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課題・解決手段

本発明は、任意の微小な領域のみを構造制御する全く新しい薄膜の製造方法を提供することを目的とする。製膜途中または製膜後の膜全体または膜内の任意の部分について、その膜温度を非晶部のガラス転移温度以上に設定した上で、鋭利な先端形状を有する部材を用いて力を加えることにより、膜の構造を制御するようにした。本製造方法を実現する装置として、原子間力顕微鏡を用いることもできる。

概要

背景

半導体メモリ光メモリなど、メモリ分野および携帯電話等の小型電子機器分野を中心に高密度化高集積化が要求されている。半導体メモリではチップ内加工サイズフォトリソグラフィ技術の加工限界に近づいているため、それに代わるより高精細で高精度な新しい加工技術が望まれている。このようなメモリ部材高精細化に伴い、当然のことながらその駆動装置読み出しおよび書き込み用ヘッドなどの周辺装置部品、部材にも高集積化が要求されてくる。しかも、高精細化が進むにつれ、これまでのように大面積で作製した機能性の部材を切り出し、加工して部品上に搭載することは困難になってくる。
これらの技術に代わって、広い面積の部材の任意の微細な範囲を加工処理することにより新しい構造を構築する技術が注目されている。これにより、要求される機能を必要な部位だけに発現させることが可能になってくる。本発明はこのような高精細化、高集積化に伴って必要となる非常に薄い膜の非常に微細な任意の位置の構造を制御および構築して、必要な機能を発現させる技術に関するものである。
近年、有機材料無機材料を用いて機能性の薄膜が数多く開発され、実用に供されている。一例を挙げると、有機材料では光学的な異方性を有する高分子または低分子フィルム誘電的および光学的な異方性を有する液晶性高分子液晶オリゴマーフィルムおよび低分子液晶と高分子の複合フィルム、さらには強誘電性高分子フィルムなどが知られている。一方、無機材料においても導電性強誘電性金属酸化物薄膜などが開発されている。これらの機能性薄膜は、有機材料においてはその多くが、スピナーバーコータースリットダイなどの塗布装置を用いて溶液基板上に薄く塗布した後、溶媒蒸発させる、いわゆる湿式製膜法により作製されている。また、これらの有機材料を基板上に直接蒸着またはスパッタリングする乾式製膜法も用いられている。また、無機材料においては上記の蒸着法のほか、ゾルゲル法による製膜も広く行われている。これらの薄膜は製膜途中または製膜後にその構造を制御することにより初めて上記のような機能を発現するか、もしくはその機能が向上する場合が多い。
薄膜の構造制御は、一般に、予め基板表面に微細な構造を付与した後に基板上に製膜することによりエピタキシャル膜構造を制御する方法や膜に機械的な力を加えることにより膜の微細構造を制御する方法が取られている。最もよく知られる前者の例としては低分子液晶膜のための配向処理が挙げられる。これは予め表面に微細な溝状の構造などの凹凸構造を形成した基板上に液晶膜を形成することにより液晶分子溝構造に沿って配列させる技術である。また、後者の例としては高分子フィルム延伸処理が広く用いられている。こちらは高分子フィルムを1つの軸方向または2つの軸方向に力学的な力を加えて2〜5倍程度に引き伸ばすことにより力の方向に分子鎖を揃える技術である。延伸処理により分子鎖の方向が揃うため、膜の結晶化度を向上することができる。また、フィルム内の結晶を大きく成長させ、その方位を揃えることも可能である。
上記のような手法を用いてフィルム内に含まれる分子や微結晶の方向を制御することにより下記のような機能を付与することができる。まず、屈折率に異方性を有する分子を一方向に揃えて配列させた場合には屈折率に異方性を有する膜を得ることができる。さらに進んで、この様な分子を各位置において精細に制御された方向に配列させることにより、光の波面を精細に制御できる光学位相フィルムを得ることができる。この様な光学位相フィルムはディスプレイの分野では視野角を拡大するための位相フィルタとして無くてはならないものである。また、光通信用フィルタ光演算処理装置に用いられるフィルタに非常に有用である。
膜の構造制御はフィルムの力学的な性質も制御することができる。例えば、一般に高分子の分子鎖を一方向に揃えて配列した場合、分子鎖方向の弾性率はそれに直交する方向よりも高くなる。従って、延伸処理などによって分子鎖の方向を揃えた場合、弾性率に異方性を有する膜を得ることができる。また、一般には弾性率の異方性に伴い音速も異方性となる。これらの性質は各種構造体表面波フィルタに応用することができる。
上記の様に膜の構造制御は非常に有用であり、その応用範囲も広い。しかし、上記の手法はいずれもバルク材料における構造制御方法である。例えば、高分子フィルムの延伸処理においては膜厚に対する膜厚ムラの割合や張力均一性が大きく影響するため、薄膜では膜が破壊され易く、現時点では膜厚1000nm以下の膜には適用できない。また、電界磁界による構造制御においては、従来の手法では薄膜の膜面全体を一様に構造制御することは可能であるが、膜面内の任意の位置における極微小な領域のみの構造を制御することは困難である。低分子液晶のための配向処理においても一般には基板の広い面積に均一な凹凸構造が形成されている。一部にはフォトリソグラフィ技術を用いて基板表面の複数の領域にそれぞれ異なる凹凸形状を形成することも行われているが、フォトリソグラフィで形成する限りは配向処理される領域の大きさとして1μm2以下は困難である。

概要

本発明は、任意の微小な領域のみを構造制御する全く新しい薄膜の製造方法を提供することを目的とする。製膜途中または製膜後の膜全体または膜内の任意の部分について、その膜温度を非晶部のガラス転移温度以上に設定した上で、鋭利な先端形状を有する部材を用いて力を加えることにより、膜の構造を制御するようにした。本製造方法を実現する装置として、原子間力顕微鏡を用いることもできる。

目的

本発明は、メモリ分野、携帯電話等の小型電子機器分野など高密度化、高集積化が要求される分野で用いられる機能性の部品、部材を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
3件

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請求項1

製膜途中または製膜後の膜全体または膜内の任意の部分に、鋭利な先端形状を有する部材を用いて力を加えることにより、膜の構造を制御するようにした薄膜の製造方法。

請求項2

製膜途中または製膜後の膜全体または膜内の任意の部分について、その膜温度を非晶部のガラス転移温度以上に設定した上で、鋭利な先端形状を有する部材を用いて力を加えることにより、膜の構造を制御するようにした薄膜の製造方法。

