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課題・解決手段
安全性の高い抗菌性物質を含有し、食品の味覚、風味に悪影響を与えないで、保存性を高める食品用保存剤および食品の保存方法を提供すること1,5−D−アンヒドロフルクトースと、グリシン、アラニン等のアミノ酸、グリセリン低級脂肪酸エステル、シュガーエステル、ビタミンB1塩類、重合リン酸塩、エタノール、プロタミン等の塩基性たん白・ペプチド、甘草抽出抗菌性物質、唐辛子抽出物、ホップ抽出物、ユッカ抽出物、モウソウチク抽出物、グレープフルーツ種子抽出物、わさびあるいはからし抽出物、酢酸等の有機酸類およびそれらの塩類、ソルビン酸、安息香酸およびそれらの塩類・エステル類、プロピオン酸とその塩類、キトサン、細菌DNA等の食品添加物として使用できる抗菌性物質から選ばれる1種または2種以上を併用する。
概要
背景
概要
安全性の高い抗菌性物質を含有し、食品の味覚、風味に悪影響を与えないで、保存性を高める食品用保存剤および食品の保存方法を提供すること1,5−D−アンヒドロフルクトースと、グリシン、アラニン等のアミノ酸、グリセリン低級脂肪酸エステル、シュガーエステル、ビタミンB1塩類、重合リン酸塩、エタノール、プロタミン等の塩基性たん白・ペプチド、甘草抽出抗菌性物質、唐辛子抽出物、ホップ抽出物、ユッカ抽出物、モウソウチク抽出物、グレープフルーツ種子抽出物、わさびあるいはからし抽出物、酢酸等の有機酸類およびそれらの塩類、ソルビン酸、安息香酸およびそれらの塩類・エステル類、プロピオン酸とその塩類、キトサン、細菌DNA等の食品添加物として使用できる抗菌性物質から選ばれる1種または2種以上を併用する。
目的
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 6件
- 牽制数
- 15件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
1,5−D−アンヒドロフルクトースを食品に添加しながら加熱するかあるいは食品に添加したのち加熱することを特徴とする保存性に優れた食品の製造法。
請求項2
1,5−D−アンヒドロフルクトースを食品に対して0.01〜10重量%となる割合で添加する請求項1に記載の方法。
請求項3
加熱を50〜250℃で1秒〜300分行う請求項1に記載の方法。
請求項4
あらかじめ熱処理された1,5−D−アンヒドロフルクトースを食品に添加することを特徴とする保存性に優れた食品の製造法。
請求項5
あらかじめ熱処理された1,5−D−アンヒドロフルクトースを食品に対して0.01〜10重量%となる割合で添加する請求項4に記載の方法。
請求項6
あらかじめ熱処理された1,5−D−アンヒドロフルクトースの該加熱処理の条件が50〜150℃で1秒から100時間である請求項4に記載の方法。
請求項7
添加の際に、添加しつつ加熱するかあるいは添加したのち、さらに加熱する請求項4に記載の方法。
請求項8
加熱条件が50〜250℃で1秒〜300分である請求項7に記載の方法。
請求項9
(A)1,5−D−アンヒドロフルクトースおよびあらかじめ熱処理された1,5−D−アンヒドロフルクトースのいずれか一方または両方、並びに(B)食品添加物として使用できる抗菌活性を有する物質を含有することを特徴とする食品保存剤。
請求項10
あらかじめ熱処理された1,5−D−アンヒドロフルクトースの該加熱処理の条件が50〜150℃で1秒〜100時間である請求項9に記載の食品保存剤。
請求項11
食品添加物として使用できる抗菌活性を有する物質が、アミノ酸類;グリセリン低級脂肪酸エステル;シュガーエステル;ビタミンB1塩類;重合リン酸塩;エタノール;塩基性たん白・ペプチド;甘草抽出抗菌性物質;唐辛子抽出物;ホップ抽出物;ユッカ抽出物;モウソウチク抽出物;グレープフルーツ種子抽出物;わさびあるいはからし抽出物;酢酸、乳酸、フマル酸、およびそれらの塩類;ソルビン酸、安息香酸およびそれらの塩類とエステル類;プロピオン酸とその塩類;キトサン並びに細菌DNAからなる群より選ばれる請求項9に記載の食品用保存剤。
請求項12
請求項9に記載の食品保存剤を食品に添加することを特徴とする保存性の優れた食品の製造法。
請求項13
請求項9に記載の食品保存剤を食品に添加しながら加熱するかあるいは添加したのち加熱することを特徴とする保存性の優れた食品の製造法。
請求項14
請求項9に記載の食品保存剤を食品に添加し次いで得られた食品を保存することを特徴とする食品の保存方法。
請求項15
請求項9に記載の食品保存剤を食品に添加しながら加熱するかあるいは添加したのち加熱し、次いで得られた食品を保存することを特徴とする食品の保存方法。
技術分野
0002
食品の流通過程において、店頭または家庭における貯蔵・保存は、常に解決を求められる課題としてあり、そのための対策として、各種の物理的あるいは化学的方法が考案されてきた。例えば、冷凍、冷蔵、乾燥、塩蔵、糖蔵、加熱滅菌、加熱殺菌(びん、缶詰)、包装加熱、包装内部の気相置換、さらには安息香酸やソルビン酸などの化学的保存料の使用などがそれらの対応策として採られてきた。
0003
安全性はいつの時代においても第一に要求されるが、近年特に、健康と食物に対する関心が深まり、それと共に、天然または自然に近い食品に対する関心が高まってきている。このような近年の食品に対する指向は、食品の保存方法にも著しい影響を与えている。
0004
さらに現代の食品の抱える問題は、食品類の国境が無くなってきていることであり、世界中のあらゆる所から食品素材あるいは食品そのものが輸入されて来ていることである。このことは食品とともに、食品に付着ないし汚染している各種の微生物が広く食品市場に入ってきていることを意味し、多くの新しい食中毒菌例えば、E.coli O−157:H7や、幾つかのサルモネラ菌、従来あまり日本では検出されなかったボツリヌスAあるいはB型菌などによる食中毒の危険性が指摘されるに到っている。
0005
さらに最近は、多種・多様な調理済食品が増加し、例えば、サラダ類、サンドイッチ、卵焼き、チキンナゲット、カスタードクリーム、煮物、フライ類、漬物など、いわゆるおかずの類が、それなりに一定期間の微生物に対する安定性の保証を求められながら市販されるに至っている。
0006
