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課題・解決手段

面方位がほぼ{03−38}であり、4H型ポリタイプSiC基板2と、SiC基板2上に形成されたSiCからなるバッファ層4と、を備えて、SiCウエハを構成する。{03−38}面はマイクロパイプ等が伸びる<0001>軸方向に対して約35°の角度をなすので、マイクロパイプ等は結晶側面消滅してバッファ層4上の活性層6に貫通されない。また、SiC基板2及び活性層6間の格子不整合は、バッファ層4によって抑制される。また、4Hポリタイプを用いているので、電子移動度の異方性も小さい。したがって、電子移動度の異方性が小さく、かつ、格子不整合による歪みを緩和できるSiCウエハ、SiC半導体デバイス、およびその製造方法が得られる。

概要

背景

概要

面方位がほぼ{03−38}であり、4H型ポリタイプSiC基板2と、SiC基板2上に形成されたSiCからなるバッファ層4と、を備えて、SiCウエハを構成する。{03−38}面はマイクロパイプ等が伸びる<0001>軸方向に対して約35°の角度をなすので、マイクロパイプ等は結晶側面消滅してバッファ層4上の活性層6に貫通されない。また、SiC基板2及び活性層6間の格子不整合は、バッファ層4によって抑制される。また、4Hポリタイプを用いているので、電子移動度の異方性も小さい。したがって、電子移動度の異方性が小さく、かつ、格子不整合による歪みを緩和できるSiCウエハ、SiC半導体デバイス、およびその製造方法が得られる。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
13件
牽制数
22件

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請求項1

面方位がほぼ{03−38}であり、4H型ポリタイプSiC基板と、前記SiC基板上に形成されたSiCからなるバッファ層と、を備えることを特徴とするSiCウエハ

請求項2

前記バッファ層は、厚さが0.1μm以上15μm以下であることを特徴とする請求項1記載のSiCウエハ。

請求項3

前記バッファ層は、窒素リンアルミニウム、またはボロンのうちの少なくとも1つを不純物として含み、前記バッファ層における前記不純物の密度は、2×1015cm−3以上3×1019cm−3以下であることを特徴とする請求項1または2記載のSiCウエハ。

請求項4

前記バッファ層における前記不純物の密度は、前記SiC基板中の不純物の密度よりも低いことを特徴とする請求項3記載のSiCウエハ。

請求項5

前記バッファ層上に、SiCからなる活性層をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のSiCウエハ。

請求項6

前記バッファ層における前記不純物の密度は、前記SiC基板との界面から前記SiCからなる活性層との界面に向けて減少していることを特徴とする請求項5記載のSiCウエハ。

請求項7

請求項5または6記載のSiCウエハを備えたSiC半導体デバイス

請求項8

前記SiCからなる活性層の表面に金属層が設けられ、前記活性層と前記金属層によってショットキー障壁が形成されていることを特徴とする請求項7記載のSiC半導体デバイス。

請求項9

エピタキシャル成長またはイオン注入によって形成されたpn接合を有することを特徴とする請求項7記載のSiC半導体デバイス。

請求項10

熱酸化または化学気相堆積法で形成された酸化膜ゲート絶縁膜として有することを特徴とする請求項7記載のSiC半導体デバイス。

請求項11

熱酸化または化学気相堆積法で形成された酸化膜を表面保護膜の一部として有することを特徴とする請求項7記載のSiC半導体デバイス。

請求項12

面方位がほぼ{03−38}であると共に4H型ポリタイプのSiC基板上に、SiCからなるバッファ層を成長させることを特徴とするSiCウエハの製造方法。

請求項13

前記バッファ層上に、SiCからなる活性層をさらに成長させることを特徴とする請求項12記載のSiCウエハの製造方法。

技術分野

0001

本発明は、半導体電子部品に適したSiCウエハ、これを備えたSiC半導体デバイス、およびSiCウエハの製造方法に関するものである。

背景技術

0002

近年、炭化珪素(SiC)あるいは窒化ガリウム(GaN)等の軽元素で構成される化合物半導体の研究が盛んである。かかる化合物半導体は、軽元素で構成されているため結合エネルギーが強く、その結果、エネルギー禁制帯幅バンドギャップ)、絶縁破壊電界熱伝導度が大きいことが特徴である。そして、このワイドバンドギャップの特徴を活かして、高効率・高耐圧パワーデバイス高周波パワーデバイス高温動作デバイス、あるいは青色から紫外発光デバイス用の材料として注目を集めている。しかしながら、結合エネルギーが強いため、これらの化合物は、大気圧では高温にしても融解せず、シリコン(Si)など他の半導体で用いられる融液再結晶化によるバルク結晶育成が困難である。

0003

例えば、SiCを半導体材料として使用するためには、ある程度の大きさを有する高品質な単結晶を得る必要がある。このため従来は、アチソン法と呼ばれる化学反応を利用する方法、レーリー法と呼ばれる昇華再結晶法を利用する方法により、SiC単結晶の小片を得ていた。

0004

最近は、これらの方法によって作製された炭化珪素の単結晶を基板として用い、この上に昇華再結晶化させる改良レーリー法によってSiCインゴットを育成し、このSiCインゴットをスライス鏡面研磨したSiC基板が製造されるようになった。そして、その基板上に、気相エピタキシャル成長法または液相エピタキシャル成長法によって目的規模のSiC単結晶を成長させることにより、不純物密度膜厚を制御した活性層が形成され、これを用いてpn接合ダイオードショットキーダイオードや各種のトランジスタなどのSiC半導体デバイスが作製されていた。

0005

しかしながら、上記方法の内、アチソン法は珪石コークスの混合物電気炉で熱し、自然発生的な核形成によって結晶を析出させるので、不純物が多く、得られる結晶の形および結晶面の制御が困難である。また、レーリー法では自然核発生的な核形成によって結晶が成長するので、結晶の形および結晶面の制御が困難である。

0006

改良レーリー法では、例えば、特公昭第59−48792号公報記載の発明では、単一の結晶多形で成る大型のSiCインゴットが得られている。しかし、かかるインゴットには、マイクロパイプという大型の欠陥(<0001>軸方向に貫通する小孔)が通常1〜50cm−2程度の密度で含まれている。また、c軸方向にバーガースベクトルを持つらせん転位が103〜104cm−2程度存在する。

