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技術 CD9遺伝子からなる心疾患を予防又は治療する医薬

出願人 公益財団法人名古屋産業科学研究所
発明者 小財健一郎牛越博昭
出願日 2004年12月24日 (15年2ヶ月経過) 出願番号 2005-516732
公開日 2007年7月19日 (12年8ヶ月経過) 公開番号 WO2005-063302
状態 不明
技術分野
  • -
主要キーワード 平均化後 上室性期外収縮 スライス処理 適応不全 心機能評価 観測システム 麻酔器 HPF
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題・解決手段

CD9遺伝子を含む発現ベクターを有効成分とする心疾患を予防又は治療する医薬。この発明において、心疾患は心不全をきたす疾患、虚血性心疾患心筋症高血圧性心疾患、弁膜症先天性心疾患心筋炎不整脈、あるいは心肥大及び/又は頻脈を伴うものである。この発明において、発現ベクターはウイルスベクター又は非ウイルスベクターである。CD9遺伝子を心臓発現させる心疾患を予防又は治療する方法。この発明において、予防又は治療がCD9遺伝子を導入する遺伝子治療によるものである。また、遺伝子治療がCD9遺伝子を含む発現ベクターを有効成分とする医薬を用いるものである。

概要

背景

心筋梗塞心筋症不整脈心不全など心疾患は、日本における三大死因の一つであり、医療上大きな問題となっている。従来、心疾患の治療には利尿薬β遮断薬ACE阻害薬カルシウム拮抗薬などの医薬が用いられているが、これらの医薬は心疾患を根治的に治療するものではない。
ところで、CD9は膜4回貫通型蛋白スーパーファミリー(TM4SF)の一つに分類される分子量27kDaの膜蛋白質である。CD9の生体での作用については、pre B由来細胞の特異マーカーであること(Masellis−Smith A et al;J Immunol.144,1607−1613,1990)、造血系細胞、非造血系細胞を問わず、様々な細胞に発現していること(Maecker H.T et al;FASEB J.11,428−442,1997、Berditchevski F;J Cell Sci.114,4143−4151,2001)、preB細胞凝集分化に関わること(Masellis−Smith A et al;J Immunol.144,1607−1613,1990)、血小板活性化に関わること(Jennings LK et al;J Biol Chem.265,3815−3822,1990)、癌細胞をはじめとする様々な細胞の接着生存性に関わること(Hashida H,et al:Br J Cancer.,89:158−67,2003)、受精に必須の膜蛋白であること(Miyado K et al;Science 287,321−324,2000)、細胞膜中で複数の蛋白質会合させ、蛋白質間相互作用協調し促進する分子として作用し、細胞接着、増殖、分化、免疫、止血など創傷治癒現象に関わること(Berditchevski F;J Cell Sci.114,4143−4151,2001、Klein−Soyer C et al;Arterioscler Thromb Vasc Biol.20,360−3)の報告がある。
一方、CD9とHB−EGF(ヘパリン結合性上皮増殖因子、heparin−binding epidermal growth factor)との関係についての報告もある。例えば、HB−EGFやインテグリンα3β1との複合体の形成(Nakamura Y,et al:J Histochem Cytochem 49:439−444,2001)、HB−EGFの前駆体であるproHB−EGFのjuxtacrine factorとしての活性の調節(Higashiyama S.,et al,:J.Cell Biol.128,929−938.1995、Iwamoto R,Mekada E:Cytokine & Growth Factor Reviews.11:335−344,2000)、HB−EGFのprocessingの過程に関わることでHB−EGFの活性の多様性演出している可能性(Nakagawa T et al;J Biol Chem.271,30858−30863,1996、Nakamura K et al;J Biol Chem.275,18284−18290,2000)の報告がある。また、腎臓上皮細胞虚血障害モデルにおいて、HB−EGFとCD9が共発現されることで生存性が改善されること(Takemura T et al;Kidney Int.55,71−81,1999)、動脈硬化の過程において、HB−EGFは正常大動脈(Miyagawa J et al;J Clin Invest.95,404−411,1995)や冠動脈(Nakata A et al;Circulation 94,2778−2786,1996)に発現されている一方、動脈硬化病変やいくつかの内膜平滑筋細胞にCD9が発現し、CD9とproHB−EGFの共発現がproHB−EGFによる平滑筋細胞の増殖を促進すること(Nishida M et al;Arterioscler Thromb Vasc Biol.20,1236−1243,2000)からCD9は動脈硬化や組織修復の過程に纎維芽細胞の増殖や形質転換バランスを担うHB−GFの活性を調節する重要な分子である可能性(Kirkland G et al;J Am Soc Nephrol.9,1464−73,1998)の報告がある。更に、本発明者らは、心筋梗塞モデル動物におけるHB−EGFの過剰発現は、代償性心筋肥大を促進する一方で、筋繊維芽細胞(myofibroblast)の増殖を促進し、繊維化を亢進することにより心機能低下を助長して、HB−EGFが病態の進行に重要な役割を担う中心的な因子であるとの知見を得ている。
このようにCD9の作用やCD9とHB−EGFの関係に関し多くの報告があるが、これまでにCD9が心肥大を抑制すること、あるいは頻脈を抑制することについての報告はない。

概要

CD9遺伝子を含む発現ベクターを有効成分とする心疾患を予防又は治療する医薬。この発明において、心疾患は心不全をきたす疾患、虚血性心疾患、心筋症、高血圧性心疾患、弁膜症先天性心疾患心筋炎、不整脈、あるいは心肥大及び/又は頻脈を伴うものである。この発明において、発現ベクターはウイルスベクター又は非ウイルスベクターである。CD9遺伝子を心臓で発現させる心疾患を予防又は治療する方法。この発明において、予防又は治療がCD9遺伝子を導入する遺伝子治療によるものである。また、遺伝子治療がCD9遺伝子を含む発現ベクターを有効成分とする医薬を用いるものである。

