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技術 物質のヒトプロスタグランジンD受容体に対する性質の同定方法

出願人 株式会社ビー・エム・エル
発明者 平井博之小川一行永田欽也高野昇一
出願日 2000年8月22日 (21年4ヶ月経過) 出願番号 2001-519187
公開日 2003年3月18日 (18年9ヶ月経過) 公開番号 WO2001-014882
状態 特許登録済
技術分野 生物学的材料の調査,分析 特有な方法による材料の調査、分析
主要キーワード 睡眠導入 チューブ壁 感受性領域 酸化代謝物 下流域 DPレセプター 引用文 当業界周知
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2003年3月18日)のものです。
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図面 (5)

課題・解決手段

本発明は、DPレセプター以外の、第2のヒトプロスタグランジンD2受容体サブタイプを見出し、種々の疾患の治療や予防に有用な、この受容体サブタイプに対して作用する物質同定法を提供することを課題とする。本発明はこの課題を解決するために、被験物質のヒトプロスタグランジンD受容体への作用に、同物質のヒトCRTH2への作用を関連付けることにより、同物質のヒトプロスタグランジンD受容体に対する性質を同定する同定方法を提供する。

概要

背景

概要

本発明は、DPレセプター以外の、第2のヒトプロスタグランジンD2受容体サブタイプを見出し、種々の疾患の治療や予防に有用な、この受容体サブタイプに対して作用する物質同定法を提供することを課題とする。本発明はこの課題を解決するために、被験物質のヒトプロスタグランジンD受容体への作用に、同物質のヒトCRTH2への作用を関連付けることにより、同物質のヒトプロスタグランジンD受容体に対する性質を同定する同定方法を提供する。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
2件

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請求項1

被験物質のヒトプロスタグランジン受容体への作用に、同物質のヒトCRTH2への作用を関連付けることにより、同物質のヒトプロスタグランジンD受容体に対する性質を同定する、同定方法

請求項2

被験物質のヒトプロスタグランジンD受容体に対する作用が、ヒトプロスタグランジンD受容体サブタイプにおいて選択的なモジュレーター作用である、請求の範囲第1項記載の同定方法。

請求項3

被験物質における、ヒトCRTH2若しくはその誘導体に対する結合性を、同物質のヒトプロスタグランジンD受容体に対する性質の指標とする、請求の範囲第1項又は第2項記載の同定方法。

請求項4

被験物質における、in situの状態のヒトCRTHに対する作動性を、同物質のヒトプロスタグランジンD受容体に対する性質の指標とする、請求の範囲第1項又は第2項記載の同定方法。

技術分野

0001

本発明は、特定の性質を有する物質同定方法に関する発明である。

背景技術

0002

プロスタグランジントロンボキサン、およびロイコトリエンのようなプロスタノイドは、アラキドン酸酸化代謝物ひとつのファミリーであり、生体内局所ホメオスタシスを維持するために重要な働きをしている。このプロスタノイドの一員である、プロスタグランジンD2(PGD2)は、哺乳動物では、脳、心臓脾臓腎臓骨髄、腸、皮膚、子宮、および眼を含む多数の臓器で合成され、種々の生理活性を発揮していることが知られている(Ujihara,M.ら、Arch.Biochem.Biophys.,260:521−531,1988;Ito、S.ら、Prostaglandins Leukotrienes and Essential Fatty Acids,37:219−234,1989およびその中の引用文献)。例えば、PGD2は、中枢神経系においては睡眠導入体温調節嗅覚機能ホルモン放出、炎症、および無痛覚などに関与していると考えられている(Negishi,M.ら、Prog.Lipid Res.,32:417−434,1993およびその中の引用文献)。また、PGD2は、血小板凝集を抑制する一方で、血管、胃、腸および子宮の平滑筋弛緩させる作用を有することが知られている(Giles,H.ら、Prostaglandins,35:277−300,1988およびその中の引用文献)。さらに、PGD2は、免疫反応で重要な役割を果たしている肥満細胞から放出される主要なプロスタノイドであり、気管支平滑筋の収縮好酸球の炎症局所への遊走、肥満細胞や好酸球、好塩基球からの炎症性メディエーター遊離促進などの作用を通して、アレルギー性鼻炎気管支喘息などのアレルギー疾患病態形成に関与していることも知られている(Negishi,M.ら、Prog.Lipid Res.,32:417−432,1993およびその中の引用文献)。さらに、PGD2には、局所投与された場合眼圧下げる作用があることが示されている(Woodward,D.F.ら、Eur.J.Pharmacol.,230:327−333,1993)。