0007

通常は、SiC{0001}面、あるいはこの面から3〜8度のオフ角度を設けた基板がエピタキシャル成長に使われる。この時、基板に存在するマイクロパイプ欠陥やらせん転位の大半がSiCエピタキシャル成長層に貫通すること、およびエピタキシャル成長層を用いて作製したSiCデバイスがマイクロパイプ欠陥を含むと、デバイス特性が著しく悪化することが知られている。したがって、マイクロパイプ欠陥は、大容量(大電流、高耐圧)SiC半導体デバイスを高い歩留まりで製造するときの最大の障壁となっている。

0008

また、通常用いられるSiC{0001}面、あるいはこの面から数度のオフ角度を有するSiC基板を用いてSiCのホモエピタキシャル成長を行うと、結晶表面における原子ステップ集合合体ステップバンチング現象が起こり易い。このステップバンチングの度合いが大きくなると、SiCエピタキシャル成長層の表面粗さが増大し、金属−酸化膜−半導体(MOS)界面の平坦性が悪化するので、MOS型電界効果トランジスタMOSFET)の反転層チャネル移動度が低下する。また、pn接合ショットキー障壁界面の平坦性が悪化して接合界面における電界集中が発生し、耐圧の低下、漏れ電流の増大などの問題を引き起こす。

0009

SiCには、多数の結晶多形が存在する。この中で4H型ポリタイプ(4H−SiC)が高い移動度を有し、ドナーアクセプタイオン化エネルギーも小さいことから、SiC半導体デバイス作製に最適なSiCポリタイプであると考えられている。しかしながら、4H−SiC{0001}面、あるいはこの面から3〜8度のオフ角度を設けた基板上のエピタキシャル成長層を用いて反転型MOSFETを作製すると、チャネル移動度が1〜20cm2/Vs程度と非常に小さく、高性能トランジスタを実現できない。

0010

これらの問題を解決するために、特許公報第2804860号では、SiCの(0001)面以外の面、例えば(1−100)面等を持った種結晶を用いて改良レーリー法による成長を行うことで、マイクロパイプ数の少ないSiCインゴットを得ている。しかしながら、SiC(1−100)面上にエピタキシャル成長を行うと、成長時に面欠陥である積層欠陥スタッキングフォールト)が発生しやすく、半導体デバイス作製に充分な高品質SiC単結晶を得るのが困難である。

0011

また、近年、SiC(1−100)基板の他に、6H型ポリタイプのSiC(11−20)基板を用いてSiCウエハを作製する研究もなされている。そして、かかる6H型ポリタイプのSiC(11−20)基板を用いれば、<0001>軸方向に伸びるマイクロパイプやらせん転位は基板上のエピタキシャル層に到達しないため、当該エピタキシャル層内のマイクロパイプ欠陥を低減することができる。

発明の開示

0012

しかしながら、上記6H型ポリタイプのSiC(11−20)基板を用いたSiCウエハには、次のような問題があった。すなわち、従来のSiC(11−20)基板上にSiCエピタキシャル層を成長させると、SiCエピタキシャル成長層とSiC基板との界面に、不純物密度の差に起因した格子不整合による歪みが発生してしまう。そして、この歪みはエピタキシャル成長層の結晶性に悪影響を与え、高品質のSiCエピタキシャル成長層を作製することが困難になる。

0013

また、6H型ポリタイプの6H−SiC(11−20)基板を用いてデバイスを作製すると、電子移動度の異方性が問題となる。詳しくは、6H−SiC結晶中では<0001>軸方向の電子移動度が、<1−100>、<11−20>方向の移動度の20〜30%程度と小さい。このため、6H−SiC(11−20)面上の成長層では、面内の電気伝導に3〜5倍の異方性が生じてしまう。さらに、(1−100)面あるいは(11−20)面等においては、発生した積層欠陥が表面に露出しやすいという問題もある。

0014

本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものでり、半導体デバイスとして使用した場合に電子移動度の異方性が小さく、かつ、SiC基板とSiCエピタキシャル成長層との格子不整合による歪みを緩和できるSiCウエハ、これを備えた半導体デバイス、およびSiCウエハの製造方法を提供することを目的とする。

0015

上記課題を解決するために、本発明のSiCウエハは、面方位がほぼ{03−38}であり、4H型ポリタイプのSiC基板と、SiC基板上に形成されたSiCからなるバッファ層と、を備えることを特徴とする。

0016

また、本発明のSiCウエハの製造方法は、面方位がほぼ{03−38}であると共に4H型ポリタイプのSiC基板上に、SiCからなるバッファ層を成長させることを特徴とする。

0017

上記したSiCウエハ及びその製造方法では、面方位がほぼ{03−38}のSiC基板を用いるが、この{03−38}面は、マイクロパイプやらせん転位が伸びる<0001>軸方向に対して約35°の傾きを有する。したがって、このSiCウエハ上にSiCの活性層をエピタキシャル成長させても、マイクロパイプやらせん転位は斜めに進展することによって側面に到達して消滅し、これによって、マイクロパイプやらせん転位の貫通とそれによる表面への露出を抑制することができる。

0018

また、SiC{03−38}基板上にエピタキシャル成長層を作製した場合、積層欠陥の発生を大幅に抑制することができる。さらに、このような積層欠陥は<0001>軸方向と垂直な面方向に発生するが、{03−38}面は、この積層欠陥の発生面に対して約55°の傾きを有する。したがって、このSiCウエハにおいては、発生した積層欠陥についても同様に、その表面への露出を抑制することができる。

0019

また、6H型ポリタイプのSiC基板と比較して電子移動度の異方性が小さい4H型ポリタイプの基板を用いるため、SiCウエハ上に成長させた活性層における電子移動度の異方性が低減される。さらに、SiC基板上にSiCからなるバッファ層が形成されているため、本発明のSiCウエハ上にSiC活性層を成長させた場合に、SiC基板とSiC活性層との格子不整合による歪みが当該SiC活性層に発生する事態を防止することができる。

0020

上より、面方位がほぼ{03−38}で4H型ポリタイプのSiC基板を用いた上記構成のSiCウエハ及びその製造方法によって、電子移動度の異方性が小さく、かつ、SiC基板とSiCエピタキシャル成長層との格子不整合による歪みを緩和できるSiCウエハが得られる。また、このようなSiCウエハを備えるSiC半導体デバイスによれば、高品質な半導体デバイスを実現することができる。

0021

なお、SiC基板に用いる面としては、{03−38}面に限らず、所定のオフ角αだけ{03−38}面に対して傾いた面を用いても、同様にマイクロパイプやらせん転位の貫通抑制、及び積層欠陥の抑制等を実現することができる。このオフ角αの範囲としては、約10°以内のオフ角とすることによって好適なエピタキシャル結晶を得ることができる。また、このオフ角αは、5°以内であることが好ましい。さらに、オフ角αは、3°以内であることが好ましい。