目的

本発明は、心疾患を根治的に予防又は治療する医薬を提供する

効果

実績

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請求項1

CD9遺伝子を含む発現ベクターを有効成分とする心疾患を予防又は治療する医薬

請求項2

心疾患が心不全をきたす疾患である請求の範囲第1項に記載の心疾患を予防又は治療する医薬。

請求項3

心疾患が虚血性心疾患である請求の範囲第1項に記載の心疾患を予防又は治療する医薬。

請求項4

虚血性心疾患が心筋梗塞である請求の範囲第3項に記載の心疾患を予防又は治療する医薬。

請求項5

心疾患が心筋症高血圧性心疾患、弁膜症先天性心疾患心筋炎のいずれか1以上である請求の範囲第1項に記載の心疾患を予防又は治療する医薬。

請求項6

心疾患が不整脈である請求の範囲第1項に記載の心疾患を予防又は治療する医薬。

請求項7

不整脈が頻脈性不整脈である請求の範囲第6項に記載の心疾患を予防又は治療する医薬。

請求項8

頻脈性不整脈が上室性不整脈及び/又は心室性不整脈である請求の範囲第7項に記載の心疾患を予防又は治療する医薬。

請求項9

心疾患がWPW症候群、QT延長症候群、Brugada症候群、不整脈源性右室異形成症(ARVD、ARVC)のいずれか1以上である請求の範囲第6項〜請求の範囲第8項のいずれかに記載の心疾患を予防又は治療する医薬。

請求項10

心疾患が心肥大及び/又は頻脈を伴うものである請求の範囲第1項に記載の心疾患を予防又は治療する医薬。

請求項11

心肥大あるいは頻脈がHB−EGF(ヘパリン結合性上皮増殖因子)、HGF肝細胞増殖因子)又はアンギオテンシン2の少なくとも1によるものである請求の範囲第10項に記載の心疾患を予防又は治療する医薬。

請求項12

発現ベクターがウイルスベクター又は非ウイルスベクターである請求の範囲第1項〜請求の範囲第11項のずれかに記載の心疾患を予防又は治療する医薬。

請求項13

請求項14

CD9遺伝子を心臓発現させる心疾患を予防又は治療する方法。

請求項15

心疾患が心不全をきたす疾患である請求の範囲第14項に記載の心疾患を予防又は治療する方法。

請求項16

心疾患が虚血性心疾患である請求の範囲第14項に記載の心疾患を予防又は治療する方法。

請求項17

虚血性心疾患が心筋梗塞である請求の範囲第16項に記載の心疾患を予防又は治療する方法。

請求項18

心疾患が心筋症、高血圧性心疾患、弁膜症、先天性心疾患、心筋炎のいずれか1以上である請求の範囲第14項に記載の心疾患を予防又は治療する方法。

請求項19

心疾患が不整脈である請求の範囲第14項に記載の心疾患を予防又は治療する方法。

請求項20

不整脈が頻脈性不整脈である請求の範囲第19項に記載の心疾患を予防又は治療する方法。

請求項21

頻脈性不整脈が上室性不整脈及び/又は心室性不整脈である請求の範囲第20項に記載の心疾患を予防又は治療する方法。

請求項22

心疾患がWPW症候群、QT延長症候群、Brugada症候群、不整脈源性右室異形成症(ARVD、ARVC)のいずれか1以上である請求の範囲第19項〜請求の範囲第21のいずれかに記載の心疾患を予防又は治療する方法。

請求項23

心疾患が心肥大及び/又は頻脈を伴うものである請求の範囲第14項に記載の心疾患を予防又は治療する方法。

請求項24

心肥大あるいは頻脈がHB−EGF(ヘパリン結合性上皮増殖因子)、HGF(肝細胞増殖因子)又はアンギオテンシン2の少なくとも1によるものである請求の範囲第23項に記載の心疾患を予防又は治療する方法。

請求項25

予防又は治療がCD9遺伝子を導入する遺伝子治療によるものである請求の範囲第14項〜請求の範囲第24項のいずれかに記載の心疾患を予防又は治療する方法。

請求項26

遺伝子治療がCD9遺伝子を含む発現ベクターを有効成分とする医薬を用いるものである請求の範囲第25項に記載の心疾患を予防又は治療する方法。

請求項27

予防又は治療が内因性のCD9を発現させる発現誘導物質投与によるものである請求の範囲第14項〜請求の範囲第24項のいずれかに記載の心疾患を予防又は治療する方法。

技術分野

本発明は、心疾患を予防又は治療する医薬に関し、より詳細には、遺伝子治療に用い、CD9遺伝子を心臓に導入して心疾患を予防又は治療する医薬に関する。

背景技術

心筋梗塞心筋症不整脈心不全など心疾患は、日本における三大死因の一つであり、医療上大きな問題となっている。従来、心疾患の治療には利尿薬β遮断薬ACE阻害薬カルシウム拮抗薬などの医薬が用いられているが、これらの医薬は心疾患を根治的に治療するものではない。
ところで、CD9は膜4回貫通型蛋白スーパーファミリー(TM4SF)の一つに分類される分子量27kDaの膜蛋白質である。CD9の生体での作用については、pre B由来細胞の特異マーカーであること(Masellis−Smith A et al;J Immunol.144,1607−1613,1990)、造血系細胞、非造血系細胞を問わず、様々な細胞に発現していること(Maecker H.T et al;FASEB J.11,428−442,1997、Berditchevski F;J Cell Sci.114,4143−4151,2001)、preB細胞凝集分化に関わること(Masellis−Smith A et al;J Immunol.144,1607−1613,1990)、血小板活性化に関わること(Jennings LK et al;J Biol Chem.265,3815−3822,1990)、癌細胞をはじめとする様々な細胞の接着生存性に関わること(Hashida H,et al:Br J Cancer.,89:158−67,2003)、受精に必須の膜蛋白であること(Miyado K et al;Science 287,321−324,2000)、細胞膜中で複数の蛋白質会合させ、蛋白質間相互作用協調し促進する分子として作用し、細胞接着、増殖、分化、免疫、止血など創傷治癒現象に関わること(Berditchevski F;J Cell Sci.114,4143−4151,2001、Klein−Soyer C et al;Arterioscler Thromb Vasc Biol.20,360−3)の報告がある。
一方、CD9とHB−EGF(ヘパリン結合性上皮増殖因子、heparin−binding epidermal growth factor)との関係についての報告もある。例えば、HB−EGFやインテグリンα3β1との複合体の形成(Nakamura Y,et al:J Histochem Cytochem 49:439−444,2001)、HB−EGFの前駆体であるproHB−EGFのjuxtacrine factorとしての活性の調節(Higashiyama S.,et al,:J.Cell Biol.128,929−938.1995、Iwamoto R,Mekada E:Cytokine & Growth Factor Reviews.11:335−344,2000)、HB−EGFのprocessingの過程に関わることでHB−EGFの活性の多様性演出している可能性(Nakagawa T et al;J Biol Chem.271,30858−30863,1996、Nakamura K et al;J Biol Chem.275,18284−18290,2000)の報告がある。また、腎臓上皮細胞虚血障害モデルにおいて、HB−EGFとCD9が共発現されることで生存性が改善されること(Takemura T et al;Kidney Int.55,71−81,1999)、動脈硬化の過程において、HB−EGFは正常大動脈(Miyagawa J et al;J Clin Invest.95,404−411,1995)や冠動脈(Nakata A et al;Circulation 94,2778−2786,1996)に発現されている一方、動脈硬化病変やいくつかの内膜平滑筋細胞にCD9が発現し、CD9とproHB−EGFの共発現がproHB−EGFによる平滑筋細胞の増殖を促進すること(Nishida M et al;Arterioscler Thromb Vasc Biol.20,1236−1243,2000)からCD9は動脈硬化や組織修復の過程に纎維芽細胞の増殖や形質転換バランスを担うHB−GFの活性を調節する重要な分子である可能性(Kirkland G et al;J Am Soc Nephrol.9,1464−73,1998)の報告がある。更に、本発明者らは、心筋梗塞モデル動物におけるHB−EGFの過剰発現は、代償性心筋肥大を促進する一方で、筋繊維芽細胞(myofibroblast)の増殖を促進し、繊維化を亢進することにより心機能低下を助長して、HB−EGFが病態の進行に重要な役割を担う中心的な因子であるとの知見を得ている。
このようにCD9の作用やCD9とHB−EGFの関係に関し多くの報告があるが、これまでにCD9が心肥大を抑制すること、あるいは頻脈を抑制することについての報告はない。

