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課題・解決手段

製剤安定性に優れ、しかも使用時に水道水等の無機イオン含有水を用いて希釈した場合でも不溶性沈殿を生成させない結果優れた殺菌消毒力が保持される、希釈用殺菌消毒剤組成物を提供する。本発明は、グルコン酸クロルヘキシジンを主成分とする水性液剤であって:(1)グルコン酸クロルヘキシジンを1〜10w/v%;(2)HLBが10〜15で、かつ凝固点が35℃以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる一種または二種以上を1〜10w/v%;(3)炭素数2〜6を有する水溶性有機モノカルボン酸を0.001〜0.5w/v%;および(4)水;を含有することを特徴とする希釈用殺菌消毒剤組成物に関する。

概要

背景

グルコン酸クロルヘキシジン広範囲微生物に作用し、低濃度でも良好な殺菌消毒力を示す。また、グルコン酸クロルヘキシジンは生体に対する刺激が少ない。グルコン酸クロルヘキシジンは、水溶液またはアルコール溶液として、手指、皮膚の消毒手術部位の消毒、医療器具の消毒、皮膚の創傷部位の消毒、手術室病室等の消毒等の用途に使用されている。
一般に、グルコン酸クロルヘキシジンを含有する殺菌消毒剤には、その使用目的により大きく分けて2種類の製剤がある。
第1の製剤は、皮膚の消毒、手術部位の消毒、医療器具や手術室・病室の消毒、創傷皮膚の消毒等に使用される液剤である。
該液剤は、殺菌消毒の対象や程度により、グルコン酸クロルヘキシジンの濃度を使用時に調整して使用される。医療現場では一般に、5%ないし20%グルコン酸クロルヘキシジン水溶液を水またはアルコールで適時希釈して使用されている。希釈後の好適な濃度範囲は0.01〜0.5重量%である。
第2の製剤は、手指の消毒のみに使用されるもので、希釈せずにそのまま使用される。このような製剤では、洗浄効果を付与するために高濃度界面活性剤発泡剤が配合されている。また、付着効果をもたせるために水溶性高分子などを加え、粘性が高められていることもある。
また、手指にすり込んで使用される速乾性の製剤もある。この製剤では、水で洗い流す必要がない。この製剤では水溶性高分子等の配合により粘性を上げ、アルコールを高濃度で含有させることで速乾性が付与されている。
これらの製剤は医薬品として、殺菌消毒力の維持、および高い安定性が求められている。特に上記第1の製剤のような使用時に希釈して使用される製剤の場合、希釈前の製剤安定性だけでなく、希釈後の安定性も求められている。
クロルヘキシジンは、水に対しての溶解度が低い(20℃で0.08w/v%)。クロルヘキシジンは、グルコン酸塩とすることにより水に可溶となる(20℃で50w/v%以上)。また、クロルヘキシジンはある種の陰イオンとの間で水難溶性の塩を形成するという性質を有している。そのため、グルコン酸クロルヘキシジン溶液は、例えば一般の水道水を用いて希釈すると、水道水中に含まれる各種の陰イオン(SO42−、NO3−、Cl−等)により水難溶性の塩を形成し、経時的に沈殿を生じることが知られている。また、グルコン酸クロルヘキシジン溶液は、各種の無機金属イオン(Na+、Mg2+、Ca2+等)が存在すると、グルコン酸がこれらのイオンと塩を形成してしまい、不溶性の沈殿を生じやすくなる(古橋正吉、日本医事新報、No.2734(1976))。
沈殿析出における最大の問題は、グルコン酸クロルヘキシジンが各種のイオン等によって製剤中または希釈液中不溶化してしまうと、その殺菌消毒力が著しく低下することである。
したがって、希釈して使用されるグルコン酸クロルヘキシジン含有殺菌消毒剤組成物は、医薬品添付文書等により蒸留水を用いて希釈することが望ましいとされている。しかし、実際の現場では、水道水で希釈して使用される場合も多い。このため、各種のイオンを含有する水道水で希釈した場合であっても不溶物析出しないグルコン酸クロルヘキシジンを含有する希釈用殺菌消毒剤組成物が望まれている。
グルコン酸クロルヘキシジンの陰イオンに対する安定化の方法としては、以下のものが知られている。
(1)特開平9−301858号公報に、0.001〜0.05w/v%のグルコン酸クロルヘキシジンを含む水性液剤に特定の構造を有する多価カルボン酸またはその塩を添加することにより、グルコン酸クロルヘキシジンを塩素イオンの存在下でも、水性液剤中に安定に維持する方法が示されている。
これは、組成上塩素イオンを含有することが多い点眼剤点鼻剤のような水性液剤において、塩素イオンが存在していても、クエン酸等の多価カルボン酸又はその塩を存在させることにより、グルコン酸クロルヘキシジンの経時的な沈殿の発生が起こらないことを開示している。しかし、一般に0.01w/v%以下の低濃度ではクロルヘキシジンの塩酸塩等の溶解度(20℃で0.06w/v%)から、沈殿は生じない。希釈用に調製されるグルコン酸クロルヘキシジン水性液剤の場合は、その濃度が通常5w/v%程度と高いため、これらの多価カルボン酸類やその塩等を添加すると製剤中に沈殿が生じる。
また、水道水には総硬度300ppm以下に相当するカルシウムイオンマグネシウムイオンの他、カリウムイオンナトリウムイオンなどが含まれる。また、これらの金属イオンに相当する量の陰イオンとして、塩素イオンの他、グルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出を促進する硫酸イオン硝酸イオンがそれぞれ数10ppm以上含まれている。これらがグルコン酸クロルヘキシジンからの不溶物生成の原因となるため、グルコン酸クロルヘキシジン含有水性液剤を、水道水を用いて希釈する場合の沈殿析出抑制の方法としては上記特開平9−301858号公報の方法では十分とはいえない。
(2)グルコン酸クロルヘキシジン含有水性液剤において、各種イオンによるクロルヘキシジンの沈殿析出を抑制するための手段として、非イオン性界面活性剤、好適にはノニルフェノキシポリエチレンオキシエタノールを添加する方法が知られている。しかし、ノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールは、環境ホルモン様物質の主な原因物質である。今後使用が制限される可能性があることから、代替品の開発が望まれている。非イオン性以外の界面活性剤、特にアニオン性両性の界面活性剤を用いると、上記の無機イオンと同様に、グルコン酸あるいはクロルヘキシジンと塩や錯体を形成してしまう。
グルコン酸クロルヘキシジンに非イオン性界面活性剤を添加した殺菌消毒剤は、これまでにも多くの提案がなされている。
例えば、特公平6−31417号公報には、クロルヘキシジン塩、ノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール界面活性剤、脂肪酸ポリエチレングリコールジエステルまたは脂肪酸アミドラノリン界面活性剤のポリエチレングリコールエーテル、および水からなる抗菌洗浄剤が示されている。
特許第2961556号公報には、水性溶媒中に、グルコン酸クロルヘキシジン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸ジエタノールアミドアルキルジメチルアミンオキサイド、およびマクロゴールのそれぞれ特定量を含有する、皮膚消毒用組成物が示されている。
しかし、これらの組成物は、手指への殺菌と洗浄を目的とするために、0.5〜10w/v%のグルコン酸クロルヘキシジンに対して、界面活性剤の添加量が7〜40w/v%と高く設定されており、手術部位や創傷皮膚の消毒、または医療器具の殺菌消毒に使用可能なものではない。また、これらの製剤は、水道水のように種々のイオンを含有する水で希釈した場合の沈殿析出を抑制するためのものではなかった。
(3)特開2000−273004号公報には、第四級アンモニウム塩系殺菌消毒剤又はビグアナイド系殺菌消毒剤の低級アルコール溶液に対して、凝固点が35℃以上のポリアルキレングリコール又は凝固点が35℃以上のアルキレングリコール誘導体が特定量配合された、殺菌消毒剤組成物が示されている。これは、第四級アンモニウム塩系殺菌消毒剤又はビグアナイド系殺菌消毒剤の低級アルコール溶液に特定の物質を添加することで、皮膚刺激性を低減し、皮膚表面のカサツキベタツキ感などの使用後の触感を改良しようとするものである。水道水のように種々のイオンを含有する水で希釈した場合の沈殿析出を抑制するためのものではない。
一般に、手術部位や創傷部位の消毒、あるいは医療器具の殺菌消毒に使用される殺菌消毒剤の場合は、殺菌消毒活性成分以外の成分はできるだけ含まないことが望ましい。特にグルコン酸クロルヘキシジンを主成分とする殺菌消毒剤においては、界面活性剤は、グルコン酸クロルヘキシジンの殺菌消毒力を低下させる要因となることに加え、適用部位への刺激性を誘発しやすいため、その添加量はできるだけ低くすることが望ましい。
また、非イオン性界面活性剤は、その配合量が必要以上に多いと、グルコン酸クロルヘキシジンをミセル中に取り込んで、その殺菌消毒力を低下してしまうことがある。しかし、逆に添加量を低減すると、安定化作用が低下し、沈殿析出抑制効果も低くなる。
さらに、沈殿析出抑制に好適とされる非イオン性界面活性剤の場合でも、親油基親水基の構造によってグルコン酸クロルヘキシジンの安定化効果に違いがあり、一定量添加しても沈殿析出を十分に抑制できない場合があることはあまり知られていなかった。
したがって、界面活性剤やアルコールの添加量が低く、かつ水道水で希釈した場合に、クロルヘキシジンの不溶性沈殿を生成させることなく、グルコン酸クロルヘキシジンの殺菌消毒力が損なわない、希釈用の殺菌消毒剤組成物の開発が求められている。