また、健康指向から、あらゆる保存性食品において食塩濃度を低下させることが行われており、例えばイカの塩辛の食塩濃度は10%以上であったものが4〜5%に低下され、漬物では12〜3%のものが4〜6%に、味噌では13%程度のものが4〜8%に低下してきている。このことは食品類の微生物に対する安定性が著しく低下していることを意味し、単に腐敗しやすいのみならず、各種の食中毒菌に対する安全性も低下することとなってきている。
0007
このような状況下にあって、食品の保存策として、例えば(1)製造する環境を清潔にすること、(2)生産と食品の包装工程において微生物の汚染をできるだけ少なくすること、(3)微生物の汚染度のできるだけ少ない食品材料を使用すること、(4)製造工程から包装工程をできるだけ低温に管理すること、(5)製品は低温に保存することなどの基本的な対策を行うのが通例である。しかしながら、食品原材料中の微生物の数を、完全にゼロにすることは極めて困難であり、また食品を低温下に置いた場合でも細菌の中には低温でよく増殖するものがあるので、時間の経過とともに発育し食品を腐敗させることもある。
0008
一方、加熱により食品の保存性を高める方法は古くから行われてきた方法であるが、完全な殺菌を行うためには苛酷な加熱条件を設定しなければならず、その場合、食品中の栄養成分の崩壊あるいは食品本来の嗜好性の損失等により、食品自体の価値を低下させることになる。そのため実際には、ある程度緩和な加熱条件が設定されることになるため、完全な殺菌は達せられない。例えば、近年増加している加工食品においては、加熱加工後に残存しているBacillus属等の耐熱性細菌による変敗や缶コーヒーなどの密封食品においてはフラットサワー菌による変敗の問題があり、さらには二次汚染による食中毒の問題も多発している。
0009
これらの問題を解消するため、保存技術の向上のための様々な技術開発がなされており、保存料の添加もその一環である。一般に保存料は、食品衛生法で指定された合成保存料、食品保存効果を有する他の食品添加物および天然物に大別される。しかし、合成保存料には使用制限があり、また安全性、特に人体への影響に疑念をもつ消費者もいるため、近年その添加を控える傾向にある。その結果、合成保存料に代わる安全性に優れた抗菌性物質の利用が研究されている。
発明の開示
0010
本発明の目的は、安全性に優れた抗菌性物質を用い、品質の損われない、保存性に優れた食品の製造方法を提供することにある。
0011
本発明の他の目的は、安全性に優れた抗菌性物質を含有し、広範な食品の保存性を高めることができ、しかも食品の品質を損うことのない食品用保存剤および食品の保存方法を提供することにある。
0012
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
0013
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、
1,5−D−アンヒドロフルクトースを食品に添加しながら加熱するかあるいは食品に添加したのち加熱することを特徴とする保存性に優れた食品の製造法(以下、本発明の第1方法ということがある)によって達成される。
0014
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第2に、
あらかじめ加熱処理された1,5−D−アンヒドロフルクトースを食品に添加することを特徴とする保存性に優れた食品の製造法(以下、本発明の第2方法ということがある)によって達成される。
0015
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第3に、
(A)1,5−D−アンヒドロフルクトースおよびあらかじめ加熱処理された1,5−D−アンヒドロフルクトースのいずれか一方または両方、
並びに
(B)食品添加物として使用できる抗菌活性を有する物質
を含有することを特徴とする食品保存剤によって達成される。
0016
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第4に、
本発明の上記食品保存剤を食品に添加することを特徴とする保存性の優れた食品の製造法(以下、本発明の第3方法ということがある)によって達成される。
0017
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第5に、
本発明の上記食品保存剤を食品に添加し次いで得られた食品を保存することを特徴とする食品の保存方法(以下、本発明の第4方法ということがある)によって達成される。
0018
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
発明の好ましい実施の形態
0019
本発明における抗菌性物質である1,5−D−アンヒドロフルクトースは、担子菌などの微生物あるいは紅藻などの植物組織に存在する酵素、α−1,4−グルカンリアーゼ(以下、リアーゼと略記)の作用により澱粉あるいは澱粉分解物を基質として生産することができ、グルコースが脱水した構造をした化合物である。
0020
従来、抗菌作用を示す種々の化学物質が合成され利用されているが、1,5−D−アンヒドロフルクトースは多糖類である澱粉から酵素の作用により生産でき、従って食品に使用して安全である。また、グラム陽性細菌に対して巾広く増殖抑制効果を有し、中でも、汚染頻度の高い枯草菌(Bacillus subtillis,Bacillus cereus)および乳酸菌(Lactobacillus casei等)にも有効である。枯草菌は加工食品の通常の加熱処理後にも残存する耐熱性芽胞形成菌であり、乳酸菌も各種食品変敗の原因となるものであり、これらの菌に対して安全で有効な抗菌性物質が少ないことから、1,5−D−アンヒドロフルクトースは安全性の高い抗菌性物質としての価値が大である。
0021
以下、本発明の第1方法についてまず説明する。
0022
1,5−D−アンヒドロフルクトースは多くの細菌に対して1%以下の濃度で増殖抑制効果が認められるが、本発明の第1方法では食品に対し0.01〜10重量%添加することが好ましい。0.01重量%未満では抗菌効果が不十分であり、一方、10重量%を超えると苦味が感じられるようになる。さらに好ましい添加量は0.1〜5重量%である。
0023
本発明の第1方法においては、1,5−D−アンヒドロフルクトースを添加しながらあるいは添加した後に食品を加熱する。1,5−D−アンヒドロフルクトースは加熱により、その抗菌効果が増大し、加熱を伴わない場合に比し、より低濃度の添加で抗菌効果が発現し、添加食品は腐敗し難くなる。また、1,5−D−アンヒドロフルクトースの抗菌力は、グラム陰性細菌に対してはもともと極めて弱いが、加熱することによってグラム陰性細菌に対しても強い抗菌作用を発現するようになる。