本発明は、心疾患を根治的に予防又は治療する医薬を提供することを課題とする。また、心疾患を根治的に予防又は治療する方法を提供することを課題とする。
本発明は、CD9遺伝子を含む発現ベクターを有効成分とする心疾患を予防又は治療する医薬を要旨とする。この発明において、心疾患が心不全をきたす疾患、虚血性心疾患、心筋症、高血圧性心疾患、弁膜症先天性心疾患心筋炎、不整脈、あるいは心肥大及び/又は頻脈を伴うものである。また、心肥大あるいは頻脈はHB−EGF(ヘパリン結合性上皮増殖因子)、HGF肝細胞増殖因子)又はアンギオテンシン2の少なくとも1によるものである。
また、上記の発明において、発現ベクターはウイルスベクター又は非ウイルスベクターである。
また、CD9遺伝子を心臓で発現させる心疾患を予防又は治療する方法を要旨とする。この発明において、心疾患は心不全をきたす疾患、虚血性心疾患、心筋症、高血圧性心疾患、弁膜症、先天性心疾患、心筋炎、不整脈、あるいは心肥大及び/又は頻脈を伴うものである。
この発明において、予防、治療はCD9遺伝子を導入する遺伝子治療によっても、あるいは内因性のCD9を発現させる発現誘導物質投与によっても良い。また、遺伝子治療は、CD9遺伝子を含む発現ベクターを有効成分とする医薬を用いても良い。
本発明の医薬に用いるCD9遺伝子は、CD9を発現し得る遺伝子をいう。また、CD9遺伝子は、発現されるポリペプチドがCD9と実質的に同効である限りその遺伝子配列の一部の欠失置換、挿入、あるいは他の塩基の付加された遺伝子でも良い。CD9遺伝子としては、Strausberg R.L.et al;Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99,(26)16899−16903,2002に記載されるヒトCD9遺伝子が例示される(Gene Bankのaccession番号はAAH11988、messenger RNA番号はBC011988である)。
CD9遺伝子を含む発現ベクターは、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、プラスミドなどが挙げられる。ウイルベクターは、例えばアデノウイルスアデノ随伴ウイルスレトロウイルスヘルペスウイルス単純ヘルペスイルス、レンチウイルスセンダイウイルスポックスウイルスポリオウイルスシンビスウイルスワクシニアウイルスなどが挙げられる。非ウイルスベクターは、例えばカチオン性リポソーム膜融合性リポソームカチオン性高分子などが挙げられる。リポソームは、リン脂質からなる数10〜数100nmの粒径カプセルで、その内部にCD9遺伝子を含むプラスミドを封入できる。
CD9遺伝子を含む発現ベクターの作製は、従来の遺伝子工学技術、細胞培養技術、ウイルス技術を利用して行うことができる(例えば、「Current Protocols in Molecular Biology,F.Ausubelら編、(1994),John Wiley & Sons,Inc.」、[Molecular Cloning(A Laboratory Manual)、Third Edition.Volume 1−3.Josseph Sambrook & David W.Russel編集、Cold Spring Harbor Laboratory Press社出版(Cold Spring Harbor,New York)2001」、「Culture of Animal Cells;A Manual of Basic Technique,R.Freshney編、第2版(1987),Wiley−Liss」、「Frank L.Graham著、Manipulation of adenovirus vectors、Chapater 11.p109−p128」、「E.J.Murray編、Methodsin Molecular Biology,Vol.7:Gene Transfer and Expression Protocols(1991)」、「Chen,S−H.et al.,Combination gene therapy for liver metastases of colon carcinoma in vivo.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.(1995)92,2477−2581.」等)。
本発明の医薬は、有効成分のCD9遺伝子を含む発現ベクターと薬学的に許容される賦形剤担体溶剤などの助剤とを混合し、注射剤などの種々の製剤形態で用いることができる。また、本発明の医薬の投与態様は特に限定されず、例えば注射、カテーテルバルーンカテーテルなどにより投与できる。内因性のCD9を発現させる発現誘導物質の場合、全身静脈投与、あるいは経口投与などで投与できる。
本発明の医薬により投与されるCD9遺伝子の量は、投与を受ける者の病態、年齢、体重などを考慮して適宜増減できるが、従来の心疾患への遺伝子治療の臨床試験でウイルスベクターとしてアデノウイルスを用いた場合、ウイルス感染力価pfu(plaque forming unit)で2×1010を用いて安全性が確認されているため、同量が投与量の目安となる。また、非ウイルスベクターとしてリポソームを用いた場合、DNA量2mgで安全に心疾患の遺伝子治療の臨床試験が行われているため、同量が投与量の目安となる。
本発明の医薬は、遺伝子治療に用い、心不全をきたす疾患に広く適用できる。
心不全の代表的な病理は、心臓の肥大と拡張であり、心臓の肥大は各種の負荷に対する形態的適応とみられるが、これには限界があり適応不全代償不全)の状態に陥り、心筋肥大そのものが直接的に心不全やその他の心疾患の病態を悪化させることが知られている(心臓病学、石川恭三 総編集、1995年医学書院参照)。従って、本発明の医薬が適用できる心疾患を更に例示すれば、虚血性心疾患(例えば、心筋梗塞)、心筋症(例えば、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症)、高血圧性心疾患、弁膜症(例えば、大動脈弁僧房弁などの閉鎖不全、あるいは狭窄)、先天性心疾患、心筋炎などが挙げられる。また、不整脈には、徐脈性不整脈頻脈性不整脈があり、頻脈性不整脈には上室性不整脈(例えば、洞性頻脈、上室性期外収縮心房細動心房粗動上室性頻拍症)、心室性不整脈(例えば、心室性期外収縮心室頻拍心室細動、torsade de pointes)が例示できる。また、頻脈性不整脈の発生を主な病態とする疾患として、WPW症候群、QT延長症候群、Brugada症候群、不整脈源性右室異形成症(ARVD、ARVC)が挙げられる(以上、不整脈に関し、「不整脈」(改訂版 目で見る循環器病シリーズ1、貫 宏 編集、2000年 メジカルビュー社)参照)。また、心肥大や頻脈を伴う心疾患に好適に用いることができる。心疾患は、HB−EGFの発現による病的心筋細胞肥大や病的心筋細胞頻拍(頻脈)、さらにはHGF(肝細胞増殖因子、hepatocyte growth factor)の発現やアンギオテンシン2による病的心筋細胞肥大や病的心筋細胞の頻拍(頻脈)を阻止し、心筋細胞の機能を正常化させることで根治的な治療ができる。また、本発明の医薬は、投与から数時間で効果を奏するので、急性の心疾患に用いることができ、また、遺伝子治療は長期の遺伝子発現で長期の治療効果を期待できるため、高血圧症慢性心筋梗塞など慢性的な疾患に伴う心肥大や頻脈を防止するために予防的に用いることもできる。
また、CD9を生体内で発現させることにより心疾患の予防又は治療ができ、心この心疾患の予防、治療は、本発明の医薬を用いる遺伝子治療により行うこともできるが、内因性のCD9の発現を誘導する物質を投与し、生体内で内因性のCD9を発現誘導させることによっても行うことができる。

