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技術 薄膜半導体装置の製造方法

出願人 セイコーエプソン株式会社三菱電機株式会社
発明者 宮坂光敏小川哲也時岡秀忠佐藤行雄井上満夫笹川智広
出願日 2000年1月14日 (20年11ヶ月経過) 出願番号 2000-604443
公開日 2002年6月25日 (18年6ヶ月経過) 公開番号 WO2000-054313
状態 特許登録済
技術分野 再結晶化技術 アニール 薄膜トランジスタ 再結晶化技術
主要キーワード 最上限値 最下限値 描き直し 照射長 照射幅方向 溶融エネルギー 非晶質粒 パルスレーザー光照射
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図面 (17)

課題・解決手段

基板上に形成された硅素主体とする結晶性半導体膜能動層として用いる半導体装置の製造方法において、基板上に下地保護膜となる酸化硅素膜を形成する下地保護膜形成工程と、この下地保護膜上に硅素を主体とした半導体膜を形成する第一工程と、半導体膜にパルスレーザー光照射する第二工程とからなり、パルスレーザー光の波長が370nm以上710nm以下とする。これにより、低温プロセスを用いて、高性能薄膜半導体装置を容易に且つ安定的に製造することができる。

概要

背景

概要

基板上に形成された硅素主体とする結晶性半導体膜能動層として用いる半導体装置の製造方法において、基板上に下地保護膜となる酸化硅素膜を形成する下地保護膜形成工程と、この下地保護膜上に硅素を主体とした半導体膜を形成する第一工程と、半導体膜にパルスレーザー光照射する第二工程とからなり、パルスレーザー光の波長が370nm以上710nm以下とする。これにより、低温プロセスを用いて、高性能薄膜半導体装置を容易に且つ安定的に製造することができる。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
2件
牽制数
3件

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請求項1

基板上に形成された硅素(Si)を主体とする結晶性半導体膜能動層として用いて居る薄膜半導体装置の製造方法に於いて、基板上に下地保護膜と成る酸化硅素膜を形成する下地保護膜形成工程と、該下地保護膜上に硅素(Si)を主体とした半導体膜を形成する第一工程と、該半導体膜にパルスレーザー光照射する第二工程とを含み、該パルスレーザー光は多結晶硅素に於ける吸収係数よりも非晶質硅素に於ける吸収係数の方が大きい事を特徴とする薄膜半導体装置の製造方法。

請求項2

前記パルスレーザー光の前記半導体膜上での照射領域が幅W(μm)で、長さL(mm)の略長方形状で有る事を特徴とする請求項1記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項3

前記照射領域にて前記長さ方向に於ける前記パルスレーザー光の照射エネルギー密度が略台形状に分布して居る事を特徴とする請求項2記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項4

前記照射領域にて前記幅方向に於ける前記パルスレーザー光の照射エネルギー密度が略台形状に分布して居る事を特徴とする請求項2記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項5

前記照射領域にて前記幅方向に於ける前記パルスレーザー光の照射エネルギー密度が略ガウス関数的に分布して居る事を特徴とする請求項2記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項6

前記長さLに対する前記幅Wの比(L/W)が100以上で有る事を特徴とする請求項2記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項7

前記長さLに対する前記幅Wの比(L/W)が1000以上で有る事を特徴とする請求項2記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項8

前記パルスレーザー光の前記幅方向に於ける照射エネルギー密度の最大勾配値が3mJ・cm−2・μm−1以上で有る事を特徴とする請求項2記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項9

前記照射領域を各照射毎に幅方向にずらして行く事を特徴とする請求項2記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項10

前記半導体膜上の任意の一点が10回程度以上80回程度以下のパルスレーザー光照射被る事を特徴とする請求項1記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項11

基板上に形成された硅素(Si)を主体とする結晶性半導体膜を能動層として用いて居る薄膜半導体装置の製造方法に於いて、基板上に下地保護膜と成る酸化硅素膜を形成する下地保護膜形成工程と、該下地保護膜上に硅素(Si)を主体とした半導体膜を形成する第一工程と、該半導体膜にパルス発振を行うNd:YAGレーザー光第二高調波を照射する第二工程とを含む事を特徴とする薄膜半導体装置の製造方法。

請求項12

前記パルス発振を行うNd:YAGレーザー光の第二高調波の前記半導体膜上での照射領域が幅W(μm)で、長さL(mm)の略長方形状で有る事を特徴とする請求項11記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項13

前記照射領域にて前記長さ方向に於ける前記パルス発振を行うNd:YAGレーザー光の第二高調波の照射エネルギー密度が略台形状に分布して居る事を特徴とする請求項11記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項14

前記照射領域にて前記幅方向に於ける前記パルス発振を行うNd:YAGレーザー光の第二高調波の照射エネルギー密度が略台形状に分布して居る事を特徴とする請求項12記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項15

前記照射領域にて前記幅方向に於ける前記パルス発振を行うNd:YAGレーザー光の第二高調波の照射エネルギー密度が略ガウス関数的に分布して居る事を特徴とする請求項12記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項16

前記長さLに対する前記幅Wの比(L/W)が100以上で有る事を特徴とする請求項12記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項17

前記長さLに対する前記幅Wの比(L/W)が1000以上で有る事を特徴とする請求項12記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項18

前記パルス発振を行うNd:YAGレーザー光の第二高調波の前記幅方向に於ける照射エネルギー密度の最大勾配値が3mJ・cm−2・μm−1以上で有る事を特徴とする請求項12記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項19

前記照射領域を各照射毎に幅方向にずらして行く事を特徴とする請求項12記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項20

前記半導体膜上の任意の一点がパルス発振を行うNd:YAGレーザー光の第二高調波照射を10回程度以上80回程度以下被る事を特徴とする請求項11記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項21

基板上に形成された硅素(Si)を主体とする結晶性半導体膜を能動層として用いて居る薄膜半導体装置の製造方法に於いて、基板上に下地保護膜と成る酸化硅素膜を形成する下地保護膜形成工程と、該下地保護膜上に硅素(Si)を主体とした半導体膜を形成する第一工程と、該半導体膜にパルスレーザー光を照射する第二工程とを含み、該パルスレーザー光の多結晶硅素中での吸収係数μpSiが10−3nm−1以上10−2nm−1以下で有る事を特徴とする薄膜半導体装置の製造方法。

請求項22

前記基板が透明で有る事を特徴とする請求項21記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項23

前記半導体膜の形成は化学気相堆積法CVD法)に依る堆積を含む事を特徴とする請求項21記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項24

前記半導体膜の形成は低圧化学気相堆積法LPCVD法)に依る堆積を含む事を特徴とする請求項21記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項25

前記半導体膜の形成は高真空低圧化学気相堆積装置にて堆積される工程を含む事を特徴とする請求項21記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項26

前記高真空型低圧化学気相堆積装置は半導体膜堆積直前背景真空度が5×10−7Torr以下と成って居る事を特徴とする請求項25記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項27

前記パルスレーザー光が固体発光素子にて形成される事を特徴とする請求項21記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項28

前記パルスレーザー光がNd:YAGレーザー光の第二高調波で有る事を特徴とする請求項21記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項29

基板上に形成された硅素(Si)を主体とする半導体膜を能動層として用いて居る薄膜半導体装置の製造方法に於いて、基板上に下地保護膜と成る酸化硅素膜を形成する下地保護膜形成工程と、該下地保護膜上に硅素(Si)を主体とした半導体膜を膜厚d(nm)と成る様に形成する第一工程と、該半導体膜に多結晶硅素中での吸収係数μpSiが10−3nm−1以上10−2nm−1以下のパルスレーザー光を照射する第二工程とを含み、該膜厚dと該吸収係数μpSiとは0.105・μpSi−1<d<0.693・μpSi−1との関係式を満たして居る事を特徴とする薄膜半導体装置の製造方法。

請求項30

基板上に形成された硅素(Si)を主体とする半導体膜を能動層として用いて居る薄膜半導体装置の製造方法に於いて、基板上に下地保護膜と成る酸化硅素膜を形成する下地保護膜形成工程と、該下地保護膜上に硅素(Si)を主体とした半導体膜を膜厚d(nm)と成る様に形成する第一工程と、該半導体膜に多結晶硅素中での吸収係数μpSiが10−3nm−1以上10−2nm−1以下のパルスレーザー光を照射する第二工程とを含み、該膜厚dと該吸収係数μpSiとは0.405・μpSi−1<d<0.693・μpSi−1との関係式を満たして居る事を特徴とする薄膜半導体装置の製造方法。

請求項31

前記基板が透明で有る事を特徴とする請求項29記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項32

前記半導体膜の形成は化学気相堆積法(CVD法)に依る堆積を含む事を特徴とする請求項29記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項33

前記半導体膜の形成は低圧化学気相堆積法(LPCVD法)に依る堆積を含む事を特徴とする請求項29記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項34

前記半導体膜の形成は高真空型低圧化学気相堆積装置にて堆積される工程を含む事を特徴とする請求項29記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項35

前記高真空型低圧化学気相堆積装置は半導体膜堆積直前の背景真空度が5×10−7Torr以下と成って居る事を特徴とする請求項34記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項36

前記パルスレーザー光が固体発光素子にて形成される事を特徴とする請求項29記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項37

前記パルスレーザー光がNd:YAGレーザー光の第二高調波で有る事を特徴とする請求項29記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項38

基板上に形成された硅素(Si)を主体とする半導体膜を能動層として用いて居る薄膜半導体装置の製造方法に於いて、基板上に下地保護膜と成る酸化硅素膜を形成する下地保護膜形成工程と、該下地保護膜上に硅素(Si)を主体とした半導体膜を25nm程度以上165nm程度以下の厚みと成る様に形成する第一工程と、該半導体膜にNd:YAGレーザー光の第二高調波を照射する第二工程とを含む事を特徴とする薄膜半導体装置の製造方法。