0024
図1および図2にトリプトソイブイヨン培地(pH5.5)におけるグラム陰性細菌の熱死滅曲線を示す。すなわち、図1は代表的なグラム陰性腐敗細菌であるシュードモナス(Pseudomonas)のデータであり、1,5−D−アンヒドロフルクトースが1%存在すると、55℃、10分間の加熱で、対照に比べ、残存菌数が10分の1以下になった。
0025
図2は同じグラム陰性の代表的な食中毒原因細菌であるサルモネラ(Salmonella)菌に対し、1,5−D−アンヒドロフルクトース1%を添加したときのデータであり、60℃、10分間加熱すると、対照に比べ、残存菌数に100倍以上の差が認められた。
0026
また、図3および図4に示すとおり、1,5−D−アンヒドロフルクトースを添加して食品を加熱すると、グラム陽性細菌(図3、Bacillus subtillis IAM 1249)、グラム陰性細菌(図4、Escherichia coli NRIC 1023)共、加熱殺菌の効果が増幅され、さらにその後の菌の増殖が抑制されることを発見した。このことは後記試験例2で詳述する。
0027
本発明の第1方法において、食品の加熱とは、蒸煮、焼成、油ちょうなどにより可食性とするための調理としての加熱をはじめとし、例えば、缶詰、びん詰め、レトルトパウチなどの高温、高圧殺菌としての加熱、さらに、包装体としたのちの殺菌のための再加熱をも含む。
0028
加熱工程を経ない食品における1,5−D−アンヒドロフルクトースの抗菌力の発現に比べ、加熱工程を経た食品は、1,5−D−アンヒドロフルクトースの抗菌力の発現が極めて高く、保存性が著しく向上する。従って、1,5−D−アンヒドロフルクトースの有する抗菌力を有効に発現させるためには、加熱工程が必須である。
0029
本発明の第1方法において、対象となる食品は、調理、殺菌などのため、加熱工程を経る食品であれば特に限定されない。例えば、米飯、餅、茹で麺、パン類、あん類、和・洋菓子類、フラワーペースト、水産・畜産練り製品、卵焼き、プリン、麺つゆ、タレ、ソース類、缶詰のコーヒー、紅茶・緑茶などの茶系飲料、野菜の水煮、レトルトパウチ詰めの各種ルウ、ボトル詰めのニアウオーター、果汁飲料、煮豆や煮魚、フライ食品などの惣菜類、佃煮類、漬物などを挙げることができる。
0030
本発明の第1方法においては、まず食品に1,5−D−アンヒドロフルクトースを添加する。添加方法には特に制限はなく、各種食品において加熱前の最適な添加時期に最適な添加方法を採ることができる。例えば、調理時に調理水等に溶解させて添加してもよく、麺類やパン類では原料粉に混合して成形することができる。また、水溶液にして食品を浸漬してもよく、食品に噴霧してもよい。
0031
次いで、この食品を調理あるいは殺菌のため、加熱処理すると、保存性に優れた食品が得られる。適切な加熱条件は食品の種類により異なるが、例えば50〜250℃で1秒〜300分である。好ましい加熱条件は、例えば、レトルトパウチ詰め食品では食品により異なるが、概ね、120〜130℃で10〜100分程度、缶詰食品では、110〜120℃で30〜300分程度、飲料の場合、pH4以下の飲料では、60℃で10〜30分、あるいは、90℃で2分程度であり、pH4〜4.6の飲料では、85℃で30〜60分、pH4.6以上の飲料では、125℃で5〜30分、または、130〜150℃で1〜2秒程度である。米飯、餅、茹で麺、パン類、和・洋菓子、フラワーペースト、水産・畜産練り製品、卵焼き、プリン、麺つゆ、タレ、ソース類、野菜の水煮、煮豆や煮魚、フライなどの惣菜類、佃煮類は製造の際の加熱に加えて、必要ならば、60〜90℃で10〜60分程度の殺菌工程を取る場合がある。
0032
次に本発明の第2方法について説明する。
0033
第1方法において記述したとおり、1,5−D−アンヒドロフルクトースは安全性の高い抗菌性物質であるが、本発明者らは、1,5−D−アンヒドロフルクトースにあらかじめ加熱処理を施すことにより、その抗菌力がさらに高められ、加熱処理を施さない場合に比し、低濃度で抗菌力を発現し、添加食品は腐敗し難くなるとともに、抗菌スペクトルも広がり、表Aに示す最小発育阻止濃度(MIC)の減少にみられるように、グラム陰性細菌にも増殖抑制効果を強く発現するようになることを発見した。
0034
加熱処理条件としては、好ましくは50〜150℃で1秒〜100時間である。例えば、常圧下50℃で10分〜100時間の処理、95℃で1分〜10時間の処理、また、高圧下120℃で10秒〜2時間、130〜150℃で1秒〜30分等の加熱処理条件を選択することが可能である。
0035
本発明の第2方法で対象となる食品としては特に制限はなく、加熱を必要としない食品でも、調理または殺菌のために加熱される食品のいずれでもよい。加熱を要しない食品としては、例えば、ポテトサラダ等のサラダ類、カットされた生野菜や果実、漬物、生醤油や味噌などの調味料、塩辛、粕漬けまたは味噌漬け、鮮魚または魚の切り身、干物、生畜肉、芽物野菜の種子の除菌などが挙げられ、加熱されるものとしては、例えば、米飯、餅、茹で麺、蒸し麺、パン類、あん類、水産・畜産練り製品、麺つゆ、ソース類、コーヒー、紅茶・緑茶などの茶系飲料、野菜の水煮などの缶詰類、レトルトパウチ詰めの各種ルウ、ボトル詰めのニアウオーター、果汁、果汁飲料、煮豆や煮魚、フライ食品などの惣菜類、佃煮類などを挙げることができる。
0036
本発明の第2方法を実施するに際しては、まず食品に加熱処理した1,5−D−アンヒドロフルクトースを添加する。加熱処理した1,5−D−アンヒドロフルクトースの添加方法には特に制限はなく、食品の種類に応じて、最適な添加時期に最適な添加方法を採ればよい。例えば、調理する食品に直接混合してもよく、調理水に溶解、または分散させて食品に混合してもよい。また、麺類やパン類においては原料粉に混合して成形することができる。さらには、水溶液にして食品に噴霧することもでき、食品を浸漬することもできる。
0037
加熱処理した1,5−D−アンヒドロフルクトースの添加量には特に制限はないが、抗菌力の発現性、食品の嗜好性への影響等からみて、0.01〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜5重量%である。
0038
食品の原料、または未調理の食品に添加した場合、次いでこの食品を調理、加工すると保存性に著しく優れた食品を得ることができる。調理、殺菌のために加熱することは食品の保存性の向上に寄与することはあっても、何ら悪い影響をおよぼすことはない。