発明を実施するための最良の形態

0022

以下、添付図面を参照して、本発明に係るSiCウエハ、SiC半導体デバイス、およびSiCウエハの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、同一要素には同一符号を用いるものとし、重複する説明は省略する。

0023

また、実施形態および実施例の説明で、結晶の格子方向および格子面を使用する場合があるが、ここで、格子方向及び格子面の記号の説明をしておく。個別方位は[]、集合方位は<>、個別面は()、集合面は{}でそれぞれ示すことにする。また、負の指数については、結晶学上、”−”(バー)を数字の上に付けることになっているが、明細書作成の都合上、数字の前に負号を付けることにする。

0024

図1は、本発明によるSiCウエハ1の一実施形態の構成を示す側面図である。SiCウエハ1は、4H型ポリタイプ(“H”は六方晶系、“4”は原子積層が4層で一周期となる結晶構造を意味する)の4H−SiC{03−38}基板2と、当該SiC{03−38}基板2上に形成されたSiCからなるバッファ層4と、当該バッファ層4上に形成されたデバイス作製用のSiCからなる活性層6と、から構成されている。なお、各層2〜6の伝導型は、全てn型であっても良いし、全てp型であっても良い。また、作製するデバイス構造によっては、互いに異なる伝導型であっても良い。

0025

ここで、図2を用いて、4H−SiC単結晶の{03−38}面について説明する。この図に示されているように、{03−38}面は{0001}面に対して約55°(54.74°)の傾きを有し、したがって、<0001>軸方向に対して約35°(35.26°)の傾きを有している。

0026

なお、4H−SiC{03−38}面は、図2に示すように有極性であって、(0001)Si面側に近い(03−38)面と、(000−1)C面側に近い(0−33−8)面とが存在する。基板面としては、これらの(03−38)面及び(0−33−8)面のいずれを用いても良い。ただし、面方位によって好適な成長条件が若干異なることに注意が必要である。

0027

また、4H−SiC{03−38}基板2の面方位は、{03−38}面から多少傾けたものとしても良い。すなわち、所定のオフ角αだけ{03−38}面に対して傾いた面を用いても、{03−38}面と同様の後述する効果を得ることができる。このオフ角αの範囲としては、約10°以内のオフ角とすることによって、好適なSiC基板2を得ることができる。また、このオフ角αは、5°以内であることが好ましい。さらに、オフ角αは、3°以内であることが好ましい。

0028

次に、本実施形態のSiCウエハ1の製造方法を説明する。4H−SiC{03−38}基板2は、例えば4H−SiC(000−1)面上に改良レーリー法によって成長したインゴットを、成長方向に対して<1−100>方向に35°の角度をつけてスライスし、鏡面研磨することによって作製する。あるいは、このようにして作製した4H−SiC{03−38}結晶を種結晶に用いて改良レーリー法により育成した4H−SiC{03−38}インゴットを、成長方向に垂直にスライスして作製する。

0029

このとき、4H−SiC{03−38}基板2の厚さは、約150μm〜約400μmの範囲にすることが好ましい。また、実効ドナー密度あるいは実効アクセプタ密度は、約5×1017cm−3〜約5×1019cm−3の範囲にすることが好ましい。

0030

次いで、4H−SiC{03−38}基板2を鏡面仕上げして、その後、膜厚や不純物ドーピング制御性、成長層の表面平坦性に優れた化学気相堆積CVD)法により、バッファ層4および活性層6をエピタキシャル成長させる。具体的には、まず、4H−SiC{03−38}基板2を有機溶媒王水、フッ酸などで洗浄した後、脱イオン水リンスしてSiC膜被覆されたグラファイト製サセプタに設置し、CVD成長装置にセットする。CVD成長には水素(H2)をキャリヤガスとする常圧の横形CVD装置を用い、サセプタの加熱は高周波誘導加熱により行う。4H−SiC{03−38}基板2を反応炉内に設置した後、ガス置換高真空排気を数回繰り返し、H2キャリヤガスを導入してCVD成長プログラムに入る。

0031

まず、約1300℃でHCl/H2ガスによる気相エッチングを行った後、4H−SiC{03−38}基板2を約1500℃に昇温し、原料ガスシラン:SiH4、プロパン:C3H8など)を導入して、バッファ層4および活性層6の成長を開始する。CVD成長では、実効ドナー密度約1016cm−3〜約1019cm−3のn型SiCバッファ層4を約0.1μm〜約15μm成長した後、実効ドナー密度約1014cm−3〜約1016cm−3のn型活性層6を約5μm〜約80μm成長させる。なお、成長中に窒素ガスを添加することで、n型伝導性制御を行う。また、p型成長層を形成するときも同様で、この場合は不純物原料として、トリメチルアルミニウム(Al(CH3)3)やジボラン(B2H6)を添加する。

0032

また、バッファ層4の厚さは、0.1μm以上15μm以下とすることが好ましく、特に、0.3μm以上15μm以下にするとよい。さらに、バッファ層4に含ませる不純物は、窒素リンアルミニウム、またはボロンのうちの何れかであることが好ましい。また、バッファ層4における不純物密度は、SiC基板2における不純物密度よりも低いことが好ましく、さらにSiC基板2との界面から活性層6との界面に向けて徐々に減少することが好ましい。

0033

続いて、図3を参照して、本実施形態のSiCウエハ1の効果を説明する。通常、SiC基板にはマイクロパイプやらせん転位が存在するが、これらのマイクロパイプなどはSiC基板の<0001>軸方向に伸びる。図3においては、SiC基板2中にマイクロパイプ8を一点鎖線で、また、らせん転位10を破線で示している。

0034

これに対して、本実施形態のSiCウエハ1では面方位が{03−38}のSiC基板2を用いている。この{03−38}面は、マイクロパイプ8やらせん転位10が伸びる<0001>軸方向に対して、約35°の傾きを有する。したがって、この4H−SiC{03−38}基板2上に成長層を作製した場合には、それらのマイクロパイプ8やらせん転位10は斜め方向に伸びて結晶側面で消滅して成長層に引き継がれず、活性層6への貫通とそれによる表面への露出が抑制される。このため、活性層6は欠陥が少なく平坦性の優れたものとなる。

0035

また、4H−SiC{03−38}基板2上にエピタキシャル成長層を作製した場合、積層欠陥の発生を大幅に抑制することができる。さらに、このような積層欠陥は<0001>軸方向と垂直な面方向に発生するが、{03−38}面はこの積層欠陥の発生面に対して約55°の傾きを有しており、発生した積層欠陥についても同様にその表面への露出を抑制することができる。