0003

これらの知見から、PGD2受容体に対して何らかの作用が認められる物質、例えば、PGD2受容体の選択的なモジュレーターアゴニストおよびアンタゴニストを含む)は、PGD2が関与する種々の疾患の治療薬になることが期待されている。例えば、その生理作用から予想されるように、鎮静睡眠薬、沈痛薬、血圧調節薬、血小板凝集抑制薬、循環器用薬、胃・腸の運動抑制薬、抗胃潰瘍薬、アレルギー治療薬、抗炎症薬緑内障の予防・治療薬などとしての幅広い用途が期待される。

0004

現在では、PGD2は、特異的な受容体を介してその作用を発揮していることが明らかになっている(Coleman,R.ら、Pharmacol.Rev.,46:205−229,1994)。しかしながら、PGD2とその受容体との反応には、種特異性があり、動物組織あるいは動物モデルを用いての薬剤スクリーニング薬効の評価には限界があることも分かっている(Narumiya,S.ら、Br.J.Pharmacol.,85:367−375,1985)。

0005

また、薬理学解析により、ヒトや動物では、PGD2受容体には少なくとも2種のサブタイプが存在し、PGD2の多様な薬理作用仲介していることがしばしば示唆されている(Woodward,D.F.ら、Eur.J.Pharmacol.,230:327−333,1993;Fernandes,B.ら、Eur.J.Pharmacol.,283:73−81,1995)。例えば、ヒト子宮平滑筋では、PGD2による収縮作用を仲介する受容体と、それとは逆に、弛緩作用を仲介する受容体の、2種のPGD2受容体サブタイプの存在が示唆されている(Fernandes,B.ら、Eur.J.Pharmacol.,283:73−81,1995)。従って、PGD2の多様な作用のうち、病態の改善や予防につながる特定の作用のみをモジュレートする薬剤を開発する上においては、ヒトの各臓器におけるPGD2受容体サブタイプの分布状態を把握することと、この受容体サブタイプをコードするcDNAを単離することが必須であった。

0006

最近になり、ようやくひとつのPGD2受容体サブタイプと考えられる遺伝子がクローニングされた(以下、DPレセプターともいう)(Boie,Y.ら、J.Biol.Chem.,270:18910−18916,1995;特表平10−507930号公報)。

0007

現在、このDPレセプターが、PGD2の示す多様な生理活性のうち、具体的に、どの生理活性に関与しているのかが解析されている。その結果、例えば、ラットの脳において、DPレセプターの発現解析を行った結果、DPレセプターの分布とPGD2の睡眠誘導感受性領域とが一致しないとの報告がなされている(Gerashchenko,D.ら、J.Neurochem.,71:937−945,1998)。つまり、DPレセプター以外のPGD2受容体の存在が示唆されており、その存在の確認と機能の同定が求められている。

0008

本発明が解決しようとする課題は、DPレセプター以外の、第2のヒトPGD2受容体サブタイプを見出し、種々の疾患の治療や予防に有用な、この第2のPGD2受容体サブタイプに対して作用する物質、例えば、選択的なモジュレーター(アゴニストおよびアンタゴニストを含む)の同定法を提供することにある。発明の開示

0009

本発明者は、本発明者らがヒトリンパ球より遺伝子クローニングした、G蛋白質共役受容体様蛋白質ヒトCRTH2(以下、ヒトCRTH2ともいう)〔Nagata,K.ら、J.Immunol.,162:1278−1286,1999および再公表特許WO97/46677(この特許公報では、ヒトCRTH2をB19と称している)〕について、その生理リガンドを探索する過程で、偶然にもヒトCRTH2がPGD2と選択的に反応することを見出し、さらに、ヒトCRTH2とDPレセプターを比較した結果、両者間で、PGD2類似物質に対する反応性に違いがあることを見出した。また、ある種の化合物(例えば、ヒトCRTH2抗体)は、DPレセプターに対してなんら影響を及ぼすことなしに、ヒトCRTH2に対して選択的なアンタゴニスト活性を発揮し得ることを、本発明者は確認した。