0039
加熱は、あらかじめ加熱処理された1,5−D−アンヒドロフルクトースを、添加しつつ行うことができ、また添加したのち行うこともできる。適切な加熱条件は、食品の種類によって異なるが、例えば50〜250℃で1秒〜300分である。好ましい加熱条件は、例えば、レトルトパウチ詰食品では食品により異なるが、概ね、120〜130℃で10〜100分程度、缶詰食品では、110〜120℃で30〜300分程度、飲料の場合、pH4以下の飲料では、60℃で10〜30分、あるいは、90℃で2分程度であり、pH4〜4.6の飲料では、85℃で30〜60分、pH4.6以上の飲料では、125℃で5〜30分、または、130〜150℃で1〜2秒程度である。米飯、餅、茹で麺、パン類、和・洋菓子、フラワーペースト、水産・畜産練り製品、卵焼き、プリン、麺つゆ、タレ、ソース類、野菜の水煮、煮豆や煮魚、フライなどの惣菜類、佃煮類は製造の際の加熱に加えて、必要ならば、60〜90℃で10〜60分程度の殺菌工程を取る場合がある。
次に、本発明の食品保存剤並びに本発明の第3方法および第4方法について説明する。
0040
本発明の食品保存剤は、
0041
(A)1,5−D−アンヒドロフルクトースおよびあらかじめ加熱処理された1,5−D−アンヒドロフルクトースのいずれか一方または両方、
0042
並びに
0043
(B)食品添加物として使用できる抗菌活性を有する物質
0044
を含有する。
0045
成分(A)としては、本発明の第1方法および第2方法に記載したと同じものを使用することができる。
0046
食品添加物として使用できる抗菌活性を有する物質(B)としては、例えば、アミノ酸類;グリセリン低級脂肪酸エステル;シュガーエステル;ビタミンB1塩類;重合リン酸塩;エタノール;塩基性たん白質およびペプチド;甘草抽出抗菌性物質;唐辛子抽出物;ホップ抽出物;ユッカ抽出物;モウソウチク抽出物;グレープフルーツ種子抽出物;わさびあるいはからし抽出物;酢酸、乳酸、フマル酸、およびそれらの塩類;ソルビン酸、安息香酸およびそれらの塩類とエステル類;プロピオン酸とその塩類;キトサン並びに細菌DNAが挙げられる。これらは1種または2種以上組合せて使用することができる。以下、これらの物質について説明する。
0047
アミノ酸類としては、例えばグリシン、シスチン、アラニン、アルギニンおよびリジンを挙げることができる。なかでもグリシン、アラニンが好ましい。かかるアミノ酸類は食品に添加できるグレードのものであればよい。
0051
重合リン酸塩としては、例えばピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムを挙げることができる。
0053
甘草抽出抗菌性物質としては、特開昭60−172928号明細書に記載された製造法を用いて製造したもの、すなわち甘草から芳香族炭化水素、アセトン、エタノールなどで抽出した抗菌性物質を使用することができる。この甘草抽出抗菌性物質の実体は現在のところ不明であるが、いわゆる甘味料として用いられているグリチルリチンとは全く別の物質である。
0055
ホップ抽出物としては、例えばホップの毬花から冷水、熱水あるいはアルコール、エーテル、アセトン、ヘキサンのごとき有機溶媒で抽出した抽出物あるいは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、リン酸ナトリウムなどのアルカリ性水溶液で抽出した抽出物を用いることができる。
0056
ユッカ抽出物、モウソウチク抽出物およびグレープフルーツ種子抽出物としては市販されているものを用いることができる。
0057
わさびあるいはからし抽出物としては、主成分がアリルイソチオシアネートであるものを用いることができる。
0059
ソルビン酸、安息香酸およびそれらのエステル類としては、食品添加物として流通しているものを使用することができる。
0063
これらの物質は、1,5−D−アンヒドロフルクトースの、本来抗菌力の弱いグラム陰性細菌に対する抗菌効果を補い、または、細菌の細胞壁の合成阻害を起こしたり、細菌細胞の細胞膜と結合して細胞内容物を漏出させ、または細胞壁の溶解などで細胞膜を損傷して1,5−D−アンヒドロフルクトースの細胞内部への浸透を促進して抗菌作用を増強するものと推定される。このような抗菌効果はこれらを添加した後に食品を加熱することによりさらに増強される。
0064
1,5−D−アンヒドロフルクトースと併用される各物質は、1種に限らず、幾つかを組合せて使用するとより効果的である。対象となる食品の種類、組成、予想される汚染ないし変敗原因微生物、pH、水分活性、要求される保存温度、保存期間などに応じて、適宜、幾種類かを組合せて使用するとよい。
0065
本発明におけるそれぞれの構成成分の好ましい比率は、1,5−D−アンヒドロフルクトース1重量部に対し、例えば、アミノ酸類は0.01〜100重量部、グリセリン低級脂肪酸エステル、シュガーエステルおよびビタミンB1塩類はそれぞれ0.001〜10重量部、重合リン酸塩は0.01〜100重量部、エタノールは0.01〜100重量部、塩基性たん白質およびペプチドはそれぞれ0.001〜10重量部、甘草抽出抗菌性物質は0.005〜50重量部、唐辛子抽出物は0.005〜50重量部、ホップ抽出物は0.005〜50重量部、ユッカ抽出物は0.005〜50重量部、モウソウチク抽出物は0.005〜50重量部、グレープフルーツ種子抽出物は0.005〜50重量部、わさびあるいはからし抽出物は、アリルイソチオシアネートとして0.000001重量部〜0.005重量部、酢酸、乳酸、フマル酸、またはその塩類は0.01〜50重量部、ソルビン酸、安息香酸、プロピオン酸、それらの塩類またはエステル類は0.001〜50重量部、キトサンは0.01〜100重量部、細菌DNAは0.01〜10重量部の割合である。
0066
本発明の食品用保存剤は、抗菌スペクトルを広げ、抗菌効果を相乗的に高めたものであり、安全性の高い優れたものである。また、本発明の食品用保存剤の添加により、食品の加熱条件、特に、殺菌のための加熱条件を緩和することができ、その結果、食品の品質の劣化を防止することもできる。さらには食品用保存剤を添加した後に調理または殺菌のために加熱することにより、抗菌効果をさらに高めることができる。
0067
本発明の保存性に優れた食品の製造法(第3方法)は本発明の食品用保存剤を食品に添加し混合して達成される。1,5−D−アンヒドロフルクトースと前記のごとき抗菌活性を有する物質をそれぞれ別個に食品に添加しても同様の効果が達成される。