概要

製剤安定性に優れ、しかも使用時に水道水等の無機イオン含有水を用いて希釈した場合でも不溶性の沈殿を生成させない結果優れた殺菌消毒力が保持される、希釈用殺菌消毒剤組成物を提供する。本発明は、グルコン酸クロルヘキシジンを主成分とする水性液剤であって:(1)グルコン酸クロルヘキシジンを1〜10w/v%;(2)HLBが10〜15で、かつ凝固点が35℃以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる一種または二種以上を1〜10w/v%;(3)炭素数2〜6を有する水溶性有機モノカルボン酸を0.001〜0.5w/v%;および(4)水;を含有することを特徴とする希釈用殺菌消毒剤組成物に関する。

目的

沈殿析出における最大の問題は、グルコン酸クロルヘキシジンが各種のイオン等によって製剤中または希釈液中で不溶化してしまうと、その殺菌消毒力が著しく低下することである

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
0件

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請求項1

グルコン酸クロルヘキシジンを主成分とする水性液剤であって:(1)グルコン酸クロルヘキシジンを1〜10w/v%;(2)HLBが10〜15で、かつ凝固点が35℃以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる一種または二種以上を1〜10w/v%;(3)炭素数2〜6を有する水溶性有機モノカルボン酸を0.001〜0.5w/v%;および(4)水;を含有することを特徴とする希釈用殺菌消毒剤組成物

請求項2

炭素数2〜6を有する水溶性の有機モノカルボン酸が、酢酸グルコン酸、およびグルコノデルタラクトンから選ばれる一種または二種以上である請求項1に記載の希釈用殺菌消毒剤組成物。

請求項3

さらに、炭素数1〜3の水溶性アルコールを10w/v%以下含有する請求項1または2に記載の希釈用殺菌消毒剤組成物。

請求項4

ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル鎖が炭素数10〜14のアルキル基であり、およびポリオキシエチレンアルケニルエーテルのアルケニル鎖が炭素数14〜18のアルケニル基である請求項1〜3のいずれかに記載の希釈用殺菌消毒剤組成物。

請求項5

ポリオキシエチレンアルキルエーテルのエチレンオキサイド付加モル数が7〜20モルの範囲であり、およびポリオキシエチレンアルケニルエーテルのエチレンオキサイドの付加モル数が7〜20モルの範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の希釈用殺菌消毒剤組成物。