0010

このように、当初は、PGD2とは全く無関係とも思われたヒトCRTH2が、驚くべきことに、目的とする第2のヒトPGD2受容体サブタイプであると結論するに至った。

0011

本発明は、このヒトCRTH2のPGD2受容体サブタイプとしての性質を用いて、ヒトPGD2に関連する有用な物質を見出し得る、物質の同定方法に関する発明である。

0012

すなわち、本発明者は、本願において、被験物質のヒトプロスタグランジンD受容体への作用(例えば、同受容体において選択的なモジュレーター作用)に、同物質のヒトCRTH2への作用を関連付けることにより、同物質のヒトプロスタグランジンD受容体に対する性質を同定する、被験物質の同定方法(以下、本発明同定方法ともいう)を提供する。

0013

本発明において、「モジュレーター作用」とは、対象となるプロスタグランジン受容体の働きに及ぼす何らかの作用のことを意味するものであり、代表的には、前記受容体の働きの阻害作用(典型的には、アンタゴニストが示す作用である)や、同促進作用(典型的には、アゴニストが示す作用である)等が挙げられるが、これらの作用に限定されるものではない。

発明を実施するための最良の形態

0014

以下、本発明の実施の形態について説明する。
A.ヒトCHTH2について

0015

本発明同定方法は、既知のヒト蛋白質であるヒトCRTH2が、DPレセプター以外の、第2のヒトPGD2受容体サブタイプとして機能しているという知見に基づく発明である。

0016

ヒトCRTH2は、データベースDDBJEMBLGenBankにおいて、「アクセッションナンバーAB008535」として登録された、ヒト由来の蛋白質を指し、そのcDNAの塩基配列およびそれよりコードされるアミノ酸配列は公知であり、誰でも上記データベースあるいは出版物〔Nagata,K.ら、J.Immunol.,162:1278−1286,1999および再公表特許WO97/46677(この特許公報には、「B19遺伝子」として記載されている)]より知ることができる。

0017

これらの公知の情報をもとに、純化したヒトCRTH2蛋白質又はその部分ペプチド、あるいはヒトCRTH2を発現する細胞、あるいはヒトCRTH2を含む細胞分画等を調製して、本発明同定方法において用いることができる。

0018

(1)ヒトCRTH2又はその部分ペプチドの調製について

0019

例えば、ヒトCRTH2の部分ペプチドや全長ペプチドは、公知の方法により化学合成して得ることができる。また、より一般的には、ヒトCRTH2の全長ペプチド、あるいは一部のアミノ酸置換、除去又は付加した改変ペプチド、あるいは部分ペプチド(これらを、ヒトCRTH2関連蛋白質と総称することもある)の、いずれかをコードするcDNAを作製し、これを適切な発現ベクターに組み込み、さらに適切な宿主細胞をこの発現ベクターで形質転換して、この形質転換体から、組換えヒトCRTH2関連蛋白質を製造することができる。

0020

ヒトCRTH2cDNAの、クローニングおよび組み換え当業界周知標準的技術を用いてなされうる。ここでいう標準的技術は、例えば、Maniatis,T.ら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,1989)に詳細に記載されている。また、公知の方法、例えば、いわゆるサイトスペフィックミュータジェネシス(Site−Specific Mutagenesis)(Mark,D.F.,ら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81,5662(1984))等の方法を用いて、遺伝子改変を行うことができる。

0021

組み換えヒトCRTH2を、適切な宿主細胞に発現させるには、通常は、まず公知のヒトCRTH2cDNAの塩基配列情報を基に、発現ベクターに、ヒトCRTH2関連蛋白質をコードするDNA(典型的には、ヒトCRTH2cDNA)をクローニングする。例えば、ヒトCRTH2遺伝子の発現が亢進していることが報告されている組織から抽出したpoly(A)+RNAを鋳型にして、公知の方法によりRT−PCR(reverse transcription polymerase chain reaction)法で、ヒトCRTH2cDNAを単離することができる(”PCR Protocols,A Guide to Methodsand Applications”Innis,M.A.,ら編,Academic Press,San Diego,1990)。なお、ヒトCRTH2遺伝子発現が高進しているヒト組織としてはTh2タイプTリンパ球(Nagata,K.ら、J.Immunol.,162:1278−1286,1999)、好酸球、好塩基球等を例示できる。