請求項39

前記半導体膜の厚みが25nm程度以上95nm程度以下で有る事を特徴とする請求項38記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項40

前記基板が透明で有る事を特徴とする請求項38記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項41

前記半導体膜の形成は化学気相堆積法(CVD法)に依る堆積を含む事を特徴とする請求項38記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項42

前記半導体膜の形成は低圧化学気相堆積法(LPCVD法)に依る堆積を含む事を特徴とする請求項38記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項43

前記半導体膜の形成は高真空型低圧化学気相堆積装置にて堆積される工程を含む事を特徴とする請求項38記載の薄膜半導体装置の製造方法。

請求項44

前記高真空型低圧化学気相堆積装置は半導体膜堆積直前の背景真空度が5×10−7Torr以下と成って居る事を特徴とする請求項43記載の薄膜半導体装置の製造方法。

技術分野

背景技術

0002

多結晶硅素薄膜トランジスタ(p−Si TFT)に代表される薄膜半導体装置を汎用ガラス基板を使用し得る600℃程度以下、或いは非晶質硅素薄膜トランジスタ(a−Si TFT)の製造温度と同程度の425℃程度以下の低温にて製造する場合、従来以下の如き製造方法が取られて居た。まず基板上に半導体膜と成る非晶質硅素膜を50nm程度の厚みに低圧化学気相堆積法LPCVD法)で堆積する。次に此の非晶質膜にXeClエキシマレーザー波長308nm)を照射して多結晶硅素膜(p−Si膜)とする。XeClエキシマレーザー光の非晶質硅素と多結晶硅素中での吸収係数は其々0.139nm−1と0.149nm−1と大きい為、半導体膜に入射したレーザー光の9割は表面から15nm以内で吸収される。又、非晶質硅素での吸収係数の方が多結晶硅素での吸収係数よりも7%程小さくなって居る。その後、ゲート絶縁膜と成る酸化硅素膜化学気相堆積法(CVD法)や物理気相堆積法PVD法)にて形成する。次にタンタル等でゲート電極を作成して、金属(ゲート電極)−酸化膜(ゲート絶縁膜)−半導体(多結晶硅素膜)から成る電界効果トランジスタMOS−FET)を構成させる。最後に層間絶縁膜を此等の膜上に堆積し、コンタクトホール開孔した後に金属薄膜にて配線を施して、薄膜半導体装置が完成する。

0003

しかしながら此等従来の薄膜半導体装置の製造方法では、エキシマレーザー光のエネルギー密度制御が困難で、僅かなエネルギー密度の変動に依っても半導体膜質が同一基板内に於いてすら大きなばらつきを示して居た。又、膜厚水素含有量に応じて定まる閾値よりも照射エネルギー密度が僅かに大きく成ったでも半導体膜には激しい損傷が入り半導体特性製品歩留まりの著しい低下を招いて居た。斯うした事から基板内均質多結晶半導体膜を得るには、レーザー光のエネルギー密度を最適値よりも可成り低く設定する必要が有り、それ故に良好な多結晶薄膜を得るにはエネルギー密度の不足が否めなかった。又、最適なエネルギー密度でレーザー照射を施しても、多結晶膜を構成する結晶粒を大きくする事が困難で、膜中に多くの欠陥残留させているのが実状であった。斯くした事実に則し、従来の製造方法にてp−Si TFT等の薄膜半導体装置を安定的に製造するには、完成した薄膜半導体装置の電気特性犠牲にせざるを得ないとの課題を有して居た。

0004

そこで本発明は上述の諸事情を鑑み、その目的とする所は600℃程度以下、理想的には425℃程度以下との低温工程にて優良な薄膜半導体装置を安定的に製造する方法を提供する事に有る。

発明の開示

0005

本発明の概要を説明した後、本発明及び其の基礎原理と作用を詳細に説明する。
本発明の概要

0006

本発明は基板上に形成された硅素(Si)を主体とする結晶性半導体膜能動層として用いて居る薄膜半導体装置の製造方法に於いて、基板上に下地保護膜と成る酸化硅素膜を形成する下地保護膜形成工程と、此の下地保護膜上に硅素(Si)を主体とした半導体膜を形成する第一工程と、半導体膜にパルスレーザー光を照射する第二工程とを含み、此のパルスレーザー光が多結晶硅素に於ける吸収係数よりも非晶質硅素に於ける吸収係数の方が大きい事を以て其の特徴と為す。又、本発明はパルスレーザー光の多結晶硅素中での吸収係数μpSiが10−3nm−1以上10−2nm−1以下で有る事を以てしても其の特徴と為す。その際に半導体膜を膜厚をd(nm)とすると、膜厚dと先の吸収係数μpSiとは
0.105・μpSi−1<d<0.693・μpSi−1
との関係式を満たして居るのが好ましい。より理想的には、
0.405・μpSi−1<d<0.693・μpSi−1
との関係式を満たして居る事である。本発明を液晶表示装置等に適応するには、基板が可視光に対して透明で有る事が望まれる。又、応用の如何に関わらず、基板がパルスレーザー光に対して略透明である事が望まれる。略透明で有るとはパルスレーザー光の基板に於ける吸収係数が多結晶硅素に於ける吸収係数の十分の一程度以下で有る事を意味し、具体的には基板に於ける吸収係数μSubが10−4nm−1程度以下で有る。通常、先の半導体膜の形成は化学気相堆積法(CVD法)に依る堆積工程を含んで居る。化学気相堆積法の中でも取り分け低圧化学気相堆積法(LPCVD法)が適しており、更には高真空低圧化学気相堆積装置にて半導体膜が堆積されるのが理想的と言える。高真空型低圧化学気相堆積装置とは典型的には半導体膜堆積直前背景真空度が5×10−7Torr以下と成って居る物をさす。パルスレーザー光は固体発光素子にて形成されるのが好ましく、特にパルスレーザー光がパルス発振を行うNd:YAGレーザー光第二高調波(YAG2ωと略称する)で有る場合が最も優れて居る。YAG2ωレーザー光を硅素を主体とした半導体膜に照射する場合、半導体膜の厚みは25nm程度以上165nm程度以下が好ましく、理想的には25nm程度以上95nm程度以下で有る。

0007

第二工程でレーザー光を照射する際のパルスレーザー光の半導体膜上での照射領域は幅W(μm)で、長さL(mm)の線状乃至は略長方形状で有る。照射領域内ではパルスレーザー光の照射エネルギー密度は長さ方向に略台形状に分布して居る。一方、幅方向の照射エネルギー密度は略台形状乃至は略ガウス関数的に分布して居るのが好ましい。照射領域の長さLに対する幅Wの比(L/W)は100以上で有る事が好ましく、理想的には1000以上と云える。パルスレーザー光の幅方向に於ける照射エネルギー密度の最大勾配値は3mJ・cm−2・μm−1以上有るのが望ましい。斯うした特徴を有する照射領域を各照射毎に幅方向にずらして行く事で基板全面のレーザー照射を完了させる。此の際に半導体膜上の任意の一点が10回程度以上80回程度以下のパルスレーザー光照射被る様に第二工程を行うのが好ましい。
本発明の詳細な説明

0008

本発明はガラス歪点温度が550℃程度から650℃程度と云った低耐熱性ガラス基板、或いは高耐熱性プラスティック基板等の各種透明基板上に形成された結晶性の半導体膜を能動層として用いて居る薄膜半導体装置の製造方法に関わり、基板上に下地保護膜と成る酸化硅素膜を形成する下地保護膜形成工程と、此の下地保護膜上に硅素(Si)を主体とした半導体膜を形成する第一工程と、斯様に形成された半導体膜にパルスレーザー光を照射する第二工程とを含む。

0009

本願発明を液晶表示装置に適応する際には基板は可視光に対して透明で有る事が好ましく、其れ以外に適応される際にも基板は少なくともパルスレーザー光に対して略透明で有る事が望まれる。具体的にはパルスレーザー光に対する基板の吸収係数が、硅素に対する吸収係数の十分の一程度以下で有る事が望ましい条件とされる。此は本願発明がパルスレーザー光の半導体膜中での透過率厳格に調整する技術を採用している為、基板に於けるレーザー光の吸収係数が半導体膜に於ける吸収係数に対して十分に小さくなければ、基板にレーザー光に依る損傷が入って仕舞うからである。後述する様に高品質な結晶性半導体膜を得るにはパルスレーザー光の強度や波長、半導体膜の厚み等を最適化せねばならず、それには基板がパルスレーザー光に対して略透明であらねばならない。実際、基板に於けるパルスレーザー光の吸収係数が半導体膜に於ける吸収係数の十分の一程度以下で有れば、基板内でレーザー光を吸収する層の厚みは半導体膜の厚みの十倍程度以上となる。斯うして基板で光が吸収される体積が増大するので、其れに応じて熱容量も増し、基板の温度上昇を比較的抑制する事が可能になる訳である。換言すれば基板や薄膜半導体装置に損傷を与える事無く優良な薄膜半導体装置を作成するには、上述した光学特性条件を基板が満たしている事が不可欠と云える。

0010

第二工程にて照射されるパルスレーザー光の波長λは370nm以上710nm以下で有り、此の様な波長を有する光は多結晶硅素に於ける吸収係数よりも非晶質硅素に於ける吸収係数の方が大きいとの特徴を示す。更に斯様なパルスレーザー光の内でも、レーザー光の多結晶硅素中での吸収係数μpSiが10−3nm−1以上10−2nm−1以下の場合がより好ましい。パルスレーザー光の半導体膜上に於ける照射エネルギー密度は少なくとも半導体膜の一部を溶融させるのに十分な強度で有らねばならない。