請求項6

グルコン酸クロルヘキシジンの含有量が4〜6w/v%の範囲である請求項1に記載の希釈用殺菌消毒剤組成物。

請求項7

HLBが10〜15で、かつ凝固点が35℃以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる一種または二種以上の含有量が2〜7w/v%の範囲である請求項1に記載の希釈用殺菌消毒剤組成物。

請求項8

炭素数2〜6を有する水溶性の有機モノカルボン酸の含有量が0.01〜0.2w/v%の範囲である請求項1に記載の希釈用殺菌消毒剤組成物。

請求項9

ポリオキシエチレンアルケニルエーテルがポリオキシエチレンオレイルエーテルである請求項1〜8のいずれかに記載の希釈用殺菌消毒剤組成物。

請求項10

請求項1に記載の希釈用殺菌消毒剤組成物を総硬度300mg/L以下の水またはエタノール希釈し、グルコン酸クロルヘキシジン含量を0.05〜0.5w/v%の範囲に調整した殺菌消毒剤

請求項11

グルコン酸クロルヘキシジンを主成分とする水性液剤において、HLBが10〜15で、かつ凝固点が35℃以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる一種または二種以上、および炭素数2〜6を有する水溶性の有機モノカルボン酸を同時に配合させることにより、硬水による希釈下でグルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出を抑える方法。

技術分野

本発明は新規殺菌消毒剤に関する。さらに詳しくは、本発明はグルコン酸クロルヘキシジンを含有する希釈用殺菌消毒剤組成物において、
(1)製剤安定性に優れ、
(2)使用時に水道水等の無機イオンを含有する水で希釈しても不溶性沈殿を生成せず、その結果優れた殺菌消毒力が保持される、
新規な希釈用殺菌消毒剤組成物に関する。