図面の簡単な説明

第1図は、CD9、HB−EGF及びHB−EGF受容体の発現を示すアガロース電気泳動の結果である。H:全心臓、CM:心筋細胞、CF:心繊維芽細胞、C1:マウス、C2:HepG2細胞、NCネガテイコントロール、HPRTインターナルコントロールである。第2図は、Ad.LacZの新生マウスの心筋細胞に対する遺伝子導入効率を示すグラフ及びX−gal染色した培養心筋細胞顕微鏡写真像である。第3図は、新生マウスの心筋細胞にAd.HB−EGF、Ad.CD9及びAd.HB−EGF+Ad.CD9を各々遺伝子導入し、免疫組織化学染色を行った心筋細胞の顕微鏡写真像である。第4図は、新生マウスの心筋細胞にAd.HB−EGF、Ad.CD9及びAd.HB−EGF+Ad.CD9を各々遺伝子導入後の心筋細胞面積を示すグラフである。第5図は、新生マウスの心筋細胞にAd.HB−EGF、Ad.CD9及びAd.HB−EGF+Ad.CD9を各々遺伝子導入後の心筋細胞の拍動数を示すグラフである。第6図は、Ad.CD9を遺伝子導入して発現させた新生マウスの心筋細胞にヒト組換えHB−EGF(rHB)、アンギオテンシン2(Ang2)及びヒト組換えHGF(rHGF)をそれぞれ作用させた場合の心筋細胞の顕微鏡写真像である。
第7図は、Ad.CD9を遺伝子導入して発現させた新生マウスの心筋細胞にヒト組換えHB−EGF(rHB)、アンギオテンシン2(Ang2)及びヒト組換えHGF(rHGF)をそれぞれ作用させた場合の心筋細胞の細胞面積を示すグラフである。グラフ中、黒塗りはCD9が遺伝子導入されたものである。第8図は、Ad.CD9を遺伝子導入して発現させた新生マウスの心筋細胞にヒト組換えHB−EGF(rHB)、アンギオテンシン2(Ang2)及びヒト組換えHGF(rHGF)をそれぞれ作用させた場合の心筋細胞の拍動数を示すグラフである。グラフ中、黒塗りはCD9が遺伝子導入されたものである。
第9図は、CD9の発現の有無によるシグナル伝達におけるリン酸化の程度をウエスタンブロテイングにより解析した写真像である。第10図は、心筋梗塞後8週間の成体マウス慢性心不全モデルにおける生存曲線である。第11図は、心筋梗塞後8週間の成体マウスの慢性心不全モデルにおける心筋細胞のボーダーゾーンの顕微鏡写真像である。第12図は、心筋梗塞後8週間の成体マウスの慢性心不全モデルにおけるボーダーゾーンとリモートゾーンの心筋細胞径を示すグラフである。第13図は、心筋梗塞後1週間の成体マウスにおける心エコーのLVEFを示すグラフである。図中、shamは心筋梗塞を起こしていない正常マウスを、MIは心筋梗塞(Myocardial infarction)を示す。(以下、第14図〜第23図においても同様)。第14図は、心筋梗塞後1週間の成体マウスにおける心エコーのLVDdを示すグラフである。第15図は、心筋梗塞後1週間の成体マウスにおけるカテーテルによる+dp/dtを示すグラフである。第16図は、心筋梗塞後1週間の成体マウスにおけるカテーテルによるLVSPを示すグラフである。第17図は、心筋梗塞後1週間の成体マウスにおけるカテーテルによるLVEDPを示すグラフである。
図18は、心筋梗塞後1週間の成体マウスの体重補正後の心臓重量を示すグラフである。図19は、心筋梗塞後1週間の成体マウスの体重補正後の肺重量である。図20は、心筋梗塞後1週間の成体マウスの心筋梗塞領域面積を示すグラフである。図21は、心筋梗塞後1週間の成体マウスの線維化面積を示すグラフである。図22は、心筋梗塞後1週間の成体マウスの心筋の増殖細胞を示すグラフである。図23は、心筋梗塞後1週間の成体マウスの心筋の筋線維芽細胞を示すグラフである。