0036

また、本実施形態では、6H型ポリタイプのSiC基板等と比較して電子移動度の異方性が小さい4H型ポリタイプの基板を用いるため、SiCウエハ1上に成長させた活性層6における電子移動度の異方性が低減される。また、異種ポリタイプ混入も完全に防止される。さらに、SiC基板2上にSiCからなるバッファ層4が形成されているため、SiC基板2とSiC活性層6との格子不整合による歪みが活性層6に発生する事態を防止することができる。

0037

また、本発明者らの鋭意研究により、バッファ層4の厚さを0.1μm以上、あるいはさらに0.3μm以上にすることで、格子不整合に基づく歪みを効果的に低減でき、活性層6の結晶性を良好にすることが見出された。一方、バッファ層4の厚さを15μm以下にすれば、成長時間およびコストの低減を図ることができる。

0038

さらに、バッファ層4に含ませる不純物の密度は、2×1015cm−3以上3×1019cm−3以下にすることが好ましい。バッファ層4に含まれる不純物密度をこのような範囲にするのは、不純物密度が2×1015cm−3未満のときは格子不整合に基づく歪み緩和の効果が薄れ、3×1019cm−3よりも大きいときは高濃度ドーピングによりバッファ層4自体の結晶性が劣化するためである。

0039

また、本実施形態のSiCウエハ1を用いて、種々のSiC半導体デバイスを製造することができる。例えば、かかるSiC半導体デバイスは、表面に金属/SiCのショットキー障壁や、エピタキシャル成長またはイオン注入によって形成されたpn接合を有するように構成することができる。さらに、熱酸化または化学気相堆積法で形成された酸化膜ゲート絶縁膜として有するMOS型としたり、熱酸化または化学気相堆積法で形成された酸化膜を表面保護膜の一部として有するように構成してもよい。

0040

上述のように、SiCウエハ1は電子移動度の異方性が小さく、かつ、SiC基板2とSiC活性層6との格子不整合による歪みが殆ど発生しないため、このような半導体デバイスは高性能なものとなる。

0041

より詳しくは、特に活性層6の表面平坦性が優れているので、エピタキシャル成長によって形成したpn接合や、エピタキシャル成長表面に形成したショットキー障壁界面での電界集中が大幅に低減され、デバイスの高耐圧化が容易となる。さらに、SiC{03−38}面は、SiC{0001}面より単位面積あたりの原子結合ボンド数が少ないので、酸化膜/SiCのMOS界面における界面準位が低減されて高品質なMOS界面を作製でき、高性能MOS型トランジスタを実現できる。

0042

さらに、4H−SiC{03−38}面は、上記した以外にも、その特性及び製法上で様々な利点を有している。

0043

まず、4H−SiC{03−38}面を用いた結晶は、熱処理アニール)による結晶性の回復が容易である。

0044

半導体単結晶にイオン注入を行ったときには、通常は注入損傷が発生するので、損傷された結晶性を回復させるため、熱処理(アニール)を行う必要がある。SiCの場合、イオン注入した不純物の電気的活性化率を充分に高めるために、1500℃〜1700℃の高温アニールが施される。

0045

また、SiCへのイオン注入によって完全なアモルファス領域が形成されてしまうと、高温でのアニールを行っても、充分に結晶性を回復することができない。このため、注入ドーズ量注入エネルギーが高い場合には、イオン注入時に試料を加熱する高温注入が行われる。しかしながら、これらのイオン注入後の高温アニールや高温注入は、デバイスの作製上において様々な制約を生じる原因となる。また、製造コストの増大にもつながる。

0046

このような高温アニールや高温注入の問題は、SiC{0001}面あるいはこれに近い面を用いた場合に顕著である。これに対して、上記した4H−SiC{03−38}面を用いることによって、SiCでの上記した問題を解決することが可能である。

0047

例えば、4H−SiC{0001}面及び4H−SiC{03−38}面の試料に対して、同じ条件でイオン注入を行った後にアニールを施すと、4H−SiC{03−38}面の試料の方が、{0001}面の試料よりも200℃〜400℃も低い温度でのアニールによって、充分な電気的活性化率を得ることができる。また、注入ドーズ量が多いなどの理由から、イオン注入によって完全なアモルファス領域が形成された場合でも、4H−SiC{03−38}面の試料では、1000℃〜1500℃でのアニールによって再結晶化がスムーズに進行し、良質の4H−SiC{03−38}単結晶に回復することがわかった。

0048

上記したイオン注入及びアニールの問題は、SiC{0001}面を用いた場合には、再結晶化の途中で低温安定な立方晶の3C−SiCが核発生したり、積層欠陥が発生しやすいために、再結晶化の効率が低下するものと考えられる。これに対して、4H−SiC{03−38}面を用いた場合には、3C−SiCの核発生などの可能性はほとんど無く、したがって、比較的低温でも良好な再結晶化を実現することが可能である。

0049

また、4H−SiC{03−38}面を用いた結晶は、優れたへき開性を有する。

0050

4H−SiC{03−38}結晶は、互いに直交する2方向である<0001>と<03−316>方向に、容易にへき開する。したがって、様々なデバイス構造を作製した後、正方形長方形などの形状に分割するのが非常に容易である。この特性は、へき開がやや困難で、へき開によって三角形状になりやすいSiC{0001}結晶の場合と対照的である。

0051

また、4H−SiC{03−38}面を用いた結晶は、不純物ドーピングに対して、次のような特性を有する。

0052

すなわち、CVDによる成長実験を行った結果、不純物の取り込み効率基板面方位に依存することが分かった。具体的には、窒素の取り込み効率では、

0053

(000−1)>(0−33−8)>(03−38)>(0001)
の順となった。また、アルミおよびホウ素の取り込み効率では、

0054

(0001)>(03−38)>(0−33−8)>(000−1)
の順となった。

0055

上記結果より、(0001)Si面が最もp型になりやすく、(000−1)C面が最もn型になりやすいことがわかった。これに対して、(03−38)面及び(0−33−8)面では、不純物の取り込み効率はこれらの中間に位置している。したがって、(03−38)面及び(0−33−8)面では、n型及びp型の伝導型を、いずれも制御性良く作製することができる。詳しくは、不純物原料の添加量、原料ガスの流量比(例えばC/Si比など)、成長温度などの条件を変えることによって、n型及びp型ともに、1×1014cm−3から5×1019cm−3程度の広い範囲で、容易に価電子制御を行うことが可能である。