背景技術

グルコン酸クロルヘキシジンは広範囲微生物に作用し、低濃度でも良好な殺菌消毒力を示す。また、グルコン酸クロルヘキシジンは生体に対する刺激が少ない。グルコン酸クロルヘキシジンは、水溶液またはアルコール溶液として、手指、皮膚の消毒手術部位の消毒、医療器具の消毒、皮膚の創傷部位の消毒、手術室病室等の消毒等の用途に使用されている。
一般に、グルコン酸クロルヘキシジンを含有する殺菌消毒剤には、その使用目的により大きく分けて2種類の製剤がある。
第1の製剤は、皮膚の消毒、手術部位の消毒、医療器具や手術室・病室の消毒、創傷皮膚の消毒等に使用される液剤である。
該液剤は、殺菌消毒の対象や程度により、グルコン酸クロルヘキシジンの濃度を使用時に調整して使用される。医療現場では一般に、5%ないし20%グルコン酸クロルヘキシジン水溶液を水またはアルコールで適時希釈して使用されている。希釈後の好適な濃度範囲は0.01〜0.5重量%である。
第2の製剤は、手指の消毒のみに使用されるもので、希釈せずにそのまま使用される。このような製剤では、洗浄効果を付与するために高濃度界面活性剤発泡剤が配合されている。また、付着効果をもたせるために水溶性高分子などを加え、粘性が高められていることもある。
また、手指にすり込んで使用される速乾性の製剤もある。この製剤では、水で洗い流す必要がない。この製剤では水溶性高分子等の配合により粘性を上げ、アルコールを高濃度で含有させることで速乾性が付与されている。
これらの製剤は医薬品として、殺菌消毒力の維持、および高い安定性が求められている。特に上記第1の製剤のような使用時に希釈して使用される製剤の場合、希釈前の製剤安定性だけでなく、希釈後の安定性も求められている。
クロルヘキシジンは、水に対しての溶解度が低い(20℃で0.08w/v%)。クロルヘキシジンは、グルコン酸塩とすることにより水に可溶となる(20℃で50w/v%以上)。また、クロルヘキシジンはある種の陰イオンとの間で水難溶性の塩を形成するという性質を有している。そのため、グルコン酸クロルヘキシジン溶液は、例えば一般の水道水を用いて希釈すると、水道水中に含まれる各種の陰イオン(SO42−、NO3−、Cl−等)により水難溶性の塩を形成し、経時的に沈殿を生じることが知られている。また、グルコン酸クロルヘキシジン溶液は、各種の無機金属イオン(Na+、Mg2+、Ca2+等)が存在すると、グルコン酸がこれらのイオンと塩を形成してしまい、不溶性の沈殿を生じやすくなる(古橋正吉、日本医事新報、No.2734(1976))。
沈殿析出における最大の問題は、グルコン酸クロルヘキシジンが各種のイオン等によって製剤中または希釈液中不溶化してしまうと、その殺菌消毒力が著しく低下することである。
したがって、希釈して使用されるグルコン酸クロルヘキシジン含有殺菌消毒剤組成物は、医薬品添付文書等により蒸留水を用いて希釈することが望ましいとされている。しかし、実際の現場では、水道水で希釈して使用される場合も多い。このため、各種のイオンを含有する水道水で希釈した場合であっても不溶物析出しないグルコン酸クロルヘキシジンを含有する希釈用殺菌消毒剤組成物が望まれている。
グルコン酸クロルヘキシジンの陰イオンに対する安定化の方法としては、以下のものが知られている。
(1)特開平9−301858号公報に、0.001〜0.05w/v%のグルコン酸クロルヘキシジンを含む水性液剤に特定の構造を有する多価カルボン酸またはその塩を添加することにより、グルコン酸クロルヘキシジンを塩素イオンの存在下でも、水性液剤中に安定に維持する方法が示されている。
これは、組成上塩素イオンを含有することが多い点眼剤点鼻剤のような水性液剤において、塩素イオンが存在していても、クエン酸等の多価カルボン酸又はその塩を存在させることにより、グルコン酸クロルヘキシジンの経時的な沈殿の発生が起こらないことを開示している。しかし、一般に0.01w/v%以下の低濃度ではクロルヘキシジンの塩酸塩等の溶解度(20℃で0.06w/v%)から、沈殿は生じない。希釈用に調製されるグルコン酸クロルヘキシジン水性液剤の場合は、その濃度が通常5w/v%程度と高いため、これらの多価カルボン酸類やその塩等を添加すると製剤中に沈殿が生じる。
また、水道水には総硬度300ppm以下に相当するカルシウムイオンマグネシウムイオンの他、カリウムイオンナトリウムイオンなどが含まれる。また、これらの金属イオンに相当する量の陰イオンとして、塩素イオンの他、グルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出を促進する硫酸イオン硝酸イオンがそれぞれ数10ppm以上含まれている。これらがグルコン酸クロルヘキシジンからの不溶物生成の原因となるため、グルコン酸クロルヘキシジン含有水性液剤を、水道水を用いて希釈する場合の沈殿析出抑制の方法としては上記特開平9−301858号公報の方法では十分とはいえない。
(2)グルコン酸クロルヘキシジン含有水性液剤において、各種イオンによるクロルヘキシジンの沈殿析出を抑制するための手段として、非イオン性界面活性剤、好適にはノニルフェノキシポリエチレンオキシエタノールを添加する方法が知られている。しかし、ノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールは、環境ホルモン様物質の主な原因物質である。今後使用が制限される可能性があることから、代替品の開発が望まれている。非イオン性以外の界面活性剤、特にアニオン性両性の界面活性剤を用いると、上記の無機イオンと同様に、グルコン酸あるいはクロルヘキシジンと塩や錯体を形成してしまう。
グルコン酸クロルヘキシジンに非イオン性界面活性剤を添加した殺菌消毒剤は、これまでにも多くの提案がなされている。
例えば、特公平6−31417号公報には、クロルヘキシジン塩、ノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール界面活性剤、脂肪酸ポリエチレングリコールジエステルまたは脂肪酸アミドラノリン界面活性剤のポリエチレングリコールエーテル、および水からなる抗菌洗浄剤が示されている。
特許第2961556号公報には、水性溶媒中に、グルコン酸クロルヘキシジン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸ジエタノールアミドアルキルジメチルアミンオキサイド、およびマクロゴールのそれぞれ特定量を含有する、皮膚消毒用組成物が示されている。
しかし、これらの組成物は、手指への殺菌と洗浄を目的とするために、0.5〜10w/v%のグルコン酸クロルヘキシジンに対して、界面活性剤の添加量が7〜40w/v%と高く設定されており、手術部位や創傷皮膚の消毒、または医療器具の殺菌消毒に使用可能なものではない。また、これらの製剤は、水道水のように種々のイオンを含有する水で希釈した場合の沈殿析出を抑制するためのものではなかった。
(3)特開2000−273004号公報には、第四級アンモニウム塩系殺菌消毒剤又はビグアナイド系殺菌消毒剤の低級アルコール溶液に対して、凝固点が35℃以上のポリアルキレングリコール又は凝固点が35℃以上のアルキレングリコール誘導体が特定量配合された、殺菌消毒剤組成物が示されている。これは、第四級アンモニウム塩系殺菌消毒剤又はビグアナイド系殺菌消毒剤の低級アルコール溶液に特定の物質を添加することで、皮膚刺激性を低減し、皮膚表面のカサツキベタツキ感などの使用後の触感を改良しようとするものである。水道水のように種々のイオンを含有する水で希釈した場合の沈殿析出を抑制するためのものではない。
一般に、手術部位や創傷部位の消毒、あるいは医療器具の殺菌消毒に使用される殺菌消毒剤の場合は、殺菌消毒活性成分以外の成分はできるだけ含まないことが望ましい。特にグルコン酸クロルヘキシジンを主成分とする殺菌消毒剤においては、界面活性剤は、グルコン酸クロルヘキシジンの殺菌消毒力を低下させる要因となることに加え、適用部位への刺激性を誘発しやすいため、その添加量はできるだけ低くすることが望ましい。
また、非イオン性界面活性剤は、その配合量が必要以上に多いと、グルコン酸クロルヘキシジンをミセル中に取り込んで、その殺菌消毒力を低下してしまうことがある。しかし、逆に添加量を低減すると、安定化作用が低下し、沈殿析出抑制効果も低くなる。
さらに、沈殿析出抑制に好適とされる非イオン性界面活性剤の場合でも、親油基親水基の構造によってグルコン酸クロルヘキシジンの安定化効果に違いがあり、一定量添加しても沈殿析出を十分に抑制できない場合があることはあまり知られていなかった。
したがって、界面活性剤やアルコールの添加量が低く、かつ水道水で希釈した場合に、クロルヘキシジンの不溶性沈殿を生成させることなく、グルコン酸クロルヘキシジンの殺菌消毒力が損なわない、希釈用の殺菌消毒剤組成物の開発が求められている。