発明を実施するための最良の形態

以下、本発明を実施例を挙げて説明する。なお、実施例中のプラスミド、DNA、各種酵素大腸菌培養細胞などを取り扱う遺伝子工学技術や細胞培養技術は、特に断らない限り上記の「Current Protocols in Molecular Biology,F.Ausubelら編、(1994),John Wiley & Sons,Inc.」及び「Culture of Animal Cells;A Manual of Basic Technique,R.Freshney編、第2版(1987),Wiley−Liss」に記載の方法に準じて行った。また、特に断りがない限り、アデノウイルスの一般的な取り扱いに関しては、上記の「Frank L.Graham著、Manipulation of adenovirus vectors、Chapater 11.p109−p128」及び「E.J.Murray編、Methodsin Molecular Biology,Vol.7:Gene Transfer and Expression Protocols(1991)」、アデノウイルスの作製については、上記の「Chen,S−H.et al.,Combination gene therapy for liver metastases of colon carcinoma in vivo.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.(1995)92,2477−2581.」に記載の方法に準じて行った。また、治療効果や現象に関しては、いずれかの群間での有意差を先ずAnova検定で解析し、続いて各二群間の個々の有意差の検定はStudent t−test(二群間非対称t検定)で解析した。また、生存率の有意差の解析には、Kaplan−Meier検定を用いて解析した。
実施例で用いるアデノウイルスベクターは、以下のように作製した。
プラスミドpADL.1/RSV(B.Fang et al.,Gene Therapy(1994),1,247−254)は、上流よりヒト5型アデノウイルスの3’側から0−455塩基部分、Rous sarcoma virus long−term repeat(RSV)promoter、マルチクローニングサイト、Bovine growth hormoneのpoly Asignal配列、ヒト5型アデノウイルスの3’側から3328−5788塩基部分をpBR322プラスミドに組み込んで作製されたプラスミドでShu−Hsia Chen氏(Mount Sinai大)より供与を受けた。pADL.1/RSVプラスミドを制限酵素のHind IIIとNot Iで消化し、精製したものをligationに用いるベクターとした。一方、プラスミドpRc/CMV(インビトロジェン社)にヒトHB−EGFのopen reading frame全長cDNAサルCD9のopen reading frame全長のcDNAを含むそれぞれのプラスミドpRcHBEGF、pRcCD9は、目加田英輔氏(大阪大学)より供与を受けた。pRcHBEGF、pRcCD9の両プラスミドから制限酵素のHind IIIとNot Iにより、それぞれHB−EGF cDNA、CD9 cDNAの全長を切り出し、これをアガロースゲル電気泳動して、目的のDNA断片を切り出し、精製したものをligationに用いるインサートとした。このように処理されたpADL.1/RSVベクターとHB−EGF cDNA、CD9 cDNAインサートをそれぞれT4 DNA ligaseでligation反応を行い、pADL.1/RSV−HB−EGF、pADL.1/RSV−CD9をそれぞれ得た。さらに、ヒト5型アデノウイルスのE1領域以外の遺伝子を含むプラスミドのpJM17(Microbix Biosystems Inc.)と共にpADL.1/RSV−HB−EGFとpADL.1/RSV−CD9をそれぞれ293細胞にリン酸カルシウム法で共感染した。これにより、相同組み替えを起こして正しい目的のアデノウイウルスが出来たプラークが共感染10−14日後に出現した。このプラークを拾い、目的のHB−EGF、あるいはCD9を発現する正しい非増殖型組み替えアデノウイルスAd.HB−EGF、Ad.CD9であることを抗HB−EGF抗体(M−18:sc−1414、SANTA CRUZ社)、抗CD9抗体(ALB6、IMMUNOTECH社)を用いた免疫染色などで確認した後、293細胞でウイルス増幅し、塩化セシウム密度勾配遠心法により濃縮、精製して得た。
また、遺伝子導入に用いる大腸菌のLacZ遺伝子を発現する組み替えアデノウイルスのAd.LacZは上記と同じような方法で作製したが、Ad.LacZの作製法の詳細はProc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1995)92,2577−2581に記載されている。また、Ad.dE1.3は、CD9やHB−EGFが組み込まれていないためにこれらの遺伝子を何ら発現しないコントロールの組み替えアデノウイルスである。Ad.dE1.3は、CD9やHB−EGFが挿入されていないpADL.1/RSVとpJM17を前述のように293細胞に共感染して同様の方法と過程で作製した。なお、ヒトHB−EGFは、Higashiyama,S.,et al.Science 251,936−939(1991)に記載があり、Gene Bankのaccession番号はN60278である。また、CD9はサルCD9を用いたが、サルCD9はDRAP27(diphtheria toxin receptor−associated protein)として報告されたもので(Mitamura T,et al:J Cell Biol.,118(6):1389−1399,1992、Gene Bankのaccession番号はBAA01569である)、ヒトCD9と遺伝子配列がほとんど同じで機能も同じと考えられているものである。また、以下の実験系で行った心筋細胞の細胞面積の評価及び心筋細胞の拍動数の評価は、心肥大が心筋細胞の肥大と定義され、頻脈が心筋細胞の拍動数の増大と定義されること(世界的に最も有名且つ権威のあるテキストの「Braunwald’sHEARTDISEASEA textbook of cardiovascular medicine,6th edition,2001」参照)に基づくものである。

