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技術 潤滑油組成物およびそれを用いた時計

出願人 シチズン時計株式会社
発明者 赤尾祐司
出願日 2001年2月8日 (17年11ヶ月経過) 出願番号 2001-558183
公開日 2003年6月24日 (15年6ヶ月経過) 公開番号 WO2001-059043
状態 特許登録済
技術分野 機械時計 潤滑剤
主要キーワード 時計部材 潤滑油種 プラスチック製部品 スカイダイビング 中性リン酸エステル 耐久年数 時計製造 素材自身
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重要な関連分野

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図面 (1)

課題・解決手段

本発明に係る第1の潤滑油組成物は、基油としてポリオールエステル(A)、粘度指数向上剤(B)および耐摩耗剤(C)を特定割合で含有してなり、また、本発明に係る第2の潤滑油組成物は、炭素原子数が少なくとも30以上のパラフィン系炭化水素油(F)、および指数粘度向上剤(B)を特定割合で含有してなるので、これらの組成物は、時計電池寿命を長く保つことができ、1潤滑油種で、−30℃から80℃まで動作可能で、長期にわたって変質しないという効果を有する。本発明に係る第3の潤滑油組成物は、基油としてエーテル油(G)と、中性リン酸エステルおよび/または中性亜リン酸エステルからなる特定量の耐摩耗剤(C)と、酸化防止剤(E)とを含有しているので、長期に渡って変質せず、時計用潤滑油として好適である。本発明に係る時計は、これらの組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の組成物が摺動部に用いられた時計である。

概要

背景

概要

本発明に係る第1の潤滑油組成物は、基油としてポリオールエステル(A)、粘度指数向上剤(B)および耐摩耗剤(C)を特定割合で含有してなり、また、本発明に係る第2の潤滑油組成物は、炭素原子数が少なくとも30以上のパラフィン系炭化水素油(F)、および指数粘度向上剤(B)を特定割合で含有してなるので、これらの組成物は、時計電池寿命を長く保つことができ、1潤滑油種で、−30℃から80℃まで動作可能で、長期にわたって変質しないという効果を有する。本発明に係る第3の潤滑油組成物は、基油としてエーテル油(G)と、中性リン酸エステルおよび/または中性亜リン酸エステルからなる特定量の耐摩耗剤(C)と、酸化防止剤(E)とを含有しているので、長期に渡って変質せず、時計用潤滑油として好適である。本発明に係る時計は、これらの組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の組成物が摺動部に用いられた時計である。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
4件
牽制数
4件

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請求項1

ポリオールエステル(A)からなる基油の他に、少なくとも粘度指数向上剤(B)0.1〜20重量%および耐摩耗剤(C)0.1〜8重量%を含有してなることを特徴とする潤滑油組成物

請求項2

前記潤滑油組成物の、−30℃から80℃における動粘度が1500cSt以下、13cSt以上であり、かつ、90℃で放置したときの重量変化が1.62重量%以下で、全酸価が0.2mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。

請求項3

前記ポリオールエステル(A)が、分子末端水酸基を全く有しないポリオールエステルであることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。

請求項4

前記粘度指数向上剤(B)が、ポリアクリレートポリメタクリレートポリイソブチレンポリアルキルスチレンポリエステルイソブチレンフマレート、スチレンマレエートエステル、酢酸ビニルフマレートエステルおよびα−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。

請求項5

前記耐摩耗剤(C)が、中性リン酸エステルおよび/または中性亜リン酸エステルであることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。

請求項6

さらに、金属不活性剤(D)を含有していることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。

請求項7

前記金属不活性剤(D)が、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体であることを特徴とする請求項6に記載の潤滑油組成物。

請求項8

さらに、酸化防止剤(E)を含有していることを特徴とする請求項1または6に記載の潤滑油組成物。

請求項9

炭素原子数が少なくとも30以上のパラフィン系炭化水素油(F)からなる基油の他に、少なくとも粘度指数向上剤(B)0.1〜15重量%を含有してなることを特徴とする潤滑油組成物。

請求項10

前記潤滑油組成物の、−30℃から80℃における動粘度が1500cSt以下、13cSt以上であることを特徴とする請求項9に記載の潤滑油組成物。

請求項11

前記潤滑油組成物の、−30℃から80℃における動粘度が1500cSt以下、13cSt以上であり、かつ、90℃で放置したときの重量変化が10重量%以下であることを特徴とする請求項9に記載の潤滑油組成物。

請求項12

前記潤滑油組成物の全酸価が0.2mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項10または11に記載の潤滑油組成物。

請求項13

前記粘度指数向上剤(B)が、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、ポリエステル、イソブチレンフマレート、スチレンマレエートエステル、酢酸ビニルフマレートエステルおよびα−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項9に記載の潤滑油組成物。

請求項14

さらに、耐摩耗剤(C)を0.1〜8重量%含有していることを特徴とする請求項9に記載の潤滑油組成物。

請求項15

前記耐摩耗剤(C)が、中性リン酸エステルおよび/または中性亜リン酸エステルであることを特徴とする請求項14に記載の潤滑油組成物。

請求項16

さらに、金属不活性剤(D)を含有していることを特徴とする請求項9または14に記載の潤滑油組成物。

請求項17

前記金属不活性剤(D)が、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体であることを特徴とする請求項16に記載の潤滑油組成物。

請求項18

さらに、酸化防止剤(E)を含有していることを特徴とする請求項9、14および16のいずれかに記載の潤滑油組成物。

請求項19

エーテル油(G)からなる基油の他に、少なくとも耐摩耗剤(C)および酸化防止剤(E)を含有してなり、該耐摩耗剤(C)が中性リン酸エステルおよび/または中性亜リン酸エステルであり、該耐摩耗剤(C)の含有量が0.1〜8重量%であることを特徴とする潤滑油組成物。

請求項20

前記エーテル油(G)が、下記一般式R1−(−O−R2−)n−R1〔式中、R1は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜18のアルキル基または炭素原子数6〜18の1価芳香族炭化水素基であり、R2は、炭素原子数1〜18のアルキレン基または炭素原子数6〜18の2価芳香族炭化水素基であり、nは、0または1〜5の整数である。〕で表わされるエーテル油であることを特徴とする請求項19に記載の潤滑油組成物。

請求項21

前記潤滑油組成物の全酸価が0.2mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項19に記載の潤滑油組成物。

請求項22

前記酸化防止剤(E)が、フェノール系酸化防止剤および/またはアミン系酸化防止剤であることを特徴とする請求項8、18および19のいずれかに記載の潤滑油組成物。

請求項23

前記アミン系酸化防止剤が、ジフェニルアミン誘導体であることを特徴とする請求項22に記載の潤滑油組成物。

請求項24

前記フェノール系酸化防止剤が、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノールまたは4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチル)フェノールであることを特徴とする請求項22に記載の潤滑油組成物。

請求項25

時計摺動部用に用いられることを特徴とする請求項1〜24のいずれかに記載の潤滑油組成物。

請求項26

請求項1〜24に記載の潤滑油組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の潤滑油組成物が摺動部に用いられることを特徴とする時計。

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0001

技 術 分 野
本発明は、潤滑油組成物およびそれを用いた時計に関し、さらに詳しくは、特に時計の摺動部の潤滑油として好適な潤滑油組成物およびその潤滑油組成物を用いた時計に関する。
背 景 技 術

0002

時計を大きく分けると、メカ式時計と電子式時計とがある。メカ式時計はゼンマイ駆動源として動作する時計であり、電子式時計は電気の力を利用して動作させる時計である。電子式もメカ式の時計も共に、時針分針秒針を駆動させるための歯車集合している輪列部や、レバー等の摺動部を組み合わせて時刻を表示している。

0003

時計製造初期はメカ式時計だけで電子式時計は発明されていなかった。このメカ式時計の動作をスムーズにさせるため、回転部摺動部に潤滑油が注されている。メカ式時計は、ゼンマイからの力が常に輪列部に加わるため摩擦摩耗を低減させるために貴石ルビー)を輪列部のほぞ受けとして具備させ、回転する歯車も鉄等の比較的耐摩耗性の優れた、安定な金属を用いて製造していた。

0004

その後、電池の普及と共に電子式時計が発売され、近年本出願人は、1次電池で一定時間動作するもの、光発電素子熱発電素子と2次電池とを組み合わせて電池交換をしなくても動作し続けるようにした時計などを提案している。また、時計の用途も幅広くなり、スカイダイビングスキューバダイビング用の時計が販売されるようになっている。時計の販売形態としては、完成時計の他、モジュールでの販売も行なわれるようになった。

0005

このように、用途や、販売形態の拡大、時計の形態の変貌により、時計モジュールには耐湿度性耐熱性耐低温性耐熱衝撃性、長寿命性が求められている。また、時計を作製する材料も加工性に優れる真鍮、さらにはプラスチック部材が使用されるようになったため、金属に対する腐食性や、プラスチックの腐食性も小さくすることが必要となってきている。

0006

これまで本出願人は、時計用潤滑油として、例えばMOEBIUS社製Synt−Lubeを使用してきた。この材料の形は、Mixture of synthetic hydrocarbones with ether and alcohol groupsで、材料の基油は、Mixture of Alkyl−Aryloxidibutylenglycolesで、添加剤としては、1.6% Alkylphenoxyacid、1%未満で2,6−Di−tert−butyl−4−methylphenole、C3−C14−Zn−dialkyldithiophosphateなどが添加されている(MOEBIUS社Synt−LubeMSDS、カタログより転記)。

0007

この従来の潤滑油(MOEBIUS社製Synt−Lube)を使用していると、時計が停止等の動作不良を発生してしまう現象が発生することがある。本出願人は、動作不良の時計を回収修理するサービスステーションを有しており、動作不良の様子を調査したところ、潤滑油がゲル状に変化したり、プラスチック部品や金属を腐食するといった問題を10年以上も前から検出していた。

0008

また、この潤滑油は、動粘度(JIS K2283−1979)が50℃で27cSt、−20℃で2600cStという中粘度の潤滑油であるが、この潤滑油を輪列部に全て使用すると、80℃の高温時の粘度低下に起因して潤滑油が流れ落ちてしまう現象が起きるという問題がある。