0056

以下、上記した実施形態についての実施例を説明する。但し、本発明は、以下の各実施例に限定されるものではない。
[実施例1]

0057

図1を参照して、実施例1を説明する。本実施例では、SiC基板からSiC活性層へのマイクロパイプやらせん転位の貫通、および活性層6の表面の平坦性を調べるために、n型4H−SiC{03−38}基板2上に、化学気相堆積(CVD)法によりn型の活性層6を成長した。ただし、4H−SiC{03−38}基板2としては、4H−SiC(03−38)基板、及び4H−SiC(0−33−8)基板の両方に対して、活性層6の成長を行った。また、比較のために、4H−SiC(1−100)面、および(0001)8度オフ面(<11−20>方向)を面方向とする基板にも同時に活性層を成長させて評価した。

0058

4H−SiC(03−38)、(0−33−8)、(1−100)基板は、4H−SiC(000−1)面上に改良レーリー法によって成長したインゴットを、成長方向に対して<1−100>方向に55°、55°、90°の角度でスライスし、鏡面研磨することによって作製した。基板は全てn型で、ショットキー障壁の容量−電圧特性から求めた実効ドナー密度は1×1018cm−3〜3×1018cm−3で、厚さは約380μmであった。

0059

これらの基板を、溶融水酸化カリウム(KOH)で500℃、10分の条件でエッチングした結果、いずれもマイクロパイプ密度10cm−2〜100cm−2、らせん転位密度5×103cm−2〜2×104cm−2程度の欠陥が存在することが分かった。ただし、(03−38)、(0−33−8)、(1−100)面については、斜め研磨を行なって(0001)面から約10度傾いた面を出し、この面をエッチング後に観察して欠陥密度見積もった。

0060

次に、KOHエッチングを行った基板を再研磨し、鏡面仕上げをしてCVD成長を行った。これらの基板を有機溶媒、王水、フッ酸で洗浄した後、脱イオン水でリンスしてSiC膜で被覆されたグラファイト製サセプタに設置し、CVD成長装置にセットした。そして、ガス置換と高真空排気を数回繰り返した後、H2キャリヤガスを導入してCVD成長プログラムに入った。

0061

まず、1300℃でHCl/H2ガスによる気相エッチングを行った後、1500℃に昇温し、原料ガス(シラン:SiH4、プロパン:C3H8など)を導入して成長を開始した。CVD成長では、実効ドナー密度3×1017cm−3〜4×1017cm−3のn型SiCバッファ層を2.6μm成長させた後、実効ドナー密度1×1016cm−3〜2×1016cm−3のn型活性層を12μm成長させた。

0062

また、成長中に窒素ガスを添加してn型伝導性制御を行った。このときの主な成長条件は下記の通りである。なお、一般に、(0001)面と(03−38)面、(0−33−8)面では不純物の取り込み効率が違うので、基板の面方位によってドーピングガス流量を調整するのが好ましい。

0063

バッファ層: SiH4流量 0.30sccm
C3H8流量 0.20sccm
N2流量 1x10−2〜6x10−2sccm
H2流量 3.0slm
基板温度1500℃
成長時間 60分

0064

活性層: SiH4流量 0.50sccm
C3H8流量 0.50sccm
N2流量 3x10−3〜2x10−2sccm
H2流量 3.0slm
基板温度1500℃
成長時間 180分

0065

エピタキシャル成長させた活性層6の表面を微分干渉光学顕微鏡で観察したところ、4H(03−38)、(0−33−8)および(0001)8度オフ基板上では鏡面が得られたが、4H(1−100)基板上では部分的に<11−20>方向に走る筋状の凹凸や溝が観測された。この4H(1−100)面上の筋状の欠陥は、6H(1−100)面上の成長層でも観察された。また、成長前の基板表面処理法の最適化や、過飽和度の低い成長条件(例えば低い原料ガス流量)でCVD成長を行うと、この筋状欠陥の発生がやや低減されるが、完全に無くすことはできなかった。

0066

また、15mm×20mmの大きさの基板上の活性層表面を観察して表面欠陥転位などの構造欠陥とは必ずしも一致しない)の密度を見積もったところ、4H(03−38)基板では4×102cm−2、4H(0−33−8)基板では3×102cm−2、(1−100)基板では8×103cm−2、(0001)8度オフ基板では2×103cm−2であり、4H{03−38}基板上の活性層が最も優れていた。

0067

図4A〜図4Cは、原子間力顕微鏡AFM)観察を行い、その表面形状プロファイルを測定した結果を示すグラフであり、それぞれ、図4Aは、4H−SiC(0−33−8)基板、図4Bは、4H−SiC(1−100)基板、および図4Cは、4H−SiC(0001)8度オフ基板上での活性層の表面形状を示している。

0068

これらのうち、(1−100)基板上に形成した活性層の表面は、前述の深い溝(深さ約100〜300nm)が無い領域を選んでも、図4Bに示されているように凹凸が激しくなっている。また、図4Cより、(0001)8度オフ基板上に形成した活性層の表面には、原子ステップの集合合体(ステップバンチング)に起因する階段状の凹凸が存在することが分かった。

0069

これに対して、4H(0−33−8)基板上に形成した活性層では、図4Aに示されているように、溝、ヒロック、ステップ等が全く観測されず、非常に平坦性のよい表面が得られた。4H(03−38)基板の場合も、同様に平坦性のよい表面が得られた。また、2μm×2μmの範囲をAFM観察したときの表面粗さの二乗平均(Rms)は、{03−38}基板上に形成した活性層で0.18〜0.19nm、(1−100)基板上で6.4nm、(0001)8度オフ基板上で0.24nmとなり、4H{03−38}基板上に成長させた活性層が最も優れていた。

0070

次に、成長した試料を溶融KOHでエッチングして、活性層6中の構造欠陥を調べた。(0001)8度オフ基板上の活性層では、マイクロパイプ密度が18cm−2、らせん転位密度8×103cm−2となり、成長前の基板の値とほぼ同じであり、エッチングにより生じたピットの位置も成長前とよく一致していた。

0071

(1−100)基板上の活性層をエッチングすると、多角形のピットが多数(1×105cm−2)見られた他に、活性層の表面に現れた筋状の欠陥がさらに深くなった。この筋状の溝は必ず<11−20>方向に伸びていることから、積層欠陥に起因すると考えられる。この溶融KOHによって深くエッチングされた溝の数は、成長前の(1−100)基板では3〜8cm−1であったのに対し、成長後には30〜200cm−1と増大していた。したがって、(1−100)基板上に活性層を成長させる場合は、CVD成長によって新たに積層欠陥が発生するものと考えられる。