ラット、マウスの全心臓及び心筋細胞におけるCD9等の発現)
全心臓と心筋細胞におけるCD9、HB−EGF及びHB−EGFの受容体群(EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4)の内因性の発現をRT−PCR法を用いて調べた。8週令の成体SDラットと1日令の新生BALB/Cマウスからそれぞれ心筋細胞と全心臓をコラゲナーゼタイプ2(WOR:CLS 2,Funakoshiカタログ番号45004177)で酵素的に処理し、単離した。次いで、セパゾールRNA I Super(ナカライテスクカタログ番号304−86)1mlを加えてホモジナイズし、クロロホルムにて水相フェノール相に分離し、水相をイソプロパノールにて沈殿させた。遠心後、70%エタノールを用いて懸濁し、更に遠心してRNAを抽出した。1μgのトータルRNAをSuperScriptII逆転写酵素(インビトロジェン社製)にて逆転写し、cDNAをPCR法にて増幅した。
HB−EGFのセンスプライマー(5‘−CCGTGATGCTGAAGCTCTTT−3’、配列番号1)とアンチセンスプライマー(5‘−CCAAGACTGTGTGTGGTCAT−3’、配列番号2)(Yoshizumi M.,et al,:J.Biol.Chem.,267,9467−9469,1992)、CD9のセンスプライマー(5‘−AGCAAGTGCATCAAATACC−3’、配列番号3)とアンチセンスプライマー(5‘−AATCACCTCATCCTTGTGG−3’、配列番号4)は北海道システムサイエンス社に依頼して合成したものを用いた。また、HB−EGFの受容体群は、Sundaresan S,et al:Endocrinology 139:4756−4764,1998を参照し、EGFRのセンスプライマー(5‘−ACAACTGTGAAGTGGTCCT−3’、配列番号5)とアンチセンスプライマー(5‘−TTCCTGTAAGTTCCGCAT−3’、配列番号6)、ErbB2のセンスプライマー(5‘−AGCTGGTGACACAGCTTA−3’、配列番号7)とアンチセンスプライマー(5‘−TGGTTGGGACTCTTGAC−3’配列番号8)、ErbB3のセンスプライマー(5‘−GACCTAGACCTAGACTT−3’、配列番号9)とアンチセンスプライマー(5‘−TCTGATGACTCTGATGC−3’、配列番号10)、ErbB4のセンスプライマー(5‘−CATCTACACATCCAGAACA−3’、配列番号11)とアンチセンスプライマー(5‘−AAACATCTCAGCCGTTGCA−3’、配列番号12)は北海道システム・サイエンス社に依頼して合成したものを用いた。インターナルコントロールにヒポキサンチンフォスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)を用いた。
また、陽性コントロールとして上記の新生マウス肺とヒト肝癌細胞のHepG2細胞(東北大加齡医学研究所付属医用細胞資源センターより供与)を用いた。HB−EGF、CD9のPCR法は、Promega Taq(Promegaカタログ番号 M1865)を使用し、熱変性94℃、30s、アニーリング56℃、1min、伸長反応72℃、1minにて38サイクル行い、HB−EGFの受容体群、HPRTはTAKARA Ex Taq(TAKARAカタログ番号RR001A)を使用し、アニーリング温度を55℃として同様に行った。PCRサーマルサイクラーは、TAKARAのTP−400を使用した。結果は、図1に示した。
図1で示されるように、HB−EGFは成体ラット、新生マウスとも心臓で発現がみられ、特に培養心筋細胞でより発現が強いことから、心臓中の心筋細胞自体でHB−EGFは高発現していることが認められた。また、ErbB2、ErbB4は、成体ラット、新生マウスとも培養心筋細胞で強く発現していることが確認されたが、EGFRは成体ラットでは発現が明らかでなく、新生マウスでは強い発現が認められた。ErbB3は、成体ラット、新生マウスとも発現が認められなかった。一方、CD9は成体ラットの全心臓では発現が認められたが、その培養心筋細胞では発現が明らかでなく、新生マウスの全心臓、培養心筋細胞とも発現が認められなかった。このように、HB−EGFの受容体群であるErbB2、ErbB4は心筋細胞では比較的高発現している一方、CD9は心筋細胞にはほとんど発現していないことが明らかとなった。

(アデノウイルスベクターの遺伝子導入効率の確認)
マウスラミニン(Biomedical Technologies Inc.カタログ番号BT−276)をコーテイングした4well chamber slide(Nunc:Lab−Tek,Permanox,カタログ番号177437)に1日令の新生BALB/Cマウスよりコラゲナーゼタイプ2(WOR:CLS 2,Funakoshiカタログ番号45004177)で単離した心筋細胞(Aoyama T,et al:Cardiovasc Res.,55:787−798,2002)を5x105/500μl/Wellの濃度で播き、ペニシリン(100units/ml)及びストレプトマイシン(100μg/ml)、5%非働化オーストラリアウシ胎児血清を含有する低グルコースDMEM培地(SIGMA カタログ番号 D6046)で維持し、37℃、95%空気−5%二酸化炭素加湿培養器内で培養を行った。得られた初代培養心筋細胞へのアデノウイルスベクターの遺伝子導入効率、発現の確認を行った。すなわち、初代培養心筋細胞にAd.LacZをMOI(multiplicity of infection)(多重感染度:1MOI=1 plaque forming unit/cell)を300、100、30、10、3、0と希釈して感染させ、48時間後にX−gal染色を行った。図2に示すように、MOI 30で96%、MOI 10においても80%以上の良好な遺伝子導入効率であった。この結果より、以下の実験ではMOI 10−30でアデノウイルスを感染させ、24時間十分に発現させた後、培地交換し、さらに無血清培養液洗浄し使用した。HB−EGF、アンギオテンシン2あるいはHGFを作用させる場合はさらに24時間無血清培養液にて培養した。

(心筋細胞の免疫組織化学染色)
上記で得た新生マウスの培養心筋細胞を4%パラホルムアルデヒドにて10分間固定し、0.05%TritonX100にて細胞膜を穿孔し、10%スキムミルク印)にて60分ブロッキングした。その後、一次抗体マウスモノクローナル抗体CD9(クローンALB6)、IMMUNOTECHカタログ番号0117)50倍希釈(2ug/ml)、ヤギポリクローナル抗体HB−EGF(M−18)(SANTA CRUZ カタログ番号sc−1414)100倍希釈を1時間反応させ、HB−EGFの可視化抗ヤギAlexa568(MOLECULAR PROBESカタログ番号A−11057)、CD9の可視化は抗マウスAlexa488(MOLECULAR PROBES カタログ番号A−11029)で標識して行った。核染色は、Hoechst 33342(MOLECULAR PROBESカタログ番号H−3570)1000倍希釈にて5分間行なった。F−actinは、rhodamine phalloidin(MOLECULAR PROBES カタログ番号R−415)500倍希釈にて標識確認した。観察画像記録は、共焦点レーザー顕微鏡(Carl Zeiss製品番号 LSM510)により行った。MOI10での十分な導入効率を確認した後、Ad.HB−EGF、Ad.CD9、Ad.HB−EGF+Ad.CD9による心筋細胞への遺伝子導入後の発現及び局在蛍光免疫組織染色にて確認した。結果は、図3に示した。
図3より、HB−EGFのみを単独で遺伝子導入した場合の発現パターンは、細胞内に顆粒状に染色され、CD9のみを単独で遺伝子導入した場合は細胞膜表面が染色された。しかし、HB−EGFとCD9を共発現させると、それぞれの蛋白の局在パターンが変化することが確認された。つまり、CD9は単独で遺伝子導入された場合、その導入CD9遺伝子の発現蛋白は内因性CD9の元来の発現場所である膜上に局在するが、HB−EGFとCD9を共に強発現させた場合、CD9蛋白はHB−EGF蛋白と共に細胞内へ移動することが分かった。