0009

この問題を解決するため、本出願人は、駆動力の大きな場所に限って高粘度(動粘度(JIS K2283−1979):50℃で45cSt、−20℃で13500cSt)の潤滑油を使用しているが、全体の粘度が高まることにより時計の消費電力が高まることから、駆動力の弱いところでは、前記の高粘度の潤滑油を使用することは避けている。

0010

このため、輪列部の歯車によっては、80℃の高温時に潤滑油が流れてしまうといった問題が生じている。また、−10℃の低温にした場合、潤滑油の粘度が上昇するため駆動ができなくなってしまうという問題もある。

0011

そのため、本出願人は、駆動力の弱い部分(ローター部)には低粘度(動粘度(JIS K2283−1979):50℃で16cSt、−20℃で840cSt)の潤滑油を使用して、上記の−10℃という低温時おける問題を回避しているが、80℃の高温時には粘度が激しく低下するため、潤滑油流出の問題が発生してしまうといった問題がある。また、低温時における時計の動作は、−10℃よりも低くなると動作不良が生じるという問題がある。

0012

また、潤滑油の種類が中粘度、高粘度および低粘度の3種類と多くなってしまったため、時計の生産時や修理の時に、それぞれの潤滑油を使い分け給油しなくてはならず、その結果潤滑油を間違えて使用する可能性があるといった問題もある。

0013

前述のように、従来の潤滑油を用いた場合、高温時の潤滑油の流出という問題、低温時の駆動力が弱まった部位への給油の問題、ゲル化、プラスチック部品や金属の腐食等の変質の問題、および使用する潤滑油の種類が多すぎるといった問題がある。

0014

本発明の目的は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、1潤滑油種で、−30℃から80℃まで動作可能で、長期に渡って変質せず、しかも電池の寿命を長く保つことができ、時計用潤滑油として好適な潤滑油組成物、およびその組成物を用いた時計を提供することをある。

0015

また、本発明の他の目的は、長期に渡って変質せず、しかも電池の寿命を長く保つことができ、時計用潤滑油として好適な潤滑油組成物、およびその組成物を用いた時計を提供することにある。

発明の開示

0016

本発明に係る第1の潤滑油組成物は、ポリオールエステル(A)からなる基油の他に、少なくとも粘度指数向上剤(B)0.1〜20重量%および耐摩耗剤(C)0.1〜8重量%を含有してなることを特徴としている。

0017

この第1の潤滑油組成物は、−30℃から80℃における動粘度(JIS K2283−1979;以下同じ))が1500cSt以下、13cSt以上であり、かつ、90℃で放置したときの重量変化が1.62重量%以下で、全酸価が0.2mgKOH/g以下であることが望ましい。

0018

前記粘度指数向上剤(B)としては、通常、ポリアクリレートポリメタクリレートポリイソブチレンポリアルキルスチレンポリエステルイソブチレンフマレート、スチレンマレエートエステル、酢酸ビニルフマレートエステルおよびα−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種の化合物が用いられる。

0019

前記耐摩耗剤(C)としては、通常、中性リン酸エステルおよび/または中性亜リン酸エステルが用いられる。

0020

本発明に係る第1の潤滑油組成物は、さらに、金属不活性剤(D)を含有していてもよい。前記金属不活性剤(D)としては、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体が好ましい。

0021

本発明に係る第1の潤滑油組成物は、さらに、酸化防止剤(E)を含有していてもよい。

0022

本発明に係る第2の潤滑油組成物は、炭素原子数が少なくとも30以上のパラフィン系炭化水素油(F)からなる基油の他に、少なくとも粘度指数向上剤(B)0.1〜15重量%を含有してなることを特徴としている。

0023

この第2の潤滑油組成物は、−30℃から80℃における動粘度が1500cSt以下、13cSt以上であることが望ましい。特に、−30℃から80℃における動粘度が1500cSt以下、13cSt以上であり、かつ、90℃で放置したときの重量変化が10重量%以下であることが好ましい。

0024

パラフィン系炭化水素油(F)は、極性を有しないため他の多くの材料と相溶しない特性を有し、しかも、化学的に不活性であるため変質しにくいという特性を有している。したがって、パラフィン系炭化水素油(F)は、プラスチック部品を有する時計用潤滑油基油として好適である。この場合、添加剤特に粘度指数向上剤(B)としては極性基を有しない化合物を選択することが好ましい。粘度指数向上剤(B)としてたとえばポリアクリレート、ポリメタクリレートなどの極性基を有する化合物を使用する場合には、第2の潤滑油組成物の全酸価が0.2mgKOH/g以下であることが好ましい。このような全酸価を有する第2の潤滑油組成物を時計用潤滑油として用いると、時計を長期に渡って動作させることができる。

0025

前記粘度指数向上剤(B)は、通常、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、ポリエステル、イソブチレンフマレート、スチレンマレエートエステル、酢酸ビニルフマレートエステルおよびα−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種の化合物が用いられる。中でも、プラスチックとの相溶性がなく、化学的に不活性で変質しにくいという観点から、極性基を有しないポリイソブチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィン共重合体)等のアルキル化合物が最も好ましく、その次に好ましいのは芳香族アルキル化合物であり、その次に好ましいのは芳香族化合物である。

0026

本発明に係る第2の潤滑油組成物は、さらに、耐摩耗剤(C)を0.1〜8重量%含有していてもよい。

0027

前記耐摩耗剤(C)としては、通常、中性リン酸エステルおよび/または中性亜リン酸エステルが用いられる。

0028

本発明に係る第2の潤滑油組成物は、さらに、金属不活性剤(D)を含有していてもよい。前記金属不活性剤(D)としては、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体が好ましい。

0029

本発明に係る第2の潤滑油組成物は、さらに、酸化防止剤(E)を含有していてもよい。

0030

本発明に係る第3の潤滑油組成物は、エーテル油(G)からなる基油の他に、少なくとも耐摩耗剤(C)および酸化防止剤(E)を含有してなり、該耐摩耗剤(C)が中性リン酸エステルおよび/または中性亜リン酸エステルであり、該耐摩耗剤(C)の含有量が0.1〜8重量%であることを特徴としている。

0031

前記エーテル油(G)としては、下記一般式
R1−(−O−R2−)n−R1
〔式中、R1は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜18のアルキル基または炭素原子数6〜18の1価芳香族炭化水素基であり、

0032

R2は、炭素原子数1〜18のアルキレン基または炭素原子数6〜18の2価芳香族炭化水素基であり、

0033

nは、0または1〜5の整数である。〕
で表わされるエーテル油が好ましく用いられる。

0034

この第3の潤滑油組成物の全酸価は、0.2mgKOH/g以下であることが望ましい。

0035

本発明に係る第1〜第3の潤滑油組成物において、前記酸化防止剤(E)としては、フェノール系酸化防止剤および/またはアミン系酸化防止剤が好ましい。

0036

前記アミン系酸化防止剤としては、ジフェニルアミン誘導体が好ましい。

0037

また、前記フェノール系酸化防止剤は、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノールおよび4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチル)フェノールから選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。

0038

本発明に係る第1、第2および第3の潤滑油組成物は、時計の摺動部用に用いられる潤滑油として好適である。

0039

本発明に係る時計は、上記の、本発明に係る第1、第2および第3の潤滑油組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の潤滑油組成物が摺動部に用いられることを特徴としている。

発明を実施するための最良の形態

0040

以下、本発明に係る潤滑油組成物およびそれを用いた時計について具体的に説明する。

0041

本発明に使用する時計用潤滑油は、その動粘度が使用温度範囲内で13cSt以上1500cSt以下であることが必要である。

0042

一般に、時計の使用温度は、−10℃から80℃であるので、−10℃で1500cSt以下、80℃では13cSt以上の動粘度でなくてはならないが、使用用途が拡大した現代では、−30℃から80℃の範囲で前記動粘度の範囲内に入ることが好ましい。一般に、時計用潤滑油として用いられる合成油は、その表面張力が20〜40mN/m程度になる動粘度を有しているが、この表面張力を有する時計用潤滑油を輪列部に給油した場合、動粘度が13cSt以下になると、潤滑油が摺動部より流れ落ちてしまい、時計性能を維持できなくなる。逆に動粘度が1500cSt以上になると、摺動抵抗が大きくなり時計が正常に動作しなくなる現象が発生する。

0043

また、時計は、一定量の潤滑油で長時間潤滑を行なわなくてはならないため、潤滑油の蒸発量が少なくなければならない。−10℃から80℃の使用温度範囲内で動作させるには、230gの潤滑油を直径6cm深さ10cmの容器に入れ、解放の状態で90℃、1000時間放置したとき、潤滑油の蒸発率が10重量%以内である必要がある。10重量%以内であれば、時計モジュール単体で販売しても動作を保証することができる。

0044

また、時計は、外装部品とモジュールとの組み合わせで完成時計となるが、販売形態として、完成品の時計の他モジュールとしても販売されるため、時計用潤滑油は、温度の他、湿度に対しても安定でなくてはならない。

0045

時計材料には、銅、亜鉛を含む真鍮や、ニッケル、鉄の他、ポリオキシメチレン(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)などのプラスチック材料があり、これらの材料と時計用潤滑油が接触したときに、時計材料を腐食させたり、膨潤させたり、スラッジを発生させたりすることがあってはならない。

0046

上記性能を満たす合成油の候補としては、エステル油、パラフィン系炭化水素油(PAO)、シリコーンオイルや、従来品のようなエーテル油、グリコール油などがある。

0047

従来品のようなエーテル油、グリコール油等の潤滑油を用いると、吸湿性があることから耐湿度性が低下するという問題がある。本出願人らは、エーテル油を基油とする潤滑油組成物を鋭意研究した結果、本発明に係る第3の潤滑油組成物のように、特定の組成にすれば、上記の耐湿度性の低下を防止することができることを見出した。

0048

シリコーンオイルを使用した場合には、潤滑性が少ない上に、添加剤の溶解度が低いために潤滑性の性能向上が見い出せないといった問題がある。また、このような潤滑油は、金属表面で流れてしまうという問題がある。

0049

パラフィン系炭化水素油(PAO)は、溶解性が低く、プラスチックを腐食しにくいので、特にプラスチック部品を多く利用した時計には有利である。プラスチック製部品は、素材自身が潤滑性を有しているため、基油自身の潤滑性がエステル油より劣っていても潤滑性において差異が出ることはない。しかしながら、パラフィン系炭化水素油は、蒸発特性が悪いので、時計用潤滑油として不向きである。本出願人らは、パラフィン系炭化水素油を基油とする潤滑油組成物を鋭意研究した結果、本発明に係る第2の潤滑油組成物のように、特定の組成にすれば、蒸発特性を向上させることができることを見出した。