0022

また、上記のごとくしてPCRで増幅したヒトCRTH2cDNA断片や、化学合成したヒトCRTH2の塩基配列に相補的なDNAあるいはRNAをプローブとして、例えば、上記のヒトCRTH2高発現組織由来のcDNAライブラリーから、ヒトCRTH2cDNAの全長を入手する伝統的な手法を採用してもよい。このような伝統的な手法は、例えばManiatis,T.ら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,1989)に詳細に記載されている。

0023

ヒトCRTH2cDNA等のヒトCRTH2関連蛋白質をコードするDNAを組み込む発現用ベクターは、通常発現しようとする遺伝子の上流域プロモーターエンハンサー,および下流域転写終了配列等を保有するものを用いるのが好適である。また、ヒトCRTH2遺伝子の発現は、直接発現系に限らず、例えばβ−ガラクトシダーゼ遺伝子,グルタチオン−S−トランスフェラーゼ遺伝子チオレドキシン遺伝子を利用した融合タンパク質発現系とすることもできる。

0024

かかる遺伝子発現ベクターとしては、例えば、宿主大腸菌とするものとしては、pQE,pGEX,pT7−7,pMAL,pTrxFus,pET,pNT26CH等を例示することができる。また、宿主を枯草菌とするものとしては、pPL608,pNC3,pSM23,pKH80等を例示することができる。また、宿主を酵母とするものとしては、pGT5,pDB248X,pART1,pREP1,YEp13,YRp7,YCp50等を例示することができる。また、宿主を哺乳動物細胞又は昆虫細胞とするものとしては、p91023,pCDM8,pcDL−SRα296,pBCMGSNeo,pSV2dhfr,pSVdhfr,pAc373,pAcYM1,pRc/CMV,pREP4,pcDNAI等を例示することができる。

0025

これらの遺伝子発現ベクターは、ヒトCRTH2関連蛋白質を発現させる目的に応じて選択することができる。例えば、大量にヒトCRTH2関連蛋白質を発現させることを企図する場合には、宿主として大腸菌,枯草菌又は酵母等を選択し得る遺伝子発現ベクターを選択するのが好ましく、少量でも確実に活性を有するようにヒトCRTH2関連蛋白質を発現させることを企図する場合には、哺乳動物細胞や昆虫細胞を宿主として選択し得る遺伝子発現ベクターを選択するのが好ましい。なお、上記のように既存の遺伝子発現ベクターを選択することも可能であるが、目的に応じて適宜遺伝子発現ベクターを作出して、これを用いることも勿論可能である。

0026

ヒトCRTH2関連蛋白質をコードする遺伝子を組み込んだ発現用ベクターの宿主細胞への導入及びこれによる形質転換法は、一般的な方法、例えば宿主が大腸菌や枯草菌である場合には、塩化カルシウム法エレクトロポレーション法等を;宿主が哺乳動物細胞や昆虫細胞の場合はリン酸カルシウム法,エレクトロポレーション法又はリポソーム法等の手段により行うことができる。

0027

このようにして得られる形質転換体を常法に従い培養することにより、所望するヒトCRTH2関連蛋白質が蓄積される。かかる培養に用いられる培地は、宿主細胞の性質に応じて適宜選択することができるが、例えば宿主が大腸菌である場合には、LB培地やTB培地等が、宿主が哺乳動物細胞の場合には、RPMI1640培地等を適宜用いることができる。

0028

上述の手順等により得られる組換えヒトCRTH2関連蛋白質は、純粋なヒトCRTH2蛋白質として単離精製して使用することが可能である。ヒトCRTH2関連蛋白質の精製には公知の技術、例えば、細胞の可溶化タンパク沈澱剤による処理,限外濾過ゲル濾過高速液体クロマトグラフィー遠心分離電気泳動特異抗体特異的リガンドを用いたアフィニティクロマトグラフィー透析法等を単独で又はこれらの方法を組み合わせて用いることができる。なお、一般的なプロスタノイド受容体の精製法については、例えばUshikubi,F.ら、J.Biol.Chem.,264:16496−16501,1989に記載されており、この精製法に準じて精製工程を行うことができる。

0029

(2)ヒトCRTH2を発現する細胞、あるいはヒトCRTH2を含む細胞分画等について

0030

前述したように、組換えヒトCRTH2関連蛋白質を用いずに、天然のヒトCRTH2を高発現しているヒト組織あるいはヒト細胞株等を、本発明同定方法において用いることも可能である。また、上記のヒトCRTH2関連蛋白質をコードする遺伝子による形質転換体を用いることも可能である。ただし、この場合、これらの組織や細胞株等が、ヒトCRTHを発現すると同時に、DPレセプターや他のプロスタノイドレセプターを発現していないことが望ましい。