0011

第一工程では下地保護膜上に硅素(Si)を主体とした半導体膜を形成する。半導体膜としては硅素膜(Si)や硅素ゲルマニウム膜(SixGe1−x:0<x<1)に代表される半導体物質が使用され、硅素をその主構成元素(硅素原子構成比が80%程度以上)とする。基板は液晶表示装置に用いられる透明無アルカリガラス、或いはプラスティックセラミック等の絶縁性基板が用いられるのが通常だが、基板の耐熱性(ガラス基板の場合は歪み点温度)が550℃程度以上有れば、其の種類に囚われない。此等の基板の表面には半導体膜に対する下地保護膜として、酸化硅素膜が100nm程度から10μm程度堆積されて居る。下地保護膜としての酸化硅素膜は単に半導体膜と基板との電気的絶縁性を取ったり、或いは基板が含有する不純物の半導体膜への拡散混入を防ぐにのみならず、下地酸化膜と結晶性半導体膜との界面を良質な物とする。本願発明では、薄膜半導体装置の半導体膜は10nm程度から200nm程度の厚みを有し、半導体膜の膜厚方向全域に渡ってエネルギーバンドが曲がって居る場合(SOIの完全空乏モデルに相当する)が主たる対象とされる。斯様な状況下ではゲート絶縁膜と半導体膜との界面と共に、下地保護膜と半導体膜との界面も電気伝導に無視出来ぬ関与を及ぼす。酸化硅素膜は半導体膜と界面を成す際に界面捕獲準位を最も低減し得る物質で有るから、下地保護膜として適している訳で有る。半導体膜は此の下地保護膜上に形成される。従って下地保護膜としては半導体膜との界面に1012cm−2程度以下の界面準位を有する酸化硅素膜の使用が本願では望まれる。更に本発明では、従来技術に比べて半導体膜の下部も高温に加熱される傾向が強い為に、基板からの不純物拡散が生じ易い。此を防ぎ、高純度の半導体膜を用いて優良なる薄膜半導体装置を本願発明にて作成するには、密度の高い稠密な酸化硅素膜を下地保護膜として使用するのが不可欠である。この様な酸化硅素膜は、液温が25±5℃で濃度が1.6±0.2%の沸化水素(HF)酸水溶液に於けるエッチング速度が1.5nm/s以下となる物である。通常、下地保護膜はプラズマ化学気相堆積法PECVD法)や低圧化学気相堆積法(LPCVD法)、スパッター法と云った気相堆積法で形成される。此等の内でも特に本願発明に適した下地保護膜を作成するには、PECVD法の中でも電子サイクロトロン共鳴PECVD法(ECR−PECVD法)やヘリコンPECVD法、リモートPECVD法を利用する事が好ましい。又、工業用周波数(13.56MHz)や其の整数倍の周波数を用いた汎用のPECVD法にて本願発明に適した酸化硅素膜を得るには、原料物質としてTEOS(Si−(O−CH2CH3)4)と酸素(O2)とを使用し、酸素流量をTEOS流量の5倍以上に設定して酸化硅素膜を堆積すれば良い。或いは原料物質としてモノシラン(SiH4)と亜酸化窒素(N2O)とを用い、希釈気体としてヘリウム(He)乃至はアルゴン(Ar)と云った希ガスを用いて、総気体流量中の希ガスの割合を90%程度以上(即ち総気体流量中の原料物質の割合を10%程度未満)として酸化硅素膜を堆積すれば良い。その際に基板温度は280℃以上で有る事が望まれる。基板が高純度の石英から成る時には下地保護膜と石英基板とが兼用される事も可能で有るが、表面状態を常に一定として半導体膜品質の変動を最小とするには、上述の方法にて下地保護膜を形成するのが好ましい。

0012

下地保護膜上に非晶質状態又は多結晶状態に有る半導体膜が化学気相堆積法(CVD法)で、好ましくは高次シラン(SinH2n+2:n=2,3,4)を原料気体一種として用いて、堆積形成される。半導体膜堆積にはプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)や低圧化学気相堆積法(LPCVD法)、常圧化学気相堆積法(APCVD法)、スパッター法と云った各種気相堆積法が可能で有るが、高純度の半導体膜が容易に堆積されるとの立場からは、其の内でも特に低圧化学気相堆積法(LPCVD法)が適して居る。低圧化学気相堆積法は高真空型低圧化学気相堆積装置にて行われる。此は半導体膜の純度を高める事と、不純物に起因する結晶核の発生を最小として、本願発明で最終的に得られる結晶性半導体膜を高純度で且つ大きな結晶粒から構成される様にする為で有る。取り分け本願発明では、第二工程にて半導体膜を厚み方向で比較的均一に加熱して横方向への結晶成長を促進させるので、不純物に起因する結晶核の発生を最小とするならば、大きな結晶粒から成る多結晶半導体薄膜を容易に得る事が可能となる。高真空型とは半導体膜堆積直前の成膜室に於ける背景真空度が5×10−7Torr程度以下とし得る装置で有る。斯様な高真空型低圧化学気相堆積装置は単に成膜室の気密性が優れて居るにのみならず、成膜室に於ける排気速度が100sccm/mTorr(不活性ガスを100sccm成膜室に流した時に得られる平衡圧力が1mTorrと成る排気速度)程度以上の排気能力を有して居る事が更に望まれる。斯うした高排気能力を有する装置では1時間程度との比較的短時間で、基板等からの脱ガス流量を充分に低減せしめ、生産性を高く保って尚、高純度半導体薄膜の堆積を可能とするからで有る。

0013

非晶質硅素膜に代表される硅素を主体とする半導体膜は高次シラン(SinH2n+2:nは2以上の整数)を原料気体の一種として堆積されるのが好ましい。価格や安全性を考慮すると高次シランとしてはジシラン(Si2H6)が最も適している。ジシランを低圧化学気相堆積法に適応すると、425℃程度以下の低温にて高純度の非晶質硅素膜を0.5nm/min程度以上との比較的速い堆積速度にて得ることが出来る。本願発明に適した良質な非晶質半導体膜を得るには、堆積温度と堆積速度の制御が重要となる。堆積温度は430℃程度以下で、且つ堆積速度が0.6nm/min程度以上と成る様にジシラン流量や成膜時の圧力を定める必要がある。

0014

基板面積が2000cm2程度以上有る大型基板を用いる場合には、LPCVD法の使用が困難と化す。其の様な状況下では、プラズマボックス型のPECVD装置にて半導体膜を堆積する。プラズマボックス型のPECVD装置は、プラズマ処理を行う成膜室が其れよりも大きな別の真空の部屋内に設置されて居るので、成膜室内の背景真空度を1×10−6Torr程度以下とし得る。背景真空度は高真空型LPGVD装置に劣るものの、半導体膜の堆積速度を3nm/min程度以上と大きく出来るので、結果として不純物に起因する結晶核の発生を最少とする高純度の半導体膜が得られる。PECVD法を本願発明に適応するには、成膜室内の背景真空度を1×10−6Torr程度以下として、且つ半導体膜の堆積速度を3nm/min程度以上となる条件にて半導体膜を堆積する。非晶質膜堆積時の基板温度は250℃程度から450℃程度の間である。250℃程度よりも温度が高ければ非晶質膜中に含有される水素量を8%程度以下と低減出来、第二工程の結晶化を安定的に行うことが可能と成る。450℃程度よりも低ければ非晶質膜を構成する非晶質粒が大きく成り、此の非晶質膜を結晶化した際に得られる多結晶膜を構成する結晶粒も大きく出来る。理想的には300℃程度から400℃程度の間である。第二工程に於けるレーザー結晶化を安定的に進めるには非晶質半導体膜内の水素量を好ましくは硅素に対して5%程度未満とする。此の様に水素含有量の少ない硅素膜は堆積速度を25nm/min以下とすれば成膜され得る。PECVD法を適応する場合には原料気体としてジシランの他にモノシランを使用しても良い。