0050

エステル油は、基油としてそれ自体潤滑性を有し、溶解性が高くスラッジの発生を抑制することができるため、添加剤を少なくすることができる。また、低温特性満足する潤滑油を高温で使用できるようにするため、粘度指数向上剤の添加量を多くすることができるので有利である。しかしながら、エステル油は、溶解性が高いため、プラスチック部品の材料には制限が生じる。本出願人らは、エステル油を基油とする潤滑油組成物を鋭意研究した結果、本発明に係る第1の潤滑油組成物のように、特定の組成にすれば、プラスチック部品の材料に制限されないことを見出した。
第1の潤滑油組成物

0051

本発明に係る第1の潤滑油組成物は、基油としてポリオールエステル(A)、粘度指数向上剤(B)、耐摩耗剤(C)、および必要に応じて金属不活性剤(D)、酸化防止剤(E)を含有している。
[ポリオールエステル(A)]

0052

この第1の潤滑油組成物で基油として用いられるポリオールエーテル(A)としては、具体的には、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールに、1種ないし複数種一塩基酸酸塩化物を反応させて得られる構造のエステルである。

0057

酸塩化物としては、たとえば前記一塩基酸の塩化物等の塩が挙げられる。

0058

これらの生成物としては、たとえばネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル、トリメチロールプロパン・吉草酸ヘプタン酸混合エステル、トリメチロールプロパン・デカン酸オクタン酸混合エステル、ノナン酸トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール・ヘプタン酸カプリン酸混合エステルなどが挙げられる。

0059

本発明で用いられるポリオールエステル(A)としては、水酸基が3個以下のポリオールエステルが好ましく、特に水酸基を有しない完全エステルが好ましい。

0060

また、ポリオールエステル(A)の動粘度は、−30℃で1500cSt以下であることが好ましい。
[粘度指数向上剤(B)]

0061

本発明に係る第1の潤滑油組成物で用いられる粘度指数向上剤(B)は、通常、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、ポリエステル、イソブチレンフマレート、スチレンマレエートエステル、酢酸ビニルフマレートエステルおよびα−オレフィン共重合体から選ばれる単独のポリマーや、ポリブタジエンスチレン共重合体ポリメチルメタクリレートビニルピロリドン共重合体、エチレン・アルキルアクリレート共重合体等の共重合して得られる、少なくとも1種の化合物である。

0062

ポリアクリレート、ポリメタクリレートとしては、アクリル酸、メタクリル酸重合物や、それぞれ炭素原子数1〜10のアルキルエステルのポリマーが使用することができる。中でも、メタクリル酸メチルを重合させたポリメタクリレートが好ましい。

0063

これらの粘度指数向上剤は、従来公知のものを用いることができる。

0064

ポリアルキルスチレンとしては、具体的には、ポリα−メチルスチレン、ポリβ−メチルスチレン、ポリα−エチルスチレン、ポリβ−エチルスチレン等の炭素原子数1〜18の置換基を有するモノアルキルスチレンのポリマーなどが挙げられる。

0065

ポリエステルとしては、たとえばエチレングリコールプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジペンタエリスリトール等の炭素原子数1〜10の多価アルコールと、シュウ酸、マロン酸、コハク酸グルタル酸アジピン酸フマル酸、フタル酸等の多塩基酸とから得られるポリエステルなどが挙げられる。

0066

α−オレフィン共重合体としては、具体的には、エチレンから誘導される繰り返し構成単位イソプロピレンから誘導される繰り返し構成単位とからなるエチレン・プロピレン共重合体、同様に、エチレン、プロピレンブチレンブタジエン等の炭素原子数2〜18のα−オレフィンを共重合して得られる反応生成物などが挙げられる。

0067

これらは、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。

0068

本発明においては、粘度指数向上剤(B)は、潤滑油組成物100重量%に対して、0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%の割合で用いられる。粘度指数向上剤(B)を上記範囲内の割合で用いると、時計を正常に動作させることができる。
[耐摩耗剤(C)]

0069

本発明に係る第1の潤滑油組成物で用いられる耐摩耗剤(C)は、通常、中性リン酸エステルおよび/または中性亜リン酸エステルである。

0070

中性リン酸エステルとしては、具体的には、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリメチロールプロパンフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリス(ノニルフェニル)フォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリス(トリデシル)フォスフェート、テトラフェニルジプロピレングリコールジフスフェート、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスフェート、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルフォスフェート、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジフォスフェート、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスフェート、トリステアリルフォスフェート、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスフェート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスフェートポリマーなどが挙げられる。

0071

中性亜リン酸エステルとしては、具体的には、トリオレイルフォスファイト、トリオクチルフォスファイト、トリメチロールプロパンフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、トリエチルフォスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジフォスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルフォスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、トリステアリルフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスファイトポリマーなどが挙げられる。

0072

これらは、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。

0073

本発明においては、耐摩耗剤(C)は、潤滑油組成物100重量%に対して、0.1〜8重量%、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%の割合で用いられる。耐摩耗剤(C)を上記範囲内の割合で用いると、摩擦摩耗もなく、時計を良好に動作させることができる。
[金属不活性剤(D)]

0074

本発明に係る第1の潤滑油組成物で必要に応じて用いられる金属不活性剤(D)としては、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体が好ましい。

0075

ベンゾトリアゾール誘導体としては、具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、下式に示される構造でR、R’、R”が炭素原子数1〜18のアルキル基である化合物たとえば1−(N,N−ビス(2−エチルヘキシルアミノメチル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。

0076

これらは、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。

0077

本発明においては、金属不活性剤(D)は、潤滑油組成物100重量%に対して、通常、0.01〜3重量%、好ましくは0.02〜1重量%、さらに好ましくは0.03〜0.06重量%の割合で用いられる。粘度指数向上剤(B)および耐摩耗剤(C)とともに、金属不活性剤(D)を上記範囲内の割合で用いると、金属たとえば銅の腐食を防止することができる。

0078

本発明に係る第1の潤滑油組成物を、金属部品を使用した時計たとえばシチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.2035;輪列部は金属製(主に真鍮と鉄とからなっている)に使用する場合には、潤滑油基油と同様に金属部品も変化してはならない。この場合、金属不活性剤(D)を添加することが好ましい。
[酸化防止剤(E)]

0079

本発明に係る第1の潤滑油組成物で必要に応じて用いられる酸化防止剤(E)は、通常、フェノール系酸化防止剤および/またはアミン系酸化防止剤である。

0080

アミン系酸化防止剤としては、ジフェニルアミン誘導体が好ましい。

0081

また、フェノール系酸化防止剤は、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノールおよび4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノールから選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。

0082

これらの酸化防止剤(E)は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。

0083

本発明においては、酸化防止剤(E)は、潤滑油組成物100重量%に対して、通常、0.01〜3重量%、好ましくは0.01〜2重量%、さらに好ましくは0.03〜1.20重量%の割合で用いられる。酸化防止剤(E)を上記範囲内の割合で用いると、潤滑油組成物の変質を長期に渡って防止することができる。

0084

長期に使用する時計モジュールでは、使用する潤滑油組成物も長期にわたって変質しないよう酸化を防止しなくてはならない。本発明に係る第1の潤滑油組成物を酸化させることなく長期に渡って安定にさせるためには酸化防止剤(E)を加えることが好ましい。
[第1の潤滑油組成物]

0085

本発明に係る第1の潤滑油組成物は、通常、−30℃から80℃における動粘度が1500cSt以下、13cSt以上であり、かつ、90℃で放置したときの重量変化が1.62重量%以下で、全酸価が0.2mgKOH/g以下であることが望ましい。

0086

90℃で放置したときの重量変化すなわち蒸発量が1.62重量%以下であると、高温での動作安定性に優れている。また、全酸価が0.2mgKOH/g以下であると、消費電流に変化はなく、粘度上昇時計部材の腐食を防止することができ、時計用潤滑油として好適である。

0087

本発明に係る第1の潤滑油組成物は、金属部品を有する時計の潤滑油として特に好適である。
第2の潤滑油組成物

0088

本発明に係る第2の潤滑油組成物は、基油としてパラフィン系炭化水素油(F)、粘度指数向上剤(B)、および必要に応じて耐摩耗剤(C)、金属不活性剤(D)、酸化防止剤(E)を含有している。
[パラフィン系炭化水素油(F)]

0089

本発明に係る第2の潤滑油組成物で基油として用いられるパラフィン系炭化水素油(F)は、炭素原子数が少なくとも30以上、好ましくは30〜50のα−オレフィン重合体からなる。

0090

炭素原子数30以上のα−オレフィン重合体は、エチレンおよび炭素原子数3〜18のα−オレフィンの1種以上の重合体ないし共重合体で合計の炭素原子数が30以上となっているものであり、具体的には、1−デセンの3量体、1−ウンデセンの3単量体、1−ドデセンの3量体、1−トリデセンの3量体、1−テトラデセンの3量体、1−ヘキセンと1−ペンテンとの共重合体などが挙げられる。

0091

本発明に係るパラフィン系炭化水素油(F)としては、炭素原子数30以上で、動粘度が−30℃で1500cSt以下であるパラフィン系炭化水素油が好ましい。
[粘度指数向上剤(B)]

0092

本発明に係る第2の潤滑油組成物で用いられる粘度指数向上剤(B)は、通常、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、ポリエステル、イソブチレンフマレート、スチレンマレエートエステル、酢酸ビニルフマレートエステルおよびα−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種の化合物である。中でも、ポリイソブチレンが好ましい。

0093

ポリアルキルスチレン、ポリエステルおよびα−オレフィン共重合体の具体例としては、上述した、本発明に係る第1の潤滑油組成物で用いられる粘度指数向上剤(B)の項で列挙した具体例と同じ化合物が挙げられる。

0094

粘度指数向上剤(B)は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。

0095

本発明においては、粘度指数向上剤(B)は、潤滑油組成物100重量%に対して、0.1〜15重量%、好ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%の割合で用いられる。粘度指数向上剤(B)を上記範囲内の割合で用いると、パラフィン系炭化水素油(F)の温度変化による粘度変化を低減することができ、時計を正常に動作させることができる。
[耐摩耗剤(C)]