請求項3

膜に加える力が、鋭利な先端形状を有する部材による力のみであることを特徴とする、請求の範囲1又は2に記載の薄膜の製造方法。

請求項4

膜に加える力が、鋭利な先端形状を有する部材による力に加えて、電界印加することによる電気的な力及び磁界を印加することによる磁気的な力のいずれか一方又は両方を作用させるものであることを特徴とする、請求の範囲1又は2に記載の薄膜の製造方法。

請求項5

薄膜を基板上に形成することを特徴とする、請求の範囲1〜4のいずれかに記載の薄膜の製造方法。

請求項6

鋭利な先端形状を有する部材として、原子間力顕微鏡を用いることを特徴とする、請求の範囲1〜5のいずれかに記載の薄膜の製造方法。

請求項7

鋭利な先端形状を有する部材を複数設置し、膜の数カ所を並列に処理するようにした請求の範囲1〜6のいずれかに記載の薄膜の製造方法。

請求項8

膜を多層とし、全部の層又は一部の層に請求の範囲1〜7のいずれかに記載の薄膜の製造方法を施すようにしたことを特徴とする、多層薄膜の製造方法。

請求項9

製膜途中または製膜後の膜全体または膜内の任意の部分に、鋭利な先端形状を有する部材を用いて力を加えられることにより、構造が制御された薄膜。

請求項10

膜を構成する結晶結晶構造が制御されていることを特徴とする、請求の範囲9に記載の薄膜。

請求項11

膜を構成する結晶の配列方向が制御されていることを特徴とする、請求の範囲9に記載の薄膜。

請求項12

結晶内の分子の配列方向が制御されていることを特徴とする、請求の範囲9に記載の薄膜。

請求項13

膜を構成する結晶が請求の範囲10、11及び12に記載の特徴のうち2つ又は3つの組み合わせであることを特徴とする請求の範囲9に記載の薄膜。

請求項14

膜を構成する結晶について請求の範囲10ないし12に記載された特徴のうち少なくとも1つが制御された領域を少なくとも2つ以上有することを特徴とする請求の範囲9に記載の薄膜。

請求項15

膜が基板上に形成されていることを特徴とする、請求の範囲9〜14のいずれかに記載の薄膜。

請求項16

膜が多層で構成されており、その全部の層又は一部の層に請求の範囲1〜8のいずれかに記載の薄膜の製造方法が施されることにより、請求の範囲9〜15のいずれかに記載の構造が制御されていることを特徴とする、多層薄膜。

技術分野

本発明は、メモリ分野、携帯電話等の小型電子機器分野など高密度化高集積化が要求される分野で用いられる機能性の部品、部材を提供するための薄膜の構造を制御するようにした薄膜の製造方法に関する。また、構造を制御して製造された薄膜に関する。

背景技術

半導体メモリ光メモリなど、メモリ分野および携帯電話等の小型電子機器分野を中心に高密度化、高集積化が要求されている。半導体メモリではチップ内加工サイズフォトリソグラフィ技術の加工限界に近づいているため、それに代わるより高精細で高精度な新しい加工技術が望まれている。このようなメモリ部材高精細化に伴い、当然のことながらその駆動装置読み出しおよび書き込み用ヘッドなどの周辺装置や部品、部材にも高集積化が要求されてくる。しかも、高精細化が進むにつれ、これまでのように大面積で作製した機能性の部材を切り出し、加工して部品上に搭載することは困難になってくる。
これらの技術に代わって、広い面積の部材の任意の微細な範囲を加工処理することにより新しい構造を構築する技術が注目されている。これにより、要求される機能を必要な部位だけに発現させることが可能になってくる。本発明はこのような高精細化、高集積化に伴って必要となる非常に薄い膜の非常に微細な任意の位置の構造を制御および構築して、必要な機能を発現させる技術に関するものである。
近年、有機材料無機材料を用いて機能性の薄膜が数多く開発され、実用に供されている。一例を挙げると、有機材料では光学的な異方性を有する高分子または低分子フィルム誘電的および光学的な異方性を有する液晶性高分子液晶オリゴマーフィルムおよび低分子液晶と高分子の複合フィルム、さらには強誘電性高分子フィルムなどが知られている。一方、無機材料においても導電性強誘電性金属酸化物薄膜などが開発されている。これらの機能性薄膜は、有機材料においてはその多くが、スピナーバーコータースリットダイなどの塗布装置を用いて溶液基板上に薄く塗布した後、溶媒蒸発させる、いわゆる湿式製膜法により作製されている。また、これらの有機材料を基板上に直接蒸着またはスパッタリングする乾式製膜法も用いられている。また、無機材料においては上記の蒸着法のほか、ゾルゲル法による製膜も広く行われている。これらの薄膜は製膜途中または製膜後にその構造を制御することにより初めて上記のような機能を発現するか、もしくはその機能が向上する場合が多い。
薄膜の構造制御は、一般に、予め基板表面に微細な構造を付与した後に基板上に製膜することによりエピタキシャル膜構造を制御する方法や膜に機械的な力を加えることにより膜の微細構造を制御する方法が取られている。最もよく知られる前者の例としては低分子液晶膜のための配向処理が挙げられる。これは予め表面に微細な溝状の構造などの凹凸構造を形成した基板上に液晶膜を形成することにより液晶分子溝構造に沿って配列させる技術である。また、後者の例としては高分子フィルム延伸処理が広く用いられている。こちらは高分子フィルムを1つの軸方向または2つの軸方向に力学的な力を加えて2〜5倍程度に引き伸ばすことにより力の方向に分子鎖を揃える技術である。延伸処理により分子鎖の方向が揃うため、膜の結晶化度を向上することができる。また、フィルム内の結晶を大きく成長させ、その方位を揃えることも可能である。
上記のような手法を用いてフィルム内に含まれる分子や微結晶の方向を制御することにより下記のような機能を付与することができる。まず、屈折率に異方性を有する分子を一方向に揃えて配列させた場合には屈折率に異方性を有する膜を得ることができる。さらに進んで、この様な分子を各位置において精細に制御された方向に配列させることにより、光の波面を精細に制御できる光学位相フィルムを得ることができる。この様な光学位相フィルムはディスプレイの分野では視野角を拡大するための位相フィルタとして無くてはならないものである。また、光通信用フィルタ光演算処理装置に用いられるフィルタに非常に有用である。
膜の構造制御はフィルムの力学的な性質も制御することができる。例えば、一般に高分子の分子鎖を一方向に揃えて配列した場合、分子鎖方向の弾性率はそれに直交する方向よりも高くなる。従って、延伸処理などによって分子鎖の方向を揃えた場合、弾性率に異方性を有する膜を得ることができる。また、一般には弾性率の異方性に伴い音速も異方性となる。これらの性質は各種構造体表面波フィルタに応用することができる。
上記の様に膜の構造制御は非常に有用であり、その応用範囲も広い。しかし、上記の手法はいずれもバルク材料における構造制御方法である。例えば、高分子フィルムの延伸処理においては膜厚に対する膜厚ムラの割合や張力均一性が大きく影響するため、薄膜では膜が破壊され易く、現時点では膜厚1000nm以下の膜には適用できない。また、電界磁界による構造制御においては、従来の手法では薄膜の膜面全体を一様に構造制御することは可能であるが、膜面内の任意の位置における極微小な領域のみの構造を制御することは困難である。低分子液晶のための配向処理においても一般には基板の広い面積に均一な凹凸構造が形成されている。一部にはフォトリソグラフィ技術を用いて基板表面の複数の領域にそれぞれ異なる凹凸形状を形成することも行われているが、フォトリソグラフィで形成する限りは配向処理される領域の大きさとして1μm2以下は困難である。