0031

ヒトCRTH2発現細胞は、それ自体を、本発明同定方法において使用することができるし、それよりヒトCRTH2蛋白質を含む細胞分画(例えば、超音波破砕処理と超遠心法により得た膜成分等)を得ることもできる。

0032

以上、(1)(2)に記載したように、純化したヒトCRTH2関連蛋白質、あるいはヒトCRTH2を発現する細胞、あるいはヒトCRTH2を含む細胞分画等(以下、これらの蛋白質、細胞、細胞分画等を総称して、ヒトCHTR2等ともいう)を調製して、これらを本発明同定方法に用いることができる。
B.本発明同定方法の内容について

0033

前述したように、本発明同定方法では、被験物質のヒトCHTR2等への作用が、被験物質のヒトプロスタグランジンD受容体への作用に関連付けられ、この関連付けが行われる前提として、被験物質のヒトCHTR2等への作用を特定することが必要となる。

0034

被験物質のヒトプロスタグランジンD受容体に対する作用として代表的な作用が、ヒトプロスタグランジンD受容体サブタイプにおいて選択的なモジュレーター作用である。

0035

以下、この選択的なモジュレーター作用を中心に説明する。

0036

既に述べたように、本発明同定方法は、ヒトCRTH2が、DPレセプター以外の、第2のヒトPGD2受容体サブタイプとして機能しているという知見に基づく同定方法である。よって、被験物質が、ヒトCRTH2の活性に選択的なモジュレーターとして同定されれば、その被験物質が、第2のヒトPGD2受容体に対する選択的モジュレーターとして同定されることとなる。ヒトCRTH2の活性に選択的なモジュレーターは、前述したように、例えば、純化したヒトCRTH2蛋白質又は部分ペプチド、あるいはヒトCRTH2を発現する細胞、あるいはヒトCRTH2を含む細胞分画を用い、例えば、ヒトCRTH2に対する選択的な結合能あるいはヒトCRTH2の機能に対する選択的な効果などによって同定される。

0037

上述したように、本発明同定方法では、種々の分子形態のヒトCRTH2を使用することが可能であるが、ヒトCRTH2の選択的なモジュレーターの活性評価にあたっては、一般的にいくつかの考慮すべき点がある。まず、PGD2と実質的な相互作用をするのに必要なヒトCRTH2の最小ドメインは、現在のところ不明である。従って、ヒトCRTH2の部分ペプチドを使用するより、ヒトCRTH2蛋白質の全長を使用した方が、現在のところは好適であるかもしれない。また、ヒトCRTH2蛋白質の一部のアミノ酸を置換あるいは除去したヒトCRTH2蛋白質の誘導体では、リガンド選択性が変化する可能性がある。従って、天然のヒトCRTH2蛋白質と同一のアミノ酸配列をもったものを使用することが好適かもしれない。また、ヒト膜蛋白質として存在するヒトCRTH2の細胞外領域には糖鎖が結合しており、その糖鎖がPGD2と有効に相互作用するのに必要である可能性がある。従って、ヒトCRTH2を発現させる宿主は糖鎖を付加しうる宿主細胞が好適かもしれない。この場合さらに、糖鎖の種類がヒトCRTH2の機能に関係する可能性がある。従って、糖鎖構造に関する十分な情報が入手されるまでは、ほ乳類動物細胞を宿主細胞として使用することが好適かもしれない。勿論、ヒトCRTH2モジュレーターの大量のスクリーニングに当たっては、上述した改変ヒトCRTH2やヒトCRTH2の部分ペプチド等が有利な場合があるので、目的に応じて使用するヒトCRTH2の分子形態を選ぶことができる。

0038

本発明同定方法によって、ヒトCRTH2等の活性に選択的なモジュレーターを同定するに際して、その被験物質は全く限定されない。すなわち、本発明同定方法の被験物質は、天然物生物工学的手法により製造された組換え蛋白質等を含む)、化学合成品であってもよい。また、本発明同定方法を行うに際しては、必要に応じて、公知の標識又は非標識のリガンド(例えば、ヒトPGD2等のプロスタノイド)を用いることができる。

0039

被験物質のヒトCHTR2等への作用の同定方法は、特に限定されず、当業界周知のアッセイ法を用いて測定することができる。例えば、プロスタノイドの受容体結合アッセイ法は、Boie,Y.ら、J.Biol.Chem.,270:18910−18916,1995等に記載されている。