本発明の目的は、
(1)製剤安定性に優れ、
(2)使用時に水道水等の無機イオン含有水を用いて希釈した場合でも不溶性の沈殿を生成させることなく、グルコン酸クロルヘキシジンを溶液中に安定に含有させることができ、その結果優れた殺菌消毒力が保持される、
希釈用殺菌消毒剤組成物を提供することにある。
そこで本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、グルコン酸クロルヘキシジン水溶液中に、特定の非イオン性界面活性剤および特定の有機酸を同時に含有させることによって、製剤安定性に優れ、水道水のように各種の無機イオンを含有する水で希釈しても、グルコン酸クロルヘキシジンを安定に維持できることを見出し、更なる検討を行い、本発明を完成するに至った。
本発明は:
[1]グルコン酸クロルヘキシジンを主成分とする水性液剤であって:
(1)グルコン酸クロルヘキシジンを1〜10w/v%;
(2)HLBが10〜15で、かつ凝固点が35℃以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる一種または二種以上を1〜10w/v%;
(3)炭素数2〜6を有する水溶性有機モノカルボン酸を0.001〜0.5w/v%;および
(4)水;
を含有することを特徴とする希釈用殺菌消毒剤組成物;
[2]炭素数2〜6を有する水溶性の有機モノカルボン酸が、酢酸、グルコン酸、およびグルコノデルタラクトンから選ばれる一種または二種以上である、上記[1]に記載の希釈用殺菌消毒剤組成物;
[3]さらに、炭素数1〜3の水溶性アルコールを10w/v%以下含有する上記[1]または[2]に記載の希釈用殺菌消毒剤組成物;
[4]ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル鎖が炭素数10〜14のアルキル基であり、およびポリオキシエチレンアルケニルエーテルのアルケニル鎖が炭素数14〜18のアルケニル基である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の希釈用殺菌消毒剤組成物;
[5]ポリオキシエチレンアルキルエーテルのエチレンオキサイド付加モル数が7〜20モルの範囲であり、およびポリオキシエチレンアルケニルエーテルのエチレンオキサイドの付加モル数が7〜20モルの範囲である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の希釈用殺菌消毒剤組成物;
[6]グルコン酸クロルヘキシジンの含有量が4〜6w/v%の範囲である上記[1]に記載の希釈用殺菌消毒剤組成物;
[7]HLBが10〜15で、かつ凝固点が35℃以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる一種または二種以上の含有量が2〜7w/v%の範囲である上記[1]に記載の希釈用殺菌消毒剤組成物;
[8]炭素数2〜6を有する水溶性の有機モノカルボン酸の含有量が0.01〜0.2w/v%の範囲である上記[1]に記載の希釈用殺菌消毒剤組成物;
[9]ポリオキシエチレンアルケニルエーテルが、ポリオキシエチレンオレイルエーテルである上記[1]〜[8]のいずれかに記載の希釈用殺菌消毒剤組成物;
[10]上記[1]に記載の希釈用殺菌消毒剤組成物を総硬度300mg/L以下の水またはエタノールで希釈し、グルコン酸クロルヘキシジン含量を0.05〜0.5w/v%の範囲に調整した殺菌消毒剤;
[11]グルコン酸クロルヘキシジンを主成分とする水性液剤において、HLBが10〜15で、かつ凝固点が35℃以下である、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる一種または二種以上、および炭素数2〜6を有する水溶性の有機モノカルボン酸を同時に配合させることにより、硬水による希釈下でグルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出を抑える方法;等
に関する。
発明の詳細な説明
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物は、グルコン酸クロルヘキシジンを有効成分とする水性液剤である。
グルコン酸クロルヘキシジンは下記式で表される化合物である。

本発明で使用されるグルコン酸クロルヘキシジンは、薬学的に許容されるクロルヘキシジンの二グルコン酸塩であればよい。これは一般に日本薬局方グルコン酸クロルヘキシジン液(グルコン酸クロルヘキシジンとして19〜21w/v%を含有する水溶液)として入手することができる。
本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物は、水で希釈することにより目的に応じて任意の濃度に調整できるように、グルコン酸クロルヘキシジンを1〜10w/v%、好ましくは2〜7w/v%、より好ましくは4〜6w/v%含有するように調整される。
本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物に含有される第2成分は、HLBが10〜15で、かつ凝固点が35℃以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる一種または二種以上である。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、一般式