本発明は鋭利な先端形状を有する部材を用いることにより上記のような従来技術の限界打ち破り、任意の微小な領域のみを構造制御する全く新しい薄膜の製造方法を提供することを課題とする。
本発明は上記のような技術的背景に鑑み考案されたまったく新しい微細加工技術である。
すなわち、本発明は、具体的には、
(1)製膜途中または製膜後の膜全体または膜内の任意の部分に、鋭利な先端形状を有する部材を用いて力を加えることにより、膜の構造を制御するようにした薄膜の製造方法。
(2)製膜途中または製膜後の膜全体または膜内の任意の部分について、その膜温度を非晶部のガラス転移温度以上に設定した上で、鋭利な先端形状を有する部材を用いて力を加えることにより、膜の構造を制御するようにした薄膜の製造方法。
(3)膜に加える力が、鋭利な先端形状を有する部材による力のみであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の薄膜の製造方法。
(4)膜に加える力が、鋭利な先端形状を有する部材による力に加えて、電界を印加することによる電気的な力及び磁界を印加することによる磁気的な力のいずれか一方又は両方を作用させるものであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の薄膜の製造方法。
(5)薄膜を基板上に形成することを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の薄膜の製造方法。
(6)鋭利な先端形状を有する部材として、原子間力顕微鏡探針を用いることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の薄膜の製造方法。
(7)鋭利な先端形状を有する部材を複数設置し、膜の数カ所を並列に処理するようにした(1)〜(6)のいずれかに記載の薄膜の製造方法。
(8)膜を多層とし、全部の層又は一部の層に(1)〜(7)のいずれかに記載の薄膜の製造方法を施すようにしたことを特徴とする、多層薄膜の製造方法。
(9)製膜途中または製膜後の膜全体または膜内の任意の部分に、鋭利な先端形状を有する部材を用いて力を加えられることにより、構造が制御された薄膜。
(10)膜を構成する結晶の結晶構造が制御されていることを特徴とする、(9)に記載の薄膜。
(11)膜を構成する結晶の配列方向が制御されていることを特徴とする、(9)に記載の薄膜。
(12)結晶内の分子の配列方向が制御されていることを特徴とする、(9)に記載の薄膜。
(13)膜を構成する結晶が(10)、(11)及び(12)に記載の特徴のうち2つ又は3つの組み合わせであることを特徴とする(9)に記載の薄膜。
(14)膜を構成する結晶について(10)ないし(12)に記載された特徴のうち少なくとも1つを制御された領域を少なくとも2つ以上有することを特徴とする(9)に記載の薄膜。
(15)膜が基板上に形成されていることを特徴とする、(9)〜(14)のいずれかに記載の薄膜。
(16)膜が多層で構成されており、その全部の層又は一部の層に(1)〜(8)のいずれかに記載の薄膜の製造方法が施されることにより、(9)〜(15)のいずれかに記載の構造が制御されていることを特徴とする、多層薄膜。
以下、本発明の技術的な内容をより詳細に説明する。説明の簡便化を図る目的から、本発明の「鋭利な先端形状を有する部材」として、原子間力顕微鏡の探針を例に挙げ、ここでは一般的な原子間力顕微鏡を用いた場合における本発明の技術を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
ところで、原子間力顕微鏡を用いて薄膜表面を走査することにより、薄膜は顕微鏡の探針を介して膜面に垂直な方向と探針の走査方向に力学的な力を受ける。これら2つの成分の力の大きさは原子間力顕微鏡の種類および動作モードにより異なるが、本発明はこの力を利用して薄膜の構造を制御する技術である。具体的には、原子間力顕微鏡の探針を用いて薄膜の表面に垂直方向に適切な大きさの力を加えながら膜面方向に適切な速度で走査することにより走査方向にも適切な力を加えることができる。これらの力を利用して薄膜を形成する微結晶または分子そのものを探針の走査方向に規則正しく配列させる技術である。
本発明において、通常の原子間力顕微鏡の探針を用いて微結晶または分子を配列させる場合、膜厚1000nm以下の薄膜であってもその構造制御が可能である。また、構造制御を行う微小領域の面積として、小さいものでは1nm2の領域刻みでの制御を行うことが可能である。また、大きな領域としては、1つの探針を用いて1回に走査できる面積はせいぜい104μm2程度であるが、複数回に分けて走査したり、複数の探針を用いて同時に走査することにより数mm2以上の大きな領域における制御も可能になる。また、複数の領域間の距離や位置も上記の1回に走査できる範囲内の領域においては10nm以内の精度で位置決めすることができる。また、本発明は膜厚1000nm以下の薄膜に限らず、膜厚1000nm以上、より厚くは膜厚10μm以上の膜の構造を制御することも可能である。さらに、2次元の加工に留まらず、以下に示す方法により3次元における構造制御も行うことができる。即ち、後述の手段により基板上に1層の薄膜を形成し、本発明の技術を用いて構造制御を行った後、その上に新しく1層の薄膜を重ねて形成し、本発明の技術を用いて構造制御を行う。この工程を複数回繰り返すことにより3次元における構造制御も行うことができる。なお、このような場合、積層する薄膜は同種材料から構成されるものであっても異種材料から構成されるものであってもよい。さらに、各薄膜の膜厚も任意に選択することができる。
先に既に述べたように、分子または微結晶を規則正しく配列させることにより光学的または誘電的または力学的な性質を制御し、これらの特性に異方性を発現させることが可能である。しかも、本発明の技術を用いることにより、上記の様に1つの薄膜内に複数の微小な領域を設置でき、しかも、それらの領域における光学的または誘電的または力学的な性質をそれぞれ独立に制御することが可能である。