0096

本発明に係る第2の潤滑油組成物で必要に応じて用いられる耐摩耗剤(C)は、通常、中性リン酸エステルおよび/または中性亜リン酸エステルである。

0097

中性リン酸エステルおよび中性亜リン酸エステルの具体例としては、上述した、本発明に係る第1の潤滑油組成物で用いられる耐摩耗剤(C)の項で列挙した具体例と同じ化合物が挙げられる。

0098

耐摩耗剤(C)は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。

0099

本発明においては、耐摩耗剤(C)は、潤滑油組成物100重量%に対して、好ましくは0.1〜8重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.5〜1.5重量%の割合で用いられる。耐摩耗剤(C)を上記範囲内の割合で用いると、耐摩耗性を向上させることができる。

0100

本発明に係る第2の潤滑油組成物を、プラスチック部品の他に金属部品を併用した時計たとえばシチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.7680、No.1030;輪列部にプラスチックと金属製歯車を使用している)に使用する場合は、金属部品が摩耗しないよう耐摩耗剤(C)を添加した方が好ましい。
[金属不活性剤(D)]

0101

本発明に係る第2の潤滑油組成物で必要に応じて用いられる金属不活性剤(D)としては、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体が好ましい。

0102

ベンゾトリアゾール誘導体の具体例としては、上述した、本発明に係る第1の潤滑油組成物で必要に応じて用いられる金属不活性剤(D)の項で列挙した具体例と同じ化合物が挙げられる。

0103

金属不活性剤(D)は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。

0104

本発明においては、金属不活性剤(D)は、潤滑油組成物100重量%に対して、好ましくは0.01〜3重量%、さらに好ましくは0.02〜1重量%、より好ましくは0.03〜0.06重量%の割合で用いられる。金属不活性剤(D)を上記範囲内の割合で用いると、金属たとえば銅の腐食防止に効果がある。

0105

本発明に係る第2の潤滑油組成物を、プラスチック部品の他に金属部品を併用した時計、たとえば上記の時計ムーブメントTM(No.7680、No.1030)に使用する場合には、潤滑油基油と同様に金属部品も変化してはならない。この場合、金属不活性剤(D)を添加することが好ましい。
[酸化防止剤(E)]

0106

本発明に係る第2の潤滑油組成物で必要に応じて用いられる酸化防止剤(E)は、通常、フェノール系酸化防止剤および/またはアミン系酸化防止剤である。

0107

アミン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤の具体例としては、上述した、本発明に係る第1の潤滑油組成物で必要に応じて用いられる酸化防止剤(E)の項で列挙した具体例と同じ化合物が挙げられる。

0108

酸化防止剤(E)は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。

0109

本発明においては、酸化防止剤(E)は、潤滑油組成物100重量%に対して、好ましくは0.1〜3重量%、さらに好ましくは0.01〜2重量%、より好ましくは0.03〜1.20重量%の割合で用いられる。酸化防止剤(E)を上記範囲内の割合で用いると、潤滑油組成物の変質を長期に渡って防止することができる。

0110

長期に使用する時計モジュールは、使用する潤滑油組成物も長期に渡って変質しないよう酸化を防止しなくてはならない。したがって、本発明に係る第2の潤滑油組成物を酸化させることなく長期に渡って安定にさせるためには酸化防止剤(E)を加えることが好ましい。
[第2の潤滑油組成物]

0111

本発明に係る第2の潤滑油組成物は、−30℃から80℃における動粘度が1500cSt以下、13cSt以上であることが望ましい。動粘度がこの範囲内にある潤滑油組成物を、輪列部がプラスチックで出来ている時計たとえばシチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.7630)に使用すると、時計が正常に動作することができる。特に、−30℃から80℃における動粘度が1500cSt以下、13cSt以上であり、かつ、90℃で放置したときの重量変化が10重量%以下であることが好ましい。動粘度と重量変化が上記範囲内にある潤滑油組成物を使用すると、−30℃から80℃の温度範囲内で時計を正常に動作させることができる。

0112

耐摩耗剤(C)と金属不活性剤(D)を含有する、本発明に係る第2の潤滑油組成物は、プラスチック製の部品(たとえば歯車)の他に金属部品を併用している時計の潤滑油として好適である。
第3の潤滑油組成物

0113

本発明に係る第3の潤滑油組成物は、基油としてエーテル油(G)、耐摩耗剤(C)および酸化防止剤(E)を含有している。
[エーテル油]

0114

本発明に係る第3の潤滑油組成物で用いられるエーテル油(G)としては、下記一般式で表わされるエーテル油が好ましい。
R1−(−O−R2−)n−R1

0115

式中、R1は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜18のアルキル基または炭素原子数6〜18の1価芳香族炭化水素基であり、

0116

R2は、炭素原子数1〜18のアルキレン基または炭素原子数6〜18の2価芳香族炭化水素基であり、

0117

nは、0または1〜5の整数である。

0118

R1の炭素原子数1〜18のアルキル基としては、具体的には、メチル基エチル基プロピル基イソプロピル基n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基オクチル基、ノニル基、デシル基ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。

0119

R1の炭素原子数6〜18の1価芳香族炭化水素基としては、フェニル基トリル基キシリル基ベンジル基フェネチル基、1−フェニルエチル基、1−メチル−1−フェニルエチル基などが挙げられる。

0120

R2の炭素原子数1〜18のアルキレン基としては、具体的には、メチレン基エチレン基プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。

0121

R2の炭素原子数6〜18の2価芳香族炭化水素基としては、具体的には、フェニレン基、1,2−ナフチレン基などが挙げられる。

0122

上記式で表わされるエーテル油は、分子末端に水酸基を有しないので、耐吸湿性に優れている。
[耐摩耗剤(C)]

0123

本発明に係る第3の潤滑油組成物で用いられる耐摩耗剤(C)は、通常、中性リン酸エステルおよび/または中性亜リン酸エステルである。

0124

中性リン酸エステルおよび中性亜リン酸エステルの具体例としては、上述した、本発明に係る第1の潤滑油組成物で用いられる耐摩耗剤(C)の項で列挙した具体例と同じ化合物が挙げられる。

0125

耐摩耗剤(C)は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。

0126

本発明においては、耐摩耗剤(C)は、潤滑油組成物100重量%に対して、好ましくは0.1〜8重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.5〜1.5重量%の割合で用いられる。耐摩耗剤(C)を上記範囲内の割合で用いると、耐摩耗性を向上させることができる。

0127

本発明に係る第3の潤滑油組成物を、プラスチック部品の他に金属部品を併用した時計たとえばシチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.7680、No.1030;輪列部にプラスチックと金属製歯車を使用している)に使用する場合は、金属部品が摩耗しないよう耐摩耗剤(C)を添加した方が好ましい。
[酸化防止剤(E)]

0128

本発明に係る第3の潤滑油組成物で用いられる酸化防止剤(E)は、通常、フェノール系酸化防止剤および/またはアミン系酸化防止剤である。

0129

アミン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤の具体例としては、上述した、本発明に係る第1の潤滑油組成物で必要に応じて用いられる酸化防止剤(E)の項で列挙した具体例と同じ化合物が挙げられる。

0130

酸化防止剤(E)は、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。

0131

本発明においては、酸化防止剤(E)は、潤滑油組成物100重量%に対して、好ましくは0.01〜2重量%、さらに好ましくは0.03〜1.20重量%の割合で用いられる。酸化防止剤(E)を上記範囲内の割合で用いると、潤滑油組成物の変質を長期に渡って防止することができる。
[第3の潤滑油組成物]

0132

本発明に係る第3の潤滑油組成物は、全酸価が0.2mgKOH/g以下であることが望ましい。全酸価が0.2mgKOH/g以下である潤滑油組成物を時計用潤滑油として用いると、消費電流に変化がなく、潤滑油組成物の粘度上昇や時計部材の腐食を防止することができる。

0133

本発明に係る第3の潤滑油組成物は、プラスチック製部品からなる輪列部を有する時計、および金属製部品からなる輪列部を有する時計の潤滑油として好適である。特に金属製部品からなる輪列部を有する時計の潤滑油として好適である。
時 計

0134

本発明に係る時計は、上述した、本発明に係る第1、第2および第3の潤滑油組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の潤滑油組成物が摺動部に用いられている時計である。

0135

本発明に係る時計の態様としては、たとえば以下のような時計(1)〜(7)が挙げられる。
(1)本発明に係る第1の潤滑油組成物を全ての摺動部に用いた時計。
(2)本発明に係る第2の潤滑油組成物を全ての摺動部に用いた時計。
(3)本発明に係る第3の潤滑油組成物を全ての摺動部に用いた時計。
(4)本発明に係る第1の潤滑油組成物であって、組成、動粘度等の異なる3種類の潤滑油組成物それぞれを摺動部3個所に用いた時計。
(5)本発明に係る第2の潤滑油組成物であって、組成、動粘度等の異なる3種類の潤滑油組成物それぞれを摺動部3個所に用いた時計。
(6)本発明に係る第3の潤滑油組成物であって、組成、動粘度等の異なる3種類の潤滑油組成物それぞれを摺動部3個所に用いた時計。
(7)本発明に係る第1、第2および第3の潤滑油組成物3種類をそれぞれ摺動部の3個所それぞれに用いた時計。

0136

なお、ここにおける時計は、何ら制限はなく、潤滑油を必要とする時計であれば、メカ式時計でも電子式時計であってもよい。
発明の効果

0137

本発明に係る第1の潤滑油組成物は、基油としてポリオールエステル(A)、粘度指数向上剤(B)および耐摩耗剤(C)を特定割合で含有しているので、時計電池の寿命を長く保つことができ、1潤滑油種で、−30℃から80℃まで動作可能で、長期にわたって変質しないという効果を有する。

0138

特に本発明に係る第1の潤滑油組成物が、動粘度が−30℃で1500cSt以下であるポリオールエステル(A)、粘度指数向上剤(B)、耐摩耗剤(C)および金属不活性剤(D)を含有してなり、この潤滑油組成物の、−30℃から80℃における動粘度が1500cSt以下、13cSt以上であり、かつ、90℃で放置したときの重量変化が1.62重量%以下で、全酸価が0.2mgKOH/g以下である場合、この潤滑油組成物を時計用潤滑油として用いると、従来の粘度の異なる3種類の潤滑油を使用して、−10℃から80℃までしか動作させることができなかった時計を、1種類の潤滑油組成物で−30℃から80℃まで長期に渡って安定して動作させることができるという効果がある。