0015

此の様にして非晶質半導体膜又は多結晶半導体膜が得られた後に、第二工程として此等半導体膜にパルスレーザー光を照射して非晶質半導体膜の結晶化、乃至は多結晶半導体膜の再結晶化を進める。レーザー光としては連続発振の物も使用可能で有るが、パルス発振のレーザー光の使用がより好ましい。其れは後述する様に、本願発明は結晶の横成長を促進し、其の場合には連続発振よりは、一回の照射毎に適当な距離を移動し得るパルス発振の方が大きな結晶粒から成る多結晶半導体薄膜が確実に得易いからで有る。半導体膜にレーザー光を照射する際には波長λが370nm以上710nm以下のパルスレーザー光を使用する。此等の光の非晶質硅素中及び多結晶硅素中での吸収係数を図1に示す。図1横軸は光の波長で、縦軸が吸収係数である。破線(Amorphous Silicon)が非晶質硅素を表し、実線(Polysilicon)は多結晶硅素を表して居る。図1から分かる様に、370nmから710nmの波長領域では光の吸収係数は多結晶硅素中よりも非晶質硅素中での方が大きくなる。換言すれば光の多結晶硅素に於ける吸収係数よりも非晶質硅素に於ける吸収係数の方が大きく成る様なパルスレーザー光を半導体膜に照射する。例えば波長が約532nmで有るNdドープYAGレーザー光の第二高調波(YAG2ω光と略記する)の非晶質硅素での吸収係数μaSiと多結晶硅素での吸収係数μpSiは其々、
μaSi(YAG2ω)=0.01723nm−1
μpSi(YAG2ω)=0.00426nm−1
と、非晶質硅素での吸収係数の方が多結晶硅素での吸収係数よりも4倍余りも大きく成って居る。多結晶膜は微視的には結晶成分非晶質成分とから構成されて居る。結晶成分とは結晶粒内積層欠陥等の欠陥が非常に少ない部位で、略単結晶状態に有る箇所と言える。一方、非晶質成分とは結晶粒界や結晶粒内の欠陥部等の構造秩序乱れが見られる部位で、所謂非晶質状態に有る箇所と言える。レーザー光を照射して結晶化を進めるとの溶融結晶化では、非溶融部冷却固化過程時に於ける結晶成長の核と成る。高い構造秩序を有する結晶成分が結晶成長核と成れば、其処から成長する結晶は矢張り高い構造秩序を有する良質な結晶化膜と成る。此に反して、構造秩序の乱れた部位が結晶成長核と成れば、積層欠陥等が冷却固化過程時に其処から成長するので、最終的に得られる結晶化膜は欠陥等を含んだ低品質な物と化す。従って優良な結晶化膜を得るには、多結晶膜中の結晶成分を溶融させずに此を結晶成長の核とし、非晶質成分を優先的に溶融させれば良い事に成る。本願発明では、照射レーザー光の非晶質硅素に於ける吸収係数が多結晶硅素に於ける吸収係数よりも大きいので、非晶質成分が結晶成分に比べて優先的に加熱される。具体的には結晶粒界や欠陥部が容易に溶融し、略単結晶状態に有る良質な結晶成分が結晶成長核と成るので、欠陥部や不対結合対等が大幅に低減し、粒界も構造秩序の高い対応粒界が支配的と成る。此の事は半導体膜の電気特性からすると、エネルギーバンド図に於ける禁制帯中央部付近捕獲準位密度を大きく減少させるとの効果をもたらす。又、斯様な半導体膜を薄膜半導体装置の能動層(ソース領域やドレイン領域チャンネル形成領域)に用いると、オフ電流値が小さく、急峻な閾値下特性を示し(サブスレーシホールドスィング値が小さく)、閾値電圧の低いトランジスタを得る事に成る。従来技術で此の様な優れた薄膜半導体装置がなかなか製造出来なかったのは、溶融結晶化に適した波長を有するレーザー光を使用しておらず、結晶成分も非晶質成分をも一緒に溶融させて居た事が原因の一つと云えよう。此処に述べた本願発明の原理が最も効果的に働くのは、多結晶硅素での吸収係数の非晶質硅素での吸収係数に対する比(μpSi/μaSi)が大きい時で有る。図1を見ると、光の波長が450nm程度から650nm程度の時に此の比が大きく成る事が分かる。従って本願発明の第二工程にて照射するパルスレーザー光の最も好ましい波長は450nm程度以上650nm程度以下と云える。波長が450nmの光の多結晶硅素中での吸収係数μpSiは1.127×10−2nm−1で、波長が650nmの光の多結晶硅素中での吸収係数μpSiは8.9×10−4nm−1で有る。従って波長が450nm程度以上650nm程度以下のパルスレーザー光を照射するとの第二工程は、パルスレーザー光として多結晶硅素中での吸収係数μpSiが大凡10−3nm−1以上10−2nm−1以下となる物を用いて居る事になる。

0016

良質な多結晶半導体膜を得るにはレーザー光の発振定性が最も重要なので、パルスレーザー光は固体発光素子にて形成されるのが望ましい。(本願では此を固体レーザーと略称する。)従来のエキシマガスレーザーでは、レーザー発振室内でのキセノン(Xe)や塩素(Cl)などのガス不均一性や、ガス自体の劣化或いはハロゲンに依る発振室内の腐食等に起因して、発振強度のばらつきが5%程有り、更に発振角のばらつきも5%程度認められた。発振角のばらつきは照射領域面積のばらつきをもたらすので、結果として半導体膜表面でのエネルギー密度(単位面積あたりのエネルギー値)は総計で10%以上も変動して居り、此が優良なる薄膜半導体装置を製造する上での一つの阻害要因となっていた。又、レーザー発振の長期安定性にも欠け、薄膜半導体装置のロット間変動をもたらしていた。此に対して固体レーザーには斯様な問題が存在し得ぬが故、レーザー発振は窮めて安定で、半導体膜表面でのエネルギー密度の変動(平均値に対する標準偏差の比)を5%程度未満とし得るので有る。本願発明をより効果的に実用するには、この様に半導体膜表面でのレーザーエネルギー密度の変動が5%程度未満となる固体レーザーの使用が求められる。更に、固体レーザーの使用は薄膜半導体装置製造時に於けるロット間変動を最小化するとの効果や、従来頻繁に行われて居た煩雑なガス交換作業から薄膜半導体装置の製造を解放し、以て薄膜半導体装置を製造する際の生産性の向上や低価格化を導くとの効果を有する。先の波長や吸収係数の要請と固体レーザーの要請とを同時に満たし得るのがネオジウム(Nd)を酸化イットリウム(Y2O3)と酸化アルミニウム(Al2O3)との複酸化物に添加したネオジウム添加のイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)レーザー光の第二高調波(YAG2ω光、波長532nm)である。従って、本願発明の第二工程では半導体膜表面に於けるエネルギー密度の変動が5%程度未満のYAG2ω光を半導体膜に照射するのが最も適している。

0017

さて、半導体膜中では光は吸収され、入射光指数関数的に其の強度を減衰させる。今、入射光強度をI(0)とし、硅素を主体とした多結晶半導体膜中での表面からの距離をx(nm)、場所xでの強度をI(x)とすると、此等の間には吸収係数μpSiを用いて次の関係が成り立つ。
I(x)/I(0)=exp(−μpSi・x) (式1)
吸収係数μpSiが10−3nm−1の場合と10−2nm−1の場合、及び本願発明のパルスレーザー光として最も優れているNd:YAGレーザー光の第二高調波(YAG2ω光)の場合と、従来技術のXeClエキシマレーザー光の場合とで式1の関係を図2に示す。硅素膜が効率的に加熱される為には入射光の少なくとも10%程度は半導体膜により吸収される必要があるので、図2中には其の条件となる0.9の位置に横点線を引いてある。又、光の強度は其の儘硅素に加えられる熱量を意味し、故に図2レーザー光照射時に於ける硅素膜中での温度分布をも表している事になる。出願人等の研究に依ると、従来のエキシマレーザー照射で半導体膜の表面が激しく損傷を被る一方、其の下部では低品質な半導体層が残り、其れが為優良なる多結晶半導体膜が得られぬ理由は、表面と下部との間に存在する大きな温度差由来する。表面での損傷が生ぜず、且つ半導体膜の厚み方向で略全体が比較的均一に溶融するのは、半導体膜下部に於ける光の強度が入射光強度の半分程度以上の時である。此の条件を満たす時には表面と下部との温度差は小さくなる。そこで図2には光の強度が表面の半分となる0.5の位置にも横点線を引いてある。従って硅素を主体とした半導体膜が効果的に加熱され、且つ半導体膜に損傷が入らずに膜厚全体で良好な結晶化が進む条件は、図2で0.9の横点線と0.5の横点線とに挟まれた領域となる。従来技術のXeClエキシマレーザー光は入射光の殆どが半導体膜表面にて吸収されるので、レーザー結晶化に適した半導体膜厚は1nmから4nmと限られて居る事が分かる。此に対して本願発明の条件では広い膜厚範囲にて良好な結晶化が行われる事になる。

0018

レーザー光を用いた溶融結晶化では、何れのレーザー光を用いようとも、温度勾配に沿って結晶は成長する。一方、薄膜半導体装置で利用される半導体膜の厚みは、通常30nm程度から100nm程度である。先にも述べた様に、従来のXeClエキシマレーザー光に依る結晶化では半導体膜表面の4nm程度以内で殆どの光が吸収され、表面近傍のみが加熱される事に起因して、半導体膜内では上下方向に急峻な温度勾配が生ずる(図3、a−1)。此の為に結晶は半導体膜の下部から表面に向かって成長し、レーザー照射後に得られる多結晶膜は小さな結晶粒から構成される傾向が強かった(図3、a−2)。(この様に従来技術では下から上に向かって小さな結晶粒が沢山成長して居たので、半導体膜中の不純物に起因する結晶核の存在は然程重要な問題ではなかった。)此に対して本願発明では、溶融結晶化に最も適した吸収係数を有するレーザー光を照射するので、半導体膜が膜厚方向で均一に加熱される。其の結果、レーザー照射領域の端部に於いては、温度勾配が横方向に生じ(図3、b−1)、結晶は上下方向よりも寧ろ横方向に成長し易くなる。即ち、照射領域の端部には大きな結晶粒が成長する事になる(図3、b−2)。照射領域内の端部以外の場所でも上下方向の温度差が小さい為に、半導体膜下部での結晶核発生確率が従来よりも著しく低減して、平均的には多結晶半導体膜を構成する結晶粒は従来よりも大きくなる。横方向への結晶成長が促進されるのは表面と下部との光強度が其れ程変わらない時で、実験に依ると半導体膜下部に於ける光強度が入射光強度の三分の一程度以上となる場合である。そこで図2には横成長が生じ易くなる条件の0.667の位置にも横点線を描いてある。従って硅素を主体とした半導体膜が効果的に加熱され、且つ横成長が生じて大きな結晶粒から成る多結晶半導体膜が形成される条件は、図2で0.9の横点線と0.667の横点線とに挟まれた領域となる。無論、結晶粒を大きくするには此処に述べた温度勾配の他に不純物に基付く結晶核を抑制せねばならないので、下地保護膜や第一工程での半導体膜形成等にも前述の配慮が求められる。