0072

これに対して、{03−38}基板上に成長した活性層を溶融KOHでエッチングすると、転位を反映する多角形状ピットの密度が2×103cm−2程度、積層欠陥密度は5cm−1以下と小さかった。また、この試料を斜め研磨した面をエッチングして見積もったマイクロパイプ密度は1cm−2未満、らせん転位密度も100cm−2未満であることが分かった。

0073

すなわち、4H−SiC{03−38}基板を用いることによって、基板からのマイクロパイプ、らせん転位の貫通を大幅に抑制し、かつ積層欠陥も極めて少ない高品質SiCエピタキシャル結晶の作製が可能となる。これは、上述のように、マイクロパイプやらせん転位が主としてSiC結晶の<0001>方向に伸びる(図3参照)ので、この方位に対して約35°の角度をなす結晶面である{03−38}面(図2参照)を用いれば、SiC基板中に存在するマイクロパイプ、らせん転位が斜め方向に伸びて結晶側面で消滅し、この上の活性層に引き継がれないためである。なお、上述したように所定範囲内のオフ角αだけ{03−38}面に対して傾いた面を用いても、同様の効果が得られる。
[実施例2]

0074

本実施例では、バッファ層が活性層に及ぼす影響を調べるために、n型4H−SiC{03−38}基板上に様々な厚さのn型4H−SiCバッファ層を形成した後、活性層となる高純度厚膜エピタキシャル成長層を形成して、その結晶性を評価した。用いたSiC基板2は、改良レーリー法によって4H−SiC{03−38}種結晶上に成長させた4H−SiCインゴットをスライスして作製したn型4H−SiC{03−38}で、ショットキー障壁の容量−電圧特性から求めた実効ドナー密度は7×1018cm−3〜8×1018cm−3で、厚さは約340μmであった。

0075

このSiC基板2上に、ドナー密度4×1017cm−3〜5×1017cm−3のn型4H−SiCバッファ層を形成した後、高純度n型4H−SiC層(ドナー密度4×1015cm−3)を約24μm成長させた。なお、成長中に窒素ガスを添加することでn型伝導性制御を行った。そして、バッファ層の厚さを0.1μmから22μmの範囲で変化させたSiCウエハ、および比較のためにバッファ層を設けずに基板上に直接高純度SiC活性層を成長したSiCウエハを作製した。CVD成長には実施例1と同じCVD装置を用いた。

0076

まず、1400℃でHCl/H2ガスによる気相エッチングを行った後、1560℃に昇温し、原料ガスを導入して成長を開始した。このときの主な成長条件は下記の通りである。

0077

バッファ層: SiH4流量 0.30sccm
C3H8流量 0.20sccm
N2流量 9x10−2sccm
H2流量 3.0slm
基板温度1560℃
成長時間 3分〜520分

0078

活性層: SiH4流量 0.50sccm
C3H8流量 0.66sccm
N2流量 6x10−3sccm
H2流量 3.0slm
基板温度1560℃
成長時間 360分

0079

図5は、様々な厚さのバッファ層を持つ4H−SiC(03−38)のSiCウエハの活性層6について、X線回折ロッキングカーブ測定から求めた回折ピーク半値幅FWHM)のバッファ層膜厚依存性を示すグラフである。X線回折には、Ge単結晶(400)回折を利用した5結晶X線回折を用い、SiC{03−38}回折ピーク(2θ=41.4度)の半値幅で試料の結晶性を評価した。なお、成長前の4H−SiC(03−38)基板を測定して得られた回折ピークの半値幅は約22〜28arcsec、平均25arcsecであった。この平均値は、図5中に点線で示されている。

0080

バッファ層を用いずに基板上に直接高純度n型SiC層(24μm)を成長したSiCウエハの活性層6では、X線ロッキングカーブの半値幅が28arcsecとなり、SiC基板2より悪化している(図5中、四角印で示す)。この問題は、n型バッファ層を導入することにより改善される。すなわち、バッファ層厚さが0.1μmの場合は、まだ基板での半値幅25arcsecより若干悪い半値幅(26arcsec)が得られたが、バッファ層の厚さが0.3μm以上の場合には、基板より小さい半値幅が得られ、エピタキシャル成長によって結晶性が改善されていることが分かった。

0081

特に、バッファ層の厚さが1.2μm程度以上では、半値幅が16arcsecでほぼ一定になった。溶融KOHエッチングによって{03−38}面上の転位密度を評価すると、基板で3×104cm−2、バッファ層なしで成長した活性層では3×104cm−2、2μm以上のバッファ層を設けた活性層では1×103cm−2〜4×103cm−2となり、やはりバッファ層の効果が明らかに見られた。

0082

このように、バッファ層が高品質SiCエピタキシャル成長層の作製に有効である理由は、高濃度に不純物ドーピングされたSiC基板と低濃度ドーピングされた高純度SiC活性層の間に存在する格子不整合に起因する歪みがバッファ層によって緩和されるためであると考えられる。

0083

一般に、1018cm−3程度以上の不純物を含むSiC結晶では、その不純物の種類によってSiC結晶の格子定数が増大、あるいは減少する。しかもこの格子定数増減の割合は、{03−38}面上の方が{0001}面上の場合より大きい。したがって、4H−SiC{03−38}基板上にエピタキシャル成長を行う場合には、基板とその上に形成するデバイス作製用活性層の不純物密度の中間の値となる不純物密度を有するSiCバッファ層を設けて、格子不整合に起因する格子歪みを緩和することが効果的である。

0084

通常、縦形のパワーデバイスを作製する際には、基板の抵抗を小さくするために不純物(ドナーあるいはアクセプタ)を高濃度にドーピングした基板が用いられるので、この基板の不純物密度より低く、かつ活性層の不純物密度より高いドーピングを行ったSiCバッファ層を設けるのがよい。なお、上記の実施例では窒素(N)ドープn型SiCを用いたが、リン(P)ドープn型SiC、アルミ(Al)、およびホウ素(B)ドープp型SiCを用いて実験を行ったところ、バッファ層の同様な効果が見られた。

0085

なお、バッファ層4に含まれる不純物の密度は、上述のように2×1015cm−3以上3×1019cm−3以下にすることが好ましいが、特に、バッファ層4における不純物の密度をSiC基板2との界面からSiC活性層6との界面に向けて減少させることによって、不純物密度の差による格子不整合に起因する歪みをさらに抑制することができる。
[実施例3]