0040

被験物質のヒトCHTR2等への作用、例えば、選択的なモジュレーター作用を、被験物質のヒトプロスタグランジンD受容体への作用に関連付ける場合、代表的な手段の一つとして、(1)被験物質における、ヒトCRTH2関連蛋白質に対する結合性指標とする手段を挙げることができる。

0041

この手段を用いる場合、例えば、被験物質の精製ヒトCRTH2への結合は、表面プラズモン共鳴測定原理とした装置[例えばBiacore 2000(アマシャムフェルマシア社)]で直接測定することができる(例えばBoris,J.ら、J.Biol.Chem.,272:11384−11391,1997に記載された方法を例示できる)。また、被験物質のヒトCRTH2への結合は、標識した被験物質を用いて直接試験することも可能であり、また、上述したように、標識した公知のリガンド(例えば、[3H]標識PGD2)の結合の阻害もしくは増強を指標に測定することもできる(例えば、Boie,Y.ら、J.Biol.Chem.,270:18910−18916,1995に記載された方法を例示できる)。

0042

この手段により、被験物質に、ヒトCRTH2関連蛋白質に対する結合性が認められれば、被験物質が、ヒトプロスタグランジンD2受容体に対して、阻害作用や増強作用等の何らかの作用を及ぼすモジュレーターである可能性が高くなる。

0043

また、上記の代表的な手段の他の態様として、(2)被験物質における、ヒトプロスタグランジンD受容体に対する作動性を指標とする手段を挙げることができる。

0044

すなわち、被験物質による、in situの状態のヒトCRTH2の活性化、あるいはPGD2によるヒトCRTH2の活性化に与える作用(阻害あるいは増強)で、被験物質における、ヒトプロスタグランジンD受容体に対する作動性を測定することができる。この場合、ヒトCRTH2の活性化は宿主細胞の細胞内カルシウム濃度の上昇(例えばBoie,Y.ら、J.Biol.Chem.,270:18910−18916,1995に記載された方法を例示できる)、走化性の亢進(例えばYokomizo,T.ら、Nature,387:620−624,1997に記載された方法を例示できる)、細胞表面のヒトCRTH2分子ダウンモジュレーション(例えばLuttrell,L.M.ら、Science,283:655−661,1999に記載された方法を例示できる)などを指標にすることができる。なお、ヒトCRTH2の活性化を測定する場合に宿主として使用する哺乳類細胞株としては、K562、Jurkat、HEK293、CHOなどが例示できる。

0045

この手段において、被験物質により、in situの状態のヒトCRTH2のレセプター活性が増大すれば、被験物質は、ヒトプロスタグランジンD2受容体の活性を増強する、アゴニスト等として同定され、逆に、上記のレセプター活性が減少すれば、被験物質がヒトプロスタグランジンD2受容体の活性を減弱させる、アンタゴニスト等として同定される。

0046

ヒトCRTH2、すなわち第2のヒトPGD2受容体に選択的なモジュレーターは、PGD2が関与する種々の疾患状態のうち、第2のヒトPGD2受容体が関与する疾患状態の治療および予防に有用である。第2のヒトPGD2受容体が関与する疾患状態はまだ十分特定されていないが、上記モジュレーターは、PGD2が関与する種々の疾患状態に対して、鎮静・睡眠薬、沈痛薬、血圧調節薬、血小板凝集抑制薬、循環器用薬、胃・腸の運動抑制薬、抗胃潰瘍薬、アレルギー治療薬、抗炎症薬、緑内障の予防・治療薬などとしての幅広い有用性が期待される。

0047

このように、被験物質のヒトプロスタグランジンD受容体への作用に、同物質のヒトCRTH2への作用(例えば、選択的なモジュレーター作用)を関連付けることにより、同物質のヒトプロスタグランジンD又はヒトプロスタグランジンD受容体に対する性質を同定して、これを薬剤のスクリーニング等に用いて、産業上の多大な貢献をすることができる。
実施例