、ポリオキシエチレンアルケニルエーテルは、一般式

のように表すことができる。
(ただし、a、bはエチレンオキサイド付加モル数、m、nはそれぞれアルキル鎖、アルケニル鎖の炭素数を表す整数を示す。)
HLBとは界面活性剤の親水−親油バランスを意味する(W.C.Griffin,J.Soc.Cosmetic Chemists,1,311(1949)参照)。なお、本明細書において、HLB値は、界面活性剤が親水基としてポリオキシエチレン鎖のみを含む場合の式として、
HLB=E/5
(ただし、Eはオキシエチレン基重量分率を示す。)
によって求められる(吉田時行ら、新版界面活性剤ハンドブック、p234、工学図書(1987)参照)。
本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物における第2成分のHLBが15を超えると、親水性が高くなりすぎて、界面活性剤としてのグルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出抑制作用が低くなる傾向にある。逆に10未満になると、親油性が高くなるため、水溶性であるグルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出抑制作用が低くなる傾向にある。
また、凝固点が35℃を超えると、HLBが10〜15の範囲であっても、界面活性剤の結晶性が高くなる。その結果、最終的に調製された水性液剤の低温安定性が低下する。
本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物における第2成分である、HLBが10〜15で、かつ凝固点が35℃以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルは、飽和脂肪族アルコールにエチレンオキサイドを種々のモル数で付加したものである。また、本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物における第2成分である、HLBが10〜15で、かつ凝固点が35℃以下であるポリオキシエチレンアルケニルエーテルは、不飽和脂肪族アルコールにエチレンオキサイドを種々のモル数で付加したものである。本発明における第2成分としては、HLBが10〜15で、かつ凝固点が35℃以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルケニルエーテルから薬学的に許容される一種または二種以上を選択して使用することができる。
このうち、本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物における第2成分としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル鎖の炭素数が10〜14のもの、またはポリオキシエチレンアルケニルエーテルのアルケニル鎖の炭素数が14〜18のものから選択するのが好ましい。このようなポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンデシルエーテルポリオキシエチレンウンデシルエーテルポリオキシエチレンドデシルエーテル(ポリオキシエチレンラウリルエーテルと記載されることもある)、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテルが挙げられる。ポリオキシエチレンアルケニルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンテトラデセニルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデセニルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデセニルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等)等が挙げられる。アルキル鎖、アルケニル鎖は直鎖でも分枝鎖でもよい。しかし、本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物は、医療器具の他、皮膚上の手術部位表面や創傷部位へも適用されるため、本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物における第2成分としては、炭素数が偶数直鎖アルキル(またはアルケニル)鎖を有するものが望ましい。これらは生体に対する安全性が比較的高い。
このとき、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル鎖の炭素数が14を超えると、凝固点が高くなるために、グルコン酸クロルヘキシジンに対する安定化作用が低くなる傾向にある。ポリオキシエチレンアルケニルエーテルのアルケニル鎖の炭素数が18を超える場合も同様である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル鎖の炭素数が10未満になると、グルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出抑制作用が低くなる傾向にある。ポリオキシエチレンアルケニルエーテルのアルケニル鎖の炭素数が14未満である場合も同様である。
本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物における第2成分としては、上記の炭素数が偶数の直鎖アルキル(またはアルケニル)基を有するもののうちでも、経済性等の面から、入手が容易でかつ医薬品としての使用実績を持つものが好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、またはポリオキシエチレンオレイルエーテルが好適なものとして挙げられる。
また、一般にポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリオキシエチレンアルケニルエーテルの凝固点は、アルキル(アルケニル)鎖長とエチレンオキサイド付加モル数で決まる。したがって、上記のポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンアルケニルエーテルの中から、凝固点が35℃以下となるようなエチレンオキサイド付加物が選択される。
このうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのエチレンオキサイドの付加モル数はアルキル鎖長によって異なるが、アルキル鎖長が10〜14の場合は、エチレンオキサイドの付加モル数が7〜20、好ましくは7〜15モルであるものから選択することができる。また、ポリオキシエチレンアルケニルエーテルのエチレンオキサイドの付加モル数はアルケニル鎖長によって異なるが、アルケニル鎖長が14〜18の場合は、エチレンオキサイドの付加モル数が7〜20モルであるものから選択することができる。
このとき、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテルのエチレンオキサイドの付加モル数が20モルを超えると、凝固点が上昇するだけでなく、親水性が高くなりすぎる結果、グルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出抑制作用が低くなる傾向にある。逆に7モル未満になると、水への溶解度が低くなる結果、均一な水性液剤を調製できなくなる傾向にある。
本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物における第2成分の好適なものとしては、具体的には、エチレンオキサイド付加モル数が7〜15であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、またはエチレンオキサイド付加モル数が7〜20であるポリオキシエチレンオレイルエーテルが挙げられる。その中でもより好適なものとしては、エチレンオキサイド付加モル数が7〜11であるポリオキシエチレンラウリルエーテル、またはエチレンオキサイド付加モル数が7〜15であるポリオキシエチレンオレイルエーテルが挙げられる。
このうち、本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物における第2成分として特に好適なものとしては、エチレンオキサイド付加モル数が9〜12であるポリオキシエチレンオレイルエーテルが挙げられる。本発明においては、第2成分として比較的長鎖のアルキル基を有するポリオキシエチレンオレイルエーテルを選択することにより、グルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出に対する安定性のみならず、皮膚への安全性に優れた良好な希釈用殺菌消毒剤組成物を調製することができる。
界面活性剤のHLBは、低HLBのものと高HLBのものを混合することにより任意のHLBに調整することができることが知られている。本発明における第2成分も同様に、最終的なHLBが10〜15で、かつ凝固点が35℃以下となるように、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンアルケニルエーテルの中から二種以上を選択し、混合して使用することも可能である。
本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物における第2成分の含有量は、最終的に調製される希釈用殺菌消毒剤組成物中、好ましくは1〜10w/v%の範囲から、より好ましくは2〜7w/v%の範囲から、さらに好ましくは3〜5w/v%の範囲から選択される。
このとき、含有量が10w/v%を超えると、希釈時にグルコン酸クロルヘキシジン殺菌消毒力を低下させる場合がある。逆に1w/v%未満になると、希釈時に充分なグルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出抑制作用を得ることができなくなり、好ましくない。
本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物における第3成分は、炭素数2〜6を有する水溶性の有機モノカルボン酸である。これを上記第2成分と合わせて添加することにより、グルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出抑制作用が著しく向上される。
本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物における第3成分としては、炭素数2〜6を有する水溶性の有機モノカルボン酸の中から、薬学的に許容されるものを適宜選択することができる。本明細書において「有機モノカルボン酸」というときは特に言及しない限り、その脱水物を含む意味に用いる。炭素数2〜6を有する水溶性の有機モノカルボン酸としては、具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸乳酸、グルコン酸、またはグルコノデルタラクトンなどが挙げられる。グルコノデルタラクトンは水中で容易にグルコン酸に変化することが知られている。このうち、本発明の第3成分として、好ましくは、酢酸、グルコン酸、およびグルコノデルタラクトンから選ばれる一種または二種以上が挙げられる。
本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物における第3成分として特に好適なものとしては、グルコン酸またはその脱水物であるグルコノデルタラクトン(グルコノ−δ−ラクトンと記載されることもある)が挙げられる。これらの第3成分を用いることにより、グルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出に対する安定性のみならず、皮膚への安全性に優れた良好な希釈用殺菌消毒剤組成物を調製することができる。
ここで、クエン酸や酒石酸等の多価カルボン酸は、通常医薬品pH調整剤等として汎用されているカルボン酸であるが、グルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出抑制作用が低いか、逆に沈殿析出を促進させる恐れがあるため本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物への添加は好ましくない。さらに、クエン酸や酒石酸等の多価カルボン酸の金属塩ナトリウム塩カルシウム塩マグネシウム塩など)の添加も、グルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出を促進する場合があるため、好ましくない。
本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物における第3成分である、炭素数2〜6を有する水溶性の有機モノカルボン酸の含有量は、0.001〜0.5w/v%の範囲から、より好ましくは0.01〜0.2w/v%の範囲から、さらに好ましくは0.02〜0.1w/v%の範囲から選択される。
第3成分の含有量が0.001w/v%より低いと、グルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出抑制作用が低下する傾向にある。逆に0.5w/v%を超えると、最終的に調製される希釈用殺菌消毒剤組成物のpHが低くなり、グルコン酸クロルヘキシジンやその他の成分の分解を促進したり、皮膚刺激性が高まる可能性があるため、好ましくない。
本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物は、前記第1〜第3成分が第4成分である水に溶解した水性液剤である。
本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物における第4成分としては、一般に医薬品用途に用いられる水の中から、適宜選択して使用すればよく、具体的には、常水精製水の他、注射用水などが例示される。ここでいう精製水とは、イオン交換、超ろ過、蒸留、またはそれらの組み合わせによって精製された水である。
その中でも、常水は使用する際の硬度によって、最終的に調製された希釈用殺菌消毒剤組成物の長期保存性が低下したり、希釈後の沈殿析出抑制作用が低くなる場合があるため、精製水または注射用水を用いるのが好ましい。
また、本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物は、前記第1〜第4成分に加えて、さらに第5成分として炭素数1〜3の水溶性アルコールを含有することができる。
本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物における第5成分は、炭素数1〜3の水溶性アルコールのうち、薬学的に許容されるものであればよい。これらは、最終的に調製される希釈用殺菌消毒剤組成物に対して、10w/v%以下、好ましくは5w/v%以下になるように含有させることにより、本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物の殺菌消毒力を低下させることなく、希釈後の沈殿析出抑制作用をさらに向上させることができる。
炭素数1〜3の水溶性アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール2−プロパノールのようなアルコール類の他、プロピレングリコールグリセリンなどのような多価アルコール類が挙げられる。このうち、最終的に調製される希釈用殺菌消毒剤組成物の安全性の面から、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、グリセロール(1,2,3−プロパントリオール)が好ましく、さらにその中でもエタノールまたは2−プロパノールがより好ましく、その中でも特に2−プロパノールが好ましい。
また、本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物には、前記第1〜第5成分の他にも、第2成分および第3成分によるグルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出抑制作用に直接影響を与えない範囲で、グルコン酸クロルヘキシジン以外の殺菌成分安定化剤マクロゴール400、D−マンニトールD−ソルビトール等)などの他、外用剤であることを示すための色素(赤色2号、赤色3号、赤色102号等、厚労令第127号で指定されているタール色素類)や香料などを添加することもできる。
なお、本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物に用いる安定化剤としては、例えば、マクロゴール等が挙げられる。しかし、マクロゴール類のうちでも、凝固点が35℃を超えるものは前記の第2成分および第3成分の作用を低下させたり、保存中に析出する場合がある。したがって、マクロゴールを含有させる場合は、前記第2成分と同様に凝固点が35℃以下のものを使用することが望ましい。また、その添加量は2w/v%以下の範囲にするのが好ましい。
本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物は、一般的に用いられる医薬用水性液剤の調製方法によって調製することができる。各成分の添加方法攪拌条件等については特に限定されないが、本発明の目的である、グルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出抑制作用を十分に発揮させるためには、下記の方法が望ましい。
(1)あらかじめ40〜80℃の範囲で第4成分である水中に第2成分を溶解させる。
(2)40〜60℃の範囲で主成分である第1成分(即ち、グルコン酸クロルヘキシジン)を加えて十分に攪拌する。
(3)次いで20〜35℃の範囲に冷却し、第3成分やその他の成分を加えていく。
また、本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物のpHは、グルコン酸クロルヘキシジンの安定性や生体への安全性を考慮して、通常、4〜7の範囲になるように調製される。
このように、本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物は、特定の非イオン界面活性剤と特定の有機モノカルボン酸を同時に含有させることにより、硬水で希釈した場合のグルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出を抑制することができる。そのため、希釈使用を目的とした殺菌消毒剤組成物として、希釈に用いる水が限定されることなく、使用の目的に応じて幅広く使用することができる。また、その際希釈に用いる水としては、総硬度300mg/L以下、好ましくは200mg/L以下、さらに好ましくは100mg/L以下の水を用いることが好ましい。
本明細書において、総硬度とは永久硬度一時硬度を合わせたものを意味し、水中に含まれる二価金属イオンの含量(mg/L)を炭酸カルシウムの量に換算した数値である。
また、本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物は、使用の目的に応じて、種々の濃度になるように水またはエタノールで希釈して使用すればよい。該希釈用のエタノールは含水エタノールであってもよい。具体的には、例えば、手指・皮膚の消毒、手術部位(手術野)の皮膚の消毒、医療器具の消毒、あるいは皮膚の創傷部位や手術室・病室等の消毒等に使用することができる。その際、グルコン酸クロルヘキシジンの濃度は0.05〜0.5w/v%の範囲となるように適宜希釈して使用すればよい。