0139

また、本発明に係る第1の潤滑油組成物を時計の摺動部に用いると、時計の耐久年数も従来の10年から20年以上へと大幅に向上する。このため、太陽光発電時計(エコドライブ商品名;シチズン時計(株)製))、熱発電時計(エコサーモ(商品名;シチズン時計(株)製))や、生涯補償腕時計を従来10年でメンテナンスが必要であった時計が、20年以上信頼性良く動作できるため、メンテナンスフリーとすることができる。さらに、時計部材の腐食や、潤滑油組成物の粘度上昇がなくなったため、電池寿命が延び、結果としてサービスステーションに動作不良で回収される時計も激減するという効果がある。

0140

本発明に係る第2の潤滑油組成物は、炭素原子数が少なくとも30以上のパラフィン系炭化水素油(F)、および指数粘度向上剤(B)を特定割合で含有しているので、時計電池の寿命を長く保つことができ、1潤滑油種で、−30℃から80℃まで動作可能で、長期にわたって変質しないという効果を有する。

0141

特に本発明に係る第2の潤滑油組成物が、炭素原子数30以上で、動粘度が−30℃で1500cSt以下であるパラフィン系炭化水素油(F)、粘度指数向上剤(B)、耐摩耗剤(C)および金属不活性剤(D)を含有してなり、この潤滑油組成物の、−30℃から80℃における動粘度が1500cSt以下、13cSt以上であり、かつ、90℃で放置したときの重量変化が1.62重量%以下で、全酸価が0.2mgKOH/g以下である場合、この潤滑油組成物を時計用潤滑油として用いると、従来の粘度の異なる3種類の潤滑油を使用して、−10℃から80℃までしか動作させることができなかった時計を、1種類の潤滑油組成物で−30℃から80℃まで長期に渡って安定して動作させることができるという効果がある。

0142

また、本発明に係る第2の潤滑油組成物を時計の摺動部に用いると、時計の耐久年数も従来の10年から20年以上へと大幅に向上する。このため、太陽光発電時計(エコドライブ(商品名;シチズン時計(株)製))、熱発電時計(エコサーモ(商品名;シチズン時計(株)製))や、生涯補償の腕時計を従来10年でメンテナンスが必要であった時計が、20年以上信頼性良く動作できるため、メンテナンスフリーとすることができる。さらに、時計部材の腐食や、潤滑油組成物の粘度上昇がなくなったため、電池寿命が延び、結果としてサービスステーションに動作不良で回収される時計も激減するという効果がある。

0143

本発明に係る第3の潤滑油組成物は、基油としてエーテル油(G)と、中性リン酸エステルおよび/または中性亜リン酸エステルからなる特定量の耐摩耗剤(C)と、酸化防止剤(E)とを含有しているので、長期に渡って変質せず、時計用潤滑油として好適である。

0144

特に本発明に係る第3の潤滑油組成物が、基油としてエーテル油(G)と、耐摩耗剤(C)として中性リン酸エステルおよび/または中性亜リン酸エステル0.1〜8重量%と、酸化防止剤(E)とを含有してなり、この潤滑油組成物の全酸価が0.2mgKOH/g以下である場合、この潤滑油組成物を時計用潤滑油として用いると、時計部材の腐食や、潤滑油組成物の粘度上昇を抑えることができるため、時計の耐久年数も従来の10年から20年以上へと大幅に向上する。このため、太陽光発電時計(エコドライブ(商品名;シチズン時計(株)製))、熱発電時計(エコサーモ(商品名;シチズン時計(株)製))や、生涯補償の腕時計を従来10年でメンテナンスが必要であった時計が、20年以上信頼性良く動作できるため、メンテナンスフリーとすることができる。さらに、時計部材の腐食や、潤滑油組成物の粘度上昇を抑えることができるため、電池寿命が延び、結果としてサービスステーションに動作不良で回収される時計も激減するという効果がある。
実 施 例
A.本発明に係る第1の潤滑油組成物およびその組成物を用いた時計に関する実施例

0145

シチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.2035:輪列部は金属製(主に真鍮と鉄とからできている))を、時計用潤滑油としてエステル油[式(C4H9)3CCH2OCH2C(C4H9)3で表わされるポリオールエステル基油]、パラフィン系炭化水素油(PAO)[1−ペンテンの4量体水素化物基油]、シリコーンオイル[ポリジメチルシロキサン基油]、従来品(前述したMOEBIUS社製Synt−Lube、潤滑油組成物)をそれぞれ用いて組み立てた。組み立てた時計のそれぞれの消費電流を、常温にて1000時間動作させた前後で比較した。

0146

この結果、エステル油、PAO、従来品は、測定前後で消費電流に差異は見られなかったが、シリコーンオイルを使用した場合消費電流が増加した。消費電流が増加すると電池寿命が短くなるので、この結果、シリコーンオイルは時計用潤滑油として不向きであることが判った。結果を表1に示す。

0147

次に、エステル油とPAOの蒸発量を比較して、基油としてどちらが優れているかを比較するための実験を以下のようにして行なった。

0148

−30℃の動粘度が1500cSt以下のエステル油[ポリオールエステル基油;式 C(−CH2−O−CO−C4H9)4で表わされる]と、−30℃の動粘度が1500cSt以下のPAO[式 H(−CH2−CH(C4H9)−)3Hで表わされる1−ヘキセンの3量体水素化物基油]を用意して、それぞれに対して、−30℃で1500cSt以下で、80℃で15cSt以上の動粘度となるよう、粘度指数向上剤としてメタクリレート系化合物[100℃で測定した動粘度が1550cStのポリメタクリレート]とオレフィン系化合物[100℃で測定した動粘度が2000cStのエチレン・α−オレフィン共重合体]を添加して目的の動粘度範囲になる潤滑油組成物を調製した。

0149

次いで、これらの潤滑油組成物と従来品を用いて、シチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.2035:輪列部は金属製(主に真鍮と鉄とからできている))を調製し、70℃で0.5気圧で1000時間連続動作をさせ、動作前後の消費電流を測定した。

0150

この結果、エステル油を用いた潤滑油組成物と従来品は、試験前後で消費電流は変化していなかったが、PAOを用いた潤滑油組成物は、消費電流が試験前後で大幅に上昇した。給油した潤滑油組成物の量の変化を観察したところ、エステル油を用いた潤滑油組成物は、給油時とほぼ同量の潤滑油組成物が残留し、粘度変化もなかったが、PAOを用いた潤滑油組成物は蒸発と粘度上昇が見られた。

0151

また、前記エステル油を用いた潤滑油組成物とPAOを用いた潤滑油組成物と従来品とを、90℃で放置したときの重量変化を測定したところ、従来品は1.62重量%、エステル油を用いた潤滑油組成物は0.75重量%、PAOを用いた潤滑油組成物は8.35重量%の減少が観測された。以上の結果から、90℃で1.62重量%以内の蒸発量であれば高温動作安定性が得られることが判った。また、PAOを用いた潤滑油組成物は蒸発量が大きいことから、時計用潤滑油に不向きであることが判った。結果を表2に示す。

0152

次に、最も時計に適している構造のエステル油を選定する実験を以下のようにして行なった。

0153

エステル油として、ジエステル分類されるアジピン酸ジエステルであるアジピン酸ジオクチルセバシン酸ジオクチルアジピン酸ジイソデシルアジピン酸ジデシル、100℃で測定した動粘度が270のダイマー酸ジオクチル、ポリオールエステルに分類されるネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(100℃で測定した動粘度=2.5cSt)、トリメチロールプロパン・吉草酸ヘプタン酸混合エステル(100℃で測定した動粘度=3.0cSt)、トリメチロールプロパン・デカン酸オクタン酸混合エステル(100℃で測定した動粘度=4.3cSt)、ノナン酸トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール・ヘプタン酸カプリン酸混合エステル(100℃で測定した動粘度=5.0cSt)をそれぞれ用いて、シチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.2035:輪列部は金属製(主に真鍮と鉄とからできている))を調製し、70℃で64倍速で1000時間連続動作をさせ、動作前後の消費電流を測定した。

0154

この結果、ポリオールエステルは、いずれの場合も、実験前後で消電値は変わらず時計は良好に動作したが、ジエステル類は消電値が上昇した。この結果、時計用潤滑油としてはポリオールエステル油が優れていることが判った。結果を表3に示す。

0155

次に、粘度指数向上剤の最適添加量を求める実験を以下のようにして行なった。

0156

−30℃の動粘度が1500cSt未満のポリオールエステル[トリメチロールプロパン・吉草酸ヘプタン酸混合エステル(100℃で測定した動粘度=2.5cSt)]に、粘度指数向上剤としてポリアクリレート(中和価=0.1、100℃で測定した動粘度=850cSt)、ポリメタクリレート(中和価=0.1、100℃で測定した動粘度=850cSt)、ポリイソブチレン(100℃で測定した動粘度=1000cSt)、ポリアルキルスチレン[ポリエチルスチレン(100℃で測定した動粘度=600cSt)]、ポリエステル[ポリエチレンフマレート(100℃で測定した動粘度=500cSt)]、イソブチレンフマレート(100℃で測定した動粘度=1000cSt)、スチレンマレエートエステル(100℃で測定した動粘度=3000cSt)、酢酸ビニルフマレートエステル(100℃で測定した動粘度=1800cSt)を、それぞれ0重量%、0.1重量%、5重量%、10重量%、20重量%、25重量%、30重量%の量で添加して潤滑油組成物を調製した。

0157

次いで、これらの潤滑油ないし潤滑油組成物の動粘度を測定し、−30℃と80℃の動粘度が、−30℃で1500cSt以下、80℃で13cSt以上の範囲内に入っているかどうかを判定した。また、これらの潤滑油ないし潤滑油組成物を用いて時計を作製し、その動作を確認した。

0158

この結果、それぞれの粘度指数向上剤を0.1〜20重量%の範囲で添加したとき目的の上記範囲内の動粘度を得ることができた。また、時計の動作を確認したところ、粘度指数向上剤を0.1〜20重量%の範囲で添加した潤滑油組成物を使用した時計は正常に動作したが、粘度指数向上剤の添加量が0重量%の場合においては80℃で潤滑油が流れ落ちてしまい、時計は良好に作動することができなかった。粘度指数向上剤の添加量が25重量%、30重量%の場合は時計を組み立てるときに、粘度が高く常温で給油することができなかった。以上のことから、粘度指数向上剤は0.1〜20重量%の範囲内の量で添加することが好ましいことが判った。結果を表4に示す。