0048

以下、実施例等により本発明を具体的に記載するが、この実施例により本発明の技術的範囲が限定して解釈されるべきものではない。

0049

〔実施例1〕 ヒトCRTH2発現細胞の作成

0050

ヒトCRTH2遺伝子発現プラスミドpRc/B19はNagata,K.ら、J.Immunol.,162:1278−1286,1999および再公表特許WO97/46677に詳述された方法で作製した。なおヒトCRTH2cDNA全長を組み込んだ形質転換体が、B19cDNAとして、工業技術院生命工学研究所に寄託番号FERM P−15616として寄託されているので、寄託者了解を得て使用することもできる。その場合B19cDNAを制限酵素HindIIIおよびXbaIで消化し、プラスミドpRc/CMV(インビトロゲン社)のHindIII/XbaIサイトにサブクローニングすれば上述のpRc/B19と同一の発現プラスミドが作製できる。このpRc/B19および対照のプラスミドpRc/CMVのそれぞれをヒト赤芽球白血病細胞株であるK562細胞にエレクトロポレーション法にて遺伝子導入し、ゲネティシンシグマ社)400μg/ml存在下で2−3週間選択培養した。pRc/B19を遺伝子導入したK562細胞については、生き残った細胞をウエル当たり0.3細胞で96穴マイクロプレートに蒔き2−3週間培養した.増殖してきた細胞クローン抗ヒトCRTH2抗体(Nagata,K.ら、J.Immunol.,162:1278−1286,1999)で蛍光染色し、ヒトCRTH2発現の高いクローンKB8を得た.一方、対照のpRc/CMVを遺伝子導入したK562細胞はゲネティシンによる選択後、ポリクローンの状態で培養を維持した(以下、K562/neoと称する)。

0051

〔実施例2〕比較対照のDPレセプター発現細胞の作成

0052

ヒトDPレセプターcDNAはBoie,Y.ら、J.Biol.Chem.,270:18910−18916,1995および特表平10−507930に記載のヒトDPレセプターcDNAのDNA塩基配列を基にRT−PCR法でクローニングした。すなわち、ヒトDPレセプターの発現が高いことが知られているヒト小腸のpoly(A)+RNA(クローンテック社)を鋳型として、オリゴ(dT)プライマーファルマシア社)及びMMLV逆転写酵素(ファルマシア社)を用いてcDNAを調製した。次に、制限酵素HindIIIサイトを含むフォワードプライマー(5’−CTTCCGAAGCTTTCACTCCAGCCCTTGCTCCCG:配列番号1)およびXbaIサイトを含むリバースプライマー(5’−GTTCTTTTCTATAAAATGTACATATTCCTCAGCTTACC:配列番号2)を用いてヒトDPレセプターの翻訳領域をPCR(94℃、1分;68℃、1分;72℃、1分の熱サイクルで35サイクル)で増幅した。得られたPCR産物をHindIIIおよびXbaIで消化し、pRc/CMVのHindIII/XbaIサイトにクローニングした。このようにして作製したヒトDPレセプターの発現プラスミドを実施例1で述べたと同様の方法でK562細胞に遺伝子導入し、ゲネティシンによる選択およびクローニング操作を行った。増殖してきた各クローンについて、後述する[3H]PGD2結合アッセイによりDPレセプター発現の高いクローンKD36を得た。

0053

〔実施例3〕 [3H]PGD2結合アッセイ
KB8、KD36およびK562/neoそれぞれの細胞を集め、3×107細胞/mlになるようにHank’s balanced salt solution(HBSS、ギブコビーアールエル社)中に再懸濁させ、その0.1mlを0.5mlマイクロチューブ分注し、上で冷やした。次にHBSSで希釈した1nMの[3H]PGD2(アマシャム社)を加え、氷上で1時間反応させた。反応後の細胞を、1.5mlのマイクロチューブに入れ予め氷冷しておいた1M蔗糖および10%牛胎児血清を添加したRPMI1640培地(1ml)の上に穏やかに重層し、マイクロ遠心機で10000回転、3分遠心した。0.1mlほど残して上清吸引した後、再度、10000回転で1分程遠心し、チューブ壁反応液を全て落とし、細胞を吸わないように注意して上清をできるだけ取り除いた。細胞に結合した放射活性液体シンチレーションカウンターで測定した。200倍濃度以上の非標識PGD2存在下に同様に測定した時の放射活性を非特異的結合とした。その結果、第1図に示すように、K562/neoには特異的な[3H]PGD2の結合は認められなかった。一方、KB8、KD36ではいずれも「3H]PGD2の特異的な結合が認められた。またこの測定系において、抗CRTH2抗体BM7(Nagata,K.ら、J.Immunol.,162:1278−1286,1999およびNagata,K.,ら)は濃度依存的に、KB8に対する[3H]PGD2の結合だけを選択的に阻害した。この方法でDPレセプターに作用しないヒトCRTH2選択的なモジュレーターを同定できることが示された。