次に、本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物を、実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみにより限定されるものではない。

表1に示す組成に従って、グルコン酸クロルヘキシジン5w/v%を含有する、希釈用殺菌消毒剤組成物を調製した。
あらかじめ精製水を用いて10w/v%となるように調整したポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル(日本薬局方ラウロマクロゴール)の水溶液20mLを200mL容ガラスビーカー取った。次に、約50℃に加温した後、そこにグルコン酸クロルヘキシジン液(日本薬局方)25mLを攪拌しながら添加した。次いで、その混合液を約30℃まで冷却した後、あらかじめ調製しておいたグルコノ−δ−ラクトンの25w/v%水溶液0.4mL、および食用赤色2号の0.1w/v%水溶液5mLを加えて十分に攪拌した。そして、最終的に精製水を用いて全量が100mLとなるように調整した。
色素は、外用剤であることを示すためにグルコン酸クロルヘキシジン含有殺菌消毒剤で汎用されているものを使用した。調製後のpHは4.8であった。
なお、調製に用いたグルコン酸クロルヘキシジン液(日本薬局方)は、グルコン酸クロルヘキシジン19.0〜21.0w/v%を含有する。
[実施例2〜22、比較例1〜38]
表1〜12に示す組成に従い、それぞれ液体の希釈用殺菌消毒剤組成物を調製した。
調製方法は実施例1に従った。
各組成において、界面活性剤は10w/v%を含有する水溶液として(ただし、実施例12の場合のみ20w/v%を含有する水溶液として)表中の量を加えた。有機モノカルボン酸およびマクロゴールは25w/v%を含有する水溶液として表中の量を加えた。また、色素(食用赤色2号)は0.1w/v%を含有する水溶液として表中の量を加えた。濃グリセリン、エタノールおよび2−プロパノールは希釈せずに表中の量を加えた。次いで、これらを攪拌、混合し、最終的に精製水を用いて100mLに液量調整することにより調製を行った。
また、各製剤の調製直後性状およびpHの測定結果はそれぞれ表1〜12に示した。
各製剤の調製に用いたポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびその他の界面活性剤のHLB、凝固点は表13および表14の通りである。表中、各界面活性剤に示した括弧内はエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加モル数を示している。表15は調製に用いた有機カルボン酸やその塩を示したものである。
また、グルコノ−δ−ラクトンは食品添加物グレードを用いた。エタノール、2−プロパノール、濃グリセリン、マクロゴール類およびエデト酸二ナトリウム日本薬局方適合品を用いた。色素は食品添加物グレードを用いた。その他の成分についてはナカライテスク(株)製試薬を用いた。さらに全ての実施例および比較例において調製には精製水を用いた。なお、調製に用いたマクロゴール1540の凝固点は46℃、マクロゴール4000の凝固点は56℃であった。