(心筋細胞の細胞面積と拍動数)
上記で得た新生マウスの心筋初代培養細胞にAd.CD9、Ad.HB−EGF、Ad.CD9+Ad.HG−EGFを用いてCD9、HB−EGF、CD9+HB−EGF(それぞれMOI10)を強発現させておき、24時間後の心筋細胞の変化を形態的、生理学的に検討した。細胞面積は、4%パラホルムアルデヒドにて心筋細胞を10分固定後、PIXELカウント(Adobe Photoshop)を用いて計測した。
図4に示すように、HB−EGFが遺伝子導入された心筋細胞の細胞面積は、コントロール(HB−EGFとCD9の遺伝子が未導入)に対し有意な増大がみられ(*P<0.05VSControl)、CD9を単独で遺伝子導入した心筋細胞の細胞面積は有意な変化がみられなかった。一方、CD9+HB−EGF遺伝子導入群の心筋細胞の細胞面積は、HB−EGFによる増大を有意に抑制していた。
次いで、上記のCD9、HB−EGF、CD9+HB−EGFが各々遺伝子導入された心筋細胞の拍動をビデオ顕微鏡観測システム(OLYMPUS顕微鏡IX 70+CCDカメラCS 900)を用いて記録した。その結果、図5に示すように、HB−EGFが遺伝子導入された心筋細胞の拍動数は、有意な増加(コントロール70±8/minに対して130±10/min)がみられたが、CD9+HB−EGFが遺伝子導入された心筋細胞の拍動数はコントロールとほぼ同様で(76±10/min)、CD9がHB−EGFの作用を阻害していることが示された(*P<0.05VSControl)。
新生マウスの心筋初代培養細胞にMOI 30でAd.CD9を感染させて遺伝子導入し、CD9を強発現させ、24時間後、ヒト組み換えHB−EGF(rHB−EGF、R&Dシステムカタログ番号259−HE)(濃度10ng/ml)、アンギオテンシン2(SIGMA カタログ番号 A−9525)(濃度100nM)、ヒト組み換えHGF(rHGF、R&Dシステム カタログ番号 294−HG)(濃度10ng/ml)を各々培養液中に加えて心筋細胞に24時間作用させた。その後、4%パラホルムアルデヒドにて心筋細胞を固定し、免疫染色にてCD9の導入の有無を確認し、F−actin染色により筋繊維形成の程度を調べた。図6のCD9が遺伝子導入された心筋細胞(Anti−CD9の写真像参照)は、CD9免疫染色像とF−actin染色像を重合した写真像から分かるようにヒト組み換えHB−EGF、アンギオテンシン2、ヒト組み換えHGFによる心筋細胞肥大作用が抑制されていた。
また、上記のようにCD9を強発現させてヒト組み換えHB−EGF、アンギオテンシン2、ヒト組み換えHGFを各々培養液中に加えた心筋細胞についてCD9を遺伝子導入していないコントロールの心筋細胞の面積を1として各群の心筋細胞の面積の比を解析した。また、心筋細胞の拍動数変化は、ヒト組み換えHB−EGF、アンギオテンシン2、ヒト組み換えHGFを加える24時間前より、Ad.CD9、あるいはAd.dE1.3(コントロール)をMOI 30にて十分に作用させた。拍動細胞の存在を確認後、無血清培養液にて3回洗浄、ヒト組み換えHB−EGF、アンギオテンシン2、ヒト組み換えHGFの各々を肥大定量時と同量加え、3時間後、培養細胞ビデオ観察システム(OLYMPUS顕微鏡製品番号IX 70およびCCDカメラ 製品番号CS 900)を用い、20個以上の心筋細胞を各5分以上観察し1分間の拍動数を計測した。
図6に示すように、ヒト組み換えHB−EGF、アンギオテンシン2、ヒト組み換えHGFのいずれかを添加した場合、すべてにおいて筋繊維の形成、肥大が確認できたが、予めCD9を強発現させその発現が確認されている心筋細胞においては、叙述のように肥大及び筋繊維形成が抑制されていた。また、細胞面積は、図7に示すように、統計学的に有意であった。例えば、ヒト組み換えHB−EGF単独:2.8±0.5倍対コントロール、CD9+ヒト組み換えHB−EGF:0.7±0.1倍対コントロールであり、アンギオテンシン2、rHGFの場合も同様にCD9は心筋細胞の肥大を抑制していた(*P<0.05VSControl、**P<0.001VSControl)。また、心筋細胞の拍動数は、図8に示すように、ヒト組み換えHB−EGF、アンギオテンシン2、ヒト組み換えHGFの作用により、有意に拍動数の増加がみられ、CD9によりその作用が打ち消されることが確認された(*p<0.05VSControl、**p<0.001VSControl)。このことより、in vitroにおいてもCD9が心筋肥大作用及び心陽性変力作用を抑制することが明らかとなった。

(シグナル伝達におけるリン酸化の阻害)
次にCD9のメカニズムを検討するため、細胞内情報伝達MAPK(MAPキナーゼ)のリン酸化を調べた。拍動の観察を終了した心筋細胞より、Bradford法にてプロテインアッセイキットバイオラッドカタログ番号500−0002JA)を用いて蛋白を抽出し、SDS−PAGEに3μgずつ泳動し、ウエスタンブロッテイングにて確認した。その結果、図9に示すように、pERK(E−4)(SANTACRUZカタログ番号sc−7383),p−p70 S6K(A−6)(SANTACRUZカタログ番号 sc−8416)、p−p38(D−8)(SANTACRUZカタログ番号sc−7973)を用いることにより、CD9の作用でactive−ERK、active−p70 S6K及びactive−p38のリン酸化が抑制され(active−p38は軽度に抑制)、シグナル伝達を阻害していることが推測された。シグナル伝達の阻害は、ヒト組み換えHB−EGFのみならず、アンギオテンシン2やヒト組み換えHGFの添加でも同様にみられ、HB−EGF、アンギオテンシン2、HGFのシグナル伝達経路関与していることが示唆された。なお、発色は、HRPの二次抗体にて標識し、スーパーシグナルWest Pico化学蛍光色物(PIERCE カタログ番号 34077)にて発光させた。インターナルコントロールの蛋白質としてα−tublin(DM1A)(SIGMAカタログ番号 T−9026)を同様にウエスタンブロッティングで検出した。