0159

次に、適する耐摩耗剤とその添加量を求める実験を以下のようにして行なった。

0160

−30℃の動粘度が1500cSt未満のポリオールエステル[トリメチロールプロパン・吉草酸ヘプタン混合エステル(100℃で測定した動粘度=3.0cSt)]に、粘度指数向上剤としてポリメチルメタクリレート(100℃で測定した動粘度=1550cSt、中和価=0.1)を0.1〜20重量%添加して、動粘度が、−30℃で1500cSt以下、80℃で13cSt以上となるように調製した潤滑油組成物を用意した。

0161

次いで、この組成物に、耐摩耗剤として、ジエチルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、ジエチルジチオリン酸モリブデン(MoDTP)等の金属系耐摩耗剤のうちZnDTP、スルファイド系耐摩耗剤[アルキルスルファイドであるジステアリルスルファイド]、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート等の中性リン酸エステル系耐摩耗剤のうちトリクレジルフォスフェート、酸性リン酸エステル系耐摩耗剤(ラウリルアシッドフォスフェート)、中性亜リン酸エステル系耐摩耗剤(トリオレイルフォスファイト)、酸性リン酸エステル系耐摩耗剤(ジラウリルハイドロゲンフォスファイト)、酸性リン酸エステルアミン塩(ラウリルアシッドフォスフェートジエチルアミン塩)をそれぞれ0〜10重量%の範囲内の量で添加し、潤滑油組成物を調製した。

0162

次いで、得られた潤滑油組成物を用いて、シチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.2035:輪列部は金属製(主に真鍮と鉄とからできている))を作製し、その動作確認を行なった。

0163

この結果、金属系耐摩耗剤、スルフィド系耐摩耗剤、酸性亜リン酸エステル系耐摩耗剤、酸性リン酸エステルアミン塩耐摩耗剤を添加した潤滑油組成物を使用した時計は、腐食やゲル化が起こり動作不良を発生した。酸性リン酸エステル系耐摩耗剤を添加した潤滑油組成物を使用した時計は、高温時に腐食やゲル化が起こり動作不良を発生した。中性リン酸エステル系耐摩耗剤、中性亜リン酸エステル系耐摩耗剤を0重量%超え、かつ8重量%以下の量で添加した潤滑油組成物を使用した時計では、摩擦摩耗もなく良好に動作したが、添加量0%では摩耗が発生し時計が停止した。また、中性リン酸エステル系耐摩耗剤、中性亜リン酸エステル系耐摩耗剤を8重量%よりも多く添加しても、8重量%添加したときと比べて摩擦摩耗状態に変化はなかった。この結果、耐摩耗剤として中性リン酸エステル、中性亜リン酸エステルを0.1〜8重量%の量で添加することが好ましいことが判った。実験の結果を表5に示す。

0164

次に、潤滑油組成物の使用可能な全酸価の範囲を求める実験を以下のように行なった。

0165

ポリオールエステルに分類されるネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(100℃で測定した動粘度=2.5cSt)、トリメチロールプロパン・吉草酸ヘプタン酸混合エステル(100℃で測定した動粘度=3.0cSt)、トリメチロールプロパン・デカン酸オクタン酸混合エステル(100℃で測定した動粘度=4.3cSt)、ノナン酸トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール・ヘプタン酸カプリン酸混合エステル(100℃で測定した動粘度=5.0cSt)を用いて、それぞれ全酸価が0.2、0.5、1.0、1.2mgKOH/gになるように、吉草酸を添加して調製した潤滑油組成物を用意した。

0166

次いで、これらの潤滑油組成物を用いて、シチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.2035:輪列部は金属製(主に真鍮と鉄とからできている))を作製し、60℃、湿度95%で64倍速で1000時間連続動作をさせ、動作前後の消費電流を測定した。

0167

この結果、潤滑油組成物の全酸価が0.5mgKOH/g以上の場合はいずれの場合も、消費電流に上昇が見られ、時計部材の腐食と粘度上昇が観察されたが、全酸価が0.2mgKOH/gの場合は、消費電流に変化はなく、粘度上昇や部材腐食は見受けられなかった。

0168

以上の結果から、時計用潤滑油としては、潤滑油組成物の全酸価が0.2mgKOH/g以下のポリオールエステル含有潤滑油組成物が適していることが判った。結果を表6に示す。

0169

従来品(前記MOEBIUS社製Synt−Lube)と本発明に係る第1の潤滑油組成物との性能の比較を、以下のように金属製の電子式時計を用いて行なった。

0170

動粘度が−30℃で1500cSt以下のポリオールエステル[ネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(100℃で測定した動粘度=2.5cSt)、またはトリメチロールプロパン・吉草酸ヘプタン酸混合エステル(100℃で測定した動粘度=3.0cSt)に、粘度指数向上剤[前記ポリアクリレート、前記ポリメタクリレート、前記ポリイソブチレン、前記ポリアルキルスチレン、前記ポリエステル、前記イソブチレンフマレート、前記スチレンマレエートエステル、または前記酢酸ビニルフマレートエステル]0.1〜20重量%と、耐摩耗剤[中性リン酸エステル(トリオレイルフォスフェート)、または中性亜リン酸エステル(トリキシレニルフォスファイト)]0.1〜8重量%と、酸化防止剤[フェノール系酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)、またはアミン系酸化防止剤(ジフェニルアミン誘導体;商品名イルガノックスL57、チバスシャリティケミカルズ社製)]0.5重量%と、金属不活性剤としてベンゾトリアゾール0.05重量%とを添加して、動粘度が−30℃にて1500cSt以下、80℃にて13cSt以上、90℃で放置したときの重量変化が1.62重量%以下で、全酸価が0.2mgKOH/g以下である潤滑油組成物を時計用潤滑油として調製した。

0171

これらの潤滑油組成物と従来品(前記MOEBIUS社製Synt−Lube、全酸価1.24mgKOH/g)とを用いて、それぞれシチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.2035:輪列部は金属製(主に真鍮と鉄とからできている))を作製し、−30℃、−10℃、常温、80℃、45℃湿度95%の条件で1000時間連続動作をさせ、動作前後の消費電流の測定と、常温にて64倍の速度で20年分の針回し耐久試験サンプル数20個で実施した。

0172

この結果、ポリオールエステル油を基油とした潤滑油組成物の場合は、いずれの試験でも消電値の変化は殆どなく時計は正常に動作した。

0173

従来品(潤滑油組成物)の場合は、−10℃、常温では時計が正常に動作したが、−30℃では時計止まりが発生した。80℃ではこの潤滑油組成物が抜けて消電値が上昇する現象が発生した。45℃湿度95%の場合は、この潤滑油組成物に起因する腐食と粘度上昇が観察され、消電値が発生した。20年相当の針回し耐久試験では、時計は10年までは正常に動作していたが、20年では時計止まりが発生した。

0174

従来品(MOEBIUS社製Synt−Lube、潤滑油組成物)と本発明に係る第1の潤滑油組成物との性能の比較を、メカ式時計と輪列部にプラスチック部品を具備する時計とで以下のようにして行なった。

0175

動粘度が−30℃で1500cSt以下のポリオールエステル[ネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(100℃で測定した動粘度=2.5cSt)、またはトリメチロールプロパン・吉草酸ヘプタン酸混合エステル(100℃で測定した動粘度=3.0cSt)]に、粘度指数向上剤[前記ポリアクリレート、前記ポリメタクリレート、前記ポリイソブチレン、前記ポリアルキルスチレン、前記ポリエステル、前記イソブチレンフマレート、前記スチレンマレエートエステル、または前記酢酸ビニルフマレートエステル]0.1〜20重量%と、耐摩耗剤剤[中性リン酸エステル(トリフェニルフォスフェート)、または中性亜リン酸エステル(トリステアリルフォスファイト)]0.1〜8重量%と、酸化防止剤[フェノール系酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)、またはアミン系酸化防止剤(ジフェニルアミン誘導体;商品名イルガノックスL06、チバスペシャリティケミカルズ社製)]0.5重量%と、金属不活性剤としてベンゾトリアゾール0.05重量%とを添加して、動粘度が−30℃にて1500cSt以下、80℃にて13cSt以上、90℃で放置したときの重量変化が1.62重量%以下で、全酸価が0.2mgKOH/g以下である潤滑油組成物を時計用潤滑油として調製した。

0176

次いで、これらの潤滑油組成物を用いて、プラスチック部品を使用しているシチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.7680とNo.1030:輪列部にプラスチック製歯車を使用している)と、メカ式時計であるシチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.6650とNo.8200)についても−30℃、−10℃、常温、80℃、45℃湿度95%の条件で1000時間連続動作をさせ、動作前後の消費電流の測定と、常温にて64倍の速度で20年分の針回し耐久試験をサンプル数20個で実施した。この結果、いずれの試験でも消電値の変化はなく正常に動作した。
B.本発明に係る第2の潤滑油組成物およびその組成物を用いた時計に関する実施例

0177

シチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(輪列部はプラスチックでできている)を、エステル油(コハク酸ジヘキシル)、パラフィン系炭化水素油(PAO)(1−デセンの3量体)、シリコーンオイル(ポリジメチルシロキサン)、従来品(前記MOEBIUS社製Synt−Lube)を用いて組み立てた。組み立てた時計のそれぞれの消費電流を、常温にて1000時間動作させた前後で比較した。

0178

この結果、PAO、従来品は、測定前後で消費電流に差異は見られなかったが、エステル油、シリコーンオイルを使用した場合消費電流が増加した。消費電流が増加すると電池寿命が短くなるので、この結果、エステル油、シリコーンオイルはプラスチック製時計用潤滑油として不向きであることが判った。結果を表7に示す。