0068
本発明の食品用保存剤は、食品全量に対し、1,5−D−アンヒドロフルクトースが、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%になるような量で食品に添加される。添加量が0.01重量%未満では抗菌効果が十分でないことがあり、10重量%を超えると、苦味が感じられるようになる。
0069
本発明の第3方法においては、前記食品用保存剤を添加しつつあるいは添加した後に、食品を加熱することができる。本発明の食品用保存剤は加熱によりその抗菌効果が高められ、添加された食品の保存性が飛躍的に向上する。抗菌性物質の存在下に、加熱殺菌される効果およびその後保存中における腐敗細菌の増殖抑制または阻止効果が相乗的に作用することによるものと推察される。
0070
本発明の第3方法において、このような加熱とは、蒸煮、焼成、油ちょうなどにより可食性とするための調理としての加熱をはじめとし、例えば、缶詰、びん詰め、レトルトパウチなどの高温、高圧殺菌としての加熱、さらには、包装体としたのちの殺菌のための再加熱をも含む。適切な加熱条件は食品の種類により異なるが、例えば50〜250℃で1秒〜300分である。好ましい加熱条件は、例えば、レトルトパウチ詰め食品では食品により異なるが、概ね、120〜130℃で10〜100分程度、缶詰食品では、110〜120℃で30〜300分程度、飲料の場合、pH4以下の飲料では、60℃で10〜30分、あるいは、90℃で2分程度であり、pH4〜4.6の飲料では、85℃で30〜60分、pH4.6以上の飲料では、125℃で5〜30分、または、130〜150℃で1〜2秒程度である。米飯、餅、茹で麺、パン類、和・洋菓子、フラワーペースト、水産・畜産練り製品、卵焼き、プリン、麺つゆ、タレ、ソース類、野菜の水煮、煮豆や煮魚、フライなどの惣菜類、佃煮類は製造の際の加熱に加えて、必要ならば、60〜90℃で10〜60分程度の殺菌工程を取る場合がある。
0071
本発明の第4方法では、第3方法で得られた食品を保存することによって達成することができる。本発明の第3方法で得られた食品は優れた保存性を有するため、第4方法によれば食品の保存方法として優れた方法が提供される。
実施例
0072
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、部および%は重量基準である。また、一般生菌数は標準寒天培地、30℃、48時間、カビ・酵母数はポテトデキストロース寒天培地、30℃、72時間で計測した。
0073
参考例1(1,5−D−アンヒドロフルクトースの調製)
0074
リアーゼはオゴノリから抽出し、SDS−PAGEで単一バンドになるまで精製した標品を用いた。DE値約20程度のマルトデキストリン水溶液(固形分30%)に対して、枝きり酵素を添加して60℃で4時間反応を行わせた。次いで、反応液を40℃まで冷却した後、15U/澱粉gになるようにリアーゼを添加し、25時間インキュベーションを行った。酵素反応終了後、活性炭処理を行い着色物質を吸着した後、不溶物を濾過で除去して標品を得た。得られた標品は固形分30%で、その糖組成をHPLCで定量したところ、72%が1,5−D−アンヒドロフルクトース、18%がグルコース、10%が高分子マルトデキストリンであった。この標品を下記試験例および実施例において1,5−D−アンヒドロフルクトース(以下、AFと略記し、添加量は特に断らない限り、固形分換算)として用いた。
0075
なお、実施例に用いたホップ抽出物、キトサン、細菌DNA、甘草抽出物、プロタミン、唐辛子抽出物はいずれもアサマ化成(株)製、ポリリジンはチッソ(株)製、リゾチームは和光純薬(株)製、モウソウチク抽出物は日本油脂(株)製、グレープフルーツ種子抽出物はバイオケム(株)製、ユッカ抽出物は丸善化成(株)製、ナイシンはアプリンバレット(株)製10%希釈製剤である。その他は食品添加物規格品を用いた。
0076
実施例1
0077
塩蔵大根(タクアン)を食塩含量が3%になるまで流水下で脱塩し、表1の処方の調味液に3日間冷蔵庫中で調味漬けした。次に、表1の調味液に、表2の保存剤を表2に記載の濃度の4倍の濃度のものとして添加し、このもの100mlに対して調味漬けしたタクアン300gを加えて袋詰めした(保存剤の濃度は表2記載の濃度となる)。同様の方法で各種の試験群を調製し、20℃で保存してタクアン液部の濁り、袋の膨れなどの観察により、保存日数を調べた。その結果を表2に示す。
0078
実施例2
0079
合い挽き肉1,000g、玉ねぎ300g、小麦粉60g、水50gを配合したハンバーグの基本組成に対し、表3に示す各種の保存剤成分を表3に示す割合になるように添加し、塩酸または苛性ソーダでpHを5.8に調整した後、30gずつ成形して、25分間蒸しあげ、冷却した。これを一試験区当り5個ずつ用意し、25℃に保存して、外観と臭いのチェックによる保存試験を行った。試験結果を表3に保存日数として5個の平均値で示す。
0080
本発明の保存剤を添加した際、添加による品質上の悪影響は認められなかった。
0081
実施例3
0082
卵黄160g、牛乳1,440g、小麦粉65g、デンプン65g、ショ糖600gを配合したカスタードクリームの基本組成に対し、表4に示す各種の保存剤成分を表4に示す割合になるように添加し、85〜95℃で約10分間煮詰めて冷却した。これを一試験区当り5個のプラスチック容器に分け、軽く蓋をして15℃に保存して、外観と臭いのチェックによる保存試験を行った。試験結果を表4に保存日数として5個の平均値で示す。
0083
実施例4
0084
強力粉500g、水160ml、およびかん粉5gを配合した基本組成に、表5に示す各種の保存成分を表5に示す割合になるように添加し、十分混合した後、小型製麺機により麺線を作り、沸騰水中で4分間茹で上げ、水冷した。水切り後、ポリエチレン袋に収納して密封し、1試験区当り10袋ずつを25℃の恒温器中に保存して外観の変化を観察した。各10袋の試験標本について、変色、軟化、ネト、カビが1箇所に発生するまでの日数を求め、その平均を有効保存日数とすることで評価を行った。結果を表5に示す。
0085
実施例5
0086
未開封の市販の4倍濃縮麺つゆを用い、滅菌水で4倍に希釈した。その際、AFを1.5%になるように添加しておいた。200ml容の栓付き三角フラスコに100mlずつ麺つゆを入れたものを30個用意した。表6のとおり、1〜36まで薬剤を添加し、その後、1〜18は火入れせずに(非加熱のままで、未殺菌)、19〜36は10分間火入れ、すなわち湯殺菌を行った。19〜36が冷えたところで1〜36のそれぞれに、変敗麺つゆから分離した乳酸菌混液を0.1mlずつ接種した。1〜36のフラスコを30℃のふ卵器に入れ、麺つゆ液の濁りを目安に保存試験を行った。結果は表6のとおりであった。