0019

図2を見ると、吸収係数が10−3nm−1以上で10−2nm−1以下で有っても総ての半導体膜厚で優良なる多結晶膜が得られるのではない事が分かる。例えばYAG2ω光(吸収係数μpSi=4.26×10−3nm−1)では硅素膜が効果的に加熱されるのは半導体膜の厚みが25nm程度以上の時であり、表面での損傷が無く膜厚全体が略溶融するのは半導体膜の厚みが165nm程度以下の時で有る。又、横成長が生じて結晶粒が大きく成るのは半導体膜厚が95nm程度以下の時で有る。従って、YAG2ωレーザー光を硅素を主体とした半導体膜に照射する時に好ましい半導体膜の厚みは25nm程度以上165nm程度以下で、理想的には25nm程度以上95nm程度以下となる。此の様に使用するレーザー光の多結晶硅素中での波長や吸収係数に応じて最適半導体膜厚は異なって来る。具体的には硅素膜が効果的に加熱され、且つ表面損傷無しに膜厚全体が略溶融するのは、式1でxを半導体膜の厚みdとして、I(d)/I(0)が0.5と0.9との間に有る条件に相当する。
0.5<I(d)/I(0)<0.9 (式2)
此の式2を式1を用いてdに関して解くと、
0.105・μpSi−1<d<0.693・μpSi (式3)
との関係式が得られる。同様に、硅素膜が効果的に加熱され、且つ横成長が生じて結晶粒が大きく成るのはI(d)/I(0)が0.667と0.9との間に有る時だから、
0.405・μpSi−1<d<0.693・μpSi (式4)
との関係式が得られる。半導体膜の厚みdと、此の半導体膜に照射するパルスレーザー光の多結晶硅素中での吸収係数μpSiとが、上述の式3乃至式4を満たして居る時には必ず優良なる多結晶半導体薄膜が得られ、以て優れた薄膜半導体装置が製造される訳である。

0020

上述の式3及び式4の関係を、図1に示した光の波長と吸収係数との関係を考慮して、波長と硅素を主体とした半導体薄膜の厚みとの関係に描き直した物が図4で有る。図4三角印より上の領域で半導体薄膜は加熱され、丸印より下の領域には表面損傷が生ぜず半導体膜の厚み方向で全体が比較的均一に溶融する照射エネルギー密度が存在し得る。又、四角印より下の領域では上下の温度差が小さく成るので、結晶の横方向への成長が促進される。図4では更に丸印や四角印、三角印を其々直線で近似してある。此等の近似直線を用いると、照射レーザー光の波長λが440nm以上710nm以下の場合、波長λと膜厚dとが
9.8×10αL2(λ−440)<d<53×10αH2(λ−440)
(式5)
但し、αL2=4.9×10−3 nm−1
αH2=5.4×10−3 nm−1
との関係式を満たして居れば、硅素を主体とした半導体薄膜は効率的に加熱され、且つ表面に損傷が生ぜずに半導体膜の厚み方向で薄膜の略全体を溶融させ得る事になる。例えばレーザー光としてYAG2ω光を用いる場合、波長が532nmなので、此の条件を満たす半導体膜厚は28nmから166nmとなる。更に、膜厚dと波長λとが
9.8×10αL2(λ−440)<d<32×10αM2(λ−440)
(式6)
但し、αL2=4.9×10−3 nm−1
αM2=5.2×10−3 nm−1
との関係式を満たして居れば、硅素を主体とした半導体薄膜は効率的に加熱され、且つ結晶の横方向への成長も促進されるのでより好ましい。YAG2ω光をレーザー光として用いるのならば、半導体膜厚が28nmから96nmの時に此の条件は満たされる。

0021

同様に照射レーザー光の波長λが370nm以上440nm以下の場合には、波長λと膜厚dとが
2.4×10αL1(λ−370)<d<11.2×10αH1(λ−370) (式7)
但し、αL1=8.7×10−3 nm−1
αH1=9.6×10−3 nm−1
との関係式を満たして居れば、硅素を主体とした半導体薄膜は効率的に加熱され、且つ表面に損傷が生ぜずに半導体膜の厚み方向で薄膜の略全体を溶融させ得る事になる。波長λと膜厚dとが
2.4×10αL1(λ−370)<d<6.0×10αM1(λ−370) (式8)
但し、αL1=8.7×10−3 nm−1
αM1=1.04×10−2 nm−1
との関係式を満たして居れば、硅素を主体とした半導体薄膜は効率的に加熱され、且つ結晶の横方向への成長も促進されるのでより好ましい。

0022

優良なる結晶性半導体薄膜を得るにはパルスレーザー光の半導体膜上に於ける照射エネルギー密度の制御も重要となる。換言すると優れた薄膜半導体装置を製造するには照射エネルギー密度を適切な範囲内に制御せねばならない。まず溶融結晶化を進める為には、被照射半導体膜の少なくとも一部が溶融するのに十分な強度をパルスレーザー光は有しておらねばならない。此が半導体膜上に於けるパルスレーザー光照射エネルギー密度の適切な範囲の最下限値である。(通常は最表面が溶融する照射エネルギー密度が此の値に相当するので、本願明細書では此を表面溶融エネルギー密度(ESM)と略称する。)更に実験に依ると、パルスレーザー光のエネルギー密度が被照射半導体膜の厚み方向に於ける体積成分の3分の2程度以上を溶融させる時に窮めて良質な結晶性半導体膜が得られ、其れ故に斯様な結晶性半導体膜を能動層として用いて居る薄膜半導体装置は優れた電気特性を示す様になる。此は本願発明のパルスレーザー光が非晶質成分等の構造秩序の乱れた部位から優先的に溶融させ、同時に高品質な結晶成分を選択的に残し、更には薄膜の厚み方向で略均一に溶融を進める為、3分の2程度以上を溶融させれる工程を何回か繰り返す事で少ない照射回数でも容易に良質な結晶化膜が得られるからで有る。従ってより好ましい下限値は半導体膜の厚み方向に於ける体積成分の3分の2程度以上を溶融させる照射エネルギー密度で有る。(此の照射エネルギー密度を本願明細書では2/3溶融エネルギー密度(E2/3)と略称する。)

0023

適切な照射エネルギー密度には上限値も存在する。半導体膜表面でのレーザー光のエネルギー密度が余りにも高いと、半導体薄膜は消失して仕舞うので、エネルギー密度は消失(Abrasion)を引き起こす値よりも当然小さくなければならない。(消失が生ずる照射エネルギー密度を本願明細書では消失エネルギー密度(EAb)と略称する。)此の値が最上限値となる。又、全面的な消失が生ぜずとも、半導体膜の厚み方向の全体が完全に溶融して仕舞うと(此の照射エネルギー密度を本願明細書では完全溶融エネルギー密度(ECM)と略称する)、部分的な消失が発生し易く成る。此は薄膜半導体装置を作成した際の欠陥を誘起して歩留まり下げ要因と成り得るので、当然好ましくない。更には半導体膜の厚み方向全体が完全溶融すると、膜中で結晶核が爆発的に発生し、其れが故レーザー照射後に得られる結晶化膜は微細な結晶粒から構成される事となる。斯う成ると薄膜半導体装置の電気特性も優れぬ物と化す。従って、高歩留まりを以て優良な薄膜半導体装置を製造するには、半導体膜表面でのパルスレーザー光のエネルギー密度は半導体膜の厚み方向の全体が完全に溶融する値(ECM)よりも低い事が望まれる。此が適切な照射エネルギー密度に対する好ましい上限値となる。

0024

結局、波長λが370nm以上710nm以下のパルス発振する固体レーザー光を式5から式8の関係を満たす厚みを有する硅素を主体とした半導体膜に照射して薄膜半導体装置を作成する場合、固体レーザー光の半導体膜上に於ける望ましい照射エネルギー密度は表面溶融エネルギー密度(ESM)以上消失エネルギー密度(EAb)以下と成る。より好ましくは表面溶融エネルギー密度(ESM)以上完全溶融エネルギー密度(ECM)以下、或いは2/3溶融エネルギー密度(E2/3)以上消失エネルギー密度(EAb)以下、理想的には2/3溶融エネルギー密度(E2/3)以上完全溶融エネルギー密度(ECM)以下と云える。具体的に固体パルスレーザー光がNd:YAGレーザー光の第二高調波で、透明基板上に形成された硅素を主体とする半導体膜の厚みが28nm程度から96nm程度で有る場合の、半導体膜表面に於けるYAG2ωパルスレーザー光の照射エネルギー密度(x軸)と被照射半導体膜の溶融する体積成分(y軸)との関係を図5に示す。図5から分かる様に、斯様な条件下では

0025

ESM=100mJcm−2

0026

ECM=850mJcm−2

0027

EAb=1500mJcm−2
で有るので、被照射半導体膜の厚み方向に於ける体積成分の3分の2が溶融する照射エネルギー密度は

0028

E2/3=600mJcm−2
となる。従って、YAG2ω光の半導体膜上に於ける望ましい照射エネルギー密度は100mJcm−2程度以上1500mJcm−2程度以下で、より好ましくは100mJcm−2程度以上850mJcm−2程度以下、或いは600mJcm−2程度以上1500mJcm−2程度以下、理想的には600mJcm−2程度以上850mJcm−2程度以下と云える。