この技術では原子間力顕微鏡を用いることにより薄膜内の任意の位置において任意の大きさの微小領域に存在する分子や微結晶を走査方向に規則的に配列させることができる。これらの微小領域は1つの薄膜内に複数形成させることも可能である。また、原子間力顕微鏡の走査方向は任意に選択できるため、上記の複数の領域における分子または微結晶の配列方向をそれぞれ独立に選択することも可能である。従って、本発明の技術を用いることにより1つの薄膜内に複数の微小な機能性の領域を形成することができる。しかも、それらの領域の特性を独立に制御することが可能である。従って、本発明の技術を用いることにより、光学的性質または誘電的性質または力学的性質において異なる特性を有する複数の微小領域を1つの薄膜内に集積化することが可能になる。
本発明の技術を用いて構造を制御できる薄膜は有機材料で構成されていても無機材料で構成されていても良い。
無機材料としては金属薄膜および、金属や金属酸化物を含むセラミック薄膜等が本発明の技術に適した材料として挙げることができるが、これ以外の材料で形成された薄膜を用いることは可能であり、上記の材料に限定されない。
無機材料から構成される薄膜を形成する方法としては、例えば基板上に直接蒸着またはスパッタリングする乾式製膜法等、一般的製膜方法を使用することができる。ただし、セラミック材料の場合はゾルゲル法による湿式製膜も行われている。
このように製膜された膜は非晶性の材料ではいわゆるアモルファスの形態をとる。また、結晶性の材料の場合は製膜された膜が多数の微結晶で構成される場合がある。さらに、アモルファス状態の中に微結晶が点在している場合もある。これらのいずれの状態の膜に対しても本発明の技術を適用することができる。
有機材料からなる薄膜の場合は高分子、オリゴマー、低分子のいずれで構成されていてもよい。
本発明の技術を用いて構造制御できる高分子材料としては以下に示すものが挙げられる。熱可塑性の高分子ではポリエチレン樹脂ポリプロピレン樹脂ポリオレフィン樹脂である4−メチルペンテン−1樹脂ポリブテン−1樹脂、ポリビニルアルコールエチレンビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ポリアクリロニトリルポリブタジエンポリイソプレンポリアミド樹脂ポリエチレンテレフタレートポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂ポリ四フッ化エチレンポリ三フッ化エチレン(PTrFE)、フッ化ビニリデンPVDF)、この両者の共重合体(P(VDF−TrFE))に代表されるフッ素系樹脂などを用いることができる。これらはいずれも代表的な結晶性の熱可塑性樹脂である。また、非晶性の熱可塑性樹脂としてはポリ塩化ビニルポリ塩化ビニリデンポリアクリレートポリメタクリレートポリカーボネートポリスチレンなどを用いることができる。
本発明の技術を用いて構造制御できる熱硬化性の高分子としてはフェノール樹脂尿素樹脂メラミン樹脂アルキド樹脂アクリル樹脂エポキシ樹脂シリコーン樹脂などが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂の場合には、溶液製膜後、硬化前の状態において構造制御を行い、その後で熱硬化することで分子が高い規則性で配列された高分子膜を実現することが可能になる。
以下に示すような耐熱性樹脂も本発明の技術を用いて構造制御することができる。ポリイミド樹脂アラミド樹脂として知られる全芳香性ポリアミドポリフェニレンエーテルポリフェニレンスルフィドポリアリレート、ポリ−p−フェニレン、ポリ−p−キシレン、ポリ−p−フェニレンビニレンポリキノリンなどが挙げられる。
また、導電性の高分子としては、例えばポリピロールポリチオフェンポリアニリンポリアリレンビニレンポリチエニレンビニレンポリアセンポリアセチレンポリフェニレンジアミンポリアミノフェノールポリビニルカルバゾール、高分子ビオローゲンポリイオンコンプレックスTTF−TCNQなどの電荷移動錯体、およびこれらの誘導体等が挙げられ、このような導電性高分子材料から構成される薄膜についても、本発明による構造制御が可能である。
これらの構造制御された導電性高分子材料は、例えばエレクトロルミネッセンス素子(EL)の発光源や、タッチパネル対向導電膜、さらに液晶ディスプレー(LCD)、プラズマディスプレー(PDP)、電界放出型素子(FED)、タッチパネル、エレクトロクロミック素子ブラウン管(CRT)などのディスプレー装置に用いられる部材、また光記録メディア光磁気記録メディア、相変態記録メディア磁気記録メディアなどの記録媒体として様々な分野に利用可能であり、産業上の利用価値は非常高い。
以上、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、耐熱性樹脂、導電性有機高分子などの代表的な例を挙げたが、本発明の技術が適応可能な高分子材料は上記に限られたものではない。
さらに、本発明の技術を適用する薄膜は、高分子液晶、オリゴマー液晶、低分子液晶などの液晶性を示す材料で構成されていても良い。液晶材料としてはサーモトロピック液晶であっても、またリオトロピック液晶であっても良い。サーモトロピック液晶はさらにネマチック液晶スメクチック液晶コレステリック液晶に分かれるが、このいずれであっても良い。高分子液晶やオリゴマータイプの液晶には主鎖に剛直な芳香族環メソゲン基を有する主鎖型液晶と側鎖にこの剛直な基を有する側鎖型液晶があるが、いずれのタイプの液晶にも本発明の技術を適用可能である。特に主鎖型液晶からなる薄膜の場合、液晶の主鎖方向と側鎖方向とで硬さ等の物理的特性について大きな異方性が付与され、薄膜内にナノアクチュエーター等の微小な機能性素子を構成することも可能となる。
上述のごとき、有機材料から構成される薄膜の形成方法としては特に限定されないが、例えばこれらの膜材料を溶媒に溶かして基板上にスピナー、バーコーター、スリットダイなどの塗布装置を用いて薄く塗布した後、溶媒を蒸発させる方法や、スプレーコートディッピング法等の湿式製膜法等を挙げることができる。また、これらの有機材料を基板上に直接蒸着、スパッタリング、CVD、PVD等の乾式製膜法を用いて製膜しても良い。さらに、必要に応じて膜をエッチングパターニングをしたり、他材料からなる薄膜を積層してもよい。