調製の結果、実施例1〜22および比較例1〜5、比較例7〜29はいずれも澄明な液として得られたが、比較例6および比較例30〜38は調製時に白濁してしまい、最終的に澄明な液として得ることができなかった。
以上の結果から、本発明の目的とする、グルコン酸クロルヘキシジンを含有した希釈用殺菌消毒剤組成物を調製する場合には、水溶性の多価カルボン酸もしくはその塩類有機キレート剤アニオン性界面活性剤等はやはり配合が困難であることがわかる。
試験例1]保存試験
調製した各希釈用殺菌消毒剤組成物のうち、澄明な液として得られた実施例1〜22、および比較例1〜5、比較例7〜29について、それぞれ調製した製剤を透明のガラス製サンプル管に入れ、5℃保冷庫に7日間保管した後の性状を調べた。結果を表16および17に示す。


その結果、多価カルボン酸や多価カルボン酸塩を配合した比較例7、9、および高凝固点のポリエチレングリコールを配合した比較例25および比較例26では固形物の析出が認められた。また界面活性剤を添加せずに多価カルボン酸である酒石酸を配合した比較例29では結晶の析出が認められた。
以上の結果から、本発明の目的とする、グルコン酸クロルヘキシジンを含有した希釈用殺菌消毒剤組成物を調製する場合、多価カルボン酸(塩)や、凝固点が高いポリアルキレングリコールは配合が困難であることがわかる。
[試験例2]希釈試験
調製した各希釈用殺菌消毒剤組成物のうち、調製時に澄明な液として得られた実施例1〜22、および比較例1〜5、7〜29について、2種類のモデル常水を用いて希釈試験を行った。
すなわち、ガラス製の透明サンプル管にモデル常水を入れ、そこに各希釈用殺菌消毒剤組成物を50倍希釈となるように添加し、直ちに試験管ミキサーで10秒間攪拌した後、室温下、静置状態で沈殿の析出を経時的に肉眼観察した。試験は各製剤につき5本ずつ実施した。沈殿の析出のスコアは、試験を行った5本のうち、沈殿の析出が認められたサンプル管の本数で表した。
まず、モデル常水1として、総硬度を日本国内の水道水基準の上限(300mg/L以下)に近い約285mg/Lに調整したものを使用した結果を表18〜表21に示す。
なお、使用したモデル常水1には、以下のイオンが含まれている。
カルシウムイオン:74.5mg/L
マグネシウムイオン:24.8mg/L
ナトリウムイオン:78.7mg/L
塩素イオン:158.6mg/L
硫酸イオン:218.5mg/L
硝酸イオン:9.7mg/L
また、前記のモデル常水1を精製水で3倍に希釈して総硬度を約95mg/Lに調整したもの(モデル常水2)を用いて同様に希釈試験を行い、沈殿の析出を観察した。結果を表22〜表25に示す。
表18〜表25の結果から明らかなように、澄明に調製された希釈用殺菌消毒剤組成物のうちでも、第2成分の界面活性剤のみを用いた場合や、第3成分の有機モノカルボン酸のみを用いた場合、あるいは第2成分である界面活性剤に第3成分以外のカルボン酸またはその塩を組み合わせた場合には沈殿析出を十分に抑制することができなかった。それに対して、本発明の各希釈用殺菌消毒剤組成物においては、第2成分である界面活性剤および第3成分である有機モノカルボン酸を同時に用いた場合は、いずれの例においても沈殿析出抑制作用が著しく向上した。
以上の結果は、本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物が、水道水のような硬度を有する水で希釈した場合のグルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出に対して、高い安定性を有することを証明するものである。








[試験例3]pH安定性試験
次に、実施例1、実施例5、実施例7および比較例1、比較例3の各製剤について、それぞれポリエチレン製の遮光瓶に入れて密栓し、40℃および50℃保存下におけるpH安定性試験を行った。結果を表26、27に示す。
表26、27から明らかなように、実施例1、実施例5および実施例7では、試験期間中のpH値の変化がほとんどなく、安定であった。それに対し、比較例1および比較例3では、試験期間中のpH値の変化がいずれの条件においても実施例と比較して大きかった。これらの事実から、本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物は、製剤としても安定であることがわかる。


前述の表16〜表27の結果から明らかなように、本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物は、総硬度90〜290mg/Lの水で希釈した場合でもグルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出に対して高い安定性を有しており、しかも製剤としての安定性に優れたものであることがわかる。

本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物は、各種のイオンを含有する水で希釈した場合でもグルコン酸クロルヘキシジンの沈殿析出に対して高い安定性を示すと共に、製剤安定性に優れている。また、本発明の希釈用殺菌消毒剤組成物は、環境ホルモン様物質やその原因物質を含まない点で有利である。
本出願は、日本で出願された特願2003−116611を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

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