0087
参考例2(加熱処理1,5−D−アンヒドロフルクトースの調製)
0088
リアーゼはオゴノリから抽出し、SDS−PAGEで単一バンドになるまで精製した標品を用いた。DE値約20程度のマルトデキストリン水溶液(固形分30%)に対して、枝きり酵素を添加して60℃で4時間反応を行わせた。次いで、反応液を40℃まで冷却した後、15U/澱粉gになるようにリアーゼを添加し、25時間インキュベーションを行った。酵素反応終了後、活性炭処理を行い着色物質を吸着した後、不溶物を濾過で除去して標品を得た。得られた標品は固形分30%で、その糖組成をHPLCで定量したところ、72%が1,5−D−アンヒドロフルクトース、18%がグルコース、10%が高分子マルトデキストリンであった。この標品を55℃、10分間、湯煎して加熱処理した。これをAF−055、同様に、90℃、10分加熱したものをAF−090とした。オートクレーブ中で120℃、10分加熱したものをAF−120とし、これらを下記実施例において、加熱処理1,5−D−アンヒドロフルクトースとして用いた。また、非加熱の1,5−D−アンヒドロフルクトースをAF−000とした。添加量はいずれも固形分換算である。
0089
実施例6
0090
塩蔵大根(タクアン)を食塩含量が3%になるまで流水下で脱塩し、前記表1の処方の調味液に3日間冷蔵庫中で調味漬けした。次に、表1の調味液に、表7の保存剤を4倍の濃度で添加し、このもの100mlに対して調味漬けしたタクアン300gを加えて袋詰めした(保存剤の濃度は表7記載の濃度となる)。1,5−D−アンヒドロフルクトースは55℃、10分加熱品(AF−055)を用いた。同様の方法で各種の試験群を調製し、20℃で保存してタクアン液部の濁り、袋の膨れなどの観察により、保存日数を調べた。その結果を表7に示す。
0091
実施例7
0092
合い挽き肉1,000g、玉ねぎ300g、小麦粉60gおよび水50gを配合したハンバーグの基本組成に対し、表8に示す各種の保存剤成分を表8に示す割合になるように添加し、塩酸または苛性ソーダでpHを5.8に調整した後、30gずつ成形して、25分間蒸しあげ、冷却した。これを一試験区当り5個ずつ用意し、25℃に保存して、外観と臭いのチェックによる保存試験を行った。なお、1,5−D−アンヒドロフルクトースは90℃、10分加熱品(AF−090)を用いた。試験結果を表8に保存日数として5個の平均値で示す。
0093
本発明の保存剤を添加した際、添加による品質上の悪影響は認められなかった。
0094
実施例8
0095
卵黄160g、牛乳1,440g、小麦粉65g、デンプン65gおよびショ糖600gを配合したカスタードクリームの基本組成に対し、表9に示す各種の保存剤成分を表9に示す割合になるように添加し、85〜95℃で約10分間煮詰めて冷却した。これを一試験区当り5個のプラスチック容器に分け、軽く蓋をして15℃に保存して、外観と臭いのチェックによる保存試験を行った。なお、1,5−D−アンヒドロフルクトースは90℃、10分加熱品(AF−090)を用いた。試験結果を表9に保存日数として5個の平均値で示す。
0096
実施例9
0097
強力粉500g、水160mlおよびかん粉5gを配合した中華麺の基本組成に、表10に示す組成の保存剤を添加し、十分混合した後、小型製麺機により麺線を作り、沸騰水中で4分間茹で上げ、水冷した。水切り後、ポリエチレン袋に収納して密封し、1試験区当り10袋ずつを25℃の恒温器中に保存して外観の変化を観察した。なお、1,5−D−アンヒドロフルクトースは90℃、10分加熱品(AF−090)を用いた。評価は実施例4と同じ基準で行った。10袋の試験標本の各々について変色、軟化、ネト、カビが1箇所に発生するまでの日数を求め、その平均を有効保存日数とした。結果を表10に示す。
0098
実施例10
0099
2リットルの水に粉末だし(ヤマキ(株)製)80g、生揚げ醤油(福岡県醸造組合製)400mlを加えて麺つゆを作った。対照品、本発明品とも100mlずつビーカーに分け、表11の処方に従ってそれぞれの薬剤を上乗せ添加して各群(1〜18)を作った。なお、1,5−D−アンヒドロフルクトースは120℃、10分間加熱品(AF−120)を用いた。
0100
耐熱性のポリエチレン袋を用意し、各番号の実験について8袋準備し、これらの8袋に10mlずつ充填し、ヒートシールをした。湯殺菌は行わずに30℃にて保存し、液のにごり、膨れを観察して保存試験を行った。結果を表11に示す。8袋が全部変質するまで観察し、平均保存日数を保存日数として示した。
0101
試験例1(AFの抗菌力におよぼす加熱時間および加熱温度の影響)
0102
比濁法による抗菌力試験を行った。すなわち、試験管にあらかじめ滅菌済のトリプトソイブイヨン(pH5.5)培地およびAF1%を入れて、表12の各加熱条件で加熱した後、Bacillus subtillis IAM 1249を8.7×104 CFU接種し、37℃で72時間、振盪培養した後、濁度(OD、660nm)を測定した。結果を表12に示す。
0103
表12に見るとおり、AF1%添加後、55℃で10分間加熱したものは、AF1%添加後非加熱対照に比べて、約2倍((1.160−0.513)/(1.160−0.836))の抗菌力を示している。
0104
試験例2(AFの効果におよぼす加熱の影響、麺つゆの系による保存試験)
0105
水1,000mlに粉末だし(ヤマキ(株)製)40g、市販の醤油200mlを添加し、菌を接種して30℃で保存して生菌数を計測した。結果を図3および4に示す。図3はBacillus subtillis IAM 1249(以下、B.subtillisと略記)の生菌数曲線であり、図4はEscherichia coli NRIC 1023(以下、E.coliと略記)の生菌数曲線である。図3および4において、A−1、A’−1はそれぞれ未殺菌の麺つゆにB.subtillisまたはE.coliを接種したときの生菌数曲線である。1,5−D−アンヒドロフルクトースはともに無添加であり、P、P’は初発菌数を示す。
0106