0179

次に、PAOの蒸発量を比較して、基油として好適に使用できるPAOの炭素原子数を決めるための実験を以下のようにして行なった。

0180

100℃での動粘度が2cStのPAO(PAO2とする)、3cStのPAO(PAO3とする)、4cStのPAO(PAO4とする)、5cStのPAO(PAO5とする)のそれぞれに対して、−30℃で1500cSt以下で、80℃で15cSt以上の動粘度となるよう、粘度指数向上剤としてメタクリレート系化合物[ポリメチルメタクリレート(100℃で測定した動粘度=1550cSt)、商品名アクルーブ707、三洋化成(株)製]とオレフィン系化合物[エチレン・α−オレフィン共重合体(100℃で測定した動粘度=2000cSt)、商品名 ルーカントHC2000、三井化学(株)製]を添加して目的の動粘度範囲になる潤滑油組成物を調製した。

0181

次いで、これらの潤滑油組成物と従来品(前記MOEBIUS社製Synt−Lube)を用いて、シチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(輪列部はプラスチックでできている)を調製し、70℃で0.5気圧で1000時間連続動作をさせ、動作前後の消費電流を測定した。

0182

この結果、PAO4を用いた潤滑油組成物、PAO5を用いた潤滑油組成物と従来品は、試験前後で消費電流は変化していなかったが、PAO2を用いた潤滑油組成物、PAO3を用いた潤滑油組成物は、消費電流が試験前後で大幅に上昇した。給油した潤滑油組成物の量の変化を観察したところ、PAO4を用いた潤滑油組成物、PAO5を用いた潤滑油組成物は、給油時とほぼ同量の潤滑油組成物が残留し、粘度変化もなかったが、PAO2を用いた潤滑油組成物とPAO3を用いた潤滑油組成物は、蒸発と粘度上昇が見られた。前記PAOを用いた潤滑油組成物と従来品とを90℃で放置したときの重量変化を測定したところ、従来品は1.62重量%、PAO2を用いた潤滑油組成物は15.6重量%、PAO3を用いた潤滑油組成物は8.35重量%、PAO4を用いた潤滑油組成物は0.70重量%、PAO5を用いた潤滑油組成物は0.30重量%の減少が観測された。以上の結果、90℃で1.62重量%以内の蒸発量であれば高温動作安定性が得られることが判った。

0183

本実施例に用いたPAOは、PAO2からPAO5になるに連れて炭素原子数が多くなっていくものを用いている。PAO4の炭素原子数は30であったことから、時計用潤滑油の基油として適するPAOの炭素原子数は30以上であることが判った。結果を表8に示す。

0184

次に、粘度指数向上剤の最適添加量を求める実験を以下のようにして行なった。

0185

炭素原子数が30未満で、−30℃の動粘度が1500cSt未満のパラフィン系炭化水素油(PAO5)に、粘度指数向上剤としてポリアクリレート[ポリメチルアクリレート(100℃で測定した動粘度=850cSt、中和価=0.1)]、ポリメタクリレート[ポリメチルメタクリレート(100℃で測定した動粘度=1550cSt、中和価=0.1)]、ポリイソブチレン(100℃で測定した動粘度=1000cSt)、ポリアルキルスチレン[ポリエチルスチレン(100℃で測定した動粘度=600cSt)]、ポリエステル[ポリエチレンフマレート(100℃で測定した動粘度=500cSt)]、イソブチレンフマレート(100℃で測定した動粘度=1000cSt)、スチレンマレエートエステル(100℃で測定した動粘度=3000cSt)、または酢酸ビニルフマレートエステル(100℃で測定した動粘度=1800cSt)をそれぞれ0重量%、0.1重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、30重量%の量で添加して潤滑油組成物を調製した。

0186

次いで、これらの潤滑油ないし潤滑油組成物の動粘度を測定し、−30℃と80℃の動粘度が、−30℃で1500cSt以下、80℃で13cSt以上の範囲に入っているかどうかを判定した。また、これらの潤滑油ないし潤滑油組成物を用いて時計を作製し、その動作を確認した。

0187

この結果、それぞれの粘度指数向上剤を0.1〜15重量%の範囲内で添加したとき目的の動粘度を得ることができた。また、時計の動作を確認したところ、0.1〜15重量%の範囲内で添加した潤滑油組成物を使用した時計は正常に動作したが、粘度指数向上剤の添加量が0重量%の場合においては80℃で潤滑油が流れ落ちてしまい、良好に作動することができなかった。粘度指数向上剤の添加量が20重量%の場合は時計を組み立てるときに、粘度が高く常温で給油することができなかった。また、粘度指数向上剤の添加量が30重量%の場合、粘度指数向上剤は基油に溶解することができなかった。以上のことから、粘度指数向上剤は0.1〜15重量%の範囲で添加することが好ましいことが判った。

0188

次いで、炭素原子数が30以上で、−30℃の動粘度が1500cSt未満のパラフィン系炭化水素油(PAO5)に、粘度指数向上剤[エチレン・α−オレフィン共重合体(100℃で測定した動粘度=2000cSt)]を0.1〜15重量%の範囲内で添加して、動粘度が−30℃で1500cSt以下、80℃で13cSt以上になる潤滑油組成物を調製した。

0189

次いで、この潤滑油組成物を用いて、シチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(輪列部はプラスチックでできている)を作製し、その動作確認を行なった。この結果、時計は良好に動作した。

0190

以上の結果から、炭素原子数が30以上の蒸発性の少ないパラフィン系炭化水素油(PAO)に、粘度指数向上剤を0.1〜15重量%添加して、動粘度が−30℃で1500cSt以下、80℃で13cSt以上となるように調製した潤滑油組成物を用いることにより、摺動部がプラスチックでできている時計を良好に動作させることができることが判った。

0191

時計には、摺動部がプラスチックと金属部品とからなる時計、摺動部が金属のみからなる時計があるため、耐摩耗剤や、金属不活性剤を添加する必要がある。

0192

次に、適する耐摩耗剤とその添加量を求める実験を以下のようにして行なった。

0193

炭素原子数が30以上で、−30℃の動粘度が1500cSt未満のパラフィン系炭化水素油(PAO4)に、粘度指数向上剤[エチレン・α−オレフィン共重合体(100℃で測定した動粘度=100cSt)]を0.1〜15重量%の範囲内で添加して、動粘度が−30℃で1500cSt以下、80℃で13cSt以上になる潤滑油組成物を調製した。

0194

次いで、この潤滑油組成物に、耐摩耗剤としてZnDTP、MoDTP等の金属系耐摩耗剤のうちZnDTP、スルファイド系耐摩耗剤(アルキルスルファイドであるジステアリルスルファイド)、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート等の中性リン酸エステル系耐摩耗剤うちトリクレジルフォスフェート、酸性リン酸エステル系耐摩耗剤(ラウリルアシッドフォスフェート)、中性亜リン酸エステル系耐摩耗剤(トリオレイルフォスファイト)、酸性リン酸エステル系耐摩耗剤(ジラウリルハイドロゲンフォスファイト)、酸性リン酸エステルアミン塩(ラウリルアシッドフォスフェートジエチルアミン塩)をそれぞれ0〜10重量%の範囲内で量を変えて添加し、潤滑油組成物を調製した。

0195

次いで、これらの潤滑油組成物を用いて、シチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.2035:輪列部は金属製(主に真鍮と鉄とからできている))を作製し、その動作確認を行なった。

0196

この結果、金属系耐摩耗剤、スルフィド系耐摩耗剤、酸性亜リン酸エステル系耐摩耗剤、酸性リン酸エステルアミン塩耐摩耗剤を添加した潤滑油組成物を使用した時計は、腐食やゲル化が起こり動作不良を発生した。酸性リン酸エステル系耐摩耗剤を添加した潤滑油組成物を使用した時計は、高温時に腐食やゲル化が起こり動作不良を発生した。中性リン酸エステル系耐摩耗剤、中性亜リン酸エステル系耐摩耗剤を0より多く8重量%以下の量で添加した潤滑油組成物を使用した時計では、摩擦摩耗もなく良好に動作したが、添加量0%では摩耗が発生し時計が停止した。また、8重量%よりも多く添加しても、8重量%添加したときと比べて、摩擦摩耗状態に変化はなかった。この結果、耐摩耗剤として中性リン酸エステル、中性亜リン酸エステルを0.1〜8重量%の量を添加することが好ましいことが判った。実験の結果を表9に示す。

0197

次に、使用可能な潤滑油組成物の全酸価の範囲を求める実験を以下のようにして行なった。

0198

炭素原子数が30のPAO4で−30℃の動粘度が1500cSt未満のパラフィン系炭化水素油(PAO)[商品名 PAO401、シェブロン社製]と、炭素原子数が30よりも多いPAO5で−30℃の動粘度が1500cSt未満のパラフィン系炭化水素油(PAO)[商品名 PAO501、シェブロン社製]のそれぞれに対して、粘度指数向上剤[エチレン・α−オレフィン共重合体、商品名 ルーカントHC2000、三井化学(株)製、商品名 ルーカントHC100、三井化学(株)製]を0.1〜15重量%の範囲内で添加し、動粘度が−30℃で1500cSt以下、80℃で13cSt以上になる潤滑油組成物を調製した。

0199

次いで、これらの潤滑油組成物を用いて、組成物の全酸価が0.2、0.5、1.0、1.2mgKOH/gになるように、吉草酸を添加し、潤滑油組成物を調製した。

0200

次いで、これらの潤滑油組成物を用いて、シチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.2035:輪列部は金属製(主に真鍮と鉄とからできている))を作製し、60℃、湿度95%で64倍速で1000時間連続動作をさせ、動作前後の消費電流を測定した。

0201

この結果、潤滑油組成物の全酸価が0.5mgKOH/g以上の場合はいずれの場合も、消費電流に上昇が見られ、時計部材の腐食と粘度上昇が観察されたが、全酸価が0.2mgKOH/gの場合は、消費電流に変化はなく、粘度上昇や部材腐食は見受けられなかった。

0202

以上の結果から、時計用潤滑油としては、潤滑油組成物の全酸価が0.2mgKOH/g以下のパラフィン系炭化水素油含有潤滑油組成物が適していることが判った。結果を表10に示す。

0203

次に、従来品(前述したMOEBIUS社製Synt−Lube、潤滑油組成物)と本発明に係る第2の潤滑油組成物との性能の比較を、金属製の電子式時計を用いて以下のようにして行なった。

