化合物(2b)と比較して劣っていた。また、この固定化量の場合、金属微粒子表面における化合物(3b)の最適固定化量は0.3μg 〜0.4μgで、金表面1nm2あたり約1.3個が固定化されている。密度、配向性ともに、化合物(2b)と比較して劣っている。
さらに、化合物(4b)では、金微粒子の分散安定性が著しく低下する傾向が認められた。過剰量の添加によって金微粒子の分散安定性は改善されたものの、24時間後には沈殿が生じていた。また、化合物(4b)10.0μg添加1時間後の分散液は、リシン120を添加した後の色調変化が小さく、検出試薬としては使用不能なものであった。
以上の結果は、化合物(2b)を用いる場合においては、糖脂質含有化合物が、高配向かつ高密度に金微粒子表面に固定化していることを示している。

0174

0175

(糖結合性化合物の検出)
粒子径20nmの金微粒子分散溶液(微粒子濃度:5.0×1011個/mL)1000μLに、上記で調べた最適固定化量の範囲内である5.0μgの化合物(2b)を溶解させた200μLエタノール溶液を撹拌しながら添加した。

0176

室温で1時間、固定化反応を行った。化合物(2b)が固定化された糖脂質含有微粒子の分散溶液100μLに、リシン120(Ricinus communis agglutinin 120、和光純薬製)を含むHEPES(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15N)緩衝液(1.0〜100μg/mL)を100μL添加し、室温で一定時間静置した。

0177

各時間における金微粒子分散溶液の色調変化を目視にて評価した。また、比較対照として、リシン120の10μg/mL溶液と100倍量のD-ガラクトースを同時に添加した。

0178

表4の結果で明らかなように、化合物(2b)を用いた場合、リシン120濃度が低い場合であっても、十分に検出可能であることが確認できた。例えばリシン120濃度が1.0μg/mLでも約1時間程度で確認できた。
一方、同時に添加したD-ガラクトースは化合物(2b)とリシン120の凝集反応を阻害したことから非特異的吸着は殆ど起きてないことが確認できた。

0179

このように本実験の場合では、化合物(2b)を固定化した金微粒子分散溶液を用いれば、リシン120を1.0μg/mLと極めて低濃度でも十分に検出できることが確認された。

0180

一方、化合物(3b)についても、最適固定化量の範囲内である0.8μgの化合物(3b)を溶解させた200μLエタノール溶液を撹拌しながら添加し、化合物(2b)を用いた場合と同様の方法により、化合物(3b)が固定化された金微粒子分散溶液を調製し、リシン120の濃度に対応する検出試験を行った。
表4の結果で明らかなように、化合物(3b)を固定化した金微粒子分散溶液では、リシン120濃度100μg/mLで、若干の色調変化が認められたが、リシン120濃度が50μg/mLでは、リシン120を検出できなかった。

0181

0182

阻害実験
上記方法により作成した化合物(2b)が固定化された金微粒子分散溶液を用いて、各種水溶液存在下でのリシン120の認識性を調べた。

0183

すなわち、上記化合物(2b)が固定化された金微粒子分散溶液100μLに、蒸留水、水道水、雨水の各溶液を50μL添加して室温で1時間静置した。その後、リシン120(Ricinus communis agglutinin 120、和光純薬製)をHEPES(10mM、pH:7.5、NaCl:0.15N)緩衝液で調製した50μg/mL溶液を50μL添加し、室温で1時間静置した。

0184

各金微粒子分散溶液の色調変化を目視にて評価した結果を表5に示す。いずれの場合も、溶液添加で色調の変化は起こらないことが確認され、耐環境影響が小さく、環境中に存在する糖結合性化合物を良好に検出できることが示された。

0185

0186

本発明に係る糖脂質含有化合物を基板あるいは微粒子表面に固定化すると、高度な配向性で高密度に該固定を行うことができると共に、該糖脂質含有化合物を含有するバイオセンサーあるいは検出試薬は、極微量の糖結合性化合物でも高感度かつ迅速に検出できる。
このような糖脂質含有化合物を用いると、水晶振動子マイクロバランス(Quartz Crystal Microbalance :QCM )やイムノクロマト高感度化、あるいは糖鎖認識部位の標識等の用途にも適用可能である。

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