このようにして、製膜された膜は非晶性の材料ではいわゆるアモルファスの形態をとる。また、結晶性の材料の場合は製膜された膜が多数の微結晶で構成される場合がある。さらに、アモルファス状態の中に微結晶が点在している場合もある。これらのいずれの状態の膜に対しても本発明の技術を適用することができる。
本発明は膜表面を原子間力顕微鏡の探針で走査することにより膜が受ける厚み方向および走査方向の力を利用して膜の微細構造を変化させているのは前述の通りである。この場合、非晶性の材料ではこの力を受けることにより分子が探針の走査方向に配列する。一方、結晶性の材料の場合は異なる3通りの配列現象が起こる。その1つは非晶性の材料と同様に結晶内の分子が走査方向に配列する現象である。この場合、分子の再配列により新しくできた結晶の結晶系は走査前と変わらず、その方向のみが変化する。2つ目は、膜が多結晶体の場合に発現する現象であるが、結晶内の分子鎖はそのままで、原子間力顕微鏡の走査により各微結晶が回転して走査方向に配列する現象である。この場合も、当然のことながら結晶系は変化しない。多結晶体において上記のどちらの配列が優先的に発現するかは結晶内の分子と微結晶のどちらがより動き易い状態にあるかで決まってくる。結晶内の分子に比べて結晶の方がより低いエネルギーで動き易い場合にはより低い温度で原子間力顕微鏡の探針を走査することで各微結晶が回転して走査方向に各微結晶を配列させることができる。この場合は、さらに高い温度で走査することにより結晶内の分子を走査方向に再配列することができる。これにより、走査前に存在した結晶は消失することになる。さらに、3つ目は、原子間力顕微鏡で走査することにより、結晶内の分子鎖が走査方向に配列するとともに、その結晶系も走査前とは変化する現象である。
原子間力顕微鏡の探針が及ぼす力によって膜を構成する分子または微結晶体が走査方向に配列するためには、これらが動き易いエネルギー状態になくてはならない。そのための補助的な手段として、膜の温度を室温以上に加温することが有効である。非晶性の材料の場合はその分子が熱運動を始める温度、即ちガラス転移温度(Tg)以上に加熱することが有効である。一方、結晶性の材料の場合には分子鎖を走査方向に配列させる以外に微結晶体を走査方向に配列させることもできる。この場合は探針の走査によって結晶内の分子が動いてしまっては困る。そのため、分子を配列させる場合に比べて低温で走査することが好ましい。具体的には、微結晶と微結晶の間に存在する非晶部のガラス転移温度以上であって、しかも結晶の融点(Tm)より十分低い温度に設定することが有効である。一方、結晶部の分子を配列したい場合には結晶の融点付近の温度に加熱することが有効である。
膜を形成する分子がアミノ基、アンモニウム基水酸基、などの極性基やFやClなどのハロゲン元素を含む場合には分子または微結晶を探針走査で動き易い状態にするための手段として膜に電界を印加することが有効である。中でも低分子の液晶では分子の短軸方向と長軸方向の誘電率に異方性を有するものが多い。そのため、電界を加えることによりその方向性を有効に揃えることが可能である。また、強誘電体においては抗電界(Ec)以上の電界を加えることにより膜内に含まれる自発分極の方向が反転するため、電界印加の効果は非常に大きい。
有機の強誘電体としてはフッ化ビニリデンポリマー(PVDF)およびオリゴマー、フッ化ビニリデンと三フッ化エチレンのランダム共重合体(P(VDF−TrFE))に代表されるフッ化ビニリデン共重合体ナイロン7ナイロン9ナイロン11ナイロン13などの奇数ナイロン、シアン化ビニリデンと酢酸ビニル交互共重合体等が知られるが、これらの材料に対しては探針走査と同時に電界を印加することが非常に有効である。また、液晶材料においてもカイラルC*を有するコレステリック液晶に代表される強誘電性液晶に対しては特に電界印加の効果は大きい。これらの有機強誘電体はいずれも規則不規則型の強誘電体である。無機の強誘電体としては規則不規則型の強誘電体であるリン酸水素カリウムロッシェル塩硫酸グリシン硝酸ナトリウムチオ尿素などの無機結晶に対して探針走査と同時に電界を印加することが非常に有効である。また、無機の変位型強誘電体としてはチタン酸バリウム結晶チタン酸ジルコニウムチタン酸鉛などで構成されるセラミック強誘電体に対して電界印加の併用が有効である。ただし、電界印加の併用が有効な強誘電体材料は上記のものに限られるものではなく、強誘電体材料全般に対して効力を有する。
印加する電界は直流電界交流電界のいずれも有効である。加える電界の大きさは0V以上で効果があるが、強誘電体の場合には抗電界(Ec)以上の電界を印加することで特に大きな効果が期待できる。交流電界の場合もそのピーク値が抗電界以上である場合に特に大きな効果が期待できる。膜に垂直な電界は導電性の基板上に膜を形成し、原子間力顕微鏡の探針と導電性基板間に電圧を加えることで実現できる。また、膜面に平行な電界は予め膜表面に独立した1つ以上の電極を形成しておき、探針とそれらの電極の間に電圧を加えることで実現できる。また、2本以上の独立した探針を有する原子間力顕微鏡を用いて探針間に電圧を加えることによっても実現することができる。これらの場合、原子間力顕微鏡の探針として導電性の探針を用いる必要がある。導電性探針としては、鋭利な先端を有するSi針の表面にAu、Pt、Ag、Rhなどの導電性の高い金属を堆積したもの、針を形成するSi材料に多量のPなどの不純物ドーピングしたものなどを用いることができる。
なお、強誘電体材料から構成される薄膜の応用としては、スピーカマイクロフォン超音波トランスデューサ圧力計、光スイッチ、キャパシター光メモリー、強誘電性メモリー光導波路、表面波フィルター、赤外線検知器光変調素子などを挙げることができるが、本発明の方法を用いて構造制御された強誘電体薄膜をこれらの分野に適用することによって、その性能をさらに向上させることができる。