(心筋梗塞動物モデルにおける心機能の改善)
8−12週齢の成体雄マウスC57/BL6を気管切開し、麻酔器(木医科器械製品番号コンパクト−15)にて全身麻酔(GOH笑気酸素ハロセン)した後、開胸した。冠動脈を2−0ナイロン糸にて永久結紮し心筋梗塞動物モデルを作製した。100ulのPBSに溶解したAd.HB−EGF、Ad.dE1.3、Ad.HB−EGF+Ad.CD9の各ウイルス1x1011粒子を含むPBS液を心筋の心外膜側に直接散布投与し、閉胸した。4日後に血清採血し、1週間後(心筋梗塞後1週間モデル)及び8週間後に各々屠殺して評価した。心筋梗塞1週間モデルは、心エコー(アロカ、プローブ:7.5MHZ 製品番号SSD−2000)にて左室駆出率(LVEF)、左室拡張期径(LVDd)、左室収縮期径(LVDs)、左室中隔厚(IVSt)、後壁厚(PWt)を計測した。また、右頸動脈より観血的動脈圧モニターカテーテル(Millar Instrumentsカタログ番号SPR 407)を大動脈及び左心室内に挿入して左室収縮期圧(LVSP)、左室拡張末期圧(LVEDP)、左室最大陽性dP/dt,左室最大陰性dP/dtを測定(PowerLab system ver 4.2ADInstruments)した。採血後に臓器(心臓、肺、肝臓臟、脾臓)を採取した。
図10慢性期8週間までの生存曲線を示した。HB−EGFのみ遺伝子導入したマウス(HB−EGF+de1.3)は急性期(ほぼ2週間以内)に死亡し、CD9を同時に遺伝子導入することにより(HB−EGF+CD9)生存し得た(P<0.05)。
次に組織学的な検討をした。慢性期8週間のマウスの心臓をスライスし、10%ホルマリンにて固定した。パラフィン包埋後、カットした後、HE染色した。図11に示すように、HB−EGFを遺伝子導入したマウスに比べ、CD9を同時に遣伝子導入したものは、代償性肥大が抑制されていた。また、各切片をLUZEX Fシステム(ニレコ社製)を用い、心筋細胞径をボーダーゾーン(Border:心筋梗塞部と正常部の境界領域)とリモートゾーン(Remote:心筋梗塞部から離れた正常の心筋部)で計測(各サンプル各zone20個以上)した。図12に示すように、ボーダーゾーンにおいてコントロール群でもみられる代償性肥大がHB−EGF群でもみられたが、CD9を同時に遺伝子導入することにより、その肥大作用が抑制されていた(*P<0.05VSControl、**p<0.001VSControl)。
また、2週間以内の急性期にHB−EGF+dE1.3群の80%が死亡した原因について検討するため作製した心筋梗塞後1週間モデルの心エコー及びカテーテルによる心機能の測定の結果は以下の通りであった。心エコーによる心機能評価では、左室駆出率(LVEF)(図13参照)において、カテーテルによる観血的血行動態評価では、左室最大陽性dP/dt及び左室収縮期圧(LVSP)(図15及び図16)において、CD9の遺伝子導入群がコントロール及びHB−EGF遺伝子導入群に比し、心機能が有意に良好であった(*P<0.05VSControl)。なお、心筋梗塞後1週間の短い期間では左室の大きさに変化がないと言われているようにLVDdのCD9遺伝子導入群とコントロール並びにHB−EGF遺伝子導入群の間に差がみられなかった(図14参照)。同様に左室の壁の厚さの指標となるIVSt、PWtについても心筋梗塞1週間の短い期間では有意な差がなかった(図面省略)。また、LVEDPは有意差がなかったが、CD9遺伝子導入群では低い傾向にあった(図17参照、*P<0.05VSControl)。
これらの結果は、CD9を心臓に遺伝子導入することにより心肥大と頻脈を抑制し、心疾患の予防や改善に効果的であることを示すものであり、本発明の医薬は他の心不全モデルなどにおいても応用し得るものである。

(心筋梗塞動物モデルにおける臓器重量の測定)
心筋梗塞作製後1週間が経過したマウスのそれぞれの群についてすべてを屠殺した。屠殺後のマウスの体重を各々測定し、心臓の重量、肺の重量をその体重で除して補正し、補正後の心臓及び肺の重量を算出した。心臓の重量増加は、心臓の過剰な肥大及び拡大を示し、心不全など心機能の悪化の指標となる。また、肺の重量増加は、肺のうっ血を示し、このことは肺水腫、つまりは心不全を示す指標となる。結果は、図18及び図19に示したように、CD9導入群は有意に臓器重量が抑制され、心不全状態になっていない(*P<0.05VSControl、**P<0.001VSControl)。

(心筋梗塞動物モデルにおける心筋梗塞領域面積及び線維化面積の測定)
心筋梗塞作製後1週間が経過したマウスのそれぞれの群についてすべてを屠殺した。屠殺後、心臓を取り出し、スライスした切片をホルマリン処理にて固定後、該切片に線維化指標のマッソントリクローム染色を行った。心筋梗塞領域面積(MIarea)は、心筋壊死部分の左心室全体における比率を計算した。また、線維化面積は、特にマッソン トリクローム染色にて陽性部分の左心室切片全体の面積に対する比率で計算した。結果は、図20及び図21に示したように、CD9導入群は心筋梗塞領域面積(MI area)及び線維化面積のいずれにおいても、有意な減少を認め、治療効果が現れている(*P<0.05VSControl)。

(心筋梗塞動物モデルにおける心筋梗塞領域の免疫組織学的検討)
心筋梗塞作製後1週間が経過したマウスのそれぞれの群についてすべてを屠殺した。屠殺後、心臓を取り出し、ホルマリン処理にて固定後、パラフィン包理し、スライス処理した。増殖細胞の指標として、Ki−67抗原に対するモノクローナル抗体(クローン:MIB−1、Dako Cytomation社、カタログ番号M7240、抗体希釈25倍)、筋線維芽細胞の指標として、抗平滑筋線維アクチン(α−smooth muscle actin(SMA))に対するモノクローナル抗体によるDAKO EPOS/HRP(Enhanced Polymer One−step Staining/ペルオキシダーゼキット(クローン:1A4、Dako Cytomation社、カタログ番号 U7033)を用いて心臓のスライスを染色した。染色陽性細胞を顕微鏡にて観察を行い、高倍率(High Power Field(HPF))の200倍観察によりそれぞれのグループにつき、1検体10視野の単位視野当たりの陽性細胞をカウントし平均化後グラフ化した。結果は、図22及び図23に示したように、CD9導入群は増殖細胞及び筋線維芽細胞のいずれにおいても、有意な減少が認められ、CD9が増殖細胞の不整かつ過剰な修復肉芽の抑制や筋線維芽細胞の増殖を抑制することが明らかとなった(*P<0.05VSControl、**P<0.001VSControl)。
産業上の利用性
本発明の医薬は、遺伝子治療に用い、CD9遺伝子を心臓に導入することにより、心疾患、特に心肥大や頻脈を伴う心疾患を根治的に予防又は治療できる。また、本発明の予防又は治療の方法は、CD9遺伝子を心臓で発現させることにより心疾患を根治的に予防又は治療できる。
本発明は、発明の実質的範囲に包含される限り、上記の実施例に限定されるものではない。

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