0086

本実施例では、4H−SiC{03−38}基板および(0001)8度オフ基板を使用したSiCウエハを用いて、図6の側面図に示す構成の高耐圧ダイオードを作製した。SiC基板2は、4H−SiC(000−1)種結晶上に改良レーリー法によって成長したインゴットを成長方向に54.7°傾けてスライスし、鏡面研磨することによって作製した。基板はともにn型で、ショットキー障壁の容量−電圧特性から求めた実効ドナー密度は、6×1018cm−3〜7×1018cm−3、厚さは約330μm〜340μmとした。そして、このSiC基板2上に、CVD法によって窒素ドープn型4H−SiC層をエピタキシャル成長させた。

0087

実施例2と同様に、3×1018cm−3から1×1016cm−3までドナー密度を階段的に変化させながら各層につき約0.3μmずつ、合計約1.5μmのバッファ層4を形成した後、活性層6となる高純度n型4H−SiC層を成長させた。活性層のドナー密度は6×1015cm−3、膜厚は16μmである。

0088

また、4H−SiC(0001)8度オフ基板上にも、同様にバッファ層および活性層を成長させてSiCウエハを作製した。主な成長条件は下記の通りである。ただし、窒素などのドーパント不純物の取り込み効率はSiC面方位に依存するので、デバイスを作製するときには、CVD成長時の原料ガス流量およびドーパント原料供給量を、用いる面方位に応じて調整することが必要である。

0089

バッファ層: SiH4流量 0.30sccm
C3H8流量 0.20sccm
N2流量2x10−3〜0.5sccm
H2流量 3.0slm
基板温度1520℃
成長時間 60分

0090

活性層: SiH4流量 0.50sccm
C3H8流量 0.50sccm
N2流量 1x10−3〜4x10−3sccm
H2流量 3.0slm
基板温度1520℃
成長時間 240分

0091

さらに、このようにして作製した4H−SiC(0−33−8)基板及び(0001)8度オフ基板を用いた各SiCウエハに、ショットキー電極12及びオーム性電極14を形成した。ショットキー電極12は活性層6の上面に形成し、オーム性電極14はSiC基板2の下面に形成した。また、ショットキー電極12にはチタン(Ti:180nm)、裏面のオーム性電極14には1000℃で20分間の熱処理を施したニッケル(Ni:200nm)を用いた。さらに、ショットキー電極12は円形で、直径100μmから3mmの範囲で変化させた。

0092

そして、ショットキー電極12端部での電界集中を緩和するために、ホウ素(B)イオンを注入して高抵抗p型領域(ガードリング)16を形成し、ショットキーダイオードを完成させた。ホウ素イオンの注入は120keV、80keV、50keV、30keVの4段階で行い、総ドーズ量は3×1013cm−2とした。

0093

また、ガードリングを形成するp型領域16の幅は100μm、このp型領域16とショットキー電極12の重なり部の幅は10μmである。また、イオン注入は室温で行い、注入イオン活性化のための熱処理(アニール)はアルゴンガス雰囲気中1550℃、30分の条件で行った。なお、これらの選択的イオン注入用マスク電極金属パターニングには、フォトリソグラフィ技術を用いた。

0094

図7は、作製したショットキーダイオードの典型的な電流密度−電圧特性を示すグラフである。これは4H−SiC(0−33−8)基板上にバッファ層を設けて成長したSiCウエハで作製したダイオードで、電極直径は500μmである。逆方向特性では耐圧2200Vを達成し、しかも−1000V印加時のリーク電流も3×10−6A/cm2と小さい。順方向特性ではオン電圧(電流密度100A/cm2時の電圧降下)が1.2V、オン抵抗が4×10−3Ωcm2という非常に優れた特性が得られた。電極面積が300μm以下の小さいダイオードでは、4H−SiC(0001)8度オフ基板上でも同様のダイオード特性が得られたが、電極面積の大きいダイオードでは両者の間に大きな差が見られた。

0095

図8は、4H−SiC(0−33−8)基板及び4H−SiC(0001)8度オフ基板の2種類のSiC基板上に活性層を成長させたSiCウエハを用いて作製した、ショットキーダイオードの耐圧(平均値)の電極面積依存性を示すグラフである。各電極面積について、少なくとも12ケのダイオードを測定して、耐圧の平均値を求めた。4H−SiC(0001)8度オフ基板上の成長層を用いて作製したショットキーダイオードでは、電極面積が5×10−3cm2〜1×10−2cm2を越えると急激に耐圧が低下する。

0096

これに対して、4H−SiC(0−33−8)基板上にバッファ層を設けて作製したエピタキシャル成長層を用いた場合には、1×10−2cm2程度の電極面積でも高い耐圧を維持しており、7×10−2cm2の場合でも40%以上の歩留まりで1700V以上の耐圧が得られた。また、耐圧だけでなく、−1000V印加時のリーク電流密度の平均値を電極直径500μmのダイオードで比較すると、4H−SiC(0001)8度オフ基板上に作製したダイオードでは8×10−5A/cm2であるのに対して、(0−33−8)面上のダイオードでは9×10−6A/cm2と非常に小さかった。

0097

これは、4H−SiC(0−33−8)面を用いることによってSiC基板から活性層へのマイクロパイプやらせん転位の貫通が抑制され、しかもバッファ層の採用によって高品質SiC結晶が得られたからであると考えられる。また、4H−SiC(0−33−8)面を用いることによって成長表面の平坦性がよくなり、ショットキー電極/SiC界面での電界集中が低減されるという効果もある。

0098

なお、(03−38)面を用いても、同様に高性能なショットキーダイオードが得られる。また、この実施例ではショットキーダイオードの作製例を述べたが、エピタキシャル成長あるいはイオン注入で形成されたpn接合ダイオード、pinダイオードやpnpnあるいはnpnpサイリスタの場合でも、4H−SiC{03−38}基板を用いることが有効である。
[実施例4]

0099

本実施例では、4H−SiC{03−38}基板および(0001)オフ基板により形成したSiCウエハを用いて、図9の側面図に示す構成のnチャネル反転型MOSFET20を作製した。用いたSiC基板2は、改良レーリー法によって成長したインゴットをスライスし、鏡面研磨することによって作製した4H−SiC(03−38)基板、4H−SiC(0−33−8)基板、および4H−SiC(0001)8度オフ基板である。

0100

SiC基板2は全てp型で、ショットキー障壁の容量−電圧特性から求めた実効アクセプタ密度は2×1018cm−3〜5×1018cm−3、厚さは320μm〜340μmである。そして、各SiC基板2上に、CVD法によってホウ素ドープp型SiC層をエピタキシャル成長した。