膜を形成する分子が磁気双極子を有する場合には分子または微結晶を探針走査で動き易い状態にするための手段として膜に磁界を印加することが有効である。この場合も強磁性体においては抗磁界以上の磁界を加えることにより膜内に含まれる磁性の方向が反転するため、磁界印加の効果は大きい。膜に磁界を印加する手段として、ひとつは磁化された探針を用いることで膜に磁場を印加することができる。すなわち、Fe、Ni、Coなどの磁性金属やその化合物を探針先端にスパッタリングし、さらに磁化処理を施した探針を用いて磁場を印加することができる。この方法の場合、膜には常に磁界が印加されることになる。また、もうひとつの手段として、探針の先端近傍電磁コイルを設置し、コイル電流を流すことにより探針の先端およびその近傍の膜に磁場を印加することができる。後者の場合は目的に応じて磁界をON、OFFすることが可能である。
有機材料の場合、ベンゼン環π電子が磁気双極子を形成し易いため、ベンゼン環を多く含む剛直な分子に対しては探針走査と同時に磁界を印加することが有効である。ベンゼン環を多く含む剛直な分子としては前述の耐熱性高分子である全芳香性ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリ−p−フェニレン、ポリ−p−キシレン、ポリ−p−フェニレンビニレン、ポリキノリンに対しては特に有効である。液晶材料では多くの場合、剛直構造成分として芳香族環を含むため、高分子液晶、低分子液晶ともに磁界を印加の併用が有効である。また、無機の磁性材料では、Fe、Ni、Coなどの金属単体およびその酸化物、また、これらの合金類からなる強磁性体に対して特に有効である。さらに、強誘電体において抗電界以上の電界印加の併用が有効であると同様に、強磁性体においては抗磁界以上の磁界の印加の併用が非常に有効である。
本発明の方法により製造される薄膜を支持する基板としては特に限定されず、その材質、形状、構造、大きさ等について、所望の用途および機能などに応じて、適宜選択することができる。例えば、機能性基板として、透光性基板遮光性基板、導電性基板、半導体基板絶縁性基板ガスバリア性基板等が挙げられ、具体的には、ガラス基板セラミックス基板、有機または無機半導体基板、グラファイト基板、有機導電性基板、金属基板および樹脂製フィルム等が挙げられる。
膜表面の走査に用いる原子間力顕微鏡の動作モードは、探針が直接膜表面に接触しないか、または間欠的に接触するダイナミックモードであっても、探針が常に膜表面に接触しているコンタクトモードでもよい。これらの動作モードの中でコンタクトモードは膜に垂直方向の力および走査方向の力を与えることが可能であり、最も膜に及ぼす影響が大きい。また、ダイナミックモードでは探針が膜に及ぼす垂直方向の力は間欠的であり、走査方向の力は小さい。上記のいずれのモードを用いるかは膜を構成する材料の強度と構成する分子の動き易さを考慮して最適なものを選択する必要がある。因みに有機材料においては、高分子材料は一般に強度が高く、さらに動きにくいためコンタクトモードが適している場合が多い。それに対して、低分子材料ではダイナミックモードが適する場合もある。
コンタクトモードおよびダイナミックモードで探針を動作させる場合、用いるカンチレバー(探針の支持体)の硬さが膜を構成する分子や微結晶の配列結果および膜の損傷に大きく影響する。強度的に弱い材料で膜が構成される場合には、特にやわらかいカンチレバーを用いて膜の損傷を防ぐ必要がある。また、高分子膜であっても融点近傍の高温で走査する場合にはできるだけやわらかいカンチレバーを用いる必要がある。具体的には、有機材料の場合には、ダイナミックモードではバネ定数40N/m以下のカンチレバーが好ましく、コンタクトモードではバネ定数4N/m以下のカンチレバーが好ましい。さらに、コンタクトモードの場合にはバネ定数0.4N/m以下の軟らかいカンチレバーがより好ましい。一方、無機材料の場合にはカンチレバーの硬さには特に拘らないが、バネ定数40N/m以下のカンチレバーが好ましい。
さらに、膜を構成する材料が高分子である場合、前述のように、非晶性高分子では探針を走査することで分子鎖を走査方向に配列させることができる。走査時の膜温度はガラス転移温度以上であることが好ましい場合が多いが、最も良好に配列できる温度は膜を構成する材料によって異なる。主に膜強度および分子の動き易さの温度特性によって決まってくる。また、膜が結晶性高分子の多数の微結晶で構成されている場合に、その微結晶を走査方向に配列させるためには高分子膜の非晶部のガラス転移温度以上の温度でしかも結晶部の融点より十分低い温度域で走査することが好ましい場合が多いが、前述の非晶性高分子の場合と同様、最も良好に配列できる温度は膜を構成する材料によって異なる。その材料における最適温度で走査することにより微結晶を良好に配列させることが可能である。この場合はダイナミックモードでは微結晶の配列は困難な場合が多く、コンタクトモードで動作させることが最も好ましい。一方、結晶性高分子の結晶部の融点近傍で走査することにより分子鎖を走査方向に配列させることができる。
以上、鋭利な先端形状を有する部材のひとつの例として原子間力顕微鏡の探針を使用する場合を取り上げて本発明の技術を詳細に説明してきた。しかし、本発明で用いられる装置は原子間力顕微鏡に限定されるものではなく、以下に示すような装置は全て本発明に用いることができる。例えば、鋭利な先端形状を有する部材を有し、その先端が膜に対して力を与える機構および先端を膜面に水平に走査する機構を備えた装置であれば、本発明に係る薄膜の製造装置あるいは加工装置として用いることができる。このような製造装置あるいは加工装置は、原子間力顕微鏡と基本的構成は類似しているが、原子間力顕微鏡のようなフィードバック機能を必ずしも有する必要はない。また、上記の装置に対して鋭利な先端が膜に与える力の大きさを制御する機構を付加した装置も同じく本発明に用いることができる。さらに、1台の装置に鋭利な先端形状を有する部材を複数個備えて、大面積かつ高速な加工を可能とした上記仕様の装置も本発明に用いることができる。水平走査に関しても、探針側を駆動させるだけでなく、被加工物である薄膜側を移動させるようにしてもよい。