0029

前述の横方向への結晶成長を促進し、更に其れを半導体装置にて有効に利用するには、此処まで述べてきた条件の他にパルスレーザー光の半導体膜表面に於ける照射領域の形状の制御も重要となる。例えば照射領域が図6−aに示すように円形で、円の中心から外側に向かってレーザー光強度が減少して居る場合(図6−b)を考える。この時結晶は温度の低い外周から高温の中心に向かって成長するので、各結晶粒は成長するに従い互いにぶつかり合い、決して大きな結晶粒は形成され得ない。加えて半導体装置のアクティブ領域の方向(FETならばソース・チャンネルドレインの方向、バイポーラトランジスタならばエミッターベースコレクターの方向)をいずれに取ろうとも、アクティブ領域内には必ず多くの結晶粒界が出現する事になり、斯うした照射領域形状にてレーザー照射を行って薄膜半導体装置を作成しても、決して優れた半導体装置には成り得ない。此に対して本願発明では照射領域を幅W(μm)で、長さL(mm)の線状乃至は略長方形とする(図7−a)。照射領域内の長さ方向に於ける断面(図7−a、A−A’断面)でのレーザー光照射エネルギー密度は照射領域の端部(図7−b、±L/2付近)を除いて略一様に分布している(図7−b)。具体的には長さ方向の左右其々の端部5%を除いた、中央部90%以内でのエネルギー密度の変動(平均値に対する標準偏差の比)は5%程度未満とされている。一方、照射領域内の幅方向に於ける断面(図7−a、B−B’断面)でのレーザー光照射エネルギー密度は略台形状を成すか(図8−a)、或いは略ガウス関数形を成す(図8−b)。幅方向断面が略ガウス関数形とは幅方向のレーザー光強度(図8−b)が実際にガウス関数で近似され得る分布形状にのみ成らず、其の強度が中心(図8−bに於ける0点)から微分可能関数にて端部領域(図8−bに於ける±W/2付近)へと滑らかに減少している分布形状をも含む。幅方向断面が略台形状(図8−a)の場合、エネルギー密度分布の変動が5%程度未満となる中央平坦領域の割合は30%程度から90%程度が好ましく、それ故に上下其々の端部領域(図8−a、±W/2付近)は5%程度から35%程度となる。例えば幅W=100μmの場合、中央平坦領域は30μm程度から90μm程度で有り、上下其々の端部領域は5μm程度から35μm程度が望まれる。

0030

本願発明の要点は結晶核やレーザー光の制御を通じて半導体膜の溶融結晶化時に横成長を促進させる事に認められる。横成長を促進させるには、レーザー光源の選択やそれに適する半導体膜厚の決定と言った膜厚方向の結晶成長抑制の他に、膜の水平方向への成長制御をも重要となる。具体的には線上乃至は長方形状レーザー光照射領域の長さ(照射長と略称する)Lに対する幅(照射幅と略称する)Wの比(L/W)と照射領域の走査方法とを最適化させる事で、所望の方向への結晶成長が可能と化す。まず照射長Lに対する照射幅Wの比(L/W)を100程度以上とする。この比(L/W)が100程度以上有れば、各照射の際に温度勾配は照射領域の長さ方向には殆ど生ぜず、主として幅方向(図7−a、B−B’方向)に生ずる事になる。その結果、結晶は照射領域の幅方向へと一次元的な横成長を示すからで有る。照射幅Wは5μm程度から500μm程度が望まれるから、生産性を考慮すると理想的には比(L/W)は1000程度以上が望まれる。次いで斯様な形状の照射領域を各照射毎に幅方向にずらして行き、基板全面の走査を行う。各照射毎に結晶は照射幅方向に成長して行くので、照射領域を幅方向にずらして行くと幾つかの結晶粒が幅方向に繋がる事も可能となる。斯うした照射方法を採用する事で多結晶半導体膜を構成する結晶粒は平均的に照射領域の幅方向(図7−a、B−B’方向)に大きく成る。従って薄膜半導体装置のアクティブ領域の方向(MOSFETならばソース・ドレイン方向、バイポーラトランジスタならばエミッター・コレクター方向)を照射幅方向に取る事で、アクティブ領域内(MOSFETのチャンネル形成領域内、又はバイポーラトランジスタのエミッター・ベース接合領域とベース領域、及びベース・コレクター接合領域)に結晶粒界が存在しない、或いは仮令結晶粒界が存在しても其の数が僅かと云った優れた薄膜半導体装置が実現されるので有る。

0031

レーザー照射領域を基板上で走査する際に各照射毎に照射領域をずらす量(此をずらし量と略称する)は、一回の照射で成長する結晶の大きさ(此を結晶成長サイズと略称する)以下とするのが望ましい。理想的なずらし量は結晶成長サイズの半分程度以下で有る。斯うする事で各照射毎に結晶が繋がる確率が著しく増大し、照射領域の幅方向への結晶粒径が大きく成るからである。レーザー光源としてYAG2ω光を利用した場合、結晶成長サイズは通常1μm程度から3μm程度である。従ってずらし量が3μm程度以下ならば結晶が繋がる可能性が生じ、2μm程度以下ならばその確率はより増大する。結晶成長サイズは常に3μm程度と決まっている訳ではなく、其れは成る確率関数に従って分布する。結晶成長サイズは大きい値を取る事も有れば、同様に小さい値をも取り得る。結晶成長サイズが1μm程度と小さい値であっても結晶粒を確実に繋げるには、換言すれば殆ど総ての結晶成長サイズの値に対しても結晶粒を確実に繋げるには、ずらし量を1μm程度以下とする。理想的には0.5μm程度以下で有る。ずらし量が0.1μm程度以下となると、YAG2ω光を20kHzとの高周波でパルス発振しても走査速度は2mm/sec程度以下と遅くなって仕舞う。500mmと云った様な大型基板を処理するには、生産性を考慮すると走査速度を2mm/sec程度以下と遅くする事は現実的ではない。従ってずらし量の下限値は0.1μm程度と云える。結晶を繋げる事よりも生産性を優先させれば、ずらし量の上限値は凡そ25μmで有る。

0032

優れた薄膜半導体装置を作成するには半導体膜上の任意の一点を照射するパルスレーザー光の照射回数(照射回数と略称する)をも最適化する必要が有る。照射回数が10回程度未満だと多結晶半導体膜中の欠陥を効率的に低減出来ない。反対に80回程度以上だと気相から半導体膜への不純物混入や半導体膜表面の粗さの増大などをもたらして仕舞う。取り分け照射回数が200回程度以上となると表面が酷く荒れ、斯うした膜を利用して薄膜半導体装置を作成してもゲートリーク等に依り半導体装置は丸で機能しない。結晶性半導体膜中の欠陥を効率的に低減し、且つ半導体膜の表面を平滑に保って優良なる薄膜半導体装置を製造するには、照射回数が10回程度以上80回程度以下となる様にレーザー照射領域を基板上にて走査する。優れた半導体装置を確実に製造するには、照射回数が20回程度以上60回程度以下となる様にパルスレーザー光を走査する。

0033

ずらし量と照射回数に最適値が存在するので、此等の値より最適な照射幅Wが定まる。照射幅Wはずらし量と照射回数との積で有る。ずらし量をx(μm)で、照射回数をn回で表した時、照射幅W(μm)は、
W(μm)=x(μm)×n (式9)
である。幅方向のレーザーエネルギー密度分布の如何に関わらず照射幅Wはレーザーエネルギー密度の強度が最大値の半分になる点の幅(Full Width Half Maximum:FWHM)に相当する。ずらし量の好ましい範囲の最下限が0.1μm程度であり、照射回数の好ましい最小値が10回程度であるから、好ましい最小照射幅は1μm程度となる。反対にずらし量の最大値が25μm程度で照射回数の最大値が80回程度だから、好ましい最大照射幅は2000μm程度と云える。より好ましい照射幅としては、ずらし量が0.5μm程度で照射回数が10回程度の時の5μm程度からずらし量が3μm程度で照射回数が80回程度の時の240μm程度の間で有る。ずらし量が1μm程度で照射回数が20回程度の時の、或いはずらし量が0.5μm程度で照射回数が40回程度の時の20μm程度から、ずらし量が2μm程度で照射回数が60回程度の時の120μm程度の間が理想的な照射幅と云える。

0034

斯うした条件下に於ける望ましい発信周波数は走査速度が2mm/sec程度以上となる値である。パルスレーザー光の発信周波数f(Hz)と走査速度v(mm/sec)との関係は先のずらし量x(μm)を用いて、
v(mm/sec)=x(μm)×10−3×f(Hz) (式10)
表現されるから、望ましい発信周波数f(Hz)は
f>2×103/x (式11)
で有る。ずらし量の好ましい範囲が0.1μm程度以上25μm程度以下で有ったから、式11より発信周波数の好ましい範囲は0.08kHz程度以上20kHz程度以下となる。より好ましくは0.67kHz程度以上20kHz程度以下、理想的には1kHz程度以上20kHz程度以下と云える。式9と式11より発信周波数f(Hz)と照射回数n(回)、及び照射幅W(μm)との間には
f>2×103×n/x (式12)
との関係が見いだされる。即ち、発信周波数と照射回数、及び照射幅とを式12の条件を満たす様に設定してパルスレーザー光を半導体膜に照射すると、高い生産性を以て優れた品質の薄膜半導体装置が製造される。

0035

半導体膜の溶融結晶化時に結晶粒の幅方向への一次元的な横成長を促進させるもう一つの重要な要素は、照射領域の幅方向に於けるレーザーエネルギー密度の勾配(エネルギー密度勾配と略称する)である。溶融結晶化時の結晶成長速度u(x)は半導体膜の温度勾配dT(x)/dxに比例する。
u(x)=k・dT(x)/dx (式13)
但し此処でkは速度定数で、T(x)は半導体膜上の任意の点xに於ける半導体膜の温度である。半導体膜の溶融時間をtm表らわすと、結晶成長サイズLcは結晶成長速度と溶融時間tmとの積にて表される。
Lc=u×Lc=k・dT/dx・tm (式14)
速度定数kは一定で溶融時間も略一定であるから、結晶成長サイズは半導体膜の温度勾配に比例する事になる。一方、半導体膜の温度は照射パルスレーザー光のエネルギー密度に比例するから、結局、結晶成長サイズLcはエネルギー密度勾配dE/dxに比例する。
Lc∝dE/dx (式15)
結晶成長サイズを大きくするにはエネルギー密度勾配を大きくすれば良い訳である。出願人等が行った実験結果に依ると、YAG2ω光をパルスレーザー光として用いてガラス基板上の半導体膜を溶融結晶化させた場合、エネルギー密度勾配の最大値が3mJ・cm−2・μm−1程度以上である3.0mJ・cm−2・μm−1程度から4.0mJ・cm−2・μm−1程度の時に照射幅方向への結晶成長サイズは1μm程度以上となった。又、エネルギー密度勾配の最大値が10mJ・cm−2・μm−1程度から20J・cm−2・μm−1程度の時には照射幅方向への結晶成長サイズは2μm程度以上と増大した。更にエネルギー密度勾配の最大値が30mJ・cm−2・μm−1程度の時には照射幅方向への結晶成長サイズは3μm程度となった。従って良質な結晶性半導体膜を得て優良なる薄膜半導体装置を製造するにはエネルギー密度勾配の最大値を3mJ・cm−2・μm−1程度以上とするのが好ましく、10mJ・cm−2・μm−1程度から20J・cm−2・μm−1程度の間ならばより好ましく、理想的には30mJ・cm−2・μm−1程度以上である。