A−2、A’−2はそれぞれ55℃、10分間、湯中で加熱殺菌した麺つゆにB.subtillisまたはE.coliを接種したときの生菌数曲線であり、1,5−D−アンヒドロフルクトースは無添加で、初発菌数はQ、Q’である。B−1、B’−1はそれぞれ未殺菌の麺つゆに1,5−D−アンヒドロフルクトースを1%添加して各菌を接種したときの生菌数曲線であり、初発菌数はP、P’である。B−2、B’−2はそれぞれ加熱殺菌済の麺つゆに温度が冷えてから1,5−D−アンヒドロフルクトースを添加し、各菌を接種したときの生菌数曲線であり、初発菌数はQ、Q’である。B−3、B’−3はそれぞれ1,5−D−アンヒドロフルクトースを添加してから麺つゆを55℃、10分間加熱殺菌して、各菌を接種したときの生菌数曲線であり、初発菌数はR、R’である。
0107
図3および4から次のことがわかる。
(1)1,5−D−アンヒドロフルクトースを添加した後、加熱することにより、B.subtillis、E.coli共に生菌数が約1ケタ下がった(QからRに、Q’からR’に)。このことから、1,5−D−アンヒドロフルクトースにはグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌に対する加熱殺菌の効果を高める作用のあることがわかる。
(2)1,5−D−アンヒドロフルクトースを添加した麺つゆではB.subtillis、E.coli共に菌の増殖が抑制されている(B−2とB−3との比較、B’−2とB’−3との比較)。このことから、1,5−D−アンヒドロフルクトースを添加してから加熱すると、グラム陽性細菌に対しては増殖抑制効果がさらに高まり、もともと増殖抑制効果の弱いグラム陰性細菌に対しても効果が増すことがわかる。
0108
試験例3(AFの抗菌力におよぼす加熱の効果、麺つゆによる試験)
0109
水1,000mlに粉末だし(ヤマキ(株)製)40g、市販の醤油200ml、AF2%を添加し、無菌濾過して、あらかじめ滅菌処理したポリプロピレン袋10袋に100mlずつ充填した。一方、乳酸菌による「膨れ」で変敗した麺つゆ(生菌数3.1×106個/ml)を1mlずつ、上記調製の10袋に添加し、空気が残らないようにシールした。10袋を5袋ずつ2群に分け、一方は非加熱で、もう一方は55℃、10分、湯中で加熱し、その後、両者を30℃に保存して「膨れ」の発生を観察した。結果を表13に示す。
0111
牛肉7部、野菜57部(ジャガイモ12部、たまねぎ40部、人参5部)とカレー粉1部、油脂6部、グルタミン酸Na0.2部、澱粉1部、スープ40部を混合して、80℃にて1時間加熱調理した。本品はスープ多めの粘度の低いカレーであった。以下の操作をクリーンベンチ内で行った。滅菌済の栓付き容器10個に95gずつ小分けした。1群5個ずつ、2群に分けた。
0112
一方の群には、無菌濾過した30%AF溶液を5gずつ添加し、次に、前培養したBacillus subtillisの栄養細胞を2×105個接種し、均一に混合した。もう一方の群には、無菌濾過した30%AF溶液を5gずつ添加し、前培養したBacillus subtillisの栄養細胞を2×105個接種し、均一に混合した後、60℃、10分間加熱し、急冷した。両者を30℃で保存し、官能検査により保存性を比較した。結果を表14に示す。
0113
実施例12(蒸しパン)
0114
薄力粉1,000部、液体ショートニング250部、液卵1,000部、上白糖900部、粉末チーズ100部、ベーキングパウダー10部、食塩10部、AF10部、キサンタンガム3部、グリアジン10部および温湯300部を、原料としてミキサーに投入、中速で5分間混合し、約2時間ねかせた。これを50gずつに分け、型に入れて30分間蒸し上げた。
0115
AF無添加の群を同様に、ただし、温湯はAFから移行する水分量を補正して、その他を同じにして作り(対照)、両者の保存性を比較した。すなわち、それぞれ10個ずつ用意し、室温(20〜30℃)で保存後、ネトの発生するまでの日数を調べた。結果を表15に示す。
0116
実施例13(練りあん)
0117
晒し餡30部、砂糖40部、AF1部、水130部の処方で練り餡を試作し、初めの重量の1/4を煮詰めた(実施例13)。AF無添加群もAFから移行する分の水分を補正するほかは同様にして作って(対照)プラスチック製のカップに詰め、30℃にて保存効果を比較した。結果を表16に示す。なお、単位は個/gである。
0118
実施例14(米飯)
0119
米900gを水洗し、水1,080ml、AF2.25g(生米に対して0.25%)を加え、1.8リットル電気釜で炊飯した(実施例14)。一方、AFを添加することなく、同様にして、AFから移行する水分量を補正して米飯(対照)を得、両者の保存性を比較した。すなわち、炊き上がった米飯の各々を飯櫃に移し、室温(18〜30℃)にて保存し、酸臭の発生するまでの時間を比較したところ、実施例14の米飯は50時間、対照のそれは20時間であった。また、飯櫃に移したときの実施例14の米飯は風味の点でも問題がなかった。
0120
実施例15(煮豆)
0121
蒸し隠元豆100部にBrix55の糖液100部、AF2部の処方に耐熱性芽胞菌を103個/gになるように接種し、80℃、1時間加熱して、その後、50℃で15時間放置した。次いで液切りし、袋詰め、シールして、100℃、40分間加熱殺菌した(実施例15)。同様にAFから移行する分の水分を補正して、AF無添加群を試作し(対照)、30℃にて両者の保存性を耐熱性芽胞菌数(個/g)で比較した。結果を表17に示す。なお、耐熱性芽胞菌の測定にあたっては、95℃、10分加熱して芽胞以外の細菌を殺した後、標準寒天培地で30℃、48時間培養して出現したコロニー数を耐熱性芽胞菌数とした。
0122
実施例16(フラワーペースト)
0123
コーンスターチ20g、薄力粉35g、脱脂粉乳30g、粉乳20g、マーガリン150g、砂糖250g、キサンタンガム3g、AF10g、水492g、合計1,020gの処方でフラワーペーストを試作し、重量ベースで10%分を煮詰めた(実施例16)。同様の方法でAF無添加群をAFから移行する水分量を補正して試作し(対照)、20℃にて保存し、保存後の一般生菌数(個/g)を測定し、両者の保存性を比較した。結果を表18に示す。
0124
実施例17(蒲鉾)
0125