図面の簡単な説明

第1図は、本発明の第1実施例において、原子間力顕微鏡による走査を行う前の薄膜表面の原子間力顕微鏡像を示す図である(面積10μmx10μm)。
第2図は、本発明の第1実施例において、グラファイト基板上に形成された薄膜を50℃以上で走査した前後の薄膜表面の結晶形態を示す模式図である。
第3図は、本発明の第1実施例において、グラファイト基板上に形成された薄膜を80℃で走査した前後の薄膜表面の原子間力顕微鏡像を示す図である(面積2μmx2μm)。
第4図は、本発明の第2実施例において、電圧を印加しながら走査した前後の薄膜表面の原子間力顕微鏡像を示す図である(面積4μmx4μm)。
第5図は、本発明の第3実施例において、原子間力顕微鏡の探針を用いてグラファイト基板上に形成された薄膜を135℃で走査した前後の薄膜表面の結晶形態を示す模式図である。
第6図は、本発明の第3実施例において、原子間力顕微鏡の探針を用いてグラファイト基板上に形成された薄膜を135℃で走査した前後の薄膜表面の原子間力顕微鏡像を示す図である(面積1μmx1μm)。
第7図は、本発明の第4実施例において、ガラス基板上に形成された薄膜表面の原子間力顕微鏡像を示す図である(面積1μmx1μm)。
第8図は、第7図に示す薄膜の結晶形態を示す模式図である。
第9図は、本発明の第4実施例〜第7実施例において、各々ガラス基板、Pt層上、Au層上、およびAl層上に形成された薄膜を探針で走査し、走査方向に沿って分子鎖を配列させた状態を示す模式図である。
第10図は、本発明の第4実施例において、原子間力顕微鏡の探針を用いてガラス基板上に形成された薄膜を走査した前後の薄膜表面の原子間力顕微鏡像を示す図である(面積2μmx2μm)。
第11図は、本発明の第5実施例において、Pt層上に形成された薄膜表面の原子間力顕微鏡像を示す図である(面積2μmx2μm)。
第12図は、本発明の第5実施例において、Pt層上に形成された薄膜を走査した前後の薄膜表面の原子間力顕微鏡像を示す図である(面積2μmx2μm)。
第13図は、本発明の第6実施例において、Al層上に形成された薄膜表面の原子間力顕微鏡像を示す図である(面積2μmx2μm)。
第14図は、本発明の第6実施例において、Al層上に形成された薄膜を走査した前後の薄膜表面の原子間力顕微鏡像を示す図である(面積2μmx2μm)。
第15図は、本発明の第7実施例において、Au層上に形成された薄膜表面の原子間力顕微鏡像を示す図である(面積2μmx2μm)。
第16図は、本発明の第7実施例において、Au層上に形成された薄膜を走査した前後の薄膜表面の原子間力顕微鏡像を示す図である(面積2μmx2μm)。