0036

本願発明に依ると所望の方向への一次元的な結晶成長を実現するには、照射レーザー光の波長や吸収係数、更には半導体膜の厚みや純度等を最適化して厚み方向への結晶成長を抑制し、その上で線状乃至は略長方形状をした照射領域の形状を整えて長さ方向への結晶成長を抑制し、且つ幅方向へのエネルギー密度勾配を最適化して幅方向へのみ選択的に結晶を成長させる。斯様な状況としてから照射領域を各照射毎に照射領域の幅方向に適当量ずらして走査すれば、走査方向に結晶は繋がって行く。斯くして照射幅方向に対する結晶粒長が増大し、且つ結晶内欠陥も少なく、表面も平滑で、而も純度も高いとの優れた結晶性半導体薄膜が得られる。薄膜半導体装置の能動層の方向を照射領域の走査方向と平行とすれば、能動層内を横断する結晶粒界数が著しく低減され、以て窮めて優良な薄膜半導体装置が容易に製造されるに至る。

0037

以上詳述してきた様に、従来低品質でばらつきも大きかった結晶性半導体膜を、本願発明では成膜方法や結晶化工程を工夫する事に依り、均一で高品質な結晶性半導体膜とする事が出来る。これに依り薄膜トランジスタに代表される薄膜半導体装置の電気特性を著しく向上させ、同時に薄膜半導体装置を低電圧にて動作させ、更には斯様な薄膜半導体装置を安定的に製造し得るとの顕著な効果が認められる。

発明を実施するための最良の形態

0038

添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
(実施例1)

0039

図9(a)〜(d)はMOS型電界効果トランジスタを形成する薄膜半導体装置の製造工程を断面で示した図で有る。本実施例1では基板101としてガラスの歪点温度が650℃の無アルカリガラスを用いた。然るに此以外の基板で有っても、薄膜半導体装置製造工程中の最高温度に耐えられるのならば、その種類や大きさは無論問われない。まず基板101上に下地保護膜102と成る酸化硅素膜を堆積する。基板がセラミックス基板等で半導体膜に取って望ましからざる不純物を含んでいる場合、酸化硅素膜堆積前に酸化タンタル膜窒化硅素膜等の第一の下地保護膜を堆積しても良い。本実施例1では基板101上にプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)で酸化硅素膜を200nm程度堆積し、下地保護膜102とした。酸化硅素膜はECR−PECVDにて以下の堆積条件で堆積された。
モノシラン(SiH4)流量・・・60sccm
酸素(O2)流量・・・100sccm
圧力・・・2.40mTorr
マイクロ波(2.45GHz)出力・・・2250W
印可磁場・・・875Gauss
基板温度・・・100℃
成膜時間・・・40秒
此の酸化膜の、液温が25℃で濃度が1.67%の沸化水素酸水溶液に於けるエッチング速度は0.5nm/sで有った。

0040

斯様に形成された下地保護膜上に、第一工程として真性非晶質硅素膜を高真空型LPCVD装置にて50nm程度の膜厚に堆積した。高真空型LPCVD装置はホットウォール型で容積が184.5l有り、基板挿入後の堆積可能領域の総面積は約44000cm2で有る。成膜室に於ける最大排気速度は120sccm/mTorrで有る。堆積温度は425℃で、半導体膜堆積前には此の温度にて1時間15分間に渡る基板の加熱乾燥処理が施された。乾燥熱処理の最中、基板が設置された成膜室には純度が99.9999%以上のヘリウム(He)を200(sccm)と純度が99.9999%以上の水素(H2)を100(sccm)導入し、成膜室の圧力は約2.5mTorrに保たれた。乾燥処理が終了し、半導体膜堆積直前の成膜室背景真空度は、425℃に於ける温度平衡条件にて2.5×10−7Torrで有った。非晶質硅素膜堆積時には成膜室に純度99.99%以上のジシラン(Si2H6)を200sccmの流量で供給し、堆積圧力は凡そ1.1Torrに保たれた。此の条件下で硅素膜の堆積速度は0.77nm/minで有る。

0041

次に第二工程として第一工程にて得られた真性非晶質硅素膜にパルス発振するNd:YAGレーザー光の第二高調波を照射して溶融結晶化を行った。パルスレーザー光の時間半値幅は約60nsで、発信周波数は200Hzで有った。レーザー光は幅方向に対して略ガウス形であり、照射幅が270μmで照射長が5mmの線状に集光された。幅方向に対するエネルギー密度勾配の最大値は3.72mJ・cm−2・μm−1であった。此の線状の光を各照射毎に2.5%づつ幅方向にずらして、基板上を走査した。ずらし量は6.75μmとなり、半導体膜上の任意の一点は約40回のレーザー照射を被って居る。レーザー光の照射エネルギー密度は750mJ・cm−2で有る。半導体膜表面に於ける照射エネルギー密度の平均値に対する変動は約4%で有った。本実施例1にて使用したYAG2ωレーザー光では50nmの半導体膜の最表面のみを溶融させるエネルギー密度は100mJ・cm−2程度で有り、完全溶融させるエネルギー密度は850mJ・cm−2程度で有ったから、半導体膜の約87%が溶融した事に成る。斯様にして得られた結晶性硅素膜パターニング加工して半導体膜の島103を形成した。トランジスタのソースドレイン方向とYAG2ωレーザー光の走査方向は略平行であった。(図9−a)

0042

次にパターニング加工された半導体膜の島103を被う様に酸化硅素膜104をECR−PECVD法にて形成した。此の酸化硅素膜は半導体装置のゲート絶縁膜として機能する。ゲート絶縁膜と成る酸化硅素膜堆積条件は堆積時間が24秒と短縮された事を除いて、下地保護膜の酸化硅素膜の堆積条件と同一で有る。但し、酸化硅素膜堆積の直前にはECR−PECVD装置内で基板に酸素プラズマを照射して、半導体の表面に低温プラズマ酸化膜を形成した。プラズマ酸化条件は次の通りで有る。
酸素(O2)流量・・・100sccm
圧力・・・1.85mTorr
マイクロ波(2.45GHz)出力・・・2000W
印可磁場・・・875Gauss
基板温度・・・100℃
処理時間・・・24秒

0043

プラズマ酸化に依り凡そ3.5nmの酸化膜が半導体表面に形成されて居る。酸素プラズマ照射が終了した後、真空を維持した侭連続で酸化膜を堆積した。従ってゲート絶縁膜と成る酸化硅素膜はプラズマ酸化膜気相堆積膜の二者から成り、その膜厚は122nmで有った。斯様にしてゲート絶縁膜堆積が完了した。(図9−b)

0044

引き続いて金属薄膜に依りゲート電極105をスパッター法にて形成する。スパッター時の基板温度は150℃で有った。本実施例1では750nmの膜厚を有するα構造のタンタル(Ta)にてゲート電極を作成し、このゲート電極のシート抵抗は0.8Ω/□で有った。次にゲート電極をマスクとして、ドナー又はアクセプターとなる不純物イオン106を打ち込み、ソース・ドレイン領域107とチャンネル形成領域108をゲート電極に対して自己整合的に作成する。本実施例1ではCMOS半導体装置を作製した。NMOSトランジスタを作製する際にはPMOSトランジスタ部をアルミニウム(Al)薄膜で覆った上で、不純物元素として水素中に5%の濃度で希釈されたフォスヒィン(PH3)を選び、加速電圧80kVにて水素を含んだ総イオンを7×1015cm−2の濃度でNMOSトランジスタのソース・ドレイン領域に打ち込んだ。反対にPMOSトランジスタを作製する際にはNMOSトランジスタ部をアルミニウム(Al)薄膜で覆った上で、不純物元素として水素中に5%の濃度で希釈されたジボラン(B2H6)を選び、加速電圧80kVにて水素を含んだ総イオンを5×1015cm−2の濃度でPMOSトランジスタのソース・ドレイン領域に打ち込んだ。(図9−c)イオン打ち込み時の基板温度は300℃で有る。

0045

次にPECVD法でTEOS(Si−(OCH2CH3)4)と酸素を原料気体として、基板温度300℃で層間絶縁膜109を堆積した。層間絶縁膜は二酸化硅素膜から成り、その膜厚は凡そ500nmで有った。層間絶縁膜堆積後、層間絶縁膜の焼き締めとソース・ドレイン領域に添加された不純物元素の活性化を兼ねて、窒素雰囲気下350℃にて2時間の熱処理を施した。最後にコンタクトホールを開穴し、スパッター法で基板温度を180℃としてアルミニウムを堆積し、配線110を作成して薄膜半導体装置が完成した。(図9−d)