0101

まず、8×1017cm−3から1×1016cm−3までアクセプタ密度を階段的に変化させながら各層につき約0.4μmずつ、合計約1.6μmのバッファ層4を形成した後、活性層6となる高純度p型SiC層を成長した。活性層6のアクセプタ密度は5×1015cm−3、膜厚は5μmである。主な成長条件は下記の通りである。

0102

バッファ層: SiH4流量 0.30sccm
C3H8流量 0.20sccm
B2H6流量 8x10−5〜7x10−3sccm
H2流量 3.0slm
基板温度1500℃
成長時間 70分

0103

活性層: SiH4流量 0.48sccm
C3H8流量 0.64sccm
B2H6流量 4x10−6〜9x10−6sccm
H2流量 3.0slm
基板温度1500℃
成長時間 120分

0104

このようにして作製したSiCウエハに、さらに、ソースドレイン領域形成のために、窒素(N)イオンを注入して低抵抗n型領域22,24を形成した。Nイオン注入は140keV、80keV、50keV、25keVの4段階で行い、総ドーズ量は8×1014cm−2とした。

0105

イオン注入は室温で行い、注入イオン活性化のための熱処理はアルゴンガス雰囲気中1550℃、30分の条件で行った。次に、ドライ酸化によりSiCウエハ1上に絶縁層26(ゲート酸化膜)を形成した。酸化条件は、SiC(0001)オフ基板を用いる場合は1150℃、3時間で、SiC{03−38}試料の場合は1150℃、1時間であり、絶縁層26の厚さは35〜46nmである。

0106

次に、n型領域22,24上に、それぞれソース電極28、ドレイン電極30を形成した。ソース電極28およびドレイン電極30にはアルミ/チタン(Al:250nm、Ti:30nm)を用い、800℃で60分間の熱処理を施した。さらに、絶縁層26上に、Al製のゲート電極32(厚さ200nm)を形成し、その後、フォーミングガス(H2/N2)中で450℃、10分間の熱処理を行った。なお、これらの選択的イオン注入用マスクや電極金属のパターニングには、フォトリソグラフィ技術を用いた。

0107

また、MOSFET20のチャネル長は30μm、チャネル幅は200μmとした。ドレイン電流の流れる向きについては、4H−SiC(0001)8度オフ面上にMOSFETを作製する場合には、面方位を考慮して、ドレイン電流が<11−20>方向または<1−100>方向に流れるようにした。また、4H−SiC{03−38}面上にMOSFETを作製する場合には、ドレイン電流が<11−20>方向または<03−316>方向に流れるようにした。さらに、チャネル移動度の異方性についても調べた。

0108

図10は、作製したMOSFETの典型的なドレイン特性を示すグラフである。これは4H−SiC(03−38)基板上に成長した活性層を用い、チャネルが<11−20>軸に平行になっているMOSFETの特性である。線形領域と飽和領域が明確に観測され、しかもゼロゲートバイアス時にオフとなるノーマリオフ型のMOSFETとして良好な動作をしている。他の試料を用いたMOSFETでも、全てFET動作は確認されたが、チャネル移動度やしきい値電圧に違いが見られた。

0109

図11は、それぞれのMOSFETについて線形領域から求めた実効チャネル移動度の平均値を示す。各試料について少なくとも6個以上のMOSFETを評価してチャネル移動度を測定し、その平均を求めた。図11から分かるように、4H−SiC(03−38)基板及び4H−SiC(0−33−8)基板上に作製したMOSFETでは、いずれも4H−SiC(0001)8度オフ基板上に作製したMOSFETに比べて、極めて高いチャネル移動度が得られている。

0110

例えば、<11−20>方向でのチャネル移動度で比較すると、(0001)8度オフ基板上に作製したMOSFETでは4.8cm2/Vsであるのに対して、(03−38)基板の場合では93cm2/Vs、(0−33−8)基板の場合では96cm2/Vsと、非常に高いチャネル移動度が得られた。

0111

この理由として、{03−38}基板上の活性層6ではステップバンチングに起因する表面粗さが低減され、極めて平坦なMOS界面が得られており、表面粗さによる散乱が低減されていることが考えられる。さらに、(0001)基板と{03−38}基板とを比較すると、単位面積あたりのSiC結合ボンド数が{03−38}面の方が少ないので、酸化膜を作製した時にMOS界面に形成される界面準位密度が{03−38}面の方が少ないことが挙げられる。また、図11から、チャネル移動度の異方性についても小さいことがわかる。

0112

以上の結果から、4H−SiC{03−38}基板上に作製したMOSFETではチャネル移動度が高く、かつ異方性が小さいので、高性能MOSFET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSゲートサイリスタ等を作製するのに有効である。

0113

なお、ここでは熱酸化によってゲート電極用の絶縁層26を形成したが、CVD法によってSiO2膜を堆積させる場合でも、4H−SiC{03−38}を用いるのが効果的である。また、ここではMOS界面の特性を調べるために反転型MOSFETを作製したが、4H−SiC{03−38}を用いると良好な酸化膜/SiC界面特性が得られるので、他のデバイス作製にも適用できる。例えば、SiC半導体デバイスに酸化膜を第一層とする表面保護膜を熱酸化または化学気相堆積法で形成する場合には、非常に安定で、界面におけるキャリヤ生成速度の低い界面特性が得られる。
産業上の利用可能性

0114

本発明に係るSiCウエハ、SiC半導体デバイス、およびSiCウエハの製造方法は、以上説明したように、半導体デバイスとして使用した場合に電子移動度の異方性が小さく、かつ、SiC基板とSiCエピタキシャル成長層との格子不整合による歪みを緩和できるSiCウエハ等として利用可能である。

0115

具体的には、面方位がほぼ{03−38}のSiC基板を用いることによって、マイクロパイプやらせん転位の貫通による表面露出や、積層欠陥の発生とその表面露出が抑制される。また、4H型ポリタイプの基板を用いることによって、SiCウエハ上に成長させた活性層における電子移動度の異方性が低減される。さらに、SiC基板上にSiCからなるバッファ層が形成されているため、ウエハ上にSiC活性層を成長させた場合に、SiC基板とSiC活性層との格子不整合による歪みがSiC活性層に発生する事態を防止することができる。

0116

上記したSiCウエハを用いれば、非常に高性能な高効率・高耐圧パワーデバイス、高周波パワーデバイス、高温デバイス等の様々なSiC半導体デバイスを作製することが可能である。

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