スケソウ冷凍すり身1kgに食塩30gを添加し、品温を10℃以下に保ち、25分間擂潰した。擂潰終了5分前に50gの馬鈴薯澱粉、AF5g、砂糖80g、氷水300gを加えた。擂潰終了後のすり身を折り径60mm、長さ250mmの塩化ビニリデンフィルムに入れ、結紮し、40℃の恒温器で90分間の坐りを行い、その後、85℃の温浴で40分間加熱処理を行い、直ちに冷水で冷却し、製品の中心温度を30℃以下にして蒲鉾を製造した(実施例17)。一方、AFを添加しないでAFから移行する水分量を補正して、同様にして蒲鉾を製造し(対照)、両者の保存性および品質を比較した。すなわち、保存性の評価は30℃の恒温器に放置して腐敗と変色の有無を観察する方法によって行った。その結果、実施例17の蒲鉾は12日後に僅かに腐敗の兆候が現れ、15日後に変色が認められたのに対し、対照は7日後に腐敗が認められ、9日後に変色が認められた。
0126
実施例18(焼肉のたれ)
0127
醤油もろみ600mlを加熱し、酢酸2ml、砂糖140g、みりん100ml、グルタミン酸ソーダ10g、AF20g、ごま油10ml、水約210mlを配合して攪拌、加熱して焼肉のたれを作った(実施例18)。AF無添加のものをAFから移行する水分量を補正して同様に作成し(対照)、小袋に詰め、60℃、10分間湯殺菌した後、30℃にて保存性を比較した。結果を表19に示す
0128
実施例19(きんぴらごぼう)
0129
砂糖:みりん:醤油=1:1:4(重量比)の組成の調味液を、ごぼうの1/3(重量比)加えて、中火で3分間炒めて、きんぴらごぼうを造った。AF(全量の3%)添加群を実施例19とし、AFから移行する水分量を補正した無添加群を対照として、その30℃における保存性を一般生菌数(個/g)により比較した。結果を表20に示す。
0130
実施例20(缶詰コーヒー)
0131
牛乳1kg、脱脂粉乳300g、砂糖2kg、コーヒーエキス600g、水15kg、AF200g(1%)を混合したコーヒー飲料を缶に充填する際に、あらかじめコーヒー飲料フラットサワー菌汚染缶から分離、培養したBacillus stearothermophilusの芽胞を103個/缶接種し、常法により、120℃で20分間加熱殺菌した(実施例20)。AFを添加しないコーヒー缶詰を同様に作成した(対照)。その後、得られた2種の缶詰コーヒーを55℃の恒温器にて保存し、変敗発生の有無を比較することにより保存性を比較した。結果を表21に示す。なお、保存試験前、実施例の缶詰コーヒーは、フレーバー、味ともに対照と差はなく、AF添加による悪影響はないものと認められた。
0132
実施例21および22(ポテトサラダ)
0133
茹でたジャガイモ657g、タマネギ50g、茹でた人参100g、キュウリ100g、食塩10gおよびマヨネーズ83gをよく混ぜ合わせてポテトサラダを造った。AF−090を15gマヨネーズに混合して造ったサラダを実施例21とし、AF−000を15gマヨネーズに混合して造ったサラダを実施例22とし、AF−090から移行する水分量を補正して造ったAF無添加品を対照として、それらを蓋付き容器に入れ、20℃で保存し、保存中の微生物の測定と外観を調べることにより、保存性を比較した。結果を表22に示す。得られたポテトサラダのpHはいずれも、5.3であった。
0134
実施例23および24(カット野菜)
0135
市販のサラダ用カット生野菜(レタスとキャベツ)を30分間外浸し、水洗い(30秒)後、水切りし、10℃にて24時間保存して菌数の測定を行った。外浸液として加熱処理したAF−090、3%水溶液を用いた群を実施例23とし、AF−000、3%水溶液に外浸した群を実施例24とし、水に外浸した群を対照とした。結果を表23に示す。生菌数の差以上に肉眼的な観察による鮮度の差が大きく出ていた。
0136
実施例25および26(炊き込みご飯)
0137
米900gを水洗し、水1,080ml、山菜炊き込みご飯の素(4人分、永谷園(株)製)、AF−120、2.25g(生米に対して0.25%)を加え、1.8リットル電気釜で炊飯した(実施例25)。一方、AF−120を添加することなく、同様にして、AF−120から移行する水分量を補正して得た炊き込みご飯(対照)、AF−000を同量添加して得た炊き込みご飯(実施例26)を炊飯し、3者の保存性を比較した。すなわち、炊き上がった炊き込みご飯の各々を飯櫃に移し、室温(24〜32℃)にて保存し、酸臭の発生するまでの時間を比較したところ、実施例25の米飯は36時間、対照は16時間、実施例26は24時間であった。また、飯櫃に移したときの実施例25の米飯は風味の点でも問題がなかった。
0139
豚挽き肉1,000gに対し、5gのスパイスを加え、擂潰機で2分間混和し、次いで50%の食塩を含む天然調味料20gを加え、2分間擂潰した。さらに、澱粉80g、大豆油20g、卵白40g、AF−120、20g、砕氷水120gを加えて2分間擂潰した。練り上げた肉はスタッファーで径14〜22mmの羊腸に詰め、約10cmの長さに括った。引き続き70℃の温水中で15分間加熱して坐らせてポークソーセージを得た(実施例27)。一方、AF−000を添加し、同様にしてポークソーセージを得(実施例28)、両者を15℃に保存して、pH、一般生菌数(個/g)および外観を調べ、保存性を比較した。結果を表24に示す。
0140
実施例29および30(卵焼き)
0141
生全卵液400g、だし汁88g、食塩2g、砂糖22g、AF−090、7.8gをホモゲナイザーで十分攪拌混合し、これを卵焼き器を使用して焼成し、卵焼きを得た。(実施例29)。AF−000を添加した卵焼きを同様にして得(実施例30)、両者を30℃で保存してその保存性を比較した。結果を表25に示す。
0142
実施例31、32、33および34(たくあん漬け)
0143
下漬けたくあん(塩度7.0%)を脱塩後、袋詰めして調味たくあんを作った。その際、下記(注)に記載の方法でAFを添加し、試験区として表26に記載の通り4区の組合せを作り(実施例31〜34)、これらを20℃にて保存した。たくあん液部の濁りと袋の膨れなどの観察により保存日数を調べた。結果を表26に示す。
0144
実施例35および36(果汁ジュース)
0145
濃縮グレープフルーツジュースにAF−090を0.5%添加し、さらに水を加えてBrix 11に調整したものに、予め培養しておいた、Alicyclobacillus acidoterrestris VF株を果汁中の菌体濃度が103個/mlになるように添加した(実施例35)。オレンジジュースも同様にして作り(実施例36)、これらのジュースを30℃で21日間保存した。また、AF無添加のジュースを対照品とした。保存状態の評価を、異味、異臭、液の濁りが全く検出されなかったものを−として行った。結果を表27に示す。
0146
VF株の生育状態はK−培地で35℃、5日間培養して確認した。なお、K−培地(pH3.7)は下記の組成である。