0046

この様にして作成した薄膜半導体装置の伝達特性を測定した。測定した半導体装置のチャンネル形成領域の長さ及び幅は其々10μmで、測定は室温にて行われた。4個のNMOSトランジスタのVds=8Vに於ける飽和領域より求めた平均の移動度は117cm2・V−1・s−1で有り、平均の閾値電圧は3.41V、平均のサブスレーシュホールド・スイングは0.260V、閾値電圧とフラットバンド電圧とから求めた平均のアクセプター型捕獲準位密度は2.05×1016cm−3で有った。又、4個のPMOSトランジスタのVds=−8Vに於ける飽和領域より求めた平均の移動度は62cm2・V−1・s−1で有り、平均の閾値電圧は−0.81V、平均のサブスレーシュホールド・スイングは0.368V、閾値電圧とフラットバンド電圧とから求めた平均のドナー型捕獲準位密度は1.62×1016cm−3で有った。此等の半導体装置は其の特性が基板内で殆ど変動が無く、高性能半導体装置が均一に製造されて居た。此に対して従来技術で非晶質硅素膜を堆積してエキシマ・レーザーで結晶化した比較例ではNMOSトランジスタの平均の移動度が33cm2・V−1・s−1、平均の閾値電圧が3.70V、平均のサブスレーシュホールド・スイングが0.646V、平均のアクセプター型捕獲準位密度が2.65×1016cm−3で、PMOSトランジスタの平均の移動度が16cm2・V−1・s−1、平均の閾値電圧が−7.06V、平均のサブスレーシュホールド・スイングが0.617V、平均のドナー型捕獲準位密度は6.55×1016cm−3で有った。この例が示す様に本発明に依るとN型P型の両半導体装置共に高移動度低閾値電圧を有し、且つ急峻なサブスレーシュホールド特性を示す良好な薄膜半導体装置が汎用ガラス基板を使用し得る低温工程にて、簡便且つ容易に、又安定的に作成し得る。取り分け、サブスレーシュホールド・スイング値から分かる様に禁制帯中央部付近の捕獲準位密度や、ドナー型捕獲準位密度と云った獲準位密度を著しく低減するとの絶大なる効果を有し、薄膜半導体装置を用いた回路低電圧駆動を可能ならしめている。又、従来技術では移動度が大きければ閾値電圧や捕獲準位密度も大きく成っていたが、本願発明に依ると、高移動度と低閾値電圧や低捕獲準位密度を同時に実現出来るとの優れた効果をも認められる。
(実施例2)

0047

第二工程に於けるパルス発振するNd:YAGレーザー光の第二高調波を半導体膜に照射する工程を除いて、その他の製造工程は実施例1と全く同様として薄膜半導体装置を作成した。本実施例2では幅270μmで長さ5mmの線状に集光されたYAG2ωパルスレーザー光を各照射毎に幅方向にずらす割合と、半導体膜上に於けるレーザー光照射エネルギー密度との二点のみを実施例1から変更した。線状のレーザー光を照射毎に幅方向にずらす割合は5%と2.5%、1.2%、0.6%との四水準を選んだ。此に応じて半導体膜上の任意の一点は其々約20回、約40回、約83回、約250回のレーザー照射を被る事になる。半導体膜上に於けるレーザー光の照射エネルギー密度は300mJ・cm−2から800mJ・cm−2迄変化させた。其れに比例してレーザーエネルギー密度勾配の最大値も1.49mJ・cm−2・μm−1から3.97mJ・cm−2・μm−1へと変化する。実施例1と同様、半導体膜表面に於けるYAG2ω光照射エネルギー密度の平均値に対する変動は約4%で、ESMは100mJ・cm−2程度で有り、ECMは850mJ・cm−2程度で有った。

0048

斯うして作成された薄膜半導体装置の電気特性を図10から図15に示す。これらの図の横軸(x軸)は何れもYAG2ω光の半導体膜表面に於ける照射エネルギー密度を表し、縦軸(y軸)は対応する電気特性を表す。又、参考の為に従来技術に相当するエキシマレーザーで得られた最も良い結果をも黒丸(KrF Excimer 20 shots)にて示して有る。

0049

図10及び図11NMOS及びPMOSのサブスレシュホールドスイングを示している。照射エネルギー密度が550mJ・cm−2程度を越えると、即ち半導体膜の厚み方向に於ける体積成分の60%程度以上が溶融すると、従来よりも閾値下特性を改善出来る事が分かる。更に600mJ・cm−2程度以上の時(半導体膜の厚み方向に於ける体積成分の67%程度以上が溶融した時)には、従来よりも著しく特性が改善され、而も良好な特性を示すエネルギー密度範囲が完全溶融直前の800mJ・cm−2程度迄と広がって居る事が確認出来る。

0050

図12及び図13はアクセプター型捕獲準位とドナー型捕獲準位のエネルギー密度依存性を示して居る。図10図11と同じ傾向に加えて、照射エネルギー密度が650mJ・cm−2程度を越えると、即ち半導体膜の厚み方向に於ける体積成分の73%程度以上が溶融すると、ドナー型捕獲準位を従来の3分の1程度以下に迄低減し得るとの顕著な効果が認められて居る。

0051

図14及び図15はNMOS及びPMOSの移動度に関するグラフで有る。照射エネルギー密度が650mJ・cm−2程度を越えると、即ち半導体膜の厚み方向に於ける体積成分の73%程度以上が溶融すると、NMOSもPMOSも共に非常に大きな移動度が得られる。

0052

本実施例2が示す様に、半導体膜の厚み方向に於ける体積成分の60%程度以上が溶融すると従来よりも優れた薄膜半導体装置を容易に製造する事が可能となり、67%程度以上が溶融すると捕獲準位密度を著しく低減し、更に73%程度以上が溶融すると、低閾値電圧と高移動度とが両立するとの優れた効果が生ずる事が理解されよう。
(実施例3)

0053

第二工程に於けるパルス発振するNd:YAGレーザー光の第二高調波を半導体膜に照射する工程を除いて、その他の製造工程は実施例1と全く同様として薄膜半導体装置を作成した。本実施例3では幅方向に対して略ガウス型を為す照射幅60μmで照射長10mmの線状に集光されたYAG2ωパルスレーザー光を半導体膜に照射した。照射回数は40回で、従ってずらし量は1.5μmとなる。生産性を考慮した好ましい発信周波数は1334Hz以上である。幅方向に於けるエネルギー密度勾配の最大値は16.1mJ・cm−2・μm−1であった。照射レーザーエネルギー密度は600mJ・cm−2とした。これ以外の条件は総て実施例1と全く同一として薄膜半導体装置を作成した。得られたN型薄膜半導体装置のVds=8Vに於ける飽和領域より求めた平均の移動度は159cm2・V−1・s−1で有り、又P型薄膜半導体装置のVds=−8Vに於ける飽和領域より求めた平均の移動度は70cm2・V−1・s−1で有った。実施例1及び実施例2の図14図15の結果と比較すると、同じ照射レーザーエネルギー密度であっても、ずらし量が小さくなり、エネルギー密度勾配の最大値が大きくなった事実を反映して、より優れたトランジスタが作成されて居る事が理解される。
(実施例4)

0054

第二工程に於けるパルス発振するNd:YAGレーザー光の第二高調波を半導体膜に照射する工程とゲート絶縁膜の厚みとを除いて、その他の製造工程は実施例1と全く同様として薄膜半導体装置を作成した。本実施例4ではゲート絶縁膜の厚みを60nmとした。又、半導体膜を照射するYAG2ω光は幅方向に対して略ガウス型を為す照射幅50μmで照射長10mmの線状に集光された。照射回数は40回で、従ってずらし量は1.25μmとなる。生産性を考慮した好ましい発信周波数は1600Hz以上である。照射レーザーエネルギー密度は300mJ・cm−2から900mJ・cm−2迄の間で100mJ・cm−2毎に設定された。其れに応じて幅方向に於けるエネルギー密度勾配の最大値も11.25mJ・cm−2・μm−1から33.75mJ・cm−2・μm−1へと変化する。これ以外の条件は総て実施例1と全く同一として薄膜半導体装置を作成した。得られたN型薄膜半導体装置(チャンネル長5μm、チャンネル幅10μm)のVds=5Vに於ける飽和領域より求めた平均の移動度、及びYAG2ω光のエネルギー密度勾配の最大値を図16に掲げる。

0055

図16ではレーザーエネルギー密度が600mJ・cm−2を越えるとエネルギー密度勾配の最大値も20mJ・cm−2・μm−1を越え、移動度も171cm2・V−1・s−1と急増している事が示されている。照射エネルギー密度が、半導体膜の体積成分の3分の2が溶解するE2/3=600mJ・cm−2以上となり、同時にエネルギー密度勾配の最大値が20mJ・cm−2・μm−1を越えると、急激に半導体特性が良くなる事が理解されよう。更にレーザーエネルギー密度が完全溶融するECM=850mJ・cm−2を越える900mJ・cm−2であっても、移動度は188cm2・V−1・s−1と良好な値を示している事が分かる。此は完全溶融に依り半導体膜中に核がランダムに発生しても、複数回のレーザー照射の最後にエネルギー密度勾配の最大値が30mJ・cm−2・μm−1を越える照射が行われる為、照射領域の幅方向への結晶成長が生じるからである。従来のエキシマレーザー照射では完全溶融条件ECMを越えると、トランジスタ特性は激しく劣化する。此とは対照的に本願発明では多少完全溶融条件を越えても、優良な薄膜半導体装置が作成されている。換言すれば優れた半導体装置を製造する条件範囲が窮めて広い事を意味し、優良なる半導体装置を安定的に製造し得るのである。実際に図16からはレーザーエネルギー密度が600mJ・cm−2から900mJ・cm−2へと300mJ・cm−2もの広い製造条件範囲に渡って高移動度の薄膜半導体装置が作成されている。

0056

以上のように、本発明の薄膜半導体装置の製造方法に依ると、安価なガラス基板の使用が可能である低温プロセスを用いて高性能な薄膜半導体装置を容易に且つ安定的に製造することができる。従って本発明をアクティブマトリックス液表示装置の製造に適用した場合には、大型で高品質な液晶表示装置を容易にかつ安定的に製造することができる。更に他の電子回路の製造に適用した場合にも高品質な電子回路を容易にかつ安定的に製造することができる。

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