0054

〔実施例4〕細胞内カルシウムアッセイ

0055

KB8、KD36およびK562/neoそれぞれの細胞を集め、10%牛胎児血清添加RPMI1640培地中に5×106細胞/mlになるように懸濁させ、5μM Fura−2AM(ドージンドー社)存在下で37℃、1時間培養した。培養後、細胞をHBSSで3回遠心洗浄フリーのFura−2AMを除いた。次に、細胞を0.1%牛血清アルブミンを含むHBSS中に106細胞/mlになるように再懸濁し、内容量0.4mlの石英セルに入れ、パーキンエルマー分光光度計LS50Bにセットした。サンプル添加後の、励起波長340nmおよび380nmにおける蛍光強度(510nm)の比の経時的な変化をFL−Winlabソフトウエア(パーキンエルマー)で計算して求めた。K562/neoは0.25−250nMのPGD2に対して有意な細胞内カルシウム濃度の変動は示さなかった。一方、KB8およびKD36ではいずれも数nMのPGD2処理により顕著な細胞内カルシウム濃度の上昇が誘導された。この測定系においても抗CRTH2抗体BM7はヒトCRTH2選択的なアンタゴニスト活性を示した(第2図)。この方法でもDPレセプターに作用しないヒトCRTH2選択的なモジュレーターを同定できることが示された。

0056

〔実施例5〕 ヒトCRTH2に対する種々のプロスタノイドの結合活性

0057

実施例3で示した[3H]PGD2結合アッセイを種々の非標識プロスタノイド(いずれもケイマン社)存在下に実施し、ヒトCRTH2の各種プロスタノイドに対する結合親和性を評価した。その結果、ヒトCRTH2に対する結合親和性の強さの順位はPGD2≧13,14−デヒドロ−15−ケトPGD2>>プロスタグランジンJ2(PGJ2)>15−デオキシデルタ12、14−PGJ2≧プロスタグランジンE2(PGE2)=プロスタグランジンA2(PGA2)>>トロンボキサンB2(TXB2)であった(第3図)。比較対照にしたDPレセプターに対する結合親和性の強さの順位はPGD2=PGJ2>>PGE2>13,14−デヒドロ−15−ケトPGD2>15−デオキシデルタ12,14−PGJ2≧TXB2≧PGA2であった。ヒトCRTH2とDPレセプターのPGD2に対する結合親和性の強さは同等であったが、他のプロスタノイドに対する結合親和性では13,14−デヒドロ−15−ケトPGD2のように大きな違いがあることが明らかになった。

0058

〔実施例6〕選択的アゴニストによるヒトCRTH分子のダウンモジュレーション

0059

KB8細胞を、10%牛胎児血清添加RPMI1640培地に、106細胞/mLとなるように懸濁させ、種々の被験サンプル存在下において、37℃で1時間培養した。培養後、細胞をHBSSで2回遠心洗浄し、フリーのサンプルを除いた。次に、細胞を、0.5%牛血清アルブミンおよび0.05%NaN3を添加したHBSSに再懸濁し、抗CRTH2モノクローナル抗体BM16およびフィコエリスリン標識抗ラットイムノグロブリン抗体を用いて蛍光染色した。蛍光染色した細胞の平均蛍光強度フローサイトメーターベクトンディッキンソン製)で測定し、サンプルを処理した細胞の値を、無処理(コントロール)の細胞の値と比較した。その結果を、第4図に示す。

0060

第4図に示すように、選択的アゴニストであるPGD2および13,14−デヒドロ−15−ケトPGD2では、コントロールに比べて有意にCRTH2のダウンモジュレーションを誘導したが、アゴニスト活性のないPGE2では、そのような効果は観察されなかった。すなわち、この方法により、CRTH2選択的なアゴニストを同定できることが示された。
産業上の利用可能性

0061

以上のように、本発明により、DPレセプター以外の、第2のヒトPGD2受容体サブタイプを見出され、種々の疾患の治療や予防に有用な、この第2のPGD2受容体サブタイプに対して作用する物質、例えば、選択的なモジュレーター(アゴニストおよびアンタゴニストを含む)の同定法が提供される。

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