0204

動粘度が−30℃で1500cSt以下のパラフィン系炭化水素油[炭素原子数30以上;商品名 PAO501、シェブロン社製]に、粘度指数向上剤(前記ポリアクリレート、前記ポリメタクリレート、前記ポリイソブチレン、前記ポリアルキルスチレン、前記ポリエステル、前記イソブチレンフマレート、前記スチレンマレエートエステル、または前記酢酸ビニルフマレートエステル)0.1〜15重量%と、耐摩耗剤剤[中性リン酸エステル(トリオクチルフォスフェート)、または中性亜リン酸エステル(トリオレイルフォスファイト)0.1〜8重量%と、酸化防止剤[フェノール系酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)、またはアミン系酸化防止剤(ジフェニルアミン誘導体;商品名イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)]0.5重量%と、金属不活性剤としてベンゾトリアゾール0.05重量%とを添加して、動粘度が−30℃にて1500cSt以下、80℃にて13cSt以上、90℃で放置したときの重量変化が10重量%以下で、全酸価が0.2mgKOH/g以下である潤滑油組成物を時計用潤滑油として調製した。

0205

次いで、これらの潤滑油組成物と従来品(前述したMOEBIUS社製Synt−Lube、潤滑油組成物の全酸価1.24mgKOH/g)とを用いて、それぞれシチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.2035:輪列部は金属製(主に真鍮と鉄とからできている))を作製し、−30℃、−10℃、常温、80℃、45℃湿度95%の条件で1000時間連続動作をさせ、動作前後の消費電流の測定と、常温にて64倍の速度で20年分の針回し耐久試験をサンプル数20個で実施した。

0206

この結果、パラフィン系炭化水素油を基油とした潤滑油組成物の場合は、いずれの試験でも消電値の変化は殆どなく時計は正常に動作した。従来品の場合は、−10℃、常温では時計は正常に動作したが、−30℃では時計止まりが発生した。80℃では従来品の潤滑油組成物が抜けて消電値が上昇する現象が発生した。45℃湿度95%の場合は、潤滑油組成物に起因する腐食と粘度上昇が観察され、消電値が発生した。20年相当の針回し耐久試験では、10年までは時計は正常に動作していたが、20年では時計止まりが発生した。

0207

従来品(MOEBIUS社製Synt−Lube)と本発明に係る第2の潤滑油組成物との性能の比較を、メカ式時計と輪列部に金属部品とプラスチック部品を具備する時計を用いて以下のようにして行なった。

0208

動粘度が−30℃で1500cSt以下のパラフィン系炭化水素油[炭素原子数30以上;商品名 PAO501、シェブロン社製]に、粘度指数向上剤(前記ポリアクリレート、前記ポリメタクリレート、前記ポリイソブチレン、前記ポリアルキルスチレン、前記ポリエステル、前記イソブチレンフマレート、前記スチレンマレエートエステル、または前記酢酸ビニルフマレートエステル)0.1〜15重量%と、耐摩耗剤剤[中性リン酸エステル(トリオクチルフォスフェート)、または中性亜リン酸エステル(トレイオレイルフォスファイト)]0.1〜8重量%と、酸化防止剤[フェノール系酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)、またはアミン系酸化防止剤(ジフェニルアミン誘導体;商品名イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5重量%と、金属不活性剤としてベンゾトリアゾール0.05重量%とを添加して、動粘度が−30℃にて1500cSt以下、80℃にて13cSt以上、90℃で放置したときの重量変化が10重量%以下(1.62重量%以下)で、全酸価が0.2mgKOH/g以下である潤滑油組成物を時計用潤滑油として調製した。

0209

次いで、これらの潤滑油組成物を用いて、金属部品とプラスチック部品を使用しているシチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.7680とNo.1030:輪列部にプラスチックと金属製歯車を使用している)とメカ式時計であるシチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.6650とNo.8200)についても、−30℃、−10℃、常温、80℃、45℃湿度95%の条件で1000時間連続動作をさせ、動作前後の消費電流の測定と、常温にて64倍の速度で20年分の針回し耐久試験をサンプル数20個で実施した。この結果、いずれの試験でも消電値の変化はなく時計は正常に動作した。
C.本発明に係る第3の潤滑油組成物およびその組成物を用いた時計に関する実施例

0210

適する耐摩耗剤の種類とその添加量を求める実験を以下のようにして行なった。

0211

基油であるエーテル油[アルキル置換ジフェニルエーテル、商品名 モレスハイルーブLB32、(株)石油研究所製]に、耐摩耗剤として、ZnDTP、MoDTP等の金属系耐摩耗剤うちZnDTP、スルファイド系耐摩耗剤[アルキルスルファイドであるジステアリルスルファイド]、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート等の中性リン酸エステル系耐摩耗剤のうちトリクレジルフォスフェート、酸性リン酸エステル系耐摩耗剤(ラウリルアシッドフォスフェート)、中性亜リン酸エステル系耐摩耗剤(トリオレイルフォスファイト)、酸性リン酸エステル系耐摩耗剤(ジラウリルハイドロゲンフォスファイト)、酸性リン酸エステルアミン塩(ラウリルアシッドフォスフェートジエチルアミン塩)をそれぞれ0〜10重量%の量で添加して潤滑油組成物を時計用潤滑油として調製した。

0212

次いで、これらの潤滑油組成物を用いて、シチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.2035:輪列部は金属製(主に真鍮と鉄とからできている))を作製し、その動作確認を行なった。

0213

この結果、金属系耐摩耗剤、スルフィド系耐摩耗剤、酸性亜リン酸エステル系耐摩耗剤、酸性リン酸エステルアミン塩耐摩耗剤を添加した潤滑油組成物を使用した時計は、腐食やゲル化が起こり動作不良を発生した。酸性リン酸エステル系耐摩耗剤を添加した潤滑油組成物を使用した時計は、高温時に腐食やゲル化が起こり動作不良を発生した。中性リン酸エステル系耐摩耗剤、中性亜リン酸エステル系耐摩耗剤を0重量%を超え、かつ8重量%以下の量で添加した潤滑油組成物を使用した時計では、摩擦摩耗もなく良好に動作したが、添加量0%では摩耗が発生し時計が停止した。また、中性リン酸エステル系耐摩耗剤、中性亜リン酸エステル系耐摩耗剤を8重量%よりも多く添加しても、8重量%添加したときと比べて摩擦摩耗状態に変化はなかった。この結果、耐摩耗剤として中性リン酸エステル、中性亜リン酸エステルを0.1〜8重量%の量で添加することが好ましいことが判った。実験の結果を表11に示す。

0214

次に、使用可能な潤滑油組成物の全酸価の範囲を求める実験を以下のようにして行なった。

0215

基油として、商品名 モレスコハイルーブLB22[(株)松村石油研究所製]に、耐摩耗剤(トリオクチルフォスフェート)と酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)を加え、そこへラウリン酸を加えて、全酸価が0.2mgKOH/gであるエーテル油、0.5mgKOH/gであるエーテル油、1.0mgKOH/gであるエーテル油、1.2mgKOH/gであるエーテル油を調製し、それぞれの基油と同じ全酸価を有する潤滑油組成物を調製した。

0216

次いで、これらの潤滑油組成物を用いて、シチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.2035:輪列部は金属製(主に真鍮と鉄とからできている))を作製し、60℃、湿度95%で64倍速で1000時間連続動作をさせ、動作前後の消費電流を測定した。

0217

この結果、潤滑油組成物の全酸価が0.5mgKOH/g以上の場合はいずれの場合も、消費電流に上昇が見られ、時計部材の腐食と粘度上昇が観察されたが、全酸価が0.2mgKOH/gの場合は、消費電流に変化はなく、粘度上昇や部材腐食は見受けられなかった。

0218

以上の結果から、時計用潤滑油としては、潤滑油組成物の全酸価が0.2mgKOH/g以下であるエーテル含有潤滑油組成物が適していることが判った。結果を表12に示す。

0219

従来品(前記MOEBIUS社製Synt−Lube)と本発明に係る第3の潤滑油組成物との性能の比較を、金属製の電子式時計を用いて以下のようにして行なった。

0220

基油としてエーテル油[商品名 モレスコハイルーブLB15、(株)松村石油研究所製]と、耐摩耗剤として中性リン酸エステル(トリオクチルフォスフェート)または中性亜リン酸エステル(トリオレイルフォスファイト)0.1〜8重量%と、酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)とを含有する、全酸価が0.2mgKOH/g以下である潤滑油組成物を時計用潤滑油として調製した。

0221

次いで、これらの潤滑油組成物と従来品(全酸価1.24mgKOH/g)とを用いて、それぞれシチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.2035:輪列部は金属製(主に真鍮と鉄とからできている))を作製し、−10℃、常温、60℃、45℃湿度95%の条件で1000時間連続動作をさせ、動作前後の消費電流の測定と、常温にて64倍の速度で20年分の針回し耐久試験をサンプル数20個で実施した。

0222

この結果、エーテル油を基油とした、本発明に係る第3の潤滑油組成物の場合は、いずれの試験でも消電値の変化は殆どなく時計は正常に動作した。従来品の場合は、−10℃、常温、60℃で正常に動作したが、45℃湿度95%の場合は、従来品の潤滑油組成物に起因する腐食と粘度上昇が観察され、消電値が発生した。20年相当の針回し耐久試験では、10年までは正常に動作していたが、20年では時計止まりが発生した。

0223

本発明に係る第3の潤滑油組成物を、メカ式時計と輪列部に金属部品とプラスチック部品を具備する時計で性能の比較を以下のようにして行なった。

0224

基油としてエーテル油[商品名 モレスコハイルーブLB32、(株)松村石油研究所製]と、耐摩耗剤として中性リン酸エステル(トリオクチルフォスフェート)または中性亜リン酸エステル(トリオレイルフォスファイト)0.1〜8重量%と、酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)とを含有する、全酸価が0.2mgKOH/g以下である潤滑油組成物を調製した。

0225

次いで、これらの潤滑油組成物を用いて、金属部品とプラスチック部品を使用しているシチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.7680とNo.1030:輪列部にプラスチックと金属製歯車を使用している)と、メカ式時計であるシチズン時計(株)製の時計ムーブメントTM(No.6650とNo.8200)についても−30℃、−10℃、常温、80℃、45℃湿度95%の条件で1000時間連続動作をさせ、動作前後の消費電流の測定と、常温にて64倍の速度で20年分の針回し耐久試験をサンプル数20個で実施した。この結果、いずれの試験でも消電値の変化はなく正常に動作した。

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