発明を実施するための最良の形態

以下に本発明の効果を実証する実施例を示すが、本発明の効果は以下に示す実施例に用いられた材料や装置および実験条件に限定されるものではなく、本発明の「請求の範囲」および「明細書」で述べられている全ての条件において成り立つものである。
第1実施例として、強誘電性の高分子であるフッ化ビニリデンと三フッ化エチレンのランダム共重合体(P(VDF−TrFE))(VDF/TrFE共重合比68〜80/32〜20)30mgをメチルエチルケトン(MEK)10mlに溶解させ、P(VDF−TrFE)溶液を作製した。上記の溶液を導電性基板として、グラファイト製基板上にスピンコートして薄膜を形成した。この膜を140℃で1時間加熱処理を行い、強誘電性を有するラメラ型の微結晶からなる膜厚25nmの薄膜を得た。この膜のガラス転移温度は約−25℃、融点は150℃付近であった。ここで、ラメラ型微結晶はそのc軸(分子鎖軸)が膜面内に等方的に配列されていた。原子間力顕微鏡を用いて観測した膜の表面形状を第1図に示す。
膜を50℃以上の温度に加熱した状態で、原子間力顕微鏡を用いてコンタクトモードでこの膜の表面を走査することによりラメラ微結晶長手方向を探針の走査方向に配列することができた。原子間力顕微鏡による配列の様子を模式的に第2図に示す。
配列の状態は膜の温度が高い方がより良好であった。一方、膜温度が高いほど、走査時の膜表面の損傷が大きいことが分かった。さらに、カンチレバーのバネ定数によっても探針の走査による膜表面の損傷の度合いが異なることが分かった。膜温度、カンチレバーのバネ定数、探針の圧力をパラメータとして鋭意検討を行った結果、上記の膜においてはバネ定数0.2N/mの軟らかいSi製のカンチレバーを用い、膜温度を50℃からより高温の80℃に加熱した状態で探針を走査することによりラメラ結晶が配列することが分かった。上記の条件において走査した膜表面の原子間力顕微鏡像(観察温度30℃)を第3図に示す。図中、下半分が走査後の状態を示す。この図から明なように、ラメラ結晶が走査方向に良好に配列していることが分かる。以上の様に、カンチレバーのバネ定数および膜温度を適切に設定することにより原子間力顕微鏡を用いて探針の走査方向に微結晶を配列できることが明らかになった。
第2実施例として、第1実施例で用いたフッ化ビニリデンど三フッ化エチレンのランダム共重合体(P(VDF−TrFE))(VDF/TrFE共重合比68〜80/32〜20)50mgをメチルエチルケトン(MEK)10mlに溶解させ、P(VDF−TrFE)溶液を作製した。この溶液を第1実施例と同様のグラファイト基板上にスピンコートして薄膜を形成した。この膜を140℃で1時間加熱処理を行い、強誘電性を有するラメラ型の微結晶からなる膜厚75nmの薄膜を得た。得られた膜を80℃に加熱し、さらにこの膜の抗電界以上に相当する電圧7Vを膜が形成されている導電性基板とカンチレバーの間に印加しながら原子間力顕微鏡を用いてコンタクトモードで走査した。ここで、カンチレバーとして第1実施例で用いたものと同じ材質(Si)およびバネ定数(0.2N/m)のものに、金属がコートされた導電性カンチレバーを使用し走査を行った。電界を併用した結果を第4図に示す。図中、中央部が電界を併用し走査した領域である。この領域内では、第3図(第1実施例)の場合に比べ、ラメラ結晶が走査方向にさらに良好に配列されていることが分かる。この様に電界を併用することにより配列結果が向上する理由として、高分子強誘電体の場合、C−C主鎖の回りのH−F永久双極子が回転することにより主鎖がねじれ変形を起こす。これにより結晶自体も微小な変形を起こした結果、結晶が動き易くなったためと考えられる。
次に、第3実施例として、第2実施例で用いたP(VDF−TrFE)膜(膜厚75nm)に対し走査温度を80℃よりも高温の135℃とし、第1実施例と同じカンチレバーを用いて膜表面を走査した。ただし、この場合は探針と基板の間に電圧は印加しなかった。その結果、第5図に示すように走査方向に対して直角方向に長手方向が揃ったラメラ結晶が形成されていた。これは、第1実施例で示したP(VDF−TrFE)の微結晶を配列させるに好適温度である80℃よりさらに高い温度に加熱することによって今度は分子鎖が動き易くなったためである。その結果、原子間力顕微鏡の探針で膜表面を走査することにより、ラメラ結晶ではなく分子鎖が走査方向に配列し、走査方向に直角に配列された新しいラメラ結晶が形成された。上記の条件で走査した膜表面の原子間力顕微鏡像を第6図に示す。
第4実施例として、ガラス基板(MATSUNAMIMICRO COVER GLASS)上に第1実施例と同様の方法を用いて膜厚75nmのP(VDF−TrFE)薄膜を得た。第7図に、得られた薄膜表面の原子間力顕微鏡像(観察温度30℃)を示す。第7図より、P(VDF−TrFE)はガラス基板上では基板の面方向に平行に成長したラメラ型結晶からなることが判る。さらに第7図に見られるP(VDF−TrFE)結晶の模式図を第8図に示す。この図から明なように、第3実施例で用いたグラファイト基板上の結晶ではP(VDF−TrFE)分子鎖は基板の面方向に平行に配列していたのに対し、ガラス基板上の結晶内でP(VDF−TrFE)分子鎖は基板に垂直に配列している。
上記の薄膜を130℃に加熱した状態で、第1実施例で用いたのと同様のカンチレバーを用いて第9図に示す矢印の方向に走査した。その結果を原子間力顕微鏡で観察(観察温度30℃)した像を第10図に示す。この図から判るように、130℃で走査した領域では基板に垂直に成長したラメラ型結晶に変化していることが分かる。しかも、第3実施例と同様に結晶の長軸は130℃における走査方向に垂直に配列されていることが判った。以上の結果より、第9図の模式図にも示すように、探針を用いて130℃で走査することにより分子鎖に力が加わり、基板の面方向に対し垂直に配向していた分子鎖が走査方向に配列された結果、走査方向に垂直に配列された新しいラメラ結晶が形成されたことは明らかである。以上のように本発明の技術は、基板に垂直に配列されている分子鎖に対しても基板面内に、しかも探針の走査方向に配列することができる。
第5実施例として、Siウエハー上に白金(Pt)(膜厚50nm)をスパッタ形成してPt薄膜からなる表面を有する基板を得た。この基板上に第4実施例と同様の方法を用いてP(VDF−TrFE)薄膜(膜厚75nm)を形成した。第11図に、得られた薄膜表面の原子間力顕微鏡像(観察温度30℃)を示す。第11図より、P(VDF−TrFE)はPt層上では第4実施例と同様に基板に平行に成長したラメラ型結晶からなることが判る。上記の薄膜を135℃に加熱した状態で第1実施例において用いたと同様のカンチレバーを用いて第9図に示す矢印の方向に走査した。その結果を原子間力顕微鏡で観察した(観察温度30℃)像を第12図に示す。この図から判るように、Pt層上においても第4実施例の場合と同様に、探針を用いて135℃で走査することにより分子鎖に力が加わり、基板に垂直に配列していた分子鎖が走査方向に配列された結果、走査方向に直角に配列された新しいラメラ結晶が形成された。
第6実施例として、Siウエハー上にアルミニウム(Al)(膜厚50nm)を蒸着形成してAl薄膜からなる表面を有する基板を得た。この基板上に第4実施例と同様の方法を用いてP(VDF−TrFE)薄膜(膜厚75nm)を形成した。第13図に得られた薄膜表面の原子間力顕微鏡像(観察温度30℃)を示す。第13図より、P(VDF−TrFE)はAl層上では第4実施例と同様に基板の面方向に平行に成長したラメラ型結晶からなることが判る。上記の薄膜を130℃に加熱した状態で実施例1において用いたと同様のカンチレバーを用いて第9図に示す矢印の方向に走査した。その結果を原子間力顕微鏡で観察した(観察温度30℃)像を第14図に示す。この図から判るように、Al層上においても実施例4の場合と同様に、探針を用いて130℃で走査することにより分子鎖に力が加わり、基板の面方向に対し垂直に配向していた分子鎖が走査方向に沿って配列した結果、走査方向に垂直に配列された新しいラメラ結晶が形成された。
第7実施例として、Siウエハー上に金(Au)(膜厚50nm)を蒸着形成してAu薄膜からなる表面を有する基板を得た。上記の基板上に実施例4と同様の方法を用いてP(VDF−TrFE)薄膜(膜厚75nm)を形成した。第15図に得られた薄膜表面の原子間力顕微鏡像(観察温度30℃)を示す。第15図より、P(VDF−TrFE)はAu層上では実施例4と同様に基板の面方向に平行に成長したラメラ型結晶からなることが判る。この薄膜を130℃に加熱した状態で第1実施例において用いたと同様のカンチレバーを用いて第9図に示す矢印の方向に走査した。その結果を原子間力顕微鏡で観察(観察温度30℃)した像を第16図に示す。この図から判るように、Au層上においても第4実施例の場合と同様に、探針を用いて130℃で走査することにより分子鎖に力が加わり、基板の面方向に対し垂直に配列していた分子鎖が走査方向に配列された結果、走査方向に直角に配列された新しいラメラ結晶が形成された。
以上、各実施例から得られた結果から明らかなように、初期の分子が空間的にいかなる方向に向いている場合においても、本発明の方法を適用することにより、分子を探針の走査方向に対して一定の方向に配列させることができることがわかった。したがって、本発明の技術を用いることにより、上記の従来技術の限界を克服し、薄膜の任意の微小領域の分子または微結晶を任意の方向に配列させ、その微小領域の構造を制御することが可能である。その結果、任意の微小領域の屈折率などの光学的性質、誘電率などの電気的性質、さらには弾性率などの力学的性質を制御することが可能となる。

本発明により薄膜の屈折率が制御される場合はその用途として光通信用フィルタやディスプレイ、また光メモリなどの分野に応用展開することができる。また、弾性率などの力学定数が制御された場合にはミクロなサイズの各種の部品を形成する場合に有用である。また、音速を制御することにより表面波フィルタにも応用展開することができる。さらに、誘電率を制御することにより、コンデンサーなどの部品を基板内造り込んだミクロサイズ回路基板にも応用展開できる。以上の様に、本発明の成果光通信分野、電子機器分野および一般の機械装置分野に広く応用展開することが可能である。これらの分野に本発明の成果を適用することにより、従来技術では実現し得なかった高性能な部品および装置を実現することができる。

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